JP6368352B2 - 神経変性疾患および神経炎症性疾患を処置するためのポリシアル酸および使用 - Google Patents

神経変性疾患および神経炎症性疾患を処置するためのポリシアル酸および使用 Download PDF

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Description

本発明は、低分子量ポリシアル酸、医薬品としての使用、特に中枢神経系(CNS)および網膜の病理学的過程の処置における使用に関する。
中枢神経系(CNS)の神経変性疾患の治療的療法は存在していないため、ほとんどの処置は対症療法である。上記疾患には、数々のCNS疾患と、CNSの特殊化した部分である網膜の疾患とが包含される。疾患および関連保険問題のWHO分類(ICD−10)によれば、これらの疾患には、変性性運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症;ICD−10:G12.2)、パーキンソン病(ICD−10:G20)、アルツハイマー病(ICD−10:G30)、多発性硬化症(ICD−10:G35)ならびに黄斑および後極の変性(老人性黄斑変性症)(ICD−10:H35.3)が包含される。
数々のデータから、組織マクロファージによって放出された炎症促進性サイトカインが介在する全身性炎症は、動物モデルおよびヒト疾患において神経変性の進行を持続させる原因要素であることが実証されている。また、ミクログリアも全身性炎症のトランスデューサーや神経変性のエフェクターとして作用するかもしれないと考えられていた。また、感染によって発生する全身性炎症は、多発性硬化症およびアルツハイマー病の進行を引き起こす可能性があることも公知である。同様に、炎症過程は、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症のような神経変性疾患の進行に寄与する。神経変性疾患の根本的な原因は極めて多様であるが、驚くべきことに、ミクログリアの独特な炎症性プロファイルによって、ニューロン損傷の増幅が集中するという強力な証拠がある。マクロファージおよびミクログリアの炎症促進性サイトカイン、特に腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)およびスーパーオキシドなどの活性酸素種は、炎症組織およびニューロン損傷の駆動力として作用すると推測することができるが、神経変性疾患における損傷を予防するには限られた療法の選択肢しか現在利用可能ではない。したがって、現在進行中の罹患組織における局所損傷は、なお主要な課題である。
オリゴシアル酸およびポリシアル酸は、シアル酸が繰り返されるホモポリマーである。シアル酸は、ノイラミン酸のN−またはO−置換誘導体である。ポリシアル酸(PSA)は糖タンパク質で見出されており、所定の病原菌の莢膜多糖の構成要素である。細菌において、PSAのシアル酸単量体は、2.8または2.9結合で連結して、ポリシアル酸を形成することができる。ヒトにおいて、PSAのシアル酸単量体は、2.8結合で連結して、5位でアセチル化される。5位でN−アセチル化されたシアル酸単量体は通常、Neu5Acと略記される。中性pHでは、α(2→8)結合は高度にフレキシブルな直鎖状分子をもたらし、一方で低いpHでは、ポリマーの化学構造によりラクトンが形成され、その結果としてより硬い構造が生じる。ポリシアル酸中の単量体の数は200に達する場合があり、一方で大腸菌(E.coli)K1における内因性PSA鎖の平均鎖長は、約150から180個の単量体であることが見出されている。哺乳動物の糖タンパク質である神経細胞接着分子(NCAM)におけるPSA鎖のほとんどは、様々な程度の数のシアル酸単量体からなる。ヒト神経芽細胞腫の糖タンパク質において、繰り返すことで形成されたポリシアル酸の鎖が観察されている。
US2009/0010944は、1つまたは複数の脱N−アセチル残基が豊富な非還元末端を有する単離されたアルファ(2→8)または(2→9)オリゴシアル酸誘導体を生産する方法、ならびに大腸菌K1および髄膜炎菌(N.meningitis)の細菌感染の検出に使用し、がんを診断および処置する方法を開示している。さらに、ポリシアル酸は、タンパク質の薬物動態を改善するのに使用されてきた。したがって、20kDaから40kDaの間の相対的に高い分子量を有するポリシアル酸を組換えタンパク質に結合させて、それらの安定性と薬物動態を改善してきた。例えば、Xenetic Biosciences PLC、London、UKは、組換え第VIII因子などのタンパク質の半減期を延長させて、安定性を改善するために、天然ポリマーであるポリシアル酸を使用する技術を市販していた。
神経変性疾患の複雑なメカニズムの詳細がますます確認されつつあるにもかかわらず、化合物が、炎症促進性の特徴を示す可能性があるのか、または抗炎症性の特徴を示す可能性があるのかを予測することはほぼ不可能である。
これは、例えば神経変性疾患における活性なエフェクターとしてミクログリアが関与するが、抗炎症性作用も引き起こす可能性があるような場合にはなおさらである。
US2009/0010944
したがって、本発明の根底にある目的は、神経変性および炎症性疾患の処置における使用に適した化合物を提供することであった。
この課題は、以下に示される一般式(1):
ポリ−(α(2→8または2→9)Neu5Ac)(1)
[式中、
Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
nは、14から26の範囲の整数である]
に係る分岐状もしくは非分岐状の遊離のもしくはグリコシド結合したポリシアル酸および/またはそれらの医薬的に許容される塩によって解決される。
さらに、本発明は、活性成分としてポリシアル酸(1)を含む医薬組成物に関し、加えて、医薬品としての使用、特に中枢神経系の変性疾患、脱髄疾患および炎症性疾患、ならびに変性性または炎症性の網膜疾患の処置における使用に関する。
本発明に係る用語「ポリシアル酸」は、10個より多くの単量体を含むシアル酸のホモポリマーを指す。一方でオリゴシアル酸は、少数の単量体を含み、典型的には2から10個の間の単量体を含む。
驚くべきことに、一般式(1)に係るポリシアル酸は、中枢神経系(CNS)および網膜の病理学的過程の予防および/または処置に使用できることが見出された。約4.3から8kDaの間の分子量または14から26の間の単量体鎖長を有する低分子量ポリシアル酸がそれぞれ、細胞の生存能力に干渉することなく、ミクログリアおよび組織マクロファージの炎症促進性メディエータ産生を低減させることが見出された。対照的に、長さが2から6個の間の単量体を有する2.8結合シアル酸は影響を示さなかったが、より高分子量(>12kDa)のポリシアル酸は、ヒトミクログリアの細胞の生存能力を弱めた。したがって、ポリシアル酸誘導体(1)は、炎症性のミクログリアまたはマクロファージが関与する疾患を処置または予防するのに好適である。ポリシアル酸(1)は、ミクログリアまたはマクロファージによる炎症促進性サイトカインまたは活性酸素種の産生を防止することができると考えられる。特別な理論に縛られるつもりはないが、ポリシアル酸(1)は、ミクログリアおよび所定の組織マクロファージで発現されるシアル酸結合免疫グロブリン様レクチン−11(Siglec−11)と命名されたヒト系統特異的膜タンパク質に結合する可能性があると考えられる。
単糖のN−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)は、IUPAC命名法に従って5−アセトアミド−2,4−ジヒドロキシ−6−(1,2,3−トリヒドロキシプロピル)オキサン−2−カルボン酸と表される。ポリシアル酸多糖のNeu5Ac単量体単位は、グリコシド結合で一緒に結合されている。Neu5Ac単量体を(2→8)または(2→9)結合で連結させて、ポリシアル酸分子を形成することができる。ポリシアル酸(1)は、2.8結合された単量体、または2.9結合された単量体、または例えば交互にもしくは無作為な順番で2.8結合され2.9結合された単量体を包含していてもよい。ポリシアル酸(1)は、ポリ(2.8結合)またはポリ(2.9結合)ポリシアル酸であってもよく、好ましくはポリ(2.8結合)ポリシアル酸である。好ましくは、Neu5Ac単量体は、α(2→8)結合によって連結されている。好ましくは、ポリシアル酸は、ポリ−(α(2→8)Neu5Ac)ポリシアル酸である。
好ましい実施形態において、nは、16から24の範囲の整数である。さらに好ましい実施形態において、nは、18から20の範囲の整数である。有利なことに、このような鎖長のポリシアル酸は、中枢神経系および網膜の変性疾患の処置において優れた影響を有することと、迅速に腎臓で尿に濾されることなく、さらに三次構造を形成せずにその直鎖状構造を維持する可能性とを兼ね備えている可能性がある。
ポリシアル酸は、分岐状または非分岐状のポリマーであり得る。本発明に係る用語「非分岐」は、Neu5Ac単量体の直鎖状配列を含む直鎖ポリシアル酸ポリマーを意味すると理解されるものとする。本発明に係る用語「分岐状」は、1つまたは複数の置換基である側鎖または分岐鎖を有する主鎖で構成されるポリシアル酸ポリマーを意味すると理解されるものとする。好ましくは、ポリシアル酸は、非分岐状ポリマーである。好ましい実施形態において、ポリシアル酸は、α(2.8結合)Neu5Ac単量体で構成される直鎖状ポリマーを形成する。2.8結合によって連結されたNeu5Ac単量体は、ポリシアル酸のヒト形態に相当する。医薬品として使用するために、有利には、ヒト形態が、ポリシアル酸の最もよく適合し有効な形態を提供すると予想される。単量体の鎖長が14から26個の間であるα(2.8結合)Neu5Ac単量体で構成される直鎖状ポリマーは、その標的に対する優れた結合能力を付与できる高度にフレキシブルな分子をもたらす。
ポリシアル酸であるポリ−(α(2→8)Neu5Ac)(1)は、遊離であってもよいし、またはグリコシド結合していてもよい。本発明に係る用語「グリコシド結合した」は、さらなる糖分子、またはアミノ酸などのグリコシド結合を形成することができる他の分子に結合しているポリシアル酸を意味すると理解されるものとする。好ましくは、ポリシアル酸は、遊離の多糖の形態である。本発明に係る用語「遊離」は、さらなる糖または他の分子に結合していないが、ポリシアル酸分子であるポリ−(α(2→8)Neu5Ac)(1)それ自身であるポリシアル酸を意味すると理解されるものとする。
さらなる実施形態において、ポリシアル酸は、グルコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、フコース、マンノースおよびキシロースからなる群から選択される少なくとも1つの糖にグリコシド結合していてもよい。本発明に係る用語「糖」は、単糖および二糖を意味すると理解されるものとし、これらは一般的に糖と称される。有利には、グルコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、フコース、マンノースおよびキシロースが、ヒトの体内で不可欠の糖である。ポリシアル酸は、1つの末端糖分子を含んでいてもよいし、または2つまたはそれより多くの糖分子にグリコシド結合していてもよい。さらに、ポリシアル酸または糖がグリコシド結合したポリシアル酸は、1つまたは複数のアミノ酸にグリコシド結合して糖タンパク質を形成していてもよい。1つまたは複数の糖分子またはアミノ酸にグリコシド結合したポリシアル酸は、薬物動態の改善をもたらすことができる。本発明に係る用語「アミノ酸」は、アルファアミノ酸、すなわちアルファ炭素と呼ばれる同じ炭素に結合したアミン官能基とカルボキシル官能基の両方を含有する分子を意味すると理解されるものとする。好ましいアミノ酸は、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、バリン、イソロイシン、シトシン、メチオニン、ヒスチジンおよび/またはプロリンからなる群から選択される天然に存在するアミノ酸である。
またポリシアル酸の医薬的に許容される塩も好適である。用語「医薬的に許容される塩」は、医薬的に許容される非毒性の塩基または酸から調製された塩を指す。対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む医薬的に許容される非毒性の塩基から都合よく調製することができる。無機塩基から得られた好ましい塩としては、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩が挙げられる。医薬的に許容される非毒性の有機塩基から得られた塩としては、第一、第二および第三アミンの塩、加えて環状アミンの塩が挙げられる。好ましくは、医薬的に許容される塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩からなる群から選択される。
本発明のポリシアル酸は、天然源または合成源から得ることができる。前駆体として単糖単位を使用することによるオリゴ糖および多糖の具体的な合成方法は当業者に周知である。さらにポリシアル酸は、食物源からも得ることができる。好ましくは、オリゴシアル酸は、例えば大腸菌K1などの細菌由来のポリシアル酸ポリマーから入手可能である。大腸菌K1における内因性ポリシアル酸鎖の平均鎖長は、約150から180個の単量体であることが見出されている。大腸菌によって産生された精製ポリシアル酸は市販されており、例えばポリシアル酸前駆体を加熱することによるフラグメント化に使用することができる。次いで反応混合物を、標準的な方法によって、例えば透析、それに続く高速液体クロマトグラフィーを使用したポリシアル酸フラグメントを含む望ましい画分の分離によって精製することができる。
本発明のさらなる態様は、以下に示される一般式(1):ポリ−(α(2→8または2→9)Neu5Ac)(1)[式中、Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、nは、14から26の範囲の整数である]に係るポリシアル酸および/またはそれらの医薬的に許容される塩を含む多糖組成物であって、該組成物中のポリシアル酸のフラグメントは、約4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、約4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、多糖組成物に関する。
重量パーセント、重量%またはwt.%は、同義語であり、フラグメントの重量をフラグメントの総重量で割って100を掛けたものとしてのフラグメントの濃度を指す。フラグメントの重量%(wt.%)は、別段の規定がない限り、フラグメントの総重量に基づいて計算される。組成物の全てのフラグメントの総量は100wt.%を超えない。
ポリシアル酸の「平均分子量」という用語は、本出願において、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されるようなポリシアル酸フラグメントの平均分子量を意味すると理解される。ポリシアル酸フラグメントの分子量は、本出願で説明されているように、規定の分子量を有する標準物質と比較して検出することができる。ポリシアル酸の単量体の数は、例えば陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定することができる。
