本発明の最重要の課題である、非浸透性の被記録媒体にインクジェットインクで記録した画像の定着性の解決方法としては、被記録媒体上にプライマーインクを付与するというのが有効である。プライマーインクに使用される物質は、過去多くの文献で提案されているが、上述したように、十分な画像の定着性と描画性は得られていない。プライマーインクとしては、機能的には、(1)被記録媒体との密着力を確保すること、(2)画像形成用インクを用いて印刷(形成)される画像と親和力があること、(3)塗膜硬化性があること、のすべての条件を満足することが望ましく、本発明者らは鋭意検討した結果、上記条件を満たすエネルギー線硬化型プライマーインクを見出した。以下、本発明のエネルギー線硬化型プライマーインク及びそれを用いた画像形成方法について説明する。
(エネルギー線硬化型プライマーインク)
本発明のエネルギー線硬化型プライマーインク(以下、単にプライマーインクともいう。)は、エネルギー線の照射により重合反応又は架橋反応を生起し硬化する重合性化合物と、上記重合性化合物の重合反応又は架橋反応を開始、促進させる重合開始剤とを含むものである。なお、本発明のプライマーインクの被記録媒体への付与方法としては、インクジェット方式による打滴、又は塗布のいずれであってもよい。
<重合性化合物>
本発明のプライマーインクに用いられる重合性化合物は、単官能モノマーのみ、又は、単官能モノマー及び二官能モノマーからなり、かつ、分子内に(メタ)アクリル基と、オキセタン基、オキシラン環(エポキシ基)及びビニルエーテル基のうちのいずれか一つの官能基とを有するモノマー(以下、モノマーaという。)と、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(以下、モノマーbという。)と、を含む。本発明では、単官能モノマーのみ、又は、単官能モノマー及び二官能モノマーからなる重合性化合物を用いることにより、被記録媒体上に付与後のプライマーインクの硬化収縮を低減し、プライマーインクと被記録媒体との密着性を向上できる。さらに、被記録媒体が柔軟性のあるフィルムの場合、プライマーインクの付与後の被記録媒体のカール(反り)の発生を抑制でき、信頼性を向上できる。
上記モノマーaと上記モノマーbとの合計は、インク全量に対して25〜95質量%である。これにより、プライマーインクと被記録媒体との密着性、及びプライマーインクと画像形成用インクとの密着性を向上できる。
上記モノマーbの含有量は、インク全量に対して10質量%以上である。これにより、プライマーインクと被記録媒体との密着性、及びプライマーインクと画像形成用インクとの密着性をより向上できる。
上記モノマーaとしては、オキセタンアクリレート(大阪有機化学工業社製の“OXE−10”)、オキセタンメタクリレート(大阪有機化学工業社製の“OXE−30”)などの(メタ)アクリル基とオキセタン基とを有するモノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジロキシブチルアクリレート、グリシジロキシブチルメタクリレート、グリシジロキシエチルアクリレート、グリシジロキシエチルメタクリレート、グリシジロキシプロピルアクリレート、グリシジロキシプロピルメタクリレートなどの(メタ)アクリル基とオキシラン環とを有するモノマー;アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルなどの(メタ)アクリル基とビニルエーテル基とを有するモノマー;などが挙げられる。供給安定性、コスト面などを考慮すると、上記(メタ)アクリル基とビニルエーテル基とを有するモノマーaとしては、特に、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
また、本発明のプライマーインクに用いられる重合性化合物は、アクリル基のみを有するモノマーをさらに含むことができる。この場合、プライマーインクの粘度の調整、プライマーインクに含まれる硬化物のガラス転移温度の調節などが可能となる。
上記アクリル基のみを有するモノマーとしては、以下に示すような単官能の(メタ)アクリレート類や二官能の(メタ)アクリレート類が挙げられる。
単官能の(メタ)アクリレート類の具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記重合性化合物の重合反応又は架橋反応を進行させるためのエネルギー線としては、紫外線、可視光線、α線、γ線、X線、電子線などが挙げられる。
<重合開始剤>
本発明のプライマーインクに用いられる重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、上述した重合性化合物の重合反応又は架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物であり、光重合開始剤であることが特に好ましい。
上記光重合開始剤としては、照射される活性光線、例えば、200〜400nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線、LED光線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
具体的な光重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用できる。好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物などが挙げられる。以下、各化合物の具合例を示す。
上記(a)芳香族ケトン類の例としては、ベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物、α−チオベンゾフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、α−置換ベンゾイン化合物、ベンゾイン誘導体、アロイルホスホン酸エステル、ジアルコキシベンゾフェノン、ベンゾインエーテル類、α−アミノベンゾフェノン類、p−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、チオ置換芳香族ケトン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド、アシルホスフィン、チオキサントン類、クマリン類などを挙げることができる。
上記(b)芳香族オニウム塩としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウムなど)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂など)、N−アルコキシピリジニウム塩類などが好適に使用される。これらの塩は活性種としてラジカルや酸を生成する。
上記(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれる。
上記(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物の例としては、ロフィンダイマー類が挙げられる。
上記(e)ケトオキシムエステル化合物の例としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
上記(f)ボレート化合物の例としては、米国特許第3,567,453号明細書、米国特許第4,343,891号明細書、欧州特許第109,772号明細書、欧州特許第109,773号明細書に記載されている化合物が挙げられる。
上記(g)アジニウム化合物の例としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報、特公昭46−42363号公報に記載されているN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
上記(h)メタロセン化合物の例としては、チタノセン化合物、鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
上記(i)活性エステル化合物の例としては、ニトロベンズルエステル化合物、イミノスルホネート化合物などが挙げられる。
上記(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42,2924(1969)に記載されている化合物や、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.29、1527(1964)に記載されている化合物を挙げることができる。
本発明のプライマーインクに用いられる重合開始剤としては、硬化性の点から、上述した化合物の中でも、芳香族ケトン類が好ましく、ベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物がより好ましく、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイドが特に好ましい。
上記重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、重合開始剤の感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。なお、増感剤については後述する。
上記重合開始剤の含有量は、インク全量に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。0.1質量%以上であれば、十分な硬化性が得られ、20質量%以下であれば、インクの低温保管時にも析出・沈殿することによる不具合を防ぐことができる。
本発明のプライマーインクにおいて、上記重合開始剤と上記重合性化合物との含有比(質量比)は、0.5:100〜30:100であることが好ましく、1:100〜15:100であることがより好ましい。質量比が0.5:100以上であれば、十分な硬化性が得られ、30:100以下であれば、インクの低温保管時にも析出・沈殿することによる不具合を防ぐことができる。
本発明のプライマーインクには、上記重合性化合物及び上記重合開始剤以外の物質をさらに添加してもよい。以下、添加され得る物質について説明する。
