以下の詳細説明は添付の図面の参照を含み、この図面は明細書の一部をなす。図面は、例示的実施形態に沿った図である。これらの実施形態を本明細書では「例」とも称し、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に説明する。例示的実施形態における特定の詳細は、本発明を実施するのに必要なものではないことは当業者には明らかであろう。例えば、例示的実施形態は主に、電力およびデータを効果的に送信して発光ダイオード(LED)を制御するシステムに関して開示しているが、本開示の教示は電力およびデータを送信してこれ以外のあらゆるタイプの電子機器を制御するのに使用することができる。例示的実施形態は組み合わせることができ、他の実施形態を使用することもでき、特許請求の範囲を逸脱しないかぎり、構造的、論理的および電気的な変化を加えてもよい。したがって、以下の詳細説明を限定的な意味に捉えてはならず、その範囲は添付の請求項およびその均等物によって規定される。
本明細書において「ある(aまたはan)」という用語は、特許文書でよく用いられるように、1つまたは1つ以上を含むために使用される。本明細書において「または(or)」という用語は、非排他的な意味を表すために使用されており、すなわち「AまたはB」であれば特に明記しないかぎり、「BではなくA」、「AではなくB」、「AおよびB」の意味を含む。さらに、本明細書で引用する出版物、特許および特許文献はすべて、参照により個々を援用したものとしてその全体を参照により本明細書に援用する。本明細書における使用と、このようにして参照により援用したこれらの文献における使用とが一貫性に欠ける場合、援用した参照における使用は本明細書における使用を補足するものと考えるべきである。すなわち一致しない矛盾点については、本明細書における使用に規制される。
コンピュータシステム
本開示は、コンピュータシステムが一般にLED照明およびディプレイシステムを制御するのに使用されることから、コンピュータシステムに関する。図1は、コンピュータシステム100の形態の例でのマシンを示すブロック図であり、このシステムは本開示を部分的に実装することができる。コンピュータシステム100内には命令セット124があり、この命令を実行すると本明細書で述べる1つ以上の方法をマシンに実施させることができる。ネットワーク化した配置では、このマシンはクライアントとサーバとのネットワーク環境におけるサーバマシンもしくはクライアントマシンのキャパシティ内で、またはピアツーピア(もしくは配信型の)ネットワーク環境におけるピアマシンとして作動することができる。マシンは、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット型パソコン、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、webアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチまたはブリッジ、またはマシンが取るアクションを指定するコンピュータの命令セット(連続的なものまたはそうでないもの)を実行することができるあらゆるマシンである。さらに、単一のマシンのみを図示しているが、「マシン」という用語は、1つの命令セット(または複数の命令セット)を個別または共同で実行して本明細書に記載した1つ以上の方法を実行するあらゆる複数のマシンの集合も含むと考えるものとする。
コンピュータシステム100の例は、プロセッサ102(例えば中央処理装置(CPU)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)またはこの両方)、メインメモリ104およびスタティックメモリ106を備え、これらは互いにバス108を介して通信する。コンピュータシステム100はこのほか、液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT)などのビデオディスプレイシステム115を駆動するビデオディスプレイアダプタ110を備えてもよい。コンピュータシステム100はまた、英数字入力デバイス112(例えばキーボード)、カーソルコントロールデバイス114(例えばマウスまたはトラックボール)、ディスクドライブユニット116、出力信号発生装置118、およびネットワークインタフェースデバイス120も備える。
ディスクドライブユニット116は機械可読型媒体122を備え、この媒体には、本明細書に記載した1つ以上の方法もしくは機能を実現したり、またはこれらによって利用されたりする、1つ以上のコンピュータの命令セットおよびデータ構造(例えば「ソフトウェア」として知られる命令124)を格納する。命令124はまた、完全にまたは少なくとも部分的に、メインメモリ104内および/またはコンピュータシステム100によって実行中のプロセッサ102内にもあり、メインメモリ104およびプロセッサ102は機械可読型媒体を構成するものでもある。例示したコンピュータシステム100は、可能性のある一例を示したにすぎず、これ以外のコンピュータが図1に示したコンポーネントをすべて備えているわけではないことに注意されたい。
命令124はさらに、ネットワークインタフェースデバイス120を介してコンピュータネットワーク126上で送受信することができる。このような送信は、ファイル転送プロトコル(FTP)など、数ある公知の転送プロトコルから任意の1つを使用して行うことができる。
機械可読型媒体122は例示的実施形態で単一の媒体として示したが、「機械可読型媒体」という用語は、1つ以上の命令セットを格納する単一の媒体または複数の媒体(例えば中央に集積したり分配したりしたデータベース、ならびに/またはその関連するキャッシュおよびサーバ)を含むと考えるべきである。「機械可読型媒体」という用語はまた、命令セットを格納、符号化または伝送してマシンによって実行することができ、本明細書に記載の1つ以上の方法をマシンに実施させ、またはそのような命令セットが使用する、もしくはこの命令セットと関連するデータ構造を格納、符号化または伝送したりすることができる、あらゆる媒体を含むとも考えるべきである。したがって「機械可読型媒体」という用語は、固体記憶装置、光学メディアおよび磁気メディアを含むと考えるべきだが、これらに限定されるものではない。
この明細書の目的のために、「モジュール」という用語は、符号、計算もしくは実行可能な命令、データ、または特定の機能、演算、処理、プロシージャを達成するための計算対象の識別可能な部分を含む。ソフトウェアにモジュールを実装する必要はない。つまり、ソフトウェア、ハードウェア/回路、またはソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにモジュールを実装してもよい。
本開示では、コンピュータシステムに超小型のマイクロコントローラシステムを備えてもよい。マイクロコントローラには、コンピュータシステムを生成する4つの主要コンポーネントである算術論理ユニット(ALU)、制御ユニット、メモリシステム、および入出力システム(総称してI/Oと記載)を搭載する単一の集積回路を備えることができる。マイクロコントローラは、きわめて小型で低価格の集積回路であり、デジタル電子機器に使用されることが非常に多い。
複数のLEDを制御する制御システムの概観
複数の発光ダイオード(LED)またはその他の制御可能なあらゆる電子機器(その他のタイプの電子光源など)を制御するため、本明細書では、直列構成に接続された複数のユニットに対する単一配線の直列構成の電源および制御システムを開示している。特に、一実施形態において、LEDを制御する、個別に制御される電子ユニットは、直列構成に配列され、その直列構成内に位置する制御ユニットによって駆動される。個別に制御される別々の一連の電子ユニットは、点灯デバイスの「ライン」または「ストリング」と呼んでもよい。一連の電子ユニットに電力およびデータを供給するのに使用する制御ユニットは、「ラインドライバ」、「ストリングドライバ」、または「ヘッドエンドコントローラ」と呼んでもよい。制御ユニットは電力および制御信号を供給して、個別に制御される電子ユニットすべてをラインまたはストリング上で駆動するからである。本開示は、LEDまたはその他の光源を制御することに焦点を当てているが、本開示の教示は音響システム、モータ、センサ、カメラ、液晶ディスプレイ(LCD)など、その他のあらゆる電子機器の制御に使用してもよい。
図2Aは、本開示の教示を利用して構築した単一配線の複数のLEDユニット制御システムのアーキテクチャ全体を示すブロック図である。個別に制御される一連のLEDユニット(250−1〜250−N)内にLEDラインドライバ回路220を設置する。図2Aの例示的実施形態では、LEDラインドライバ回路220は外部電源回路210から電力を受信するが、これについては本明細書でのちに詳述する。LEDラインドライバ回路220はまた、マスターLEDコントローラシステム230からLED制御データも受信する。(本明細書では「LEDラインドライバ回路」についても述べるが、ラインドライバ回路は、ドライバラインに接続された、LEDの制御以外の動作を実行するその他のタイプの回路に、電力およびデータを送るのに使用することができることに注意されたい。)
マスターLEDコントローラシステム230は、ストリング上の個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)にある様々なLEDをオン/オフにする方法と、オンになっているLEDそれぞれの輝度とを記述した詳細な制御データを提供する。一実施形態では、個別に制御されるLEDユニット250それぞれが色の異なる複数のLEDを有するため、マスターLEDコントローラシステム230は色値および輝度を供給する。
マスターLEDコントローラシステム230は、適切なフォーマットでLEDラインドライバ回路220にLED制御データを提供するものであればどのようなタイプのデジタル電子システムでもよい。マスターLEDコントローラシステム230は、単純な単一チップのマイクロコントローラから多数のLEDストリングを調整して駆動する高度なコンピュータシステムに至るまで幅広いものであってよい。例えば、比較的単純な実施形態では、マイクロコントローラの部品を搭載したマスターLEDコントローラシステム230、電源210、およびLEDラインドライバ回路220を、LEDユニット250のストリングを制御する単一のLEDドライバ回路システム239の中に組み込むことができる。さらに高度な実施形態では、図1に示したようなコンピュータシステム100などの外部のコンピュータシステムを、信号発生装置118またはその他のあらゆる適切なデータ出力システムを用いてLEDラインドライバ回路220に適切なLED制御データ信号を出力するようにプログラムすることができる。
特定の一実施形態では、公知のシリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)を用いてLED制御データ231をマスターLEDコントローラシステム230からLEDラインドライバ回路220へ提供する。この方法では、多くのLEDストリングを、コンピュータシステム100などの単一のマスターLEDコントローラシステム230に接続し、これによってこれらのLEDストリングを制御することができる。しかし、代替実施形態では、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)、イーサネット(登録商標)、またはIEEE1394インタフェース(Fire Wire)など、その他の適切なデジタル通信システムを、LEDラインドライバ回路220にLED制御データを提供するために使用することができる。舞台照明用の使用を目的とする実施形態では、舞台照明を制御するのに使用される公知のDMX512−Aプロトコルに対応するように、データインタフェースをプログラムすることができる。このような実施形態では、複数のLEDライン駆動装置をデイジーチェーン構成に接続して、個別に制御されるLEDユニットの複数のストリングを制御することができる。
電源210から受信した電力211、およびマスターLEDコントローラシステム230から受信したLED制御データ231を使用して、LEDラインドライバ回路220は、個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)のストリング全体に電力と制御データの両方を供給する電流ループ(221から始まって229に戻るラインからなる)で、電子信号を駆動する。電力と制御データの両方を単線で供給するこのシステムにより、LEDの照明・ディスプレイシステムの設計および構築が大幅に簡易化される。その上、単線を使用して電力と制御データの両方を伝送することにより、複数のLEDを用いたディスプレイまたは照明システムなどの構築費が大幅に削減される。開示したシステムにより、単一の電流ループ(ドライバラインともいう)は、ストリング上の個別に制御されるLEDユニットに対して7つまたはそれ以上の異なる機能、例えば、(1)LEDユニット250への電力、(2)LEDユニットへの制御コマンドおよび構成コマンド、(3)LED出力データ、(4)ローカルクロック信号を発生するのに用いるクロック基準値、(5)LEDへの電流出力をキャリブレーションするのに用いる基準電流値、(6)熱放散、および(7)個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)を支持する物理的構造といった機能を果たすことができる。各機能の詳細については本明細書の後のセクションで説明する。
図2Bは、個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)とリンクしているドライバライン上で変調することができるデータフレームの一実施形態を示す。データフレームの先頭は、同期バイト291である。LEDユニット250に送られる別々のクロック信号はないため、LEDユニット250が同期バイトを用いてデジタルデータ信号の追跡を補佐し、新規のデータフレームそれぞれの開始箇所を決定する。次にコマンドフィールド292が、受信側のLEDユニット250が実行する特定のコマンドを指定する。アドレスフィールド293が特定のアドレス(またはアドレスグループ)を指定して、このコマンドに応答するLEDユニット(250−1〜250−N)を選択する。アドレスフィールド293の次は、データのペイロードを含むデータフィールド294である。最後に、オプションの巡回冗長検査(CRC)コード295を使用してデータの保全を行ってもよい。
再度図2Aを参照すると、多数の個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)は直列構成で(221から始まり229に戻る)ドライバラインに接続されている。個別に制御されるLEDユニット250はそれぞれ、1つ以上のLED、LED制御回路、および個別に制御されるLEDユニット250を完成するために必要なその他の追加のコンポーネントを備えている。一実施形態では、各LEDユニット250に必要な追加の電子コンポーネントは、LED制御回路および個別に制御されるLEDユニット250のLEDを駆動するための電気エネルギー貯蔵分を格納するコンデンサのみある。さらに大量の電流を扱うその他の実施形態では、電気エネルギーの貯蔵に用いるコンデンサに加え、外部ダイオードおよび小型のヒートシンクを使用してもよい。個別に制御されるLEDユニット250に接続されたLEDが2つ以上ある場合、LEDユニット250の異なるLEDをそれぞれLEDユニット250のLED「チャネル」と呼ぶ。
いくつかの実施形態では、2つ以上のコンデンサを使用して、個別に制御されるLEDユニット250を動作するための電力を貯蔵することができる。例えば一実施形態では、異なるコンデンサを使用して異なるLEDに対する電力を貯蔵する。このようにするのは、異なる色のLEDが異なる電圧レベルで作動し、色が異なるLEDそれぞれにコンデンサを組み合わせることによって、このコンデンサを使用して特定の色のLEDを駆動するのに必要な正味の電圧量のみを貯蔵することができるからである。この方法では、高い電圧量を必要とするLEDには高い電圧量を供給するが、低い電圧量を必要とするLEDには低い電圧量を供給する。こうすることによって、電圧ドロップ回路が非効率に使用されて過剰電圧を単純に排熱として消費してしまうことを防止する。
個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)それぞれにおいて重要なコンポーネントがLEDコントローラ回路である。LEDコントローラ回路は、個別に制御されるLEDユニット250の様々なLEDを合理的に制御するために必要なタスクのほとんどを実行する。これらのタスクには、ドライバラインからの電気エネルギーを取得し、LEDユニットへの給電に使用する電力コンデンサにこの電気エネルギーを貯蔵すること、LEDコントローラ回路を給電するのに必要な電圧を調節して産生すること、ドライバラインで変調したデータ信号を復調すること、復調したデータ信号を復号化してデータフレームを取得すること、データフレームで受信したコマンドを実行すること、および様々なLEDを特定の輝度レベルで駆動することなどが含まれる。これらの各機能の詳細については、個別に制御されるLEDユニットのセクションで述べる。
LEDラインドライバ
上記のセクションで記載したように、図2AのLEDラインドライバ回路220は、221から始まり229に戻るドライバラインで、LEDラインドライバ回路220に直接接続された個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)すべてに電力とLED制御データの両方を供給する役割を果たしている。LED照明・ディスプレイシステムの構築を簡易で安価なものにするため、LEDラインドライバ回路220は、単一のドライバラインでLEDユニット250すべてに電力と制御データの両方を供給する。この単線のドライバラインにより、個別制御可能な照明素子を多数使用する照明・ディスプレイシステムの構築が大幅に簡易化されるが、これは、このような個別制御可能な照明素子を、各照明素子を単線で接続した簡易なデイジーチェーン構成に構成することができるためである。
個別に制御されるLEDユニット250に電力を供給するため、LEDラインドライバ回路220は、単一のドライバラインで直流電流(DC)信号を駆動する電流源として機能する。いくつかの実施形態では、DC信号は名目上一定レベルで駆動する。しかし、主目的は、各LEDユニット250が追跡できるデータ信号と、LEDユニット250にエネルギーを供給するのに十分な電流とを供給することである。直列構成でドライバラインに接続された個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)はそれぞれ、直流電流信号からのデータを復調し、ドライバラインで駆動する直流電流信号から必要な動作電力を引き出す。
ストリング上の個別に制御されるLEDユニット250すべてにLED制御データを供給するため、LEDラインドライバ回路220はドライバラインで駆動される電流でデータを変調する。データの変調方法には様々な異なる方法を用いてもよい。本明細書では、使用した2つの異なる方法を記載するが、当業者に理解されるようなその他のデータ変調システムを実装してもよい。
一実施形態では、ラインドライバ回路は、定格電流レベルからわずかに上下する電流ランプを使用することによって、ドライバライン上でデータを変調する。このような実施形態では、各データビット周期は、正の電流ランプの後に負の電流ランプが続くか、負の電流ランプの後に正の電流ランプが続くかのいずれかを含む2サイクルに分割することができる。この2つの異なるデータパターンを利用してデジタル通信システム用の「1」または「0」を表すことができる。図3Aは、データを電流で変調する際の、LEDラインドライバ回路220が制御するドライバラインの電流を示すグラフである。図3Aの例では、論理的な「0」は正の電流ランプの後に負の電流ランプが続くことを表し、「1」は負の電流ランプの後に正の電流ランプが続くことを表す。各データ位相の内容には正の電流ランプと負の電流ランプの両方が含まれるため、ライン上の平均的な電流値は定格電流レベル310であることに注意されたい。図3Bは、定格電流レベル310前後の正弦曲線的な電流変化を使用する同様の実施形態を示す。
