しかしながら、除染作業を行うためには、自治体によって指定される除染場所の空間線量率を予め計測した後、その指定場所について事業者に除染工事を発注し、除染後、空間線量率をあらためて計測してその効果を確認する必要があるところ、従来の計測システムは文字通り、γ線の空間線量率を計測できるにとどまっており、実際の除染作業への反映手法が全く確立されていないのが現状である。
例えば、私有地に立ち入っての除染作業及び計測作業となる場合には、敷地内家屋の所有者や居住者あるいは土地の所有者からの同意が必要になることから、除染作業やその前後に計測作業を行う際には、家屋の所有者は誰で居住者は誰なのか、あるいは土地の所有者は誰なのかを特定する必要があり、GNSSによる平面座標での位置特定だけでは上述した各作業を進めることはできない。
また、道路の場合は、路線単位あるいは路線を所定長ごとに区切った形で自治体から発注されるため、除染作業やその前後に計測作業を行う際には、路線名称やその起点あるいは終点といった道路情報を把握しておく必要があり、GNSSによる平面座標での位置特定だけではやはり不十分である。
そのため、従来においては、紙媒体の航空写真、地籍図、家屋図、道路台帳等から計測作業を行うべき範囲を切り取って調査票に貼り付け、その調査票を見ながら計測すべき場所に間違いないかどうかを判断せざるを得ないところ、調査票に貼り付けられた航空写真等を見ながら現在位置を判断する作業は煩雑であり、計測作業に入るまでに相当の時間が費やされるという問題を生じていた。
また、計測した場所については、調査票の航空写真等に手書きでプロットせざるを得ないため、除染前に行った計測場所と同じ場所で除染後に再計測しようとしても誤差が生じやすく、除染の効果確認を正確に行うことが困難であるという問題や、調書の形で活用するためには、計測値との照合ができるように計測場所をあらためて作図する必要があり、調書の作成に時間を要するという問題も生じていた。
かかる問題は、計測状況を撮影した現況写真を調書に盛り込む際にも同様に発生し、デジタル保存された現況写真がどの計測場所に対応するのかを整理しながら調書を作成しなければならないため、調書作成にやはり多大な時間を要する。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、計測すべき場所かどうかの判断を速やかに行うことが可能な環境モニタリング支援システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、除染の効果確認を正確に行うとともに、調書作成を短時間で行うことが可能な環境モニタリング支援システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る環境モニタリング支援システムは請求項1に記載したように、環境指標を計測する計測手段と該計測手段と同じ水平位置に位置決めされるGNSSアンテナと該GNSSアンテナを介してGNSS信号を受信するGNSS受信機と所定の演算処理を行う演算処理手段とを備えた環境モニタリング支援システムにおいて、
計測対象となる敷地、該敷地に立地する家屋又は土地をそれらの境界線又は輪郭線が含まれるようにかつ前記GNSS信号から得られた座標位置が重ねて表示できるように平面図形として作成するとともに前記境界線若しくは前記輪郭線又はそれらの内側領域に関連させた形で前記敷地、前記家屋又は前記土地に関する諸情報を土地家屋属性として前記平面図形に付加してなる基準マップが格納された基準マップ格納部を備え、前記演算処理手段は、前記基準マップ格納部から前記基準マップを読み出して該基準マップに前記GNSS信号から得られた座標位置を重ねて表示手段に表示することにより、該座標位置が、前記境界線の内側領域に入っているか否か又は前記輪郭線の近傍であるか否かを判断できるようになっているとともに、所定の計測開始操作に応答して前記計測手段を作動させて該計測手段で得られた計測値を計測結果記憶手段に保存するとともに該計測値と関連させた形で計測時における前記GNSS信号から得られた座標位置を計測地点として前記計測結果記憶手段に保存するようになっているものである。
また、本発明に係る環境モニタリング支援システムは、計測対象が敷地である場合又は家屋である場合の前記平面図形を、航空写真、地籍図及び家屋図を重ね合わせて、計測対象が土地である場合の前記平面図形を、航空写真及び地籍図を重ね合わせてそれぞれ作成したものである。
また、本発明に係る環境モニタリング支援システムは、環境指標を計測する計測手段と該計測手段と同じ水平位置に位置決めされるGNSSアンテナと該GNSSアンテナを介してGNSS信号を受信するGNSS受信機と所定の演算処理を行う演算処理手段とを備えた環境モニタリング支援システムにおいて、
計測対象となる道路をその中心線と該中心線に沿ってその上に列状に配置された測点又は該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線とが含まれるようにかつ前記GNSS信号から得られた座標位置が重ねて表示できるように平面図形として作成するとともに前記中心線、前記測点又は前記測線に関連させた形で前記道路の路線名及び該道路の起点又は終点からの距離を道路属性として前記平面図形に付加してなる基準マップが格納された基準マップ格納部を備え、前記演算処理手段は、前記基準マップ格納部から前記基準マップを読み出し、該基準マップに前記GNSS信号から得られた座標位置を重ねて表示手段に表示し、所定の計測開始操作に応答して前記計測手段を作動させ、該計測手段で得られた計測値を計測結果記憶手段に保存するとともに該計測値と関連させた形で計測時における前記GNSS信号から得られた座標位置を計測地点として前記計測結果記憶手段に保存するようになっているものである。
また、本発明に係る環境モニタリング支援システムは、前記平面図形を、航空写真が含まれるように作成したものである。
また、本発明に係る環境モニタリング支援システムは、前記演算処理手段を、前記計測地点の現況写真が該計測地点に関連した形で現況写真記憶手段に保存されるように構成したものである。
また、本発明に係る環境モニタリング支援システムは、前記演算処理手段を、前記計測結果記憶手段から読み出された過去の計測地点が前記座標位置とともに前記基準マップに重ねて前記表示手段に表示されるように構成したものである。
また、本発明に係る環境モニタリング支援システムは、前記計測開始操作に代えて、所定のスケジュールに従って前記計測手段が作動するように前記演算処理手段を構成したものである。
また、本発明に係る環境モニタリング支援システムは、前記計測地点及び該計測地点における計測値が前記基準マップ上の位置に関連する形で閲覧自在な調書が作成可能となるように前記演算処理手段を構成したものである。
