以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1〜図16は本発明による一実施の形態およびその変形例を説明するための図である。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
以下に説明する調光装置10は、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12を含んでいる。この調光装置10では、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の相対位置に依存して、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の両方を透過する光の透過率を調整し得るようになっている。とりわけ、ここで説明する調光装置10は、以下において説明するように、耐熱性及び遮光性を改善するための工夫がなされている。
図1に示すように、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12は、そのパネル面が平行となり且つ少なくとも部分的にその法線方向に対面するよう、保持されている。また図3及び図4に示すように、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12は、第1方向daに相対移動可能となるよう、保持されている。図示された例において、光制御パネル11,12は、平面視において矩形形状となるように形成されている。そして、図2に示すように、相対移動方向である第1方向daは、光制御パネル11,12の一対の側縁と平行となっている。なお、調光装置10は、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12とともに、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12を相対移動可能に保持する図示しない枠装置を含んでいる。
図2に示すように、各光制御パネル11,12は、それぞれ、第1方向daに繰り返し配列された第1領域Z1及び第2領域Z2を含んでいる。第1領域Z1及び第2領域Z2は、第1方向daに一定のピッチPで繰り返し配置されている。図1,3及び4に示すように、第1方向daに沿った第1領域Z1及び第2領域Z2の配列ピッチPは、第1光制御パネル11と第2光制御パネル12との間で同一となっている。
図1に示すように、各光制御パネル11,12は、基材21と、基材21の第1の面21a上に積層された第1の配向膜30と、基材21の第1の面21aの反対側の面である第2の面21b上に積層された第2の配向膜31と、第1の配向膜30上に設けられ且つ第1の配向膜30の配向規制力によって配向された分子を含む第1の偏光子32と、第2の配向膜31上に設けられ且つ第2の配向膜31の配向規制力によって配向された分子を含む第2の偏光子33と、を備えた偏光層20を有している。ここで、偏光子32,33としては、一方の直線偏光成分の光を選択的に透過し、前記一方の偏光成分とは直交する方向に振動する他方の直線偏光成分の光を選択的に吸収する吸収型の偏光分離機能を有した層を例示することができる。
図2に示すように、第1光制御パネル11の各偏光子32,33において、第1領域Z1における吸収軸の方向d1は互いに平行となっている。また、第1光制御パネル11の各偏光子32,33において、第2域Z2における吸収軸の方向d2は互いに平行となっている。そして、第1光制御パネル11の各偏光子32,33の第1領域Z1における吸収軸の方向d1は、第1光制御パネル11の当該偏光子32,33の第2領域Z2における吸収軸の方向d2と交差、とりわけ直交している。
第2光制御パネル12の各偏光子32,33において、第1領域Z1における吸収軸の方向d1は互いに平行となっている。また、第2光制御パネル12の各偏光子32,33において、第2域Z2における吸収軸の方向d2は互いに平行となっている。そして、同様に、第2光制御パネル12の各偏光子32,33の第1領域Z1における吸収軸の方向d1は、第1光制御パネル11の当該偏光子32,33の第2領域Z2における吸収軸の方向d2と交差、とりわけ直交している。
第1光制御パネル11の偏光層20において、第1の偏光子32の第1領域Z1における吸収軸の方向d1は、第1光制御パネル11の第2の偏光子33の第1領域Z1における吸収軸の方向d1と平行になっている。また、第1光制御パネル11の第1の偏光子32の第2領域Z2における吸収軸の方向d2は、第1光制御パネル11の第2の偏光子33の第2領域Z2における吸収軸の方向d2と平行になっている。