この他のデータ符号化手段には、マンチェスター方式符号化およびマンチェスターを用いたNon−Return−To−Zeroを使用するものがある。電流でデータを変調するその他の手段を使用してもよい。例えば、一代替実施形態では、論理的な「0」を指定するには第1の電流レベルを使用し、論理的な「1」を指定するには第2の電流レベルを使用することができる。この方法では、2つの電流レベルを切り替えることによってデータビットのストリームを符号化することができる。
図3Cは、「ディップモード(dip mode)」変調というもう一つのデータ変調システムを示す。図3Cに示すディップモード変調システムでは、各データビット周期が前半と後半に分割されている。次に、この変調システムは、データビット周期の前半または後半のいずれかで電流のディップを発生させることによってデータを変調する。図3Cの特定の実施形態では、「0」のデータビットは前半で電流のディップが発生したことを表し、「1」のデータビットは後半で電流のディップが発生したことを表す。図3Aおよび3Cにそれぞれ示したランプモードおよびディップモードのデータ変調システムに対する変調回路の例を説明していく。
ランプモードを使用する第1のLEDラインドライバ回路の実施形態
図4Aは、図3Aに示すシステムを用いてデータを変調する実施形態に対するLEDラインドライバ回路425の本質を示すブロック図である。図4AのLEDラインドライバ回路425は、「ランプモード」変調という電流変調システムを実装している。ランプモード変調システムは、1つのLEDラインドライバIC420、1つの電界効果トランジスタ(FET)、1つの誘電子、およびいくつかの抵抗を用いてデータを変調することができる低コストの実装を対象に設計されたものである。
LEDラインドライバ回路425の主要コンポーネントは、LEDラインドライバ回路425の全体動作を制御する高度なLEDラインドライバIC(集積回路)420である。LEDラインドライバIC420は、デジタル回路の駆動に必要なクロック信号を生成するためのクロック回路ブロック485を備えている。クロック回路ブロック485は、外部クロック486(または共振子)から入力を受信して、必要とされる様々な内部クロック信号を生成する。クロック回路ブロック485は、内部コアクロック生成用に外部クロック486から送られるクロック信号の速度を低下させるためのプリスケーラ、電源のリセット後にチップのクロックを確実に正しく起動させるいくつかの同期論理回路、およびドライバラインで変調したデータを正しいデータレートで送信するためのタイミング発生器を備えることができる。
図4AのLEDラインドライバIC420の左下を見ると、データインタフェース430が、図2Aに示したマスターLEDコントローラシステム230などの外部コントローラから制御データを受信している。データインタフェース430は入力される制御データを抽出し、この制御データをコマンドパーサおよびハンドラ回路440に転送する。単純な実施形態では、LEDラインドライバIC420自体が、LED制御データのパターンを生成する回路を備え、外部LEDコントローラを必要としないようにしてもよい。
特定の一実施形態では、データインタフェース430は公知のシリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)プロトコルを実装する。SPIの実装には、通常シリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)プロトコルが使用する標準的なデータイン432、データアウト431、データクロック(図示せず)、およびチップセレクト(図示せず)ピンを含めてもよい。SPIシステムの動作は特定の実装によって様々な異なる。従来のSPIの実装では、外部のSPIマスター(図2AのマスターLEDコントローラシステム230など)がLEDラインドライバIC420それぞれのデータイン432ピンにデータを送り、どのLEDラインドライバ回路がそれぞれのLEDラインドライバICのチップセレクトピンを作動させることによってデータに働きかけるべきかを指定する。SPIプロトコルは双方向のプロトコルであるため、個々のLEDラインドライバ回路が外部のSPIマスターシステムにステータス情報を送り返すことができる。LEDラインドライバ回路の一実施形態では、キャリブレーション情報およびバッファステータスに対する要求などのステータスクエリに応答を返すための返信用データパスを使用する。SPIプロトコルの代替実装形態では、データアウト431ラインは、デイジーチェーン構成の別のLEDラインドライバ回路のデータインインタフェースに接続することができるため、一連のLEDラインドライバ回路を単一のマスターLEDコントローラシステムで制御することができる。
コマンドパーサおよびハンドラ回路440は、入力される制御データを検証し、入力される制御データに適切に反応する。一実施形態では、LEDラインドライバIC420は入力されるコマンドのうち3つの主な種類(構成要求、ステータス要求、およびこのドライバラインに接続している個別に制御されるLEDユニットへと、ドライバラインを下ってデータを転送する要求)を処理する。構成要求はLEDラインドライバIC420に対し、指定した制御レジスタを制御およびステータスレジスタブロック441にセットするよう命令することができる。構成要求はまた、LEDラインドライバIC420に対し、LEDラインドライバIC420の不揮発性構成のヒューズを溶断するように命令し、LEDラインドライバIC420に恒久的な構成情報をプログラムすることができる。入力されるステータス要求は、LEDラインドライバIC420からバッファステータス、動作ステータス、および電流構成などのステータス情報を要求することができる。LEDラインドライバIC420に送られるこのようなステータス要求は、制御およびステータスレジスタ441からの情報をフェッチして、データアウトライン431上にあるマスターコントローラに応答を送信することによって処理してもよい。
LED制御データをドライバラインから個別に制御されるLEDユニットに転送するためにマスターLEDコントローラからLEDラインドライバIC420へ送られる要求は、一般に、LEDラインドライバICとの通信の大部分を占める。コマンドパーサおよびハンドラ回路440は、LED制御データをラインデータ送信ブロック450に転送することによって要求を転送する、これらのLED制御データを処理する。ラインデータ送信ブロック450は、制御データをフレームバッファへ格納する。図4Aの実施形態では、LEDラインドライバIC420は2つのフレームバッファ(451および452)を備えているため、LEDラインドライバIC420は、マスターLEDコントローラから第1のフレームバッファに入力されるLED制御データを受信することができる一方で、第2のフレームバッファから送られるLED制御データをドライバラインで同時に変調する。フレームバッファ(451および452)は、ドライバラインに接続している1つ以上の個別に制御されるLEDユニット(470−1〜470−N)に対して一時的にLED制御データを格納する。
いくつかの実施形態では、LEDユニット470はLEDラインドライバIC420に通信し返すことができる。例えば、指定した時間帯にシャントトランジスタをオン/オフにすることによって、LEDユニット470がLEDラインドライバIC420に信号を送り返すことができるため、LEDラインドライバIC420によってその効果を検出することが可能になる。このような実施形態では、データイン432に入力されるステータス要求のメッセージが、ドライバラインに接続された個別に制御されるLEDユニット470からステータスを要求することができる。するとコマンドパーサおよびハンドラ回路440は、このLEDユニットステータス要求を第2のステータス要求メッセージに変換し、次にこのメッセージはラインデータ送信ブロック450に送られ、ドライバラインで変調される。LEDユニット470から応答を受信すると、LEDラインドライバIC420はこれに対応する応答メッセージをデータアウトライン431に送る。
ラインデータ送信ブロック450は、LED制御データ(いくつかの実施形態ではステータス要求も)をドライバラインでLEDユニット470へ送信する役割を果たす。ラインデータ送信ブロック450は、コマンドパーサおよびハンドラ回路440からこのブロックに転送された制御データ(またはステータス要求)を取り出して、次に利用可能なフレームバッファに充填する。一実施形態では、ラインデータ送信ブロック450は、オプションのフレームである巡回冗長検査(CRC)のバイトを(制御レジスタ441がこうするように指定すれば)計算することができる。一実施形態では、ドライバラインで変調する保留中のLED制御データ(またはステータス)がラインデータ送信ブロック450にない場合、ラインデータ送信ブロック450はアイドル状態のデータフレームをドライバラインで変調する。アイドル状態のデータフレームは、個別に制御されるLEDユニット470のいずれの対象にもならないが、これらの個別に制御されるLEDユニット470がドライバラインで変調されたデータストリームとの同期を維持するのを補佐する。
ラインデータ送信ブロック450は、フォーマットしたデータフレームをフレームバッファ(451および452)から電流変調ブロック490へと転送する。電流変調ブロック490は、(名目上)一定の直流電流信号をドライバラインで変調して、データストリームをドライバライン上のLEDユニット470に供給する役割を果たす。特に、電流変調ブロック490は、電流を短く急激に増減させることによって電流を変調し、ドライバラインの下流にLED制御データを送信してLEDユニット470を制御する。一実施形態では、電流変調ブロック490は、ドライバラインでインダクタにバイアスをかける外部トランジスタを制御することによってこの目的を達成する。
電流変調ブロック490についてさらに詳細に説明する前に、電力源について概説しておくとわかりやすい。ほとんどの電子回路は、電力源として電圧力を使用して電子回路に給電するように構成されている。理想の電圧源とは、特別に設定した電圧レベルで電流を無限に産生して負荷回路を駆動することができ、内部抵抗がゼロである概念上の数学的モデルである。もちろん電池やDC電源などの現実世界の電圧源は、電流を無限に産生することはできないし、内部抵抗をゼロにはならない。しかし、現実世界の電圧源で給電する負荷回路が現実世界の電圧源の電流容量を超過せず、ゼロではない内部抵抗を負荷回路に直列に加えるかぎり、電圧源をモデリングする回路に理想の電圧源を使用することができる。
電子回路を設計する際に、電力源のモデリングに電流源を使用する方法は遙かに少ない。理想の電圧源とは、無限の内部抵抗があり、特定の電流レベルで無限の電圧を産生して負荷回路を駆動することができる電力源の数学的モデルである。これも同じく、現実世界の電流源で無限の電圧を供給できるものはなく、現実世界の電流源で抵抗が無限のものはない。しかし、現実世界の電流源で駆動する負荷回路の抵抗全体が高すぎるためにきわめて高い電圧値を必要とすることがないかぎり、理想の電流源と並列接続した無限ではない内部抵抗を備える理想の電流源として現実世界の電流源をモデリングすることができる(ノートン等価回路として知られる回路)。本開示では、電力源モデルとして電流源を使用している。特に、LEDラインドライバIC420およびサポートする外部回路の電流変調ブロック490も、動作中に調整可能な定格レベルを指定してドライバラインで電流を駆動するのに使用してよい。さらに、電流変調ブロック490は、電流をわずかに増減させることにより特定の定格電流値前後で電流レベルを変動させ、図3A〜3Cに記載したように、電流でデータを変調するのに使用した定格電流値から離れた値に変動させることができる。
再度図4Aを参照すると、外部電源410が電流を産生し、この電流はLEDユニット470を通ってドライバラインの下流へ送信されている。ドライバラインの先頭における外部電源410の出力電圧(Vsupply411と表記)は、ドライバライン上のLEDユニット470すべての合計が必要とする分を上回る電位である。電流はストリング上のLEDユニット470をすべて通過したのち、インダクタ462および電界効果トランジスタ(FET)461を通ってアースへと流れる。電流変調ブロック490は、FET461を用いてインダクタ462を制御することによってドライバライン上で電流レベルを慎重に変調し、図3Aに示す変調した電流パターンを生成する。FET461は、通常のCMOS半導体内では処理できない比較的高い電位を処理することができるため、FET461は一般にLEDラインドライバIC420の外部に実装されることに注意されたい。
再度図3Aに示した電流のグラフを参照すると、ドライバラインの電流は、ドライバラインでデータを変調するのに使用する一定の定格電流値310の上下でわずかに変動して、一定の定格電流値310の前後で変調されている。図5A、5B、および5Cは、LEDラインドライバ回路がFET561を用いて、指定した定格電流値310前後の電流を変調してインダクタ562を制御する様子を示す。代わりにFET以外の電流制御回路を使用してもよいことに注意されたい。
定常状態の直流電流(DC)回路では、インダクタが、回路に影響を及ぼすことなく短絡として働く。しかし、状態が変化すると、インダクタが電流レベルの変化に対抗する。そのため、インダクタを通過する電流が増加すると、このインダクタはエネルギーを磁場に貯蔵することによって電流の増加を遅らせる。同じように、インダクタを通過する電流が減少すると、このインダクタは、磁場に貯蔵したエネルギーを使用することによって電流の減少に対抗し、減速している電流を補足する。
図5Aを参照すると、LEDラインドライバ回路425を最初にオンにすると、このLEDラインドライバ回路は、FET561をオンにして電流がVsupply511から下へ向かってストリング上のLEDユニット570すべてに流れ、インダクタ562、(電流を制御する)FET561、そして最後に抵抗564を通って電源のアース565へと流れるようにする。外部電源のVsupply511から外部電源のアース565までのこの電気経路を電流ループという。インダクタ562の後には分岐回路があるため、電流は外部電源から第2の電圧源Vclamp512を通ってダイオード563まで流れることに注意されたい。しかし、Vclamp512はアース565よりも高い電位になるため、FET561がオンになっても電流はVclamp512の方には流れない。
FET561を最初にオンにすると、図5Cに示すように電流はドライバ回路上で増加する。しかし、電流の増加は、磁場にエネルギーを貯蔵することによって急速な電流増加に対応するインダクタ562によって遅くなる。そのため、ドライバラインの電流は、図5Cに示すように開始段階521で上向きに傾斜する。図5Aに「+」および「−」の符号で表示したように、この間にインダクタ562を介して電圧降下があることに注意されたい。LEDラインドライバIC420は、この開始段階521の間FET561をオンに維持し、ドライバラインの電流レベルが所望の定格電流レベル510を指定した量だけ超える電流になるまで増加できるようにする。
ドライバラインを流れる電流が所望の定格電流レベル510を指定量だけ超えると、LEDラインドライバIC420は図5Bに示すようにFET561をオフにし、電流がFET561を流れて電源のアース565に向かわないようにする。しかし、インダクタ562は電流の流れの急激な変化に対抗し、代わりに、図5Cの電流低下531で示したように、逆に電流が下に向かって傾斜し始めるようにする。電流はもはやFET561を通ってアース565には流れないため、代わりに流れが遅くなった電流が分岐回路に流れ、FET561をオフにしたときの電流の流れを示す図5Bに示したように、ダイオード563を通ってVclamp512へ向かって流れる。これは、Vclamp512の電圧がVsupply511より高い場合であっても起こる。なぜなら、インダクタ562は磁場にあるエネルギーを使用して電流を駆動し続けるためである。
電流は、FET561をオフにしただけで下降し始めるが、FET561をオフにするだけで起こる下降するランプは比較的緩慢である。(FET561がオンのときに電流が上昇するランプと比較して緩慢であるため、電流ランプの上昇と下降とは非対称となる。)電流の下降するランプを加速させ、それによって上向きと下向きの電流ランプをおおよそ一致させるため、Vclamp512をVsupply511よりも高い電位に設定し、(図5Bに符号「+」および「−」の符号で表示したように)インダクタ562に逆電圧バイアスをかけて、電流の下向きのランプを加速させるようにする。
図5Cを参照すると、電流531が指定量よりも低下して所望の定格電流値510よりも下がると、LEDラインドライバはFET561をオンにし(図5Aの状態に戻る)、電流上昇532で図示したように再び上昇するランプになる。LEDラインドライバIC420は、ドライバラインの電流が直流電流の最終的な定常状態とならないようにする。逆に、このドライバ回路はFET561のオンとオフを繰り返して、ドライバラインの電流を所望の定格電流レベル510前後に維持する。
FET561をオン/オフにすることによって、LEDラインドライバIC420は、上昇ランプと下降ランプが比較的安定した状態のドライバラインを流れる電流量を変調することができる。制御データを相関させる方法でFET561をオン/オフにすることにより、LEDラインドライバIC420はドライバライン上の制御データを図5Cのデータ段階522で示す電流パターンと同じように変調することができる。LEDラインドライバIC420に送信されるはずのデータが足りないと、LEDラインドライバIC420はドライバライン上の空のパケットを変調することに注意されたい。このようにすると、ドライバライン上にある様々なLEDユニットは、LEDラインドライバIC420が変調したデータストリームとの同期を維持することができる。
再び図4Aを参照すると、電流変調ブロック490はラインデータ送信ブロック450からデータフレームを受信し、電流ランプのパターンのようにドライバラインで変調している。前述したように電流変調ブロック490は、(電流を電源410のアース465に通すことによって電流を上昇させる)外部FET461をオンにするか、(逆バイアスをインダクタ462に印加することによって電流を下降させる)外部FET461をオフにすることによって、このタスクを達成することができる。
ドライバラインの電流を基準電流値として使用する特定の実施形態では、電流変調ブロック490は、電流の変化によってドライバライン上でデータが変調されたとしても、電流の平均が確実に、所望していた適切な定格直流電流(DC)レベルになるようにする役割を果たす。このようにして、ドライバラインに接続するLEDユニットは、ドライバラインの平均電流レベルを検出し、この電流レベルを基準電流値として使用することができる。特に、ドライバラインに接続するLEDユニットは、LEDユニットに接続するLEDを駆動するのに使用する電流を生成する際に、ドライバライン上の平均電流レベルを基準電流として使用することができる。
電流変調ブロック490は、自らの内部FET493を制御することによって外部FET461を制御することができる。一実施形態では、内部FET493を10ボルトの変動を処理するように設計し、ドライバラインの電流を制御する役割を直接果たしているさらに大きい外部FET461を制御できるようにする。
