JP6318429B2 - コーティング層における剥離の非破壊検査方法および非破壊検査装置 - Google Patents

コーティング層における剥離の非破壊検査方法および非破壊検査装置 Download PDF

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Description

本発明はコーティング層における剥離の非破壊検査方法および非破壊検査装置に関し、特にガスタービン等における遮熱コーティング中の内部剥離を非破壊検出する場合に適用して有用なものである。
ガスタービンの燃焼器、動翼、静翼といった高温部品には、耐熱合金が用いられているが、特に高温の燃焼ガスに曝される部分には、金属の基材を守るために、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coatings(以下、TBCという))が適用されている。TBCは、通常、合金製のボンドコートとセラミックス製のトップコートの2層から構成されている。トップコートは数百ミクロンの厚さであるが、金属よりも熱伝導率が低いセラミックスであることと、内部に細かな気孔を多数含んだ構成であることから、優れた遮熱性能を発揮する。しかし、TBCを高温で長時間使用すると、トップコートとボンドコートとの界面付近に横亀裂が発生する場合があり、その部分が剥離した状態(浮き上がり状態)となる。この状態のまま使用を続けると、将来的にトップコートの一部が部品表面から完全に離脱してしまい、初期に想定されていた遮熱性能が低下することになる。
遮熱性能の低下は、部品の金属基材の温度上昇をもたらし、部品自体の余寿命を短くすることや、部品の破損による事故を引き起こすことが考えられる。このため、完全に離脱する前に剥離を検査することが重要である。部品の点検時に、剥離箇所を非破壊で精度よく検出できれば、その情報を基に補修(再コーティング)の必要性の有無を判断することが可能となる。
この種のトップコートの剥離の非破壊検査方法を開示する公知文献として、本発明者等により提案した特許文献1が存在する。これは、動翼等の基材にコーティング層を形成した試料の表面にビーム状の加熱光を照射するとともに前記表面の線上を移動させ、前記線上の各点における温度を表す温度特性を検出し、さらに前記各点の周辺部分を含む前記試料の表面の温度分布を表す画像を撮像して前記温度特性がピークとなる前記試料の表面位置を特定し、特定した前記表面位置から走査方向に関し下流側の所定の範囲内において前記加熱光による走査方向の反対側に伸びる尻尾状の低温部である残熱像に基づき剥離の有無を検出するものである。すなわち、残熱像が検出された場合に温度特性がピークとなる位置におけるコーティング層を剥離部位と判定する。
特開2013−246097号公報
特許文献1に開示された検出方法は、加熱による温度のピークの出現と、そのピーク位置の近傍領域における残熱像の出現とをアンド条件として前記ピーク位置を剥離部位と判定しているので、コーティング層の剥離部位を高精度に特定することができるという特長は有するものの、コーティング層の厚さと加熱条件(ビーム状の加熱光の移動速度、加熱光の径、レーザ出力)の組み合わせによっては明確な残熱像が得られない場合がある。
本発明は、上記従来技術に鑑み、直線上を移動するビーム状の加熱光によりコーティング層の表面を加熱した場合に温度分布に基づき剥離部位を特定する場合において、剥離をより確実に非破壊検査で検出することができるコーティング層における剥離の非破壊検査方法および非破壊検査装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、次の知見を基礎とするものである。例えば、図1に示すように、金属基材1の表面にボンドコート2Aおよびトップコート2Bからなる遮熱コーティング(Thermal Barrier Coatings(以下、TBCという))2を施した試料Iの表面にビーム状のレーザ光Lを図中左側から右側に向けて一定速度で移動させながら照射した場合、剥離部位5の始端Aから終端Bを通過し、健全部Cにおける所定領域の赤外線カメラ4の画像に基づくトップコート2Bの表面の温度分布は、図に示すようになる。TBC2に剥離部位が存在せず、健全である場合は、レーザ光Lの照射によりトップコート2Bの表面に発生する熱が、ボンドコート2Aを介して金属基材1に移動するのに対し、TBC2に剥離部位5が存在する場合には、剥離部位5が断熱層となるので、レーザ光Lの照射によりトップコート2Bの表面に発生する熱が剥離部位5で遮断されて、剥離部位5に対応するトップコート2Bの表面位置で、その温度が局部的に上昇するからである。特に、特許文献1に示すように、剥離部位5には、低温度の領域9に、レーザ光Lの移動方向と反対方向に伸びる尻尾状の帯部9Aとして残熱像IIIが検出される。かかる残熱像IIIが明確になる条件を検討した。
図1に示すような加熱を行った場合において、トップコート2Bの表面の特定の検出点の温度変化を考える。図2(a)はレーザ光Lのビーム径が小さく移動速度が遅い場合、図2(b)はビーム径が大きく移動速度が速い場合であるが、ビーム径と移動速度とで規定されるビームの通過時間だけ加熱されることを考慮すれば加熱時間を同一とすることができる。図2に示す加熱の場合、TBC厚さ方向の一次元非定常熱伝導解析による、トップコート2B上の検出点DPの経時的な温度変化特性は図3に示すようになる。すなわち、図3に示すように、異なるビーム径およびビーム移動速度でも、加熱時間が同じとなる一次元非定常熱伝導解析であれば、単一の温度変化特性となり、加熱開始H1から加熱途中H2を経て加熱終了H3に至るまでは、表面温度が上昇し、加熱終了後の放熱期間で徐々に下降する。
