JP6312145B2 - ポリフェノール化合物含有植物体の生産方法、ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法、及びトリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法 - Google Patents

ポリフェノール化合物含有植物体の生産方法、ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法、及びトリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法 Download PDF

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本発明は、ポリフェノール化合物含有植物体の生産方法、ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法、トリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法、及びトリカフェオイルキナ酸含有植物体に関する。
ポリフェノール化合物は、茶樹、コーヒーノキ、サツマイモ、春菊、ゴボウ、大豆、ブドウ等の植物の葉、茎、花、実、種等に含まれている。ポリフェノール化合物は、分子内に複数のフェノール性水酸基を有する物質の総称である。ポリフェノール化合物は、抗酸化作用を有していることから、多くの健康食品、化粧品等に用いられている。
植物体中のポリフェノール化合物の含有量を高める試みは、従来からなされており、種々報告されている。
例えば、特許文献1には、栽培中のサニーレタスに対して、夜間に波長400nm〜500nmの青色光を照射することで、ポリフェノール化合物の一種であるアントシアニンの含有量を高めることができるとの記載がある。
特許文献2には、人工照明下で水耕栽培して生育させた野菜の養液を収穫直前に水に置き換え、かつ、1日に17時間以上の光を照射する水耕栽培を1日以上継続することで、野菜中のポリフェノール化合物の含有量を高めることができるとの記載がある。
特許文献3には、植物体地上部成長点及び根部を完全に除去した植物体を挿し木することで、ポリフェノール含有量の高い収穫物を得ることができるとの記載がある。
近年では、ポリフェノール化合物の一種であるカフェオイルキナ酸化合物が、認知症の予防、抗肥満、抗高血糖、抗高血圧、抗腫瘍、抗菌等の種々の生理活性を有することが報告され、俄かに注目されている。特にトリカフェオイルキナ酸は、カフェオイルキナ酸化合物の中でも高い生理活性を有しており、様々な疾患に対する有効性が小動物を用いた試験により実証されている(例えば、非特許文献1参照)ことから、その利用価値は高いといえる。
したがって、ポリフェノール化合物の植物体中での含有量を高めることができれば、ポリフェノール化合物が有する生理活性の更なる有効利用を図ることが可能となる。
特開2003−204718号公報 国際公開2010/140632号 特開2007−14295号公報
吉元 誠、「サツマイモの機能性成分,特にポリフェノールについて」、食品と技術、2008年8月号、pp10−18
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、サニーレタス中のアントシアニンの含有量を増加させることはできるものの、その増加は僅少である。特許文献2に記載された方法は、野菜の栽培方法が水耕栽培に限られるため、野菜の生産性を高めることが困難である。特許文献3に記載された方法では、植物体地上部成長点を完全に除去する必要があるため、作業が非常に煩雑となる。即ち、特許文献1〜3に記載されたいずれの方法も、植物体中のポリフェノール化合物を効率良く増加させる観点からは、十分な方法とはいえない。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本来含有する量よりもポリフェノール化合物量が増加した植物体を効率良く生産することができるポリフェノール化合物含有植物体の生産方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法、及びトリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、本来含有する量よりもトリカフェオイルキナ酸量が増加したトリカフェオイルキナ酸含有植物体を提供することを課題とする。
本発明は、以下の通りである。
[1] サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したポリフェノール化合物含有植物体の根部を除去する根部除去工程と、上記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む、上記根部除去工程に供する植物体よりもポリフェノール化合物量が増加したポリフェノール化合物含有植物体の生産方法。
[2] 上記根部除去工程において根部を除去するポリフェノール化合物含有植物体が、カフェオイルキナ酸化合物含有植物体であり、上記根部除去工程に供するカフェオイルキナ酸化合物含有植物体よりもカフェオイルキナ酸化合物量を増加させる[1]に記載の生産方法。
[3] 上記根部除去工程において根部を除去するポリフェノール化合物含有植物体が、トリカフェオイルキナ酸含有植物体であり、上記根部除去工程に供するトリカフェオイルキナ酸含有植物体よりもトリカフェオイルキナ酸量を増加させる[1]に記載の生産方法。
[4] 上記保存工程における保存期間は、2日間〜35日間である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の生産方法。
[5] 上記保存工程における保存期間は、3日間〜7日間である[1]〜[4]のいずれか1つに記載の生産方法。
[6] 上記保存工程は、上記根部を除去した植物体に光照射することを含む[1]〜[5]のいずれか1つに記載の生産方法。
[7] 上記光照射における光の照度は、1,000lux以上である[6]に記載の生産方法。
[8] 上記保存工程における保存温度は、20℃〜35℃である[1]〜[7]のいずれか1つに記載の生産方法。
[9] 上記保存工程は、上記根部を除去した植物体の少なくとも一部を、水又は水を含ませた用土の少なくとも一方に配置して保存することを含む[1]〜[8]のいずれか1つに記載の生産方法。
[10] 上記保存工程は、上記根部を除去した植物体の少なくとも一部を、水に配置して保存した後、用土に配置して保存することを含む[1]〜[9]のいずれか1つに記載の生産方法。
[11] 上記植物体が、ヒルガオ科植物である[1]〜[10]のいずれか1つに記載の生産方法。
[12] 上記ヒルガオ科植物が、サツマイモである[11]に記載の生産方法。
[13] サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したポリフェノール化合物含有植物体の根部を除去する根部除去工程と、上記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む、ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法。
14] サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したトリカフェオイルキナ酸含有植物体の根部を除去する根部除去工程と、上記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む、トリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法。
本発明によれば、本来含有する量よりもポリフェノール化合物量が増加した植物体を効率良く生産することができるポリフェノール化合物含有植物体の生産方法を提供することができる。
また、本発明によれば、ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法、及びトリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、本来含有する量よりもトリカフェオイルキナ酸量が増加したトリカフェオイルキナ酸含有植物体を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「根部」とは、水分及び栄養分の吸収を行う植物体の部分を意味する。「根部」は、植物体を土耕栽培する場合には、少なくともその一部が土壌中にあり、水耕栽培する場合には、少なくともその一部が水(又は水耕液)中にある。
