<電子機器の外観>
図面に示す本実施の形態に係る電子機器100は、例えば携帯電話機である。
図1に示されるように、電子機器100は、振動部としてのカバーパネル1と外装部としてのケース部分2を備えており、カバーパネル1とケース部分2とが組み合わされることによって、平面視で略長方形の板状を成す機器ケース3が構成されている。
カバーパネル1は、平面視において略長方形を成しており、電子機器100の前面部分における、周縁部分以外の部分を構成している。
カバーパネル1は透明であり、例えば、ガラス、アクリル樹脂、サファイア結晶などで形成されている。ここで、透明とは、可視光に対する透過率が70%〜100%であることをいう。また、前述のサファイア結晶とは、酸化アルミニウム(AlO3)結晶からなり、工業的に製造されたものをいう。
ケース部分2は、電子機器100の前面部分の周縁部分、側面部分及び裏面部分を構成している。ケース部分2は、例えばポリカーボネート樹脂で形成されている。筐体3を形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂あるいはナイロン系樹脂が採用される。ケース部分2は、1つの部材のみで構成されても良いし、複数の部材が組み合わされて構成されても良い。
カバーパネル1には、文字、記号、図形等の各種情報が表示される表示部分1aが設けられている。表示部分1aは例えば平面視で長方形を成している。カバーパネル1における、表示部分1aを取り囲む周縁部分1bは、例えばフィルム等が貼られることによって黒色となっており、情報が表示されない非表示部分となっている。カバーパネル1の内側主面には後述するタッチパネル53が貼り付けられており、使用者は、カバーパネル1の
表示部分1aを指等で操作することによって、電子機器100に対して各種指示を与えることができる。
機器ケース3には、操作ボタンなどの操作部54が設けられている。操作ボタンは、いわゆる「ハードキー」である。操作ボタンの表面が、カバーパネル1の外側主面10の下側端部から露出している。なお、操作部54は複数であってもよい。
図1に示されるように、機器ケース3の内部には、後述する圧電振動素子55が設けられている。
図1に示されるように、機器ケース3には、マイク穴20が設けられている。
図2に示されるように、電子機器100の裏面101、言い換えれば機器ケース3の裏面には、スピーカ穴21が設けられている。また電子機器100の裏面101からは、後述する撮像部58が有する撮像レンズ58aが露出している。
なお、図2の例として、スピーカの音を出すためにスピーカ穴21が示されているが、スピーカとして圧電振動素子を設けたフィルムスピーカなどを採用した場合は、スピーカ穴21を設けなくてもよい。
また、図1の例では、マイクに音を集めるためにマイク穴20を設けていたが、穴を設けずとも音を電気信号に変換できるのであれば、マイク穴21を設ける必要はない。
<電子機器の電気的構成>
図3は電子機器100の電気的構成を示すブロック図である。図3に示されるように、電子機器100は、制御部50、無線通信部51、表示部としての表示パネル52、近接検出部としてのタッチパネル53、操作部54、圧電振動素子55、外部スピーカ56、マイク57、撮像部58及び電池59を備えており、これらの構成要素は、機器ケース3内に収められている。
制御部50は、CPU50a及び記憶部50b等を備えており、電子機器100の他の構成要素を制御することによって、電子機器100の動作を統括的に管理する。記憶部50bは、ROM及びRAM等で構成されている。制御部50には、CPU50aが記憶部50b内の各種プログラムを実行することによって、様々な機能ブロックが形成される。
無線通信部51は、電子機器100とは別の携帯電話機あるいはインターネットに接続されたウェブサーバ等の通信装置からの信号を、基地局を介してアンテナ51aで受信する。無線通信部51は、受信信号に対して増幅処理及びダウンコンバートを行って制御部50に出力する。制御部50は、入力される受信信号に対して復調処理等を行って、当該受信信号に含まれる、音声や音楽などを示す音信号などを取得する。また無線通信部51は、制御部50で生成された、音信号等を含む送信信号に対してアップコンバート及び増幅処理を行って、処理後の送信信号をアンテナ51aから無線送信する。アンテナ51aからの送信信号は、基地局を通じて、電子機器100とは別の携帯電話機あるいはインターネットに接続された通信装置で受信される。