一般的に、ポリマーの鎖長は、単量体単位で、分子量として、またはその両方で示すことができる。ポリシアル酸多糖を参照すれば、約4.3kDaから8kDaの間の分子量は、n=14個の単量体からn=26個の単量体からなる鎖長に対応し、一方で約4.9kDaから7.4kDaの間の分子量は、n=16個の単量体からn=24個の単量体からなる鎖長に対応する。
このようなポリシアル酸(1)を含む多糖組成物において、分子量の最高点は、約5kDaから6.5kDaであり得る。
ポリシアル酸(1)は、ポリ(2.8結合)またはポリ(2.9結合)ポリシアル酸であってもよく、好ましくはポリ(2.8結合)ポリシアル酸である。好ましくは、Neu5Ac単量体は、α(2→8)結合によって連結されている。好ましくは、ポリシアル酸は、ポリ−(α(2→8)Neu5Ac)ポリシアル酸である。好ましい実施形態において、nは、16から24の範囲の整数である。さらに好ましい実施形態において、nは、18から20の範囲の整数である。好ましくは、ポリシアル酸は、非分岐状ポリマーである。好ましい実施形態において、ポリシアル酸は、α(2.8結合)Neu5Ac単量体で構成される直鎖状ポリマーを形成する。好ましくは、ポリシアル酸は、遊離の多糖の形態である。さらなる実施形態において、ポリシアル酸は、グルコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、フコース、マンノースおよびキシロースからなる群から選択される少なくとも1つの糖にグリコシド結合していてもよい。さらに、ポリシアル酸または糖がグリコシド結合したポリシアル酸は、1つまたは複数のアミノ酸にグリコシド結合して糖タンパク質を形成していてもよい。
本発明のさらなる態様は、医薬品として使用するための、以下に示される一般式(1):
ポリ−(α(2→8または2→9)Neu5Ac)(1)
[式中、
Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
nは、14から26の範囲の整数である]
に係る分岐状もしくは非分岐状の遊離のもしくはグリコシド結合したポリシアル酸および/もしくはそれらの医薬的に許容される塩または該ポリシアル酸(1)を含む多糖組成物であって、該ポリシアル酸のフラグメントは、約4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、約4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下が、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、ポリシアル酸または多糖組成物に関する。
一般式(1)に係るポリシアル酸は、ミクログリアまたはマクロファージによる炎症促進性サイトカインおよび活性酸素種の産生を防止することが可能であり、したがって、CNSおよび網膜の病理学的過程の予防および/または処置に関して有望な化合物の代表である。
特に、本発明は、中枢神経系の変性疾患、脱髄疾患および炎症性疾患、ならびに変性性または炎症性の網膜疾患からなる群から選択される疾患の治療的および/または予防的処置で使用するための、以下に示される一般式(1):
ポリ−(α(2→8または2→9)Neu5Ac)(1)
[式中、
Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
nは、14から26の範囲の整数である]
に係る分岐状もしくは非分岐状の遊離のもしくはグリコシド結合したポリシアル酸および/もしくはそれらの医薬的に許容される塩または該ポリシアル酸(1)を含む多糖組成物であって、該ポリシアル酸のフラグメントは、約4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、約4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、ポリシアル酸または多糖組成物に関する。
用語「予防的処置」は、臨床的症状もしくは障害の発生を予防もしくは阻害すること、または発症する前に明らかな臨床的症状もしくは障害の段階の発症を遅らせることのいずれかを指す。本発明に係る用語「予防的処置」は、ポリシアル酸は、疾患の症状が現れる前に適用してもよいことを意味すると理解されるものとする。特に、用語「予防的処置」は、薬物療法を意味すると理解されるものとする。本発明に係る化合物を、予防的処置で使用することが好ましい可能性がある。
驚くべきことに、ポリシアル酸(1)およびポリシアル酸(1)を含む多糖組成物はそれぞれ、ミクログリアの抗炎症療法において有効な可能性があることが見出された。特に、ポリシアル酸(1)は、黄斑変性症(macula degeneration)の動物モデルで網膜のミクログリアの活性化を防止することにおいて有効であることを示した。したがって、ポリシアル酸(1)は、変性性または炎症性の網膜疾患の治療的および予防的処置に新規のアプローチを提供する。
本発明に係るポリシアル酸のさらなる特定の利点は、ポリシアル酸(1)は、多発性硬化症の動物モデルで疾患の症状を予防することにおいて有効であることを示したことである。特に、これまでシナプス、軸索またはニューロンの喪失を防止する満足のゆく療法がなかったために、ポリシアル酸(1)は、中枢神経系の変性疾患、脱髄疾患および炎症性疾患の処置における、新しく極めて望ましい使用可能性を提供する。
中枢神経系の変性疾患、脱髄疾患および炎症性疾患、ならびに変性性または炎症性の網膜疾患は、ミクログリアもしくは組織マクロファージによるTNF−アルファ産生またはミクログリアによる活性酸素種産生と関連しており、ポリシアル酸(1)は、これらを防止することができると考えられる。特別な理論に縛られるつもりはないが、上記疾患は、Siglec−11を発現するミクログリアまたは組織マクロファージに関連する可能性があると考えられる。
好ましい実施形態において、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、軽度認知機能障害、レヴィ小体型認知症、パーキンソン病および睡眠時異常行動からなる群から選択される。本発明に係る用語「筋萎縮性側索硬化症」(ICD−10:G12.2)は、予後不良を伴う進行性変性疾患および炎症性の運動ニューロン疾患を意味すると理解されるものとする。用語「パーキンソン病」(ICD−10:G20)は、主としてドーパミン作動性ニューロンに作用し錐体外路障害および運動障害を引き起こす進行性の神経変性疾患を指す。本発明に係る用語「睡眠時異常行動」(ICD−10:F51.3/F51.4)は、パーキンソン病の前駆徴候として頻繁に起こる睡眠中の異常で不自然な行動、挙動、感情、知覚、および夢を伴う睡眠障害を意味すると理解されるものとする。本発明に係る用語「アルツハイマー病」(ICD−10:G30)は、細胞外のアミロイド−ベータプラークおよび過リン酸化タウで構成される細胞内神経原線維変化に関連する中枢神経系の変性疾患を指す。用語「軽度認知機能障害」(ICD−10:G31.84)は、しばしば記憶障害を伴い、アルツハイマー病の前駆段階として頻繁に見られる認知障害を指す。用語「レヴィ小体型認知症」(ICD−10:G31.8)は、アルツハイマー病とパーキンソン病の両方と密接に関連する認知症のタイプを指す。
ポリシアル酸(1)が、ヒトニューロンおよびヒトミクログリアの共培養系で神経毒性を防止することにおいて有効であったことを示すことができた。さらに、ポリシアル酸(1)は、アルツハイマー病に関連するアミロイド−ベータにより誘導されたヒトミクログリアにおいてスーパーオキシド放出を防止したことを示すことができた。さらに、ポリシアル酸(1)は、食作用およびヒトミクログリアの活性酸素種産生を防止し、パーキンソン病のヒトミクログリア−ニューロン共培養モデルにおけるニューロンへの傷害を防止したことを示すことができた。
好ましい実施形態において、中枢神経系の炎症性疾患は、敗血症性脳症、精神障害の併発を伴う重症敗血症、またはしばしばアルツハイマー病の進行に関連する神経変性疾患に関連する敗血症エピソード(septic episodes)からなる群から選択される。本発明に係る用語「敗血症性脳症」または「重症敗血症」または「敗血症エピソード」は、微生物感染または微生物の毒素により誘発される体の全身性炎症反応として理解されるものとする(ICD−10:R65)。重症敗血症は、譫妄および永続的な認知障害に至る可能性がある脳症を伴うことが多い。ポリシアル酸(1)は、細菌毒素であるリポ多糖の繰り返しの適用を経た慢性的な敗血症様状態により誘発される炎症促進性反応を防止することにおいて有効であったことを示すことができた。
好ましい実施形態において、変性性または炎症性の網膜疾患は、加齢性黄斑変性症、遺伝性網膜疾患を含む網膜変性、ブドウ膜炎、および糖尿病性網膜症からなる群から選択される。本発明に係る用語「老人性」または「加齢性黄斑変性症」は、しばしばドルーゼンに関連する黄斑および後極の変性を伴う網膜の萎縮性または滲出性(ICD−10:H35.3)の疾患を意味すると理解されるものとする。加齢性黄斑変性症は、色彩および鮮明な視野に必要な網膜の特殊化した部分である黄斑の変性疾患である。この疾患は、活性化ミクログリアが関与する。さらに、新生血管は、漏出の増加およびドルーゼンの沈着を伴う萎縮した網膜色素上皮を示す。加齢性黄斑変性症は、網膜ニューロンの顕著な喪失を引き起こすことから、法的盲の主な原因である。有利なことに、ポリシアル酸(1)は、黄斑変性症の動物モデルにおいて、網膜のミクログリアの活性化および炎症関連の血管漏出を防止することにおいて特に有効であることを示した。本発明に係る用語「ブドウ膜炎」は、免疫系の過剰反応によって引き起こされるブドウ膜の慢性炎症である「自己免疫性ブドウ膜炎」(ICD−10:H20)を意味すると理解されるものとし、これは、ブドウ膜路および網膜のあらゆる部分に影響する可能性がある。本発明に係る用語「糖尿病性網膜症」(ICD−10:H36)は、網膜損傷に至る、網膜の糖尿病性および炎症性の微小血管変性と理解されるものとする。
好ましい中枢神経系の脱髄疾患は、多発性硬化症である。本発明に係る用語「多発性硬化症」(ICD−10:G35)は、ミエリンタンパク質に対する自己免疫の攻撃によって引き起こされ、最終的に軸索変性およびニューロンの喪失に至る中枢神経系の脱髄疾患を意味すると理解されるものとする。本発明に係る用語「デビック病」(ICD−10:G36.0)は、グリアの抗原に対する自己免疫の攻撃によって引き起こされ、最終的に軸索変性およびニューロンの喪失に至る視神経および脊髄の脱髄疾患を意味すると理解されるものとする。したがって、多発性硬化症およびデビック病はまた、中枢神経系の脱髄疾患とみなされる場合もある。有利なことに、ポリシアル酸(1)は、多発性硬化症の動物モデルで臨床的な症状を改善することにおいて有効であることを示した。
ポリシアル酸(1)は、ポリ(2.8結合)またはポリ(2.9結合)ポリシアル酸であってもよく、好ましくはポリ(2.8結合)ポリシアル酸である。好ましくは、Neu5Ac単量体は、α(2→8)結合によって連結されている。好ましくは、ポリシアル酸は、ポリ−(α(2→8)Neu5Ac)ポリシアル酸である。好ましい実施形態において、nは、16から24の範囲の整数である。さらに好ましい実施形態において、nは、18から20の範囲の整数である。好ましくは、ポリシアル酸は、非分岐状ポリマーである。好ましい実施形態において、ポリシアル酸は、α(2.8結合)Neu5Ac単量体で構成される直鎖状ポリマーを形成する。好ましくは、ポリシアル酸は、遊離の多糖の形態である。さらなる実施形態において、ポリシアル酸は、グルコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、フコース、マンノースおよびキシロースからなる群から選択される少なくとも1つの糖にグリコシド結合していてもよい。さらに、ポリシアル酸またはグリコシド結合した糖が介在するポリシアル酸は、1つまたは複数のアミノ酸にグリコシド結合して糖タンパク質を形成していてもよい。
ポリシアル酸(1)は、培養されたヒトニューロンにおいて神経毒性を示さなかったことを示すことができた。有利なことに、ポリシアル酸(1)は、全身適用後に血液脳関門を通過して中枢神経系の実質に到達することが可能である。したがって、ポリシアル酸(1)は、神経変性疾患療法で使用するのに好適な薬物動態および薬物毒性を示す。
本発明のさらなる態様は、活性成分として本発明に係るポリシアル酸(1)またはポリシアル酸(1)を含む多糖組成物、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。本医薬組成物は特に、中枢神経系の変性疾患、脱髄疾患および炎症性疾患、ならびに変性性または炎症性の網膜疾患からなる群から選択される疾患の治療的および/または予防的処置での使用に適している。
製剤用担体は、例えば、固体、液体、または気体であってもよい。好適な担体およびアジュバントは固体または液体であってもよく、医薬製剤の配合技術で一般的に採用される物質に相当するものであってもよい。固体担体の例としては、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸が挙げられる。液体担体の例は、液糖、落花生油、オリーブ油、および水である。気体状の担体の例としては、二酸化炭素および窒素が挙げられる。医薬組成物は、単位投薬形態で都合よく提供することができ、さらに、滅菌条件下で、薬学分野で周知の標準的な製薬技術を使用して調製することができる。
医薬組成物は、経口、皮膚、直腸、局所、および非経口投与に好適である可能性がある。好ましくは、医薬組成物は、局所的な皮膚または眼への適用と同様に、非経口、経口または直腸経路を介して適用される。非経口投与としては、特に、硝子体内注射、皮下注射、静脈注射または潅流が挙げられる。注射用途または潅流に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液または分散液を包含する。さらに、微生物の増殖を防止するために、保存剤が包含されていてもよい。
好ましい実施形態において、医薬組成物は、非経口投与のための滅菌注射用溶液として製剤化される。好ましくは、医薬組成物は、硝子体内注射、皮下注射、静脈注射または潅流として投与される。
また本発明は、医薬品を製造するための、以下に示される一般式(1):
ポリ−(α(2→8または2→9)Neu5Ac)(1)
[式中、
Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
nは、14から26の範囲の整数である]
に係る分岐状もしくは非分岐状の遊離のもしくはグリコシド結合したポリシアル酸および/もしくはそれらの医薬的に許容される塩または該ポリシアル酸(1)を含む多糖組成物の使用であって、該ポリシアル酸のフラグメントは、約4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、約4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、使用にも関する。
本発明は、特に、中枢神経系の変性疾患、脱髄疾患および炎症性疾患、ならびに変性性または炎症性の網膜疾患からなる群から選択される疾患の治療的および/または予防的処置のための医薬品を製造するための、以下に示される一般式(1):
ポリ−(α(2→8または2→9)Neu5Ac)(1)
[式中、
Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
nは、14から26の範囲の整数である]
