JP6306132B2 - 骨誘導再生用支持体 - Google Patents

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Description

本発明は、骨欠損や骨喪失や骨折等の何らかの不具合を持った骨を誘導・再生させるときに使用する骨誘導再生用支持体に関する。
歯を支える歯槽骨において、歯の欠損によって骨吸収が経時的に起こった場合や、先天的あるいは後天的に骨が薄い場合には、インプラントの埋入が困難になることがある。そのような場合には、骨造成を行って骨量を増大させること(一般に、骨誘導再生療法(GBR)と呼ばれている)が行われている。すなわち、骨組織を誘導・再生させたい骨欠損領域に対して、歯肉等の骨組織以外の生体組織が周囲から進入して骨の再生を阻害することを防ぐため、骨誘導再生膜(骨誘導再生用支持体とも記す。)によって当該骨欠損領域を覆う、骨誘導再生法(GBR法)が行われている。このGBR法においては、他の部位(例えば顎骨や脛骨や腸骨)から採取した自家骨や、β−TCPやハイドロキシアパタイト等の人工骨を骨欠損領域に埋植することも併せて行われることがある。
骨誘導再生用支持体として、大きくは、ゴアテックス社から市販されている非吸収性のPTFE(polytetrafluoroethylene)膜やePTFE(expanded polytetrafluoroethylene)のチタン強化膜(特許文献1を参照)、生体内で分解・吸収される吸収性高分子膜、あるいは、非吸収性のチタン製メッシュ体(特許文献2の0013段落を参照)が使用されている。
特許第2905592号公報 特表2003−517326号公報
上記非吸収性のPTFE膜は、生体親和性に優れており、長期間の使用でも劣化や分解や溶出がないものである。さらに、PTFE膜は、柔らかくて滑らかであり、自由にトリミングが可能で縫合も容易であるという特長を有している。しかしながら、PTFE膜自体には剛性がないために所望の形状を保持できないので、骨欠損領域を覆って留め置いたときに十分な骨誘導再生空間を確保する(いわゆるスペースメイキングする)ことができないという問題を有している。また、上記問題点を改良すべく、多孔質のePTFE(expanded polytetrafluoroethylene)膜に薄いチタンのフレームで補強して変形しにくいように構成されたチタン強化膜(TRメンブレン)が提供されている。
また、吸収性高分子膜は、コラーゲンや、ポリ乳酸(PLA)や、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)等からできている生体内分解膜であるが、上記PTFE膜と同様に、膜自体には剛性がないために所望の形状を保持できない問題を有している。
ところで、非吸収性のチタン製メッシュ体は、代表的な人工骨材料として知られているように生体親和性に優れていることに加えて、比較的大きな剛性を有するので、所望の骨誘導再生空間を形成することができて大きな領域での骨造成が可能になるという特長を有している。
しかしながら、従来のチタン製メッシュ体は、厚みが少なくとも0.1mmあって、剛性が高いために任意の形状に曲げにくく、それ自身の厚みに起因して大きなスペースを要するために、歯肉の薄い骨欠損領域では使用しにくいということがある。
また、チタン製メッシュ体では、その表面に形成された複数の穿孔を介してスクリューで固定することが行われている。チタン製メッシュ体の穿孔は、血液やリンパ液、血管の外の細胞間を満たす組織液等の細胞外液に加えて、歯肉等の軟らかい線維性の軟組織を構成する細胞が透過できるような大きなサイズに寸法構成されている。そのために、歯肉等の軟らかい線維性の軟組織の細胞が当該大きなサイズの穿孔を通って骨欠損領域内に入り込んでしまうことが起こる。その結果、所定期間経過した後にチタン製メッシュ体を取り外す際に、穿孔に入り込んだ軟組織が邪魔になってチタン製メッシュ体の取り外しが困難になるという問題がある。さらに、誘導・再生された骨組織が多数の穿孔に入り込み、その結果、誘導・再生された骨の表面があまり滑らかではないという問題もある。
