JP6420092B2 - 高分子球状アレイおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子球状アレイおよびその製造方法に関する。
ナノメートルからマイクロメートルスケールのポリマー粒子を集積化してなる構造体は、新しい電子・光機能を発現することから注目されている。特に、紫外域から可視域の波長に近い大きさの構造体を集積化すると、新しい光電子機能を示すフォトニック結晶の実現が期待できる。
このようなフォトニック結晶としては、例えば、テトラメチルジチオフェン構造要素を有するパイ共役交互共重合体が知られ、そのパイ共役交互共重合体の製造方法も知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、パイ共役共重合体からなる微粒子およびナノ粒子の形成方法も知られている(例えば、非特許文献2参照)。
このようなフォトニック結晶の球状構造体を形成し、その球状構造体を、例えば、シリコン製の基板上に配列してアレイを形成することにより、発光デバイス等に応用することができる。
本発明者等は、球状構造体を形成するための高分子の構造要素としては、テトラメチルビチオフェンを一方のコンポーネントとして有するパイ共役共重合体が、蒸気拡散法で球状構造体を形成しやすいことを開示している(例えば、非特許文献2参照)。
Polym.Chem.2013,4,947;doi:10.1039/c2py20917a J.Am.Chem.Soc.2013,135,870;doi:10.1021/ja3106626;Polym.Chem.2014,5,3583;doi:10.1039/c4py00023d
しかしながら、従来、基板の一面に、直接形成されたパイ共役高分子からなる球体や半球体から構成されるアレイについて全く開示されていなかった。また、基板の一面に、パイ共役高分子からなる球体や半球体から構成されるアレイを直接形成する方法についても全く開示されていなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、基板の一面に、直接形成された、パイ共役高分子からなる球体や半球体から構成される高分子球状アレイおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の高分子球状アレイは、基板と、該基板の一面に形成された、結晶性が低いパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備え、前記複数の球状構造体または半球状構造体が、前記基板の一面に形成された疎水性膜および親水性膜の少なくとも一方の上に形成されていることを特徴とする。
本発明の高分子球状アレイの製造方法は、基板と、該基板の一面に形成された、結晶性が低いパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備えた高分子球状アレイの製造方法であって、前記基板の一面に、前記パイ共役系高分子を含む溶液を塗布して、前記パイ共役系高分子からなる薄膜を形成する工程と、前記薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させることにより、前記基板の一面に、前記パイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の高分子球状アレイの製造方法において、前記混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比は、体積比で1:1〜2:1であることが好ましい。
本発明の高分子球状アレイの製造方法において、前記薄膜を、前記混合溶媒の蒸気に接触させるとき、前記蒸気の温度は、30℃〜40℃であることが好ましい。
本発明の高分子球状アレイの製造方法において、前記薄膜を、前記混合溶媒の蒸気に接触させる時間は、1.5時間以上であることが好ましい。
本発明によれば、基板の一面に、直接形成された、パイ共役高分子からなる球体や半球体から構成される高分子球状アレイが得られる。
本実施形態の高分子球状アレイの一例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。 本実施形態の高分子球状アレイの製造方法の第1の方法を示す概略断面図である。 本実施形態の高分子球状アレイの製造方法の第2の方法を示す概略断面図である。 実験例1における走査型電子顕微鏡像である。 実験例1における走査型電子顕微鏡像である。 実験例1における走査型電子顕微鏡像である。 実験例2における走査型電子顕微鏡像である。 実験例2における走査型電子顕微鏡像である。 実験例3における走査型電子顕微鏡像である。 実験例4における走査型電子顕微鏡像である。 実験例5における走査型電子顕微鏡像である。 実験例6における走査型電子顕微鏡像である。 実験例7における走査型電子顕微鏡像である。 実験例8における走査型電子顕微鏡像である。 実験例9における走査型電子顕微鏡像である。 実験例10における走査型電子顕微鏡像である。 実験例11における走査型電子顕微鏡像である。 実験例12における走査型電子顕微鏡像である。 実験例13における走査型電子顕微鏡像である。 実験例14で用いた格子状マスクを示す概略平面図である。 実験例14において、疎水性膜および親水性膜の上に形成された半球状構造体を示す走査型電子顕微鏡像である。 実験例14において、疎水性膜上に形成された半球状構造体を示す走査型電子顕微鏡像である。 実験例14において、親水性膜上に形成された半球状構造体を示す走査型電子顕微鏡像である。