図4(a)および図4(b)はレーザ光Lのビーム径は同じであるが、図4(a)の場合は移動速度が遅く、図4(b)の場合は移動速度が速い場合である。したがって、ビーム径と移動速度とで規定される加熱時間は異なるが、図4に示す加熱の場合、ビーム径および移動速度で規定される加熱時間で時間を無次元化すると、無次元時間τ=1の時にビームの移動距離はビーム径に等しくなることから、無次元時間はビーム径で規格化したビーム移動距離を表すことになる。また、健全部の最高温度で温度を無次元化することで、健全部の最高温度に対する割合で剥離の温度変化特性を評価可能となる。以上により、図4に示す場合のように、同じビーム径で異なるビーム移動速度を適用した場合でも、温度変化特性を無次元化すれば、異なる加熱時間の温度変化特性を比較することができる。すなわち、一次元非定常熱伝導解析による検出点DPの無次元化した経時的な温度変化特性は、図5に示すように、加熱開始H1から加熱途中H2を経て、無次元時間τ=1となる加熱終了H3に至るまでは、表面温度が上昇し、加熱終了後の放熱期間で徐々に下降する温度変化特性となり、無次元化した温度変化特性の違いが熱像の違いを表している。
ここで、剥離部では、上述の理由により表面温度が上昇し、健全部よりも高温となる。また、加熱終了H3の後でも表面温度の低下が緩やかである。
そこで、上述の如き剥離部と健全部とにおける温度変化特性を利用すれば、剥離部の特定をより簡単かつ高精度に行うことができると考えられる。具体的には、図6に示すように、横軸に無次元時間τを採り、縦軸に検出点DPの無次元温度ηを採った温度変化特性において、加熱開始H1から加熱途中H2を経て加熱終了H3に至り、その後の放熱期間において所定の判定温度になるまでの時間に注目すると、剥離部における無次元時間τと健全部における無次元時間τとの間には、τ>τの関係があり、無次元時間τに対する無次元時間τの割合が大きいほど明確な残熱像IIIが得られると考えられる。そこで、無次元時間τと無次元時間τとの比を残熱率(τ/τ)として定義する。この残熱率(τ/τ)が大きいほど明確な残熱像IIIを得ることができると考えられるので、残熱率(τ/τ)に基づき加熱条件を最適化することにより明確な残熱像IIIを得ることができると考えられる。
かかる知見を基礎とする本願発明の第1の態様は、
基材の表面に形成したコーティング層における剥離の非破壊検査方法であって、
前記基材にコーティング層を形成した試料の表面にビーム状の加熱光を照射するとともに前記表面の線上を移動させることにより走査し、前記線上の各点における温度を表す温度特性を検出するとともに、前記各点の周辺部分を含む前記試料の表面の温度分布を表す画像を撮像する場合において、
前記加熱光が、前記コーティング層に所定の剥離を生起している試料を通過する際の加熱開始から最高温度を経て、所定の判定温度に降下するまでの時間と、前記剥離を生起していない健全な試料を通過する際の同様の時間との比として定義される残熱率が最大となる最大残熱率特性を、前記コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間、または前記加熱光の移動速度および形状とをパラメータとして求めておき、
前記試料の前記コーティング層の特定の膜厚に対応する前記最大残熱率特性を求めるとともに、前記最大残熱率特性に対応する前記加熱時間を前記特定の膜厚における前記試料の加熱時間とすることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法にある。
本態様によれば、最大残熱率に基づきコーティング層の特定の膜厚における加熱時間を決定し、この加熱時間でコーティング層を加熱するようにしたので剥離部位における残熱像を明確にすることができる。この結果、剥離部位の特定を容易かつ高精度に行うことができる。
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載するコーティング層における剥離の非破壊検査方法において、
前記温度特性がピークとなる前記試料の表面位置を特定し、特定した前記表面位置から走査方向に関し下流側の所定の範囲内において前記加熱光による走査方向の反対側に伸びる尻尾状の低温部である残熱像が前記画像中に検出された場合に前記ピークとなる位置における前記コーティング層を剥離部位と判定することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法にある。
本態様によれば、加熱による温度のピークの出現と、そのピーク位置の近傍領域における残熱像の出現とをアンド条件として前記ピーク位置を剥離部位と判定することができるばかりでなく、この場合の加熱条件を最適化することができる。この結果、コーティング層の剥離部位をさらに高精度に特定することができる。
本発明の第3の態様は、
第1または第2の態様に記載するコーティング層における剥離の非破壊検査方法において、
前記最大残熱率特性は、前記試料の物性値に基づいた一次元非定常熱伝導解析により求めることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法にある。
本態様によれば、数値解析に必要な時間を短縮することができるばかりでなく、加熱時間が同じになるビーム径とビームの移動速度の組み合わせを一挙に考察することができる。
本発明の第4の態様は、
第1〜第3の態様のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査方法において、
前記最大残熱率特性は、前記コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間とをパラメータとしてコンター図を作成するとともに、前記コンター図において最大残熱率を与える点を結んで作成することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法にある。