ドライバラインの電流でデータを変調することは容易なプロセスではない。ドライバライン上で様々なLEDユニット470を動作させることで、LEDラインドライバ回路425がドライバライン上で電流を安定して制御することが困難になる。特に、図5Aのように、様々なLEDユニット570は、ローカルコンデンサを充電する電流を流すか(これによってLEDユニットにより大きい電圧降下が起こる)、ライン電流を分路して(これによってLEDユニットに小さい電圧降下のみが起こる)、Vsupply511とVline514との間の電圧降下がLEDユニットの分路の有無に応じて変動するようにする。その結果、インダクタ562にかかる電圧も同じように変動するため、(FET561がオンのときの)上昇する電流ランプは常に正確に同じ勾配にはならない。これと同じ現象が下降する電流ランプにも起こる。特に、図5Bのように、LEDユニット570にかかる電圧が変動することで、Vclamp512からインダクタを介してVline514までかかる逆電圧バイアスは常に同じにはならないため、下降する電流ランプの傾斜は変動する。この現象を軽減するため、様々なLEDユニット570がデータビットのエッジ付近で時間どおりに分路を停止するのを制限する必要がある。それでも、LEDユニット570がデータビットのエッジ付近で分路したり分路を停止したりすることは、依然としてデータの変調・復調タスクに影響を及ぼす。
理想は、LEDラインドライバ回路425が生成する電流ランプが、常に定格電流値610で開始/終了し、図6Aに破線で描いた理想の電流ランプで示したようにビット周期の半分ずつが完全に対称となることである。しかし、ドライバライン上の条件が変化すると、このような理想の電流ランプが常に達成されるとはかぎらない。例えば、ドライバライン上で累積するLEDユニット570に比較的小さい電圧降下が起こると、インダクタ562により高い電圧がかかり、電流が図6Aの(破線で示した)理想の電流ランプよりも速く増加する。電流ランプのピークの正確な高さは、検出に必要な閾値の量よりも大きければそれほど重要ではないことに注意されたい。
これを補償するため、下降する電流ランプは、(予測した下降傾斜を計算に入れて決定した)適当な時間で開始し、電流レベルがデータ周期の中央で定格電流レベル610と交わる必要がある。図6Aの例では、下降する電流傾斜は理想の傾斜よりも緩いため、下降段階が通常よりも早く開始し、電流ランプのピークがやや左にシフトしている。一般に、ランプの前半部分での傾斜の絶対値が、ランプの後半部分での傾斜の絶対値よりも大きければ、ピークはより早く(図の時間軸を左に)シフトし、ランプの前半部分での傾斜の絶対値が、ランプの後半部分での傾斜の絶対値よりも小さければ、ピークはより遅くに(図の時間軸を右に)シフトする。
電流ランプを慎重に生成するために、LEDラインドライバ回路425の電流変調ブロック490は、電流の挙動モデルを作成して外部FET461を変化させる正確な時間を推定することができる。電流ランプのモデリングには様々な異なる方法を用いることができる。特定の一実装では、電流変調ブロック490は、電流ランプのモデリングにアナログコンピュータを用いて、FETをいつオン/オフするかを決定する。
図4Aを参照すると、電流変調ブロック490は、ランプA491およびランプB492と表記した実質的に同一のアナログコンピュータ回路を2つ備えている。電流変調ブロック490はこの2つのアナログコンピュータ回路を交互に使用し、データ周期の前半で1つのアナログコンピュータを使用し、データ周期の後半でもう1つのアナログコンピュータを使用する。2つのアナログコンピュータ回路はそれぞれアナログランプ回路を使用して電界効果トランジスタ(FET)493のゲート信号をオン/オフにする時期を推定し(これによってより大きい外部トランジスタ461を実際にオン/オフにする)、電流ランプの終わりをビット周期半分の終わりで再び定格ライン電流値まで戻す。一実施形態では、これらのアナログランプ回路は、FET493を瞬時に切り替えた場合に、ビット周期の残りの半分でどれだけの電流が変化するのかというモデルを作成する。上昇勾配の場合では、このモデルは、FET493を瞬時に切り替えた場合にどれだけの電流がその時の量から降下するのかを明確にする。これは、ビット周期半分の開始時点でFET493を切り替えた場合に大量の電流が降下することもあれば、ビット周期半分の終了時点でFET493を切り替えても電流は一切変化しないこともあり、様々である。
上記で述べたように、電流が変化する速度はインダクタ462にかかる電圧によって異なる。インダクタ462にかかる電圧を算出するために、電流変調回路490にはVline414、Vclamp412、およびVfetsrc417の3つの異なる電圧値を用意する。FET461をオンにするとき、インダクタ462にかかる電圧は、Vline414から(FET461にかかるわずかな降下を差し引いた)Vfetsrc417までの電圧差として算出する。FET461をオフにするとき、インダクタ462にかかる電圧は、Vline414から(ダイオード463かかるわずかな降下を差し引いた)Vclamp412までの電圧差として算出することができる。これらの電圧値を用いて、(傾斜で示される)電流変化の率を推定し、FET461を切り替える正確な時間を決定するのにこの率を使用することができる。これらの電圧値は、実際には抵抗を流れる電流として読めるが、この電流はオームの法則により電圧に比例することに注意されたい。
アナログコンピュータ回路(ランプA491およびランプB492)は、ランプ回路および乗算回路を用いて実装することができる。ランプ回路は、固定のフルスケール値で開始し、ビット周期半分の終わりでゼロまで下降するランプ信号を生成するのに使用する。するとこのランプ信号には、(グラフに傾斜で示した)電流変化の率を決定する電圧差の値がアナログ乗算回路で乗算される。そのときにFET493をオンにすると、ランプ信号にはVclamp412−Vline414と相関関係にある量が乗算される。この量がFET493をオフにしたときにインダクタ462にかかる電圧となるためである。そのときにFET493をオフにすると、ランプ信号にはVfetsrc417−Vline414と相関関係にある量が乗算される。この量がFET493を再度オンにしたときにインダクタ462にかかる電圧となるためである。
アナログランプ回路の出力は、電流がドライバラインを流れる現在時間(またはこの電流が流れる推定時間)の値と組み合わせる。現在の電流と定格電流レベルとの差である絶対値がランプ回路の予測どおりに起こる電流変化の量と等しいとき、FET461の状態が変化する。FET461をオンにしたときのドライバラインの電流は、Vfetsrc417の電圧値から算出することができる。ドライバラインの電流は、オームの法則により、Vfetsrc417の電圧を抵抗464の抵抗値で割った値と等しいからである。しかし、FET461をオフにしたときは、最後に測定した電流値とVline414およびVclamp412によって決まるインダクタ462にかかる電圧値とを用いて、ライン電流推定回路495を使用してFET461がオフのときのドライバラインの電流を推定することができる。
ランプ回路の動作を最適な形で説明するため、図6Bを参照していくつかの例を提供する。データ周期の開始時点で、ランプ回路の1つを充電し、インダクタにかかる電圧差の分だけ乗算し、FET493を瞬時に切り替えた場合に起こる電流変化の量に対応する値を生成する。この電流変化の量は、(適切に充電したと仮定して)ビット周期半分の終わりでゼロまで下がる。この概念は図6Bに、インダクタにかかる様々な異なる電圧値を描いたライン651、652、および653として示している。ラインはそれぞれ、FETを瞬時に切り替えた場合の、定格電流レベル610に対する電流の降下量が最大になる点から始まり、ビット周期半分の終わりの地点691で電流ゼロまで降下する。異なるライン651、652、および653の傾斜は、インダクタにかかる電圧に基づいて電流がどれほど速く変化するかを示している。
アナログコンピュータの出力を使用するため、(定格電流レベル610に対する)現在の電流値を、ランプ回路によりビット周期の残り半分で起こると予測される電流降下と比較する。現在の電流値が予測した電流降下の量と交わると、FET493を切り替える。図6Bのグラフでは、3つの異なる例が示されている。第1の例では、電流の増加661は、予測した電流降下率651よりも速いため、システムは中間地点631よりも前にFET493を切り替え、電流ランプのピークを左にわずかにシフトさせる必要がある。電流上昇率と電流降下率はいずれもインダクタにかかる電圧の影響を受けるため、異なる例における電流上昇率それぞれについて、予測する電流降下率が異なる点に注意されたい。別の例では、電流の増加663は予測した電流降下率653よりも遅いため、システムは中間地点631よりも後にFET493を切り替え、電流ランプのピークを右にわずかにシフトさせる必要がある。電流増加率662が予測した電流減少率652と実質的に等しい場合、中間地点631が中央となる理想のランプが形成される。しかし、電流ランプのピークが中間地点631から適度な距離以内に収まっているかぎり、電流ランプを正確に識別するにあたって復調論理回路に問題が生じることはない。
前述したように、FET493をオフにすると、図5に示すように電流が一時的にVclamp512の方へ流れるため、ドライバラインを流れる電流を算出するのは困難である。そのため、図4のVfetsrc417での電圧を測定することによって電流を算出する技術は、抵抗464に電圧を生成するための電流が流れないため使用できない。代わりに、別のランプ回路であるライン電流推定回路495を使用して下降ランプにある電流を推定することができる。そのため、再度図6Bを参照すると、ライン電流推定回路495は、予測ライン680で示したようにドライバラインの電流を予測するのに使用することができる。電流変化率はインダクタにかかる電圧降下と相関関係にあることにも注意されたい。同じように、ランプ回路のどちらか(491または492)は、FET493を瞬時に切り替えた場合に、ビット周期の残り半分で電流が増加する量を予測するのに使用する。2つの予測回路が(定格ライン電流に対して)同じ絶対値を出力すると、FET493を切り替える。
電流変調ブロック490の内部ロジックは、様々な異なる方法で実装してよい。一実施形態では、システムは、FET493がVfetsrc417の電圧を測定している際にラインの電流をデジタルで算出する。すると、デジタルアナログ変換器(DAC)がこのデジタルの電流値をアナログの電流値に変換し、アナログランプ生成器(491または492)が出力したアナログの電流降下予測値と比較する。2つの値が同じであれば、システムはFET493を切り替える(これによってより大きい外部トランジスタ461を実際にオン/オフする)。
図6Cを参照すると、上昇する電流ランプの後に下降する電流ランプが続くデータ周期の全体が示されている。時間区間620では、アナログランプ回路のどちらか(ランプA491など)を充電して移行時間の算出を補助する。時間621では、FET461を(まだオンになっていなければ)オンにして電流増加を開始し、充電したアナログランプAの回路491を起動する(FETのスイッチをオフにしたときに電流がどのくらい降下するかを表示させる)。時間区間622では、(Vfetsrc417の電圧値から計算した)ドライバラインの電流をアナログランプA回路491の出力と比較し、FET493をオフにした場合にビット周期の残り半分で電流がどのくらい降下するかを予測する。2つの値が(互いの閾値以内で)実質的に等しければ、電流変調ブロック490はFET461を切り替え、これによって電流レベルは時間区間624で再び定格電流値610まで下がることができる。
システムがFET461の状態を変更すべきと決定する時間、およびこの変更による影響がFET461で検出可能になる時間は、伝播の遅延により等しくはならない。特に、比較回路には遅延がみられ、内部ドライバ回路FET493が起動される際に遅延がみられ、また、外部FET461が起動される際に遅延がみられる。これらの伝播の遅延を補償するため、調整因子を用いて2つの値が等しくなる少し前にFETの状態を変更することをランプ回路(491または492)が要求するようにしてもよい。これは、一実施形態では、コンパレータ回路の入力に一定のずれを設定することによって実装でき、その結果、コンパレータを早期に発動させることができる。このように本システムは、2つの値(電流値および予測した電流降下値)が互いの所定の閾値内になると、FETの状態を変更する。このようにして、FETは、2つの値(ライン電流および予測した電流降下)が実際に交わるときの正確な時間よりも少し早く切り替わる。閉鎖ループシステムを用いて、コンパレータに対する一定のずれを調整するための正確な値を算出してもよい。
時間区間624では、ドライバラインの電流は再び定格電流値610に向かって降下する。システムが電流の挙動を正確に予測した場合、電流レベルはデータビット周期の中間地点625で定格電流値610を通過する。下降する時間区間624では、電流変調ブロック490は他のアナログランプ回路(ランプA491はデータ周期の前半で使用したためランプB492など)を充電し、FET493が再びオンにした場合に電流が上昇する量を予測する。下降する電流ランプで測定する代わりにドライバラインの電流を予測する実施形態では、システムはまた、降下したときの電流レベルを予測するライン電流推定回路495を充電する。
データ周期の中間地点625では、充電したアナログランプB回路492および充電したライン電流推定回路495が起動する。その上、データ周期の中間地点625での電流レベルをサンプリングして、システムが電流レベルを定格電流レベル610に戻すのに必要な(ビット周期の前半での)移行時間を正確に算出したかどうかをみることができる。利用できる電流サンプルがない場合は、データビット周期の中間地点625でのランプ回路の最終出力を検査すればよい。中間地点625での(実際のまたは予測した)電流レベルが定格電流レベル610よりも低い場合、アナログランプA回路を使用するパラメータを調整して降下を和らげる(電流降下の予測率を軽減する)ことができる。逆に、中間地点625での(実際のまたは予測した)電流レベルが定格電流レベル610よりも高い場合は、アナログランプA回路を使用するパラメータを調整して降下を加速させる(電流降下の予測率を上昇させる)。
データ周期後半の段階626では、(ライン電流推定回路495を用いて推定するように)推定したドライバラインの電流レベルをアナログランプB回路492の出力と比較し、FET493を瞬時にオンにした場合にビット周期の残り半分で電流がどのくらい上昇するかを予測する。この比較が地点627で特定の閾値以内であれば、FET493をオフにして電流レベルを上昇し始める。ここでもまた、伝播の遅延を調整する因子(閾値など)を用いて、2つの値が等しくなる少し前にFET493をオンにするよう要求することができる。FET493を再度オンにしたあと、電流レベルは、時間区間628の間、データ周期の終わりが地点629に達するまで上昇する。時間区間628では、電流変調回路490は、次のデータ周期で使用する他のアナログランプ回路(この例ではランプA491)を充電する。
データ周期の最終地点629では、電流変調回路490は電流レベルをサンプリングし、電流レベルが定格電流レベル610に戻るための移行時間をシステムが正確に推定したかどうかを判断する。最終地点629の電流レベルが定格電流レベル610よりも低い場合、アナログランプB回路を使用するパラメータを調整して降下を加速させる。逆に、最終地点629の電流レベルが定格電流レベル610よりも高い場合、アナログランプB回路を使用するパラメータを調整して降下を和らげる。
図4Aに示した特定の実施形態では、電流変調回路490は、アナログコンピュータとしてアナログランプ回路(491および492)を使用し、FET461をいつ切り替えるかを推定するために、FET461が切り替わるときのライン電流の挙動を予測したモデルを作成した。アナログランプ回路(491および492)は、使用後の結果を毎回検査してアナログランプ回路に対するパラメータを調整する必要があるかどうか、それによって閉鎖ループシステムを形成するどうかを判断するデジタルシステムによってキャリブレーションされる。
しかし、他の様々な代替実施形態では、ビット周期半分の終わりで電流レベルを定格電流レベルに戻すためにいつFET461を切り替えるかを予測するのにデジタルシステムを使用することができる。このようなシステムでは、アナログ−デジタル変換器を用いて様々な関連する値をサンプリングしたのち、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)などのデジタルコンピュータシステムを用いて、いつFETを切り替えるかを判断する。このような実施形態では、デジタルコンピュータシステムを用いて、FET461を切り替えた場合のドライバラインの電流の今後の挙動をモデリングしてもよい。同じように、デジタルコンピュータシステムは、電流を容易にサンプリングできない場合のライン電流を推定することもできる。しかし、このようなデジタルシステムの実装は、高速のアナログ−デジタル変換器、デジタルプロセスを実装するためのさらに広いダイ面積を必要とし、先に開示したようなアナログシステムよりも多くの電力を消費する。
電流変調回路490の大きく異なる実施形態では、カレントミラーを用いてドライバラインの正確な電流を駆動することができる。しかし、このような実装では、開示したようにトランジスタ461を組み合わせ、ドライバラインの電流を制御するインダクタ462を制御するものよりも効率が下がることがわかっている。
再度図4Aを参照すると、LEDラインドライバIC420は電源システム回路ブロック480を備えている。この電源システム回路ブロック480は、外部電源410から電力源を受信し、この電力を用いて必要な電力信号を生成し、LEDラインドライバIC420を作動させる。一実施形態では、電源システム回路ブロック480は、約10ボルトの比較的高い電圧源から受電し、この電圧源は電流変調ブロック490でFET493を駆動するのに使用される。これ以外に必要な電圧レベルは入力電圧源から産生され、LEDラインドライバIC420内の他の回路に対して電圧源を形成する。様々な電圧レベルを形成するには、電源システム回路ブロック480によってバンドギャップ基準電圧回路を使用する。一実施形態では、高電圧の入力を使用して、アナログ回路を駆動するのに調節した5ボルトの電源と、LEDラインドライバIC420内のデジタル回路に給電する3ボルトの電源とを産生する。
一実施形態では、電源システム回路ブロック480から得られる3ボルトの電源および/または5ボルトの電源には余分な電流を産生する能力があるため、この3ボルトの電源および/または5ボルトの電源は、小型の外部デバイスに給電するのに使用することができる。例えば、電源システム回路ブロック480から得られる3ボルトの電源および/または5ボルトの電源は、LEDラインドライバ回路425に接続されたマイクロコントローラデバイスなどの小型のマスターLEDコントローラシステムに給電するのに使用できる。
LEDラインドライバIC420は、安全と法規遵守のため、漏電遮断器(GFCI)システムを実装できる。特に、LEDラインドライバIC420の電源システム480は、VSupply411の地点から始まるドライバラインの下流に向けてどれだけの電流が送られるかという情報を外部電源410から受信できる。あるいは、LEDラインドライバIC420は、電流センサを用いるなど、先行技術によるいくつかの公知の方法でこの電流を検出できる。このソース電流量はその後、ドライバラインの終端の電流量(出力電流)と比較することができる。例えば、ドライバラインの終端に到達する電流量は、地点Vfetsrc417の電圧を測定することで検出できる。(一部の電流はVClamp412の位置に向かっても流れるため、この位置を流れる電流も考慮する必要があることに注意されたい。)ソース電流が出力電流と著しく異なる場合、一部の電流がドライバラインの終端である電源410のアース465以外の位置のアースに漏電することがある。地点Vfetsrc417およびVClamp412以外の位置に漏れている電流がある場合、危険を及ぼす可能性のあるいくつかの不具合が生じることがある。これに対する対応として、LEDラインドライバIC420は、システムをオフにし、ドライバラインの下流への電流駆動を停止することができる。いくつかの実施形態では、LEDラインドライバIC420は、一定時間停止した後、しばらくしてから動作を再開させ、問題を誤診していたか単なる一過性の問題かを判断することができる。一過性の問題または重大な問題が検出されると、LEDラインドライバIC420は、データ出力431を用いるコントローラシステムまでエラーおよび診断情報を送信する。