本発明のプライマーインクは、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、及びニトロセルロースよりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を添加樹脂としてさらに含有することができる。この場合、プライマーインクの粘度を所望の領域に調整し易くなる。
上記アクリル系樹脂としては、三菱レイヨン社製の“ダイヤナールBR113”、ジョンソンポリマー社製の“ジョンクリル”、積水化学社製の“エスレックP”などが挙げられる。上記ポリエステル系樹脂としては、ユニチカ社製の“エリーテル”、東洋紡社製の“バイロン”などが挙げられる。上記ポリウレタン系樹脂としては、東洋紡社製の“バイロンUR”、大日精化社製の“NT−ハイラミック”、大日本インキ化学工業社製の“クリスボン”、日本ポリウレタン社製の“ニッポラン”などが挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂としては、日信化学工業社製の“SOLBIN”、積水化学社製の“セキスイPVC−TG”、“セキスイPVC−HA”、ダウケミカル社製のUCARシリーズなどが挙げられる。上記ニトロセルロースとしては、旭化成社製の“HIG”、“LIG”、“SL”、“VX”、ダイセル化学工業社製の“RS”、“SS”などが挙げられる。
本発明のプライマーインクは、被記録媒体に対する濡れ性の向上及びハジキの防止を目的として、表面調整剤をさらに含有することができる。この場合、プライマーインクの表面張力を適切に調整することが可能となる。
上記表面調整剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類などのアニオン性表面調整剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類などのノニオン性表面調整剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類などのカチオン性表面調整剤、シリコン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤などが挙げられる。
上記表面調整剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、例えば、プライマーインク全量に対して0.0001〜1質量%と設定できる。プライマーインクの表面張力が、後述の画像形成用インクの表面張力よりも大きいことが好ましく、上記の範囲内で必要に応じて表面調整剤の添加量を調節することができる。
本発明のプライマーインクには、重合開始剤の感度を向上させる目的で、公知の増感剤を添加してもよい。増感剤としては、例えば、多核芳香族類、キサンテン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アントラキノン類、クマリン類などの化合物類に属し、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有する増感色素が挙げられる。
本発明のプライマーインクには、共増感剤、貯蔵安定剤、溶剤、ゲル化防止剤を、目的に応じて添加することができる。
上記共増感剤は、重合開始剤の感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制するなどの目的で、添加され得る。共増感剤の例としては、アミン類が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリンなどが挙げられる。
上記貯蔵安定剤は、ポットライフを向上させる目的で、添加され得る。貯蔵安定剤としては、公知の貯蔵安定剤を使用できる。
上記溶剤としては、プライマーインクの極性や粘度、表面張力、着色剤の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的に応じて、公知の溶剤を使用できる。具体的には、高沸点有機溶媒を用いることができ、特に、構成素材、特にモノマーとの相溶性に優れる性質を有する高沸点有機溶媒が好ましい。
その他の溶剤として、100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒による環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高い溶媒を用いることが好ましい。「安全性の高い溶媒」とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒のことであり、管理濃度が100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上がさらに好ましい。管理濃度が高い溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
上記溶剤は、1種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量は、インク全量に対して0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。本発明のプライマーインクは水を実質的に含まない方が、経時による不均一化、染料の析出などに起因する液体の濁りが生じるなどの経時安定性の点、及び非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体を用いたときの乾燥性の点で好適である。なお、本明細書において「実質的に含まない」とは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
上記ゲル化防止剤は、保存性を高める目的で、添加され得る。ゲル化防止剤は、インク全量に対して200〜20,000ppm添加することが好ましい。ゲル化防止剤の具体例としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、TEMPO、TEMPOL、クペロン;チバ・スペシャル・ケミカルズ社製の“IRGASTAB UV-10”、“IRGASTAB UV-22”;ALBEMARLE社製の“FIRSTCURE ST−1”;などが挙げられる。
本発明のプライマーインクには、さらに、ポリマー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤などの公知の添加剤を添加してもよい。紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には、例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
本発明のプライマーインクは、後述する画像形成用インクの描画性に影響を与えない透明であることが好ましい。ただし、印刷画像の性質によっては再現性がより優れる場合は、着色剤を添加してもよい。本発明のプライマーインクに添加する着色剤の含有量は、プライマーインク全量に対して0.3〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜25質量%である。着色剤には、白色の着色剤が好適に使用できる。白色の着色剤としては、後述の画像形成用インクに用い得る白色の着色剤と同じものを使用できる。また、着色剤の分散を行う際には、分散剤、分散助剤、溶剤などを添加することができ、これらについても、後述の画像形成用インクと同じものを使用できる。
(画像形成方法)
次に、上記本発明のプライマーインクを用いた画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法は、被記録媒体上に上述した本発明のプライマーインクを付与する工程と、被記録媒体上の上記プライマーインクが付与されている部分に、画像形成用インクをインクジェット方式で付与し、画像を形成する工程とを含むものである。この画像形成方法は、画像形成用インク組成物を用いてインクジェット方式で画像を形成するため、インクジェット記録方法ともいう。
上記画像形成用インクとしては、少なくとも着色剤を含む従来公知のインクジェットインクが用いられる。着色剤としては各種顔料を用い、それらの分散にはエネルギー線硬化性の重合性化合物を用いたインクが好ましい。これについては後述する。
本明細書において、「画像」とは、文字、図表及び写真などを含む光学的情報のことであり、モノクロ、モノカラー及びフルカラーのいずれであってもよい。また、「画像形成用インク」とは、複数の画像形成用インク組成物(以下、単にインク又はインク液ともいう。)からなる多色インクセットのことである。画像を形成する場合、一色の画像形成用インク組成物のみを吐出して画像を形成することもあるが、フルカラー画像を形成するためには、複数色の画像形成用インク組成物を順次又は同時に吐出して画像形成を行う。
一般にインクジェット記録方法においては、高い画像濃度を得るために互いに重なり部分を有して付与された隣接のインク液滴が、乾燥前に被記録媒体上に留まって接触するため、隣接のインク液滴が互いに合一して画像の滲みや細線の線幅の不均一が発生し、鮮鋭な画像の形成性が損なわれやすい。これに対し、本発明では、被記録媒体上の画像形成用インク組成物を付与しようとする部分に予めプライマーインクを付与することにより、被記録媒体上のプライマーインクが付与された部分にインク液滴が互いに重なり部分を有して付与されても、プライマーインクとインク液滴の相互作用により、これら隣接のインク液滴間の合一を抑えることができる。これにより、画像の滲み、画像中の細線などの線幅の不均一及び着色面の色ムラの発生が効果的に防止される。そのため、液体吸収性の低い非浸透性ないし緩浸透性の合成樹脂製の難密着性被記録媒体に画像を記録する場合に、本発明のプライマーインクにより画像の密着性が向上するので、特に有効である。