本態様によれば、コンター図を利用することで最大残熱率特性を容易かつ適切に求めることができるうえ、厚さが一様でないコーティング層において、各厚さの残熱率を基に加熱条件を求めることができる。
本発明の第5の態様は、
第1〜第4の態様のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査方法において、
前記コーティング層は、金属基材の表面にボンドコートを介してトップコートを形成した遮熱コーティングであることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法にある。
本態様によれば、コーティング層の剥離部位の検出を確実かつ高精度に実現し得る。
本発明の第6の態様は、
基材の表面に形成したコーティング層における剥離の非破壊検査装置であって、
前記基材にコーティング層を形成した試料の表面にビーム状の加熱光を照射するとともに前記表面の線上を移動して走査可能に形成された加熱用光源と、
前記加熱用光源の位置を検出する位置検出手段と、
前記加熱光が照射された前記試料の表面の温度を検出する温度検出手段と、
前記加熱光が照射された前記試料の表面の温度分布を表す画像を撮像する撮像手段と、
前記加熱光が、前記コーティング層に所定の剥離を生起している試料を通過する際の加熱開始から最高温度を経て、所定の判定温度に降下するまでの時間と、前記剥離を生起していない健全な試料を通過する際の同様の時間との比として定義される残熱率が最大となる最大残熱率特性を、前記コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間または前記加熱光の移動速度および形状とをパラメータとして生成する最大残熱率特性生成部、前記最大残熱率特性を記憶する最大残熱率特性記憶部、および任意に特定した前記コーティング層の膜厚に対応する前記最大残熱率特性における前記加熱時間で前記試料が加熱されるよう加熱時間を制御する加熱時間制御部を備えた演算処理手段とを有することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置にある。
本態様によれば、演算処理手段の処理により最大残熱率に基づき特定の膜厚における加熱時間を決定し、この加熱時間でコーティング層を加熱するようにしたので、剥離部位における残熱像を明確にすることができる。この結果、剥離部位の特定が容易かつ高精度に行うことができる。
本発明の第7の態様は、
第6の態様に記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
前記演算処理手段は、前記位置検出手段が検出する位置情報と、前記温度検出手段が検出する温度情報とにより検出した前記線上の各点における前記温度を表す温度特性に基づき温度特性がピークとなる前記試料の表面位置を特定するとともに、特定した前記表面位置から前記加熱用光源の走査方向に関し下流側の所定の範囲内における前記画像中から、前記加熱光の走査方向の反対側に伸びる尻尾状の低温部である残熱像を検出し、さらに前記温度特性のピークと残熱像の存在が対で検出された場合に前記ピークとなる位置における前記コーティング層を剥離部位と判定するとともに、前記温度分布を表す画像の中心部である高温部から放射方向に低温部が同心円状に広がる標準形状に対し、前記所定の範囲内の前記画像の形状のずれに基づき残熱像であることを判定するように構成したことを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置にある。
本態様によれば、加熱による温度のピークの出現と、そのピーク位置の近傍領域における残熱像の出現とをアンド条件として前記ピーク位置を剥離部位と判定することができるばかりでなく、この場合の加熱条件を最適化することができる。すなわち、所望の残熱像の明確化も図り得るので、コーティング層の剥離部位をさらに高精度に特定することができる。
本発明の第8の態様は、
第6または第7の態様に記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
前記最大残熱率特性は、前記試料の物性値に基づいた一次元非定常熱伝導解析により求めることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置にある。
本態様によれば、数値解析に必要な時間を短縮することができるばかりでなく、加熱時間が同じになるビーム径とビームの移動速度の組み合わせを一挙に考察することができる。
本発明の第9の態様は、
第6〜第8の態様のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
前記最大残熱率特性は、前記コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間とをパラメータとしてコンター図を作成するとともに、前記コンター図において最大残熱率を与える点を結んで作成することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置にある。
本態様によれば、コンター図を利用することで最大残熱率特性を容易かつ適切に求めることができるうえ、厚さが一様でないコーティング層において、各厚さの残熱率を基に加熱条件を求めることができる。
本発明の第10の態様は、
第6〜第9の態様のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
前記画像の中心部である高温部から前記尻尾状の低温部の前記走査方向と反対方向の端部までの距離が所定の閾値を越えている場合に残熱像であると判定することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置にある。