同様に、第2光制御パネル12の偏光層20において、第1の偏光子32の第1領域Z1における吸収軸の方向d1は、第2光制御パネル12の第2の偏光子33の第1領域Z1における吸収軸の方向d1と平行になっている。また、第2光制御パネル12の第1の偏光子32の第2領域Z2における吸収軸の方向d2は、第2光制御パネル12の第2の偏光子33の第2領域Z2における吸収軸の方向d2と平行になっている。
また、調光装置10に組み込まれた状態において、第1光制御パネル11の偏光子32,33の第1領域Z1における吸収軸の方向d1は、第2光制御パネル12の偏光子32,33の第1領域Z1における吸収軸の方向d1と平行になっている。また、第1光制御パネル11の偏光子32,33の第2領域Z2における吸収軸の方向d2は、第2光制御パネル12の偏光子32,33の第2領域Z2における吸収軸の方向d2と平行になっている。
したがって、一方の直線偏光成分の光が、各光制御パネル11,12の第1領域Z1を透過することができ、一方の偏光成分の光とは振動方向が直交する他方の偏光成分の光は、各光制御パネル11,12の第1領域Z1を透過することなく当該第1領域Z1で吸収される。また、一方の偏光成分の光が、各光制御パネル11,12の第2領域Z2を透過することなく当該第2領域Z2で吸収され、他方の偏光成分の光は、各光制御パネル11,12の第2領域Z2を透過することができる。
図2に示された例において、各光制御パネル11,12の偏光子32,33の第1領域Z1における吸収軸の方向d1は、第1方向daに対し、時計回り方向を正として45°傾斜している。一方、各光制御パネル11,12の偏光子32,33の第2領域Z2における吸収軸の方向d2は、第1方向daに対し、時計回り方向を正として−45°傾斜している。ただし、図2に示された例に限られず、図5に示すように、各光制御パネル11,12の偏光子32,33の第1領域Z1における吸収軸の方向d1が、第1方向daと平行であり、各光制御パネル11,12の偏光子32,33の第2領域Z2における吸収軸の方向d2が、第1方向daに対して90°傾斜しているようにしてもよい。
以上のような第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の組み合わせにおいては、図3に示すように、第1光制御パネル11の各第1領域Z1が第2光制御パネル12のいずれかの第1領域Z1と対面し、且つ、第1光制御パネル11の各第2領域Z2が第2光制御パネル12のいずれかの第2領域Z2と対面する場合、第1光制御パネル11を透過した光は、第2光制御パネル12を透過することができる。より詳細には、第1光制御パネル11の第1領域Z1を透過した一方の直線偏光成分の光は、第2光制御パネル12の第1領域Z1に入射して、第2光制御パネル12の第1領域Z1を透過する。一方、第1光制御パネル11の第2領域Z2を透過した他方の直線偏光成分の光は、第2光制御パネル12の第2領域Z2に入射して、第2光制御パネル12の第2領域Z2を透過する。
一方、図3の状態から、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12が、第1領域Z1及び第2領域Z2の配列ピッチPだけ第1方向daに相対移動すると、図4に示すように、第1光制御パネル11の各第1領域Z1が第2光制御パネル12のいずれかの第2領域Z2と対面し、第1光制御パネル11の各第2領域Z1が第2光制御パネル12のいずれかの第1領域Z1と対面するようになる。この状態において、第1光制御パネル11を透過した光は、第2光制御パネル12を透過することができず、第2光制御パネル12で吸収される。より詳細には、第1光制御パネル11の第1領域Z1を透過した一方の直線偏光成分の光は、第2光制御パネル12の第2領域Z2に入射して、第2光制御パネル12の第2領域Z2で吸収される。また、第1光制御パネル11の第2領域Z1を透過した他方の直線偏光成分の光は、第2光制御パネル12の第1領域Z1に入射して、第2光制御パネル12の第2領域Z2で吸収される。
以上のようにして、図示された調光装置10では、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の相対位置を第1方向daにずらすことにより、可視光を透過させる透過状態(図3)と、可視光を遮光する遮光状態(図4)と、に切り替えることができる。このように、図示された調光装置10では、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12を相対移動させるだけで、容易且つ即座に調光を行うことができる。
