JP6441066B2 - 有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置、および、有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理方法 - Google Patents

有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置、および、有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、生活排水、工場排水等の各種排水、メタン発酵の消化液、廃棄物最終処分場から発生する浸出水などの含窒素化合物含有水、より具体的には、アンモニア態窒素および/または有機態窒素含有水の処理装置、および、該処理装置を用いた含窒素化合物含有水の処理方法に関する。
従来、排水中のアンモニア態窒素を生物学的に処理する方法としては、好気性硝化・嫌気性脱窒法が一般的である。この方法ではまず、アンモニア酸化細菌を用いた好気処理によりアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに酸化し、次いで、亜硝酸酸化細菌を用いた好気処理により亜硝酸イオンを硝酸イオンに酸化し、その後、脱窒細菌を用いた嫌気処理により硝酸イオンを窒素ガスに還元する。このアンモニア態窒素の処理方法は、硝化工程において多量の曝気が必要であり、さらに脱窒工程における電子供与体としてメタノールの添加が必要となる。
また、特許文献1、2には、アンモニア酸化細菌を用いた好気処理によりアンモニウムイオンの一部を亜硝酸イオンに酸化し、その後アンモニウムイオンと亜硝酸イオンを反応させて窒素ガスを生成させることができる独立栄養性細菌(=アナモックス細菌)を用いてアンモニア態窒素を処理する方法が提案されている。この方法は、従来の硝化・脱窒法と比較して硝化工程における曝気量を50%以下に削減することができ、脱窒工程におけるメタノールの添加が不要となるが、アナモックス細菌の増殖速度が非常に遅いので、有機物が混在する実際の排水では、増殖の速い従属栄養細菌に対してアナモックス細菌を優占種とすることが難しく、アナモックス細菌によるアンモニア態窒素の処理を安定的に行うことが困難である。また、上記方法では、最初にアンモニウムイオンの一部を亜硝酸イオンに好気酸化する必要があるため、曝気にかかる電気代をゼロにすることはできず、加えて、被処理水中のアンモニウムイオンと亜硝酸イオンの比率を、アナモックス細菌の増殖に好適な比率に保つことが難しく、酸化が進んで硝酸イオンが生成してしまうとアナモックス細菌では処理できない等の不具合が存在する。
特許文献3には、フェアモックス菌によるアンモニア酸化処理方法において、嫌気条件下で重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンを供給すると云う技術が提案されているが、この技術ではアンモニア酸化反応は実際には進行しない。
加えて、上記従来技術は全てアンモニア態窒素の処理技術であり、アミノ酸、タンパク質、有機系アミン等の有機態窒素を直接処理することができない。有機態窒素は、活性汚泥法やメタン発酵法等の既存の有機物分解法によってアンモニア態窒素に分解処理した後に、上記アンモニア態窒素の処理技術を適用する必要があり、装置が複雑になるとともに、活性汚泥法を利用した場合には、有機物分解のためにも曝気のための電力が必要であった。
特開2001−104992号公報 特開2010−207785号公報 特開2008−279433号公報
Lovley D.R. ; Nat.Rev.Microbiol., 2006, 4, 497-508
本発明は、上記従来技術の問題点を解決する。すなわち、曝気処理なしで、水中の含窒素化合物中の窒素の酸化処理、および、水中の硝酸イオンや亜硝酸イオンの還元処理を同時に並行して行うことが可能な含窒素化合物含有水の処理装置、および、含窒素化合物含有水の処理方法を提供することを目的とする。
本発明の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置は、有機態窒素化合物を含む含窒素化合物と、細胞外電子伝達能を有する微生物(ただし、フェアモックス菌を除く)と、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンと、を含有する第一の水が内部に収納され、かつ、前記第一の水と接触する第一の電極を有する、前記有機態窒素化合物中の窒素を曝気処理なしで硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに酸化処理する硝化反応槽と、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンと、脱窒菌と、を含有する第二の水が内部に収納され、かつ、前記第二の水と接触する第二の電極を有する脱窒反応槽と、を備え、前記硝化反応槽と前記脱窒反応槽とがプロトンが透過可能な仕切りを介して接続されており、かつ、前記第一の電極と前記第二の電極とが電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置では、前記第二の水が、さらに炭素源を含有することができる。
