JP6266041B2 - ヘキサナールへの曝露の判別に対するサイトカインバイオマーカー及びそれを使用して判別する方法 - Google Patents

ヘキサナールへの曝露の判別に対するサイトカインバイオマーカー及びそれを使用して判別する方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヘキサナールへの曝露の判別に対するサイトカインバイオマーカー及びそれを使用して判別する方法に関する。より正確には、本発明は、その発現パターンがヘキサナールへの曝露によって特異的に変化するサイトカイン及びそれを使用するヘキサナールへの曝露を判別する方法に関する。
免疫応答は、喘息、自己免疫疾患、及び癌を含む様々な疾患の発症に重要な役割を果たす。免疫応答と炎症性疾患との相互関係のため、免疫応答の重要性が高まっている。この免疫応答は、サイトカインによって媒介される。サイトカインは、人体の防御システムを刺激し、調節することができるシグナルタンパク質である。サイトカインは、細胞/細胞相互作用の誘導及び調節、特に免疫、炎症及び造血系に関与するかかる細胞との関連で、またヒトにおける免疫系の制御及び刺激において重大な役割を果たし、サイトカインの機能が細胞性及び体液性の免疫応答、炎症反応の誘導、抗癌活性、抗ウイルス活性、造血の調節、並びに細胞の増殖及び分化に関与することが示唆される。これらのサイトカインは、環境化学物質への曝露によってその発現パターンが変化する重要な因子であることから、サイトカインは免疫毒性の側面において重要な因子である。
免疫毒性の側面では、上記バイオマーカーは環境毒性物質への曝露に関連して疾患の進行に関与する機構を理解するために重要である(非特許文献1)。最近では、免疫学的バイオマーカーは、環境疾患(environmental disease)の進行及び環境毒性物質によって引き起こされる健康問題の研究に広く使用されている。免疫学的バイオマーカーのなかでも、サイトカインマーカーは、炎症反応、血管新生及びアポトーシスと密接に関連するのみならず、癌、炎症性疾患(自己免疫疾患、リウマチ性関節炎、乾癬、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患等)、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、動脈硬化症等)、及び心疾患(非特許文献2)を媒介する。上記研究及びサイトカインマーカーの開発は、ヒトの生理学及び疾患、並びにそれらの関係を理解する上で主要な役割を果たす。それらのサイトカインマーカーは疾患治療剤の開発に効果的に適用することができるため、バイオ研究の中核となり得る。したがって、サイトカインマーカーの同定は、癌を含む疾患の予測及び早期診断に非常に役立つ可能性があることから重要である。
特に環境疾患が急速に増加している状況のもとでは、かかるサイトカインマーカーは、特定の環境毒性物質への曝露の予測に有用な場合がある。今日まで、研究は、環境毒性物質への曝露に対するmRNA発現パターンの変化及びそれと関連する疾患との関係に焦点を当ててきた。しかしながら、免疫毒性に対する関心が高まるにつれ、ベンゼン、ホルムアルデヒド、及びトルエンジイソシアネートを含む様々な毒性化学物質によって引き起こされるサイトカイン発現の変化が観察されたことから、発現パターンの変化を示すことが確認されたそれらのサイトカインは免疫応答を予測するためのマーカーとして定められた(非特許文献3)。同定されたサイトカインは、毒性物質の同定のためのマーカーとしてのみならず、環境毒性物質への曝露によって引き起こされる免疫応答及び毒性機構の予測のためのマーカーとしても使用され得る。環境毒性物質への曝露の確認及び毒性機構の予測に対するマーカーとしてのかかるサイトカインの重要性にもかかわらず、かかるサイトカインマーカーに対する研究は、疾患の診断マーカーとしての役割に今なお限定され、揮発性有機化合物等の毒性物質への曝露によって引き起こされるサイトカイン発現パターンの変化に対する研究はいまだ不足している。
ヘキサナールは、代表的な揮発性有機化合物アルデヒドの一つである。呼吸によりアルデヒドに曝露されることは容易である。呼吸によって曝露されると、アルデヒドは血管を通って急速に全身に広がる。アルデヒドのうち、ヘキサナールは上気道、呼吸器系の粘膜、並びに眼及び皮膚組織に影響を及ぼす。以前の報告によると、ヘキサナールは肺疾患と密接に関連することから、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び肺癌に対する診断マーカーとして使用されてきた。血流に乗って伝わる揮発性有機化合物は、肺胞膜の拡散を介して肺に影響を及ぼす。揮発性有機化合物のうち、ヘキサン、メチルペンタン、イソプロペン及びベンゼンは、疾患マーカーとして使用されてきた(非特許文献4)。 近年、呼気試験(呼気分析)から採取された揮発性有機化合物の分析により肺癌に対する単純な診断方法が開発されている。揮発性有機化合物として、アルデヒドは肺癌患者において特異的に見られる代表的な物質である(非特許文献5)。したがって、ヘキサナール等のアルデヒドに特異的なバイオマーカーを、肺疾患の判別、及び環境中のヘキサナールへの曝露のスクリーニングに効果的に使用することができる。