ここで、「隣接のインク液滴」とは、単一色のインクを用いてインク吐出口から打滴される液滴であって重なり部分を有して打滴されるもの、あるいは色違いのインクを用いてインク吐出口から打滴される液滴であって重なり部分を有して打滴されるものを意味する。隣接のインク液滴は、打滴が同時である液滴であってもよいし、先行打滴と後続打滴の関係である先行液滴と後続液滴であってもよい。
本発明のインクジェット記録方法の具体的な構成の1つは、被記録媒体に打滴される画像形成用インクを構成する複数色の画像形成用インク組成物が、重合性化合物を含有しており、本発明のプライマーインクを、上記画像形成用インク液滴を用いて形成される画像と同一もしくは該画像よりも広い範囲に付与する工程と、被記録媒体上に付与された上記プライマーインクにエネルギー線又は熱を与えて硬化させる工程と、上記被記録媒体の上記プライマーインクが付与されている部分に、上記複数色の画像形成用インク組成物を打滴する工程と、を含む構成である。
さらに、優れた画像の定着性を得る観点から、上記複数色の画像形成用インク組成物の全てを打滴した後に、エネルギーを付与する工程を設けることが好ましい。エネルギーの付与により、上記各画像形成用インク組成物に含まれる重合性化合物の重合又は架橋による硬化反応を促進させ、より強固な画像をより効率よく形成することができる。上記画像形成用インク組成物が重合開始剤をさらに含む場合、エネルギー線照射や加熱などのエネルギーの付与により上記重合開始剤から活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する上記重合性化合物の重合又は架橋による硬化反応が促進される。
エネルギーの付与は、従来公知のエネルギー線の照射又は加熱によって好適に行うことができる。エネルギー線には、画像固定用の活性光と同様のものを使用することができ、例えば、LED光線、紫外線、可視光線など、並びにα線、γ線、X線、電子線などが挙げられ、コスト及び安全性の点で、紫外線、可視光線が好ましい。露光に好適な光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、水銀灯などが挙げられる。
活性光の照射によりエネルギーを付与する場合に、硬化反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般には100mJ/cm2以上10,000mJ/cm2以下程度が好ましい。また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
(画像形成用インク)
本発明の画像形成用インクを構成する画像形成用インク組成物は、少なくとも画像を形成するための組成となるように構成されており、重合性化合物と、重合開始剤と、着色剤とを含む。
<重合性化合物>
本発明の画像形成用インク組成物を構成する重合性化合物は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合又は架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
上記重合性化合物としては、ラジカル重合反応、二量化反応など公知の重合又は架橋反応を生起し硬化する化合物を適用することができる。例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香環に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基などを側鎖に有する高分子化合物などが挙げられる。中でも、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物がより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものであることが特に好ましい。具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体及びオリゴマー)及びそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。また、上記重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の画像形成用インク組成物を構成する重合性化合物としては、好ましくは、ラジカル重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起し硬化する各種公知のラジカル重合性のモノマー(以下、ラジカル重合性化合物という。)や、カチオン重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起し硬化する各種公知のカチオン重合性化合物を使用することができ、また、両者を併用することもできる。
[ラジカル重合性化合物]
本発明の画像形成用インク組成物に用い得るラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類及び内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)などが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかを指し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかを指す。
上記(メタ)アクリレート類としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(2−HPA)、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレートなどを挙げることができる。
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
上記(メタ)アクリルアミド化合物の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。
上記芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレンなどが挙げられる。
上記ビニルエーテル類としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能のビニルエーテル類の例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルなどが挙げられる。
多官能のビニルエーテル類の例として、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類;などが挙げられる。
上記ビニルエーテル類の中でも、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から、ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
本発明の画像形成用インク組成物に用い得るラジカル重合性化合物としては、上記例示した物質以外に、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類;酢酸アリルなどのアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニルなどのハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;などが挙げられる。
〔カチオン重合性化合物〕
本発明の画像形成用インク組成物に用い得るカチオン重合性化合物は、何らかのエネルギー付与によりカチオン重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はない。カチオン重合性化合物としては、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができ、単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。特に、後述するカチオン重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性モノマーを使用することができる。
上記カチオン重合性モノマーの例としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイドなどが挙げられる。
多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−7,8−エポキシ−1,3−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,13−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタンなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
上記ビニルエーテル化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルなどが挙げられる。
多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル;類などが挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物としては、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から、上述した化合物の中でも、ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
上記オキセタン化合物としては、特開2001−220526号、特開2001−310937号、特開2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。ここで、「オキセタン化合物」とは、分子内に少なくとも1つのオキセタン環(オキセタニル基)を含む化合物のことである。
上記オキセタン化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有するオキセタン化合物が好ましい。このようなオキセタン化合物を使用することで、画像形成用インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、形成された画像と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