また、本発明の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置では、前記脱窒菌を独立栄養性の脱窒菌とし、かつ、前記炭素源を炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンとすることができる。
また、本発明の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置では、前記微生物をジオバクター属、シェワネラ属、シュードモナス属、あるいは、ロドフェラックス属の細菌とすることを特徴とすることができる。
また、本発明の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置では、直上の微生物をシェワネラ属の細菌とすることができる。
本発明の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理方法は、上記の含窒素化合物含有水の処理装置を用いて、前記硝化反応槽で含窒素化合物中の窒素を硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに酸化処理するとともに、該硝化反応槽で処理後の、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン含有水を前記脱窒反応槽に導入し、該脱窒反応槽で前記硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを窒素ガスに還元処理することにより、硝化反応と脱窒反応とを並行して行うことを特徴とする。
本発明の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置によれば、有機態窒素化合物を含む含窒素化合物と、細胞外電子伝達能を有する微生物(ただし、フェアモックス菌を除く)と、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンと、を含有する第一の水が内部に収納され、かつ、前記第一の水と接触する第一の電極を有する、前記有機態窒素化合物中の窒素を曝気処理なしで硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに酸化処理する硝化反応槽と、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンと、脱窒菌と、を含有する第二の水が内部に収納され、かつ、前記第二の水と接触する第二の電極を有する脱窒反応槽と、を備え、前記硝化反応槽と前記脱窒反応槽とがプロトンが透過可能な仕切りを介して接続されており、かつ、前記第一の電極と前記第二の電極とが電気的に接続されている構成により、曝気処理なしで、前記硝化反応槽で含窒素化合物中の窒素を硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに酸化処理し、かつ、当該酸化処理に並行して前記脱窒反応槽で前記硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを窒素ガスに還元処理することが可能となる。
ここで、前記第二の水が炭素源を含有していると、前記第二の水の中で脱窒菌を増殖させることができるので、脱窒効率を上げることができ、迅速な処理が可能となる。
また、前記脱窒菌を独立栄養性の脱窒菌とし、かつ、前記炭素源を炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンとすると、脱窒菌増殖のための有機物の添加が不要となり、経済的であるとともに、余剰有機物の処理も不要となる。
本発明の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理方法は、上記いずれか有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置を用いて、前記硝化反応槽で含窒素化合物中の窒素を硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに酸化処理するとともに、該硝化反応槽で処理後の、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン含有水を前記脱窒反応槽に導入し、該脱窒反応槽で前記硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを窒素ガスに還元処理することで、硝化反応と脱窒反応とを並行して行うので、従来の硝化・脱窒法では必須であった、硝化工程における多量の曝気や、脱窒工程における電子供与体としてのメタノールの添加が、どちらも不要となる。