に係る分岐状もしくは非分岐状の遊離のもしくはグリコシド結合したポリシアル酸および/もしくはそれらの医薬的に許容される塩または該ポリシアル酸(1)を含む多糖組成物の使用であって、該ポリシアル酸のフラグメントは、約4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、約4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、使用に関する。
本発明のさらなる態様は、中枢神経系の変性性、脱髄性または炎症性疾患、および変性性または炎症性の網膜疾患からなる群から選択される疾患を処置する方法であって、以下に示される一般式(1):
ポリ−(α(2→8または2→9)Neu5Ac)(1)
[式中、
Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
nは、14から26の範囲の整数である]
に係る分岐状もしくは非分岐状の遊離のもしくはグリコシド結合したポリシアル酸および/もしくはそれらの医薬的に許容される塩または該ポリシアル酸(1)を含む多糖組成物の治療有効量を必要とする対象に投与することを含み、該ポリシアル酸のフラグメントは、約4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、約4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、方法に関する。
用語「治療有効量」は、本明細書では、対象において臨床的に有意な状態の改善を引き起こすのに十分な量または用量を意味するものとして使用される。
特に他の定義がない限り、本明細書で使用される専門用語や科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
以下に示す実施例は、本発明をより詳細に例示するのに役立つが、それらの限定を構成するものではない。
ポリシアル酸(PSA)フラグメントの特徴付けを示す図である。図1Aは、分取用HPLC後の様々な画分を表した、加熱処置によるフラグメント化後の抽出物PSA−180のポリアクリルアミドゲルを示しており、図1Bは、抽出物PSA−180ならびにプールした画分2から6(PSA−20)および26から30(PSA−60)のポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す図である。 Siglec−11を発現するヒトミクログリアにおける低分子量PSA−20の毒性を決定した結果を示す図である。図2Aは、フローサイトメトリーによる、無関係のアイソタイプ抗体(アイソタイプコントロールAb)に対する、ヒトミクログリア株におけるSiglec−11(Siglec−11Ab)の細胞表面発現を示す。図2Bは、様々な濃度のモノシアル酸、オリゴシアル酸およびポリシアル酸で24時間処置した後に、MTTアッセイによって決定され、細胞数に正規化した細胞の生存能力を示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。***p<0.001、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。 リポ多糖(LPS、1μg/ml)および様々な濃度のモノシアル酸、オリゴシアル酸およびポリシアル酸で24時間処置した後の、ヒトミクログリア細胞株のTNF−アルファに関する遺伝子転写物を示す図である。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。 様々な濃度の低分子量ポリシアル酸(PSA−20;PSAと表示)および線維性アミロイドβ1−42(Aβ、10μM)の添加で処置した、ヒトミクログリア細胞のスーパーオキシド放出(DHEによって検出した場合)を示す図である。図4Bは、アミロイドβ1−42(コントロール、黒色のバー)で処置した後のミクログリアの、追加でトロロックスおよびSOD1で処置したミクログリアと比較した相対的なスーパーオキシド放出を示す。図4Cは、Iba1に対する抗体で染色されたヒトミクログリア細胞株と、βチューブリンIIIに対する抗体で染色されたヒト人口多能性幹細胞由来ニューロンとの共培養を示す。図4Dは、低分子量ポリシアル酸(PSA−20;PSAと表示)で処置したヒトミクログリア−ニューロン共培養における神経毒性に関する尺度としての、相対的な軸索突起の長さを示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。**p<0.01、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図4Eは、線維性アミロイドβ1−42(Aβ)またはPSA−20およびAβで処置して、ミクログリアのマーカータンパク質であるIba1およびニューロンのマーカータンパク質であるb−チューブリン−IIIに対する抗体で二重免疫染色した、ヒトミクログリアおよびニューロンを48時間共培養した細胞を示す。スケールバー:100μm。図4Fは、ヒトニューロンと、48時間後にミクログリア、アミロイドβ1−42、またはミクログリアおよびアミロイドβ1−42を添加した後のニューロンとの相対的な軸索突起の長さを示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図4Gは、ニューロンの免疫染色により決定した場合のミクログリア−ニューロン共培養物中のヒトニューロンの相対的な軸索突起の長さを示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。 リポ多糖によって誘導されたSiglec−11を発現するヒトマクロファージの腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)産生に及ぼす低分子量PSA−20の影響を示す図である。図5Aは、フローサイトメトリーによる、無関係のアイソタイプ抗体(アイソタイプコントロールAb)に対するヒトマクロファージ株THP−1におけるSiglec−11(Siglec−11Ab)の細胞表面発現を示す。図5Bは、リポ多糖(LPS)によりミクログリアを活性化して様々な濃度のPSA−20での処置した後のTNF−アルファの遺伝子転写を、qRT−PCRによって決定してGAPDHに正規化したもの示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。***p<0.001、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。 低分子量PSA−20での処置による、ヒト化Siglec−11トランスジェニックマウスの脳における炎症促進性サイトカインの低減を示す図である。図6Aは、処置スキームを示し、図6Bは、脳により決定した場合のTNF−アルファに関する遺伝子転写物を示し、図6Cは、脾臓組織により決定した場合のTNF−アルファに関する遺伝子転写物を示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.01、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。 黄斑変性症の動物モデルにおけるSiglec−11を発現する網膜のミクログリアおよび血管漏出に及ぼす低分子量PSA−20の影響を示す図である。図7Aは、ヒト網膜におけるSiglec−11の遺伝子転写物のRT−PCRによる検出を示す。図7Bは、ドルーゼン様組織片(神経組織片(neural debris))で刺激した後のミクログリアのスーパーオキシド放出に及ぼすPSA−20(PSA)の影響を示す。図7Cは、ヒト網膜色素上皮細胞から得られたドルーゼン様組織片およびトロロックスコントロールで刺激した後の、ミクログリアのスーパーオキシド放出に及ぼすPSA−20の影響を示す。データは、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMとして示される。ANOVAと後のボンフェローニで、p≦0.05;**p≦0.01。図7Dは、ヒト化Siglec−11トランスジェニックにおいて、PSA−20(3μg/眼)またはコントロール媒体を硝子体内注射した後の、レーザー損傷から48時間後におけるIba−1に対する免疫染色によって決定した場合の総ミクログリアに対するアメーバ状活性化ミクログリアの関係を示す。図7Eは、ヒト化Siglec−11トランスジェニックマウスにPSA−20(3μg/眼)またはコントロール媒体を硝子体内注射した後のレーザー損傷から48時間後における血管漏出を示す。図7Fは、フルオレセイン血管撮影法を示し、図7Gは、実験グループ当たりの網膜の数を増加させた(n≧8)、ヒト化Siglec−11トランスジェニックおよびコントロールマウスにおける、網膜のレーザー損傷およびPSA−20(3μg/眼)またはコントロール媒体の硝子体内注射から48時間後における血管漏出の分析を示す。図7BおよびDでは、データは、平均±SEMとして示され、図7Eおよび図7Gでは平均±SDとして示される。p<0.05、**p<0.01。 PSA−20またはコントロール媒体で処置した実験的自己免疫性脳脊髄炎のヒト化Siglec−11トランスジェニックマウスおよびコントロールマウスの臨床スコアを示す図である。図8Aは、免疫化の日から25日目までの、PSA−20またはコントロール媒体のいずれかで処置したマウスの平均±SDとしての臨床スコアを示す。図8Bは、処置の1日目から25日目までの、PSA−20またはコントロール媒体のいずれかで処置したSiglec−11トランスジェニックおよびコントロールマウスの累積的な疾患スコアを示す。データは、平均±SEMとして示される。p<0.05、**p<0.01、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。 パーキンソン病モデルにおけるPSA−20の影響を示す図である。図9Aは、左側に、未処置またはPSA−20(PSA)処置のいずれかの、LPSで活性化されたミクログリア(活性化ミクログリア)を含むニューロンの共焦点レーザー走査画像を示す。スケールバー:100μm。図9Aは、右側に、定量化した相対的な軸索分岐(neurite branches)の長さを示す。データは、平均±SEMとして示される。***p<0.001、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図9Bは、左側に、神経組織片を取り込んだミクログリア細胞の共焦点3D再構成を示し、右側に、0.15μM、0.5μMまたは1.5μMのPSA20で処置したミクログリア細胞に関する食作用の、未処置コントロール細胞と比較したパーセンテージを示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図9Cは、左側に、PSA−20の前処置有りまたは無しでの、神経組織片によって引き起こされたミクログリアの、未処置細胞(UT)と比較した相対的なスーパーオキシド放出を示す。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図9Cは、右側に、PSA−20の前処置有りまたは無しでの、トロロックスおよびSOD1で処置した細胞およびコントロール細胞に関する神経組織片による、未処置細胞(UT)と比較した相対的なスーパーオキシド放出を示す。 PSA−20の薬物動態および薬物毒性を示す図である。図10Aは、様々な濃度のPSA−20で24時間処置した際のヒトニューロンの、未処置のコントロール(0)と比較した細胞生存能力を示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.5、ANOVA、その後、TamhaneのT2。図10Bは、1μg/mlのLPSおよび様々な濃度のPSA−20で24時間処置した後のヒトミクログリア細胞株および未処置のコントロール(UT)のTNF−αに関する遺伝子転写物を示す。データは、平均±SEMとして示される。p<0.05、**p<0.01;***p<0.001;ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図10Cは、適用前ならびに適用から0.5、1、2、4および8時間後の血清および脳中のPSA−20の量(μg/ml)を示す。
ポリシアル酸のフラグメント化および分離
細菌によって産生され数々の手法により精製された市販の精製α2.8−ポリシアル酸(250mg、およそ70kDaの分子量を有するポリシアル酸、UK、Lipoxen、ここではPSA−180と命名)を、フラグメント化に使用した。分取工程において、サンプルを80℃で30分間加熱して自発的な加水分解を誘導した。次いでPSAを53mlのHRPセファロース陰イオン交換カラム(GE−Healthcare)で処理し、205/280nmでのUV光度検出器(Pharmacia Biotech)に連動させ、溶媒として流速4ml/分の2MのNHHCO緩衝液を利用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムによって分離した(表1)。それぞれ体積8mlを有する90本の試験管に流出液を収集した。連続3本の試験管をそれぞれプールして、30画分のPSA−180を得た。
Figure 0006368352
セファロース陰イオン交換カラムを用いたHPLCから得られた画分を収集した。画分2〜6をプールした(ここではPSA−20と表示)。画分26〜30をプールした(ここでPSA−60と表示)。残留した緩衝液を取り除くために、サンプルを凍結乾燥し、PBSまたは蒸留水中に溶解させた。PSA−20およびPSA−60の濃度の定量化を、チオバルビツール酸ベースの方法を用いて行った。したがって、ポリマーを単一のn−アセチルノイラミン酸(シアル酸単量体)に加水分解するために、ポリシアル酸を1MのHSOで80℃で1時間前処置した。第一の工程におけるそれぞれのサンプルの総体積は、50μl(10μlのPSAを含有する画分、加えて30μlのdHO、加えて10μlの5MのHSOで構成される)と予想される。濃度決定のために、50μl当たり濃縮形態の0〜50μgのn−アセチルノイラミン酸(ナカライテスク株式会社、日本)を含有する標準物質を調製した。標準物質および試験サンプルを、0.125MのHSO中の25mM過ヨウ素酸25μlで処置し、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション工程後、各サンプルに20μlの2%亜ヒ酸ナトリウム溶液(0.5NのHCl中)を添加し、過量の過ヨウ素酸塩を低減させた。室温で2分後、サンプルに、200μlの2−チオバルビツール酸(0.1M、pH9)を加えた。その後、加熱工程(99℃で7.5分間)を行ったところ、赤色の複合体の形成が起こった。溶液を氷上で5分間冷却し、その後、500μl/サンプルの酸性のブタノール(ブタン−1−オールに5%の12NのHClを加える)と共に振盪した。高速の遠心分離により、相分離を促進した。カラフルな上部の相の強度を、スペクトロメーターにより549nmで測定した。その後、n−アセチルノイラミン酸標準物質に基づき定量化を行った。
