JP6368014B1 - 地下埋設壁材の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】地点間の帯水層の水理学的性質を推定する手法を、地点間に存在する壁材に適用することで、壁材の水理学的性質を推定する地下埋設壁材の評価方法を提供すること。
【解決手段】地下埋設壁材の評価方法は、壁材10を挟んで、壁材10の一方に第1検出器20を、壁材10の他方に第2検出器30を設置し、第1検出器20が検出する第1検出値21と、第2検出器30が検出する第2検出値31とを比較し、第1検出値21と第2検出値31とから壁材10の水理学的性質を推定することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、地下埋設壁材の評価方法に関する。
特許文献1は、コンクリート壁体の表面に設置した複数のセンサで、打撃による時間波形を観測することで、コンクリート壁体欠陥検出方法を提案している。
特開平5−113428号公報
しかし、特許文献1の方法は、地下埋設壁材に対しては適用できない。
貯留型地下ダムでは、上下流の地下水位の直接比較で止水壁の亀裂等を検知することができる。
これに対して、塩水侵入阻止型地下ダムでは、下流側水位は近傍の海洋潮位でほぼ決まり、止水壁の上流側(内陸側)と下流側(海岸側)の地下水位の差が小さいため、貯留型地下ダムのように、上下流の地下水位の直接比較で止水壁の亀裂等を検知できない。
従って、このような塩水浸入阻止型地下ダムの機能診断や、長寿命化を検討する際に止水壁の透水性を簡便に調査する手法が必要である。
ところで、海洋に接する沿岸域の帯水層中では、潮位の変動の伝播により地下水位も減衰と遅れを伴いながら周期的に変動する。伝播距離あたりの減衰比又は遅れは帯水層の水理学的性質(透水係数等)に依存するため、海岸からの距離が異なる2地点の地下水位の変動の分析により、地点間の帯水層の水理学的性質を推定することができる。
しかし、地点間に、帯水層とは顕著に水理学的性質が異なる止水壁が存在する場合には、止水壁が存在しない場合とは地点間の水理学的性質が異なるが、止水壁の状態変化によっても、地点間の水理学的性質が変化することになる。また、災害の影響で止水壁が崩壊し、止水壁が機能していない場合には、止水壁が存在しない場合に近い水理学的性質になる。
本発明は、地点間の帯水層の水理学的性質を推定する手法を、地点間に存在する壁材に適用することで、壁材の水理学的性質を推定する地下埋設壁材の評価方法を提供することを目的とする。
請求項1記載の本発明の地下埋設壁材の評価方法は、壁材を挟んで、前記壁材の一方に第1検出器を、前記壁材の他方に第2検出器を設置し、前記第1検出器が検出する第1検出値と、前記第2検出器が検出する第2検出値とを比較し、前記第1検出値と前記第2検出値とから前記壁材の水理学的性質を推定することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の地下埋設壁材の評価方法において、前記壁材が止水壁であり、前記第1検出器及び前記第2検出器が、水位、水圧、又は前記水位若しくは前記水圧と相関関係にある水質を、前記第1検出値及び前記第2検出値として検出することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の地下埋設壁材の評価方法において、前記止水壁が塩水侵入阻止型地下ダムであり、前記第1検出器が、海岸側となる下流側の帯水層の水位、水圧、又は前記水位若しくは前記水圧と相関関係にある水質を検出し、前記第2検出器が、内陸側となる上流側の前記帯水層の水位、水圧、又は前記水位若しくは前記水圧と相関関係にある水質を検出することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の地下埋設壁材の評価方法において、前記第1検出値及び前記第2検出値が連続的に検出する時系列データであり、前記時系列データに含まれ、前記海岸から前記内陸に向かって伝播する地下水位の振動成分の振幅比若しくは時間差又は位相差を算出し、前記振動成分の前記振幅比若しくは前記時間差又は前記位相差を、振動周期又は振動数とともに、地点間の物質の水頭拡散率、透水量係数、透水係数、貯留係数等の前記水理学的性質との関係を表す式を用いて分析することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の地下埋設壁材の評価方法において、前記時系列データが、波浪、津波、半日周潮、日周潮、又は気圧変動に伴う潮位の変動等の周期的変動データであることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の地下埋設壁材の評価方法において、前記水理学的性質から、前記壁材の亀裂を評価することを特徴とする。
