JP6323927B2 - 補聴器および補聴器システムの動作方法 - Google Patents

補聴器および補聴器システムの動作方法 Download PDF

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Description

この発明は,補聴器の音出力の詰まり(congestion of a hearing aid sound output)を検出するように構成される補聴器に関する。この発明はまた,補聴器の音出力の詰まりを検出するための補聴器システムの動作方法に関する。
この発明による補聴器システムは,概略的には,ユーザによって音響信号として知覚されることが可能な出力信号を提供する,またはそのような出力信号の提供に寄与する任意のシステムを意味するものとして理解され,上記ユーザの個々の聴覚損失を補償するように,または上記聴覚損失の補償に寄与するように構成される手段を備えている。このシステムには,身体または頭部,特に耳の上または耳の中に装着することができ,かつ完全にまたは部分的に埋め込むことができる補聴器が含まれる。しかしながら,主要目的が聴覚損失を補償することではない装置,たとえば消費者向電化製品(テレビ,ハイファイ・システム,携帯電話,MP3プレーヤなど)も,これらが個々の聴覚損失を補償する機能を有するものであれば,補聴器システムとして考えることができる。
使用に先立ち,補聴器は処方にしたがって補聴器フィッタによって調整される。上記処方は,いわゆるオージオグラムが得られる,聴覚障がい者の裸耳聴能の聴覚テストに基づく。上記処方は,上記ユーザが聴覚欠損を蒙っている可聴周波数範囲の部分の周波数の音を増幅することによって,上記補聴器が聴覚損失を緩和する設定に達するように構築される。
従来の補聴器フィッティングでは,補聴器ユーザが補聴器フィッタのオフィスを訪問し,ユーザの補聴器が,補聴器フィッタが自己のオフィスに有するフィッティング設備を用いて調整される。典型的には上記フィッティング設備は,関連する補聴器プログラミング・ソフトウエアを実行可能なコンピュータ,および上記コンピュータと上記補聴器との間にリンクを提供するように構成されるプログラミング装置を含む。
本願の開示において,補聴器は,難聴者によって人の耳の後ろにまたは耳の中に装着されるように設計された,小さい,電池駆動の,小型電子機器として理解することができる。補聴器は,一または複数のマイクロフォン,電池,信号処理装置を含む小型電子回路,増幅器,および音響出力トランスデューサを備えている。上記信号処理装置は好ましくはデジタル信号処理装置である。上記補聴器は人の耳の後ろまたは耳の中へのフィットに適するケース内に収められる。
補聴器の機械的デザインは複数の概略的なカテゴリに発展している。その名が示すように耳掛形(Behind-The-Ear)(BTE)補聴器は耳の後ろに装着される。より正確には,その主要電子回路部品を含むハウジングを備える電子回路ユニットが耳の後ろに装着される。音を補聴器ユーザに向けて放出するイヤーピースが,耳の中に,たとえば耳甲介または外耳道内に装着される。従来のBTE補聴器では,補聴器用語において通常レシーバと呼ばれる上記電子回路ユニットのハウジンング内に配置される出力トランスデューサからの音を外耳道に向けて伝達するために音チューブが用いられる。近年の補聴器タイプの中には,導電材を備える導電部材が上記ハウジングから耳内のイヤーピース中に配置されたレシーバに向けて電気信号を搬送するものがある。このような補聴器は通常耳内レシーバ形(Receiver-In-The-Ear)(RITE)補聴器と呼ばれている。特定タイプのRITE補聴器では上記レシーバが外耳道の内側に配置される。このカテゴリは耳道内レシーバ形(Receiver-In-Canal)(RIC)補聴器と呼ばれることがある。
耳内形(In-The-Ear)(ITE)補聴器は,耳内,通常は外耳道の漏斗状外側部分に配置されるようにデザインされている。特定タイプのITE補聴器では,上記補聴器が実質的に外耳道の内側に配置される。このカテゴリは完全耳内形(Completely-In-Canal)(CIC)補聴器と呼ばれることがある。このタイプの補聴器は,耳道内に配置することができ,同時に補聴器の動作に必要な部品を収容できるようにするために,特にコンパクトなデザインでなければならない。
本願の開示において,補聴器システムは単一の補聴器(いわゆるモノラル補聴器システム)を含むことができ,または補聴器ユーザの各耳に一つずつの2つの補聴器を含むことができる(いわゆるバイノーラル補聴器システム)。さらに補聴器システムは,外部機器,たとえば補聴器システムの他の機器と相互作用するように構成されるソフトウエア・アプリケーションを有するスマートフォンを含んでもよい。このように本願の開示において,用語「補聴器システム装置」は補聴器または外部機器を示すものとされる。
現在のデジタル補聴器はデジタル信号処理装置を含み,上記処方にしたがってマイクロフォンからのオーディオ信号を処理して上記音響出力トランスデューサを駆動するのに適する電気信号にする。スペースを節約しかつ効率を向上するために,デジタル補聴器処理装置の中には,上記出力信号のデジタル−アナログ変換を実行することなく上記音響出力トランスデューサを直接に駆動するデジタル出力信号を提供するものがある。上記デジタル信号が十分に高い周波数を持つデジタル・ビット・ストリームとして直接に上記音響出力トランスデューサに搬送されると,上記音響出力トランスデューサのコイルがローパス・フィルタとしての役目を果たし,たとえば15〜20kHz未満の周波数のみを上記音響出力トランスデューサによって再生させることができる。上記デジタル出力信号は,好ましくはパルス幅変調信号,シグマ−デルタ変調信号またはこれらの組み合わせである。
