JP6434889B2 - 蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法、及び蓄熱槽 - Google Patents

蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法、及び蓄熱槽 Download PDF

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Description

この発明は、充填容器に封入された蓄熱材を、熱媒体と共に収容した蓄熱槽内で、蓄熱材が充填容器から熱媒体に漏洩した場合に備えた蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法、及び熱媒体への蓄熱材の漏洩が定量的に検知可能な蓄熱槽に関する。
蓄熱材は、本来廃棄される排熱等の熱を蓄熱し、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことができるため、エネルギを無駄なく有効に活用することができる。このような蓄熱材は、充填容器内に封入された状態で、水等の熱媒体と共に蓄熱槽内に収容され、熱が、充填容器を介して熱媒体との間で移動することにより、蓄熱材への蓄熱と、蓄熱材からの放熱が行われる。その蓄熱槽の一例である蓄熱装置が、特許文献1に開示されている。
特許文献1は、熱媒体の供給口とその排水口とを有する容器と、熱媒体を加熱する加熱手段と、容器下部に有する仕切板とを備え、容器内に、潜熱蓄熱材を封入した筒状カプセルを複数配置すると共に、容器下部の供給口から熱媒体を充満する蓄熱装置である。この蓄熱装置では蓄熱時に、供給口から注入された低温の熱媒体が、加熱手段により加熱されて自然対流で流れ、仕切板により流れを乱流に変化させて、隣接する筒状カプセル同士の隙間を通じて、容器上部の排水口へと流れる。これにより、熱が、熱媒体から筒状カプセルを介して潜熱蓄熱材に伝わり、温められた潜熱蓄熱材は、固相から液相への相変化に伴う潜熱を蓄熱する。一方、放熱時には、潜熱蓄熱材への伝熱を終えた熱媒体が、排水口から排水された後、供給口から新たに注入された低温の熱媒体が、隣接する筒状カプセル同士の隙間を通じて、容器上部の排水口へと流れる。これにより、低温の熱媒体が、蓄熱された状態にある液相状の潜熱蓄熱材から熱を奪うことで、高温の熱媒体となる。
このような潜熱蓄熱材が、封入した筒状カプセルから漏れ出てしまうと、熱媒体と混合して、熱媒体の水素イオン濃度が変化する。特許文献1の蓄熱装置には、pHセンサ等による蓄熱材漏れ検知手段が設けられ、潜熱蓄熱材が筒状カプセルから漏れた場合に、熱媒体における水素イオン濃度の変化が、蓄熱材漏れ検知手段によって検知することができるとされている。
特開平11−159884号公報
特許文献1のような蓄熱槽では、蓄熱材が万一、充填容器(筒状カプセル)から水等の熱媒体に漏洩したときには、熱媒体が、酸性または塩基性を呈してしまうことにより、金属腐食に伴って、蓄熱槽等の設備では、熱媒体の外部への漏洩や、機器の故障を招く虞がある。このような設備へのダメージを回避するため、蓄熱槽の出入口を迅速に遮断し、熱媒体の循環を停止する第1措置に続き、容器内の熱媒体に中和剤を添加する等の第2措置を取ることが、求められる。また、漏れ出した分の潜熱蓄熱材を蓄熱槽に補充する第3措置も必要になる。第1措置を行うには、漏洩した微量の蓄熱材でも、感度良く検知することが必須となる。また、第2措置や第3措置を行うには、熱媒体に混じる潜熱蓄熱材の濃度を定量的に把握することが必須となり、特に第2措置では、中和剤の添加量と濃度を決定する上で、熱媒体に混じった潜熱蓄熱材の濃度を、高精度かつ的確に把握することが、非常に重要になる。
しかしながら、特許文献1の技術は、漏洩した潜熱蓄熱材と混ざった熱媒体の水素イオン濃度を、単にpHセンサ等による蓄熱材漏れ検知手段で計測するだけであるため、潜熱蓄熱材の漏洩の有無についてのみの定性的な判断しかできず、熱媒体中の潜熱蓄熱材の濃度を定量的に把握できない。よって、pHセンサ等で熱媒体の水素イオン濃度を計測するだけでは、第2措置や第3措置を適切に取ることが全くできず、問題であった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、充填容器に封入された蓄熱材が熱媒体に僅かに漏洩した場合でも、熱媒体中に漏洩した分の蓄熱材を定量的に検知することができる蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法、及び熱媒体への蓄熱材の漏洩が定量的に検知可能な蓄熱槽を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法は、以下の構成を有する。
(1)状態変化または化学反応により、生じた熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う蓄熱材と、該蓄熱材を封入する充填容器と、該充填容器を介して、蓄熱材との間で熱を移動させるための熱媒体と、を有する蓄熱槽で、蓄熱材が充填容器から熱媒体に漏洩した場合に備えた蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、前記蓄熱材は、溶けたときの水溶液の液性が酸性、またはアルカリ性を呈する特性の材料であること、前記蓄熱材を溶解させた前記熱媒体を、第1評価基準用熱媒体とすると、前記第1評価基準用熱媒体の水素イオン指数を、前記蓄熱材の濃度を変化させながらpH計測機器で測定し、前記蓄熱材の濃度と、測定された水素イオン指数とがプロットされたグラフに基づいて、前記蓄熱材の濃度と前記水素イオン指数との相関関係を、演算処理による近似で導出した熱媒体状態判定尺度を、評価基準として予め作成し、取得しておくこと、前記蓄熱槽内に収容された前記熱媒体に対し、その水素イオン濃度を示す蓄熱槽内水素イオン指数をpH計測機器で測定し、測定された前記熱媒体の前記蓄熱槽内水素イオン指数と前記熱媒体状態判定尺度とに基づいて、前記熱媒体に含む前記蓄熱材の濃度を知得すること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、前記第1評価基準用熱媒体の水素イオン濃度を、[H]とし、前記第1評価基準用熱媒体の水素イオン指数を、pHで示すと、
pH=−Log10[H] …式(1)
前記第1評価基準用熱媒体に含有する前記蓄熱材の濃度を[A]([A]>0)とし、αとβ(β≠0)を定数とすると、
前記蓄熱材の濃度[A]は、前記水素イオン濃度[H]の変化に対応する関数で示され、前記式(1)より、前記熱媒体状態判定尺度は、対数による近似で、次の式(2)に示された実験式であること、
pH=−β×Log[A]−α (但し、Logは自然対数) …式(2)
前記熱媒体中に漏洩した前記蓄熱材の濃度は、前記式(2)と、前記熱媒体の前記蓄熱槽内水素イオン指数の測定値とにより、算出されること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、前記蓄熱槽内に収容された前記熱媒体の前記蓄熱槽内水素イオン指数を、pH計測機器で継続的に測定し、測定した前記蓄熱槽内水素イオン指数の絶対値と、前記蓄熱槽内水素イオン指数の測定値の経時的な変化量との少なくとも一方を把握すること、前記絶対値と前記変化量とに対し、許容範囲内の大きさか否かを判断するのに用いる許容値を、閾値として設定すること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、前記蓄熱材が前記熱媒体に混ざっていない第2評価基準用熱媒体に、pH指示薬を滴下して生成した基準用サンプルと、前記蓄熱槽内から取り出した前記熱媒体に、前記基準用サンプルに用いた同じ前記pH指示薬を滴下して生成した比較用サンプルと、を用意し、前記基準用サンプルと前記比較用サンプルとの相対的な色調変化に基づいて、漏洩した前記蓄熱材が前記熱媒体に含まれているか否かを、前記pH指示薬の変色域に対応させて判別すること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、前記蓄熱材は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材であること、を特徴とする。
(6)(5)に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、前記潜熱蓄熱材は、ミョウバン水和物であること、を特徴とする。
(7)(6)に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、前記ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)であること、を特徴とする。
また、上記目的を達成するために、本発明に係る蓄熱槽は、以下の構成を有する。