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、骨欠損領域において所望の形状を保持できるような剛性を有するとともに、細胞外液を透過させるものの細胞組織を透過させないような開口穴を有する骨誘導再生用支持体を提供することである。なお、細胞外液とは、血液やリンパ液等のような体液のことであり、また、ここで言う細胞組織とは、複数の細胞及び細胞外マトリックスから構成される生体組織であって、歯肉組織、皮膚組織、脂肪組織、筋肉組織、血管のような軟組織や、骨組織のような硬組織のことを言う。
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の骨誘導再生用支持体が提供される。
すなわち、この発明に係る骨誘導再生用支持体は、
骨欠損領域の周囲に配設されることにより、欠損した骨を誘導・再生させるための骨誘導再生用支持体であって、
前記骨誘導再生用支持体が、細胞外液の透過を可能にする一方で細胞組織の透過を不可とする開口サイズを持った開口穴を複数個有し、
前記開口穴の断面が、両テーパー形状をしていることを特徴とする。
前記骨誘導再生用支持体が、生体親和性金属からなることが好ましい。
前記骨誘導再生用支持体の厚みが、5乃至60μmであることが好ましい。
前記開口穴の前記開口サイズが、10乃至200μmであることが好ましい。
前記骨欠損領域の周囲への配設が、前記骨欠損領域の周囲への貼り付け又は包み込みであることが好ましい。
前記開口穴が、六角穴であることが好ましい。
この発明では、骨欠損領域の周囲に配設されることにより、欠損した骨を誘導・再生させるための骨誘導再生用支持体が、細胞外液の透過を可能にする一方で細胞組織の透過を不可とする開口サイズを持った開口穴を複数個有し、開口穴の断面が、両テーパー形状をしている。当該構成によれば、細胞外液は透過できるものの細胞組織は透過できないような開口穴を有する骨誘導再生用支持体が、所望の形状を保持しながら骨欠損領域を覆うように留め置かれることによって、歯肉等の軟らかい線維性の組織細胞が周囲から入り込むことを遮断・保護する隔壁として機能する。したがって、骨誘導再生用支持体で囲繞された骨誘導再生空間内において骨の誘導・再生が可能になるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る骨誘導再生用支持体の斜視図である。 図1に示した骨誘導再生用支持体を湾曲させて骨誘導再生空間を形成する様子を説明する図である。 骨欠損領域を有する歯槽骨に対して、図1に示した骨誘導再生用支持体を配設した様子を説明する模式図である。(A)は、当該支持体を配設した直後の状態を示し、(B)は当該支持体を配設して数ヶ月経過したときの状態を示している。 骨欠損領域を有する歯槽骨に対して人工歯根のフィクスチャーを予め埋入した上で、当該歯槽骨に対して図1に示した骨誘導再生用支持体を配設した様子を説明する模式図である。(A)は、当該支持体を配設した直後の状態を示し、(B)は当該支持体を配設して数ヶ月経過したときの状態を示している。 骨欠損領域を有する歯槽骨に対して、図1に示した骨誘導再生用支持体を配設する手順を説明する図である。 本発明の他の実施形態に係る骨誘導再生用支持体の平面図である。
以下に、本発明に係る骨誘導再生用支持体1を歯科分野に適用した一実施形態を、図1乃至5を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明に係る骨誘導再生用支持体1は、歯科分野に限定されるものではなく、関節部分を除く人体のほとんど全ての骨に適用可能であり、好適には小規模な骨造成が必要とされる骨、例えば、歯科の歯槽骨、上腕骨や大腿骨のような長骨、頭蓋骨、腸骨、胸骨のような平骨にも適用可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る骨誘導再生用支持体1の斜視図である。図2は、図1に示した骨誘導再生用支持体1を湾曲させて骨誘導再生空間8を形成する様子を説明する図である。図3は、骨欠損領域32を有する歯槽骨30に対して、図1に示した骨誘導再生用支持体1を配設した様子を説明する模式図である。(A)は、当該支持体1を配設した直後の状態を示し、(B)は当該支持体1を配設して数ヶ月経過したときの状態を示している。図4は、骨欠損領域32を有する歯槽骨30に対して人工歯根のフィクスチャー40を予め埋入した上で、当該歯槽骨30に対して図1に示した骨誘導再生用支持体1を配設した様子を説明する模式図である。(A)は、当該支持体1を配設した直後の状態を示し、(B)は当該支持体1を配設して数ヶ月経過したときの状態を示している。図5は、骨欠損領域32を有する歯槽骨30に対して、図1に示した骨誘導再生用支持体1を配設する手順を説明する図である。なお、図5においては、歯肉20を表示していない。図6は、本発明の他の実施形態に係る骨誘導再生用支持体1の平面図である。
