JP6330276B2 - 配向解析装置、配向解析方法およびプログラム - Google Patents
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Description
もっとも、CT画像データから成形品や接合体の内部構造を解析するデータ処理技術は、あまり発展していない。現状では、解析担当者が、3次元画像データによるスライス表示で内部画像を目視確認するといった態様が一般的である。
以下、明細書本文の記載において、ベクトルや行列を示す太字の表記を省略する。
処理部190は、画像データ取得部191と、ヘッセ行列演算部192と、配向状態算出部195とを具備する。
ヘッセ行列演算部192は、固有ベクトル算出部193と、固有値算出部194とを具備する。
ここでいう組成物とは、複数の要素または成分にて構成される物である。配向解析装置100は、特に、フィラーとフィラー以外の物質とを含んで構成される組成物の解析を行う。
一般に、フィラーは、組成物に何らかの特性を得させるために、組成物に混入される。例えば、組成物の一例である繊維強化プラスチックは、フィラーとしての強化繊維の混入により、強度を得られる。また、組成物の一例である放熱プラスチックは、フィラーとしての熱伝導物の混入により、放熱性を得られる。また、組成物の一例である導電プラスチックは、フィラーとしての導体(電気伝導体)の混入により、導電性を得られる。
フィラーの向きの均一性が、組成物の性質に影響する場合がある。例えば、繊維強化プラスチックは、様々な方向に強度を有するためには、フィラーの向きが一方向に集中せず、様々な向きを向いていることが好ましい。一方、プラスチックに磁性体のフィラーを混入して磁性を生じさせる場合、フィラーの向きが一方向に集中することで、強い磁性を得られる。
図2は、通信部110が受信するCT画像データによる、組成物の断面の表示例を示す説明図である。同図の例において、黒っぽく示されるプラスチック樹脂に、白っぽく示される針状フィラー(針状のフィラー)が混入されている。
以下では、まず、配向解析装置100が針状フィラーを含む組成物の解析を行う場合について説明する。その後、配向解析装置100が板状フィラー(板状のフィラー)を含む組成物の解析を行う場合について説明する。
このように、通信部110は、3次元のCT画像データを受信する。
操作入力部130は、例えばキーボードやマウスなどの入力デバイスを含んで構成され、配向解析装置100のユーザによる操作入力を受け付ける。例えば、操作入力部130は、通信部110が受信するCT画像データにおける3次元空間を分割する局所領域の大きさの設定操作を受け付ける。
処理部190は、配向解析装置100の各部を制御して各種機能を実行する。特に、配向解析装置100は、通信部110が取得するCT画像データを解析してフィラーの配向状態を求める。処理部190は、例えば、配向解析装置100が有するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、配向解析装置100が有する記憶デバイスからプログラムを読み出し実行することにより実現される。
ヘッセ行列演算部192は、画像データ取得部191が取得したCT画像データの画素毎にヘッセ行列を算出し、当該ヘッセ行列を固有分解する。ヘッセ行列演算部192が算出するヘッセ行列は、式(1)のように示される。
I(x,y,z)は、画素p(x,y,z)の画素値を示す。ここでいう画素値とは、画素の明るさ(輝度または明度)を示す値である。式(1)では、I(x,y,z)をIと表記している。以下同様に、画素の座標(x,y,z)の表記を省略することがある。
H(x,y,z)は、画素p(x,y,z)におけるヘッセ行列を示す。
ヘッセ行列演算部192がヘッセ行列を算出する際の微分アルゴリズムとして、例えばSobelフィルタやPrewittフィルタなど様々なアルゴリズムを用いて、周囲の画素値との差分を算出することができる。
また、固有値λ1(x,y,z)に対応する固有ベクトルをv1(x,y,z)とする。固有値λ2(x,y,z)に対応する固有ベクトルをv2(x,y,z)とする。固有値λ3(x,y,z)に対応する固有ベクトルをv3(x,y,z)とする。
従って、固有ベクトルv1(x,y,z)、および、固有値λ1(x,y,z)は、3つの固有ベクトルが示す方向のうち画素値の変化が最も大きい方向、および、その変化の大きさを示す。固有ベクトルv2(x,y,z)、および、固有値λ2(x,y,z)は、3つの固有ベクトルが示す方向のうち画素値の変化が2番目に大きい方向、および、その変化の大きさを示す。固有ベクトルv3(x,y,z)、および、固有値λ3(x,y,z)は、3つの固有ベクトルが示す方向のうち画素値の変化が最も小さい方向、および、その変化の大きさを示す。