加えて、本発明で前記第一の水に含有させる細胞外電子伝達能を有する微生物は、嫌気呼吸の過程で様々な有機物を分解する性質があるので、有機態窒素化合物を嫌気条件下で直接分解し、有機態窒素を硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに酸化することが可能である。すなわち、本発明では、従来技術のように有機態窒素化合物をアンモニア態窒素に分解するための前処理装置や曝気処理は不要である。
本発明の含窒素化合物含有水の処理装置の一例を示すモデル図である。 本発明の含窒素化合物含有水の処理装置の別の一例を示すモデル図である。 実験例1における第一の水の中のアンモニウムイオン濃度、硝酸イオン濃度、亜硝酸イオン濃度の経時変化を示すグラフである。 実験例1における第二の水の中の硝酸イオン濃度、亜硝酸イオン濃度の経時変化を示すグラフである。 実験例2における第二の水の中の亜硝酸イオン濃度の経時変化を示すグラフである。 実験例3における第一の水の中のアンモニウムイオン濃度、硝酸イオン濃度の経時変化を示すグラフである。 実験例4における第一の水の中のアニリン濃度、硝酸イオン濃度、亜硝酸イオン濃度の経時変化を示すグラフである。
図1に本発明の含窒素化合物含有水の処理装置の一例のモデル図を示す。
この例では硝化反応槽11と脱窒反応槽12とは、連結部11bおよび12bで連結されている。連結部11bと12bとの間にはプロトンが透過可能な仕切り13としてナフィオン膜(デュポン社製)が配置されており、硝化反応槽11の内容液(=第一の水)と脱窒反応槽12の内容液(=第二の水)とが互いに混合しないように区切られている。
硝化反応槽11と脱窒反応槽12の内部には、それらの内容液に浸漬する位置にそれぞれカーボンフェルトからなる電極11aと12aとが設けられており、これら電極11aと12aとは電流計15を介して導線14により電気的に接続されている。
硝化反応槽11には、含窒素化合物と、細胞外電子伝達能を有する微生物と、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンと、を含有する第一の水が収納され、電極11a表面に付着した細胞外電子伝達能を有する微生物が、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンを利用して含窒素化合物を分解し、含窒素化合物中の窒素を嫌気的に酸化して、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンとプロトンを生成する(=硝化反応)。その際に生じる電子は電極11aにより集電され、導線14により脱窒反応槽の電極12aに達する。
一方、脱窒反応槽12には、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンと、脱窒菌と、を含有する第二の水が収納され、電極12a表面に付着した脱窒菌が、プロトンが透過可能な仕切り13を介して硝化反応槽から脱窒反応槽に達したプロトンと、前記電極12aに達した電子とを利用して硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを還元し、窒素ガスを生成する(=脱窒反応)。
上記硝化反応と脱窒反応は、図1にモデル的に示した処理装置の構成によって、硝化反応槽11から脱窒反応槽12へのプロトンと電子の移動がスムーズに行われることから、同時並行的に進行する。従って、硝化反応槽11で生成した硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン含有水を脱窒反応槽12に導入することで、一連の硝化・脱窒反応が完結し、含窒素化合物含有水を処理することが可能となる。
硝化反応槽11および脱窒反応槽12には、必要に応じて攪拌装置、硝化反応や脱窒反応に適した温度にそれぞれを保つための保温装置、硝化反応や脱窒反応に適したpHにそれぞれを調整するためのpH調整装置、第一の水や第二の水を各槽に流入させる配管や取り出す配管(これらは同一であっても良い)、あるいは、硝化反応や脱窒反応に必要な成分を各槽に投入するための投入口などを備えていてもよい。また、細胞外電子伝達能を有する微生物による含窒素化合物中の窒素の酸化反応、および、脱窒菌による硝酸イオンや亜硝酸イオンの還元反応はともに嫌気的に進行するが、硝化反応槽および脱窒反応槽は必ずしも厳密な気密構造とする必要はない。各反応槽で積極的な曝気を行わないことで、被処理水中の溶存酸素は酸素呼吸を行う微生物によって消費され、短時間で溶存酸素濃度の極めて低い状態、すなわち本発明の硝化・脱窒反応に適した環境となる。
