JP6353799B2 - プログラムおよび支援方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プログラムおよび支援方法に関し、特に、シミュレーションプログラムの実行を支援する基盤ソフトウェアとなるプログラムおよび支援方法に関する。
現在知られている内科的疾患の多くは、体内の化学反応に問題があると理解されている。問題のある化学反応を制御するには、薬剤などにより体外から適切な分子を送り込み、当該化学反応に関与する生体分子(タンパク質、核酸、脂質、金属イオンなど)の構造を制御する必要がある。
しかし、このような適切な分子を含む化合物の候補は、この化合物が分子量500程度であるとしても膨大な数であり、有機合成しバッオアセッセイを行う実験などにより網羅的にスクリーニングして当該化合物を同定することは、時間がかかりすぎて現実的でない。
そのため、当該化合物を同定するまでの時間を節約するべく、標的となる生体分子に対してコンピュータ内でスクリーニング(インシリコスクリーニング)を行うことで、当該化合物を設計する支援する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
特許文献1では、仮想リガンドスクリーニングを行って標的に結合することが予測される低分子化合物を同定し、分子動力学シミュレーションを行うことで標的と低分子化合物との相互作用を算出する方法が提案されている。
特表2008―537744号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、適切な分子(化合物)の候補を選定(スクリーニング)することができるものの、スクリーニングされる候補の数は依然多い。そのため、選定される候補を有機合成し、バイオアッセイを数多く行う必要があるため、選定される候補から適切な分子(化合物)を同定するまでに長い時間を要する。つまり、上記特許文献1に記載の方法では、適切な分子の候補の選定を正確に行うことができず、膨大な数をスクリーニングする大規模スクリーニングには適さないという問題がある。
本発明は、上述の事情を鑑みてなされたもので、標的生体分子の活性を制御する化合物の候補をより正確に予測することができるプログラムおよび支援方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係るプログラムは、シミュレーションの実行を支援する基盤ソフトウェアとなるプログラムであって、タンパク質を含む標的生体分子の立体構造を示す立体構造ファイルおよび複数のリガンドの立体構造を示す情報を有する低分子化合物データベースを用いて、前記標的生体分子と前記複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出する第1シミュレーション(DS)を計算機に実行させることにより、複数の第1算出結果を得る第1処理ステップと、前記複数のリガンドのうち選択された一のリガンドに対応する第1算出結果を選択する
ことで前記一のリガンドが前記標的生体分子にドッキングされたリガンド複合体と前記標的生体分子とである選択複合体における初期立体構造を示す第1入力ファイルを生成し、前記第1入力ファイルを用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションにより前記選択複合体の一の立体配置を計算する第2シミュレーション(MD)を計算機に実行させることで、前記選択複合体の一の立体配置を示す第2算出結果を得る第2処理ステップと、前記第2算出結果から第2入力ファイルを生成し、フラグメント分子軌道法を用いた前記選択複合体の一の立体配置の量子化学計算を、前記第2入力ファイルを用いて行う第3シミュレーション(QC)を計算機に実行させることにより、前記標的生体分子と前記選択された一のリガンドと相互作用エネルギーとの情報をもつ第3算出結果を得る第3処理ステップとを、含む。
これによれば標的生体分子の活性を制御する化合物の候補をより正確に予測することができるプログラムを実現することができる。
ここで、例えば、前記第1処理ステップでは、前記低分子化合物データベースから、複数のリガンド立体構造ファイルを生成し、前記複数のリガンド立体構造ファイルを1つずつ入力することで、前記第1シミュレーション(DS)のプログラムに、前記標的生体分子と前記複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出させるとしてもよい。
また、例えば、前記第1処理ステップでは、国際的に標準化された生体分子立体構造のデータベースであるPDB(Protein Data Bank)から、前記標的生体分子の立体構造データを有するPDBファイルを取得し、前記第1シミュレーション(DS)のプログラムで認識可能なファイルに変換した前記立体構造ファイルを用いるとしてもよい。
また、例えば、前記第3処理ステップでは、前記第2算出結果の原子座標の表現を電子座標の表現に変換することにより、前記第2算出結果から前記第2入力ファイルを生成するとしてもよい。
また、例えば、前記第3処理ステップでは、前記第2算出結果と、前記フラグメント分子軌道法に基づく複数のフラグメントの切り方を示す情報とから、前記第2入力ファイルを生成するとしてもよい。
また、例えば、前記プログラムは、さらに、GUIで操作可能なGUI操作画面を提供するGUIステップを含み、前記GUIステップにより提供されたGUI操作画面により、前記第1処理ステップ、前記第2処理ステップおよび前記第3処理ステップを実行するとしてもよい。
ここで、例えば、前記プログラムは、前記標的生体分子の活性を制御する化合物の候補を選別するために用いられるである。
また、例えば、前記第1シミュレーションのプログラムは、前記基盤ソフトウェアにプラグインされたAutoDock Vinaであり、前記第2シミュレーションのプログラムは、前記基盤ソフトウェアにプラグインされたAmberであり、前記第3シミュレーションのプログラムは、前記基盤ソフトウェアにプラグインされたPAICSである。