(8)状態変化または化学反応により、生じた熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う蓄熱材と、該蓄熱材を封入する充填容器と、該充填容器を介して、蓄熱材との間で熱を移動させるための熱媒体と、を有する蓄熱槽において、水素イオン濃度を測定するpH計測機器と、前記蓄熱材の漏洩発生時に、前記熱媒体に対し、漏洩分の前記蓄熱材を、(1)乃至(7)のいずれか1つに記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法に基づいて検知し、検知した前記蓄熱材の漏洩分を定量的に算出する制御手段と、を備えること、を特徴とする。
(9)(8)に記載する蓄熱槽において、熱の供給側と熱の提供側で、当該蓄熱槽と連通する前記熱媒体の流路に、当該蓄熱槽との間で前記熱媒体の流通を制御する主開閉弁を備えていること、を特徴とする。
(10)(8)または(9)に記載する蓄熱槽において、当該蓄熱槽内に収容された前記熱媒体を外部に排出可能な副開閉弁を備えていること、を特徴とする。
(11)(8)乃至(10)のいずれか1つに記載する蓄熱槽において、当該蓄熱槽内に、前記熱媒体の温度を測定する温度計測機器を備えていること、を特徴とする。
上記構成を有する本発明の蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法、及び蓄熱槽の作用・効果について説明する。本発明の蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法では、
(1)状態変化または化学反応により、生じた熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う蓄熱材と、該蓄熱材を封入する充填容器と、該充填容器を介して、蓄熱材との間で熱を移動させるための熱媒体と、を有する蓄熱槽で、蓄熱材が充填容器から熱媒体に漏洩した場合に備えた蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、蓄熱材は、溶けたときの水溶液の液性が酸性、またはアルカリ性を呈する特性の材料であること、蓄熱材を溶解させた熱媒体を、第1評価基準用熱媒体とすると、第1評価基準用熱媒体の水素イオン指数を、蓄熱材の濃度を変化させながらpH計測機器で測定し、蓄熱材の濃度と、測定された水素イオン指数とがプロットされたグラフに基づいて、蓄熱材の濃度と水素イオン指数との相関関係を、演算処理による近似で導出した熱媒体状態判定尺度を、評価基準として予め作成し、取得しておくこと、蓄熱槽内に収容された熱媒体に対し、その水素イオン濃度を示す蓄熱槽内水素イオン指数をpH計測機器で測定し、測定された熱媒体の蓄熱槽内水素イオン指数と熱媒体状態判定尺度とに基づいて、熱媒体に含む蓄熱材の濃度を知得すること、を特徴とする。この特徴により、蓄熱槽内において蓄熱材が万一、充填容器から熱媒体に漏洩した場合や、その可能性がある場合でも、熱媒体に混じった漏洩分の蓄熱材の濃度を、定量的かつ感度良く検知できるため、蓄熱槽内で、熱媒体への蓄熱材の漏洩が的確に把握できる。
すなわち、熱媒体状態判定尺度が、例えば、(2)に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法のように、蓄熱材の濃度を変数に含む式(2)「pH=−β×Log[A]−α (但し、Logは自然対数)」であり、この式(2)の左辺に、測定された熱媒体の水素イオン指数を代入して、熱媒体に占める漏洩分の蓄熱材の濃度を算出するもの等であれば、漏洩分の蓄熱材の量を、簡便かつ定量的に求めることができる。
従って、本発明に係る蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法によれば、充填容器に封入された蓄熱材が熱媒体に僅かに漏洩した場合でも、熱媒体中に漏洩した分の蓄熱材を、定量的かつ感度良く検知することができる、という優れた効果を奏する。
また、(3)に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、蓄熱槽内に収容された熱媒体の蓄熱槽内水素イオン指数を、pH計測機器で継続的に測定し、測定した蓄熱槽内水素イオン指数の絶対値と、蓄熱槽内水素イオン指数の測定値の経時的な変化量との少なくとも一方を把握すること、絶対値と変化量とに対し、許容範囲内の大きさか否かを判断するのに用いる許容値を、閾値として設定すること、を特徴とする。この特徴により、スポット的に測定したpHの絶対値をそのまま利用した蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法と共に、継続的に測定したpHの絶対値の変動を利用した蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法を併用することで、より信頼性の高い蓄熱材の漏洩検知が可能となる。
また、(4)に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、蓄熱材が熱媒体に混ざっていない第2評価基準用熱媒体に、pH指示薬を滴下して生成した基準用サンプルと、蓄熱槽内から取り出した熱媒体に、基準用サンプルに用いた同じpH指示薬を滴下して生成した比較用サンプルと、を用意し、基準用サンプルと比較用サンプルとの相対的な色調変化に基づいて、漏洩した蓄熱材が熱媒体に含まれているか否かを、pH指示薬の変色域に対応させて判別すること、を特徴とする。この特徴により、pH計測機器が万が一、何らかの理由で正常に作動しない事態となっても、蓄熱槽内で、充填容器に封入されている蓄熱材が熱媒体に漏洩しているかどうかを、サンプリングした熱媒体を用いて、pH指示薬で確認することができる。
また、(5)に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、蓄熱材は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材であること、を特徴とするので、様々な種類の潜熱蓄熱材の中でも、潜熱蓄熱材の主成分が、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)のようなミョウバン水和物であれば、ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材は、相変化に伴う潜熱が比較的大きい物性を有する。そのため、このように比較的大きな潜熱の出入りを利用した潜熱蓄熱材では、大容量の熱を蓄熱し、それを放熱する蓄放熱性能を具備できている点で、優れている。加えて、潜熱蓄熱材の主成分が、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)のようなミョウバン水和物であれば、pH計測機器により、熱媒体に混じった漏洩分の蓄熱材の濃度が、より低い濃度まで幅広い濃度帯域で高精度に検知可能になる。
また、本発明の蓄熱槽では、状態変化または化学反応により、生じた熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う蓄熱材と、該蓄熱材を封入する充填容器と、該充填容器を介して、蓄熱材との間で熱を移動させるための熱媒体と、を有する蓄熱槽において、水素イオン濃度を測定するpH計測機器と、蓄熱材の漏洩発生時に、熱媒体に対し、漏洩分の蓄熱材を、(1)乃至(7)のいずれか1つに記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法に基づいて検知し、検知した蓄熱材の漏洩分を定量的に算出する制御手段と、を備えること、を特徴とする。この特徴により、本発明の蓄熱槽内において、蓄熱材が万一、充填容器から熱媒体に漏洩した場合や、その可能性がある場合でも、熱媒体に混じった漏洩分の蓄熱材の濃度が定量的かつ感度良く検知できるため、蓄熱槽内で、熱媒体への蓄熱材の漏洩が、的確に把握できる。また、制御手段が、例えば、pH計測機器で測定された水素イオン指数(pH値)を、作業者に視認可能に表示するモニタや、実測されたpH値が異常な数値になっていることを報知する報知機器等と、電気的に接続されていれば、蓄熱槽内で蓄熱材が熱媒体に漏洩した場合には、作業者は、蓄熱槽内での蓄熱材の漏洩について、モニタや報知機器等により、知ることができる。
(9)に記載する蓄熱槽において、熱の供給側と熱の提供側で、当該蓄熱槽と連通する熱媒体の流路に、当該蓄熱槽との間で熱媒体の流通を制御する主開閉弁を備えていること、を特徴とする。この特徴により、蓄熱槽内で蓄熱材が熱媒体に漏洩した場合には、全ての主開閉弁を閉弁することにより、漏洩状態熱媒体が、熱の供給側の流路で連通する熱供給源と、熱の提供側の流路で連通する熱提供先とに流れるのを阻止することができ、蓄熱材が、熱供給源と熱提供先に拡散するのを防止することができる。そのため、蓄熱システムへのダメージを適切に回避することができる。
(10)に記載する蓄熱槽において、当該蓄熱槽内に収容された熱媒体を外部に排出可能な副開閉弁を備えていること、を特徴とする。この特徴により、pH指示薬による蓄熱材漏洩検知方法で、蓄熱材が熱媒体に漏洩しているかを検知するとき、蓄熱槽内の熱媒体のサンプルを、副開閉弁から簡単に採取することができる。勿論、蓄熱槽内の熱媒体を定期的に入れ替えするときや、漏洩分の蓄熱材が高濃度で熱媒体に混入し、この状態の熱媒体を蓄熱槽から排水するときに、このような熱媒体を副開閉弁から排水することができる。
