JP6421297B2 - 悪性形質転換細胞の検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、正常細胞集団中に混入する悪性形質転換細胞の検出方法に関する。
悪性形質転換した細胞は、足場への接着がない状態でも生存し、増殖することができる。この足場非依存性増殖能は、細胞の悪性度との高い相関性が知られており、悪性形質転換した細胞を正常細胞と区別する際の重要な特性と考えられている。
軟寒天コロニー形成試験は、軟寒天培地中での細胞コロニーの形成の有無を調べることで細胞の足場非依存性増殖能を調べることが可能なin vitro試験系である。足場非依存性増殖能の有無を調べることによって、正常細胞の悪性形質転換の評価、更に、正常細胞集団中への悪性形質転換細胞の混入の評価が可能である(特許文献1、2)。
軟寒天コロニー形成試験において足場非依存性増殖を検出する古典的な方法としては、核染色等を施した後に細胞のコロニー数を数える方法があるが、顕微鏡の焦点距離を調節しながら3次元の軟寒天を主観的に観察することから、コロニー数の正確な定量化は困難である。即ち、多量の細胞を一度に全てディッシュやマルチウェルプレート内の軟寒天培地で培養し、目視あるいは低倍率顕微鏡でコロニーを検出する場合、悪性形質転換細胞由来のコロニーを見落としたり、重複して数えたりする可能性が高い。
この他に、軟寒天中の細胞コロニーの定量化の方法としては、軟寒天中の生細胞を生化学的に検出するテトラゾリウム塩やDNA結合性の蛍光色素を用い、半定量的に増殖細胞数を評価するものがある(特許文献1)。
しかし、悪性形質転換細胞の微量な混入が疑われる正常細胞に、そのままこれらの方法を適用した場合、悪性形質転換細胞のコロニー由来のシグナルがバックグラウンドノイズに隠れてしまうため、感度良い検出が望めない。例えば、正常細胞中に微量に混入する悪性形質転換細胞をDNA結合性の蛍光色素で評価した場合、悪性形質転換細胞の混入率の下方検出限界は0.1-0.01%程度とされている。なお、重度免疫不全マウスに細胞を移植し、マウスでの腫瘍形成の有無を指標にして形質転換細胞を検出する、いわゆるin vivo造腫瘍性試験における、悪性形質転換細胞混入率の下方検出限界は約0.001%とされているが、重度免疫不全マウスを用いる造腫瘍性試験は3-4カ月もの長期間を要する点が問題である。
特開2008−220350号公報 WO/2013/051590
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、正常細胞集団中に混入する悪性形質転換細胞を簡易且つ正確に検出できる方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる悪性形質転換細胞の検出方法は、複数のウェルを有するマルチウェルプレートの各ウェルの底部に、第1の培地からなる底部培地層を形成し、細胞集団中に悪性形質転換細胞の存在が疑われる細胞試料につき、前記細胞試料中の前記悪性形質転換細胞の濃度が1つのウェルあたり悪性形質転換細胞が1個以下となるように前記細胞集団を複数に分画し、その分画した細胞集団を第2の培地に播種して細胞含有培地を形成し、該細胞含有培地を前記底部培地層の上に載置して細胞含有培地層を形成し、前記細胞含有培地層の上に細胞に栄養を供給するための栄養層を載置し、前記ウェル中に前記底部培地層と前記細胞含有培地層と前記栄養層とを積層した状態にて細胞を培養し、培養後に前記栄養層を除去して、前記悪性形質転換細胞を染色可能な染色試薬を添加し、固定処理を施した後、前記細胞含有培地層を含む第1及び第2の培地を溶解させて、前記細胞含有培地層中の細胞をウェル底部に沈降させ、イメージングにより前記悪性形質転換細胞のコロニーの有無を検出することを特徴とする。
本発明によれば、正常細胞集団中に混入する悪性形質転換細胞を簡易且つ正確に検出できる。
細胞培養から沈降処理までの工程を示す図である。 蛍光色素により認識されるコロニーを示す図である。 ハイコンテンツイメージングシステムにより認識されるコロニーを示す図である。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