上記オキセタン化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル[ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどが挙げられる。
多官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどの多官能オキセタンが挙げられる。
このようなオキセタン化合物については、上記特開2003−341217号公報の段落0021乃至0084に詳細に記載されているものを好適に使用し得る。
上記オキセタン化合物の中でも、画像形成用インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
本発明の画像形成用インク組成物に用い得るカチオン重合性化合物としては、硬化性及び耐擦過性の観点から、オキシラン化合物及びオキセタン化合物が好適であり、オキシラン化合物及びオキセタン化合物の両方を含有する態様がより好ましい。ここで、「オキシラン化合物」とは、分子内に、少なくとも1つのオキシラン環(オキシラニル基、エポキシ基)を含む化合物のことであり、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択することができ、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。上記オキシラン化合物を含有する重合性化合物は、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよい。
上述したカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
上記カチオン重合性化合物の含有量は、画像形成用インク組成物中の全固形分に対し、50〜95質量%の範囲が好ましく、60〜92質量%の範囲がより好ましい。
<重合開始剤>
本発明の画像形成用インク組成物を構成する重合開始剤としては、熱又はエネルギー線によって重合反応又は架橋反応を開始させるものが好ましく、エネルギー線によって重合反応又は架橋反応を開始させるものがより好ましい。画像形成用インク組成物が重合開始剤を含むことにより、被記録媒体に付与された画像形成用インク組成物をエネルギー線の照射又は加熱によって硬化させることができる。
上記重合開始剤は、本発明の画像形成用インク組成物を構成する重合性化合物が上記ラジカル重合性化合物である場合には、ラジカル重合を起こさせる重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含有することが好ましく、上記重合性化合物が上記カチオン重合性化合物である場合には、カチオン重合を起こさせる重合開始剤(カチオン重合開始剤)を含有することが好ましく、それらが光重合開始剤であることが特に好ましい。
上記光重合開始剤としては、上述した本発明のプライマーインクと同じものを使用できる。上記ラジカル重合開始剤としては、硬化性の点から、上述の光重合開始剤の中でも、芳香族ケトン類が好ましく、ベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物がより好ましく、α−アミノアルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物が特に好ましい。上記カチオン重合開始剤としては、硬化性の点から、上述の光重合開始剤の中でも、芳香族オニウム塩が好ましく、ヨードニウム塩、スルホニウム塩がより好ましく、ヨードニウム塩のPF6塩、スルホニウム塩のPF6塩が特に好ましい。
上記カチオン重合開始剤又は上記ラジカル重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、重合開始剤の感度向上の目的で、公知の増感剤を併用することもできる。
上記カチオン重合開始剤又は上記ラジカル重合開始剤の含有量は、画像形成用インク組成物中の全固形分に対し、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
本発明の画像形成用インク組成物において、上記重合開始剤と上記重合性化合物との含有比(質量比)は、0.5:100〜30:100であることが好ましく、1:100〜15:100であることがより好ましい。
<着色剤>
本発明の画像形成用インクは、上述したように、複数の画像形成用インク組成物からなる多色インクセットであり、シアン色のインク組成物(シアンインク組成物)、マゼンタ色のインク組成物(マゼンタインク組成物)、イエロー色のインク組成物(イエローインク組成物)、黒色のインク組成物(ブラックインク組成物)及び白色のインク組成物(ホワイトインク組成物)よりなる群から選択された少なくとも1つの画像形成用インク組成物を含むことが好ましい。
基本的に、上記画像形成用インクは、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、ブラックインク組成物及びホワイトインク組成物を含む多色インクセットであることが好ましく、場合によってはバイオレット色、ブルー色、グリーン色、オレンジ色及びレッド色などを呈する着色剤を含む画像形成用インク組成物を用いることにより色再現性に優れた画像を形成することができる多色インクセットであることが好ましい。
従って、本発明の画像形成用インク組成物は、少なくとも1種の着色剤を含有することが好ましい。各色の画像形成用インク組成物は、それに対応する各色を呈する着色剤を少なくとも1種含有する。
上記着色剤としては、特に制限はなく、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料などから適宜選択して用いることができるが、本発明の画像形成用インク組成物は非水系であることから、非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料が好ましい。
次に、本発明の画像形成用インク組成物に好適な顔料について説明する。顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系などの有機顔料が挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。さらに、架橋したアクリル樹脂の中空粒子なども有機顔料として用いてもよい。
本発明の画像形成用インク組成物には、通常、黒色、並びにシアン、マゼンタ、及びイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相を有する顔料や、金、銀色などの金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
まず、原色(マゼンタ、シアン、イエロー)に黒色あるいは白色を加えたものを基本色として使用する顔料から説明する。なお、顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.:The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメントに分類されている化合物、つまり、下記に示すようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものが挙げられる。
上記マゼンタ色を呈する顔料として、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッドなど)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドBなど)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドCなど)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBRなど)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッドなど)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレットなど)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン、チバ・スペシャリティケミカルズ社製の“CINQUASIA Magenta RT−355T”)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタなど)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLTなど)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキなど)の如きアリザリンレーキ顔料などが挙げられる。
上記シアン色を呈する顔料として、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルーなど)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の“IRGALITE BLUE GLO”)(フタロシアニンブルーなど)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキなど)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料などが挙げられる。