また、本発明に係る環境モニタリング支援システムは、前記計測地点及び該計測地点における計測値並びに前記現況写真が前記基準マップ上の位置に関連する形で閲覧自在な調書が作成可能となるように前記演算処理手段を構成したものである。
[第1の発明]
第1の発明に係る環境モニタリング支援システムは、敷地、該敷地に立地する家屋又は土地を対象として環境指標の計測を行う際に適用されるものであって、計測に先立ち、敷地、家屋又は土地をそれらの境界線又は輪郭線が含まれるように平面図形として作成する。
平面図形には、現地で計測を行う際、その上にGNSS信号から得られる座標位置が重ねて表示できるよう、例えば少なくとも2地点の緯度経度情報を埋め込んでおく。
次に、平面図形に土地家屋属性が付加されてなる基準マップを作成する。
土地家屋属性は、上述した敷地、家屋又は土地に関する諸情報であって、上述の境界線若しくは輪郭線又はそれらの内側領域に関連させて平面図形に付加されるものとし、例えば境界線若しくは輪郭線又はそれらの内側領域をクリックすることで、そのクリックされた箇所の敷地、家屋又は土地に係る土地家屋属性が表示され、あるいは境界線若しくは輪郭線又はそれらの内側領域を選択し、その状態で表示ボタンをクリックすることで、選択された箇所の敷地、家屋又は土地に係る土地家屋属性が表示されるように構成することができる。土地家屋属性は、敷地、家屋又は土地に係る所有者や居住者の氏名、あるいは敷地、家屋又は土地の住所や地番で構成すればよい。
作成された基準マップは基準マップ格納部に格納しておく。
このように構成された第1の発明に係る環境モニタリング支援システムを用いて環境指標の計測を行うには、まず、演算処理手段で基準マップ格納部から基準マップを読み出すとともに、該基準マップにGNSS信号から得られる座標位置を重ねて表示する。
このようにすると、GNSSによって測位された現在位置が基準マップに重ねて表示されるが、基準マップには、計測対象の敷地、家屋又は土地の境界線又は輪郭線が含まれた平面図形が描かれているとともに、該平面図形には、境界線若しくは輪郭線又はそれらの内側領域に関連させた形で、敷地、家屋又は土地に係る諸情報が土地家屋属性として付加されているため、現在位置が、自治体からの計測依頼(発注)に係る計測対象の敷地、家屋又は土地に間違いないかどうかを容易に判断することができる。
すなわち、除染をはじめとする改善作業やその前後に行われる環境指標の計測作業は、敷地の所有者、家屋の所有者や居住者、あるいは土地の所有者からの同意が必要になる関係上、所有者あるいは居住者単位で行われることが多く、それゆえ、敷地の境界線、家屋の輪郭線あるいは土地の境界線を明確に把握することが重要になるが、上述のように構成すれば、計測場所を明確に把握することが可能となり、かくして従来のように、調査票に貼り付けられた航空写真等を見ながら現在位置を確認する煩雑な作業が不要となり、速やかに計測作業に入ることができる。
ちなみに、GNSS信号から得られる座標位置を航空写真上に単にプロットする手法では、敷地や土地の境界線が不明であり、所有者や居住者も不明なため、現在位置が、自治体が発注した計測対象であるのかどうかを判断することは困難である。
現在位置が計測対象の敷地、家屋又は土地に間違いないことを確認できたならば、次に、演算処理手段により、GNSS信号から得られる座標位置を計測地点として計測結果記憶手段に保存する。
一方、計測地点の保存と同時に又はそれと相前後して、演算処理手段により、所定の計測開始操作に応答する形で計測手段を作動させて環境指標の計測を行うとともに、その結果である計測値を計測結果記憶手段に保存する。
計測値及び上述した計測地点は、互いに関連させた形で計測結果記憶手段に保存するものとするが、計測値は、任意の方法で計測地点に関連させることが可能であり、計測地点の座標位置と関連させる、基準マップ上の対応位置に関連させる、基準マップを構成する平面図形に関連させるといった構成が採用可能である。
平面図形は、計測対象が敷地であればその境界線と該敷地に立地する家屋の輪郭線、計測対象が家屋であればその輪郭線と該家屋が立地する敷地の境界線、土地であればその境界線がそれぞれ含まれるように作成すれば足りるものであって、例えば地籍図や家屋図を用いて作成することが可能であり、必ずしも航空写真が含まれている必要はないが、計測対象が敷地である場合や家屋である場合の平面図形を、航空写真、地籍図及び家屋図を重ね合わせて、計測対象が土地である場合の平面図形を、航空写真及び地籍図を重ね合わせてそれぞれ作成するようにすれば、計測場所の周辺状況を航空写真と比較することが可能となり、現在位置に関する上述の判断がさらに容易になる。
[第2の発明]
第2の発明に係る環境モニタリング支援システムは、道路を対象として環境指標の計測を行う際に適用されるものであって、計測に先立ち、道路をその中心線と該中心線に沿ってその上に列状に配置された測点又は該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線とが含まれるように平面図形として作成する。
平面図形には、現地で計測を行う際、その上にGNSS信号から得られる座標位置が重ねて表示できるよう、例えば少なくとも2地点の緯度経度情報を埋め込んでおく。
次に、平面図形に道路属性が付加されてなる基準マップを作成する。
道路属性は、道路の路線名と該道路の起点又は終点からの距離とを含むものであって、上述した中心線、測点又は測線に関連させた形で平面図形に付加されるものとし、例えば中心線、測点又は測線をクリックすることで、そのクリックされた箇所に係る道路属性、すなわち道路の路線名とその起点又は終点から該測点又は測線までの距離が表示され、あるいは中心線、測点又は測線を選択し、その状態で表示ボタンをクリックすることで、選択された中心線、測点又は測線に係る上述の道路属性が表示されるように構成することができる。
作成された基準マップは基準マップ格納部に格納しておく。
このように構成された第2の発明に係る環境モニタリング支援システムを用いて環境指標の計測を行うには、まず、演算処理手段で基準マップ格納部から基準マップを読み出すとともに、該基準マップにGNSS信号から得られる座標位置を重ねて表示する。
このようにすると、GNSSによって測位された現在位置が基準マップに重ねて表示されるが、基準マップには、計測対象の道路の中心線と該中心線に沿ってその上に列状に配置された測点又は該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線とが含まれた平面図形が描かれているとともに、該平面図形には、中心線、測点又は測線に関連させる形で道路の路線名及び該道路の起点又は終点からの距離が道路属性として付加されているため、現在位置が、自治体からの計測依頼(発注)に係る計測対象の道路に間違いないかどうかを容易に判断することができる。