以下、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の各構成要素についてさらに詳述する。なお、ここで説明する調光装置10では、特に限定される訳ではないが、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12を同一に構成することができる。とりわけ、図1、図3及び図4に示された調光装置では、互いに同一に構成された第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12が逆向きに配置されている。図示された実施の形態に関し、「第1」および「第2」との用語を用いることなく符号「11,12」を用いた記載や図示は、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の両方に当てはまるものとする。
図1に示された調光装置10において、各光制御パネル11,12は、偏光層20と、接合層18と、透明支持体25とを、この順番で積層することにより、形成されている。図1に示すように、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12は、互いの偏光層20が向き合うようにして、配置されている。すなわち、第1光制御パネル11の透明支持体25および第2光制御パネル12の透明支持体25が、調光装置10の最外表面を形成している。以下、各構成要素について、順に説明する。
まず、透明支持体25について説明する。透明支持体25は、基材21とともに、第1の配向膜30、第2の配向膜31、第1の偏光子32及び第2の偏光子33を支持する層である。また、図1に示すように、透明支持体25は、第1の配向膜30、第2の配向膜31、第1の偏光子32及び第2の偏光子33を外方から保護する部位としても機能する。このような透明支持体25は、面内屈折率差の小さい材料を用いて形成される。一例として、厚みが1mm以上5mm以下のガラスを、透明支持体25として用いることができる。また、厚みが1mm以上5mm以下の樹脂板、例えばアクリル板を、透明支持体25として用いることもできる。樹脂板からなる透明支持体25は、光制御パネル11,12の軽量化の観点において優れる。
また、図4に示された遮光状態における遮光性または隠蔽性をより確実に確保する観点から、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の少なくとも一方について、すりガラスからなる透明支持体25を用いることができる。すりガラスは、例えば通常のガラスに研磨処理を施すことにより作製され得る。図4に示された遮光状態における遮光性または隠蔽性をより確実に確保する観点において、透明支持体25のヘイズ値を20%以上85%以下とすることができる。ここでヘイズ値は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K7136に準拠した方法により測定することができる。また、すりガラスを透明支持体25に用いることに代えて又はすりガラスを透明支持体25に用いることに加えて、図7に示すように、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の少なくとも一方について、透明支持体25の接合層18とは反対側に防眩層26を設けるようにしてもよい。
透明支持体25と偏光層20とを接合する接合層18は、特に限定されることなく、広く種々の既知の接着剤や粘着剤を用いることができるが、図3に示した透過状態における光透過性の確保の観点から、可視光透過率の高いものを用いることが好ましい。
次に、偏光層20について説明する。偏光層20は、基材21と、基材21の第1の面21a上に積層された第1の配向膜30と、基材21の第1の面21aの反対側の面である第2の面21b上に積層された第2の配向膜31と、第1の配向膜30上に積層された第1の偏光子32と、第2の配向膜31上に積層された第2の偏光子33と、を備えている。図1、図3及び図4に示された例では、基材21の第1の面21a及び第2の面21b上に偏光子が積層されているので、偏光子が基材の片面にのみ積層されている場合と比較して、図4に示された遮光状態において、より確実な遮光を行うことができる。