上記イエロー色を呈する顔料として、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローGなど)、C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAAなど)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー200(Novoperm Yellow 2HG)の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキなど)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGRなど)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキなど)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキなど)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエローなど)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエローなど)の如き金属錯塩アゾメチン顔料などが挙げられる。
上記黒色を呈する顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、デグサ社製の“SPECIAL BLACK 250”が例示できる。
上記白色を呈する顔料としては、PigmentWhite 6,18,21が例示できる。また、白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、上記酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく、化学的・物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
上記例示した顔料の中でも、シアン色を呈する顔料がピグメントブルー15:3又はピグメントブルー15:4であることが好ましく、マゼンタ色を呈する顔料がピグメントレッド122、ピグメントレッド202又はピグメントバイオレット19であることが好ましく、イエロー色を呈する顔料がピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー155であることがより好ましい。また、白色を呈する顔料が酸化チタンであることが好ましい。
次に、色再現性に優れた画像を形成するために、場合によって用いるバイオレット色、ブルー色、グリーン色、オレンジ色、レッド色などを呈する顔料について説明する。
上記バイオレット色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンB)、C.I.ピグメントバイオレット2(ローダミン3B)、C.I.ピグメントバイオレット3(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3:1(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3:3(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット5:1(アリザリンマルーン)、C.I.ピグメントバイオレット13(ウルトラマリンピンク)、C.I.ピグメントバイオレット17(ナフトールAS)、C.I.ピグメントバイオレット23(ジオキサジンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット25(ナフトールAS)、C.I.ピグメントバイオレット29(ペリレンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット31(ビオランスロンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット32(ベンズイミダゾロンボルドーHF3R)、C.I.ピグメントバイオレット36(チオインジゴ)、C.I.ピグメントバイオレット37(ジオキサジンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット42(キナクリドンマルーンB)、C.I.ピグメントバイオレット50(ナフトールAS)などが市販品として入手可能である。
上記ブルー色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー66などが市販品として入手可能である。
上記グリーン色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1(ブリリアントグリーンレーキ)、C.I.ピグメントグリーン4(マラカイトグリーンレーキ)、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン8(ピグメントグリーンB)、C.I.ピグメントグリーン10(ニッケルアゾイエロー)、C.I.ピグメントグリーン36(臭素化フタロシアニングリーン)などが市販品として入手可能である。
上記オレンジ色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ1(ハンザイエロー3R)、C.I.ピグメントオレンジ2(オルソニトロオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ3(βナフトール)、C.I.ピグメントオレンジ4(ナフトールAS)、C.I.ピグメントオレンジ5(βナフトール)、C.I.ピグメントオレンジ13(ピラゾロンオレンジG)、C.I.ピグメントオレンジ15(ジスアゾオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ16(アニシジンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ17(ペルシアンオレンジレーキ)、C.I.ピグメントオレンジ19(ナフタレンイエローレーキ)、C.I.ピグメントオレンジ24(ナフトールオレンジY)、C.I.ピグメントオレンジ31(縮合アゾオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ34(ピアゾロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ36(ベンズイミダゾロンオレンジHL)、C.I.ピグメントオレンジ38(ナフトールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ40(ピランスロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ43(ペリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ46(エチルレッドレーキC)、C.I.ピグメントオレンジ48(キナクリドンゴールド)、C.I.ピグメントオレンジ49(キナクリドンゴールド)、C.I.ピグメントオレンジ51(ピランスロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ60(イミダゾロンオレンジHGL)、C.I.ピグメントオレンジ61(イソインドリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ62(ベンズイミダゾロンオレンジH5G)、C.I.ピグメントオレンジ64(ベンズイミダゾロン)、C.I.ピグメントオレンジ65(アゾメチンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ67(ピラゾロキナゾロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ68(アゾメチンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ69(イソインドリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ71(ジケトピロロピロールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ72(イミダゾロンオレンジH4GL)、C.I.ピグメントオレンジ73(ジケトピロロピロールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ74(ナフトールオレンジ2RLD)、C.I.ピグメントオレンジ81(ジケトピロロピロールオレンジ)などが市販品として入手可能である。
上記レッド色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270などが市販品として入手可能である。
上記例示した顔料の中でも、色再現性、耐光性や顔料分散物の安定性の観点から、バイオレット色を呈する顔料としてはC.I.ピグメントバイオレット23が好ましく、オレンジ色を呈する顔料としてはC.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ71が好ましく、グリーン色を呈する顔料としてはC.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36が好ましい。
本発明の画像形成用インクとしては、上述したマゼンタ色、シアン色、イエロー色、黒色又は白色の基本色を呈する顔料及び/又は染料を含有する画像形成用インク組成物と、上記基本色以外の色(バイオレット、ブルー、グリーン、オレンジ、レッドなど)を呈する顔料を含有する画像形成用インク組成物と、を使用することが好ましい。
上記着色剤は、1種単独のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、本発明においては、2種類以上の有機顔料又は有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。また、打滴する液滴及び液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
上記着色剤の分散には、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミルなどの分散装置を用いることができる。