(11)に記載する蓄熱槽において、当該蓄熱槽内に、熱媒体の温度を測定する温度計測機器を備えていること、を特徴とする。この特徴により、蓄熱槽内での熱媒体が、蓄熱している状況下にあるか、あるいは放熱している状況下にあるかを、判別できる。
実施形態に係る蓄熱槽を含む蓄熱システム全体を示す模式図である。 図1に示す蓄熱槽に構成された制御ユニットを示すブロック図である。 本実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分について、模式的に示す図である。 図3に示す潜熱蓄熱材組成物を封入する充填容器を例示した半断面図である。 図4に示す充填容器の圧力調整弁を示す断面図であり、圧力調整弁の作用を説明する図である。 図1に示す蓄熱槽で熱媒体に浸された充填容器内の潜熱蓄熱材組成物を示す模式図であり、(a)は、潜熱蓄熱材組成物が漏れなく充填容器に封入されている状態を、(b)は、潜熱蓄熱材組成物が充填容器から熱媒体に漏洩している状態を、それぞれ示す。 実施形態に係る蓄熱槽内の潜熱蓄熱材の漏洩検知方法で、式(3)による熱媒体状態判定尺度をグラフ化した図である。 実施形態に係る蓄熱槽内の潜熱蓄熱材の漏洩検知方法により、水素イオン指数の測定時間と、測定値及びその変化量との関係について、模式的に示したグラフである。 実施形態に係る蓄熱槽内の潜熱蓄熱材の漏洩検知方法で、基準用サンプルと比較用サンプルとを対比した結果を示す説明図である。
(実施形態)
以下、本発明に係る蓄熱槽、及び蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る蓄熱槽は、本実施形態では、蓄熱材の相変化による潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材とし、この潜熱蓄熱材を封入する充填容器と、この充填容器を介して潜熱蓄熱材との間で熱を移動させるための熱媒体と、を有した潜熱蓄熱槽である。充填容器は、潜熱蓄熱槽内に複数収容されている。図1は、実施形態に係る蓄熱槽を模式的に示す図である。
はじめに、蓄熱システム全体の構成について、簡単に説明する。図1に示すように、蓄熱槽1は、その入力側にある熱供給源60と、出力側にある熱提供先70との間に配置された蓄熱システムの中核である。蓄熱槽1は、本実施形態では、水等である熱媒体2の流路4(熱媒体の供給側流路、熱媒体の提供側流路)を4つと、4つの電磁弁5(第1電磁弁5A、第2電磁弁5B、第3電磁弁5C、第4電磁弁5D)(主開閉弁)と、1つの排出弁6(副開閉弁)と、制御ユニット7(制御手段)と、3つのpH計8(pH計測機器)と、5つの温度計9(温度計測機器)、モニタ10と、報知機器11等とを有している。
図2は、制御ユニットを示すブロック図である。制御ユニット7は、大別して制御部7Aと演算部7Bとからなり、中央演算ユニット(CPU)、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)等からなる公知のマイクロコンピュータ(図示省略)を備える。ROMには、電磁弁5を自動制御で開閉するのに必要なプログラムや、後述するように、熱媒体状態判定尺度(例えば、式(2),(3))の作成、取得した熱媒体状態判定尺度を記憶するプログラム、測定されたPHの絶対値及びその変化量に対し許容値Kに基づいて、許容範囲内の大きさか否かを判断するのに用いるプログラム、その他のプログラムが予め格納されている。
そして、このようなプログラムを用いてCPUにロードすることで、例えば、電磁弁5の自動開閉や、pH計8や温度計9で測定された各実測値のモニタ10への表示、pH計8や温度計9で測定された実測値が異常な数値である場合に行う報知機器11の作動等の所定の動作が、制御部7Aを通じて実行可能になっている。また、RAMには、pH計8で測定された水素イオン指数の数値等が、入力可能になっており、記憶される。演算部7Bは、例えば、後述する式(3)中の左辺に、測定された水素イオン指数の測定値を代入して演算し、漏洩した漏洩分蓄熱材41Aの濃度を演算すること等を行う。
熱供給源60と蓄熱槽1とは、2つの流路4(供給側流入路4A、供給側流出路4B)で連通され、蓄熱槽1と熱提供先70とは、2つの流路4(提供側流出路4C、提供側流入路4D)で連通されている。熱供給源60は、例えば、病院やビルの発電に用いられるコジェネレーション(CogenerationまたはCombined Heat and Power)で、ガスエンジンシステムから生じる排熱等、熱を発生する対象物であり、供給側流入路4Aを通じて蓄熱槽1に供給する熱媒体2を、本実施形態では、約90℃に加熱する。一方、蓄熱槽1内で低温となった熱媒体2は、供給側流出路4Bを通じてこの熱供給源60に還流され、再び熱供給源60で加熱される。
熱提供先70は、例えば、給湯設備や、冷暖房を行う空気調和設備等で、これらの設備の熱源(エネルギ源)を得るのに必要な熱交換器等を対象としており、蓄熱槽1から提供側流出路4Cを通じて、80〜90℃の温度帯域にある熱媒体2の提供を受ける。一方、熱提供先70で低温になった熱媒体2は、提供側流入路4Dを通じて蓄熱槽1に還流される。
4つの電磁弁5はいずれも、蓄熱槽1との間で熱媒体2の流通を制御する弁で、4つの流路4にそれぞれ配管され、制御ユニット7と電気的に接続されている。具体的には、第1電磁弁5A(5)は、供給側流入路4Aの管路上に配管され、熱供給源60から蓄熱槽1に向けた熱媒体2の流れを制御する。第2電磁弁5B(5)は、供給側流出路4Bの管路上に配管され、蓄熱槽1から熱供給源60に向けた熱媒体2の流れを制御する。第3電磁弁5C(5)は、提供側流出路4Cの管路上に配管され、蓄熱槽1から熱提供先70に向けた熱媒体2の流れを制御する。第4電磁弁5D(5)は、提供側流入路4Dの管路上に配管され、熱提供先70から蓄熱槽1に向けた熱媒体2の流れを制御する。
排出弁6は、蓄熱槽1内とその外部との間で熱媒体2の流通を制御する弁であり、蓄熱槽1底部で、蓄熱槽1と連通する流路4Eに配管されている。この排出弁6は、蓄熱槽1内に充満された熱媒体2(後述する漏洩状態熱媒体2Aになっている場合もあり、以下、双方をまとめて「熱媒体2等」と総称することがある。)の中から、サンプリング用の熱媒体2等を取り出す場合(図1中、下向き矢印)や、蓄熱槽1内の熱媒体2等を槽外に排出する場合(図1中、左向き矢印)に開弁し、それ以外には、閉弁状態にある。
pH計8は、熱媒体2等に接触可能な検出器(プローブ)と、このプローブで検出された信号に基づく処理で、熱媒体2等中の水素イオン指数を検知する計器本体部とからなる周知のpH計測機器であり、制御ユニット7と電気的に接続されている。pH計8は、小数点以下の有効数字2桁でpH値を表示できることが好ましい。本実施形態では、pH計8は、供給側流出路4Bの配管上、または蓄熱槽1内で供給側流出路4Bと近接する位置に1つと、提供側流出路4Cの配管上、または蓄熱槽1内で提供側流出路4Cと近接する位置に1つと、蓄熱槽1底部に1つと、合わせて3つ設けられている。
温度計9は、熱媒体2等に接触可能な検出器(プローブ)と、このプローブで検出された信号に基づく処理で熱媒体2等の温度を検知する計器本体部とからなる周知の温度計測機器であり、制御ユニット7と電気的に接続されている。本実施形態では、温度計9は、図1に示すように、供給側流入路4Aの配管上、または蓄熱槽1内でこの供給側流入路4Aと近接する位置に1つと、供給側流出路4Bの配管上、または蓄熱槽1内でこの供給側流出路4Bと近接する位置に1つと、提供側流出路4Cの配管上、または蓄熱槽1内でこの提供側流出路4Cと近接する位置に1つと、提供側流入路4Dの配管上、または蓄熱槽1内でこの提供側流入路4Dと近接する位置に1つと、蓄熱槽1底部に1つと、合わせて5つ設けられている。
モニタ10は、制御ユニット7と電気的に接続されており、pH計8で測定された水素イオン指数(pH値)や、温度計9で測定された熱媒体2等の温度の実測値を、作業者に視認可能に表示する。報知機器11は、後に詳述するが、pH計8による実測値や、温度計9による実測値に対し、許容範囲外の異常値が生じた場合において、異常な実測値になっていることを、例えば、ブザー音や表示灯の点灯等によって、モニタ10から離れた場所にいる作業者に知らせる。
次に、蓄熱材について、説明する。蓄熱槽1に使用される蓄熱材は、本実施形態では、溶けたときの水溶液の液性が酸性を呈する特性の材料からなり、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材41である。潜熱蓄熱材41は、熱供給源60から供給側流入路4Aを通じて供給される約90℃の熱媒体2により蓄熱し、熱提供先70から提供側流入路4Dを通じて還流された低温の熱媒体2に放熱する。この潜熱蓄熱材41は、本実施形態では、アンモニウムミョウバン12水和物(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水:AlNH(SO・12HO)とするミョウバン水和物の一種である。アンモニウムミョウバンは、融点93.5℃の物性で、常温では固体の物質である。そのため、アンモニウムミョウバンが、単体で融点未満の90℃程度に加熱されたとしても、アンモニウムミョウバンは、ほとんど溶融することなく、潜熱を蓄熱することもできない。