本発明における「含窒素化合物」とは、アンモニア態窒素化合物(アンモニアおよびアンモニウムイオン)および、アミノ酸、タンパク質、有機系アミン等の有機態窒素化合物のことである。すなわち、本発明における「含窒素化合物中の窒素」とは、いわゆるケルダール窒素を指す。
本発明における細胞外電子伝達能を有する微生物の「細胞外電子伝達能」とは、電子伝達体を酸化還元する一連の流れによって、生命活動に必要なエネルギーを獲得すると共に、発生した電子を細胞膜に存在する電子伝達体(例えば、膜結合型シトクロム)に伝達する能力をいう(非特許文献1)。このような能力を有する微生物であれば、細胞膜上の電子伝達体に保持された電子を、電子伝達体と電子受容体との直接的な接触によって容易に伝達でき、また酸化還元メディエータ化合物のような介在物質が微生物から容易に電子を抽出することができるので好ましい。細胞外電子伝達能を有する微生物としては、例えば、シェワネラ(Shewanella)属及びジオバクター(Geobacter)属のような異化的金属還元細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属及びロドフェラックス(Rhodoferax)属等が挙げられる。シェワネラ属の細菌の具体例としては、シェワネラ・ロイヒカ(S. loihica)、シェワネラ・オネイデンシス(S. oneidensis)シェワネラ・プトレファシエンス(S. putrefaciens)、及びシェワネラ・アルガ(S. algae)が挙げられる。ジオバクター属の細菌の具体例としては、ジオバクター・サルフレドゥセンス(G. sulfurreducens)及びジオバクター・メタリレドゥセンス(G. metallireducens)が挙げられる。シュードモナス属の細菌の具体例としては、シュードモナス・エアルギノーザ(Ps. aeruginosa)が挙げられる。ロドフェラックス属の細菌の具体例としては、ロドフェラックス・フェリレドゥセンス(R. ferrireducens)が挙げられる。細胞外電子伝達能を有する微生物のうち、さらに、酸化還元メディエータ化合物を産生し、それを細胞外に放出することのできる微生物は、本発明上、特に好ましい。酸化還元メディエータ化合物が電子受容体である第一の電極と直接電子伝達を行うことにより、本発明の効果をより発揮し得るからである。酸化還元メディエータ化合物を生産・放出する微生物の例としては、例えば、前記シェワネラ属、シュードモナス属及びロドフェラックス属等が挙げられる。これらの細胞外電子伝達能を有する微生物は自然界に広く分布し、含窒素化合物を含有する水が流入する各種工場の排水処理設備や下水処理場の活性汚泥スラッジ中にも存在する。
本発明における脱窒菌は特別な微生物ではなく、自然界に広く分布し、従来から硝酸態窒素、亜硝酸態窒素の還元処理に利用されている脱窒菌をそのまま用いることができる。脱窒菌とは、多くは嫌気性条件下で、硝酸イオンもしくは亜硝酸イオンを還元する反応を行う多種多様な微生物の総称であり、細菌類に限らず、真菌類も含まれる。そして、増殖に有機物が必要な従属栄養微生物、有機物を必要としない独立栄養微生物のどちらにも上記反応を行う微生物は存在する。脱窒菌の具体例としては、シュードモナス・エアルギノーザ、シュードモナス・デニトリフィカンス(Ps. denitrificans)、シュードモナス・スタツェリ(Ps. stutzeri)等のシュードモナス属の細菌のほか、ミクロコッカス(Micrococcus)属、パラコッカス(Paracoccus)属等に属する細菌が挙げられる。シュードモナス属はグラム陰性の鞭毛を持つ桿菌で、土壌、水中のどちらでもよく見られる一般的な従属栄養細菌であり、多くの有機物を栄養源とすることができ、特別な生育因子も必要としない。また、パラコッカス属に属する細菌の中には、パラコッカス・デニトリフィカンス(Pa. denitrificans)のように、有機物を栄養源として従属栄養的に生育する一方で、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンと水素を利用して独立栄養的にも生育できる種が存在し、このような細菌も脱窒能を有することが知られている。更に、脱窒菌の中には、チオバシラス・デニトリフィカンス(Thiobacillus denitrificans)のように完全な独立栄養細菌も存在する。チオバシラス・デニトリフィカンスは炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンを炭素源とし、硝酸イオンもしくは亜硝酸イオンを還元して呼吸を行うことができる。これらの脱窒菌は、各種工場の排水処理設備や下水処理場の活性汚泥スラッジ中に存在している。