表示部としての表示パネル52は、例えば、液晶表示パネルあるいは有機ELパネルであって、制御部50によって制御されることによって、文字、記号、図形などの各種情報を表示する。表示パネル52に表示される情報は、カバーパネル1の表示部分1aに表示されることによって、当該情報は電子機器100の使用者に視認可能となる。
近接検出部としてのタッチパネル53は、例えば、投影型静電量容量方式のタッチパネルであって、カバーパネル1の表示部分1aに対する使用者の操作を検出する。タッチパネル53は、カバーパネル1の内側主面に貼り付けられており、互いに対向配置されたシート状の2つの電極センサーを備えている。2つの電極センサーは透明粘着性シートによって貼り合わされている。
一方の電極センサーには、それぞれがX軸方向(例えば電子機器100の左右方向)に沿って延在し、かつ互いに平行に配置された複数の細長いX電極が形成されている。他方の電極センサーには、それぞれがY軸方向(例えば電子機器100の上下方向)に沿って延在し、かつ互いに平行に配置された複数の細長いY電極が形成されている。カバーパネル1の表示部分1aに対して使用者の指が接触すると、その接触箇所の下にあるX電極及びY電極の間の静電容量が変化することによって、タッチパネル53においてカバーパネル1の表示部分1aに対する操作が検出される。タッチパネル53において生じる、X電極及びY電極の間の静電容量変化は制御部50に伝達され、制御部50は当該静電容量変化に基づいてカバーパネル1の表示部分1aに対して行われた操作の内容を特定し、それに応じた動作を行う。
なお、近接検出部として、前述のようにタッチパネルを挙げたが、本実施の形態はそれに限定されない。例えば、ユーザの指の接触に対して、振動する、或いは突起などの触感を指に伝える触覚センサーも近接検出部には含まれる。また、タッチパネルのように接触を検知するものに限定されず、接触しなくても近接を検知するものも近接検出部に含む。例えば、近接センサーなどが挙げられる。他に、静電容量式タッチパネルよりも静電容量の変化をより敏感に受信できる静電容量式の近接検出装置であってもよい。
操作部54は、操作ボタンが使用者によって押下されると、操作ボタンが押下されたことを示す操作信号を制御部50に出力する。制御部50は、入力される操作信号に基づいて、操作ボタンが操作されたかを特定し、操作された操作ボタンに応じた動作を行う。
圧電振動素子55は、受話音を電子機器100の使用者に伝えるためのものである。圧電振動素子55は、制御部50から与えられる駆動電圧によって振動させられる。制御部50は、受話音を示す音信号に基づいて駆動電圧を生成し、当該駆動電圧を圧電振動素子55に印加する。圧電振動素子55が、制御部50によって受話音を示す音信号に基づいて振動させられることによって、電子機器100の使用者には受話音が伝達される。このように、制御部50は、音信号に基づいて圧電振動素子55を振動させる駆動部として機能する。圧電振動素子55については後で詳細に説明する。
外部スピーカ56は、制御部50からの電気的な音信号を音に変換して出力する。外部スピーカ56から出力される音は、電子機器100の裏面101に設けられたスピーカ穴20から外部に出力される。
マイク57は、電子機器100の外部から入力される音を電気的な音信号に変換して制御部50に出力する。電子機器100の外部からの音は、当該電子機器100の裏面101に設けられたマイク穴21から当該電子機器100の内部に取り込まれて、マイク57に入力される。
撮像部58は、撮像レンズ58a及び撮像素子などで構成されており、制御部50による制御に基づいて、静止画像及び動画像を撮像する。
電池59は、電子機器100の電源を出力する。電池59から出力された電源は、電子機器100が備える制御部50や無線通信部51などに含まれる各電子部品に対して供給
される。
<圧電振動素子の詳細>