本発明の高分子球状アレイおよびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[高分子球状アレイ]
本実施形態の高分子球状アレイは、基板と、該基板の一面に形成された、結晶性が低いパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備える。
以下、図1を参照しながら、本実施形態の高分子球状アレイを説明する。
図1は、本実施形態の高分子球状アレイの一例を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
本実施形態の高分子球状アレイ10は、基板11と、基板11の一方の面11aに形成され、結晶性が低いパイ共役系高分子からなる薄膜12と、基板11の一方の面11aに形成され、結晶性が低いパイ共役系高分子からなり、薄膜12よりも基板11の一方の面11aとは反対側(基板11の厚さ方向)に突出した複数の半球状構造体13とから概略構成されている。
複数の半球状構造体13は、図1(b)に示すように、例えば、基板11の長手方向に沿って、間隔を置いて配列されている。また、複数の半球状構造体13は、薄膜12を介して連接している。
半球状構造体13の直径、すなわち、半球状構造体13と薄膜12との界面が形成する円の直径(図1(b)におけるd)は、特に限定されず、高分子球状アレイ10の用途等に応じて適宜調整されるが、可視〜近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する観点から、100nm〜3μmであることが好ましく、200nm〜1μmであることがより好ましい。
半球状構造体13の高さ、すなわち、薄膜12の基板11と接する面とは反対側の面12aを基準とした半球状構造体13の頂点までの高さ(図1(b)におけるh)は、特に限定されず、高分子球状アレイ10の用途等に応じて適宜調整されるが、可視〜近赤外光の閉じ込めの観点から、100nm〜3μmであることが好ましく、200nm〜1μmであることがより好ましい。
基板11としては、シリコン基板、石英基板、ガラス基板、サファイア基板、マイカ基板等が挙げられる。
また、基板11の一方の面11aには、表面処理が施されていなくてもよく、あるいは、疎水性処理および親水性処理の少なくともいずれか一方が施されていてもよい。ここでは、基板11の一方の面11aに表面処理が施されていない場合を例示する。
本実施形態において、結晶性が低いパイ共役系高分子とは、溶媒中で球状構造体を形成するパイ共役系高分子のことである。結晶性の高い高分子は、異方性であるため、結晶も異方的に成長する。そのため、結晶性の高い高分子は、球状構造体を形成しない。一方、結晶性の低い高分子は、異方性でないため、結晶は等方的に成長する。そのため、結晶性の低い高分子は、球状構造(等方的な構造)体を形成する。
パイ共役系高分子が、溶媒中で球状構造体を形成するか否かを確認する方法としては、クロロホルム等にパイ共役系高分子を溶解し、極性の高い貧溶媒であるメタノール等を蒸気拡散法によりゆっくりと加えて析出した構造体を電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察する方法が挙げられる。
本実施形態における結晶性が低いパイ共役系高分子としては、例えば、下記の式(1)で表わされるpoly[(N−octadecylcarbazol−2,7−diyl)−alt−(3,3’ ,4,4’−tetramethylbithiophene−2,5’−diyl)](2,7−CTMT2)、下記の式(2)で表わされるpoly[(N−octadecylcarbazol−3,6−diyl)−alt−(3,3’ ,4,4’−tetramethylbithiophene−2,5’−diyl)](3,6−CTMT2)、下記の式(3)で表わされるpoly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−alt−(3,3’ ,4,4’−tetramethylbithiophene−2,5’−diyl)](F8TMT2)、下記の式(4)で表わされるpoly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−alt−(3,4−ethylenedioxythiophene−2,5−diyl)](F8EDOT)、下記の式(5)で表わされるpoly[(N−(2−ethylhexyl)phenothiazine−3,7−diyl)−alt−(3,3’ ,4,4’− tetramethylbithiophene−2,5’−diyl)](PTTMT2)、下記の式(6)で表わされるpoly[(N−(4−octylphenyl)iminoazobenzene−4,4’ −diyl)](AZOANI)、下記の式(7)で表わされるpoly[(1,4−dioctylphenyl−2,5−diyl)−alt−(3,3’ ,4,4’−(tetramethylbithiophene−2,5’−diyl)](DOPTMT2)等が挙げられる。
(式中、n=20〜50)
(式中、n=20〜50)
(式中、n=20〜50)