揮発性有機化合物であるアルデヒドのヒト毒性、及びアルデヒドによって変化する遺伝子発現パターンに関する研究が報告されているが、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド等の最も代表的なアルデヒドのみに限定される。ヘキサナールのヒトへの潜在的リスクにもかかわらず、そのリスク評価に対するデータは十分ではなく、曝露の判別方法も従来のGC−MS(ガスクロマトグラフィー−質量分析)又はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)に限定されるに留まる。GC−MS又はHPLCは定量を容易にするが、高額な機器及び適切な条件を必要とする。その一方で、総タンパク質ネットワークに関するデータの迅速な一度の分析によって十分に必要な情報を与えることができるように、チップ上に配列された内因性タンパク質を用いてプロテインチップが作製される。ヒトにおける毒性機構、特に癌を含む様々な疾患の発症に関与するサイトカイン発現のスクリーニングに有用な分子インデックスを開発すること、またヘキサナールへの曝露を調節及び制御する方法を確立することは重要な要求である。
プロテインチップはバイオチップの一種である。プロテインチップは、固体ボード上におよそ数十〜数万のタンパク質又はリガンドを固定化することによって作製されるシステムであり、ボード上でそれらのタンパク質又はリガンドと特異的に相互作用する生体高分子の相互作用及び機能を分析することができる。バイオチップのなかでも、DNAチップが最初に開発された。タンパク質はin vivoで実際に機能する物質であり、疾患の発症をタンパク質レベルで直接スクリーニングすることができるため、高度なプロテインチップの開発に対する研究が活発に行われている。
プロテインチップは、総タンパク質ネットワークデータの分析を容易にして一度の迅速な分析により豊富な情報を提供するように、チップ上に配列されたタンパク質複合体を形成する生体材料を有する。プロテインチップは、従来のDNAチップでは提供することができなかった遺伝子産物の機能、タンパク質発現、及びタンパク質相互作用に関する情報を提供することができる。そのため、プロテインチップは、タンパク質の発現及び機能、並びにタンパク質/タンパク質相互作用に関する研究のみならず、疾患の診断、バイオマーカーの開発、及び環境モニタリングにも使用することができる(非特許文献6)。プロテインチップは、そのチップ上に蓄積されるタンパク質に応じて様々な分野で広く適用される。最も頻繁に使用されるチップは、チップに抗体が蓄積された抗体マイクロアレイチップ、各々個別に機能するタンパク質がチップ上に直接蓄積された機能性タンパク質マイクロアレイチップ、及び細胞関連タンパク質がチップに蓄積された逆相タンパク質マイクロアレイチップである(非特許文献7)。
様々なバイオチップを使用する最も革新的な技法であるトキシコゲノミクス(toxicogenomics)の研究と関連して、上記チップは、医薬及び新たな薬物候補のハイスループットスクリーニングを実現するのみならず、環境汚染物質を含む任意の化学物質の刺激によって特定の組織又は細胞株で発現されるDNA、mRNA、マイクロRNA及びタンパク質の発現パターンの分析を容易にする。そのため、特定の細胞における特定のタンパク質の発現パターンの分析は、環境有害物質の毒性の判別及び環境疾患と関連するそれらのサイトカインの同定を可能とする。その結果、環境毒性物質の有害機能及びその分子機構をより深く理解することができ、毒性物質の検出及び確認につながる。
本発明者らは、アレイに蓄積された42のサイトカインに対する抗体を有する多重サイトカイン抗体アレイを使用して、ヘキサナールサイトカイン発現プロファイルに基づき、A549細胞においてヘキサナールへの曝露によって特異的にそれらの発現パターンの変化を示すサイトカインを同定した。本発明者らは、ヘキサナールの曝露に応じたサイトカイン発現変化の検出のためのバイオマーカーを更に開発し、上の曝露を判別する方法を確立することで、本発明は完成に至った。
