次に、本発明の実施の形態の一例を説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるため技術的に種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
図1及び図2に示すように、本発明の万能スピーカ10は、難聴者と健聴者とが共に聞き取ることができるものであり、振動板1と、ドライバユニット2と、筐体3とを少なくとも備えることにより構成されている。
振動板1は、平板状をし、図2に示すように、一端1a側から対向する他端1b側へ向かうにしたがって湾曲する曲面部を形成し、筐体3の開口部39を被覆するように配されている。すなわち、振動板1は、フィルムやシートのように平たい薄厚の部材であって、予め湾曲する曲面部を有するように成形されているもののほか、柔軟性を有すると同時に張りのある性質を備えて湾曲する曲面部を形成することができるものをいう。
この振動板1における少なくとも一方の端部が、ドライバユニット2に取り付けられるものとなっている。
振動板1は、予め湾曲する曲面部を有するように成形された部材の場合は、この湾曲凸面が前方を向くように筐体3に取り付けるものであり、柔軟性を有する部材の場合は、起立した平板状態でドライバユニット2に取り付け、この状態から弾性的に曲げて変形させることにより曲面を形成し、この変形した湾曲凸面側を前方に向けて筐体3に取り付けるものである。この湾曲した振動板(以下、「湾曲振動板」という。)1は、曲面部の曲げ角度が90°乃至これより少し大きいと望ましく、具体的には、曲げ角度が90°乃至130°であると良い。
すなわち、剪断波は湾曲振動板1の曲げにより発生するが、曲げ角度により発生音圧が変化する。具体的には、発生音圧が一番大きくなるのは、110°±20°の曲げ角度を有する曲面部を持った湾曲振動板1である。
ここで曲面部の曲げ角度は、図3に示すように、湾曲振動板1の一端1a側に対する垂線と他端1b側に対する垂線とが交わることによって示される角度をいう。
図3において、平面状態の振動板1は点線で示され、この振動板1が、図中矢印一点鎖線で示すように、一端1a側から対向する他端1b側へ向かうにしたがって湾曲する曲面部を形成するように折り曲げられた状態が実線で示されている。ゆえに、この時の湾曲振動板1の曲面部の曲げ角度は、その一端1a側に対する垂線と他端1b側に対する垂線とが交わる点Oでの角度θで示され、その角度θは90°乃至130°となっている。
また、図2において、湾曲振動板1は筐体3の開口部39を被覆するように配されると共に、その端縁部(一端1a側)が、筐体3に固定して取り付けられたドライバユニット2の後述する振動板駆動部26上面と略直角(90°)に当接して取り付けられた状態が示されている。
この湾曲振動板1の材料は、カーボン紙などの紙、ポリイミドやポリエステルなどの可撓性を有するプラスチック、バルサ材などの木材、アルミやベリリウム、ボロンなどの金属を用いることができる。また、湾曲振動板1の厚みは、予め湾曲する曲面部を有するように成形したり、弾性的に曲げて変形させたりすることができれば特に限定されない。
ドライバユニット2は、入力(通電)された電気信号(音声信号)に応じて湾曲振動板1を振動させるアクチュエータであり、湾曲振動板1の面方向と同じ方向に駆動するように、湾曲振動板1の端縁部と当接して取り付けられている。すなわち、ドライバユニット2は、湾曲振動板1の端面部に接続され、湾曲振動板1の端面部に対して振動を加えるように取り付けられている。また、ドライバユニット2に入力される電気信号は、たとえば、テレビやラジオ、オーディオプレイヤー、パーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス、等より出力した音声信号を挙げることができる。
ここで、大音量を発生させるためには、大きな振動板や大きな電力を必要とするが、湾曲振動板1に対してドライバユニット2より大きな力(振動)を付与することによっても達成することができる。このようなドライバユニット(以下、単に「ドライバ」という場合がある。)2としては、たとえば、ムービングマグネット方式のアクチュエータや、ムービングコイル方式のアクチュエータを挙げることができる。
すなわち、湾曲振動板1の曲面部から剪断波が発生する現象を実現するために、ムービングマグネット方式のアクチュエータや、ムービングコイル方式のアクチュエータにより音の再生を行う。ムービングマグネット方式のアクチュエータは、ムービングコイル方式のアクチュエータと同じ大きさの電気信号を入力しても、より大きな質量の振動板を駆動することができると共に、質量が大きい振動板を駆動するときにはムービングコイル奉仕のアクチュエータより小型化し易い点で設計上有利である。一方、ムービングコイル方式のアクチュエータは、湾曲振動板1を駆動する際のストロークが大きく、広い周波数帯域(音域)が得られる点で設計上有利である。
