JP6362816B1 - 到来方向推定装置 - Google Patents
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Abstract
Description
この対処方法として、従来から、空間平均法(Spatial Smoothing Preprocessing)が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
このように、従来では、相関波で適切な推定が行えるアルゴリズムを採用すると、無相関波における推定精度の劣化が懸念され、無相関波で適切な推定が行えるアルゴリズムを採用すると、相関波における推定精度の劣化が懸念されるという課題があった。
第1の推定部は、到来波の相関行列を用いたビームフォーミングで得られたビームのピーク数に基づいて到来波数を推定する。第2の推定部は、相関行列を固有値展開して得られた固有値の数に基づいて到来波数を推定する。第1の相関判定部は、第1の推定部が推定した到来波数と第2の推定部が推定した到来波数とに基づいて到来波間の相関の有無を判定する。評価関数算出部は、ビームのピーク値に対応する角度を含む角度範囲で最尤推定法の評価関数値を算出する。ばらつき算出部は、評価関数算出部が算出した評価関数値のばらつきの指標値を算出し、指標値に基づいて到来波数を推定する。第2の相関判定部は、第2の推定部が推定した到来波数とばらつき算出部が推定した到来波数とに基づいて到来波間の相関の有無を判定する。切り替え部は、判定された到来波間の相関の有無に応じて、到来波の到来方向を推定するアルゴリズムを切り替える。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る到来方向推定装置1の構成を示すブロック図である。波源2−1〜2−Kは、到来方向θが未知である信号を放射している信号源、あるいは他の波源から放射された信号を反射している反射体である。
また、K個の波源からの信号が受信アンテナ3−1〜3−Lに到来した場合、到来波の波数はKとなる。
受信アンテナ3−1〜3−Lは、アレーアンテナを構成している素子アンテナであり、到来方向θが未知である信号を受信する。素子アンテナ数はL個である。
このように生成されたベースバンド複素信号は、信号受信部4から相関行列生成部5に出力される。
ビーム形成部6は、上記相関行列とモードベクトルとを用いて、ビームフォーミングを行って受信ビームを形成する。
ピーク数抽出部7は、ビームフォーミングで得られた受信ビームのスペクトルの電力と閾値とを比較して閾値よりも大きな電力のピークを抽出する。このように抽出されたピークの数が到来波数と推定される。
すなわち、相関行列生成部5、ビーム形成部6およびピーク数抽出部7は、この発明における第1の推定部に相当する。
具体的には、前者が後者よりも大きい場合は信号固有値が縮退していると考えられるので、到来波間に相関があると判定する。一方、前者が後者以下の場合は、到来波がビーム幅よりも狭い離角で到来している状況も考えられるので、相関判定を行わない。
なお、ビーム幅とは、アレーアンテナにおける受信ビームの最大放射方向電力の半値になる角度である。
なお、評価関数算出部10は、ばらつき算出部11から設定された到来波数を用いて、評価関数値を算出する。
例えば、ばらつき算出部11は、指標値と閾値とを比較して、指標値が閾値よりも小さい場合、到来波数の推定値が真の到来波数よりも多いと判定して、到来波数の推定値から1を減算した値を最終的な推定値とする。
一方、ばらつき算出部11は、指標値が閾値以上である場合、到来波数の推定値が真の到来波数よりも少ないと判定し、1を加算した推定値を評価関数算出部10に設定する。そして、設定した推定値を用いて評価関数算出部10により算出された評価関数値の指標値を算出し、この指標値と閾値とを比較する。ばらつき算出部11は、これら一連の処理を、到来波数の推定値が真の到来波数よりも多くなるまで繰り返す。
なお、指標値としては、評価関数値の分散値、標準偏差および平均値のうちのいずれかが挙げられる。
なお、空間平均型MUSICまたは最尤推定法のアルゴリズムでは、到来波が相関波である場合に高い推定精度を確保することができる。また、通常のMUSIC、ESPRIT、Root−MUSICまたはCAPONのアルゴリズムは、到来波間に相関がない場合に高い推定精度を確保することができる。
すなわち、到来方向推定装置1は、各機能の動作行うための処理回路を備えている。
