JP6358590B2 - 血管データ生成装置、血管データ生成方法、および血管データ生成プログラム - Google Patents

血管データ生成装置、血管データ生成方法、および血管データ生成プログラム Download PDF

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Description

本発明は、器官の血管網を示す血管データを生成する血管データ生成装置、血管データ生成方法、および血管データ生成プログラムに関する。
近年における計測技術の発展に伴い、生物のタンパク質、細胞、臓器ごとの膨大な知見が得られている。一方、それらの知見はスケールごとに得られるものであり、スケール間の関連、例えば細胞と臓器の挙動が互いにどのように影響するか、については知見が十分ではない。ここで、性能向上が著しい計算機を用いたコンピュータシミュレーションにより、不十分な知見を補い、従来の測定・実験だけでは観察困難であった現象を解明する研究が活発になっている。
例えばコンピュータシミュレーションによる研究が盛んな器官の1つとして、人間の心臓がある。心臓は全身に血液を送り出すという生命活動の根幹を担う重要な臓器である。そして心臓自身もまた安定した血液の供給を必要とする。心臓へ血液を供給する役割を担うのが、心臓の内部を走行する血管である冠循環である。冠循環の異常に基づく病態を虚血性心疾患と総称する。虚血性心疾患は、主に冠動脈の動脈硬化によって引き起こされる。
冠循環特有の血管走行の様式として、まず太い血管が心筋表面を走行し、その径を大きく減少させることなく分岐する(distributing vessel)。その後心腔に向かって(貫壁方向)走行し、径を狭めながら分岐を繰り返していく(delivering vessel)。冠動脈は大動脈のバルサルバ洞に始まり、分岐を繰り返しながら径を狭め、小動脈(数100μm径)、細動脈(約200μm以下の径)微小循環に到達する。微小循環を抜けた後、冠静脈側に出て、合流を繰り返しながら径を拡げ、細静脈、小静脈を経て右心房に至る。このとき、微小循環に接続するまでの冠動脈、冠静脈は基本的には最も太い血管を頂点とした分岐を有する木構造を取る(冠静脈ではバイパスのような様式も一部見られる)。それに対し、細動脈、細静脈と毛細血管からなる微小循環は網目(ネットワーク)構造を持ち、心筋細胞を栄養している。ネットワーク構造により同向流、対向流といった多様な流れが微小循環内で起こり、心筋細胞への血液供給が均一になるように補助していると考えられる。
毛細血管径は約5〜6μmであり、これは赤血球のサイズより小さい。そのため、赤血球は形を変えながら毛細血管を通行していることになる。赤血球が血管の内壁に接しながらスムーズに通行できるのは、内皮にあるグリコカリックス層を滑るように移動するためとされている。
虚血性心疾患の根本原因は動脈硬化であり、生化学、細胞生物学的側面を中心に研究が進められている。一方で虚血性心疾患の病態形成には冠循環系の構造およびその制御といった機能的な要因が大きく関わっている。冠循環系の血流は心収縮の影響を強く受けると考えられている。実際狭心症を含めた病態では、最も組織圧が上昇すると考えられる心内膜側(心腔側)で虚血が生じやすいことが知られている。これは、粥腫の形成に対する血流(ずり応力)の影響と合わせ、虚血性心疾患の病態の解明には力学解析が有用であることを示している。
このような冠循環特有の血行動態は基礎医学の面からも強い関心を集め、これまでに多彩な実験的研究がなされ多くの知見が集積されてきた。しかし、冠血管は主幹部から毛細血管に至るまで、その径はμmからmmへと約1000倍ものスケール差を有する。また心臓は収縮、弛緩を繰り返し大きく拍動するため冠血管の観察には大きな制約があり、特に壁内を走行する血管内の血行動態については未だ不明な点が多い。このような問題を克服するための実験・診断技術開発と並び、コンピュータ上に作成された冠循環モデルを利用したシミュレーションは技術的な制約を超えた現象の観察を可能とし、メカニズム解明に迫る有効な手段と考えられている。
このような計算機シミュレーションには、シミュレーションの入力データとしてのモデルが必要である。この入力データとなるモデルの作成をモデリングと呼ぶ。モデリングは、冠循環の解剖学的知見、生理学的知見をベースに冠循環の血管形態をコンピュータ上に再現することである。冠循環のモデリングでは、径、長さを持った血管要素を、他の血管要素へ分岐あるいは結合させ、さらに心臓における空間的な位置へマッピングすることで血管形態を構築する。このモデリング技術は、一般的なCT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging system)では撮影することができない直径約1mm未満の血管までも、数理モデルに基づき構築するものである。これらの研究の目的は、3次元形状まで再現した血管網を構築し、それらをシミュレーションの入力データとすることで、血流動態の解明、疾患または治療効果の予測に資することを主としている。
冠循環のモデリングに関する研究は、主に2種類の手法に大別される。1つは統計データのような、血管径、長さ、分岐構造に関する詳細な解剖学的データを基にして空間的配置を持たない血管のデータを作成したのち、それらを心臓の3次元形状にマッピングする手法である。もう1つは、生体における血管の形態は何らかの最適性を満たしたものであると仮定し、その仮定した最適モデルに従い、臓器形状内にモデリングを行う手法である。いずれの手法でも計算機の高性能化に伴い、大規模な血管系の構築が可能になってきている。
<解剖学的統計データを基にした手法>
解剖学的統計データを基にした手法では、例えば、解剖により得たブタ心臓の冠動脈の統計的なデータが用いられる。ブタ心臓の冠動脈の統計的なデータに基づいて、乱数を用いて血管の長さ、径、分岐構造(接続関係)が決定される。そして、決定された構造の血管が、両心室の有限要素メッシュにマッピングされる。
<最適モデルに基づく手法>
血管網構築の最適モデルに基づく手法では、解剖学的なデータを用いずに冠循環モデルが作成される。血管網構築の最適モデルに基づく手法としては、例えば、血管網の構築は血液を流すためのエネルギー(ポアズイユ流れを仮定)と血液を保持するエネルギー(血管容積に比例)の和が最小になるようにモデル作成する手法がある。また血管網が構築される臓器が決まっていれば、臓器が要求する血流量と灌流の圧力差が決まるので、血液を流すためのエネルギーは固定値となり、血流量と圧力差の制約のもとで血管の容積を最小化するように、モデル(最小容量モデル)を作成する手法がある。血管の最小容量モデルをベースとした、Constrained Constructive Optimization(CCO)という手法も考えられている。CCOでは、臓器形状に流量分布が設定され、かつ血管の木構造の頂点と末端点の血圧が与えられる。そして末端点から血管要素が生成され、ポアズイユ流れの法則に従って、全血管容積が最小になるよう、他の血管要素への接続と接続点の移動が行われる。
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しかし、解剖学的統計データを基にした手法で生成される冠循環モデルは、解剖学的特徴と一致しない部分が存在するという問題がある。例えば、心臓において血管が十分に存在するはずなのに、血管密度が不自然に低い領域が発生する。
他方、最適モデルに基づく手法は、単純化した単一の心室形状といった、部分的なモデル作成ができるようになった段階であり、心臓全体の冠循環について、解剖学的ポイントを再現できるレベルには到達していない。そのため最適モデルに基づく手法では、例えば左冠動脈回旋枝(LCX:Left Coronary Circumflex Artery)や右冠動脈(RCA:Right Coronary Artery)が心室と心房の境界に沿って走行するような解剖学的特徴を再現できない。
なお、ここまで冠循環モデル作成時の問題について説明したが、他の器官の血管網を示す血管データを生成する際にも、同様の問題が発生する。
1つの側面では、本件は、器官の解剖学的特徴に沿った血管網を再現できるようにすることを目的とする。
1つの案では、以下に示す第1の生成手段と第2の生成手段とを有する血管データ生成装置が提供される。第1の生成手段は、器官の血管に関する解剖学的統計データに基づいて、器官内の血管網を示す木構造を有する第1の血管データを生成する。第2の生成手段は、器官の形状を定義した形状モデルに含まれる複数の節点と、第1の血管データで示される血管網とをそれぞれ接続する複数の血管を示す第2の血管データを生成する。
1態様によれば、器官の解剖学的特徴に沿った血管網の再現が可能となる。
第1の実施の形態に血管データ生成装置の機能構成の一例を示す図である。 第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。 CADシステムのハードウェアの一構成例を示す図である。 計算ノードのハードウェア構成の一例を示す図である。 第2の実施の形態の各装置の機能を示すブロック図である。 解剖学的統計データの一例を示す図である。 有限要素モデルのデータ構造の一例を示す図である。 マクロモデルのデータ構造の一例を示す図である。 ミクロモデルのデータ構造の一例を示す図である。 冠循環シミュレーションの手順を示すフローチャートの一例である。 有限要素モデルの一例を示す図である。 マクロモデル作成処理の手順の一例を示すフローチャートである。 マクロモデルの作成過程の一例を示す図である。 太い血管データの一例を示す図である。 冠循環モデル(マクロモデル)の生成例を示す図である。 最適モデルによる血管生成と接続処理の手順の一例を示すフローチャートである。 近傍血管への接続例を示す図である。 エネルギー計算対象の血管網の一例を示す図である。 新規の血管要素を追加した場合のパラメータの更新範囲を示す図である。 医療画像由来の血管要素を含む冠循環モデルの血管網の一例を示す図である。 新規の血管要素の接続点の移動例を示す図である。 ラプラス方程式の解を模式的に示した図である。 生成されたマクロモデルの一例を示す図である。 微小循環モデルの一例を示す図である。 ミクロモデルの一例を示す図である。 圧力節点におけるマクロモデルとミクロモデルとの接続法を示す図である。 生成された冠循環モデルの冠動脈の一例を示す図である。 生成された冠循環モデルの冠静脈の一例を示す図である。 冠循環モデルの比較例を示す図である。 Orderごとの血管を示す図である。
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお各実施の形態は、矛盾のない範囲で複数の実施の形態を組み合わせて実施することができる。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に血管データ生成装置の機能構成の一例を示す図である。血管データ生成装置10は、記憶手段11、第1の生成手段12、第2の生成手段13、および更新手段14を有している。