基材21は、透明支持体25とともに、配向膜30,31及び偏光子32,33を支持する層である。基材21は、第1の面21a及び第1の面21aの反対側の面である第2の面21bを有し、第1の面21a上に第1の配向膜30及び第1の偏光子32が積層され、第2の面21b上に第2の配向膜31及び第2の偏光子33が積層される。以下に説明するように、基材21は、第1の配向膜30、第2の配向膜31、第1の偏光子32及び第2の偏光子33を作製する際の基材としても機能する。基材21は、面内屈折率差の小さい透明材料を用いて形成される。一例として、厚みが40μm以上100μm以下の樹脂フィルム、とりわけアクリル樹脂からなるフィルムやシクロオレフィンポリマーからなるフィルムなどを、基材21として用いることができる。
なお、図1に示す例では、第1光制御パネル11の第2の偏光子33が第2光制御パネル12側となる最表面を形成し、第2光制御パネル12の第2の偏光子33が第1光制御パネル11側となる最表面を形成する。しかしながら、図1に示された例に限られず、第1光制御パネル11の第2の偏光子33における第2光制御パネル12に対面する表面及び第2光制御パネル12の第2の偏光子33における第1光制御パネル11側に対面する表面の少なくとも一方に、最表面をなす部位として適した性能を有する機能層22が、設けられるようにしてもよい。
図6に示された例では、第1光制御パネル11の第2の偏光子33における第2光制御パネル12に対面する表面、および、第2光制御パネル12の第2の偏光子33における第1光制御パネル11に対面する表面の両方が、それぞれ、機能層22によって被覆されている。機能層22としては、ハードコート層を例示することができる。ハードコート層は、第2の偏光子33よりも耐擦傷性に優れた層であり、例えばJIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で測定される硬度が、偏光子33よりも硬くなる層とすることができる。ハードコート層は、コーティング材の塗布により形成してもよいし、フィルム状、シート状または板状のコーティング材の積層により形成してもよい。
また、第1光制御パネル11と第2光制御パネル12との間に空気層が存在する場合には、第1光制御パネル11と空気層との界面または第2光制御パネル12と空気層との界面での反射を防止すべく、反射防止層(AR層)または防眩層(AG層)として形成された機能層22を用いることもできる。この例によれば、反射による映り込みや二重像(ゴースト)の発生を効果的に防止することができる。したがって、図3に示された透過状態での、二枚の光制御パネル11,12を介した視認性を向上させることができる。反射防止層としては、基材21よりも低屈折の層や、可視光の最短波長(例えば380nm)未満のピッチで配列された微小突起を有する層を用いることもできる。防眩層としては、バインダー樹脂と、バインダー樹脂中に分散した粒子と、を含み、粒子の存在に起因した表面凹凸を有する層を例示することができる。なお、機能層22として防眩層を採用した場合、図4に示された遮光状態における漏れ光を拡散することもでき、当該遮光状態における遮光性または隠蔽性をより確実に確保することができる。
さらに、その他の例としては、帯電防止層として形成された機能層22を用いることもできる。
次に、第1の配向膜30及び第2の配向膜31について説明する。第1の配向膜30及び第2の配向膜31は、互いに同一に構成され得る。以下の説明では、第1の配向膜30及び第2の配向膜31が、互いに同一に構成された例について説明する。
図1に示すように、配向膜30,31は、それぞれ、第1配向部34及び第2配向部35を有している。第1配向部34及び第2配向部35は、第1方向daに繰り返し配列されている。各第1配向部34は、光制御パネル11,12の一つの第1領域Z1を区画することになり、各第2配向部35は、光制御パネル11,12の一つの第2領域Z2を区画することになる。第1配向部34及び第2配向部35の第1方向daへの配列ピッチは、光制御パネル11,12の第1領域Z1及び第2領域Z2の第1方向daへの配列ピッチと同一となっている。そして、第1配向部34と第2配向部35とでは、配向規制力が働く方向が交差、とりわけ直交している。