すなわち、除染をはじめとする改善作業やその前後に行われる環境指標の計測作業は、路線単位あるいは路線を所定長ごとに区切った形で自治体から発注されるが、上述のように構成すれば、計測場所を明確に把握することが可能となり、かくして従来のように、調査票に貼り付けられた航空写真等を見ながら現在位置を確認する煩雑な作業が不要となり、速やかに計測作業に入ることができる。
ちなみに、GNSS信号から得られる座標位置を航空写真上に単にプロットする手法では、道路の路線名や該道路の起点又は終点からの距離が不明であるため、現在位置が、自治体が発注した計測対象であるのかどうかを判断することは困難である。
現在位置が計測対象の道路に間違いないことを確認できたならば、次に、演算処理手段により、GNSS信号から得られる座標位置を計測地点として計測結果記憶手段に保存する。
一方、計測地点の保存と同時に又はそれと相前後して、演算処理手段により、所定の計測開始操作に応答する形で計測手段を作動させて環境指標の計測を行うとともに、その結果である計測値を計測結果記憶手段に保存する。
計測値及び上述した計測地点は、互いに関連させた形で計測結果記憶手段に保存するものとするが、計測値は、任意の方法で計測地点に関連させることが可能であり、計測地点の座標位置と関連させる、基準マップ上の対応位置に関連させる、基準マップを構成する平面図形に関連させるといった構成が採用可能である。
平面図形は、道路の中心線と該中心線に沿ってその上に列状に配置された測点又は該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線とが含まれるように作成すれば足りるものであって、例えば道路台帳図面を用いて作成することが可能であり、必ずしも航空写真が含まれている必要はないが、計測対象が道路である場合の平面図形を、航空写真が含まれるように作成するようにすれば、計測場所の周辺状況を航空写真と比較することが可能となり、現在位置に関する上述の判断がさらに容易になる。
[第1の発明及び第2の発明に関連する事項]
上述した各発明において、環境指標とは、地表又はその近傍で計測可能な物理量のうち、環境モニタリングの対象となる物理量を指すものとし、河川や湖沼の水質汚濁状況を示すBODやCOD、土壌汚染、騒音、振動、悪臭、自動車からの二酸化炭素排出量などが該当するが、本発明では、主として放射線、特にγ線の空間線量率が計測の対象となる。
なお、本発明で改善というときは、環境を改善するための作業や措置を指すものとするが、本発明では除染が典型例となる。
計測手段は、環境指標に適した計測機器であり、γ線の空間線量率を計測する場合においては、例えばCsI(Tl)シンチレータとMPPC(登録商標)と呼ばれる光検出器を組み合わせたγ線検出器で構成することが可能であり、かかる構成によれば、計測点当たりに要する計測時間を1秒程度に抑えることができる。
計測手段は、例えば異なる高さ位置で同時計測が要請される場合には、複数で構成することが可能である。
GNSS受信機は、精度が高いVRS−RTK−GPS測位方式を採用したものが望ましい。
計測手段及びGNSSアンテナは、同じ水平位置に位置決めされるものとし、例えば装着用ロッドにその材軸方向に沿って計測手段及びGNSSアンテナを適宜取り付け、この状態で該装着用ロッドを鉛直姿勢で地面に立設するようにすればよい。
なお、計測手段を上述したように複数構成とする場合には、該複数の計測手段を装着用ロッドにその材軸方向に沿って配置すればよい。
基準マップ格納部及び計測結果記憶手段は、例えばタブレット端末に内蔵されたSSD等の記憶装置でそれぞれ構成することが可能である。
基準マップ格納部からの基準マップの読出し、GNSS信号から得られる座標位置の基準マップへの表示、同座標位置の計測地点としての計測結果記憶手段への保存、計測結果記憶手段への計測値の保存はそれぞれ演算処理手段で行うが、該演算処理手段は、例えばタブレット端末のCPUやメモリーといったハードウェアとその上で動作する基本ソフト、アプリケーションソフト等のソフトウェアとで構成することができるとともに、表示手段は、タブレット端末の液晶ディスプレイで構成することができる。
[第1の発明及び第2の発明に共通する他の発明]
上述した第1及び第2の発明に係る環境モニタリング支援システムは、静止させた状態で計測を行う場合(以下、静止計測)と、移動しながら計測を行う場合(以下、移動計測)のいずれにも適用することが可能であって、静止計測は、5秒程度の計測時間で計測を行っては次の計測地点に移るという構成が典型例となり、移動計測は、自転車、オートバイ、自動車その他の移動体によって移動しながら、1秒程度の計測時間で次々に計測を行う構成が典型例となる。
ここで、静止計測の場合において、計測地点の現況写真が該計測地点に関連した形で現況写真記憶手段に保存されるよう上述の演算処理手段を構成したならば、計測状況を撮影した現況写真と計測場所との対応が明確になり、あらためて関連付けを行う必要がなくなる。
現況写真及び上述した計測地点は、互いに関連させた形で現況写真記憶手段に保存するものとするが、現況写真は、任意の方法で計測地点に関連させることが可能であり、計測地点の座標位置と関連させる、基準マップ上の対応位置に関連させる、基準マップを構成する平面図形に関連させるといった構成が採用可能である。
また、計測結果記憶手段から読み出された過去の計測地点が、GNSS信号から得られる座標位置とともに基準マップに重ねて表示されるように上述の演算処理手段を構成したならば、現在位置が過去の計測地点に一致するように計測手段を適宜移設することで、除染をはじめとする改善前の計測地点と同じ場所で改善後の計測を行うことが可能となり、かくして改善による効果確認を高精度に行うことができる。
静止計測であるか移動計測であるかを問わず、計測手段は、例えば「測定開始」と表示されたボタンをクリックするなどの計測開始操作に応答して作動するように演算処理手段を構成することができるが、移動計測の場合において、上記計測開始操作に代えて、所定のスケジュールに従って計測手段が作動するように演算処理手段を構成したならば、上述した移動体を走行させるだけで、広大な土地の移動計測や道路に沿った移動計測を自動で行うことが可能となる。
第1及び第2の発明並びにそれらの関連発明に係る環境モニタリング支援システムは、従来のように調査票に貼り付けられた航空写真等を見ながら現在位置を確認する煩雑な作業が不要となり、速やかに計測作業に入ることができるという顕著な作用効果を奏するが、計測地点及び該計測地点における計測値又はそれらに加えて現況写真が基準マップ上の位置に関連する形で閲覧自在な調書が作成可能となるように演算処理手段を構成したならば、調書作成時、従来のように計測場所を示す図面を作成した上、その図面と計測値との対応付けを行う必要がなくなり、調書を短時間に作成することができるとともに、デジタル保存された現況写真と計測場所との対応を整理したりする必要がなくなり、調書作成に要する時間をさらに短縮することが可能となる。
