以下に添付図面を参照して本願に係る不等率の算出方法、不等率の算出プログラム及び不等率の算出装置について説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
[システム構成]
図1は、実施例1に係る配電管理システムの構成例を示す図である。図1に示す配電管理システム1は、配電設備が互いに電気的に接続された配電システムの構造を管理する配電管理サービスを提供するものである。かかる配電管理サービスの一環として、配電管理システム1は、配電システムが含む配電設備から選択された特定の配電設備よりも1つ階層が下の1又は複数の配電設備の各々における電力使用量を用いて特定の配電設備の不等率を算出する不等率の算出サービスを提供するものである。
この配電システムには、配電用変電所、高圧線や開閉器などの設備が含まれる高圧系統と、柱上または地中埋設式の変圧器、いわゆるバンク、低圧線、引込線や需要家などの設備が含まれる低圧系統とが含まれる。以下では、上記の不等率の算出サービスの一例として、「バンク」、低圧系統上で引込線が架設される「引込ポイント」、複数の需要家を含む集合住宅等の「需要場所」などの特定の配電設備が選択される階層に合わせて階層別の不等率を算出する。これによって、需要家の増設または撤去によって需要家が増減する局面でも、配電設備の仕様、例えばバンクの容量、低圧線の芯線の太さや断面積などの検討に資する指標を提供することを一側面とする。
図1に示すように、配電管理システム1には、サーバ装置10と、スマートメータ30A〜30Nと、配電設備管理システム50Aと、配電自動化システム50Bと、クライアント端末70A〜70Nとが収容される。なお、以下では、スマートメータ30A〜30Nの各装置を区別なく総称する場合には「スマートメータ30」と記載し、また、クライアント70A〜70Nの各装置を区別なく総称する場合には「クライアント端末70」と記載する場合がある。
これらサーバ装置10及びスマートメータ30の間は、ネットワーク5を介して相互に通信可能に接続される。かかるネットワーク5には、有線または無線を問わず、一例として、インターネット(Internet)を始め、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの任意の種類の通信網を採用できる。
サーバ装置10は、クライアント端末70に上記の不等率の算出サービスを提供するコンピュータである。
一実施形態として、サーバ装置10は、パッケージソフトウェアやオンラインソフトウェアとして上記の不等率の算出サービスを実現する不等率算出プログラムを所望のコンピュータにインストールさせることによって実装できる。例えば、サーバ装置10は、上記の不等率の算出サービスを提供するWebサーバとして実装することとしてもよいし、アウトソーシングによって上記の不等率の算出サービスを提供するクラウドとして実装することとしてもかまわない。
スマートメータ30は、通信機能付きの電力の計量器である。かかるスマートメータ30は、需要家の分電盤等に接続される。
一実施形態として、スマートメータ30は、一定期間、例えば30分間ごとに需要家の負荷設備が使用する電力を計量する。このとき、スマートメータ30は、負荷設備によって使用された電力を累積して計量する。以下では、累積して計量された負荷設備の電力使用値のことを「電力使用量」と記載する場合がある。その上で、スマートメータ30は、電力使用量をサーバ装置10へ送信する。なお、ここでは、スマートメータが電力使用量を一定期間ごとにアップロードする例を説明したが、電力使用量を間欠的にアップロードすることもできる。また、スマートメータ30は、電力使用量を能動的にアップロードするのではなく、サーバ装置10からのリクエストに応答して電力使用量をアップロードすることもできる。
配電設備管理システム50Aは、配電システムに含まれる配電設備に関する情報を管理する情報システムであり、また、配電自動化システム50Bは、配電システムに含まれる配電設備の監視や遠隔操作を行う情報システムである。これら配電設備管理システム50A及び配電自動化システム50Bから提供される情報により、配電設備が互いに電気的に接続された配電設備の接続情報、すなわち配電システムの構造情報がサーバ装置10によって管理されることになる。なお、配電設備管理システム50A及び配電自動化システム50Bは、1つの情報システムとして構築することもできるし、サーバ装置10をさらに含めて1つの情報システムとして構築することもできる。
クライアント端末70は、サーバ装置10から上記の不等率の算出サービスの提供を受けるコンピュータである。
一実施形態として、クライアント端末70には、パーソナルコンピュータを採用できる。クライアント端末70には、上記のパーソナルコンピュータなどの据置き型の端末のみならず、各種の携帯端末装置をクライアント端末70として採用することもできる。例えば、携帯端末装置の一例として、スマートフォン、携帯電話機やPHS(Personal Handyphone System)などの移動体通信端末、さらには、PDA(Personal Digital Assistants)などのスレート端末などがその範疇に含まれる。
このクライアント端末70は、一例として、電気事業者の所属員、例えば配電部門の運用担当者やその管理者等によって利用される。例えば、クライアント端末70は、サーバ装置10により管理される配電システムの構造がマップに重畳された配電マップを所定の表示部に表示させることができる。かかる配電マップ上で特定の配電設備の選択を受け付けた場合、クライアント端末70は、選択を受け付けた配電設備をサーバ装置10に通知し、この通知の応答としてサーバ装置10から返信された特定の配電設備に関する不等率を表示させる。なお、配電設備の選択は、必ずしも配電マップ上で受け付けずともよく、配電設備の名称や識別情報を指定することにより実現されることとしてもかまわない。
[サーバ装置10の構成]
図2は、実施例1に係るサーバ装置10の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、サーバ装置10は、通信I/F(interface)部11と、記憶部13と、制御部15とを有する。なお、サーバ装置10は、図2に示す機能部以外にも既知のコンピュータが有する各種の機能部、例えば各種の入力デバイスや音声出力デバイスなどの機能部を有することとしてもかまわない。
通信I/F部11は、他の装置、例えばスマートメータ30、配電設備管理システム50A、配電自動化システム50Bやクライアント端末70との間で通信制御を行うインタフェースである。
一実施形態として、上記の通信I/F部11には、LANカードなどのネットワークインタフェースカードを採用できる。例えば、通信I/F部11は、クライアント端末70から特定の配電設備の選択を受信したり、あるいは上記の特定の配電設備に対応する不等率を始めとする指標をクライアント端末70へ送信したりする。
記憶部13は、制御部15で実行されるOS(Operating System)を始め、上記の不等率算出プログラムなどの各種プログラムに用いられるデータを記憶する記憶デバイスである。
一実施形態として、記憶部13は、サーバ装置10における主記憶装置として実装される。例えば、記憶部13には、各種の半導体メモリ素子、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリを採用できる。また、記憶部13は、補助記憶装置として実装することもできる。この場合、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスクやSSD(Solid State Drive)などを採用できる。
記憶部13は、制御部15で実行されるプログラムに用いられるデータの一例として、配電システム情報13aと、負荷情報13bとを記憶する。これら配電システム情報13a及び負荷情報13b以外にも、他の電子データ、例えば電気事業者が管轄とするマップ、さらには、配電システム全体及び配電設備の仕様に関する情報なども併せて記憶することもできる。
ここで、本実施例に係るサーバ装置10では、配電設備が設置される位置を管理する位置の管理と、各々の配電設備を管理する設備の管理と、互いが電気的に接続される設備を管理する電気接続の管理との3つに分けて配電システムが管理される。
このうち、位置の管理には、配電システムを形成する配電設備のうち所定の設備、例えば変電所、電柱、変圧器(バンク)などが設置される位置「ロケーション(location)」がエンティティとして用いられる。また、配電設備の管理には、1つの位置に紐付く設備「ユニット(unit)」と、2つの位置に紐付く設備「スパン(span)」とがエンティティとして用いられる。また、電気接続の管理には、互いの配電設備が電気的に接続される接続点「ノード(node)」と、複数の接続点によって定まる設備「ブランチ(branch)」とがエンティティとして用いられる。
図3は、配電システムの管理に用いるエンティティの一例を示す図である。図3に示すように、ロケーションの一例としては、例えば、電柱Pや柱上変圧器TRなどのように設置形態が架設ではない非架設の設備が設置される位置が挙げられる。この他、図示されていない配電用変電所(SS:SubStation)が設置される位置や変圧器(SSバンク)が設置される位置もロケーションの範疇に含まれる。なお、ここでは、地上に設置される設備を例示したが、地下に設置される設備、例えばマンホールやハンドホールが設置される位置などもロケーションの範疇に含まれる。