配向膜30,31は、例えば国際公開第2013−054673号(WO2013−054673A1)に開示されているようにして形成することができる。具体的には、まず、偏光照射により光配向性を発揮する光配向材料と、光配向材料を溶かす溶媒と、を含有する配向膜形成用組成物を、基材21上に塗布する。次に、基材21上に塗布された配向膜形成用組成物を、例えば100℃で2分間加熱することによって、乾燥させる。以上により、配向膜形成用塗膜36が基材21上に作製される。
その後、図8に示すように、遮光マスク37によって、第2領域Z2に対応する第2配向部35を覆った状態で、第1領域Z1に対応する第1配向部34のみを露光する。この際、露光光としては、ある特定の方向に振動する第1の直線偏光成分PL1となっている。配向膜形成用塗膜36に含有された分子は、第1配向部35において、露光に用いた第1の直線偏光成分PL1の偏光軸に対応した方向に配向され、特定の方向に向けた配向規制力を発現するようになる。
次に、図9に示すように、遮光マスク37によって、第1配向部34を覆った状態で、第2配向部35のみを露光する。この際、露光光としては、第1配向部34の露光に用いた第1の直線偏光成分PL1の振動方向と直交する方向に振動する第2の直線偏光成分PL2となっている。配向膜形成用塗膜36に含有された分子は、第2配向部35において、露光に用いた第2の直線偏光成分PL2の偏光軸に対応した方向に配向され、特定の方向に向けた配向規制力を発現するようになる。
以上のようにして、互いに直交する方向に配向規制力を発現する第1配向部34及び第2配向部35が第1方向daに繰り返し配列されているパターン配向膜30,31を、それぞれ例えば60nm以上300nm以下の厚みに作製することができる。なお、以上の方法において、第1の直線偏光成分PL1及び第2の直線偏光成分PL2での露光を、1mJ/cm2以上30mJ/cm2以下での紫外線照射によって、実施することができる。
ところで、光配向材料としては、シス−トランス変化によって分子形状のみを変化させて配向規制力を可逆的に生じさせる光異性化材料と、偏光を照射されることによって分子そのものを変化させて配向規制力を不可逆的に生じさせる光反応材料と、に大別される。このうち、光反応材料は、配向規制力を不可逆的に生じさせ、熱的安定性および構造的安定性において非常に優れる。
光異性化材料からなる光配向材料を用いる場合には、第1の直線偏光成分PL1での露光方法を、上述の図8に示された方法に代えて、図10に示された方法を採用することができる。この方法では、まず図10に示すように、遮光マスク37を用いることなく、配向膜形成用塗膜36の全領域を第1の直線偏光成分PL1で露光する。図10に示された露光により、配向膜形成用塗膜36の全域に、第1の直線偏光成分PL1の偏光軸に対応した方向への配向規制力が、付与されるようになる。次に、図9に示すように、遮光マスク37によって、第1配向部34を覆った状態で、第2配向部35のみを第2の直線偏光成分PL2で露光する。この二回目の露光によって、第2配向部35での配向規制力が働く方向は、第2の直線偏光成分PL2の偏光軸に対応して、第1配向部34での配向規制力が働く方向と直交する方向へと変化する。この方法では、例えば図10に示された第1の直線偏光成分PL1での露光を、10mJ/cm2での紫外線照射により実施し、図9に示された第2の直線偏光成分PL2での露光を、20mJ/cm2での紫外線照射により実施することができる。
また、光反応材料からなる光配向材料を用いる場合、第2の直線偏光成分PL2での露光方法を、上述の図9に示された方法に代えて、図11に示された方法を採用することができる。図11に示された露光方法では、遮光マスク37を用いることなく、配向膜形成用塗膜36の全領域を第2の直線偏光成分PL2で露光する。この露光により、第2配向部35は、第2の直線偏光成分PL2の偏光軸に対応した方向への配向規制力を発現するようになる。その一方で、第1配向部34は、第2の直線偏光成分PL2の偏光光に反応することなく、第1の直線偏光成分PL1の偏光軸に対応した方向への配向規制力を維持することになる。
なお、以上において、配向膜30,31を光配向によって作製する例を示したが、この例に限られない。遮光マスク37を用いたラビングにより、互いに異なる方向に配向規制力を発現する第1配向部34及び第2配向部35を有した配向膜30,31を作製することも可能である。
図8〜図10では、基材21の片面に配向膜を形成する工程について図示したが、同様の工程を両面に行うことで、基材21の両面に第1配向膜30及び第2配向膜31を形成することができる。他の方法として、基材21の両方の側の面上に配向膜形成用塗膜36を成膜し、その後に、上述した方法にて、この積層体を片側から露光することにより、第1配向膜30及び第2配向膜31を基材21の両側に同時に形成することも可能である。