処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されたプログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
また、相関行列生成部5、ビーム形成部6、ピーク数抽出部7、信号固有値抽出部8、相関判定部9、評価関数算出部10、ばらつき算出部11、相関判定部12および切り替え部13の各機能をそれぞれ処理回路で実現してもよいし、各機能をまとめて1つの処理回路で実現してもよい。
ソフトウェアとファームウェアとは、プログラムとして記述されてメモリ104に格納される。プロセッサ103は、メモリ104に格納されたプログラムを読み出して実行することにより各機能を実現する。すなわち、到来方向推定装置1は、処理回路により実行されるときに、各機能の動作のステップが結果的に実行されるプログラムを格納するためのメモリ104を備えている。また、これらのプログラムは、相関行列生成部5、ビーム形成部6、ピーク数抽出部7、信号固有値抽出部8、相関判定部9、評価関数算出部10、ばらつき算出部11、相関判定部12および切り替え部13の手順または方法を、コンピュータに実行させるものである。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせによって前述した機能を実現することができる。
図3は、到来方向推定装置1による動作を示すフローチャートであり、到来波間の相関の有無に応じて到来方向を推定するアルゴリズムを切り替える一連の処理を示している。
信号受信部4は、受信アンテナ3−1〜3−Lによって受信された到来波のRF信号に対して各種の信号処理を行い、デジタル信号であるベースバンド複素信号を生成する。
相関行列生成部5は、信号受信部4により生成されたベースバンド複素信号を取得する(ステップST1)。
PBeam=(a(θ)HRxxa(θ))/(a(θ)Ha(θ)) (2)
ただし、P1、P2は到来波の電力であり、θ1、θ2は到来波の到来方向である。
また、Lは素子アンテナ数であり、dは素子アンテナ間隔である。さらに、λは到来波の波長であり、σ2は雑音電力である。
このように算出された受信ビームのスペクトルはピーク数抽出部7へ出力される。
図4のスペクトルは、7個の素子アンテナが等間隔に並ぶリニアアレーに対し、ともにSNRが20dBの互いに相関がない到来波が、到来方向θ1=0°、θ2=40°から到来している場合を示している。閾値ThBeamは、スペクトルの最大値から−10dBの範囲を示しており、この範囲に含まれるピークが抽出される。
例えば、互いに相関がある2波が到来しているとき、到来波間の相関係数ρは、下記式(5)のように大きさρ0と位相φとを有する値として表すことができる。
ρ=ρ0exp(iφ) (5)
ここで、上記式(7)を上記式(6)に代入してスペクトルを数値的に算出した結果が図5であり、相関係数が0.5であり、相関係数の位相がπ、π/2、π/3である場合を示している。また、上記式(8)を上記式(6)に代入してスペクトルを数値的に算出した結果が図6であり、相関係数が1(完全相関波)であり、同様に、相関係数の位相がπ、π/2、π/3である場合を示している。さらに、到来方向は、図4と同様にθ1=0°、θ2=40°と仮定している。
図4に示した到来波間に相関がない場合と同様の大きさの閾値を設定することにより、到来波数の推定も可能である。
すなわち、ビームフォーミングを用いれば、到来波間の相関の有無によらずに到来波数を推定することができる。
なお、ビーム幅θBW(deg)は、下記式(9)で表すことができる。下記式(9)において、λは波長(m)、Dはアレーアンテナの開口径(m)である。
θBW=(180/π)(λ/D) (9)
雑音が白色雑音であると仮定すると、相関行列Rxxは、下記式(10)で表すことができる。ここで、Aは、K個のモードベクトルを列とした下記式(11)に示すL×K行列であり、モード行列と呼ばれている。Sは波源相関行列であり、Iは単位行列、σ2は雑音電力である。
Rxx=ASA+σ2I (10)
A=[a(θ1),a(θ2),・・・,a(θK)] (11)
なお、Rxxは正定値エルミート行列であるので、λ1≧λ2≧・・・≧λL(≧0)と定義される。
Rxxei=(ASA+σ2I)ei=λ (12)
E=[e1,e2,・・・,eL] (14)
Λ=diag{λ1,λ2,・・・,λL} (15)