ユニットの一例としては、電柱P、開閉器SW、柱上変圧器TRなどが挙げられる。この他、図示されていない配電用変電所、SVR(Step Voltage Regulator)や各種の計器、例えばスマートメータ30、さらには、地中の設備であるマンホールやハンドホールなどもユニットの範疇に含まれる。
スパンの一例としては、配電用変電所および柱上変圧器TRの間で高圧電力が配電される高圧系統に敷設される電線WH、いわゆる「高圧線」が挙げられる。スパンの他の一例としては、柱上変圧器TRおよび需要家の負荷設備の間で低圧電力が配電される低圧系統のうち柱上変圧器TR及び引込線の区間に敷設される電線WL、いわゆる「低圧線」の他、引込柱および負荷設備の区間に敷設される電線、いわゆる「引込線」などが挙げられる。スパンの更なる一例としては、地中に埋め込まれたケーブルが挙げられる。なお、高圧線WH及び低圧線WLなどの電線Wについては、電柱Pに架設される単位の本数、例えば3本や2本を1つにまとめてスパンとして扱うことができる。
ノードの一例としては、図3中の拡大図21に示す高圧線WHと開閉器SWとの接続点、高圧線WHと柱上変圧器TRとの接続点、柱上変圧器TRと低圧線WLとの接続点が挙げられる。この他、図3中の拡大図22に示す高圧線WH21aと高圧線WH21bとが接続される点もノードの範疇に含まれる。具体的には、高圧線WH21a及び高圧線WH21bが通り装柱の電柱Pに架設されている場合にも、高圧線WH21a及び高圧線WH21b間が電気的に接続されているものとみなし、高圧線WH同士が接続される点を仮想的なノードとして扱われる。
ブランチの一例としては、図3に示す電柱P、高圧線WH、開閉器SW、柱上変圧器TR、低圧線WLなどの各種の設備が挙げられる。この他、図示されていない配電用変電所、引込線、スマートメータ30や負荷設備などもブランチの範疇に含まれる。これら配電用変電所や負荷設備などの端点に位置する設備は、1つしかノードを持たない場合がある。
図2に示す配電システム情報13aには、上記のロケーションを管理するロケーションデータが含まれる。また、配電システム情報13aには、上記のユニットを管理するユニットデータと、上記のスパンを管理するスパンデータとが含まれる。さらに、配電システム情報13aには、上記のノードを管理するノードデータと、上記のブランチを管理するブランチデータとが含まれる。
このうち、ロケーションデータには、一例として、位置ID(identifier)、位置識別、経度および緯度などの項目が対応付けられたデータを採用できる。かかる「位置ID」とは、設備が設置された位置を識別する識別情報を指す。また、「位置識別」とは、位置の種類の識別を指し、例えば、配電用変電所(SS)、電柱(POLE)や負荷設備(LOADL)などの種類が挙げられる。なお、ロケーションデータの各項目の情報は、例えば、他の既存のシステム、例えば配電設備管理システム50Aから変電所、電柱、変圧器などの特定の設備の位置情報を取得することができる。
ユニットデータには、設備ID、位置ID、種別及び属性情報などの項目が対応付けられたデータを採用できる。かかる「設備ID」とは、設備を識別する識別情報を指し、ユニットデータではユニットの設備IDだけが格納される。また、「種別」とは、ユニットの種別を指し、例えば電柱(POLE)、開閉器(SW)、柱上変圧器(BANK)や負荷設備(LOADL)などの種類が挙げられる。また、「属性情報」とは、ユニットの属性に関する情報を指し、例えば、ユニットの型番や性能、例えばユニットが変圧器である場合には変圧器の容量や電圧比が登録される。かかる変圧器の容量は、現系統の設備の電気的な接続情報が抽出された場合に電圧降下の計算に用いることができる。例えば、ユニットが変圧器である場合には、抵抗値、リアクタンス値や変圧器の電圧比が登録される。なお、ユニットデータに記憶される情報は、例えば、他の既存のシステム、例えば配電設備管理システム50Aから取得され、取得された設備の属性情報うちユニットに分類された設備の属性情報が登録される。
スパンデータには、一例として、設備ID、位置ID1、位置ID2、種別および属性情報などの項目が対応付けられたデータを採用できる。ここで言う「設備ID」も、設備を識別する識別情報を指すが、スパンデータにはスパンの設備IDだけが格納される。また、「位置ID1」とは、スパンに紐付く2つの位置IDのうち一方の位置IDを指し、「位置ID2」とは、スパンに紐付く2つの位置IDのうち他方の位置IDを指す。また、「種別」とは、スパンの種別を指し、例えば、高圧線、低圧線及び引込線などの種類が挙げられる。また、「属性情報」は、スパンの属性に関する情報を指し、例えば、スパンの型番、太さ、材質、径間、単位(m)当たりの抵抗値や単位(m)当たりのリアクタンス値などが登録される。かかる径間、単位当たりの抵抗値や単位当たりのリアクタンス値は、現系統の設備の電気的な接続情報が抽出された場合に電圧降下の計算に用いることができる。なお、スパンデータに記憶される情報は、例えば、他の既存のシステム、例えば配電設備管理システム50Aから取得され、取得された設備の属性情報うちスパンに分類された設備の属性情報が登録される。
ノードデータには、一例として、ノードID及び位置IDなどの項目が対応付けられたデータを採用できる。かかる「ノードID」は、ノードを識別する識別情報を指す。なお、ノードデータは、既存の他のシステム、例えば配電設備管理システム50Aおよび配電自動化システム50Bから取得される。例えば、配電設備管理システム50Aから取得された低圧系統の設備の情報または配電自動化システム50Bから取得された高圧系統の設備の情報からノードが抽出された後にノードの所在位置と対応付けてノードデータに登録される。
ブランチデータには、一例として、ブランチID、ノードID1、ノードID2、設備IDおよび開閉区分などの項目が対応付けられたデータを採用できる。かかる「ブランチID」とは、ブランチを識別する識別情報を指す。また、「ノードID1」とは、ブランチが持つ2つのノードIDのうち一方のノードIDを指し、「ノードID2」とは、ブランチが持つ2つのノードIDのうち他方のノードIDを指す。ただし、配電用変電所や負荷設備などの端点に位置するブランチは、ノードID1またはノードID2のいずれかにしかノードIDを持たない場合がある。例えば、ノードID1及びノードID2のうちノードID1には、ノードID2よりも一次側、すなわち変電所寄りの接続点のノードIDが登録されるとともに、ノードID2には、ノードID1よりも二次側、すなわち負荷設備寄りの接続点のノードIDが登録される。また、ここで言う「設備ID」も、設備を識別する識別情報を指すが、ブランチデータにはユニットまたはスパンのいずれかの設備IDが格納される。また、「開閉区分」は、開閉器のスイッチの開閉状態を指す。かかる開閉区分には、ブランチが開閉器である場合には「開状態」または「閉状態」のいずれかが設定されるが、ブランチが開閉器以外である場合には「ブランク」とされる。
なお、ブランチデータは、既存の他のシステム、例えば配電設備管理システム50Aおよび配電自動化システム50Bから取得される。例えば、配電設備管理システム50Aから取得された低圧系統の設備の情報または配電自動化システム50Bから取得された高圧系統の設備の情報からブランチが抽出された後にブランチが持つノードと対応付けてブランチデータとして登録される。
これらのうち、ノードデータ及びブランチデータには、互いが物理的に接続されるノードを記憶部13に登録されるが、配電用変電所が持つノードから需要家が持つノードまで、開閉器の開閉区分が「閉状態」である範囲内でノード及びブランチを探索することにより、互いが電気的に接続された配電設備に関する接続情報、すなわち「配電システムの構造情報」としてカレントノードデータ及びカレントブランチデータが得られる。
図4は、配電システムの構造情報の一例を示す図である。図4に示す例では、太陽光発電等の分散型電源により逆潮流が発生していない場合、電気は、常閉開閉器SW1の開閉状態が「閉状態」であるので、配電用変電所SSからバンクTRまで高圧線を介して配電される。ここで、電圧がバンクTRで高圧から低圧へ変換された後に、電気は、低圧線を介して引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCへ配電される。これら引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCに加え、バンク柱PTRが引込ポイントとなり、電気は、引込線を介して各需要家へ供給されることなる。例えば、引込柱PAの場合、電気は、引込線を介して需要家A−1及び需要家A−2へ供給される。また、引込柱PBの場合、電気は、引込線を介して需要家B−1及び需要家B−2へ供給される。また、引込柱PCの場合、電気は、引込線を介して需要家C−1〜需要家C−3へ供給される。さらに、バンク柱PTRの場合、電気は、引込線を介して需要場所、例えば集合住宅M−1〜M20へ供給される。なお、図4の例では、引込柱PCに設置されている常開開閉器SW2の開閉状態は「開状態」であるので、常開開閉器SW2の先につながる高圧線には電気は流れない。
このように、図4に示す配電システムの構造情報の例では、バンクTRの1つ下の階層に引込柱PA、引込柱PB、引込柱PC及びバンク柱PTRが定義されていることを意味する。さらに、引込柱PAの1つ下の階層に需要家A−1及び需要家A−2が定義されていることを意味する。さらに、引込柱PBの1つ下の階層に需要家B−1及び需要家B−2が定義されていることを意味する。さらに、引込柱PCの1つ下の階層に需要家C−1〜需要家C−3が定義されていることを意味する。さらに、バンク柱PTRの1つ下の階層に需要場所、例えば集合住宅M−1〜M20が定義されていることを意味する。