図4,5は、それぞれ、圧電振動素子55の構造を示す上面図及び側面図である。図4,5に示されるように、圧電振動素子55は一方向に長い形状を成している。具体的には、圧電振動素子55は、平面視で長方形の細長い板状を成している。
圧電振動素子55の厚みは0.5〜0.8mmである。また、圧電振動素子55を平面視したとき、長辺の長さは10〜20mm、短辺の長さは2〜5mmである。
圧電振動素子55は、例えばバイモルフ構造を有しており、シム材55cを介して互いに貼り合わされた第1圧電板55a及び第2圧電板55bを備えている。
圧電振動素子55では、第1圧電板55aに対して正の電圧を印加し、第2圧電板55bに対して負の電圧を印加すると、第1圧電板55aは長手方向に沿って伸び、第2圧電板55bは長手方向に沿って縮むようになる。これにより、図6に示されるように、圧電振動素子55は、第1圧電板55aを外側にして山状に撓むようになる。
一方で、圧電振動素子55では、第1圧電板55aに対して負の電圧を印加し、第2圧電板55bに対して正の電圧を印加すると、第1圧電板55aは長手方向に沿って縮み、第2圧電板55bは長手方向に沿って伸びるようになる。これにより、図7に示されるように、圧電振動素子55は、第2圧電板55bを外側にして山状に撓むようになる。
圧電振動素子55は、図6の状態と図7の状態とを交互にとることによって、撓み振動を行う。制御部50は、第1圧電板55aと第2圧電板55bとの間に、正の電圧と負の電圧とが交互に現れる交流電圧を印加することによって、圧電振動素子55を撓み振動させる。
なお、図5〜7に示される圧電振動素子55では、シム材55cを間に挟んで貼り合わされた第1圧電板55a及び第2圧電板55bから成る構造が一つだけ設けられていたが、複数の当該構造を積層させても良い。
圧電振動素子55としては、圧電セラミックス材料、または、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸などの有機圧電材料などから構成されてもよい。具体的には、有機圧電材料から圧電振動素子55の場合は、例えば、ポリ乳酸フィルムを第1圧電板55aおよび第2圧電板55bとして用い、それらが積層することで構成されている。なお、電極も例えばITO(Indium−Tin−Oxide、すなわちインジウム錫酸化物)など透明電極が用いられることも可能である。
<圧電振動素子の振動による受話音の発生について>
本実施の形態では、圧電振動素子55がカバーパネル1を振動させることによって、当該カバーパネル1から気導音及び伝導音が使用者に伝達されるようになっている。言い換えれば、圧電振動素子55自身の振動がカバーパネル1などの振動部に伝わることにより、当該カバーパネル1から気導音及び伝導音が使用者に伝達されるようになっている。
ここで、気導音とは、外耳道孔(いわゆる「耳の穴」)に入った音波(空気振動)が鼓膜を振動させることによって、人の脳で認識される音である。一方で、伝導音とは、耳介軟骨が振動させられ、その耳介軟骨の振動が鼓膜に伝わって当該鼓膜が振動することによって、人の脳で認識される音である。以下に、気導音及び伝導音について詳細に説明する。
図8は気導音及び伝導音を説明するための図である。図8には、電子機器100の使用者の耳の構造が示されている。図8においては、波線400は気導音が脳で認識される際の音信号(音情報)の伝導経路を示しており、実線410が、伝導音が脳で認識される際の音信号の伝導経路を示している。
カバーパネル1に取り付けられた圧電振動素子55が、受話音を示す電気的な音信号に基づいて振動させられると、カバーパネル1が振動して、当該カバーパネル1から音波が出力される。使用者が、電子機器100を手に持って、当該電子機器100のカバーパネル1を当該使用者の耳介200に近づけると、あるいは当該電子機器100のカバーパネル1を当該使用者の耳介200に当てると、当該カバーパネル1から出力される音波が外耳道孔210に入る。カバーパネル1からの音波は、外耳道孔210内を進み、鼓膜220を振動させる。鼓膜220の振動は耳小骨230に伝わり、耳小骨230が振動する。そして、耳小骨230の振動は蝸牛240に伝わって、蝸牛240において電気信号に変換される。この電気信号は、聴神経250を通って脳に伝達され、脳において受話音が認識される。このようにして、カバーパネル1から使用者に対して気導音が伝達される。