本実施形態にかかる悪性形質転換細胞の検出方法では、細胞集団中に悪性形質転換細胞の存在が疑われる細胞試料を用意する。細胞集団は、特に限定されるものではなく、例えばヒト間葉系幹細胞等である。また、陽性対照細胞として、試験細胞と同じ動物種由来且つ試験細胞と同じ細胞種の正常細胞に一定の割合で悪性形質転換細胞400を混入させた細胞試料も併せて用意する。陽性対照細胞に混入させる悪性形質転換細胞400は、例えばHeLa細胞等である。
本実施形態にかかる悪性形質転換細胞の検出方法では、複数のウェルを有するマルチウェルプレートを使用する。具体的には、96ウェルや384ウェル等のマイクロタイタープレートを用いる。そして、そのマルチウェルプレートの各ウェルの底部に第1の培地からなる底部培地層100を形成する。第1の培地は、特に限定されるものではないが、アガロースを含有する多糖類からなる寒天であることが好ましく、好ましくはアガロースを含有する培地であり、更に好ましくは低融点のアガロースを含有する培地である。そのアガロースの濃度は例えば0.5〜0.7wt%、好ましくは0.55〜0.65wt%、特に好ましくは0.6wt%の濃度である。第1の培地を1ウェル当たり例えば50〜70μl程度ずつ添加し、冷蔵庫等で30分間程度固め、次いで、37℃の炭酸ガスインキュベーターにプレートを入れて温める。
次に、各細胞試料を複数のウェルに細胞数を揃えて分画する。このとき、陽性対照細胞試料中の悪性形質転換細胞400の濃度が1つのウェルあたり悪性形質転換細胞400が1個以下となるように細胞集団を複数に分画する。そして、その分画した細胞集団を第2の培地に播種して細胞含有培地を形成し、該細胞含有培地を前述の第1の培地からなる底部培地層100の上に載置して細胞含有培地層200を形成する。第2の培地は、特に限定されるものではないが、アガロースを含有する軟寒天培地であることが好ましい。そのアガロースの濃度は例えば0.35〜0.45wt%、好ましくは0.4wt%の濃度である。細胞含有培地層を上述のプレートのウェル上に例えば60〜75μl程度ずつ重層する。そして冷蔵庫等で5分間程度固めた後、37℃の炭酸ガスインキュベーターにプレートを入れて温める。
次に、細胞含有培地層200の上に細胞に栄養を供給するための栄養層300を載置する。栄養層300は、アガロースを含有しない培地であり、特に限定されるものではないが、例えば10%ウシ胎児血清含有DMEMである。栄養層は、上述のプレートのウェル上に例えば75〜125μl程度ずつ重層する。
このようにしてプレートのウェルに底部培地層100と細胞含有培地層200と栄養層300とを積層した状態にて細胞を培養する(図1(a))。培養期間は、陽性対照細胞において明瞭なコロニーが形成されるのに十分な期間であり、特に限定されるものではないが例えば10〜40日間程度である。
分画した細胞集団中に悪性形質転換細胞400が存在する場合、培養期間経過後に悪性形質転換細胞のコロニー401が形成される場合があり、培養期間経過後に栄養層300を除去して、悪性形質転換細胞のコロニー401を染色可能な染色試薬を添加する(図1(b))。染色試薬としては、特に限定されるものではないが、例えばHoechst33258、Hoechst33342、MitoTrackerRed CMXRos、MitoRed等を使用することが可能である。続いて、コロニーの染色状態を維持するために固定処理を施す。固定用試薬としては、例えば4%パラホルムアルデヒド溶液等を使用することが可能である。
次に、底部培地層100における第1の培地及び、細胞含有培地層200における第2の培地を溶解させて、細胞含有培地層200中の細胞をウェル底部に沈降させる。第1及び第2の培地がアガロースを含有する培地の場合、そのアガロースを変性させ溶解する処理を行う(図1(c))。溶解処理は例えばBuffer QG等を用いることが可能である。Buffer QGは、例えば軟寒天培地の重量に対して0.5〜1.5倍重量のBuffer QGを加えることが可能である。そして、図1(d)に示すように、例えばマイクロプレート用遠心器を用いて遠心させることにより、悪性形質転換細胞のコロニー401をウェル底部に沈降させることができる(沈降処理)。
次に、イメージングにより悪性形質転換細胞のコロニーの有無を検出する。サイトメトリー(短時間で大量の細胞を1個ずつ定量測定する細胞測定方法)は、フローサイトメトリーとイメージングサイトメトリーとに分けられるところ、本実施形態にかかる発明においてはイメージングサイトメトリーを用いる。イメージングは、例えばハイコンテンツイメージングシステムにより可能である。ハイコンテンツイメージングシステムは、例えばレーザー型ラインスキャニングシステムを搭載したイメージングサイトメーターを用いることが可能である。