図3は、潜熱蓄熱材組成物の構成成分について、模式的に示す図である。図1及び図3に示すように、蓄熱槽1で行う蓄熱と放熱は、主成分である潜熱蓄熱材41によって行われるが、本実施形態では、充填容器20(図1参照)には、この潜熱蓄熱材41を含む潜熱蓄熱材組成物40が封入されている。
すなわち、潜熱蓄熱材組成物40は、潜熱蓄熱材41に、2種の添加剤42を配合してなる。添加剤42は、潜熱蓄熱材41の物性を調整する役割を担う。この添加剤42は、液相状態にある潜熱蓄熱材41の融液の粘度を高める増粘剤43と、潜熱蓄熱材41の融点を、必要に応じて任意の温度に調整する融点調整剤44である。増粘剤43は、糖アルコールに属する物質であり、融点調整剤44は、無水硫酸ナトリウム(NaSO)である。増粘剤43の液性と融点調整剤44の液性は、何れも中性である。
具体的に説明する。本実施形態では、増粘剤43は、マンニトール(C14)であり、当該潜熱蓄熱材組成物40全体の重量に占める配合比率として、マンニトール(C14)の配合比率は、20wt%以下の範囲内である。無水硫酸ナトリウムは、融点884℃の物性で、常温では固体の物質である。無水硫酸ナトリウム(NaSO)の配合比率は、10wt%以下の範囲内である。このような無水硫酸ナトリウムが、潜熱蓄熱材組成物40全体の重量に対し、例えば、5wt%の配合比率で、アンモニウムミョウバン(潜熱蓄熱材41)に添加されると、潜熱蓄熱材組成物40の融点は、約90℃になる。
なお、本実施形態では、潜熱蓄熱材41を、アンモニウムミョウバン(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水:AlNH(SO・12HO)とした。しかしながら、潜熱蓄熱材で、アンモニウムミョウバンに含まれる金属イオンは、アルミニウムイオン以外にも、例えば、クロムイオン、鉄イオン、コバルトイオン、マンガンイオン等、3価の金属イオンであっても良く、アンモニウムミョウバンは、このような3価の金属イオンを含む複硫酸塩となっていれば良い。また、潜熱蓄熱材41は、アンモニウムミョウバンに限らず、例えば、カリミョウバン、カリウムミョウバン等、ミョウバン水和物であれば、特に限定されるものではない。
また、本実施形態では、増粘剤43にマンニトールを挙げたが、増粘剤は、マンニトールのほか、例えば、エリトリトールや、加熱しても褐色化やキャラメル化を起こさず、酸に強い物性等を有する糖アルコールに属する物質であれば、特に限定されるものではない。
次に、充填容器20について、説明する。充填容器20は、例えば、芯材とするアルミ箔の両面に、フィルム状の樹脂をそれぞれ積層した複層構造で、袋状に成形されたアルミラミネート製袋等であり、内部に充填した潜熱蓄熱材組成物40を密閉可能に封入できる。また、このような充填容器20は、アルミ箔とフィルム状の樹脂を複層構造にして構成されているため、ある程度の耐圧強度を確保できると共に、柔軟性を有した容器となる上、加熱による融着で成形することもできるため、安価である。
また、充填容器20以外には、例えば、図4に示す充填容器でも良い。図4は、充填容器を例示した半断面図であり、図4に示す充填容器の圧力調整弁の作用を説明する断面図を、図5に示す。図4に示すように、充填容器20Aは、潜熱蓄熱材組成物40を収容するための内部空間23を形成する本体部21と、内部空間23とその外部とが連通する開口部22と、温度変化や構造変化に伴う潜熱蓄熱材組成物40の体積増減により、変動する内部空間23の圧力を制御する圧力調整弁30とを有している。圧力調整弁30は、本体部21の開口部22に設けられている。
図5に示すように、圧力調整弁30は、水等の液体LQ(熱媒体2)が当該充填容器20Aの外部から内部空間23に流入することを遮断すると共に、潜熱蓄熱材組成物40が内部空間23から外部に流出することを遮断する一方で、内部空間23にある気体GSが外部に流出するのを許容する弁体部31を有している。
具体的には、圧力調整弁30は、本体部21の開口部22を閉塞する弁体部31と、保持した弁体部31を本体部21に螺合または融着により固定するキャップ32とからなる。弁体部31は、内部空間23と当該充填容器20Aの外部との間で、熱媒体2等(図1参照)である水の流通を阻む防水性と、気体GSとして、空気と水蒸気だけを流通可能とする透湿性と、を兼ねた防水透湿素材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)製の防水透湿膜で形成されている。
本実施形態の蓄熱システムでは、熱媒体2は水であり、容量3.0mの熱媒体2と、数量32,800袋の充填容器20が、容積5.0mの大きさに形成された蓄熱槽1内に収容されている。潜熱蓄熱材組成物40は、1袋の充填容器20につき、100g封入されており、充填容器20全袋分の潜熱蓄熱材組成物40は、容積2.0mで、重量3.28tとなっている。封入する潜熱蓄熱材組成物40は、その全体の重量に対し、アンモニウムミョウバン12水和物(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水:AlNH(SO・12HO)を90wt%、無水硫酸ナトリウム(NaSO)を2wt%、マンニトール(C14)を8wt%で組成されている。
このような潜熱蓄熱材組成物40を封入した充填容器20,20A(以下、充填容器20Aを含め、単に「充填容器20」と総称する。)は複数、規則化された配置形態で収容される。その配置形態の一例として、蓄熱槽1では、図1に示すように、全ての充填容器20が、蓄熱槽1内に載置された棚3に、蓋部(充填容器20Aでは圧力調整弁30)を蓄熱槽1の側壁に向けて横向きに寝かせた姿勢で、複数列に亘り、複数段に積み重ねて配置され、熱媒体2に完全に浸漬した状態で収容されている。潜熱蓄熱材組成物40の潜熱蓄熱材41に蓄熱された熱が、充填容器20を通じて熱媒体2に伝熱されると、温められた熱媒体2が、自然対流で移動するが、蓄熱槽1内に棚3が設けてあると、熱媒体2の流れが、棚3により乱流になる。そのため、蓄熱槽1内では、例えば、熱媒体2の温度分布や、漏洩分の潜熱蓄熱材組成物40の潜熱蓄熱材41等が熱媒体2に混ざった漏洩状態熱媒体2Aにおいて、含有する潜熱蓄熱材41等の濃度分布等、熱媒体2等の状態が、より均一化し易くなる。
なお、潜熱蓄熱材組成物40を封入した充填容器20を蓄熱槽1内に配置する形態は、本実施形態に限定されるものではなく、蓄熱槽内での充填容器の配置形態、蓄熱槽内の棚の有無や、熱媒体の液面位置は、適宜変更可能である。
次に、蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法について、説明する。本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法は、前述した蓄熱システムの蓄熱槽1内において、潜熱蓄熱材組成物40が充填容器20から熱媒体2に漏洩した場合に備え、蓄熱システム稼働時に潜熱蓄熱材組成物40の漏洩状況を常時、自動で監視する場合に用いられるほか、例えば、日常点検や定期点検等、蓄熱槽1の設備管理を行う際にも用いられる。図6は、図1に示す蓄熱槽で熱媒体に浸された充填容器内の潜熱蓄熱材組成物を示す模式図であり、(a)は、潜熱蓄熱材組成物が漏れなく充填容器に封入されている状態を、(b)は、潜熱蓄熱材組成物が充填容器から熱媒体に漏洩した状態を、それぞれ示す。
前述したように、潜熱蓄熱材組成物40は、充填容器20に密閉して封入されており、潜熱蓄熱材組成物40を封入した充填容器20は通常、図6(a)に示すように、蓄熱槽1内に充満された熱媒体2に浸漬されている。しかしながら、何らかの理由で、充填容器20が破損し、封入されていた潜熱蓄熱材組成物40が、熱媒体2に流出してしまうことも考えられる。図6(b)に示すように、漏れ出した潜熱蓄熱材組成物40が、水等の熱媒体2中に混ざると、蓄熱槽1内の熱媒体2は、漏洩した潜熱蓄熱材組成物40の成分と水等とが溶解した漏洩状態熱媒体2Aに変化する。
本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法は、蓄熱槽1内において、漏洩状態熱媒体2Aに含まれる潜熱蓄熱材組成物40のうち、潜熱蓄熱材41の濃度を検知する。潜熱蓄熱材組成物40には、潜熱蓄熱材41のほか、増粘剤43と融点調整剤44による2種の添加剤42が配合されているが、2種の添加剤42はいずれも中性であり、添加剤42に起因した金属腐食は生じない。一方、アンモニウムミョウバン12水和物である潜熱蓄熱材41は、固相状態でアルカリ性を呈し、液相状態で酸性を呈する。そのため、潜熱蓄熱材41に起因した金属腐食が、蓄熱槽1、熱供給源60、及び熱提供先70に生じて、熱媒体2等の外部への漏洩や、電磁弁5やpH計8等の機器の故障を招く虞がある。
[1.pH計による潜熱蓄熱材の漏洩検知方法]