ムービングマグネット型のドライバ2は、マグネット周囲のボイスコイルに音声信号を流し、中心に置いたマグネットが、ボイスコイルの磁界変化によって比較的強い駆動力を得て振動し、湾曲振動板1の曲面部から発生する音圧を大きくすることができる。
このムービングマグネット型のドライバ2は、たとえば、図4に示すことができる。
図4に示すムービングマグネット型のドライバ2は、カップ状のヨーク21の内壁面にボイスコイル23が配されると共に、その内側にマグネット(永久磁石)25が設けられた円柱状のポールピース24が配されている。さらに、ヨーク21の内部に、外部より電気信号の供給を受けるドライバ回路22が配されたものとなっている。
このムービングマグネット型のドライバ2は、ボイスコイル23がドライバ回路22から電気エネルギーを受けることによって、ボイスコイル23とポールピース24の外周面との間に磁気ギャップを形成し、これらによって磁気回路を構成している。
また、ポールピース24の上部には円盤状をした金属製の振動板駆動部26が設けられ、ポールピース24の下端部は磁気ギャップ内に配置されている。すなわち、ドライバ2の上部先端部に振動板駆動部26が設けられ、ポールピース24の下端部が磁気回路の磁気ギャップに配置されたものとなっている。
このようにドライバ2は、ムービングマグネット型として大きな質量を持つポールピース24を駆動することができ、ムービングコイル方式のアクチュエータが軽い質量のコイルを駆動するのに比較して、より大きな力で振動板を振動させることができる。すなわち、ムービングマグネット方式のアクチュエータは、ムービングコイル方式のアクチュエータに比べて大きな質量の振動板を駆動する場合にはアクチュエータ筐体の寸法を小さくすることができてサイズ上有利であり、また、マグネットドライブのアンプ(ドライバ回路22)を一体化することがし易くなる。なお、ドライバ回路22は、アクチュエータの筐体であるヨーク21の外部に設けるものとしても良く、これによって一層小型化することができる。
このドライバ2によって電気信号のエネルギーがマグネット25(ポールピース24)の往復動としての運動エネルギーに変換され、この運動エネルギーが振動板駆動部26を介して湾曲振動板1の面方向に対して平行な振動を加えて、音声を発生させることができる。図4中、振動板駆動部26の振動方向は矢印で示されている。
なお、電気信号は、発生させる音に応じて図示せぬテレビやラジオ、オーディオプレイヤー、パーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス、等より供給するアンプ駆動用の信号であり、通常のアンプを駆動するための電気信号と同じである。
筐体3は、湾曲振動板1とドライバユニット2とを収容する箱型をした中空構造体であって、図5に示すように、底板31と、前板32と、背板33と、左右の側板34,34とを備え、一面に開口部39を有する。
図5において、筐体3は、底面部を覆う矩形状をした底板31と、正面部下方を部分的に覆う横長矩形状をした前板32と、背面部を全面的に覆う矩形状をした背板33と、前板32と背板33の間における側面部を上縁が弧状となるように覆う略イチョウ形をした左右の側板34,34とによって形成されたものとして示されている。また、筐体3は、前板部32が設けられた正面部から天面部にかけて全体的開放されたものとなっており、一面に開口部39を有するものとして示されている。
また、前板32の上縁には、収容されたドライバユニット2の振動板駆動部26側を部分的に覆う庇部35が設けられていると共に、背板33の上端付近には左右の側板34とそれぞれ接するように固定片36,36がそれぞれ設けられている。
なお、図示しないが、筐体2の背板33の下方には横長矩形をした隙間部が設けられており、湾曲振動板1の背面側の空間を開放状態として低音域が放音されるように配慮されている。
このような筐体3の内部には、ドライバユニット2が固定して取り付けられている。すなわち、ドライバユニット2は、湾曲振動板1の駆動時にマグネット25の駆動による反作用を受けることとなるが、ドライバユニット2を筐体3に接触させて固定することにより、湾曲振動板1の駆動と反作用によって筐体3を振動させ、外部に出る音圧を高めることができる。
また、湾曲振動板1は、筐体3の内部に固定して取り付けられたドライバ2の上部先端部の振動板駆動部26に当接して結合されている。ドライバ2の振動板駆動部26に対する湾曲振動板1の取り付けは、湾曲振動板1の端面部がドライバ2の振動板駆動部26に当接していれば斜めであっても放音されるので問題は無いが、音量の減少を防ぐために湾曲振動板1の端面部がドライバ2の振動板駆動部26に対して略直角に当接することが望ましく、このときに最大音量になる。