ASAHei=(λi−σ2)ei=λi’ei (16)
i=1,2,・・・,L
λi’=λi−σ2 (17)
また、上記式(16)と下記式(18)とから、到来波の相関行列Rxxの固有値は、下記式(19)のように分布する。
相関行列Rxxの固有値分布は、到来波数に対応するK個の信号固有値と大きさが雑音電力に等しいL−K個の雑音固有値とに分けられ、これを利用して到来波数Kと雑音電力σ2とを推定することができる。
λ1’≧λ2’≧・・・≧λK’≧λK+1’=・・・=λL’=0 (18)
λ1≧λ2≧・・・≧λK≧λK+1=・・・=λL=σ2 (19)
図7は、到来波の相関行列を固有値展開して得られた固有値分布の例を示すグラフである。図7において、横軸は、固有値ごとに付与された固有値番号であり、縦軸は、固有値の大きさを示す電力(dB)である。相関のない2波が到来した場合を示している。
また、閾値Theineは固有値の最大値から−10dBの範囲を示しており、この範囲に含まれる固有値が抽出される。
信号固有値抽出部8は、前述のように推定した到来波数Neineを相関判定部9に出力する。また、信号固有値抽出部8は、後の処理のために、到来波数Neineに加えて、相関行列Rxxも相関判定部9に出力する。
従って、信号固有値の数から到来波数を推定する場合、その推定精度は到来波間の相関に大きく依存する点が、ビームフォーミングで得られたピーク数から到来波数を推定する場合と異なる。
NBeamがNeineよりも大きい場合(ステップST4;YES)、信号固有値が縮退しているので、相関判定部9は、到来波間に相関があると判定する(ステップST5)。
このとき、相関判定部9は、到来波間に相関があることを示す相関フラグの値を切り替え部13に出力する。
以下、これらの状況について詳細に説明する。
NBeam=Neine=1である場合、図8Aに示すように、角度θ01のピークに対して1波のみが到来している状況が考えられる(状況a)。しかしながら、図8Bに示すように、互いに相関のあるk波の到来波がビーム幅よりも狭い離角で到来している状況も考えられる(状況b)。
Neine>NBeamであると、図10Aに示すように、角度θ01のピークに対して互いに相関がない複数の到来波がビーム幅よりも狭い離角で到来している状況が考えられる(状況e)。また図10Bに示すように、角度θ01のピークに対して互いに相関のある複数の到来波の組みと相関がない到来波とがビーム幅よりも狭い離角で到来している状況も考えられる(状況f)。
このため、ビームフォーミングで得られたピーク数から推定した到来波数を用いた相関判定はできない。
そこで、NeineがNBeamよりも大きいか、NBeamがNeineに等しい場合には、最尤推定法の評価関数を用いた到来波数の推定を行う。以下、詳細を説明する。
ここで、角度Θでの最尤推定法の評価関数FML(Θ)は、Θ方向のモードベクトルであるAチルダ(〜A)を用いて下記式(20)のように表すことができる。なお、下記式(20)において、Tr[・]は行列のトレースを表している。
なお、評価関数Fの算出には到来波数が必要である。そこで、評価関数算出部10は、ばらつき算出部11から設定された到来波数pを用いる。
これに対して、評価関数算出部10は、ピーク値に対応する角度Θを含む角度範囲から選択した複数の角度で最尤推定法の評価関数を算出する。
そして、ばらつき算出部11が、評価関数算出部10が複数の角度で算出した評価関数値を統計処理して、評価関数値のばらつき具合、すなわち起伏を評価するための指標値を算出する。この指標値を用いて、ばらつき算出部11が到来波数を推定する。
以下、詳細を説明する。
すなわち、図11においては、評価により特定された到来波数と真の到来波数とが一致しており、(θ1,θ2)=(0,30),(30,0)の2点でヌルが形成され、評価関数が最小値となっている。
具体的には、評価関数算出部10が、ピーク値に対応する角度Θ0を含む角度範囲から選択した複数の角度で評価関数値をそれぞれ算出して、これらの算出結果を成分に有するベクトルFをばらつき算出部11に出力する。
F=[FML(θ0,θ0),FML(θ0,α),FML(θ0,β)] (23)
また、図14は、最尤推定法の評価関数を算出した上記3点を、図12中に当てはめた様子を示すグラフであり、FML(θ0,θ0)=FML(θ0,α)=FML(θ0,β)となる。ばらつき算出部11は、ベクトルFの各成分のばらつきの指標値を算出し、指標値を閾値κと比較することで到来波数を推定する。