本実施形態にかかる発明では、陽性対照細胞試料中の悪性形質転換細胞の濃度が、1つのウェルあたり悪性形質転換細胞が1個以下となるように濃度調整された細胞集団が複数に分画されている。即ち、細胞集団を小さな画分に分割することにより、イメージングにおけるバックグランドノイズが抑制でき、悪性形質転換細胞のコロニーを感度よく検出できる。
陽性対照細胞試料においては、コロニーを含む画分数及び混入させた悪性形質転換細胞の濃度から単一悪性形質転換細胞のコロニー形成確率を算出することができる。具体的には、まず、細胞試料の複数ウェルへの分画は偶発的に行われる事象であり、一つのウェルに含まれる細胞数の確率はポアソン分布に従うものと仮定する。陽性対照細胞試料中に混入させた悪性形質転換細胞細胞の希釈率から、1ウェルに含まれる細胞数の割合の理論値、及び、総画分数における期待値に加え、観察されうる総コロニー数の期待値が得られる。この期待値と実際の総コロニー数の観測値から、単一悪性形質転換細胞のコロニー形成確率を算出することが出来る。
細胞試料中における単一悪性形質転換細胞の推定コロニー形成確率を、陽性対照細胞試料における単一悪性形質転換細胞のコロニー形成確率と同等と仮定すれば、コロニーを含む画分数から細胞試料中の悪性形質転換細胞の混入量を推定することが可能である。この場合、細胞試料中における悪性形質転換細胞の混入量は、「陽性対照細胞試料中に混入する悪性形質転換細胞に換算した場合の細胞数」という形で表示されることになる。なお、細胞試料中における悪性形質転換細胞の推定混入量と推定コロニー形成確率に応じて、細胞試料を分画及び播種するウェル数、プレート数を増やすことにより、適宜、検出感度を上昇させることができる。
また、本実施形態にかかる発明では、細胞含有培地層における培地を溶解させて、細胞含有培地層中のコロニーをウェル底部に沈降させてイメージングを行う。即ち、細胞含有培地層における培養は3次元培養であるが、コロニーをウェル底部に沈降させることで、2次元的な画像として撮影及び解析が可能となり、イメージングの焦点のズレが低減し、さらに、蛍光励起と細胞の発光の効率も向上するので、悪性形質転換細胞のコロニーを高精度、高感度かつ簡便に検出できる。
なお、3次元培養により形成されたコロニーを、培地の溶解をしないまま、直接、レーザー型ラインスキャニング共焦点システムを搭載したイメージングサイトメーターにより検出する方法は、たとえ培地の厚みを網羅する焦点距離での画像取得が可能であったとしても、焦点距離の異なる多くの画像を取得する必要があり、データが膨大になると同時にデータ取得時間がかさむ点、及び、取り込んだ多くの画像データを3次元に再構成した後に正確にコロニーを計数するためのソフトウェアが必要となる点において、本発明よりも効率的ではない。
<実施例1>本発明を使用したヒト間葉系幹細胞(hMSC)中に混入させたHeLa細胞の検出の評価
1-1.材料及び方法
寒天は低融点アガロースであるSeaPlaqueTM Agarose(Lonza社)を、96ウェルマイクロプレートはGreiner社655892、培地はD-MEM(和光純薬株式会社)を使用した。
0.6%アガロースを含む10%ウシ胎児血清含有D-MEMを、96ウェルプレートに50マイクロリットルずつ加え、4℃に30分間置いて寒天を固化させた。
0.4%アガロースを含む10%ウシ胎児血清含有D-MEM培地でHeLa細胞(JCRB細胞バンク)とhMSC(Lonza社)を1:10000の割合で含むように調整した細胞試料を上記のプレートに75マイクロリットルずつ、96ウェルプレート上の40ウェルに分注及び播種した。この時、1ウェル辺り10000個のhMSCと1個のHeLa細胞を含むように細胞試料の濃度を調整した。更に、陰性コントロールとしてHeLa細胞を含まないhMSCのみからなる同様の細胞試料を、75マイクロリットルずつ40ウェルに分注及び播種した。残りの16ウェルはブランクウェルとして、細胞を含まない0.4%アガロースを含む10%ウシ胎児血清含有D-MEMが75マイクロリットルずつ分注された。