Hブリッジは電気モータまたはスピーカといった誘導負荷を制御する電気回路である。これは,Hブリッジに含まれる電子スイッチのセットを開放しかつ短絡することでHブリッジの出力端子間に接続された負荷を通じた電流の流れの方向を制御することによって,動作する。上記スイッチは,好ましくは,バイポーラ接合トランジスタ(Bipolar Junction Transistors)(BJT)または金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistors)(MOSFET)といった半導体スイッチング素子として具現化することができる。この動作原理は直接デジタル駆動出力段の使用を可能とし,適切に調整されたデジタル信号がスピーカを直接に駆動することを可能とし,これによって専用のデジタル−アナログ変換器の必要性を排除し,かつ同時に出力段における所要電力を低減する。
この発明は,特に,補聴器ユーザの外耳道内に配置されるようにつくられる,耳垢ガードが設けられる少なくとも一の音出力開口(sound output opening)または音出力口(sound outlet)を有する外耳道部を備える補聴器システムに関するものである。従来のBTE補聴器において,上記音出力開口は音チューブを用いてレシーバに接続されている。RITE,RIC,ITEおよびCIC補聴器については,短いチューブ(short tubing)(音ボア(sound bore)とも呼ばれる)がレシーバから音出力開口への音の搬送に通常は用いられる。
外耳道の内部において音出力開口は耳くそまたは耳垢(cerumen or ear wax)によって汚染され,上記音出力が詰まることで音再生が低下することがよく知られる課題である。最悪の場合,耳垢が上記外耳道部に入って上記補聴器レシーバといった補聴器の電気部品に損傷を与える危険性がある。いずれにしても,補聴器システムが提供する音のレベルの低下は,上記補聴器システムがユーザによって装着されないという結果や補聴器システムを試用するユーザが補聴器システムを購入しないことを選択する結果をもたらすことがある。
なお,上記音出力の詰まりは,耳垢に起因するとは限らず,上記レシーバと上記音出力開口の間の音導管における結露の結果であることもある。
人の外耳道からの耳垢がこの音出力開口を通じて侵入するのを避けるために,通常は耳垢ガードが用いられている。このような耳垢ガードは欧州特許第1097606号から知られている。耳垢ガードは交換可能なもので,定期的に交換して音出力口が耳垢によってブロックされないようにする必要がある。耳垢ガードを交換するタイミングはユーザごとに様々であり,これは生成される耳垢の量および特性が人それぞれで大きく異なるからである。
しかしながら,上記音出力口は典型的には約1mmの直径であり,非常に小さい寸法のため,上記耳垢ガードの挿入および取り外しは特に視力が弱った高齢の補聴器ユーザにとってやや難しい作業である。このため,耳垢ガードが頻繁には交換されないことがよくあり,耳垢が外耳道部に入る危険性が高まり,このために特に補聴器レシーバに損傷を与えるリスクが増加し,または補聴器システムが大幅に低減されたレベルで音を提供するリスクが増加する。
欧州特許2039216号は,ユーザの耳にもしくは耳の中にまたは外耳道の中に装着される電気音響出力トランスデューサを備える聴覚装置をモニタリングする方法を開示しており,上記出力トランスデューサの電気的インピーダンスが計測されかつ解析され,これによって出力トランスデューサの,および/または上記出力トランスデューサと協働する音響システム,たとえばBTE補聴装置のチューブのステータスを簡単かつ効率的に推定することができる。これによって,上記出力トランスデューサまたは出力トランスデューサと協働する音響システムが耳垢によってブロックされたとき,または上記出力トランスデューサが損傷したときを自動的かつ迅速に認識することができる。
欧州特許2039216号はより詳細な方法を開示しており,はじめにレシーバの共振周波数における基準レシーバ・インピーダンスが測定され,その後に上記共振周波数の上記レシーバ・インピーダンスの追加測定と上記基準レシーバ・インピーダンスの比較に基づいて垢詰まりが推定される。
この方法は,上記追加的に測定されるレシーバ・インピーダンスと上記基準レシーバ・インピーダンスとの差に加えて,上記レシーバ・インピーダンスの変化も上記レシーバ・インピーダンスを計測するために用いられる信号(以下,測定信号ともいう)の振幅に依存し,かつレシーバ・インピーダンス測定回路に与えられる測定抵抗の大きさに依存することを特徴とする。
しかしながら,上記測定信号の振幅は一般に時間および特定の環境条件とともに変動し,これは,上記測定信号の供給源が補聴器の電池であることが多く,一般に時間の経過にわたって一定の電圧出力をもたらすものとしては信頼性に欠けるからである。欧州特許2039216号に開示の方法には,電池電圧に生じうる変動をいかにして補償するかが記載されていない。
欧州特許2039216号に開示の方法はさらに,測定レジスタを1つだけ使用するだけでは,上記レシーバ・インピーダンスの変化を表す測定電圧の感度を,広範囲の様々な補聴器レシーバ・インピーダンスに対して最適化することができないというデメリットがあり,これは,ほとんどの近年の補聴器が,大きく変動する基準インピーダンスを有するいくつかの異なるタイプのレシーバに適合可能であるために不利となる。典型的には,上記レシーバ・タイプは個々人の聴力損失の重症度および個々人の外耳道のサイズに基づいて選択される。
この発明は,たとえば耳垢や水によって生じうる補聴器の機械的詰まりの検出を改善する補聴器システムの動作方法を提供することを特徴とする。
この発明はまた,上述の改善された方法を実行するように構成される補聴器を提供することを特徴とする。
第1の観点において,この発明は請求項1に記載の補聴器を提供する。
生じうる補聴器の音出力の機械的な詰まりを検出するように構成される改善された補聴器が提供される。