次に、第1の偏光子32及び第2の偏光子33について説明する。第1の配向膜30及び第2の配向膜31は、互いに同一に構成され得る。以下の説明では、第1の偏光子32及び第2の偏光子33が、互いに同一に構成された例について説明する。
図1に示すように、偏光子32,33は、第1偏光部38及び第2偏光部39を有している。第1偏光部38は、対応する配向膜30,31の第1配向部34上に配置され、第2偏光部39は、対応する配向膜30,31の第2配向部35上に配置されている。すなわち、各第1偏光部38は、光制御パネル11,12の一つの第1領域Z1に対応して位置し、各第2偏光部39は、光制御パネル11,12の一つの第2領域Z2に対応して位置している。
偏光子32,33は、配向膜30,31の配向規制力により配向された分子を含んでいる。配向膜30,31が、第1配向部34と第2配向部35との間で互いに交差する方向に配向規制力を発現するため、偏光子32,33の第1偏光部38及び第2偏光部39に含有される分子は、互いに異なる方向、とりわけ直交する方向に配向されている。各偏光部38,39は、分子の配向方向に対応した方向に、例えば分子が配向した方向に、吸収軸を持つようになる。したがって、第1領域Z1に対応する第1偏光部38での吸収軸の方向d1と、第2領域Z2に対応する第2偏光部39での吸収軸の方向d2とが、互いに交差、とりわけ直交するようになる。
このような偏光子32,33の製造方法及び構成は、種々の公知な製造方法および構成を採用することができる。例えば、特開2006−285219号公報、特許第4017656号公報、特開平3−54506号公報、特許第3755831号公報等に開示された偏光子を採用することができる。
また一具体例として、偏光子32,33は、次のようにして作製することができる。まず、対応する配向膜30,31上に、平板構造の色素を含有する水溶液(オプティバ社製;N015)を塗布し、配向膜30,31上で自然乾燥させる。次に、15wt%の塩化バリウム水溶液に約1秒間浸漬させる。その後洗浄することによって、作製され得る。このようにして作製される偏光子32,33の厚みを、例えば2μm以上20μmとすることができる。
図8〜図10では、基材21の片面に配向膜及び偏光子を形成する工程について図示したが、同様の工程を両面に行うことで、基材21の両面に配向膜30,31及び偏光子32,33を形成することができる。
以上に説明したように、本実施の形態では、調光装置10が、第1光制御パネル11と、第1光制御パネル11と少なくとも部分的に対面する位置に保持され且つ第1光制御パネル11に対して一方向daへ相対移動可能な第2光制御パネル12と、を有している。各光制御パネル11,12は、それぞれ偏光層20を備えている。偏光層20は、基材21と、基材21の第1の面21a上に積層された第1の配向膜30と、基材21の第1の面21aの反対側の面である第2の面21b上に積層された第2の配向膜31と、第1の配向膜30上に積層され且つ第1の配向膜30によって配向された分子を含む第1の偏光子32と、第2の配向膜31上に積層され且つ第2の配向膜31によって配向された分子を含む第2の偏光子33と、を含んでいる。
このような配向膜30,31及び偏光子32,33は、ポリビニルアルコールにヨウ素や二色性色素を吸着させてなる広く普及した偏光板と比較して、熱的安定性において格段に優れる。また、本実施の形態による配向膜30,31は、ポリビニルアルコールにヨウ素や二色性色素を吸着させてなる広く普及した偏光板と比較して、基材21に対する密着性において優れる。したがって、調光装置10の熱的安定性および構造的安定性を向上させることができる。また、本実施の形態では、各光制御パネル11,12の各偏光層20において、基材21の両側に偏光子32,33が積層されているので、偏光子が基材の片側のみに積層されている場合と比較して、遮光状態において、より確実な遮光を行うことができる。これにより、簡易な操作によって調光を実現し得る有用な調光装置10の用途を広げることが可能となる。
以上の調光装置10の用途としては、領域を区画する区画部材5に適用することができる。区画部材5としては、例えば、室内と室外とを区画する窓ガラス、とりわけ車両、航空機、船舶等の窓ガラスの代替として用いることができる。