以下、本発明に係る環境モニタリング支援システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る環境モニタリング支援システムを示した図である。同図に示すように、本実施形態に係る環境モニタリング支援システム1は、計測手段としてのγ線検出器2a,2b,2cと、GNSSアンテナ3と、該GNSSアンテナに接続されたGNSS受信機4と、送受信ユニット5aと、演算処理手段としての演算処理部6とを備える。
GNSSアンテナ3は図2に示すように装着用ロッド21の頂部に取り付けてあるとともに、γ線検出器2a,2b,2cは、装着用ロッド21の材軸方向に沿って互いに離間するように該装着用ロッドに取り付けてあり、装着用ロッド21を鉛直姿勢で地面22に立設することにより、それらの装着位置に応じた地面からの高さでγ線をそれぞれ検出できるようになっているとともに、それらの水平位置がGNSSアンテナ3の水平位置とほぼ同じになるように配置してある。
γ線検出器2a,2b,2cは、CsI(Tl)シンチレータとMPPC(登録商標)と呼ばれる光検出器とを組み合わせて構成することが可能であり、例えば地面からの高さが100cm,50cm,1cmとなるように装着用ロッド21にそれぞれ取り付ければよい。
GNSS受信機4は、VRS−RTK−GPS測位方式を採用するのが望ましい。なお、VRS−RTK−GPS測位方式に必要な補正情報は、GNSS受信機4で直接受信するようにしてもよいし、後述するタブレット端末で受信した上、GNSS受信機4に転送するようにしてもよい。
送受信ユニット5aは、装着用ロッド21の適当な位置に取り付ければよい。
演算処理部6は図1に示すように、タブレット端末7のCPUやメモリーといったハードウェア及びその上で動作する基本ソフト、アプリケーションソフト等のソフトウェアで構成してあり、タブレット端末7には、表示手段である液晶ディスプレイ8、SSD等で構成された記憶装置9a,9b,9c及び内蔵カメラ15を搭載してある。
演算処理部6は、送受信ユニット5aとの間でデータの送受信を行う送受信部5bと、位置表示部10と、所定の計測開始操作に応答してγ線検出器2a,2b,2cを作動させる計測制御部11と、計測時においてGNSS信号から得られた座標位置を計測結果記憶手段としての記憶装置9bに計測地点として保存するとともに該計測地点と関連させた形でγ線検出器2a,2b,2cで得られた計測値を記憶装置9bに保存する計測結果保存部12と、計測地点の現況写真を計測地点に関連させた形で現況写真記憶手段としての記憶装置9cに保存する現況写真保存部13とを備える。
送受信ユニット5a及び送受信部5bは、データの送受信が可能となるように適宜構成すればよく、USB接続、無線LAN等で構成することができる。
位置表示部10は、基準マップ格納部としての記憶装置9aから基準マップを読み出すとともに該基準マップにGNSS信号から得られた座標位置を重ねて液晶ディスプレイ8に表示するようになっている。
図3(a)は、計測対象となる敷地32の境界線33と該敷地に立地する家屋34の輪郭線35とを示したもの、図3(b)は、これらに航空写真36を重ね合わせてなる平面図形31を示したものであり、上述した基準マップは、境界線33や輪郭線35に関連させた形で、該平面図形に土地家屋属性を付加して構成してある。
平面図形31には、現地で計測を行う際、その上にGNSS信号から得られる座標位置が重ねて表示できるよう、例えば少なくとも2地点の緯度経度情報を埋め込んでおく。
敷地32の境界線33や家屋34の輪郭線35は、GISデータ化された地籍図や家屋図から作成することが可能である。
土地家屋属性は、敷地32や家屋34の所有者氏名あるいは居住者氏名、敷地32や家屋34の住所や地番等で構成すればよい。
上述した基準マップは、現地で計測を行う前に予め作成した上、タブレット端末7の記憶装置9aに格納しておく。
計測制御部11は、例えば「測定開始」と表示されたボタンをクリックするなどの計測開始操作に応答してγ線検出器2a,2b,2cが作動するように構成すればよい。
環境モニタリング支援システム1を用いてγ線の空間線量率を計測するには、まず、位置表示部10で基準マップ格納部9aから基準マップを読み出すとともに、該基準マップにGNSS信号から得られる座標位置を重ねて表示する。
このようにすると、図4に示すように基準マップ格納部9aから読み出された基準マップ41にGNSS信号から得られる座標位置がピン42として重ねて表示される。
ここで、除染作業やその前後に行われる空間線量率の計測作業は、敷地の所有者や家屋の所有者若しくは居住者からの同意が必要になる関係上、所有者あるいは居住者単位で行われることが多く、それゆえ、敷地32の境界線33や家屋34の輪郭線35を明確に把握することが重要になるが、基準マップ41には、計測対象となる敷地32の境界線33及び該敷地に立地する家屋34の輪郭線35を航空写真36に重ね合わせてなる平面図形31が描かれているとともに(図3参照)、該平面図形には、境界線33や輪郭線35に関連させた形で、敷地32の所有者氏名や家屋34の所有者氏名又は居住者氏名等が土地家屋属性として付加されている。
図5は、右側のサイドメニューに挙げられた「家屋選択」ボタンをクリックし、基準マップ41上の家屋34の輪郭線35をクリックすることにより、家屋34の所有者(居住者)及び住所が土地家屋属性として新しいウィンドウ51で表示される様子を示したものである。
かかる構成においては、現在位置が、自治体発注に係る計測対象の敷地あるいは家屋に間違いないかどうかを容易に確認することができる。
現在位置が計測対象の敷地32あるいは家屋34に間違いないことを確認できたならば、計測日の天候を図6(a)に示すように例えば「晴れ」、風向きを「弱」と入力するとともに、測定場所を同図(b)に示すように例えば「玄関前」、地面状況を「舗装」と入力する。
次に、同図(b)の右側のサイドメニューに挙げられた「測定開始(GPS位置)」ボタンを計測制御部11の計測開始操作としてクリックすることにより、γ線検出器2a,2b,2cを作動させる。
計測が終了したならば、計測時においてGNSS信号から得られた座標位置を計測結果保存部12で記憶装置9bに計測地点として保存するとともに、該計測地点と関連させた形でγ線検出器2a,2b,2cで得られた計測値を計測結果保存部12で記憶装置9bに保存する。
計測値及び計測地点を互いに関連させた形で記憶装置9bに保存するにあたっては、計測値を計測地点の座標位置と関連させる、基準マップ41上の対応位置に関連させる、基準マップ41を構成する平面図形31に関連させるといった構成が採用可能である。