本明細書において「地上部」とは、上記「根部」以外の植物体の部分を意味する。「地上部」は、茎又は幹、光合成及び水の蒸散を行う葉等を備える。
[ポリフェノール化合物含有植物体の生産方法]
本発明のポリフェノール化合物含有植物体の生産方法(以下、「植物体の生産方法」とも称する。)は、サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したポリフェノール化合物含有植物体(以下、単に「植物体」とも称する。)の根部を除去する根部除去工程と、上記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む、上記根部除去工程に供する植物体よりもポリフェノール化合物量が増加したポリフェノール化合物含有植物体の生産方法である。
本発明の植物体の生産方法は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、根部除去工程及び保存工程以外の他の工程を含んでもよい。
本発明の植物体の生産方法では、生長したポリフェノール化合物含有植物体の根部を除去した後、この根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存するという簡便な方法により、本来含有する量よりもポリフェノール化合物量が増加した植物体を効率良く生産することができる。
本発明の植物体の生産方法では、根部除去工程に供する植物体よりもポリフェノール化合物量が、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、更に好ましくは1.4倍以上増加した植物体を生産することができる。
また、本発明の植物体の生産方法では、根部除去工程に供する植物体よりもカフェオイルキナ酸化合物量が、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2.0倍以上増加した植物体を生産することができる。
さらに、本発明の植物体の生産方法では、根部除去工程に供する植物体よりもトリカフェオイルキナ酸量が、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは2.0倍以上、更に好ましくは3.0倍以上増加した植物体を生産することができる。
本発明の植物体の生産方法に適用し得るポリフェノール化合物含有植物体としては、サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物及びキク科植物からなる群より選ばれる植物体が含まれる。
イモ類(但し、サツマイモを除く)の例としては、ジャガイモ、キャッサバ、タロイモ、サトイモ、ヤムイモ等が挙げられる。
ヒルガオ科植物の例としては、サツマイモ、ヒルガオ、アサガオ、ヨルガオ、ヨウサイ、ルコウソウ、ネナシカズラ、エボルブルス、エンサイ等が挙げられる。
キク科植物の例としては、キクイモ、ノコギリソウ、ゴボウ、ヨモギ、アスター、バッカリス、ヒナギク、キンセンカ、エゾギク、ベニバナ、ヤグルマギク、ネモフィラ、シュンギク、マーガレット、イソギク、チコリ、ムルチコーレ、チョウセンアザミ、アレチノギク、キバナコスモス、タンポポ、ダリア、ムラサキバレンギク、ヒメジョオン、フジバカマ、ツワブキ、ガーベラ、ハハコグサ、ミヤコワスレ、ヒマワリ、ヨメナ、レタス、センボンヤリ、カミツレ、シネラリア、フキ、ヤーコン、アキノキリンソウ、ノゲシ、ウルシニア、ヒャクニチソウ、アーティチョーク等が挙げられる。
上記の植物体は、いずれもカフェオイルキナ酸化合物(トリカフェオイルキナ酸を含む)を含み、本発明の植物体の生産方法に適用し得る。
本発明の植物体の生産方法に適用し得るポリフェノール化合物含有植物体は、上記の中でも、ヒルガオ科植物及びキク科植物からなる群より選ばれる植物体であることが好ましく、ヒルガオ科植物であることがより好ましく、サツマイモであることが更に好ましい。
本発明の植物体の生産方法に好ましく適用し得るサツマイモの例としては、ベニアズマ、ベニハルカ、ベニコマチ、紅赤、鳴門金時、シロユタカ、シロサツマ、コガネセンガン、ムラサキマサリ、アヤムラサキ、スイオウ、シモンイモ、タマアカネ等の他、高系14号に由来の多くの品種を挙げることができる。また、未だ品種登録されていない種々の系統のサツマイモも、本発明の植物体の生産方法に適用し得る。
本発明の植物体の生産方法によって、増量し得る植物体中のポリフェノール化合物としては、カフェオイルキナ酸化合物、カフェオイルグルコース化合物、フェルロイルキナ酸化合物、シナリン、ロズマリン酸、カテキン化合物、イソフラボン化合物、ケルセチン、ルテオリン、アントシアニン化合物、プロアントシアニジン化合物、ルチン化合物、フラバンジェノール化合物、レスベラトロール化合物、タンニン酸化合物、エラグ酸、クルクミン、リグナン化合物、これらの配糖体等を挙げることができる。
本発明の植物体の生産方法において、通常の植物体の生産方法と比べて、より増量し得るポリフェノール化合物としては、カフェオイルキナ酸化合物が挙げられる。
カフェオイルキナ酸化合物の例としては、モノカフェオイルキナ酸(3−O−カフェオイルキナ酸、4−O−カフェオイルキナ酸、5−O−カフェオイルキナ酸、及び1−O−カフェオイルキナ酸)、ジカフェオイルキナ酸(3,4−O−ジカフェオイルキナ酸、3,5−O−ジカフェオイルキナ酸、4,5−O−ジカフェオイルキナ酸、1,3−O−ジカフェオイルキナ酸、1,4−O−ジカフェオイルキナ酸、及び1,5−O−ジカフェオイルキナ酸)、トリカフェオイルキナ酸(3,4,5−O−トリカフェオイルキナ酸、1,4,5−O−トリカフェオイルキナ酸、1,3,5−O−トリカフェオイルキナ酸、及び1,3,4−O−トリカフェオイルキナ酸)、及びテトラカフェオイルキナ酸(1,3,4,5−O−テトラカフェオイルキナ酸)が挙げられる。
ポリフェノール化合物の一種であるカフェオイルキナ酸化合物は、認知症の予防、抗肥満、抗高血糖、抗高血圧、抗腫瘍、抗菌等の種々の生理活性を有することが報告されている。本発明の植物体の生産方法では、ポリフェノール化合物含有植物体として、カフェオイルキナ酸化合物を含有する植物体を用いた場合に、上記のような種々の生理活性を有するカフェオイルキナ酸化合物の植物体中での含有量を顕著に増加させることができる。
また、本発明の植物体の生産方法では、ポリフェノール化合物含有植物体として、トリカフェオイルキナ酸を含有する植物体を用いた場合に、植物体中のトリカフェオイルキナ酸の含有量をより顕著に増加させることができる。
トリカフェオイルキナ酸は、カフェオイルキナ酸化合物の一種であり、カフェオイルキナ酸化合物の中でも、特に高い生理活性を有することが知られている。しかしながら、トリカフェオイルキナ酸を豊富に含有する植物は、これまで全く見出されていない。トリカフェオイルキナ酸は、それ自体が極めて希少な物質である。本発明の植物体の生産方法は、現存するトリカフェオイルキナ酸含有植物体に比して、トリカフェオイルキナ酸を高濃度で含有する植物体を生産することができるという顕著な効果も奏し得る。
以下、本発明の植物体の生産方法について、工程ごとに詳細に説明する。
<根部除去工程>
根部除去工程は、生長したポリフェノール化合物含有植物体の根部を除去する工程である。ここでいう「生長した」とは、植物の種類、品種等ごとに行われている通常の育成方法で植物体を育成し、植物体が十分に大きくなった状態、具体的には、以下の状態を意味する。例えば、サツマイモの場合には、サツマイモの地上部が4葉(4節)以上展開した状態、又は地上部が20cm以上に伸長した状態を意味する。よもぎ及び春菊の場合には、地上部が10cm以上に生育した状態を意味する。アーティチョーク及びレタスの場合には、本葉が4枚〜5枚以上出た状態を意味する。ゴボウの場合には、本葉が3枚〜4枚以上出た状態を意味する。サトイモの場合には、本葉が3枚以上出た状態を意味する。ジャガイモの場合には、地上部が10cm以上に生育した状態を意味する。ヤーコンの場合には、地上部が10cm以上に生育した状態を意味する。エンサイの場合には、地上部が10cm以上に生育した状態を意味する。