なお、本発明で用いる細胞外電子伝達能を有する微生物や脱窒菌は、単離培養する必要は必ずしもなく、例えば、これらの微生物を含むスラッジごと採取して、そのまま用いることができる。ここで、下水処理場の活性汚泥スラッジのような混合微生物を用いても、該スラッジ中に細胞外電子伝達能を有する微生物や脱窒菌が含まれていれば、本発明の含窒素化合物含有水の処理装置に適用することで、硝化反応槽では硝化反応が、脱窒反応槽では脱窒反応が、それぞれ進行する。スラッジ中に酸素呼吸を行う微生物が存在すると、該微生物の酸素呼吸によって被処理水は短時間で嫌気状態になり、細胞外電子伝達能を有する微生物による含窒素化合物中の窒素の酸化反応、および、脱窒菌による硝酸イオンや亜硝酸イオンの還元反応に適した環境となるので、混合微生物を用いることは、本発明における硝化・脱窒反応に有利に働く場合がある。
本発明における炭酸イオンや重炭酸イオン(=炭酸水素イオン)は、微生物による硝化・脱窒反応に対して悪影響を及ぼさない限りにおいて、水に可溶でこれらのイオンに解離する無機塩や有機塩の一種または二種以上を溶解させることで供給することができる。このような化合物として、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩等が挙げられる。また、アルカリ性の被処理水に炭酸ガスを吹き込んで炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンを生成しても良く、この場合も本発明に含まれる。
本発明における第一の電極および第二の電極は、微生物による硝化・脱窒反応に対して悪影響を及ぼさない限りにおいて、あらゆる固体の伝導体を用いることができる。このような電極材料として、カーボンナノワイヤー、グラファイトフェルトなどの各種炭素材、各種金属や各種合金などが挙げられる。また、第一の電極と第二の電極とは、その材質および形状が同一であっても異なっていても良く、それぞれ、硝化反応、脱窒反応に適したものを適宜選択することができる。
プロトンが透過可能な仕切りとしては、塩橋や陽イオン交換膜(プロトン透過膜)などが挙げられ、微生物による硝化・脱窒反応に対して悪影響を及ぼさない限りにおいて、これらから適宜選択することができる。
また、第一の水および第二の水は、上記のような含窒素化合物、炭酸イオンや重炭酸イオン、硝酸イオンや亜硝酸イオン以外に、各種電解質、それぞれの微生物の栄養源(炭素源)となる各種有機物、ミネラル分などを含有していても良い。
尚、第二の水において炭素源は必須ではなく、プロトンが透過可能な仕切りを介して硝化反応槽から供給されるプロトンと、第二の電極に供給される電子と、脱窒菌とが存在すれば、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンの還元反応は進行する。但し、第二の水に炭素源が存在しないと、第二の水の中で脱窒菌が増殖できないので、脱窒反応の速度は初期に添加した脱窒菌の量に依存してしまう。従って、第二の水には脱窒菌が資化可能な炭素源が含まれていることが好ましい。ここで、脱窒菌が独立栄養的に生育可能な細菌の場合には、添加する炭素源を有機物ではなく炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンとすることができ、経済的であるとともに、余剰有機物の処理も不要となる。
図2に本発明の含窒素化合物含有水の処理装置の別の一例のモデル図を示す。
この例では、第一の電極と第二の電極が一体化して電極24を形成し、電極24は硝化反応槽21と脱窒反応槽22との間の仕切りを兼ねて第一の水と第二の水とが互いに混合しないように区切られている。そして、硝化反応槽21と脱窒反応槽22とが、プロトンが透過可能な仕切り23を介して連結部21bおよび22bで連結されている点は図1と同一である。
図2に示した含窒素化合物含有水の処理装置では、電極24の硝化反応槽21側の表面で硝化反応が進行し、生成した電子は電極24内を移動して脱窒反応槽22側の表面に到達し、脱窒反応に利用される。このように、図2に示した構成であっても本発明における含窒素化合物含有水の処理は可能である。
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の含窒素化合物含有水の処理装置、および含窒素化合物含有水の処理方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の含窒素化合物含有水の処理装置、および含窒素化合物含有水の処理方法を適宜改変することができる。このような改変によってもなお、本発明の含窒素化合物含有水の処理装置、および含窒素化合物含有水の処理方法の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