第2の観点において,この発明は請求項7に記載の補聴器システムの動作方法を提供する。
生じうる補聴器の音出力の機械的な詰まりを検出する改善された方法が提供される。
さらなる有利な特徴が従属請求項から明らかにされる。
この発明のさらに他の特徴は,この発明の実施態様を詳細に説明する以下の記載から当業者に明らかにされよう。
この発明の一実施態様によるレシーバ・インピーダンスを測定する方法を実行するように構成される補聴器における基本測定回路を示す。 この発明の一実施態様による方法を実行するように構成される補聴器をかなり模式的に示す。 所定の補聴器およびレシーバ・タイプについての詰まりレベルの関数としての,測定されたピーク周波数および測定されたバレー周波数の一例を示している。 この発明の一実施態様による,補聴器のHブリッジ出力段およびその動作モードをかなり模式的に示している。 この発明の一実施態様による,補聴器のHブリッジ出力段およびその動作モードをかなり模式的に示している。 この発明の一実施態様による,補聴器のHブリッジ出力段およびその動作モードをかなり模式的に示している。 この発明の一実施態様による,補聴器のHブリッジ出力段およびその動作モードをかなり模式的に示している。 この発明の一実施態様による,補聴器のHブリッジ出力段をかなり模式的に示している。
一例として,この発明の好ましい実施態様を示しかつ記載する。当然ではあるが,この発明は他の実施態様が可能であり,そのいくつかの詳細は,この発明から逸脱することなく,様々な明らかなすべての観点において修正することができる。したがって,図面および説明は本質的に例示にすぎず,限定するものではない。
本願の開示において,補聴器電気音響出力トランスデューサを,補聴器レシーバまたは単にレシーバとも呼ぶ。
発明者は,たとえば耳垢や水によって生じうる補聴器の機械的な詰まりの検出を改善する補聴器の動作方法(a method of operating a hearing aid)を見出した。上記方法はより正確かつロバストな結果をもたらし,同時に必要とされる処理の複雑さや電力を軽減するものである。これは基準レシーバ共振周波数に対するレシーバ共振周波数における変化を考慮することによって行われ,たとえば,従来技術において開示されているような,基準レシーバ共振周波数において測定されるレシーバ・インピーダンスの大きさの変化を考慮するものは対照的である。
はじめに図1を参照して,図1は,この発明の一実施態様による,レシーバ・インピーダンスを測定する方法を実行するように構成される補聴器における基本測定回路100をかなり模式的に示している。上記基本回路100は,信号発生器101,測定抵抗102,測定点104およびレシーバ105を含む。
上記基本回路100は,上記測定点104における電圧を測定しながら,上記信号発生器101を用いて線形正弦波掃引(linear sine sweep)を行うことによって,レシーバ・インピーダンスの測定を,周波数の関数として(すなわちインピーダンス・スペクトル曲線として)提供することができる。これにより,上記補聴器システム中に記憶される基準インピーダンス・スペクトルに対して上記測定インピーダンス・スペクトル曲線を比較することによって,上記レシーバ共振周波数の変化を取得することができる。典型的には上記基準インピーダンス・スペクトルの測定が実行され,そこから抽出された特性が,次に補聴器専門家によって最終補聴器フィッティングの一部として上記補聴器システムに保存され,その後にユーザに上記補聴器システムが引き渡される。
この発明の特定の利点は,自由空間で(in free space)上記基準測定を実行できることであり,それは聴覚ケア専門家が上記基準測定中に何も音出力開口を妨げていないことを容易に確認することができるからである。上記レシーバのインピーダンスは上記補聴器の音響導管内の空気圧抵抗によって大きく影響を受けるので,上記基準測定を自由空間で実行することができる。
この実施態様の変形例では,上記線形正弦波掃引テスト信号を,白色雑音,特定の周波数における単一/多重正弦波,または指数正弦波掃引によって置き換えることができる。 その単純なハードウェア実装のために線形正弦波掃引が特に有利である。
次に図2を参照して,図2はこの発明の一実施態様による補聴器の動作方法を実行するように構成される補聴器200をかなり模式的に示している。上記補聴器200は,一セットの音響−電気入力トランスデューサ201(すなわちマイクロフォン(複数)),入力スイッチング回路202,補聴器フロントエンド・プロセッサ203および補聴器バックエンド・プロセッサ204を備えている。以下において,補聴器フロントエンド・プロセッサおよび補聴器バックエンド・プロセッサを,フロントエンド・プロセッサおよびバックエンド・プロセッサ,または簡単にバックエンドおよびフロントエンドと言うこともある。基本的には,上記フロントエンドは入力信号のアナログ−デジタル変換を取扱い,他方バックエンドは残りのすべての補聴器処理,特にユーザの聴覚欠損を緩和する処理を実行する。
上記補聴器200は,通常動作モードとレシーバ測定モードとの間で切り換え可能に構成されている。
上記レシーバ測定モードが選択されているとき,上記補聴器バックエンド・プロセッサ204が測定を開始する。これは,上記信号発生器101および上記入力スイッチング回路202ならびに信号検出器(分かりやすくするため図示略)を制御するステップを含む。はじめに上記信号発生器101が測定信号を出力トランスデューサ105に与える。上記第1の測定点104における電圧が,上記バックエンド204によって制御される上記入力スイッチング回路202の相互作用を通して,マイクロフォン201のセットからの信号に代えて,上記第1の測定点104からの信号を上記フロントエンドおよび上記フロントエンド中に設けられるアナログ−デジタル変換器(ADC)(分かりやすくするため図示略)に入力することができる上記制御信号206を通じて,測定信号205として上記フロントエンド203に与えられる。この実施態様の特定の利点は,上記補聴器を2つの異なる動作モード間で切り換えることができるにもかかわらず,単一のADCだけを必要とすることである。しかしながら,当業者であれば,入力信号のスイッチングを上記ADCの後段に実装することができることも明らかである。この場合には入力信号ごとに一つのADCと,これに続くデジタル領域における信号間の切り替えとが必要になる。