ディップモードを用いるLEDラインドライバ回路の第2の実施形態
先に述べたように、ドライバライン上でデータを変調するのに使用できる様々な異なる方法がある。図4Bは、LEDラインドライバ回路425に関する第2の実施形態を示し、この実施形態では、電流でデータを変調するための様々な外部回路に沿って、異なるタイプの電流変調ブロック490を使用する。特に、電流変調ブロック490およびその外部回路は「ディップモード」変調システムを実装しており、このシステムにでは図3Cのタイミング図に示したように、電流のディップを用いて定格電流でデータを変調する。
図4Bを参照すると、LEDラインドライバ回路425は、2つの外部電界効果トランジスタ(FET)(481および482)および二重巻線インダクタ483を使用している。電流変調ブロック490は第1のFET481を使用し、インダクタ483の一次巻線を使用する標準のフォワード変換器で構成したドライバラインループの定格電流を維持する。電流変調ブロック490は第2のFET482を使用し、インダクタ483の二次巻線を駆動して第2のFET482がループの電流を迅速に0まで降下できるようにする。この電流の降下は「電流ディップ(current dip)」と呼び、電流変調ブロック490はこのような電流ディップを用いてライン上でデータを変調する。電流変調ブロック490は、アース465へ向かう抵抗464の直前の電圧を測定することでドライバラインの電流をモニタリングするループ電流感知回路496を備えている。
一実施形態では、電流変調ブロック490は、電流降下のタイミングを変調することでドライバライン上のデータを変調する。このようにして、ドライバラインに接続されたLEDユニットは、電流降下を検出し、様々な電流降下の相関的なタイミングを算出することでデータを復調する。例えば、図3Cのタイミング図では、ラインドライバ回路は、データビット時間区間の1/4の時点で電流ディップを発生させて「0」のデータビットを変調し、データビット時間区間の3/4の時点で電流ディップを発生させて「1」のデータビットを変調する。
単一の二重巻線インダクタを使用するよりも、2つの異なるインダクタをシステムに実装するとよい。ドライバラインの電流を維持するには第1のインダクタを使用できる。第2の電流降下ドライバ回路FET482を用いて電流降下を発生させるには、第2のインダクタを使用できる。このような実施形態では、アースへ向かうFETのソース端子内の抵抗を使用し、ループ電流が適切な値に達したときに維持電流として機能するFET481をオフにし、第2のFET482が1ビットを変調して電流が適切な値よりも下がったときにFET481を再びオンにすることでループ電流を感知できる。
エネルギー要求に基づいて調整可能な電流
本開示のシステムでは、ドライバラインに接続されたユニット上の回路を駆動するのに使用する電流は、ドライバラインで駆動する電流から切り離す。特に、ドライバラインに接続する個々のユニットは、コンデンサ内に独自のローカルエネルギー貯蔵分を生成し、このローカルエネルギー貯蔵分を使用して動作する。そのため、各ユニットにドライバラインの電流よりも遙かに大きいローカル電流(LEDの駆動に使用する電流など)を生成することが可能である。しかし、ドライバライン上の個々のノードすべてが使用する電力平均の合計は、ラインドライバ回路がドライバラインに供給する平均の合計を上回ることはない。そのため、個々のユニットが使用するピーク電力は、エネルギー貯蔵分として働くローカルコンデンサの使用により、ドライバライン上で利用可能な電力を一時的に上回ることがある。
ドライバラインに接続する個々のユニットすべてが使用する累積電力が、ドライバラインの電流で利用可能な電力量よりも著しく低くなる場合、ドライバラインの電流から得られる電力のいくらかは無駄になってしまう。特に、個々のユニットへの分路やドライバラインの配線自体など、ドライバライン上の様々な抵抗素子によって、I2Rに比例する電力が無駄になる。ここでのIはドライバラインの電流であり、Rはドライバライン上の抵抗素子の累積抵抗値である。
この不要なエネルギー損失を防ぐため、ドライバライン上の個々のノードが必要とする電力が少ないことがわかっているときは、代わりにラインドライバがドライバライン上の電流量を削減できる。例えば、ドライバライン上の個々のユニットが、野外のデジタルLEDサインを製作するのに使用するLEDユニットであれば、これらの個々のLEDユニットが夜間に必要な電力は大幅に少ない。夜間、人間の瞳孔は、より多くの光が目に入るように広がるため、サインが見えるようにするのに必要なエネルギーは少なくてよい。そのため、デジタルLEDサインを夜間に作動させる場合、このサインを作動させるのに必要な電力は遙かに少なくてよい。これによってサインの視認性は改良され、エネルギーが節約される。
この事実の利点により、LEDラインドライバは、定格電流の量を低いレベルに落としても個々のLEDユニットすべてを作動させるのに十分な電力を供給することができる。適度な電流があれば、ライン上の個々のLEDユニットは依然としてそれぞれのローカルのLEDを駆動するが、LEDの輝度を低下させるにはデューティサイクルを短縮して使用する。デューティサイクルを短縮すると必要な電力は少なくなるため、個々のLEDユニットがドライバラインから引き入れる電力が少なくなる。そのため、ラインドライバはドライバライン上の定格電流レベルを下げることができる。付随する抵抗が原因で起こる電力の損失は、電流の2乗に比例するため(I2Rの電力損失)、定格電流を低下させるとエネルギー量を大幅に削減できる。
ここで注意すべきことは、マスター制御システムはLEDの輝度を制御するデータを供給するため、電流レベルの出力をラインドライバによっていつ軽減するのが妥当かをマスター制御システムが認識するということである。そのため、マスター制御システムは、様々なラインドライバが定格電流レベルをいつ下げる(および上げる)べきかを判断する。
図6Dは、ラインドライバが産生する電流信号のタイミング図を示し、昼間動作モードから夜間動作モードへと変わって必要なエネルギーが減少する様子を示す。ラインドライバは定格電流レベル610をゆっくりと下げている。このデータは、定格電流レベルの前後で継続して変調されている。ライン上の個々のLEDユニットがそれぞれ定格電流レベルがどこかを追跡できるかぎり、各LEDユニットは、徐々に変化していく定格電流レベル610に自らを調整することができる。
交流電流ラインドライバ
本明細書で開示した主要な実施形態は、主に直流電流(DC)で給電する実施形態を説明しているが、交流電流(AC)の実施形態を創出することも可能である。直流電流の実施形態には、集積回路が元来直流電流を使用して動作するものであるという利点がある。しかし、ACラインに接続されたユニットが、ユニット上の集積回路に給電するローカルの直流電流を作り出す追加の回路を備えてもよい。
交流電流で動作するシステムを作製するにはいくつかの異なる方法がある。第1の方法は、ACラインドライバユニットから2つの異なるストリングに給電する方法である。ラインドライバにあるダイオードを使用して、1つのストリングに正のパルスを用いて動作させ、もう1つのストリングに負のパルスを用いて動作させる。
別の実施形態では、個々のラインユニットでダイオードを使用し、それぞれのラインユニットが半波整流器で動作するようにする。ローカルのダイオードを用いて、個々のラインユニットのチップを一方向の電流のみを対象とするように構成することができる。個々のユニットの半分は正のパルスの電流を対象とするように構成し、個々のユニットの残りの半分は負のパルスの電流を対象とするように構成することができる。さらにコストのかかる実施形態では、ドライバラインに接続されたそれぞれのラインユニットに全波整流システムを備えて電流を最大限利用してもよい。
ドライバライン上のデータをAC電流で変調するには、様々な異なるシステムを使用することができる。変調システムでは、位相、周波数、デューティサイクル、またはランレングス符号化を使用できる。交流電流ACを用いて電流ループを駆動することで、いくつかの利点が達成される。例えば、交流電流によって変圧器結合が可能になるため、容易に入手できる半導体が産生する電圧よりも高いループ電圧が、ドライバライン上の各ユニットで得られる。
個別に制御されるLEDユニット
以前のセクションで記載し、図2Aに示したとおり、LEDラインドライバ回路220は、1つ以上の個別制御可能なLEDユニット(250−1〜250−N)に接続するドライバライン221上で変調した電流源を駆動する。LEDユニット250へ電気接触する唯一の手段は、単一のドライバライン221を介して行うものである。そのため、LEDユニット250は、LEDユニット250が動作に必要とするリソースすべてをこの単一のドライバライン221から受信しなければならない。これを実現するため、ドライバライン221はLEDユニット250に対して複数の機能を果たす。それぞれのLEDユニット(250−1〜250−N)は必要な動作電力をドライバライン221上の電流から引き込む。各LEDユニットはまた、LEDラインドライバ回路220がこの電流で変調したLED制御データを復調する。一実施形態では、各LEDユニット250はまた、単一のドライバライン221で駆動する定格電流のレベルも基準電流値として使用する。本セクションでは、LEDユニット250の内部についてさらに詳細に説明する。
図7は、個別制御可能なLEDユニット750の一実施形態を示すブロック図である。図7に示す特定の実施形態では、LEDユニット750はLEDコントローラ760、4つの発光ダイオード(LED)781、および電源コンデンサ729で構成されている。電源コンデンサ729は、LEDユニット750への動作電力を取得し、貯蔵し、供給する。LEDコントローラ760は、LEDユニット750の大部分の機能性を提供する集積回路であってもよい。
LEDユニット750は、上流のLEDラインドライバ回路(図4Aに示すLEDラインドライバ回路425など)が駆動するストリングに、ドライバラインへの入力721を介して接続される。特に、ドライバラインへの入力721は、変調した電流源をLEDコントローラ760上の電源システム720へ供給する。電源システム720の動作については図8を参照しながら説明する。
LEDユニットのラインが通常の作動モードで動作しているとき、同時にドライバラインから充電電力を引きだそうとするLEDユニットはほとんどないため、このラインに接続されたLEDユニットすべてに対してかかる累積降下はそれほど大きくはならない。例えば、あるドライバラインに48個のLEDユニットがあり、それぞれのLEDユニットが充電中に4ボルトを取るが特定時にLEDユニットの1/4しか充電しようとしない場合、電源は計48個のユニット×4ボルト/ユニット×1/4、すなわち48ボルトを供給する必要があるだけである。しかし、ラインドライバが最初に動作を開始すると、このラインドライバはドライバライン上のLEDユニットをすべて作動させる必要がある。最初は、同じドライバラインにあるLEDユニットはどれも、動作を開始するために同時に充電しようとする。開始時に電源から利用できる電圧が48ボルトしかない場合、それぞれのLEDユニットは約1ボルト(48ボルト/48LEDユニット)まで充電していることになり、動作不能の状態に陥ることになる。そのため、一度システム全体を初期化すると、特定の電源電圧量がLEDユニットのラインを動作させるのには十分なこともあるが、この同じ電源電圧でドライバラインに接続するLEDユニットのすべてを起動させるには問題が生じることがある。
この潜在的な問題を解決するため、LEDコントローラのチップに搭載されたそれぞれの電源システムは、アナログのブートストラップ電源回路を備えており、この回路によって、指定した極度の低電圧限界までLEDコントローラのチップに電流を流し、起動時の電源システムは電圧が増加するとスイッチを切る。そのため、LEDコントローラ760を電力が下がった状態で起動すると、アナログのブートストラップ電源システムは工程805に記載したように最初に作動する。アナログのブートストラップ電源システムは、電流を徐々に増加して流す一方で、指定した低電圧の閾値(一実施形態では約1.3ボルト)を電流が超えたかどうかを工程807で確認する。アナログのブートストラップ電源システムが指定した電圧閾値に達すると、アナログのブートストラップ電源システムはオフになり、主電源システム720が作動する。この主電源システム720は、ドライバラインから電荷を取り込み始め、工程810でローカルの電源コンデンサ729を充電する。
このようにローカル電源コンデンサ729を充電することによって、ドライバラインの入力721からドライバラインの出力722までのLEDコントローラ760にかかる電圧降下が増大する。このLEDコントローラ760にかかる電圧降下が増大すると、同一ラインにある他のLEDコントローラへの電圧が低下することになるため、他のLEDコントローラは充電を開始する閾値には達しない。LEDコントローラが充電を完了すると、このLEDコントローラの電源システム720は、電流をドライバライン入力721からドライバライン出力722へ直接分路し、ローカル電源コンデンサ729からのローカル電力により動作するため、LEDコントローラ760にかかる電圧降下が著しく減少する。これによって同一ラインにある他のLEDコントローラは増大した電圧を受けることができるため、他のLEDコントローラのいずれかが閾値電圧を超え、充電を開始するようになる。
この起動システムを正常に機能させるため、LEDコントローラチップの平均電圧は、LEDコントローラチップの充電が完了すれば降下させる必要がある。そのため、LEDコントローラチップの動作電流をスイッチを切る閾値で除算し、これに電流を乗算したものは、ループを起動させる電流よりも小さくなければならない。この要件を満たすため、ストリング上のラインドライバが、ループ上のLEDユニットすべてが完全に起動したと判断し、コマンドを送信して正常動作が可能になるまでは、ごくわずかの電流を流すようにLEDコントローラチップを設計する。一実施形態では、LEDコントローラチップは、起動閾値電圧が15ミリアンペアに対し1.3ボルトであり、初期の動作電流が3.5ボルトに対し2.4ミリアンペアである。2.4×(3.5/1.3)は15ミリアンペア未満であるため、起動時の条件は満たしている。そのため、ラインに接続されたLEDユニットすべてを確実に正常に起動させるためには、ラインドライバは、1.3ボルトにライン上のLEDコントローラチップの数を乗算した数字の電圧を産生できさえすればよい。
再度図8を参照すると、LEDコントローラが閾値電圧を超えたあと、電源システム720は工程810で外部電源コンデンサ729を充電し、工程815で電源システム720が外部電源コンデンサ729にLEDコントローラ760(電源システム720を含む)内の論理回路を作動させるのに十分な電力があると判断するまで充電を続ける。外部電源コンデンサ729は、実質的には小型のバッテリとして働いてLEDユニット750内のLEDコントローラ760に給電する。電源システム720は、定期的に分路を停止してドライバライン721から電流を取り込み、電力要件に応じて電源コンデンサ729を再充電する。
動作開始に十分な電力を外部コンデンサ729に貯蔵すると、LEDコントローラ760内の回路はステップ820で起動モードに入り、回路のサブセットのみがアクティブになる。例えば、LEDドライバ回路780はまだアクティブにはなってない。起動モード中、LEDコントローラ760内の制御回路は一連の起動アクションを実行し、このアクションでLEDコントローラ760はヒューズブロック741内の不揮発性ヒューズの状態を基に自らを構成する。するとLEDコントローラ760は、工程825で正常運転を開始するコマンドを待つ。この工程825でLEDコントローラはどのLEDも起動せつ、同じドライバラインにある他のLEDユニットを充電するために微量の電力を取り込み、ドライバライン上に高い累積電圧を生むことなく起動モードに入る。基本的に、この待機状態825の間、LEDコントローラはドライバラインのデータストリームを追跡してコマンドに従うだけであり、時折動作の継続のために電力を取り込むことがある。
ループ全体が起動したとラインドライバが判断した後、ラインドライバはLEDユニットを構成するための様々なコマンドをLEDユニットに送出し、LEDユニットが正常運転を開始できるようにする。LEDユニットを構成するのに送信されるコマンドには、電流の微調整、キャリブレーション、輝度スケーリング、アドレス指定、および後のセクションで記載するようなドライバ回路のルーティングに対するコマンドが含まれる。適切なコマンドを受信すると、LEDコントローラ760はステップ840で通常運転モードに入る。
正常運転840の間、電源システム720は電源コンデンサの充電状態をモニタリングし、必要に応じてラインの分路からコンデンサの充電へ切り替え、LEDコントローラ760を動作するのに十分な電荷が外部コンデンサ729で確実に使用できるようにする。特に、電力が必要なときは、分路がオフになり、外部コンデンサ729に電荷が蓄積される。コンデンサが満杯になったと思われると、電源システム720は充電を停止してラインの電流を分路し、小さい電圧降下を起こすだけで、ドライバラインの入力721に流れてくる電流が電源システム720を通ってドライバラインの出力722へ流れるようにする。ドライバラインの出力722から出て行く電流はその後、顆粒のLEDユニットを駆動し、最終的にはLEDラインドライバ回路を巡って一周し、この回路を終了する。
動作に必要な電荷をコンデンサに保持するほか、電源システム720は、工程845でLEDコントローラ760が必要とする電力を慎重にモニタリングするのにも使用できるため、コンデンサに蓄積した電荷量を必要に応じて調整することができる。例えば、LEDコントローラ760が最初に青色LEDをオンにすると、LEDコントローラ760に必要な電力が増加するため、システムは工程850に進んで青色LEDの駆動に必要な追加の電力を指示する。その後LEDコントローラ760が青色LEDをオフにし、これよりも消費電力の低い赤色をオンすると、LEDコントローラ760はステップ860に進んで、LEDの駆動に必要な電力はこれよりも少なくてよいことを指示することができる。このようにしてLEDコントローラ760は、LEDユニット750の動作に必要な最低限の電圧のみを外部コンデンサ729に維持するため、きわめて効率的な方法で電力を使用する。
単一のドライバラインに多数のLEDユニット750がある場合は、直列接続した複数のLEDユニット750の累積電圧は、各LEDユニット750がローカルコンデンサを充電しようとするために高くなるおそれががある。最悪の状況では、ドライバラインの各LEDユニット750が同時に電荷を取り込もうとするため、ライン上の累積される電圧降下は、充電しているときの各LEDユニットにかかる電圧降下をライン上のLEDユニット数に乗算したものになる。多数のLEDユニットがあるドライバラインでは、この累積電圧降下が法規制や電源制限のために問題となることがある。
最悪の状況を防ぐため、ドライバラインの電流を増加させ、同じドライバライン上の複数のLEDユニット750には、調整した方法で電荷を流すように命令することができる。例えば、限定数のLEDユニット750のみが、ローカル電源コンデンサを同時に充電するために分路を停止することができるようにしてもよい。ライン上の電流量を増加させることによって、ライン上の各LEDユニット750はより速い比率で電源コンデンサを充電できるようになる。ラインの電流を増加させ、同時に電流を流せるユニットの数を制限することにより、ラインの全体的な電圧を規定した範囲内に維持することができる。