ドライバ2の振動板駆動部26と、湾曲振動板1との結合は、両者が略直角に当接して結合されることとなるのであれば特に限定されない。ゆえに、たとえば、図6に示す挟持具4を用いて振動板駆動部26に湾曲振動板1の端縁部が当接して結合されるものとしても良い。この挟持具4は、バネ弾性のある挟み込み構造を有し、ドライバ2の振動板駆動部26からの振動を湾曲振動板1へ効率良く伝える振動伝達固定具である。
図6において、挟持具4は、バネ弾性によって常時閉じた状態を維持し、湾曲振動板1の端縁部が挿入されることで適宜開口して湾曲振動板1を挟み込んで支持する挟持口41を備えるものとして示されている。したがって、図6では、ドライバ2の振動板駆動部26の上面に挟持具4が固定され、この挟持具4における挟持口41の上方より湾曲振動板1の端縁部を挿入し(図6(a)を参照)、ドライバ2の振動板駆動部26と湾曲振動板1の端縁部とが、略直角に当接して結合されるように挟持具4によって支持される状態を示している(図6(b)を参照)。
このようにバネ弾性のある素材または構造を持つ挟持具4を用いることにより、振動板駆動部26と湾曲振動板1との接続部での伝達ロスを防ぐため、長年の使用においても振動板駆動部26と湾曲振動板1との間に緩み等が発生せず初期のエネルギー伝達効率を持続することができる。
また、振動板駆動部26と湾曲振動板1との接合方法において、たとえば、図7に示す挟持具14を用いて振動板駆動部26に湾曲振動板1の端縁部が当接して結合されるものとしても良い。この挟持具14は、湾曲振動板1の端面部の横方向を全体的に挟み込みと共に、その挟み込む間隔の調節が可能な構造を有し、ドライバ2の振動板駆動部26からの振動を湾曲振動板1へ効率良く伝える振動伝達固定具である。
図7において、挟持具14は、底面部と側面部とが略L字状に連設された金具であって、二つが対となってその側面部同士が対向して適宜間隔を有して配されることで、湾曲振動板1の端縁部を挿入可能とする挟持口42を備えるものとして示されている。したがって、図7では、ドライバ2の振動板駆動部26の上面に挟持具14,14が固定され、この挟持具14,14における挟持口42の上方より湾曲振動板1の端縁部を挿入し(図7(a)を参照)、その後、止め具17(17A,17B)によって側面部同士の間隔が狭まるように締め付けることで、ドライバ2の振動板駆動部26と湾曲振動板1の端縁部とが略直角に当接して結合されるように挟持具14,14によって支持される状態を示している(図7(b)を参照)。すなわち、まるで二枚の板の間に湾曲振動板1の端縁部が挟まり、この端縁部がドライバ2の振動板駆動部26に対して略直角に当接するようにビス止めされたものとして示されている。
このように挟み込む間隔の調節が可能な構造を持つ挟持具4を用いることにより、湾曲振動板1の厚さが異なる場合でも締め付け具合を調整することで、適切な力でかつ確実に保持することが出来る。また、振動板駆動部26と湾曲振動板1との接続部での伝達ロスを防ぎ、長年の使用においても振動板駆動部26と湾曲振動板1との間に緩み等が発生せず初期のエネルギー伝達効率を持続することができる。
以上により湾曲振動板1は、ドライバ2の振動板駆動部26に取り付けられた挟持具4(14)と、筐体3の背板33に設けられた左右の固定片36,36により2点で保持され、湾曲振動板1は、筐体3の正面部から天面部にかけてアーチ状に架け渡され、開口部39を覆うように配されたものとなる。
本発明において、湾曲振動板1は、筺体3の一部を構成するものとしても良い。すなわち、湾曲振動板1を筺体3と同じ部材で別途構成して組み合わせたり、もしくは筺体3と一体的に湾曲振動板1を成形したりするものとしても良い。
このように湾曲振動板1を筺体3の一部にすると、湾曲振動板1となる筺体3の一部は、他の筺体3部分と同じ部材を使用することになるので、製造工程が省力化され、かつ部材のコストを抑えつつ、より音量が高く鮮明な放音によって難聴者と健聴者の双方が不自由なく共に聞き取ることができる効果を有する万能スピーカを得ることができる。
また、湾曲振動板1は、両側縁部が筐体3に支持されるように配されていると望ましい。すなわち、湾曲振動板1を支持するため、筐体3の側板34に湾曲したガイド凸部を設け、この湾曲面に沿う様に平たい振動板1を取り付けるようにしても良い。ゆえに、このガイド凸部は、起立した平板状態の振動板1を効率良く曲折する振動板曲折補助具でもある。ここで両側縁部とは、一端側から他端側へ向かう方向に沿った側縁部をいう。また、このようなガイド凸部5は、たとえば、図8に示すことができる。
図8において、ガイド凸部5は、筐体3の正面部から天面部にかけて斜め上方を向く弧を描くような形状に成形された弧状凸片が、筐体3の左右の側板34,34の内面にそれぞれ取り付けられたものとして示されている。
