JP6334417B2 - センサ配置位置選択装置、漏水量推定装置、漏水診断システム、漏水診断方法及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Description
図1は、第1の実施形態に係る配水システムの概要を示す概略図である。この配水システムでは、配水池70に蓄えられた水(浄水)が、ポンプやバルブ等によって家庭や事業所等を含む配水管路網PNに供給される。配水管路網PNに流入する水の量は、流量センサ80によって検出される。
センサ配置位置選択装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、センサ配置位置選択プログラムを実行する。センサ配置位置選択装置1は、センサ配置位置選択プログラムの実行によって配水管路網情報記憶部11、入力部12、出力部13、接続行列生成部14、補木抽出部15及び配置位置選択部16を備える装置として機能する。なお、センサ配置位置選択装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。センサ配置位置選択プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。センサ配置位置選択プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
配水管路網を流れる非圧縮流体の運動方程式は、式(1)で表される。式(1)において、i、jは節点の番号である。vijは管路ij(節点iと節点jを結ぶ管路)における水の流速である。Lijは管路ijの長さ[m]である。ρは水密度[kg/m3]である。Hiは節点iの標高である。Dijは管路ijの口径[m]である。λijは管路ijの管路摩擦抵抗である。
接続行列Aとは、有向グラフに基づいて生成される行列であり、節点の数をp、管路の数をkとした場合にp×k行列として生成される。接続行列Aの各要素Apkは、下記の定義によって決定される。
Apk=―1 :管路kにおいて節点pが始点の場合
Apk= 1 :管路kにおいて節点pが終点の場合
Apk= 0 :管路kにおいて節点pが始点でも終点でも無い場合
合、ループを一巡すると圧力損失がゼロとなる法則を得ることができる。すなわち、ある始点となる節点からループを辿って始点に戻ると、dP=0である。これを式で表現すると、式(15)となる。
Bik=―1 :閉路Fiが枝kを負の向きに含んでいる場合
Bik= 1 :閉路Fiが枝kを正の向きに含んでいる場合
Bik= 0 :閉路Fiが枝kを含まない場合
このように、接続行列Aの成分を木と補木の成分に分離することにより、漏水量の推定に係る演算を補木と木とで独立させて行うことが可能となる。支配方程式である式(2)、(3)及び(9)の3式をそれぞれグラフの木及び補木の部分に分けて書き下すと式(20)、(21)、(22)及び(23)となる。
上記のように、グラフ理論を応用すれば、配水管路網を構成する管路を補木と木とに分類することができる。その結果、配水管路網の支配方程式も補木及び木の部分に分けて考えることが可能となる。すなわち、補木となる管路に関して圧力損失dPcが計測できれば、配水管路網は、木となる管路で構成される1本の管路とみなすことが可能となる。1本の管路であれば各節点での漏水量は全圧力損失に直接影響することになるため、1つの系として扱うことができる。そのため、補木となる管路の両端に水圧センサが配置されれば、全ての節点における漏水量を推定することが可能となる。配置位置選択部16は、このような理由から、補木として抽出された管路の両端の節点を水圧センサの配置位置として選択する。
図8は、グラフ構造を集約する第1の方法として、木となる管路のグラフ構造に基づいて管路を枝と幹とに分類し、枝となった管路を幹となった管路に集約する方法を示す。図8の左図は、集約前の管路の例を示す図である。図8の右図は、集約後の管路の例を示す図である。図8における各節点の大きさは、各節点における水の使用量を表している。この場合、例えば、グラフ構造集約部17は、左図の4つの管路を右図の1つの管路に集約してもよい。グラフ構造集約部17は、このような集約の結果を、配水管路網情報記憶部11に記憶された情報に反映させる。
図9は、グラフ構造を集約する第2の方法として、口径の小さい管路を集約する方法を示す。図8と同様に、図9の左図は集約前の管路の例を示し、右図は集約後の管路の例を示す。この場合、グラフ構造集約部17は、左図の破線に示された口径の小さい管路をそれ以外の管路に集約してもよい。この場合、グラフ構造集約部17は、破線に示された管路は他の管路に集約するのではなく、単純に無視してもよい。グラフ構造集約部17は、このような集約の結果を、配水管路網情報記憶部11に記憶された情報に反映させる。
第2の実施形態では、第1の実施形態のセンサ配置位置選択装置1によって選択された配置位置に設置された水圧センサと、配水管路網PNへの水の供給量を計測する流量計と、各管路の節点に配置されたスマートメータと、を用いて各節点における漏水を診断する漏水量推定装置2について説明する。