上記着色剤の分散を行う際には、分散剤を添加することができる。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、公知の高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤としては、BYKケミー社製の“DisperBYK−101”、“DisperBYK−102”、“DisperBYK−103”、“DisperBYK−106”、“DisperBYK−111”、“DisperBYK−161”、“DisperBYK−162”、“DisperBYK−163”、“DisperBYK−164”、“DisperBYK−166”、“DisperBYK−167”、“DisperBYK−168”、“DisperBYK−170”、“DisperBYK−171”、“DisperBYK−174”、“DisperBYK−182”;エフカアディティブ社製の“EFKA4010”、“EFKA4046”、“EFKA4080”、“EFKA5010”、“EFKA5207”、“EFKA5244”、“EFKA6745”、“EFKA6750”、“EFKA7414”、“EFKA7462”、“EFKA7500”、“EFKA7570”、“EFKA7575”、“EFKA7580”;サンノプコ社製の“ディスパースエイド6”、“ディスパースエイド8”、“ディスパースエイド15”、“ディスパースエイド9100”;アビシア社製の“ソルスパース(Solsperse)3000”、“ソルスパース5000”、“ソルスパース9000”、“ソルスパース12000”、“ソルスパース13240”、“ソルスパース13940”、“ソルスパース17000”、“ソルスパース24000”、“ソルスパース26000”、“ソルスパース28000”、“ソルスパース32000”、“ソルスパース36000”、“ソルスパース39000”、“ソルスパース41000”、“ソルスパース71000”;旭電化社製の“アデカプルロニックL31”、“F38”、“L42”、“L44”、“L61”、“L64”、“F68”、“L72”、“P95”、“F77”、“P84”、“F87”、“P94”、“L101”、“P103”、“F108”、“L121”、“P−123”;三洋化成社製の“イソネットS−20”;楠本化成社製の“ディスパロン KS−860”、“873SN”、“874”(高分子分散剤)、“#2150”(脂肪族多価カルボン酸)、“#7004”(ポリエーテルエステル型)などが挙げられる。
また、上記分散剤は、エフカ社製のフタロシアニン誘導体“EFKA−745”、アビシア社製の“ソルスパース5000”、“ソルスパース12000”、“ソルスパース22000”などの顔料誘導体と併用することもできる。
上記分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、例えば、画像形成用インク組成物全量に対し、0.01〜5質量%と設定できる。
また、上記着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。
また、上記着色剤などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で低分子量成分である重合性化合物を分散媒として用いてもよい。ただし、本発明では、画像形成用インク及び/又はプライマーインクを被記録媒体上に付与した後に硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、形成された画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤に含まれる揮発性有機化合物(VOC)が大気汚染の原因になるなどの問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、粘度が低い重合性化合物を選択することが分散適性や画像形成用インクのハンドリング性向上の観点から好ましい。
上記着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.02μm以上0.2μm以下の範囲である。最大粒径は好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下となるよう、着色剤、分散剤、分散媒の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができる。本発明においては、分散性、安定性に優れた上記分散剤を用いることにより、微粒子着色剤を用いた場合でも、均一で安定な分散物が得られる。インク中における着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
上記着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、画像濃度及び保存安定性の観点から、画像形成用インク組成物全量に対し、0.3〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがさらに好ましい。
本発明の画像形成用インク組成物には、長時間安定した吐出性を付与する目的で、表面調整剤を添加することが好ましい。表面調整剤としては、上述した本発明のプライマーインクに用い得る表面調整剤と同一のものを使用できる。表面調整剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、一般的には、画像形成用インク組成物全量に対し、0.0001〜1質量%であることが好ましい。
本発明の画像形成用インク組成物には、重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、上述した本発明のプライマーインクに用い得る増感剤と同一のものを使用できる。
本発明の画像形成用インク組成物には、上記の成分以外に、共増感剤、貯蔵安定剤、溶剤、ゲル化防止剤、及びその他の添加剤を目的に応じて添加することができる。
上記共増感剤は、重合開始剤の感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制するなどの目的で、添加され得る。共増感剤の具体例としては、上述した本発明のプライマーインクで用い得る共増感剤と同じものを用いることができる。
上記貯蔵安定剤は、ポットライフを向上させる目的で、添加され得る。貯蔵安定剤としては、公知の貯蔵安定剤を使用できる。
上記溶剤としては、画像形成用インク組成物の極性や粘度、表面張力、着色剤の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的に応じて、公知の溶剤を使用できる。溶剤の具体例としては、上述した本発明のプライマーインクに用い得る溶剤が挙げられる。
上記溶剤は、1種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量は各液中0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。画像形成用インク組成物は水を実質的に含まない方が、経時による不均一化、染料の析出などに起因する液体の濁りが生じるなどの経時安定性の点、及び非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体を用いたときの乾燥性の点で好適である。
上記ゲル化防止剤は、保存性を高める観点から、添加され得る。また、画像形成用インク組成物は、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、ゲル化防止剤を添加することが好ましい。ゲル化防止剤は、画像形成用インク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。ゲル化防止剤の具体例としては、上述した本発明のプライマーインクに用い得るゲル化防止剤と同じものが挙げられる。
本発明の画像形成用インク組成物には、上述した本発明のプライマーインクと同様、さらに、ポリマー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤などの公知の添加剤を添加してもよい。
(プライマーインク及び画像形成用インクの物性)
本発明のプライマーインク及び画像形成用インクの粘度及び表面張力は、被記録媒体への付与方式や装置に応じて適宜調整して用いられる。なお、プライマーインクの表面張力は、画像形成用インクよりも大きいことが好ましい。
本発明のプライマーインクをインクジェット方式で被記録媒体上に付与する場合、本発明のプライマーインクの粘度(25℃)は、50mPa・s以下であることが好ましい。粘度の下限値は特に限定されないが、例えば、1.0mPa・sと設定できる。
また、本発明のプライマーインクをインクジェット方式で被記録媒体上に付与する場合、本発明のプライマーインクの表面張力は、25〜31mN/mであることが好ましい。この範囲が好ましいのは、25mN/mより小さいと、画像形成時にインクが広がりやすく滲む可能性があり、31mN/mを超えると、画像形成時にインクが弾きやすく画像が描画できない可能性があるからである。さらに25〜31mN/mの範囲を大きく外れると、インクジェットプリンタの適性から外れ、吐出不良となるからである。
(被記録媒体)
上記被記録媒体としては、浸透性の被記録媒体、非浸透性の被記録媒体、及び緩浸透性の被記録媒体のいずれも使用することができるが、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体が好ましい。
ここで、「浸透性の被記録媒体」とは、例えば、10pL(ピコリットル)の液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以下である被記録媒体をいう。また、「非浸透性の被記録媒体」とは、実質的に液滴が浸透しない被記録媒体をいう。「実質的に浸透しない」とは、例えば、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、「緩浸透性の被記録媒体」とは、10pLの液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100ms以上である被記録媒体をいう。