したがって、剪断波発生のために平らな起立状態の振動板1を湾曲させるとき、所定の曲面を有するように曲折形状に成形されたガイド凸部5を筐体3の側板34の内面に取り付け、振動板1が一端側から対向する他端側へ向かうにしたがって容易に湾曲されたとき、その側縁部が筐体3に取り付けたガイド凸部5の上面によって支持されるものとすると望ましい。
このようにガイド凸部5を用いることにより、ドライバ2に取り付けられた起立状態の振動板1がガイド凸部5の上面に沿って容易に曲折され、一端側から対向する他端側へ向かうにしたがって湾曲する曲面部の形成を容易なものとして湾曲振動板1を配することができるものとなる。また、曲振動板1の両側縁部が筐体3に支持されることで、湾曲振動板1が外力等の影響を受けることなく、エネルギーの伝達効率を低下させてしまうおそれを低減させることができるものとなる。
また、湾曲振動板1の両側縁部が筐体3に支持されるようにガイド凸部5を設ける場合、たとえば、図9に示すように、スパイクやインシュレータと呼ばれる円錐状、三角錐状、半球状をしたエッジ支持部材6をガイド凸部5の上面に多数配置し、湾曲振動板1をエッジ支持部材6により部分的に点接触で支持するものとしても良い。すなわち、湾曲振動板1の両側縁部が、エッジ支持部材6とガイド凸部5を介して筐体3に支持されるものとすることができる。このエッジ支持部材6は、ゴム等の弾性素材、又は木材や石材、金属等の硬質素材から構成されている。
図9において、エッジ支持部材6は、円錐状をしたものとして示され、筐体3の側板34に取り付けられたガイド凸部5の上面に突出するように、均等間隔に17個配されたものとして示されている。なお、エッジ支持部材6の数は特に限定されるものではなく、適宜配することができる。
このようにエッジ支持部材6を介して湾曲振動板1を筐体3で支持することで、湾曲振動板1が比較的自由に振動する反面、エッジ支持部材6によって湾曲振動板1の振動エネルギーを吸収もしくは逃がして、振動が筐体3へ伝わりにくく、エネルギーの損失が少ないものとすることができる。
なお、図示しないが、湾曲振動板1を部分的に点接触で支持するものとする場合、筐体3の側板34から内側に向かって突出するように、側板34にエッジ支持部材6を直接取り付けるものとしても良い。この場合、エッジ支持部材6は、円錐状、三角錐状、半球状に限らず、円筒状とすることもできる。
また、湾曲振動板1の両側縁部が筐体3に支持されるようにガイド凸部5を設ける場合、たとえば、図10に示すように、ガイド凸部5の上面には、湾曲振動板とガイド部との接触による異音の発生等を防止するべく機能する振動緩衝部材16を設け、湾曲振動板1を振動緩衝部材16により線接触で支持するものとしても良い。
この振動緩衝部材16には、軟質でかつ振動を伝えにくい材料を適用することができ、湾曲振動板1の側縁部と、ガイド凸部5上の振動緩衝部材16とは密接したものとなっている。このような振動緩衝部材16としては、たとえば、発泡ウレタン樹脂やゴム、不織布等のような弾力性に富むシート材を挙げることができる。
図10において、振動緩衝部材16は、帯状をしたものとして示され、筐体3の側板34に取り付けられたガイド凸部5の上面を覆うように配され、湾曲振動板1と筐体3との間の密閉された空間が形成されたものとして示されている。
このように振動緩衝部材16を介して湾曲振動板1を支持することで、湾曲振動板1が比較的自由に振動する反面、振動緩衝部材16によって湾曲振動板1の振動エネルギーが筐体3へ伝わりにくく、エネルギーの損失が少ないものとなる。また、湾曲振動板1と筐体3との間の密閉された空間が形成されたものとなるので、振動板の表面(前面)から出た音波と裏面(背面)から出た音波は振動緩衝部材16により遮断され、表面や裏面での音波の干渉減衰が起こらないものとすることができ、安定した音圧と広い周波数帯域特性が得られるものとすることができる。
また、湾曲振動板1の両側縁部が筐体3に支持されるようにする場合、たとえば、図11に示すように、ガイド凸部5に代わって筐体3の側板34内面に、スリット状のガイド凹部15を設け、そこに湾曲振動板1の側縁部を差込む様にして支持するものとしても良い。すなわち、ガイド凹部15は湾曲振動板1の厚みより少し大きく、その間に湾曲振動板1の側縁部を挟み込むことで、湾曲振動板1はガイド凹部15を介して筐体3に支持されるものとなる。
図11において、ガイド凹部15は、ガイド凸部5と同様に、筐体3の正面部から天面部にかけて斜め上方を向く弧を描くような形状に成形された弧状溝が、筐体3の左右の側板34,34の内面にそれぞれ形成されたものとして示されている。
このようにガイド凹部15を介して湾曲振動板1を支持することで、湾曲振動板1が筐体3に固定されることなく比較的自由に振動することができる反面、ガイド凹部15によって湾曲振動板1の振動エネルギーが筐体3へ伝わりにくく、エネルギーの損失が少ないものとなる。