根部除去工程に供する植物体の育成方法は、特に限定されるものではなく、植物の種類等に応じて、公知の育成方法を選択することができる。根部除去工程に供する植物体は、水耕栽培により育成してもよく、土耕栽培により育成してもよい。根部除去工程に供する植物体は、例えば、以下の文献に記載されているような育成方法により育成することができる。
ジャガイモ:「農家が教えるジャガイモ・サツマイモつくり」、別冊 現代農業、農文協、2013年10月号、pp92−96;サツマイモ:同誌、pp152−175;アーティチョーク:野菜の上手な育て方大辞典(2014)、監修 北条雅章、成美堂出版、pp8−9;シュンギク:同誌、pp34−35;レタス:同誌、pp80−81;ゴボウ:同誌、pp168−169;サトイモ:同誌、pp170−171;ヤーコン:同誌、pp186−187;エンサイ:同誌、pp212−213
根部を除去した後に、植物体中のポリフェノール化合物の含有量をより顕著に増加させる観点から、根部除去工程に供する植物体は、水及び肥料の存在下、十分な光照射の下で育成することが好ましい。
根部除去工程において、植物体の根部を除去する方法は、植物体の根の部分と茎の部分とを分離して、植物体から根の部分を取り除くことができれば、特に限定されるものではない。
植物体の根部を除去する手段としては、例えば、刃物等で切断する、手で折り取る等の手段が挙げられる。植物体の根部を除去する方法としては、一般的には、根部を含まないように茎を切断する方法が挙げられる。切断箇所は、植物体の種類により異なるため、一概に規定することはできない。植物体の収穫を複数回行い得るという観点から、根部除去工程では、主枝から脇芽を十分に伸長させた後、伸長させた部分を主枝の近くから切断することが好ましい。
茎を切断する場合の好ましい態様としては、例えば、鋭利な剪定ばさみ、剪定ナイフ、鎌、バリカン、チェーンソー等の刃物を用いて、茎に対して直交又は茎に対して傾斜角度を持って切断する態様が挙げられる。傾斜角度を持って茎を切断する場合、その傾斜角度は、特に規定されるものではない。
本発明の植物体の生産方法では、根部除去工程を経た後の植物体に、新たに根が生えてくることは、本発明の効果を得るための妨げになるものではない。
<保存工程>
保存工程は、根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する工程である。ここでいう「水の存在下」とは、根部を除去した植物体がおかれた環境に水分があることを意味し、根部を除去した植物体が枯れない程度に水を吸収できれば、水蒸気を含む空間も含まれる。水蒸気を含む空間に根部を除去した植物体を保存する場合、その空間の水蒸気量は、植物が枯れずに保たれる水蒸気量であれば、特に限定されるものではない。植物が枯れずに保たれる水蒸気量は、植物体により変動するため、一概に規定することはできない。一般的には、根部を除去した植物体を保存する空間の水蒸気量の下限値は、30℃において相対湿度が50%である。
保存工程における「保存」とは、根部を除去した植物体が枯れない程度に鮮度を保持させることを意味し、特に育成する必要はない。保存工程では、根部を除去した植物体を、水蒸気を含む空間に放置してもよい。
保存工程は、根部を除去した植物体の鮮度を十分に保持させ、植物体中のポリフェノール化合物の含有量を顕著に増加させる観点から、好ましくは、根部を除去した植物体の少なくとも一部を、水又は用土の少なくとも一方に配置して保存することを含み、より好ましくは、根部を除去した植物体の少なくとも一部を、水に配置して保存した後、用土に配置して保存することを含む。
保存工程における保存方法の具体例としては、植物体の根部を除去した側の端部を、水に浸す保存方法、植物体の根部を除去した側の端部を、水を含ませた用土に挿す保存方法、植物体の根部を除去した側の端部を、水を含ませたスポンジ、脱脂綿等で覆う保存方法、密閉した空間に、水又は水を含ませたスポンジ、脱脂綿等と根部を除去した植物体とを置く保存方法などが挙げられる。
保存工程において、根部を除去した植物体の少なくとも一部を水に配置する場合、水に対して、水耕栽培等に使用される市販の液肥(例えば、ハイポネックス(登録商標)等)を加えてもよい。ここでいう「水」は、水道水又は水道水に含まれる程度の量のミネラルを含む水であり、肥料分を含まない水を意味する。
保存工程において、根部を除去した植物体の少なくとも一部を用土に配置する場合、用土に対して、土耕栽培等に使用される肥料を加えてもよい。ここでいう「用土」は、黒土、赤玉土、鹿沼土、軽石、バーミキュライト、ピートモス等の肥料分を含まない無肥用土を意味する。なお、肥料には、市販品を用いてもよい。
植物体中のポリフェノール化合物の含有量を顕著に増加させる観点からは、保存工程において、根部を除去した植物体に、新たに根が生えてきた後は、無施肥条件又は実質的に肥料を含まない低施肥条件で保存することが好ましい。ここでいう「実質的に肥料を含まない低施肥条件」とは、植物体の鮮度を保持するために必要な程度の肥料を含み、育成を目的とした量の肥料を含まない施肥条件を意味する。低施肥条件における施肥量は、通常の育成に使用される肥料の量の1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましく、1/50以下であることが更に好ましい。
保存工程における保存期間は、24時間以上である。保存期間の上限は、特に限定されるものではない。保存期間が24時間未満であると、植物体中に含有されるポリフェノール化合物を十分に増加させることができない。保存工程における保存期間は、好ましくは2日間〜35日間である。
保存工程において、水に配置する(又は、水蒸気を含む空間に配置する)保存期間は、生産性及び経済性の観点から、1日間(24時間)〜14日間であることが好ましく、2日間〜14日間であることがより好ましく、3日間〜7日間であることが更に好ましい。
保存工程では、ポリフェノール化合物の含有量が顕著に増加した植物体を効率良く生産する観点から、根部を除去した植物体の少なくとも一部を水に2日間〜14日間配置することが好ましく、根部を除去した植物体の少なくとも一部を3日間〜7日間水に配置した後、好ましくは1日間〜60日間、より好ましくは3日間〜40日間、更に好ましくは7日間〜30日間、特に好ましくは14日間〜21日間、用土に配置する。
保存工程は、植物体中のポリフェノール化合物の含有量を顕著に増加させる観点から、根部を除去した植物体に光照射することを含むことが好ましい。
根部を除去した植物体に照射する光源は、特に限定されるものではなく、太陽光であってもよいし、蛍光灯、キセノンランプ、水銀ランプ、ハロゲンランプ、LED(light-emitting diode)等の人工光源であってもよい。光源として、LEDを選択する場合には、植物体中のポリフェノール化合物の含有量を増加させる観点から、波長が400nm〜500nmの青色LEDが好ましく用いられる。
1日当たりの光照射時間は、5時間〜24時間であることが好ましく、8時間〜16時間であることがより好ましく、10時間〜14時間であることが更に好ましい。
光照射における光の照度は、特に限定されるものではない。植物体中のポリフェノール化合物の含有量を顕著に増加させる観点から、光照射における光の照度は、1,000lux以上であることが好ましく、10,000lux以上であることがより好ましい。
光の照度の上限値は、高すぎることで植物体に対して悪影響を及ぼさなければ、特に限定されるものでなく、所望により設定すればよい。一般的には、光の照度は、200,000lux以下であることが望ましい。
保存工程における保存温度は、植物体中のポリフェノール化合物の含有量を増加させる観点から、20℃〜40℃である。植物体中のポリフェノール化合物の含有量を顕著に増加させる観点からは、保存工程における保存温度は、20℃〜35℃であることが好ましい。
<他の工程>
本発明の植物体の生産方法は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、根部除去工程及び保存工程以外の他の工程を含んでもよい。
[トリカフェオイルキナ酸含有植物体]
本発明のトリカフェオイルキナ酸含有植物体は、上述した本発明の植物体の生産方法により生産され、トリカフェオイルキナ酸の含有量が、トリカフェオイルキナ酸含有植物体の葉身の乾燥質量100g当たり、好ましくは80mg以上であり、より好ましくは200mg以上であり、更に好ましくは300mg以上であり、特に好ましくは500mg以上である。