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る支援方法は、シミュレーションの実行を支援する支援方法であって、タンパク質を含む標的生体分子の立体構造を示す立体構造ファイルおよび複数のリガンドの立体構造を示す情報を有する低分子化合物データベースを用いて、前記標的生体分子と前記複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出する第1シミュレーション(DS)を計算機に実行させることにより、複数の第1算出結果を得る第1処理ステップと、前記複数のリガンドのうち選択された一のリガンドに対応する第1算出結果を選択することで前記一のリガンドが前記標的生体分子にドッキングされたリガンド複合体と前記標的生体分子とである選択複合体における初期立体構造を示す第1入力ファイルを生成し、前記第1入力ファイルを用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションにより前記選択複合体の一の立体配置を計算する第2シミュレーション(MD)を計算機に実行させることで、前記選択複合体の一の立体配置を示す第2算出結果を得る第2処理ステップと、前記第2算出結果から第2入力ファイルを生成し、フラグメント分子軌道法を用いた前記選択複合体の一の立体配置の量子化学計算を、前記第2入力ファイルを用いて行う第3シミュレーション(QC)を計算機に実行させることにより、前記標的生体分子と前記選択された一のリガンドと相互作用エネルギーとの情報をもつ第3算出結果を得る第3処理ステップとを、含む。
これにより、標的生体分子の活性を制御する化合物の候補をより正確に予測することができる支援方法を実現できる。
また、上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る支援方法は、3つのシミュレーションを用いて化合物を選定または最適化する支援を行う支援方法であって、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)、X線結晶構造解析法、電子顕微鏡又はシンクロトロン放射光結晶構造解析法により作成されたタンパク質を含む標的生体分子の立体構造を示す立体構造ファイルと、複数のリガンドの立体構造を示す情報を有する低分子化合物データベースを準備し、前記標的生体分子と前記複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出する第1シミュレーション(DS)を実行することにより、スクリーニングし、前記第1シミュレーションでスクリーニングした結果を用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションである第2シミュレーション(MD)を実行することにより、一の立体配置を算出し、算出した前記一の立体配置を用いて、フラグメント分子軌道法を用いた量子化学計算を行う第3シミュレーション(QC)を実行させることにより、スクリーニングされた前記標的生体分子と結合する一のリガンドを前記標的生体分子の活性を制御する化合物の候補として選定または最適化する。
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、集積回路またはコンピュータで読み取り可能なCD−ROM等の記録媒体で実現されてもよく、システム、集積回路、または記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本発明によれば、標的生体分子の活性を制御する化合物の候補をより正確に予測することができるプログラムおよび支援方法を実現することができる。
図1は、実施の形態における基盤ソフトウェアの構成の一例を示すブロック図である。 図2は、実施の形態における基盤ソフトウェアの動作の一例を示すフローチャートである。 図3は、実施の形態における基盤ソフトウェアが提供するGUI画面の一例を示す図である。 図4は、実施の形態における基盤ソフトウェアが提供するGUI画面の一例を示す図である。 図5は、実施の形態における標的生体分子の結合部位を決定するために用いられる画面の一例を示す図である。 図6は、実施の形態における第1算出結果に含まれるドッキングスコア順に並んだランキングを示す画面の一例を示す図である。 図7は、実施の形態におけるGUI部が提供するリガンドと結合部位とをグラフィック化した画面の一例を示す図である。 図8は、実施の形態における第1入力ファイルを作成するために用いられる画面の一例を示す図である。 図9は、実施の形態における第2入力ファイルを作成するために用いられる画面の一例を示す図である。 図10は、実施の形態における相互作用を確認するために用いられる画面の一例を示す図である。 図11は、実施例における第1シミュレーション〜第3シミュレーションの算出結果を示す図である。 図12は、実施例における2個の低分子化合物についての結果を示す図である。 図13は、実施例における分子動力学シミュレーションを行う前と後での立体配置を示す図である。 図14は、本発明の基盤ソフトウェアが支援する処理の概念を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態)
内科的疾患の原因となるタンパク質などの生体分子の構造を制御する適切な分子(化合物)の候補を、有機合成しバッオアセッセイを行う実験などにより網羅的にスクリーニングして当該化合物を同定するのは現実的でない。
そのため、内科的疾患の原因となるタンパク質などの分子を分子生物学的な手法で(複数)同定し、立体構造を決定し、その活性を制御するための薬剤分子(化合物)を量子化学に基づいて、理論的に計算機を用いて設計する方法が、効率的であると考える。その後、薬剤分子(化合物)を有機合成し、生体内に投与した際の影響を観察し、さらに目的とする作用のみを示すようになるまで、薬剤分子の化学構造を最適化する方法を行うことで、内科的疾患の分子制御が可能となる。つまり、以上の手法(論理的創薬)は、(i)疾患関連分子(標的生体分子)の「立体構造決定」、(ii)立体構造に基づく「創薬計算」、(iii)設計された分子(化合物)の「有機合成」、(iv)合成された分子(化合物)の「バイオアッセイ(生物試験)」の全4工程よりなる。そして、(i)〜(iv)を再帰的に繰り返すことにより、薬剤の化学構造を最適なものにすることができる。
本実施の形態では、(ii)立体構造に基づく「創薬計算」の工程において用いる基盤ソフトウェア10について、説明する。
[基盤ソフトウェア10の構成]