上記浸透性の被記録媒体としては、例えば、普通紙、多孔質紙及びその他液を吸収できる被記録媒体が挙げられる。上記非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体としては、例えば、合成樹脂、樹脂コート紙、金属、アート紙、ゴム、ガラス、陶器及び木材などが挙げられる。また、本発明においては、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した被記録媒体も使用できる。
上記非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体として用い得る合成樹脂としては、いかなる合成樹脂も使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブタジエンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体など、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイドなどが挙げられる。合成樹脂を用いた場合の被記録媒体の厚みや形状としては、特に限定されるものではなく、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれの形状でもよく、また透明又は不透明のいずれであってもよい。
上記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状にして用いることも好ましく、各種非浸透性のプラスチックス及びそのフィルムを用いることができる。プラスチックスフィルムとしては、例えば、PETフィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ナイロンフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、PPフィルムなどが挙げられる。その他プラスチックスとしては、PC、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ゴム類などを使用できる。
上記非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体として用い得る樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体などが挙げられる。特に好ましいのは、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
上記非浸透性ないし緩浸透性の被記録媒体として用い得る金属としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛など及びステンレスなど、並びにこれらの複合材料である。
(プライマーインクの硬化過程)
本発明では、プライマーインク自体もインクジェット方式で被記録媒体に付与することができ、この場合、プライマーインクを、複数色の画像形成用インク組成物を含む多色インクセットの一つとして使用するのが好ましい。それゆえ、インクジェット記録方式・装置の構成によってプライマーインクの硬化過程は決まる。
すなわち、インクジェット記録方式・装置が、一回の走査(シングルパス)で、プライマーインク専用のヘッドと放射線照射装置が設置された方式ならば、プライマーインクを硬化させた後にそのプライマーインク上に画像形成用インクを付与することになる。マルチパス方式で、画像形成用インクとほぼ同時にプライマーインクを付与する場合にもわずかの時間差ではあるが、プライマーインクの硬化処理後に画像形成用インクが吐出される。本発明のプライマーインクはいずれの方式でもよいが、工業的には操作性や生産性から後者の方式が好ましい。
(プライマーインク及び画像形成用インク組成物の付与)
本発明のプライマーインクの被記録媒体への付与方法としては、上述したように、打滴又は塗布する方法が挙げられる。具体的には、インクジェット、グラビア、フレキソ、パット、スクリーン、オフセットなどの印刷方式が挙げられ、これらの中でもインクジェット、フレキソが好適に用いられる。一方、本発明の画像形成用インクの被記録媒体への付与方法は、インクジェット方式による打滴である。
本発明のプライマーインク及び画像形成用インクを打滴により付与する場合、インクジェットノズルが用いられる。この場合、まず、プライマーインクをインクジェットノズルにより被記録媒体上に吐出し、わずかの時間差はあるが、ほぼ同時に画像形成用インクをインクジェットノズルにより上記被記録媒体上のプライマーインクが付与された部分に打滴することにより、画像を形成する。
上記インクジェットノズルを用いてプライマーインクを付与する場合、例えば、インク液吐出用のヘッドよりも吐出液滴量が大きくノズル密度の低いヘッドを被記録媒体の巾方向にフルラインヘッドユニットとして配置し、それによってプライマーインクを吐出する。
このような吐出液滴量が大きいヘッドは、一般に吐出力が大きいため、高粘度なプライマーインクに対応しやすく、またノズルのつまりの抑制にも有利である。また吐出液滴量が多いヘッドを使用した場合には、被記録媒体搬送方向のプライマーインクの打滴解像力も落とせるため、駆動周波数が低い安価なヘッドを適用できるという利点もある。
一方、本発明のプライマーインクを塗布により付与する場合、塗布装置が用いられる。この場合、塗布装置を用いてプライマーインクを被記録媒体上に塗布し、その後、画像形成用インクをインクジェットノズルにより上記被記録媒体上の上記プライマーインクが付与された部分に打滴することにより、画像を形成する。
上記いずれの態様においても、上記画像形成用インク及びプライマーインク以外の他の液体をさらに付与することができる。他の液体の付与については、塗布装置による塗布や、インクジェットノズルによる吐出など、いかなる方法で被記録媒体上に付与してもよく、付与のタイミングも特に限定されるものではない。他の液体が着色剤を含有する場合には、インクジェットノズルでの吐出による方法が好ましく、プライマーインクを付与した後に付与することが好ましい。
ここで、インクジェット記録方式について説明する。
本発明においては、例えば、静電力を利用してインク液を吐出させる静電誘引方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインク液に照射して放射圧を利用してインク液を吐出させる音響インクジェット方式、インク液を加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式、などの公知の方式が好適である。なお、インクジェット記録方式には、フォトインクと称する光学濃度の低いインク液を小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で光学濃度の異なる複数のインク液を用いて画質を改良する方式や無色透明のインク液を用いる方式が含まれる。
本発明において、プライマーインク上に吐出される画像形成用インク液滴は、0.1pL(ピコリットル;以下同様)以上100pL以下の液滴サイズにて(好ましくはインクジェットノズルにより)打滴されることが好ましい。液滴サイズが上記範囲内であると、高鮮鋭度の画像を光学濃度を調整しながら描写できる点で有効である。また、より好ましくは0.5pL以上50pL以下である。
また、プライマーインクの付与量(単位面積あたりの質量比)は、画像形成用インク液滴量を1とした場合に0.05〜5の範囲内であることが好ましく、0.07〜4の範囲内がより好ましく、0.1〜3の範囲内が特に好ましい。
プライマーインクが被記録媒体上に付与されて形成されるプライマー層及びこれを硬化した下塗り層の厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましく、3μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。上記プライマー層及び下塗り層の厚さが上記範囲内であると硬化画像の柔軟性、密着性が良好に保持できることから好ましい。
プライマーインクの付与後、画像形成用インク及びプライマーインクが打滴されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上10秒以下の範囲内であることが好ましい。打滴間隔が上記範囲内であると、本発明の効果を顕著に奏し得る点で有効である。画像形成用インク組成物液滴の打滴間隔は、より好ましくは10μ秒以上5秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上5秒以下である。
本発明のプライマーインクの使用による効果をより良好に確保する観点から、被記録媒体としては、特に浸透性がない被記録媒体が好ましい。具体的には、OPP(Oriented Polypropylene Film)、CPP(Casted Polypropylene Film)、PE(polyethylene)、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(Polypropylene)、金属板、浸透性が低い軟包材、ラミネート紙、コート紙、アート紙などを用いたときに良好な画像を形成することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
表1に、下記の実施例及び比較例において、画像形成用インク組成物に使用した素材をまとめた。表1中の「部」は「質量部」を意味する。
表2に、下記の実施例及び比較例においてエネルギー線硬化型プライマーインクに使用した素材をまとめた。表2中の「部」は「質量部」を意味する。
被記録媒体としては次の2種の非浸透性媒体を用いた。
(1)合成紙:リンテック社製の“ユポ80 PA−T1”
(2)ポリエステル系合成紙(二軸延伸フィルム):東洋紡社製の“クリスパーK1711”