本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法は、熱媒体状態判定尺度を、評価基準として予め作成し、取得しておく。この熱媒体状態判定尺度は、図6に示すように、蓄熱槽1以外において、第1評価基準用熱媒体2Aの水素イオン指数を、潜熱蓄熱材41の濃度を変化させながら、図示しないpH計で測定し、潜熱蓄熱材41の濃度と、測定された水素イオン指数とがプロットされたグラフに基づき、潜熱蓄熱材41の濃度と水素イオン指数との相関関係を、対数による近似で導出した尺度(図7参照)である。第1評価基準用熱媒体2Aは、潜熱蓄熱材41を、濃度を変化させながら溶解させて任意の濃度に調整した熱媒体である。次に、蓄熱槽1内に収容された熱媒体2または漏洩状態熱媒体2Aに対し、その水素イオン濃度を、蓄熱槽内水素イオン指数としてpH計8で測定し、測定された水素イオン指数の絶対値(pH値)と上記熱媒体状態判定尺度とに基づいて、漏洩状態熱媒体2Aに含む漏洩分蓄熱材41Aの濃度を知得する。
[1−1.スポット的に測定したpHの絶対値をそのまま利用した潜熱蓄熱材の漏洩検知方法]
ここで、熱媒体状態判定尺度を規定するに当たり、以下の検証実験を行った。検証実験は、漏洩した潜熱蓄熱材41が熱媒体2に混入した場合を想定し、第1評価基準用熱媒体2A(漏洩状態熱媒体2A)中に占める潜熱蓄熱材41の濃度変化と、pH計によるこの漏洩状態熱媒体2Aの水素イオン指数との相関関係を把握するため、蓄熱槽1以外で前もって行った試験である。この検証実験は、pH計の感度を検証するための試験でもある。
<実験方法>
検証実験では、水道水(熱媒体2)100mlをビーカーに採取し、評価基準用としてのアンモニウムミョウバン12水和物(潜熱蓄熱材41)をビーカー内の水道水に加えて、水溶液(漏洩状態熱媒体2A)の状態を調整した。具体的には、添加する潜熱蓄熱材41の量を徐々に増やしながら、潜熱蓄熱材41の添加量に応じて、その都度、漏洩状態熱媒体2Aの水素イオン指数をpH計で測定した。
<熱媒体状態判定尺度の規定>
次に、潜熱蓄熱材41の濃度と、第1評価基準用熱媒体2Aの水素イオン指数の測定値とに基づいて、グラフ横軸を潜熱蓄熱材41の濃度、グラフ縦軸を第1評価基準用熱媒体2Aの水素イオン指数の測定値としたプロットを作成し、対数近似によって両者の相関関係を表す関係式を導き出した。その関係式が、後述する式(2)のような熱媒体状態判定尺度である。
すなわち、第1評価基準用熱媒体2Aの水素イオン濃度を、[H]とし、第1評価基準用熱媒体2Aの水素イオン指数を、pHで示すと、
pH=−Log10[H] …式(1)
第1評価基準用熱媒体2Aに含有する潜熱蓄熱材41の濃度を[A]([A]>0)とし、αとβ(β≠0)を定数とすると、
潜熱蓄熱材41の濃度[A]は、水素イオン濃度[H]の変化に対応する関数で示され、式(1)より、潜熱蓄熱材41の濃度と水素イオン指数の関係を、対数による近似を行うことにより次の式(2)を得た。熱媒体状態判定尺度は、潜熱蓄熱材41の濃度を変数に含むこの式(2)により、演算処理されるものである。
pH=−β×Log[A]−α (但し、Logは自然対数) …式(2)
この式(2)では、αとβ(β≠0)は何れも定数である。対数近似では、潜熱蓄熱材41の濃度と水素イオン指数との実測値のプロットに対し、最小二乗法によるフィッティングを行うことにより、定数の値をそれぞれ決定した。漏洩状態熱媒体2Aに含有する潜熱蓄熱材41の濃度は、式(2)の左辺に、漏洩状態熱媒体2Aの水素イオン指数の実測値を代入して算出される。なお、式(2)は、第1評価基準用熱媒体2A中における潜熱蓄熱材41の濃度変化と水素イオン指数の変化との関係について、本出願人により、これまで行ってきた数多くの実験を通じて得た実験式である。かくして、熱媒体2中に漏洩した漏洩分蓄熱材41Aの濃度は、式(2)と、熱媒体2の蓄熱槽1内の水素イオン指数の測定値とにより、算出される。
具体的には、出願人は、添加した潜熱蓄熱材41の濃度を9点とり、これらの濃度毎に計測したpH値(水素イオン指数)を取得した。そして、グラフ横軸を潜熱蓄熱材41の濃度、グラフ縦軸を第1評価基準用熱媒体2Aの水素イオン指数としたプロットを作成し、対数近似(最小二乗法による式(2)のフィッティング)を行うことで、次の式(3)を取得した。
y=−0.263×Log[A]+3.2699 …式(3)
(α=−3.2699、β=0.263、R=0.9865)
図7は、式(3)による熱媒体状態判定尺度をグラフ化した図である。
検証実験では、図7に示すように、水道水だけのpH値は6.6であった。これに対し、添加した潜熱蓄熱材41(アンモニウムミョウバン)の濃度(小数点以下の有効数字3桁)が、0.008wt%、0.014wt%、0.032wt%、0.050wt%、0.083wt%であるとき、第1評価基準用熱媒体2AのpH値(小数点以下の有効数字2桁)は、先の濃度の低い順に、4.63、4.40、4.12、4.00、3.87であった。
<式(3)の考察>
図7に示すように、潜熱蓄熱材41が混じっていない水道水では、pH値は6.6であり、たとえ僅かな量でも、潜熱蓄熱材41が水道水に混入すると、pH値は、一気に1.5以上低い値になる。しかも、式(3)によれば、第1評価基準用熱媒体2Aに混入している潜熱蓄熱材41の濃度が、0.001〜0.100wt%という比較的低い数値であっても、第1評価基準用熱媒体2AのpH値は、5.1〜4.5という幅広い範囲で、数値に差異を持つ。そのため、第1評価基準用熱媒体2Aに混入した潜熱蓄熱材41が、たとえ僅かな量であっても、混入した潜熱蓄熱材41の濃度を、高精度に検知することができる。
具体的には、前述した蓄熱システムでは、100gの潜熱蓄熱材組成物40を封入した充填容器20が、容積5.0mの蓄熱槽1内に32,800袋(重量3.28t)収容されている。この32,800袋のうち、2袋分の200gの潜熱蓄熱材組成物40が、容積3.0m(3t)もある熱媒体2中に混入した場合が、潜熱蓄熱材41の濃度0.008wt%に相当する。勿論、1袋分の100gの潜熱蓄熱材組成物40(潜熱蓄熱材41の濃度0.003wt%相当)だけが、熱媒体2中に混入した場合でも、式(3)に示す熱媒体状態判定尺度は、計測可能な範囲にある。従って、混入した潜熱蓄熱材41の濃度を高精度に検知できることが判る。
実際の蓄熱システムでは、蓄熱槽1内に充満された熱媒体2、あるいは漏洩状態熱媒体2A(熱媒体2で、結果的に潜熱蓄熱材組成物40の漏洩が生じていた場合)の水素イオン濃度をpH計8で測定する。漏洩した潜熱蓄熱材組成物40分の漏洩分蓄熱材41A(図6(b)参照)の濃度は、式(3)の左辺に、測定された漏洩状態熱媒体2Aの水素イオン濃度(pH値)を代入することにより、算出される。
このように、蓄熱槽1内に充満された漏洩状態熱媒体2A内の潜熱蓄熱材41の濃度を、pH計8により、スポット的な計測を瞬時に行い、定量的に把握することができる。しかしながら、pH計8が、蓄熱槽1に取り付けられたままになっていると、蓄熱槽1内の熱媒体2と潜熱蓄熱材41との間で、蓄熱または放熱を繰り返し行っているうちに、pH計8のプローブ(電極センサ等)に付着した異物や、プローブでの計測基準の狂い、プローブの経年劣化等に起因して、計測精度の低下を招く虞もある。計測精度の低下は、測定されたpH値に誤差をもたらすため、混入した潜熱蓄熱材41の濃度を高精度に検知する上で、このような偶然誤差要因を排除することは、計測上、非常に重要である。
[1−2.継続的に測定したpHの絶対値の変動を利用した潜熱蓄熱材の漏洩検知方法]
偶然誤差要因を排除する一つの手法として、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法では、蓄熱槽1内に収容された熱媒体2に対し、その水素イオン濃度を、pH計8で継続的に測定する。次に、測定時間と水素イオン指数の測定値との関係で、測定した水素イオン指数の絶対値と、水素イオン指数の測定値の経時的な変化量とを把握する。そして、これらの絶対値と変化量とに対し、許容範囲内の大きさか否かを判断するのに用いる許容値を、閾値として設定する。
具体的に説明する。図8は、水素イオン指数の測定時間と、測定値及びその変化量との関係について、模式的に示したグラフであり、横軸を測定時間、縦軸を水素イオン指数で示している。前述した蓄熱槽1内の熱媒体2に対し、その水素イオン指数の絶対値(pH値)を、pH計測機器8で継続的に測定し、測定時間毎のpH値の測定結果をグラフ上にプロットし、図8に示すように、測定時の時間毎の各pH値を線グラフ化して、水素イオン指数の測定値と、その測定値に対し、経時的な測定値変化量とを把握する。
蓄熱槽1内の熱媒体2のpH値を継続的に測定する時間は、例えば、1ヶ月間、3ヶ月間等、ある程度のスパンをおいて定めておく。そして、一定期間中におけるpH値の変化量を、測定時間で除した線分の傾きm1を求める。測定値変化量は、線分の傾きm1(m1は実数でm1≠0)で示される。この線分の傾きm1は、多少の微々たる変動を含みながら、測定期間中のプローブ劣化や異物付着などの誤差要因によって、正または負の値をとるものと推定できる。
測定値変化量が、計測開始時当初から大きく変動することなく、傾きm1の線分で推移すれば、pH計8は正常に機能しており、かつ、潜熱蓄熱材41の漏洩は発生していないものと考えられる。これにより、前述の誤差要因を含まないことを確認した上で、潜熱蓄熱材41の漏洩有無を判別することができ、誤差要因による漏洩の誤検知を防止することができる。