各細胞試料を96ウェルプレートの0.6%アガロース含有培地上に重層させた後、直ぐに4℃に10分間置いて軟寒天を固化させた。その後に、100マイクロリットルの10%ウシ胎児血清含有D-MEMを全てのウェルに重層し、37℃の炭酸ガスインキュベーターへ移し、30日間培養した。尚、培地交換は3-4日に一回の頻度で行った。
続いて、細胞を画像解析するために細胞染色を行った。生細胞染色試薬であるMitoRed(同仁化学研究所)とHoechst 33342(同仁化学研究所)を最終濃度がそれぞれ100ナノモル、1マイクロモルとなるように全てのウェルに添加し、37℃の炭酸ガスインキュベーターで1時間培養した。
染色試薬を含む培養上清はデカントして除去し、その後、100マイクロリットルのリン酸緩衝液(PBS)を加え、5分間室温で静置することによる洗浄を2回繰り返し行った。続いて、PBSを除去し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)溶液を125マイクロリットル添加し、室温に30分間置いて細胞を固定した。
PFAを除去し、PBSによる洗浄を3回行ったあと、軟寒天を変性させ溶解する処理を行った。ここではキアゲン社のBuffer QGを、PBSを除去した全てのウェルに50マイクロリットルずつ加え、37℃のインキュベーターに60分間置いた。
細胞の画像解析には、ハイコンテンツイメージングシステムであるGE Healthcare社のIn Cell Analyzer 2000を用いた。まず、各ウェルについて赤と青の2色それぞれの蛍光画像を取得し、続いて、画像解析アプリケーションであるDeveloper Toolbox(GE Healthcare社)を用いて画像データの解析を行った。具体的には、2種類の蛍光色素で染色された各ウェルの細胞の画像から、一定の蛍光強度を示し、2色の蛍光が重なり合うことが確認され、更に、一定面積以上(ここでは100マイクロ平方メートル以上)の細胞塊を抽出し、コロニーと判定した。この解析処理は複数ウェルについてハイスループットに行われ、各ウェルのコロニーの有無が自動判定された。
1-2.結果
軟寒天培地での培養30日目に、顕微鏡下で各ウェルの観察を行ったところ、HeLa細胞を混入させた細胞試料を播種した40ウェル中において、球状の細胞塊(コロニー)(図2(a))を含むウェルが複数確認された。一方、hMSCのみを含む陰性コントロールの40ウェル内及びブランクウェル内ではコロニー形成は観察されなかった。これらの結果から、軟寒天培地中のような三次元環境下においては、hMSCのような正常な細胞は足場が存在しないためほとんど増殖しないのに対し、HeLa細胞は増殖能を損なうことなく生存し続け、コロニーを形成することが示された。
図2(b)、(c)は、染色処理を施したHeLa細胞のコロニーの画像である。MitoRedは、細胞のミトコンドリアに集積し赤色蛍光を呈し、一方、Hoechst 33342は核に集積し青色蛍光を呈する生細胞染色試薬である。MitoRedやHoechst 33342の集積によって蛍光を呈する細胞は、集団となってコロニーを形成することで、高い蛍光強度を示し、蛍光画像によっても、コロニーを認識することが可能であった。
顕微鏡下で各ウェルの観察を行った際、HeLa細胞を混入させた細胞試料を播種した40ウェル中16ウェルをコロニー有りのウェルと判定した(図3(a))。次に、コロニー有りのウェルを画像解析によって判定するために、In Cell Analyzer 2000を用いて、各ウェルの撮影を行った。その結果、ハイコンテツイメージングシステムによる撮影及び画像解析では、コロニーを認識できたウェル数は、顕微鏡下での目視による解析と同じく16であった。ただし、目視の時にコロニー有りと判定されたウェルの一部では、画像解析ではコロニーを認識することができず、また、目視の時にはコロニーなしと判定していたウェルの一部において、コロニーを見落としがあったことも判明した(図3(b))。軟寒天培地中で形成されるコロニーは、ウェルの底部からの高さ約1.6ミリメートルの位置から、約2ミリメートルの上下幅の中に存在しており、コロニーの存在するz軸上の位置はウェル毎に異なるものと考えられる。ハイコンテツイメージングシステムでの撮影は、カメラのz軸方向の可動域、オートフォーカス機能のレンジが限られているため、ウェル毎に焦点のずれが生じた可能性や、軟寒天培地の上部に位置するコロニーは焦点がまったく合わない可能性が考えられた。しかしながら、顕微鏡下での目視による観察では上手く焦点を合わせられず見落としていたコロニーを、ハイコンテツイメージングシステムでは認識できていたことから、画像解析の精度の高さは明らかであった。