(式中、n=20〜50)
(式中、n=20〜50)
(式中、n=20〜50)
(式中、n=20〜50)
高分子球状アレイ10によれば、基板11の一方の面11aに、パイ共役高分子からなる複数の半球状構造体13が直接形成されているので、半球状構造体13の耐久性に優れている。
なお、本実施形態では、複数の半球状構造体13が間隔を置いて配列されている場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、複数の半球状構造体13同士が隣接して配列されていてもよい。なお、複数の半球状構造体13同士が隣接して配列されるとは、半球状構造体13を平面視した場合、複数の半球状構造体13同士が、それぞれの外縁で接するように配列されていることを言う。
また、本実施形態では、複数の半球状構造体13が、薄膜12を介して連接している場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、複数の半球状構造体13は、薄膜12を介して連接することなく、独立して形成されていてもよい。
また、本実施形態では、基板11の一方の面11aに、複数の半球状構造体13が形成されている場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、基板11の一方の面11aに、複数の球状構造体が形成されていてもよい。
また、本実施形態では、基板11の一方の面11aに表面処理が施されていない場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、基板11の一方の面11aに、疎水性処理および親水性処理の少なくともいずれか一方が施されていてもよい。基板11の一方の面11aに、疎水性処理および親水性処理が施されている場合、疎水性処理が施されている領域には、直径が小さい半球状構造体13または球状構造体が形成され、親水性処理が施されている領域には、直径が大きい半球状構造体13または球状構造体が形成される。
[高分子球状アレイの製造方法]
本実施形態の高分子球状アレイの製造方法は、上記の高分子球状アレイを製造する方法であって、基板の一面に、パイ共役系高分子を含む溶液を塗布して、パイ共役系高分子からなる薄膜を形成する工程と、パイ共役系高分子からなる薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させることにより、基板の一面に、パイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体を形成する工程と、を有する。
(第1の方法)
以下、図2を参照しながら、本実施形態の高分子球状アレイの製造方法の第1の方法を説明する。
図2は、本実施形態の高分子球状アレイの製造方法の第1の方法を示す概略断面図である。
図2(a)に示すように、シリコン基板等からなる基板11を用意する。この例では、基板11としては、その一方の面11aに表面処理が施されていないものを用いる。
次いで、図2(b)に示すように、基板11の一方の面11aに、パイ共役系高分子を含む溶液を塗布して、パイ共役系高分子からなる薄膜12を形成する(薄膜形成工程)。
パイ共役系高分子を含む溶液の溶媒、すなわち、パイ共役系高分子を溶解するための溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン等が挙げられる。
また、パイ共役系高分子を含む溶液におけるパイ共役系高分子の含有量(濃度)は、0.1mg/mL〜10mg/mLであることが好ましく、0.5mg/mL〜3mg/mLであることがより好ましい。
薄膜形成工程において、まず、基板11の一方の面11aに、パイ共役系高分子を含む溶液を塗布して、この溶液からなる塗膜を形成する。
基板11の一方の面11aに、パイ共役系高分子を含む溶液からなる塗膜を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、バーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、はけ塗り法等、通常のウェットコート法が用いられる。
塗膜の厚さは、最終的に得られる高分子球状アレイ10の用途にて、半球状構造体13や球状構造体に求められる高さに応じて適宜調整される。
薄膜形成工程において、次いで、基板11の一方の面11aに形成した塗膜を乾燥させることにより、基板11の一方の面11aにパイ共役系高分子からなる薄膜12を形成する。
塗膜を乾燥する温度は、特に限定されず、溶媒の種類に応じて適宜調整されるが、例えば、30℃〜80℃であることが好ましい。
また、均一な大きさの半球状構造体13を形成するためには、薄膜12の厚さが均一であることが好ましい。
次いで、図2(c)に示すように、基板11の一方の面11aに形成された薄膜12を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気21に接触させることにより、基板11の一方の面11aに、パイ共役系高分子からなる複数の半球状構造体13を形成する(構造体形成工程)。これにより、高分子球状アレイ10が得られる。
構造体形成工程において、薄膜12を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気21に接触させる方法としては、溶媒蒸気アニーリング(Solvent Vapor Annealing:SVA)法が用いられる。