トリカフェオイルキナ酸を豊富に含有する植物は、これまで全く見出されていない。
本発明の植物体の生産方法では、ポリフェノール化合物含有植物体として、トリカフェオイルキナ酸を含有する植物体を用いることで、現存するトリカフェオイルキナ酸含有植物体に比して、トリカフェオイルキナ酸を高濃度で含有する植物体を実現することができる。
本発明の植物体の生産方法では、植物体中に含まれるカフェオイルキナ酸化合物の中でも、特に高い生理活性を有し、かつ、極めて希少な物質であるトリカフェオイルキナ酸の含有量が顕著に増加した植物体を実現することができる。
本発明の植物体の生産方法における根部除去工程及び保存工程を経たトリカフェオイルキナ酸含有植物体は、カフェオイルキナ酸化合物の総量に対するトリカフェオイルキナ酸の含有量が、根部除去工程に供するトリカフェオイルキナ酸含有植物体と比較して、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは2.0倍以上、更に好ましくは3.0倍以上、特に好ましくは3.5倍以上となる。
ここでいうカフェオイルキナ酸化合物の例は、本発明の植物体の生産方法の項において説明したカフェオイルキナ酸化合物の例と同義であるため、ここでは説明を省略する。
植物体中のトリカフェオイルキナ酸の含有量は、下記の抽出方法及び定量方法により、確認することができる。なお、トリカフェオイルキナ酸以外のポリフェノール化合物についても、下記の抽出方法と同様の方法により抽出することができ、また、測定対象となるポリフェノール化合物の標準品を用いて検量線を作成することで、下記の定量方法と同様の方法により定量することができる。
<トリカフェオイルキナ酸の抽出方法>
本発明におけるトリカフェオイルキナ酸は、下記の2つの方法のうちのいずれかの方法を用いて抽出する。
1.植物体を凍結乾燥後、ミルを用いて、粉末状に粉砕する。植物体の凍結乾燥粉末50mgと80v/v%エタノール水溶液5mLとを15mL容量のファルコンチューブに入れて、5分間煮沸する。煮沸後、40℃以下に冷却した植物体を含むエタノール水溶液を、3000rpm(round per minute;以下同じ。)で15分間遠心分離し、得られた上澄みを回収する。回収した上澄みを、孔径が0.45μmのシリンジフィルターで濾過し、得られた濾液を、下記の定量分析に用いる。
2.窒素雰囲気下、1cm〜2cmに切断した生の植物体5gと90v/v%エタノール水溶液50mLとを100mL容量のナスフラスコに入れて、80℃で1時間加熱する。加熱後、植物体を含むエタノール水溶液を、脱脂綿を用いて濾過し、濾液(第1の濾液)を回収する。濾過により得られた残渣を、90v/v%エタノール水溶液25mLで洗浄し、濾液(第2の濾液)を回収する。第1の濾液及び第2の濾液を100mL容量のメスシリンダーに入れ、100mLにメスアップした後、孔径が0.45μmのシリンジフィルターで濾過し、得られた濾液を、下記の定量分析に用いる。
<トリカフェオイルキナ酸の定量方法>
本発明におけるトリカフェオイルキナ酸は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析し、絶対検量線法により定量する。HPLC分析条件を以下に示す。
〜HPLC分析条件〜
測定装置:Prominence(送液ポンプ:LC−20AT,デガッサー:DGU−20A3,UV検出器:SPD−20A,カラムオーブン:CTO−20AC、(株)島津製作所製)
カラム:TSKgel ODS−100V 5μm(内径4.6mm×長さ150mm、東ソー(株)製)
移動相:A液)0.2v/v%ギ酸−水、B液)0.2v/v%ギ酸−アセトニトリル
グラジエントサイクル:A液+B液=100%とし、B液の組成を示す。
B液= 2%→ 19%(0分→16分)
B液= 19%→ 52%(16分→32分)
B液= 52%→100%(32分→37分)
B液=100%→ 2%(37分→47分)
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
注入量:10μL
検出波長:330nm
本発明におけるポリフェノール化合物の総量は、例えば、Islamら、J. Agric. Food Chem. 2002, 50, 3718-3722に記載されたFolin-Ciocalteu法により測定することができる。Folin-Ciocalteu法では、フォーリン試薬がフェノール性水酸基により還元されて呈色することを利用する測定方法である。具体的には、測定試料と、フォーリン試薬と、10質量%炭酸ナトリウム水溶液とを混合し、600nmにおける吸光度を測定することにより、測定試料中に含まれるポリフェノール化合物の総量を測定する。なお、標準物質には、クロロゲン酸(5−O−カフェオイルキナ酸)を用いることができ、クロロゲン酸換算濃度として算出すればよい。
[ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法]
本発明のポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法(以下、「ポリフェノール化合物の増加方法」とも称する。)は、サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したポリフェノール化合物含有植物体(以下、「ポリフェノール化合物含有植物体」とも称する。)の根部を除去する根部除去工程と、上記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む方法である。
本発明のポリフェノール化合物の増加方法では、生長したポリフェノール化合物含有植物体の根部を除去した後、この根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存するという簡便な方法により、ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を、本来含有する量よりも増加させることができる。
本発明のポリフェノール化合物の増加方法では、根部除去工程に供する植物体よりもポリフェノール化合物量を、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、更に好ましくは1.4倍以上、特に好ましくは1.5倍以上増加させることができる。
本発明のポリフェノール化合物の増加方法に適用し得るポリフェノール化合物含有植物体は、本発明の植物体の生産方法の項において説明したポリフェノール化合物含有植物体と同義であり、好ましい例も同様であるため、ここでは説明を省略する。
また、本発明のポリフェノール化合物の増加方法における根部除去工程及び保存工程についても、本発明の植物体の生産方法の項において説明した根部除去工程及び保存工程と同義であり、好ましい例も同様であるため、ここでは説明を省略する。
本発明のポリフェノール化合物の増加方法は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、根部除去工程及び保存工程以外の他の工程を含んでもよい。
[カフェオイルキナ酸化合物含有植物体中のカフェオイルキナ酸化合物量を増加させる方法]
本発明のカフェオイルキナ酸化合物含有植物体中のカフェオイルキナ酸化合物量を増加させる方法(以下、「カフェオイルキナ酸化合物の増加方法」とも称する。)は、サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したカフェオイルキナ酸化合物含有植物体(以下、「カフェオイルキナ酸化合物含有植物体」とも称する。)の根部を除去する根部除去工程と、上記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む方法である。
カフェオイルキナ酸化合物は、ポリフェノール化合物の中でも、高い生理活性を有する物質である。
本発明のカフェオイルキナ酸化合物の増加方法では、生長したカフェオイルキナ酸化合物含有植物体の根部を除去した後、この根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存するという簡便な方法により、カフェオイルキナ酸化合物含有植物体中のカフェオイルキナ酸化合物量を、本来含有する量よりも増加させることができる。