続いて、各ウェルについてアガロースを変性及び溶解させる処理を施したところ、軟寒天培地中のHeLa細胞が増殖したコロニーは、アガロースの溶解に伴って重力方向であるウェル底部へ沈降していった。この時、マイクロプレート用遠心器を用いて300gで3分間遠心することにより、溶解した軟寒天培地中に浮遊する細胞のほぼ全てが沈降した(沈降処理)。図3(c)は沈降処理を行った後のIn Cell Analyzer 2000による撮影画像である。コロニーをウェル底部に沈降させた結果、ウェル間の焦点のズレが低減したことに加え、蛍光励起と細胞の発光の効率も向上し、コロニーを鮮明に認識することが可能となった。そして、図3(b)、図3(c)に比較されるように、沈降処理によって画像解析によるコロニー認識の精度が著しく向上したことで、全てのコロニーが見落とし無く認識され、結果としてトータル18のウェルがコロニー有りと判定された。
このように、本発明におけるコロニーの沈降処理を行うことによって2次元的な画像の撮影及び解析が可能となり、悪性形質転換細胞のコロニーを高精度に検出できることが実証された。
軟寒天培地での培養30日目にコロニー解析を行った結果、HeLa細胞を含む40ウェル中18のウェルでコロニーの形成が観察された。また、コロニーを複数含むウェルも認められた。一方、hMSCのみを含む陰性コントロールの40ウェル内ではコロニー形成は観察されなかった。HeLa細胞を含む40ウェルにおける1ウェルに含まれたコロニー数を表1に示した。
本試験では、HeLa細胞とhMSCを1:10000の割合で含むような細胞試料を、1ウェル辺り10000個のhMSCと1個のHeLa細胞を含むように調整し、複数ウェルへ分注した。これはすなわち、1ウェルがHeLa細胞1個を含む割合と思われるが、実際は、複数ウェルへの細胞試料の分画は偶発的に行われる事象であり、一つのウェルに含まれる細胞数の確率はポアソン分布に従うものと考えられる。すなわち、下記表2に示すように、1ウェルに細胞が0個の時は約37%、1個入る確率は約37%、2個の場合は約18%、3個の場合は約6%となる。また、HeLa細胞を0個含むウェルは、40ウェル中15ウェル、1個含むウェルは15ウェル、2個含むウェルは7ウェル、3個含むウェルは2ウェル、4個含むウェルは1ウェルという期待値が考えられた。
1ウェルにおいて1個のHeLa細胞から1個のコロニーが形成されると仮定した場合、40ウェルで観察されうる総コロニー数の期待値は、1´15+2´7+3´2+4´1=39と考えられた。しかしながら、本試験での40ウェル辺りのコロニー数の観測値は、1´15+2´3=21であった。この結果は、単一のHeLa細胞が軟寒天培地中で必ずしもコロニーを形成するわけではないことを示唆している。そして、これらの期待値と観測値からHeLa単一細胞からのコロニー形成確率を推定することができた。本試験におけるHeLa単一細胞のコロニー形成確率は約54%であり、正常細胞中に混入する微量のHeLa細胞のうち、約半数がコロニーを形成し得るものと考えられた。
これらの結果から、96ウェルプレート1ウェルにおいて、hMSC10000個中に1個混入したHeLa細胞からコロニーが高頻度に形成されることが確認され、画像解析によって形成されたコロニーを取りこぼすこと無く高精度に解析できることが示された。すなわち、HeLa細胞レベルの悪性形質転換細胞であれば、本試験法によって0.01%以上の混入細胞の検出が可能であることが示された。
<実施例2>HeLa-GFP細胞を0.001%混入するhMSCの評価(実施例1よりも悪性形質転換細胞の混入率が低い細胞試料の評価)
2-1.材料及び方法
実施例1の1-1と同様の操作を行い、0.4%軟寒天を含む10%ウシ胎児血清含有D-MEM培地で1000000個のhMSCと10個のHeLa-GFP細胞(Cell Biolabs社)を含むように調整した細胞試料を、96ウェルプレート上の80ウェルに75マイクロリットルずつ分注及び播種した。この時、1ウェル辺り12500個のhMSCと0.125個(すなわち8ウェル中に1個)のHeLa-GFP細胞を含むように細胞試料の濃度を調整した。更に、陰性コントロールとしてHeLa-GFP細胞を含まない1000000個のhMSCのみからなる同様の細胞試料を、75マイクロリットルずつ80ウェルに分注及び播種した別の96ウェルプレートも用意した。