さらなる利点は,上記両方の動作モードにおいて上記ADCがデジタル信号を出力し,そこで上記ADCへの上記入力信号のDC部分が除去されることであり,これによってたとえば不安定な電圧供給のためにまたは経年劣化またはその他測定抵抗のドリフティングに起因して上記テスト信号の振幅が変化しているかどうかと無関係に,同じデジタル信号処理を適用することができるからである。この実施態様では,上記フロントエンド203への入力信号のDC部分が,上記フロントエンド203中に含まれるADCの上流のハイパス・フィルタを用いて除去される。
上記測定原理は,正弦波掃引s(t)=sin(2πft)が第1の時刻tで周波数fにおいてスタートし,第2の時刻点tで周波数fに達するまで経時的に直線的に増加する(increases linearly in time)ことを考慮することによっておそらく最もよく理解される。上述のように,上記正弦波掃引が上記補聴器の出力における上記測定点104に提供され,その結果の信号205が補聴器フロントエンド・プロセッサ203に戻され,そこでアナログ信号がデジタル領域に変換され,さらなる処理のためにバックエンド・プロセッサ204に提供される。以下においてy(t)で示す上記結果信号205は,正弦波掃引s(t)と結合されるレシーバおよび直列のインピーダンスの伝達関数h(t)との畳み込み(convolution)として表すことができる。
y(t)=h(t)*s(t)
周波数領域では次のようになる。
Y(f)=H(f)S(f)
時刻tにおいてs(t)は周波数fを持つ正弦波であり,上記系(システム)が線形であって,インピーダンスの位相を無視することができるとする(すなわち,インピーダンスが純粋な抵抗であると考える)と,入力側の信号は周波数fのみを含むことになる。この周波数における上記結果信号はしたがって次のように表現することができる。
Y(f)=H(f)S(f)=H(f)exp(−jω
時刻tにおいてωは時刻tでの正弦波の位相である。上記結果信号の振幅は次のようになる。
|Y(f)|=|H(f)exp(−jω)|=|H(f)|
これは,上記レシーバ・インピーダンスのスペクトルを,上記結果信号の振幅スペクトルとして直接に測定することができることを意味する。上記結果信号は接続205を通じて上記フロントエンド・プロセッサ203に与えられる。絶対平均推定器(abs-average estimator),ヒルベルト変換の絶対値(the absolute value of a Hilbert Transform),またはフーリエ変換の絶対値の使用を含む多種多様の方法を用いて上記振幅は推定することができる。上記方法を信号の位相に対して鈍感にする(insensitive)ために,上記振幅推定は正弦波掃引のいくつかの期間にわたって(over a number of periods of the sine sweep)算出される。
得られたレシーバ・インピーダンス・スペクトルに基づいて,ピーク周波数(peak frequency)およびバレー(谷)周波数(valley frequency)を特定することができる。この実施形態では,これは,補聴器メーカーによって提供される製品範囲内の上記レシーバの範囲および対応する音響システムの知識(すなわち,補聴器タイプが従来のBTEタイプであるか,またはレシーバ出力と音出力開口との間の音響導管がより短いRITE/ITE/CICタイプのものであるか)に基づいて,測定のための周波数範囲を選択することによって行われる。
発明者は,測定されるレシーバ・インピーダンス・スペクトルはほとんどの場合ピーク周波数およびバレー周波数を示し,上記ピークが上記バレーよりも低い周波数に位置し,かつ上記ピークがレシーバおよびそれに続く音響システムからなる系(システム)の並列共振(parallel resonance)を反映し,他方バレーは上記系(システム)の直列共振(a series resonance)を反映することを見出した。
上記ピークおよびバレーの検出は,当業者に自明のすべての様々な方法を用いて実行することができる。この実施態様では,サンプル窓(sample windows)が用いられ,これによって,サンプル窓のサイズによって規定される数の後続サンプルがすべて測定されて,より低い値を有すると判定される前には周波数値はピークとして解釈されない。上記サンプル窓のサイズWは以下の数式にしたがって決定することができる。
Figure 0006323927
ここでDは測定信号のサンプル長さを表し,Fは測定信号の周波数範囲を表し,BWは検出されるピークまたはバレーの予想(期待)周波数帯域幅(the expected frequency bandwidth)を表す。
上記ピーク周波数が見つかった後,上記バレー周波数を同様の方法を用いて見つけることができる。
この発明の一実施態様では,補聴器の音出力の詰まりの検出が,以下のステップに基づいて実行される。
聴覚ケア専門家およびユーザが,主要にはユーザの聴覚欠損,ユーザの外耳道のサイズおよびユーザの概略的な好みに基づいて,補聴器レシーバの特定タイプを選択する。