Int. J. Environ. Res. Public Health, 8:1388-1401, 2011 Current proteomics 9:55-70, 2012 J. Appl. Toxicol. 21: 153-163, 2001 J. Vet. Sci.5(1):11-18, 2004 J. Chromatogr. B Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. 878(27):2643-2651, 2010 Technology Commercialization Intelligence report, 2006; Current opinion in chemical biology 7:55-63, 2003 Mech Ageing Dev. 128(1):161-167, 2007
本発明の目的は、その発現がヘキサナールへの曝露によって特異的に変化するサイトカインを使用することによってヘキサナールへの曝露を判別する方法を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明は、ヘキサナールへの曝露の確認するためのプロテインチップであって、そのチップの上に下記の群;
GenBankアクセッション番号NP_000575(IL−8、インターロイキン8)、GenBankアクセッション番号NP_005614(MCP−2、単球走化性タンパク質2)、GenBankアクセッション番号NP_000890(SCF、幹細胞因子)、GenBankアクセッション番号NP_000600(SDF−1、ストロマ細胞由来因子1;C−X−Cモチーフケモカイン12)、GenBankアクセッション番号NP_000651(TGFベータ1、トランスフォーミング増殖因子ベータ1)、GenBankアクセッション番号NP_000750(G−CSF、顆粒球コロニー刺激因子)、GenBankアクセッション番号NP_002978(TARC、胸腺及び活性化制御ケモカイン;C−Cモチーフリガンド17)
から選択される1若しくは複数のサイトカイン又はそれに対する抗体が蓄積される、プロテインチップを提供する。
本発明はまた、ヘキサナールへの曝露を判別する方法であって、次の工程:
1)ヘキサナールに曝露された被験体から得られた生物試料において下記の群;
GenBankアクセッション番号NP_000575(IL−8、インターロイキン8)、GenBankアクセッション番号NP_005614(MCP−2、単球走化性タンパク質2)、GenBankアクセッション番号NP_000890(SCF、幹細胞因子)、GenBankアクセッション番号NP_000600(SDF−1、ストロマ細胞由来因子1;C−X−Cモチーフケモカイン12)、GenBankアクセッション番号NP_000651(TGFベータ1、トランスフォーミング増殖因子ベータ1)、GenBankアクセッション番号NP_000750(G−CSF、顆粒球コロニー刺激因子)、GenBankアクセッション番号NP_002978(TARC、胸腺及び活性化制御ケモカイン;C−Cモチーフリガンド17)
から選択される1又は複数のサイトカインの発現レベルを測定する工程と、
2)工程1)で選択され、測定された1又は複数のサイトカインの発現レベルと、ヘキサナールに曝露されていない対照群におけるその1又は複数のサイトカインの発現レベルとを比較する工程と、
を含む、方法を提供する。
本発明は、その発現がヘキサナールへの曝露によって変化するヘキサナール特異的曝露の判別のためのサイトカインバイオマーカーを更に提供する。
本発明のヘキサナールへの曝露の判別のためのバイオマーカー、及びヘキサナールへの曝露を判別する方法は、バイオマーカーとして多重サイトカイン抗体アレイによって選択されるサイトカインを使用することによるヘキサナールのリスクのモニタリング及び判断に有用であり、また、ヘキサナールによって引き起こされる毒性機構の開示に対する手段として使用することができる。
本発明の好ましい実施形態の適用は、添付の図面に対する参照により最もよく理解される。
多重サイトカイン抗体アレイによって測定された、ヘキサナールに曝露されたA549細胞における総サイトカインの発現パターンを説明する図である。 ヘキサナールへの曝露によって変化した総サイトカインの発現パターンを説明する図である。 3つの異なる用量のヘキサナールへの曝露によって発現が共通して変化した7つのサイトカインの発現パターンを説明する図である。 3つの異なる用量のヘキサナールへの曝露によって発現が共通して変化した7つのサイトカインの発現パターンを説明する図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ヘキサナールへの曝露の判別のためのプロテインチップであって、上記チップの上に下記の群;