線L11の向きは、固有ベクトルv1(x,y,z)の向きを示し、線L11の長さは、固有値λ1(x,y,z)の大きさを示す。線L12の向きは、固有ベクトルv2(x,y,z)の向きを示し、線L12の長さは、固有値λ2(x,y,z)の大きさを示す。固有ベクトルv2(x,y,z)は、手前方向(紙面に対する直交方向)を向いている。線L13の向きは、固有ベクトルv3(x,y,z)の向きを示し、線L13の長さは、固有値λ3(x,y,z)の大きさを示す。
但し、同図に示す線L11、L12およびL13の向きおよび長さは必ずしも正確ではない。
また、線L14は、フィラーF11の配向方向(長手方向)を示している。
また、線L12は、画素p(x,y,z)の位置でフィラーF11の表面に接している。従って、線L12は、フィラーF11の画像のエッジを跨いでいる。このため、固有値λ2(x,y,z)の大きさは、比較的大きくなる。
このように、固有ベクトルv3(x,y,z)の向きが、針状フィラーの配向方向を示すことが期待される。
さらに具体的には、配向状態算出部195は、画素p(x,y,z)における配向方向ベクトルv(x,y,z)を、式(2)に基づいて算出する。
図4を参照して説明したように、画素p(x,y,z)が針状フィラーの画像のエッジに位置する場合、固有値λ1(x,y,z)およびλ2(x,y,z)が比較的大きくなり、固有値λ3(x,y,z)は比較的小さくなることが期待される。
threshの値はCT画像データの明るさやコントラストによって0.05〜0.5の範囲で適切な値を設定する。本願発明者の実験によると、特に、threshの値を0.2に設定して、好適な実験結果を得られた。
一方、配向状態算出部195は、フィラーの配向状態の算出対象から除外した画素については、配向方向ベクトルv(x,y,z)を0(すなわち、ゼロベクトル(0,0,0))にする。
図5は、局所領域の例を示す説明図である。同図の例では、画像データ取得部191が取得したCT画像データにおけるxy平面が、16×16の領域に分割されている。z方向(x方向およびy方向と直交する方向)についても同様に、例えば16分割される。
局所領域毎に配向状態を算出するために、配向状態算出部195は、式(3)に基づいて共分散行列Ciを算出する。
そして、配向状態算出部195は、局所領域毎に共分散行列Ciを固有分解して、固有値μi1、μi2およびμi3と、固有ベクトルui1、ui2およびui3とを算出する。
また、固有値μi1に対応する固有ベクトルをui1とする。固有値μi2に対応する固有ベクトルをui2とする。固有値μi3に対応する固有ベクトルをui3とする。
図6は、表示部120による針状フィラーの配向状態の表示例を示す説明図である。同図において、局所領域毎の配向方向ベクトルuiが、CT画像データによるxy方向の平面に重ねて表示されている。表示部120は、z方向(x方向およびy方向と直交する方向)についても同様に、局所領域毎に配向方向ベクトルを表示する。
同図の処理において、まず、画像データ取得部191がCT画像データを取得する(ステップS101)。例えば、画像データ取得部191は、記憶部180が記憶しているCT画像データを読み出す。
次に、ヘッセ行列演算部192は、画像データ取得部191が取得したCT画像データの画素毎に、ヘッセ行列を算出する(ステップS102)。
次に、配向状態算出部195は、上述した式(2)に基づいて、画素毎に配向方向ベクトルを算出し、また、フィラーの配向状態の算出対象とする画素を選択する(ステップS104)。
なお、配向状態算出部195が、フィラーの画像の大きさに応じて局所領域の大きさを自動的に設定するようにしてもよい。
そして、配向状態算出部195は、得られた共分散行列を固有分解して、局所領域毎に固有値および固有ベクトルを算出する(ステップS107)。
さらに、配向状態算出部195は、得られた固有値および固有ベクトルを用いて、上述した式(4)に基づいて、局所領域毎に配向状態ベクトルを算出する(ステップS108)。
これにより、配向状態算出部195は、フィラーの画像のエッジの方向に基づいてフィラーの配向状態算出することができる。フィラーの直径が比較的太い場合でも、CT画像データにおいてフィラーのエッジを検出してエッジの方向を算出することは可能である。従って、配向状態算出部195は、フィラーの直径が比較的太い場合でも、フィラーの配向状態をより適切に求め得る。