各細胞試料を96ウェルプレートの0.6%軟寒天上に重層させた後、直ぐに4℃に10分間置いて寒天を固化させた。その後に、100マイクロリットルの10%ウシ胎児血清含有D-MEMを全てのウェルに重層し、37℃の炭酸ガスインキュベーターへ移し、30日間培養した。尚、培地交換は3-4日に一回の頻度で行った。
HeLa-GFP細胞を含むプレート、含まないプレートそれぞれ4枚ずつについて、30日目に染色処理、沈降処理を施し、コロニー解析を行った。
2-2.結果
その結果、HeLa-GFP細胞を含む4枚のプレートそれぞれでコロニーを含むウェルが観察された。一方、MSCのみを含む陰性コントロールプレートのウェル内ではコロニー形成は観察されなかった。各プレートの1つのウェルに含まれたコロニー数を表3に示す。
本試験では、1000000個のhMSCと10個のHeLa-GFP細胞を含むように調整した細胞試料を、1ウェル辺り12500個のhMSCと0.125個のHeLa-GFP細胞を含むように80ウェルに分画した。一つのウェルに含まれる細胞数の確率はポアソン分布に従うものと考えると、下記表4に示すように、1ウェルに細胞が0個の時は約88%、1個入る確率は約11%、2個の場合は約1%、となる。さらに、HeLa-GFP細胞を0個含むウェルは80ウェル中70ウェル、1個含むウェルは9ウェル、2個含むウェルは1ウェル、という期待値が考えられる。
1ウェルにおいて1個のHeLa-GFP細胞から1個のコロニーが形成されると仮定した場合、80ウェルで観察されうる総コロニー数の期待値は、1´9+2´1=11と考えられる。しかしながら、本試験での総コロニー数の観測値は、表3より4プレート平均で3であった。その結果、これらの期待値と観測値から推定されるHeLa-GFP単一細胞からのコロニー形成確率は、約27%であった。
実施例1で用いた野生型HeLa細胞と比較すると、HeLa-GFP細胞は単一細胞からのコロニー形成能が低いことが分かった。このようなコロニー形成能が低い悪性形質転換細胞が混入した細胞試料であっても、本発明によってコロニーを検出できることが確認された。また、本試験では、実施例1と比べ悪性形質転換細胞の混入量が低い試料(0.001%)を、80ウェルに分画することで高感度にコロニーを検出することできた。この結果から、細胞試料中における悪性形質転換細胞の推定混入量に応じて、細胞試料を分画及び播種するウェル数を増やして評価することにより、検出感度を向上させられることが実証された。
悪性形質転換細胞の検出に利用できる。
100:底部培地層
200:細胞含有培地層
300:栄養層
400:悪性形質転換細胞
401:コロニー

Claims (1)

  1. 複数のウェルを有するマルチウェルプレートの各ウェルの底部に、アガロースを含有する寒天培地である第1の培地からなる底部培地層を形成し、
    細胞集団中に悪性形質転換細胞の存在が疑われる細胞試料につき、前記細胞試料中の前記悪性形質転換細胞の濃度が1つのウェルあたり悪性形質転換細胞が1個以下となるように前記細胞集団を複数に分画し、その分画した細胞集団を足場非依存性細胞増殖用のアガロースを含有する軟寒天培地である第2の培地に播種して細胞含有培地を形成し、該細胞含有培地を前記底部培地層の上に載置して細胞含有培地層を形成し、
    前記細胞含有培地層の上に細胞に栄養を供給するための栄養層を載置し、前記ウェル中に前記底部培地層と前記細胞含有培地層と前記栄養層とを積層した状態にて細胞を培養し、
    培養後に前記栄養層を除去して、前記悪性形質転換細胞を染色可能な染色試薬を添加し、固定処理を施した後、
    前記底部培地層における第1の培地及び、前記細胞含有培地層における第2の培地を溶解させて、前記細胞含有培地層中の細胞をウェル底部に沈降させ、イメージングにより前記悪性形質転換細胞のコロニーの有無を検出することを特徴とする、悪性形質転換細胞の検出方法。
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