負荷情報13bは、需要家の電力使用量に関する情報である。
一実施形態として、負荷情報13bには、設備ID、電力使用量の平均値、電力使用量の最大値、各時刻の電力使用量などの項目が対応付けられたデータを採用することができる。図5A〜図5Cは、負荷情報13bの一例を示す図である。図5A〜図5Cには、図4に示した配電システムに含まれる各需要家のスマートメータ30から取得された1日分の電力使用量[kW]が例示されている。これら図5A〜図5Cには、1日の電力使用量が30分単位で検針された例を3つに分けて示されている。このうち、図5Aには、0時00分から7時00分までの各時点における電力使用量が示されており、図5Bには、7時00分から15時30分までの各時点における電力使用量が示されており、図5Cには、15時30分から0時00分までの各時点における電力使用量が示されている。なお、図示の例では、1日分の電力使用量が例示されているが、任意の期間、例えば週、月、季節または年の電力使用量を記憶することができるのは言うまでもない。
制御部15は、各種のプログラムや制御データを格納する内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行するものである。
一実施形態として、制御部15は、中央処理装置、いわゆるCPU(Central Processing Unit)として実装される。なお、制御部15は、必ずしも中央処理装置として実装されずともよく、MPU(Micro Processing Unit)として実装されることとしてもよい。また、制御部15は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジックによっても実現できる。
制御部15は、各種のプログラムを実行することによって下記の処理部を仮想的に実現する。例えば、制御部15は、図2に示すように、取得部15aと、受付部15bと、特定部15cと、集計部15dと、算出部15eと、表示制御部15fとを有する。
取得部15aは、需要家から電力使用量を取得する処理部である。
一実施形態として、取得部15aは、各需要家の負荷設備に接続されたスマートメータ30からアップデートされる電力使用量を取得する。続いて、取得部15aは、スマートメータ30が接続されている負荷設備の設備IDのレコードが有するフィールドのうち今回の検針時刻に対応するフィールドに今回の検針で得た電力使用量を追加登録する。例えば、各スマートメータ30が一定期間、例えば30分間ごとに電力使用量を検針する場合を想定する。この場合、負荷情報13aには、1つのスマートメータ30につき、スマートメータ30に電力使用量の検針結果を通知させる検針間隔と、スマートメータ30及びサーバ装置10間の伝送遅延時間との和に相当する時間の周期で上記の電力使用量の登録がなされることになる。
受付部15bは、配電システムの設備から特定の配電設備の選択を受け付ける処理部である。
一実施形態として、受付部15bは、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、電気事業者が管轄するマップに配電システムの構造を重畳することによって配電マップをクライアント端末70に表示させる。その上で、受付部15bは、クライアント端末70に表示させた配電マップ上で特定の配電設備を含む各配電設備が模式化されたアイコン等のGUI(Graphical User Interface)に対する操作を受け付けることにより、配電システムから特定の配電設備を選択させることができる。また、受付部15bは、クライアント端末70に表示させたウィンドウ上でバンク、バンク柱、引込柱または需要場所に対応する設備の名称や設備IDを入力させることにより、配電システムから特定の配電設備を選択させることもできる。
特定部15cは、特定の配電設備よりも1つ階層が下の1又は複数の配電設備を特定する処理部である。
一実施形態として、特定部15cは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「バンク」である場合、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、バンクよりも1つ階層が下である配電設備、すなわちバンク配下の引込ポイントを特定する。例えば、特定部15cは、カレントブランチデータに含まれるバンクのノードのうち下層側、すなわち需要家側のノード、すなわちノードID2を探索することにより、バンク配下の引込ポイント、例えばバンク柱及び引込柱などに対応するブランチの設備IDを特定することができる。その上で、特定部15cは、先に特定された各引込ポイント配下の需要家をさらに特定する。例えば、特定部15cは、カレントブランチデータに含まれる引込柱またはバンク柱のノードのうち下層側、すなわち需要家側のノード、すなわちノードID2を探索することにより、各引込ポイント配下の需要家に対応するブランチの設備IDを特定することができる。このように特定の配電設備が「バンク」である場合、バンク配下の各引込ポイントの電力使用量を求めるために、特定部15cは、各引込ポイント配下の需要家も特定する。
また、特定部15cは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「引込ポイント」である場合、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、引込ポイントよりも1つ階層が下である配電設備、すなわち引込ポイント配下の需要家を特定する。例えば、特定部15cは、カレントブランチデータに含まれる引込柱またはバンク柱のノードのうち下層側、すなわち需要家側のノード、すなわちノードID2を探索することにより、引込ポイント配下の需要家に対応するブランチの設備IDを特定することができる。
また、特定部15cは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「需要場所」、すなわち集合住宅である場合、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、需要場所内の配電設備、すなわち需要場所配下の需要家を特定する。例えば、特定部15cは、カレントブランチデータに含まれる需要場所のノードのうち下層側、すなわち需要家側のノード、すなわちノードID2を探索することにより、需要場所配下の需要家に対応するブランチの設備IDを特定することができる。
集計部15dは、特定の配電設備配下の配電設備の電力使用量を集計する処理部である。なお、ここでは、記憶部13から電力使用量を読み出す期間の一例として1日分の電力使用量を読み出す場合を例示するが、任意の期間分の電力使用量を読み出すことができる。
一実施形態として、集計部15dは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「バンク」である場合、特定部15cによりバンク配下として特定された引込ポイントごとに、次のような処理を実行する。すなわち、集計部15dは、記憶部13に記憶された負荷情報13bのうち、引込ポイント配下の各需要家に対応する電力使用量を読み出す。そして、集計部15dは、各需要家の電力使用量を検針時間別に集計する。これによって、引込ポイントの電力使用量を検針時間別に算出する。その上で、集計部15dは、各引込ポイントの電力使用量を検針時間別に集計する。これによって、バンク配下の各引込ポイントの合計電力、すなわちバンク全体の使用電力量を検針時間別に算出する。
また、集計部15dは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「引込ポイント」である場合、記憶部13に記憶された負荷情報13bのうち、特定部15cにより引込ポイントの配下として特定された各需要家に対応する電力使用量を読み出す。そして、集計部15dは、各需要家の電力使用量を検針時間別に集計する。これによって、引込ポイントの各検針時間の電力使用量を算出する。
また、集計部15dは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「需要場所」である場合、記憶部13に記憶された負荷情報13bのうち、特定部15cにより需要場所の配下として特定された各需要家に対応する電力使用量を読み出す。そして、集計部15dは、各需要家の電力使用量を検針時間別に集計する。これによって、需要場所の各検針時間の電力使用量を算出する。
算出部15eは、特定の配電設備より1つ階層が下の1又は複数の配電設備の各々における電力使用量に基づいて、不等率を算出する処理部である。
ここで、算出部15eは、一例として、不等率の算出式「(各負荷の最大需要電力の合計/最大需要電力)×100」にしたがって不等率[%]を算出することとする。なお、ここでは、正規化することによりパーセンテージで不等率を求めることとしたが、必ずしも正規化を行わずともかまわない。
一実施形態として、算出部15eは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「バンク」である場合、特定部15cによりバンク配下として特定された引込ポイントごとに、当該引込ポイントの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量を抽出する。このように抽出された各引込ポイントの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「各負荷の最大需要電力」に該当する。さらに、算出部15eは、特定の配電設備として選択されたバンク全体の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量を抽出する。このように抽出されたバンクの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。これらのことから、算出部15eは、上記の不等率の算出式にしたがって各引込ポイントの最大の電力使用量の合計値をバンクの最大の電力使用量で除算することによってバンクの不等率を算出する。