なお、図示しないが、ガイド凹部15を介して湾曲振動板1を支持するものとする場合、側板34にガイド凹部15と共にガイド凸部5を設け、ガイド凹部15とガイド凸部5を介して湾曲振動板1の両側縁部を筐体3で支持するものとしても良い。
さらに、側板34にガイド凹部15及びガイド凸部5を設けると共に、ガイド凸部5の上面にエッジ支持部材6を多数配置し、ガイド凹部15によって湾曲振動板1の側縁部を差込む様にして支持しながら、エッジ支持部材6により湾曲振動板1の側縁部下方を部分的に点接触で支持するものとしても良い。
また、湾曲振動板1の側縁部を凹部内に差込む様にして筐体3で支持する場合、たとえば、図12に示すように、筐体3の側板34の内面に幅広の凹状ガイド部(広幅ガイド凹部)18を設けると共に、この広幅ガイド凹部18内の上面及び下面に、上述したエッジ支持部材6を多数配置し、湾曲振動板1をエッジ支持部材6の間に挟み込んで点接触で支持するものとしても良い。
図12において、広幅ガイド凹部18は、ガイド凹部15と同様に、筐体3の正面部から天面部にかけて斜め上方を向く弧を描くような形状に成形された広幅弧状凹溝が、筐体3の左右の側板34,34の内面にそれぞれ形成されたものとして示されている。また、エッジ支持部材6は、この広幅弧状凹溝内の上面から下向きに17個が均等間隔に配されると共に、同広幅弧状凹溝内の下面から上向きに17個が均等間隔に配されたものとして示されている。
このように広幅ガイド凹部18内に上下二列に設けられたエッジ支持部材6の間で湾曲振動板1の両側縁部を支持することで、湾曲振動板1が比較的自由に振動する反面、エッジ支持部材6によって湾曲振動板1の振動エネルギーが筐体3へ伝わりにくく、エネルギーの損失が少ないものとなる。
また、本発明の万能スピーカは、上述した構成より、一つのドライバユニットと一つの湾曲振動板との組み合わせに限らず、種々の組み合わせとすることができる。
たとえば、ドライバユニット2に湾曲振動板1が複数取り付けられ、各湾曲振動板1の素材がそれぞれ異なるものであるものとしても良い。すなわち、図13に示すように、ドライバ2の振動板駆動部26に対して、大きさは同じであるが互いに素材が異なる二つの湾曲振動板11A,11Bをそれぞれ取り付けた構造を有する万能スピーカ20とすることができる。
図13において、ドライバ2は筺体3の背板33に固定して取り付けられ、また、二つの湾曲振動板11A,11Bは何れも、筐体3の開口部39を被覆し、かつ、その端縁部はドライバ2の振動板駆動部26と略直角に当接するように配されたものとして示されている。
このような万能スピーカ20によれば、硬い素材の湾曲振動板1より高音域から中音域の音を再生し、軟らかい素材の湾曲振動板1より低音域の音を再生するものとしたり、重さの軽い素材の湾曲振動板1より高音域から中音域の音を再生し、同重い素材の湾曲振動板1より中音域から低音域の音を再生するものとしたりすることが期待できる。
また、本発明の万能スピーカは、ドライバユニット2に湾曲振動板1が複数取り付けられ、各湾曲振動板1の曲げ角度がそれぞれ異なるものであるものとしても良い。すなわち、図14に示すように、ドライバ2の振動板駆動部26に対して、素材は同じであるが互いに曲げ角度が異なる二つの湾曲振動板11A,11Cをそれぞれ取り付けた構造を有する万能スピーカ30とすることができる。
図14において、ドライバ2は筺体3の底板31に固定して取り付けられ、また、曲げ角度が異なる二つの湾曲振動板11A,11Cは何れも、筐体3の開口部39を被覆し、かつ、その端縁部はドライバ2の振動板駆動部26と略直角に当接するように配されたものとして示されている。
このような万能スピーカ30によれば、曲げ角度が大きい湾曲振動板11Cより高音域から中音域の音を再生し、曲げ角度が小さい湾曲振動板11Aより中音域から低音域の音を再生するものとすることが期待できる。
また、本発明の万能スピーカは、ドライバユニット2に湾曲振動板1が複数取り付けられ、各湾曲振動板1の大きさがそれぞれ異なるものとしても良い。すなわち、湾曲振動板1の寸法によって再生周波数帯域は異なるので、図15に示すように、ドライバ2の振動板駆動部26に対して、素材は同じであるが互いに大きさが異なる二つの湾曲振動板11A,11Dをそれぞれ取り付けた構造を有する万能スピーカ40とすることができる。
図15において、ドライバ2は筺体3の背板33に固定して取り付けられ、また、大きさが異なる二つの湾曲振動板11A,11Dは何れも、筐体3の開口部39を被覆し、かつ、その端縁部はドライバ2の振動板駆動部26と略直角に当接するように配されたものとして示されている。
このような万能スピーカ40は、湾曲振動板1材質や曲げ角度により音の再生領域が充分に広がらない場合に、異なった寸法の湾曲振動板1を同じドライバユニットに2に取り付けることで再生周波数の領域を広げるものとする。ゆえに、大きさが小さい湾曲振動板11Dより高音域から中音域の音を再生し、同大きい湾曲振動板11Aより中音域から低音域の音を再生するものとすることが期待できる。