上記聴覚ケア専門家は,補聴器のレシーバのタイプに関し,かつ補聴器のレシーバのタイプを特定する情報が上記補聴器システムに格納されていることを保証する。これは,補聴器ケア専門家が,補聴器システムをユーザに手渡すよりも前に,最終的な補聴器システム・フィッティングの一部としてマニュアルで行うことができる。しかしながら,他の実施態様において,上記補聴器レシーバ・タイプの特定(識別)をたとえば欧州特許第2177052に開示されている方法および装置を用いて自動的に実行することができ,この識別に基づいて,関連する情報が検索されかつ補聴器システムに記憶される。
本願の開示において,音出力および音出力開口は区別なく使用することができる。これは,詰まりが様々な影響の結果として生じうるからである。典型的には耳垢が音出力開口を詰まらせ,特に補聴器が備える場合には耳垢ガード(これは典型的には音出力開口内に位置決めされる)を詰まらせる。高湿度状況においては,水が上記補聴器レシーバと上記音出力開口の間の音導管内に凝縮することもある。
しかしながら,この実施態様による測定原理は詰まりが形成されている音出力路内の場所とは無関係であり,かつ詰まり材料(congestion material)の種類とも無関係である。
発明者は,インピーダンス・スペクトルの特性が様々な補聴器レシーバ・タイプで大きく異なることがあることを発見し,その結果として,必須でないものの,補聴器レシーバ・タイプを特定して,補聴器の音出力開口が詰まっていると考えることができるときを決定するための適切な閾値を設定すること,レシーバのインピーダンス・スペクトルにおけるピークまたはバレーの検出を音出力開口の詰まりの可能性を判断するために用いるべきかどうかを決定すること,および上記特定されたレシーバ・タイプのレシーバ・インピーダンス・スペクトルを決定するのに最も適する測定抵抗を選択することが有利であることを発見した。
以下,より包括的な用語「レシーバ・タイプ」を,用語「レシーバ・タイプおよび付随する音響システム」および「レシーバ・タイプおよび補聴器タイプ」と同じ意味で用いることがあり,これは,測定されるレシーバ・インピーダンス・スペクトルが対応する音響システムにも依存し,かつ上記音響システムが補聴器タイプによって規定されるからである。
なお,この実施態様では,補聴器ケア専門家によって,上記レシーバ・インピーダンス・スペクトルの基準ピーク周波数が決定されかつ補聴器システムに記憶される後続のステップが提供される。
決定されたレシーバ・タイプおよび決定された基準ピーク周波数に基づいてピーク周波数閾値が設定され,測定されたピーク周波数がこのピーク周波数閾値を超えるたびに補聴器がひどく詰まっているとみなされる。このシンプルな検出基準は,発明者が,上記詰まりのレベルが所定のレベルを超えたときに上記ピーク周波数(およびバレー周波数)が詰まりとともに上昇する見出したことを理由に利用可能とされるものである。すなわち,中間レベルの詰まりではピーク周波数(およびバレー周波数)は減少することがあるが,最終的にはピークおよびバレー周波数は詰まりとともに上昇する。実際に発明者は,測定されるピークおよびバレー周波数が対応する基準周波数(複数)を超えるときの詰まりのレベルは,詰まっている補聴器から提供される音圧レベル(SPL)が急激な低下を開始する詰まりのレベルと同じであることを見出した。
なお,この発明の変形例において,またはこの発明と組み合わせて,上記決定された基準周波数よりも低い閾値周波数を,測定されるピーク周波数(またはバレー周波数)がこの閾値周波数を下回るときに,詰まりが危機的状況に近づいていることを示すために用いてもよい。
この発明の変形例では,上記決定された基準ピークまたはバレー周波数が補聴器システムに記憶される前に,自動確認ステップ(automatic verification step)が実行される。その後,測定された基準共振周波数は,それが補聴器メーカーによって提供される上記自動確認に基づく予想範囲内(within an expected range)にある場合にだけ,記憶が許可される。これは,補聴器メーカーは付随する音響システムからの共振周波数のポジション上の影響に関する情報を提供することができるからである。測定される基準周波数が上記予想範囲内にない場合には警告を提供してもよい。
他の実施態様では,複数のレシーバ・タイプおよびそれらに付随する音響システムについての上記予想範囲を,たとえば補聴器用の適切なフィッティング・ソフトウエアを用いて補聴器ケア専門家がアクセス可能な外部サーバ上に記憶させることができる。
ここで図3を参照して,図3は,所定の補聴器およびレシーバ・タイプについての詰まりレベルの関数としての測定ピーク周波数302および測定バレー周波数304の一例を示している。詰まりのない(参考)状況におけるピーク周波数301およびバレー周波数303も示されている。図3は,詰まりが増加すると,測定されるピークおよびバレー周波数が上記基準周波数に対して初期的にどのように減少し,他方,危機的な詰まりレベルを超えると,上記ピークおよびバレー周波数が比較的急速に基準周波数よりもかなり大きな周波数に増加するかを明確に示している。すなわち,所与の補聴器およびレシーバ・タイプについて,上記ピーク周波数閾値を2750から3000Hzの範囲の値に設定することができ,上記バレー周波数閾値を3500から3750Hzの範囲の値に設定することができる。
上記方法は,テスト信号の振幅および公差と,測定抵抗に生じうるドリフトとの両方に無関係であり,これらのパラメータが測定されるピークおよびバレー周波数に影響を与えないので,実装が簡単でかつ改善された測定ロバスト性を有する詰まり検出方法を提供するものである。
さらに発明者は,驚くべきことに,補聴器レシーバの中には,上記レシーバ・インピーダンス・スペクトルのピークを考慮するのではなく,バレーを考慮することによって詰まりの検出を大幅に改善することができるものがあることを見出した。事実発明者は,レシーバ・タイプの中には,詰まりを検出するためにピーク周波数を簡単には使用することができないものがあることを見出した。