SVA法によって、薄膜12を蒸気21に接触させる場合、混合溶媒が収容された、試薬瓶等の密閉容器内に、薄膜12が形成された基板11を配置する。
クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比は、体積比で1:1〜2:1であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。
クロロホルムとメタノールの配合比が、体積比で1:1未満では、パイ共役系高分子からなる不定形の突状の構造体が形成されるか、あるいは、薄膜12が全く変化しない。一方、クロロホルムとメタノールの配合比が、体積比で2:1を超えると、クロロホルムに薄膜12が溶解してしまい、薄膜12が破壊してしまう。
その後、恒温漕中に、薄膜12が形成された基板11を収容した密閉容器を配置して、所定温度にて、所定時間、その密閉容器を静置する。
恒温漕内の温度、すなわち、薄膜12を蒸気21に接触させるときの、蒸気21の温度は、30℃〜40℃であることが好ましく、30℃〜35℃であることがより好ましい。
蒸気21の温度が30℃未満では、半球状構造体13を形成することができない。一方、蒸気21の温度が40℃を超えても効果に差異がない。
薄膜12を蒸気21に接触させる時間は、1.5時間以上であることが好ましい。
薄膜12を蒸気21に接触させる時間が1.5時間未満では、基板11上に半球状構造体13を形成できない。
SVA法により、薄膜12を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気21に接触させると、混合溶媒を構成するクロロホルムに、薄膜12を形成するパイ共役系高分子が少しずつ溶解し、クロロホルム中で、そのパイ共役系高分子が集まる。ここで、パイ共役系高分子は疎水性が高いので、パイ共役系高分子に、極性が高い(親水性)メタノールが近付くと、パイ共役系高分子は、メタノールと接したくないため、表面積を小さくして半球状構造体13を形成する。
薄膜12と蒸気21との接触を停止すれば、上述のような作用が生じなくなるので、半球状構造体13の形成も停止する。
本実施形態の高分子球状アレイの製造方法の第1の方法によれば、基板11の一方の面11aに、パイ共役高分子からなる複数の半球状構造体13を直接形成することができる。よって、半球状構造体13を低コストで作製することができる。
(第2の方法)
以下、図3を参照しながら、本実施形態の高分子球状アレイの製造方法の第2の方法を説明する。
図3は、本実施形態の高分子球状アレイの製造方法の第2の方法を示す概略断面図である。
図3(a)に示すように、シリコン基板等からなる基板11を用意する。この例では、基板11としては、その一方の面11aに、疎水性処理および親水性処理が施されたものを用いる。すなわち、基板11の一方の面11aには、疎水性膜31と親水性膜32が形成されている。
疎水性膜31および親水性膜32の面積や、疎水性膜31および親水性膜32を設ける間隔は、特に限定されず、疎水性膜31上に形成される球状構造体33に求められる大きさ(直径)や高さ、球状構造体33を設ける間隔等に応じて適宜調整される。
次いで、図3(b)に示すように、疎水性膜31と親水性膜32上に、第1の方法と同様にして、パイ共役系高分子を含む溶液を塗布して、パイ共役系高分子からなる薄膜12を形成する(薄膜形成工程)。
次いで、図3(c)に示すように、第1の方法と同様にして、基板11の一方の面11aに形成された薄膜12を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気21に接触させることにより、図3(d)に示すように、基板11の一方の面11aに、パイ共役系高分子からなる複数の球状構造体33を形成する(構造体形成工程)。これにより、高分子球状アレイ30が得られる。
構造体形成工程において、SVA法により、薄膜12を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気21に接触させると、混合溶媒を構成するクロロホルムに、薄膜12を形成するパイ共役系高分子が少しずつ溶解して、まず、図3(c)に示すように、第1の方法と同様にして、半球状構造体13が形成する。ここで、パイ共役系高分子は疎水性が高いので、パイ共役系高分子に、極性が高い(親水性)メタノールが近付くと、パイ共役系高分子は、メタノールと接したくないため、表面積を小さくしようとする。さらに、親水性膜32上にある薄膜12を形成するパイ共役系高分子も、疎水性膜31側に移動するので、その結果として、疎水性膜31上に多くのパイ共役系高分子が存在するようになるため、疎水性膜31上に球状構造体33が形成する。
なお、本実施形態では、疎水性膜31上のみに球状構造体33を形成する場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、疎水性膜31および親水性膜32の上に半球状構造体33を形成することができる。この場合、疎水性膜31上に、平面視した場合、直径が小さく、高さが低い半球状構造体33を形成することができる。また、疎水性膜31上において、単位面積当たりに密に半球状構造体33を形成することができる。一方、親水性膜32上に、平面視した場合、直径が大きく、高さが高い半球状構造体33を形成することができる。また、親水性膜32上において、単位面積当たりに粗に半球状構造体33を形成することができる。