本発明のカフェオイルキナ酸化合物の増加方法では、根部除去工程に供する植物体よりもカフェオイルキナ酸化合物量を、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2.0倍以上、特に好ましくは2.4倍以上増加させることができる。
本発明のカフェオイルキナ酸化合物の増加方法に適用し得るカフェオイルキナ酸化合物含有植物体は、本発明の植物体の生産方法の項において説明したカフェオイルキナ酸化合物含有植物体と同義であり、好ましい例も同様であるため、ここでは説明を省略する。
また、本発明のカフェオイルキナ酸化合物の増加方法における根部除去工程及び保存工程についても、本発明の植物体の生産方法の項において説明した根部除去工程及び保存工程と同義であり、好ましい例も同様であるため、ここでは説明を省略する。
本発明のカフェオイルキナ酸化合物の増加方法は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、根部除去工程及び保存工程以外の他の工程を含んでもよい。
[トリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法]
本発明のトリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法(以下、「トリカフェオイルキナ酸の増加方法」とも称する。)は、サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したトリカフェオイルキナ酸含有植物体(以下、単に「植物体」とも称する。)の根部を除去する根部除去工程と、上記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む方法である。
トリカフェオイルキナ酸は、ポリフェノール化合物の中でも、特に高い生理活性を有し、かつ、極めて希少な物質である。しかしながら、現存するトリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量は微量であり、トリカフェオイルキナ酸を豊富に含有する植物体は、見出されていない。
本発明のトリカフェオイルキナ酸の増加方法では、生長したトリカフェオイルキナ酸含有植物体の根部を除去した後、この根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存するという簡便な方法により、トリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を、本来含有する量よりも増加させることができる。
本発明のトリカフェオイルキナ酸の増加方法では、根部除去工程に供する植物体よりもトリカフェオイルキナ酸量を、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは2.0倍以上、更に好ましくは3.0倍以上、特に好ましくは3.5倍以上増加させることができる。
本発明のトリカフェオイルキナ酸の増加方法に適用し得るトリカフェオイルキナ酸含有植物体は、本発明の植物体の生産方法の項において説明したトリカフェオイルキナ酸含有植物体と同義であり、好ましい例も同様であるため、ここでは説明を省略する。
また、本発明のトリカフェオイルキナ酸の増加方法における根部除去工程及び保存工程についても、本発明の植物体の生産方法の項において説明した根部除去工程及び保存工程と同義であり、好ましい例も同様であるため、ここでは説明を省略する。
本発明のトリカフェオイルキナ酸の増加方法は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、根部除去工程及び保存工程以外の他の工程を含んでもよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例において、化合物名は、表1に示す略称を使用した。
実施例では、3−CQA、4−CQA、及び5−CQAを、「クロロゲン酸(ChA)」と総称した。
また、実施例では、3,4−DCQA、3,5−DCQA、及び4,5−DCQAを、「DCQA」と総称した。
なお、実施例における「カフェオイルキナ酸化合物の総量」とは、3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQAの総量を意味する。
〔ポリフェノール化合物の抽出方法〕
実施例において、植物体に含まれるポリフェノール化合物(イソケルセチン、3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)は、以下の方法により抽出した。
1.凍結乾燥した植物体からのポリフェノール化合物の抽出
凍結乾燥した植物体を、ミルを用いて粉末状に粉砕した。得られた植物体の凍結乾燥粉末50mgと80v/v%エタノール水溶液5mLとを15mL容量のファルコンチューブに入れて、5分間煮沸した。煮沸後、40℃以下に冷却した植物体を含むエタノール水溶液を、3000rpmで15分間遠心分離し、得られた上澄みを回収した。回収した上澄みを、孔径が0.45μmのシリンジフィルターで濾過し、濾液を得た。得られた濾液を下記の定量分析に用いた。
2.生の植物体からのポリフェノール化合物の抽出
窒素雰囲気下、1cm〜2cmに切断した植物体5gと90v/v%エタノール水溶液50mLとを100mL容量のナスフラスコに入れて、80℃で1時間加熱した。加熱後、植物体を含むエタノール水溶液を、脱脂綿を用いて濾過し、濾液(第1の濾液)を回収した。濾過により得られた残渣を、90v/v%エタノール水溶液25mLで洗浄し、濾液(第2の濾液)を回収した。第1の濾液及び第2の濾液を100mL容量のメスシリンダーに入れて、100mLにメスアップした後、孔径が0.45μmのシリンジフィルターで濾過し、濾液を得た。得られた濾液を下記の定量分析に用いた。
〔各ポリフェノール化合物の定量方法〕
実施例において、植物体に含まれるポリフェノール化合物(イソケルセチン、3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量は、それぞれ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた絶対検量線法により行った。HPLC分析条件を以下に示す。
〜HPLC分析条件〜
測定装置:Prominence(送液ポンプ:LC−20AT,デガッサー:DGU−20A3,UV検出器:SPD−20A,カラムオーブン:CTO−20AC、(株)島津製作所製)
カラム:TSKgel ODS−100V 5μm(内径4.6mm×長さ150mm、東ソー(株)製)
移動相:A液)0.2v/v%ギ酸−水、B液)0.2v/v%ギ酸−アセトニトリル
グラジエントサイクル:A液+B液=100%とし、B液の組成を示す。
B液= 2%→ 19%(0分→16分)
B液= 19%→ 52%(16分→32分)
B液= 52%→100%(32分→37分
B液=100%→ 2%(37分→47分)
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
注入量:10μL
検出波長:330nm
〔ポリフェノール化合物の総量の測定方法〕
実施例において、植物体に含まれるポリフェノール化合物の総量の測定は、Folin-Ciocalteu法により行った。上記にて得られた濾液と、フォーリン試薬と、10質量%炭酸ナトリウム水溶液とを混合し、測定試料を得た。得られた測定試料の600nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダー(SpectraMax Plus384、Molecular Device社製)を用いて測定した。標準物質には、クロロゲン酸(5−O−カフェオイルキナ酸)を用い、測定毎に標準物質の検量線を作成した。作成した検量線により、植物体に含まれるポリフェノール化合物の総量をクロロゲン酸換算濃度として算出した。
なお、実施例における表中では、「ポリフェノール化合物の総量」を「総ポリフェノール」と表記した。
<試験例1>
屋外ハウス(太陽光下)にて土耕栽培し、生長したサツマイモの8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。この収穫したサツマイモの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。