図7(a)は、計測終了後の液晶ディスプレイ8の様子を示したものであり、γ線検出器2a,2b,2cによって計測されたγ線の空間線量率がウィンドウ71に表示されているのがわかる。
次に、ウィンドウ71に設けられた「写真撮影」ボタンをクリックすることにより、内蔵カメラ15を作動させる。
このようにすると、同図(b)に示すようにウィンドウ72が開いてファインダーが表示されるので、画角等を適宜設定した後、ウィンドウ72の右側に挙げられた撮影ボタンをクリックし、内蔵カメラ15で撮像して現況写真とする。
現況写真は、計測地点に関連させた形で保存するが、保存にあたっては、計測値の場合と同様、現況写真を計測地点の座標位置と関連させる、基準マップ41上の対応位置に関連させる、基準マップ41を構成する平面図形31に関連させるといった構成が採用可能である。
以上説明したように、本実施形態に係る環境モニタリング支援システム1によれば、計測対象となる敷地32の境界線33及び該敷地に立地する家屋34の輪郭線35を航空写真36に重ね合わせて平面図形31を作成するとともに、該平面図形に、敷地32や家屋34の所有者氏名あるいは居住者氏名、敷地32や家屋34の住所や地番等で構成された土地家屋属性が付加されてなる基準マップ41を作成し、該基準マップにGNSS信号から得られる座標位置をピン42として重ねて表示するようにしたので、ピン42が敷地32の境界線33の内側領域に入っているかどうか、あるいは家屋34の輪郭線35の近傍であるかどうか、さらには境界線33や輪郭線35に関連付けられた土地家屋属性を液晶ディスプレイ8上で確認することにより、現在位置が、自治体発注に係る計測対象の敷地あるいは家屋に間違いないかどうかを容易に判断することができる。
そのため、従来のように、調査票に貼り付けられた航空写真等を見ながら現在位置を確認する煩雑な作業が不要となり、速やかに計測作業に入ることができる。
また、本実施形態に係る環境モニタリング支援システム1によれば、GISデータ化された地籍図及び家屋図を航空写真と重ね合わせることで平面図形31を作成するようにしたので、計測場所の周辺状況を液晶ディスプレイ8上の航空写真と比較することが可能となり、現在位置に関する上述の判断がさらに容易になる。
また、本実施形態に係る環境モニタリング支援システム1によれば、内蔵カメラ15で撮影された計測地点の現況写真を該計測地点に関連させた形で現況写真保存部13で記憶装置9cに保存するようにしたので、従来のように、デジタル保存された現況写真がどの計測場所に対応するのかをあらためて整理する必要がなくなる。
本実施形態では、GNSS測位方式をVRS−RTK−GPSとしたが、精度上許容されるのであれば、これ以外の測位方式でもかまわない。
また、本実施形態では、計測手段を、CsI(Tl)シンチレータとMPPC(登録商標)と呼ばれる光検出器とを組み合わせたγ線検出器2a,2b,2cで構成したが、計測時間が長くてもかまわないのであれば、上記以外のγ線検出器を採用してもよいし、複数高さで計測する必要がないのであれば、γ線検出器は一台で足りる。
また、本実施形態では、演算処理部6をタブレット端末7のハードウェア及びソフトウェアで構成するようにしたが、これに代えて、携帯情報端末やノートパソコンで構成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、基準マップを構成する平面図形を、計測対象となる敷地32の境界線33と該敷地に立地する家屋34の輪郭線35とを航空写真36に重ね合わせてなる平面図形31としたが、場合によっては、敷地32の境界線33と該敷地に立地する家屋34の輪郭線35のみで構成してもかまわない。
かかる構成においては、航空写真がないため、周辺の視覚状況を判断材料とすることはできないが、ピン42と敷地32の境界線33あるいは家屋34の輪郭線35との相対位置関係や、境界線33や輪郭線35に関連付けられた土地家屋属性を液晶ディスプレイ8上で確認することにより、現在位置が、自治体発注に係る計測対象の敷地あるいは家屋に間違いないかどうかを容易に判断することができるという作用効果を奏する点は、上述した実施形態と何ら変わりはない。
また、本実施形態では、内蔵カメラ15で撮影された計測地点の現況写真を該計測地点に関連させた形で現況写真保存部13で記憶装置9cに保存するようにしたが、現況写真が不要である場合、あるいは別途撮影でもかまわない場合には、かかる構成を省略することができる。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、演算処理部6を、記憶装置9bから読み出された過去の計測地点が、GNSS信号から得られる座標位置とともに基準マップ41に重ねて液晶ディスプレイ8に表示されるように構成し、計測の際、現在位置が過去の計測地点に一致するようにγ線検出器2a,2b,2cを適宜移設し、しかる後、該γ線検出器による計測を行うようにしてもよい。
かかる構成によれば、除染前の計測地点と同じ場所で除染後の計測を行うことが可能となり、かくして除染の効果を高い精度で確認することが可能となる。
また、本実施形態では、「測定開始」と表示されたボタンをクリックするという計測開始操作に応答してγ線検出器2a,2b,2cを作動させる計測制御部11を演算処理部6に備えるようにしたが、これは精度の高い計測を行うべく、5秒程度の計測時間で計測を行っては次の計測地点に移るという静止計測を前提としたものであり、自転車、オートバイ、自動車その他の移動体によって移動しながら、1秒程度の計測時間で次々に計測を行う移動計測の場合には、計測制御部11に代えて、所定のスケジュールに従ってγ線検出器2a,2b,2cを作動させる計測制御部を演算処理部6に備えるようにしてもよい。
図8は、運動場83を経路85に沿って移動計測する場合における液晶ディスプレイ8の表示画面を示したものである。
同図でわかるように、液晶ディスプレイ8には、経路85に沿った複数の計測地点(図中、黒丸で表示)が基準マップ81に重ねて表示されている。
ここで、運動場83は、所有者が異なる複数の土地を跨ぐように建設されていて、基準マップ81は、各土地の境界線82が航空写真に重ねられてなる平面図形に土地家屋属性が付加されて構成してある。
各土地の境界線82は、GISデータ化された地籍図から作成することができる。なお、運動場83の境界は、各土地の境界線82では判別できないが、航空写真で判別可能である。
γ線検出器2a,2b、GNSSアンテナ3、GNSS受信機4及び送受信ユニット5a並びにタブレット端末7は、該γ線検出器とGNSSアンテナとが同じ水平位置になるように、換言すれば鉛直に配置されるように、自転車の荷台に積めばよい。γ線検出器2cは、地上高1cmで計測するものであるため、移動計測ではこれを省略する。