漏水量推定装置2は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、漏水診断プログラムを実行する。漏水量推定装置2は、漏水診断プログラムの実行によって入力部21、出力部22、計測データ取得部23、管路網モデル構築部24、漏水係数最適化部25及び漏水量推定部26を備える装置として機能する。なお、漏水量推定装置2の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。漏水診断プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。漏水診断プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
第1の実施形態でも説明したように、補木として抽出された管路の両端の水圧が計測できれば、N個の節点を持つ配水管路網2は、N−1の節点から水が引き抜かれる1本の管路(以下、「仮想管路」という。)と等価となる。そして、ある時刻の仮想管路における有効水圧差dPと、各管路の差圧dPjとの関係は図12の具体例のように表される。図12に示されるように、1本の仮想管路であれば、各節点での漏水量と水圧差の関係が一意に決まるため、配水管路網の各節点における漏水量の推定は、制約付き非線形最適化問題として定式化することができる。以下、このような制約付き非線形最適化問題の定式化の方法について、2つの具体例を示す。
第1の方法は、全漏水量が各節点での漏水量の総和として表されることを制約とし、各時刻において計測された計測データに基づいて、仮想管路の始点から終点までの差圧が実測値に漸近するように漏水係数kiを最適化する方法である。漏水係数kiは、各節点における漏水量の推定値を決定する係数であり、水圧の1.15乗に比例すると仮定すれば式(24)で表される。
第2の方法は、第1の方法における全漏水量に関する制約条件を一部緩和して漏水係数kiを最適化する方法である。この場合、第2の方法では、各節点における漏水量の推定は、例えば式(28)のように定式化する。
図14における左図は、シミュレーション結果を示す図である。また、図14の右図は、シミュレーションで想定された環境における実測値を示す図である。いずれの図においても、横軸は各節点を表し、縦軸は各節点における漏水量を表す。図からも明らかなように、上記方法によって各節点における漏水量が精度よく推定できることが分かる。このように、実施形態の漏水量推定装置2は、漏水量が圧力に依存して変化する場合であっても、各節点の漏水量を推定することが可能となる。
Claims (18)
- 配水管路網を構成する管路の接続構成を示す情報に基づいて、前記配水管路網のグラフ構造を表す接続行列を生成する接続行列生成部と、
前記接続行列に基づいて、前記配水管路網を構成する管路を前記配水管路網において開管路を構成する木となる管路と、前記木とともに閉管路を構成する補木となる管路とに分類し、前記補木となる管路を抽出する補木抽出部と、
前記抽出された補木となる管路の両端の節点を水圧センサの配置位置として選択する選択部と、
を備えるセンサ配置位置選択装置。 - 前記補木抽出部は、水圧センサの配置位置に選択される節点に関して予め設定された目標条件を満たすように、前記補木となる管路を抽出する、
請求項1に記載のセンサ配置位置選択装置。 - 前記目標条件は、各節点における水圧センサの設置可否を示す条件であり、前記補木抽出部は、水圧センサの設置が可能な節点を持つ管路を補木として抽出する、
請求項2に記載のセンサ配置位置選択装置。 - 前記木となる管路で構成される開管路のグラフ構造に基づいて、前記開管路を幹と枝とに分類し、前記枝なる管路が存在する場合、前記枝となる管路を前記幹となる管路に集約する集約部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサ配置位置選択装置。
- 前記集約部は、口径の小さい管路を他の管路に集約する、
請求項4に記載のセンサ配置位置選択装置。 - 前記集約部は、前記配置位置選択部によって選択される配置位置が既存の水圧センサの配置位置となる程度に前記管路の集約を行う、
請求項4又は5に記載のセンサ配置位置選択装置。 - 前記補木抽出部は、前記補木となる管路の組み合わせを複数取得し、前記複数の組み合わせのうち、前記補木となる管路の数が最も少ない組み合わせを選択して前記補木となる管路を抽出する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサ配置位置選択装置。 - 前記選択部は、前記補木となる管路の両端の節点から既存の水圧センサの配置位置に近い配置位置を選択する、
請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサ配置位置選択装置。 - 前記配水管路網における節点の接続関係を含む配水管路網情報を記憶する配水管路網情報記憶部と、
前記配水管路網情報記憶部により記憶された配水管路網情報よりも新しい情報が存在することを示す情報を取得したときに、前記配水管路網情報を更新すべき旨の情報を通知する更新通知部と、
を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサ配置位置選択装置。 - 配水管路網を構成する管路の接続構成を示す情報に基づいて、前記配水管路網のグラフ構造を表す接続行列を生成する接続行列生成部と、