また、図12に示すように、調光装置10を、パーテーション6をなす区画部材5にも組み込むことができる。図12に示されたパーテーション6では、調光装置10の第1光制御パネル11が、パーテーション本体部7の開口領域7aの全域を覆うようにして、パーテーション本体部7に固定されている。一方、調光装置10の第2光制御パネル12は、パーテーション本体部7及び第1光制御パネル11に対して第1方向daに移動可能となるよう、パーテーション本体部7に保持されている。
さらに、本棚や食器棚の扉、犬小屋の壁や屋根、照明装置等にも、調光装置10を適用することができる。調光装置10の適用において、第1光制御パネル11及び第2光制御パネル12の一方を固定し、他方を移動可能に保持するようにしてもよい。
なお、上述した一実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した一実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した一実施の形態において、光制御パネル11,12の少なくとも一方に含まれるいずれかの構成要素に紫外線吸収剤が含有されていてもよい。一具体例として、透明支持体25、接合層18及び第1の偏光子32のいずれか一以上に、紫外線吸収剤が含有されるようにしてもよい。このような態様によれば、自然光に含まれる紫外線によって、光制御パネル11,12のいずれかの構成要素、例えば、配向膜30,31が劣化してしまうことを効果的に防止することができる。このような変形例によれば、ポリビニルアルコールにヨウ素や二色性色素を吸着させてなる広く普及した偏光板が紫外線によって劣化しやすいのに対し、優れた耐光性を調光装置10に付与することが可能となる。また、調光装置10を窓ガラスの代替として用いた場合には、室内への紫外線の照射を抑制することもできる。
また、図4に示された遮光状態において、斜めから入射する光が二枚の光制御パネル11,12を透過してしまうことを防止するため、第1光制御パネル11の偏光層20と、第2光制御パネル12の偏光層20との間となる位置に、正のAプレート41及び正のCプレート42を設けるようにしてもよい。このような変形例によれば、正のCプレート42の側から正のAプレート41の側へと進む光に対する補償機能を、調光装置10に付与することができる。このような変形例の一例が、図13〜図15に示されている。図13〜図15に示された例では、光制御パネル11,12の法線方向に対して傾斜した方向に進む光が、図4の遮光状態に保持された二つの光制御パネル11,12を、第1光制御パネル11の側から第2光制御パネル12の側へと透過することを効果的に防止することができる。
図13に示された調光装置10では、第1光制御パネル11の偏光層20の第2光制御パネル12側の面上に、正のCプレート42及び正のAプレート41がこの順で設けられている。また、図14に示された調光装置10では、第2光制御パネル12の偏光層20の第1光制御パネル11側の面上に、正のAプレート41及び正のCプレート42がこの順で設けられている。さらに、図15に示された例では、第1光制御パネル11の偏光層20の第2光制御パネル12側の面上に正のCプレート42が設けられ、第2光制御パネル12の偏光層20の第1光制御パネル11側の面上に正のAプレート41が設けられている。
ここで正のAプレートとは、面内の遅相軸方向における屈折率nx、面内の進相軸方向における屈折率ny、厚み方向における屈折率nzが、次の関係を満たす光学異方性プレートのことである。
nx > ny = nz
また、正のCプレートとは、面内における複屈折性をもたず且つ面内の任意の方向における屈折率よりも厚み方向における屈折率が大きくなっている光学異方性プレートのことである。すなわち、正のCプレートとは、次の条件を満たす光学異方性プレートのことである。
nz > nx = ny
さらに、図16に示すように、第1光制御パネル11と第2光制御パネル12との間に、潤滑剤45が設けられていてもよい。このような変形例によれば、第1光制御パネル11と第2光制御パネル12との相対移動を円滑化することが可能となる。図16に示された例では、第1光制御パネル11の周縁と第2光制御パネル12の周縁との間に、密封構造46が形成されており、第1光制御パネル11と第2光制御パネル12との間の空間が密封されている。潤滑剤45は、密封構造46によって密封された第1光制御パネル11と第2光制御パネル12との空間に収容されている。潤滑剤45としては、グリースやオイルを用いることができる。
なお、以上において一実施の形態と当該実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。