ここで、上述したように、固有値の大きさは、画素が針状フィラーの画像のエッジに位置している可能性を示している。従って、配向状態算出部195は、固有値に基づいてフィラーの配向状態を算出することで、固有ベクトル算出部193が算出した固有ベクトルに対して、画素が針状フィラーの画像のエッジに位置している可能性に応じた重みづけを行うことができる。これにより、配向状態算出部195は、CT画像データにおけるノイズの影響を低減さることができ、フィラーの配向状態をより正確に算出することができる。
これにより、配向状態算出部195は、針状フィラーの画像のエッジに位置していないと思われる画素を自動的に除外して、画像データ内の点の選択を必要とせずに画像データ全体におけるフィラーの配向状態を自動的に算出することができる。
また、配向状態算出部195は、フィラーの画像がない局所領域について、配向方向ベクトルの大きさを0にすることができる。これにより、表示部120は、フィラーがない局所領域について、配向方向ベクトルの表示を抑制して、フィラーの有無を把握し易い画像を提供することができる。
これにより、図8のCT画像データを参照したユーザは、領域A21の部分にフィラーの画像がないことを、より速く正確に把握し得る。
図4を参照して説明したように、対応する固有値が最も小さい固有ベクトルは、針状フィラーの配向方向を示していると期待される。従って、配向状態算出部195は、対応する固有値が最も小さい固有ベクトルを選択することで、針状フィラーの配向方向を、より正確に求めることができる。
図9の例では、角度のずれが小さい配向方向ベクトルの出現頻度が大きい。例えば、角度のずれが20度以内の配向方向ベクトルの出現頻度が特に大きい。一方、角度のずれが大きくなると出現頻度が小さくなっている。例えば、角度のずれが50度以上の配向方向ベクトルの出現頻度が特に小さくなっている。
このように、表示部120がフィラーの配向状態の統計値のグラフ表示することで、ユーザは当該グラフを参照して、フィラーの配向状態を、より容易に把握することができる。
以下、板状フィラーの場合の配向解析装置100の処理について、図10〜図13を参照して説明する。
一方、ステップS104では、配向状態算出部195は、式(2)に代えて式(5)に基づいて、画素毎に配向方向ベクトルを算出し、また、フィラーの配向状態の算出対象とする画素を選択する。
図11は、板状フィラーの場合の固有ベクトルおよび固有値の例を示す説明図である。同図において、画素p(x,y,z)は、フィラーF31の画像の表面に位置する。
線L31の向きは、固有ベクトルv1(x,y,z)の向きを示し、線L31の長さは、固有値λ1(x,y,z)の大きさを示す。線L32の向きは、固有ベクトルv2(x,y,z)の向きを示し、線L32の長さは、固有値λ2(x,y,z)の大きさを示す。線L33の向きは、固有ベクトルv3(x,y,z)の向きを示し、線L33の長さは、固有値λ3(x,y,z)の大きさを示す。
但し、同図に示す線L11、L12およびL13の向きおよび長さは必ずしも正確ではない。
また、線L32の向きは、フィラーF31の表面に沿っている。このため、線L32の長さにて示される固有値λ2(x,y,z)の大きさは、比較的小さくなっている。同様に、線L33の向きは、フィラーF31の表面に沿っている。このため、線L33の長さにて示される固有値λ3(x,y,z)の大きさは、比較的小さくなっている。
このように、対応する固有値の最も大きい固有ベクトルV1(x,y,z)は、板状フィラーの法線方向を示すことが期待される。配向状態算出部195は、式(5)に基づいて、この固有ベクトルV1(x,y,z)を選択する。
そこで、配向状態算出部195は、判定閾値threshを用いて、固有値λ1(x,y,z)との比較において、固有値λ2(x,y,z)、固有値λ3(x,y,z)がいずれも小さいか否かを判定する。当該判定により、配向状態算出部195は、板状フィラーの画像の表面部分に位置する画素をフィラーの配向状態の算出対象に選択し、それ以外の画素を除外する。このように、配向状態算出部195は、固有値の大きさが所定の条件を満たすか否かを画素毎に判定し、条件を満たさないと判定した画素を前記フィラーの配向状態の算出対象から除外する。
針状フィラーの場合と同様、threshの値はCT画像データの明るさやコントラストによって0.05〜0.5の範囲で適切な値を設定する。本願発明者の実験によると、特に、threshの値を0.2に設定して、好適な実験結果を得られた。
また、局所領域毎に配向方向ベクトルが示されている。板状フィラーがない局所領域では、針状フィラーの場合と同様、配向状態算出部195は、配向方向ベクトルの大きさを0にする。
あるいは、針状フィラーについて図9を参照して説明したのと同様、表示部120が、配向状態算出部195の算出したフィラーの配向状態の統計値をグラフに表示するようにしてもよい。