分析のために、PSA−180および別個の画分を、20%ポリアクリルアミドゲル(全成分ともRoth GmbHより)にローディングして、130Vでの電気泳動により4時間かけて分離した。「ステインオール」溶液(Roth GmbH)によりゲルを一晩染色し、その後蒸留水で洗浄した。図1Aに、HPLCでの分離前および分離後のフラグメント化したPSA−180のポリアクリルアミドゲルを示す。熱処置により、様々なサイズのフラグメントへのPSA−180の自発的な加水分解が起こった。図1Aに、フラグメント化したPSA−180を示す。HPLCでサイズによるフラグメントの分離を行ったところ、30画分が生じた。画分2〜6(PSA−20)および画分26〜30(PSA−60)をそれぞれプールした(図1A)。図1Bに、PSA−180、PSA−60およびPSA−20の別のポリアクリルアミドゲルを示す。元の材料であるPSA−180は、25から80kDaの間の主要な分子サイズを有していた。図1Bからわかるように、画分26〜30は、およそ14.2から34kDaの間の分子量を有していた(PSA−60)。プールした画分2〜6は、4.3から8.0kDaの間の分子量を有していた。この低分子量ポリシアル酸(PSA−20)も図1Bに示す。
4.3から8.0kDaの間の分子量のPSA−20画分は、n=14個の単量体からn=26個の単量体の鎖長に対応する。PSA−20画分中の5%未満のフラグメントは、それぞれ4.3kDaより低い分子量または8.0kDaよりも高い分子量を有していた。PSA−20画分のポリシアル酸フラグメントの平均分子量は、約4.9(n=16個の単量体)から7.4kDa(n=24個の単量体)の間であった。
大腸菌K1から調製されたポリシアル酸のフラグメント化および分離
大腸菌K1から調製されたおよそ70kDaの分子量を有する精製α2.8−ポリシアル酸(PSA−180)を使用して、Bice I.ら、Eng.Life Sci.2013、13、2号、140〜148で説明されている通りに、ポリシアル酸のフラグメント化および分離を繰り返した。分取用HPLCを使用した調製を、実施例1で説明されているようにして行った。上述したように、HPLC画分2から6をプールし、これをPSA−20と表示した。
ピークサイズ分析のために、PSA−20および別個の画分を、20%ポリアクリルアミドゲル(全成分ともRoth GmbHより)にローディングし、130Vでの電気泳動により4時間かけて分離した。標準物質として公知のサイズを有する硫酸化デキストラン(TdB Consultancy)を使用した。その後ゲルを、GoldbergおよびWarner(GoldbergおよびWarner、1997)によるプロトコールによって、ステインオール溶液(30mMトリス、25%イソプロパノール、7.5%ホルムアミドおよび0.025%(w/v)、pH8.8)を用いて室温で少なくとも2時間染色した。その後ゲルを、25%イソプロパノールを包含する蒸留水で洗浄して、バックグラウンドをクリアにした。追加の工程として、硝酸銀(12mM)溶液を使用して20分間、および現像液(脱イオン水中、0.28M炭酸ナトリウムと、0.15%(v/v))を使用して5〜30分間、ゲルを染色した。10%酢酸で現像液の反応を止めた。
サイズ分布分析のために、PSA−20をHRP−セファロース陰イオン交換カラム(GE−Healthcare)で処理し、205/280nmでのUV光度検出器(Pharmacia Biotech)に連動させた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムによって分析した。流出液を分析したところ、シアル酸単量体の数に応じた別個のピークを示した。保持時間から、ポリシアル酸の正確な長さが示された。規定の長さの6N−アセチルノイラミン酸ポリマーを有する標準物質(ナカライテスク株式会社、日本)を、コントロールとして使用した。
ゲル電気泳動から、プールした画分2から6(PSA−20)は、約4.9(n=16個の単量体)から7.4kDa(n=24個の単量体)の間の平均分子量を有していたことが確認された。分析用HPLCによって決定した場合、合計で、PSA−20画分の90重量%またはそれより多くが、n=14個からn=26個の間の単量体のポリマー鎖長を有していた。PSA−20画分のn=14個の単量体からn=26個の単量体の鎖長は、4.3から8.0kDaの間の分子量に対応する。それぞれ、PSA−20画分中のフラグメントの5重量%未満が、14個未満の単量体(4.3kDaより低い分子量)を有し、PSA−20画分中のフラグメントの5重量%未満が、26個より多くの単量体(8.0kDaより高い)を有していた。
これから、PSA−20の調製は再現可能であることが示された。後述する実験では、実施例1に従って調製されたPSA−20を使用した。
様々なシアル酸型のミクログリアに対する細胞毒性の決定
異なる鎖長を有するシアル酸型の影響を研究するために、WO2010/125110で説明されているような人口多能性幹細胞由来ヒトミクログリア株を使用した。ヒトミクログリア細胞を、5μg/mlのポリ−L−リジン(lysin)(PLL、Sigma)でコーティングした培養皿で、1%N2(Invitrogen)、0.48mMのL−グルタミン(Gibco)および任意選択で100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)が補充されたDMEM/F12培養培地を含有するN2−培地(Gibco)中で培養した。細胞を高密度で培養し、必要な場合に1:2に分けた。
図2Aからわかるように、フローサイトメトリーによって、ヒトミクログリア株でSiglec−11が検出された。フローサイトメトリー分析のために、本発明者らの研究所で人口多能性幹細胞から生成された、ヒト人口多能性幹細胞由来ミクログリア株を、ポリクローナルビオチン化ヤギ抗ヒトSiglec−11一次抗体(R&D Systems)、それに続いてストレプトアビジンコンジュゲート蛍光PE標識二次抗体(Dianova、Germany)を使用して、Siglec−11のタンパク質発現に関して染色した。コントロールサンプルをコントロール抗体と共にインキュベートした。図2Aからわかるように、フローサイトメトリー分析から、ミクログリア細胞の大部分においてSiglec−11の発現が確認された。
オリゴシアル酸およびポリシアル酸の様々な長さおよび画分の、ヒトミクログリア株に及ぼす影響を、単量体のシアル酸(SA、0.3kDaの分子量、ナカライテスク株式会社、日本)および3個の単量体からなるシアル酸(トリ−SA;0.9kDaの分子量、ナカライテスク株式会社、日本)および6個の単量体からなるシアル酸(ヘキサ−SA;1.9kDaの分子量、ナカライテスク株式会社、日本)、14から26個の間の多数のシアル酸単量体を有するPSA(PSA−20;物質の90%より多くが4.3から8kDaの間の低分子量を有するPSA)、ならびに46から110個の間のシアル酸単量体の長さを有するPSA(PSA−60;物質の90%より多くが14.2から34kDaの間の中分子量を有するPSA)での処置後の、細胞数に正規化した細胞の生存能力を決定することによって分析した。
上述したような培地中でミクログリア細胞を培養し、様々なシアル酸型を用いた培養で処置した。
様々な鎖長を有する別個のシアル酸型で処置してから24時間後に、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド、Millipore)アッセイによって細胞の生存能力(生存率)を決定し、細胞数に正規化した。生細胞における紫色のホルマザンの吸光度を、分光光度計(Perkin Elmer、Envisionマルチプレートリーダー)によって570nmの波長で決定した。図2Bからわかるように、シアル酸単量体(SA)、3(トリ−SA)または6(ヘキサ−SA)単量体を有するオリゴシアル酸、および低分子量ポリシアル酸(PSA−20)は、ミクログリア細胞の代謝活性に影響を与えなかった。しかしながら、細胞の代謝活性は、中分子量ポリシアル酸(PSA−60)を0.15μM、0.5μMおよび1.5μMの濃度で添加した後に有意に低減した。加えて、細胞の代謝活性は、高分子量ポリシアル酸(PSA−180)を0.15μM、0.5μMおよび1.5μMの濃度で添加した後に有意に低減した。
したがって、低分子量PSA−20は、Siglec−11を発現するヒトミクログリアにおいて毒性の兆候を引き起こさなかったが、中分子量ポリシアル酸(PSA−60)および高分子量ポリシアル酸(PSA−180)は、ヒトミクログリア細胞の生存能力に影響を及ぼしたことを示すことができ、これは将来的な薬剤にとって不要な影響である。
活性化されたヒトミクログリアの腫瘍壊死因子−アルファ産生に及ぼす様々なシアル酸型の影響の決定
ポリシアル酸がヒトミクログリアの炎症促進性の表現型に干渉するかどうかを分析するために、培養されたヒトミクログリアをリポ多糖(LPS)で活性化し、細菌毒素LPSにより誘導された炎症促進性サイトカインである腫瘍壊死因子−アルファの遺伝子転写に及ぼす、オリゴシアル酸画分やポリシアル酸画分を含む別個のシアル酸型の影響を決定した。様々な鎖長を有するシアル酸型の影響を研究するために、WO2010/125110で説明されているような人口多能性幹細胞由来ヒトミクログリア株を使用した。ヒトミクログリア細胞を、5μg/mlのポリ−L−リジン(PLL、Sigma)でコーティングした培養皿で、1%N2(Invitrogen)、0.48mMのL−グルタミン(Gibco)および任意選択で100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)が補充されたDMEM/F12培養培地を含有するN2−培地(Gibco)中で培養した。細胞を高密度で培養し、必要な場合に1:2に分けた。ヒト人口多能性幹細胞由来ミクログリア株を、リポ多糖(LPS、1μg/ml、Invitrogen)および様々な鎖長を有するシアル酸型で24時間処置した。腫瘍壊死因子−α(TNF−アルファ)に関する遺伝子転写物を、定量RT−PCRによって決定して、GAPDHに正規化した。詳細には、RNeasyミニキット(Qiagen)を使用してRNAの単離を行い、スーパースクリプト第一鎖合成システム(Invitrogen)を用いて転写を行った。特異的なオリゴヌクレオチド(GAPDH:CTGCACCACCAACTGCTTAG(配列番号1)およびTTCAGCTCAGGGATGACCTT(配列番号2);TNFα:GACAAGCCTGTAGCCCATGT(配列番号3)およびAGGACCTGGGAGTAGATGAGG(配列番号4))を用いた定量RT−PCRを、マスターサイクラーepグラジェントS(Eppendorf)と共にSYBRグリーンPCRマスターミックスを使用して行った。結果をGAPDHに正規化した。デルタ−CT方法を使用した定量化を実行した。
図3からわかるように、単量体のノイラミン酸(SA)としてのシアル酸は、LPSによって誘導されたTNF−アルファの遺伝子転写を有意に変化させなかった。同様に、3または6個の長さを有するシアル酸(トリ−SA、ヘキサ−SA)も、LPSによって誘導されたTNF−アルファの遺伝子転写を有意に変化させなかった。対照的に、低分子量PSA(PSA−20)は、図3から解釈できるように、LPSで刺激されたヒトミクログリアに対してドーズ依存性の効果を有していた。0.15μM、0.5μMおよび1.5μMの濃度におけるPSA−20は、炎症促進性サイトカインであるTNF−アルファの遺伝子転写を低減させた。また中型のPSA(PSA−60)も、図3からわかるように、LPSによって誘導されたサイトカインであるTNF−アルファの遺伝子転写を防止することにおいて有意な影響を有していた。しかしながら、高分子量ポリシアル酸(PSA−180)の、LPSによって誘導されたサイトカインであるTNF−アルファの遺伝子転写に対する有意な抗炎症性作用は、図3からわかるように観察されなかった。
したがって、低分子量ポリシアル酸(PSA−20)は、ヒトミクログリアの炎症促進性サイトカイン産生を防止するということを理解することができる。
以下の表2に、細胞毒性を決定した結果、および実施例3から4で決定されたように、ヒトミクログリアの、リポ多糖によって誘導された腫瘍壊死因子−アルファ産生に及ぼす様々なシアル酸の影響の決定をまとめる。
Figure 0006368352
実施例3から4および表2の要約から解釈できるように、低分子量ポリシアル酸(PSA−20)より小さいシアル酸フラグメント、すなわちシアル酸単量体(SA)、三量体(トリ−SA)、および六量体(ヘキサ−SA)は、ヒトミクログリアにおいて毒性の兆候を引き起こさないか、ヒトミクログリアにおいてTNF−アルファ放出に対する抗炎症性作用を有さないかのいずれかであった。一方で、中分子量ポリシアル酸(PSA−60)およびそれより高い分子量および鎖長を有する高分子量ポリシアル酸(PSA−180)は、ヒトミクログリアの生存能力に影響を及ぼした。結果として、14から26個の単量体の範囲の鎖長を有する低分子量ポリシアル酸フラグメント(PSA−20)のみが、ヒトにおけるミクログリアの抗炎症療法および治療用途に好適であることが立証された。
ヒトミクログリアの活性酸素産生と、アミロイドβ1−42によって引き起こされるアルツハイマー病培養モデル系におけるミクログリアが介在する神経毒性とに及ぼす、低分子量ポリシアル酸(PSA−20)の影響の決定
アルツハイマー病は、凝集したアミロイドβ1−42ペプチドの細胞外蓄積から始まり、ミクログリアの活性化、活性酸素種の産生ならびにシナプスおよび軸索突起の喪失によって進行する神経変性疾患である。げっ歯類動物モデルは、好適なアルツハイマー病モデル系として部分的にしかヒト疾患をモデル化することができないため、共培養されたヒトニューロンとヒトミクログリアを使用し、そこに、ミクログリア細胞を刺激することが可能な線維性のアルツハイマー病関連アミロイドβ1−42ペプチドを添加した。実施例4で説明されているようにして人口多能性幹細胞由来ヒトミクログリア細胞株を使用した。
a)ヒトミクログリア細胞のスーパーオキシド産生に及ぼす低分子量ポリシアル酸の影響の決定
アルツハイマー病の脳組織の炎症性シグナル伝達を模擬するために、ヒトミクログリア細胞株を、ヒトアルツハイマー病関連の線維性アミロイド−ベータペプチド(Aβ)で処置した。Aβの線維性成分を得るために、合成アミロイド−ベータペプチド(アミロイド−ベータ1−42、Bachem/Brucker、10μM)を37℃で少なくとも3日間プレインキュベートした。ヒトミクログリア細胞を、様々な濃度の0.15μM、0.5μM、または1.5μMの低分子量ポリシアル酸(PSA−20)で60分間処置し、続いて線維性Aβと共に15分間インキュベートした。次いで、スーパーオキシドのアニオンラジカル産生を測定するために、30μMジヒドロエチジウム(DHE)を添加し、37℃で15分間インキュベートした。4%パラホルムアルデヒドと、0.25%グルタルアルデヒドで細胞を固定し、共焦点顕微鏡法によって分析した。DHE染色強度を定量化するために、実験ごとに6枚の図画を得て、ImageJソフトウェア(NIH)によって分析した。バックグラウンドを差し引いて、染色強度の平均値を比較した。細胞を固定し、DHEの強度を共焦点顕微鏡法によって定量化した。
図4Aは、アルツハイマー病関連のアミロイド−ベータ(Aβ)によって誘導されたスーパーオキシド放出に及ぼす様々な濃度のPSA−20の影響を示す。低分子量ポリシアル酸(PSA−20)は、1.5μMの濃度で、Aβによって誘導されたスーパーオキシド放出を低減した(図4A)。
DHE測定の特異性を確認するために、ヒトミクログリア細胞におけるスーパーオキシド産生に及ぼすPSA−20の影響の決定を繰り返した。コントロールとして、ラジカルスカベンジャーである、水溶性ビタミンE類似体のトロロックスを系に添加した。さらに、追加のコントロールとして、スーパーオキシドジスムターゼ−1(SOD1)を培地に添加した。SOD1によるスーパーオキシドの変換が成功した後には、スーパーオキシドは、DHE色素によって検出できなくなると予想される。