例えば、ばらつき算出部11は、ベクトルFの分散V(F)を算出する。V(・)は“・”の分散を表している。
なお、評価関数値のばらつきの指標値として分散を示したが、標準偏差、平均値などであってもよい。すなわち、評価関数値のばらつき具合を示すものであれば、他の統計量を用いてもよい。
ばらつき算出部11は、ベクトルFの分散V(F)を算出し、分散V(F)と閾値κとを比較して、分散V(F)が閾値κよりも小さいか否かを確認する(ステップST9)。
分散V(F)が閾値κ以上である場合(ステップST9;NO)、ばらつき算出部11は、pが真の到来波数よりも少ないと判断して、p=p+1を評価関数算出部10に設定する(ステップST11)。この後、ステップST7の処理に戻る。
これらの一連の処理は、分散V(F)が閾値κよりも小さくなるまで、すなわち、pが真の到来波数よりも多くなるまで繰り返される。
NML=1またはNML≧2かつNML=Neineの場合(ステップST12;YES)、相関判定部12は、到来波間に相関がないと判定する(ステップST13)。
そして、相関判定部12は、無相関フラグを切り替え部13に出力する。
このとき、相関判定部12は、到来波間に相関があると判定し、相関フラグを切り替え部13に出力する。切り替え部13は、相関判定部12から相関フラグを入力すると、到来波の到来方向を推定するアルゴリズムを相関波に対処可能なアルゴリズムに切り替える(ステップST6)。
なお、ビームフォーミングで得られたスペクトルに複数のピークがある場合、前述した一連の処理をピークごとに行えばよい。
図16は、到来波の離角に対する到来波の分離確率(%)と相関判定成功率(%)との数値シミュレーション結果を示すグラフである。図15および図16は、到来波が1波、無相関波が2波、完全相関波が2波、無相関波が3波および完全相関波3波のいずれかがランダムに到来するものと仮定する。ここで、ビーム幅θBWは約40°である。また、周波数が200MHz、アレーアンテナの開口径が2300mmである。
また、従来例1として、到来方向の推定アルゴリズムを空間平均型MUSICに固定した到来方向推定装置を用意する。この装置により得られた測角値に符号bを付し、到来波の分離確率に符号b1を付している。
さらに、従来例2として、推定アルゴリズムを通常のMUSICに固定した到来方向推定装置を用意する。この装置により得られた測角値に符号cを付し、到来波の分離確率に符号c1を付している。
図15および図16において、符号dを付したシミュレーション結果は、到来方向推定装置1の相関判定成功率である。
相関判定成功率は、相関判定回数に対する相関判定の成功回数の比から求められる。
また、到来方向推定装置1では、従来例1および従来例2の場合に比べて測角値の推定二乗誤差が低く、分離確率も向上している。すなわち、到来波の到来方向を精度よく推定でき、到来波同士の分離も精度よく行うことができる。
このように構成することで、評価対象の全範囲で算出された評価関数値を用いなくても到来波数を推定することができる。
また、ばらつき算出部11は、到来波数pが真の到来波数よりも少ないと判定すると、1を加算した到来波数pを評価関数算出部10に設定し、当該到来波数pを用いて評価関数算出部10が算出した評価関数値についての指標値を算出し、算出した指標値と閾値とを比較する一連の処理を、到来波数pが真の到来波数よりも多くなるまで繰り返す。
このように構成することで、到来波がビーム幅よりも狭い離角で到来しても、到来波間の相関の有無を精度よく判定することができる。
図17は、この発明の実施の形態2に係る到来方向推定装置1Aの構成を示すブロック図である。図17において、図1と同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
到来方向推定装置1Aは、到来方向推定装置1と異なる構成として、相関判定部9A、相関判定部12A、キュムラント行列生成部14および信号特異値抽出部15を備える。
信号特異値抽出部15は、上記キュムラント行列を特異値分解して得られた特異値の数に基づいて到来波数を推定する。
すなわち、キュムラント行列生成部14と信号特異値抽出部15は、この発明における第3の推定部に相当する。
具体的には、前者が後者よりも大きければ信号固有値が縮退しているので、到来波間に相関があると判定する。一方、前者が後者以下である場合、到来波がビーム幅よりも狭い離角で到来している状況が想定されるので、相関判定を行わない。
