印刷物を保護するためには、ラミネートフィルムの施工に代えて、例えば、印刷された画像に重ねて、液体のオーバーコート剤を塗布することも考えられる。オーバーコート剤の塗布は、例えば、スプレー、刷毛、又はドブ漬け等による方法で行うことが考えられる。
しかし、このような方法でオーバーコート剤を塗布する場合、例えば、塗りムラが生じやすくなり、印刷の見栄えが低下する場合がある。また、例えば、画像が描かれていない余白部分にまでオーバーコート剤が塗布され、オーバーコート剤が余計に消費されやすくなる。更には、例えば、画像を描く印刷装置とは別にオーバーコード剤を塗布するための塗布装置が必要になり、メンテナンスに手間がかかる場合がある。
これに対し、オーバーコート剤の塗布に関し、スプレー、刷毛、又はドブ漬け等による方法ではなく、インクジェットプリンタ等を用いて塗布を行うこと等も考えられる。そこで、本願の発明者は、先ず、オーバーコート剤として紫外線硬化型のクリアインクを用い、インクジェットプリンタでオーバーコート剤の塗布を行うことを検討した。
このように構成すれば、例えば、塗布後のクリアインクに紫外線を照射することでオーバーコート層を硬化させ、印刷物の耐候性を高めることができる。また、インクジェットヘッドを用いてインクジェット方式でクリアインクを塗布することにより、塗りムラの発生を適切に抑え、クリアインクを均一に塗布することができる。また、必要な領域のみにクリアインクを塗布し、クリアインクの使用量を節約することもできる。更には、一台のインクジェットプリンタで画像の描画と、クリアインクの塗布とを行うことができるため、メンテナンスの手間を低減できる。
しかし、本願の発明者は、鋭意研究により、紫外線硬化型のクリアインクでオーバーコート層を形成する場合において、オーバーコート層の強度を十分に高めることが難しい場合があることを見出した。また、その原因として、紫外線硬化型のクリアインクにおいて、インクを硬化させるために必要な添加物の量や種類が多いこと等が、硬化後の強度に影響していることを見出した。
そのため、インクジェット方式でオーバーコート層を形成する場合、より適切な構成のインクを用いてオーバーコート層を形成することが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
本願の発明者は、インクジェット方式でオーバーコート層を形成する方法に関し、更なる鋭意研究を行った。そして、オーバーコート層を形成するためのクリアインクとして、紫外線硬化型のインクではなく、加熱により媒体に定着するインクを用いることを考えた。この場合、加熱により媒体に定着するインクとは、例えば、インク中の成分を加熱により揮発除去することで媒体に定着するインクのことである。また、揮発除去されるインク中の成分とは、例えば水又は有機溶剤等である。より具体的に、加熱により媒体に定着するインクとは、例えば、ラテックスインク又はソルベントインク等である。このようにすれば、例えば、クリアインク中の余計な添加物等を適切に低減できると考えられる。また、これにより、オーバーコート層の強度を適切に高められると考えられる。
ところが、実際に実験等を行ったところ、単にこのようなインクを用いるのみでは、新たな問題が生じる場合があることが判明した。より具体的に、例えば、オーバーコート層の耐候性を十分に高めるためには、十分な量のクリアインクを塗布し、かつ、塗布後の加熱を十分に行うことが必要になる。一方で、実用的な時間内にオーバーコート層を適切に完成させるためには、媒体の加熱時間を過度に長くすることはできない。そのため、クリアインクの塗布後の加熱においては、例えば加熱に要する時間を短縮するために、加熱の温度を十分に高めることが必要になる。
しかし、媒体の加熱温度を高めた場合、ブロッキング等の問題が生じやすくなるおそれがある。この場合、ブロッキングとは、例えば、印刷後に媒体を重ねた場合に媒体上のインクの少なくとも一部がその上に重ねられた媒体の裏面に付着し、接着したインクを剥がす際に印刷面が剥がれる現象である。また、ブロッキングは、いわゆる裏移りが生じる状態であるとも言える。
更に、オーバーコート層の形成は、例えば広告等の用途の印刷物の印刷時に行うことが考えられる。また、このような用途においては、例えば、印刷後にロール状に巻き取られる媒体が広く用いられている。そして、このような媒体を用いる場合、通常、印刷の進行に従って媒体を順次巻き取る構成になるため、ブロッキング等の問題が特に生じやすくなると考えられる。
これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、ブロッキング等の問題について、巻き取り時のオーバーコート層の温度がガラス転移点以上の場合に生じやすいことを見い出した。また、巻き取り時のオーバーコート層の温度をガラス転移点未満にすることにより、ブロッキング等の問題を適切に抑え得ることを見い出した。また、本願の発明者は、更に、媒体を巻き取る構成でクリアインク以外のインクを用いる場合についても、同様の方法で加熱を行うことにより、ブロッキング等の問題を適切に抑え得ることを見出した。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、媒体上にインクの層を形成する印刷ヘッドと、インクの層が形成された媒体を加熱するヒータと、ヒータによる加熱が行われた後の媒体を巻き取る媒体巻取部と、ヒータと媒体巻取部との間に配設され、媒体巻取部に巻き取られる前の媒体へ粉体を散布するパウダリング装置とを備え、ヒータは、インクの層の温度がガラス転移点以上の温度になるように媒体を加熱し、媒体巻取部は、インクの層の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体を巻き取る。
このように構成した場合、例えば、ヒータによる加熱温度を十分に高めることにより、例えば、媒体上のインクを適切かつ十分に加熱できる。また、これにより、例えば、短時間でインクを媒体に定着させることができる。更には、例えば高速印刷を行う場合にも、実用的な範囲内の時間で適切にインクを媒体に定着させることができる。