ヒトミクログリア細胞を単独で培養し、アルツハイマー病のプラーク関連の線維性アミロイドβ1−42で処置した後、活性酸素種産生を分析した。ミクログリア細胞によるスーパーオキシドの相対的な産生を測定するために、4つのチャンバーを有する培養皿で細胞をプレーティングした。24時間後、ヒトミクログリア細胞を1.5μMの低分子量ポリシアル酸(PSA−20)で60分間処置し、続いて10μMの線維性アミロイドβ1−42と共に15分間インキュベートした。コントロールの培養皿を、1.5μMのPSA−20および40μMのトロロックス、または1.5μMのPSA−20および20μg/mlのスーパーオキシドジスムターゼ−1(SOD1、Serva)のいずれかで処置した。次いで、細胞をクレブス−HEPES−緩衝液で2回洗浄し、その後30μMのDHE溶液(クレブス−HEPES−緩衝液で希釈)と共に15分間インキュベートした。最後に細胞をクレブス−HEPES−緩衝液で2回洗浄し、0.25%グルタルアルデヒドおよび4%PFAを用いて15分間固定した。共焦点レーザー顕微鏡検査法(Fluoview 1000、オリンパス)によって、合計で実験グループ当たり6枚の画像を無作為に収集した。収集された画像の全ての細胞を、Image Jソフトウェア(NIH)によって分析した。
図4Bは、ミクログリアをアミロイドβ1−42で処置した後の、追加でトロロックスおよびSOD1で処置したミクログリアと比較した相対的なスーパーオキシド放出を示す。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図4Bから解釈できるように、アミロイドβ1−42でミクログリアを処置することで、スーパーオキシド産生が刺激されたが、1.5μMのPSA−20は、アミロイドβ1−42によって誘導されるスーパーオキシド産生の刺激を抑えた。トロロックスは、アミロイドβ1−42によって引き起こされるスーパーオキシド分子を捕捉した。加えて、スーパーオキシドジスムターゼ−1(SOD1)がアミロイドβ1−42によって引き起こされるスーパーオキシド放出を中和したことから、細胞膜においてラジカルが産生されたことが示される。したがって、トロロックスおよびSOD1コントロールから、DHEが、スーパーオキシドの細胞外産生を検出したことが確認された。
これは、インビトロのモデルにおいてPSA−20はヒトアルツハイマー病において神経保護作用があり、アルツハイマー病のプラーク関連の繊維性アミロイドβ1−42によって刺激されたヒトミクログリア細胞のスーパーオキシド産生を十分阻害したことを示す。
b)ミクログリアの神経毒性に及ぼす低分子量ポリシアル酸(PSA−20)の影響の決定
次に、ヒトミクログリア株を、人口多能性幹細胞由来ニューロンと共に24時間共培養し、ミクログリアの神経毒性に及ぼす低分子量ポリシアル酸(PSA−20;1.5μM)の影響を評価した。ヒトニューロンをヒト人口多能性幹細胞(iPS細胞)から生成した。インビトロにおけるニューロンへの分化を短く改変したプロトコールを使用して実行し、これを使用して原始神経前駆体を誘導した。詳細に言えば、iPS細胞をフィーダー細胞上で培養して、小さいコロニーを形成した。次に培地を、LIFならびに3種の小分子CHIR99021(GSK−3βの阻害剤)およびSB431542(TGF−βおよびアクチビン受容体の阻害剤)、および化合物E(γ−セクレターゼの阻害剤)の存在下で、10日間、神経誘導培地に交換した。神経前駆体を拡大するために、アキュターゼによって細胞を単一の細胞に分離させて、白血病抑制因子(LIF)、CHIR99021およびSB431542の存在下で誘導培地を含むポリ−L−オルニチン/フィブロネクチンでコーティングした細胞培養皿でプレーティングした。ニューロンへの分化を誘導するために、神経前駆体細胞をアキュターゼによって分離させ、神経誘導培地中のポリ−L−オルニチン/ラミニンでコーティングした細胞培養皿に添加して、細胞を付着させて小さいコロニーを形成させた。次いで、培地を、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)を含むニューロン分化培地に2週間交換した。2日に1回培地を交換した。共培養実験のために、ヒトミクログリア細胞を掻き取り、これを、1:4のミクログリア:ニューロンの比率で、1.5μMのPSA−20含有および非含有のニューロン分化培地中でニューロンに24時間添加した。細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で15分間固定し、ブロッキングし、ウシ血清アルブミン10×(BSA)および5%正常ヤギ血清(nGS)および0.1%TritonX−100を含有する溶液で60分間透過処理した。次に、一次抗体(ニューロンに対してはβ−チューブリン−III、ミクログリア細胞に対してはIba−I)で4℃で一晩、続いて二次抗体で室温で90分間、細胞を免疫染色した。共焦点レーザー顕微鏡検査法(Fluoview 1000、オリンパス)によって条件ごとに10枚の無作為な写真を撮り、Neuron Jソフトウェア(NIH)によってニューロン分岐(neuronal branches)の長さを測定した。
図4Cは、共培養の免疫染色を示す。共培養された細胞をパラホルムアルデヒドで固定して、ミクログリアのマーカータンパク質であるIba1およびニューロンのマーカータンパク質であるβチューブリンIIIに対する抗体で、続いて適切な蛍光標識二次抗体で共に免疫染色した。図4Dは、共培養およびPSA−20(PSA)添加の24時間後における、βチューブリンIIIに対する抗体を用いたニューロンの免疫染色により決定した場合の相対的な軸索突起の長さを示す。ヒトミクログリア株は、相対的な軸索突起の長さを低減した。図4Dからわかるように、PSA−20は、ヒトニューロンに対するヒトミクログリアの神経毒作用を十分防止した。
c)48時間の共培養時間におけるミクログリアの神経毒性に及ぼす低分子量ポリシアル酸の影響の決定
ヒト人口多能性幹細胞由来ミクログリア(iPSdM)を、iPS細胞から得た。この研究には、iLB−C−35m−rlクローン(Bonn)から生成したiPSdM−1株を使用した。iPSdM−1(ここではミクログリアまたはミクログリア細胞と命名)を、1%N2(Invitrogen)、0.48mMのL−グルタミン(Gibco)および100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)が補充されたDMEM/F12培養培地からなるN2−培地(Gibco)中で培養した。細胞を高密度で培養し、1:5に分けた。層剥離後、細胞を回収し、新しい培養皿に再度付着させた。
ヒト胚性幹細胞から原始神経前駆体を得るために使用される改変されたプロトコールに従って、原始神経幹細胞(pNSC)の生成およびそれらのニューロンへの分化のために、ヒト由来多能性幹(iPS)細胞(Foreskin−1、WiCell)を使用した。簡単に言えば、iPS細胞をフィーダー細胞上で培養して、小さいコロニーを形成した。次に、培地を、白血病抑制因子(LIF;Millipore、10ng/ml)および3種の小分子CHIR99021(GSK−3βの阻害剤、Axon Medchem、4μM)およびSB431542(TGF−βおよびアクチビン受容体の阻害剤;Axon Medchem、3μM)、および化合物E(γ−セクレターゼの阻害剤;Axon Medchem、0.1μM)の存在下で10日間、神経幹細胞培地(DMEM/F12:Neurobasal;GIBCO)に交換した。ニューロンへの分化を誘導するために、pNSCをアキュターゼ(PAA)によって分離させ、ポリ−L−オルニチン(Sigma、0.15mg/ml)と、ラミニン(Sigma、1μg/ml)でコーティングした細胞培養皿上で、神経幹細胞培地(DMEM/F12:Neurobasalと、LIF、CHIR99021およびSB431542)の中で、細胞が付着して小さいコロニーが形成されるまで培養した。次いで、培地を、脳由来神経栄養因子(BDNF;10ng/ml)およびグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF;Prospect、10ng/ml)の存在下で2週間、ニューロン分化培地(DMEM/F12と、N2およびB27サプリメント、GIBCO)に交換した。2日に1回、神経栄養因子を含有する培地を交換した。
共培養実験において、ミクログリアとニューロンとが1:5の比率のミクログリア細胞(ヒトiPS細胞由来ミクログリア株であるiPSdM1)および1μM繊維性アミロイドβ1−42を、実施例2に従って調製されたPSA−20の存在または非存在下で、iPS細胞由来ニューロンに48時間添加した。PSA−20を用いないコントロール実験において、iPS細胞由来ニューロンに、ミクログリア細胞、1μM繊維性アミロイドβ1−42、またはミクログリア細胞および1μM繊維性アミロイドβ1−42を48時間添加し、一方でコントロールとしてiPS細胞由来ニューロンの単一培養を提供した。
細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で15分間固定し、ブロッキングし、ウシ血清アルブミン(10%BSA)および正常ヤギ血清(5%nGS)および0.1%TritonX−100を含有する溶液で60分間透過処理した。次に、ポリクローナルウサギ抗iba1(Dako)およびモノクローナル抗β−チューブリン−III(Sigma)抗体を用いて4℃で一晩、続いてウサギIgGに対する二次Alexa488−コンジュゲート抗体(Molecular Probes)およびマウスIgGに対するCy3−コンジュゲートヤギ抗体(Dianova)を用いて室温で2時間、免疫染色した。共焦点レーザー顕微鏡検査法(Fluoview 1000、オリンパス)によって、実験設定ごとに10枚の画像をから無作為に収集し、β−チューブリン−IIIで染色された軸索突起からのニューロン分岐の合計の長さの決定を、NIHのImageJ/NeuronJソフトウェアによって行った。
図4Eは、繊維性アミロイドβ1−42(Aβ)またはPSA−20およびAβで処置して、ミクログリアのマーカータンパク質であるIba1およびニューロンのマーカータンパク質であるb−チューブリン−IIIに対する抗体で二重免疫染色した、ヒトミクログリアおよびニューロンの長期共培養の細胞を示す。スケールバー:100μm。図4Eから解釈できるように、PSA−20の添加は、アミロイドβ1−42で処置した共培養物中で観察された軸索突起の喪失を防止した。
図4Fは、PSA−20を用いないコントロール実験のニューロンの免疫染色により決定した場合の、ヒトニューロンと、48時間後にミクログリア、アミロイドβ1−42、またはミクログリアおよびアミロイドβ1−42を添加した後のニューロンとの相対的な軸索突起の長さを示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図4Fから解釈できるように、ミクログリアの添加は、相対的な軸索突起の長さを低減した。アミロイドβ1−42単独では相対的な軸索突起の長さに影響を与えなかったが、ミクログリア−ニューロン共培養物に添加された繊維性アミロイドβ1−42はさらに、相対的な軸索突起の長さを低減した。詳細には、相対的な軸索突起の長さを、1±0.03から、ミクログリア添加後には0.76±0.02に、ミクログリアとアミロイドβ1−42との添加後には0.64±0.03に低減した。アミロイドβ1−42単独では、適用された濃度で、軸索突起を低減する影響はなかった。
図4Gは、ニューロンの免疫染色により決定した場合のミクログリア−ニューロン共培養物中のヒトニューロンの相対的な軸索突起の長さを示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図4Gから解釈できるように、PSA−20は、ミクログリアの全般的に軸索突起を低減する影響に干渉しなかったが、繊維性アミロイドβ1−42の軸索突起を低減する影響を十分に阻害した。詳細に言えば、繊維性アミロイドβ1−42の添加は、相対的な軸索突起の長さを0.76±0.02から0.64±0.03に低減したが、PSA−20での処置は、この神経毒作用を相殺した(0.82±0.03)。したがって、アミロイドβ1−42によって誘導された相対的な軸索突起の長さの低減は、PSA−20によって相殺された。
まとめると、PSA−20は、ヒト脳培養モデルにおいてアルツハイマー病関連のアミロイドβ1−42の神経毒性を防止したことを示すことができた。さらに、PSA−20は、ヒトミクログリアをアルツハイマー病関連のアミロイドβ1−42と共にインキュベートすることにより誘導された酸化ストレスも十分に阻害した。
ヒトマクロファージの炎症促進性サイトカイン産生に及ぼす低分子量ポリシアル酸の影響の決定
ヒト単球細胞株THP−1(ATCC TIB−202)を、75ml細胞培養フラスコ(Sarstedt)で、10%FCS、1%ピルビン酸ナトリウムおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン(100×)(全てGibco、Invitrogen)を含むRPMI培地中で培養した。組織マクロファージへの分化のために、この細胞株を、0.5μMの13−酢酸12−ミリスチン酸ホルボール(Sigma)を含有する正常細胞培養培地中で3時間培養し、その後13−酢酸12−ミリスチン酸ホルボール非含有培地で少なくとも24時間培養した。
フローサイトメトリー分析を行って、Siglec−11を発現するヒトマクロファージ株におけるSiglec−11の発現を分析した。THP−1細胞を、ビオチン−コンジュゲートSiglec−11特異的抗体(R&D Systems)、続いてストレプトアビジン−FITCで免疫染色した。無関係のアイソタイプ抗体(アイソタイプコントロール抗体;R&D Systems)を、コントロールとして使用した(アイソタイプコントロールAb)。細胞をフローサイトメトリー(FACS、BD)によって分析した。図5Aからわかるように、フローサイトメトリーによって、ヒトマクロファージ株THP−1の部分集団でSiglec−11(Siglec−11Ab)の発現が検出された。
図5Bは、炎症促進性サイトカインであるTNF−アルファに及ぼす低分子量PSA(PSA−20)の影響を例示する。ヒトマクロファージ細胞株THP−1を、リポ多糖(LPS、1μg/ml)およびPSA−20(様々な濃度)で24時間処置した。腫瘍壊死因子−α(TNFα)に関する遺伝子転写物を、定量RT−PCRによって決定して、GAPDHに正規化した。詳細に言えば、RNeasyミニキット(Qiagen)を使用してRNAの単離を行い、スーパースクリプト第一鎖合成システム(Invitrogen)を用いて転写を行った。特異的なオリゴヌクレオチド(GAPDH:CTGCACCACCAACTGCTTAG(配列番号1)およびTTCAGCTCAGGGATGACCTT(配列番号2);TNFα:GACAAGCCTGTAGCCCATGT(配列番号3)およびAGGACCTGGGAGTAGATGAGG(配列番号4))を用いた定量RT−PCRを、マスターサイクラーepグラジェントS(Eppendorf)と共にSYBRグリーンPCRマスターミックスを使用して行った。結果をGAPDHに正規化した。デルタ−CT方法を使用した定量化を実行した。図5Bからわかるように、低分子量ポリシアル酸(PSA−20)は、0.15μMおよび0.5μMの濃度において、LPSによって誘導されたTNF−アルファの遺伝子転写を低減した。