記憶手段11は、解剖学的統計データ15、形状モデル16、第1の血管データ17、および第2の血管データ18を記憶する。解剖学的統計データ15は、例えば動物の器官内の血管の直径、長さ、分岐構造に関する、解剖学的な特徴を表した統計データである。器官は、例えば人間の心臓である。形状モデル16は、複数の節点16aによって器官の立体的な形状を定義した情報である。例えば形状モデル16は、器官をメッシュで分けることで得られる複数の四面体の要素で構成される。形状モデル16を構成する要素の頂点は、節点と呼ばれる。第1の血管データ17は、器官内の血管網17aを示す、木構造を有するデータである。第2の血管データ18は、第1の血管データ17で示される血管網17aと、形状モデル16に含まれる節点16aとを接続する血管を示すデータである。
第1の生成手段12は、器官の血管に関する解剖学的統計データ15に基づいて、器官内の血管網17aを示す第1の血管データ17を生成する。例えば解剖学的統計データ15に空間的な位置情報が含まれない場合、第1の生成手段12は、解剖学的統計データ15に基づいて、血管の分岐状況、各部の太さや長さを示す血管網17aを生成する。血管網17aは、最も太い血管を頂点とした分岐を有する木構造となるよう、例えば、頂点から末端に向けて生成される。次に第1の生成手段12は、仮想的な空間に形状モデル16を配置したときに形状モデル16が存在する領域内に、生成した血管網17aを配置することで、血管網の位置(分岐点や末端の位置)を決定する。そして第1の生成手段12は、生成した第1の血管データ17を記憶手段11に格納する。
第2の生成手段13は、形状モデル16に含まれる複数の節点16aそれぞれと、第1の血管データで示される血管網17aとを接続する複数の血管を示す第2の血管データ18を、例えば、複数の節点16aから第1の血管データで示される血管網17aに向けてそれぞれ生成する。そして第2の生成手段13は、第2の血管データ18を記憶手段11に格納する。例えば第2の生成手段13は、第1の血管データ17と第2の血管データ18とで表される血管網を所定の評価関数で評価したときに高い評価が得られるように、第1の血管データ17と第2の血管データ18を適正化する。評価関数は、例えば血管網内の全血管の容積が少ないほど評価が高くなるような式を用いることができる。適正化では、例えば血管の分岐位置、長さ、太さなどが適正化される。
更新手段14は、第1の血管データ17で示される血管網17aから、第2の血管データ18で示される血管が末端に接続されていない部分が削除されるように、第1の血管データ17を更新する。
このような血管データ生成装置10において、まず第1の生成手段12により第1の血管データ17が生成される。第1の血管データ17は、解剖学的統計データ15に基づいて生成されており、部分的に器官の実際の血管の配置と適合しない可能性がある。例えば形状モデル16で表される器官の形状において、血管の密度が現実の人間の心臓の血管の密度よりも不自然なほど低い(密度が疎)領域が生じる可能性がある。
そこで第2の生成手段13により、形状モデル16に含まれる複数の節点16aそれぞれと、第1の血管データ17で示される血管網17aとを接続する複数の血管18aを示す第2の血管データ18が生成される。図1の例では、形状モデル16に含まれる要素が4面体のとき、その4面体の頂点である節点それぞれと血管網17aとを接続する複数の血管18aを示す第2の血管データ18が生成されている。
第2の血管データ18を生成後、第1の血管データ17で示される血管網17aには、末端に第2の血管データ18が接続されていない部分が含まれることがある。そのような部分は、血流などの観点から、非効率的な部分である可能性がある。血液を流すのに非効率的な血管は、現実の器官内の血管の配置と適合しないことが多い。そこで、更新手段14により、第1の血管データ17で示される血管網17aから、第2の血管データ18で示される血管が末端に接続されていない部分が削除される。
このようにして、第1の血管データ17と第2の血管データ18とが生成される。第1の血管データ17と第2の血管データ18とによって、適切に血管が配置された血管網が表されている。例えば、第1の血管データ17で示される血管網において、密度が疎の領域が存在したとしても、該当領域に第2の血管データ18により血管が追加される。その結果、血管の密度が不自然に疎となる領域の発生が抑止される。また、第1の血管データ17は、第2の血管データ18で示される血管が末端に接続されない部分を削除するように更新される。これにより第1の血管データ17と第2の血管データ18とで表される血管網は、血液が流れるのに非効率な血管を含まず、適切な血管網となる。
なお、第1の生成手段12は、医療画像に表された血管の末端に、解剖学的統計データ15に基づく血管を接続することで、第1の血管データ17を生成することができる。この場合、医療画像に表された血管を示す血管データについては、直径や長さが固定となる。これにより医療画像に表された血管において、例えば患者固有の状態を保った血管データを生成することができる。
また、第2の生成手段13は、評価関数として、血管網の末端と、末端に接続された血管の上位の点との、血液の圧力差を用いた式を用いることができる。この場合、血管網の末端の血液の圧力よりも、末端に接続された血管の上位の点の血液の圧力の方が高い場合には、末端と上位の点との圧力差が大きいほど高い評価となるようにする。また、末端の血液の圧力よりも、上位の点の血液の圧力の方が低い場合には、末端と上位の点との圧力差が大きいほど低い評価となるようにする。これにより、血管網の末端の方が、末端に接続された血管の上位の点よりも血圧が高くなることを抑止できる。
また第2の生成手段13は、評価関数として、第2の血管データ18で示される血管の長さが、血管の直径に比べて長いほど高い評価となる式を用いることもできる。これにより、第2の血管データ18で示される血管を第1の血管データ17で示される血管に接続する際に、血管網の分岐点にさらに血管が接続されることを抑止できる。
また第2の生成手段13は、評価関数として、血管内の血液の流量を用いた式を用いており、器官の内側の面に近い節点に接続された血管ほど血流量を多くして、評価関数を計算することができる。これにより、器官の実際の血流量の分布に合わせた血流量を用いて、評価を行うことができる。
第2の生成手段13は、器官の外側の面に近い節点ほど選択確率を高くして、形状モデルに含まれる節点を順番に選択し、選択した順に、選択された節点を末端とする血管の接続先、長さ、および太さを決定することができる。これにより血管が器官の外側から内側に向かうような血管網が生成される。その結果、器官の実際の血管と同じような走行方向の血管網が生成できる。
なお、第1の生成手段12、第2の生成手段13、および更新手段14は、例えば血管データ生成装置10が有するプロセッサにより実現することができる。また、記憶手段11は、例えば血管データ生成装置10が有するメモリにより実現することができる。
また、図1に示した各構成要素間を接続する線は通信経路の一部を示すものであり、図示した通信経路以外の通信経路も設定可能である。
〔第2の実施の形態〕
次に第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、マルチコアCPUを有する計算ノードを複数使用した並列計算システムで、心臓の冠循環シミュレーションを行うものである。
第2の実施の形態では、冠循環シミュレーション用の冠循環モデルを、マクロモデルとミクロモデルに分けて管理する。マクロモデルは、太い冠動脈のネットワークモデルと太い冠静脈のネットワークモデルとを合わせた血管ネットワークモデルである。ミクロモデルは、マクロモデルに含まれる血管よりも細い血管のネットワークモデルである。第2の実施の形態における並列計算システムは、ミクロモデルの計算を並列で行うことで、シミュレーションの処理の効率化を図る。
図2は、第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。第2の実施の形態では、CAD(Computer Aided Design)システム100が設けられている。CADシステム100は、ユーザからの操作に基づき、心臓の立体構造や冠循環血管ネットワークをモデリングする。またCADシステム100は、ネットワーク31を介して管理ノード200に接続されている。CADシステム100は、心臓の立体構造や冠循環血管ネットワークのモデルを、管理ノード200に送信し、そのモデルに基づく冠循環シミュレーションの実行を指示する。
管理ノード200はネットワーク32を介して、ストレージ装置300や、複数の計算ノード400,500,600,・・・に接続されている。管理ノード200は、CADシステム100から受信した心臓の立体構造や冠循環血管ネットワークのモデルを、ストレージ装置300に格納する。また管理ノード200は、CADシステム100から冠循環シミュレーションの実行指示を受信すると、冠循環シミュレーションを実行するためのジョブを、計算ノード400,500,600,・・・に投入する。ここでジョブの投入処理では、例えば管理ノード200から計算ノードへ、モデルデータの位置情報、ジョブを実行するためのプログラム、ジョブの実行に使用する各種パラメータなどが送信される。
ストレージ装置300は、CADシステム100で作成されたモデルを記憶する。ストレージ装置300には、複数のハードディスク装置が実装されている。またストレージ装置300は、ハードディスク装置に代えて、SSD(Solid State Drive)を有していてもよい。さらにストレージ装置300には、RAID(Redundant Array of Independent Disks)技術を適用することもできる。
計算ノード400,500,600,・・・は、管理ノード200からの指示に従って、心臓の冠循環シミュレーションを並列処理で実行する。計算ノード400,500,600,・・・は、マルチコアCPUを有しており、個々の計算ノード内部でも、処理を並列に実行することができる。
図3は、CADシステムのハードウェアの一構成例を示す図である。CADシステム100は、プロセッサ101によって装置全体が制御されている。プロセッサ101には、バス109を介してメモリ102と複数の周辺機器が接続されている。プロセッサ101は、マルチプロセッサであってもよい。プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、またはDSP(Digital Signal Processor)である。プロセッサ101の機能の少なくとも一部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現してもよい。