図1に示すように、骨誘導再生用支持体1は、純チタン等の優れた生体親和性及び展延性を有する金属の箔体2から構成されている。箔体2の上には、箔体2のおもて面6と裏面7とを貫通する微小な開口穴4を複数個分散配置している。箔体2の厚みや開口穴4の形成数によって異なるが、骨誘導再生用支持体1は、使用者の指先で湾曲する程度の剛性及び柔軟性を有する。したがって、骨誘導再生用支持体1を湾曲させたり骨誘導再生用支持体1に折り目を入れたりすることによって、すなわち図2のようにシート状の骨誘導再生用支持体1をアーチ状に湾曲加工して当該立体形状を保持することによって、アーチ状の湾曲面と平坦な支持面とで囲まれた骨誘導再生空間8を形成することができる。
本発明に係る骨誘導再生用支持体1に適した材料は、生体親和性があって優れた展延性を有する金属である。このような条件を満足する金属材料を例示すると、純チタン(純度が99%以上)、チタン合金、ステンレススチール、コバルト−クロム合金、コバルト−クロム−モリブデン合金、タンタル、ジルコニウム、金、白金等である。特に、純チタンは、非常に優れた生体親和性及び展延性を有するので、本発明に係る骨誘導再生用支持体1に好適である。したがって、純チタンを用いた場合について説明するが、本願発明で用いる材料が、純チタンに限定されるものではない。
本発明に係る骨誘導再生用支持体1の箔体2は、以下のような方法で作成される。純チタンからなる金属帯体を、一対のロールの間に形成されたクリアランスに挿通させることにより圧延(ロールプレス)したあと、一対のロール間のクリアランスをさらに狭小にして、圧延(ロールプレス)された金属帯体を一対のロールの間に形成された狭小のクリアランスに挿通させるということを繰り返すことによって、所定の厚みを持った箔体2を作成することができる。なお、厚みの薄い薄膜状の箔体2は、圧延で作成した比較的大きな厚みを持った箔体を化学的エッチングによって厚みを落としていく方法や、平坦な基板の上に剥離層を形成したものの上に、物理的手法(スパッタリング法や真空蒸着法)あるいは化学的手法(CVD法)によって作成することができる。
本発明に係る骨誘導再生用支持体1の箔体2の厚みは、好適には、5μm乃至100μmである。すなわち、箔体2の厚みは、5μmより小さくてもよいが、製造技術的な観点や機械的強度の観点から5μm以上であることが好適である。また、箔体2の厚みは、使用者の指による湾曲や折り曲げが容易であるという取り扱い性の観点から、100μm以下であることが好適である。また、後述するように、箔体2の厚みが、箔体2の全面にわたって、必ずしも均一である必要はなく、肉厚の薄い開口低剛性部10と、肉厚の厚いフレーム部12,14と、が共存するような構成にすることもできる。
そして、骨誘導再生用支持体1の使用用途によって箔体2の厚みが異なる。箔体2の厚みが5μm乃至30μmである場合、息を吹き付ければ撓むような柔軟性を有しているので、骨を誘導・再生させたい部位に貼り付けたり、包み込んだりするような用途に使用することができる。箔体2の厚みが30μm乃至60μmである場合、使用者の指先で簡単に湾曲するような柔軟性を有しているので、骨を誘導・再生させたい部位への貼り付け等の用途や、骨誘導再生空間8の形成(いわゆるスペースメイキング)の用途にも使用することができる。箔体2の厚みが60μm乃至100μmである場合、使用者が指先に少し力を加えることによって湾曲するような柔軟性及び剛性を備えているので、骨誘導再生空間8の形成(いわゆるスペースメイキング)の用途に使用することができる。