したがって、実施例5および6から、低分子量ポリシアル酸PSA−20は、ミクログリアおよび他の組織マクロファージの広範な抗炎症性作用を有することが示される。実施例5において、PSA−20は、ミクログリアによる活性酸素種スーパーオキシドの産生を防止する。実施例6において、PSA−20は、ヒトマクロファージにおいて炎症促進性サイトカインであるTNF−アルファの産生を防止する。さらに実施例5は、低分子量PSA−20は、アミロイド−ベータによって誘導されたミクログリアによる活性酸素種産生および神経毒性を防止することを例示しており、したがってアルツハイマー病においてPSA−20は神経変性を予防する有益な影響を有することが示唆される。
敗血症性脳症の動物モデルにおける、細菌毒素によって全身的にチャレンジされたマウスの脳での炎症促進性サイトカイン発現に及ぼす低分子量ポリシアル酸(PSA−20)の影響の決定
敗血症は、酸化ストレスおよび補体活性化の増加に関連する食細胞機能不全を特徴とする過剰な炎症性の状況を伴うことが多い。敗血症の際の過剰な炎症性の状況は、細菌性リポ多糖(LPS)などの細菌から放出される生成物、加えて損傷を受けた細胞からの生成物によって引き起こされる。マクロファージなどの免疫細胞およびミクログリア細胞ならびに腫瘍壊死因子−a(TNF−a)などのそれらの炎症性メディエータは、敗血症性脳症に関与する。
この実験では、ミクログリア中、Iba1−プロモーターの下でヒトSiglec−11を発現するヒト化Siglec−11トランスジェニックマウス(Wang Yの2009年の学位論文、University Bonn、ユニバーサルリソースネーム:urn:nbn:de:hbz:5N−18095)および野生型の同腹子のコントロールマウスを使用した。遺伝子転写分析のために、トリゾール、続いてRNeasyミニキット(Qiagen)を用いて脳からRNAを単離した。スーパースクリプトIII逆転写酵素(Invitrogen)および六量体ランダムプライマー(Roche Molecular Biochemicals)を用いてRNAの逆転写を行い、特異的なオリゴヌクレオチドを用いた定量RT−PCRを、ABI5700配列検出システム(Perkin Elmer)およびABI5700配列検出システムのための増幅プロトコールを使用して、SYBRグリーンPCRマスターミックス(Applied Biosystems)により行った。以下のプライマーを使用した:TNFα用のフォワードプライマー:5’−TCTTCTCATTCCTGCTTGTGG−3’(配列番号5)、TNFα用のリバースプライマー:5’−AGGGTCTGGGCCATAGAACT−3’(配列番号6)、GAPDH用のフォワードプライマー:5’−ACAACTTTGGCATTGTGGAA−3’(配列番号7)、GAPDH用のリバースプライマー:5’−GATGCAGGGATGATGTTCTG−3’(配列番号8)。融解曲線の分析によって増幅特異性を確認した。プライマー対ごとの反応効率を確立した後、ABI5700配列検出システムv.1.3を用いて結果を分析した。デルタ−CT方法を使用した定量化を実行した。
図6Aは、ヒト化Siglec−11トランスジェニックマウス(Siglec11)および同腹子のコントロールマウス(コントロールマウス)のための処置スキームを示す。4×リポ多糖(サルモネラ・アボルタス・エクイ(Salmonella abortus equi)S型(ENZO Life Science)由来LPS、体重1グラム当たり1μg)または4×LPS(体重1グラム当たり1μg)と、4×PSA−20(体重1グラム当たり1μg)または4×PBSのいずれかでマウスを腹腔内処置した。LPS、PBSおよびPSA−20を4日間毎日適用した。最後の適用から24時間後にマウスを分析した。
最後の適用から24時間後に、全ての脳組織からTNF−アルファに関する遺伝子転写物をqRT−PCRによって決定した。図6Bは、PSA−20またはコントロール媒体で処置したSiglec−11トランスジェニックマウスおよびコントロールマウスの脳からの正規化した遺伝子転写物を示す。PSA−20で処置したSiglec−11トランスジェニックマウスは、脳組織においてTNF−アルファの遺伝子転写レベルの低減を示した。図6Cは、qRT−PCRによって決定した場合の、最後の適用から24時間後の脾臓におけるTNF−アルファに関する遺伝子転写物を示す。脾臓では、転写レベルの変化は観察されなかった。
まとめると、PSA−20は、脳において炎症促進性サイトカインであるTNF−αの遺伝子転写の増加を抑え、それによって脳の炎症が予防されることを示すことができた。したがって、亜致死性敗血症動物モデルにおいて、PSA−20は、全身適用後に脳の炎症および敗血症性脳症を予防することができる。
網膜の黄斑変性症の動物モデルにおける低分子量ポリシアル酸(PSA−20)の硝子体内注射
これらの実験では、ヒト網膜、ヒトミクログリアおよびヒト化Siglec−11トランスジェニックマウス(Wang Yの2009年の学位論文、University Bonn、ユニバーサルリソースネーム:urn:nbn:de:hbz:5N−18095)および同腹子のコントロールマウスを使用した。
a)ヒト網膜におけるSiglec−11の遺伝子転写の分析
まず、ヒト網膜におけるSiglec−11の遺伝子転写を分析した。ヒト網膜のトータルRNAを生検から単離した。スーパースクリプトIII逆転写酵素(Invitrogen)およびランダム六量体プライマー(Roche Molecular Biochemicals)を使用してRNAの逆転写を行った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってcDNAを35サイクルで増幅した。反応のために、1μgの各試験cDNAを使用した。使用されたPCRプログラムは、94℃で2分で最初の変性、94℃で90秒で変性、62.5℃で1分でアニーリング、68℃で1分で伸長、68℃で10分で最後の伸長であった。プライマー配列は、結果として352bpのPCR産物をもたらすフォワードACAGGACAGTCCTGGAAAACCT(配列番号9)およびリバースAGGCAGGAACAGAAAGCGAGCAG(配列番号10)であった。プライマーは、10pMの濃度で使用された。試験cDNAサンプルを、C57BL/6コントロールマウスおよびSiglec−11トランスジェニックマウスの脳、加えてヒト網膜から得た。網膜の非転写RNAを、PCR陰性コントロールとして利用した。図7Aからわかるように、ヒト網膜でSiglec−11に関する遺伝子転写物が検出された。
b)神経組織片で刺激されたミクログリアに及ぼすPSA−20の影響の決定
第二に、神経組織片で刺激されたミクログリアに及ぼすPSA−20の影響を分析した。ドルーゼンを含有する組織片は、老人性黄斑変性症の特徴の一つである。網膜のミクログリアに及ぼす変性物質の影響を研究するために、本発明者らは、人口多能性幹細胞由来ヒトニューロンを低張でかつ機械的に溶解させることによって神経組織片を調製した。次いで、本発明者らは、人口多能性幹細胞由来ヒトミクログリア株を処置して、PSA−20の影響を分析した。スーパーオキシド放出を、蛍光色素であるDHEによって決定した。神経組織片およびPSA−20またはコントロール媒体(PBS)を添加した後、スーパーオキシドのアニオンラジカル産生を測定するために、30μMジヒドロエチジウム(DHE)を添加して37℃で30分間インキュベートした。4%パラホルムアルデヒドと、0.25%グルタルアルデヒドで細胞を固定し、共焦点顕微鏡法によって分析した。DHE染色強度を定量化するために、実験ごとに6枚の図画を得て、ImageJソフトウェア(NIH)によって分析した。バックグラウンドを差し引いて、染色強度の平均値を比較した。細胞を固定し、DHEの強度を共焦点顕微鏡法によって定量化した。図7Bで示されるように、神経組織片の添加は、ミクログリアによるスーパーオキシド産生を増加させた。図7Bからわかるように、PSA−20は、神経組織片によって誘導されるミクログリアによるスーパーオキシド産生の増加を防止した。
神経組織片で刺激されたミクログリアに及ぼすPSA−20の影響の決定を上述したようにして繰り返し、ただしスーパーオキシド産生を捕捉するためのコントロールとして、トロロックス(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)、水溶性ビタミンE類似体を使用した。さらに、上述したようにしてミクログリアを組織片でチャレンジしたが、神経組織片の代わりにより多くのドルーゼン様組織片を適用した。
網膜からドルーゼン様組織片を得るために、ヒト網膜色素上皮ARPE−19細胞を、80nMオカダ酸で、37℃および5%CO2で24時間処置し、遠心分離し、PBSで3回洗浄し、ペレットを−20℃で凍結した。培養したヒトミクログリアを、10μg/mlのPSA−20の存在または非存在下で、5μg/μlの網膜色素上皮組織片および30μMジヒドロエチジウム(DHE、Invitrogen)と共に37℃で30分間インキュベートした。コントロール媒体はPBSのみを使用して行われた。コントロールとして、ラジカルスカベンジャーであるトロロックス(40μM)を添加した。細胞を固定し、スーパーオキシド放出をDHE色素の強度によって定量化した。図7Cは、ドルーゼン様組織片およびトロロックスコントロールで刺激した後のミクログリアのスーパーオキシド放出に及ぼすPSA−20(PSA20)の影響を示す。図7Cから解釈できるように、ドルーゼン様神経組織片の添加は、ミクログリアによるスーパーオキシド産生を増加させたが、PSA−20はミクログリアによるスーパーオキシド産生の増加を十分防止した。詳細に言えば、PSA−20は、ドルーゼン様神経組織片で刺激されたヒトミクログリア細胞による相対的なスーパーオキシド産生を1.38±0.02から0.92±0.22に低減した。これから、PSA−20は、ドルーゼン様組織片でチャレンジされたヒトミクログリアの酸化的バースト(oxidative burst)を十分防止したことが示される。
c)黄斑変性症の動物モデルにおけるPSA−20の影響の決定
レーザー技術により黄斑変性症の動物モデル症を誘発した。レーザーを使用したマウス網膜の実験的な傷害は、加齢性黄斑変性症に関して広く容認されている動物モデルである。ブルック膜のレーザー凝固と直接的な傷害により、急速にミクログリアおよび補体の活性化が起こり、血管漏出が誘発される。蛍光血管撮影法は、網膜中の血管漏出を検出するための確立された方法である。
この実験では、ヒト化Siglec−11トランスジェニックマウス(Wang Yの2009年の学位論文、University Bonn、ユニバーサルリソースネーム:urn:nbn:de:hbz:5N−18095)または同腹子のコントロールマウスを使用した。
マウスの網膜中に3つのアルゴンレーザーによる凝固スポットを誘発した(125mW、100ms、100μm、Viridis、Quantel Medical、France)。その直後、マウスにPSA−20(3μg/眼)またはPBSコントロール媒体を硝子体内注射した。
レーザー損傷から48時間後に、免疫組織化学によって網膜組織を分析した。そのため、ポリクローナルウサギ抗イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba1)抗体、続いてウサギ免疫グロブリン(IgG)に対するフルオレセイン(FITC)−コンジュゲート二次抗体で、全載免疫染色を行った。網膜からの内網状層の共焦点像を収集し、PSA−20で処置したSiglec−11およびコントロールマウスのレーザー損傷の内部および外部における、総Iba1陽性ミクログリアに対するアメーバ状活性化ミクログリアのパーセンテージを決定した。図7Dからわかるように、Siglec−11トランスジェニックマウスにおいて、コントロール媒体(PBS)注射後、ミクログリアは、レーザー損傷内部でアメーバ状の活性化型を示したが、低分子量ポリシアル酸PSA−20の注射後、レーザー損傷の内部でミクログリアの活性化は抑制された。正常なマウスでは、ミクログリアのIba1免疫反応性に及ぼすPSA−20の影響は観察されなかった。図7Dからわかるように、PSA−20で処置したSiglec−11トランスジェニックマウスにおいて、ミクログリアの活性化は有意に低減した。
炎症が介在する血管漏出を決定するために、網膜のレーザー凝固傷害から48時間後にフルオレセイン血管撮影法を用いた。詳細に言えば、麻酔した動物に、0.9%滅菌NaCl中の0.1mlの2.5%フルオレセインを腹腔内注射した。血管漏出を可視化するために、フルオレセイン注射の11分後に、Spectralis HRA2網膜血管造影装置(Heidelberg Engineering)で後期の血管撮影写真を撮った。Heidelbergのアイ・エクスプローラー・ソフトウェアから血管撮影写真をjpegファイルとしてエクスポートした。写真1枚当たり6つの関心領域(roi)のピクセル強度をImageJで定量化し、バックグラウンドの蛍光を差し引いた。
血管撮影法の48時間前に、Siglec−11トランスジェニックまたは同腹子のコントロールマウスの網膜中に3つのアルゴンレーザーによる凝固スポットを誘発した(125mW、100ms、100μm、Viridis、Quantel Medical、France)。マウスにPSA−20(3μM/眼)またはPBSコントロール媒体を硝子体内注射した。図7Eからわかるように、PSA−20を注射したSiglec11動物は、PBSを注射したコントロールおよびSiglec11マウスと比較して有意に低減した血管漏出(血管撮影法によって決定した場合)を示した。統計学的に有意なグループを、一元配置ANOVAおよびスチューデントのt検定によって決定した。
この血管漏出の低減に及ぼすPSA−20の影響の有意性および信頼度を確認するために、上述したようにして決定を繰り返したが、実験グループ当たり網膜の数を少なくとも8つ増加させ、観察者、すなわち盲検化した評価者を用いた。
再度、上述したようにヒト化Siglec−11トランスジェニックマウスまたは同腹子のコントロールにおいて網膜のレーザー傷害を誘発した。その後、PSA−20またはPBSコントロール媒体を硝子体内注射した。網膜のレーザー凝固から48時間後に、炎症が介在する血管漏出を決定するために、フルオレセイン血管撮影法を行った。図7Fは、血管撮影写真を示し、図7Gは、右側に、網膜の血管漏出の分析を示す。単一のデータポイントは、分析された個々の眼を提示する。通常の一元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較検定によってデータを分析した。PSA−20を注射したSiglec−11トランスジェニック動物は、血管撮影法によって決定した場合、PBSを注射した同腹子のコントロールおよびSiglec−11マウスと比較して有意に低減した血管漏出を示した(図7F)。詳細に言えば、Siglec−11トランスジェニックマウスをPSA−20で処置した後、血管漏出は、117.8±7.8から84.07±8.2に低減した。したがって、PSA−20は、レーザー損傷を受けたSiglec−11トランスジェニックマウスにおいて血管漏出を有意に低減させた。
d)ヒト網膜におけるオリゴ/ポリシアル酸の生理学的な発現の決定