また、このように構成した場合、例えば、インクの層の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体を巻き取る構成であるため、ブロッキング等の問題を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、印刷後に媒体を巻き取る構成を用いる場合において、ブロッキング等の問題を抑え、より適切に印刷を行うことができる。
尚、この構成において、印刷ヘッドは、例えば、クリア層等のオーバーコート層を形成するための印刷ヘッド(オーバーコート用ヘッド)である。この場合、印刷装置は、例えば、有色のインクで媒体に画像を描くための印刷ヘッド(有色インク用ヘッド)を更に備えてよい。また、オーバーコート用ヘッドは、例えば、有色インク用ヘッドにより描かれた画像の上に、クリアインク等のインクを塗布する。また、印刷装置について、例えば、オーバーコート層を形成せずに、有色のインクによる画像の描画のみを行うことも考えられる。この場合、印刷ヘッドは、例えば、有色インク用ヘッドであってもよい。
また、例えば印刷装置10が複数のヒータを備える場合、必ずしも全てのヒータではなく、一部のヒータにおいて、インクの層の温度がガラス転移点以上の温度になるように媒体を加熱してもよい。例えば、このような加熱を行うヒータは、アフターヒータであってよい。アフターヒータとは、例えば、媒体の搬送方向において印刷ヘッドよりも下流側に配設されるヒータである。また、媒体巻取部について、インクの層の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体を巻き取るとは、例えば、媒体巻取部に巻き取られる箇所(巻き取り箇所)の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体を巻き取ることである。また、インクの層の温度とは、例えば、インクの表面の温度であってよい。
また、巻き取り時のインクの層の温度については、例えば、ヒータ(アフターヒータ等)での加熱後、媒体を巻き取るまでの時間を十分に空けることで適切に温度を下げることができる。この場合、より具体的には、例えば、ヒータから媒体巻取部までの媒体の搬送距離を十分に空けることが考えられる。また、ヒータでの加熱後、例えば冷却用のファン等を用いて、オーバーコート層の温度を下げてもよい。
(構成2)印刷ヘッドは、媒体へ向けてインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。このように構成すれば、例えば、媒体上にインクの層を適切に形成できる。
(構成3)印刷ヘッドは、乾燥することで媒体に定着するインクの層を媒体上に形成する。このように構成すれば、例えば、媒体上にインクの層を適切に形成できる。乾燥することで媒体に定着するインクとは、例えば、ラテックスインク又はソルベントインク等である。
(構成4)印刷ヘッドは、有色のインクにより媒体上に描かれた画像を覆うインクの層であるオーバーコート層を形成するオーバーコート用ヘッドである。この場合、有色のインクにより媒体上に描かれた画像とは、例えば、媒体上に描かれた文字又は図柄等のことである。また、オーバーコート層は、例えば、クリアインクで形成されるクリア層であり、有色インク層を覆うことで有色のインクで描かれた画像を保護する。このように構成すれば、例えば、媒体上にオーバーコート層を適切に形成できる。また、これにより、例えば、印刷物の耐候性を適切に高めることができる。
また、この場合、例えば、オーバーコート層用のインクについて、紫外線硬化型インクを用いる場合と比べ、インク中の添加物等を適切に低減できる。また、これにより、オーバーコート層の強度をより適切に高めることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーコート層をより適切に形成できる。
(構成5)印刷ヘッドとして、有色のインクを用いて媒体に画像を描く印刷ヘッドである有色インク用ヘッドと、オーバーコート用ヘッドとを備え、ヒータは、オーバーコート層の温度がガラス転移点以上の温度になるように媒体を加熱し、媒体巻取部は、オーバーコート層の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体を巻き取る。
このように構成した場合、例えば、一の印刷装置により、有色のインクによる画像の描画と、オーバーコート層の形成とを適切に行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、装置のメンテナンスの手間等を適切に低減できる。また、オーバーコート層の形成後、ヒータにより十分に加熱を行うことにより、オーバーコート層を媒体に適切に定着させることができる。また、オーバーコート層の温度が十分に下がった後に媒体を巻き取ることにより、ブロッキング等の問題を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーコート層をより適切に形成できる。
尚、有色のインクとしては、公知の各種のインクを用いることが考えられる。例えば、ラテックスインク又はソルベントインク等を好適に用いることができる。また、有色のインクとして、例えば、紫外線硬化型インク(UVインク)やソルベントUVインク等を用いることも考えられる。
(構成6)オーバーコート用ヘッドは、オーバーコート層として、透明なクリア色のインクの層を媒体上に形成する。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層を適切に形成することができる。
(構成7)オーバーコート用ヘッドは、オーバーコート層として、紫外線を吸収する紫外線吸収剤を含むインクの層を媒体上に形成する。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の耐候性をより適切に高めることができる。
ここで、例えば屋外等に印刷物を設置した場合、印刷物の表面は、通常、紫外線の影響を大きく受ける。そのため、オーバーコート層の耐候性を高めるためには、紫外線吸収剤を含むインクでオーバーコート層を形成することが有効である。しかし、例えば、紫外線硬化型インクを用いてオーバーコート層を形成する場合、紫外線の照射によりインクを硬化させることが必要であるため、通常、インク中に紫外線吸収剤を含ませることができない。