本態様によれば、より確実に残熱像を特定することができる。
本発明の第11の態様は、
第6〜第10の態様のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
前記コーティング層は、金属基材の表面にボンドコートを介してトップコートを形成した遮熱コーティングであることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置にある。
本態様によれば、コーティング層の剥離部位の検出を確実かつ高精度に実現し得る。
本発明によれば、コーティング層の剥離部位と健全部位におけるTBC厚さ方向の熱伝導特性の違いに基づき、加熱用の光線で試料の表面を加熱走査した結果得られた温度特性を利用して剥離を検出する場合の加熱条件の最適化を図ることができる。この結果、試料表面の汚れ等、当該検査に対するノイズ要素が存在しても、ノイズ要素に影響されることなく剥離部位を容易かつ高精度に検出することができる。
また、かかる一連の検出処理においては、加熱用光源を試料の表面に沿って走査するとともに、これに伴う表面の画像を撮像し、後は信号処理の結果を評価して剥離の有無を検出することができるので、検査時間も従来に較べ、極めて短時間のものとなる。
本発明の前提となる試料に対するレーザ光による加熱の態様を示す説明図である。 図1に示すような加熱を行った場合の態様を示す説明図で、同図(a)はレーザ光のビーム径が小さく移動速度が遅い場合、同図(b)はビーム径が大きく移動速度が速い場合である。 図2に示す場合において、任意の検出点温度の時間変化を示す特性図である。 図1に示すような加熱を行った場合の他の態様を示す説明図で、同図(a)および(b)の両方ともレーザ光のビーム径は同じで、同図(a)の場合が移動速度が遅く、(b)の場合が移動速度が速い場合である。 図4に示す場合において、任意の検出点温度の時間変化を両者を無次元化して示す特性図である。 横軸に無次元時間τを採り、縦軸に検出点DPの無次元温度ηを採った温度変化特性において定義される残熱率(τ/τ)の概念を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係る剥離の非破壊検査の対象となる金属基材に遮熱コーティングを施した試料を模式的に示す説明図である。 本発明の実施の形態に係る剥離の非破壊検査の態様を模式的に示す説明図である。 本発明の実施の形態により得られるトップコートの表面の温度特性を示す特性図である。 本発明の実施の形態により得られる熱画像の例を示す説明図で、(a)が標準形状、(b)が残熱像をそれぞれ示す。 加熱条件の最適化を図る際に利用する最大残熱率特性を与えるコンター図を示す説明図である。 本発明の実施の形態を応用した非破壊検査方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係る剥離の非破壊検査装置を示すブロック図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図7は本発明の実施の形態に係る剥離の非破壊検査の対象となる金属基材に遮熱コーティングを施した試料を模式的に示す説明図である。同図に示すように、試料Iは、例えばタービン動翼等の高温部品である金属基材1の表面に遮熱コーティング(Thermal Barrier Coatings(TBC))2を施したものである。TBC2では、金属基材1の表面にボンドコート2Aを介してトップコート2Bが形成してある。ボンドコート2Aは、例えば合金で形成されており、トップコート2Bは遮熱性能に優れる、例えばセラミックスで形成されている。セラミックスで形成されたトップコート2Bは多数の気孔3を含んでいる。ここで、気孔3も良好な遮熱効果を発揮している。
かかるTBC2の中の剥離はボンドコート2Aとトップコート2Bとの界面付近に発生する。本形態に係るコーティング層における剥離の非破壊検査方法は、TBC2を対象として、その剥離部位を検出するものであり、その態様を図8に模式的に示す。同図に示すように、本形態では、金属基材1の表面に形成したTBC2を施した試料Iの表面にビーム状のレーザ光Lを照射するとともに前記表面上を直線移動させることにより走査する。同時に、前記直線移動に伴う走査線上の各点における表面温度と、前記各点の周辺部分を含む試料Iの表面の温度分布を表す画像を撮像する。本形態においては赤外線カメラ4により、走査線上の各点を含むその周辺領域の熱画像を撮像している。したがって、走査線上の各点の温度情報とその周辺部分の熱画像とを同時に検出することができる。すなわち、レーザ光Lは図示しない駆動機構により所定の走査線上を移動して走査線上の各点を加熱するが、この加熱によるトップコート2Bの表面の熱画像が赤外線カメラ4により所定間隔で連写される。
ここで、図8(a)に示すように、TBC2に剥離部位が存在せず、健全である場合は、レーザ光Lの照射によりトップコート2Bの表面に発生する熱Hは、ボンドコート2Aを介して金属基材1に移動する。これに対し、図8(b)に示すように、TBC2に剥離部位5が存在する場合には、剥離部位5が断熱層となるので、レーザ光Lの照射によりトップコート2Bの表面に発生する熱Hは剥離部位5で遮断される。この結果、剥離部位5に対応するトップコート2Bの表面位置では、その温度が局部的に上昇し、その計測点から放射される赤外線Rが増大する。赤外線カメラ4は赤外線Rの量に感応するので、前記計測点の温度上昇が検出される。