GenBankアクセッション番号NP_000575(IL−8、インターロイキン8)、GenBankアクセッション番号NP_005614(MCP−2、単球走化性タンパク質2)、GenBankアクセッション番号NP_000890(SCF、幹細胞因子)、GenBankアクセッション番号NP_000600(SDF−1、ストロマ細胞由来因子1;C−X−Cモチーフケモカイン12)、GenBankアクセッション番号NP_000651(TGFベータ1、トランスフォーミング増殖因子ベータ1)、GenBankアクセッション番号NP_000750(G−CSF、顆粒球コロニー刺激因子)、GenBankアクセッション番号NP_002978(TARC、胸腺及び活性化制御ケモカイン;C−Cモチーフリガンド17)
から選択される1若しくは複数のサイトカイン又はそれに対する抗体が蓄積される、プロテインチップを提供する。
ヘキサナールの検出のための上記サイトカインに対する抗体は、引用文献に記載される様々な方法によって適切な支持体上に固定化されることが好ましい。固定化に関する技法の例として、CM−デキストラン(カルボキシメチル−デキストラン)、ポリリジン、及びカリックスクラウン等の非特異的タンパク質を結合する方法、及びSPR(表面プラズモン共鳴)を使用する方法が挙げられ得る。上記適切な支持体として、デキストラン、セファデックス、ポリアクリルアミド、イオン交換樹脂、セルロース、ニトロセルロース、細胞培養プレート、及びELISAプレート等が例示される。本発明の好ましい実施形態では、ニトロセルロースメンブレンを支持体として使用する。
ここでプロテインチップは、追加的に蛍光物質を含んでもよい。ここで蛍光物質は、ストレプトアビジン複合体及び化学発光物質(chemiluminescents)からなる群から選択されることが好ましいが、必ずしもそれらに限定されるわけではない。本発明の好ましい実施形態では、HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)を蛍光物質として使用する。
ここでプロテインチップは、反応試薬を更に含んでもよい。反応試薬として、好ましくはハイブリダイゼーションバッファー、洗浄バッファー、及び検出抗体が挙げられるが、必ずしもそれらに限定されるわけではない。プロテインチップハイブリダイゼーションに使用可能であると当業者に知られている任意の反応試薬を含んでもよい。
本発明はまた、ヘキサナールへの曝露を判別する方法であって、次の工程:
1)ヘキサナールに曝露された被験体から得られた生物試料において下記の群;
GenBankアクセッション番号NP_000575(IL−8、インターロイキン8)、GenBankアクセッション番号NP_005614(MCP−2、単球走化性タンパク質2)、GenBankアクセッション番号NP_000890(SCF、幹細胞因子)、GenBankアクセッション番号NP_000600(SDF−1、ストロマ細胞由来因子1;C−X−Cモチーフケモカイン12)、GenBankアクセッション番号NP_000651(TGFベータ1、トランスフォーミング増殖因子ベータ1)、GenBankアクセッション番号NP_000750(G−CSF、顆粒球コロニー刺激因子)、GenBankアクセッション番号NP_002978(TARC、胸腺及び活性化制御ケモカイン;C−Cモチーフリガンド17)
から選択される1又は複数のサイトカインの発現レベルを測定する工程と、
2)工程1)で選択され、測定された1又は複数のサイトカインの発現レベルと、ヘキサナールに曝露されていない対照群におけるその1又は複数のサイトカインの発現レベルとを比較する工程と、
を含む、方法を提供する。
ここで発現レベルは酵素免疫測定法(ELISA)、免疫ブロット法、免疫組織染色法、免疫沈降法、FACS、プロテインチップ及び免疫蛍光法からなる群から選択される方法の一つによって測定される。
発現レベルの測定及び比較が、次の工程を含む次の方法によって達成されることが好ましい:
A)ヘキサナールに曝露された被験体及びヘキサナールに曝露されていない被験体の両方から得られた生物試料からタンパク質を分離する工程と、
B)工程A)で分離された上記タンパク質と多重サイトカイン抗体アレイとのハイブリダイゼーションを誘導する工程と、
C)工程B)で反応された上記多重サイトカイン抗体アレイを分析する工程。
上記曝露を判別する上の方法では、生物試料は好ましくは肺細胞であり、より好ましくはヒト肺組織由来のA549細胞であるが、必ずしもそれらに限定されるわけではない。
