しかしながら、前記特許文献1記載の発明では、磁気センサとして巻線コイルを使用している。また、前記特許文献2記載の発明では、磁気センサとしてホール素子を使用している。しかし、巻線コイルやホール素子は分解能が低く、小さな磁性体を検出できないという問題点がある。
すなわち、ある磁界内に磁性体が侵入することにより、磁束密度Bが変化する。その磁束密度の変化デルタBを磁気センサを用いて検出しなければならないが、場合によってはデルタBの値が極めて小さい。磁束密度の変化デルタBは、磁気的な物理法則から、概ね磁性体の大きさに比例し、磁気センサまでの距離の2乗に反比例する。その他にも磁性体の形状や向きによっても複雑な影響を受ける。従って単純にデルタBを求めることはできないが、場合によっては磁束密度の変化デルタB=10nT程度の極めて小さな変化しか発生しない場合もある。微小な磁束密度の変化を検知するには高感度の磁気センサが必要である。
近年、高感度の磁気センサが各種開発され、10fTの感度を持つ超伝導量子干渉素子と呼ばれるセンサもある。このような高感度磁気センサを用いれば磁束密度の変化デルタB=10nTの変化量を検出する事は極めて簡単である。
しかし磁気センサに限らず、全てのセンサには、分解能と測定できる入力許容範囲を意味するダイナミックレンジに比例関係がある。分解能以下の被測定物は測定することができない。また、ダイナミックレンジを超えた被測定物は、飽和してしまい、測定することができない。
MRI診断室外に漏洩する直流磁束密度Bのスカラ量は、500μT以下にするように勧告されている。これは、平均的な地磁気の直流磁束密度Bの30μTより10倍以上強い磁束密度である。
直流磁束密度B=500μTの環境下でデルタB=10nTの変化量を検出するのは極めて困難な作業である。例えて言うならば、5mの長さの棒の0.1mmの変化を検出するようなものである。ダイナミックレンジが大きい巻尺を使用すれば、5mの長さを測定することができるが、0.1mm単位で測定することはできない。分解能が高いノギスを用いれば、0.1mm単位で測定できるが、5mの長さは飽和してしまって測定することができない。
ダイナミックレンジが大きい巻線コイルやホール素子による磁気センサでは、飽和はしないが、分解能が低く、デルタB=10nTという微小な変化量を検出することができない。高感度の超伝導量子干渉素子では、微小な変化量を検出することができるが、B=500μTという強い直流磁束密度のため飽和してしまい、検出動作を行うことはできない。
ダイナミックレンジが大きく、かつ、高分解能の磁気センサがあれば、この問題は簡単に解決する。しかし、現実的に開発するのは極めて困難であり、開発したとしても極めてコストが高く、応用することができない。ダイナミックレンジが大きい磁気センサを用いて小さな磁束密度の変化デルタBを検出する方法と、高分解能の磁気センサを用いて飽和しないように使用する方法の2つの方法しかない。分解能の低い磁気センサを用いた場合、分解能以下の信号は検出することができない。高性能な増幅器を使用しても、信号とノイズが同じ増幅率で大きくなるだけであるので、全く効果はない。従って、強い直流磁束密度の環境下で、ダイナミックレンジの低い高感度磁気センサを飽和しないように使用する技術が必要になる。
また前記特許文献1記載の発明では、2方向のヘルムホルツコイルによって交互に磁束密度を発生させる。この磁束密度の変化によって、MRI診断装置に影響を与え、正しい診断ができなくなる。また、地磁気程度の30μTであれば、自分で発生した2方向の磁場を制御できるが、500μTといった強い磁界内での制御は困難であり、磁性体の検出自体も行えなくなる。
磁気的な相互干渉を防ぐには、磁性体検知機をMRI診断室から十数m以上遠い位置に設置すれば問題はない。しかし、特別に広い前室を備えない限り設置は不可能である。
また前記特許文献1記載の発明では、床面にもコイルを通す必要があるので、段差が生じてしまう。被検者の中には体の不自由な人もおり、杖や車椅子の通行の邪魔になるだけでなく、転倒などの危険性も生じる。
ヘルムホルツコイルや検知コイルを構成するために、エナメル線を人が通過できる大きさのボビンに何ターンも巻く必要があり、コストも組み立て工数も必要になる。装置全体も大型であり、設置工事作業にもコストが掛かる。また、ヘルムホルツコイルに磁場を発生させるために多大な電力も消費してしまう。