これに対し、加熱により媒体に定着するインク(例えば、ラテックスインク等)を用いる場合、インクを定着させるために紫外線を照射する必要はない。そのため、この場合、紫外線吸収剤を含むインクを用いることが可能である。従って、このように構成すれば、オーバーコート層が受ける紫外線の影響を適切に低減できる。また、これにより、上記のとおり、例えば、オーバーコート層の耐候性をより適切に高めることができる。
(構成8)オーバーコート用ヘッドは、オーバーコート層として、ラテックスインク又はソルベントインクの層を媒体上に形成する。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層を適切に形成できる。
尚、ラテックスインクとは、例えば、樹脂又は樹脂エマルジョンを含有するインクである。また、ラテックスインクは、例えば、ポリマー素材と溶媒とを含み、乾燥によりポリマー素材を媒体に定着させるインクであってよい。このポリマー素材は、例えば水性ポリマー素材である。また、このポリマー素材は、例えば、ゴム状のポリマー素材であってよ
い。ラテックスインクを用いた場合、例えば、オーバーコート層として、ポリマー素材等の樹脂の層を適切に形成できる。また、これにより、耐候性の高いオーバーコート層を適切に形成できる。
(構成9)ヒータと媒体巻取部との間に配設され、媒体巻取部に巻き取られる前の媒体へ粉体を散布するパウダリング装置を更に備える。パウダリング装置は、例えば、オーバーコート層の温度がガラス転移点未満に下がった状態の媒体に対し、粉体を散布することが好ましい。
本願の発明者は、更なる鋭意研究により、媒体巻取部による巻き取り位置の手前で媒体へ粉体を散布することで、より適切にブロッキング等の問題を抑え得ることを見出した。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の形成後に、より適切に媒体を巻き取ることができる。
尚、粉体としては、例えば、直径が10μm程度以下のパウダを好適に用いることができる。また、このようなパウダとしては、例えば、デンプンやシリカ等のパウダを好適に用いることができる。
(構成10)媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、印刷ヘッドにより、媒体上にインクの層を形成し、ヒータにより、インクの層が形成された媒体を加熱し、媒体巻取部により、ヒータによる加熱が行われた後の媒体を巻き取り、かつ、ヒータは、インクの層の温度がガラス転移点以上の温度になるように媒体を加熱し、媒体巻取部は、インクの層の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体を巻き取る。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
(構成11)媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、有色のインクにより媒体上に描かれた画像を覆うインクの層であるオーバーコート層を形成する印刷ヘッドであるオーバーコート用ヘッドを備え、オーバーコート用ヘッドは、オーバーコート層として、紫外線を吸収する紫外線吸収剤を含むインクの層を媒体上に形成する。このように構成すれば、例えば、耐候性の高いオーバーコート層を適切に形成できる。
(構成12)オーバーコート用ヘッドは、オーバーコート層として、ラテックスインク又はソルベントインクの層を媒体上に形成する。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層を適切に形成できる。
(構成13)媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、有色のインクにより媒体上に描かれた画像を覆うインクの層であるオーバーコート層を形成する印刷ヘッドであるオーバーコート用ヘッドにより、オーバーコート層を形成し、オーバーコート層として、紫外線を吸収する紫外線吸収剤を含むインクの層を媒体上に形成する。このように構成すれば、例えば、構成11と同様の効果を得ることができる。
本発明によれば、印刷後に媒体を巻き取る構成を用いる場合において、ブロッキング等の問題を抑え、より適切に印刷を行うことができる。
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷装置10におけるパウダリング装置60の構成の一例を示す。図1(c)は、印刷装置10により形成するインクの層の一例を示す。
本例において、印刷装置10は、媒体(メディア)50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。また、印刷装置10は、印刷後にロール状に巻き取られる媒体50を用い、媒体50において印刷が完了した部分を順次巻き取ることにより、所定の搬送方向へ媒体50を搬送しつつ、印刷を行う。また、これにより、印刷装置10は、例えば広告等の用途の大型の印刷物を印刷する。印刷装置10において用いる媒体50は、例えば幅が1600mmよりも大きな媒体であってよい。また、本例において、印刷装置10は、カラーインク用ヘッド12、クリアインク用ヘッド14、プラテン18、プレヒータ32、プラテンヒータ34、アフターヒータ36、遠赤外線ヒータ38、巻取ローラ42、繰出ローラ46、パウダリング装置60、中間ローラ48、及び冷却用ファン44を備える。
カラーインク用ヘッド12は、例えばYMCKインクの各色等の有色インクを用いる有色インク用ヘッドの一例である。本例において、カラーインク用ヘッド12は、カラーインク用のインクジェットヘッドであり、カラーインクのインク滴を媒体50上に吐出することにより、カラーインク用ヘッド12は、有色のインクの層である有色インク層102を媒体50上に形成する。また、これにより、カラーインク用ヘッド12は、例えば、有色のインクを用いて媒体50に画像を描く。
尚、カラーインク用ヘッド12において用いる有色のインクとしては、公知の各種のインクを用いることが考えられる。例えば、ラテックスインク又はソルベントインク等を好適に用いることができる。また、有色のインクとして、例えば、紫外線硬化型インク(UVインク)やソルベントUVインク等を用いることも考えられる。この場合、印刷装置10は、例えば、紫外線光源を更に備えてよい。