おそらくさらに驚くべきことに,発明者は,補聴器レシーバ・タイプの中には,特定のレシーバ・タイプのサンプルについて基準バレー周波数のばらつきが非常に小さく,個々のレシーバごとに基準周波数を測定する必要がなく,これに代えて所与の補聴器レシーバ・タイプの特定の後,対応する閾値バレー周波数を上記補聴器システムに直接に格納することができるものもあることも見出した。
さらに発明者は,さらに他の補聴器レシーバ・タイプの中には,特定のレシーバ・タイプのサンプルについて上記基準ピーク周波数のばらつきが非常に小さく,個々のレシーバごとに基準周波数を測定する必要がないものがあることを見出した。
この実施態様の変形例では,補聴器詰まりの検出に応答して様々なアクション(動作)をトリガすることができる。このアクションは,音響警告を発する(出力する)こと,閾値超過に関連するデータを補聴器システムにログすること,および閾値超過に関連するデータを外部サーバに提供することを含むグループから選択することができる。
さらなる変形例では,補聴器システムの会話検出器が音響環境に会話がない(no speech)ことを決定したときにだけ,音響警告が出力される(issued)。
図1を再び参照して測定点104における電圧Vauxは以下のように直接に導かれる。
Figure 0006323927
ここでVsignalは上記信号発生器101から与えられるAC電圧であり,Zreceiverは決定されるレシーバ・インピーダンスであり,Rmeasは上記測定抵抗102の抵抗値である。
上記レシーバ・インピーダンスの変化に対する測定電圧の感度を最適にするために,上記電圧Vauxが上記レシーバ・インピーダンスZreceiverに対して微分され,これによって感度の尺度(a measure of the sensitivity)が得られ,かつ上記測定抵抗102の抵抗値に対して微分して微分感度の式をゼロに設定して最適値を求めることで,感度を最適化することができる。
Figure 0006323927
これによると,好ましくは上記測定抵抗102の抵抗値として上記レシーバ・インピーダンスの基準抵抗値に類似するものが選択され,これによって上記レシーバ・インピーダンスにおける変化に対する測定電圧の感度が最適化される。
発明者は,補聴器システムにおける使用に適するほとんどのレシーバのインピーダンスは,10から1500オームの範囲にあることを見出した。したがってこの実施態様の変形例では,上記基本回路100が,上記測定抵抗102の値を変化させることができるスイッチング回路を含むように構成される。さらなる変形例では,Vauxの測定値が上記測定抵抗102の抵抗値が上記レシーバ・インピーダンスの大きさから大きくかけ離れている(too far)ことを示す場合に,上記測定抵抗102の値が変更される。上記レシーバ・インピーダンスZreceiverの大きさが上記測定抵抗Rmeasの抵抗値に等しいときVauxの大きさはVsignalの大きさの半分になるので,これを決定することができる。一例では,当初は1000オームの抵抗値を持つ第1の測定抵抗102が用いられ,Vauxの大きさがVsignalの大きさの30パーセントに降下した場合に上記第1の測定抵抗102がスイッチアウトされ,約200オームの抵抗値を有する第2の測定抵抗がスイッチインされ,上記基準抵抗についてこの特定の抵抗値の組み合わせを有することによって,約100〜1500オームの範囲のレシーバ・インピーダンス値について,Vauxの大きさがVsignalの大きさの30〜70%の範囲にとどまることになる。
さらなる変形例では,2つの測定抵抗の抵抗値がそれぞれ500〜1500および50〜500オームの範囲である。
さらに発明者は,上記レシーバ・インピーダンスの周波数依存変動(frequency dependent variation)が,このような大きさを持ち,測定される周波数スペクトルの様々な部分について様々な測定抵抗を用いることによって,非常に改善された測定品質を得ることができることを見出した。
ここで図4a〜4dを参照して,これらはこの発明の一実施態様による補聴器のHブリッジ出力段400をかなり模式的に示している。
上記出力段400は,第1のDC電圧源409,第2の電圧源410,出力トランスデューサ105,接地ノード411,第1の測定抵抗412,第2の測定抵抗413,第1の電圧測定点104a,第2の電圧測定点104b,8つのスイッチ401,402,403,404,405,406,407および408を備えている。
上記出力段は通常モードと測定モードとで動作させることができる。通常モードにおいて上記レシーバ105への電流は上記第1のDC電圧源409から与えられる。測定モードにおいて上記レシーバへの電流は第2のDC電圧源410から与えられ,第2のDC電圧源410は,上記第1のDC電圧源からの第1のDC電圧よりもかなり低い第2のDC電圧を提供する。この実施態様では,上記第1のDC電圧は補聴器電池電圧に等しく,上記第2のDC電圧は上記電池電圧よりも30dB低い。簡単な電圧分割回路によって上記低いDC電圧を提供することができる。
この実施態様の変形例では,上記第2のDC電圧が上記電池電圧よりも20から50dB低い。
上記DC電圧は従来の補聴器電池によって提供してもよく,または燃料電池(fuel cell)のような何らかの充電可能な電源によって提供することもできる。
通常モードにおいて,スイッチ405〜408は,図4aおよび図4bに示すように開位置に維持され,これによって上記測定抵抗412および413に電流は流れない。図4aに示すケースでは,電流(Iとして表される)は短絡したスイッチ401および404を通じて左から右への第1の方向で上記出力トランスデューサ105を通り,他方スイッチ402および403は開放されており,図4bに示すケースでは,スイッチ402および403が短絡され,他方スイッチ401および404が開放され,電流(Iとして表される)は右から左への第2の方向で上記出力トランスデューサ105を通るように,スイッチ401〜404は動作する。