上記曝露を判別する上の方法では、ヒトサイトカイン抗体アレイC3(米国のRayBiotech)を工程B)の多重サイトカイン抗体アレイとして使用することが好ましいが、必ずしもそれに限定されるわけではない。ヘキサナールへの曝露によって変化したサイトカイン発現の分析及び測定が可能な任意の免疫学的方法を使用することができる(表3を参照されたい)。該免疫学的方法として、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫ブロット法、免疫組織染色法、免疫沈降法、FACS、プロテインチップ及び免疫蛍光法が例示される。
ここでプロテインチップは、追加的に蛍光物質を含んでもよい。ここで蛍光物質は、ストレプトアビジン複合体及び化学発光物質からなる群から選択されることが好ましいが、必ずしもそれらに限定されるわけではない。本発明の好ましい実施形態では、HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)を蛍光物質として使用する。
ここでプロテインチップは、反応試薬を更に含んでもよい。該反応試薬として、好ましくはハイブリダイゼーションバッファー、洗浄バッファー、及び検出抗体が挙げられるが、必ずしもそれらに限定されるわけではない。プロテインチップハイブリダイゼーションに使用可能であると当業者に知られている任意の反応試薬を含んでもよい。
本発明は、その発現がヘキサナールへの曝露によって変化するヘキサナール特異的曝露の判別のためのサイトカインバイオマーカーを更に提供する。
上に述べたバイオマーカーは、A549細胞株モデルにおいてヘキサナール特異的曝露によって少なくとも1.2倍の差異レベルで共通してサイトカインの発現パターンの変化を示すことが確認されたサイトカインで構成される。
上記バイオマーカーは特徴的に下記の群;
GenBankアクセッション番号NP_000575(IL−8、インターロイキン8)、GenBankアクセッション番号NP_005614(MCP−2、単球走化性タンパク質2)、GenBankアクセッション番号NP_000890(SCF、幹細胞因子)、GenBankアクセッション番号NP_000600(SDF−1、ストロマ細胞由来因子1;C−X−Cモチーフケモカイン12)、GenBankアクセッション番号NP_000651(TGFベータ1、トランスフォーミング増殖因子ベータ1)、GenBankアクセッション番号NP_000750(G−CSF、顆粒球コロニー刺激因子)、GenBankアクセッション番号NP_002978(TARC、胸腺及び活性化制御ケモカイン;C−Cモチーフリガンド17)
から選択される1若しくは複数のサイトカインである。
ヘキサナールへの曝露を判別するためのサイトカイン発現の測定に対するバイオマーカーを開発するため、本発明者らは、確立されたin vitro実験技法に基づいてヘキサナール曝露実験を行った。細胞株モデルに対する曝露のためのヘキサナールの用量は、0.1mM(IC)、0.3mM(IC10)、及び0.8mM(IC20)であった(表1)。総タンパク質を上の用量のヘキサナールに曝露された細胞株から抽出した。抽出したタンパク質を、RayBiotechより提供されたヒトサイトカイン抗体アレイC3とハイブリダイズさせた後、画像スキャニングを行ってサイトカイン発現パターンを分析した。細胞株モデルにおけるサイトカインに対する各スポットを数値に変換し、その後、対照の値と比較した。その結果、発現パターンが少なくとも1.2倍の発現増加又は発現減少へと変化した37のサイトカイン(19のサイトカインはアップレギュレート(上方制御)し、18のサイトカインはダウンレギュレート(下方制御)した)を選択した(表2)。低用量に曝露された群では、15のサイトカイン(3つのサイトカインは上方制御し、12のサイトカインは下方制御した)がヘキサナール曝露によって変化した発現パターンを有することが確認されたのに対し、中用量に曝露された群では、17のサイトカイン(10のサイトカインは上方制御し、7のサイトカインは下方制御した)がヘキサナール曝露によって変化した発現パターンを有することが確認された。高用量のヘキサナールに曝露された群では、29のサイトカイン(15のサイトカインは上方制御し、14のサイトカインは下方制御した)がヘキサナール曝露によって変化した発現パターンを有することが確認された。これらの3群のうち、7つのサイトカインは共通して上方制御するか(1つのサイトカイン)、又は下方制御した(6つのサイトカイン)(表3及び図3を参照されたい)。しかしながら、これらのサイトカインがヘキサナール曝露によって引き起こされる毒性に関連したという報告はない。ヘキサナールの用量依存性サイトカイン発現パターン変化を分析した。したがって、本発明のヘキサナールへの曝露によって変化したサイトカイン発現パターンの確認に対するバイオマーカーは、ヘキサナールのリスク及び毒性をモニタリング及び判断する上で有用であり、またヘキサナールによって引き起こされる毒性機構を明らかにする手段として有用である。