また、使用者が、電子機器100を手に持って、当該電子機器100のカバーパネル1を当該使用者の耳介200に当てると、耳介軟骨200aが、圧電振動素子55によって振動させられているカバーパネル1によって振動させられる。耳介軟骨200aの振動は鼓膜220に伝わり、鼓膜220が振動する。鼓膜220の振動は耳小骨230に伝わり、耳小骨230が振動する。そして、耳小骨230の振動は蝸牛240に伝わり、蝸牛240において電気信号に変換される。この電気信号は、聴神経250を通って脳に伝達され、脳において受話音が認識される。このようにして、カバーパネル1から使用者に対して伝導音が伝達される。
なお、ここでの伝導音は、骨導音(「骨伝導音」とも呼ばれる)とは異なるものである。骨導音は、頭蓋骨を振動させて、頭蓋骨の振動が直接蝸牛などの内耳を刺激することによって、人の脳で認識される音である。図8においては、例えば下顎骨300を振動させた場合において、骨伝導音が脳で認識される際の音信号の伝達経路を複数の円弧420で示している。
このように、本実施の形態に係る電子機器100では、圧電振動素子55が前面のカバーパネル1を適切に振動させることによって、言い換えれば圧電振動素子55自身の振動を前面のカバーパネル1に適切に伝えることによって、カバーパネル1から電子機器100の使用者に対して気導音及び伝導音を伝えることができる。本実施の形態に係る圧電振動素子55では、使用者に対して適切に気導音及び伝導音を伝達できるように、その構造が工夫されている。使用者に対して気導音及び伝導音を伝えることができるように電子機器100を構成することによって様々なメリットが発生する。
また、使用者は、周囲の騒音が大きい場合には、耳をカバーパネル1に強く押し当てることによって、伝導音の音量を大きくしつつ、周囲の騒音を聞こえにくくすることができる。よって、使用者は、周囲の騒音が大きい場合であっても、適切に通話を行うことができる。
また、使用者は、耳栓やイヤホンを耳に取り付けた状態であっても、カバーパネル1を耳(より詳細には耳介)に当てることによって、電子機器100からの受話音を認識することができる。また、使用者は、耳にヘッドホンを取り付けた状態であっても、当該ヘッドホンにカバーパネル1を当てることによって、電子機器100からの受話音を認識することができる。
<圧電振動素子の配置>
図9(a)は電子機器100の上下方向(長手方向)における断面構造を示す図である。なお、電子機器100の下部は省略している。また図9(b)は、振動部としてのカバーパネル1を、カバーパネル1の裏面側から見た際の平面図である。カバーパネル1の裏面には、当該カバーパネル1の表示部分1a(図1参照)と対向するように、近接検出部としてのタッチパネル53が貼り付けられている。そして、表示パネル52は、カバーパネル1及びタッチパネル53に対向するように配置されている。なお、図示していないが、表示パネル52は、電子機器100の内部にて固定されている。カバーパネル1の表面では、平面視したときに表示パネル52と重なる箇所が表示部分1a(図1参照)となる。
タッチパネル53は、表示パネル52との間に隙間を有していてもよく、また、表示パネル52と接触していてもよい。本実施の形態のように、タッチパネル53と表示パネル52との間に隙間を設ける場合には、カバーパネル1が使用者によって指等で押されて、当該カバーパネル1が表示パネル52側に撓み、当該カバーパネル1が表示パネル52に当たって(より正確にはタッチパネルが表示パネル52に当たって)当該表示パネル52の表示が乱れることを抑制することができる。
機器ケース3の内部には、CPU50a及びマイク57などの各種部品が搭載されるプリント基板が設けられている(不図示)。プリント基板は、電子機器1の内部において表示パネル52と対向するように配置されている。
圧電振動素子55は、両面テープ、接着剤などの部材によって、カバーパネル1の裏面に貼り付けられている。