図9は本形態により得られるトップコート2Bの表面の走査線上の温度を示す特性図である。同図はレーザ光Lを、試料Iの図中の左側から右側に向けて走査した場合の特性である。同図を参照すれば、試料Iの左端部および右端部を除き、位置P11、P21、P31、P41の4点で温度にピークP12、P22、P32、P42が検出されている。したがって、位置P11、P21、P31、P41はTBC2の剥離が疑われる部位であるとすることができる。しかしながら、温度のピークP12〜P42は、剥離が存在する場合以外にも、1)トップコート2Bの表面の汚損により放射率が周辺部と異なる場合、2)トップコート2Bの表面に付着物が存在する場合、3)温度のピークP12〜P42が現れた部分のみトップコート2Bの厚さが相対的に厚い場合にも出現する。
そこで、本形態ではピークP12〜P42が出現した場合には、それぞれに対応する各位置P11〜P41からレーザ光Lの走査方向に関し下流側の所定の範囲A1、A2、A3、A4の熱画像を分析し、各熱画像に走査方向の反対側に伸びる尻尾状の低温部である残熱像が存在しないかを調べている。これは各点の熱画像をコマ送りしながら検出する。この結果、残熱像が熱画像中に検出された場合に、これに対応するピーク位置が剥離部位であると判定する。
図10は本形態において得られる熱画像の例を示す説明図で、(a)が標準形状、(b)が残熱像をそれぞれ示す。本形態においてトップコート2Bの表面に照射しているレーザ光Lの横断面内における強度は正規分布となっている。したがって、レーザ光Lをトップコート2Bの表面に照射した後、表面の温度分布を検出すれば、剥離や汚れ等のノイズ要因が存在しない通常時には、図10(a)に示すように、熱画像は画像の中心部から放射方向に低温部が同心円状に広がる形状となる。かかる同心円状の形状を標準形状IIと呼ぶ。標準形状IIは、画像処理の方法にもよるが、例えば中心部の最高温度の温度領域6(レーザ光Lのビーム径Φに対応する)が白色、その外側の所定の温度の領域7が赤色、その外側の所定の温度の領域8が黄色、その外側の最も低温の温度の領域9が緑色として表示される。すなわち、標準形状IIでは、白色を中心とした赤色、黄色および緑色のリングが同心円状に配列される。
一方、トップコート2Bに剥離部位5が存在する場合には、図10(b)に示すように、熱画像は中心の高温領域である温度領域6,7の形状は変化しないが、低温領域である領域8,9、特に最低温部である領域9の形状が走査方向(図では左から右に向かう方向)の反対側に伸びる尻尾状の帯部9Aを有する形状となる。かかる形状を剥離部に固有の残熱像IIIと呼ぶ。かかる残熱像IIIは次のような原因により形成されると考えられる。すなわち、レーザ光Lを、ある程度の速度で移動させた場合(走査した場合)、トップコート2Bの内部には過渡的に熱が伝達される。この場合に、剥離部位5では内部に熱が伝わりにくいため、ある程度の時間、熱がトップコート2Bに残ることになる。このため、剥離部位5をレーザ光Lのビームが通過した直後に、剥離部位5に熱残像が現れ、これによりそれよりも若干下流側の熱画像に残熱像IIIが現れると考えられる。したがって、かかる残熱像IIIを検出することにより剥離部位5を特定することができる。
例えば、ピークP22に続く所定の範囲A2の熱画像に残熱像IIIが検知され、それ以外の範囲A1,A3,A4の熱画像には残熱像IIIが検知されない場合、それぞれに対応するピークP12,P32,P42は、剥離以外の原因であると判断する。例えば、1)トップコート2Bの表面の汚損、2)トップコート2Bの表面の付着物、3)トップコート2Bの厚さのばらつきの何れかが原因であると判断する。ちなみに、トップコート2Bの表面の汚損、トップコート2Bの表面の付着物、トップコート2Bの厚さのばらつきに起因して対応する熱画像は標準形状IIに較べて各温度領域6〜9の形状が歪むことはあるが、帯部9Aを伴う残熱像IIIは検出されなかった。したがって、残熱像IIIの検出をピークP22の位置P21と組み合わせることにより高精度の剥離部位5の特定が可能になる。
ここで、本形態では、残熱像IIIの明確化のための加熱条件の最適化処理を行っている。かかる最適化処理を具体的に説明する。まず、試料Iの熱物性値を計測するか、もしくは文献値で所定のパラメータを調べておく。その後、試料Iの熱物性値に基づき試料Iの一次元非定常熱伝導解析を行うとともに、残熱率のコンター図を作成する。ここで、残熱率とは、図6において定義した値である。すなわち、図6に示す温度変化特性において、無次元時間τと無次元時間τとの比として定義される。この残熱率(τ/τ)が大きいほど明確な残熱像IIIを得ることができると考えられる。
そこで、残熱率が最大となる最大残熱率特性を、トップコート2Bの厚さと、試料Iの加熱時間とをパラメータとして求める。ここで、加熱時間とは、所定のビーム径を有して移動するレーザ光Lのビームの先端が任意の試料Iの表面の任意の点の加熱を開始してから加熱を終了するまでの時間である。
本形態における最大残熱率特性は、図11に示すコンター図に基づき生成する。同図に示すように、本形態におけるコンター図とは、加熱時間を横軸に採り、トップコート2Bの厚さを縦軸に採って両者の交点の残熱率に基づき作成した等値線である。かかるコンター図において、任意のトップコート2Bの厚さに対し最大残熱率となっている点を結ぶことにより最大残熱率線が得られる。なお、最大残熱率線は、コンター図を作成して求める手法に限定する必要はない。任意のトップコート2Bの厚さに対し最大残熱率となっている点を結んだ特性を表すものであれば、それ以上の特別な制限はない。
最大残熱率特性を求めた後、トップコート2Bの厚さを非破壊計測する。これは、例えば渦電流の利用やテラヘルツ電磁波の照射による既存の判定方法を利用することにより好適に非破壊計測し得る。その後、図11のコンター図に基づき、計測したトップコート2Bの厚さに対応する最大残熱率を求め、求まった最大残熱率に対応する加熱時間を特定する。例えば、図11中ではトップコート2Bの厚さが400μmの場合、最適な加熱時間は0.4secとなる。ここでレーザ光Lのビーム径は既知であるので、ビーム径/加熱時間(0.4sec)によりビームの最適移動速度が求まる。例えばビーム径が4mmの場合、ビームの最適移動速度は10(mm/s)となる。そこで、最適移動速度でレーザ光Lを移動させつつトップコート2Bの表面を加熱することにより加熱条件を最適化することができる。この結果、最も明瞭な残熱像IIIが得られる。ちなみに、走査速度が遅すぎると残熱像IIIが形成されず、また早すぎるとピークP12〜P42が検出されず、残熱像IIIも得られない。