このハイポネックス(登録商標)に挿したサツマイモの茎葉を、人工気象器(温度:30℃、相対湿度:70%、照度:23,000lux、12時間日長(明期:6時〜18時、暗期:18時〜6時))内にて7日間保存した。
収穫直後(保存0日)のサツマイモの葉身、3日間保存して収穫したサツマイモの葉身、及び7日間保存して収穫したサツマイモの葉身をそれぞれ凍結乾燥し、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるポリフェノール化合物の総量の測定、並びに3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQAの定量を行った。測定は、サツマイモの葉身の収穫部位を変えて2回行い、それぞれの測定試料を測定試料A及び測定試料Bと称した。測定結果を表2〜表5に示す。なお、表2及び表3におけるポリフェノールの総量の単位は、g ChA換算量/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)であり、表4及び表5における各ポリフェノール化合物の含有量の単位は、g/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)である。
表2及び表3に示すように、サツマイモの葉身に含まれるポリフェノールの総量は、順調に増加した。
一方、表には示していないが、上記の生長したサツマイモを、茎葉を切断せずに、更に7日間土壌で生育させたところ、サツマイモの葉身に含まれるポリフェノールの総量には、ほとんど変化が見られなかった。
また、表4及び表5に示すように、サツマイモの葉身に含まれる3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQAの量は、順調に増加した。
一方、表には示していないが、上記の生長したサツマイモを、茎葉を切断せずに、更に7日間土壌で生育させたところ、サツマイモの葉身に含まれる3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQAの量には、ほとんど変化が見られなかった。
<試験例2>
屋外ハウス(太陽光下)にて土耕栽培し、生長したサツマイモの8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。この収穫したサツマイモの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。
このハイポネックス(登録商標)に挿したサツマイモの茎葉を、人工気象器(温度:30℃、相対湿度:70%、無照明)内にて7日間保存した。
収穫直後(保存0日)のサツマイモの葉身、3日間保存して収穫したサツマイモの葉身、及び7日間保存して収穫したサツマイモの葉身をそれぞれ凍結乾燥し、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるポリフェノール化合物の総量の測定を行った。測定結果を表6に示す。なお、表6におけるポリフェノールの総量の単位は、g ChA換算量/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)である。
表6に示すように、サツマイモの葉身に含まれるポリフェノール化合物の総量は、無照明の条件下で順調に増加した。
<試験例3>
屋外ハウス(太陽光下)にて土耕栽培し、生長したサツマイモの8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。この収穫したサツマイモの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないように水道水に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。
この水道水に挿したサツマイモの茎葉を、貯蔵室(温度:30℃、相対湿度:70%、照度:2,000lux、12時間日長(明期:6時〜18時、暗期:18時〜6時))内にて3日間保存した。
収穫直後(保存0日)のサツマイモの葉身、及び3日間保存して収穫したサツマイモの葉身をそれぞれ凍結乾燥し、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるTCQAの定量を行った。測定結果を表7に示す。なお、表7におけるTCQAの含有量の単位は、g/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)である。
表7に示すように、サツマイモの葉身に含まれるTCQAは、2,000luxの照度条件下で順調に増加した。
<試験例4>
屋外ハウス(太陽光下)にて土耕栽培し、生長したサツマイモ(品種:コガネセンガン、試験例1で用いたサツマイモとは異なる品種)の8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。この収穫したサツマイモの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。
このハイポネックス(登録商標)に挿したサツマイモの茎葉を、人工気象器(温度:30℃、相対湿度:70%、照度:23,000lux、12時間日長(明期:6時〜18時、暗期:18時〜6時))内にて7日間保存した。
収穫直後(保存0日)のサツマイモの葉身、3日間保存して収穫したサツマイモの葉身、及び7日間保存して収穫したサツマイモの葉身をそれぞれ凍結乾燥し、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるポリフェノール化合物の総量の測定、並びに3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQAの定量を行った。測定結果を表8〜表10に示す。なお、表8におけるポリフェノールの総量の単位は、g ChA換算量/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)であり、表9及び表10における各ポリフェノール化合物の含有量の単位は、g/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)である。
表8に示すように、サツマイモ(品種:コガネセンガン)の葉身に含まれるポリフェノール化合物の総量は、順調に増加した。
また、表9及び表10に示すように、サツマイモ(品種:コガネセンガン)の葉身に含まれる3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQAの量は、順調に増加した。
<試験例5>
屋外ハウス(太陽光下)にて土耕栽培し、生長したサツマイモ(品種:ムラサキマサリ、試験例1で用いたサツマイモとは異なる品種)の8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。この収穫したサツマイモの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。
このハイポネックス(登録商標)に挿したサツマイモの茎葉を、人工気象器(温度:30℃、相対湿度:70%、照度:23,000lux、12時間日長(明期:6時〜18時、暗期:18時〜6時))内にて3日間保存した。
収穫直後(保存0日)のサツマイモの葉身、及び3日間保存して収穫したサツマイモの葉身をそれぞれ凍結乾燥し、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量を行った。測定結果を表11及び表12に示す。なお、表11における3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQAの含有量の単位、並びに表12におけるカフェオイルキナ酸化合物の総量の単位は、いずれもg/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)である。
表11及び表12に示すように、サツマイモ(品種:ムラサキマサリ)の葉身に含まれる3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQAの量、並びにカフェオイルキナ酸化合物の総量は、順調に増加した。
<試験例6>