本実施形態の高分子球状アレイの製造方法の第2の方法によれば、基板11の一方の面11aに、パイ共役高分子からなる複数の半球状構造体13を直接形成することができる。よって、半球状構造体13を低コストで作製することができる。
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1]
厚さ0.5μmのシリコン基板を、縦10mm×横10mmの大きさに切り出して、試験用基板とした。
この試験用基板を、UVオゾン洗浄により、10分間洗浄した。
次いで、硫酸(HSO)と過酸化水素(H)の混合液中に、試験用基板を、50℃で30分間、静置した。混合液における硫酸と過酸化水素の配合比を、体積比で4:1とした。
その後、試験用基板を純水で洗浄し、試験用基板の洗浄を完了した。
パイ共役系高分子のF8TMT2をクロロホルムに溶解して、F8TMT2溶液を調製した。この溶液におけるF8TMT2の含有量(濃度)を1mg/mLとした。
次いで、試験用基板をスピンコーターに設置し、試験用基板を、1500rpmで10秒間、続いて、3000rpmで40秒間、回転させながら、試験用基板上に、F8TMT2溶液を10μL〜50μL滴下して、この溶液からなる塗膜を形成した。
その後、塗膜を室温にて乾燥し、試験用基板の一方の面に、F8TMT2からなる薄膜を形成した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、縦5mm×横5mmの大きさに切り出した。
次いで、薄膜が形成された試験用基板を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒が収容された、50mLの試薬瓶内に配置した。
クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比を、体積比で1:1とした。
次いで、恒温漕中に、薄膜が形成された試験用基板を収容した試薬瓶を配置して、30℃で4時間、その試薬瓶を静置した。これにより、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
次いで、試験用基板を真空乾燥させた。
次いで、真空乾燥後の試験用基板を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図4および図5に示す。
図4および図5の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。また、平面視した場合、半球状構造体は、直径1μmの円形であった。
また、クロロホルムにF8TMT2を溶解し、メタノールの蒸気拡散により析出した構造体をシリコン基板上に滴下し、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図6に示す。
図6の走査型電子顕微鏡像から、F8TMT2が、溶媒中で球状構造体を形成することが確認された。
[実験例2]
パイ共役系高分子として、poly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−alt−(bithiophene−2,5’−diyl)](F8T2)を用いた以外は、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に、F8T2からなる薄膜を形成し、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図7に示す。
図7の走査型電子顕微鏡像から、F8T2からなる薄膜に変化がないことが確認された。
また、クロロホルムにF8T2を溶解し、メタノールの蒸気拡散により析出した構造体をシリコン基板上に滴下し、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図8に示す。
図8の走査型電子顕微鏡像から、F8T2が、溶媒中で不定形の構造体を形成することが確認された。
[実験例3]
クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比を、体積比で2:1とした以外は、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された、F8TMT2からなる薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図9に示す。
図9の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなり、平面視したときほぼ円形状の突状の構造体が形成されていることが確認された。また、平面視した場合、突状の構造体は、直径2μm〜3μmの円形であった。
[実験例4]
クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比を、体積比で1:2とした以外は、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された、F8TMT2からなる薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図10に示す。
図10の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる不定形の突状の構造体が形成されていることが確認された。