本発明の地下埋設壁材の評価方法によれば、例えば建築時に推定した壁材の水理学的性質と、災害後の壁材の水理学的性質の違いから壁材の損傷を評価することができる。
本発明の一実施例による地下埋設壁材の評価方法を説明する概念図
本発明の第1の実施の形態による地下埋設壁材の評価方法は、壁材を挟んで、壁材の一方に第1検出器を、壁材の他方に第2検出器を設置し、第1検出器が検出する第1検出値と、第2検出器が検出する第2検出値とを比較し、第1検出値と第2検出値とから壁材の水理学的性質を推定するものである。
本実施の形態によれば、例えば建築時に推定した壁材の水理学的性質と、災害後の壁材の水理学的性質の違いから壁材の損傷を評価することができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による地下埋設壁材の評価方法において、壁材が止水壁であり、第1検出器及び第2検出器が、水位、水圧、又は水位若しくは水圧と相関関係にある水質を、第1検出値及び第2検出値として検出する。
本実施の形態によれば、水位、水圧、又は水位若しくは水圧と相関関係にある水質を検出値として用いることで、壁材の水理学的性質を推定することができる。
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による地下埋設壁材の評価方法において、止水壁が塩水侵入阻止型地下ダムであり、第1検出器が、海岸側となる下流側の帯水層の水位、水圧、又は水位若しくは水圧と相関関係にある水質を検出し、第2検出器が、内陸側となる上流側の帯水層の水位、水圧、又は水位若しくは水圧と相関関係にある水質を検出するものである。
本実施の形態によれば、帯水層を伝播する変動を利用することで、精度の高い水理学的性質を推定することができる。
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による地下埋設壁材の評価方法において、第1検出値及び第2検出値が連続的に検出する時系列データであり、時系列データに含まれ、海岸から内陸に向かって伝播する地下水位の振動成分の振幅比若しくは時間差又は位相差を算出し、振動成分の振幅比若しくは時間差又は位相差を、振動周期又は振動数とともに、地点間の物質の水頭拡散率、透水量係数、透水係数、貯留係数等の水理学的性質との関係を表す式を用いて分析するものである。
本実施の形態によれば、塩水侵入阻止型地下ダムを継続して評価できる。
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による地下埋設壁材の評価方法において、時系列データが、波浪、津波、半日周潮、日周潮、又は気圧変動に伴う潮位の変動等の周期的変動データである。
本実施の形態によれば、潮位の変動を利用して継続評価を行える。
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態による地下埋設壁材の評価方法において、水理学的性質から、壁材の亀裂を評価するものである。
本実施の形態によれば、壁材の亀裂による損傷を発見できる。
以下本発明の一実施例による地下埋設壁材の評価方法について説明する。
図1は本実施例による地下埋設壁材の評価方法を説明する概念図であり、海洋に接する沿岸域に止水壁10としての塩水侵入阻止型地下ダムが設置されている状態を示している。
本実施例による地下埋設壁材の評価方法は、壁材10としての塩水侵入阻止型地下ダムを挟んで、壁材10の一方に第1検出器20を、壁材10の他方に第2検出器30を設置する。
図1に示すように、壁材10が塩水侵入阻止型地下ダムであれば、第1検出器20が、海岸側となる下流側の帯水層40Aの水位、水圧、又は水位若しくは水圧と相関関係にある水質を検出し、第2検出器30が、内陸側となる上流側の帯水層40Bの水位、水圧、又は水位若しくは水圧と相関関係にある水質を検出する。
そして、第1検出器20が検出する第1検出値21と、第2検出器30が検出する第2検出値31とを比較し、第1検出値21と第2検出値31とから壁材10の水理学的性質を推定する。
図1では、第1検出値21及び第2検出値31が連続的に検出する時系列データであり、第1検出値21と第2検出値31とは、減衰又は時間遅れを生じる。時系列データは、波浪、津波、半日周潮、日周潮、又は気圧変動に伴う潮位の変動等の周期的変動データである。
例えば、壁材10の海側及び内陸側の2地点で、地下水位を連続的に観測しその時系列データを取得し、海岸から内陸に向かい伝播する地下水位振動成分の振幅比又は時間差(又は位相差)を計算し、地点間の振幅比又は時間差を、それらと地点間の物質の水理学的性質との関係を表す式に代入して止水壁10の水理学的性質を推定することができる。
振動周期が決められる変動であれば、天文潮や気象潮ではなく人工的な振動であってもよい。また、地下水位や水圧を用いることができる他、水位や水圧と直線的関係を保って変動する水質を観測データとしてもよい。