前記接続行列に基づいて、前記配水管路網を構成する管路を前記配水管路網において開管路を構成する木となる管路と、前記木とともに閉管路を構成する補木となる管路とに分類し、前記補木となる管路を抽出する補木抽出部と、
前記抽出された補木となる管路の両端の節点を水圧センサの配置位置として選択する選択部と、
を備えるセンサ配置位置選択装置として、
コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。 - 請求項1から9のいずれか一項に記載されたセンサ配置位置選択装置によって選択された配置位置に設置された水圧センサによって計測された、配水管路網において補木となる管路の水圧を示す情報と、配水管路網の各節点を通る開管路の始点から終点までの差圧と、前記配水管路網内の漏水量の総量と、各節点への流入流量と、各節点での水の使用量と、に基づいて各節点における漏水係数を決定変数とする最適化問題を解くことで、各節点における漏水係数を決定する漏水係数最適化部と、
前記決定された漏水係数と、前記配水管路網における節点間の接続関係を反映した流体の運動方程式に基づいて節点ごとの漏水量を推定する漏水量推定部と、
を備える漏水量推定装置。 - 前記漏水量推定部により推定された漏水量に基づく画像を表示する表示部を備える、
請求項11に記載の漏水量推定装置。 - 前記表示部は、前記漏水量推定部により推定された漏水量に応じた色彩で、前記節点を表すシンボルを描画した画像を表示する、
請求項11又は12に記載の漏水量推定装置。 - 管路毎の埋設条件を含む埋設条件情報を記憶する埋設条件情報記憶部と、
前記漏水量推定部により推定された節点毎の漏水量および前記埋設条件情報に基づいて、管路を更新する際の優先順位を算出する更新優先順位算出部と、
を備える請求項11から13のいずれか一項に記載の漏水量推定装置。 - 一部又は全部の節点における水の使用量を示す情報に水道メータにより取得された検針データを用いる、
請求項11から14のいずれか一項に記載の漏水量推定装置。 - 請求項1から9のいずれか一項に記載されたセンサ配置位置選択装置によって選択された配置位置に設置された水圧センサによって計測された、配水管路網において補木となる管路の水圧を示す情報と、配水管路網の各節点を通る開管路の始点から終点までの差圧と、前記配水管路網内の漏水量の総量と、各節点への流入流量と、各節点での水の使用量と、に基づいて各節点における漏水係数を決定変数とする最適化問題を解くことで、各節点における漏水係数を決定する漏水係数最適化部と、
前記決定された漏水係数と、前記配水管路網における節点間の接続関係を反映した流体の運動方程式に基づいて節点ごとの漏水量を推定する漏水量推定部と、
を備える漏水量推定装置として、
コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。 - 配水管路網を構成する管路の接続構成を示す情報に基づいて、前記配水管路網のグラフ構造を表す接続行列を生成する接続行列生成部と、
前記接続行列に基づいて、前記配水管路網を構成する管路を前記配水管路網において開管路を構成する木となる管路と、前記木とともに閉管路を構成する補木となる管路とに分類し、前記補木となる管路を抽出する補木抽出部と、
前記抽出された補木となる管路の両端の節点を水圧センサの配置位置として選択する選択部と、
前記選択部によって選択された配置位置に設置された水圧センサによって計測された、配水管路網において補木となる管路の水圧を示す情報と、配水管路網の各節点を通る開管路の始点から終点までの差圧と、前記配水管路網内の漏水量の総量と、各節点への流入流量と、各節点での水の使用量と、に基づいて各節点における漏水係数を決定変数とする最適化問題を解くことで、各節点における漏水係数を決定する漏水係数最適化部と、
前記決定された漏水係数と、前記配水管路網における節点間の接続関係を反映した流体の運動方程式に基づいて節点ごとの漏水量を推定する漏水量推定部と、
を備える漏水診断システム。 - 配水管路網を構成する管路の接続構成を示す情報に基づいて、前記配水管路網のグラフ構造を表す接続行列を生成する接続行列生成ステップと、
前記接続行列に基づいて、前記配水管路網を構成する管路を前記配水管路網において開管路を構成する木となる管路と、前記木とともに閉管路を構成する補木となる管路とに分類し、前記補木となる管路を抽出する補木抽出ステップと、
前記抽出された補木となる管路の両端の節点を水圧センサの配置位置として選択する選択ステップと、
前記選択ステップにおいて選択された配置位置に設置された水圧センサによって計測された、配水管路網において補木となる管路の水圧を示す情報と、配水管路網の各節点を通る開管路の始点から終点までの差圧と、前記配水管路網内の漏水量の総量と、各節点への流入流量と、各節点での水の使用量と、に基づいて各節点における漏水係数を決定変数とする最適化問題を解くことで、各節点における漏水係数を決定する漏水係数最適化ステップと、
前記決定された漏水係数と、前記配水管路網における節点間の接続関係を反映した流体の運動方程式に基づいて節点ごとの漏水量を推定する漏水量推定ステップと、
を有する漏水診断方法。
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