オリゴ/ポリシアル酸の生理学的な発現に関して、長鎖ポリシアル酸(PSA−NCAM)、短鎖PSA(CD56)およびシアル酸三量体(A2B5)の免疫染色によってヒト網膜を分析した。網膜をスライスし、−80℃で凍結した。染色のために、スライドを室温で10〜15分間乾燥させ、PBSで2回洗浄した。切片を、10%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)、5%ヤギ血清(Invitrogen)および0.1%Triton−X−100で20〜30分間ブロッキングした。切片を、以下の一次抗体:ウサギ抗Iba1(1:1000、和光)、マウス抗PSA−NCAM(1:500、ポリシアル酸、Millipore)、ラット抗CD56(1:200、オリゴシアル酸、BD Pharmingen)またはマウス抗A2B5(1:200、トリシアル酸、Invitrogen)の1種と共に4℃で一晩インキュベートした。切片をPBSで3回洗浄し、次いで対応するCy3−コンジュゲート二次抗体(Jackson)と共に室温で4時間インキュベートした。PBSで3回洗浄工程を行った後、切片を核色素TO−PRO(登録商標)ヨウ化物(1:2000、life technologies)と共に室温で15分間インキュベートし、ムービオーラにマウントした。細胞核をTO−PRO(登録商標)(核染色)で対比染色した。対応するアイソタイプ抗体を、コントロールとして使用した。少なくとも3回の独立した実験からの代表的な画像を分析した。網膜の外側では3種全てのシアル酸種が弱く発現されたが、内網状層(IPL)、ヒト網膜の神経節細胞層(GCL)および神経線維層中では強い発現が見出された。内網状層および神経節細胞層中ではオリゴシアル酸/ポリシアル酸が検出された。これから、ポリシアル酸は網膜の正常な成分であるため、PSA−20がこの機能を模擬することが可能になることが示される。
まとめると、黄斑変性症の動物モデルにおいて硝子体内に適用されたPSA−20は、病原性のミクログリア活性化を防止し、血管漏出を低減したことを示すことができた。具体的な理論に縛られるつもりはないが、ポリシアル酸は、網膜の正常な神経保護性の成分であるため、PSA−20がこの機能を模擬することが可能になると考えられる。したがって、PSA−20は、黄斑変性症の動物モデルにおいて、網膜のミクログリア活性化および変性関連の血管漏出を防止することができる。
多発性硬化症の動物モデルにおける低分子量ポリシアル酸(PSA−20)の腹膜内注射
ヒト化Siglec−11トランスジェニックマウス(ヒト化Siglec−11マウス)および同腹子のコントロールマウス(正常なコントロールマウス)において、実験的自己免疫性脳脊髄炎を誘発した。したがって、6〜8週齢の成体雌ヒト化Siglec−11トランスジェニックマウス(Wangらの2009年の学位論文、University Bonn、ユニバーサルリソースネーム:urn:nbn:de:hbz:5N−18095)および同腹子のコントロールマウスを、不完全フロイントアジュバント中の100μgのミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質MOG(アミノ酸35〜55;Seqlab)(両方ともDIFCO;BD GmbH、Heidelberg、Germany)で免疫化した。免疫化の0日目および2日目に、百日咳毒素(200ng;List Biological Laboratories、Epsom、UK)を注射した。臨床兆候を以下の通りにスコア付けした:0、臨床兆候なし;1、完全な尾の引きずり;2、完全な尾の引きずりおよび後脚の衰弱;3、少なくとも1本の後脚の対不全麻痺;4、完全な後脚の対不全麻痺および前脚の衰弱;ならびに5、前脚と後脚の麻痺または瀕死。20日目までに疾患が発病したマウス(≧1の臨床スコア)だけを実験に使用した。
疾患が発病した日に(少なくとも1の臨床スコア)、続いてそれから3日間連続して毎日、低分子量PSA−20(体重1g当たり1μg)をマウスの腹腔内に適用した。図8Aから解釈できるように、PSA−20で処置したヒト化Siglec−11トランスジェニックマウスは、14日目以降、コントロール媒体で処置したマウスと比較して改善された臨床兆候を示した。処置の1日目から25日目までの累積的な疾患スコアを決定した。図8Bからわかるように、PSA−20での処置は、疾患の臨床兆候を改善した。
したがって、実施例7から9より、CNSおよび網膜の様々な神経変性および神経炎症性疾患モデルにおいて、低分子量ポリシアル酸(PSA−20)は、マイクロモル濃度の範囲で有益な治療効果を有することが示される。実施例7からわかるように、PSA−20は、細菌毒素であるLPSで全身的にチャレンジされた後に脳の炎症促進性反応を防止することから、敗血症性脳症および全身性炎症関連のアルツハイマー病の進行に対して有益な治療効果があることが示唆される。実施例8からわかるように、黄斑変性症の動物モデルにおいて、PSA−20は、網膜において、ミクログリアの活性化、ミクログリアによるスーパーオキシド産生および炎症関連の血管漏出を防止する。実施例9からわかるように、多発性硬化症の動物モデルにおいて、PSA−20は、疾患の症状を予防する。興味深いことに、動物モデルにおける全てのPSA−20の影響が、ヒト化Siglec−11トランスジェニックマウスで観察された。
ヒト培養モデル系においてパーキンソン病関連の酸化ストレスにより誘導された神経変性のPSA−20による処置
パーキンソン病は、主としてドーパミン作動性ニューロンに影響を及ぼし、活性化ミクログリアおよび活性酸素種産生の増加が関与する神経変性疾患である。脳中の酸化ストレスの増加が、パーキンソン病の主要な特徴である。また、一次食作用(ファゴプトーシス(phagoptosis)と命名)による神経変性も説明されている。LPSなどの毒素の適用を、パーキンソン病に関する動物モデルとして使用した。げっ歯類動物モデルは、げっ歯類とヒトとの種間の差のためにヒト慢性神経変性疾患モデルに限定的な適性しか有さないため、近年、パーキンソン病のLSP毒素によって誘導された動物モデルの代用品として、ヒトニューロンおよびヒトミクログリアのヒト毒素および組織片によって誘導された培養モデル系が使用されている。
パーキンソン病モデル系として、毒素リポ多糖(LPS)で刺激したヒトニューロンおよびヒトミクログリアを使用した。ヒトニューロンとヒトミクログリアの両方を、人口多能性幹細胞から誘導した。ミクログリアの酸化性の傷害による軸索突起の喪失を決定した。さらに、変性した神経細胞(神経組織片)で刺激されたミクログリアの食作用および酸化的バーストを決定した。
細胞培養
ヒト人口多能性幹細胞由来ミクログリア(iPSdM)を、人口多能性幹(iPS)細胞から誘導した。この研究には、iLB−C−35m−rlクローン(Bonn)から生成したミクログリアiPSdM株1(iPSdM−1)を使用した。iPSdM−1(ここではミクログリアまたはミクログリア細胞と命名)を、1%N2(Invitrogen)、0.48mMのL−グルタミン(Gibco)および100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)が補充されたDMEM/F12培養培地からなるN2−培地(Gibco)中で培養した。ヒト胚性幹細胞から原始神経前駆体を得るために使用される改変されたプロトコールに従って、原始神経幹細胞(pNSC)の生成およびそれらのニューロンへの分化のために、ヒト由来多能性幹(iPS)細胞(Foreskin−1、WiCell)を使用した。簡単に言えば、iPS細胞をフィーダー細胞上で培養して、小さいコロニーを形成した。次に、培地を、白血病抑制因子(LIF;Millipore、10ng/ml)および3種の小分子CHIR99021(GSK−3βの阻害剤、Axon Medchem、4μM)およびSB431542(TGF−βおよびアクチビン受容体の阻害剤;Axon Medchem、3μM)、および化合物E(γ−セクレターゼの阻害剤;Axon Medchem、0.1μM)の存在下で10日間、神経幹細胞培地(DMEM/F12:Neurobasal;GIBCO)に交換した。ニューロンへの分化を誘導するために、pNSCをアキュターゼ(PAA)によって分離させ、ポリ−L−オルニチン(Sigma、0.15mg/ml)と、ラミニン(Sigma、1μg/ml)でコーティングした細胞培養皿で、神経幹細胞培地(DMEM/F12:Neurobasalと、LIF、CHIR99021およびSB431542;GIBCO)中で、細胞が付着して小さいコロニーが形成されるまで培養した。次いで、培地を、脳由来神経栄養因子(BDNF;Prospect、10ng/ml)およびグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF;10ng/ml)の存在下で2週間、ニューロン分化培地(DMEM/F12と、N2およびB27サプリメント、GIBCO)に交換した。2日に1回、神経栄養因子を含有する培地を交換した。
a)ヒトLPS毒素によって誘導されたミクログリア−ニューロン共培養系中でのPSA−20の神経保護作用の決定
iPS細胞由来ヒトニューロンを、1.5μMのPSA−20の存在または非存在下で、ヒトの正常なリポ多糖(LPS)で事前に活性化されたミクログリア(活性化ミクログリア)と48時間共培養した。活性化ミクログリアにおいて、パーキンソン病で説明したような酸化ストレスが1μg/mlのLPS毒素によって誘導された。PSA−20の非存在または存在下で、ヒトニューロンにヒトミクログリア細胞を1:5(ミクログリア:ニューロン)の比率で48時間添加した。次いで、細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA、Sigma)で15分間固定し、ブロッキングし、10%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)および5%正常ヤギ血清(nGS、Dianova、Hamburg)および0.1%TritonX−100(細胞核染色用、0.5%TritonX−100、Sigma)を含有する溶液で60分間透過処理した。次に、モノクローナル抗−β−チューブリン−III(Sigma)およびポリクローナルウサギ抗iba1(Dako)抗体を用いて4℃で一晩、続いてウサギIgGに対する二次Alexa488−コンジュゲート抗体(Molecular Probes)およびマウスIgGに対するCy3−コンジュゲートヤギ抗体(Dianova)を用いて室温で2時間、細胞を免疫染色した。
共焦点レーザー顕微鏡検査法(Fluoview 1000、オリンパス)によって、条件ごと実験ごとに10枚の写真を撮った。ニューロン分岐の測定をImageJ/NeuronJソフトウェア(NIH)によって行い、相対的な神経分岐(neural branches)の長さを定量化した。図9Aは、左側に、未処置またはPSA−20(PSA)処置のいずれかの、ミクログリアを含まない、正常なミクログリアを含む、およびLPSで活性化されたミクログリアを含むニューロンの少なくとも3回の独立した実験からの代表的な画像を示す。図9Aは、右側に、定量化した相対的な軸索分岐の長さを示す。データは、平均±SEMとして示される。***p<0.001、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。
図9Aから解釈できるように、共焦点像から、ニューロンに正常なミクログリアを添加することによって、相対的な神経分岐の長さが低減され、LPSで事前に活性化されたミクログリア(活性化ミクログリア)を添加した後若干さらに減少したことが実証される。共培養物をPSA−20で処置することにより、活性化ミクログリアにより誘導された相対的な軸索分岐の長さの低減が相殺された。詳細に言えば、共培養系中で、毒素で活性化されたミクログリアが添加された後、相対的な軸索突起の長さが0.76±0.01から0.64±0.01に減少した。追加のPSA−20適用は、この神経毒作用を防止し、そこで相対的な軸索突起の長さは0.91±0.02であった。これから、PSA−20は、ヒトLPSによって引き起こされた酸化ストレスを受けた共培養パーキンソン病モデル系において神経保護作用があることが示される。
b)ミクログリアの食作用におけるPSA−20の防止的作用の決定
ヒトミクログリアを蛍光標識された神経組織片でチャレンジし、組織片の細胞への取り込みを、共焦点顕微鏡法および3D再構成によって決定した。
組織片を得るために、神経幹細胞を40nMオカダ酸(Sigma)と共に24時間インキュベートした。次いで、組織片を収集し、遠心分離した。組織片をPBSで洗浄し、「Dil Derivatives for Long−Term Cellular Labeling」Molecular Probes(Invitrogen)で、供給元のマニュアルに従って染色した。ミクログリア細胞を、0.15μM、0.5μMまたは1.5μMの濃度のPSA−20と共に1時間プレインキュベートし、続いて5μg/mlの予備染色された神経組織片と共に1時間インキュベートした。細胞を固定し、抗iba1抗体(和光、日本)、続いて二次Alexa488−コンジュゲート抗体(Molecular probes)と共にインキュベートした。分析のために、画像を無作為にスキャンして、共焦点レーザー顕微鏡(Fluoview 1000、オリンパス)によって3D再構成を得た。蛍光標識された材料を取り込んだ細胞の比率を決定するために、実験グループ当たり6枚の画像を得て、ImageJソフトウェア(NIH)を使用して画像上の全ての細胞を定量化した。
図9Bは、左側に、神経組織片を取り込んだミクログリア細胞の代表的な共焦点3D再構成を示す。ミクログリア細胞への神経組織片の取り込みの定量化を行った。図9Bは、右側に、0.15μM、0.5μMまたは1.5μMのPSA20で処置したミクログリア細胞に関する食作用の、未処置コントロール細胞と比較したパーセンテージを示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。共焦点像から解釈できるように、ミクログリアへの神経組織片の明らかな取り込みが観察された。PSA−20での処置後、神経組織片の取り込みを示すミクログリアの数は減少した。詳細に言えば、0.5μMおよび1.5μMのPSA−20は、神経組織片を取り込んだミクログリアのパーセンテージを、32%±0.02から、それぞれ25%±0.02%および22%±0.01に低減したことから、1.5μMの濃度で神経組織片の取り込みを有意に防止した。これから、PSA−20は、ミクログリアの一次食作用を防止したことが実証される。
c)食作用に関連する酸化的バーストの決定
ミクログリア細胞によるスーパーオキシドの相対的な産生を測定するために、4つのチャンバーを有する培養皿でヒトミクログリア細胞をプレーティングした。24時間後、0.15μM、0.5μMまたは1.5μM濃度でPSA−20と1時間プレインキュベートして、またはしないで、細胞を5mg/mlの神経組織片で15分間処置した。次いで、細胞をクレブス−HEPES−緩衝液で2回洗浄した。スーパーオキシド放出を検出するために、その後細胞を、クレブス−HEPES−緩衝液で希釈した30μMのスーパーオキシド感受性蛍光色素であるジヒドロエチジウム(DHE)溶液と共に15分間インキュベートした。最後に、細胞をクレブス−HEPES−緩衝液で2回洗浄し、0.25%グルタルアルデヒドおよび4%PFAを用いて15分間固定した。共焦点レーザー顕微鏡検査法(Fluoview 1000、オリンパス)によって、合計で実験グループ当たり6つの画像を無作為に収集した。収集された画像の全ての細胞を、ImageJソフトウェア(NIH)によって分析した。
