JP6351538B2 - ディジタル音響信号用の多帯域信号プロセッサ - Google Patents

ディジタル音響信号用の多帯域信号プロセッサ Download PDF

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Description

本発明は、多帯域信号プロセッサに関する。
補聴装置(hearing instruments)または補聴器(hearing aids)は、通常、音声や音楽などの到来音を受信するための1個または数個のマイクロフォンを含む、マイクロフォン増幅アセンブリを備える。この到来音は電気マイクロフォン信号に変換され、この信号が、1つまたは複数の事前設定されたリスニング・プログラムに従って、補聴装置の制御・処理回路において、増幅および処理される。これらのリスニング・プログラムは、通常、例えば、聴力図(audiogram)として表現される、ユーザ特有の聴覚障害または聴覚損失から計算されていた。補聴装置の出力増幅器は、マイクロフォンと一緒に補聴装置のケースに収納されるか、または別個にイヤープラグ内に収納することのできる、小型のスピーカまたはレシーバを介して、処理されたマイクロフォン信号をユーザの外耳道(ear canal)に送り出す。
聴覚障害者は、典型的には、聴覚感度の損失を被っており、その損失は、対象とする音の周波数とレベルの両方に依存する。すなわち、聴覚障害者は、特定の周波数(例えば、低周波数)については、正常聴覚者と同様に聴くことができるが、その他の周波数(例えば、高周波数)では、非聴覚障害者と同じ感度で音を聴くことはできないことがある。同様に、聴覚障害者は、音、例えば、約90dB SPLを超える大きな音については、非聴覚障害者と同じ感度で知覚することができるが、小さな音については、非聴覚障害者と同じ感度で聴くことはできないことがある。すなわち、後者の状況では、聴覚障害者は、特定の周波数または周波数帯域におけるダイナミックレンジの損失を被る。様々な従来のアナログ式およびディジタル式の補聴器は、上記のように規定される、ダイナミックレンジの損失を伴う聴覚欠陥を軽減するように設計されていた。ダイナミックレンジの損失を補償するために、従来技術の補聴装置は、いわゆる多帯域ダイナミックレンジ圧縮器を使用して、到来音のダイナミックレンジを圧縮することで、圧縮された出力信号が、対象とするユーザのダイナミックレンジにより精密に合致するようにしている。多帯域ダイナミックレンジ圧縮器によって出力されたダイナミックレンジに対する入力ダイナミックレンジの比は、圧縮比と呼ばれる。通常、多帯域ダイナミックレンジ圧縮器は、対象とする聴覚障害者の周波数依存性のダイナミックレンジの損失に対応するために、様々な条件、例えば、様々な周波数帯域における、様々な圧縮比および/または様々なアタック時定数およびリリース時定数、で動作するように構成されている。
米国特許出願公開第2003/0081804号は、高速フーリエ変換(FFT)に基づく、多帯域ダイナミックレンジ圧縮器用の、いわゆるサイドブランチ・アーキテクチャを開示している。多帯域ダイナミックレンジ圧縮器は、音響入力信号の周波数分析のためにサイドブランチを使用する。FFTは、音響入力信号がそれに加えられる、1次オールパス・フィルタのカスケードの出口タップから、ワープ周波数スケール上で計算される。同様にタップされた遅延ラインが、FFT解析と時間変化FIR圧縮フィルタの両方に使用される。FFTベースの周波数解析の結果は、信号経路に設けられたFIR圧縮フィルタの係数を生成するために使用される。
開示された多帯域ダイナミックレンジ圧縮器のワープ周波数スケールおよびサイドブランチ・アーキテクチャは、直接的な信号経路が、短い入力バッファおよびFIR圧縮フィルタのみを含むので、最小の時間遅延などの多くの望ましい特性が得られる。その他の留意すべき利点は、エイリアシング(aliasing)がないこと、および人間聴覚のバーク周波数スケール(Bark based frequency scale)にうまく適合する、解析周波数帯域の自然対数スケーリングである。しかしながら、開示されたFFTに基づく多帯域ダイナミックレンジ圧縮器は、いくつかの望ましくない特性がある。特に、FFTに基づく解析の全周波数帯域の信号スペクトル値は、同じブロック・レートまたは周波数において更新され、このことが、入力音の高周波成分のアンダーサンプリングを招く可能性がある。高周波成分のアンダーサンプリングは、それが解析周波数帯域におけるスペクトル・レベル推定量のエイリアシングを発生させるとともに、圧縮利得エージェントまたは係数の動作不良および歪みの誘発を招くため、一般的に望ましくない。
さらに、FFTに基づく多帯域ダイナミックレンジ圧縮器においては、高周波成分を収容するために、比較的高いブロック・レートが選択される場合があるが、このことは、解析フィルタの低周波数帯域の、正常なサンプリングに対して必要とされるよりも高速な更新、すなわち低周波数帯域のオーバーサンプリングを招くことになる。後者のオーバーサンプリング特性は、エイリアシング歪みを発生させないが、FFTに基づく多帯域ダイナミックレンジ圧縮器を実現するために、補聴装置の信号プロセッサの計算リソースを消費する。このプロセスは、補聴装置による不必要な電力消費を招き、このことはバッテリ寿命を短くする。
上記で概説した問題を考慮すると、解析フィルタの周波数帯域の、別個でありかつ柔軟な更新レートを可能にする、改良型の多帯域信号プロセッサ、例えば、多帯域ダイナミックレンジ圧縮器が有利である。そのような改良型の多帯域信号プロセッサは、解析フィルタの任意の特定周波数帯域のブロック更新レートを選択する上での柔軟性を大幅に向上させることなる。したがって、改良型の多帯域信号プロセッサの感知性能を、計算リソースに対して、柔軟にトレードすることが可能である。
本開示の第1の態様は、ディジタル音響入力信号の受信のための信号入力と、ディジタル音響入力信号を受信して、ディジタル・オールパス・フィルタ間に介在するそれぞれのタッピング・ノードにおいて、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させるように構成された、ディジタル・オールパス・フィルタのカスケードとを備える、多帯域信号プロセッサに関する。多帯域信号プロセッサは、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数で畳み込み演算して、処理されたディジタル出力信号を生成するように構成された、信号畳み込みプロセッサ(signal convolution processor)を備える。周波数ドメイン変換プロセッサは、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、周波数ドメイン表現に変換して、所定数Nの周波数帯域におけるそれぞれの信号スペクトル値を生成するように構成されている。レベル推定器は、それぞれの信号スペクトル値に基づいて、所定数の周波数帯域におけるそれぞれの信号レベル推定量を計算するように構成されている。多帯域信号プロセッサの処理利得算出器は、それぞれの信号レベル推定量および帯域利得規則(band gain laws)に基づいて、所定数の周波数帯域のそれぞれに対する周波数ドメイン利得係数の計算を行うように構成されている。逆周波数ドメイン変換プロセッサは、N個の周波数ドメイン利得係数を、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成されている。周波数ドメイン変換プロセッサは、異なる帯域更新レートで、少なくとも2つの周波数帯域の信号スペクトル値を計算するように構成されている。MおよびNのそれぞれは、正の整数である。
少なくとも2つの異なる周波数帯域において、異なる帯域更新レートを利用する、周波数ドメイン変換プロセッサの能力は、所定数の周波数帯域の2つ以上に対する個々の更新レートを選択する上で有利な柔軟性をもたらす。この特徴は、当該多帯域信号プロセッサの知覚性能を、計算リソースに対して、柔軟にトレードすることを可能にする。この特徴はまた、従来技術のFFTに基づく処理によって課せられる、全周波数帯域に対して同じ更新レートを使用することについての上述の問題に対処して、解決する。全周波数帯域に対して同じ帯域更新レートとすることは、低周波数帯域の適切な帯域更新レートにすると、通常、高周波数帯域には、適切なサンプリングに必要とされるよりもずっと高い更新レートを生じることを意味する。同様に、低周波数帯域に対して適切な帯域更新レートが選択される場合には、高周波数帯域はアンダーサンプリングとなり、高周波数帯域におけるエイリアシングおよび誤ったレベル推定量につながる。対照的に、所定数の周波数帯域の2つ以上に対して個々の帯域更新レートを適用する、上記の周波数ドメイン変換プロセッサの能力は、各周波数帯域に最適な帯域更新レートを与えて、一方では、エイリアシング歪みを回避するとともに、他方では、オーバーサンプリングと計算リソースの無駄を回避することができることを意味する。特定の帯域の更新レートを、音声理解容易性(speech intelligibility)などの、多帯域信号プロセッサの特定の知覚性能基準に基づいて、最適化することもできる。このようにして、帯域更新レートは、問題となる知覚性能基準に対して大きな影響を有する周波数帯域において、比較的高くするとともに、知覚性能基準に対して小さい影響を有する周波数帯域において、比較的低くしてもよい。したがって、周波数ドメイン変換プロセッサ、レベル推定器および処理利得算出器の計算リソースは、知覚性能基準に対して重要なこれらの周波数帯域に割り当ててもよい。
多帯域信号プロセッサは、補聴装置の用途に対しては、遅延ディジタル音響信号サンプルの数、Mが、8と64の間の偶数となるように、設計するのが好ましい。これは、M−1個のディジタル・オールパス・フィルタに対応する。周波数帯域の所定の数、Nは、好ましくは、N=(M/2)+1となるように選択される。この実施形態においては、周波数ドメイン変換プロセッサによって発生される各周波数帯域に対して、単一の周波数ドメイン利得係数が存在する。言い換えると、M個の遅延フィルタ・タップを処理するのに、合計でM個の時間変化フィルタ係数があるのに対して、これらM個の時間変化フィルタ係数の内の(M/2)+1個だけが固有である。残りの(M/2)−1個の時間変化フィルタ係数は、実数利得ベクトルの(逆)フーリエ変換により、対称性のあるベクトル・フィルタ係数の組を生じるということから求められる。この変換の詳細は、米国特許出願公開第2003/0081804号に記載されている。