本発明の実際的な現在の好ましい実施形態は、以下の実施例において示されるような実例である。
しかしながら、当業者であれば、本開示を考慮して、本発明の趣旨及び範囲に含まれる修飾及び改良を行ってもよいことが理解される。
実験例1:細胞培養及び化学処理
<1−1>細胞培養
37℃、5%COのインキュベータにおいて、100mmディッシュ上、10%FBS添加RPMI(米国のGibco-BRL)中でヒト肺癌細胞株A549(韓国細胞株バンク)を培養密度(confluency:コンフルエンシー)が70%〜80%に達するまで培養した。
<1−2>細胞毒性試験(MTTアッセイ)及びヘキサナール処理
Mossmanらの方法に従い、A549細胞株を用いてMTTアッセイを行った。詳しくは、RPMI(米国のGibco-BRL)中で増殖している細胞を2.5×10細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに分け、それらに対してヘキサナール(Sigma)を処理した。細胞を48時間培養した。5mg/mlのMTT(3−4,5−ジメチルチアゾール−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)をそれらに添加した後、37℃で3時間更に培養した。その後、培地を捨て、形成されたホルマザン結晶を500μlのDMSOに溶解した。溶解物を96ウェルプレートに等分し、OD540を測定した。
表1に示されるように、ヘキサナール曝露に対するA549細胞のIC(細胞毒性に対して95%生存率をもたらす濃度)は0.1mMであり、IC10(90%生存率をもたらす濃度)は0.3mMであり、IC20(80%生存率をもたらす濃度)は0.8mMであった。上の結果に基づき、サイトカイン抗体アレイを以下の通り行った。
実験例2:サイトカイン抗体アレイアッセイ
<2−1>総タンパク質の抽出
プロテアーゼ阻害剤とホスファターゼ阻害剤とを含有する溶解バッファー[65mM Trisバッファー(pH7.4)、155mM塩化ナトリウム、1mM EDTA、0.25%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム(Sigma)、1%(v/v)IGEPAL(米国のSigma)]を使用して、ヘキサナールに曝露した細胞及びヘキサナールに曝露していない細胞の両方から総タンパク質を抽出した。ヘキサナール処理群及びヘキサナール非処理群の培養培地を捨てた。PBSで細胞を洗浄し、500μlの冷たい溶解バッファーを添加した。スクレーパーを使用して細胞を回収し、チューブに移した後、4℃、14000rpmで10分間遠心分離した。上清(タンパク質試料)を回収し、新しいチューブに入れ、−80℃で保存した。各試料の総タンパク質の濃度をBCAによって測定した。
<2−2>ハイブリダイゼーション
実験例<2−1>で得られた総タンパク質試料を使用して、サイトカイン抗体アレイアッセイを行った。ハイブリダイゼーション及び洗浄のプロセスをRayBiotechによって提供される指示書に従って行った。本実験例で使用したサイトカイン抗体アッセイは、ヒトサイトカイン抗体アレイC3(米国のRayBiotech)であった。
上で得られた総タンパク質試料300μgをブロッキングが済んだメンブレンに添加した後、4℃で一晩反応させた。該メンブレンの洗浄後、1mlの検出抗体カクテルをそれに添加した後、4℃で一晩反応させた。該メンブレンを洗浄した後、2mlのHRP−ストレプトアビジンをそれに添加し、続いて4℃で一晩反応させた。上記反応を終えたアレイに検出バッファーを添加した後、画像の検出を行った。
<2−3>蛍光画像の取得及びサイトカインの選択
上記アレイに対するハイブリダイゼーション画像をChemiDoc MPシステム(米国のBio-rad)によってスキャンした。得られた画像をAlpha Imager 2200ソフトウェア(米国のAlpha Innotech)を使用して検出した後、正規化した。その後、各サイトカインの発現パターンを分析した。
その結果、サイトカイン抗体アレイ上に存在する42のサイトカインのうち、ヘキサナール曝露群において発現パターンの顕著な変化(少なくとも1.2倍の増加又は減少)を示したサイトカインは合計37のサイトカインであり、そのうち19のサイトカインは上方制御し、18のサイトカインは下方制御した(表2及び図2)。これらのサイトカインがヘキサナール曝露によって引き起こされる毒性に関連したという報告はない。低用量に曝露された群では、15のサイトカイン(3つのサイトカインは上方制御し、12のサイトカインは下方制御した)がヘキサナール曝露によって変化した発現パターンを有することが確認されたのに対し、中用量に曝露された群では、17のサイトカイン(10のサイトカインは上方制御し、7のサイトカインは下方制御した)がヘキサナール曝露によって変化した発現パターンを有することが確認された。高用量のヘキサナールに曝露された群では、29のサイトカイン(15のサイトカインは上方制御し、14のサイトカインは下方制御した)がヘキサナール曝露によって変化した発現パターンを有することが確認された。これら3つの群のうち、7つのサイトカインは共通して発現が上昇するか(1つのサイトカイン)又は下方制御した(6つのサイトカイン)(表2)。