また、本発明の万能スピーカは、湾曲振動板1の一端側に、ドライバユニット2が複数取り付けられているものとしても良い。すなわち、図16に示すように、湾曲振動板1に対して3つのドライバユニット2をそれぞれ取り付けた構造を有する万能スピーカ50とすることができる。
図16において、3つのドライバ2は何れも筺体3の底板31に固定して取り付けられ、また、湾曲振動板1は、筐体3の開口部39を被覆し、かつ、その端縁部は全てのドライバ2の振動板駆動部26と略直角に当接するように配されたものとして示されている。
このような万能スピーカ50は、同一の湾曲振動板1の端面部を、3つのドライバユニット2によって駆動することにより、一つのドライバユニット2では上限のある音声エネルギーを複数のドライバユニット2で駆動し、より大きな剪断波、粗密波を湾曲振動板1から発生させることが出来る。ゆえに、音量が高く鮮明な放音をすることが期待できるものとなる。
また、本発明の万能スピーカは、湾曲振動板1の他端側にもさらにドライバユニット2が取り付けられているものとしても良い。すなわち、図17に示すように、湾曲振動板1の一方の端縁部に対して第一のドライバ12Aを取り付け、同他方の端縁部に対して第二のドライバ12Bを取り付けた構造を有する万能スピーカ60とすることができる。具体的には、第一のドライバ12Aと第二のドライバ12Bとを共にムービングマグネット方式のアクチュエータとしたり、第一のドライバ12Aと第二のドライバ12Bとを共にムービングコイル方式のアクチュエータとしたり、第一のドライバ12Aと第二のドライバ12Bの何れか一方をムービングマグネット方式のアクチュエータとし、他方をムービングコイル方式のアクチュエータとしても良い。
図17において、第一のドライバ12Aは筺体3の底板31に、また、第二のドライバ12Bは筺体3の背板33に、それぞれ固定して取り付けられ、さらに、湾曲振動板1は、筐体3の開口部39を被覆し、かつ、その一方の端縁部は第一のドライバ12Aの振動板駆動部26と、他方の端縁部は第二のドライバ12Bの振動板駆動部26とそれぞれ略直角に当接するように配されたものとして示されている。
このような万能スピーカ60は、湾曲振動板1の異なる端面をそれぞれ異なるドライバユニット12A,12Bで駆動することにより、一つのドライバユニットでは上限のある発音エネルギーを複数のドライバユニット2(12A,12B)で駆動し、より大きな剪断波、粗密波を湾曲振動板1から発生させることが出来る。ゆえに、音量が高く鮮明な放音をすることが期待できるものとなる。
また、このような万能スピーカ60では、電気信号を幾つかの周波数帯域に分割する手段をさらに備え、分割した各電気信号を互いに異なるドライバユニット12A,12Bにそれぞれ入力するものとなっている。すなわち、図17において矢印で示すように、ドライバユニット2(12A,12B)入力される単一の音声信号の帯域を、アナログまたは電子的フィルター等の音声信号分割装置8によって二つの周波数帯域に分割する。そして、出力の一方を第一のドライバ12Aに入力し、出力の他方を第二のドライバ12Bに入力して、一つの湾曲振動板1を駆動することで、湾曲振動板1における一端側と他端側とで異なる再生帯域の剪断波、粗密波を同時に得て、全体的に再生帯域の広い剪断波、粗密波を得ることが出来る。
また、本発明の万能スピーカは、ドライバユニット2の何れか一方が圧電体を利用したアクチュエータを備えたものとしても良い。圧電体は、圧力を加えると、圧力に比例して自体変形する圧電効果を有する物質であり、アクチュエータは、加えられた電圧を力に変換する圧電効果を利用した圧電素子である。圧電素子は、電圧をかけることで一方向に伸縮(振動)する。ゆえに、図18に示すように、湾曲振動板1の一方の端縁部に対してムービングマグネット型等のドライバユニット2を取り付け、同他方の端縁部に対して圧電素子12を貼り付けた構造を有する万能スピーカ70とすることができる。具体的には、第一のドライバ12Aと第二のドライバ12Bの何れか一方をムービングマグネット方式のアクチュエータとし、他方を圧電体としたり、第一のドライバ12Aと第二のドライバ12Bの何れか一方をムービングコイル方式のアクチュエータとし、他方を圧電体としても良い。この圧電素子12は、セラミックスや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子、セラミックスと高分子との複合体などからなるものとすることができる。
図18において、一方のドライバ2は筺体3の底板31に固定して取り付けられ、また、湾曲振動板1は、筐体3の開口部39を被覆し、かつ、その一方の端縁部は一方のドライバ2の振動板駆動部26と略直角に当接するように配されたものとして示されている。