当業者は、N=(M/2)+1と設定することは、周波数ドメイン変換プロセッサが、周波数帯域における信号スペクトル値を算出するのに離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を適用するように構成されている場合には、特に便利であることを理解するであろう。しかしながら、周波数帯域の数、Nは、(M/2)+1よりも大きいか、または小さくてもよく、例えばN=M/2であってもよい。一般に、周波数ドメイン変換プロセッサ(解析フィルタ)と、逆周波数ドメイン変換プロセッサ(合成フィルタ)が正しくマッチングされているときには、任意の数N≦Mを、当該多帯域信号プロセッサの特定の用途の要件に応じて、使用してもよい。
当該多帯域信号プロセッサの信号畳み込みプロセッサは、それぞれのサンプルについて更新するか、またはブロックについて更新してもよい。前者の場合には、信号畳み込みプロセッサの更新レートは、ディジタル音響入力信号のサンプリング・レート、すなわちサンプリング周波数の逆数に一致する。サンプリング周波数は、通常、多帯域信号プロセッサによって実現される処理の特定の種類の特性に応じて変わる。ディジタル音響入力信号のサンプリング周波数は、多帯域信号プロセッサの補聴装置の用途において、好ましくは、16kHzから48kHzの間である。信号折畳みプロセッサがブロックで更新される場合には、各ブロックは、複数のディジタル音響信号サンプル、例えば、4から64個のディジタル音響信号サンプルを含んでもよい。特定の周波数帯域の帯域更新レートは、その周波数帯域の信号スペクトル値が、周波数ドメイン変換プロセッサによって算出される頻度を特定する。所定数の周波数帯域の内の1つの周波数帯域、または周波数帯域の部分集合に適用してもよい、最大帯域更新レートは、信号畳み込みプロセッサの更新レートに一致する。この最大帯域更新レートは、信号畳み込みプロセッサのサンプル・レートまたはブロック・レートとしてもよい。周波数帯域または周波数帯域の部分集合における信号スペクトル値が、算出されるか、または更新されると、対応する信号レベル推定量および周波数ドメイン利得係数も、好ましくは、信号スペクトル値に対する変更が、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数の値に反映されるように、計算される。一方、信号スペクトル値が、信号畳み込みプロセッサの特定の更新ステップまたは時間ステップに対して、算出されないか、または更新されない、残りの周波数帯域においては、最近に計算された信号スペクトル値が維持される。このことは、また、対応する信号レベル推定量および周波数ドメイン利得係数が維持されるのが好ましいことを意味する。
先に述べたように、好ましくは、帯域更新レートは、一般に、低周波数帯域が高周波数帯域よりも、より低い帯域更新レートを有するように、周波数帯域の位置に適合される。低周波数帯域は、例えば、100Hzから500Hzの間に中心周波数を有するのに対して、高周波数帯域は、3kHzから8kHzの間に中心周波数を有することがある。したがって、周波数ドメイン変換プロセッサの一実施形態は、少なくとも第1の周波数帯域の信号スペクトル値を、第1の帯域更新レートで計算するとともに、少なくとも第2の周波数帯域の信号スペクトル値を、第1の帯域更新レートよりも低い更新レート、例えば、第1の帯域更新レートの0.5、0.33または0.25倍で計算するように構成されている。第1の周波数帯域の中心周波数は、第2の周波数帯域の中心周波数よりも高い。
当業者は、当該多帯域信号プロセッサは、補聴装置、ヘッドセット、公共拡声システム、スマートフォン、タブレットその他などの、多くの種類の据置型および携帯型の音響機器における、ディジタル音響信号の様々な信号処理機能を果たすように構成されていてもよいことに気付くであろう。当該多帯域信号プロセッサは、処理利得算出器の1つまたは複数の帯域利得規則の適切な設計によって、音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ圧縮、音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ拡大、音響入力信号などのノイズ低減、などの信号処理機能を果たすように構成されていてもよい。
信号畳み込みプロセッサの各更新に対して、周波数ドメイン変換プロセッサは、所定数の周波数帯域の部分集合の、それぞれの信号スペクトル値を更新するように構成してもよく、レベル推定器は、周波数帯域の部分集合のそれぞれの信号レベル推定量を更新するように構成してもよく、処理利得算出器は、周波数帯域の部分集合のそれぞれの周波数ドメイン利得係数を更新するとともに、残留周波数帯域の周波数ドメイン利得係数を維持するように構成してもよく、さらに逆周波数ドメイン変換プロセッサは、更新された周波数ドメイン利得係数および維持された周波数ドメイン利得係数を、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成してもよい。
当業者は、周波数ドメイン変換プロセッサは、一定のレートで、所定数の周波数帯域の各周波数帯域の信号スペクトル値を更新するように構成してもよいことを理解するであろう。この一定の帯域更新レートは、以下により詳細に述べるような、繰り返し帯域更新スケジュールによって定義してもよい。各周波数帯域の一定の帯域更新レートにもかかわらず、帯域更新レートは、全周波数帯域間で異なるか、または同一の更新レートを有する、周波数帯域のいくつかの部分集合が存在することもある。周波数ドメイン変換プロセッサの別の実施形態においては、各周波数帯域の帯域更新レートは、予測される必要性に基づいて、独立に適応される。予測される必要性は、予測変化レートのような、ディジタル音響入力信号の特定の信号特性に基づいて求めてもよい。適応型の更新レートは、当該多帯域信号プロセッサの計算負荷と性能のトレードオフにおいて、さらなる改良につながることがある。
上述のように、周波数ドメイン変換プロセッサは、好ましくは、所定の繰り返し帯域更新スケジュールに従って、所定数の周波数帯域におけるそれぞれの信号スペクトル値を更新するように構成される。周波数ドメイン変換プロセッサは、畳み込みプロセッサのそれぞれのサンプルでの更新またはブロックでの更新において更新される、特定の周波数帯域を選択する帯域セレクタを備えてもよい。帯域セレクタは、したがって、任意の特定の周波数帯域における信号スペクトル値が、どのような順番で、およびしたがってどのような更新レートで(どの程度の頻度で)、帯域更新スケジュールに従って再計算または更新されるかを制御してもよい。当業者は、特定の帯域における信号スペクトル値の更新のすぐ後に、対象とする周波数帯域に対するレベル推定および周波数帯域利得係数の、対応する更新が続くのが好ましいことを理解するであろう。繰り返し帯域更新スケジュールは、多数の方法、例えば、添付の図面を参照してさらに詳細に以下に述べるような、いわゆるスケジュール行列を使用して設計してもよい。当業者は、繰り返し帯域更新スケジュールを使用することによって、どのような頻度で任意の特定の周波数帯域が更新されるか、すなわち帯域更新レート、および個々の周波数帯域が更新される順序について、周波数ドメイン変換プロセッサの動作に対して大幅な柔軟性が与えられることを理解するであろう。これらの特徴は、ディジタル音響入力信号のスペクトルのカバー範囲(spectral coverage)を改善すること、すなわち、帯域応答のカバー範囲に含まれる時間‐周波数スペクトルにおける変調またはギャップを最小化することで知られている、特定の周波数帯域の更新レートを最適化するのに利用してもよい。
当該多帯域信号プロセッサの信号処理機能は、専用ディジタル・ハードウェアによって実現するか、またはソフトウェア・プログラマブル信号プロセッサ上で動作する、1つまたは複数のコンピュータ・プログラム、ルーチンおよび実行のスレッドとして実現してもよい。コンピュータ・プログラム、ルーチンおよび実行のスレッドのそれぞれは、複数の実行可能なプログラム命令を含んでもよい。代替的に、信号処理機能は、専用ディジタル・ハードウェアと、ソフトウェア・プログラマブル信号プロセッサ上で動作する、コンピュータ・プログラム、ルーチンおよび実行のスレッドとの組合せによって実現してもよい。例えば、上述の「周波数ドメイン変換プロセッサ」、「信号畳み込みプロセッサ」、「逆周波数ドメイン変換プロセッサ」、「処理利得算出器」および「レベル推定器」のそれぞれには、好適なマイクロプロセッサ、特にはディジタル・シグナル・プロセッサ上で実行可能な、コンピュータ・プログラム、プログラム・ルーチン、または実行のスレッドを含めてもよい。マイクロプロセッサおよび/または専用ディジタル・ハードウェアは、ASIC上に統合化するか、またはFPGAデバイス上に実装してもよい。
周波数ドメイン変換プロセッサは、FFTアルゴリズムに頼ることなく、様々な方法で、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルの信号スペクトル値を計算するように構成してもよい。周波数ドメイン変換プロセッサの好ましい実施形態では、離散フーリエ変換を使用して、ベクトルとベクトルの内積によって、単一周波数帯域の信号スペクトル値が計算される。周波数ドメイン変換プロセッサのこの実施形態は、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルと、周波数帯域に対応する離散フーリエ変換行列の行の、窓付けられた(windowed)または窓付けられていない(un-windowed)離散フーリエ変換係数の間のベクトル内積として、周波数帯域のそれぞれの信号スペクトル値を計算するように構成されている。
逆周波数ドメイン変換プロセッサは、一組のスカラー‐ベクトル乗算を実行することによって、更新された周波数ドメイン利得係数および維持された周波数ドメイン利得係数を、M個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成してもよく、この場合に、スカラーは、更新された、または維持された周波数ドメイン利得係数を含み、ベクトルは、IFFTに基づく合成行列の係数の一行または一列を含む。