カバーパネル1の裏面(主面)には、緩衝部6が接している。なお、「接している」とは、カバーパネル1の裏面と緩衝部6との間に、何も介在していなくてもよいし、また、両面テープや接着材などを設けていてもよい。緩衝部6は、カバーパネル1の裏面の周縁(図9(b)の場合はカバーパネル1の上辺)から離間して位置している。緩衝部6とカバーパネル1の裏面の周縁との間に圧電振動素子55が設けられている。緩衝部6がこのように配置していることにより、緩衝部6が設けられていない場合と比較して、カバーパネル1における音量最大となるポイントの位置を、電子機器の長手方向の上側になるように制御することができる。
例えば、電子機器の下部に、無線通信を行うアンテナが設けられている場合、SAR(Specific Absorption Rate)の課題があり、音量最大となるポイントは、できるだけ電子機器の上部に位置することが好ましい。
また、通話などの際にユーザが耳を電子機器につけて音を聞く場合、耳の位置を鑑みると、できるだけ電子機器の上部に音量最大となるポイントがあることが好ましい。
そこで、前述のように、緩衝部6とカバーパネル1の裏面の周縁部との間に圧電振動素子55が位置するように緩衝部6が位置することにより、カバーパネル1における音量最大ポイントが、従来の場合よりも電子機器の長手方向の上側に移る。よって、音量最大となるポイントは、できるだけ電子機器の上部に位置することが可能となる。
緩衝部6としては、例えば、クッション材(弾性材)が挙げられる。緩衝部6は、一方の面に貼り付けられた両面テープによってカバーパネル1の内側主面に貼り付けられてもよい。また、緩衝部6は、その他方の面に貼り付けられた両面テープによってケース部分
2の内側の面に貼り付けられてもよい。また、両面テープ以外では接着剤が用いられてもよい。
緩衝部6に含まれるクッション材としては、例えば発泡体が採用される。この発泡体としては、例えば、ポリオレフィン系発泡体、ポリエステル系発泡体あるいはウレタン発泡体が使用される。また緩衝部6に含まれる両面テープとしては、例えば、ポリエステルから成る基材の両面に対してアクリル系粘着剤が設けられた両面テープが採用される。
緩衝部6は、図9(b)に示すように、カバーパネル1を2以上の領域に分断するようにカバーパネル1の端から端まで設けられてもよい。
通常、カバーパネル1の裏面には、圧電振動素子55だけではなく、例えば、タッチパネル53など、他の部材が設けられている。そのため、圧電振動素子55からの振動に、それらの部材が影響を及ぼす場合があった。そこで、図9(b)に示すように、圧電振動素子55がカバーパネル1の周縁との間に介在するように緩衝部6が、カバーパネル1の裏面に設けられることによって、圧電振動素子6により生じたカバーパネル1の振動が、タッチパネル53などの他の部材に伝わりにくくすることもできる。
また、図9(b)の変形例として、図10(a)のように、圧電振動素子55の周囲を緩衝部6によって囲んで、圧電振動素子55を有する領域と、その外側の領域と、を構成してもよい。図10(a)のように緩衝部6を配置することで、カバーパネル1の振動による音量最大ポイントを電子機器の上端であってカバーパネル1の中心側に制御することができる。また、圧電振動素子55が設けられた領域へのごみなどの侵入を抑制することも可能となる。なお、図10(a)の例では、圧電振動素子55の周囲三方を緩衝部6によって囲んでいるが、例えば、周囲四方を囲んでいてもよい。
また、緩衝部6としては、カバーパネル6を複数の領域に分けた具体例を図9および図10(a)で挙げたが、例えば、図10(b)のように、緩衝部6が、カバーパネル6の端から端まで設けられていなくてもよい。
緩衝部6としてはほかに、図11に示す具体例でもよい。なお、図11(a)において、電子機器100の下部は省略している。図11に示す電子機器の場合、緩衝部6は、タッチパネル53と表示パネル52との間に介在するとともに、カバーパネル1の裏面に接している。なお、図11の場合は、表示パネル52上に貼り付けた緩衝部6に対してタッチパネル53を挟んで圧がかかった状態にすることで、タッチパネル53と表示パネル52との間から出てきた緩衝部6の一部がカバーパネル1の裏面に接触している。なお、図11(b)に示す点線は、タッチパネル53の外形を示しており、実際にタッチパネル53の外形は緩衝部5によって覆われており、見えない。