一方で、潜熱蓄熱材41が漏洩した場合、この漏洩発生時Tを境に、線分の傾きm1が大きく変化する。潜熱蓄熱材41は、液相状態で酸性を呈するため、時間T以降、線分の傾きm2(m2は実数でm2≠0)は、m1より小さくなる。なお、蓄熱材が、液相状態でアルカリ性を呈する物性であれば、漏洩発生時T以降、線分の傾きm2は、m1より大きくなると考えられる。
すなわち、潜熱蓄熱材41が漏洩した場合には、漏洩発生時T以降、水素イオン指数の急峻な変化によって、線分の傾きm1はm2に変化する。潜熱蓄熱材41により水素イオン指数に及ぼす影響は、前述の誤差要因と比較して圧倒的に大きいと考えられる。そこで、傾きm1とm2の間に許容値Kを設ける。これにより、前述の誤差要因による水素イオン指数の変動が、許容値Kに収まる程度なら、潜熱蓄熱材41が漏洩していないとして、検知することができ、許容値Kを上回る急峻な水素イオン指数の変動があれば、潜熱蓄熱材41が漏洩しているとして、検知することができる。
具体的には、許容値Kは、傾きm1に対し、例えば、−10%等とする閾値であり、このような閾値範囲に収まる程度の減少であれば、前述の誤差要因に起因した緩やかな水素イオン指数の変化であると判断する。その反対に、傾き傾きm2が、許容値Kから大きく外れてしまう程度に減少していたら、潜熱蓄熱材41が漏洩したものと判断する。潜熱蓄熱材41が漏洩している場合には、報知機器11が、pH計8による実測値に対し、許容範囲外の異常値になっていることを、作業者に知らせる。
[2.pH指示薬による潜熱蓄熱材の漏洩検知方法]
次に、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法では、pH指示薬を用いた評価試験方法もある。図9は、実施形態に係る蓄熱槽内の潜熱蓄熱材の漏洩検知方法で、基準用サンプルと比較用サンプルとを対比した結果を示す説明図である。なお、図9(a)に図示した粗いドット表示は黄色透明であることを意味し、図9(b)に図示した細かいドット表示は赤色透明であることを意味する。
pH指示薬を用いた評価試験方法では、潜熱蓄熱材41が混ざっていない評価基準用の第2評価基準用熱媒体(水道水であり、図6中に示す熱媒体2に相当)に、pH指示薬を滴下して生成した基準用サンプル51と、蓄熱槽1内から取り出した熱媒体2に、基準用サンプル51に用いた同じpH指示薬を滴下して生成した比較用サンプル52と、を用意する。そして、基準用サンプル51と比較用サンプル52との相対的な色調変化に基づいて、漏洩した漏洩分蓄熱材41A(潜熱蓄熱材41)が熱媒体2に含まれているか否かを、pH指示薬の変色域に対応して判別する。
<評価試験方法>
具体的に説明する。蓄熱槽1内で使用する潜熱蓄熱材組成物40に含む潜熱蓄熱材41は、液相状態で酸性を呈するため、用いるpH指示薬を、酸塩基指示薬の一種であるメチルレッドとしている。メチルレッドは、pH>6.2で黄色、pH<4.4で赤色を、変色域である4.4≦pH≦6.2ではオレンジ色を示し、酸塩基指示薬の中でも、酸性域において比較的幅広い変色域を有した特性である。
評価試験では、基準用サンプル51とするビーカーと、比較用サンプル52とするビーカーに、水道水(熱媒体2)100mlをそれぞれ採取した後、0.4w/v%のメチルレッド溶液をそれぞれ、双方の熱媒体2中に10滴滴下した。この時点では、基準用サンプル51の水溶液と比較用サンプル52の水溶液の水素イオン指数は、何れもpH6.6であり、図9(a)に示すように、黄色透明である。次に、比較用サンプル52の水溶液に、アンモニウムミョウバン12水和物(潜熱蓄熱材41)を少量ずつ添加しながら、比較用サンプル52の水溶液の色調を観察した。
<評価試験結果>
潜熱蓄熱材41を添加した比較用サンプル52の水溶液が、0.007wt%のアンモニウムミョウバン水溶液となったとき、すなわち漏洩状態熱媒体2Aに占める漏洩分蓄熱材41Aの濃度が0.007wt%となったとき、図9(b)に示すように、水溶液の色調が赤色透明に変化した。換言すれば、濃度0.007wt%の漏洩分蓄熱材41Aを含有する漏洩状態熱媒体2Aの水素イオン指数は、概ねpH4.4であると推察できる。なお、0.007wt%のアンモニウムミョウバン水溶液は、前述したように、蓄熱槽1内に収容した32,800袋の充填容器20のうち、2袋分の200gの潜熱蓄熱材組成物40が熱媒体2中に漏洩した場合で、漏洩状態熱媒体2Aに占める潜熱蓄熱材41の濃度0.008wt%より、低い濃度に相当する水溶液である。
<評価試験の考察>
熱媒体2に漏洩した潜熱蓄熱材41(漏洩分蓄熱材41A)が、たとえ濃度0.007wt%という低濃度で、漏洩状態熱媒体2Aに混入していても、基準用サンプル51と比較用サンプル52とを用いて、各水溶液の色調変化を相対的に比較するだけで、漏洩状態熱媒体2Aに漏洩した微量な漏洩分蓄熱材41Aを検知することができる。
また、前述したように、式(3)による熱媒体状態判定尺度を用いて、漏洩分蓄熱材41A(潜熱蓄熱材41)の濃度を把握する手法では、潜熱蓄熱材41が濃度0.008wt%であるとき、漏洩状態熱媒体2AのpH値は4.63であった。一方、本評価試験では、アンモニウムミョウバン(潜熱蓄熱材41)の濃度が0.007wt%であるとき、漏洩状態熱媒体2AのpH値は4.4近傍と推察される。双方の潜熱蓄熱材41の濃度について、0.001wt%の差異があり、そのまま単純に比較することはできないものの、式(3)による熱媒体状態判定尺度を用いた蓄熱材漏洩検知方法は、本評価試験を通じた検証で、0.4w/v%のメチルレッド溶液の滴下量と、潜熱蓄熱材41の混入量との関係から導き出して検討しても、信頼性を備え、有意性のある手法であると考えられる。
次に、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法、及び蓄熱槽1の作用・効果について説明する。蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法では、蓄熱材の相変化による潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材41と、該潜熱蓄熱材41を封入する充填容器20と、該充填容器20を介して、潜熱蓄熱材41との間で熱を移動させるための熱媒体2と、を有する蓄熱槽1で、潜熱蓄熱材41が充填容器20から熱媒体2に漏洩した場合に備えた潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法において、潜熱蓄熱材41は、溶けたときの水溶液の液性が酸性を呈する特性の材料であること、蓄熱槽1以外において、潜熱蓄熱材41を溶解させた熱媒体2を、第1評価基準用熱媒体2Aとすると、第1評価基準用熱媒体2Aの水素イオン指数を、潜熱蓄熱材41の濃度を変化させながら、図示しないpH計で測定し、潜熱蓄熱材41の濃度と、測定された水素イオン指数とがプロットされたグラフに基づいて、潜熱蓄熱材41の濃度と水素イオン指数との相関関係を、対数による近似で導出した熱媒体状態判定尺度を、評価基準として予め作成し、取得しておくこと、蓄熱槽1内に収容された熱媒体2に対し、その水素イオン濃度を示す蓄熱槽内水素イオン指数をpH計8で測定し、測定された熱媒体2の蓄熱槽内水素イオン指数と熱媒体状態判定尺度とに基づいて、熱媒体2に含む潜熱蓄熱材41の濃度を知得すること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物40が万一、充填容器20から熱媒体2に漏洩した場合や、その可能性がある場合でも、熱媒体2に混じった漏洩分の漏洩分蓄熱材41Aの濃度を、定量的かつ感度良く検知できる。そのため、蓄熱槽1内で、熱媒体2への漏洩分蓄熱材41Aの漏洩が的確に把握できる。
すなわち、熱媒体2のpH値と、この熱媒体2に含有するアンモニウムミョウバン12水和物(潜熱蓄熱材41)の濃度との関係について、潜熱蓄熱材41の濃度を変数に含む式(2)「pH=−β×Log[A]−α (但し、Logは自然対数)」を用い、左辺に測定された熱媒体2の水素イオン指数(蓄熱槽内水素イオン指数)を代入して、熱媒体2に占める漏洩分の潜熱蓄熱材41(漏洩分蓄熱材41A)の濃度を算出するため、漏洩分の漏洩分蓄熱材41Aの量を、簡便かつ定量的に求めることができる。しかも、例えば、熱媒体2に占める漏洩分蓄熱材41Aの濃度0.003wt%等のように、熱媒体2に混入した漏洩分蓄熱材41Aが、たとえ微量であったとしても、測定された水素イオン指数(蓄熱槽内水素イオン指数)の絶対値より、漏洩分蓄熱材41Aの濃度を、より信頼性の高い数値として、高精度に求めることができる。
従って、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法によれば、充填容器20に封入された潜熱蓄熱材41が僅かに熱媒体2に漏洩した場合でも、熱媒体2中に漏洩した分の漏洩分蓄熱材41Aを、定量的かつ感度良く検知することができる、という優れた効果を奏する。