また、算出部15eは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「引込ポイント」である場合、特定部15cにより引込ポイント配下として特定された需要家ごとに、当該需要家の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量を抽出する。このように抽出された各需要家の最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「各負荷の最大需要電力」に該当する。さらに、算出部15eは、特定の配電設備として選択された引込ポイントの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量を抽出する。このように抽出された引込ポイントの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。これらのことから、算出部15eは、上記の不等率の算出式にしたがって各需要家の最大の電力使用量の合計値を引込ポイントの最大の電力使用量で除算することによって引込ポイントの不等率を算出する。
また、算出部15eは、受付部15bにより選択が受け付けられた特定の配電設備が「需要場所」である場合、特定部15cにより需要場所の配下として特定された需要家ごとに、当該需要家の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量を抽出する。このように抽出された各需要家の最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「各負荷の最大需要電力」に該当する。さらに、算出部15eは、特定の配電設備として選択された需要場所の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量を抽出する。このように抽出された需要場所の最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。これらのことから、算出部15eは、上記の不等率の算出式にしたがって各需要家の最大の電力使用量の合計値を需要場所の最大の電力使用量で除算することによって需要場所の不等率を算出する。
表示制御部15fは、クライアント端末70に対する表示制御を行う処理部である。
一実施形態として、表示制御部15fは、算出部15eにより算出された不等率をクライアント端末70に表示させる。例えば、表示制御部15fは、クライアント端末70に配電マップを表示中である場合、当該配電マップで選択された配電設備の上もしくは配電設備の近傍に算出部15eにより算出された不等率を表示させる。また、表示制御部15fは、設備の名称や設備IDにより特定の配電設備が選択された場合、ポップアップ等の画面に算出部15eにより算出された不等率を表示させる。
[具体例]
ここで、図6〜図11を用いて、不等率の算出方法の具体例を説明する。図6〜図10は、電力使用量の時間変化の一例を示す図であり、図11は、不等率の表示例を示す図である。これら図6〜図10には、図5A〜図5Cに示した負荷情報13bから集計された電力使用量が示されている。このうち、図6には、引込柱PAの各検針時間の電力使用量を示し、図7には、引込柱PBの各検針時間の電力使用量を示すと共に、図8には、引込柱PCの各検針時間の電力使用量を示している。また、図9には、バンク柱PTRの各検針時間の電力使用量を示すと共に、図10には、バンクTR全体の各検針時間の電力使用量を示している。なお、図11には、説明の便宜上、各階層の配電設備の不等率がまとめて図示されているが、選択を受け付けた配電設備に関する不等率に絞って表示される。
(1)引込柱PAの不等率
例えば、図4に示した配電システムの構造情報にしたがって表示された配電マップ上で引込柱PAの選択を受け付けた場合、需要家A−1及び需要家A−2が引込柱PA配下の配電設備として特定される。この場合、需要家A−1及び需要家A−2の電力使用量が検針時間別に集計される。例えば、検針時間が0時30分の場合、需要家A−1の電力使用量「0.27」と、需要家A−2の電力使用量「0.49」とを合計することによって引込柱PAの0時30分の電力使用量が「0.76」と集計される。以降の各検針時間についても値は違えども同様の計算が実行される。これによって、引込柱PAの各検針時間の電力使用量が図6に示す通りに求まる。
その上で、引込柱PA配下として特定された需要家ごとに、当該需要家の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、需要家A−1の場合、23時00分に検針された電力使用量「0.87」が抽出される。また、需要家A−2の場合、0時00分に検針された電力使用量「0.93」が抽出される。このように抽出された需要家A−1及び需要家A−2の最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「各負荷の最大需要電力」に該当する。一方、特定の配電設備として選択された引込柱PAの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量も抽出される。例えば、引込柱PAの場合、図6に示す23時30分の電力使用量「1.63」が抽出される。このように抽出された引込柱PAの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。これらのことから、上記の不等率の算出式にしたがって各需要家の最大の電力使用量の合計値「0.87+0.93」を引込ポイントの最大の電力使用量「1.63」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによって引込柱PAの不等率「110[%]」が算出される。
この場合、図11に示すように、配電マップ上で引込柱PAの標示の近傍に不等率「110[%]」の標示D1が表示される。かかる表示によって、需要家A−1及び需要家A−2の両方のピークが同じ検針時間に集中していることを運用担当者に把握させることができる。このため、例えば、引込柱PAの配下に需要家が増設される場合には、バンクTRを始め、引込柱PAからバンク柱PTRまでの区間に架線される低圧線などの配電設備への影響が大きい可能性があるとの予測が可能になる。それ故、負荷に見合う配電設備の選択を支援できる可能性が高まる。
(2)引込柱PBの不等率
また、配電マップ上で引込柱PBの選択を受け付けた場合、需要家B−1及び需要家B−2が引込柱PB配下の配電設備として特定される。この場合、需要家B−1及び需要家B−2の電力使用量が検針時間別に集計される。例えば、検針時間が0時30分の場合、需要家B−1の電力使用量「0.46」と、需要家B−2の電力使用量「0.21」とを合計することによって引込柱PBの0時30分の電力使用量が「0.67」と集計される。以降の各検針時間についても値は違えども同様の計算が実行される。これによって、引込柱PBの各検針時間の電力使用量が図7に示す通りに求まる。
その上で、引込柱PB配下として特定された需要家ごとに、当該需要家の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、需要家B−1の場合、18時00分に検針された電力使用量「0.85」が抽出される。また、需要家B−2の場合、19時30分に検針された電力使用量「0.54」が抽出される。このように抽出された需要家B−1及び需要家B−2の最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「各負荷の最大需要電力」に該当する。一方、特定の配電設備として選択された引込柱PBの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量も抽出される。例えば、引込柱PBの場合、図7に示す19時30分の電力使用量「1.37」が抽出される。このように抽出された引込柱PBの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。これらのことから、上記の不等率の算出式にしたがって各需要家の最大の電力使用量の合計値「0.85+0.54」を引込ポイントの最大の電力使用量「1.37」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによって引込柱PBの不等率「102[%]」が算出される。
この場合、図11に示すように、配電マップ上で引込柱PBの標示の近傍に不等率「102[%]」の標示D2が表示される。かかる表示によって、需要家B−1及び需要家B−2の両方のピークが同じ検針時間に集中していることを運用担当者に把握させることができる。このため、例えば、引込柱PBの配下に需要家が増設される場合にも、バンクTRを始め、引込柱PBからバンク柱PTRまでの区間に架線される低圧線などの配電設備への影響が大きい可能性があるとの予測が可能になる。それ故、負荷に見合う配電設備の選択を支援できる可能性が高まる。
(3)引込柱PCの不等率