以下に本発明の含窒素化合物含有水の処理装置の一例を用いた含窒素化合物含有水の処理方法についての実施例を示す。
<MSM培地>
以下の実施例では、細胞外電子伝達能を有する微生物および脱窒菌用の培地として、重炭酸イオンを含む無機培地であるMSM培地を使用した。MSM培地の組成は以下の通りである。
蒸留水:999ml、塩化ナトリウム:8.8g、炭酸水素ナトリウム:3.2g、塩化マグネシウム・七水和物:0.33g、塩化カルシウム:0.275g、燐酸二水素カリウム:14mg、燐酸水素二カリウム:21mg、燐酸水素二ナトリウム:56mg、塩化カリウム:2mg、各種ミネラル溶液:1ml。
なお、上記の各種ミネラル溶液は以下に示す各種成分を水に溶解して1リットルとしたものである。塩化鉄(II):10mmol、塩化コバルト(II):1mmol、塩化マンガン(II)・四水和物:1mmol、塩化亜鉛(II):1mmol、ホウ酸:0.1mmol、塩化ニッケル(II):0.1mmol、塩化アルミニウム:0.1mmol、モリブデン(VI)酸二ナトリウム・二水和物:0.1mmol、塩化銅(II):0.01mmol。
<実験例1:本発明の装置を用いたアンモニア酸化・硝酸還元の同時処理>
図1に示した含窒素化合物含有水の処理装置(硝化反応槽および脱窒反応槽はガラス製で容量は各250ml)を用いて以下の試験を行った。
図1において、含窒素化合物として塩化アンモニウムを20mmol/lの濃度となるように添加したMSM培地に、細胞外電子伝達能を有する微生物を含むスラッジとして東京都某所下水処理場の活性汚泥をMLSS濃度が2500mg/lとなるように添加したものを第一の水として硝化反応槽11に200ml充填し、また、硝酸ナトリウムを20mmol/lの濃度となるように添加したMSM培地に、脱窒菌を含むスラッジとして同じく東京都某所下水処理場の活性汚泥をMLSS濃度が2500mg/lとなるように添加したものを第二の水として脱窒反応槽12に200ml充填した。
次いで、各槽上部の空気層を窒素ガスで置換した後に密封し、第一の水の中のアンモニウムイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオンと、第二の水の中の硝酸イオン、亜硝酸イオンの濃度変化を経時的に測定するとともに、電流計15により導線14に流れる電流値の測定を行った。第一の水の中の各イオンの濃度変化を図3に、第二の水の中の各イオンの濃度変化を図4に示す。
図3で、アンモニウムイオンの濃度が経時的に減少し、それに伴い亜硝酸イオン、硝酸イオンの濃度が増加していることから、硝化反応槽11ではアンモニウムイオンの硝酸イオン、亜硝酸イオンへの酸化反応が進行していることが、図4で、硝酸イオン濃度が経時的に減少し、それに伴い亜硝酸イオン濃度が増加していることから、脱窒反応槽12では硝酸イオンの亜硝酸イオンへの還元反応か進行していることが理解される。すなわち、本発明の含窒素化合物含有水の処理方法によって、曝気なしでの硝化反応と、メタノール(=電子供与体)の添加なしでの脱窒反応と、が並行して行われることが確認された。
また、試験期間中、導線14には脱窒反応槽12から硝化反応槽11に向かって40μAから60μAの電流が流れていた。一方、実験例1において導線14を切断し、電極11aと電極12aを電気的に接続しない条件で試験を行ったところ、アンモニウムイオンの酸化反応も硝酸イオンの還元反応も進行しなかった。以上の結果は、硝化反応槽11におけるアンモニウムイオンの酸化反応には細胞外電子伝達能を有する微生物が関与し、該微生物が電極11aに電子を伝達していること、および、脱窒反応槽12では電極12aが電子供与体となって、脱窒菌による硝酸イオンの還元反応が進行していることを示唆するものである。
<実験例2:亜硝酸イオンを用いた脱窒反応の検討>
第二の水に含まれる窒素源として硝酸ナトリウムの代わりに亜硝酸ナトリウムを用いた以外は、実験例1と同一条件の試験を実施した。実験例2における第二の水の中の亜硝酸イオンの濃度変化を図5に示す。
図5で、亜硝酸イオン濃度が経時的に減少していることから、脱窒反応槽12での還元反応は亜硝酸イオンでも進行することが理解される。そしてこの結果は、脱窒反応槽で硝酸イオンが減少した分、亜硝酸イオンが増加していた実験例1においても、さらに時間が経過して硝酸イオンの濃度が低下すれば、亜硝酸イオンの還元反応が進むことを予測させるものである。
<実験例3:標準菌株を用いた硝化反応の検討>
細胞外電子伝達能を有する微生物として、別途培養したシェワネラ・オネイデンシスMR−1株を用いた以外は、実験例1と同一条件の試験を実施した。実験例3における第一の水の中のアンモニウムイオンおよび硝酸イオンの濃度変化を図6に示す。