本発明に係る骨誘導再生用支持体1を厚み方向に貫通するとともに支持体1の表面に適宜のピッチ間隔で分散配置された微小な開口穴4は、図1及び2に示すように、好適には、開口径が0.1μm乃至500μmである丸穴である。開口穴4の開口径は、血液やリンパ液、血管の外の細胞間を満たす組織液等の細胞外液(いわゆる体液)が通過するものの、歯肉等の軟らかい線維性の軟組織を構成する細胞組織が透過できないというサイズに寸法構成されている。血液やリンパ液、血管の外の細胞間を満たす組織液等の細胞外液に含まれる成分のうち最も大きい成分であるタンパク質の最大サイズが0.1μm程度であるので、開口穴4の開口径の小さい側は、0.1μm以上と規定している。また、歯肉等の軟らかい線維性の軟組織を構成する細胞組織が透過できるサイズは数100μm以上であるが、当該細胞組織が開口穴4を僅かに通過することは実用上問題ないので、開口穴4の開口径の大きい側は、500μm以下と規定している。なお、穴加工の容易さを考慮すると、開口径は10μm以上が好ましい。また、細胞組織の通過を完全に無くすためには、開口径の上限は、200μm以下が好ましい。
開口穴4の断面は、おもて面側と裏面側との開口径がほとんど変わらないストレート形状や、一方の面の開口径が大きくて他方の面の開口径が小さい片テーパー形状や、おもて面側及び裏面側の開口径が大きくて中央部の開口径が小さい両テーパー形状とすることができる。また、開口穴4の開口径は、単一の径に揃っている場合や、開口径が上記の開口径の範囲内に収まっているが不揃いである場合のいずれであってもよい。また、開口穴4は、整列して分散配置されていたり、ランダムに分散配置されていたりしてもよい。また、開口穴4は、上記のような丸穴に限定されず、三角穴、四角穴、五角穴、六角穴、楕円穴あるいは星形穴等の様々な形状とすることができる。また、本発明を制限しない開口穴4のピッチ間隔を例示すると、開口径が40μmである場合80μmであり、開口径が80μmである場合160μmであり、開口径が100μmである場合200μmである。
上記のような開口穴4は、化学的エッチング加工やレーザービームエッチング加工や放電加工や打ち抜きプレス加工等を単独であるいは組み合わせることによって形成することができる。
純チタンからなる箔体2において開口穴4を形成するための化学的エッチングは、例えば、以下のような手順で行う。
所定の厚さを有する純チタンの箔体2を準備し、脱脂洗浄された箔体2の表面(おもて面及び/又は裏面)上にパターニング用フォトレジスト膜を塗布し、所望の開口パターン(開口部の形状、ピッチ、開口径)を有する写真製板用マスクによりマスキングをした状態で露光を行い、それに続いて現像を行い、箔体2の上に開口穴4のパターニングを行う。そして、フッ酸−硝酸の混合液、過酸化水素−フッ酸−硝酸の混合液、過酸化水素−フッ酸−硫酸の混合液、過酸化水素−酸性フッ化アンモニウム−燐酸の混合液等のエッチング溶液の中に所定時間浸漬した後、箔体2を覆っていたレジスト膜を溶解除去することによって、箔体2を厚み方向に貫通する微小な開口穴4が複数個形成された骨誘導再生用支持体1を作成することができる。
なお、化学的エッチングは、開口穴4を形成するために用いられるが、箔体2の厚みを薄くするためにも用いることができる。すなわち、脱脂洗浄された箔体2の表面(おもて面及び/又は裏面)をフォトレジスト膜で被覆することなく、エッチング溶液の中に所定時間浸漬することによって、フォトレジスト膜で被覆されていない箔体2の表面をエッチングし、箔体2の厚みを薄くすることができる。
骨誘導再生用支持体1の変形例として、箔体2の剛性が、骨誘導再生用支持体1にわたって大略均一では無くて、場所によって異なるような構成とすることができる。図6に例示した他の実施形態に係る骨誘導再生用支持体1は、微小な開口穴4が複数個形成された開口低剛性部10と、該開口低剛性部10よりも剛性が大きくて支持体1全体の剛性を補強するフレーム部12,14と、を備えている。フレーム部12,14は、幾何学的模様として中央に形成された中央フレーム部12と、外周縁に形成された縁フレーム部14と、を備えている。
図6に例示した当該骨誘導再生用支持体1においては、開口低剛性部10が細胞外液の選択透過に寄与し、フレーム部12,14が所望の立体形状を形成・保持するための骨格支持体として寄与する。開口低剛性部10(すなわち、多くの開口穴4を有する部分)は、フレーム部12,14(すなわち、開口穴4を全く有さないか又は少ししか有さない部分)よりも、剛性が小さいように構成されている。箔体2の剛性が場所によって異なるようにするための方法は、箔体2の厚みを変えること、及び、開口穴4の占有割合(開口穴4の数量やピッチ間隔や開口径)を変えることである。開口低剛性部10の厚みは、フレーム部12,14の厚みに対して同じであるかそれ以下である。フレーム部12,14での剛性が大幅に低下しない程度に、フレーム部12,14が開口穴4を備えていてもよい。また、中央フレーム部12及び縁フレーム部14の厚みは、同じであってよいし、異なっていてもよい。