[実験例5]
クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比を、体積比で1:5とした以外は、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された、F8TMT2からなる薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図11に示す。
図11の走査型電子顕微鏡像から、F8TMT2からなる薄膜に変化がないことが確認された。
[実験例6]
クロロホルムとメタノールの混合溶媒の代わりに、クロロホルムのみを用いた以外は、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された、F8TMT2からなる薄膜を、クロロホルムの蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図12に示す。
図12の走査型電子顕微鏡像から、F8TMT2からなる薄膜に変化がないことが確認された。
実験例1および実験例3〜6の結果から、クロロホルムとメタノールの混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比が、体積比で1:1〜2:1であれば、試験用基板上に、F8TMT2からなる突状の構造体または半球状構造体を形成できることが分かった。また、クロロホルムのみでは、F8TMT2からなる構造体を全く形成できないことが分かった。
[実験例7]
温度(恒温漕内の温度)を25℃にした以外は、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された、F8TMT2からなる薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図13に示す。
図13の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる不定形の突状の構造体が形成されていることが確認された。
[実験例8]
温度(恒温漕内の温度)を35℃にした以外は、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された、F8TMT2からなる薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図14に示す。
図14の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
[実験例9]
温度(恒温漕内の温度)を40℃にした以外は、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面に形成された、F8TMT2からなる薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図15に示す。
図15の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
実験例1および実験例7〜9の結果から、温度を30℃以上にすれば、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体を形成できることが分かった。また、温度を高くする程、半球状構造体の高さが高くなることが分かった。
[実験例10]
実験例1と同様にして、恒温漕中に、F8TMT2からなる薄膜が形成された試験用基板を収容した試薬瓶を配置して、30℃で30分間、その試薬瓶を静置した。これにより、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図16に示す。
図16の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる不定形の突状の構造体が形成されていることが確認された。
[実験例11]
実験例1と同様にして、恒温漕中に、F8TMT2からなる薄膜が形成された試験用基板を収容した試薬瓶を配置して、30℃で1時間、その試薬瓶を静置した。これにより、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図17に示す。
図17の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなり、平面視したときほぼ円形状の突状の構造体が形成されていることが確認された。
[実験例12]
実験例1と同様にして、恒温漕中に、F8TMT2からなる薄膜が形成された試験用基板を収容した試薬瓶を配置して、30℃で1.5時間、その試薬瓶を静置した。これにより、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図18に示す。
図18の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
[実験例13]
実験例1と同様にして、恒温漕中に、F8TMT2からなる薄膜が形成された試験用基板を収容した試薬瓶を配置して、30℃で2時間、その試薬瓶を静置した。これにより、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図19に示す。