様々なLEDユニット750の分路を調整する1つの方法が、ビットごとを基準とする方法である。データフレーム内の各データビットには、ゼロから始まりN−1までの数字を割り当てることができ、ここのNはデータフレーム内のビット数である。その後、各LEDユニット750にはXビットごとに分路を停止することのみを命令することができ、ここでのXはLEDラインドライバ回路が選択した数である。例えば、Xに4という数が選択されると、LEDユニット750の第1のグループはビット数が4を法として0(ビットは0、4、8等)になる場合のみ分路を停止する。LEDユニット750の第2のグループはビット数が4を法として1(ビットは1、5、9等)になる場合のみ分路を停止する。LEDユニット750の第3のグループはビット数が4を法として2(ビットは2、6、10等)になる場合のみ分路を停止する。LEDユニット750の第4のグループはビット数が4を法として3(ビットは3、7、11等)になる場合のみ分路を停止する。(長時間区間とは反対に)ビットごとに分路の停止を調整することにより、各LEDユニット750は、LEDユニットがドライバラインからさらに多くの電荷を取り込める時間を与えられるまで長時間待機する必要がなくなる。
電源システム720は、バンドギャップ基準電圧を生成し、前述したようにローカルLEDすべてをオンにするのにちょうどよい量に調節した電圧を設定する能力があるアナログ回路セクションを備えてもよい。電源システム720は誤ったLED出力(短絡または開回路)をモニタリングし、電源をオンにしたLEDで稼働させるのに必要な最低電圧レベルに電圧を調節しようとする。ラインの電流を分路する動作および分路を停止する動作に関わる変化はすべて、ライン上のデータと調整して実行されるため、LEDチップはすべて同時に遷移する。この調整は潜在的なデータのエラーを最小限に抑えるために行うものである。
電源システム720のアナログセクションには、電源システムの4つの主電力に関連する機能のうちの3つに対する基準電圧として使用するバンドギャップ基準が含まれている。第一に、バンドギャップ基準は、コアデジタル回路に対する電圧源(約2.8〜3.2ボルト)を生成するのに使用される。第二に、バンドギャップ基準は、デジタル制御される電圧分圧器回路に対する基準であり、この回路はLEDドライバ回路の電源をサンプリングし、これをバンドギャップ基準と比較する。最後に、バンドギャップ基準電圧は、超過電圧/超過電流検出器で使用することができる。超過電圧検出器は、慎重に適合したポリ抵抗を使用し、LEDドライバ回路の電力源で超過している電圧を検出するとともにライン電流を測定する。超過電圧検出器は、コンデンサ729を充電している時はいつでも作動されている。寸法が不十分なために超過電圧条件が検出されるようなコンデンサがあれば、チップは直ちに遷移してチップを保護する。
電源システム720の第4の機能は、ライン分路およびライン電流整流器セクションにより実行されるラインの分路動作であり、これによってライン電流をドライバラインの出力722に分路するか、電源コンデンサ729を充電するようにデジタル方式で設定する。正常動作では、電源システム720は周期的にライン電流の分路を停止し、電流が電源コンデンサ729を再充電する方向に向かうようにする。この分路の停止は、多数のLEDユニットがドライバラインからの電流を同時に取り込もうとしないように、同じドライバラインに接続された他のLEDユニットと調節する方法で実行してもよい。
電源システム720がドライバライン721の分路を停止して電源コンデンサ729を充電することは、LEDコントローラ760にとってきわめて重要な機能である。なぜなら、電源コンデンサの充電は、LEDコントローラ760の動作に必要な電力を得るのに必要なことだからである。同じように、電源コンデンサの充電後にドライバライン721の分路を停止することもきわめて重要である。なぜなら、電源コンデンサ729が満杯に充電された際に電源システム720が出力ドライバライン722に迅速に電流を分路できなければ、LEDコントローラ760は、LEDコントローラ760の集積回路を破壊する超過電圧によって正しく機能しないおそれがある。そのため、入力ドライバライン721の分路および分路停止は、電源システム720による慎重な制御が求められるタスクである。
幸い、慎重なバランスを要するこの状況は、他のLEDコントローラと直列接続したドライバライン上のLEDコントローラの動作不良が、同じドライバラインにある他のLEDコントローラに重大な影響及ぼすことなく起こる、非常に好都合な方法をもたらす。特に、動作不良に陥ったLEDコントローラ760内の回路が動作不良になり、電源システム720は外部電源コンデンサ729に充電するのを止めるが、代わりに恒久的に分路した状態になり、この電源システム720は(一般には分路に対して微量に電圧降下して)ライン電流が流れる短絡として働く。そのため、同じドライバラインにある他の個々のLEDコントローラはラインドライバ回路から電流を受け続ける。
一方、動作不良のLEDコントローラ760内の回路が上記とは異なる形、つまり、電源システム720が分路停止の状態で停滞して外部電源コンデンサを継続的に充電し続ける(また、電流を外部電源コンデンサの方へ向ける分路状態にならならくなる)という動作不良に陥ると、電源システム720は開回路として働き、同じドライバラインにあるLEDコントローラすべてに影響を及ぼす。しかし、電源システム720にかかる電圧によって集積回路(ツェナーダイオードと同様の回路またはおそらく単なる短絡)が最終的に破損するまで、LEDコントローラ760に流れる全電流によってLEDコントローラ760の電源システム720にかかる電圧が増加する。このような破損が一度発生すると、ドライバラインの電流は動作不良のLEDコントローラ760を通って再びドライバライン入力721から流れ、ドライバライン出力722へ出て行く。電流が動作不良のLEDコントローラ760を通過することによって、同じドライバライン(721および722)にある他のLEDコントローラが正常に動作を継続できるようになる。さらに保護を追加するため、LEDコントローラ760が通常示す電圧よりも高い電圧を必要とする耐圧デバイス(ツェナーダイオードまたはこれと同等のデバイスなど)をLEDコントローラ760と並列に設置することができる。このようにして、LEDコントローラ760が開回路式に動作不良になっても、電圧は耐圧デバイスの作動に必要なより高い電圧に達するまで増加し、これによって動作不良のLEDコントローラ760周辺に電気経路ができる。
LEDコントローラ760の損傷を防止するため、温度システムでLEDコントローラ760の集積回路の温度をモニタリングすることができる。温度が危険閾値を超えると、電源システム720はシャットダウン状態に入ってLEDコントローラ760に及ぶ損傷を防止する。一実施形態では、電源システム720は、電源システム720が恒久的に分路状態に入ってドライバライン入力721に流れてくる電流が直接ドライバライン出力722へ流れていく状態となってもよい。このようにして、同じドライバラインにある他のLEDユニットは正常に動作を継続できる。特定のLEDコントローラ760が繰り返しこのようなシャットダウン状態になった場合、このLEDコントローラ760は取り替える必要があるおそれがある。他の実施形態では、LEDコントローラ760は、一部の電子のみが動作を継続するという機能性低下状態になり、この状態では余分な電力を確保するために分路を停止することは稀にしかない。このようにして、LEDコントローラ760は定期的に温度検査を実施し、温度が下がれば自らを再度作動させる。
電源システム720が提供できる電力とは無関係の2つの機能は、基準電流値の生成およびデータ取得のための電流コピーの生成である。最も安定した光出力特性でLEDを駆動するためには、LEDに一定の電流量が流れなければならない。LEDを流れる電流量を変化させることでLEDの輝度を制御する場合、LEDが発する色のスペクトルはLEDを流れる電流量によって変化する。色のスペクトルが一定であることが理想的な目標であるため、電流量を変調する技術では所望する性能は得られない。その上、LEDの輝度は電流強度とは線形な関係にはないため、電流の変動を使用してLEDの輝度を正確に制御することは困難である。
個々のLEDの輝度を制御するのに電流強度を使用する代わりに、定電流量のデューティサイクルを規則的にオン/オフにする典型的な方法で制御することによってLEDの輝度を制御する。電力を制御するこの技術を実装する公知のシステムは、「パルス幅変調」として一般に知られている。LEDの輝度は所定時間区間の定電流強度のパルス幅に比例するためである。一実施形態では、本開示のシステムは異なる技術を使用し、所定時間区間の定電流パルスの数とこれらの定電流パルスの幅との両方を変調して所望の輝度を得る。この代替システムを「Reduced Flicker Modulation(フリッカー軽減変調)」(RFM)と命名し、LEDドライバ回路780を含めて後のセクションで詳細に説明する。
LEDの出力性能を最適にするためには、定電流パルスそれぞれでLED781を駆動するのに用いる電流量が可能なかぎり安定している必要がある。そのため、安定した基準電流値が必要である。基準電流値を生成するには様々な異なる方法を使用することができる。本明細書では、電源システム720に基準電流値を生成させる2つの異なるシステムを提供する。
電源システム720に安定した基準電流値を生成させる第1の方法では、基準電圧値を用いる。特に、バンドギャップ回路を用いて安定した基準電圧値を生成したのちに、この安定した基準電圧を抵抗に流すことによって、安定した基準電流値を生成することができる。次にこの基準電流値をLEDドライバ回路780に供給すると、このドライバ回路は基準電流を使用して定電流を生成し、この定電流を使用して安定した方法でLED781を駆動する。
代替実施形態では、電源システム720はドライバラインの電流をサンプリングすることによって基準電流を生成してもよい。特に、電源システム720は、ドライバライン電流をサンプリングしてドライバライン721から流れてくるドライバラインの平均電流値(図3Aに示すような定格ライン電流)を算出する。次にこのライン電流の平均値をLEDドライバ回路780に対する基準電流値として使用する。ドライバライン電流の平均は、電源システム720がドライバラインを分路する間のみ更新/算出される。
電源システム720が実行する、電力とは無関係のもう1つの機能は、データ取得のためのライン電流コピーの生成である。ドライバライン721のライン電流で変調したデータを復元できるようにするため、電源システム720は、電流分路の感知結果または電流分路停止の感知結果(またはダイオード)のいずれかの縮小コピーをデータ抽出ブロック730に供給する。電流分路の感知結果は、電源システム720が分路モードになっているときに供給され、電流分路停止の感知結果(またはダイオード)は、電源システム720が外部電源コンデンサ729を充電しているときに供給される。
クロッキング/データ抽出ブロック730は、ドライバライン電流のコピーを電源システム720から受信し、図4AのLEDラインドライバ回路425がドライバライン電流で変調したデータ(LEDコントローラの構成コマンドおよび現時点のLED制御データなど)を復調する役割を果たす。ドライバライン電流から送られるデータを復調するため、データ抽出ブロック730は、最初に自らの内部クロック信号を生成する必要があり、その後デジタルフェーズロックループ回路(DPLL)を使用して自らの内部クロック信号とドライバライン電流で変調したデータのデータレートとの同期を取り、最終的に自らの内部クロック信号とドライバライン電流で変調した電流ランプとを適切に並べてデータを取得する。
内部クロック信号を生成するため、クロッキング/データ抽出ブロック730のデジタルサブセクションが高速リングオシレータを実装し、高速のリングオシレータレートで作動するこれに関連するデジタル論理部を備える。この高速オシレータレートデジタル論理回路サブセクションは、さらに高速のクロックレートのみを備えられるいくつかの機能を提供する。第1の機能は、高速クロックセクションは、デジタル式のサポートを提供して、電流ランプの中央に位置するセンタリング論理回路が確実に、正確にライン電流のデータストリームの中央にあるようにする。第2の機能は、高速のフリーランニング型のリングオシレータクロックを、カウンタ計数Nで除算することである。カウンタ計数Nで除算すると、コアクロックの境界のみが更新されてグリッチ防止に役立つ。高速クロックセクションからのカウンタNで除算した値は、ドライバライン721で変調したデータを追跡するDPLL回路の実装に役立つ。デジタルフェーズロックループ回路を用いて得られたドライバライン上のデータストリームのデータレートは、ほとんどのLEDコントローラ760を駆動するのに使用されるコアクロック信号を生成するのに使用される。一実施形態では、コアクロックレートは、ドライバラインのデータレートの8倍(8×)で動作する。
一実施形態では、クロック論理回路は最初に、カウンタ計数Nで割る除算に固定値を設定し、A/D変換器でレベルクロッシング法により分路をカウントしてデータクロック周波数値の初期推定値を生成する。次にクロック論理回路はこの初期推定した周波数値をデジタルフェーズロックループ回路にロードし、デジタルフェーズロックループ回路はドライバラインデータレートを追跡しようとする。クロック論理回路が特定の時間内にデジタルフェーズロックループ回路から追跡確認を得られなければ、クロック論理回路がクロック周波数の測定プロセスを再開させる再同期モードに入る。
クロッキング/データ抽出ブロック730の主要部分は、デジタルフェーズロックループ回路を使用して生成されるコアクロックレートで動作する。クロッキング/データ抽出ブロック730の主要部分の大半は、(高速クロックセクションからの支援を受けて)このデジタルフェーズロックループ回路を実装するのに使用する回路を備えている。
デジタルフェーズロックループ回路に加えて、クロッキング/データ抽出ブロック730の主要部分は、ドライバライン信号から実際のデータを抽出するデータ抽出論理回路を備えている。データ抽出論理回路は、データの中心とデータエッジとの間の遷移を区別する役割を果たす。というのも、デジタルフェーズロックループ回路はデータビットの中心ではなくデータビットエッジの遷移を追跡することがあるからである。特に、図9Aを参照すると、適切なデータビット時間921のランプモードの信号は、DPLLがデータビットの中心ではなくデータビットエッジの遷移を追跡する間違ったデータビット時間922の信号とほとんど同じように見える。この問題を避けるため、データ抽出論理回路は、データビットの中心よりも前の信号が中心よりも後の信号とは異なっているものを探す。正しいデータビットは常にこのように現れるためである。特に、間違ったデータビット時間925は、間違ったデータの中心(実際のデータビットエッジ)の前方931と後方932の信号がどのように同じに見えるのかを示している。これは、デジタルフェーズロックループ回路がデータビットの中心ではなくデータビットエッジの遷移を追跡したということをデータ抽出論理回路に知らせるものである。前方と後方の値が頻繁に同じになりすぎると、データ抽出論理回路はビット周期の1/2の配列を移動させてデータビットの中心と正確に位置を合わせる。
図9Bは、ディップモード変調信号にみられる同じ問題を示している。図9Bを参照すると、適切なデータビット時間971にあるディップモード信号は、間違ったデータビット時間972にあるディップモード信号とほとんど同じように見える。間違ったデータビット周期を不当に追跡するのを防ぐため、センタリング回路は、データビット周期の前半と後半が確実に異なるようにする。そのため、ビット時間区間に時間区間975に示したようにディップが含まれていない場合、またはビット時間区間に時間区間976に示したような2つのディップが含まれている場合、センタリング論理回路は間違った時間区間を追跡したと判断する。
再度図7を参照すると、データレートを正確に追跡し、データビットの中心と正しく配列したのち、クロッキング/データ抽出ブロック730は復調したデータストリームをデータ処理コア740に転送する。データ処理コア740は、受信するLED制御データを処理するデジタル論理回路のブロックである。一実施形態では、データ処理コア740は、個々のデータフレームを識別し、LEDコントローラの構成コマンド、LED制御コマンドおよびLEDパラメータデータを得るためのデータフレームの構文解析を行い、その後LED制御データから取得したコマンドを実行する役割を果たす。
一実施形態では、受信するLED制御データに対してデータ処理コア740が実行した第1のアクションは、データストリームのデスクランブルである。ドライバライン721で復号化したデータストリームは、様々な異なる理由によりスクランブルされていることがある。
スクランブルする理由の1つは、LEDユニット750が間違ったデータフレーミング信号を追跡するのを防ぐことである。特定のLEDユニット750に重複して送信されたLED制御データの値が、フレーミングする同期ヘッダの値と偶然同じであった場合、LEDコントローラは、データストリームの間違った場所を追跡して有効なデータフレームには注目しないおそれがある。データをスクランブルすることによりこの状況が防がれる。データのペイロードが固定値であったとしても、データをスクランブルすることによってそれぞれのデータフレームがドライバライン上で異なるものになるためである。そのため、データをスクランブルすると、データストリームに誤ったフレーミングパターンを生成する可能性が大幅に軽減される。データをスクランブルするもう1つの理由は、データをスクランブルしてエネルギーを発散することによって、電磁障害の問題を軽減するためである。スクランブルしたデータストリームを処理するため、データ処理コア740にあるデスクランブルユニット742が、フレーム同期マーカを探すことによって、受信したデータを最初に処理し、その後、データフレームをデスクランブルしてデータフレーム内の実際のデータコマンドを得る。
特定の一実施形態では、LED制御データフレームは図2Bに示すように40バイトからなる。以下の表は図2Bに例として示したデータフレームの構造を示す。
上の表では、第1のバイトはデータフレームの開始を示すのに使用するフレームヘッダである。フレームヘッダのバイトはスクランブルされておらず、残りの39バイトはv.34自己同期スクランブラを用いてスクランブルすることができる。デスクランブルユニット742のデータフレーム検出論理回路は、データストリーム内で反復するフレームヘッダのための入力データを検索する。デスクランブルユニット742はそのようなパターンを追跡しようとする。ある程度の時間を経た後にデータフレームが発見さればければ、デスクランブルユニット742はクロッキング/データ抽出ブロック730に問題を知らせる。クロッキング/データ抽出ブロック730は新たな周波数に切り替え、再び同期信号を行使する。このアクションにより、開始される可能性のあったフレームロックがレセットされ、データフレームを再度検索するデスクランブルユニット742のクレーム検出論理回路が起動される。
デスクランブルユニット742のフレーム検出論理回路がデータフレームパターンを検出すると、デスクランブルユニット742は有効なフレーム信号をクロッキング/データ抽出ブロック730に返して有効なデータを示す。一実施形態では、デスクランブルユニット742は、少なくとも1つのフレームを起動してから、データパーサブロック743が有効なデータを得てデスクランブルユニット742が入力されるデータストリームを追跡したことと、正しい出力データを持っていることとを確認する。これによって、デスクランブルユニット742が入力されるデータストリームとの同期を取ったことが確実になる。デスクランブルユニット742が入力されるデータの追跡を正確に実行し、デスクランブル処理を完了すると、デスクランブルユニット742は、データフレームの内容を処理するために、デスクランブルしたデータフレームをデータパーサ743に転送する。
データパーサ743は、データフレームを構文解析する。データパーサ743は、データフレーム内のコマンド(LEDコントローラ構成コマンドまたはLED制御コマンド)を識別し、データフレームのペイロード(LEDコントローラ構成パラメータまたはLED制御データパラメータ)を復号化する。一実施形態では、データパーサ743はオプションで巡回冗長符号(CRC)の検査を実行し、データが正しければデータパーサ743は復号化したコマンドおよびパラメータデータをデータ処理コア740内の実行論理回路に転送する。