電流の方向に依存して,上記出力トランスデューサの膜またはダイヤフラムが内方または外方のいずれかに移動する。これによって上記レシーバ105を一方向のみからの電流パルスによって駆動させる場合に比べて,上記レシーバ105によって提供される音圧レベル(SPL)を倍増させることができる。
しかしながら,測定モードでは,一般に出力トランスデューサに直列接続(結合)された測定抵抗を有することが必要である。
ここで図4c〜4dを参照して,これらは測定モードにおける出力段400の動作を示している。
第1のケースにおいて,第1のレシーバ・タイプが特定され,これに基づいて第1の測定抵抗412が測定に用いられるべきものとして選択されている。図4cに示すケースにおいて,Hブリッジの左側でスイッチ401,403および407が開放し,405が短絡し,かつHブリッジの右側ではスイッチ402,406および408が開放し,404が短絡することで,第1の測定抵抗412が上記出力トランスデューサ105と直列に接続され,これによって電流(Iとして示す)が,短絡したスイッチ405および404を通じて左から右への第1の方向で上記出力トランスデューサ105を通る。このケースにおいて,上記振幅レシーバ・スペクトルは第1の電圧測定点104aにおいて測定される電圧から導出される。
同様にして,Hブリッジの左側でスイッチ401,405および407が開放し,403が短絡し,かつHブリッジの右側でスイッチ402,404および408が開放し,406が短絡することによって,上記第2の測定抵抗413が上記出力トランスデューサ105と直列に接続され,これによって電流(Iとして示す)は短絡したスイッチ406および403を通じて右から左への第2の方向で上記出力トランスデューサ105を通る。これが図4dに示すケースである。このケースにおいて上記振幅レシーバ・スペクトルは第2の電圧測定点104bにおいて測定される電圧から導出され,第1または第2の測定抵抗が上記測定に使用されるかどうかに依存しない同様の方法で,上記測定電圧が上記レシーバ・インピーダンスを反映することが担保される。マルチプレクサが,上記第1または第2の電圧測定点からの信号が入力スイッチング回路202およびさらに上記フロントエンド・プロセッサ203に供給されるかを選択する。図2の電圧測定点104を,図4a〜dの第1または第2の電圧測定点のいずれかに対応させることができる。
上記測定モードは,所与の測定抵抗が選択され,上記レシーバ105を通る電流が一方向だけであるという特徴がある。これは,図4a〜4bに示すように電流が両方向に流れる通常動作の場合にはない。両方の電流を有する利点は,所与の大きさのDC電圧に対してより大きなレシーバ膜動作およびしたがって音圧レベルを達成できることである。
しかしながら,発明者は,この利点は測定モードでは必要とされないことを見出し,その結果,レシーバ105の周囲において非常に対称的な出力段400が発明され,これは出力ステージ400を実現するときの重要な利点であり,それと同時に2つの異なる測定抵抗を選択するオプションを提供することで,上述したように測定感度を向上させることができる。
測定モードにおける電流パルスは常に同じ方向から来るので,発明者は,第1の測定抵抗がアクティブである場合,スイッチ407が開放されるときにスイッチ405が常に短絡され,この逆も同様であり,同様のことは,上記第2の測定抵抗がアクティブである場合のスイッチ406および408にも当てはまることを見出した。これによって,寄生容量およびレシーバ・インダクタンスが電流パルスの間の期間で放電されることが保証される。
当業者にとって明らかなように,正確な音声出力レベルならびにその他の出力信号の時間および周波数の特性は,たとえばパルス幅変調やパルス密度変調技術を用いて様々なやり方で制御することができる。
測定モードにおいて,上記レシーバ105への電流は上記第2のDC電圧源によって提供され,第2のDC電圧源は通常動作において用いられるDC電圧よりも好ましくは30dB低いDC電圧を提供する。固有D級アンプのノイズは提供されるDC電圧に比例するので,低いDC電圧の使用によってノイズの少ない測定信号が提供される。
本願の開示において低いノイズは特に有利であり,それは,いくつかのケースにおいて音出力レベルを提供するテスト信号の使用を補聴器ユーザに聞こえないものとすることができるからである。さらなる利点は,測定モードでは低いDC電圧のみが利用可能であるので,測定中に偶発的に非常に高い音圧レベルをユーザに提供することができないことである。
さらにこの発明は,上記測定をほんの1秒の間に実行できるという利点がある。
開示した実施態様の他の変形例では,上記レシーバ・スペクトルの測定が補聴器の電源オンの一部としてまたはプログラム変更の一部として実行されるだけで上記補聴器がセットアップされ,これらの状況においてユーザが知覚する外乱を最小とすることができる。もっとも,ほとんどのユーザは,小さい音量のために,与えられるテスト信号を聞くことはできないであろう。
開示する実施態様のさらに他の変形例では,電気インピーダンスを測定するために用いられる測定信号の強度が,少なくとも一の周波数範囲において,上記補聴器システムのユーザの聴覚損失に依存して適合され,上記測定信号を補聴器システムのユーザが聞くことができないものとされる。
さらに他の変形例では,電気的インピーダンスを測定するために用いられる測定信号の強度が,少なくとも一の周波数範囲において,上記測定信号の出力レベルを補聴器システムのユーザの可聴閾値未満に維持しつつ,信号対雑音比が改善されるように,上記補聴器システムのユーザの聴覚損失に依存して適合される。
当業者には明らかなように,たとえばパルス幅変調またはパルス密度変調技術を用いることによって,正確な音声出力レベル,ならびに他の出力信号の時間および周波数の特性を,様々なやり方で制御することができる。