図13の例では、角度のずれが小さい配向方向ベクトルの出現頻度が大きい。例えば、角度のずれが10度以内の配向方向ベクトルの出現頻度が特に大きい。一方、角度のずれが大きくなると出現頻度が小さくなっている。例えば、角度のずれが40度以上の配向方向ベクトルの出現頻度が、ほぼ0になっている。
このように、表示部120がフィラーの配向状態の統計値のグラフ表示することで、ユーザは当該グラフを参照して、フィラーの配向状態を、より容易に把握することができる。
図11を参照して説明したように、対応する固有値が最も大きい固有ベクトルは、板状フィラーの法線方向を示していると期待される。従って、配向状態算出部195は、対応する固有値が最も大きい固有ベクトルを選択することで、板状フィラーの配向方向を、より正確に求めることができる。
これにより、配向状態算出部195は、板状フィラーの画像のエッジに位置していないと思われる画素を自動的に除外して、画像データ内の点の選択を必要とせずに画像データ全体におけるフィラーの配向状態を自動的に算出することができる。
また、配向状態算出部195は、フィラーの画像がない局所領域について、配向方向ベクトルの大きさを0にすることができる。これにより、表示部120は、フィラーがない局所領域について、配向方向ベクトルの表示を抑制して、フィラーの有無を把握し易い画像を提供することができる。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、MRI(Magnetic Resonance Imaging)やPET(Positron Emission Tomography)などのCT以外の画像データにも本発明を適用することができる。
また、人体中の血管や流体中の異物など、CTやMRIなどにより取得できる様々な画像データに、本発明を適用することができる。
110 通信部
120 表示部
130 操作入力部
180 記憶部
190 処理部
191 画像データ取得部
192 ヘッセ行列演算部
193 固有ベクトル算出部
194 固有値算出部
195 配向状態算出部
Claims (7)
- フィラーを含む組成物の画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データの画素毎にヘッセ行列の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出部と、
前記固有ベクトルに基づいて、前記画像データの所定部分における前記フィラーの配向状態を算出する配向状態算出部と、
を具備する配向解析装置。 - 前記画像データの画素毎にヘッセ行列の固有値を算出する固有値算出部を具備し、
前記配向状態算出部は、前記固有値に基づいて、前記所定部分における前記フィラーの配向状態を算出する、請求項1に記載の配向解析装置。 - 前記配向状態算出部は、前記固有値の大きさが所定の条件を満たすか否かを前記画素毎に判定し、条件を満たさないと判定した画素を前記フィラーの配向状態の算出対象から除外する、請求項2に記載の配向解析装置。
- 前記配向状態算出部は、前記画素毎に、当該画素における前記固有ベクトルのうち対応する固有値が最も小さい固有ベクトルを選択し、選択した固有ベクトルに基づいて前記配向状態を算出する、請求項2または3に記載の配向解析装置。
- 前記配向状態算出部は、前記画素毎に、当該画素における前記固有ベクトルのうち対応する固有値が最も大きい固有ベクトルを選択し、選択した固有ベクトルに基づいて前記配向状態を算出する、請求項2または3に記載の配向解析装置。
- フィラーを含む組成物の画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記画像データの画素毎にヘッセ行列の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出ステップと、
前記固有ベクトルに基づいて、前記画像データの所定部分における前記フィラーの配向状態を算出する配向状態算出ステップと、
を具備する配向解析方法。 - 配向解析装置の具備するコンピュータに、
フィラーを含む組成物の画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記画像データの画素毎にヘッセ行列の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出ステップと、
前記固有ベクトルに基づいて、前記画像データの所定部分における前記フィラーの配向状態を算出する配向状態算出ステップと、
を実行させるためのプログラム。
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