図9Cは、左側に、PSA−20の前処置有りまたは無しでの、神経組織片によって引き起こされたミクログリアの、未処置細胞(UT)と比較した相対的なスーパーオキシド放出を示す。p<0.05、ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図9Cから解釈できるように、神経組織片でのミクログリアの処置は、スーパーオキシド産生を1±0.06から1.5±0.08に刺激したが、一方で神経組織片によって引き起こされたスーパーオキシド放出は、0.5μMおよび1.5μMのPSA−20によって阻害された。特に、1.5μMのPSA−20は、組織片によって誘導されたスーパーオキシド産生の刺激を1.5±0.08から0.9±0.05に低減した。
作用を確認するために、上述したようなコントロール実験において、1.5μMのPSA−20を使用して、ただし培地に40μMのトロロックスまたは20μg/mlの(SOD1)のいずれかを添加して、スーパーオキシドのスカベンジャーとしてトロロックス、およびスーパーオキシドの調節剤としてスーパーオキシドジスムターゼ−1(SOD1)を使用した。図9Cは、右側に、PSA−20の前処置有りまたは無しでの、トロロックスおよびSOD1で処置した細胞およびコントロールに関する神経組織片による、未処置細胞(UT)と比較した相対的なスーパーオキシド放出を示す。図9Cから解釈できるように、ラジカルスカベンジャーであるトロロックスおよびスーパーオキシドジスムターゼSOD1は、神経組織片によって引き起こされるスーパーオキシド放出を中和し、さらにコントロールとして、DHEがスーパーオキシドの細胞外産生を検出したことが確認された。
まとめると、PSA−20は、ヒトミクログリアの食作用および活性酸素種産生を防止したことを示すことができた。その上、PSA−20は、ヒトミクログリア−ニューロン共培養系において、酸化ストレスが介在するニューロンへの傷害を防止した。パーキンソン病においてニューロンはミクログリアの酸化ストレスにより損傷を受けているために、PSA−20は、療法に好適な分子組成物である。
実施例10
PSA−20の薬物動態および薬物毒性の決定
神経変性疾患の療法のためのほとんどの薬物が、神経毒性(neurotoxcity)または限られた脳実質への侵入のために失敗に終わっている。PSA−20のあらゆる神経毒作用を評価するために、ヒト人口多能性幹(iPS)細胞由来ニューロンを使用して、PSA−20のあらゆる毒作用を検出した。さらに、LPSによって誘導されたTNF−αの遺伝子転写物の抑制的調節に関するPSA−20の有効濃度を検出するために、ヒトiPS細胞由来ミクログリアを使用した。脳におけるPSA−20の生物学的利用率を決定するために、ビオチン−コンジュゲートPSA−20を腹腔内に適用し、様々な期間後の血清および脳組織中の濃度を分析した。
a)MTTアッセイによるヒトiPS細胞由来ニューロンの細胞生存能力に及ぼすPSA−20の影響の決定
ヒト胚性幹細胞から原始神経前駆体を得るために記述された改変されたプロトコールに従って、原始神経幹細胞(pNSC)の生成およびそれらのニューロンへの分化のために、ヒト由来多能性幹(iPS)細胞(Foreskin−1、WiCell)を使用した。簡単に言えば、iPS細胞をフィーダー細胞上で培養して、小さいコロニーを形成した。次に、培地を、白血病抑制因子(LIF;Millipore、10ng/ml)および3種の小分子CHIR99021(GSK−3βの阻害剤、Axon Medchem、4μM)およびSB431542(TGF−βおよびアクチビン受容体の阻害剤;Axon Medchem、3μM)、および化合物E(γ−セクレターゼの阻害剤;Axon Medchem、0.1μM)の存在下で10日間、神経幹細胞培地(DMEM/F12:Neurobasal;GIBCO)に交換した。ニューロンへの分化を誘導するために、pNSCをアキュターゼ(PAA)によって分離させ、ポリ−L−オルニチン(Sigma、0.15mg/ml)と、ラミニン(Sigma、1μg/ml)でコーティングした細胞培養皿上で、神経幹細胞培地(DMEM/F12:Neurobasalと、L1F、CHIR99021およびSB431542)の中で、細胞が付着して小さいコロニーが形成されるまで培養した。次いで、培地を、脳由来神経栄養因子(BDNF;Prospect、10ng/ml)およびグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF;10ng/ml)の存在下で2週間、ニューロン分化培地(DMEM/F12と、N2およびB27サプリメント、GIBCO)に交換した。2日に1回、神経栄養因子を含有する培地を交換した。
細胞生存能力を、(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ(Millipore)によって決定した。細胞を、5nM、15nM、50nM、150nM、500nM、1.5μM、5μM、15μM、50μMまたは150μMのPSA−20で24時間処置した。刺激から20時間後、10μlのMTT試薬を添加して、細胞をさらに4時間培養した。次いで、ホルマザン色素を測定するために、0.04MのHClを含有するイソプロパノール1Mで細胞を溶解させた。紫色のホルマザン色素の吸光度を、分光光度計(Perkin Elmer、Envisionマルチプレートリーダー)によって、570nmの波長で、630nmの参照波長を用いて決定した。細胞の生存能力の相対変化を知るために、全ての値を刺激されていないコントロール細胞と比較した。
図10Aは、様々な濃度のPSA−20で24時間処置した際のヒトニューロンの、未処置のコントロール(0)と比較した細胞生存能力を示す。データは、n=3の独立した実験の平均±SEMとして示される。p<0.5、ANOVA、その後、TamhaneのT2。図10Aから解釈できるように、様々なPSA−20濃度を添加した後でも細胞の生存能力は低減しなかった。150μMの比較的高濃度であっても、ニューロン性細胞の生存能力への干渉は観察されなかった。
b)LPSから誘導されたTNF−αの遺伝子転写の50%低減をもたらす半分の最大有効濃度の決定
ヒト人口多能性幹細胞由来ミクログリア(iPSdM)を、iPS細胞から得た。この研究には、iLB−C−35m−rlクローン(Bonn)から生成したiPSdM−1株を使用した。iPSdM−1(ここではミクログリアまたはミクログリア細胞と命名)を、1%N2(Invitrogen)、0.48mMのL−グルタミン(Gibco)および100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)が補充されたDMEM/F12培養培地からなるN2−培地(Gibco)中で培養した。細胞を高密度で培養し、1:5に分けた。層剥離後、細胞を回収し、新しい培養皿に再度付着させた。
細胞を、1μg/mlのリポ多糖(LPS)および5nM、15nM、50nM、150nM、500nM、1.5μM、5μM、15μM、50μMまたは150μMのPSA−20で24時間処置した。TNF−αの遺伝子転写分析のために、RNeasyキットシステム(Quiagen)によって細胞からRNAを収集した。スーパースクリプトIII逆転写酵素(Life Technologies)および六量体ランダムプライマー(Roche)を使用してRNAの逆転写を行った。ABI5700配列検出システム(PerkinElmer)を使用して、SYBRグリーンPCRマスターミックス(Qiagen)により特異的なオリゴヌクレオチドを用いた定量RT−PCRを行った。上記PCRと同じプライマーを使用して、60℃のTmでqRT−PCRを40サイクル泳動した。qRT−PCR定量化のために、内部標準物質としてGAPDHを用いたδδCT法を行った。
図10Bは、未処置のコントロール(UT)と比較した、1μg/mlのLPSおよび様々な濃度のPSA−20で24時間処置した後のヒトミクログリア細胞株のTNF−αに関する遺伝子転写物を示す。データは、平均±SEMとして示される。p<0.05、**p<0.01;***p<0.001;ANOVAとそれに続くボンフェローニ。図10Bから解釈できるように、0.05μMの濃度またはそれより高い濃度は、LPSによって誘導されたTNF−αの遺伝子転写を低減した。ヒトミクログリアにおけるEC50は、0.09μMと決定された。治療指数を決定するための毒性濃度と有効な濃度との比較から、PSA−20は、このヒト培養系において相対的に高い治療指数を示したことが確認された。
c)腹膜内適用後における血清および脳中のビオチン化PSA−20の決定
まず、PSA−20をビオチンとコンジュゲートさせて、ビオチン化PSA−20を検出するための高感度ELISAを確立した。PSA−20鎖の末端におけるシアル酸の第6の炭素原子で、PSA−20とビオチン分子とをカップリングした。そのため、過ヨウ素酸ナトリウムによってPSA−20の末端をアルデヒドに酸化した。その後、ヒドラジドがカップリングされたビオチンを室温でアルデヒド基にコンジュゲートして、ヒドラゾン結合を形成した。脱塩カラムを用いて(HiTrap脱塩カラム、GE Healthcare)精製を実行した。
ビオチンコンジュゲートPSA−20(体重1g当たり10μg)を、腹膜内適用により成体マウスに適用した。ELISA法を使用して、血清および脳中のビオチン化PSA−20を検出した。ELISAのために、NeutrAvidinでコーティングしたプレブロッキング済みプレート(Thermo Scientific)をPBST(PBS+0.05%Tween−20)で3回洗浄した。洗浄後、血漿および脳のホモジネート、加えて標準物質として規定濃度のビオチン化PSA−20で、プレートを室温で1時間処理した。プレートを3回洗浄し、オリゴシアル酸に対するモノクローナル抗体(ラット抗マウスCD56、BD Pharmingen番号556325)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを3回洗浄し、ペルオキシダーゼ−HRPとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリン(Jackson ImmunoResearch)と共にインキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、100μlのTMB試薬と共に室温で30分間インキュベートした。100μlの1NのHClの添加によって反応を止め、ELISAリーダーでシグナルを検出した。
適用前に、ならびに適用後0.5、1、2、4および8時間に、1匹のマウスの血清および脳組織を分析した。最大のPSA−20レベルは、血清中では0.5時間に、脳中では2時間に検出された。血清および脳中でのPSA−20の半減期は、2から3時間の間と概算された。血清と比較した脳中でのPSA−20の生物学的利用率は、1から3%の間と概算された。図10Cは、適用後0.5、1、2、4および8時間における血清および脳中のPSA−20の量(μg/ml)を示す。図10Cから解釈できるように、血清および脳中でPSA−20が検出された。血清中のPSA−20のピーク濃度は0.5時間に生じ、一方で脳中のピーク濃度は2時間に生じた。
まとめると、PSA−20は、培養されたヒトニューロンにおいて神経毒性を示さなかった。さらにPSA−20は、全身適用後に、血液脳関門を通過して中枢神経系の実質に到達した。したがって、PSA−20は、神経変性疾患療法で使用するのに好適な薬物動態および薬物毒性を示す。

Claims (6)

  1. 中枢神経系の変性疾患および脱髄疾患、ならびに変性性または炎症性の網膜疾患からなる群から選択される疾患の治療的および/または予防的処置で使用するための、以下に示される一般式(1):
    (α(2→8または2→9)Neu5Ac) (1)
    [式中、
    Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
    nは、14から26の範囲の整数である]
    に係る分岐状もしくは非分岐状のポリシアル酸および/もしくは該ポリシアル酸の医薬的に許容される塩または該ポリシアル酸(1)を含む多糖組成物であって、該ポリシアル酸のフラグメントは、4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、ポリシアル酸および/もしくはポリシアル酸塩または多糖組成物。
  2. 神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、軽度認知機能障害、レヴィ小体型認知症、パーキンソン病および睡眠時異常行動からなる群から選択される疾患であって、該神経変性疾患に使用するための、請求項に記載のポリシアル酸および/もしくはポリシアル酸塩または多糖組成物。
  3. 変性性または炎症性の網膜疾患または眼疾患が、加齢性黄斑変性症、遺伝性網膜疾患を含む網膜変性、ブドウ膜炎、および糖尿病性網膜症からなる群から選択される疾患であって、該網膜疾患または眼疾患に使用するための、請求項に記載のポリシアル酸および/もしくはポリシアル酸塩または多糖組成物。
  4. 中枢神経系の脱髄疾患が、多発性硬化症またはデビック病であって該脱髄疾患に使用するための、請求項に記載のポリシアル酸および/もしくはポリシアル酸塩または多糖組成物。
  5. 中枢神経系の変性疾患および脱髄疾患、ならびに変性性または炎症性の網膜疾患からなる群から選択される疾患の治療的および/または予防的処置で使用するための、活性成分として、以下に示される一般式(1):
    (α(2→8または2→9)Neu5Ac) (1)
    [式中、
    Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
    nは、14から26の範囲の整数である]
    に係る分岐状もしくは非分岐状のポリシアル酸および/もしくは該ポリシアル酸の医薬的に許容される塩または該ポリシアル酸(1)を含む多糖組成物であって、該ポリシアル酸のフラグメントは、4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、ポリシアル酸および/もしくはポリシアル酸塩または多糖組成物、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
  6. 中枢神経系の変性疾患および脱髄疾患、ならびに変性性または炎症性の網膜疾患からなる群から選択される疾患の治療的および/または予防的処置のための医薬品を製造するための、以下に示される一般式(1):
    (α(2→8または2→9)Neu5Ac) (1)
    [式中、
    Neu5Acは、N−アセチルノイラミン酸であり、
    nは、14から26の範囲の整数である]
    に係る分岐状もしくは非分岐状のポリシアル酸および/もしくはそれらの医薬的に許容される塩または該ポリシアル酸(1)を含む多糖組成物であって、該ポリシアル酸のフラグメントは、4.9kDaから7.4kDaの間の平均分子量を有し、該フラグメントの90重量%以上100重量%以下は、4.3kDaから8kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、3kDaから4.3kDaの間の分子量を有し、該フラグメントの0重量%以上5重量%以下は、8kDaから9.5kDaの間の分子量を有し、ここで該フラグメントの重量%はポリシアル酸フラグメントの総重量に基づく、ポリシアル酸および/もしくはポリシアル酸塩または多糖組成物の使用。
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