メモリ102は、CADシステム100の主記憶装置として使用される。メモリ102には、プロセッサ101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、メモリ102には、プロセッサ101による処理に必要な各種データが格納される。メモリ102としては、例えばRAM(Random Access Memory)などの揮発性の半導体記憶装置が使用される。
バス109に接続されている周辺機器としては、HDD(Hard Disk Drive)103、グラフィック処理装置104、入力インタフェース105、光学ドライブ装置106、機器接続インタフェース107およびネットワークインタフェース108がある。
HDD103は、内蔵したディスクに対して、磁気的にデータの書き込みおよび読み出しを行う。HDD103は、CADシステム100の補助記憶装置として使用される。HDD103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、補助記憶装置としては、フラッシュメモリなどの不揮発性の半導体記憶装置を使用することもできる。
グラフィック処理装置104には、モニタ21が接続されている。グラフィック処理装置104は、プロセッサ101からの命令に従って、画像をモニタ21の画面に表示させる。モニタ21としては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた表示装置や液晶表示装置などがある。
入力インタフェース105には、キーボード22とマウス23とが接続されている。入力インタフェース105は、キーボード22やマウス23から送られてくる信号をプロセッサ101に送信する。なお、マウス23は、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
光学ドライブ装置106は、レーザ光などを利用して、光ディスク24に記録されたデータの読み取りを行う。光ディスク24は、光の反射によって読み取り可能なようにデータが記録された可搬型の記録媒体である。光ディスク24には、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。
機器接続インタフェース107は、CADシステム100に周辺機器を接続するための通信インタフェースである。例えば機器接続インタフェース107には、メモリ装置25やメモリリーダライタ26を接続することができる。メモリ装置25は、機器接続インタフェース107との通信機能を搭載した記録媒体である。メモリリーダライタ26は、メモリカード27へのデータの書き込み、またはメモリカード27からのデータの読み出しを行う装置である。メモリカード27は、カード型の記録媒体である。
ネットワークインタフェース108は、ネットワーク31に接続されている。ネットワークインタフェース108は、ネットワーク31を介して、他のコンピュータまたは通信機器との間でデータの送受信を行う。
図4は、計算ノードのハードウェア構成の一例を示す図である。計算ノード400は、CPU410、メモリ420、およびインターコネクト回路430を有している。CPU410は、複数のコア411〜418を有する演算処理装置としてのマルチコアCPUである。複数のコア411〜418により、処理を並列に実行することができる。メモリ420は、CPU410に実行させるプログラムや、処理の実行に用いられるデータを記憶する。例えば、主記憶装置としてのメモリ420は、心臓の冠循環シミュレーションを実行するためのプログラムを記憶する。インターコネクト回路430は、光による高速通信を行う通信回路である。インターコネクト回路430は、ネットワーク32を介して、他の計算ノード400,500,600,・・・とデータの受け渡しを行う。またインターコネクト回路430は、ネットワーク32を介してストレージ装置300から心臓のモデルデータを読み出し、CPU410に転送する。
以上のようなハードウェア構成によって、第2の実施の形態の処理機能を実現することができる。なお、第1の実施の形態に示した血管データ生成装置10も、図3に示したCADシステム100と同様のハードウェアにより実現することができる。
CADシステム100は、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムを実行することにより、第2の実施の形態の処理機能を実現する。CADシステム100に実行させる処理内容を記述したプログラムは、様々な記録媒体に記録しておくことができる。例えば、CADシステム100に実行させるプログラムをHDD103に格納しておくことができる。プロセッサ101は、HDD103内のプログラムの少なくとも一部をメモリ102にロードし、プログラムを実行する。またCADシステム100に実行させるプログラムを、光ディスク24、メモリ装置25、メモリカード27などの可搬型記録媒体に記録しておくこともできる。可搬型記録媒体に格納されたプログラムは、例えばプロセッサ101からの制御により、HDD103にインストールされた後、実行可能となる。またプロセッサ101が、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み出して実行することもできる。
次に、第2の実施の形態のシステムにおける各装置の機能について説明する。
図5は、第2の実施の形態の各装置の機能を示すブロック図である。CADシステム100は、有限要素モデル作成部110、冠循環モデル作成部120、シミュレーション条件決定部130、および記憶部140を有する。有限要素モデル作成部110は、ユーザからの指示に従って、心臓の立体形状を示す有限要素モデルを作成する。有限要素モデルは、例えば複数の4面体のメッシュで構成される。4面体のメッシュは、第1の実施の形態における多面体の要素の一例である。冠循環モデル作成部120は、ユーザからの指示に従って、冠循環モデルを作成する。冠循環モデルは、心臓の血管ネットワークを表すモデルである。シミュレーション条件決定部130は、ユーザからの指示に従って、心臓の冠循環シミュレーションの実行条件を決定する。例えば、シミュレーション条件決定部130は、心筋の各圧力節点に、どれくらいの数のミクロモデルを接続させるかを決定する。記憶部140は、解剖学的統計データ141、有限要素モデル142、マクロモデル143、ミクロモデル144を記憶する。なおマクロモデル143とミクロモデル144とを合わせたものが、冠循環モデルである。
管理ノード200は、実行指示部210を有する。実行指示部210は、CADシステム100で作成された有限要素モデルと冠循環モデルとを用いた心臓の冠循環シミュレーションの実行を、計算ノード400,500,600,・・・に指示する。例えば実行指示部210は、CADシステム100から、有限要素モデルと冠循環モデルとを取得し、ストレージ装置300に格納する。次に実行指示部210は、冠循環シミュレーションのジョブを投入する計算ノードを選択する。例えば実行指示部210は、ジョブを実行していないすべての計算ノードを、ジョブの投入先として選択することができる。また、予め冠循環シミュレーションの並列度が指定されている場合、実行指示部210は、指定された並列度に応じた数の計算ノードを、ジョブの投入先として選択する。さらに実行指示部210は、選択した計算ノードの1つをマクロ解析用とし、他の計算ノードをミクロ解析用とする。そして実行指示部210は、マクロ解析用の計算ノード(図5の例では計算ノード400)に、シミュレーション全体の制御とマクロ解析を行うジョブを投入する。また実行指示部210は、ミクロ解析用の計算ノード(図5の例では計算ノード500,600,・・・)に、ミクロ解析を行うジョブを投入する。
ストレージ装置300には、冠循環シミュレーションの開始前に、有限要素モデル142、マクロモデル143、およびミクロモデル144が格納される。ストレージ装置300に格納されたデータは、冠循環シミュレーションの実行時に、各計算ノード400,500,600,・・・によって参照される。
計算ノード400は、シミュレーション制御部440とマクロ解析部450とを有する。シミュレーション制御部440は、心臓の冠循環シミュレーション全体の進行を制御する。マクロ解析部450は、冠循環シミュレーションのマクロ部分の解析を行う。例えばマクロ解析部450は、心筋の収縮・弛緩による心臓の拍動の解析と、太い冠動脈・静脈の血流の解析とを行う。シミュレーション制御部440とマクロ解析部450とは、計算ノード400にマクロ解析用のジョブが投入されることにより実現される機能である。
計算ノード500は、複数のミクロ解析部510,520,530,・・・を有する。ミクロ解析部510,520,530,・・・は、中間スケールの血管、細動脈・細静脈、および毛細血管の血流の解析を行う。複数のミクロ解析部510,520,530,・・・は、CPU内の個別のコアによって実行される。ミクロ解析部510,520,530,・・・は、計算ノード500にミクロ解析用のジョブが投入されることで実現される機能である。
計算ノード600は、複数のミクロ解析部610,620,630,・・・を有する。ミクロ解析部610,620,630,・・・は、中間スケールの血管、細動脈・細静脈、および毛細血管の血流の解析を行う。複数のミクロ解析部610,620,630,・・・は、CPU内の個別のコアによって実行される。ミクロ解析部610,620,630,・・・は、計算ノード600にミクロ解析用のジョブが投入されることで実現される機能である。
なお冠循環モデル作成部120は、図1に示した第1の実施の形態の第1の生成手段12、第2の生成手段13、および更新手段14を包含する要素の一例である。また記憶部140は、図1に示した第1の実施の形態の記憶手段11の一例である。
次に、記憶部140が記憶する情報について詳細に説明する。
図6は、解剖学的統計データの一例を示す図である。図6に示すように、解剖学的統計データ141には、以下の情報が含まれる。
血管要素(Vessel Segment)は、血管の分岐点間をつなぐ部分である。各血管要素は、直径、長さおよびOrderを有する。血管要素内において、直径は一定とする。
Diameter-defined Strahler Orderは、直径に応じた血管要素ごとの特徴(血管の物性値など)を観察するために、血管要素に付与された値である。この値は、地形学や水文学において河川の流路次数を決定する際に利用される Strahler Orderを応用したものである。例えば、直径が8μm未満の血管要素は毛細血管とみなされ、Orderが0に設定される。次に冠動脈、冠静脈それぞれの木構造のroot(冠動脈:バルサルバ洞、冠静脈:右心房、テベシウス洞)に向かってOrder n(nは整数)同士の血管要素が合流した場合には、合流先の血管要素がOrder n+1 とされる。異なるOrderの血管要素の合流(Order n,m(mは整数)の合流)では、合流した血管要素のOrder n,mのうち大きい方の値が、合流先の血管要素のOrderに設定される。このようして、すべての血管要素にOrderが付与された後、Orderごとの直径の分布が互いに重ならないようにOrderの調整が行われる。血管要素が動脈なのか静脈なのかは、Orderの符号で表される。例えば動脈には正、静脈には負のOrderが設定される。ブタの心臓の解剖により、例えば動脈のOrderは1〜11、静脈のOrderは−1〜−12となる。