当該多帯域信号プロセッサによって実現される特定の信号処理機能は、帯域利得規則の特性を制御することによって、便宜的に定義してもよい。処理利得算出器の帯域利得規則は、異なる周波数帯域間で異なることがある。1つの例示的な実施形態においては、全帯域利得規則は、周波数帯域におけるそれぞれの信号のダイナミックレンジ圧縮を提供するように構成してもよいが、圧縮比および時間定数などの特定の圧縮パラメータは、個々の周波数帯域間で変わる可能性がある。1つの例示的な実施形態においては、帯域利得規則は、所定数の周波数帯域の第1の部分集合が、ダイナミックレンジ圧縮を行うように構成され、周波数帯域の別の部分集合が、ダイナミックレンジ拡大またはノイズ低減などを行うように、異なる周波数帯域間で異なってもよい。
好ましくは、処理利得算出器の1つまたは複数の帯域利得規則は、音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ圧縮、音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ拡大、音響入力信号のノイズ低減の内の1つを行うように構成される。
この明細書においては、「帯域利得規則」という用語は、音響入力信号に関連する特定の特徴を提供するように構成された、任意の関数、関係、方程式、および/またはアルゴリズムを指している。帯域利得規則は、実施形態によっては、任意に定義してもよい。
本開示の第2の態様は、ユーザによって使用される補聴装置に関する。この補聴装置は、音の受信に応答して第1のマイクロフォン信号を発生させるための第1のマイクロフォンと、第1のマイクロフォン信号に結合されて、対応するディジタル音響入力信号を発生するように構成された音響入力チャネルと、ディジタル音響入力信号に結合されるかまたは接続された上述の実施形態のいずれかによる多帯域信号プロセッサとを備える。多帯域信号プロセッサは、ユーザの聴覚損失に応じて、第1のマイクロフォン信号を受信し処理するように構成されている。補聴装置は、多帯域信号プロセッサの処理されたディジタル出力信号を受信し、ユーザへ送信するための可聴音に変換するための、音再生チャネルを備える。
本開示の第3の態様は、ディジタル音響入力信号を処理して、処理されたディジタル出力信号を生成する方法に関し、この方法は、a)ディジタル・オールパス・フィルタのカスケードを介してディジタル音響入力信号をオールパス・フィルタリングして、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させるステップと、b)M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、所定数Nの周波数帯域における周波数ドメイン表現に変換して、それぞれの信号スペクトル値を計算するステップと、c)信号スペクトル値に基づいて所定数の周波数帯域におけるそれぞれの信号レベルを推定するステップと、d)それぞれの信号レベル推定量およびそれぞれの帯域利得規則に基づいて、所定数の周波数帯域に対するそれぞれの周波数ドメイン利得係数を計算するステップと、e)周波数ドメイン利得係数を時間ドメイン表現に変換して、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数を生成するステップと、f)M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数で畳み込み演算して、処理されたディジタル出力信号を生成するステップと、g)それぞれのサンプルのレートまたは所定のブロック・レートのいずれかに従って、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを更新するステップを含み、少なくとも2つの異なる周波数帯域の信号スペクトル値が、異なるレートで更新され、MおよびNのそれぞれが正の整数である。
ディジタル音響入力信号を処理する方法の好ましい実施形態によれば、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルの各サンプル更新後、または各ブロック更新後に:ステップb)は、所定数の周波数帯域の部分集合を、それぞれの信号スペクトル値で更新することを含み、ステップc)は、周波数帯域の部分集合のそれぞれの信号レベル推定量を更新することを含み、ステップd)は、周波数帯域の部分集合のそれぞれの周波数ドメイン利得係数を更新するとともに、残りの周波数帯域の以前の周波数ドメイン利得係数を維持することを含み、ステップe)は、更新された周波数ドメイン利得係数および維持された周波数ドメイン利得係数を、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数の更新値に変換することを含む。
当業者であれば、周波数帯域の部分集合が単一の周波数帯域だけを含んでもよいことを理解するであろう。後者の実施形態においては、単一の周波数帯域の信号スペクトル値は、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルが、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数で畳み込み演算される、ステップf)の各実行に対して更新される。このことは、畳み込みプロセッサが、先に考察したそれぞれのサンプルのモードで動作するときに特に有利であり、その理由は、このモードは、先に考察した帯域更新スケジュールの好適な設計によって、特定の周波数帯域が高い更新レートを有することを可能にするためである。
好ましくは、周波数帯域の異なる部分集合が、所定の繰り返し帯域更新スケジュールに従って、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルの連続的なサンプルの更新の間、または連続的なブロックの更新の間に更新される。
本開示の第4の態様は、信号プロセッサに、上記で概説した、ディジタル音響入力信号を処理する方法のステップa)〜g)を実行させて、処理されたディジタル出力信号を生成するように構成された、実行可能なプログラム命令を含む、コンピュータ可読データ・キャリアに関する。コンピュータ可読データ・キャリアは、磁気ディスク、光学ディスク、メモリ・スティックまたはその他の任意の好適なデータ記憶媒体を備えてもよい。
多帯域信号プロセッサは、ディジタル音響入力信号の受信のための信号入力と;ディジタル音響入力信号を受信するとともに、ディジタル・オールパス・フィルタ間に介在するそれぞれのタッピング・ノードにおいてM個の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させるように構成された、ディジタル・オールパス・フィルタのカスケードと;M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数で畳み込み演算して、処理されたディジタル出力信号を生成するように構成された、信号畳み込みプロセッサと;M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを周波数ドメイン表現に変換して、N個の周波数帯域におけるそれぞれの信号スペクトル値を生成するように構成された周波数ドメイン変換プロセッサと;それぞれの信号スペクトル値に基づいて、N個の周波数帯域においてそれぞれの信号レベル推定量を計算するように構成されたレベル推定器と;それぞれの信号レベル推定量および帯域利得規則に基づいて、N個の周波数帯域のそれぞれに対する周波数ドメイン利得係数を計算するように構成された、処理利得算出器と;N個の周波数ドメイン利得係数を、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成された、逆周波数ドメイン変換プロセッサとを含み、周波数ドメイン変換プロセッサは、異なる帯域更新レートにおいて周波数帯域の少なくとも2つの、信号スペクトル値の少なくとも2つを与えるように構成されており、Mは正の整数であり、Nは正の整数である。
任意選択で、信号畳み込みプロセッサは、それぞれのサンプルについて更新されるか、または、各ブロックが複数のディジタル音響信号サンプルを含む、それぞれのブロックについて更新されるように構成されている。
任意選択で、周波数ドメイン変換プロセッサは、第1の帯域更新レートで、N個の周波数帯域の内の第1の周波数帯域に対する信号スペクトル値の1つを計算し、第1の帯域更新レートよりも低い更新レートで、N個の周波数帯域の内の第2の周波数帯域に対する信号スペクトル値の別の1つを計算するように構成されており、第1の周波数帯域の中心周波数が、第2の周波数帯域の中心周波数よりも高い。
任意選択で、信号畳み込みプロセッサは、複数回の更新において更新され、更新のそれぞれに対して:周波数ドメイン変換プロセッサは、N個の周波数帯域の部分集合に対して、信号スペクトル値の部分集合を更新するように構成され;レベル推定器は、N個の周波数帯域の部分集合に対して信号レベル推定量の部分集合を更新するように構成され;処理利得算出器は、N個の周波数帯域の部分集合に対して周波数ドメイン利得係数の部分集合を更新するとともに、N個の周波数帯域の残りに対して周波数ドメイン利得係数の残りを維持するように構成されている。
任意選択で、周波数帯域の部分集合は、N個の周波数帯域の内の単一の周波数帯域によって形成される。
任意選択で、逆周波数ドメイン変換プロセッサは、更新された周波数ドメイン利得係数および維持された周波数ドメイン利得係数を、一組のスカラー‐ベクトル乗算を実行することによって、M個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成され;スカラー‐ベクトル乗算に含まれるスカラーは、更新された周波数ドメイン利得係数または維持された周波数ドメイン利得係数を含み、スカラー‐ベクトル乗算に含まれるベクトルは、IFFTに基づく合成行列の係数の1つの行または列を含む。
任意選択で、周波数ドメイン変換プロセッサは、一定の更新レートでそれぞれの周波数帯域に対して、信号スペクトル値を更新するように構成されている。
任意選択で、周波数ドメイン変換プロセッサは、所定の繰り返し帯域更新スケジュールに従って、信号スペクトル値を更新するように構成されている。