図12は上記実施の形態を応用した非破壊検査方法の他の実施の形態を示すフローチャートである。同図に示すように、本形態に係る非破壊検査方法は、第1の判定工程11、第2の判定工程12、第3の判定工程13の三種類の判定工程を組み合わせたものである。
第1の判定工程11では、TBC2のトップコート2Bの表面をランプ加熱により面状に一度に加熱している。これにより温度が上昇した部位が無ければ剥離なしと判定し、温度上昇の部位が検出され、剥離が疑われる部位が存在する場合は、第2の判定工程12を実行する。
第2の判定工程12では、第1の判定工程11で、剥離が疑われる部位が存在する場合に、上記実施の形態と同様に、トップコート2Bにおける剥離部位5の有無を判定する。
第3の判定工程13では、第2の判定工程12で、剥離部位5が存在すると判定された場合に、熱画像中のレーザ光Lのビーム形状の変化状態、試料Iの視覚的な表面状態およびトップコート2Bの厚さのばらつき状態とを組み合わせて剥離部位の剥離の可能性を補完的に判定する。ここで、渦電流の利用やテラヘルツ電磁波の照射による既存の判定方法を利用すれば良い。この結果、間違いなく剥離部位5が発生しているか否かを最終的に判定する。
かかる本形態によれば、判定時間が短くて済む第1の判定工程で剥離部位5の存在の可能性が否定された場合には、判定精度を向上させるべくレーザ光Lのビームの走査により第1の判定工程11よりも時間を掛けて判定処理を行う第2の判定工程12ないし第3の判定工程13を実行する必要がないので、その分判定処理の時間を短縮することができる。なお、第3の判定工程13は必ずしも必要ではない。第2の判定工程12で相当程度の判定精度は確保されるので、あくまで補完的に行えば良い。
図13は本発明の実施の形態に係る剥離の非破壊検査装置を示すブロック図である。当該非破壊検査装置は前記実施の形態を実現する装置である。同図に示すように、本形態に係る非破壊検査装置は、演算処理装置20、レーザ発振器21、赤外線カメラ4および位置検出センサ22を有している。演算処理装置20は、後に詳述するような構成を有しており、所定の情報の処理を行なうことにより試料I中の剥離部位5の特定を行う。レーザ発振器21は、試料Iのトップコート2Bの表面にビーム状のレーザ光Lを照射するとともに、自走の駆動手段を内蔵して試料Iのトップコート2Bの表面にレーザ光Lを直線的に走査させる。赤外線カメラ4は、トップコート2Bの所定の領域の温度分布を表す画像を撮像する。赤外線カメラ4では温度の検出機能も有するので、レーザ光Lの照射部位の温度も同時に検出し得る。位置検出センサ22は、走査方向に沿い直線的に移動するレーザ発振器21の基準位置に対する位置を検出する。レーザ発振器21によるレーザ光Lの照射や、走査速度の制御等、その全般的な制御は、演算処理装置20のレーザ制御部23で行う。
演算処理装置20は、レーザ制御部23の他に、温度特性検出部24、ピーク検出部25、画像情報記憶部26、画像情報抽出部27、比較部28、閾値設定部29および表示部30を有する。温度特性検出部24は、赤外線カメラ4および位置検出センサ22の出
力信号を処理して図9に示す温度特性の情報を検出する。ピーク検出部25は温度特性検出部24が出力する温度特性を表す信号を処理してピークP12〜P42に対応する位置
P11〜P41の情報とともに格納する。ピークP12〜P42の検出は、例えば温度特
性を表す信号を微分することにより好適に得ることができる。
画像情報記憶部26は、赤外線カメラ4および位置検出センサ22の出力信号を処理してトップコート2Bの各点における表面の熱画像情報を記憶するとともに、ピーク検出部25が検出したピーク位置を表す情報に基づき各位置P11〜P41を基準とする所定範囲A1〜A4の画像情報を画像情報抽出部27に移送して記憶させる。比較部28は画像情報抽出部27に抽出・記憶された各熱画像の情報と閾値設定部29に設定された所定の閾値とを比較して、各熱画像中に残熱像IIIが存在するか否かを比較・判定する。すなわち、標準形状IIに対する特定の熱画像の形状のズレの程度を検出し、ズレの程度が閾値を超える場合に残熱像IIIであると判定して、剥離部位5を特定する情報を表示部30に表示させる。
ここで、残熱像IIIであるか否かの判定は、さらに具体的には、例えば図10(a)に示す標準形状IIの画像の中心Oから温度領域9の端部までの距離を不変の標準距離lとする一方、図10(b)に示す熱画像の中心Oから温度領域9の帯部9Aの端部までの実測距離lとを比較部28で比較し、両者の差の絶対値が閾値設定部29に設定されている閾値lthを超える場合に残熱像であると判定する構成が考えられる。
本形態によれば、上記実施の形態に係る残熱像IIIを利用した剥離の非破壊検査方法と同様に集積した情報から、残熱像IIIであるか否かの判定を演算処理装置20、特に比較部28で自動的に行わせることができるので、前記剥離の非破壊検査方法と同様の高精度の剥離検出の処理時間を飛躍的に短縮することができる。