一実施形態では、データパーサ743は複数の異なる画素アドレッシングモードを有し、このモードを使用して、受信した特定のデータフレームをこの特定のLEDコントローラ760に適用すべきかどうかを判断する。データフレームのアドレスフィールドにおいて、標準のアドレッシングモードが特定のLEDユニットのアドレスを設定する。一実施形態では、このアドレスがデータフィールド内のLED制御データに対する開始アドレスを指定する。アドレスフィールド内で識別された特定のLEDユニットは、ペイロードフィールド内のLED制御データの最初の項目をLED制御データの幅に達するまで使用する。続けてアドレス指定した次のLEDユニットは、LED制御データの幅に達するまでペイロードフィールド内のLED制御データの次の項目を使用し、これ以降も同様に続く。他の実施形態では、アドレスは単一のLEDユニットまたは特定数の連続するLEDユニットを指定することができる。本システムでは、データペイロードのサイズは288ビットであるため、2、4、6、8、または12ビット幅のデータ値を複数格納することもできることに注意されたい。
グループアドレスモードでは、データペイロード内のLED制御データは、特定のグループに割り当てられたLEDユニットにのみ適用される。制御データは単純に、グループ内のLEDユニットすべてに適用できる。一実施形態では、本システムはビットマップの処理エンジンを使用し、このエンジンを用いてペイロード内のビットマップを検査して、グループのLEDユニットメンバーのどの部分が変化し、これらのLEDユニットメンバーがどのように変化するのかを判断することができる。そのため、各LEDは標準のリニアアドレッシングシステムで個々にアドレス指定が可能であり、各LEDは割り当てられたグループの一部として個々にアドレス指定が可能である。
巡回冗長符号(CRC)の検査が検出したデータエラーは、様々な異なる方法で対処することができる。一実施形態では、オプションのCRCによる保護が可能な場合、データ処理コア740は、約25個のデータフレームを処理する間にCRCにより2つのエラーが検出されれば、データを無視し始める。さらに、この間はLEDの出力をオフにすることができ、データ処理コア740は新規のコマンドには応答しなくなる。一実施形態では、データ処理コア740は、正しいCRCの値を有する4つのデータフレームを受け取るまで、受信するLED制御データフレームの検査を継続する。この時点でデータ処理コア740は新規のコマンドの処理を開始する。
LEDコントローラ760には多種多様なコマンドを実装することができる。特定の一実施形態では、主な3つのタイプのコマンドを実装する。グローバルアップデートせずに画素データをアップデートするコマンド、グローバルアップデートして画素データをアップデートするコマンド、およびLEDコントローラ760内の制御レジスタに書き込むコマンドである。グローバルアップデートしない画素のアップデートでは、1つ以上のLEDを駆動するための一連のパラメータをシャドウレジスタに格納する。しかし、これらのLEDパラメータは即座には使用されない。そこで、グローバルアップデートのコマンドを(このLEDコントローラ760または他の任意のLEDコントローラを対象に)受信すると、格納した画素データのパラメータはLEDドライバ回路780の出力を変更するのに使用される。このようにして、異なるディスプレイフレームが連続して動作するビデオディスプレイおよびその他のディプレイシステムが必要とするとおりに、多数の画素の変化の同期を取ることができる。
データ処理コア740が制御レジスタへ書き込むコマンドを受信すると、データ処理コア740は制御レジスタ/ヒューズブロック741内で適切な制御レジスタを識別し、これに関連するデータ値をこの制御レジスタに書き込む。制御レジスタの中身は、LEDコントローラ760内の回路の動作を制御する揮発性の制御ビットである。制御レジスタに書き込むいくつかのパターンを使用して、指定した制御レジスタの値を単に設定する代わりに様々な機能を起動することができる。
揮発性の制御レジスタに加えて、制御レジスタ/ヒューズブロック741は一連の不揮発性ヒューズも備えている。ヒューズは、LEDコントローラ760にある一連の恒久的な構成情報を指定するために溶断することができる。例えば、LEDユニット750の一実施形態では、8個のヒューズを用いて8ビットのアドレス値を実装する。こうすることで、一義的にアドレス指定できる256個のLEDユニットのストリングを単一のLEDラインドライバ回路に接続することができる。制御レジスタ/ヒューズブロック741でヒューズをプログラムするため、指定した制御レジスタのアドレスに特定の書き込みパターンを送信する。(このような特定の制御レジスタのアドレスには、現実の制御レジスタがあることもあれば実際にはないこともあることに注意されたい。)指定した制御レジスタのアドレスに正しい書き込みパターンが送信されると、データ処理コア740は制御レジスタ/ヒューズブロック741で識別した特定のヒューズを溶断する。
制御レジスタ/ヒューズブロック741内のヒューズは、LEDコントローラ760を製造するメーカーとLEDコントローラ760のユーザとの両方によって使用できる。メーカーは制御レジスタ/ヒューズブロック741内のヒューズを使用して、同じ集積回路の設計から異なる性能の特性および特徴を備える多岐にわたる異なるLEDコントローラを作ることができる。例えば、制御レジスタ/ヒューズブロック741内のヒューズは、LEDコントローラ760が制御するLEDの数、LED制御の精度(一実施形態では4ビット、6ビット、8ビット、または12ビット)、および様々な他のLEDコントローラの、可能なこともあれば不可能なこともある特徴を指定するのに使用できる。このようにして、LEDコントローラ760のメーカーは、特定の用途に対してどれだけの特徴が必要かによってLEDコントローラ760の市場を区分できる。
制御レジスタ/ヒューズブロック741内のヒューズは、LEDコントローラ760内のキャリブレーション情報の格納にも使用できる。半導体処理の技術が不完全かつ不安定であるため、2つの集積回路の挙動が完全に同じになることはない。純粋にデジタル式の集積回路では、デジタル回路では量子化した別々のデータ値を使用することから、些細な相違は動作に影響しない。(デジタル集積回路デバイスの製造が著しく不完全であれば、動作不能のデバイスが生まれて廃棄される。)LEDコントローラ760の場合、多数のアナログ回路があれば、製造上の相違が様々なLEDコントローラの挙動に顕著に影響することになる。
このよな挙動の相違に対処するため、個々のLEDコントローラ760をそれぞれ検査し、異なるLEDコントローラ間にみられる様々な相違を、異なるLEDコントローラ間のわずかな相違を調整するキャリブレーションデータを格納するヒューズを使用することによって補償することができる。例えば、LEDの輝度は、LEDを流れる電流量によって制御する。しかし、集積回路の製造は完全ではないため、完全に同じ輝度レベルを供給するように命令された際に異なるLEDコントローラのLEDドライバ回路780が供給する電流量は同じではない。そのため、制御レジスタ/ヒューズブロック741内のヒューズを使用し、LEDドライバ回路780がLEDに流す電流をキャリブレーションするのに設計した電流微調整値を格納することができる。LEDコントローラ760にあるそれぞれ異なるLEDチャネルは、固有の電流微調整値を個別に受け取ることができる。
LED自体も不完全な製造技術から悪影響を受けることに注意されたい。異なるLEDが完全に同じ電流量を受け取っても、完全に同じ輝度は出力しない。そのため、検査する前にLED781をLEDコントローラ760に接続することで、LEDコントローラ760とLED781との両方におけるわずかな製造上の相違は、電流を微調整したキャリブレーションデータをLEDコントローラ760にプログラムして補償することができる。LEDドライバ回路780が供給する電流出力をキャリブレーションするこの能力によって、LEDコントローラ760は厳格な輝度キャリブレーション検査をパスしていない、より安価なLEDを使用できる。電流をキャリブレーションする値によって、変動するLEDドライバ回路780に加えて変動するLEDも補償されるためである。
LEDコントローラ760のユーザは、ユーザに利用可能な特定の特徴の様々な異なる用途に対し、ユーザがアクセス可能な一連のヒューズをプログラムすることができる。例えば、LEDコントローラ760を、共通のアノードLEDか共通のカソードLEDのいずれかを動作させるように設計することができる。エラーが発生したためにデータフレームをテストするCRC値の利用は、ヒューズによって指定することができる。また、以前に記載したように、一連のデバイスのアドレスヒューズもユーザがプログラムできる。
ごく稀に、集積回路内の様々な素子が熱またはその他の要因により移動した場合に、溶断したヒューズが、溶断していないように見えることがある。これが起きると、LEDコントローラ760に対して行ったヒューズのプログラミングは不能となって、デバイスが正常に動作しなくなるおそれがある。この現象が起こらないように、一実施形態では、誤り訂正符号化(ECC)方式を実行するために、溶断してもよい余分なヒューズを備える。そのため、ヒューズが溶断していなければ、ECCを使用してどのヒューズが変化していないかを判断し、それに応じてLEDコントローラ760の動作を調整することができる。
以前に記載したように、開示したシステムのいくつかの実施形態では、LEDラインドライバがLEDユニットからステータスを要求できるようにするため、LEDユニットは要求された情報を含めてステータス要求に応答する。同じように、いくつかの実施形態では、LEDユニットがコマンド受信後に承認を行う。ステータス要求に応答する(または承認を行う)ため、データ処理コア740は電源システム720に、指定した時間枠でLEDラインドライバ回路によって検出可能な方法で分路回路を動作させるよう要求することができる。どのLEDユニット750が応答しているかを判断するため、LEDラインドライバ回路は一度に1つの要求しかできないか、LEDユニット750それぞれに異なる時間枠を提供してその時間内に応答させる。分路回路を用いた別の信号発信方法は、電源システムに分路を停止する動作と分路する動作の高周波バースト信号を発信させ、LEDラインドライバ回路が周波数を検出できるようにする方法である。
再度図7を参照すると、LEDコントローラ760の最終回路ブロックは、LED781を駆動するLEDドライバ回路780を備える回路ブロックである。LEDコントローラ760にはLEDそれぞれの出力に対して独立したLEDドライバ回路がある。図7の実施形態では、4つの異なるLED781を駆動する4つの異なるLEDドライバ回路がある。しかし、その他の実施形態では、これとは異なる数のLED781を処理するLEDドライバ回路を備えている。図7に示した特定の実施形態では、LED781はカソードコモン構成で配線している。アノードコモン構成では、LEDの記号は別の方向を向く。
独立したLEDドライバ回路はそれぞれ、デジタル回路部分とアナログ回路部分の両方を備えている。デジタル回路部分は、データ処理コア740および制御レジスタ/ヒューズ741と連結している。デジタル回路部分は、LEDがどれだけの電力を受信すべきかを示す強度値を指定するデジタル情報を受信する。次にこの強度値は、様々な要因に応じて調整され、定電力の出力を駆動するのに使用される。アナログのLEDドライバ回路は、電源システム729から基準電流を受けて定電流を生成し、この定電流を使用して関連するデバイスを実際に駆動する。
LEDドライバ回路のデジタル部分は、関連するLEDをいつオン/オフにするかを正確に制御する。LEDを正確に駆動する方法を判断するため、デジタル部分は構成情報に関して制御レジスタ/ヒューズ741に照会する。制御レジスタ/ヒューズ741は、LEDを動作させてもよいか、LEDが(図7に示すアノードコモンモードまたはカソードコモンモードを用いて)電流を低下させているのか電流を供給しているのか、LEDに対する電流微調整値はいくらか、またLED点灯遅延因子など、いくつかの異なるパラメータを指定することができる。このLED構成情報は、LED強度値(LEDをオフにする場合はゼロ)を指定してLEDをどのように駆動するかを決定するLED制御データフレーム内で受信したLED制御情報と組み合わせる。LEDの駆動には、様々な異なる出力変調システムを使用することができる。
ヒューズが指定するとおりに固定した電流微調整値に加えて、LEDドライバ回路780はLEDに流す電流を大幅に調整することもできる。例えば、温度検知回路の出力をLEDドライバ回路780に供給してもよい。するとLEDドライバ回路780は、LEDに供給した電流を室温に反応して調整することができる。このようにして、LEDドライバ回路780は、LEDの性能およびLEDドライバ回路自体に影響を及ぼす可能性のある温度差を調整できる。ここで注意すべきことは、個々のLEDユニットに内部の温度センサを備えることにより、開示したシステムは画素ごとの正確な修正が可能になることである。そのため、一部のLEDユニットに陽が当たり、残りのLEDユニットには(陰などにより)陽が当たっていない場合、個々のLEDユニットは自らのローカル状況に基づいて的確な修正を行う。
従来のパルス幅変調(PWM)の実施形態では、出力電力は、所定時間区間に出力されるパルス幅によって決まる。例えば、図10Aでは16個のタイムユニットの時間を規定し、この時間区間でパルス幅変調した電力で4ビットの強度値をどのように表すかを規定している。強度がゼロ(「0000」)であれば、パルスはない。強度値が1(「0001」)であれば、1回分の時間帯の幅を持つパルスが出力される。強度値が2(「0010」)であれば、2回分の時間帯の幅を持つパルスが出力される。このようにして15回分の時間帯のパルスが出力される強度15(「1111」)になるまで続く。図10Aを参照して説明した従来のパルス幅変調は、本開示のLEDコントローラ内のLEDドライバ回路780で使用できる。しかし、いくつかの利点がある「reduced flicker modulation(フリッカー軽減変調)」(RFM)と呼ぶ新規の出力方法を使用してもよい。
フリッカー軽減変調システムは、従来のパルス幅変調システムに対して少なくとも3つの利点がある。特に、フリッカー軽減変調システムにより、(1)スイッチング(スイッチのオンとオフ)の周波数がより高い周波数範囲にまで増加するため、感知されるフリッカーが減少し、(2)時間区間にわたる電流の利用が拡散するため、ピーク電力の要求が減少し、(3)無作為化を導入してデータに応じた様々なパターンが顕著な形で出力に影響を及ぼすのが抑えられる。電流の利用が拡散することは、使用可能な電力が限られたシステムでは重要である。例えば、(コンデンサでバッファリングした)使用可能な電流が平均140ミリアンペアしかなく、100ミリアンペアの定電流で動作するLEDが2つあり、それぞれのセットが60%のデューティサイクルで動作する場合、平均して十分な電流がある。しかし、LEDの駆動にPWMシステムを使用する場合、PWMでは両方のLEDがその時間の少なくとも10%の間動作し、この間2つのLEDには合わせて200ミリアンペアが流れるため、平均して使用可能な電流よりも多くの電流が流れる。RFMシステムでは、電流の利用は時間区間にわたって平等に拡散するため、2つのLEDに平均して使用可能な電流よりも多くの電流が流れることはなく、そのためラインからの電流供給のオーバーロードが回避される。
スイッチングの周波数を上げ、電流の利用をさらに平等に拡散するため、フリッカー軽減変調システムはPWMシステムとして所定時間の間、実質的に同数のタイムユニットに対して定電流出力を供給するが、定電流をオンにしたときのタイムユニットは時間区間にわたって平等に分配される。図10Bは、フリッカー軽減変調が、図10Aに示したPWMの例と同じエネルギー出力に対して定電流のパルスをどのように出力するかを示している。
図10Bの出力パターンを生成するため、それぞれのビット位置と関連する図10Cの4つのパターンは、強度値のそれぞれのビット位置がオンであれば論理和を取ることができる。例えば、強度レベル9(「1001」)を指定すると、最も重要なビット位置(「1000」)に関連するパターンおよび最も重要ではないビット位置(「0001」)に関連するパターンは、図10Cに示したように共に論理和を取ることができる。
図10Aのパルス幅変調システムの出力を図10Bのフリッカー軽減変調システムの出力と比較すると、フリッカー軽減変調システムで電力を出力するときの方が時間区間ごとに発生する個々のパルスが多く見られる。特に、図10Aのパルス幅変調システムでは時間区間ごとに1つの定電流パルスしかないのに対し、時間区間に対してさらに平等にエネルギーを拡散しているフリッカー軽減変調システムには複数の定電流パルスがある。どちらかのシステムで生成された定電流パルスはそれぞれ、理想のスクエアパルスを完全には形成しない。図10Dは、破線で描いた理想の電流パルス、および太実線で描いたこれよりも現実的な電流パルスの拡大図である。図10Dに示すように、定電流パルスの立ち上がり時間および立ち下がり時間は、理想のスクエアパルスで示したようにゼロにはならない。実際の定電流パルスでは、立ち上がり時間は一般に立ち下がり時間よりも長い。(立ち上がり時間がこのように長くなることを本明細書では「LED点灯遅延(turn on delay)」という。)そのため、実際の定電流パルスの間に出力されるエネルギー量は、理想のスクエア定電流パルスの間に出力されるエネルギー量よりも少なくなる。したがって、この減少したエネルギー出力によってLEDの出力は所望の出力よりも小さくなってしまう。この作用を補償しなければ、強度の出力規模に線形性がなくなる。
この作用を補償するため、LEDドライバ回路780のデジタル回路は、発生する定電流パルス数をカウントし、複数の定電流パルスを指定したのちに余分な定電流パルスのタイムユニットを追加する。例えば、単一タイムユニットの実際の定電流パルスが単一タイムユニットの理想のスクウェア定電流よりも5%少ないエネルギーを出力した場合、発生する20パルスごとに余分な定電流のタイムユニットを追加する。20×5%=100%、つまりタイムユニット全体のパルスが失われるからである。一実施形態では、調整可能なLED点灯遅延の値が、各パルスで失われたエネルギー量を表す値を格納する。LED点灯遅延の値は、それぞれの定電流パルスの後に関連するLEDのアキュムレータに追加される。アキュムレータが容量過多になると、LEDが「オン」の時間に余分のタイムユニットが追加されてこの流失するエネルギーを補完する。
クロッキング/データ抽出ブロック730に関する説明で記載したように、LEDコントローラ760は、フリーランニング型の内部リングオシレータを使用し、回路を駆動するのに使用するコアクロック信号を生成する。高速フリーランニング型のリングオシレータクロックは、いくつかのクロックジッターを備えることができる。コアクロックを生成するため、高速フリーランニング型のリングオシレータクロックは、デジタルフェーズロックループ回路が制御するカウンタ計数Nでの除算により減少する。コアデータクロックを生成するのにデジタルフェーズロックループ回路を使用することで、コアクロックにいくらかの量子化誤差が生じる。その結果、内部コアクロックは個々のコアクロック周期に対して時間の長さがわずかに異なる。コアクロックはLEDの出力を駆動するのに使用するため、LEDがオンのときのタイムユニットもこのように時間の長さがわずかに異なる。
LEDがオンの時間にクロッキングに起きるこのわずかな不正確が、クロッキングが不正確な位相にあるLED制御データのパターンと重なると、その作用が相乗されるためにLEDの出力が著しく影響を受けるおそれがある。クロッキングのこのようなわずかな不完全とLEDのオン/オフデータパターンとが組み合わさって、LED出力性能に負の効果が及ぶことがないようにするため、LEDのオン/オフデータパターンにLED出力のオン/オフの無作為化を導入する。特に、LEDを点灯する時間を時間区間内でランダムに動かすことができる。しかし、LEDは時間区間中の同じ時間量の間は点灯したままになるため、正味のLED電力の出力は変化しない。例えば、図10Eは、図10Cの出力パターンの無作為化の3つの可能な異なる例を示している。一実施形態では、この無作為化は、擬似ランダムのビット列を生成する線形帰還シフトレジスタ(LFSR)を用いてLEDオン/オフ制御パターンに追加する。LEDオン/オフ出力パターンに導入したこの無作為化によって、不完全なクロッキングと相互作用するパターンにデータが従属する可能性を効果的に排除し、LEDの強度に負の影響を及ぼすようにする。