屋外ハウス(太陽光下)にて土耕栽培し、生長したサツマイモ(品種:タマアカネ、試験例1で用いたサツマイモとは異なる品種)の8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。この収穫したサツマイモの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。
このハイポネックス(登録商標)に挿したサツマイモの茎葉を、人工気象器(温度:30℃、相対湿度:70%、照度:23,000lux、12時間日長(明期:6時〜18時、暗期:18時〜6時))内にて7日間保存した。
収穫直後(保存0日)のサツマイモの葉身、及び7日間保存して収穫したサツマイモの葉身をそれぞれ凍結乾燥し、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量を行った。測定結果を表13及び表14に示す。なお、表13におけるDCQA(3,4−DCQA、3,5−DCQA、及び4,5−DCQA)及びTCQAの含有量の単位、並びに表14におけるカフェオイルキナ酸化合物の総量の単位は、いずれもg/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)である。
表13及び表14に示すように、サツマイモ(品種:タマアカネ)の葉身に含まれるDCQA及びTCQAの量、並びにカフェオイルキナ酸化合物の総量は、順調に増加した。
<試験例7>
屋外ハウス(太陽光下)にて土耕栽培し、生長したサツマイモ(品種:高系14号、試験例1で用いたサツマイモとは異なる品種)の8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。この収穫したサツマイモの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。
このハイポネックス(登録商標)に挿したサツマイモの茎葉を、人工気象器(温度:30℃、相対湿度:70%、照度:23,000lux、12時間日長(明期:6時〜18時、暗期:18時〜6時))内にて3日間保存した。
収穫直後(保存0日)のサツマイモの葉身、及び3日間保存して収穫したサツマイモの葉身をそれぞれ凍結乾燥し、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量を行った。測定結果を表15及び表16に示す。なお、表15におけるDCQA(3,4−DCQA、3,5−DCQA、及び4,5−DCQA)及びTCQAの含有量の単位、並びに表16におけるカフェオイルキナ酸化合物の総量の単位は、いずれもg/100g F.D.P.(葉身の凍結乾燥粉末)である。
表15及び表16に示すように、サツマイモ(品種:高系14号)の葉身に含まれるDCQA及びTCQAの量、並びにカフェオイルキナ酸化合物の総量は、順調に増加した。
<試験例8>
室内の蛍光灯(植物育成用蛍光灯 ビオルックス(登録商標)A、NECライティング社)下で土耕栽培したサツマイモ(品種:シロユタカ、試験例1で用いたサツマイモとは異なる品種)の8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。なお、室内は、気温30℃、相対湿度60%になるように調節した。蛍光灯の照度は、サツマイモの苗の先端部が約6,000luxとなるように調整した。また、蛍光灯は、12時間周期で、ON−OFFを行った。
この収穫したサツマイモの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。このハイポネックス溶液に挿したサツマイモの茎葉を、上記と同じ室内環境下で、4日間保存した。
収穫直後(保存0日)のサツマイモの葉身、及び4日間保存して収穫したサツマイモの葉身を収穫し、収穫したそれぞれの生の葉身から、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるTCQA及びイソケルセチンの定量を行った。測定結果を表17に示す。なお、表17におけるTCQA及びイソケルセチンの含有量の単位は、g/100g D.P.(葉身の乾燥粉末)であり、以下の方法により算出した換算係数を用いて、生の葉身の質量を乾燥した葉身の質量に換算した。
抽出に用いた生の葉身の一部についてサンプリングを行い、真空ポンプを用いて減圧下、80℃で、重さが恒量になるまで乾燥を行った。乾燥前後の質量変化に基づき、生の葉身の質量を乾燥した葉身の質量に換算するための係数(換算係数)を算出した。
表17に示すように、サツマイモ(品種:シロユタカ)の葉身に含まれるTCQA及びイソケルセチンの量は、いずれも順調に増加した。
<試験例9>
室内の蛍光灯(植物育成用蛍光灯 ビオルックス(登録商標)A、NECライティング社)下で土耕栽培したエンサイ(ヒルガオ科植物)の8節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。なお、室内は、気温30℃、相対湿度60%になるように調節した。蛍光灯の照度は、エンサイの苗の先端部が約6,000luxとなるように調整した。また、蛍光灯は、12時間周期で、ON−OFFを行った。
この収穫したエンサイの茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。このハイポネックス溶液に挿したエンサイの茎葉を、上記と同じ室内環境下で、2日間保存した。
収穫直後(保存0日)のエンサイの葉身、及び2日間保存して収穫したエンサイの葉身を収穫し、収穫したそれぞれの生の葉身から、ポリフェノール化合物を抽出し、エンサイの葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量を行った。測定結果を表18に示す。なお、表18におけるChA(3−CQA、4−CQA、及び5−CQA)、DCQA(3,4−DCQA、3,5−DCQA、及び4,5−DCQA)、及びTCQAの含有量の単位は、g/100g D.P.(葉身の乾燥粉末)であり、試験例8と同様の方法により算出した換算係数を用いて、生の葉身の質量を乾燥した葉身の質量に換算した。
表18に示すように、エンサイの葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(ChA、DCQA、及びTCQA)の量は、順調に増加した。
<試験例10>
室内の蛍光灯(植物育成用蛍光灯 ビオルックス(登録商標)A、NECライティング社)下で土耕栽培した春菊(キク科植物)の茎葉(先端15センチ)を、根部を含まないように切断し、収穫した。なお、室内は、気温30℃になるように調節した。また、室内の湿度は、気温30℃で飽和蒸気圧となるように調整した。蛍光灯の照度は、春菊の苗の先端部が約6,000luxとなるように調整した。また、蛍光灯は、12時間周期で、ON−OFFを行った。
この収穫した春菊の茎葉を、花き類の鮮度を保持する場合と同様に、茎葉がしおれないようにハイポネックス(登録商標)(N−P−K=6−10−5)の1000倍希釈溶液に、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように挿した。このハイポネックス溶液に挿した春菊の茎葉を、上記と同じ室内環境下で、2日間保存した。
収穫直後(保存0日)の春菊の葉身、及び2日間保存して収穫した春菊の葉身を収穫し、収穫したそれぞれの生の葉身から、ポリフェノール化合物を抽出し、春菊の葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量を行った。測定結果を表19に示す。なお、表19におけるChA(3−CQA、4−CQA、及び5−CQA)、DCQA(3,4−DCQA、3,5−DCQA、及び4,5−DCQA)、及びTCQAの含有量の単位は、g/100g D.P.(葉身の乾燥粉末)であり、試験例8と同様の方法により算出した換算係数を用いて、生の葉身の質量を乾燥した葉身の質量に換算した。
表19に示すように、春菊の葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(ChA、DCQA、及びTCQA)の量は、順調に増加した。
<試験例11>
室内の蛍光灯(植物育成用蛍光灯 ビオルックス(登録商標)A、NECライティング社)下で土耕栽培したサツマイモの4節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。なお、室内は、気温30℃、相対湿度60%になるように調節した。蛍光灯の照度は、サツマイモの苗の先端部が約6,000luxとなるように調整した。また、蛍光灯は、12時間周期で、ON−OFFを行った。