また、印刷装置10は、例えば、互いに異なる色のインク滴をそれぞれ吐出する複数のカラーインク用ヘッド12を備えてよい。例えば、印刷装置10は、YMCKの各色用のカラーインク用ヘッド12を備えてよい。
また、印刷装置10が複数のカラーインク用ヘッド12を備える場合、複数のカラーインク用ヘッドは、例えば、印刷装置10において予め設定された主走査方向(Y方向)に並べて配設される。これにより、複数のカラーインク用ヘッド12は、各回の主走査動作において、媒体50上の同じ領域へインク滴を吐出する。主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出するインクジェットヘッドの動作である。
クリアインク用ヘッド14は、オーバーコート用ヘッドの一例であり、有色インク層102の上に重ねてオーバーコート層104を形成する。この場合、オーバーコート層104とは、例えば、カラーインク用ヘッド12により有色のインクで媒体50上に描かれた画像を覆うインクの層である。また、本例において、クリアインク用ヘッド14は、媒体50へ向けてインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、オーバーコート層104の材料となるインクを有色インク層102の上へ吐出することにより、例えば図1(c)に示すように、有色インク層102を覆うオーバーコート層104を形成する。また、オーバーコート層104は、例えば、クリアインクで形成されるクリア層であり、有色インク層102を覆うように形成されることにより、有色インク層102を保護する。クリアインクとは、例えば、透明なクリア色のインクである。
また、本例において、クリアインク用ヘッド14は、オーバーコート層104として、乾燥することで媒体50に定着するインクの層を媒体50上に形成する。乾燥することで媒体50に定着するインクとは、例えば、インク中の溶媒が揮発除去されることで媒体50に定着するインクであってよい。また、より具体的に、乾燥することで媒体50に定着するインクとは、例えばラテックスインク又はソルベントインク等である。
尚、ラテックスインクとは、例えば、樹脂又は樹脂エマルジョンを含有するインクである。また、ラテックスインクは、例えば、ポリマー素材と溶媒とを含み、乾燥によりポリマー素材を媒体に定着させるインクであってよい。このポリマー素材は、例えば水性ポリマー素材である。また、このポリマー素材は、例えば、ゴム状のポリマー素材であってよい。
また、ソルベントインクとは、例えば、溶媒として有機溶剤を用いるインクのことである。この有機溶剤は、例えば、疎水性の有機溶剤である。また、この有機溶剤は、揮発性有機溶剤であってよい。また、ソルベントインクは、例えば、有機溶剤を主成分とするインクであってよい。有機溶剤を主成分とするとは、例えば、有機溶剤の含有量が50重量%よりも多いことである。
これらのインクを用いた場合、例えば、紫外線硬化型インクを用いる場合と比べ、インク中の添加物等を適切に低減できる。これにより、オーバーコート層104の強度を適切に高めることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、耐候性の高いオーバーコート層104を適切に形成できる。
また、乾燥することで媒体50に定着するインクとして、例えばソルベントUVインク等を用いることも考えられる。ソルベントUVインクとは、例えば、紫外線硬化型の物質(モノマー又はオリゴマー等)と、溶媒である有機溶剤とを含むインクである。ソルベントUVインクは、紫外線硬化型インクを有機溶剤で希釈したインクであってよい。
更に、これらのインクのうち、クリアインク用ヘッド14用のインクとしては、ラテックスインクを用いることが特に好ましい。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層104として、ポリマー素材等の樹脂の層を適切に形成できる。また、これにより、耐候性の高いオーバーコート層を適切に形成できる。
また、クリアインク用ヘッド14用のインク(クリアインク)としては、例えば、紫外線を吸収する紫外線吸収剤を含むインクを用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層104の耐候性をより適切に高めることができる。
ここで、クリアインクとして、例えば紫外線硬化型のインクを用いる場合、紫外線の照射によりインクを硬化させることが必要であるため、通常、インク中に紫外線吸収剤を含ませることができない。これに対し、本例においては、ラテックスインク等のクリアインクを用いることで、紫外線吸収剤を含むクリアインクを用いることが可能になっている。そのため、本例によれば、オーバーコート層104が受ける紫外線の影響を適切に低減できる。
尚、紫外線吸収剤の含有量を多くしすぎると、オーバーコート層の強度に影響が生じるおそれもある。また、紫外線吸収剤の種類によっては、紫外線の吸収により発熱をする場合もある。そして、このような発熱は、印刷物の耐候性に影響を与えるおそれもある。そのため、紫外線吸収剤の含有量は、1%程度(例えば、0.1〜3%程度、より好ましくは、0.5〜1.5%程度)とすることが好ましい。
また、本例において、クリアインク用ヘッド14は、主走査方向と直交する副走査方向(X方向)において、カラーインク用ヘッド12と位置をずらして配設される。そして、クリアインク用ヘッド14は、例えば、カラーインク用ヘッド12の主走査動作時において、カラーインク用ヘッド12と共に主走査方向へ移動して、主走査動作を行う。これにより、各回の主走査動作において、クリアインク用ヘッド14は、カラーインク用ヘッド12により形成された有色インク層102の上に、クリアインクのインク滴を吐出する。このように構成すれば、例えば、有色インク層102の上にオーバーコート層104を適切に形成できる。