上述の構成で運動場83を移動計測するには、まず、計測開始位置である地点84において、液晶ディスプレイ8に表示された基準マップ81を見ながら、土地86の境界線との相対位置関係をチェックするとともに、土地86に係る所有者や地番といった土地家屋属性を上述の実施形態のように例えば新しいウィンドウに表示させることで、GNSS測位による現在位置が、自治体発注に係る土地で間違いがないかどうかを上述の実施形態と同様の手順で確認する。
確認が終わったら、例えば1秒ごとに計測が行われるよう、計測制御部の計測スケジュールを設定した上、経路85に沿って自転車を走行させる。
このようにすると、計測制御部によってγ線検出器2a,2bが1秒ごとに作動し、同図に示すように、経路85に沿った複数の計測地点で空間線量率の計測が自動で行われる。
なお、計測が進行するに従い、計測場所が順次他の土地に移るので、必要に応じて一時停止し、上述したと同様の確認を行う。
ここで、計測結果保存部12は、γ線検出器2a,2bで計測された計測値が記憶装置9bに自動保存されるとともに、計測時におけるGNSS信号から得られた座標位置が計測地点として同じく記憶装置9bに自動保存されるように構成する。
なお、現況写真保存部13は、移動計測ゆえ、これを省略するとともに、天候、測定場所、地面状況といった情報入力についても、同様の理由で省略するものとする。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、上述した計測地点及び計測値並びに現況写真が基準マップ41上の位置に関連する形で閲覧自在な調書を作成できるように演算処理部6を構成することができる。
図9は、上述した調書を作成する調書作成部91を演算処理部6に備えた場合の構成を示したブロック図である。同図に示すように、調書作成部91は、記憶装置9aから基準マップ41を読み出すとともに、記憶装置9bから計測値と計測地点をそれぞれ読み出し、さらに記憶装置9cから現況写真を読み出した上、これらの計測値、計測地点及び現況写真を閲覧可能な調書92を作成できるようになっており、必要に応じて作成状況を液晶ディスプレイ8で表示確認することができる。
調書92は、印刷出力された紙媒体の形態でよいし、メモリー等に格納しあるいはネットワーク経由でアップロード可能な電子媒体として出力される形態でもよい。
ここで、計測値及び現況写真は、計測地点と予め関連付けてあるため、調書92を作成するにあたっては、その関連付けに従い、例えば基準マップ41上の対応位置に計測地点を番号付きでプロットするとともに、それらの番号に対応させる形で各計測地点ごとの計測値及び現況写真を例えば一覧表形式で掲載すればよい。
図10は、調書92の一例を示したものであり、同図(a)に示したように基準マップ41の上に計測地点が番号付きでプロットされてなる図面93と、各番号に対応させる形で掲載された各計測地点の計測値からなる一覧表94と、同図(b)に示したように同じく各計測地点の現況写真からなる一覧表95で構成してある。なお、計測値及び現況写真は、いくつかの計測地点についてのみ示した。
かかる構成によれば、調書作成時、従来のように計測場所を示す図面を別途作成した上、その図面と計測値との対応付けを行ったり、デジタル保存された現況写真と計測場所との対応を整理したりする必要がなくなり、調書作成に要する時間を短縮することができる。
上記構成では、調書作成部91を演算処理部6に備えるようにしたが、調書作成部91は必ずしも環境モニタリング支援システム1に組み込む必要はなく、環境モニタリング支援システム1とは独立した形で、調書作成システムとして別構成とすることができる。
例えば、据置型のパソコンに設けられた記憶装置に記憶装置9a,9b,9cのデータを転送する一方、該パソコンのハードウェア及びソフトウェアで構成された演算処理部に調書作成部91を備えるようにし、該調書作成部を上述の各記憶装置からデータを読み出すことができるように構成してもかまわない。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る環境モニタリング支援システム111について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図11は、本実施形態に係る環境モニタリング支援システムを示した図である。同図に示すように、本実施形態に係る環境モニタリング支援システム111は、γ線検出器2a,2b,2c、GNSSアンテナ3、GNSS受信機4、送受信ユニット5a及び演算処理手段としての演算処理部116を備える。
演算処理部116は同図に示すように、タブレット端末117のCPUやメモリーといったハードウェア及びその上で動作する基本ソフト、アプリケーションソフト等のソフトウェアで構成してあり、タブレット端末117には、液晶ディスプレイ8、SSD等で構成された記憶装置9a,9b,9c及び内蔵カメラ15を搭載してある。
演算処理部116は、送受信ユニット5aとの間でデータの送受信を行う送受信部5bと、位置表示部110と、所定の計測開始操作に応答してγ線検出器2a,2b,2cを作動させる計測制御部11と、計測時においてGNSS信号から得られた座標位置を計測結果記憶手段としての記憶装置9bに計測地点として保存するとともに該計測地点と関連させた形でγ線検出器2a,2b,2cで得られた計測値を記憶装置9bに保存する計測結果保存部12と、計測地点の現況写真を計測地点に関連させた形で現況写真記憶手段としての記憶装置9cに保存する現況写真保存部13とを備える。
位置表示部110は、記憶装置9aから基準マップを読み出すとともに該基準マップにGNSS信号から得られた座標位置を重ねて液晶ディスプレイ8に表示するようになっている。
図12(a)は、計測対象となる道路の中心線121と、該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線122とを示したもの、図12(b)は、これらに航空写真124を重ね合わせてなる平面図形125を示したものであり、上述した基準マップは、中心線121に関連させた形で、該平面図形に道路属性を付加して構成してある。
平面図形125には、現地で計測を行う際、その上にGNSS信号から得られる座標位置が重ねて表示できるよう、例えば少なくとも2地点の緯度経度情報を埋め込んでおく。
道路の中心線121は、GISデータ化された道路台帳から作成することが可能である。
測線122は、中心線121に沿って例えば20mごとに設けるのがよい。
道路属性は、道路の路線名及び該道路の起点又は終点からの距離で構成すればよい。
上述した基準マップは、現地で計測を行う前に予め作成した上、タブレット端末117の記憶装置9aに格納しておく。