収穫した生の葉身から、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量を行った。測定結果を表20に示す。なお、表20におけるChA(3−CQA、4−CQA、及び5−CQA)、DCQA(3,4−DCQA、3,5−DCQA、及び4,5−DCQA)、及びTCQAの含有量、並びにカフェオイルキナ酸化合物の総量の単位は、g/100g D.P.(葉身の乾燥粉末)であり、試験例8と同様の方法により算出した換算係数を用いて、生の葉身の質量を乾燥した葉身の質量に換算した。
<試験例12>
室内の蛍光灯(植物育成用蛍光灯 ビオルックス(登録商標)A、NECライティング社)下で土耕栽培したサツマイモの4節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。なお、室内は、気温30℃、相対湿度60%になるように調節した。蛍光灯の照度は、サツマイモの苗の先端部が約6,000luxとなるように調整した。また、蛍光灯は、12時間周期で、ON−OFFを行った。
この収穫したサツマイモの茎葉を、切断時の切り口が浸り、かつ、葉が浸からないように水に挿した。この水に挿したサツマイモの茎葉を、上記と同じ室内環境下で、6日間保存した。6日間保存したサツマイモの茎葉を、バーミキュライト(無肥用土)に植えて、上記と同じ室内環境下で、水を与えながら、更に15日間保存した後、葉身を収穫した。
また、別の系として、無肥用土として、バーミキュライトの代わりに、黒土、赤玉土、又は軽石を用いて、上記と同じ室内環境下、収穫したサツマイモの茎葉を保存した後、葉身を収穫した。各系における保存期間を表21に示す。
収穫した生の葉身から、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量を行った。測定結果を表22及び表23(試験例11に対する相対値)に示す。なお、表22におけるChA(3−CQA、4−CQA、及び5−CQA)、DCQA(3,4−DCQA、3,5−DCQA、及び4,5−DCQA)、及びTCQAの含有量、並びにカフェオイルキナ酸化合物の総量の単位は、g/100g D.P.(葉身の乾燥粉末)であり、試験例8と同様の方法により算出した換算係数を用いて、生の葉身の質量を乾燥した葉身の質量に換算した。
表22及び表23に示すように、いずれの系も、試験例11(保存0日、収穫直後)と比較して、カフェオイルキナ酸化合物(ChA、DCQA、及びTCQA)の含有量が増加することが確認された。また、カフェオイルキナ酸化合物の中でも、特にTCQAの含有量の増加が顕著であった。
<試験例13>
室内の蛍光灯(植物育成用蛍光灯 ビオルックス(登録商標)A、NECライティング社)下で土耕栽培したサツマイモの4節分の茎葉を、根部を含まないように切断し、収穫した。なお、室内は、気温30℃、相対湿度60%になるように調節した。蛍光灯の照度は、サツマイモの苗の先端部が約10,000luxとなるように調整した。また、蛍光灯は、12時間周期で、ON−OFFを行った。
この収穫したサツマイモの茎葉を、そのままの状態で、ビニール袋に入れて密閉した。ビニール袋の中には、水で湿らせた脱脂綿を入れて、水蒸気が存在する状態とした。そして、上記と同じ室内環境下で、7日間保存した後、葉身を収穫した。
収穫した生の葉身から、ポリフェノール化合物を抽出し、サツマイモの葉身に含まれるカフェオイルキナ酸化合物(3−CQA、4−CQA、5−CQA、3,4−DCQA、3,5−DCQA、4,5−DCQA、及びTCQA)の定量を行った。測定結果を表24及び表25(試験例11に対する相対値)に示す。なお、表24におけるChA(3−CQA、4−CQA、及び5−CQA)、DCQA(3,4−DCQA、3,5−DCQA、及び4,5−DCQA)、及びTCQAの含有量、並びにカフェオイルキナ酸化合物の総量の単位は、g/100g D.P.(葉身の乾燥粉末)であり、試験例8と同様の方法により算出した換算係数を用いて、生の葉身の質量を乾燥した葉身の質量に換算した。
表24及び表25に示すように、試験例11(保存0日、収穫直後)と比較して、カフェオイルキナ酸化合物(ChA、DCQA、及びTCQA)の含有量が増加することが確認された。また、カフェオイルキナ酸化合物の中でも、特にTCQAの含有量の増加が顕著であった。

Claims (14)

  1. サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したポリフェノール化合物含有植物体の根部を除去する根部除去工程と、
    前記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む、
    前記根部除去工程に供する植物体よりもポリフェノール化合物量が増加したポリフェノール化合物含有植物体の生産方法。
  2. 前記根部除去工程において根部を除去するポリフェノール化合物含有植物体が、カフェオイルキナ酸化合物含有植物体であり、
    前記根部除去工程に供するカフェオイルキナ酸化合物含有植物体よりもカフェオイルキナ酸化合物量を増加させる請求項1に記載の生産方法。
  3. 前記根部除去工程において根部を除去するポリフェノール化合物含有植物体が、トリカフェオイルキナ酸含有植物体であり、
    前記根部除去工程に供するトリカフェオイルキナ酸含有植物体よりもトリカフェオイルキナ酸量を増加させる請求項1に記載の生産方法。
  4. 前記保存工程における保存期間は、2日間〜35日間である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の生産方法。
  5. 前記保存工程における保存期間は、3日間〜7日間である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の生産方法。
  6. 前記保存工程は、前記根部を除去した植物体に光照射することを含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の生産方法。
  7. 前記光照射における光の照度は、1,000lux以上である請求項6に記載の生産方法。
  8. 前記保存工程における保存温度は、20℃〜35℃である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の生産方法。
  9. 前記保存工程は、前記根部を除去した植物体の少なくとも一部を、水又は水を含ませた用土の少なくとも一方に配置して保存することを含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の生産方法。
  10. 前記保存工程は、前記根部を除去した植物体の少なくとも一部を、水に配置して保存した後、用土に配置して保存することを含む請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の生産方法。
  11. 前記植物体が、ヒルガオ科植物である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の生産方法。
  12. 前記ヒルガオ科植物が、サツマイモである請求項11に記載の生産方法。
  13. サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したポリフェノール化合物含有植物体の根部を除去する根部除去工程と、
    前記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む、
    ポリフェノール化合物含有植物体中のポリフェノール化合物量を増加させる方法。
  14. サツマイモ以外のイモ類、ヒルガオ科植物、及びキク科植物からなる群より選ばれる生長したトリカフェオイルキナ酸含有植物体の根部を除去する根部除去工程と、
    前記根部を除去した植物体を、水の存在下、20℃〜40℃で、24時間以上保存する保存工程と、を含む、
    トリカフェオイルキナ酸含有植物体中のトリカフェオイルキナ酸量を増加させる方法。
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