例えば、ばらつき算出部11により推定された到来波数が1、もしくは、ばらつき算出部11により推定された到来波数が2以上かつ信号特異値抽出部15により推定された到来波数と等しい場合、到来波間に相関がないと判定される。一方、到来波数の推定値が上記以外の値となる場合は、到来波間に相関があると判定される。
ソフトウェアとファームウェアとは、プログラムとして記述されてメモリ104に格納される。プロセッサ103は、メモリ104に格納されたプログラムを読み出して実行することにより各機能を実現する。すなわち、到来方向推定装置1Aは、処理回路により実行されるときに各機能の動作のステップが結果的に実行されるプログラムを格納するためのメモリ104を備えている。
これらのプログラムは、相関行列生成部5、ビーム形成部6、ピーク数抽出部7、相関判定部9A、評価関数算出部10、ばらつき算出部11、相関判定部12A、切り替え部13、キュムラント行列生成部14および信号特異値抽出部15の手順または方法をコンピュータに実行させるものである。
例えば、相関行列生成部5、ビーム形成部6、ピーク数抽出部7、キュムラント行列生成部14および信号特異値抽出部15は、専用のハードウェアの処理回路100によってその機能を実現する。そして、相関判定部9A、評価関数算出部10、ばらつき算出部11、相関判定部12Aおよび切り替え部13は、プロセッサ103がメモリ104に格納されたプログラム実行することにより、その機能を実現する。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせによって前述した機能を実現することができる。
図18は、到来方向推定装置1Aによる動作を示すフローチャートであって、到来波間の相関の有無に応じて到来方向を推定するアルゴリズムを切り替える一連の処理を示している。図18において、図3と同一処理を行うステップには同一のステップ番号を付して説明を省略する。
そして、キュムラント行列生成部14は、ベースバンド複素信号から特定される全ての受信アンテナ3−1〜3−Lの受信信号ベクトルx(t)、およびガイディングセンサを用いて、到来波のキュムラント行列を生成する(ステップST2a)。
ガイディングセンサとは、受信アンテナ3−1〜3−Lのうち、任意に選択した2つの素子アンテナによる受信信号ベクトルxr(t)、xq(t)である。
C1=cum(xr *(t),xr(t),xH(t),x(t)) (24)
C2=cum(xr *(t),xq(t),xH(t),x(t)) (25)
cum(z1(t),z2(t),z3(t),z4(t))
=E[z1(t)z2(t)z3(t)z4(t)]
−E[z1(t)z2(t)]E[z3(t)z4(t)]
−E[z1(t)z3(t)z2(t)z4(t)]
−E[z2(t)z3(t)]E[z1(t)z4(t)] (26)
さらに、キュムラント行列生成部14は、キュムラント行列C1,C2を結合することによって、下記式(27)で表される新しいキュムラント行列Cを生成する。このように生成されたキュムラント行列Cは、信号特異値抽出部15に出力される。
例えば、信号特異値抽出部15は、閾値Thsin gularと特異値分布とを比較して、閾値Thsin gularよりも高い値となる特異値を抽出し、抽出した特異値の数を到来波数Nsin gularと推定する。
このため、相関行列を用いる場合に比べて閾値Thsin gularのマージンが大きく、到来波数の推定精度の向上が期待できる。
NBeamがNsin gularよりも大きい場合(ステップST4a;YES)、信号特異値が縮退しているので、相関判定部9Aは、到来波間に相関があると判定する(ステップST5)。
そこで、相関判定部9Aは、相関判定を行わず、ステップST7からステップST11までの処理により、最尤推定法の評価関数を用いた到来波数の推定が行われる。
これらのアルゴリズムは、到来波間に相関がなければ到来方向を高分解能で推定可能なアルゴリズムである。
このとき、相関判定部12Aは、到来波間に相関があると判定して、相関フラグを切り替え部13に出力する。切り替え部13は、相関判定部12Aから相関フラグを入力することにより、到来波の到来方向を推定するアルゴリズムを相関波に対処可能なアルゴリズムに切り替える(ステップST6)。
これによりガウス性雑音が存在する環境での到来波数の推定精度が向上するので、実施の形態1で示した構成と比較して到来波の到来方向の推定と到来波同士の分離とをさらに精度よく行うことができる。