図1は、本実施の形態における基盤ソフトウェアの構成の一例を示すブロック図である。
基盤ソフトウェア10は、シミュレーションの実行を支援する基盤ソフトウェアとなるプログラムである。基盤ソフトウェア10は、例えば、タンパク質などの標的生体分子の活性を制御する化合物(分子)の候補を選別するために用いられる。
基盤ソフトウェア10は、Windows(登録商標)、Linux(登録商標)、またはMac OSなどがインストールされたPC等のクライアント機器30で実行される。基盤ソフトウェア10は、以下で説明する第1シミュレーションを行うシミュレーションプログラム、第2シミュレーションを行うシミュレーションプログラム、第3シミュレーションを行うシミュレーションプログラムがプラグインされ、これらのシミュレーションを連携させて統合的に実行することができる。基盤ソフトウェア10は、例えばPythonで設計されており、オープンソースの分子グラフィックスツールを利用して、3つシミュレーションをGUI操作画面で一貫して行うことができる単一のプラットフォームソフトウェアである。
本実施の形態では、基盤ソフトウェア10は、図1に示すように、機能として、GUI部101と、第1処理部102と、第2処理部103と、第3処理部104とを備える。
[第1処理部102]
第1処理部102は、タンパク質を含む標的生体分子の受容体の立体構造を示す立体構造ファイルおよび複数のリガンドを示す情報を有する低分子化合物データベースを用いて、受容体と複数のリガンドとの結合エネルギー及び結合モデルの少なくも一方(ドッキング)を算出する第1シミュレーションを計算機に実行させることにより、複数の第1算出結果を得る。ここで、複数のリガンドは、活性を制御するための化合物の候補の一例である。第1シミュレーションは、受容体のくぼみなどの結合部位に結合するリガンドを探索するドッキングシミュレーション(DS:Docking Simulation)である。本実施の形態では、基盤ソフトウェア10にプラグインされたAutoDock Vinaプログラムを用いてドッキングシミュレーション(DS)を行う。ドッキングシミュレーション(DS)により、バインディングモードを解析し、ランキング付けることができるので、ドッキングシミュレーション(DS)を行うことにより、当該化合物の候補となるリガンドのスクリーニングに用いることができる。
また、第1処理部102は、国際的に標準化されたタンパクなど生体分子の立体構造のデータベースであるPDB(Protein Data Bank)から、標的生体分子の立体構造データを有するPDBファイルを取得し、第1シミュレーション(DS)のプログラムで認識可能なファイルに変換した立体構造ファイルを用いる。ここで、PDBファイルは、PDB(Protein Data Bank)に登録された10万以上の生体分子の立体構造ファイルである。同様に、複数のリガンド(低分子化合物)の立体構造を示す情報を有するMOL2またはSDFファイルはリガンドのデータベースからダウンロード(取得)されたファイルである。なお、PDBに登録される受容体とその立体構造の数は年々増加している。第1処理部102で用いる立体構造のデータは、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)、X線結晶構造解析法、電子顕微鏡又はシンクロトロン放射光結晶構造解析法により作成されたものを用いる。
なお、PDBファイルやMOL2またはSDFファイルは、第1シミュレーション(DS)を行うためのプログラム(AutoDock Vina)では、そのまま認識ができない。そのため、第1処理部102は、上記の立体構造ファイルをAutoDock Vinaにおいて認識できるファイル形式(PDBQTファイル)に変換して用いている。
なお、基盤ソフトウェア10ではない他のGUIツール(他のAutoDock Vina GUIツール)で第1シミュレーション(DS)を行う場合、シミュレーション行う前にリガンドの立体構造を含まれる複数のリガンドファイルを一つずつ読み込む前処理作業が必要であるため、リガンド数が大容量(例えば100万個のラージスケール)なるとすべてのファイルを読み込めないという問題があり、ラージスケールでの第1シミュレーション(DS)を行うことができないという問題がある。すなわち、他のAutoDock Vina GUIツールは、大容量(例えば配位子が100万個のラージスケールのもの)のリガンドを取り扱うことができないという問題があった。そのため、第1処理部102では、リガンドファイルの保存場所だけを入力し、複数のリガンドファイルを1つずつ事前に読み込ませず使う時だけシミュレーションプログラムに読み込ませることで、第1シミュレーション(DS)のプログラム(AutoDock Vina)で、受容体と複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出させる。これにより、基盤ソフトウェア10では、AutoDock Vinaを大容量でも用いることができる。
また、第1処理部102では、AutoDock Vinaによる第1シミュレーション(DS)を、基盤ソフトウェア10を実行するクライアント機器30で実行させてもよいし、クライアント機器30とネットワークで接続された計算機20で実行させてもよい。本実施の形態では計算機20で実行させた場合を例に取り説明している。ここで、計算機20は、ワークステーションやスーパコンピュータなどであり、第1シミュレーション(DS)の実行を、クライアント機器30と比較して高速に行うことができる。
また、第1処理部102は、計算機20からランキングされた複数の第1算出結果を得る(取得する)。これにより、ランキング上位の第1算出結果に対応するリガンドとその複合体を確認し、標的生体分子の活性を制御する化合物の候補として適切なものを選別(選択)することができる。なお、選別は、クライアント機器30において分子グラフィックスツールを用いて可視化して確認することで行う。
[第2処理部103]