エレメント(Vessel Element)は、同一のOrderを持つ血管要素の連なりである。
Diameter, Lengthは、Orderごとの血管要素およびエレメントの直径や血管長の平均値および標準偏差である。
Segments to Element Ratio S/Eは、Orderごとの、1つのエレメントを構成する血管要素数の平均値および標準偏差である。
コネクティビティマトリックス(Connectivity Matrix:C(m,n))は、Order nの1つのエレメントから生じるOrder mのエレメントの平均本数を、行列(Matrix)で表現したものであり、血管の分岐情報を表す。例えばOrder nの1つのエレメントから生じるOrder mのエレメントの平均本数が、冠循環の部位について計測・集計される。冠循環の部位とは、左冠動脈の左前下行枝および左回旋枝、右冠動脈、冠静脈洞に合流する静脈およびテベシウス静脈である。そして集計結果が、Connectivity Matrix C(m, n)で表される。
図7は、有限要素モデルのデータ構造の一例を示す図である。有限要素モデル142には、節点情報テーブル142aとメッシュ情報テーブル142bとが含まれる。なおNnodesは節点数であり、Nmeshはメッシュ数である。
節点情報テーブル142aは、4面体のメッシュの頂点となる節点の位置が登録されたデータテーブルである節点情報テーブル142aには、節点番号に対応付けて、節点の座標が登録されている。節点番号は、節点を一意に識別するための識別番号である。座標は、節点の仮想3次元空間上でのx軸、y軸、z軸の座標である。
メッシュ情報テーブル142bは、メッシュの形状を定義する情報が登録されたデータテーブルである。メッシュ情報テーブル142bには、メッシュ番号に対応付けて、4面体のメッシュを構成する節点の節点番号が設定されている。メッシュ番号は、メッシュを一意に識別するための識別番号である。
図8は、マクロモデルのデータ構造の一例を示す図である。マクロモデル143は、心臓の血管ネットワークのうち、太い冠動脈・静脈の構造を示す情報である。マクロモデル143には、節点情報テーブル143aと血管要素情報テーブル143bとが含まれる。節点情報テーブル143aの構造は、図7に示す有限要素モデル142の節点情報テーブル142aと同様である。なおNelemは血管の要素数である。
血管要素情報テーブル143bには、血管の要素の要素番号に対応付けて、節点、Order、直径、およびコンダクタンスが設定されている。要素番号は、血管の要素を一意に識別するための識別番号である。節点は、血管の要素の両端の位置の節点の識別番号である。Orderは、血管の太さに応じたレベル分けを示す数値である。Orderは、毛細血管を最も小さい値とし、太くなるほどに値が大きくなる。直径は、血管の直径である。
図9は、ミクロモデルのデータ構造の一例を示す図である。ミクロモデル144は、心臓の血管ネットワークのうち、中間ネットワーク、細動脈・細静脈、および毛細血管の構造を示す情報である。ミクロモデル144には、節点情報テーブル144aと血管要素情報テーブル144bとが含まれる。節点情報テーブル144aの構造は、図7に示す有限要素モデル142の節点情報テーブル142aと同様である。なおNelemは血管の要素数である。
血管要素情報テーブル143bには、血管の要素の要素番号に対応付けて、節点、Order、長さ、直径、血管壁弾性率、基準圧力差、本数が設定されている。節点は、血管の要素の両端の位置の節点の識別番号である。Orderは、血管の太さに応じたレベル分けを示す数値である。長さは、血管の要素の長さである。直径は、血管の要素の直径である。血管壁弾性率は、血管の要素の壁の弾性率である。基準圧力差は、血管内の血圧と心筋内圧の圧力差の基準値を表す。この基準値とシミュレーションにおける各時刻での圧力差を基に血管の直径を計算する。本数は、対称性があると仮定したときの同じOrderの要素の本数である。
図5に示した要素が連携して動作し、図7〜図9に示した情報を利用して、冠循環シミュレーションを実行する。
図10は、冠循環シミュレーションの手順を示すフローチャートの一例である。
[ステップS101]CADシステム100の有限要素モデル作成部110は、ユーザからのCADに対する入力に従って、有限要素モデル142を作成する。そしてCADシステム100は、作成した有限要素モデル142を管理ノード200に送信する。管理ノード200は、受信した有限要素モデル142をストレージ装置300に格納する。
[ステップS102]CADシステム100の冠循環モデル作成部120は、ユーザからのCADに対する入力に従って、マクロモデル143を作成する。そしてCADシステム100は、作成したマクロモデル143を記憶部140に格納する。
[ステップS103]CADシステム100の冠循環モデル作成部120は、ユーザからのCADに対する入力に従って、ミクロモデル144を作成する。そしてCADシステム100は、作成したミクロモデル144を記憶部140に格納する。
[ステップS104]管理ノード200の実行指示部210は、複数の計算ノードに対して、冠循環シミュレーションを実行するジョブを投入し、ジョブを投入した計算ノードに対して冠循環シミュレーションを指示する。すると複数の計算ノードの複数のコアが、並列処理により冠循環シミュレーションを実行する。
以下、図10に示した手順に沿って、各ステップの処理を詳細に説明する。
<有限要素モデル作成>
例えばCADシステム100の有限要素モデル作成部110は、医療画像(Computed Tomography, Magnetic Resonance Image, Echocardiogramなど)から、心臓の形状を抽出する。そして有限要素モデル作成部110は、心臓の形状を示すデータを、有限要素法の実行に用いるメッシュ(例えば4面体または6面体の要素)に分割する。
図11は、有限要素モデルの一例を示す図である。有限要素モデル41は、心筋を複数のメッシュに分割することで生成される。図11に示した有限要素モデル41の要素数は「219,311」、節点数は「43,293」、体積は「166.6 ml」である。
<冠循環モデル(マクロモデル部分)作成>
冠循環モデルの作成処理は、マクロモデルの作成と、ミクロモデルの作成とに分けられる。マクロモデルは、解剖学的統計データを基にした手法と最適モデルに基づく手法とを組み合わせた手法で作成される。
図12は、マクロモデル作成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
[ステップS111]冠循環モデル作成部120は、心臓メッシュと冠循環の太い血管部分のデータを取得する。例えば冠循環モデル作成部120は、ユーザによって入力された心臓メッシュと冠循環の太い血管部分のデータを取得する。
[ステップS112]冠循環モデル作成部120は、解剖学的統計データに基づいた手法を用いて、冠循環のモデリングを行う。
[ステップS113]冠循環モデル作成部120は、解剖学的統計データに基づいて作成された冠循環モデルに対して、最適モデルに基づく手法により、末端点からの血管生成と、生成した血管の接続処理を行う。最適モデルに基づく手法としては、例えば心筋メッシュの節点を血管末端点として最適モデルを作成する手法が用いられる。
[ステップS114]冠循環モデル作成部120は、解剖学的統計データに基づいた手法により生成した血管要素のうち、最適モデルに基づく手法による血管の生成と接続処理が終了しても、流量(血流)が与えられなかった血管要素を削除する。最適モデルに基づく手法で流量が与えられない血管要素としては、例えば、長さが長すぎる血管要素がある。このような血管要素は、血管の容積を最小化するという最適化の命題に合致しないため、最適モデルで生成した血管の接続先として選ばれない。先に別の血管要素が接続されない血管要素の流量は0とされ、このような血管は冠循環モデルから削除される。
図13は、マクロモデルの作成過程の一例を示す図である。図13に示すマクロモデル42の上側の弧は心外膜42a(epicardium:epi)であり、下側の弧は心内膜42b(endocardium:endo)である。マクロモデル42の内の三角形は心臓シミュレーションに使用する有限要素メッシュである。
最初に、解剖学的統計データに基づく手法で冠循環モデル(マクロモデル42)が生成される。この段階では、マクロモデル42に示される血管の末端は、心筋の節点上にはない。また解剖学的統計データに基づく手法で作成したマクロモデル42には、以下のような問題がある。
・血管分布が極端に疎となる領域が存在する。
・内壁を這う血管など、観察結果とは異なる走向が現れる。
そこで、マクロモデル42に対して、最適モデルに基づく手法により、血管の生成と接続とが行われる。例えば心筋メッシュの節点上に、生成した血管の末端点が配置され、末端点に配置された血管が、最適モデルの手法で選択された既存の血管に接続される。その結果、マクロモデル42に含まれる血管と心筋の節点とを接続する血管が、追加される。このような血管の追加処理が、すべての心筋節点に対して行われる。なお図13では、図の見やすさを確保するために、一部の心筋節点については、接続された血管を省略している。最適化モデルに基づく手法による血管の追加には、以下の3つの利点がある。
・最小容量モデルにより自然な形態で血管網を構築することが可能となる。例えば心筋節点に末端を配置した血管を、非現実的な距離にある既存血管に接続することは、最小容量モデルにより回避される。これにより、不適切な血管長により血管容積の増加が防がれ、自然な形態で血管網を構築される。
・均等なサイズを持った心筋メッシュを用いることにより、血管が疎な領域を、心筋の節点に末端を配置した血管で充填することができる。その結果、解剖学的に不自然に血管が疎の領域がなくなる。
・右冠動脈が心室と心房の接合部を走行する様子など、最適モデルだけでは再現しえない部分を補完することが可能となる。
最適モデルに基づく手法による血管の生成と接続とを行った後のマクロモデル42では、多くの血管は心筋の節点上に末端があるが、末端が心筋の節点上にない血管も残存する。
そこで、最後に、解剖学的統計データに基づく手法で生成された血管のうち、最適モデルに基づく手法により下流に血管が接続されなかった血管を、マクロモデル42から消去する。この血管の消去処置により、内壁を這うような実際の観察結果と異なる血管が削除される効果が見込まれる。例えばCCOのような最小容量モデルは、導管血管(直径が100μm以上の太い動脈)の役割は微小循環に対して効率良く血液を届けることにあるとし、それを達成するような血管形態を構築しようとするものである。これに対して心臓内壁を直径が太いまま這うように走行する血管は、導管血管として非効率であると考えられる。したがって、最小容量モデルによって、このような血管に血液供給を担わせるのが非効率と判断され、CCOでは血管が接続されない。その結果、内壁を這うように走行する血管には血流はなく、そのような血管は消去される。