任意選択で、周波数ドメイン変換プロセッサは、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルと、離散フーリエ変換行列の行の、窓付けされた(windowed)または窓付けされていない(un-windowed)離散フーリエ変換係数の間のベクトル内積として、信号スペクトル値の少なくとも1つを計算するように構成されている。
任意選択で、帯域利得規則の1つまたは複数が、ディジタル音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ圧縮、ディジタル音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ拡大、またはディジタル音響入力信号のノイズ低減を提供するように構成されている。
ユーザによって使用される補聴装置であって、多帯域信号プロセッサと;多帯域信号プロセッサに結合された第1のマイクロフォンと;多帯域信号プロセッサに結合されたスピーカとを備える、補聴装置が開示される。
ディジタル音響入力信号を処理して、処理されたディジタル出力信号を生成する方法が開示される。その方法は、ディジタル・オールパス・フィルタのカスケードを介してディジタル音響入力信号をオールパス・フィルタリングして、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させるステップと;M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、N個の周波数帯域における周波数ドメイン表現に転換して、それぞれの信号スペクトル値を計算するステップと;信号スペクトル値に基づいて、N個の周波数帯域におけるそれぞれの信号レベル推定量を求めるステップと;それぞれの信号レベル推定量と帯域利得規則に基づいて、N個の周波数帯域に対する、それぞれの周波数ドメイン利得係数を計算するステップと;周波数ドメイン利得係数を、時間ドメイン表現に変換して、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数を生成するステップと;処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数で、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを畳み込み演算して、処理されたディジタル出力信号を生成するステップと;それぞれのサンプルのレートまたは所定のブロック・レートに従ってM個の遅延ディジタル音響信号サンプルを更新するステップとを含み、N個の周波数帯域の内の少なくとも2つに対する、信号スペクトル値の少なくとも2つが、異なるレートで更新され、Mは正の整数であり、Nも正の整数である。
任意選択で、前記方法は、N個の周波数帯域の部分集合に対する信号スペクトル値の部分集合を更新するステップ;N個の周波数帯域の部分集合に対する信号レベル推定量の部分集合を更新するステップと;N個の周波数帯域の部分集合に対する周波数ドメイン利得係数の部分集合を更新するステップと;N個の周波数帯域の残りに対する周波数ドメイン利得係数の残りを維持するステップとをさらに含む。
任意選択で、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルは、所定の繰り返し帯域更新スケジュールに従って更新される。
信号プロセッサによってそれを実行することによって、先述の方法のいずれかが行われる、実行可能なプログラム命令を記憶する非一時的(non-transitory)媒体を備える、コンピュータ製品が開示される。
その他およびさらなる態様および特徴は、以下の実施形態の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
実施形態を、以下の添付の図面に関連してより詳細に説明する。
サイドブランチ・アーキテクチャを有する従来技術の高速フーリエ変換(FFT)に基づく多帯域ダイナミックレンジ圧縮器の概略ブロック図である。 いくつかの実施形態による、多帯域ダイナミックレンジ圧縮器の簡略された概略ブロック図である。 図2の多帯域ダイナミックレンジ圧縮器の圧縮フィルタの一組の時間変化圧縮フィルタ係数の計算を示す、概略ブロック図である。 図2の多帯域ダイナミックレンジ圧縮器のための、行列充填(matrix filling)方法に基づく、第1の例示的帯域更新スケジュールを示す図である。 周波数帯域の繰り返しパターンを含む、図2の多帯域ダイナミックレンジ圧縮器のための、第2の帯域更新スケジュールを示す図である。 スペクトルのカバー範囲を最適化するために、図4Bに示される帯域更新スケジュールを使用する、多帯域ダイナミックレンジ圧縮器の処理された出力信号の時間‐周波数プロットを示す図である。
以下に、図面を参照して、様々な実施形態について説明する。なお、図面は必ずしも実寸通りには描かれていないこと、および同様の構造または機能の要素は、全ての図面を通して同一の参照番号で表されていることに留意されたい。また、図面は、実施形態の説明を容易にすることだけを意図するものである。これらの図面は、特許請求の範囲に記載された発明の網羅的な説明を意図するものではなく、また特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図するものでもない。さらに、図示された実施形態が、示されたすべての態様または利点を有する必要はない。特定の実施形態に関係して記述された態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、そのように図示されていない場合、またはそのように明示的に記述されていない場合でも、その他の任意の実施形態において実施することができる。
図1は、いわゆるサイドブランチ・アーキテクチャを有する、従来技術の高速フーリエ変換(FFT)に基づく多帯域ダイナミックレンジ圧縮器100の概略ブロック図である。多帯域ダイナミックレンジ圧縮器100は、サイドブランチを使用して、周波数解析、圧縮利得係数算出および音響入力信号の周波数合成を行う。ディジタル音響入力信号x(n)は、多帯域ダイナミックレンジ圧縮器100の入力1001に加えられて、K個の1次オールパス・フィルタA(z)のカスケードを介して伝播して、遅延ディジタル音響信号サンプルの系列p(n)〜p(n)を生成する。従来の純粋な遅延ではなく、1次オールパス・フィルタを使用することで、周波数解析および周波数合成が実施される周波数スケールを、先に考察したような多数の望ましい特性を有する、いわゆるワープ周波数スケールに変換する。次いで、上記遅延サンプルの系列p(n)〜p(n)は、窓付けされて(windowed)、窓付けされた系列を使用して、FFTが算出される(1005)。FFTの結果は、バーク(Bark)周波数スケール上で、一定間隔でサンプリングされた周波数スペクトルである。入力データ系列は窓付けされているので、周波数スペクトルは、ワープ周波数ドメインにおいて平滑化されて、それによって重複周波数帯域を生成する。周波数ドメイン・レベル推定量(例えば、パワー・スペクトル)は、ワープFFTから計算され、次いで、周波数ドメイン利得係数(例えば、圧縮利得)が、音響解析帯域に対して、ワープ・パワー・スペクトルから計算される(1007)。周波数ドメイン利得係数は、純粋な実数であるので、ワープ時間ドメイン・フィルタの逆FFTの結果として、実数であり、偶対称性を有する1組のフィルタ係数が得られる(1009)。次いで、システム音響出力y(n)が、遅延ディジタル音響信号サンプルの系列p(n)〜p(n)を圧縮利得フィルタで畳み込み演算することで算出され(1011)、この場合にg(n)は圧縮フィルタ係数である。所定のブロック・レート、例えば16kHzサンプリング周波数において、ブロックごとに24サンプルに対して、1.5ミリ秒で動作している、FFT演算1005は、すべての周波数帯域におけるパワー・スペクトルの同期的な更新、したがって、全周波数帯域の同一の更新レートにつながり、先に考察した問題につながる。
図2は、いくつかの実施形態による、多帯域信号プロセッサ200の簡略化された概略ブロック図である。この実施形態においては、多帯域信号プロセッサは、多帯域ダイナミックレンジ圧縮器200として機能するように構成されているが、当業者は、多帯域信号プロセッサのその他の実施形態において、適切に適合させることによって、多帯域の拡大またはノイズ低減などの他の信号処理機能を実現してもよいことに気付くであろう。
多帯域ダイナミックレンジ圧縮器200は、圧縮器200へのディジタル音響入力信号を受け入れるための、信号入力、Audio inを備える。圧縮器200を通過する直接的な音響信号経路は、ディジタル音響入力信号を受信して、ディジタル・オールパス・フィルタ間に介在するそれぞれのタッピング・ノード(黒点)において複数の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させる、M−1個のディジタル・オールパス・フィルタ201a、201b、...201M−1のカスケードを含む。カスケードのディジタル・オールパス・フィルタ201a、201b、...201M−1の数は、圧縮器200の特定の用途の性能要件およびパワー要件に応じて変わることになる。補聴装置用途における多帯域圧縮のための複数の有用な実施形態において、ディジタル・オールパス・フィルタの数、M−1は、7から63であり、それぞれ、8から64の遅延ディジタル音響信号サンプルを、タッピング・ノードにおいて発生させる。