第2処理部103は、複数のリガンドのうち選択された一のリガンドに対応する第1算出結果を選択することで一のリガンドが受容体にドッキングされたリガンド複合体と受容体とである選択複合体における初期立体構造を示す第1入力ファイルを生成する。第2処理部103は、第1入力ファイルを用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションにより選択複合体の一の立体配置を計算する第2シミュレーションを計算機に実行させることで、選択複合体の一の立体配置を示す第2算出結果を得る。ここで、第2シミュレーションは、観測データなどで与えられた最初の原子の配置を用いて原子・分子の動きをコンピュータの中で再現する分子動力学シミュレーション(MD:Molecule Dynamics)である。本実施の形態では、基盤ソフトウェア10にプラグインされたAmberプログラムパッケージを用いて、観測データとして第1算出結果を利用した分子動力学シミュレーション(MD)を行う。
分子動力学シミュレーション(MD)を行うと、最初の原子の配置から原子に働く力(化学結合力、分子間力、静電気力等)を計算し、その働く力を受けた原子がどのように運動するのかをニュートンの運動方程式に基づいて計算し、原子の配置を動かすことができる。本実施の形態では、第2処理部103は、第1入力ファイルの選択複合体における初期立体構造を利用して、分子動力学法を用いた分子シミュレーションにより選択複合体の一の立体配置を計算することができる。これにより、リガンドなどの化合物がタンパク質に接した形で化合物を動かすことができるので、原子同士が正しい位置に来ているかを確かめることができる。
第2処理部103では、第2シミュレーション(MD)を行うためのプログラムパッケージ(Amber)を実行するための初期化構造を認識できるインプットファイルとして、選択された第1算出結果から一のリガンドが受容体にドッキングされたリガンド複合体と受容体とである選択複合体の初期立体構造を示す第1入力ファイルを生成する。
また、第2処理部103では、Amberによる第2シミュレーション(MD)を、基盤ソフトウェア10を実行するクライアント機器30で実行させてもよいし、クライアント機器30とネットワークで接続された計算機20で実行させてもよい。計算機20に第2シミュレーション(MD)の実行を行わせた場合、クライアント機器30と比較して高速に行うことができる。
また、第2処理部103では、選択複合体の一の立体配置を示す第2算出結果を得る(取得する)。この第2算出結果には、選択複合体の相互エネルギーや結合自由エネルギーが含まれている。なお、この結合自由エネルギーは、第2算出結果に含まれる選択複合体の相互エネルギーから算出するとしてもよい。
[第3処理部104]
第3処理部104は、第2算出結果から第2入力ファイルを生成する。そして、第3処理部104は、フラグメント分子軌道法を用いた当該選択複合体の一の立体配置の量子化学計算を、第2入力ファイルを用いて行う第3シミュレーションを計算機に実行させることにより、受容体と選択された一のリガンドと相互作用エネルギーとの情報をもつ第3算出結果を得る。ここで、第3シミュレーションは、フラグメント分子軌道法を用いて、タンパク質などの巨大分子系の標的生体分子の量子化学計算を行うシミュレーション(QC:Quantum Chemistry)である。本実施の形態では、基盤ソフトウェア10にプラグインされたPAICSというプログラムを用いて第2算出結果を利用した量子化学計算(QC)行う。この量子化学計算(QC)により、標的生体分子とリガンドなどの化合物との相互作用を示す相互作用エネルギーを解析して評価することができるので、標的生体分子の活性を制御する化合物の候補をより正確に予測することができる。
第3処理部104は、第2算出結果の原子座標の表現を電子座標の表現に変換することにより、第2算出結果から第2入力ファイルを生成する。なお、第3シミュレーション(QC)を行うプログラムであるPAICS単体では、Amberなどの分子動力学シミュレーション(MD)の結果をそのまま利用できない。そのため、第3処理部104では、上記のように第2算出結果の原子座標の表現を電子座標の表現に変換することにより、分子動力学シミュレーション(MD)の第2算出結果を、第3シミュレーション(QC)を行うプログラムであるPAICSに実行させることができる。また、Amberなどの分子動力学シミュレーション(MD)の結果を電子座標の表現に変換する工程は大変な手間を要するが、第3処理部104ではそのアルゴリズムを有しており、自動変換できる。
第3処理部104は、第2算出結果と、フラグメント分子軌道法に基づく複数のフラグメントの切り方を示す情報とから、第2入力ファイルを生成することができる。
ここで、フラグメント分子軌道(FMO)法について説明する。
フラグメント分子軌道法では、系全体を比較的小さなフラグメントに分割し、フラグメント単体(モノマー)およびフラグメントペア(ダイマー)の計算のみから、全体のプロパティを算出する。これにより、小さな計算を複数回実行するだけでよくなるので、計算コストを大きく減らすことができる。また、モノマーやダイマーの計算は独立して行うことができるので、高い並列効率を実現することができる。また、全エネルギーの定式化の中で、フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE)が定義されるので、分子間相互作用の解析などにおいて有効に利用できる。
しかしながら、フラグメントに分割の仕方(切り方)を間違えると非現実的な分子軌道になる。そのため、本実施の形態では、第3処理部104に自動でフラグメントを分割させるのではなくフラグメント分子軌道法に基づく複数のフラグメントの切り方を示す情報を与える。それにより現実的な分子軌道になり、より正確に標的生体分子とリガンドなどの化合物との相互作用を示す相互作用エネルギーを解析することができるのでより正確に評価することができる。
第3処理部104は、PAICSによる第3シミュレーション(QC)を、基盤ソフトウェア10を実行するクライアント機器30でさせてもよい。この場合、クライアント機器30は、複数CPUを持つLinux(登録商標)PCである必要がある。また、第3処理部104は、PAICSによる第3シミュレーション(QC)を、クライアント機器30とネットワークで接続された計算機20で実行してもよい。計算機20に第3シミュレーション(QC)の実行を行わせる場合、クライアント機器30と比較して高速に行うことができる。