以下、図12に示したフローチャートの各ステップの詳細を述べる。
<<太い冠動脈または冠静脈の血管データおよび心臓メッシュの取得>>
心筋メッシュは、有限要素モデル作成部110で作成される。太い冠動脈または冠静脈は、CTやMRIといった医療画像診断装置から得られる画像を解析することで生成される。太い冠動脈または冠静脈の太さは、診断装置にもよるが、最も細い血管で直径1mm前後である。
図14は、太い血管データの一例を示す図である。太い血管データ43には、冠動脈43aと冠静脈43bとが表されている。冠循環の血管データは、図8に示したように、空間的な位置情報を持つ節点と、2つの節点を結ぶ線分である血管要素からなる。血管要素はパラメータとして、例えば直径(または半径)およびOrderの情報を持つ。
太い血管データ43は、例えば、医療画像診断装置から得られた心臓の画像における、冠動脈と冠静脈との位置を、ユーザがCADシステム100に入力する。またユーザは、位置を指定した冠動脈または冠静脈の太さやOrderを、CADシステム100に入力する。
CADシステム100では、冠循環モデル作成部120が入力内容を記憶部140に格納する。例えば冠循環モデル作成部120は、マクロモデル143の一部として、図8に示した節点情報テーブル143aおよび血管要素情報テーブル143b内に、太い血管データ43に関する入力内容を登録する。この際、冠循環モデル作成部120は、太い血管データ43に関するレコードに、例えば医療画像に基づくデータであることを示すフラグを付加することができる。冠循環モデル作成部120は、医療画像に基づくデータであることを示すフラグを参照し、以後の処理において血管のパラメータを更新する場合であっても、医療画像に基づくデータについてはパラメータを固定にしておくことができる。
<<解剖学的統計データに基づくモデリング>>
解剖学的統計データに基づくモデリング手法について説明する。まず解剖学的統計データとしては、例えば拡張期のブタの心臓を解剖して得られた、冠動脈、冠静脈、毛細血管についての詳細な計測データを用いる。計測データには、分岐点間の血管要素(Vessel Segment)の直径(または半径)および長さが含まれる。さらに計測データでは、直径に応じて、各血管要素にOrderが付与される。Orderとしては、例えば"Diameter Defined Strahler Order"を用いることができる。
解剖学的統計データ141から、図6に示したような情報が得られる。解剖学的統計データ141に基づいて、冠循環モデル作成部120により、冠循環モデル(マクロモデル)のモデリングが行われる。例えば冠循環モデル作成部120は、まず太い血管データと解剖学的統計データおよび乱数を用いて、空間的な位置情報を持たない冠循環データを生成する。
次に冠循環モデル作成部120は、心臓の有限要素モデルに対して冠循環の血管の走行の特徴を満たすように、冠循環データをマッピング(空間的な位置情報の決定)する。
図15は、冠循環モデル(マクロモデル)の生成例を示す図である。図15に示すように、心臓に対する位置情報を持たない冠循環データ44が用意される。この冠循環データ44が、有限要素モデル41に対してマッピングされる。すると、冠循環のマクロモデル45が生成される。
以下、空間的位置情報を持たない冠循環データの生成処理について詳細に説明する。
上述したように解剖学的統計データには、例えばOrderごとのエレメントの直径、長さの平均値と標準偏差が与えられている。そのため、これらのパラメータから規定される正規分布と冠循環モデル作成部120で発生させる乱数を用いれば、指定したOrderの血管要素またはエレメントの直径、長さを統計データに従うように決定することが可能である。
空間的位置情報を持たない冠循環データの生成手順は以下の通りである。
[第1の手順]冠循環モデル作成部120は、太い血管データ(入力)のOrder nの血管要素の節点から分岐する血管のOrder mをコネクティビティマトリックス(C(m,n))と乱数を用いて決定する。次に冠循環モデル作成部120は、コネクティビティマトリックスの値のうち、Order nのエレメントから発生するOrder m(動脈のmは11〜1、静脈では−1〜−12)の平均本数を正規化して、Orderごとの発生率に変換する。そして冠循環モデル作成部120は、Orderごとの発生率を用いて、分岐する血管のOrderを決定する。
[第2の手順]冠循環モデル作成部120は、Orderが決定されたエレメントに含まれる血管要素数を、Segment to Element Ratioの平均値と標準偏差から規定される正規分布と乱数により決定する。
[第3の手順]冠循環モデル作成部120は、エレメントの直径と血管要素の長さを第2の手順と同様に正規分布に従い決定する。エレメントの直径は、それに含まれる血管要素の直径でもある。
冠循環モデル作成部120は、上記の第1〜第3の手順を繰り返し行い、第1の手順においてOrder 6または−6より細いOrderの血管が出現したら、そのエレメントから分岐する血管要素の生成を停止する。すべてのエレメントで生成が停止したら、冠循環データの生成処理が終了する。
次に、冠循環データのマッピングについて詳細に説明する。
第2の実施の形態では、血管要素の節点の位置xの決定を、エネルギーの最小化問題とする。エネルギーは次式の通りである。
f(x)=f1(x)+f2(x)+f3(x) ・・・(1)
1(x)は位置決めがすでに行われた血管と空間的に重なることを回避するためのエネルギーである。f1(x)は、周辺血管の中点との距離に反比例し、かつそれらの容積に比例する。f2(x)はxを心筋内部に閉じ込めるためのコストである。f2(x)は、心外膜、心内膜、心基部の境界面に近づくほど高くなる。f3(x)は、xによって決まる血管の分岐角を、壁面せん断応力が最小となるような最適分岐角に近づけるためのエネルギーである。f3(x)は、血管の分岐角と最適分岐角との差が拡大するに従い増加する。
冠循環モデル作成部120は、冠循環データのうち、絶対値の大きいOrderを持つ血管要素のグループから順に、要素に含まれる位置決めが行われていない節点を選択する。そして冠循環モデル作成部120は、式(1)に示したエネルギーが最小となる節点の位置を決める。
そして冠循環モデル作成部120は、解剖学的統計データに基づくモデリングによって生成した血管要素を示すデータを、記憶部140のマクロモデル143内の節点情報テーブル143aと血管要素情報テーブル143bとに追加登録する。
<<最適モデルによる血管生成と接続>>
解剖学的統計データに基づくモデリング手法で生成された冠循環データ(マクロモデル)に対して、血管の末端点を心臓メッシュの節点とした最適モデルにより血管を生成し、接続する。第2の実施の形態では、最適モデルの一例として最小容量モデルを用いるものとする。
図16は、最適モデルによる血管生成と接続処理の手順の一例を示すフローチャートである。
[ステップS121]冠循環モデル作成部120は、圧力条件を設定する。例えば冠循環モデル作成部120は、血管網の最上位点における圧力値Proot、血管末端点における圧力値Ptermを設定する。冠動脈では、Prootは左右の冠動脈の起始部となるバルサルバ洞における圧力値が該当する。
[ステップS122]冠循環モデル作成部120は、心筋節点ごとの流量を決定する。例えば、冠循環モデル作成部120は、心外膜側よりも心内膜側のほうが流量が大きくなるように、心筋節点の流量を決定する。
[ステップS123]冠循環モデル作成部120は、心筋節点を順番に選択する際の、選択条件を決定する。例えば冠循環モデル作成部120は、心筋表面付近から順に心筋節点が選択されるように、選択条件を決定する。
[ステップS124]冠循環モデル作成部120は、ステップS123で決定した選択条件に従って、未選択の心筋節点を選択する。
[ステップS125]冠循環モデル作成部120は、近傍血管を探索する。例えば冠循環モデル作成部120は、選択した心筋節点近傍の血管要素を接続先候補として抽出する。距離計算には、例えば血管要素の中点と心筋節点の距離を用いる。例えば冠循環モデル作成部120は、選択した心筋節点と距離が近い方から、所定数(例えば20程度)の血管要素を接続先候補とする。
[ステップS126]冠循環モデル作成部120は、評価対象の近傍血管(接続先候補)を1つ選択し、選択した心筋節点から近傍血管に接続する血管要素を生成する。
[ステップS127]冠循環モデル作成部120は、評価関数値が最適となるように、選択した心筋節点を末端とする血管要素と近傍血管との接続点の位置を最適化する。例えば冠循環モデル作成部120は、予め与えられた評価関数でエネルギーを計算し、エネルギーが最小となる接続点の位置を求める。そして、冠循環モデル作成部120は、求めた位置に接続点を移動する。エネルギーを求める最適モデルとして、例えば血管の総容積を用いることができる。この場合、次式のエネルギーEを最小化する血管網を構築する。Vは血管要素の総容積を表す。
E=V ・・・(2)
[ステップS128]冠循環モデル作成部120は、評価関数値をメモリ102に保存する。
[ステップS129]冠循環モデル作成部120は、選択した心筋節点の接続を解除する。例えば冠循環モデル作成部120は、ステップS126で生成した血管を削除する。
[ステップS130]冠循環モデル作成部120は、すべての近傍血管を評価したか否かを判断する。未評価の近傍血管があれば、処理がステップS126に進められる。すべての近傍血管の評価が完了していれば、処理がステップS131に進められる。
[ステップS131]冠循環モデル作成部120は、選択した心筋節点を評価値が最小の近傍血管に再接続し、接続点の位置を、評価値が最適となる位置に決定する。
[ステップS132]冠循環モデル作成部120は、すべての心筋節点を選択したか否かを判断する。すべての心筋節点が選択済みの場合、処理が終了する。未選択の心筋節点がある場合、処理がステップS124に進められる。
このようにして、心筋節点を端点とする血管要素が追加される。
図17は、近傍血管への接続例を示す図である。第2の実施の形態では、選択した心筋節点から複数の近傍血管それぞれへの接続を試みられ、その都度、エネルギーが計算される。そして、エネルギーが最小となる近傍血管に再接続される。その過程が、図17に示されている。
(A)は、心筋節点が接続された状態を示している。(B)において、選択された心筋節点を末端とする血管が生成される。生成された血管は、存血管のうちの近傍血管の1つに接続される。例えば生成された血管は、近傍血管の中点に接続される。ここで接続された近傍血管は、2本の血管要素に分割される。(C)においてエネルギーが最小となる位置に接続点の位置が移動される。このとき、最小となったエネルギーの値が記憶される。(D)において、接続が切り離され、元の状態に戻される。