直接的な音響信号経路は、M個の乗算器202a、...202MのM個の出力に結合された、加算関数215を含む、信号畳み込みプロセッサをさらに含む。信号畳み込みプロセッサは、複数の遅延ディジタル音響信号サンプルの連続的なサンプル、またはサンプルのブロックを、圧縮フィルタのM個の時間変化圧縮フィルタ係数g〜gを用いて、所定の更新レートで畳み込み演算し、多帯域圧縮器200のディジタル音響出力、Audio Out(n)において、処理されたディジタル出力信号を生成するように構成されている。Nは正の整数であり、好ましくは、Mに等しいか、またはそれよりも小さい。当業者であれば、更新レートは、多帯域圧縮器200の処理が、ブロックに基づくものであるか、またはそれぞれのサンプルに基づくものであるかによって変わる可能性があることを理解するであろう。多帯域圧縮器200のブロックに基づく実施形態において、サンプルのブロックは、タッピング・ノードにおける、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルのすべて、またはいずれかの部分集合を含んでもよい。多帯域圧縮器200のサンプル毎の更新レートは、多帯域圧縮機200が、ディジタル音響入力信号におけるインパルスノイズ、またはその他の望ましくない過渡状態(transient)に対して特に迅速に応答することを可能とし、それによってユーザの不快感を最小化する。当業者であれば、k=1,2,...Mに対するタッピング・ノード202kは、乗算x_k(n)*g_k(n)を実行し、ここで「*」は乗算を意味し、x_k(n)は、時間nにおける、遅延ライン、すなわちディジタル・オールパス・フィルタのカスケードのk番目タップにおける信号であり、g_k(n)は、時間nにおけるk番目の時間変化圧縮フィルタ係数であることを理解するであろう。加算ノード215は、単にその入力を加算して、その結果を出力、Audio Out(n)に送出する。信号畳み込みプロセッサは、次の計算を行う:
Audio Out(n)=sum_k〔x_k(n)*g_k(n)〕、但しsum_kは、k=1からMまでの総計を意味する。
多帯域圧縮器200は、いわゆるサイドチェーン・プロセッサまたはサイドチェーン関数205をさらに含み、これは、周波数ドメイン変換プロセッサ203(「解析フィルタ・バンク」と表記されることが多い)、逆周波数ドメイン変換プロセッサ209(「合成フィルタ・バンク」と表記されることが多い)、および前記の2つの変換プロセッサ203、209の間に介在された、処理利得算出器207を含む。最後に、サイドチェーン・プロセッサまたはサイドチェーン関数205は、帯域セレクタ206を備えており、これは、図3を参照して以下にさらに詳細に説明するように、複数の個々の周波数帯域の任意の特定の周波数帯域における、信号スペクトル値、および付随する周波数ドメイン利得係数が、算出または更新される順番、すなわち頻度を制御する。サイドチェーン・プロセッサ205の出力は、先に考察したN個の時間変化圧縮フィルタ係数、または圧縮ベクトル、g〜gである。M個の遅延ディジタル音響信号サンプルは、周波数ドメイン変換プロセッサ203の入力に加えられ、この変換プロセッサ203は、遅延ディジタル音響信号サンプルを周波数ドメイン表現に変換して、変換プロセスによって作成された所定数の周波数帯域のそれぞれにおける信号スペクトル値を生成する。周波数帯域の数はM/2+1に一致してもよく、M=32の設定が17の周波数帯域に対応するようにしてもよい。これらの周波数帯域は、好ましくは、窓関数、例えば、ハニング窓(Hanning window)によって制御される重複幅(overlap)で重複している。
周波数ドメイン変換プロセッサ203、または代替的に処理利得算出器207は、対象とする周波数帯域における所定の信号スペクトル値に基づいて、周波数帯域のそれぞれに対する信号レベル推定量を計算するように構成された、レベル推定器(図2には示されていないが、図3のアイテム313として示されている)を備える。信号レベル推定量には、例えば、振幅、パワーまたはエネルギーレベルの推定量を含めてもよい。各周波数におけるレベル推定量には、また、アタック時間およびリリース時間などの特定の時間定数も含めてもよい。帯域利得規則は、例えば、対象とする周波数帯域内での音響信号の特定の圧縮比を定義する。圧縮比は、ディジタル音響入力信号の全レベルにわって一定であってもよく、またはディジタル音響入力信号のダイナミックレンジにわたって可変であってよい。帯域利得規則は、様々な方法で定義してもよい。一実施形態において、帯域利得規則は、信号レベル推定量の値を、対応する周波数ドメイン利得係数Gの値にマッピングするルックアップ・テーブルを介して定義してもよい。帯域利得規則は、異なる周波数帯域間で異なるか、または2つ以上の周波数帯域において本質的に同一であってもよい。しかしながら、聴覚障害ユーザの聴覚損失の最適な聴覚損失補償を行うために、少なくとも2つの異なる周波数帯域において、異なる帯域利得規則、およびそれにより異なることの多い圧縮パラメータを使用するのが有利なことが多い。
計算された周波数ドメイン利得係数Gは、以下に説明する係数合成によって、周波数ドメイン利得係数を、圧縮係数フィルタのM個の時間変化圧縮フィルタ係数g〜gに変換するように構成された、逆周波数ドメイン変換プロセッサ209に送られる。
上述のように、帯域セレクタ206は、複数の個々の周波数帯域の内の任意の特定の周波数帯域における信号スペクトル値を算出または更新する順番を制御し、したがってその頻度を制御する。好ましくは、少なくとも2つの異なる周波数帯域の信号スペクトル値の帯域更新レートは異なる。例えば200Hzが中心である低周波数帯域の帯域更新レートを、例えば約5kHzが中心である高周波数帯域の帯域更新レートよりも、例えば全体的に低くすることで、高周波数帯域における信号レベルを正確に推定するためにより多くの計算リソースが当てられるようにしてもよい。このことは、例えば、先に考察したインパクトノイズにより生じるものについて、到来音のレベルをより迅速に変化することが期待されるため、有利である。高周波数帯域の帯域更新レートは、例えば、多帯域圧縮器200の畳み込みプロセッサのブロック・レートまたはそれぞれのサンプルの更新レートに等しくしてもよい。それぞれのサンプルの更新レートは、ディジタル音響入力信号の選択されたサンプリング周波数の逆数に対応する。このサンプリング周波数は、典型的な聴覚装置用途に対しては、16kHzから48kHzとしてもよい。サンプルのブロックには、4から64のサンプルを含めてもよい。他方、低周波数帯域の更新レートは、第2、第3、第4などのサンプル毎、または第2、第3、第4などのサンプルのブロック毎に対応させて、低周波数帯域の更新レートが、高周波数帯域の更新レートの、少なくとも2分の1よりも小さくなるようにしてもよい。異なる周波数帯域間の更新帯域レートにこのような違いがあることは、先に考察した従来技術の高速フーリエ変換(FFT)に基づく多帯域ダイナミックレンジ圧縮器100とは対照的である。従来技術では、FFTに基づくブロック処理のために、全周波数帯域におけるパワー・スペクトルの更新レートが同じである。
図3は、図2のサイドチェーン関数205または多帯域圧縮器200のブランチにおいて、先に考察したM個の時間変化圧縮フィルタ係数g〜gを計算する方法をさらに詳細に示す、概略ブロック図300である。M個の遅延ディジタル音響信号サンプルx〜xn−M+1が、周波数ドメイン変換プロセッサ203のそれぞれの乗算器の入力に加えられる。周波数ドメイン表現への変換は、本実施形態においては短時間フーリエ変換(STFT)アルゴリズムによって実施され、STFT係数の重み付けは、適当な窓関数、例えばハニング窓による窓付け処理(windowing)の結果として得られる。この計算は、行列‐ベクトル積である、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルx〜xn−M+1とSTFT係数行列との積が、ベクトル‐ベクトル積の系列として実行できるという特性を利用している。より具体的には、STFT行列の、詳細なフローチャート203aにおいてW1k〜WMkで示されている、STFT係数のk番目の行のM個の係数と、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルとの間の内積は、解析フィルタ203のk番目の周波数帯域における更新された信号スペクトル値を決定する。このk番目の周波数帯域の更新された信号スペクトル値は、加算関数311の出力に現れる。k番目の周波数帯域における信号スペクトル値の信号レベル推定量Pは、パワー推定関数313において求められ、この関数においては、対数パワー推定量が、信号スペクトル値を2乗し、その結果の対数をとることによって形成される。信号レベル推定量Pは、先に考察した処理利得算出器207に加えられ、この算出器は、k番目の周波数帯域の以前に考察した帯域利得規則に基づいて、周波数ドメイン利得係数Gの対応する更新値を計算する。一方で、現在のサンプル周期において未処理のまま、または更新されないままとなる、残りのN−1個の周波数帯域の周波数ドメイン利得係数のそれぞれの以前の値は、サイドチェーン・プロセッサまたはサイドチェーン関数205の適切なメモリ要素(図示せず)によって維持される。STFT係数とM個の遅延ディジタル音響信号サンプルの間のベクトル内積は、STFT係数の特定の行、例えば、それぞれ9番目の周波数帯域および13番目の周波数帯域に対応する、W19〜WM9やW13〜WM3などをそれぞれ含む、STFTベクトルの事前選択された組のそれぞれに対して実施される。このようにして、各周波数帯域における信号スペクトル値が、帯域セレクタ206によって制御される所定の順番または順序で計算される。この順番または順序は、任意の特定の周波数帯の信号スペクトル値を、どのような順番で、およびどの程度の頻度で算出または更新するかを決定する、所定の帯域更新スケジュール、または帯域サンプリング・スケジュールを定義する。
例示的な帯域更新スケジュールまたはサンプリング・スケジュール400が、図4Aに図示されている。図4Aの例は、M=32であり、17の異なる周波数帯域を有する実施形態において、上述の多帯域圧縮器200に対するものである。さらに、本実施形態において、信号畳み込みプロセッサは、それぞれのサンプルのレートで更新され、例示的な帯域サンプリング・スケジュール400の特性は、それぞれのサンプルの更新レートに適合される。当業者は、代替実施形態における信号畳み込みプロセッサは、適切なブロック・レートで更新して、帯域更新スケジュールをそれに適合させてもよいことを理解するであろう。