次に、表3に、下記実施例及び比較例で使用する画像形成用インク組成物を構成する各成分とその配合量について示した。また、表4及び表5に、下記実施例及び比較例で使用するプライマーインク組成物を構成する各成分とその配合量について示した。表3、表4及び表5中、「部」は「質量部」を意味する。
さらに、表3〜5には各インクの粘度及び表面張力についても併せて示した。インクの粘度及び表面張力の測定方法について以下に説明する。
(粘度)
プライマーインク及び画像形成用インク組成物の粘度は、東機産業社製の“R100型粘度計”を用いて、25℃、コーン回転数10rpmの条件下で測定した。
(表面張力)
プライマーインク及び画像形成用インク組成物の表面張力は、協和科学社製の全自動平衡式エレクトロ表面張力計“ESB−V”を用いて、25℃の条件下において測定した。
(画像形成用インク組成物の調製)
下記実施例及び比較例で使用する画像形成用インク組成物は次のようにして調製した。
まず、プラスチック製ビンに、表3に示す着色剤、分散剤、及び重合性化合物を表3に示す配合量で計り取り、これに直径0.1mmジルコニアビーズ100部を加えて、この混合物をペイントコンディショナー(東洋精機社製)により2時間分散処理して、一次分散体を得た。次に、得られた一次分散体に、表3に示す光重合開始剤、増感剤、及び表面調整剤を表3に示す配合量で加え、マグネチックスターラーにより混合物を30分撹拌した。撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、各画像形成用インクP−1〜P−4を調製した。なお、これらのインクの粘度は21.3〜22.8mPa・s、表面張力は25.5〜31.4mN/mであった。
(実施例1)
表4の実施例1に示すプライマーインク組成物を構成する各成分を表4の実施例1に示す配合量で計り取り、マグネチックスターラーで30分間撹拌し、混合物を得た。その後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、上記混合物を吸引ろ過し、実施例1のプライマーインクを調製した。
そして、上記実施例1のプライマーインクを、上述した各画像形成用インク組成物P−1〜P−4、及び、上述した2種類の各被記録媒体と組み合わせて、以下に記載する印刷物作製手順(1)〜(4)に従って、実施例1の印刷物を得た。
(1)被記録媒体上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いてプライマーインクを吐出して、100mm×100mmのプライマーインクベタ印刷物(プライマー層)を作製した。このとき、プライマー層の膜厚は5μmであった。上記インクジェット記録装置はインク供給系として、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、及びピエゾヘッドを備えている。また、上記インクジェット記録装置は、液滴サイズ約7pL、解像度600×600dpiでインクを射出できるよう、駆動周波数10KHzで駆動させた。
(2)上記プライマー層に対し、日亜化学工業社製の紫外線LED“NLBU21W01−E2”を用い、トータル照射光量が300mJ/cm2となるように紫外線を照射した。これにより、上記プライマー層は硬化し、下塗り層を得た。
(3)上記下塗り層上に、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて画像形成用インクを打滴し、画像形成用インクベタ印刷物を作製した。上記インクジェット記録装置はインク供給系として、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、及びピエゾヘッドを備えている。また、上記インクジェット記録装置は、液滴サイズ約7pL、解像度600×600dpiでインクを射出できるよう、駆動周波数10KHzで駆動させた。
(4)上記画像形成用インクベタ印刷物に対し、アイグラフィック社製のメタルハライドランプ“M015−L312”を用い、トータル照射光量が100mJ/cm2となるように紫外線を照射した。これにより、上記画像形成用インクベタ印刷物は硬化し、印刷物を得た。
(実施例2)〜(実施例12)、(比較例1)〜(比較例6)
表4及び表5の実施例2〜12、比較例1〜6に示すプライマーインク組成物の各成分を表4及び表5に示す配合量で計り取り、上記実施例1と同様にして、実施例2〜12、比較例1〜6のプライマーインクを調製した。そして、この実施例2〜12、比較例1〜6のプライマーインクを用いて上記実施例1と同様にして、実施例2〜12、比較例1〜6の印刷物を得た。
(実施例13〜16)
表4の実施例13〜16に示すプライマーインク組成物の各成分を表4に示す配合量で計り取り、上記実施例1と同様にして、実施例13〜16のプライマーインクを調製した。そして、この実施例13〜16のプライマーインクをバーコーター#6を用いて被記録媒体上に塗布したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例13〜16の印刷物を得た。
上記各実施例1〜16及び比較例1〜6について、プライマーインクの濡れ性、プライマーインクの付与後の被記録媒体の信頼性、画像形成用インクの濡れ性、インク硬化性、画像の密着性を評価した。評価結果は、各評価の結果を表6及び表7に示した。表6は、実施例1〜16の評価結果を示し、表7は、比較例1〜6の評価結果を示している。なお、画像形成用インクとしては、表3に示した画像形成用インク組成物P−1〜P−4の各々を、上記実施例1〜16及び比較例1〜6のプライマーインクと組み合わせて印刷物を作製したが、特性に最も有意差が認められたP−1を使用した場合の結果を代表として載せている。
ここで、上記各評価の評価方法について説明する。
(プライマーインクの濡れ性)
プライマーインクの濡れ性については、上述した印刷物作製手順(1)に従って作製したプライマーインクベタ印刷物のインクの弾きを目視で観察することにより評価した。表6及び7では、評価結果を「A」、「B」、「C」で示した。評価基準について説明すると、「A」は、インクの弾きは確認できず、濡れ性が良好であることを示し、「B」は、ややインクの弾きが生じ、かつ、表面がやや凹凸で部分的に被記録媒体表面が露出しており、濡れ性がやや不良であることを示し、「C」は、インクの弾きが多く生じており、かつ、表面が凹凸で被記録媒体表面の露出部分が多く濡れ性が不良であることを示している。
(プライマーインクの付与後の被記録媒体の信頼性)
プライマーインクの付与後の被記録媒体の信頼性については、まず、上述した印刷物作製手順(1)(2)に従って下塗り層が形成された被記録媒体を、50mm×50mmの正方形にカットして試験片を得て、この試験片を平坦な板上に印刷面が上になるように置き、カール(反り)の状態を目視で観察することにより評価した。表6及び7では、評価結果を「A」、「B」、「C」で示した。評価基準について説明すると、「A」は、試験片の四隅にカールの発生が見られず、品質上問題無く、信頼性が優れていることを示し、「B」は、試験片の四隅にカールの発生が見られたが、四隅の浮き上がった部分の合計が30mm未満であり、信頼性はやや不良であることを示し、「C」は、試験片の四隅にカールの発生が見られ、四隅の浮き上がった部分の合計が30mm以上であり、信頼性が劣っていることを示している。
(画像形成用インクの濡れ性)
画像形成用インクの濡れ性については、上述した印刷物作製手順(1)〜(3)に従って作製した画像形成用インクベタ印刷物のインクの弾きを目視で観察することにより評価した。表6及び7では、評価結果を「A」、「B」、「C」で表している。評価基準について説明すると、「A」は、インクの弾きは確認できず、濡れ性が良好であることを示し、「B」は、ややインクの弾きを生じ、かつ、表面がやや凹凸で部分的に被記録媒体表面が露出しており、濡れ性がやや不良であることを示し、「C」は、インクの弾きが多く生じており、かつ、表面が凹凸で被記録媒体表面の露出部分が多く、濡れ性が不良であることを示している。
(インク硬化性)
インク硬化性については、上述した印刷物作製手順(1)〜(4)に従って作製した印刷物(画像)を指で触り、指にインクが付着するか否かを目視で観察することにより評価した。表6及び7では、評価結果を「A」、「B」、「C」で表している。評価基準について説明すると、「A」は、指にインクが付着せず、インク硬化性が優れていることを示し、「B」は、画像に指紋の跡が残ったが、指にはインクがほとんど付着せず、インク硬化性は良好であることを示し、「C」は、指でなぞった部分が大きく引きずられ、指にインクが付着し、インク硬化性が不良であることを示している。
(密着性)
画像の密着性については、日本工業規格(JIS) K5600−5−6に規定された「碁盤目試験粘着テープ剥離」に従って評価した。表6及び7では、評価結果を「A」、「B」、「C」で示している。評価基準について説明すると、試験升目100個に対して、剥離が見られた箇所が10個以下であった場合、密着性は優れていると判断して「A」で示し、剥離箇所が11〜20個であった場合、密着性は良好あると判断して「B」で示し、剥離箇所が21個以上であった場合、密着性は不良であると判断して「C」で示している。
表6及び表7から明らかなように、実施例1〜16では、プライマーインクの濡れ性、プライマーインクの付与後の被記録媒体の信頼性、画像形成用インクの濡れ性、インク硬化性、画像の密着性のいずれも良好な結果が得られた。ただし、二官能モノマーを含む実施例11は、被記録媒体として“クリスパーK1711”を用いた場合に、プライマーインクの濡れ性が他の実施例よりもやや劣っており、また、被記録媒体にカールの発生が見られた。このことから、本発明のプライマーインクに用いられる重合性化合物としては、単官能モノマーのみからなるものを用いる方が好ましいことが分かった。
一方、モノマーaを含まない比較例1は、画像の密着性が劣っていた。また、モノマーbが10質量%未満の比較例2、3も、画像の密着性が劣っていた。また、重合性化合物として三官能モノマー、六官能モノマーを含む比較例4、5は、プライマーインクの付与後の被記録媒体の信頼性が劣っていた。モノマーaとモノマーbとの合計量が25質量%未満の比較例6は、画像の密着性が劣っていた。