また、このような万能スピーカ70では、電気信号を幾つかの周波数帯域に分割する音声信号分割装置8をさらに備え、分割した各電気信号を互いに異なるドライバユニット12A,12Bにそれぞれ入力するものとなっている。すなわち、図18において矢印で示すように、ドライバユニット2,12入力される単一の音声信号の帯域を音声信号分割装置8によって二つの周波数帯域に分割し、出力の一方を第一のドライバ2に入力し、出力の他方を第二のドライバ12に入力して、一つの湾曲振動板1を駆動する。
このように湾曲振動板1の端縁部に圧電素子を貼り付けることで、圧電素子の変化が効率良く湾曲振動板1に伝わり、特に高音域での再生に効果が得られる。ゆえに、湾曲振動板1の一方の端縁部にムービングマグネット型等のドライバユニット2を取り付け、同他方の端縁部に圧電素子12を貼り付けることで、ムービングマグネット型等のドライバユニット2が取り付けられた側の湾曲振動板1からは中音域から低音域の音を再生し、圧電素子12が取り付けられた側の湾曲振動板1からは高音域から中音域の音を再生することで、全体的に再生帯域の広い剪断波、粗密波を得ることが期待出来るものとなる。
また、本発明の万能スピーカは、二つのドライバユニットと二つの湾曲振動板を備え、一つのドライバユニットに対して一つの湾曲振動板が組み合わされたものが一つの筐体内に二組配されたものとしても良い。すなわち、図19に示すように、第一のドライバユニット12Aに対して大きさが大きい第一の湾曲振動板11Aを取り付けると共に、第二のドライバユニット12Bに対して同小さい第二の湾曲振動板11Dを取り付けた構造を有する万能スピーカ80とすることができる。
また、このような万能スピーカ80では、電気信号を幾つかの周波数帯域に分割する音声信号分割装置8をさらに備え、分割した各電気信号を互いに異なるドライバユニット12A,12Bにそれぞれ入力するものとなっている。
図19において、二つのドライバ12A,12Bは何れも筺体3の背板33に固定して取り付けられ、また、二つの湾曲振動板11A,11Dは何れも、筐体3の開口部39を被覆し、かつ、大きい第一の湾曲振動板11Aの端縁部は第一のドライバユニット12Aの振動板駆動部26と略直角に当接し、小さい第二の湾曲振動板11Dの端縁部は第二のドライバユニット12Bの振動板駆動部26と略直角に当接するようにそれぞれ配されたものとして示されている。
このような万能スピーカ80は、形状の異なる湾曲振動板11A,11Dの各端面を、それぞれ異なる固有のドライバユニット12A,12Bで駆動することにより、一つのドライバユニットと一つの湾曲振動板では上限のある発音エネルギーの変換を、複数のドライバユニット2(12A,12B)と複数の湾曲振動板11A,11Dでそれぞれ適切に変換し、より大きな剪断波、粗密波をそれぞれの湾曲振動板11A,11Dから発生させることが出来る。ゆえに、音域に応じて音量が高く鮮明な放音をすることが期待できるものとなる。
さらに、本発明の万能スピーカは、二つのドライバユニットと二つの湾曲振動板を備え、一つのドライバユニットに対して一つの湾曲振動板が組み合わされたものが一つの筐体内に二組配されたものであって、ドライバユニットの何れか一方が圧電体を利用したアクチュエータを備えたものとしても良い。すなわち、図20に示すように、第一のドライバユニットをムービングマグネット型とし、このドライバユニット2に対して大きさが大きい第一の湾曲振動板11Aを取り付けると共に、第二のドライバユニットを圧電素子12とし、このドライバユニット12に対して大きさが小さい第二の湾曲振動板11Dを取り付けた構造を有する万能スピーカ90とすることができる。
また、このような万能スピーカ90では、電気信号を幾つかの周波数帯域に分割する音声信号分割装置8をさらに備え、分割した各電気信号を互いに異なるドライバユニット2,12にそれぞれ入力するものとなっている。
図20において、第一のドライバユニット2は筺体3の背板33に固定して取り付けられ、また、二つの湾曲振動板11A,11Dは何れも、筐体3の開口部39を被覆し、かつ、大きい第一の湾曲振動板11Aの端縁部は第一のドライバユニット2の振動板駆動部26と略直角に当接するように配されたものとして示されている。
このような万能スピーカ90は、形状の異なる湾曲振動板11A,11Dの各端面を、それぞれ異なる固有のドライバユニット2,12で駆動することにより、一つのドライバユニットと一つの湾曲振動板では上限のある発音エネルギーの変換を、複数のドライバユニット2,12と複数の湾曲振動板11A,11Dでそれぞれ適切に変換し、より大きな剪断波、粗密波をそれぞれの湾曲振動板11A,11Dから発生させることが出来る。ゆえに、第一の湾曲振動板11Aの端縁部にムービングマグネット型等のドライバユニット2を取り付け、第二の湾曲振動板11Dの端縁部に圧電素子12を貼り付けることで、ムービングマグネット型のドライバユニット2が取り付けられた側の湾曲振動板11Aからは中音域から低音域の音を再生し、圧電素子12が取り付けられた側の湾曲振動板11Dからは高音域から中音域の音を再生することで、音域に応じて音量が高く鮮明な放音をすることが期待できるものとなる。