図19は、この発明の実施の形態3に係る到来方向推定装置1Bの構成を示すブロック図である。図19において、図1と同一構成要素には同一符号を付している。
到来方向推定装置1Bは、信号受信部4の後段にある構成要素として、相関行列生成部5、信号固有値抽出部8A、相関判定部9B、切り替え部13および相関行列生成部16を備える。
また、相関判定部9Bは、空間平均処理を施した相関行列を固有値展開して得られた到来波数NRSSPと通常の相関行列を固有値展開して得られた到来波数NRとを比較する。そして、相関判定部9Bは、前者が後者よりも大きい場合、到来波間に相関があると判定し、前者が後者以下の場合は到来波間に相関がないと判定する。
空間平均処理では、受信アンテナ3−1〜3−Lの配置における空間的な対称性を利用して互いに相似な複数のサブアレーアンテナが定義され、複数のサブアレーアンテナから相関行列を算出する。そして、これらの相関行列の平均をとることで、到来波間の相関が抑圧される。なお、類似した処理である、Forward/Backward空間平均を利用してもよい。以降では、このような空間平均処理を施した相関行列を空間平均型相関行列と呼ぶ。
すなわち、到来方向推定装置1Bは、各機能の動作行うための処理回路を備えている。処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されたプログラムを読み出して実行するCPUであってもよい。
これらのプログラムは、相関行列生成部5、信号固有値抽出部8A、相関判定部9B、切り替え部13および相関行列生成部16の手順または方法をコンピュータに実行させるものである。
例えば、相関行列生成部5および相関行列生成部16は、専用のハードウェアの処理回路100によってその機能を実現する。そして、信号固有値抽出部8A、相関判定部9Bおよび切り替え部13は、プロセッサ103がメモリ104に格納されたプログラム実行することにより、その機能を実現する。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって前述した機能を実現することができる。
図20は、到来方向推定装置1Bによる動作を示すフローチャートであり、到来波間の相関の有無に応じて到来方向を推定するアルゴリズムを切り替える一連の処理を示している。信号受信部4は、受信アンテナ3−1〜3−Lによって受信された到来波のRF信号に対して各種の信号処理を行い、デジタル信号であるベースバンド複素信号を生成する。
相関行列生成部5および相関行列生成部16は、信号受信部4により生成されたベースバンド複素信号を取得する(ステップST1)。
具体的には、相関行列生成部16が、選択行列Zlおよび相関行列Rxxを用いて、下記式(28)から、空間平均型相関行列RSSPを生成する。下記式(28)において、qはサブアレーアンテナの数である。
Zl=[el,el+1,・・・,eL0] (29)
L0=L+l−q (30)
この場合、空間平均型相関行列RSSPは、線形アレーに変換する変換行列Jを用いて、下記式(31)で表すことができる。
前述したように生成された空間平均型相関行列RSSPは、信号固有値抽出部8Aに出力される。
さらに、信号固有値抽出部8Aは、空間平均型相関行列RSSPを固有値展開して得られた信号固有値の数を到来波数NRSSPと推定する(ステップST3d−1)。このようにして得られた到来波数NRおよびNRSSPは相関判定部9Bに出力される。
また、図21では、4波の完全相関波が到来したときの固有値分布を示しており、閾値Theine−SSPは、固有値の最大値から−15dBの範囲を示している。
従って、空間平均型相関行列RSSPの固有値分布a2から推定された到来波数NRSSPと相関行列Rxxの固有値分布b2から推定された到来波数NRとの大小関係は、到来波間の相関の有無に応じて変化する。
NRSSP>NRである場合(ステップST4b;YES)、相関判定部9Bは、到来波間の相関によって相関行列Rxxの固有値が縮退していると判断し、到来波間に相関があると判定する(ステップST5a)。このとき、相関判定部9Bは、到来波間に相関があることを示す相関フラグの値を切り替え部13に出力する。
このとき、相関判定部9Bは、到来波間に相関がないことを示す無相関フラグの値を切り替え部13に出力する。
これらのアルゴリズムは、到来波間に相関がなければ、到来方向を高分解能で推定可能なアルゴリズムである。