また、第3処理部104は、選択複合体における受容体と一のリガンドとの相互作用エネルギーとを確認可能な情報をもつ第3算出結果を得る(取得する)。これにより、第3算出結果を用いて、例えば注目しているアミノ酸などの部位(結合部位)にリガンドが強く結合しているかどうかを確認することができる。注目している部位以外の場所にリガンドが相互作用しているようであれば、再計算が必要だと判断し、注目している部位の置換や修飾などを行う必要があると判断する。そして、第2シミュレーション(MD)から再度行う。第3シミュレーション(QC)では、固定位置でしかシュレジンガー方程式を解くことができないので、構造を少しでも変えてしまうと第2シミュレーション(MD)をやり直して構造の位置(立体配置)を固定する必要があるからである。
[GUI部101]
GUI部101は、クライアント機器30の表示画面に、GUI(Graphical User Interface)で操作可能なGUI操作画面を提供し、GUI操作画面により第1処理部102、第2処理部103および第3処理部104に処理を実行させる。
これにより、ユーザはコマンドラインにより操作することから解放され、GUIにより直感的かつ容易に操作することができる。
[基盤ソフトウェア10の動作概要]
次に、以上のように構成された基盤ソフトウェア10の動作について、説明する。
図2は、本実施の形態における基盤ソフトウェアの動作の一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザは基盤ソフトウェア10を用いて、第1処理ステップ(S1)を行う。
より具体的には、まず、第1処理部102に、標的生体分子として受容体の立体構造を示す立体構造ファイルを取得させ(S11)、複数のリガンドを示す情報を有する立体構造ファイルをデータベースから取得させる(S12)。ここで、図3および図4は、実施の形態における基盤ソフトウェアが提供するGUI画面の一例を示す図である。図4には、本実施の形態における立体構造ファイルおよびリガンドデータベースを取得するときの画面の一例が示されている。図4では、図2におけるS11およびS12の際に用いられるGUI画面の一例が示されている。すなわち、本実施の形態の基盤ソフトウェア10では、図3および図4に示すようなGUI画面が提供される。これにより、ユーザはGUI画面においてボタン1021をクリックしてブラウズすることで、受容体の立体構造ファイルを取得することができ、GUI画面においてボタン1022をクリックしてブラウズすることでリガンドデータベースを取得することができる。また、図4は、本実施の形態における取得したリガンド立体構造ファイルをAutoDock Vinaにおいて認識できるファイル形式に変換する画面の一例が示されている。図4示す例では、リガンドデータベースに含まれるリガンドの数は、欄1023に示すように36万9441であることが示されている。
次いで、第1処理部102は、取得した立体構造ファイルとリガンド立体構造ファイルとを用いて、受容体と複数のリガンドとの結合エネルギーや結合モデルを算出する第1シミュレーション(DS)を計算機20に実行させる(S13)。なお、第1シミュレーション(DS)を行う際の他のパラメータとして、標的生体分子の結合部位を決定してもよい。図5は、本実施の形態における標的生体分子の結合部位を決定するために用いられる画面の一例を示す図である。図5では、図2におけるS13の処理を行う前に用いられるGUI画面の一例が示されている。本実施の形態では、GUI部101が図5に示すような標的生体分子としてのタンパク質の構造を可視化して提供することで、タンパク質受容体の結合部位を指定することができる。なお、ユーザは、タンパク質受容体の結合部位でなく、タンパク質受容体全体を指定するとしてもよい。
そして、計算機20による第1シミュレーション(DS)の実行が終了したら、第1処理部102は、複数の第1算出結果を取得する(S14)。
次に、ユーザは、複数の第1算出結果から結合部位とリガンドとを確認する(S15)。
図6は、本実施の形態における第1算出結果に含まれるドッキングスコア順に並んだランキングを示す画面の一例を示す図である。図7は、本実施の形態におけるGUI部が提供するリガンドと結合部位とをグラフィック化した画面の一例を示す図である。
本実施の形態では、例えば、ユーザはGUI部101が第1算出結果を用いて提供する図6に示すようなランキング(第1算出結果に含まれるドッキングスコア順に並んだランキング)を確認する。そして、ユーザは、GUI部101が提供する例えば図7に示すような画面を用いて上位のランキングのリガンドとその結合部位とを確認する。
次に、ユーザは標的生体分子であるタンパク質の活性を制御する化合物(リガンド)の候補を選別し、その中で一のリガンドを選択する(S16)。
次に、ユーザは基盤ソフトウェア10を用いて、第2処理ステップ(S2)を行う。
より具体的には、まず、第2処理部103に、低分子化合物データベースに含まれる複数のリガンドのうち選択された一のリガンドに対応する第1算出結果を選択させる(S17)。すると、第2処理部103は、当該一のリガンドが受容体にドッキングされたリガンド複合体とその受容体とである選択複合体における初期立体構造を示す入力ファイル(第1入力ファイル)を生成する(S18)。図8は、本実施の形態における第1入力ファイルを作成するために用いられる画面の一例を示す図である。本実施の形態では、S17において、ユーザはGUI部101が提供する例えば図8に示すような操作画面のボタン1031および1032をブラウズする。これにより、GUI部101は、選択されたリガンドに対応する第1算出結果と選択された受容体に対応する第1算出結果とを選択することができる。これにより、GUI部101は、S18において選択した第1算出結果から第1入力ファイルを自動的に生成することができる。
次いで、第2処理部103は、当該入力ファイル(第1入力ファイル)を用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションにより選択複合体の一の立体配置を計算する第2シミュレーション(MD)を計算機20に実行させる(S19)。計算機20による第2シミュレーション(MD)の実行が終了したら、第2処理部103は、当該選択複合体の一の立体配置を示す第2算出結果を取得する(S20)。
次に、ユーザは基盤ソフトウェア10を用いて、第3処理ステップ(S3)を行う。