帯域サンプリング・スケジュール400は、17の異なる周波数帯域の特定の周波数帯域を定義する周波数帯域インデックスである、8列と6行の整数を含むスケジュール行列400として配列される。多帯域圧縮器の信号畳み込みプロセッサのそれぞれのサンプルの更新において、単一の周波数帯域だけが、処理されて更新される。任意の特定のサンプル時間において更新または処理される周波数帯域の数は、「帯域更新スケジュール」によって示される。次に、閉ループ・スケジュール曲線402で示されるような、スケジュール行列400を通過する、列方向軌跡(column wise trajectory)を考える。この軌跡は、帯域更新スケジュールを定義する。各サンプル周期において、帯域セレクタ206は、帯域更新スケジュールにおける次のエントリに進み、それによって、更新または処理しようとする周波数帯域を選択する。したがって、閉ループ・スケジュール曲線402の方向は、周波数帯域が更新/サンプリングされるとともに、周波数帯域のそれぞれのレベル推定量および付随の周波数ドメイン利得係数が更新される、方向および順番を示す。例えば、サンプル時間ステップnにおいて、閉ループ・スケジュール曲線402が、行列エントリ(3,7)に位置する場合には、スケジュール行列400の円405で示されるように、選択される周波数帯域は、番号13である。後続のサンプル時間ステップ(n+1)において、閉ループ・スケジュール曲線は、行列エントリ(4,7)となり、周波数帯域番号15が更新される。
閉ループ・スケジュール曲線402の閉じた特性は、帯域更新スケジュールまたはサンプリング・スケジュールが、6*8=48のサンプル周期または時間ステップ毎に繰り返されることを意味する。なお、構築によって、この行列充填方法は、同じ周波数帯域の選択と更新の間の、サンプル時間周期またはステップの数、すなわち、帯域更新レート、または帯域サンプリング周期が、各周波数帯域に対して一定となることを確かなものとする。例えば、周波数帯域4に対する帯域更新レートは、スケジュール行列400を通過する完全な巡回に対応して、48サンプル周期である。ディジタル音響入力信号の16kHzサンプリング周波数に対して、これは、約3msの帯域更新レートに対応する。周波数帯域9に対して、帯域更新レートは、24サンプル周期であり、周波数帯域16に対して、帯域更新レートは、6サンプル周期であり、これらは、それぞれ約1.5msおよび約0.375msに対応する。
したがって、周波数帯域4、9および16の帯域更新レートは、この特定の実施形態においては、すべて異なる。言い換えると、スケジュール行列400の方法を使用して、有効な帯域更新スケジュールを作成することの新規な特徴は、構築によって、帯域更新レートが、任意の所与の帯域番号に対して、一定であり、場合によっては固有であることである。任意の特定の周波数帯域に対する更新は、帯域セレクタ206が、スケジュール行列400を「充填する」ときにより頻繁にパターンを繰り返すように構成される場合に、増やすことができる。当業者は、帯域更新スケジュールは、数多くの方法によって構築してもよく、特定の用途の要件に適合させてもよいことを理解するであろう。帯域スケジュールは、例えば、各周波数帯域がそれ自体の固有の更新レート/サンプリング周期を有するように、すなわち、2つの周波数帯域が決して同時刻にスケジュールされず、また各周波数帯域の更新レートが一定のままとなるように、構築してもよい。「行列充填方法」によって帯域スケジュールを構築する1つの方法が、スケジュール行列400によって図解されている。第1の行に、番号1から8が配置されている。第2の行に、番号9〜12が、第3の行に、番号13および14が配置され、第4から第6の行が、番号15から17を保持している。充填された行列エントリは、灰色の背景で陰影をつけられている。行1は完全に充填されているが、行2から6は、部分的にだけ充填されている。ところで、それぞれの行の空いた場所は、各行において、最初の番号パターンを繰り返すことによって充填されてもよい。例えば、行3は、周波数帯域13、14、13、14、13、14、13、14を定義しており、つまりパターン13、14を4回繰り返している。こうして、スケジュール行列400は、(多重の)周波数帯域インデックス1から17で充填される。
当業者は、上述の行列充填方法に対して多くの変形が可能であることに気付くであろう。例えば、異なる大きさの行列を、番号1から17で充填することも可能であり、これによって、異なる帯域更新スケジュールを得ることになる。代替的に、17の周波数帯域を有するフィルタ・バンクに対して、行列を、17より大きい番号、例えば、番号1から20で充填することもできる。17より大きい周波数帯域番号が選択された場合には、どの利用可能な周波数帯域も、更新または処理をされることがない。この方式によると、各サンプル時間周期において、単一の帯域が処理されるか、またはいずれの周波数帯域も処理されない、フィルタ・バンクを得ることになる。そのような帯域更新スケジュールは、多帯域圧縮器のバッテリ消費を、知覚性能に対してトレードオフすることを可能にすることから、有利である。同じ意味で、スケジュール行列400は、17未満の周波数帯域を有する任意のフィルタ・バンクに対して、可能な帯域更新スケジュールを記述することもできる。最後に、帯域スケジュール行列400に対して順列置換(permutation)を行うことも可能であり、例えば、帯域スケジュール行列400において周波数帯域番号8と4を交換すると、違ってはいるが、有効な帯域更新スケジュールを得ることになる。さらに、有効なスケジュールが得られるようにするための、帯域スケジュール行列400に対するその場限りでの修正(ad hoc modification)も可能である。帯域更新スケジュールの順列置換を行う重要な理由は、スペクトルのカバー範囲を改善すること、すなわち帯域応答によるカバー範囲に含まれる時間‐周波数スペクトルにおける変調またはギャップを最小化することである。図4Bに示されている、対応する(9×4)スケジュール行列400aと共に、帯域サンプリング・スケジュールの最適化されたスペクトルのカバー範囲の例が、図5の時間‐周波数プロットにおいて示されている。
さらに、例示的な帯域サンプリング・スケジュール400は、帯域1、2、3、4および5などの、少なくともいくつかの低周波数帯域に対して、帯域14、15および16などの高周波数帯域に対するよりも、より低い帯域更新レートを定義することが明らかである。また、帯域サンプリング・スケジュールに対する制約のないデザインスペースによって、特定の周波数帯域に対して、信号スペクトル値、ならびに対応するレベル推定および周波数ドメイン利得係数をいつ更新するかについて、柔軟性を大幅に向上させる。したがって、周波数帯域の個々の帯域更新レートにより、先に考察した従来技術のFFTに基づく多帯域ダイナミックレンジ圧縮器100と同等の知覚性能に対して、計算負荷を大幅に低減することが可能である。改良された実施形態においては、各周波数帯域の帯域更新レートは、予測される必要性に基づいて、独立に適合させることができる。
圧縮利得フィルタは、好ましくは、各サンプル時間周期に対してM個の時間変化圧縮フィルタ係数g〜gすべての更新された値が計算されるように、選択された周波数帯域が、帯域サンプリング・スケジュールに従って更新されるときに、更新される。時間ドメインにおいて圧縮利得フィルタを適用するために、すなわち、k’番目帯域の周波数ドメイン利得係数Gの更新値を反映する、M個の時間変化圧縮フィルタ係数g〜gの更新値を求めるために、時間ドメインに変換して戻す必要がある。これを実施することのできる、少なくとも2つの異なる方法が原理的に存在する:(1)周波数ドメイン利得係数Gに対してIFFTを行うとともに、要素毎に(element-wise)適当な合成窓で乗算を行う、または(2)逆周波数ドメイン変換プロセッサ209の詳細なフロー図209aに示すように処理を進めて、適切な合成窓を用いて、行列を適切なIFFTに基づくベクトルと結合させる、行列‐ベクトル乗算を使用する。後者の方法を使用し、1つの周波数帯域だけが、サンプル時間周期毎に更新されることを考慮して、圧縮フィルタ係数g〜gまたは係数ベクトルが、スカラー‐ベクトル乗算によってインクリメンタルに更新され、この場合に、スカラーは対象とする周波数ドメイン利得係数であり、すなわちk’番目の周波数帯域に対するGなどであり、ベクトルは、IFFTに基づく合成行列からの係数の一行または一列である。このようにして処理を進める場合、周波数ドメイン利得係数Gは、最初に、指数化関数315に適用して、Gを(対数関数313によって作成された)対数ドメインから線形表現へと変換する。後続のステップにおいて、選択されたk’番目の周波数帯域に対する周波数ドメイン利得係数Gの以前の値が、減算器317によってGの現在値から減算されて、周波数ドメイン利得係数Gの値の更新または増分を生じる。次に、周波数ドメイン利得係数の値の増分を、詳細フロー図209a上で係数V1k〜VMkとして示されているIFFTに基づく合成行列からの、重み付き逆フーリエ係数によって乗算する。このステップによって、周波数ドメイン利得係数の値における、計算された増分が、圧縮フィルタ係数g〜gのそれぞれの対応する増分または更新に変換される。圧縮フィルタ係数g〜gの増分または更新は、k’番目の周波数帯域の周波数ドメイン利得係数の更新に対応する。これらのフィルタ係数増分は、圧縮フィルタ係数g〜gのそれぞれに接続された、メモリ/遅延関数および加算関数319a、319bによって、以前のフィルタ係数のそれぞれに加算される。したがって、圧縮フィルタ係数g〜gの値を更新する。当業者は、固定小数点演算において後者の変換を実行すると、丸め誤差の蓄積を生じる可能性があることに気付くであろう。したがって、上記に概説した合成スキームを、時折、全帯域逆離散フーリエ変換によって代替するのが好ましい。後者は、蓄積された丸め誤差をリセットまたは消去する。