一方、NRSSP<NRである場合は、到来波間に相関がなくかつ空間平均の影響が現れている状況が考えられる。空間平均の影響としては、サブアレーアンテナを定義することで、本来のアレーアンテナよりも開口径と素子アンテナ数とが減少して、到来波の離角が相対的に狭くなっていることが挙げられる。
Claims (7)
- 到来波の相関行列を用いたビームフォーミングで得られたビームのピーク数に基づいて到来波数を推定する第1の推定部と、
前記相関行列を固有値展開して得られた固有値の数に基づいて到来波数を推定する第2の推定部と、
前記第1の推定部が推定した到来波数と前記第2の推定部が推定した到来波数とに基づいて到来波間の相関の有無を判定する第1の相関判定部と、
前記ビームのピーク値に対応する角度を含む角度範囲で最尤推定法の評価関数値を算出する評価関数算出部と、
前記評価関数算出部が算出した評価関数値のばらつきの指標値を算出し、前記指標値に基づいて到来波数を推定するばらつき算出部と、
前記第2の推定部が推定した到来波数と前記ばらつき算出部が推定した到来波数とに基づいて到来波間の相関の有無を判定する第2の相関判定部と、
判定された到来波間の相関の有無に応じて、到来波の到来方向を推定するアルゴリズムを切り替える切り替え部と
を備えたことを特徴とする到来方向推定装置。 - 前記第1の相関判定部は、前記第1の推定部が推定した到来波数と前記第2の推定部が推定した到来波数とを比較して、前者が後者以下の場合は判定を行わず、前者が後者よりも大きければ到来波間に相関があると判定し、
前記評価関数算出部は、前記第1の相関判定部が判定を行わない場合に、評価関数値を算出することを特徴とする請求項1記載の到来方向推定装置。 - 前記評価関数算出部は、前記ビームのピーク値に対応する角度を含む角度範囲から選択した複数の角度で評価関数値を算出し、
前記ばらつき算出部は、前記評価関数算出部が前記複数の角度で算出した評価関数値を統計処理して前記指標値を算出することを特徴とする請求項1記載の到来方向推定装置。 - 前記ばらつき算出部は、評価関数値の分散値、標準偏差および平均値のうちのいずれかを前記指標値として算出することを特徴とする請求項3記載の到来方向推定装置。
- 前記評価関数算出部は、前記ばらつき算出部から設定された到来波数の推定値を用いて評価関数値を算出し、
前記ばらつき算出部は、前記指標値と閾値との比較結果に基づいて、到来波数の推定値が真の到来波数よりも多いと判定すると、到来波数の推定値から予め定められた値を減算した値を最終的な推定値とし、到来波数の推定値が真の到来波数よりも少ないと判定した場合は、予め定められた値を加算した到来波数の推定値を前記評価関数算出部に設定し、設定した到来波数の推定値を用いて前記評価関数算出部が算出した評価関数値についての前記指標値を算出し、当該指標値と前記閾値とを比較する一連の処理を、到来波数の推定値が真の到来波数よりも多くなるまで繰り返すことを特徴とする請求項1記載の到来方向推定装置。 - 到来波の相関行列を用いたビームフォーミングで得られたビームのピーク数に基づいて到来波数を推定する第1の推定部と、
到来波のキュムラント行列を特異値分解して得られた特異値の数に基づいて到来波数を推定する第3の推定部と、
前記第1の推定部が推定した到来波数と前記第3の推定部が推定した到来波数とに基づいて到来波間の相関の有無を判定する第3の相関判定部と、
前記ビームのピーク値に対応する角度を含む角度範囲で最尤推定法の評価関数値を算出する評価関数算出部と、
前記評価関数算出部が算出した評価関数値のばらつきの指標値を算出し、前記指標値に基づいて到来波数を推定するばらつき算出部と、
前記第3の推定部が推定した到来波数と前記ばらつき算出部が推定した到来波数とに基づいて到来波間の相関の有無を判定する第4の相関判定部と、
判定された到来波間の相関の有無に応じて、到来波の到来方向を推定するアルゴリズムを切り替える切り替え部と
を備えたことを特徴とする到来方向推定装置。 - 前記第3の相関判定部は、前記第1の推定部が推定した到来波数と前記第3の推定部が推定した到来波数とを比較して、前者が後者以下の場合は判定を行わず、前者が後者よりも大きければ到来波間に相関があると判定し、
前記評価関数算出部は、前記第3の相関判定部が判定を行わない場合に、評価関数値を算出することを特徴とする請求項6記載の到来方向推定装置。
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