ヘルムホルツコイルや検知コイルに起因する、磁気干渉や段差やコストや消費電力の問題については、前記特許文献2記載の発明によるホール素子による磁気センサを使用することによって解決することが可能であるが、小さな磁性体を検出することができないという問題は残る。
また、前記特許文献1記載の発明及び前記特許文献2記載の発明では、磁気センサの出力信号を単純に閾値と比較し、告知機能を動作させているため、以下のような問題があった。
すなわち、巻線コイルやホール素子に限らず全ての磁気センサは、磁気センサが設置された場所の磁束密度を検出するものであって、磁性体そのものを検出するものではない。
また、磁性体が磁気センサの位置の磁束密度の変化デルタBの大きさは、概ね磁性体の大きさに比例し、距離の2乗に反比例するという物理的な法則がある。
したがって磁気センサは、近傍の小さな磁性体と遠方の大きな磁性体の区別を行うことはできない。近傍の小さな磁性体を検出する能力を持たせた場合、遠方の大きな磁性体も検出してしまう。このため検知機は、磁性体を所持していない使用者が磁性体検知機を通過した時に、偶然遠くの磁性体が動いた場合、これを検出して不要な告知を行うこととなる。
さらに実際の病院では、MRI診断室のシールドドアに磁性体が含まれている。近傍には磁性体を含む操作室のドアや更衣室のドアやロッカーのドアもある。さらに近傍の廊下では、MRI診断室に入ることを目的としない磁性体のストレッチャーや車椅子やボンベが往来する。使用者から見た場合、ゲートを通過する磁性体のみを検知し、ゲート近傍であっても通過しない磁性体については検知しない方が望ましい。すなわち、ゲートを通過する物体に限定して磁性体/非磁性体の判定を行うことが望ましい。したがって使用者から見た場合、ゲートを通過する磁性体は信号Sであり、ゲートを通過しない磁性体はノイズNである。
しかし、磁束密度の変化デルタBは、磁性体の移動によって発生するものであり、その磁性体がゲートを通過するか、通過しないかには全く関係がない。
使用者から見た場合、ゲートを通過しない磁性体はノイズNであるが、これは使用者の主観的な判断によるものである。磁気センサは、使用者の主観的な判断に基づいて動作する素子ではない。磁気センサから見た場合、磁性体がゲートを通過するか通過しないかには全く違いはなく、磁束密度の変化量デルタBは、全て信号Sである。磁気の物理的な法則から、磁気センサ自体がゲートを通過しない磁性体を区別する方法は原理的に存在しない。
ゲートを通過しない磁性体が移動した場合でも、前記特許文献1記載の発明及び前記特許文献2記載の発明による磁性体検知機は告知動作を行う。磁性体検知機から見た場合、磁気センサが設置された場所に磁束密度Bの変化が発生したことによって告知を行っているだけなので、誤動作ではない。しかし、使用者から見た場合、磁性体を所持していないのに告知されるため、誤動作したと判断してしまう。このような事態が重なった場合、使用者は磁性体検知機に対する信頼を失ってしまう。信頼を失った結果、使用者が実際に磁性体を持ち込んで告知されても無視してしまい、吸引事故が発生してしまう危険性が生じてしまう。
また、磁束密度の変化デルタBの大きさは、磁性体の移動速度によって変化するという性質を持つ。移動速度が速い場合、磁束密度の変化デルタBは大きくなるが、変化する時間は短い。逆に移動速度が遅い場合、変化する時間は長いが、磁束密度の変化デルタBは小さくなる。したがって、単純に磁束密度の変化デルタBの大きさだけで判定した場合、移動速度の遅い磁性体を検出できない可能性がある。
また、前記特許文献1記載の発明では、磁性体の有無を検知するものは磁気センサでだけあり、磁性体を所持した使用者がゲートを通過する意思がないのに、ゲート近傍に近づいただけで告知を受けるという問題点があった。
また、MRI診断室に侵入する可能性がある磁性体として、点滴台が考え得る。点滴台には、台座のみが磁性体の物もある。前記特許文献2記載の発明では、左右に磁気センサを配置したゲート状のセンサを使用しているが、台座がゲート中央付近を通過した場合、磁気センサと台座の距離が最も遠くなる。このとき、距離が遠くなれば磁束密度の変化が小さくなるため、検出が困難になるという問題も生じ得る。