図6に例示したような開口低剛性部10及びフレーム部12,14を備える骨誘導再生用支持体1は、マスキングとエッチングとを適宜組み合わせることを繰り返すことによって作成することができる。例えば、フレーム部12,14に対応する部分をマスキングした状態でエッチングしてフレーム部12,14以外の箔体2の厚みを薄くし、厚みの薄くなった部分を開口部形成用のマスクでマスキングした状態でエッチングすることによって、フレーム部よりも厚みが薄くて且つ微小な開口穴4を複数個有する開口低剛性部10を骨誘導再生用支持体1に作成することができる。
次に、図3乃至5を参照しながら、本発明に係る骨誘導再生用支持体1の使用形態について説明する。
歯周病等の何らかの原因で歯50が歯槽骨30から脱落すると、歯50を支えていた歯槽骨30が吸収されてやせ細るという現象が起こる(図3の(A)を参照)。また、一般に、頬側の歯槽骨30が薄くてインプラントのフィクスチャー40を埋入するための骨量が不足するので、骨量を増やすこと無くインプラントのフィクスチャー40をそのまま埋入すると、骨の薄い頬側においてフィクスチャー40の一部分が露出するという状態になってしまう(図4の(A)を参照)。そこで、このような骨欠損や骨喪失や骨折等の何らかの不具合を持った部位に対して骨組織を誘導・再生させることは、一般に、GBR(Guided Bone Regeneration)療法と呼ばれている。このようなGBR療法の際に、本発明に係る骨誘導再生用支持体1を適用することができる。
図3は、インプラントのフィクスチャー40を埋入する前に十分な骨量を予め確保するために、純チタン製の骨誘導再生用支持体1を使用する第一の使用形態を示している。純チタン製の骨誘導再生用支持体1は、骨誘導再生空間8の形成(いわゆるスペースメイキング)のために、30乃至100μmの厚みを有している。
まず、図5の(A)のように、骨吸収の起こった骨欠損領域32に対応する部分の歯肉20を切開して、歯槽骨30の一部分が欠損した骨欠損領域32を出現させる。なお、歯肉20は、上皮22と結合組織24とから構成されている。
図5の(B)のように、露出した骨欠損領域32の部位に対して、自家骨(例えば、顎骨や脛骨や腸骨等から採取した骨)や、人工骨(β−TCPやハイドロキシアパタイト等)や、骨補填材料(コラーゲンスポンジ)、骨形成因子(Bone Morphogenetic Protein)、多血小板血漿(Platelet- Rich Plasma)等を単独で、あるいはそれらを組み合わせたものを移植材52として充填する。なお、これらの移植材52は、症例により省略することができる。
純チタンでできた骨誘導再生用支持体1を適切な大きさに切断し、骨誘導再生用支持体1を湾曲させたり折り曲げたりすることによって骨誘導再生用支持体1を所望の形状に加工する。そして、図5の(C)のように、所望の形状に加工した骨誘導再生用支持体1で骨欠損領域32を覆った状態で、固定用治具60を用いて、縫合糸、ネジ、ステープル又は釘等の固定部材62によって骨誘導再生用支持体1を歯槽骨30に一時的に固定する。例えば固定部材62がネジである場合には、固定用治具60はネジ止めドライバーである。そして、切開した歯肉20を縫合することにより、図3の(A)に示したように、骨欠損領域32を覆う骨誘導再生用支持体1を、歯肉20の結合組織24と、骨欠損した歯槽骨30との間に支持体1を所望形状に保持した状態で留め置くことができる。なお、本発明に係る骨誘導再生用支持体1は、市販の吸収性及び/又は非吸収性のGBR膜と併用して用いることもできる。
数ヶ月の時間が経過すると、図3の(B)のように、骨誘導再生用支持体1で囲繞された骨欠損領域32において、骨組織が骨欠損領域32を埋めることによって歯槽骨30が誘導・再生される。すなわち、骨欠損領域32では、元の歯槽骨と実質的に同じ成分の新生の歯槽骨30を造成している。歯肉20を再び切開し、骨誘導再生用支持体1を取り除き、フィクスチャー40を歯槽骨30に埋入固定する。その後、数ヶ月の期間をおいて、フィクスチャー40の上にアバットメントを装着する。その結果、GBR療法を先に行って骨造成が完了した後に、インプラントのフィクスチャー40を埋入するというインプラント治療が完了する。