また、本例において、クリアインク用ヘッド14は、例えば、副走査方向においてカラーインク用ヘッド12から離間した位置に配設される。このように構成すれば、例えば、媒体50の各位置において、有色インク層102が形成されてから、その上にクリアインクが吐出されるまでの時間(タイムラグ)を適切かつ十分に空けることができる。また、カラーインク用ヘッド12とクリアインク用ヘッド14との間の距離を調整することにより、このタイムラグを適切に調整できる。そのため、このように構成すれば、例えば、クリアインクを重ねる前に、有色インク層102を適切かつ十分に乾燥させることができる。また、これにより、例えば、有色インク層102を構成するインクの再溶解等を防ぎつつ、有色インク層102上にオーバーコート層104を適切に形成できる。
プラテン18は、カラーインク用ヘッド12及びクリアインク用ヘッド14と対向させて媒体50を保持する台状部材である。プレヒータ32、プラテンヒータ34、アフターヒータ36、及び遠赤外線ヒータ38は、媒体50を加熱する加熱手段であり、媒体50を加熱することにより、媒体50上のインクを乾燥させる。これらのうち、プレヒータ32は、媒体50の搬送方向においてカラーインク用ヘッド12よりも上流側に配設されるヒータであり、カラーインク用ヘッド12から吐出されるインク滴が着弾する前に、媒体50の各位置を予め加熱する。
プラテンヒータ34は、カラーインク用ヘッド12及びクリアインク用ヘッド14と対向する位置において媒体50を加熱するヒータであり、それぞれのインクジェットヘッドから吐出されるインク滴の着弾位置において、媒体50を加熱する。アフターヒータ36は、媒体50の搬送方向においてクリアインク用ヘッド14よりも下流側に配設されるヒータであり、媒体50において有色インク層102及びオーバーコート層104の形成が完了した領域を加熱する。また、遠赤外線ヒータ38は、媒体50と非接触の状態で媒体50を加熱するヒータであり、媒体50の印刷面の側に配設され、オーバーコート層104等が形成された後の媒体50を加熱する。また、本例において、遠赤外線ヒータ38は、例えば、媒体50を挟んでアフターヒータ36と対向する位置に配設される。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層104等が形成された後の媒体50に対し、両面から効率よく加熱を行うことができる。尚、遠赤外線ヒータ38についても、媒体50の搬送方向においてクリアインク用ヘッド14よりも下流側に配設されるヒータであるため、アフターヒータと考えることもできる。また、アフターヒータ36等のヒータによる加熱温度については、後に更に詳しく説明をする。
巻取ローラ42は、ヒータによる加熱が行われた後の媒体50を巻き取る媒体巻取部の一例である。本例において、巻取ローラ42は、媒体50の搬送方向においてアフターヒータ36よりも下流側に配設されることにより、アフターヒータ36等による加熱が行われた後の媒体50を巻き取る
また、本例において、巻取ローラ42は、副走査動作時において、媒体50を巻き取ることにより、媒体50を搬送する。この場合、副走査動作とは、例えば主走査動作の合間に、カラーインク用ヘッド12及びクリアインク用ヘッド14を、媒体50に対して相対的に、副走査方向へ移動させる動作である。また、このような動作に応じて、本例において、副走査方向は、媒体50の搬送方向と平行な方向になる。印刷装置10は、主走査動作の合間に媒体50を搬送することにより、媒体50において各回の主走査動作の対象となる領域を、順次変更する。
繰出ローラ46は、印刷前の媒体50が巻かれたローラであり、媒体50の搬送方向においてカラーインク用ヘッド12よりも上流側に配設されることにより、カラーインク用ヘッド12の位置へ向けて媒体50を順次繰り出す。繰出ローラ46は、例えば、巻取ローラ42が媒体50を巻き取るのに応じて、巻き取られた量に対応する量の媒体50を順次繰り出してよい。
パウダリング装置60は、媒体50へ粉体(パウダ)を散布する装置である。パウダリング装置60は、例えば、ヒータと巻取ローラ42との間に配設され、巻取ローラ42に巻き取られる前の媒体50へ粉体を散布する。この場合、ヒータと巻取ローラ42との間とは、例えば、媒体50の搬送方向において最も下流側で媒体50を加熱するヒータ(例えば、アフターヒータ36又は遠赤外線ヒータ38)と、巻取ローラ42との間のことである。
また、本例において、パウダリング装置60は、例えば、図1(b)に示すように、シリアルパウダリングユニット62及び軸部64を有する。シリアルパウダリングユニット62は、主走査方向(Y方向)へ移動しつつ媒体50へ粉体を散布するパウダリング装置(粉体散布装置)である。軸部64は、主走査方向へのシリアルパウダリングユニット62の移動をガイドする軸である。また、本例において、シリアルパウダリングユニット62は、例えば、軸部64に沿って往復移動しつつ、粉体を散布する。これらの構成により、パウダリング装置60は、媒体50の各部に対し、シリアル方式で粉体を散布する。
尚、粉体としては、例えば、直径が10μm程度以下のパウダを好適に用いることができる。また、このようなパウダとしては、例えば、デンプンやシリカ等のパウダを好適に用いることができる。
また、本例において、パウダリング装置60は、図1(a)に示すように、媒体50の裏面側へ粉体を散布する。この場合、媒体50の裏面とは、媒体50において有色インク層102及びオーバーコート層104が形成される面の裏側の面のことである。また、媒体50に粉体を散布する理由については、後に別途説明をする。シリアルパウダリングユニット62のより具体的な構成についても、後に更に詳しく説明をする。
中間ローラ48は、パウダリング装置60と対向させた状態で媒体50を支えるローラであり、パウダリング装置60との間に媒体50を挟んで回転する。中間ローラ48は、例えば媒体50の移動に伴って回転する従動ローラであってよい。このように構成すれば、例えば、媒体50に対してより適切に粉体を散布できる。
冷却用ファン44は、巻取ローラ42に巻き取られる前の位置で媒体50を冷却するための構成である。本例において、冷却用ファン44は、アフターヒータ36とパウダリング装置60との間に配設されることにより、アフターヒータ36で加熱された後の媒体50を、パウダリング装置60による粉体の散布が行われる前の位置で冷却する。