より具体的には、まず、第3処理部104に、第2算出結果から入力ファイル(第2入力ファイル)を生成させる(S21)。図9は、本実施の形態における第2入力ファイルを作成するために用いられる画面の一例を示す図である。図9では、GUI部101が提供する画面1041に第2算出結果から入力ファイル(第2入力ファイル)を準備するための操作手順やボタン1042が示されている。ユーザは第2算出結果を用いて第3シミュレーション(QC)を行う際必要の入力ファイルを準備するためにボタン1042を押下する。これにより第3処理部104は、第2算出結果から入力ファイル(第2入力ファイル)を生成する。
次いで、第3処理部104は、フラグメント分子軌道法を用いた当該選択複合体の一の立体配置の量子化学計算を、当該入力ファイル(第2入力ファイル)を用いて行う第3シミュレーション(QC)を計算機に実行させる(S22)。計算機20による第3シミュレーション(QC)の実行が終了したら、第3処理部104は、受容体と選択された一のリガンドと相互作用エネルギーとを確認可能な情報をもつ第3算出結果を取得する(S24)。
次に、ユーザは第3算出結果からタンパク質の結合部位とリガンドとの相互作用を確認し(S24)、再計算が必要かどうかを判断する(S25)。図10は、本実施の形態における相互作用を確認するために用いられる画面の一例を示す図である。図10では、GUI部101が提供する画面1043に第3算出結果が示されており、ユーザは第3算出結果を用いて相互作用の確認を行うためにボタン1044を押下する。これにより、第3処理部104に、さらにタンパク質の結合部位とリガンドとの相互作用エネルギーの分析を行なわせることができるので、ユーザはその相互作用を確認し、再計算が必要かどうかを判断することができる。
S25において、再計算が必要でない場合(S25でNo)には、確認したリガンドが標的生体分子である標的生体分子としてタンパク質の活性を制御する化合物(リガンド)の候補であるとして、本処理(スクリーニング)を終了する。
一方、S25において、再計算が必要であると判断した場合には(S25でYes)、選択したリガンドの変更する必要があるか、当該選択複合体の一の立体配置の変更など構造を変更する必要があるかを判断し(S26)、前者の場合には、S16から処理を再度行い、後者の場合には、S2から処理を再度行う。
(実施例)
本実施例では、プリオン病のためのメディカルシャペロン(MC:Medical Chaperones)すなわち抗プリオン薬を、基盤ソフトウェア10を用いて創薬計算(インシリコスクリーニング)した場合を例として説明する。ところで、プリオン病は、プリオンの構造転換によって引き起こされることが知られている。そのため、本実施例では、正常型プリオンタンパク質の構造変換を阻害し、異常型プリオンタンパク質の凝集を抑制できれば発病を阻止することが可能と考え、正常型プリオンタンパク質の立体構造を安定化する低分子化合物のスクリーニングを、基盤ソフトウェア10を用いて行った。
基盤ソフトウェア10において、受容体がマウスPrPの立体構造ファイルは、上述したようにPDB(Protein Data Bank)から取得する。約37万個の低分子化合物(リガンド)の立体構造はLigandBoxというデータベースから取得する。
本実施例では、37万個の低分子化合物(リガンド)を基盤ソフトウェア10による第1シミュレーション(DS)を行うことで、標的生体分子である正常型プリオンタンパク質のポケットに結合する低分子化合物をスクリーニングし、ドッキングスコアからランキング上位100個を選別した。さらに、本実施例では、選別した100個について細胞実験を実施し、抗プリオン薬となり得る2個の低分子化合物を選定した。そして、2個の低分子化合物それぞれについて第2シミュレーション(MD)と第3シミュレーション(QC)を行った。
図11は、本実施例における第1シミュレーション(DS)〜第3シミュレーション(QC)の算出結果や細胞実験の結果を示す図である。図12は、実施例における2個の低分子化合物についての結果を示す図である。図12の(a)は、2個の低分子化合物をウェスタンブロッティングにより細胞実験した結果を示す図である。ここで、ウェスタンブロッティングは、電気泳動によって分離したタンパク質を膜に転写し、任意のタンパク質に対する抗体でそのタンパク質の存在を検出する手法である。図12の(b)および(c)はそれぞれ、第3シミュレーション(QC)にてPAICSを用い量子化学計算でタンパク質の結合部位とリガンドとの相互作用を評価した図である。図13は、実施例における分子動力学シミュレーションを行う前と後での立体配置を示す図である。図13の(a)は低分子化合物B05の分子動力学シミュレーションを行う前と後での立体配置を示す図であり、図13の(b)は低分子化合物B06の分子動力学シミュレーションを行う前と後での立体配置を示す図である。
図12により、2個の低分子化合物B05とB06が標的生体分子である正常型プリオン蛋白質と安定的に結合し、正常型プリオン蛋白質の構造変換(活性)を制御する化合物の候補であることがわかった。
このように、基盤ソフトウェア10を用いることで、3つのシミュレーションプログラムそれぞれのシミュレーションを連携させて統合的に実行することができるので、標的生体分子の活性を制御する化合物のスクリーニングを、計算機を用いて効率よく行えることがわかった。
[本発明の効果等]
図14は、本発明の基盤ソフトウェアが支援する処理の概念を示す図である。つまり、基盤ソフトウェア10は、図14に示すように4つの処理を行えるプラットフォームであり、3つのシミュレーション(DS、MD、QC)を、適宜繰り返すことにより、標的生体分子の活性を制御する化合物の候補をより正確に予測することができる。
以上のように、本発明によれば、標的生体分子の活性を制御する化合物の候補をより正確に予測することができる基盤ソフトウェア10を実現することができる。
なお、第1シミュレーション(DS)だけを実行した場合の結果は不正確であった。そこで、本発明では、基盤ソフトウェア10を用いて、第1シミュレーション(DS)の結果に第2シミュレーション(MD)と第3シミュレーション(QC)を組み合わせて3つのシミュレーションを統合的に行う。これにより、より正確に化合物候補を予測できる。