潮位の変動は、海洋に接する帯水層40A中を内陸に向かって減衰しながら伝播する。潮位の変動の伝播によって地下水位が周期的に変動する沿岸地域においては、海岸にごく近い地点及び海岸から離れた地点でそれぞれ観測孔等に設置した自動記録型水位計により地下水位を計測できる。
得られた各地点の地下水位の時系列観測データに対し、デジタルフィルタと呼ばれる数列の掛け算による方法を用いて、降雨等の影響による潮汐より長い周期を持つ変動成分を取り除く。デジタルフィルタは、2日間以上の長周期の成分を除去し、日周期以下の潮汐成分を完全に保つよう設計された数列を用いる。
長周期成分が取り除かれた各地点の観測データの29.5日間分の長さに対し、フーリエ級数展開の式を応用した計算により、周期が約12.421時間の主要潮汐成分(主太陰半日周潮)を抽出して振幅と位相を計算し、2地点間の振幅比と時間遅れを導くことができる。この計算は表計算ソフトで三角関数等の組み込み関数を入力して実現できる。
導かれた2地点間の振幅比と時間遅れをそれぞれ、帯水層40A、40B内での地下水位の周期的変動の伝播を表す計算式に代入して「透水係数÷貯留係数×帯水層厚さ」に等しい値をもつ帯水層定数(水頭拡散率)を計算し、別途地質ボーリングや室内試験から得られる帯水層厚さや貯留係数の情報を組み合わせることで、透水係数が算出される。
災害の影響で止水壁10が崩壊し、止水壁10が機能していない場合には、止水壁10が存在しない場合に近い透水係数(水理学的性質)となる。
本実施例によれば、例えば建築時に推定した壁材10の水理学的性質と、災害後の壁材10の水理学的性質の違いから壁材10の損傷を評価することができる。
また本実施例によれば、帯水層40A、40Bを伝播する変動を利用し、水位、水圧、又は水位若しくは水圧と相関関係にある水質を検出値として用いることで、壁材10の精度の高い水理学的性質を推定することができる。
また本実施例によれば、時系列データに含まれ、海岸から内陸に向かって伝播する地下水位の振動成分の振幅比若しくは時間差又は位相差を算出し、振動成分の振幅比若しくは時間差又は位相差を、振動周期又は振動数とともに、地点間の物質の水頭拡散率、透水量係数、透水係数、貯留係数等の水理学的性質との関係を表す式を用いて分析することで、壁材10を継続して評価できる。
このようにして、水理学的性質から壁材10の亀裂を評価することができる。
本発明による地下埋設壁材の評価方法によれば、定期的な評価を行うことで、時系列的な壁材の経時変化を把握できる。
10 壁材(止水壁)
20 第1検出器
21 第1検出値
30 第2検出器
31 第2検出値
40A 帯水層
40B 帯水層

Claims (6)

  1. 壁材を挟んで、前記壁材の一方に第1検出器を、前記壁材の他方に第2検出器を設置し、前記第1検出器が検出する第1検出値と、前記第2検出器が検出する第2検出値とを比較し、
    前記第1検出値と前記第2検出値とから前記壁材の水理学的性質を推定する
    ことを特徴とする地下埋設壁材の評価方法。
  2. 前記壁材が止水壁であり、
    前記第1検出器及び前記第2検出器が、水位、水圧、又は前記水位若しくは前記水圧と相関関係にある水質を、前記第1検出値及び前記第2検出値として検出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の地下埋設壁材の評価方法。
  3. 前記止水壁が塩水侵入阻止型地下ダムであり、
    前記第1検出器が、海岸側となる下流側の帯水層の水位、水圧、又は前記水位若しくは前記水圧と相関関係にある水質を検出し、
    前記第2検出器が、内陸側となる上流側の前記帯水層の水位、水圧、又は前記水位若しくは前記水圧と相関関係にある水質を検出する
    ことを特徴とする請求項2に記載の地下埋設壁材の評価方法。
  4. 前記第1検出値及び前記第2検出値が連続的に検出する時系列データであり、
    前記時系列データに含まれ、前記海岸から前記内陸に向かって伝播する地下水位の振動成分の振幅比若しくは時間差又は位相差を算出し、
    前記振動成分の前記振幅比若しくは前記時間差又は前記位相差を、振動周期又は振動数とともに、地点間の物質の水頭拡散率、透水量係数、透水係数、貯留係数等の前記水理学的性質との関係を表す式を用いて分析する
    ことを特徴とする請求項3に記載の地下埋設壁材の評価方法。
  5. 前記時系列データが、波浪、津波、半日周潮、日周潮、又は気圧変動に伴う潮位の変動等の周期的変動データである
    ことを特徴とする請求項4に記載の地下埋設壁材の評価方法。
  6. 前記水理学的性質から、前記壁材の亀裂を評価する
    ことを特徴とする請求項1に記載の地下埋設壁材の評価方法。
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