尚、冷却用ファン44は、例えば、媒体50において粉体を散布する面の側に配設することが好ましい。このように構成すれば、例えば、粉体の散布前に媒体50を適切に冷却できる。より具体的に、例えば、媒体50の裏面側へ粉体を散布する場合、冷却用ファン44についても、媒体50の裏面側に配設することが好ましい。
また、媒体50の冷却については、例えば、冷却用ファン44を用いる以外の方法で行うことも考えられる。例えば、アフターヒータ36からパウダリング装置60又は巻取ローラ42までの搬送距離が十分に長い場合、冷却用ファン44を省略して、搬送中の放熱により媒体50を冷却してもよい。また、冷却用の構成として、例えば、媒体50の裏面側に配設したヒートシンク等を用いること等も考えられる。
以上の構成により、本例によれば、例えば、印刷後にロール状に巻き取られる媒体50に対し、有色インク層102及びオーバーコート層104を適切に形成できる。また、オーバーコート層104の形成後、巻き取りの前に、媒体50の加熱及び粉体の散布を適切に行うことができる。
また、本例においては、有色インク層102及びオーバーコート層104の両方を主走査動作により形成することにより、有色インクとクリアインクとを同時に塗布して、一の工程で、有色インク層102及びオーバーコート層104を適切に形成できる。そのため、例えば、有色インク層102の形成後、オーバーコート層104を形成するために媒体50を再セットすること等が必要ない。更には、インクジェット方式でオーバーコート層104を形成することにより、オーバーコート層104の材料の無駄塗りを防ぎ、必要な領域のみに対し、均一な厚さのオーバーコート層104を適切に形成できる。そのため、本例によれば、コストの無駄な増大を抑えつつ、高い精度のオーバーコート層104を適切に形成することもできる。
また、上記のように、本例においては、クリアインク用ヘッド14と、カラーインク用ヘッド12との間の距離を調整することにより、有色インク層102上にクリアインクを塗布するまでのタイムラグを設け、クリアインクを重ねる前に有色インクを十分に乾燥させている。そのため、本例によれば、例えば、有色インク層102において滲みが発生することを適切に抑えることもできる。
更に、本例においては、プレヒータ32を用いることにより、カラーインク用ヘッド12から吐出される有色のインクの着弾位置における加熱温度を適切に高めることができる。また、これにより、例えば、有色インクについて、着弾直後に適切に乾燥させることができる。そのため、本例によれば、有色インク層102において滲みが発生することをより適切に抑えることができる。
尚、上記及び以下に説明をする点を除き、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有する。例えば、印刷装置10は、上記の構成の他に、制御部、主走査駆動部、及び副走査駆動部等を更に備えてよい。この場合、制御部は、例えば印刷装置10のCPUであり、印刷装置10の各部の動作を制御する。また、主走査駆動部及び副走査駆動部は、例えば、カラーインク用ヘッド12及びクリアインク用ヘッド14に主走査動作及び副走査動作を行わせる駆動部である。主走査駆動部は、例えばカラーインク用ヘッド12及びクリアインク用ヘッド14を保持するキャリッジや、主走査方向へキャリッジを移動させるガイドレール等を有する部分であってよい。また、副走査駆動部は、例えば、巻取ローラ42を回転させるモータ等であってよい。
続いて、アフターヒータ36等のヒータによる加熱温度について、更に詳しく説明をする。本例において、アフターヒータ36は、オーバーコート層104の温度がガラス転移点以上の温度になるように媒体50を加熱する。この場合、オーバーコート層104の温度がガラス転移点以上であるとは、例えば、オーバーコート層104の材料(樹脂等)の温度が、その物質のガラス転移点以上であることである。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層104の形成後に十分な加熱を行うことにより、有色インク層102及びオーバーコート層104を適切かつ十分に媒体50に定着させることができる。
尚、ガラス転移点とは、例えば、非晶質の固体材料にガラス転移が起きる温度Tgと定義できる。より具体的には、例えば、低温では結晶並に堅く、流動性が実質的にない材料で形成されており、かつ、加熱するとある狭い温度範囲で急速に剛性と粘度が低下し流動性が増すような非晶質の固体材料について、このような変化が起こる温度がガラス転移点である。ガラス転移点より高温において、固体材料は、例えば、液体又はゴム状態となる。オーバーコート層104の材料について、ガラス転移点は、例えば実験等により適切に確認することができる。また、オーバーコート層104の材料として用いる物質によっては、例えば計算等で理論値を算出することも考えられる。また、本例において、ガラス転移点は、例えば70℃程度である。
また、オーバーコート層104のガラス転移点以上の温度への加熱は、例えば、アフターヒータ36以外のヒータにより行うことも考えられる。例えば、遠赤外線ヒータ38又はプラテンヒータ34等により、オーバーコート層104のガラス転移点以上の温度への加熱を行ってもよい。このように構成した場合も、例えば、オーバーコート層104の形成後に十分な加熱を行うことにより、有色インク層102及びオーバーコート層104を適切かつ十分に媒体50に定着させることができる。
また、上記においても説明をしたように、本例においては、アフターヒータ36等による加熱後、冷却用ファン44により、媒体50を冷却する。また、これにより、巻取ローラ42は、例えば、オーバーコート層104の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体50を巻き取る。
尚、巻取ローラ42について、オーバーコート層104の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体を巻き取るとは、例えば、巻取ローラ42に巻き取られる箇所(巻き取り箇所)の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体50を巻き取ることである。また、巻き取り時について、オーバーコート層104の温度とは、例えば、オーバーコート層104の表面の温度であってよい。