また、磁気センサには電気的ノイズがどうしても侵入する。磁気センサから出力された信号が、磁性体によるものなのか、電気的ノイズによるものなのかを区別することは本質的に不可能である。この電気的ノイズによって誤動作が発生してしまう。磁性体の有無を判定する閾値を高く設定すれば、誤動作の頻度は低下する。しかし、検知感度が低下するため、小さな磁性体を検知することが不可能になる。また、設置環境によって電気的ノイズの大きさは異なる。ある設置環境下では問題なく動作したとしても、他の設置環境下では、誤動作が頻発する場合もある。
また、磁気センサは電流を使用して動作している。磁気センサと周辺回路の消費電流は、常に一定ではなく変動しており、電線に電流が流れると磁界が発生する。この磁界の発生に伴い磁束密度も変動することとなる。このように磁束密度が変動すれば、磁気センサはこれを検知してしまって、誤動作を起こす場合があった。
また、磁気センサには定常的な磁気ノイズも侵入する。磁気センサに発生した信号が、磁性体によるものなのか、定常的な磁気ノイズによるものなのかを区別することは原理的に不可能である。この定常的な磁気ノイズによって誤動作が発生してしまう。磁性体の有無を判定する閾値を高く設定すれば、誤動作の頻度は低下する。しかし、検知感度が低下するため、小さな磁性体を検知することが不可能になる。また、設置環境によって定常的な磁気ノイズの大きさは異なる。ある設置環境下では問題なく動作したとしても、他の設置環境下では、誤動作が頻発する場合もある。
また、病院内には色々な医療用品があるが、鉄製酸素ボンベのような大きな磁性体が吸引事故を起こした場合、被害が極めて大きい。このような危険な磁性体はMRI診断室に入れてはならないのは当然である。このような磁性体の場合、予め危険を告知するために、ゲートを通過しなくても近づいただけで告知して欲しい場合もある。
また、使用する環境によって、磁性体がゲートを通過した時だけ告知して欲しい場合と、ゲート通過に関係なく告知して欲しい場合と、両方を組み合わせた告知を行って欲しい場合がある。
また、前記特許文献1記載の発明及び前記特許文献2記載の発明による磁性体検知機では、ゲートを通過する磁性体を持った使用者が、ゲートを通過した後で告知された場合、反転して告知機能を確認しなければ、何を告知されたのか認識することができない。自分が告知されたという認識を持っていなければ、反転することがないので、告知行為が無駄になるという問題があった。使用者が告知を受けてこれを認識しても、告知を無視した場合、磁性体を持ち込む事が可能である。使用環境にもよるが、告知を無視された場合には無効であるという問題があった。
病院のMRI診断装置には、必ずMRI検査技師が居る。MRI検査技師は、磁石の危険性を知っており、MRI診断室に入室する人が磁性体を持っていることが判断できれば、入室を阻止する行動を取ることが可能である。そのためには、磁性体の持込を告知する機能がMRI操作室にも必要である。また、病院の内部及び外部の管理者も告知情報を知りたい場合がある。
また、前記特許文献1記載の発明及び前記特許文献2記載の発明による磁性体検知機では、通過するドアとは別に設置する必要がある。設置の手間が掛かるので、設置コストが高いという問題があった。また、必要に応じて別の告知機能を設置する必要があり、その分設置コストが必要になる。その他にもケーブル等を接続しなくてはならないので、外観上の問題もあった。
また、前記特許文献1記載の発明では、磁気センサとして巻線コイルを使用しているが、巻線コイルだけでは起電力が小さいため、点滴台の台座のように形状の小さな磁性体によって変化する磁束密度Bの変化量が小さく、これを検出することが困難であった。このため、磁性体を検出できずに警告などの告知を行うことができなかった。
また、巻線コイルに限らず全ての磁気センサは、磁気センサが設置された場所の磁束密度Bを検出するものであって、その磁束密度Bを変化させた磁性体がゲート外にあるのか、ゲート内にあるのかを区別することはできない。したがって、磁性体を所持していない使用者がゲートを通過した時に、偶然ゲート外の磁性体が動いた場合、これを検出して警告などの告知を行うこととなる。ゲート外の磁性体としては、シールドドアに一部含まれる磁性体などもある。