さらに、本形態に係る非破壊検査装置は、明確な残熱像IIIを得るための加熱条件の最適化機能も有している。かかる最適化機能は、演算処理装置20が備える最大残熱率特性生成部31、最大残熱率特性記憶部32および加熱時間制御部33で実現される。最大残熱率特性生成部31は、トップコート2Bの厚さと、レーザ光の照射による試料Iの加熱時間とをパラメータとして残熱率(τ/τ)の最大値を与える最大残熱率特性を生成する。さらに詳言すると、実測または文献を参照することにより得られる試料Iの熱物性値に基づき試料Iの一次元非定常熱伝導解析を行うとともに、残熱率のコンター図(図11参照)を作成することにより、トップコート2Bの厚さと、試料Iの加熱時間とをパラメータとして残熱率が最大となる最大残熱率特性を求める。ここで、加熱時間とは、所定のビーム径を有して移動するレーザ光Lのビームの先端が任意の試料Iの表面の任意の点の加熱を開始してから加熱を終了するまでの時間である。
本形態における最大残熱率特性は、コンター図に基づき生成するようにしたが、これに限るものではない。任意のトップコート2Bの厚さに対し最大残熱率となっている点を結んだ特性を表すものであれば特に制限はない。
最大残熱率特性生成部31が生成した最大残熱率特性を表すデータは、最大残熱率特性記憶部32に記憶される。最大残熱率特性記憶部32には、試料Iのトップコート2Bの厚さに関する情報が与えられる。トップコート2Bの厚さは、例えば渦電流の利用やテラヘルツ電磁波の照射による既存の判定方法を利用することにより好適に非破壊計測し得る。この計測結果の情報に基づき、最大残熱率特性記憶部32は、計測結果として与えられたトップコート2Bの厚さに対応する最大残熱率を記憶している最大残熱率特性から求め、求まった最大残熱率に対応する加熱時間を特定して、その時間情報を加熱時間制御部33に供給する。図11のコンター図に示す特性の場合、トップコート2Bの厚さが、例えば400μmの場合には、最適な加熱時間は0.4secとなるので、かかる加熱時間の情報を加熱時間制御部33に供給する。
加熱時間制御部33は、最大残熱率特性記憶部32より供給された加熱時間に基づきレーザ制御部23を制御して所定の加熱を行う。具体的には、この場合のレーザ光Lのビーム径は既知であるので、ビーム径/加熱時間によりビームの最適移動速度を求め、この最適移動速度でレーザ光Lが移動するようにレーザ発振器21の移動速度を制御する。例えばビーム径が4mmの場合、ビームの最適移動速度は10(mm/s)となるので、この場合の最適移動速度である10(mm/s)でレーザ発振器21が直線移動するように制御する。
なお、上記実施の形態に係る非破壊検査装置において、最大残熱率特性は、試料Iの一次元非定常熱伝導解析を行うことにより求めた残熱率に基づき求めたが、これに限るものではない。二次元または三次元非定常熱伝導解析に基づいても求めることができる。ただ、一次元非定常熱伝導解析では、コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間とをパラメータとするのに対し、二次元または三次元非定常熱伝導解析では、コーティング層の厚さと、前記加熱光の移動速度および形状とをパラメータとして求める。ここで、加熱光の形状とは、その横断面形状が円形である場合に限定されるものではなく、三角や四角であっても構わない。また、円形の場合には、その径が好適なパラメータとなる。
また、上記実施の形態に係る非破壊検査装置において、熱画像の中心Oから温度領域9の帯部9Aの端部までの実測距離lと、標準形状IIの画像の中心Oから温度領域9の端部までの距離である標準距離lとを比較することで、残熱像IIIであるか否かを判定しているが、これに限るものではない。標準形状と特定の熱画像との比較の結果、剥離画像IIIの帯部9Aに基づくパラメータが所定の閾値を超える場合に残熱像IIIであると判定するものであれば良い。
さらに、判定対象はTBCに限定するものではない。基材の表面に施されたコーティング層の剥離を検出するものであれば一般に適用し得る。同様に、加熱用光源をレーザ光に限定する必要もなく、また走査形状を直線に限定するものでもない。加熱の必要に応じた形状に走査すれば良い。
上記実施の形態では、赤外線カメラ4を用いたので、熱画像と温度情報を同時に得ることができたが、これに限るものでもない。個別の検出手段で、個別に熱画像と温度情報を得るように構成することもできる。
本発明は遮熱コーティングを施した部品を多く使用しているタービン等の高温機械の保守、製造等を行う産業分野において有効に利用することができる。
I 試料
II 標準形状
III 残熱像
L レーザ光
1 金属基材
2 TBC
2A ボンドコート
2B トップコート
4 赤外線カメラ
6〜9 温度領域
31 最大残熱率特性生成部
32 最大残熱率特性記憶部
33 加熱時間制御部
A1〜A4 範囲
P11〜P41 位置
P12〜P42 ピーク
τ、τ 無次元時間

Claims (11)

  1. 基材の表面に形成したコーティング層における剥離の非破壊検査方法であって、
    前記基材にコーティング層を形成した試料の表面にビーム状の加熱光を照射するとともに前記表面の線上を移動させることにより走査し、前記線上の各点における温度を表す温度特性を検出するとともに、前記各点の周辺部分を含む前記試料の表面の温度分布を表す画像を撮像する場合において、
    前記加熱光が、前記コーティング層に所定の剥離を生起している試料を通過する際の加熱開始から最高温度を経て、所定の判定温度に降下するまでの時間と、前記剥離を生起していない健全な試料を通過する際の同様の時間との比として定義される残熱率が最大となる最大残熱率特性を、前記コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間、または前記加熱光の移動速度および形状とをパラメータとして求めておき、
    前記試料の前記コーティング層の特定の膜厚に対応する前記最大残熱率特性を求めるとともに、前記最大残熱率特性に対応する前記加熱時間を前記特定の膜厚における前記試料の加熱時間とすることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法。
  2. 請求項1に記載するコーティング層における剥離の非破壊検査方法において、