以上のように構成した場合、例えば、オーバーコート層104の形成後、アフターヒータ36等により十分に加熱を行うことにより、オーバーコート層104を媒体50に適切に定着させることができる。また、その後、オーバーコート層104の温度が十分に下がった後に媒体50を巻き取ることにより、ブロッキング等の問題を適切に抑えることができる。
そのため、本例によれば、例えば、オーバーコート層104をより適切に形成できる。また、これにより、例えば、有色インク層102による印刷面を適切に保護し、退色や傷等を適切に防止できる。また、例えば、無色透明のオーバーコート層104を形成することにより、光沢感を高め、画質を向上させることもできる。
また、本例においては、オーバーコート層104の形成後、十分に高い温度で媒体50を加熱することにより、例えば、オーバーコート層104を短時間で乾燥させることもできる。そのため、例えば、オーバーコート層104の厚さを厚くすることも考えられる。より具体的には、例えば、媒体50の各領域に対し、クリアインク用ヘッド14による主走査動作を複数回(例えば2回)行い、複数層(例えば2層)のオーバーコート層104を形成すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層104の耐候性を更に高めることができる。
また、この場合、形成するオーバーコート層104の層数に応じて、例えば、クリアインク用ヘッド14の副走査方向への長さを、カラーインク用ヘッド12よりも長くすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、1層の有色インク層102の上に、複数層のオーバーコート層104を適切に形成できる。
尚、オーバーコート層104をより適切に乾燥させるためには、例えば、クリアインクの塗布量に応じて、ヒータ(アフターヒータ36等)上を媒体50が通過する通過時間を変更することも考えられる。例えば、オーバーコート層104の耐候性を高めるためにクリアインク等の塗布量を多くする場合、高速印刷を行うために短時間でヒータ上を媒体50に通過させると、乾燥量が不十分になるおそれもある。そのため、例えば印刷速度を可変にする方法や、ヒータにおいて加熱を行う領域の長さ(副走査方向における長さ)を可変にすることで、クリアインク等の塗布量に応じて、加熱を行う時間を変更すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、巻取ローラ42による巻き取りの前に、オーバーコート層104をより適切に乾燥させることができる。
続いて、本例において媒体50に粉体を散布する理由、及びパウダリング装置60におけるシリアルパウダリングユニット62のより具体的な構成について、説明をする。先ず、粉体を散布する理由について、説明をする。
本願の発明者は、鋭意研究により、加熱後の媒体50を巻取ローラ42で巻き取る場合について、巻き取り位置の手前で媒体50へ粉体を散布することで、より適切にブロッキング等の問題を抑え得ることを見出した。また、この知見に基づき、印刷装置10において、巻取ローラ42の前段に、パウダリング装置60を配設した。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層104の形成後に、より適切に媒体50を巻き取ることができる。
また、この場合、例えば、オーバーコート層104の温度がガラス転移点以上の温度になっている状態よりも、冷却後の媒体50に対して粉体を散布することで、より適切にブロッキングを抑えることができる。そのため、本例において、パウダリング装置60は、例えば、オーバーコート層104の温度がガラス転移点未満に下がった状態の媒体50に対し、粉体を散布する。
続いて、パウダリング装置60におけるシリアルパウダリングユニット62のより詳細な構成について、説明をする。図2は、シリアルパウダリングユニット62のより詳細な構成の一例を示す。図2(a)は、シリアルパウダリングユニット62の側断面図であり、粉体を散布される位置において媒体50と直交する平面によるシリアルパウダリングユニット62の断面の様子の一例を示す。図2(b)は、シリアルパウダリングユニット62の上面図であり、媒体50の側から見たシリアルパウダリングユニット62の様子の一例を示す。本例において、シリアルパウダリングユニット62は、パウダ容器202、供給・攪拌ローラ204、及びパウダリングローラ206を有する。
パウダ容器202は、媒体50へ散布する粉体を収容する容器であり、供給・攪拌ローラ204へ向けて粉体を順次供給する。パウダ容器202としては、交換可能な容器を用いることが好ましい。供給・攪拌ローラ204は、パウダ容器202から供給される粉体をパウダリングローラ206へ順次供給するローラであり、例えばパウダリングローラ206により散布されるべき粉体の減少を感知し、回転又は振動等により、粉体を順次補給する。供給・攪拌ローラ204としては、例えば、横溝、斜めスリット、又は螺旋構造を有するローラを好適に用いることができる。
パウダリングローラ206は、媒体50へ粉体を散布するローラである。パウダリングローラ206としては、例えば、布ローラ又は毛ブラシローラ等を好適に用いることができる。この場合、毛ブラシローラとは、例えば、表面が歯ブラシのようになっているローラである。また、パウダリングローラ206は、例えば、回転や、前後振動と回転との組み合わせ等により、媒体50へ粉体を散布する。
以上のような構成を用いた場合、例えば、オーバーコート層の形成後に、媒体50へ適切に粉体を散布できる。また、これにより、巻き取り時のブロッキング等をより適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の形成後に、より適切に媒体50を巻き取ることができる。
尚、印刷後に巻き取りを行う大型の印刷物を印刷する場合、従来の構成においては、例えば、ラミネートフィルム等で保護層を形成する方法(フィルムラミネート)等で印刷物を保護する場合がある。これに対し、上記のように粉体を散布する場合、粉体の散布後において、例えば通常のフィルムラミネート等を行うことが困難である。しかし、本例においては、粉体の散布を行う前に、クリアインク用ヘッド14により、オーバーコート層を形成している。そのため、フィルムラミネート等を行わなくても、印刷物を適切に保護できる。また、これにより、例えば、印刷物について、そのまま屋外や人の接触する場所に設置することもできる。更には、粉体の散布を行うことにより、例えば、指紋等の汚れを付き難くすることもできる。