上のサイトカイン発現データに基づいて、種々のヘキサナール用量で処理されたそれらの群において発現パターンが共通して変化した7つのサイトカイン(1つは発現が上昇制御し、6つは下方制御した)を選択した(図3及び表3)。これらのサイトカインがヒト肺癌由来の細胞においてヘキサナール曝露によって引き起こされる毒性に関連したという報告はない。

Claims (6)

  1. ヘキサナールへの曝露の確認用プロテインチップであって、該チップの上に下記の群:
    GenBankアクセッション番号NP_000575(IL−8、インターロイキン8)、GenBankアクセッション番号NP_005614(MCP−2、単球走化性タンパク質2)、GenBankアクセッション番号NP_000890(SCF、幹細胞因子)、GenBankアクセッション番号NP_000600(SDF−1、ストロマ細胞由来因子1;C−X−Cモチーフケモカイン12)、GenBankアクセッション番号NP_000651(TGFベータ1、トランスフォーミング増殖因子ベータ1)、GenBankアクセッション番号NP_000750(G−CSF、顆粒球コロニー刺激因子)、及びGenBankアクセッション番号NP_002978(TARC、胸腺及び活性化制御ケモカイン;C−Cモチーフリガンド17)
    から選択される1若しくは複数のサイトカイン又はそれに対する抗体が蓄積される、プロテインチップ。
  2. ヘキサナールへの曝露を判別する方法であって、次の工程:
    1)ヘキサナールに曝露されたヒト由来細胞から得られた生物試料において下記の群;
    GenBankアクセッション番号NP_000575(IL−8、インターロイキン8)、GenBankアクセッション番号NP_005614(MCP−2、単球走化性タンパク質2)、GenBankアクセッション番号NP_000890(SCF、幹細胞因子)、GenBankアクセッション番号NP_000600(SDF−1、ストロマ細胞由来因子1;C−X−Cモチーフケモカイン12)、GenBankアクセッション番号NP_000651(TGFベータ1、トランスフォーミング増殖因子ベータ1)、GenBankアクセッション番号NP_000750(G−CSF、顆粒球コロニー刺激因子)、及びGenBankアクセッション番号NP_002978(TARC、胸腺及び活性化制御ケモカイン;C−Cモチーフリガンド17)
    から選択される1又は複数のサイトカインの発現レベルを測定する工程と、
    2)工程1)で選択され、測定された1又は複数のサイトカインの発現レベルと、ヘキサナールに曝露されていない対照群におけるその1又は複数のサイトカインの発現レベルとを比較する工程と、
    を含む、方法。
  3. 前記生物試料が肺細胞である、請求項2に記載のヘキサナールへの曝露を判別する方法。
  4. 前記発現レベルの測定が酵素免疫測定法(ELISA)、免疫ブロット法、免疫組織染色法、免疫沈降法、FACS、プロテインチップ及び免疫蛍光法からなる群から選択される方法によって行われる、請求項2に記載のヘキサナールへの曝露を判別する方法。
  5. 工程1)の前記サイトカインの発現レベルの測定が、次の工程:
    A)ヘキサナールに曝露されたヒト由来細胞及びヘキサナールに曝露されていないヒト由来細胞の両方から得られた生物試料からタンパク質を分離する工程と、
    B)工程A)で分離されたそれぞれの前記タンパク質と前記請求項1に記載するプロテインチップとの結合を誘導する工程と、
    C)工程B)で反応された前記プロテインチップを分析する工程と、
    を含む方法によって行われる、請求項2に記載のヘキサナールへの曝露を判別する方法。
  6. 工程B)の前記プロテインチップに対して使用される蛍光物質がHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)−ストレプトアビジン及び化学発光物質からなる群から選択される、請求項5に記載のヘキサナールへの曝露を判別する方法。
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