また、配電マップ上で引込柱PCの選択を受け付けた場合、需要家C−1〜需要家C−3が引込柱PC配下の配電設備として特定される。この場合、需要家C−1〜需要家C−3の各需要家の電力使用量が検針時間別に集計される。例えば、検針時間が0時30分の場合、需要家C−1の電力使用量「0.07」と、需要家C−2の電力使用量「0.39」と、需要家C−3の電力使用量「1.80」を合計することによって引込柱PCの0時30分の電力使用量が「2.26」と集計される。以降の各検針時間についても値は違えども同様の計算が実行される。これによって、引込柱PCの各検針時間の電力使用量が図8に示す通りに求まる。
その上で、引込柱PC配下として特定された需要家ごとに、当該需要家の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、需要家C−1の場合、9時00分から16時00分まで同一の電力使用量「0.08」が最大値として検針されている。この場合、電力使用量「0.08」が抽出される。また、需要家C−2の場合、15時30分に検針された電力使用量「1.63」が抽出される。さらに、需要家C−3の場合、0時30分から2時00分まで、さらには、23時30分から0時00分までの検針時間で同一の電力使用量「1.80」が検針されている。この場合、電力使用量「1.80」が抽出される。このように抽出された需要家C−1〜需要家C−3の最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「各負荷の最大需要電力」に該当する。一方、特定の配電設備として選択された引込柱PCの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量も抽出される。例えば、引込柱PCの場合、図8に示す18時00分の電力使用量「2.36」が抽出される。このように抽出された引込柱PCの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。これらのことから、上記の不等率の算出式にしたがって各需要家の最大の電力使用量の合計値「0.08+1.63+1.80」を引込ポイントの最大の電力使用量「2.36」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによって引込柱PCの不等率「149[%]」が算出される。
この場合、図11に示すように、配電マップ上で引込柱PCの標示の近傍に不等率「149[%]」の標示D3が表示される。かかる表示によって、需要家C−1〜需要家C−3の3つの需要家の間でピークが同じ検針時間に集中せずにばらついていることを運用担当者に把握させることができる。このため、例えば、引込柱PCの配下に需要家が増設される場合には、他の引込柱PAの配下や他の引込柱PBの配下に需要家が増設される場合に比べて、バンクTRを始め、引込柱PCからバンク柱PTRまでの区間に架線される低圧線などの配電設備への影響が少ない可能性があるとの予測が可能になる。それ故、負荷に見合う配電設備の選択を支援できる可能性が高まる。
(4)需要場所(集合住宅)の不等率
また、配電マップ上で需要場所(集合住宅)の選択を受け付けた場合、需要家M−1〜需要家M−20が需要場所配下の配電設備として特定される。この需要場所がバンク柱PTRには、需要場所以外の需要家や需要場所が接続されていないので、需要場所の電力使用量を求めることはバンク柱PTRの電力使用量を求めることと等価になる。この場合、需要家M−1〜需要家M−20の電力使用量が検針時間別に集計される。例えば、検針時間が0時30分の場合、需要家M−1の電力使用量「0.22」と、需要家M−2の電力使用量「0.24」と、・・・・、需要家M−20の電力使用量「0.60」との計20の各需要家の電力使用量を合計することによって需要場所の0時30分の電力使用量が「8.42」と集計される。以降の各検針時間についても値は違えども同様の計算が実行される。これによって、需要場所の各検針時間の電力使用量が図9に示す通りに求まる。
その上で、需要場所の配下として特定された需要家ごとに、当該需要家の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、需要家M−1の場合、11時30分に検針された電力使用量「0.91」が抽出される。また、需要家M−2の場合、8時30分に検針された電力使用量「0.34」が抽出される。この他、需要家M−3〜需要家M−20も同様にして電力使用量が抽出される。このように抽出された需要家M−1〜需要家M−20の最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「各負荷の最大需要電力」に該当する。一方、特定の配電設備として選択された需要場所の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量も抽出される。例えば、需要場所の場合、図9に示す20時00分の電力使用量「17.21」が抽出される。このように抽出された需要場所の最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。これらのことから、上記の不等率の算出式にしたがって各需要家の最大の電力使用量の合計値「0.91+0.34+・・・+1.38」を需要場所の最大の電力使用量「17.21」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによって需要場所の不等率「148[%]」が算出される。
この場合、図11に示すように、配電マップ上で需要場所の標示の近傍に不等率「148[%]」の標示D4が表示される。かかる表示によって、需要家M−1〜需要家M−20の20軒の需要家の間でピークが同じ検針時間に集中せずにばらついていることを運用担当者に把握させることができる。このため、例えば、需要場所の配下で電力の契約が新規に締結される場合には、バンクTRなどの配電設備への影響が少ない可能性があるとの予測が可能になる。それ故、負荷に見合う配電設備の選択を支援できる可能性が高まる。
(5)バンクTRの不等率
また、配電マップ上でバンクTRの選択を受け付けた場合、バンク柱PTRと、引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCとがバンクTR配下の引込ポイントとして特定される。さらに、バンク柱および上記3つの引込柱の各電柱の電力使用量を求めるために、各電柱配下の需要家もさらに特定される。
ここで、引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCの各検針時間の電力使用量は、既に説明したように、図6〜図8に示した通りに求められる。また、バンク柱PTRの各検針時間の電力使用量は、バンク柱PTRの配下に接続される配電設備が需要場所だけであり、需要場所の各検針時間の電力使用量と同じとなるので、図9に示した通りに求められる。さらに、バンク柱PTR、引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCの各引込ポイントの電力使用量が検針時間別に集計される。例えば、検針時間が0時30分の場合、引込柱PAの電力使用量「0.76」と、引込柱PBの電力使用量「0.67」と、引込柱PCの電力使用量「2.26」と、バンク柱PTRの電力使用量「8.42」とを合計することによってバンクTR全体の0時30分の電力使用量が「12.11」と集計される。以降の各検針時間についても値は違えども同様の計算が実行される。これによって、バンクTR全体の各検針時間の電力使用量が図10に示す通りに求まる。
その上で、バンクTR配下として特定された引込ポイントごとに、当該引込ポイントの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、引込柱PAの場合、図6に示す23時30分の電力使用量「1.63」が抽出される。また、引込柱PBの場合、図7に示す19時30分の電力使用量「1.37」が抽出される。さらに、引込柱PCの場合、図8に示す18時00分の電力使用量「2.36」が抽出される。さらに、バンク柱PTRの場合、図9に示す20時00分の電力使用量「17.21」が抽出される。このように抽出されたバンク柱PTR、引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「各負荷の最大需要電力」に該当する。一方、特定の配電設備として選択されたバンクTRの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量も抽出される。例えば、バンクTRの場合、図10に示す20時00分の電力使用量「21.48」が抽出される。このように抽出されたバンクTRの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。
これらのことから、上記の不等率の算出式にしたがって各需要家の最大の電力使用量の合計値「1.63+1.37+2.36+17.21」をバンク全体の最大の電力使用量「21.48」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによってバンクTRの不等率「105[%]」が算出される。