本試験においても、硝化反応槽11内ではアンモニウムイオンが経時的に硝酸イオンに酸化していることを示す結果が得られた。また、試験期間中、導線14には脱窒反応槽12から硝化反応槽11に向かって約80μAの電流が流れていた。すなわち、細胞外電子伝達能を有する微生物を硝化反応槽に存在させることで、本発明の硝化反応が進行することが明らかになった。
ここで、実験例1で使用した東京都某所下水処理場の活性汚泥から細胞外電子伝達能を有する微生物の単離を試みた結果、本発明者等はシュードモナス属の細菌を単離するに至った。そして、当該細菌を培養し、実験例3のシェワネラ・オネイデンシスMR−1株に代えて試験を行ったところ、図6と同様のアンモニウムイオンの酸化データが得られた。
<実験例4:有機体窒素化合物を用いた硝化反応の検討>
第一の水に含まれる含窒素化合物として、アニリンを10mmol/lの濃度となるように添加した以外は実験例1と同一条件の試験を実施した。実験例4における第一の水の中のアニリン、硝酸イオン、亜硝酸イオンの濃度変化を図7に示す。
図7より、本発明の硝化反応槽においては、アンモニア態窒素と比較すると分解速度は遅いものの、細胞外電子伝達能を有する微生物の作用で難分解性の有機態窒素化合物であるアニリンを分解し、有機態窒素を硝酸イオンおよび亜硝酸イオンに酸化していることが分かる。すなわち、本発明の含窒素化合物含有水の処理方法を用いれば、前段に有機物分解処理用の設備を設けなくても有機態窒素の嫌気的酸化処理が可能であることが確認された。
なお、実験例2では硝化反応槽でアンモニウムイオンの酸化反応が起こっていること、および、実験例3、実験例4では脱窒反応槽で硝酸イオンの還元反応が起こっていることは別途確認済である。
11、21 硝化反応槽
11a、12a、24 電極
11b、12b、21b、22b 連結部
12、22 脱窒反応槽
13、23 プロトンが透過可能な仕切り
14 導線
15 電流計

Claims (6)

  1. 有機態窒素化合物を含む含窒素化合物と、細胞外電子伝達能を有する微生物(ただし、フェアモックス菌を除く)と、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンと、を含有する第一の水が内部に収納され、かつ、前記第一の水と接触する第一の電極を有する、前記有機態窒素化合物中の窒素を曝気処理なしで硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに酸化処理する硝化反応槽と、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンと、脱窒菌と、を含有する第二の水が内部に収納され、かつ、前記第二の水と接触する第二の電極を有する脱窒反応槽と、を備え、
    前記硝化反応槽と前記脱窒反応槽とがプロトンが透過可能な仕切りを介して接続されており、かつ、
    前記第一の電極と前記第二の電極とが電気的に接続されていることを特徴とする有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置。
  2. 前記第二の水が、さらに炭素源を含有することを特徴とする請求項1に記載の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置。
  3. 前記脱窒菌が独立栄養性の脱窒菌であり、かつ、前記炭素源が炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンであることを特徴とする請求項2に記載の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置。
  4. 前記微生物がジオバクター属、シェワネラ属、シュードモナス属、あるいは、ロドフェラックス属の細菌であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置。
  5. 前記微生物がシェワネラ属の細菌であることを特徴とする請求項4に記載の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理装置を用いて、前記硝化反応槽で含窒素化合物中の窒素を硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに酸化処理するとともに、該硝化反応槽で処理後の、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン含有水を前記脱窒反応槽に導入し、該脱窒反応槽で前記硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを窒素ガスに還元処理することにより、硝化反応と脱窒反応とを並行して行うことを特徴とする有機態窒素化合物を含む含窒素化合物含有水の処理方法。
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