(E)において、選択された心筋節点を末端とする血管が再度生成され、別の近傍血管に接続される。(F)において、(C)の場合と同様に、エネルギーが最小となる位置に接続点が移動され、エネルギーが記録される。(G)において、接続が切り離され、再度元の状態に戻される。
そして(H)において、(C)と(F)とで得られたエネルギーのうち、最小の値を示す近傍血管に、選択した心筋節点と末端とする血管が再度接続される。そして、エネルギーが最小となる位置に、接続位置が決定される。このようにして、心筋節点に接続する血管が生成される。
次に、最小容量モデルによってエネルギーを計算する際の、血管半径などのパラメータの更新方法について説明する。
図18は、エネルギー計算対象の血管網の一例を示す図である。図18に示す血管網51に対して、血管要素(Segment)を追加するときの、エネルギーの計算に用いるパラメータの更新方法について説明する。なお血管網51は、9個の血管要素を含んでいる。血管要素には、血流の流入元に近い方から順に0から昇順の番号が振られている。以下i番目(iは0以上の整数)の血管要素をSegment iと表す。
ここで、図18の血管分岐点間の要素であるSegment i のパラメータとして、以下のパラメータを考える。
・半径:ri
・長さ:li
・Segment i を流れる血液流量:Qi
・ポアズイユ流れにおける抵抗値:Ri
・Segment i を頂点とする部分木(Subtree)の合成抵抗:Rsub,i
ここで、Riは、以下の式で表される。
Figure 0006358590
式(3)においてμは、血液の動粘性係数である。また、Segment iから分岐した血管jの半径比としてBifurcation Ratioが以下の式で定義される。
Figure 0006358590
また、分岐元の血管要素の半径rparentと分岐先の血管要素の半径rchild0,rchild1には下記の関係があるものと仮定する。
Figure 0006358590
パラメータγは定数であり、測定実験で得られる値などが用いられる。例えばγ=3とする。さらに血管網の頂点には圧力Prootが与えられる。血管末端点には圧力Ptermが与えられる。
パラメータの計算は下流側から行われる。まずβ5 7,β5 8が以下の手順で求められる。Segment 7, 8の流量比
Figure 0006358590
より
Figure 0006358590
が得られる。したがってこれらの式より以下が求まる。
Figure 0006358590
Figure 0006358590
次にβ3 5,β3 6が以下の手順で求められる。合成抵抗Rsub,5
Figure 0006358590
となる。Segment 5, 6の流量比
Figure 0006358590
から
Figure 0006358590
が得られる。そして、r3γ=r5γ+r6γの関係からβ3 5,β3 6を求めることができる。このようにβi jの計算を上流に向かって繰り返すことで、最終的に
Figure 0006358590
となる。Rsub,0は血管全体の抵抗に相当し、
root−Pterm=Rsub,00 ・・・(14)
が成り立つ。頂点から全体に供給する血液流量Q0を与えればr0を求めることができる。上記の処理によってβi jはすべて計算済みとなる。最後にr0とβi jにより血管の上流から全血管要素の半径が計算される。
次に、新規の血管要素追加したときの計算について説明する。
図19は、新規の血管要素を追加した場合のパラメータの更新範囲を示す図である。図19は、図18に示した血管網51に対して、新規のSegment 10 を接続する場合のパラメータの更新範囲を示している。パラメータの更新は上述の方法が基本であるが、上流に向かってBifurcation Ratio βi jの計算を行う血管要素は、Segment 0,2,3だけでよい。これは、例えば式(9)からわかるように、Bifurcation Ratio βi jはSegment iよりも下流側の血管要素の流量と長さに依存するためである。新規の血管要素と既存の血管要素との接続位置を最適化するときは、流量は変わらず、Segment 9,10の長さが変わる。そのためBifurcation Ratioの更新はSegment 0,2,3に限られる。一方、r0が更新されるため、半径の更新はすべての血管要素に対して行われる。
次に、エネルギー計算の別の例について説明する。上記の例では、血管の容積Vの値をエネルギーEとしているが、より適切な血管網を生成できるように、最小化対象となるエネルギーを次の式で定義する。
E=V+E med+Eshrink ・・・(15)
Vは全血管の容積である。E medは医療画像に代表されるデータによって、直径、長さが計測値として与えられた血管要素を保持するためのエネルギーである。Eshrinkは末端点から生成した血管要素の接続点が、最適化によりその他の血管要素の端点に重なることを防ぐためのペナルティである。以下、各エネルギーについて述べる。
・血管容積V
この項は、最小容量モデルと同様に全血管の容積に対応する。ただし図13に示したように、血管末端点への血流供給を行わない血管要素は削除される。そのため、血管容積の計算では、流量>0を満たす血管要素のみが対象となる。
・計測値維持のエネルギー(E med
ところで、従来の最小容量モデルでは、医療画像から得られた血管データを利用することが考慮されていない。一方、第2の実施の形態では、医療画像から得られた血管データが利用される。例えば図14に示したような太い血管のデータが、CTやMRIといった医療画像診断装置によって取得される。
実際の医療画像から得られるデータのうち、直径については分岐元と分岐先が同じかあるいは後者がわずかに大きいという状況は実際に起こりうる。ところが分岐元と分岐先の半径の関係式である式(5)をそのまま適用すると、分岐元と分岐先との直径が同じか、または分岐先の径の方が大きいという状況を、冠循環モデルで再現することができない。
ここで、冠循環モデルを作成する目的として、標準的な冠循環モデルを作成する場合と、患者固有の冠循環モデルを作成する場合とが考えられる。患者固有の冠循環モデルに基づいたシミュレーションを行うのであれば、冠循環モデルを作成する際には、医療画像からの計測に基づくデータ(冠動脈の太い血管要素の直径や長さ)を維持した状態で、血管生成が行うのが適切である。そこで第2の実施の形態では、医療画像からの計測に基づいて生成された血管要素については、直径や長さを維持することとする。
以下、医療画像由来の血管要素の計測値を固定した状態での最適モデルの計算方法について説明する。
図20は、医療画像由来の血管要素を含む冠循環モデルの血管網の一例を示す図である。血管網の上位に医療画像由来の複数の血管要素52がある。その先に、解剖学的統計データを基にした手法で生成された複数の血管要素53が接続されている。さらにその先に、最適モデルに基づく手法で生成された複数の血管要素54が接続されている。
このような血管網に、最適モデルに基づく手法で生成された、新規の血管要素55を接続する場合を想定する。ここで医療画像由来の複数の血管要素52の直径と長さは固定されているので、複数の血管要素52それぞれの端点における圧力は、血管網の最上位点における圧力値Prootと流量から決定される。ここで血管要素52aの端点の圧力を、Pmed_termとする。図20において破線で囲んだ部分木56を考えたとき、その頂点の圧力Pmed_termを用いて、図16に示したアルゴリズムを部分木56に対して適用することができる。
しかしすでに述べたようにPmed_termは、部分木56の末端の圧力Ptermとは無関係に決まるため、Pmed_term<Ptermとなる場合がある。このような圧力関係は、血液の逆流の発生という矛盾を起こしうる。そこでPmed_term>Ptermの関係を保つために以下のペナルティを設ける。
Figure 0006358590
前者はPmed_term>Ptermが満たされているときに、両者が近づかないようにするためのペナルティである。後者はPmed_term≦Ptermのときに圧力値の関係を是正するためのペナルティである。α、βはそれぞれ重みを決めるパラメータであり、正の実数である。
このような計測値維持のエネルギー(E med用いることで、部分木56の上位側の圧力Pmed_termが、末端の圧力Ptermより大きければ、それらの圧力の差分が大きい程、エネルギーの値が小さくなる。他方、部分木56の上位側の圧力Pmed_termが、末端の圧力Pterm以下であれば、それらの圧力の差分が大きい程、エネルギーの値が大きくなる。このように、エネルギーを最小化しようとする最適化の処理を適用することで、患者固有の状態(血管の太さなど)を保った上で、上位の圧力が下位の圧力より低くなるような逆転現象の発生抑止することができる。
・血管要素縮退のペナルティ(Eshrink
新規の血管要素の接続点の位置を最適化すると、接続点の位置が、その接続点を共有する他の血管要素の端点に重なる(Shrink)ことがある。血管要素の端点は、血管網の分岐点である。そのためShrinkが発生すると、分岐点にさらに血管を接続することとなり、不自然な分岐状態となってしまう。
図21は、新規の血管要素の接続点の移動例を示す図である。追加する血管要素61は、心筋節点71を末端として、接続点72によって上位(親)の血管要素62と接続される。上位の血管要素62の他方の端部は、節点73に接続されている。接続点72は、既存の血管要素63と共有される。既存の血管要素63の下位には、節点74を介して血管要素64,65が接続されている。血管要素64,65の末端は、節点75,76に接続されている。ここで、新規の血管要素61を接続する際に、接続点72は移動可能であるが、他の節点は移動できない。
ここで新規の血管要素61の長さと半径とを、それぞれlnew,rnewとする。上位の血管要素62の長と半径とを、それぞれlparent,rparentとする。接続点72を共有する血管要素63の長と半径とを、それぞれlold,roldとする。このとき第2の実施の形態ではShrinkの発生を防ぐための血管要素縮退のペナルティ(Eshrink)を、以下のように定義する。
Figure 0006358590
パラメータηは正の実数である。式(17)によれば、接続点72で接続された複数の血管要素61〜63それぞれについて、直径(2r)が長さ(l)より大きい場合、その差が大きい程にエネルギーの値が大きくなる。エネルギーの値が大きくなるということは、エネルギーを最小化する最適化に反することになる。そのため、接続点72の位置として、いずれかの血管要素61〜63の長さが直径より短くなる位置は選択され難くなる。したがって、このような血管要素縮退のペナルティ(Eshrink)を用いることで、接続点の位置が、その接続点を共有する他の血管要素の端点に重なる(Shrink)ことを抑止できる。