この場合、図11に示すように、配電マップ上でバンクTRの標示の近傍に不等率「105[%]」の標示D5が表示される。かかる表示によって、バンク柱PTR、引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCの4つの引込ポイントの間でピークが同じ検針時間に集中していることを運用担当者に把握させることができる。このため、例えば、バンクTRの配下に需要家が増設される場合、需要家を接続する引込ポイントによってはバンクTRへの影響が大きくなる可能性が高く、需要家を接続する引込ポイントに注意するのがよいことがわかる。それ故、負荷に見合う配電設備の選択を支援できる可能性が高まる。
(6)階層別の不等率の比較
以上のように、バンクTRの不等率が「105[%]」であるので、これだけに注目すれば、需要家を新規に増設する余裕はあまり存在しないという結論になりかねない。ところが、引込柱PCの不等率は、「149[%]」であり、バンク柱PTRの不等率、同様に需要場所)の不等率は、「148[%]」であり、これら引込柱PC及びバンク柱PTRには、バンクTRや低圧線などの配電設備を現状のままで、新規または臨時の需要家の増設を検討する余地が残されていることがわかる。これらのことから、バンク、引込ポイントまたは需要場所などといった階層に合わせて不等率を算出する技術的意義は大きいと言える。
[処理の流れ]
図12は、実施例1に係る不等率の算出処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、受付部15bにより特定の配電設備の選択が受け付けられた場合に起動される。図12に示すように、受付部15bは、配電システムから特定の配電設備の選択を受け付ける(ステップS101)。
続いて、ステップS101で選択された配電設備が需要場所(集合住宅)である場合(ステップS102Yes)、特定部15cは、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、需要場所配下の需要家を特定する(ステップS103)。
その上で、算出部15dは、記憶部13に記憶された負荷情報13bを参照して、ステップS103で特定された各需要家の電力使用量を検針時間別に集計することにより、需要場所の各検針時間の電力使用量を算出する(ステップS104)。
そして、算出部15eは、ステップS103で特定された需要家の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量と、ステップS104で算出された需要場所の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量と用いて、ステップS101で選択された需要場所の不等率を算出する(ステップS111)。
また、ステップS101で選択された配電設備が引込ポイントである場合(ステップS102NoかつステップS105Yes)、特定部15cは、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、引込ポイント配下の需要家を特定する(ステップS106)。
その上で、集計部15dは、記憶部13に記憶された負荷情報13bを参照して、ステップS106で特定された各需要家の電力使用量を検針時間別に集計することにより、引込ポイントの各検針時間の電力使用量を算出する(ステップS107)。
そして、算出部15eは、ステップS106で特定された需要家の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量と、ステップS107で算出された引込ポイントの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量とを用いて、引込ポイントの不等率を算出する(ステップS111)。
また、ステップS101で選択された配電設備がバンクである場合(ステップS102NoかつステップS105No)、特定部15cは、次のような処理を実行する。すなわち、特定部15cは、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、バンク配下の引込ポイントを特定すると共に、各引込ポイント配下の需要家をさらに特定する(ステップS108)。
その上で、集計部15dは、記憶部13に記憶された負荷情報13bを参照して、特定部15cによりバンク配下として特定された引込ポイントごとに、当該引込ポイント配下の各需要家の電力使用量を検針時間別に集計することにより、引込ポイントごとに当該引込ポイントの各検針時間の電力使用量を算出する(ステップS109)。さらに、集計部15dは、ステップS109で算出された各引込ポイントの電力使用量を検針時間別に集計することにより、バンク全体の各検針時間の使用電力量を算出する(ステップS110)。
そして、算出部15eは、ステップS109で算出された引込ポイントの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量と、ステップS110で算出されたバンク全体の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量と、バンクの不等率を算出する(ステップS111)。
その後、表示制御部15fは、ステップS111で算出されたバンク、引込ポイントまたは需要場所の不等率をクライアント端末70に表示させ(ステップS112)、処理を終了する。
[効果の一側面]
上述してきたように、本実施例に係るサーバ装置10は、配電システムが含む設備から選択された特定の配電設備よりも1つ階層が下である1又は複数の配電設備の各々における電力使用量を用いて特定の配電設備の不等率を算出する。したがって、本実施例に係るサーバ装置10によれば、負荷に見合う配電設備の選択を支援できる。
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
[表示方法]
上記の実施例1では、受付部15bにより選択を受け付けた配電設備に関する不等率を求める場合を例示したが、サーバ装置10の実装はこれに限定されない。例えば、サーバ装置10は、配電設備の選択を受け付けずに各配電設備の不等率等を一斉に算出して表示させることとしてもよいし、ドラッグ&ドロップ等の範囲指定を受け付けた場合に指定の範囲に含まれる各配電設備の不等率等を算出して表示させることとしてもよい。また、サーバ装置10は、不等率が所定の閾値以上である配電設備に絞って不等率等をクライアント端末70に表示させることもできる。
[需要家]
上記の実施例1では、バンク、引込ポイントや需要場所などの不等率を算出する場合を例示したが、この他、特定の配電設備として需要家が選択された場合に、当該需要家のスマートメータ30に接続される負荷設備を特定し、負荷設備ごとに最大の電力使用量を抽出してその合計値を負荷設備全体の最大の電力使用量で除算することによって需要家の不等率を算出することとしてもかまわない。
[負荷率]
上記の実施例1では、不等率を算出する場合を例示したが、他の指標を算出することもできる。例えば、負荷率の算出式「(平均需要電力/最大需要電力)×100[%]」にしたがって受付部15bにより選択を受け付けた配電設備に関する負荷率を算出することもできる。
(1)引込柱PAの負荷率
例えば、図4に示した配電システムの構造情報にしたがってクライアント端末70に表示された配電マップ上で引込柱PAの選択を受け付けた場合、需要家A−1及び需要家A−2が引込柱PA配下の配電設備として特定される。この場合、既に説明したように、引込柱PAの各検針時間の電力使用量が図6に示す通りに求まる。
その上で、引込柱PAの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、引込柱PAの場合、図6に示した23時30分の電力使用量「1.63」が抽出される。このように抽出された引込柱PAの最大の電力使用量は、上記の不等率の算出式における「最大需要電力」に該当する。一方、図6に示した引込柱PAの各検針時間の電力使用量を平均することによって引込柱PAの平均の電力使用量「0.70」が算出される。このように算出された引込柱PAの平均の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「平均需要電力」に該当する。これらのことから、上記の負荷率の算出式にしたがって引込柱PAの平均の電力使用量「0.70」を引込柱PAの最大の電力使用量「1.63」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによって引込柱PAの負荷率「43[%]」が算出される。
この場合、引込柱PAの負荷率は、一例として、図13に示す通りに表示される。図13は、負荷率の表示例を示す図である。図13には、説明の便宜上、各階層の配電設備の負荷率がまとめて図示されているが、選択を受け付けた配電設備に関する負荷率に絞って表示される。図13に示すように、配電マップ上で引込柱PAの標示の近傍に負荷率「43[%]」の標示d1が表示される。
(2)引込柱PBの負荷率
例えば、配電マップ上で引込柱PBの選択を受け付けた場合、需要家B−1及び需要家B−2が引込柱PB配下の配電設備として特定される。この場合、既に説明したように、引込柱PBの各検針時間の電力使用量が図7に示す通りに求まる。
その上で、引込柱PBの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、引込柱PBの場合、図7に示す19時30分の電力使用量「1.37」が抽出される。このように抽出された引込柱PBの最大の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「最大需要電力」に該当する。一方、図7に示した引込柱PBの各検針時間の電力使用量を平均することによって引込柱PBの平均の電力使用量「0.57」が算出される。このように算出された引込柱PBの平均の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「平均需要電力」に該当する。これらのことから、上記の負荷率の算出式にしたがって引込柱PBの平均の電力使用量「0.57」を引込柱PAの最大の電力使用量「1.37」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによって引込柱PBの負荷率「42[%]」が算出される。