    前記温度特性がピークとなる前記試料の表面位置を特定し、特定した前記表面位置から走査方向に関し下流側の所定の範囲内において前記加熱光による走査方向の反対側に伸びる尻尾状の低温部である残熱像が前記画像中に検出された場合に前記ピークとなる位置における前記コーティング層を剥離部位と判定することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載するコーティング層における剥離の非破壊検査方法において、
    前記最大残熱率特性は、前記試料の物性値に基づいた一次元非定常熱伝導解析により求めることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査方法において、
    前記最大残熱率特性は、前記コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間とをパラメータとしてコンター図を作成するとともに、前記コンター図において最大残熱率を与える点を結んで作成することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査方法において、
    前記コーティング層は、金属基材の表面にボンドコートを介してトップコートを形成した遮熱コーティングであることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査方法。
  6. 基材の表面に形成したコーティング層における剥離の非破壊検査装置であって、
    前記基材にコーティング層を形成した試料の表面にビーム状の加熱光を照射するとともに前記表面の線上を移動して走査可能に形成された加熱用光源と、
    前記加熱用光源の位置を検出する位置検出手段と、
    前記加熱光が照射された前記試料の表面の温度を検出する温度検出手段と、
    前記加熱光が照射された前記試料の表面の温度分布を表す画像を撮像する撮像手段と、
    前記加熱光が、前記コーティング層に所定の剥離を生起している試料を通過する際の加熱開始から最高温度を経て、所定の判定温度に降下するまでの時間と、前記剥離を生起していない健全な試料を通過する際の同様の時間との比として定義される残熱率が最大となる最大残熱率特性を、前記コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間または前記加熱光の移動速度および形状とをパラメータとして生成する最大残熱率特性生成部、前記最大残熱率特性を記憶する最大残熱率特性記憶部、および任意に特定した前記コーティング層の膜厚に対応する前記最大残熱率特性における前記加熱時間で前記試料が加熱されるよう加熱時間を制御する加熱時間制御部を備えた演算処理手段とを有することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置。
  7. 請求項6に記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
    前記演算処理手段は、前記位置検出手段が検出する位置情報と、前記温度検出手段が検出する温度情報とにより検出した前記線上の各点における前記温度を表す温度特性に基づき温度特性がピークとなる前記試料の表面位置を特定するとともに、特定した前記表面位置から前記加熱用光源の走査方向に関し下流側の所定の範囲内における前記画像中から、前記加熱光の走査方向の反対側に伸びる尻尾状の低温部である残熱像を検出し、さらに前記温度特性のピークと残熱像の存在が対で検出された場合に前記ピークとなる位置における前記コーティング層を剥離部位と判定するとともに、前記温度分布を表す画像の中心部である高温部から放射方向に低温部が同心円状に広がる標準形状に対し、前記所定の範囲内の前記画像の形状のずれに基づき残熱像であることを判定するように構成したことを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置。
  8. 請求項6または請求項7に記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
    前記最大残熱率特性は、前記試料の物性値に基づいた一次元非定常熱伝導解析により求めることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置。
  9. 請求項6〜請求項8のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
    前記最大残熱率特性は、前記コーティング層の厚さと、前記加熱光の照射による前記試料の加熱時間とをパラメータとしてコンター図を作成するとともに、前記コンター図において最大残熱率を与える点を結んで作成することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置。
  10. 請求項6〜請求項9のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
    前記画像の中心部である高温部から前記尻尾状の低温部の前記走査方向と反対方向の端部までの距離が所定の閾値を越えている場合に残熱像であると判定することを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置。
  11. 請求項6〜請求項10のいずれか一つに記載するコーティング層における剥離の非破壊検査装置において、
    前記コーティング層は、金属基材の表面にボンドコートを介してトップコートを形成した遮熱コーティングであることを特徴とするコーティング層における剥離の非破壊検査装置。
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