環境モニタリング支援システム111を用いてγ線の空間線量率を計測するには、まず、位置表示部110で基準マップ格納部9aから基準マップを読み出すとともに、該基準マップにGNSS信号から得られる座標位置を重ねて表示する。
このようにすると、図13に示すように基準マップ格納部9aから読み出された基準マップ131にGNSS信号から得られる座標位置がピン132として重ねて表示される。
ここで、除染作業やその前後に行われる空間線量率の計測作業は、路線単位あるいは路線を所定長ごとに区切った形で自治体から発注されるが、基準マップ131には、道路の中心線121と該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線122とを航空写真124に重ね合わせてなる平面図形125が描かれているとともに(図12参照)、該平面図形には、中心線121に関連させた形で、道路の路線名及び該道路の起点又は終点からの距離が道路属性として付加されている。
図14は、基準マップ131上の道路の測線122を選択し、該選択状態で右側のサイドメニューに挙げられた「測線選択」ボタン(図13参照)をクリックすることにより、該測線と交差する中心線121に道路属性として付加された道路の路線名及び該道路の起点からの距離が新しいウィンドウ141で表示される様子を示したものである。
かかる構成においては、同図の例で言うと、選択した測線122が、「鶴見担二丁目三丁目線」なる名称の路線の起点から100mに位置する測線であることがわかるので、該測線が、自治体発注に係る計測対象の道路に間違いないかどうかを容易に確認することができる。
次に、計測を開始するが、道路計測においては、図14に示したように、中心線121と測線122との交点における「中央」と、該中央から測線122に沿って左右側にそれぞれ位置する「車道」、「歩道」、「側溝(蓋上)」、「側溝(蓋無)」の計9箇所が計測箇所となっており、計測可能であれば、これら9箇所をすべて計測することになっているので、例えば、道路中央を計測する場合、現在位置が測線122の中央であるかどうかをさらに確認し、その上で、「中央」と記されたボタンをクリックする。
このようにすると、図15に示すように、測定開始前の確認ウィンドウ151が開くので、該ウィンドウの「測定開始」と記されたボタンをクリックすることにより、γ線検出器2a,2b,2cを作動させる。
計測が終了したならば、計測時においてGNSS信号から得られた座標位置を計測結果保存部12で記憶装置9bに計測地点として保存するとともに、該計測地点と関連させた形でγ線検出器2a,2b,2cで得られた計測値を計測結果保存部12で記憶装置9bに保存する。
計測値及び計測地点を互いに関連させた形で記憶装置9bに保存するにあたっては、計測値を計測地点の座標位置と関連させる、基準マップ131上の対応位置に関連させる、基準マップ41を構成する平面図形31に関連させるといった構成が採用可能である。
図16(a)は、計測終了後の液晶ディスプレイ8の様子を示したものであり、γ線検出器2a,2b,2cによって計測されたγ線の空間線量率がウィンドウ161に表示されているのがわかる。
次に、ウィンドウ161に設けられた「写真撮影」ボタンをクリックすることにより、内蔵カメラ15を作動させる。
このようにすると、同図(b)に示すようにウィンドウ162が開いてファインダーが表示されるので、画角等を適宜設定した後、ウィンドウ162の右側に挙げられた撮影ボタンをクリックし、内蔵カメラ15で撮像して現況写真とする。
現況写真は、計測地点に関連させた形で保存するが、保存にあたっては、計測値の場合と同様、現況写真を計測地点の座標位置と関連させる、基準マップ131上の対応位置に関連させる、基準マップ41を構成する平面図形125に関連させるといった構成が採用可能である。
以上説明したように、本実施形態に係る環境モニタリング支援システム111によれば、道路の中心線121と該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線122とを航空写真124に重ね合わせて平面図形125を作成するとともにに、該平面図形に測線122に関連させた形で道路の路線名及び該道路の起点又は終点からの距離が道路属性として付加されてなる基準マップ131を作成し、該基準マップにGNSS信号から得られる座標位置をピン132として重ねて表示するようにしたので、ピン132が測線122に一致しているかどうか、さらには測線122に関連付けられた道路属性を液晶ディスプレイ8上で確認することにより、現在位置が、自治体発注に係る計測対象の道路に間違いないかどうかを容易に判断することができる。
そのため、従来のように、調査票に貼り付けられた航空写真等を見ながら現在位置を確認する煩雑な作業が不要となり、速やかに計測作業に入ることができる。
また、本実施形態に係る環境モニタリング支援システム111によれば、GISデータ化された地籍図を航空写真と重ね合わせることで平面図形125を作成するようにしたので、計測場所の周辺状況を液晶ディスプレイ8上の航空写真と比較することが可能となり、現在位置に関する上述の判断がさらに容易になる。
また、本実施形態に係る環境モニタリング支援システム111によれば、内蔵カメラ15で撮影された計測地点の現況写真を計測地点に関連させた形で現況写真保存部13で記憶装置9cに保存するようにしたので、従来のように、デジタル保存された現況写真がどの計測場所に対応するのかをあらためて整理する必要がなくなる。
本実施形態では、GNSS測位方式をVRS−RTK−GPSとしたが、精度上許容されるのであれば、これ以外の測位方式でもかまわない。
また、本実施形態では、計測手段を、CsI(Tl)シンチレータとMPPC(登録商標)と呼ばれる光検出器とを組み合わせたγ線検出器2a,2b,2cで構成したが、計測時間が長くてもかまわないのであれば、上記以外のγ線検出器を採用してもよいし、複数高さで計測する必要がないのであれば、γ線検出器は一台で足りる。
また、本実施形態では、演算処理部116をタブレット端末117のハードウェア及びソフトウェアで構成するようにしたが、これに代えて、携帯情報端末やノートパソコンで構成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、基準マップを構成する平面図形を、計測対象となる道路の中心線121と該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線122とを航空写真124に重ね合わせてなる平面図形125としたが、道路中央で計測すれば足りるのであれば、測線122に代えて、道路の中心線121の上に列状に配置された測点を用いるようにしてもかまわない。
また、本実施形態では、基準マップを構成する平面図形を、計測対象となる道路の中心線121と該中心線に沿ってそれに交差するように列状に配置された測線122とを航空写真124に重ね合わせてなる平面図形125としたが、場合によっては、中心線121及び測線122のみで構成してもかまわない。