図11のように、表示パネル52とタッチパネル53との間に緩衝部6が位置していることにより、カバーパネル1が使用者によって指等で押されて当該カバーパネル1が表示パネル52側に撓み、タッチパネルが表示パネル52に当たって当該表示パネル52の表示が乱れることを抑制することができる。また、緩衝部6が、カバーパネル1の上端との間に圧電振動素子55を介在するようにカバーパネル1の裏面に接していることにより、カバーパネル1の音量最大ポイントの位置を、電子機器の長手方向の上端側に移行することが可能となる。
ここで、緩衝部6による効果を示すために、図11および図12の携帯通信端末をそれぞれ用いて実験を行った。なお、図12の携帯通信端末は、緩衝部6がカバーパネル1の裏面に接していない。
図11の例の場合に、カバーパネル1の上端からの特定の距離での位置における音量を測定したデータを図13に実線として示す。また、比較として図12の例の場合に、同様にしてカバーパネル1の上端からの特定の距離での位置における音量を測定したデータを図13に点線として示す。
図13のデータの測定について以下に示す。
図11および図12におけるカバーパネル1は、強化ガラスから構成されている。カバーパネル1の縦の長さは118mm、横の長さは60mm、厚さは0.55mmであった。圧電振動素子55は、縦の長さが3.3mm、厚みが0.88mmであった。圧電振動素子55は、その中心が携帯通信端末の上端から8.8mmに位置していた。緩衝部6は、その上端が、携帯通信端末の上端から14.3mmに場所に位置していた。緩衝部6の携帯通信端末の長手方向と同方向の幅は5.5mmであった。
また、図12の例としては、緩衝部6がカバーパネル1の裏面に接しない以外は図11の例と同様であった。
図11および図12の電子機器を用いて、カバーパネルの各ポイントの音量を測定した。音量の測定位置は、カバーパネル1の上端から15.8mmの地点から、0.2mmごとに、カバーパネル1の上端から23mmの地点まで測定した。
なお、測定器としては、B&K社のHATSを用い、無響室環境でRLR測定をおこなって得られた値から、音量最大点を0dBとして各音量点をプロットすることで図11が得られた。なお、RLR測定とは、Receive Loudness Ratingであり、3GPP2の規定にもとづいている。
図13の具体例(実線)の場合、端末上端からの距離が15mmのときに−2.66dB、16mmのときに−1.16dB、17mmのときに−0.13dB、18mmのときに0dB、19mmのときに−0.26dB、20mmのときに、−0.57dB、21mmのときに−0.82dB、22mmのときに−1.16dB、23mmのときに−1.56dBであった。
図13の具体例(点線)の場合、端末上端からの距離が15mmのときに−2.91dB、16mmのときに−1.35dB、17mmのときに−0.64dB、18mmのとき−0.350dB、19mmのときに−0.16dB、20mmのときに、0dB、21mmのときに−0.28dB、22mmのときに−0.53dB、23mmのときに−1.17dBであった。
図13のデータより、図12のように、緩衝部6がカバーパネルに接していない場合、音量の最大値が携帯通信端末の上端から20mmの地点であった。一方、緩衝部6がカバーパネルに接していることにより、音量の最大値がカバーパネル1の上端から18mmの地点となり、音量の最大地点は、携帯通信端末の上端側により近い地点となった。
このように、緩衝部6がカバーパネル1の裏面に接していることにより、カバーパネル1の上端からの距離がより近い地点を、音量最大点とすることが可能となるため、ユーザが耳をつける位置を適切な位置とすることが可能となる。また、前述のように、カバーパネル1の上端からの音量最大点の距離が近くなることで、通常、電子機器の下部に設けられるアンテナが頭部から離れることによりSARの影響を軽減できる。
緩衝部6は、音量最大点の位置を制御する効果の他に、例えば、落下時などの衝撃の緩和効果などが挙げられる。これらの効果を十分に得るようにするためには、例えば、カバーパネル1の上端部から緩衝部6(緩衝部6の中心部)までの距離が、カバーパネル1の上端部から圧電振動素子55(圧電振動素子55の中心部)までの距離に対して、2〜4倍であるとよい。