上記のLED強度を制御する2つの定電流による方法(パルス幅変調およびフリッカー軽減変調)に加え、LED781の駆動にその他の手段を使用してもよい。例えば、LEDに供給する電流強度を変化させる方法を使用してLEDの輝度781を制御することができる。しかし、この方法では良好で安定したカラー出力が得られないため避けた方がよい。
デジタル回路部分は、LEDドライバ回路780のアナログ部分を使用して関連するLEDを駆動する。アナログLEDドライバ回路は電源システム720から受信した基準電流を使用し、定電流パルスでLEDを駆動する。アナログLEDドライバ回路は、アナログLEDドライバ回路が正常に動作するのに十分な電圧を電源システム720から得ていないときに、電源システム720に信号を発信する。アナログLEDドライバ回路はまた、LEDが動作不良になったように見えるときにも、電源システム720に信号を発信する。特に、LEDを流れる電流が高すぎるかゼロであれば、LEDドライバ回路はLEDがそれぞれ短絡か開回路に見えると判断することができる。LEDが動作不良になると、システムはそのLEDの起動を停止する。システムは定期的にLEDを再検査し、動作不良が不当に検出されたのか問題が一過性のものかを判断する。1つのLEDが動作不良になったとシステムが判断すると、LEDコントローラはこの動作不良になったLEDと関係のある他の多くのLEDを停止状態にする。例えば、カラー画素を生成するのに使用する赤、緑および青色のLEDがセットになった1つのLEDが動作不良になると、この画素と関連する3つのLEDすべてを停止状態にしてもよい。
一実施形態では、LEDドライバ回路は、LEDに供給される電流をモニタリングし、LEDを流れる電流に基づいてキャリブレーションによる調整を行う。例えば、同じ種類の複数のLEDがあるが、一部のLEDに流れる電流が他のLEDよりも多い場合、LEDドライバ回路はそれに応じてLEDに供給される定電流パルスのレートを調整することができる。例えば、受信する電流が少ない方のLEDには電流パルスのレートを高く設定し、異なるLEDの電力出力を等しくすることができる。
検出した電流差に対して電流パルスのレートを調整する技術は、電流の差が意図的か意図的でないかにかかわらず使用できるものである。電流差は、エネルギー効率を改善するために意図的に発生させることが可能である。特に、超過電圧を熱として消費することによって、それぞれ異なるLEDに供給される電圧を慎重に調節して各LEDに同量の電流を流す代わりに、システムが同じ電圧をそれぞれが異なるLEDに供給することができる。ただし、異なるLED間には製造上の誤差があるため、各LEDには別々の電流量が流れることもある。電流差を均等にするため、この差に対応する様々なレートの電流パルスを各LEDに供給することができる。電流が低いLEDは高いレートの電流パルスを受ける。そのため、過剰なエネルギーを非効率に消費する方法で電流を均等にする代わりに、各LEDに供給される電流パルスのレートを調整することによって、それぞれ異なるLEDは均等になる。
図7のLEDユニット750一式に接続している図4AのLEDラインドライバ回路425は、無駄になる電力量を最小限に抑えるきわめて効率的なLED照明システムを形成する。LEDラインドライバ回路425では、主力のラインドライバFET461は常に完全にオンまたは完全にオフであるため、熱としてごくわずかな電力しか消散しない。個々のLEDユニット750では、LEDユニットのローカル電源コンデンサを充電する際にローカル電源システム720がライン電流を分路するため、電流はすべてライン上の次のLEDユニットに流れる。個々のLEDユニット750の内部では、制御回路は最小の電力を使用するため、LEDドライバ回路780は電力のほとんどをオンになっているLED781へ分散させる。そのため、全体を制御したLED照明システムはきわめて効率的である。システムは、LEDがオフのときは限られたわずかな電力のみを流す。またLEDがオンのときは、システムは電力をほとんど無駄にしない。
図7の実施形態に示したように、それぞれのLEDユニットは4つの異なるLEDを制御しているが、他の実施形態ではこれとは異なる数のLEDを備えることもできる。さらに電力利用を最適化する(およびコストを抑える)ため、N個のLEDを制御する3つのLEDユニットからなるグループをそれぞれ使用し、3つのLEDユニットのそれぞれが一色をサポートする(それぞれが赤、緑および青色のLEDを持っている)ようにすることで、N個の画素を実装することができる。例えば、図7の実施形態では、それぞれのLEDユニットに同色の4つのLEDを制御させることによって4つの独立した画素を生成できる。LEDユニットをこのように展開させると電力の利用法が一層最適化される。異なる色のLEDには様々な異なる電力量が必要になり、それぞれのLEDユニットには特定色のLED(赤、緑または青)をサポートするのに必要な電力しか流れないからである。
高度なカラーシステム
代替実施形態では、個々のLEDユニットを、LEDユニットが赤、緑および青色のLEDからなるカラー画素を駆動するためのカラーデータを備えている画素回路として実装することができる。それぞれのLEDユニットは、1つ以上の画素を制御できる。画素回路は、画素回路が制御するそれぞれの画素に対する色/輝度の情報を受信する。画素回路は、多数の異なる色を符号化する以下のような方式を用いて動作することができる。
YUVまたはYCrCbまたはYPbPrの色空間
RGB(Red(赤)、Green(緑)、およびBlue(青))の色空間
HSV(Hue(色相)、Saturation(彩度)、およびValue(明度))の色空間
CMYK(Cyan(シアン)、Magenta(マゼンタ)、Yellow(イエロー)、およびBlack(ブラック))の色空間
画素回路は、受信した色情報を赤、緑および青一式の画素を駆動するのに必要な値に変換して所望の色を生成する。きわめて鮮明な色を生成するため、個々の画素回路は、LEDに供給されている電流および電流温度を計算に入れることができる。画素回路は、電流温度およびLEDに供給される電流によって異なる各色のLEDに対する出力強度値を調整する。
色空間の変換を画素レベルで実行するディスプレイシステムは、いくつかの利点をもたらす。ディスプレイ情報を供給するシステムは、画像データを供給するシステムが色空間の変換を実行する必要がないため簡易化できる。代わりに、この色空間の変換は、画素光が生成される場所で行われる。
さらに、画素光源まで色情報すべてを供給するシステムは、元の色空間を直接使用できるため、より高質な出力を供給できる。例えば、RGBの色空間には相互の重複が多いため、YCbCrの色空間はRGBの色空間よりも効率的である。さらに、色の変換プロセスの間に起こる量子化誤差がない。そのため、YCbCrで符号化した色情報を、画素の光をレンダリングするシステムにまで提供することによって、画素の光をレンダリングするシステム(画素回路)は、色情報すべてを使用して最も鮮明な色の再現を生成することができる。
以前に記載したように、正確な所望の電圧を得るために慎重にキャリブレーションされてはいないが、代わりにおおよそ所望の電流を供給する電圧源を効率的に供給することによって、システムはエネルギー効率を向上させることができる。このようなシステムでは、LEDの発光スペクトルが影響を受けることがある。前述したように色の制御を行う画素回路では、色回路はLEDに供給されている電流に対して色の出力を調整できる。そのため、LEDに供給される電流がLEDの色出力を変化させると、色の制御回路がこの色出力の変化を計算に入れてこの画素に対するLEDすべての出力を調整することができ、その結果、最終的に正確な色の出力を生成できる。このようにして、カラー画素の生成に使用する様々な異なる色のLEDに実際に供給される電流は、それぞれの色のLEDに対する正確な出力強度を決定するカラー回路への入力となる。
自動アドレッシングシステム
前述したように、単一のドライバラインにある個々のLEDコントローラユニットすべてが個別制御可能なものであれば、個々のLEDコントローラユニット(図7の760)にはそれぞれ独自のアドレスを付与する必要がある。これは、ドライバライン上にある単一の個別のLEDコントローラユニットにLEDラインドライバ回路を接続し、LEDラインドライバ回路からこの単一のLEDコントローラユニットにコマンドを送信し、そのアドレスヒューズを特定のアドレス値に対して溶断することによって達成することができる。その後、それぞれが独自のアドレスを持つ一連のLEDコントローラユニットを、特定のパターンで単一のドライバライン上に直列に一緒に接続し、個別制御可能なLEDコントローラユニットを公知の配列にしたドライバラインを作ることができる。
このようなLEDコントローラユニットのストリングの作製を容易にするため、アドレスプログラミング論理回路を、「ホール効果」センサを加えることで改良することができる。ホール効果センサとは、ローカルの磁場を検出できる電気センサである。アドレスプログラミング論理回路を改良するため、ホール効果センサが特定の磁場を検出したときのみアドレスプログラミング論理回路を起動できるような方法で、ホール効果センサを追加するとよい。そのため、LEDコントローラユニットが所定の磁場にない場合、アドレスプログラミング論理回路は動作しない。このようにして、まだヒューズ溶断によりアドレスを付与していないいくつかのLEDコントローラユニットを同じドライバラインに接続することができる。次に、ドライバライン上のLEDコントローラユニットに独自のアドレスを付与するため、個々のLEDコントローラユニットを適切な磁場に順次(1回に1つ)配置し、独自のアドレスをプログラムするコマンドをドライバラインの下流へと送信する。適切な磁場には1つのLEDコントローラユニットしかないため、ヒューズ溶断によるアドレス付与のコマンドにはこの1つのLEDコントローラユニットしか応答しない。同じドライバラインにある他のLEDコントローラは、ヒューズ溶断によるアドレス付与のコマンドを無視する。そのため、適切な磁場にそれぞれのLEDコントローラユニットを順次配置し、独自のアドレスでプログラムするコマンドを送信することによって、単一のドライバラインにすでに一緒に接続されたLEDコントローラユニットそれぞれに独自のアドレスをプログラムすることができる。
用途概観
以上のセクションで記載し図2Aに示した、単一配線の複数のLEDの電力および制御システムは、幅広い用途に使用できる。最も基本的な用途では、個別に制御される照明ユニット250のストリングを、クリスマスツリー用の一連の電飾などの、単純な制御の装飾用照明システムに配置できる。このような実施形態では、ドライバライン221を絶縁線にすることで、電力の伝送、符号化した制御データの供給、基準電流値の供給、および個々のLEDユニット250に対するヒートシンクとしての役割に加えてストリングに物理的構造を与えるようにすることができる。このような配置では、マスターLEDコントローラシステム230を様々な異なる照明パターン一式を備える小型のマイクロコントローラにしてもよい。これらの照明パターンは、マスターLEDマイクロコントローラシステム230をプログラムする人の想像力以外に制限要素はない。以下に例を挙げる:色のスペクトルを備える固定照明、様々な色で多様に点滅する照明パターン、光源がストリングを移動するように見せるためにLEDユニットを漸進的に作動させる、など。
上のセクションで記載した単一配線の複数のLED電力および制御システムに対して考えられる用途はほぼ無限にあるため、その数は本明細書の及ぶところではない。しかし、以下のセクションでは、開示したシステムに対して考えられる多くの用途の一部を取りあげる。
制御される照明の用途
本明細書の背景技術で記載したように、現在LEDは多くの伝統的な照明システムに用いられている。これに対する主な2つの理由は、LEDのエネルギー効率がよいという点と、LEDが堅牢であるためにLED照明システムの維持管理がわずかで済むという点である。(LEDは、フィラメントベースの白熱電球または小型の蛍光灯ほど頻繁に交換する必要がない。)しかし、LEDベースの照明システムは価格が高いために、その配置は限られている。本開示による単一配線の複数のLED電力および制御システムにより、LEDベースの照明システムのコストが下がると同時に、LEDベースの照明システムの一連の特徴が改善される。そのため、本開示による単一配線の複数のLED電力および制御システムは、LEDベースの照明システムの市場を拡大することができる。
本開示の単一配線の複数のLEDの電力および制御システムにより、LEDベースの照明システムの設計、製造および設置に係るラインの複雑さが軽減されることになり、LEDベースの照明システムのコストが削減される。特に、単一のドライバライン(および回路を完成させるための帰還用供給ライン)により、LEDベースの照明システムを構築するのに必要なラインが大幅に簡易化される。図2Aに示すように、1つの可能性のある実施形態では、マスターLEDコントローラシステム230、電源210、およびLEDラインドライバ回路220の機能を単一のLEDドライバ回路システム239の中に組み入れ、単一のドライバライン221(およびその帰還用ライン229)のみが多数の個別に制御されるLEDユニット(250−1〜250−N)を駆動するようにする。このようにして、照明システムの製造が大幅に簡易化される。しかし、図2AのLED照明システムによって、(それぞれが異なる色の複数のLEDを備える)LEDユニット250が全て個別に制御されることになるため、高度な多色パターンを生成することができる。
図11A〜12は、本開示の教示を用いて構築され得る、可能なLED照明システムのブロック図である。これらは、本開示の教示を用いて生成され得る、無数にある可能な照明設備のうちのわずか2例にすぎないことに注意されたい。
図11Aの実施形態では、LED照明システムを2つのユニットに分割した。LED照明設備1125およびマスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130である。図11Aの実施形態は、従来の交流電流(AC)による照明環境で使用できる。LED照明設備1125の一部は、通常AC電流に切り替えて制御する従来の照明設備のように設置する。しかし、従来の照明スイッチではなく、マスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130が、オン/オフスイッチを通常設置する場所に設置される。
マスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130は、電源、マイクロコントローラ、ユーザインタフェース、および電力ラインデータエンコーダを備えている。ユーザがマスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130にあるユーザインタフェースと相互作用して制御コマンド(点灯、消灯、光を青に設定、レインボーパターンを表示など)を供給する。するとマイクロコントローラ・電力ラインデータエンコーダは、マスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130をLED照明設備1125に接続している電力ラインで制御コマンドを変調する。様々な異なる公知の電力ラインデータ変調システムを使用できる。
図11Aに示した可能な実施形態では、マスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130にあるユーザインタフェースは、1対の指針盤を備えることができる。第1の輝度指針盤1135を使用すると、LED照明設備をオンにするかどうか、およびLEDをどの程度の輝度に点灯させるべきかを制御できる。第2の色相指針盤1136を使用すると、LEDユニットに対して特定の色相を選択できる。色相指針盤1136に白の設定をすると、LED照明設備1125が正常な白の光源として作動できる。
マスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130は、従来の照明設備のように設置できるLED照明設備1125を駆動する。LED照明設備1125内の電源およびデータ抽出器1110は、制御および電力ライン1131から制御コマンドを受信し、変調し、抽出する。すると電源およびデータ抽出器1110は、抽出した制御データおよび必要な電力をLEDラインドライバ回路1110へ転送し、本明細書の以前のセクションに記載したように一連のLEDユニット1150を駆動する。
単一のマスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130で複数のLED照明設備の駆動が可能である。例えば、図11Bが示す実施形態では、単一のマスターLEDコントローラ・電力ラインデータエンコーダシステム1130は、ちょうど従来の照明スイッチが複数の頭上にある照明設備を制御するように、3つのLED照明設備(1125、1126、および1127)を制御する。
図12は、無線の制御システムで制御する照明システムの代替実施形態を示す。特に、図12は、LED照明設備1229および無線のLED制御送信器1238を備える、照明システムの代替実施形態を示す。LED照明設備1229は、従来のAC電流による照明設備と同じ場所に設置してよい。LED照明設備1229内の電源1210に送られるAC電力1211は、LEDラインドライバ回路1220およびマスターLEDコントローラシステム1230に対して必要なDC電力を生成する。(一実施形態では、マスターLEDコントローラシステム1230はLEDラインドライバ回路1220から動作電力を受け取れることに注意されたい。)
マスターLEDコントローラシステム1230は、LED制御送信器1238から無線コマンドを受信するセンサ回路1232を備えている。マスターLEDコントローラシステム1230は、LED制御送信器1238から受信したコマンドを復号化し、このコマンドをLEDラインドライバ回路1220へ転送する。無線システムは、Bluetooth(登録商標)、赤外光、またはその他の適切な無線のデータ転送システムを使用できる。赤外線による転送システムを使用する場合、LED制御送信器1238の機能は、プログラム可能な赤外線による遠隔制御システムが操作する。そのため、図12のLED照明設備1229はホームシアターシステムを備えた部屋で使用するのに理想的なものである。LED照明設備1229に給電するAC電力1211は、従来の壁に備えられた照明スイッチから得られる。一般の期待に沿うように、マスターLEDコントローラシステム1230は、デフォルトモードの白光を発する状態で、常にLED照明設備の電源をオンにする。このようにして、LED照明設備1229は、LED制御送信器1238が使用されていないときは普通の照明設備のように動作する。
舞台照明システムに対するLEDストリング技術の使用
音楽コンサートおよび舞台での演奏には、ライブパフォーマンスの演出を向上させるために特別な照明システムを使用する。舞台照明用の照明ハードウェアおよび制御システムの開発・販売に特化した専門の業界がある。様々な機器同士の相互の情報交換ができるように、米国劇場技術協会(USITT)は、舞台照明および効果を制御するのに使用する、DMX512−Aとして知られる標準の通信プロトコルを開発した。DMX512−A通信プロトコルは、舞台照明およびエフェクトユニットに対するコマンドを送信するためのEIA−485をベースとするシリアルプロトコルである。