以上のようにして、最小容量モデルによる、心筋節点を末端とする血管要素の生成および接続が行われる。各種計算に用いる定数としては、例えば以下のような値が用いられる。
・全流量:133.3 ml/min
・大動脈圧:77.0 mmHg
・動脈末端圧力:57.0 mmHg
・右心房圧力:1.0 mmHg
・静脈末端圧力:5.0 mmHg
・E medのパラメータα:1.0×10-3
・E medのパラメータβ:1.0×103
・fshrinkのパラメータη:1.0×105
・分岐前後の半径を関連付けるパラメータγ:2.55
・血液の粘性係数:4.0 cp
次に、心筋節点の選択(図16のステップS123,S124)の順序について詳細に説明する。心筋節点をランダム選択した場合、全血管生成プロセスのうち、初期段階で生成された血管が太いものになる性質がある。したがって、このままでは太い血管が心筋表面付近を走行するという冠循環の特徴が、冠循環モデルに反映されない。したがって、心筋節点の選択はランダムではなく、心筋表面付近から選択するのが適切である。
第2の実施の形態では、心外膜に0、心内膜に1の境界条件をおいた心臓の有限要素モデルにおけるラプラス方程式の解を用いる。
図22は、ラプラス方程式の解を模式的に示した図である。図22には、ラプラス方程式の解の値が心外膜から心内膜に向かって大きくなる様子を、有限要素モデル41の断面上の模様の変化で表している。
ここで、心筋節点全体の集合をM、血管末端点が配置されていない心筋節点の集合をMu⊆M、心筋節点m∈Mに対応するラプラス方程式の解をΦ(m)とする。このとき、未選択の心筋節点mu∈Muが選択される確率fselectを次式のようにする。
Figure 0006358590
係数κは正の実数である。未選択の心筋節点の中から、式(18)に示す確率fselectで心筋節点を順番に選択することで、心外膜に近い方から優先して心筋節点が選択される。早く選択された心筋節点ほど血管が太くなる可能性が高くなる。そのため、このような確率で心筋節点を選択することで、太い血管が心筋表面付近を走行するという冠循環の特徴を反映させた冠循環モデルを作成することができる。
次に心筋節点への流量分布の設定について説明する。心筋に供給される血流量の分布は、心外膜側に比べて収縮の激しい内膜側において大きいとされている。そこで心筋節点選択のアルゴリズムと同様にラプラス方程式の解を用い、心内膜側と心外膜側との血流密度の比が1:b(bは0より大きく1より小さい実数)となるように、心筋節点ごとの流量を定める。まず心筋節点m∈Mのラプラス方程式の解をΦ(m)とし、節点体積をVnode(m)とする。節点体積とは心筋要素(例えば四面体)の体積を、その要素を構成する頂点(節点)の数(四面体の場合は4)で等分割し、それを節点体積として各節点に加算し、この処理を全要素に対して行うことで得られる。そして心筋節点mの重みW(m)を以下の式で求める。
Figure 0006358590
心筋全体に供給する血液流量をQallとしたとき、各節点の流量はQall・W(m)となる。
このように各節点の流量を、解剖学的に適切に定めることで、最適モデルに基づく手法で血管を生成する際に、適切な流量に基づいて血管要素のパラメータを算出できる。その結果、解剖学的に適切な冠循環モデルを作成することができる。
そして、冠循環モデル作成部120は、最適モデルに基づく手法によって生成した血管要素を示すデータを、記憶部140のマクロモデル143内の節点情報テーブル143aと血管要素情報テーブル143bとに追加登録する。
<<血液の流量が設定されなかった血管の削除>>
次に血液の流量が設定されなかった血管の削除処理について詳細に説明する。第2の実施の形態では、解剖学的統計データに基づくモデリング結果に対して、最適モデルに基づく手法により生成した血管が接続される。その後、流量が与えられなかった解剖学的統計データに基づくモデリングにより生成した血管が削除される(図13参照)。
このような血管の削除処置により、内壁を這う血管、あるいは心筋内壁に到達したのち外壁に向かう血管のように、観察結果と異なる血管が削除される効果が見込まれる。導管血管の役割は微小循環に対して効率良く血液を届けることにある。最小容量モデルは、役割を達成するような血管形態を構築するものである。これに対して心臓内壁を径が太いまま這うように走行する血管は、導管血管として非効率であると考えられる。最小容量モデルのような最適モデルに基づく手法では、このような血管に血液供給を担わせるのが非効率な血管には、新たな血管が接続されない。そこで、最適モデルに基づく手法で、末端に血管が接続されない血管を消去することで、観察結果と異なる血管を削除することが可能となる。
そして、冠循環モデル作成部120は、血液の流量が設定されなかったことにより削除対象となった血管要素を示すデータを、記憶部140のマクロモデル143内の節点情報テーブル143aと血管要素情報テーブル143bとから削除する。その結果、冠循環モデルのうちのマクロモデル部分が完成する。
図23は、生成されたマクロモデルの一例を示す図である。図23では、マクロモデル80に示される冠循環ネットワークを、動脈系81と静脈系82とに分けて表している。
なお、最適モデルに基づく手法で生成された血管の太さや本数は、パラメータや有限要素モデルを構成するメッシュの解像度で変化する。パラメータとメッシュの解像度は、ここでは冠循環シミュレーションのマルチスケール解析を考慮して設定される。
<冠循環モデル(ミクロモデル部分)作成>
マルチスケール解析では、太い冠状動脈・静脈から毛細血管までを含むすべてのスケールを考慮した冠循環モデルが用いられる。マルチスケール解析に用いる冠循環モデルでは、大動脈から発する太い冠状動脈から分岐を繰り返して小動脈、細脈、最終的に毛細血管に至る血管網が再現される。またマルチスケール解析に用いる冠循環モデルでは、毛細血管は細静脈に接続し、集合を繰り返しながら最終的に太い冠状静脈となり右心房へ接続する血管網も再現される。
図24は、微小循環モデルの一例を示す図である。微小循環モデル90は、動脈・静脈の細血管(細動脈91、細静脈92)と毛細血管93とを、解剖学的データに基づいて表現したものである。さらに第2の実施の形態では、微小循環モデル90とマクロモデル80の間のスケールに属する血管に左右の対称性があるものと仮定して、中間モデルが生成される。複数の微小循環モデルと、各微小循環モデルをマクロモデル80に接続する中間モデルとを合わせた血管網のモデルが、ミクロモデルである。このように対称性を有する中間モデルを生成することにより、血管ネットワークの本質的な特性を失うことなく、計算量を大幅に削減することが可能となる。
図25は、ミクロモデルの一例を示す図である。ミクロモデル710は、動脈系中間モデル711と静脈系中間モデル712、および複数の微小循環モデル90a〜90nを含んでいる。動脈系中間モデル711と静脈系中間モデル712は、それぞれ、上端は太い血管モデルに接続され、末端は微小循環モデル90a〜90nに接続されている。
冠循環ネットワークのシミュレーションにおいて、マクロモデルとミクロモデルの接続点は、心筋の圧力節点kと同じ位置とする。そしてミクロモデルが心筋から受ける外圧を心筋節点圧Pkで定義する。またミクロモデルの接続数は、心筋節点集中体積Vk muscleより決定される。さらに心筋容積に対する細血管の密度の貫壁性による違いを考慮するため、血管密度比を心筋節点に与える。心臓容積に対するミクロモデル血管の総容積の割合より、心筋節点に単位体積当たりに含まれるミクロモデル血管容積ρkを得る。ミクロモデル1個の血管総容積をVmicroとすると、マクロモデルの末端となる圧力節点kに接続されるミクロモデルの数nkは次式で決定できる。
Figure 0006358590
マクロモデルとミクロモデルの動脈側、静脈側接続部において次式の流量保存則が成立する。
Figure 0006358590
Qは流量を表している。Qの右下の添え字はマクロモデルの流量かミクロモデルの流量かを示している。Qの右上の添え字δは、動脈の流量かまたは静脈の流量かを表している。
図26は、圧力節点におけるマクロモデルとミクロモデルとの接続法を示す図である。有限要素モデルの要素41aは、複数の圧力節点間を線分で接続して得られる多面体である。要素41aの圧力節点kを末端とするマクロモデル80の血管に対して、要素41aの圧力節点kを介して、nk個のミクロモデル710が接続されている。なお、図26に示されているマクロモデル80の血管ネットワークは、動脈系のネットワークである。
動脈系のマクロモデル80から、圧力節点を介してミクロモデルに送出される血液の流量Qδmacroは、nk個のミクロモデル710に分配される。また、ミクロモデル710から、圧力節点を介してマクロモデルへ送出される血液の流量Qδmicroは、nk個分が合成され、マクロモデル80に流入する。なお、例えばミクロモデル710において、マクロモデル80から血流が流入している場合、流量Qδmicroは負の値となる。そのため、流量Qδmacroと流量Qδmicroのnk倍との加算値は、式(21)に示したように0になる。
ここで、マクロモデル80とミクロモデル710の血管の太さは、おおよそ直径100μm前後を境界とする。したがって、最適モデルに基づく手法で使用するパラメータおよび心筋メッシュの解像度は、生成される血管網の末端が直径100μm前後となるようなものが選択される。
以上のように、マクロモデル80にミクロモデル710を接続することにより、冠循環モデルが完成する。完成した冠循環モデルは、解剖学的に既知となっている血管ネットワークと整合性がとれたものとなっている。
図27は、生成された冠循環モデルの冠動脈の一例を示す図である。図27では、冠動脈810の全体から、体軸に直交する板状の領域(Slab領域)811に含まれる冠動脈(Slab領域内冠動脈)812,813を示している。一方のSlab領域内冠動脈812は、Slab領域811に含まれるすべての冠動脈を示している。他方のSlab領域内冠動脈813は、Slab領域811に含まれる冠動脈のうち、直径が100μm程度以上の血管を示している。
図28は、生成された冠循環モデルの冠静脈の一例を示す図である。図28では、冠静脈820の全体から、体軸に直交する板状の領域(Slab領域)821に含まれる冠静脈(Slab領域内冠静脈)822,823を示している。一方のSlab領域内冠静脈822は、Slab領域821に含まれるすべての冠静脈を示している。他方のSlab領域内冠静脈823は、Slab領域821に含まれる冠静脈のうち、直径が100μm程度以上の血管を示している。
ここで比較例として、解剖学的統計データを基にした手法のみで作成された冠循環モデルを示す。
図29は、冠循環モデルの比較例を示す図である。図29には、解剖学的統計データを基にした手法のみで作成された冠循環モデル内のSlab領域に含まれる冠動脈(Slab領域内冠動脈910)と冠静脈(Slab領域内冠静脈920)とが示されている。解剖学的統計データを基にした手法のみで作成された冠循環モデルには、内壁を走行する血管がある。また血管が疎な領域が存在する。