なお、図示しないが、本発明では、ドライバユニット2を筐体3の側面部、底面部等の板に堅牢に固定する金具を設け、ドライバユニット2のセンター位置で設置後も、ドライバユニット2を左右に×mm、前後に×mmの範囲で自在に調整し、堅固に保持継続するようにしても良い。
次に、本発明の万能スピーカの効果を確認するための評価を行った。
[実施例1]
本実施例では、ガイド凸部を備えた中空構造の木製筐体内の底板部に、ムービングマグネット型のドライバユニットを固定して取り付けると共に、ドライバユニットの振動板駆動部に平板状をしたセルロイド製の振動板の端縁部を当接して取り付けた。また、この振動板をガイド凸部に沿って折り曲げることで、110°に湾曲する曲面部を形成し、筐体の開口部を被覆するように配された湾曲振動板を備える万能スピーカを作成した。そして、この万能スピーカを用いて難聴者及び健聴者によって聞き取ることができる音声が放音されているか否かの評価試験を行った。
評価試験は、難聴者31名と健聴者193名を合わせた計124名をパネラーとし、本実施例の万能スピーカのドライバユニットに対してオーディオプレイヤーのイヤホンジャックより出力した音声信号を入力し、放音された音声の印象について評価を行った。
評価は、はっきりと良く聞こえる場合を「◎」、聞こえるが音量が小さい感じがする場合を「○」、聞こえるときと聞こえないときがある場合を「△」、殆ど聞こえない又は全く聞こえない場合を「×」とした。その評価結果を[表1]に示す。
なお、このときの難聴者の年齢別の内訳は、90歳代が21名、80歳代が6名、60歳代が3名、及び30歳代が1名であった。
表1の結果より、本発明の万能スピーカは、音量が高く鮮明な放音によって難聴者と健聴者とが不自由なく共に良く聞き取ることができるものであることが分かる。
[実施例2]
次に、湾曲振動板の曲面部の曲げ角度が90°より少し大きい角度であると望ましいことを確認するために、実施例1の万能スピーカにおいて、湾曲振動板の曲面部の曲げ角度を、0°、45°、90°、110°、130°、180°とそれぞれ変えたものとし、これらの万能スピーカにおいて難聴者及び健聴者によって聞き取ることができる音声が湾曲振動板の曲面部の曲げ角度によってどのように変化するか評価試験を行った。その評価結果を[表2]に示す。
なお、パネラー数、評価方法は上記実施例1と同様とした。また、湾曲振動板の曲面部の曲げ角度が110°のときの評価は、上記実施例1の結果を用いた。
表2の結果より、本発明の万能スピーカでは、湾曲振動板の曲面部の曲げ角度が90°乃至130°である場合において、音声信号の電気エネルギーから変換された運動エネルギーを湾曲振動板に効率良く伝え、より音量が高く鮮明な放音をするものとなることが分かる。
[実施例3]
次に、上記実施例1と同様の万能スピーカを用いて、老人性難聴の方に対して個別に放音された音声の印象について評価を行った。対象者は、日常的に補聴器を使用している82歳の老人性難聴の男性である。
対象者に補聴器を外してもらった状態で、万能スピーカのドライバユニットに対してオーディオプレイヤーのイヤホンジャックより出力した音声信号を入力して放音したところ、きちんと高音が聴こえるとの回答を得た。
また、同じ対象者に対してテレビのイヤホンジャックより出力した音声信号を入力して放音したところ、やはりはっきりと聴こえるとの回答を得た。そして、その後にイヤホンジャックから万能スピーカのジャックを引き抜き、テレビのスピーカから放音されるものとしたところ、全く聴こえず人の声の認識ができないとの回答を得た。
[実施例4]
次に、上記実施例1と同様の万能スピーカを用いて、器質性難聴の方に対して個別に放音された音声の印象について評価を行った。対象者は、小さい時からの器質障害の難聴を有する30代の女性である。
万能スピーカのドライバユニットに対してオーディオプレイヤーのイヤホンジャックより出力した音声信号を入力して放音したところ、どの音域でもストレスなく聴こえるとの回答を得た。しかも、対象者は相当嬉しかったようで、興奮してとても希望が湧いたとの回答を得た。
[実施例5]
次に、上記実施例1と同様の万能スピーカを用いて、遺伝性難聴の方に対して個別に放音された音声の印象について評価を行った。対象者は、生まれつき聴力が弱く、若い時より補聴器を付けている65歳の遺伝性難聴の男性である。
対象者に補聴器を外してもらった状態で、万能スピーカのドライバユニットに対してラジオのイヤホンジャックより出力した音声信号を入力して放音したところ、アナウンサーの声も音楽もはっきりと聴こえるとの回答を得た。