ところで、潜熱蓄熱材組成物40の潜熱蓄熱材41が万一、充填容器20から熱媒体2に漏洩してしまい、蓄熱槽1内に充満されている熱媒体2が漏洩状態熱媒体2Aに変化してしまった場合には、潜熱蓄熱材41は酸性を呈するため、漏洩状態熱媒体2A(図6(b)参照)は酸性になり、金属腐食を引き起こす原因となる。
これに対し、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法では、漏洩分蓄熱材41Aの濃度が的確に把握できるため、蓄熱槽1の流路4を迅速に遮断し、熱媒体2の循環を停止する第1措置に続き、蓄熱槽1内の漏洩状態熱媒体2Aに中和剤を投入する第2措置を行うのにあたり、中和剤の投入量と濃度を迅速に決定することができ、第2措置を、適切かつ速やかに行うことができる。そのため、蓄熱槽1において、電磁弁5、排出弁6、pH計8、及び温度計9等の各種機器に及ぼす腐食・損傷・不具合や、流路4の配管の腐食、熱供給源60と熱提供先70における熱交換器での腐食や損傷等、蓄熱システムに及ぶダメージを、適切に回避することができる。また、漏れ出した分の漏洩分蓄熱材41Aを蓄熱槽1に補充する第3措置についても、漏洩分蓄熱材41Aの補充量と濃度を、迅速に容易に決めることができる。
また、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法では、蓄熱槽1内に収容された熱媒体2の水素イオン指数を、pH計8で継続的に測定し、測定した水素イオン指数(蓄熱槽内水素イオン指数)の絶対値と、この水素イオン指数の測定値の経時的な変化量とを把握すること、絶対値と変化量とに対し、許容範囲内の大きさか否かを判断するのに用いる許容値Kを、閾値として設定すること、を特徴とする。この特徴により、スポット的に測定したpHの絶対値をそのまま利用した蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法と共に、継続的に測定したpHの絶対値の変動を利用した蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法を併用することで、より信頼性の高い潜熱蓄熱材41の漏洩検知が可能となる。すなわち、pH計8のプローブの経年劣化や、異物付着などの誤差要因による漏洩の誤検知を防止しつつ、漏洩分蓄熱材41Aの濃度が微小であったとしても、感度良く定量的に検知することができる。
また、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法では、潜熱蓄熱材41が混ざっていない第2評価基準用熱媒体(蓄熱槽1内の熱媒体2とは別で、評価基準用の熱媒体2)に、メチルレッドを滴下して生成した基準用サンプル51と、蓄熱槽1内から取り出した熱媒体2に、基準用サンプル51に用いた同じメチルレッドを滴下して生成した比較用サンプル52と、を用意し、基準用サンプル51と比較用サンプル52との相対的な色調変化に基づいて、漏洩した漏洩分蓄熱材41Aが熱媒体2に含まれているか否かを、メチルレッドの変色域に対応させて判別すること、を特徴とする。この特徴により、pH計8が万が一、何らかの理由で正常に作動しない事態となっても、蓄熱槽1内で、充填容器20に封入されている潜熱蓄熱材41が熱媒体2に漏洩しているかどうかを、排出弁6からサンプリングした熱媒体2を用いて、メチルレッドによる潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法で確認することができる。
また、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法では、蓄熱材は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材41であること、を特徴とするので、様々な種類の潜熱蓄熱材の中でも、潜熱蓄熱材41の主成分が、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)のようなミョウバン水和物であれば、ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材41は、相変化に伴う潜熱が比較的大きい物性を有する。そのため、このように比較的大きな潜熱の出入りを利用した潜熱蓄熱材41では、この潜熱蓄熱材41に蓄熱できる蓄熱量も比較的大きく得られる。よって、ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材41を含む潜熱蓄熱材組成物40は、例えば、同体積の水で蓄熱する場合に比べ、その約数〜10倍を超える等、大容量の熱を蓄熱し、それを放熱する蓄放熱性能を具備できている点で、優れている。加えて、潜熱蓄熱材41の主成分が、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)のようなミョウバン水和物であれば、pH計8により、熱媒体2に混じった漏洩分の漏洩分蓄熱材41Aの濃度が、より低い濃度まで幅広い濃度帯域で高精度に検知可能になる。
また、本実施形態に係る蓄熱槽1では、蓄熱材の相変化による潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材41と、該潜熱蓄熱材41を封入する充填容器20と、該充填容器20を介して、潜熱蓄熱材41との間で熱を移動させるための熱媒体2と、を有する蓄熱槽1において、水素イオン濃度を測定するpH計8と、潜熱蓄熱材41の漏洩発生時に、熱媒体2に対し、漏洩分の漏洩分蓄熱材41Aを、本実施形態に係る蓄熱槽1内の潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法に基づいて検知し、検知した漏洩分蓄熱材41Aの漏洩分を定量的に算出する制御ユニット7と、を備えること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物40が万一、充填容器20から熱媒体2に漏洩した場合や、その可能性がある場合でも、熱媒体2に混じった漏洩分蓄熱材41Aの濃度が定量的かつ感度良く検知できるため、蓄熱槽1内で、熱媒体2への潜熱蓄熱材組成物40の漏洩が的確に把握できる。また、蓄熱槽1内で潜熱蓄熱材組成物40が熱媒体2に漏洩した場合には、作業者は、蓄熱槽1内での潜熱蓄熱材組成物40の漏洩について、接続モニタ10や報知機器11により、知ることができる。
また、本実施形態に係る蓄熱槽1では、熱供給源60側と熱提供先70側で、当該蓄熱槽1と連通する熱媒体2の流路4に、当該蓄熱槽1との間で熱媒体2の流通を制御する電磁弁5を備えていること、を特徴とする。この特徴により、蓄熱槽1内で潜熱蓄熱材組成物40が熱媒体2に漏洩した場合には、第1〜第4電磁弁5A,5B,5C,5Dを全て閉弁することにより、漏洩状態熱媒体2Aが、供給側流入路4Aと供給側流出路4Bを通じて熱供給源60に、提供側流出路4Cと提供側流入路4Dを通じて熱提供先70に流れるのを阻止できる。そのため、潜熱蓄熱材41が、熱供給源60と熱提供先70に拡散するのを防止することができ、蓄熱システムへのダメージを適切に回避することができる。
また、本実施形態に係る蓄熱槽1では、当該蓄熱槽1内に収容された熱媒体2を外部に排出可能な排出弁6を備えていること、を特徴とする。この特徴により、pH指示薬による潜熱蓄熱材41の漏洩検知方法で、潜熱蓄熱材41が熱媒体2に漏洩しているかを検知するとき、蓄熱槽1内の熱媒体2のサンプルを、排出弁6から簡単に採取することができる。勿論、蓄熱槽1内の熱媒体2を定期的に入れ替えするときや、漏洩分蓄熱材41Aが高濃度で熱媒体2に混入し、この状態の熱媒体2を蓄熱槽1から排水するときに、このような熱媒体2を排出弁6から排水することができる。
また、本実施形態に係る蓄熱槽1では、当該蓄熱槽1内に、熱媒体2の温度を測定する温度計9を備えていること、を特徴とする。この特徴により、蓄熱槽1内での熱媒体2が、蓄熱している状況下にあるか、あるいは放熱している状況下にあるかを、判別できる。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態では、式(2),(3)に示す熱媒体状態判定尺度の演算を、制御ユニット7で行ったが、制御手段は、例えば、別体のパーソナルコンピュータ(PC)等の端末機器で、式(2),(3)に示す熱媒体状態判定尺度の演算を行い、この端末機器に接続されて作動する等の構成としても良い。
(2)また、実施形態では、蓄熱システム内の熱提供先70として、80〜90℃の温度帯域で使用する給湯設備や空気調和設備を挙げたが、熱提供先は、例えば、ガス吸収式冷凍機の再生器を加熱するのに用いる熱源等のほか、80℃以上の温度を必要とする装置を対象に、多様に用いることができる。また、80℃未満の温度帯域で使用する給湯設備や空気調和設備を熱提供先とすることもできる。
(3)また、実施形態では、融点調整剤44の配合により、潜熱蓄熱材組成物40の融点を約90℃に調整したが、融点調整剤により調整される潜熱蓄熱材組成物の融点温度は、約90℃に限定されるものではなく、潜熱蓄熱材組成物から放熱される熱を利用する熱提供先で、必要とする熱源の温度に対応した温度に調整されたものであれば良い。