一方、図27、図28に示すように、第2の実施の形態によれば、血管が疎な領域の発生が抑止されている。また内壁走行する血管の生成も抑止されている。
また、第2の実施の形態では、筋節点の選択はランダムではなく、心筋表面付近を先に選択する。これにより、生成された冠循環モデルでは、心筋表面から内膜に向かって血管が生成される。
図30は、Orderごとの血管を示す図である。図30内の上側には、Slab領域内冠動脈のうち、Order 7以上の動脈814が示されている。図30内の下側には、Slab領域内冠動脈のうち、Order 6以上の動脈815が示されている。Order 7以上の動脈814は、心筋表面付近に多く配置されている。そして、Order 7より細いOrder 6の動脈も含めたOrder 6以上の動脈815では、心筋の内膜付近にも血管が生成されている。この図30から、心筋表面から内膜に向かって血管が生成されていることが理解できる。
このようにして、解剖学的に正しい冠循環モデルが、冠循環モデル作成部120によって生成される。生成された冠循環モデルは、例えば、ストレージ装置300内にマクロモデル143とミクロモデル144とに分けて格納される。
<シミュレーション実行>
冠循環モデルが完成すると、シミュレーション条件決定部130により、シミュレーション条件が管理ノードに指示される。すると、管理ノード200の制御の下、複数の計算ノード400,500,600,・・・によって冠循環シミュレーションが行われる。例えば、管理ノード200によって、記憶部140内の有限要素モデル142、マクロモデル143、およびミクロモデル144が、ストレージ装置300にコピーされる。そして、管理ノード200から複数の計算ノード400,500,600,・・・に、冠循環シミュレーションの実行が指示される。
例えばマクロモデルの解析は計算ノード400で実行され、多数のミクロモデルの解析は、他の計算ノード500,600で分散処理される。その結果、効率的なシミュレーションが行われる。しかも、解剖学的に正しい冠循環モデルに基づいてシミュレーションが行われるため、信頼性の高いシミュレーション結果を得ることができる。
以上のように、第2の実施の形態によれば、最適モデルに基づく手法により、心筋節点を末端とする血管要素を生成するようにしたため、血管が疎な領域の発生を抑止することができる。
また解剖学的統計データに基づくモデリング手法で生成した血管要素のうち、最適モデルに基づく手法により他の血管要素が接続されなかった血管要素について削除するようにしたため、内壁を這うような血管を削除することが可能となる。その結果、冠循環モデルに観察結果と異なる血管が含まれることを抑止できる。
また、解剖学的統計データに基づくモデリング手法により生成したデータに対して、最適モデルに基づく手法を適用しているため、より観察結果に適合する冠循環モデルが生成できるようになっている。例えば、RCA,LCXが心室と心房の接合部を走行する様子など、最適モデルによるモデリング手法だけでは再現しえない部分の再現が可能となっている。
また、最適モデルに基づく手法での最小化させるエネルギーに、計測値維持のエネルギー(E med)の項を追加したことで、医療画像に基づく冠循環データ末端の血圧が、その先に接続された血管要素の末端の血圧より小さくなってしまうことが抑止される。
また、最適モデルに基づく手法での最小化させるエネルギーに、血管要素縮退のペナルティ(Eshrink)の項を追加したことで、新規の血管要素の接続点の位置が、その接続点を共有する他の血管要素の端点に重なることを抑止できる。
このように、第2の実施の形態に示した手法で冠循環モデルを作成することで、解剖学的に適切な冠循環モデルを生成することができる。そして、そのような冠循環モデルを用いて冠循環のシミュレーションを行うことで、信頼性の高いシミュレーション結果を得ることが可能となる。
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
10 血管データ生成装置
11 記憶手段
12 第1の生成手段
13 第2の生成手段
14 更新手段
15 解剖学的統計データ
16 形状モデル
16a 節点
17 第1の血管データ
17a 血管網
18 第2の血管データ
18a 複数の血管

Claims (10)

  1. 器官の血管に関する解剖学的統計データに基づいて、前記器官内の血管網を示す木構造を有する第1の血管データを生成する第1の生成手段と、
    前記器官の形状を定義した形状モデルに含まれる複数の節点それぞれを接続元とし、前記第1の血管データで示される血管網に含まれる、前記接続元との距離が近い方から所定数の血管のうちの1つを、前記接続元の節点に対応する接続先の血管とし、前記複数の節点それぞれを対応する前記接続先の血管に接続する複数の血管を示す第2の血管データを生成する第2の生成手段と、
    前記第1の血管データで示される血管網から、前記第2の血管データで示される血管が末端に接続されていない部分が削除されるように、前記第1の血管データを更新する更新手段と、
    を有する血管データ生成装置。
  2. 前記第1の生成手段は、医療画像に表された血管の末端に、前記解剖学的統計データに基づく血管を接続することで、前記第1の血管データを生成することを特徴とする請求項1記載の血管データ生成装置。
  3. 器官の血管に関する解剖学的統計データに基づいて、前記器官内の血管網を示す木構造を有する第1の血管データを生成する第1の生成手段と、
    前記器官の形状を定義した形状モデルに含まれる複数の節点それぞれを接続元とし、前記第1の血管データで示される血管網に含まれる、前記接続元との距離が近い方から所定数の血管のうちの1つを、前記接続元の節点に対応する接続先の血管とし、前記複数の節点それぞれを対応する前記接続先の血管に接続する複数の血管を示す第2の血管データを生成し、前記第1の血管データと前記第2の血管データとで表される血管網を、前記血管網の末端と末端に接続された血管の上位の点との圧力差、または血管内の血液の流量を用いた評価関数で評価したときに高い評価が得られるように、前記第1の血管データと前記第2の血管データを適正化する第2の生成手段と、
    前記第1の血管データで示される血管網から、前記第2の血管データで示される血管が末端に接続されていない部分が削除されるように、前記第1の血管データを更新する更新手段と、
    を有する血管データ生成装置。
  4. 器官の血管に関する解剖学的統計データに基づいて、前記器官内の血管網を示す木構造を有する第1の血管データを生成する第1の生成手段と、
    前記器官の形状を定義した形状モデルに含まれる複数の節点と、前記第1の血管データで示される血管網とをそれぞれ接続する複数の血管を示す第2の血管データを生成し、血管網の末端の血液の圧力よりも、該末端に接続された血管の上位の点の血液の圧力の方が高い場合には、該末端と該上位の点との圧力差が大きいほど高い評価となり、該末端の血液の圧力よりも、該上位の点の血液の圧力の方が低い場合には、該末端と該上位の点との圧力差が大きいほど低い評価となる評価関数で、前記第1の血管データと前記第2の血管データとで表される血管網を評価したときに、高い評価が得られるように、前記第1の血管データと前記第2の血管データを適正化する第2の生成手段と、
    を有する血管データ生成装置。
  5. 前記第2の生成手段は、前記評価関数として、前記第2の血管データで示される血管の長さが、該血管の直径に比べて長いほど高い評価となる式を用いることを特徴とする請求項4記載の血管データ生成装置。
  6. 器官の血管に関する解剖学的統計データに基づいて、前記器官内の血管網を示す木構造を有する第1の血管データを生成する第1の生成手段と、
    前記器官の形状を定義した形状モデルに含まれる複数の節点と、前記第1の血管データで示される血管網とをそれぞれ接続する複数の血管を示す第2の血管データを生成し、前記器官の内側の面に近い節点に接続された血管ほど血流量を多くして、血管内の血液の流量を用いた評価関数を計算することで、前記第1の血管データと前記第2の血管データとで表される血管網を評価したときに、高い評価が得られるように、前記第1の血管データと前記第2の血管データを適正化する第2の生成手段と、
    を有する血管データ生成装置。
  7. 器官の血管に関する解剖学的統計データに基づいて、前記器官内の血管網を示す木構造を有する第1の血管データを生成する第1の生成手段と、
    前記器官の外側の面に近い節点ほど選択確率を高くして、前記器官の形状を定義した形状モデルに含まれる複数の節点を順番に選択し、選択した順に、選択された節点を接続元として、前記接続元と前記第1の血管データで示される血管網とを接続する血管の、接続先、長さ、および太さを決定し、前記複数の節点と、前記第1の血管データで示される血管網とをそれぞれ接続する複数の血管を示す第2の血管データを生成する第2の生成手段と、
    を有する血管データ生成装置。
  8. 前記第2の生成手段は、前記器官は心臓であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の血管データ生成装置。
  9. コンピュータが、
    器官の血管に関する解剖学的統計データに基づいて、前記器官内の血管網を示す木構造を有する第1の血管データを生成し、
    前記器官の形状を定義した形状モデルに含まれる複数の節点それぞれを接続元とし、前記第1の血管データで示される血管網に含まれる、前記接続元との距離が近い方から所定数の血管のうちの1つを、前記接続元の節点に対応する接続先の血管とし、前記複数の節点それぞれを対応する前記接続先の血管に接続する複数の血管を示す第2の血管データを生成し、
    前記第1の血管データで示される血管網から、前記第2の血管データで示される血管が末端に接続されていない部分が削除されるように、前記第1の血管データを更新する、
    血管データ生成方法。
  10. コンピュータに、
    器官の血管に関する解剖学的統計データに基づいて、前記器官内の血管網を示す木構造を有する第1の血管データを生成し、
    前記器官の形状を定義した形状モデルに含まれる複数の節点それぞれを接続元とし、前記第1の血管データで示される血管網に含まれる、前記接続元との距離が近い方から所定数の血管のうちの1つを、前記接続元の節点に対応する接続先の血管とし、前記複数の節点それぞれを対応する前記接続先の血管に接続する複数の血管を示す第2の血管データを生成し、
    前記第1の血管データで示される血管網から、前記第2の血管データで示される血管が末端に接続されていない部分が削除されるように、前記第1の血管データを更新する、
    処理を実行させる血管データ生成プログラム。
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