上述の場合、圧電振動素子55は、カバーパネル1を振動部とする例を挙げたが、本発明ではこれに限定されず、例えば、カバーパネル1とは別に、振動部を設け、その振動部に圧電振動素子55および緩衝部6を配置してもよい。本発明においては、振動部はカバーパネルに限定されない。
振動部としては、樹脂製パネル、樹脂製フィルム、ガラスパネル、ガラスフィルムなどが挙げられ、圧電振動素子55により発生した振動を、カバーパネル1に十分に伝えることができればよい。接着材や両面テープで貼着させる際に接着力が高いことから、振動部として樹脂素材を用い、圧電振動素子55としても樹脂素材を用いることが好適である。
図13には、音声発生に関するアプリケーションとして、着信があった後に通話を開始したときの表示画面を示す。画像60は、ユーザに音が聞き取りやすい場所を知らせるための画像である。圧電振動素子55の直上が最も音声を聞き取りやすいため、画像60は、カバーパネル1側から平面視したときに圧電振動素子55と重なる位置に表示される。よって、カバーパネル1のうち、音量の大きいポイントをユーザに知らせることが可能となる。
なお、図13の例では、音声発生に関するアプリケーションとして、音声通話を挙げたが、本実施の態様ではこのアプリケーションに限定されず、例えば、音楽再生、動画再生など音声を発生させるものであればよい。
<受話口の穴(レシーバ用の穴)について>
携帯電話機などの電子機器では、当該電子機器の内部に設けられたレシーバ(受話用スピーカ)から出力される音を当該電子機器の外部に取り出すために、前面のカバーパネル1に受話口の穴があけられることがある。
本実施の形態に係る電子機器100では、音を出力するカバーパネル1には、受話口の穴(レシーバ用の穴)があけられていない。つまり、電子機器100の表面においては受話口の穴が設けられていない。したがって、カバーパネル1に受話口の穴をあける加工が不要となる。その結果、電子機器100の製造コストを低減することができ、電子機器100のコストダウンを図ることが可能となる。特に、カバーパネル1がガラス、サファイアなどで形成されている場合には、カバーパネル1に対する穴加工は困難であることから、カバーパネル1に受話口の穴をあけないことによって、電子機器100の製造コストをさらに低減することができる。また、カバーパネル1に受話口の穴をあけないことによって、カバーパネル1の強度を向上することができる。また、カバーパネル1に受話口の穴をあけないことによって、カバーパネル1の前面のデザイン性の自由度が向上する。特に、本実施の形態のように、電子機器100の前面の大部分をカバーパネル1が占める場合には、カバーパネル1に受話口の穴を設けないことはデザイン性の観点から非常に有効である。また、本実施の形態では、電子機器100の表面に受話口の穴がないことから、受話口の穴から水やほこり等が入るといった問題が発生しない。よって、電子機器100では、この問題に対する防水構造や防塵構造が不要となり、電子機器100のさらなるコストダウンを図ることができる。
なお、本実施の形態では、カバーパネル1が振動することによって受話音が発生するこ
とから、電子機器100に受話口の穴が無くても、受話音を適切に使用者に伝えることができる。
また、本実施の形態に係るカバーパネル1には、操作ボタン54aを露出させる穴12があけられているが、操作ボタン54aを露出させる穴をケース部分2にあけて、カバーパネル1に穴12を設けなくても良い。また、操作ボタン54aを無くして、カバーパネル1に穴12を設けなくても良い。これにより、カバーパネル1には穴が全く存在しなくなり、電子機器100のさらなるコストダウンとカバーパネル1の前面のデザイン性の自由度のさらなる向上が可能となる。
なお、上述の例では、本願発明を携帯電話機に適用する場合を例にあげて説明したが、本願発明は携帯電話機以外の電子機器にも適用することができる。例えば、本願発明は、ゲーム機、ノートパソコン、ポータブルナビゲーションシステムなどに適用することができる。
また、上述の例では、電子機器100としてタッチパネル53を有する携帯電話機を示したが、本実施の態様ではこれに限定されず、タッチパネル53を設けずに、ハードキーだけで入力できる電子機器100に対して入力を行っても良い。