図19の走査型電子顕微鏡像から、試験用基板上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
実験例10〜13の結果から、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させる時間を1.5時間以上にすれば、試験用基板上に、半球状構造体を形成できることが分かった。
[実験例14]
厚さ500μmのシリコン基板を、縦10mm×横10mmの大きさに切り出して、試験用基板とした。
この試験用基板を、UVオゾン洗浄により、10分間洗浄した。
次いで、硫酸(HSO)と過酸化水素(H)の混合液中に、試験用基板を、50℃で30分間、静置した。混合液における硫酸と過酸化水素の配合比を、体積比で4:1とした。
その後、試験用基板を純水で洗浄し、試験用基板の洗浄を完了した。
次いで、試験用基板を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)とクロロホルムの混合溶液中に一晩12時間静置した。混合液におけるヘキサメチルジシロキサンとクロロホルムの配合比を、体積比で0.002:1とし、試験用基板の両面全面に親水性膜を形成した。
次いで、シャーレ内に試験用基板を配置して、試験用基板の一方の面に形成された親水性膜上に、1H,1H,2H,2H−Perfluorodecyltriethoxysilaneを0.05mL滴下した後、170℃で3時間、加温し、疎水性膜を形成した。
次いで、図20に示すような、試験用基板の一方の面に形成された疎水性膜上に、大きさが100μm×100μmの正方形の光不透過領域が10μm間隔で並列に形成された格子状マスクを配置し、その格子状マスクを介して、紫外光を2分間照射した。これにより、試験用基板の一方の面において、格子状マスクの光不透過領域に対向する部分には疎水性膜が残り、格子状マスクの光透過領域に対向する部分には親水性膜が露出した。
以下、実験例1と同様にして、試験用基板の一方の面上に、F8TMT2からなる薄膜を形成し、試験用基板の一方の面に形成された薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させた。
その後、実験例1と同様にして、試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察した。その走査型電子顕微鏡像を図21〜図23に示す。
図21の走査型電子顕微鏡像から、疎水性膜および親水性膜の上に、F8TMT2からなる半球状構造体が形成されていることが確認された。
図22の走査型電子顕微鏡像から、疎水性膜上に形成された半球状構造体は、平面視した場合、直径が小さく、高さも低かった。また、疎水性膜上に形成された半球状構造体は、単位面積当たりに密に形成されていた。
一方、図23の走査型電子顕微鏡像から、親水性膜上に形成された半球状構造体は、平面視した場合、直径が大きく、高さも高かった。また、親水性膜上に形成された半球状構造体は、単位面積当たりに粗に形成されていた。
本発明の高分子球状アレイは、基板の一面に形成されたパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体を備えているので、光を同期構造の中に閉じ込めることができ、例えば、フォトニック結晶としての用途、発光素子としての用途、レーザー発振素子としての用途等に適用することができる。
10,30・・・高分子球状アレイ、11・・・基板、12・・・薄膜、13・・・半球状構造体、21・・・蒸気、31・・・疎水性膜、32・・・親水性膜、33・・・球状構造体。

Claims (5)

  1. 基板と、該基板の一面に形成された、結晶性が低いパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備え
    前記複数の球状構造体または半球状構造体が、前記基板の一面に形成された疎水性膜および親水性膜の少なくとも一方の上に形成されていることを特徴とする高分子球状アレイ。
  2. 基板と、該基板の一面に形成された、結晶性が低いパイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体と、を備えた高分子球状アレイの製造方法であって、
    前記基板の一面に、前記パイ共役系高分子を含む溶液を塗布して、前記パイ共役系高分子からなる薄膜を形成する工程と、
    前記薄膜を、クロロホルムとメタノールの混合溶媒の蒸気に接触させることにより、前記基板の一面に、前記パイ共役系高分子からなる複数の球状構造体または半球状構造体を形成する工程と、を有することを特徴とする高分子球状アレイの製造方法。
  3. 前記混合溶媒におけるクロロホルムとメタノールの配合比は、体積比で1:1〜2:1であることを特徴とする請求項2に記載の高分子球状アレイの製造方法。
  4. 前記薄膜を、前記混合溶媒の蒸気に接触させるとき、前記蒸気の温度は、30℃〜40℃であることを特徴とする請求項2または3に記載の高分子球状アレイの製造方法。
  5. 前記薄膜を、前記混合溶媒の蒸気に接触させる時間は、1.5時間以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の高分子球状アレイの製造方法。
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