図5は、多帯域圧縮器200の17帯域のものにおいて、図4Bに示されているスケジュール行列400aを採用することによって達成された、最適化されたスペクトルのカバー範囲を示す、時間‐周波数プロット500である。周波数軸は、0Hzから8000Hzまでの線形であり、これは、多帯域圧縮器200への音響入力信号の、使用された16kHzサンプリング・レートのナイキスト周波数に対応する。y軸は、100サンプルが6.25msに対応する、音響信号のサンプルにおける時間を示す。時間‐周波数プロットにおける濃淡スケールは、フィルタ・バンクの相対的なスペクトルのカバー範囲を示す。プロット内の所与の時間‐周波数座標における(スケール502上の約1.0に対応する)白い/明るい色は、フィルタ・バンクが、スペクトル内の時間‐周波数位置を非常に良好に解像できることを示す。この文脈において、「良好に解像する」とは、対象とするスペクトル位置における任意の音響入力信号が、スペクトル・パワー推定量Pによって適切に測定または検出されることを意味する。一方、スケール502上の(約0.0〜0.2に対応する)黒色は、その時間‐周波数位置における音響入力信号が、多帯域圧縮器のサイドチェーン・プロセッサにおいて行われる、帯域パワー推定工程によって、ほとんど未検出のままとなることを示す。時間‐周波数プロット上の17の周波数帯域のそれぞれの場所は、対応する帯域インデックスによって示されている。スケジュール行列400aによって定義される、選択された帯域サンプリング・スケジュールによって、音声理解容易性に対して重要な約100Hzから4kHzの周波数範囲にわたって、良好なスペクトルのカバー範囲が得られることが明白である。このことは、周波数帯域1〜13における時間全体での相対的な白色または明るい灰色によって示される。周波数帯域14〜17に対する解像度は、小さいかまたは悪いが、これらの周波数帯域は、音声理解容易性に対しての重要性が低い。スペクトルのカバー範囲の特性が当面の用途に合致するかどうかは、帯域サンプリング・スケジュールの設計者によっている。帯域サンプリング・スケジュールを変更することによって、設計者は、前述のように非常に直接的で、高度に柔軟性のある方法で、スペクトルのカバー範囲パターンの特性に影響を与えることができる。
特定の実施形態を示して、説明したが、特許請求の範囲に記載された発明を、好ましい実施形態に限定することを意図するものではなく、当業者には、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることが明白であることが理解されよう。したがって、明細書および図面は、制約的ではなく、説明的な意味とみなすべきである。特許請求の範囲に記載された発明は、その代替形態、修正形態および均等形態をその範囲に含めることを意図している。
本開示は、以下に記載する項目による、複数の態様を含む。
(項目1)
多帯域信号プロセッサであって、
ディジタル音響入力信号の受信のための信号入力と;
ディジタル音響入力信号を受信するとともに、ディジタル・オールパス・フィルタ間に介在するそれぞれのタッピング・ノードにおいてM個の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させるように構成された、ディジタル・オールパス・フィルタのカスケードと;
M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数で畳み込み演算して、処理されたディジタル出力信号を生成するように構成された、信号畳み込みプロセッサと;
M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを周波数ドメイン表現に変換して、所定数N個の周波数帯域におけるそれぞれの信号スペクトル値を与えるように構成された周波数ドメイン変換プロセッサと;
それぞれの信号スペクトル値に基づいて、所定数の周波数帯域においてそれぞれの信号レベル推定量を計算するように構成されたレベル推定器と;
それぞれの信号レベル推定量および帯域利得規則に基づいて、所定数の周波数帯域のそれぞれに対する周波数ドメイン利得係数を計算するように構成された、処理利得算出器と;
N個の周波数ドメイン利得係数を、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成された、逆周波数ドメイン変換プロセッサと
を含み、周波数ドメイン変換プロセッサは、異なる帯域更新レートで、少なくとも2つの周波数帯域の信号スペクトル値を計算するように構成されており、MおよびNのそれぞれは正の整数である、多帯域信号プロセッサ。
(項目2)
信号畳み込みプロセッサが、それぞれのサンプルについて更新される、あるいは、各ブロックが複数のディジタル音響信号サンプルを含む、ブロックについて更新されるように構成されている、項目1に記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目3)
周波数ドメイン変換プロセッサが、
第1の帯域更新レートにおいて、少なくとも第1の周波数帯域の信号スペクトル値を計算し、
第1の帯域更新レートよりも低い更新レートにおいて、少なくとも第2の周波数帯域の信号スペクトル値を計算するように構成されており、
第1の周波数帯域の中心周波数が、第2の周波数帯域の中心周波数よりも高い、項目1または2に記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目4)
前記信号畳み込みプロセッサの各更新において:
周波数ドメイン変換プロセッサは、所定数の周波数帯域の部分集合のそれぞれの信号スペクトル値を更新するように構成され;
レベル推定器は、周波数帯域の部分集合のそれぞれの信号レベル推定量を更新するように構成され、
処理利得算出器は、周波数帯域の部分集合のそれぞれの周波数ドメイン利得係数を更新するとともに、残りの周波数帯域の周波数ドメイン利得係数を維持するように構成されており、
逆周波数ドメイン変換プロセッサは、更新された周波数ドメイン利得係数および維持された周波数ドメイン利得係数を、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成されている、項目2に記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目5)
周波数帯域の部分集合が、所定数の周波数帯域の内の単一の周波数帯域によって形成される、項目4に記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目6)
周波数ドメイン変換プロセッサが、一定の更新レートで各周波数帯域の信号スペクトル値を更新するように構成されている、項目1〜5のいずれかに記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目7)
周波数ドメイン変換プロセッサが、所定の繰り返し帯域更新スケジュールに従って、所定数の周波数帯域における、それぞれの信号スペクトル値を更新するように構成されている、項目6に記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目8)
周波数ドメイン変換プロセッサが、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルと、周波数帯域に対応する離散フーリエ変換行列の行の、窓付けされた(windowed)または窓付けされていない(un-windowed)離散フーリエ変換係数の間のベクトル内積として、周波数帯域のそれぞれの信号スペクトル値を計算するように構成されている、項目1〜7のいずれかに記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目9)
逆周波数ドメイン変換プロセッサが、更新された周波数ドメイン利得係数および維持された周波数ドメイン利得係数を、一組のスカラー‐ベクトル乗算を実行することによって、M個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成され、
スカラーは、更新された、または維持された周波数ドメイン利得係数を含み、ベクトルは、IFFTに基づく合成行列の係数の1つの行または列を含む、項目4に記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目10)
処理利得算出器の帯域利得規則の1つまたは複数が、
ディジタル音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ圧縮、
ディジタル音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ拡大、
ディジタル音響入力信号のノイズ低減
の内の1つを提供するように構成されている、項目1から9のいずれかに記載の多帯域信号プロセッサ。
(項目11)
ユーザによって使用される補聴装置であって、
音の受信に応答して第1のマイクロフォン信号を発生させるための第1のマイクロフォンと、
第1のマイクロフォン信号に結合されて、対応するディジタル音響入力信号を発生するように構成された音響入力チャネルと、
ディジタル音響入力信号に結合され、第1のマイクロフォン信号を受信し、ユーザの聴覚損失に応じて処理するように構成された、項目1〜10のいずれかに記載された多帯域信号プロセッサと、
処理されたディジタル出力信号を受信し、ユーザへ送出するための可聴音に変換するための、音再生チャネルとを備える、補聴装置。
(項目12)
ディジタル音響入力信号を処理して、処理されたディジタル出力信号を生成する方法であって、
a)ディジタル・オールパス・フィルタのカスケードを介してディジタル音響入力信号をオールパス・フィルタリングして、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させるステップと、
b)M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、所定数Nの周波数帯域における周波数ドメイン表現に変換して、それぞれの信号スペクトル値を計算するステップと、
c)信号スペクトル値に基づいて所定数の周波数帯域におけるそれぞれの信号レベルを推定するステップと、
d)それぞれの信号レベル推定量およびそれぞれの帯域利得規則に基づいて、所定数の周波数帯域に対するそれぞれの周波数ドメイン利得係数を計算するステップと、
e)周波数ドメイン利得係数を時間ドメイン表現に変換して、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数を生成するステップと、
f)M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数で畳み込み演算し、処理されたディジタル出力信号を生成するステップと、
g)それぞれのサンプルのレートまたは所定のブロック・レートのいずれかに従って、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを更新するステップと
を含み、少なくとも2つの異なる周波数帯域の信号スペクトル値が、異なるレートで更新され、MおよびNのそれぞれが正の整数である、方法。