また、粉体の散布を行う場合、より具体的には、例えば、以下のような条件で粉体を散布することが特に好ましい。例えば、パウダリング装置60の動作においては、カラーインク用ヘッド12等による印刷の速度と同期させ、媒体50において印刷がされている領域の各部上について、少なくとも一回以上シリアルパウダリングユニット62が通過するようにすることが好ましい。また、各部上へのシリアルパウダリングユニット62の通過回数については、2回以上とすることが更に好ましい。
また、カラーインク用ヘッド12等の位置と、パウダリング装置60との位置との間の副走査方向のずれ量を考慮し、そのずれ量に対応する時間の分、カラーインク用ヘッド12等の主走査動作に対し、シリアルパウダリングユニット62の動作のタイミングを遅らせて行うことが好ましい。また、例えば、過剰な粉体が媒体50に接着することで媒体50の印刷面がマット化すること等を防ぐために、シリアルパウダリングユニット62の設置位置については、媒体50上のインク中の溶媒(水を含む)の85%以上が蒸発する位置よりも後方側(媒体50の搬送方向における下流側)とすることが好ましい。この場合、媒体50上のインク中の溶媒とは、例えば、有色インク層及びオーバーコート層中のインク中における、蒸発可能な溶媒成分のことである。また、溶媒(溶剤)の蒸発量は、例えば、媒体50上の溶媒の重量減少率に基づいて測定することができる。
ここで、上記においては、媒体50の裏面側に粉体を散布する場合の構成について、説明をした。しかし、粉体の散布は、例えば、媒体50の印刷面側に対して行うことも考えられる。そこで、続いて、媒体50の印刷面側に粉体を散布する場合の構成について、説明をする。
図3は、印刷装置10の構成の他の例を示す図であり、媒体50の印刷面側に対して粉体を散布する場合について、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図3に示す印刷装置10は、図1及び図2を用いて説明をした印刷装置10と同一又は同様の特徴を有する。また、以下に説明をする点を除き、図3において、図1又は図2と同じ符号を付した構成は、図1又は図2における構成と、同一又は同様の特徴を有する。
上記のように、図3に示した構成においては、媒体50の印刷面側に対して粉体を散布する。そのため、中間ローラ48は、媒体50の印刷面側をパウダリング装置60と対向させて、媒体50を支持する。これにより、パウダリング装置60は、媒体50の印刷面側へ、粉体を散布する。また、粉体を散布する面に合わせて、冷却用ファン44は、媒体50の印刷面側に配設される。このように構成すれば、例えば、粉体が散布される領域をより適切に冷却できる。
以上のように構成した場合も、例えば、オーバーコート層の温度がガラス転移点以上の温度になるように媒体50を加熱することにより、オーバーコート層を適切に媒体50に定着させることができる。また、オーバーコート層の温度がガラス転移点未満の温度に下がった状態の媒体50を巻取ローラ42で巻き取ることにより、巻き取り時のブロッキング等の問題を適切に抑えることができる。更には、オーバーコート層の形成後に、媒体50へ粉体を散布することにより、ブロッキング等の問題をより適切に抑えることができる。そのため、このように構成した場合も、例えば、オーバーコート層の形成後に、適切に媒体50を巻き取ることができる。
尚、印刷装置10の構成については、例えば、以下のように更に変形することも考えられる。例えば、カラーインク用ヘッド12及びクリアインク用ヘッド14との位置関係について、図3において破線で示すように、より離れた位置関係にすることも考えられる。また、このような位置関係は、図3に示した場合に限らず、例えば図1を用いて説明をした各構成において採用することも考えられる。
また、カラーインク用ヘッド12から吐出するインクは、特定の色に限定されない。例えば、例えばYMCKインクのみでなく、メタリック、白、パール、蛍光色等を用いることも考えられる。また、オーバーコート層の下に画像を描く有色インク用ヘッドとしては、必ずしもカラーインク用のインクジェットヘッド(カラーインク用ヘッド)ではなく、単色用のインクジェットヘッドを用いることも考えられる。
また、例えば、媒体50の巻き取り時のブロッキングを抑えるための特徴に着目して発明を捉えた場合、必ずしもオーバーコート層を形成せず、有色インク層のみを形成することも考えられる。この場合、例えば、図1又は図3に示した印刷装置10の構成から、クリアインク用ヘッド14を省略してもよい。この場合、ヒータ(アフターヒータ36等)は、例えば、有色インク層の温度がガラス転移点以上の温度になるように媒体50を加熱する。これにより、例えば、短時間で有色インク層を適切かつ十分に乾燥させることができる。また、その後、巻取ローラ42は、有色インク層の温度がガラス転移点未満になった媒体50を巻き取る。このように構成すれば、例えば、巻き取り時のブロッキング等を適切に抑えることができる。また、これにより、印刷後にロール状に巻き取られる媒体50に対し、有色インク層を適切に形成できる。
また、例えばオーバーコート層の形成後に粉体の散布し、媒体50を巻き取る点に着目して発明を捉えた場合、オーバーコート層を形成するための構成として、インクジェットヘッド以外の構成、例えば、スプレーガンやバブルジェットヘッド液体コータ等を用いること等も考えられる。このような場合も、例えば、オーバーコート層の温度がガラス転移点以上の温度になるように媒体50を加熱することにより、短時間でオーバーコート層を適切かつ十分に乾燥させることができる。また、その後、オーバーコート層の温度がガラス転移点未満になった媒体50を巻き取ることにより、巻き取り時のブロッキング等を適切に抑えることができる。また、これにより、印刷後にロール状に巻き取られる媒体50に対し、オーバーコート層等を適切に形成できる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。