(4)また、実施形態では、蓄熱槽1との間で熱媒体2の流通を制御する弁を、制御ユニット7により自動で開閉する電磁弁5としたが、主開閉弁は、手動で開閉する手動弁でも良い。
(5)また、実施形態では、pH計8を3つ、温度計9を5つ、それぞれ設置したが、pH計測機器と温度計測機器について、蓄熱槽に設ける数量、蓄熱槽への配置位置は、適宜変更可能である。
(6)また、実施形態では、潜熱蓄熱材組成物40入りの充填容器20,20Aを、熱媒体2に完全に浸漬した状態で、蓄熱槽1内に配置したが、この充填容器20Aの圧力調整弁30が、熱媒体2の液面上にあっても良い。
(7)また、実施形態では、蓄熱材を、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材41としたが、蓄熱材は、水との化学反応に伴う反応熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う化学蓄熱材で、溶けたときの水溶液の液性が酸性、またはアルカリ性を呈する特性を有した材料でも良い。
(8)また、実施形態では、蓄熱システムに構成した蓄熱槽1を1つとしたが、蓄熱システムは、熱供給源と熱提供先との間で、直列配管接続あるいは並列配管接続で複数の蓄熱槽を配置したものでも良い。
(9)また、実施形態では、熱媒体2の流路4との接続口を4つ、蓄熱槽1に設けているが、例えば、蓄熱槽1に熱媒体2が流入する接続口を1つ、蓄熱槽1から熱媒体2が流出する接続口を1つ、合わせて2つの接続口とするほか、熱媒体2の流路4と蓄熱槽1との接続口の数を4つ以上等、熱媒体の流路と蓄熱槽とを繋ぐ接続口の数は、特に限定されるものではなく、いくつでも良い。
(10)また、実施形態では、熱媒体2の流路4と蓄熱槽1とを4つの接続口で連通し、このうちの2つの接続口を蓄熱槽1上部に、残り2つの接続口を蓄熱槽1下部に、それぞれ配置したが、熱媒体の流路と蓄熱槽とが連通していれば良く、熱媒体の流路が蓄熱槽に接続する位置は、いかなる位置でも良い。
1 蓄熱槽
2 熱媒体,第2評価基準用熱媒体
2A 第1評価基準用熱媒体,漏洩状態熱媒体
4 流路
4A 供給側流入路(熱の供給側流路)
4B 供給側流出路(熱の供給側流路)
4C 提供側流入路(熱の提供側流路)
4D 提供側流出路(熱の提供側流路)
5 電磁弁(主開閉弁)
6 排出弁(副開閉弁)
7 制御ユニット(制御手段)
8 pH計(pH計測機器)
9 温度計(温度計測機器)
20,20A 充填容器
41 潜熱蓄熱材(蓄熱材)
41A 漏洩分蓄熱材(漏洩分の蓄熱材)
51 基準用サンプル
52 比較用サンプル
K 許容値

Claims (11)

  1. 状態変化または化学反応により、生じた熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う蓄熱材と、該蓄熱材を封入する充填容器と、該充填容器を介して、蓄熱材との間で熱を移動させるための熱媒体と、を有する蓄熱槽で、蓄熱材が充填容器から熱媒体に漏洩した場合に備えた蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、
    前記蓄熱材は、溶けたときの水溶液の液性が酸性、またはアルカリ性を呈する特性の材料であること、
    前記蓄熱材を溶解させた前記熱媒体を、第1評価基準用熱媒体とすると、
    前記第1評価基準用熱媒体の水素イオン指数を、前記蓄熱材の濃度を変化させながらpH計測機器で測定し、前記蓄熱材の濃度と、測定された水素イオン指数とがプロットされたグラフに基づいて、前記蓄熱材の濃度と前記水素イオン指数との相関関係を、演算処理による近似で導出した熱媒体状態判定尺度を、評価基準として予め作成し、取得しておくこと、
    前記蓄熱槽内に収容された前記熱媒体に対し、その水素イオン濃度を示す蓄熱槽内水素イオン指数をpH計測機器で測定し、測定された前記熱媒体の前記蓄熱槽内水素イオン指数と前記熱媒体状態判定尺度とに基づいて、前記熱媒体に含む前記蓄熱材の濃度を知得すること、
    を特徴とする蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法。
  2. 請求項1に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、
    前記第1評価基準用熱媒体の水素イオン濃度を、[H]とし、前記第1評価基準用熱媒体の水素イオン指数を、pHで示すと、
    pH=−Log10[H] …式(1)
    前記第1評価基準用熱媒体に含有する前記蓄熱材の濃度を[A]([A]>0)とし、
    αとβ(β≠0)を定数とすると、
    前記蓄熱材の濃度[A]は、前記水素イオン濃度[H]の変化に対応する関数で示され、前記式(1)より、前記熱媒体状態判定尺度は、対数による近似で、次の式(2)に示された実験式であること、
    pH=−β×Log[A]−α (但し、Logは自然対数) …式(2)
    前記熱媒体中に漏洩した前記蓄熱材の濃度は、前記式(2)と、前記熱媒体の前記蓄熱槽内水素イオン指数の測定値とにより、算出されること、
    を特徴とする蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、
    前記蓄熱槽内に収容された前記熱媒体の前記蓄熱槽内水素イオン指数を、pH計測機器で継続的に測定し、測定した前記蓄熱槽内水素イオン指数の絶対値と、前記蓄熱槽内水素イオン指数の測定値の経時的な変化量との方を把握すること、
    前記絶対値と前記変化量とに対し、許容範囲内の大きさか否かを判断するのに用いる許容値を、閾値として設定すること、
    を特徴とする蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、
    前記蓄熱材が前記熱媒体に混ざっていない第2評価基準用熱媒体に、pH指示薬を滴下して生成した基準用サンプルと、
    前記蓄熱槽内から取り出した前記熱媒体に、前記基準用サンプルに用いた同じ前記pH指示薬を滴下して生成した比較用サンプルと、を用意し、
    前記基準用サンプルと前記比較用サンプルとの相対的な色調変化に基づいて、漏洩した前記蓄熱材が前記熱媒体に含まれているか否かを、前記pH指示薬の変色域に対応させて判別すること、
    を特徴とする蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、
    前記蓄熱材は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材であること、
    を特徴とする蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法。
  6. 請求項5に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、
    前記潜熱蓄熱材は、ミョウバン水和物であること、
    を特徴とする蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法。
  7. 請求項6に記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法において、
    前記ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)であること、
    を特徴とする蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法。
  8. 状態変化または化学反応により、生じた熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う蓄熱材と、該蓄熱材を封入する充填容器と、該充填容器を介して、蓄熱材との間で熱を移動させるための熱媒体と、を有する蓄熱槽において、
    水素イオン濃度を測定するpH計測機器と、
    前記蓄熱材の漏洩発生時に、前記熱媒体に対し、漏洩分の前記蓄熱材を、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載する蓄熱槽内の蓄熱材漏洩検知方法に基づいて検知し、検知した前記蓄熱材の漏洩分を定量的に算出する制御手段と、
    を備えること、
    を特徴とする蓄熱槽。
  9. 請求項8に記載する蓄熱槽において、
    熱の供給側と熱の提供側で、当該蓄熱槽と連通する前記熱媒体の流路に、当該蓄熱槽との間で前記熱媒体の流通を制御する主開閉弁を備えていること、
    を特徴とする蓄熱槽。
  10. 請求項8または請求項9に記載する蓄熱槽において、
    当該蓄熱槽内に収容された前記熱媒体を外部に排出可能な副開閉弁を備えていること、
    を特徴とする蓄熱槽。
  11. 請求項8乃至請求項10のいずれか1つに記載する蓄熱槽において、
    当該蓄熱槽内に、前記熱媒体の温度を測定する温度計測機器を備えていること、
    を特徴とする蓄熱槽。
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