次に図5を参照して,図5はこの発明の一実施態様による補聴器のHブリッジ出力段500をかなり模式的に示している。
上記出力段500は,第1の追加分岐がスイッチ414および416を含み,第2の追加分岐がスイッチ415および417を含み,上記第1および第2の追加分岐の両方が上記第2のDC電圧源410に接続されている点を除いて,図4a〜dの出力段400に類似しており,これによって測定抵抗を含ませることなく,上記第2のDC電圧源からの低減されたDC電圧に起因して,低いノイズ信号を提供することができる。電流はIとして示されている。
開示する実施態様の変形例では,出力段400,500,ならびに第1および第2のDC電圧源の使用を,レシーバ・インピーダンス測定を含む任意の方法と基本的には組み合わせて用いることができる。すなわち,この方法は音出力の詰まりを検出することに向けられる必要は必ずしもなく,かつこの方法はピークまたはバレー周波数のシフトの監視に基づく必要は必ずしもない。
さらに他の変形例では,上記補聴器の動作モードを,外部装置,たとえばリモート・コントロールまたはスマートフォンのインターフェースを用いて,または補聴器に収容されるセレクタを用いて直接に選択することができる。ユーザが測定モードを直接に選択することができるオプションは,上記ユーザが,補聴器が詰まっているかどうかをすぐに調査することができるという利点がある。
しかしながら,定期的または不定期のなんらかの間隔で上記レシーバ測定モードが自動的に入るオプションは,詰まりをそれがひどくなる前に検知することができるので,ユーザが,能力が落ちた補聴器を知覚することを避けることができるという利点がある。この発明のこの観点は,発明者が,上記決定された基準周波数よりも低い閾値周波数を,測定されるピーク周波数(またはバレー周波数)がこの閾値未満に低下しているときに詰まりが危機的状況に近づいていることを示すために用いることができることを見出したことが特に利点である。

Claims (11)

  1. 4つの分岐を有するHブリッジ出力段を備え,各分岐が,
    直列に接続された2つのスイッチ,および2つのスイッチの間に位置しかつ直接にまたは抵抗を通じて補聴器レシーバの端子に接続される分岐点を有しており,
    第1および第2の分岐の分岐点が,上記補聴器レシーバの第1および第2の端子にそれぞれ直接に接続されており,
    第3の分岐の分岐点が,第1の測定抵抗を通じて上記第1の分岐の分岐点に接続されており,
    第4の分岐の分岐点が,第2の測定抵抗を通じて上記第2の分岐の分岐点に接続されている,
    補聴器。
  2. 上記Hブリッジが,
    上記第1および第2の分岐を通じて上記補聴器レシーバに第1の電圧源を接続し,
    上記第3および第4の分岐を通じて上記補聴器レシーバに第2の電圧源を接続するように構成されており,上記第2の電圧源によって供給される電圧が,上記第1の電圧源によって供給される電圧よりも少なくとも30dB低い,
    請求項1に記載の補聴器。
  3. 上記出力段が通常動作モードまたは測定モードのいずれかにおいて動作するように構成されており,かつ上記出力段が通常動作モードにおいて動作するときに上記第1の電圧源が上記補聴器レシーバに電流を提供し,上記出力段が測定モードにおいて動作する間,上記第2の電圧源が上記補聴器レシーバに電流を提供するように構成されている,請求項2に記載の補聴器。
  4. 上記測定モードにおける補聴器が,上記補聴器レシーバの上記第1または第2の端子の電圧を測定するように構成されている,請求項3に記載の補聴器。
  5. 上記第1および第2の測定抵抗の抵抗値が10オームから1500オームの範囲から選択される,請求項1から4のいずれか一項に記載の補聴器。
  6. 上記第1の測定抵抗の抵抗値が50から500オームの範囲から選択され,上記第2の測定抵抗の抵抗値が500から1500オームの範囲から選択される,請求項1から5のいずれか一項に記載の補聴器。
  7. 補聴器レシーバ・タイプを特定し,
    少なくとも2つの測定抵抗からなるグループから第1の測定抵抗を選択し,
    少なくとも一の周波数について,上記選択された第1の測定抵抗を用いて補聴器レシーバのインピーダンスを測定し,
    上記測定された補聴器レシーバ・インピーダンスに基づいて上記補聴器システムの音出力が少なくとも部分的に詰まっているかどうかを決定する,
    補聴器システムの動作方法。
  8. 上記測定に用いられるべき上記第1の測定抵抗の選択が,上記特定された補聴器レシーバ・タイプに基づくものである,請求項7に記載の方法。
  9. 上記第1の測定抵抗に代えて第2の測定抵抗を用いて上記補聴器レシーバのインピーダンスを測定し,
    上記第2の測定抵抗を用いて上記測定された補聴器レシーバ・インピーダンスに基づいて上記補聴器システムの音出力が少なくとも部分的に詰まっているかどうかを決定する,
    請求項7または8に記載の方法。
  10. 電圧分割を用いて上記補聴器レシーバのインピーダンスを決定できるようにするために,上記測定抵抗が補聴器レシーバと直列に結合されている,請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 上記レシーバのインピーダンスを測定するステップが,通常動作モード中に提供される電圧よりも少なくとも30dB低い電圧を提供するように構成される電圧源から上記レシーバに電流を提供するように構成される出力段を用いて測定モード中に実行される,請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
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