(項目13)
M個の遅延ディジタル音響信号サンプルのそれぞれのサンプルについての更新後、またはそれぞれのブロックについての更新後において:
ステップb)は、所定数の周波数帯域の部分集合を、それぞれの信号スペクトル値で更新することを含み、
ステップc)は、周波数帯域の部分集合のそれぞれの信号レベル推定量を更新することを含み、
ステップd)は、周波数帯域の部分集合のそれぞれの周波数ドメイン利得係数を更新するとともに、残りの周波数帯域の以前の周波数ドメイン利得係数を維持することを含み、
ステップe)は、更新された周波数ドメイン利得係数および維持された周波数ドメイン利得係数を、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数の更新値に変換することを含む、項目12に記載のディジタル音響入力信号の処理方法。
(項目14)
周波数帯域の部分集合が、単一の周波数帯域だけを含む、項目13に記載のディジタル音響入力信号の処理方法。
(項目15)
所定の繰り返し帯域更新スケジュールに従って、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルの連続的なサンプルの更新の間、または連続的なブロックの更新の間に、周波数帯域の異なる部分集合が更新される、項目13または14に記載のディジタル音響入力信号の処理方法。
(項目16)
実行されると、信号プロセッサに、項目12の方法のステップa)〜g)を実行させるように構成された、実行可能プログラム命令を含む、コンピュータ可読データ・キャリア。

Claims (15)

  1. 多帯域信号プロセッサであって、
    ディジタル音響入力信号の受信のための信号入力と;
    前記ディジタル音響入力信号を受信するとともに、ディジタル・オールパス・フィルタ間に介在するそれぞれのタッピング・ノードにおいてM個の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させるように構成された、ディジタル・オールパス・フィルタのカスケードと;
    前記M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数で畳み込み演算して、処理されたディジタル出力信号を生成するように構成された、信号畳み込みプロセッサと;
    前記M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを周波数ドメイン表現に変換して、N個の周波数帯域におけるそれぞれの信号スペクトル値を生成するように構成された、周波数ドメイン変換プロセッサと;
    それぞれの信号スペクトル値に基づいて、N個の周波数帯域においてそれぞれの信号レベル推定量を計算するように構成された、レベル推定器と;
    前記それぞれの信号レベル推定量および帯域利得規則に基づいて、前記N個の周波数帯域のそれぞれに対する周波数ドメイン利得係数を計算するように構成された、処理利得算出器と;
    前記N個の周波数ドメイン利得係数を、前記処理フィルタの前記M個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成された、逆周波数ドメイン変換プロセッサと
    を含み、前記周波数ドメイン変換プロセッサは、異なる帯域更新レートで、前記周波数帯域の少なくとも2つの、前記信号スペクトル値の少なくとも2つを与えるように構成されており、Mは正の整数であり、Nは正の整数である、多帯域信号プロセッサ。
  2. 前記信号畳み込みプロセッサが、それぞれのサンプルについて更新される、あるいは、それぞれのブロックが複数のディジタル音響信号サンプルを含む、ブロックについて更新されるように構成されている、請求項1に記載の多帯域信号プロセッサ。
  3. 前記周波数ドメイン変換プロセッサが、
    第1の帯域更新レートにおいて、前記N個の周波数帯域の内の第1の周波数帯域に対する前記信号スペクトル値の1つを計算し、
    前記第1の帯域更新レートよりも低い更新レートにおいて、前記N個の周波数帯域の内の第2の周波数帯域に対する前記信号スペクトル値の別の1つを計算するように構成されており、
    前記第1の周波数帯域の中心周波数が、前記第2の周波数帯域の中心周波数よりも高い、請求項1に記載の多帯域信号プロセッサ。
  4. 前記信号畳み込みプロセッサは、複数回の更新において更新されるように構成されており、前記更新のそれぞれにおいて、
    前記周波数ドメイン変換プロセッサは、前記N個の周波数帯域の部分集合に対する前記信号スペクトル値の部分集合を更新するように構成され;
    前記レベル推定器は、前記N個の周波数帯域の前記部分集合に対する前記信号レベル推定量の部分集合を更新するように構成され、
    前記処理利得算出器は、前記N個の周波数帯域の部分集合に対する前記周波数ドメイン利得係数の部分集合を更新するとともに、前記N個の周波数帯域の残りに対する前記周波数ドメイン利得係数の残りを維持するように構成されている、請求項2に記載の多帯域信号プロセッサ。
  5. 前記周波数帯域の部分集合が、前記N個の周波数帯域の内の単一の周波数帯域によって形成される、請求項4に記載の多帯域信号プロセッサ。
  6. 前記逆周波数ドメイン変換プロセッサは、
    前記更新された周波数ドメイン利得係数および前記維持された周波数ドメイン利得係数を、一組のスカラー‐ベクトル乗算を実行することによって、前記M個の時間変化フィルタ係数に変換するように構成され、
    前記スカラー‐ベクトル乗算に含まれるスカラーは、前記更新された周波数ドメイン利得係数または前記維持された周波数ドメイン利得係数を含み、前記スカラー‐ベクトル乗算に含まれるベクトルは、逆高速フーリエ変換(IFFTに基づく合成行列の係数の1つの行または列を含む、請求項4に記載の多帯域信号プロセッサ。
  7. 前記周波数ドメイン変換プロセッサは、前記それぞれの周波数帯域に対して一定の更新レートで、前記信号スペクトル値を更新するように構成されている、請求項1に記載の多帯域信号プロセッサ。
  8. 前記周波数ドメイン変換プロセッサは、所定の繰り返し帯域更新スケジュールに従って、前記信号スペクトル値を更新するように構成されている、請求項1に記載の多帯域信号プロセッサ。
  9. 前記周波数ドメイン変換プロセッサは、前記M個の遅延ディジタル音響信号サンプルと、離散フーリエ変換行列の行の、窓付けされた(windowed)または窓付けされていない(un-windowed)離散フーリエ変換係数の間のベクトル内積として、前記信号スペクトル値の少なくとも1つを計算するように構成されている、請求項1に記載の多帯域信号プロセッサ。
  10. 前記帯域利得規則の1つまたは複数が、前記ディジタル音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ圧縮、前記ディジタル音響入力信号の多帯域ダイナミックレンジ拡大、または前記ディジタル音響入力信号のノイズ低減を提供するように構成されている、請求項1に記載の多帯域信号プロセッサ。
  11. ユーザによって使用される補聴装置であって、
    請求項1に記載の多帯域信号プロセッサと、
    前記多帯域信号プロセッサに結合された、第1のマイクロフォンと、
    前記多帯域信号プロセッサに結合された、スピーカとを備える、補聴装置。
  12. ディジタル音響入力信号を処理して、処理されたディジタル出力信号を生成する方法であって、
    ディジタル・オールパス・フィルタのカスケードを介して前記ディジタル音響入力信号をオールパス・フィルタリングして、M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを発生させるステップと、
    周波数ドメイン変換プロセッサによって、前記M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを、N個の周波数帯域における周波数ドメイン表現に変換して、それぞれの信号スペクトル値を計算するステップと;
    レベル推定器によって、前記信号スペクトル値に基づいて、前記N個の周波数帯域におけるそれぞれの信号レベル推定量を求めるステップと;
    処理利得算出器によって、前記それぞれの信号レベル推定量と帯域利得規則に基づいて、前記N個の周波数帯域に対する、それぞれの周波数ドメイン利得係数を計算するステップと;
    逆周波数ドメイン変換プロセッサによって、前記周波数ドメイン利得係数を、時間ドメイン表現に変換して、処理フィルタのM個の時間変化フィルタ係数を生成するステップと;
    信号畳み込みプロセッサによって、前記処理フィルタの前記M個の時間変化フィルタ係数で、前記M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを畳み込み演算して、処理されたディジタル出力信号を生成するステップと;
    それぞれのサンプルのレートまたは所定のブロック・レートに従って前記M個の遅延ディジタル音響信号サンプルを更新するステップと
    を含み、前記N個の周波数帯域の内の少なくとも2つに対する、前記信号スペクトル値の少なくとも2つが、異なるレートで更新され、Mは正の整数であり、Nも正の整数である、方法。
  13. 前記N個の周波数帯域の部分集合に対する前記信号スペクトル値の部分集合を更新するステップと;
    前記N個の周波数帯域の部分集合に対する前記信号レベル推定量の部分集合を更新するステップと;
    前記N個の周波数帯域の部分集合に対する前記周波数ドメイン利得係数の部分集合を更新するステップと;
    前記N個の周波数帯域の残りに対する前記周波数ドメイン利得係数の残りを維持するステップと
    をさらに含む、請求項12に記載の方法。
  14. 前記M個の遅延ディジタル音響信号サンプルが、所定の繰り返し帯域更新スケジュールに従って更新される、請求項12に記載の方法。
  15. 実行可能なプログラム命令を記憶する非一時的媒体を備え、信号プロセッサによって前記実行可能なプログラム命令を実行することによって請求項12の方法が行われる、コンピュータ製品。
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