また、本発明では、第1シミュレーション(DS)の結果に第2シミュレーション(MD)を組み合わせることで、第3シミュレーション(QC)により量子化学計算を行う対象をスクリーニングしている。第3シミュレーション(QC)による量子化学計算は、立体構造の固定位置でしかシュレジンガー方程式を解くことができないからである。
また、第2シミュレーション(MD)を用いて、標的生体分子の立体構造の一の立体配置に固定する。これにより、標的生体分子の立体構造と側鎖の自由度が計算できるので第3シミュレーション(QC)はより正確に量子化学計算を行うことができるので標的生体分子の活性を制御する化合物候補を選定または最適化することができる。
このように、本発明では、基盤ソフトウェア10を用いて3つのシミュレーション(DS、MD、QC)を統合的に行うことで、化学的に有機合成することなく、計算だけで、当該化合物の候補を見出すことができるという効果を奏する。基盤ソフトウェア10は、これら3つのシミュレーション(DS、MD、QC)を行えるプログラムをプラグインという形で組み込むことで、これら3つのシミュレーション(DS、MD、QC)を統合的に行う(連係して行う)ことができる。
このように、ユーザは、タンパク質を含む標的生体分子の受容体の立体構造を示す立体構造ファイルと複数のリガンドの立体構造を示す情報を有する低分子化合物データベースを準備し、基盤ソフトウェア10を用いて、当該受容体と当該複数のリガンドとの結合エネルギーや結合モデルを算出する第1シミュレーション(DS)を実行することにより、標的生体分子の活性を制御する化合物候補をスクリーニングする。次いで、ユーザは、基盤ソフトウェア10を用いて、第1シミュレーション(DS)でスクリーニングした結果を用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションである第2シミュレーション(MD)を実行することにより、一の立体配置を算出する。次いで、ユーザは、基盤ソフトウェア10を用いて、算出した当該一の立体配置を用いて、フラグメント分子軌道法を用いた量子化学計算を行う第3シミュレーション(QC)を実行させることにより、スクリーニングされた当該受容体と結合する一のリガンドを当該標的生体分子の活性を制御する化合物の候補として同定(選定)または最適化する。
このように、ユーザは、基盤ソフトウェア10を用いることで、3つのシミュレーションの実行を統合的に行う(連係して行う)ことができるので、標的生体分子の活性を制御する化合物の候補を計算で(論理的に)同定や最適化することができる。
以上、本発明の基盤ソフトウェア10および支援方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
なお、基盤ソフトウェア10は、3つのシミュレーション(DS、MD、QC)を、基盤ソフトウェア10を実行するクライアント機器30ではなく、クライアント機器30とネットワークで接続された計算機20に実行させるとしたが、これに限らない。基盤ソフトウェア10は、3つのシミュレーション(DS、MD、QC)を、基盤ソフトウェア10を実行するクライアント機器30に実行させるとしてもよい。
また、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。上述した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
例えば、基盤ソフトウェア10を構成するモジュールを、IC(集積回路)、ASIC(特定用途向け集積回路)、およびLSI(大規模集積)などの形態で実現されるか、ARMなどのCPUに基づくプロセッサおよびPC(パーソナルコンピュータ)などの機械により実現するとしてもよい。これらの各モジュールは、多くの単機能LSIまたは1つのLSIに含まれ得る。ここで用いられた名称はLSIであるが、集積度に応じて、IC、システムLSI、スーパーLSIまたはウルトラLSIと呼称されることもある。さらに、集積方法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサなどによっても集積することができる。これには、プログラム命令により指示可能なDSP(デジタル信号プロセッサ)などの特殊なマイクロプロセッサも含まれる。LSIの製造後にプログラム可能なFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)もしくはLSIの接続または配置を再構成できる再構成可能プロセッサを同様の目的で用いることができる。今後は、製造と処理技術の発展に伴い、全く新しい技術がLSIに置き換わるかもしれない。例えば、量子コンピュータを用いれば、エネルギー最小化は圧倒的に高速化されるであろう。本明細書に含まれる計算手法はハードウェアによらず適用可能である。集積はそのような技術によって実現され得る。
本発明は、シミュレーションの実行を支援するプログラムおよび支援方法に利用でき、特に、タンパク質など標的生体分子の活性を制御する化合物の候補を選別するために用いられるシミュレーションの実行を支援するプラットフォームソフトウェアなどのプログラム等に利用することができる。
10 基盤ソフトウェア
20 計算機
30 クライアント機器
101 GUI部
102 第1処理部
103 第2処理部
104 第3処理部
1021、1022、1031、1032、1042、1044 ボタン
1023 欄
1041、1043 画面

Claims (10)

  1. 第1シミュレーション、第2シミュレーションおよび第3シミュレーションの実行を支援する基盤ソフトウェアとなるプログラムであって、
    前記第1シミュレーションにおいて、タンパク質を含む標的生体分子の立体構造を示す立体構造ファイルおよび複数のリガンドの立体構造を示す情報を有する低分子化合物データベースを用いて、前記標的生体分子と前記複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出し、複数の第1算出結果を得る第1処理ステップと、
    前記第2シミュレーションにおいて、前記複数のリガンドのうち選択された一のリガンドに対応する第1算出結果を選択することで生成した、前記一のリガンドが前記標的生体分子にドッキングされたリガンド複合体と前記標的生体分子とである選択複合体における初期立体構造を示す第1入力ファイルを用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションにより前記選択複合体の一の立体配置を計算し、前記選択複合体の一の立体配置を示す第2算出結果を得る第2処理ステップと、