この場合、引込柱PBの負荷率は、一例として、図13に示す通りに表示される。図13に示すように、配電マップ上で引込柱PBの標示の近傍に負荷率「42[%]」の標示d2が表示される。
(3)引込柱PCの負荷率
例えば、配電マップ上で引込柱PCの選択を受け付けた場合、需要家C−1〜需要家C−3が引込柱PC配下の配電設備として特定される。この場合、既に説明したように、引込柱PCの各検針時間の電力使用量が図8に示す通りに求まる。
その上で、引込柱PCの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、引込柱PCの場合、図8に示す18時00分の電力使用量「2.36」が抽出される。このように抽出された引込柱PCの最大の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「最大需要電力」に該当する。一方、図8に示した引込柱PCの各検針時間の電力使用量を平均することによって引込柱PCの平均の電力使用量「1.03」が算出される。このように算出された引込柱PCの平均の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「平均需要電力」に該当する。これらのことから、上記の負荷率の算出式にしたがって引込柱PCの平均の電力使用量「1.03」を引込柱PCの最大の電力使用量「2.36」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによって引込柱PCの負荷率「44[%]」が算出される。
この場合、引込柱PCの負荷率は、一例として、図13に示す通りに表示される。図13に示すように、配電マップ上で引込柱PCの標示の近傍に負荷率「44[%]」の標示d3が表示される。
(4)需要場所(集合住宅)の負荷率
例えば、配電マップ上で需要場所の選択を受け付けた場合、需要家M−1〜需要家M−20が需要場所配下の配電設備として特定される。この場合、既に説明したように、需要場所の各検針時間の電力使用量が図9に示す通りに求まる。
その上で、需要場所の各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、需要場所の場合、図9に示す20時00分の電力使用量「17.21」が抽出される。このように抽出された需要場所の最大の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「最大需要電力」に該当する。一方、図9に示した需要場所の各検針時間の電力使用量を平均することによって需要場所の平均の電力使用量「9.29」が算出される。このように算出された需要場所の平均の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「平均需要電力」に該当する。これらのことから、上記の負荷率の算出式にしたがって需要場所の平均の電力使用量「9.29」を需要場所の最大の電力使用量「17.21」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによって需要場所の負荷率「54[%]」が算出される。
この場合、需要場所の負荷率は、一例として、図13に示す通りに表示される。図13に示すように、配電マップ上で需要場所の標示の近傍に負荷率「54[%]」の標示d4が表示される。
(5)バンクTRの負荷率
また、配電マップ上でバンクTRの選択を受け付けた場合、バンク柱PTRと、引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCとがバンクTR配下の引込ポイントとして特定される。さらに、バンク柱および上記3つの引込柱の各電柱の電力使用量を求めるために、各電柱配下の需要家もさらに特定される。
ここで、引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCの各検針時間の電力使用量は、既に説明したように、図6〜図8に示した通りに求められる。また、バンク柱PTRの各検針時間の電力使用量は、バンク柱PTRの配下に接続される配電設備が需要場所だけであり、需要場所の各検針時間の電力使用量と同じとなるので、図9に示した通りに求められる。さらに、バンク柱PTR、引込柱PA、引込柱PB及び引込柱PCの各引込ポイントの電力使用量が検針時間別に集計される。例えば、検針時間が0時30分の場合、引込柱PAの電力使用量「0.76」と、引込柱PBの電力使用量「0.67」と、引込柱PCの電力使用量「2.26」と、バンク柱PTRの電力使用量「8.42」とを合計することによってバンクTR全体の0時30分の電力使用量が「12.11」と集計される。以降の各検針時間についても値は違えども同様の計算が実行される。これによって、バンクTR全体の各検針時間の電力使用量が図10に示す通りに求まる。
その上で、バンクTRの各検針時間の電力使用量のうち最大の電力使用量が抽出される。例えば、バンクTRの場合、図10に示す20時00分の電力使用量「21.48」が抽出される。このように抽出されたバンクTRの最大の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「最大需要電力」に該当する。一方、図10に示したバンクTRの各検針時間の電力使用量を平均することによってバンクTRの平均の電力使用量「11.60」が算出される。このように算出されたバンクTRの平均の電力使用量は、上記の負荷率の算出式における「平均需要電力」に該当する。これらのことから、上記の負荷率の算出式にしたがってバンクTRの平均の電力使用量「11.60」をバンクTRの最大の電力使用量「21.48」で除算の上で乗算値「100」で正規化することによってバンクTRの負荷率「54[%]」が算出される。
この場合、バンクTRの負荷率は、一例として、図13に示す通りに表示される。図13に示すように、配電マップ上でバンクTRの標示の近傍に負荷率「54[%]」の標示d5が表示される。
(6)階層別の負荷率の比較
以上のように、バンクTR全体の不等率が「54[%]」である一方で、バンク柱PTR以外の引込ポイントの負荷率は、軒並み40%台である。このように、バンクと引込ポイントの間で1つ階層が違うと、10%のオーダで負荷率が下がる。これは、バンク柱PTRの引込ポイントに比べて、他の引込ポイントでは、ピーク時以外の負荷設備の稼働が低く、配電設備の仕様、例えばバンクTRの容量や低圧線の芯線の径及び断面積などの検討に資する指標が有効活用されていないことがわかる。これらのことから、バンク、引込ポイントまたは需要場所などといった階層に合わせて負荷率を算出する技術的意義も大きいと言える。
[不等率+負荷率]
上記の実施例1では、不等率を単独で用いる場合を例示したが、負荷率と組み合わることにより、新増設の負荷の推定精度を高めることができる。例えば、不等率を分母とし、負荷率を分子とする補正係数を新増設の需要家を含む全需要家の最大の電力使用量に乗算することにより、増設後の引込ポイントの最大の電力使用量を算出することができる。一例として、新増設の需要家の最大の電力使用量を、新増設の需要家が契約する電流に対応する電力使用量を用いると過程したとき、増設後における引込ポイントの最大の電力使用量は、「(新増設の需要家が契約する電流に対応する電力使用量+既設の需要家の最大の電力使用量)×(負荷率/不等率)」により算出できる。なお、上記の負荷の推定式は、あくまでも一例であり、不等率および負荷率を含む任意の式により新増設の負荷を推定できる。例えば、上記の式では、当該式に入力させるパラメータを電力としているが、これは電流に置き換えることもできる。また、新増設の負荷を推定する場合に必ずしも需要電力の最大値を用いずともかまわず、平均値、中央値、最頻値などの他の統計値を使用することもできる。
より具体的には、サーバ装置10は、新増設を行う需要家の属性情報、例えば契約アンペア等の契約情報や住所等の位置情報の入力を受け付ける。すると、サーバ装置10は、新増設の需要家の位置情報を用いて、新増設の需要家が複数の引込ポイント、例えば引込柱またはバンク柱のいずれかの電柱から所定の距離、例えばHm以内であるか否かを判定する。そして、複数の引込ポイントから所定の距離以内である場合、新増設の需要家をいずれの引込ポイントに接続させるのかを評価するために、各引込ポイントごとに当該引込ポイントに新増設の需要家を接続させる場合の最大の電力使用量を見積もる。
図14は、新増設の需要家の表示例を示す図である。図14には、新増設の需要家が引込柱PB及び引込柱PCの2つの引込ポイントから距離Hm以内である場合が示されている。ここで、新増設の需要家の契約アンペアが40A(≒7.3kW)であるとする。このとき、新規の需要家を引込柱PBに増設する場合、引込柱PBの最大の電力使用量は、新増設の需要家が契約する電流に対応する電力使用量、需要家B−1の最大の電力使用量及び需要家B−2の最大の電力使用量の和に上記の補正係数を乗算することによって推定できる。すなわち、引込柱PBの最大の電力使用量=「(7.3+0.85+0.54)×(0.42÷1.02)=3.6kW」と算出できる。