舞台照明市場で有益に使用するため、本発明の教示は一般的なDMX512−A通信プロトコルと結びつけて実装することができる。第1の実施形態では、変換ユニットを用いてLEDラインドライバユニットに対するDMX512−A通信プロトコルをネイティブプロトコルに変換できる。例えば、図2Aを参照すると、マスターLEDコントローラシステム230はマイクロコントローラユニット(MCU)とすることができ、このユニットは、DMX512−A通信プロトコルまたは入力232でコマンドを受信してこれらのコマンドを変換したのち、これらのコマンドを制御データ231に出力し、この制御データはLEDラインドライバユニット220に対してネイティブプロトコルで送信される。するとLEDラインドライバユニット220は、本明細書の前セクションで記載したように個別に制御されるLEDユニット250を駆動する。マスターLEDコントローラシステム230は、DMX512−A通信プロトコル情報をデイジーチェーン構成の次のDMX512−Aベースのデバイスへ中継する。
また、本開示の教示は、専用のDMX512−Aベースのシステムでも使用できる。図13は、DMX512−Aベースの舞台照明システム1339専用のラインドライバ回路1320のシステムの実装を示す。従来のDMX512−Aベースのコントローラシステム1330を使用し、DMX512−A形式にしたデータ1331をDMX512−Aベースのラインドライバ回路1320へ送信する。これと同じラインで電源1310へ送る電流も伝送することができる。ラインドライバ回路1320内のDMX512−Aデータインタフェース1325は、DMX512−Aプロトコル形式のコマンドを受信して復号化する。
次にラインドライバ回路1320は、これらのコマンドを変換し、変換したこのコマンドを、個別に制御されるLEDユニット1350に給電する電流に沿ってドライバライン1321の下流へ送信する。個別に制御されるLEDユニット1350は、このコマンドを受信し、適切に実行する。個別に制御されるLEDユニット1350は、LEDを様々な輝度レベルで点灯するだけでなく、その他の追加機能も実行することができることに注意されたい。例えば、個別に制御されるLEDユニット1350は、LEDのパンやティルトなどの特徴およびゴボの使用を追加で組み入れることができる。(ゴボとは、光の出力に効果を与えるために光源の前面で使用するフィルタやパターンのことである。)
DMX512−Aデータインタフェース1325は、デイジーチェーン構成のストリングの次のDMX512−Aベースのユニット1327も制御データを受信するようにDMX512−Aプロトコルを出力できる。同じように、次のDMX512−Aベースのユニット1327には電源1310から電力信号を送ることもできる。
自動車用の用途でのLEDストリングの使用
自動車には様々な光源が多数使用されている。例えば、典型的な自動車の場合、自動車のコーナーに少なくともターンインジケータランプ4つ、ブレーキランプ2つ、車内灯、ナンバープレートランプ、中央に取り付けるブレーキランプ、トランクライト、ボンネットライト、リバースインジケータランプ、およびこれ以外のランプがある。このような異なるランプのそれぞれに、特定の輝度および色の必要性に応じて異なるタイプの電球を使用することができる。このような様々な異なるランプを駆動するため、自動車には様々な異なる大きさのハーネスが張り巡らされている。車には様々な種類や構成があるため、多種多様なライン用ハーネスが必要である。この従来のシステムでは、様々な異なる多数のライン用ハーネスおよび電球を備蓄しておかなければならないため、困難な在庫管理の問題が生じる。
自動車の配線を簡易化するため、以前のセクションで記載した単一配線の複数のLEDユニットのストリングを自動車環境に使用することができる。単一の配線を自動車に張り巡らせ、自動車に搭載された様々な異なるランプの出力すべてを(それぞれのランプの出力に余力を持たせて)つなげることができる。例えば、単一の配線を制御位置から開始し、次に前方左のインジケータランプ、前方右のインジケータランプ、車内灯、後方右のインジケータランプ、後方右のブレーキランプ、後方左のインジケータランプ、後方左のブレーキランプ、リバースインジケータランプ、ナンバープレートランプ、トランク/ハッチランプ、そしてその他の必要なランプの位置、最後は中央制御位置へ戻るように配線することができる。次に、光源が必要な各箇所でこの配線を切断し、制御されるLEDランプユニット図2の250)をこの配線に続けて接続する。
ストリングの全ランプユニットの制御を、中央制御ユニット(LED駆動システム239など)で処理する。中央制御ユニットは、それぞれのランプユニットから光がどのように出力されるか(色、輝度、およびこれらの変化)を正確に制御するため、同じランプ出力ユニットをすべての異なる場所で使用できる。例えば、中央制御ユニットは、確実にターンシグナルインジケータランプを黄色に点滅させ、ブレーキランプを赤色に出力させ、リバースインジケータランプを白色に出力させる。安全向上のため、2つの独立したストリングを並列に稼働させ、1つのストリングが動作不良になっても、他のストリングは動作を続ける。2線式システムなど、並列に稼働している2つのシステムであっても、従来の自動車の電気ハーネスに使用されている無数の配線よりは遙かに簡易である。
本開示の照明システムは完全に制御可能であるため、自動車に搭載された中央制御ユニットは、自動車の照明に通常使用する方法とは異なる方法で使用することができる。例えば、自動車が盗難に遭った場合、無線通信システム(携帯電話ネットワークまたはゼネラルモーターズ社が提供するOnStarネットワークなど)が照明システムに、車両の全ランプを迷惑に目立つパターンで点灯開始するよう命令し、盗まれた車が人目を引くようにすることができる。同じくこれと同じ技術を使用し、広い駐車場にある車を発見できない場合に人がその車を発見しやすいようにできる。車に搭載されているランプは、様々な方法で情報を出力するのに使用することもできる。例えば、車の外部ランプの列を使用してバッテリの充電状態(またはその他のデータ)を棒グラフの形で出力することができる。制御されるランプの出力は、符号化した情報を道路沿いに設置した様々なセンサに出力するのにも使用できる。例えば、様々な識別パターンを検出するセンサを駐車場や料金所に設置し、サービスの利用に対して特定の自動車を認識したりその自動車に料金を請求したりすることができる。
自動車の設計および自動車部品の在庫管理が簡易化されることに加え、本開示のLEDストリングシステムはエネルギー効率がきわめて高い。自動車は最終的にはガソリンから電気へと移行するため、自動車のあらゆる電気システムの効率はきわめて重要になってくる。そのため、本開示のLEDベースの照明システムは電気車両内部での使用に理想的であろう。本システムはエネルギー効率の高いLEDを光源として使用するだけでなく、必要に応じて光の量を慎重に制御することができる。例えば、ブレーキランプは目に見えるように日中に大量の光を出力する必要があるが、夜間には出力を少なくするように調整することができる(そのためエネルギーが節約される)。
自動車の用途に加えてLEDストリングシステムは、航空機内部での使用にも理想的である。航空機では重量を考慮することが鍵になるが、軽量なLEDストリングシステムは最低重量の照明を提供することができる。さらに、通常の白色灯、ムード灯、および非常出口灯などの複数の目的に対して同じ照明を使用できるように照明を制御する。
モジュールディスプレイシステムでのLEDストリングの使用
以前のセクションに記載した、単一配線の複数のLED電力および制御システムを使用して、ディプレイシステムを作製することができる。特に、図2Aを参照すると、個別に制御されるLEDユニット250をディスプレイシステム内の個々の画素として制御できるように、個別に制御されるLEDユニット250を2次元のパターンで配列することができる。
図14は、単一のLEDラインドライバ回路1420を使用し、8×8の2次元アレイに配列した64個の個別に制御されるLEDユニット(1450−1〜1450−64)を駆動するシステムの例を示す。単一のドライバライン上にある256個の個別に制御されるLEDユニットで16×16のアレイを作ることができる。(これは単なる一例であり、サイズおよび形が異なるモジュールを作製することもでき、このようなモジュールを任意の所望のパターンと組み合わせてもよいことに注意されたい。)単一の電源1410がLEDラインドライバ回路1420および個別に制御されるLEDユニット(1450−1〜1450−64)のアレイ全体に電力を供給する。図14に示した2次元アレイシステムの最も重要な一面は、単一の配線のみを使用して個別に制御されるLEDユニット(1450−1〜1450−64)すべてをドライバライン1421に接続するということである。これによって、図14のアレイシステムがきわめて構築しやすくなる。
LEDラインドライバ1420は、画素制御データ1432をLEDラインドライバ1420へ送信するマスターLEDコントローラシステム1430で制御する。LEDラインドライバ1420の制御に加え、マスターLEDコントローラシステム1430は、それぞれが自らの8×8のアレイも駆動するその他の多くのLEDラインドライバを制御する。複数のアレイをモジュール式に組み合わせることによって、より大きいディプレイシステムを組み合わせることができる。例えば、図15は、さらに小さい2次元モジュールアレイの10×8のアレイの概念を示す。図14の8×8のアレイを図15の構成で使用すると、全体のディスプレイは80×64画素になる。それぞれのモジュールユニットおよび/またはさらに多くのユニットにおいて、さらに多くの個別に制御されるLEDユニットを使用して、高解像度のディスプレイを作製することができる。
2次元ディプレイシステムに加え、開示したLEDストリングを3次元のパターンに構成することができる。3次元構成のLEDストリングでは、3次元の画像を生成することができる。
ストリングディスプレイシステムでのLEDストリングの使用
以前のセクションに記載した単一配線の複数のLED電力および制御システムは、従来のものではない様々な異なるディプレイシステムを作製するのに使用できる。例えば、個別に制御されるLEDユニットのいくつかの長いストリングを互いに並列に取り付けて、図16に示すような2次元ディスプレイシステムを作製することができる。それぞれのストリングの先頭では、ラインドライバユニットが単一のラインを駆動して、ストリング上の個別に制御されるLEDユニットをすべて制御する。ラインドライバ回路はすべて、適切なデータを送出して画像をアレイ上でレンダリングする単一のマスターコントローラシステムで制御できる。図16のディスプレイシステムは、大型のディスプレイシステムを必要とするどのような場所でも容易に丸めたり、持ち運んだり、設置したりすることができる。別の実施形態では、個別に制御されるLEDユニットは、従来の巻き上げ式反射投影スクリーンのような柔軟なシートに取り付けることができる。個別に制御されるLEDユニットを接続するのに平らで柔軟な配線を使用できるからである。このようなディスプレイシステムは、大型のディスプレイシステムを必要とするどのような場所でもカーペットのように丸めたり、持ち運んだり、設置したりできる。
個別に制御されるLEDユニットのストリングを複数組み合わせて配置すれば、仮想的にはディスプレイシステムにどのような面でも作ることができる(ストリングをぶら下げる場合は面も必要ない)。個別に制御されるLEDユニットの複数のストリングを配置するのに慎重な方法で行う必要もない。数種類の2次元パターンを作製すれば、キャリブレーションシステムを使用して2次元パターンを識別し、そのパターンをキャリブレーションできる。図17および18を参照しながら一例を挙げる。
図17を参照すると、自由形態のディスプレイシステムの作製は、個別に制御されるLEDユニットのいくつかのストリングを工程1710で配置することから開始される。ストリングは、LEDストリングとは別の有利な点から見た場合に少なくとも数種類の2次元パターンが生成される任意の方法で配置する。例えば、建物であればその建物の1つの側面に複数の異なるLEDストリングを取り付けることができる。複数の2次元アレイを生成して制御してもよい。例えば、トラックを複数のLEDストリングで覆い、このトラックの主要な2側面が2次元アレイとして機能するようにできる。
次に、工程1720で、すべてのLEDストリングをコンピュータシステムなどの単一のマスターLED制御システムに接続する。マスターLED制御システムは、取り付けたLEDストリングの数およびアドレッシング情報を付与したLEDストリングの数に関する情報を得て、この情報によってマスターLED制御システムは各LEDユニットを独自にアドレス指定することができる。この時点で、マスターLED制御システムは、配置したLEDストリングの位置関係については一切の情報を持っていないことに注意されたい。
次に工程1730で、キャリブレーションカメラシステムを、ディスプレイシステムの、見るのに有利な地点に配置する。建物の側面に取り付けるLEDストリングの例では、適切で有利な地点は、その建物から通りを隔てた歩道であろう。トラックの例では、適切で有利な地点はトラックの側面から6メートル(20フィート)の所ではないだろうか。(トラックの両面であれば2つの異なるキャリブレーションを実行することに注意されたい。)キャリブレーションカメラシステムを設置した後、マスターLED制御システムは工程1740で一連のキャリブレーションパターンを表示する。キャリブレーションパターンは、様々なLEDストリングの各LEDユニットの位置および相対輝度を特定するために使用する。このキャリブレーションによって、配置したLEDユニットの2次元パターンを識別することができる。(トラックの反対側にあるLEDユニットの例では視界が遮られるなどの理由で)キャリブレーションカメラから見えないLEDユニットは無視される。
このキャリブレーションシステムには、表示される電流のキャリブレーションパターンとキャリブレーションシステムが捕捉する画像との相互関係を容易にするため、マスターコントローラシステムとキャリブレーションシステムとの接続が必要であるようにみえる。しかし、色出力、ちらつきパターン、またはこの2つの組み合わせによってそれぞれのLEDユニットのアドレスを送信する符号化システムを使用して、キャリブレーション画面を捕捉したキャリブレーション画像と合致させることもできる。
キャリブレーションパターンを捕捉し、これらのパターンを使用してそれぞれのLEDユニットの相対位置および輝度を識別したのち、ステップ1750でこのキャリブレーション情報をマスターLED制御システムに格納する。この時点で、マスターLED制御システムは、2次元アレイのモデルを作製するのに使用するすべての可視的なLEDユニットの位置関係に関する情報を持っている。マスターLED制御システムは、このモデルを使用して画像を変換したのち、該当するメッセージをLEDユニットに送出することによって、画像をレンダリングすることができる。マスターLED制御システムは、オプションの工程1760で記載したように、キャリブレーション情報の一部を個々のLEDユニットに送ることによって、キャリブレーション作業の一部を個々のLEDユニットに分配することができる。例えば、特定のLEDユニットを、他のLEDユニットよりも輝度が低いように見える状態でキャリブレーションカメラシステムの有利な地点に向けることはできない。これを補償するため、この特定のLEDユニットにあるキャリブレーションデータは、このLEDユニットの輝度を増大するように指定できる。
LEDストリングを配置し、キャリブレーション情報を捕捉し、2次元アレイのモデルを作成すると、自由形態のディスプレイシステムはステップ1770で動作する準備ができた状態になる。しかし、LEDストリングを用いて2つ以上の2次元アレイを製造する場合は、2つ以上のディスプレイシステムを規定してもよい。例えば、LEDストリングで覆ったトラックでは、トラックの反対側に第2の有利な地点を選択することによって、第2のディスプレイシステムを作製できる。そのため工程1765では、ユーザが別の2次元の面(すなわちトラックの反対側)に対して工程1730〜1760を繰り返す選択をし、同じ一連のLEDストリングから別のディスプレイシステムのモデルを作製できるようにする。
図18は、図17の方法を用いて作製したディスプレイモデルを備えて配置した一連のLEDストリングをどのように使用してビデオ情報を表示できるのかを示す。ディスプレイシステムはこのモデルを使用し、ビデオ情報を個々のLEDユニットに送られるLED制御コマンドに変換する。
図18の左から見ると、コンピュータシステム1810、DVD1811、HDMI1812、ブルーレイ1813またはその他のビデオソースなどのあらゆるタイプの適切なビデオソースがフレームデコーダ1820に供給される。フレームデコーダ1820は、元のビデオソースを一連のデジタルフレーム表現に復号化する。フレームデコーダ1820の下にあるのは、ビデオフレームの概念を示すものである。
次に、フレーム計数器1830が元のソースフレームのスケールをディスプレイに適合したサイズに調整する。例えば、元のビデオフレームの解像度は、補間法を用いて低下または上昇させる必要があることもある。フレーム計数器1830は、元のビデオフレームの一部のみにアクセスして処理する必要があるビデオ情報量を軽減することができる。フレーム計数器1830の下にあるのは、フレームデコーダ1820の下にある元のビデオフレームからサイズを縮小したビデオフレームの概念を示すものである。
次に、工程1840でソースビデオの位置関係のリマッピングが行われる。自由形態のディスプレイシステムでは、従来の長方形のビデオフレームに正確に対応する適切な2次元アレイにはならないと思われる。そのため、ビデオソースフレームを自由形態のディスプレイシステムに対応させるため、画像のクリッピング、フレームの歪み、および画素の補間を行うことができる。位置関係のリマッピング工程1840の下にあるのは、自由形態のディスプレイが長方形ではないことを補償するためにフレームを歪めた画像概念である。
最後に、データ配信システム1850では、修正したソースフレームをスキャンし、一連のLEDユニットコマンドを生成して、ディスプレイモデルに応じて適切にアドレッシングしたLEDユニットに送出する。データ配信システム1850の下にあるのは、自由形態のディスプレイシステムを作製する様々なディスプレイストリングのモデル概念である。データ配信システム1850は、LEDアップデートコマンドを様々なLEDストリングコントローラ(1880−1〜1880−N)に送出する。元のソースビデオフレームに対して1820〜1850の工程を繰り返すことによって、(個別に制御されるLEDユニットを備える)一連のLEDストリングおよび図17の方法で作製したように配置したLEDストリングのモデルを使用して作製した自由形態のディスプレイシステムにビデオ情報を表示することができる。
上記の技術開示は例示を意図するものであり、限定的なものではない。例えば、上記の実施形態(またはこれらの実施形態の1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。その他の実施形態は、上記の記載を概観すれば当業者にとっては明らかであろう。したがって、特許請求の範囲は、添付の特許請求の範囲、およびこの特許請求の範囲に権利が与えられる等価物の全範囲を参照して決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「including(含む)」および「in which(ここで)」という用語は、それぞれ「comprising(備える)」および「where in(そこで)」という用語と同等の平易な英語として使用している。また、以下の特許請求の範囲では、「including(含む)」および「comprising(備える)」という用語は無制限であり、すなわち特許請求の範囲にあるこのような用語の後に列挙した用語以外にも要素を含むシステム、デバイス、物またはプロセスは、この特許請求の範囲内であると考える。さらに、以下の特許請求の範囲では、「first(第1の)」、「second(第2の)」および「third(第3の)」などの用語は単なる標識として使用しており、その対象物に数的要件を付与することを意図するものではない。