    前記第3シミュレーションにおいて、前記第2算出結果から生成した第2入力ファイルを用いて、フラグメント分子軌道法を用いた前記選択複合体の一の立体配置の量子化学計算を行い、前記標的生体分子と前記選択された一のリガンドとの各フラグメント間の相互作用エネルギーの情報、前記標的生体分子の情報、および、前記選択された一のリガンドの情報をもつ第3算出結果を得る第3処理ステップとを、
    コンピュータに実行させるプログラム。
  2. 前記第1処理ステップでは、
    前記低分子化合物データベースから生成した、複数のリガンド立体構造ファイルを1つずつ入力することで、前記標的生体分子と前記複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出させることをコンピュータに実行させる
    請求項1に記載のプログラム。
  3. 前記第1処理ステップでは、
    国際的に標準化された生体分子立体構造のデータベースであるPDB(Protein Data Bank)から、前記標的生体分子の立体構造データを有するPDBファイルを取得し、前記第1シミュレーションのプログラムで認識可能なファイルに変換した前記立体構造ファイルを用いて、前記複数の第1算出結果を得ることをコンピュータに実行させる、
    請求項2に記載のプログラム。
  4. 前記第3処理ステップでは、
    前記第2算出結果の原子座標の表現を電子座標の表現に変換することにより、前記第2算出結果から生成した前記第2入力ファイルを用いて、前記第3算出結果を得ることをコンピュータに実行させる、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のプログラム。
  5. 前記第3処理ステップでは、
    前記第2算出結果と、前記フラグメント分子軌道法に基づく複数のフラグメントの切り方を示す情報とから生成した、前記第2入力ファイルを用いて、前記第3算出結果を得ることをコンピュータに実行させる
    請求項4に記載のプログラム。
  6. 前記プログラムは、さらに、GUIで操作可能なGUI操作画面を提供するGUIステップを含み、
    前記GUIステップにより提供されたGUI操作画面により、前記第1処理ステップ、前記第2処理ステップおよび前記第3処理ステップをコンピュータに実行させる
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のプログラム。
  7. 前記プログラムは、前記標的生体分子の活性を制御する化合物の候補を選別するために用いられる、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のプログラム。
  8. 前記第1シミュレーションのプログラムは、前記基盤ソフトウェアにプラグインされたAutoDock Vinaであり、
    前記第2シミュレーションのプログラムは、前記基盤ソフトウェアにプラグインされたAmberであり、
    前記第3シミュレーションのプログラムは、前記基盤ソフトウェアにプラグインされたPAICSである、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載のプログラム。
  9. 第1シミュレーション、第2シミュレーションおよび第3シミュレーションの実行を支援する支援方法であって、
    前記第1シミュレーションにおいて、タンパク質を含む標的生体分子の立体構造を示す立体構造ファイルおよび複数のリガンドの立体構造を示す情報を有する低分子化合物データベースを用いて、前記標的生体分子と前記複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出し、複数の第1算出結果を得る第1処理ステップと、
    前記第2シミュレーションにおいて、前記複数のリガンドのうち選択された一のリガンドに対応する第1算出結果を選択することで生成した、前記一のリガンドが前記標的生体分子にドッキングされたリガンド複合体と前記標的生体分子とである選択複合体における初期立体構造を示す第1入力ファイルを用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションにより前記選択複合体の一の立体配置を計算し、前記選択複合体の一の立体配置を示す第2算出結果を得る第2処理ステップと、
    前記第3シミュレーションにおいて、前記第2算出結果から生成した第2入力ファイルを用いて、フラグメント分子軌道法を用いた前記選択複合体の一の立体配置の量子化学計算を行い、前記標的生体分子と前記選択された一のリガンドとの各フラグメント間の相互作用エネルギーの情報、前記標的生体分子の情報、および、前記選択された一のリガンドの情報をもつ第3算出結果を得る第3処理ステップとを、含む、
    支援方法。
  10. 3つのシミュレーションを用いて化合物を選定または最適化する支援を行う支援方法であって、
    NMR(Nuclear Magnetic Resonance)、X線結晶構造解析法、電子顕微鏡又はシンクロトロン放射光結晶構造解析法により作成されたタンパク質を含む標的生体分子の立体構造を示す立体構造ファイルと、複数のリガンドの立体構造を示す情報を有する低分子化合物データベースを準備し、
    第1シミュレーションをコンピュータにより実行することで、前記標的生体分子と前記複数のリガンドとの結合エネルギーおよび結合モデルの少なくも一方を算出して、スクリーニングし、
    第2シミュレーションをコンピュータにより実行することで、前記スクリーニングした結果を用いて、ニュートン力学に基づく分子動力学法を用いた分子シミュレーションを実行して、一の立体配置を算出し、
    第3シミュレーションをコンピュータにより実行することで、算出した前記一の立体配置を用いて、フラグメント分子軌道法を用いた量子化学計算を行い、前記スクリーニングされた前記標的生体分子と結合する一のリガンドを前記標的生体分子の活性を制御する化合物の候補として選定または最適化する、
    支援方法。
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