かかる構成においては、航空写真がないため、周辺の視覚状況を判断材料とすることはできないが、ピン132と測線122との相対位置関係や、測線122に関連付けられた道路属性を液晶ディスプレイ8上で確認することにより、現在位置が、自治体発注に係る計測対象の道路に間違いないかどうかを容易に判断することができるという作用効果を奏する点は、上述した実施形態と何ら変わりはない。
また、本実施形態では、内蔵カメラ15で撮影された計測地点の現況写真を計測地点に関連させた形で現況写真保存部13で記憶装置9cに保存するようにしたが、現況写真が不要である場合、あるいは別途撮影でもかまわない場合には、かかる構成を省略することができる。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、演算処理部116を、記憶装置9bから読み出された過去の計測地点が、GNSS信号から得られる座標位置とともに基準マップ131に重ねて液晶ディスプレイ8に表示されるように構成し、計測の際、現在位置が過去の計測地点に一致するようにγ線検出器2a,2b,2cを適宜移設し、しかる後、該γ線検出器による計測を行うようにしてもよい。
かかる構成によれば、除染前の計測地点と同じ場所で除染後の計測を行うことが可能となり、かくして除染の効果を高い精度で確認することが可能となる。
また、本実施形態では、「測定開始」と表示されたボタンをクリックするという計測開始操作に応答してγ線検出器2a,2b,2cを作動させる計測制御部11を演算処理部116に備えるようにしたが、これは精度の高い計測を行うべく、5秒程度の計測時間で計測を行っては次の計測地点に移るという静止計測を前提としたものであり、自転車、オートバイ、自動車その他の移動体によって移動しながら、1秒程度の計測時間で次々に計測を行う移動計測の場合には、計測制御部11に代えて、所定のスケジュールに従ってγ線検出器2a,2b,2cを作動させる計測制御部を演算処理部116に備えるようにしてもよい。
図17は、道路171を経路172に沿って移動計測する場合における液晶ディスプレイ8の表示画面を示したものである。
同図でわかるように、液晶ディスプレイ8には、経路172に沿った複数の計測地点(図中、黒丸で表示)が基準マップ131に重ねて表示されている。
γ線検出器2a,2b、GNSSアンテナ3、GNSS受信機4及び送受信ユニット5a並びにタブレット端末117は、該γ線検出器とGNSSアンテナとが同じ水平位置になるように、換言すれば鉛直に配置されるように、自転車の荷台に積めばよい。γ線検出器2cは、地上高1cmで計測するものであるため、移動計測ではこれを省略する。
上述の構成で道路171に沿った移動計測を行うには、まず、計測開始位置である地点173において、液晶ディスプレイ8に表示された基準マップ131を見ながら、中心線121との相対位置関係をチェックするとともに、中心線121に関連付けられた道路属性を上述の実施形態のように例えば新しいウィンドウに表示させることで、GNSS測位による現在位置が、自治体発注に係る道路で間違いがないかどうかを上述の実施形態と同様の手順で確認する。
確認が終わったら、例えば1秒ごとに計測が行われるよう、計測制御部の計測スケジュールを設定した上、経路172に沿って自転車を走行させる。
このようにすると、計測制御部によってγ線検出器2a,2bが1秒ごとに作動し、同図に示すように、経路172に沿った複数の計測地点で空間線量率の計測が自動で行われる。
ここで、計測結果保存部12は、γ線検出器2a,2bで計測された計測値が記憶装置9bに自動保存されるとともに、計測時におけるGNSS信号から得られた座標位置が計測地点として同じく記憶装置9bに自動保存されるように構成する。
なお、現況写真保存部13は、移動計測ゆえ、これを省略する。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、上述した計測地点及び計測値並びに現況写真が基準マップ131上の位置に関連する形で閲覧自在な調書を作成できるように演算処理部116を構成することができる。
図18は、上述した調書を作成する調書作成部181を演算処理部116に備えた場合の構成を示したブロック図である。同図に示すように、調書作成部181は、記憶装置9aから基準マップ131を読み出すとともに、記憶装置9bから計測値と計測地点をそれぞれ読み出し、さらに記憶装置9cから現況写真を読み出した上、これらの計測値、計測地点及び現況写真を閲覧可能な調書182を作成できるようになっており、必要に応じて作成状況を液晶ディスプレイ8で表示確認することができる。
調書182は、印刷出力された紙媒体の形態でよいし、メモリー等に格納しあるいはネットワーク経由でアップロード可能な電子媒体として出力される形態でもよい。
ここで、計測値及び現況写真は、計測地点と予め関連付けてあるため、調書182を作成するにあたっては、その関連付けに従い、例えば基準マップ131上の対応位置に計測地点を番号付きでプロットするとともに、それらの番号に対応させる形で各計測地点ごとの計測値及び現況写真を例えば一覧表形式で掲載すればよい。
図19及び図20は、調書182の一例を示したものであり、図19に示したように基準マップ131上の道路の計測地点が、路線名称、測線番号及び該測線上の位置で特定されてなる図面191と、該測線番号及び測線上の位置に対応させる形で掲載された各計測地点の計測値からなる一覧表194と、図20に示したように、同じく測線番号及び測線上の位置に対応させる形で掲載された各計測地点の現況写真からなる一覧表195で構成してある。ここで、測線番号は、道路の起点又は終点からの距離に応じて測線ごとに予め割り振られた番号である。
なお、計測値及び現況写真は、いくつかの計測地点についてのみ示した。
かかる構成によれば、調書作成時、従来のように計測場所を示す図面を別途作成した上、その図面と計測値との対応付けを行ったり、デジタル保存された現況写真と計測場所との対応を整理したりする必要がなくなり、調書作成に要する時間を短縮することができる。
上記構成では、調書作成部181を演算処理部116に備えるようにしたが、調書作成部181は必ずしも環境モニタリング支援システム111に組み込む必要はなく、環境モニタリング支援システム111とは独立した形で、調書作成システムとして別構成とすることができる。
例えば、据置型のパソコンに設けられた記憶装置に記憶装置9a,9b,9cのデータを転送する一方、該パソコンのハードウェア及びソフトウェアで構成された演算処理部に調書作成部181を備えるようにし、該調書作成部を上述の各記憶装置からデータを読み出すことができるように構成してもかまわない。