次に、図4は、インプラントのフィクスチャー40を埋入する同時に骨誘導再生用支持体1で骨造成を行う際に、純チタン製の骨誘導再生用支持体1を使用する第二の使用形態を示している。純チタン製の骨誘導再生用支持体1は、骨誘導再生空間8の形成(いわゆるスペースメイキング)のために、30乃至100μmの厚みを有している。
抜歯によって形成された骨欠損領域32にインプラントのフィクスチャー40を埋入するが、通常は、抜歯による骨欠損領域32の開口寸法の方がフィクスチャー40の外形寸法よりも大きい。したがって、まず、該当部分の歯肉20を切開して歯槽骨30を出現させ、歯槽骨30にフィクスチャー40を埋入するのと同時に、所望の形状に加工した骨誘導再生用支持体1で骨欠損領域32を覆って骨造成を行う。上記第一の使用形態と同様に、吸収性又は非吸収性のGBR膜を併用することを、選択的に行うことができる。そして、切開した歯肉20を縫合することにより、図4の(A)に示したように、骨欠損領域32を覆う骨誘導再生用支持体1を、歯肉20の結合組織24と、フィクスチャー40を埋入した歯槽骨30との間に支持体1を所望形状に保持した状態で留め置くことができる。
数ヶ月の時間が経過すると、図4の(B)のように、フィクスチャー40を埋入した歯槽骨30を囲繞するように骨組織が骨欠損領域32を埋めることによって、歯槽骨30が誘導・再生される。すなわち、再生された新生の歯槽骨30によって、フィクスチャー40が歯槽骨30に強固に埋入固定されている。したがって、歯肉20を再び切開し、骨誘導再生用支持体1を取り除き、フィクスチャー40の上にアバットメントを装着する。その結果、インプラントのフィクスチャー40の埋入と同時に、GBR療法による骨造成を行うというインプラント治療が完了する。
なお、骨を誘導・再生させたい部位によっては、骨誘導再生用支持体1を湾曲加工したり折り曲げ加工したりする形状加工が不要となって、薄膜状の骨誘導再生用支持体1を当該部位に貼り付けるという使用形態もある。すなわち、箔体2の厚みが5μm乃至30μmであって息を吹き付ければ撓むような柔軟性を有する骨誘導再生用支持体1を準備し、骨を誘導・再生させたい骨欠損部位に骨補材を移植した後、該骨補填材及び周囲の骨の上を覆うように前記骨誘導再生用支持体1を貼り付けることもできる。
なお、本願明細書で使用している用語や表現や実施形態は、本願発明の理解を助けるためのものであって、限定的なものと解釈するべきではない。本願明細書で使用している用語や表現や実施形態と均等なものを含み、技術的思想の範囲内において種々の変形を行うことができる。
1:骨誘導再生用支持体
2:箔体
4:開口穴
6:おもて面
7:裏面
8:骨誘導再生空間
10:開口低剛性部
12:中央フレーム部
14:縁フレーム部
20:歯肉
22:上皮
24:結合組織
30:歯槽骨
32:骨欠損領域
40:フィクスチャー
50:歯
52:移植材
60:ネジ止めドライバー(固定用治具)
62:ネジ(固定部材)

Claims (5)

  1. 骨欠損領域の周囲に配設されることにより、欠損した骨を誘導・再生させるための骨誘導再生用支持体であって、
    前記骨誘導再生用支持体が、細胞外液の透過を可能にする一方で細胞組織の透過を不可とする開口サイズを持った開口穴を複数個有し、
    前記開口穴の断面が、両テーパー形状をしていることを特徴とする骨誘導再生用支持体。
  2. 前記骨誘導再生用支持体が、生体親和性金属からなることを特徴とする、請求項1に記載の骨誘導再生用支持体。
  3. 前記骨誘導再生用支持体の厚みが、5乃至60μmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の骨誘導再生用支持体。
  4. 前記開口穴の前記開口サイズが、10乃至200μmであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の骨誘導再生用支持体。
  5. 前記開口穴が、六角穴であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の骨誘導再生用支持体。
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