また、新規の需要家を引込柱PCに増設する場合、引込柱PCの最大の電力使用量は、新増設の需要家が契約する電流に対応する電力使用量、需要家C−1の最大の電力使用量、需要家C−2の最大の電力使用量及び需要家C−3の最大の電力使用量の和に上記の補正係数を乗算することによって推定できる。すなわち、引込柱PCの最大の電力使用量=「(7.3+0.08+1.63+1.80)×(0.44÷1.49)=3.2kW」と算出できる。
その後、サーバ装置10は、引込ポイントごとに増設の前後で最大の電力使用量を比較し、増設の前後の差が最小である引込ポイントを新増設の需要家の引込ポイントとして推奨する。図14の例では、引込柱PBにおける増設の前後の差は、約2.2kW(=3.6kW−1.37kW)であり、引込柱PCにおける増設の前後の差は、約0.8kW(=3.2kW−2.36kW)である。よって、引込柱PBにおける増設の前後の差>引込柱PCにおける増設の前後の差である。すなわち、引込柱PCは、引込柱PBに比べて不等率が高く、負荷率が低い。それ故、引込柱PCに新増設を行った方がピーク値をばらつかせると共に配電設備の負荷を低減できると推定できる。このことから、サーバ装置10は、新増設の需要家を引込柱PBに接続することを推奨できる。これによって、負荷率が低く、かつ不等率が高い引込ポイントに優先して新増設させることができる。また、バンクの容量を変更したり、低圧線のサイズを変更したりといった現場作業も抑制できる。
なお、ここでは、需要家の新増設を例に挙げたが、電技事業者の配電設備の新増設、例えばバンクをどこの電柱につけるかなども、同様の計算で評価が可能となる。また、増設後の引込柱PBの最大の電力使用量または増設後の引込柱PCの最大の電力使用量を用いて、増設後のバンクTRの最大の電力使用量を見積もることもできる。
さらに、ここでは、契約情報および位置情報を入力させることにより、引込ポイントを推奨する場合を例示したが、バンクTRの容量(kVA)、あるいはバンクTRの容量−マージンαから現状のバンクTR全体の最大の電力使用量を減算し、その減算値の範囲内で各引込ポイントに接続できる需要家の戸数を契約アンペアごとに算出して表示させることもできる。
[利用率]
例えば、サーバ装置10は、各引込ポイントの最大の電力使用量をバンクTR等の容量で除算することによってバンクTRの利用率を算出することもできる。さらに、サーバ装置10は、バンクの不等率が第1の閾値、例えば1.7以下である場合に、利用率と比較する第2の閾値を変更することができる。例えば、不等率が1.7を超える場合、各引込ポイントのピークがばらついている可能性が高く、バンクの容量を有効活用できている可能性も高まる。一方で、不等率が1.7以下である場合、各引込ポイント間でピークが重なる事例が増える可能性が高まる結果、不等率が低くなり、利用率が急峻に高まる可能性もある。このため、バンクの不等率が第1の閾値以下である場合、バンクの不等率が第1の閾値を超える場合よりも、バンクの利用率と比較する第2の閾値を下げる。これによって、利用率が偶発的に高まる前に警告を発することができる。
図15は、不等率と利用率の関係の一例を示す図である。図15に示すように、バンクの利用率と比較する第2の閾値は、第2の閾値min〜第2の閾値maxの範囲で変動させることができる。ここで、上述のように、不等率が高いほどバラツキが大きく、また、不等率が低いほどバラツキが小さくなる。このため、不等率が低くなるにつれて、ピークが重なる頻度が多くなるので、利用率が低くても設備に負荷がかかる時間が長くなる。このことから、例えば、サーバ装置10は、不等率が低いほど第2の閾値を低く設定する。一例として、第1の閾値が「1.7」であるとしたとき、バンクの不等率が1.7以下である場合の方が、バンクの不等率が1.7を超える場合よりも、バンクの利用率と比較する第2の閾値を低く設定する。これによって、例えば、バンクの利用率と第2の閾値との比較によりアラート等の通知を行う場合に、次のような機能も実現できる。例えば、サーバ装置10は、バンクの利用率が第2の閾値以上であるか否かを判定し、利用率が第2の閾値以上である1つ又は複数のバンクをクライアント端末70表示させる。一例として、利用率が第2の閾値以上である1つ又は複数のバンクをポップアップ画面で警告表示させたり、地図上で他の配電設備と異なる表示形態で表示させたりすることができる。この場合に、不等率が第1の閾値以下である場合には、第1の閾値を超える場合よりも第2の閾値が低く設定される。この結果、利用率が偶発的に高まる前に警告を発することができる結果、バンクの不等率を用いて、バンクの利用率と比較する第2の閾値をより相応しい値に近付ける設定を実現できる。
また、図15に示すように、バンクの不等率と比較する第1の閾値は、第1の閾値min〜第1の閾値maxの範囲で変動させることができる。この場合、バンクの利用率が第2の閾値以上であるか否かによって第1の閾値を変動させることができる。例えば、サーバ装置10は、利用率が高いほど第1の閾値を低く設定する。つまり、バンクの利用率が第2の閾値以上である場合の方が、バンクの利用率が第2の閾値未満である場合よりも、バンクの不等率と比較する第1の閾値を低く設定する。これによって、バンクの不等率と第1の閾値との比較によりアラート等の通知を行う場合に、バンクの利用率を用いて、バンクの不等率と比較する第1の閾値をより相応しい値に近付ける設定を実現できる。
[期間の設定]
上記の不等率、負荷率や利用率を求める場合、それに用いる負荷情報の期間は、任意に設定できる。例えば、クライアント端末70から期間、例えば週、月、季節や年などの指定を受け付けることとしてもかまわない。
[分散および統合]
また、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されておらずともよい。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、取得部15a、受付部15b、特定部15c、集計部15d、算出部15eまたは表示制御部15fをサーバ装置10の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしてもよい。また、取得部15a、受付部15b、特定部15c、集計部15d、算出部15eまたは表示制御部15fを別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上記のサーバ装置10の機能を実現するようにしてもよい。
[不等率算出プログラム]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図16を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する不等率算出プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。
図16は、実施例1及び実施例2に係る不等率算出プログラムを実行するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。図16に示すように、コンピュータ100は、操作部110aと、スピーカ110bと、カメラ110cと、ディスプレイ120と、通信部130とを有する。さらに、このコンピュータ100は、CPU150と、ROM160と、HDD170と、RAM180とを有する。これら110〜180の各部はバス140を介して接続される。
HDD170には、図16に示すように、上記の実施例1で示した取得部15a、受付部15b、特定部15c、集計部15d、算出部15e及び表示制御部15fと同様の機能を発揮する不等率算出プログラム170aが記憶される。この不等率算出プログラム170aは、図2に示した取得部15a、受付部15b、特定部15c、集計部15d、算出部15eまたは表示制御部15fの各構成要素と同様、統合又は分離してもかまわない。すなわち、HDD170には、必ずしも上記の実施例1で示した全てのデータが格納されずともよく、処理に用いるデータがHDD170に格納されればよい。
このような環境の下、CPU150は、HDD170から不等率算出プログラム170aを読み出した上でRAM180へ展開する。この結果、不等率算出プログラム170aは、図16に示すように、不等率算出プロセス180aとして機能する。この不等率算出プロセス180aは、RAM180が有する記憶領域のうち不等率算出プロセス180aに割り当てられた領域にHDD170から読み出した各種データを展開し、この展開した各種データを用いて各種の処理を実行する。例えば、不等率算出プロセス180aが実行する処理の一例として、図12に示す処理などが含まれる。なお、CPU150では、必ずしも上記の実施例1で示した全ての処理部が動作せずともよく、実行対象とする処理に対応する処理部が仮想的に実現されればよい。
なお、上記の不等率算出プログラム170aは、必ずしも最初からHDD170やROM160に記憶されておらずともかまわない。例えば、コンピュータ100に挿入されるフレキシブルディスク、いわゆるFD、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に各プログラムを記憶させる。そして、コンピュータ100がこれらの可搬用の物理媒体から各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ100に接続される他のコンピュータまたはサーバ装置などに各プログラムを記憶させておき、コンピュータ100がこれらから各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。