磁性体検知機から見た場合、磁気センサが設置された場所の磁束密度Bが変化した結果によって告知を行っているだけなので、誤動作ではない。しかし、使用者から見た場合、磁性体を所持していないのに告知されるため、誤動作したと判断してしまう。このような事態が重なった場合、使用者は磁性体検知機に対する信頼を失ってしまう。信頼を失った結果、使用者が実際に磁性体を持ち込んで告知されても無視してしまい、吸引事故が発生してしまう危険性が生じてしまう。
上記問題に対して、ゲートを通過しない物体については、告知を行う必要がないことから、ゲートに赤外線などによる物体検知機を設け、ゲートを通過した時だけ告知を許可する態様も可能である。
しかし磁性体を所持しない使用者がゲートを通過した時と同時に、ゲートを通過しない磁性体を検出した場合、誤って告知してしまうおそれがある。そこでゲートを通過しない磁性体について、排除または抑制する必要がある。
また、MRI診断装置は極めて強力な磁石を持っているが、全ての磁性体を吸引する訳ではない。MRI専用の医療用品であっても、部分的には磁性体が使用されている。磁性体の質量が用品全体の質量より充分少なければ、吸引されることはない。検査技師や看護士等も磁性体を含む筆記用具や衣類や靴を身に着けている場合もあるが、普段これらを外さないで入室する。磁気センサは、これらの磁性体が入室した場合に、吸引事故が発生するのか発生しないのかを判断する機能は持たない。したがって、磁性体を検出した場合、一律に警告などの告知を行うこととなる。
磁性体検知機から見た場合、磁性体を検出した結果によって告知を行っているだけなので、誤動作ではない。しかし、使用者から見た場合、告知する必要のない物まで告知されるため、煩わしいと感じ、無視するようになる。無視するようになった結果、使用者が実際に磁性体を持ち込んで告知されても無視してしまい、吸引事故が発生してしまう危険性が生じてしまう。
上記問題点に鑑み、本発明は、MRI診察室近傍の強い直流磁束密度Bの環境下で、高感度の磁気センサを飽和させずに使用し、小さな磁性体も検出することを目的とする。
また、本発明は、磁気干渉や段差やコストや消費電力の問題を解決することも目的とする。
また、本発明は、ゲートを通過しない遠方や近傍の磁性体の影響を抑制するとともに、磁性体の移動速度の影響も抑制し、ゲートを通過する磁性体のみを検知することも目的とする。
また、本発明は、必要な条件が成立した時のみに告知を出し、使用者にとって有意な告知を行うことも目的とする。
また、本発明は、下方に配置される磁性体の検知能力を向上させ、ゲート中央付近を通過する点滴台などの磁性体の検知能力を向上させることも目的とする。
また、本発明は、電気的ノイズを抑制することによって、誤動作を抑制することも目的とする。
また、本発明では、回路に流れる電流に起因する誤動作を抑制することも目的とする。
また、本発明では、定常的な磁気ノイズ環境に合わせ、誤動作を抑制することも目的とする。
また、本発明では、ゲートを通過しなくても、近づいただけで告知機能を動作させることも目的とする。
また、本発明では、使用する環境に応じて告知機能を動作させる条件を設定することができることも目的とする。
また、本発明では、告知情報をゲート以外の場所でも受け取れるようにすることも目的とする。
また、本発明では、設置コストを低減し、外観を向上させることも目的とする。
また、本発明は、点滴台の台座のような小さな磁性体も検出するとともに、周囲の磁性体の影響を抑制し、通過しても吸引事故を発生させない磁性体に対して告知しないようにすることも目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、磁束密度を検出する磁気センサと、閾値と、該磁気センサの出力を該閾値と比較する比較機能と、該比較機能の結果を告知する告知機能とを有する磁性体検知機において、該磁気センサの検出軸と鉛直軸または水平軸の立体角度を15°以内にする構成を採用している。
また、本発明は、前記磁気センサを複数備えるとともに各磁気センサを異なる位置に配置する構成を採用している。
磁束密度Bはベクトルである。ベクトル軸方向にはスカラ量の磁束密度Bがあるが、ベクトル軸に直交する方向の磁束密度Bは0である。一方、磁気センサにも検出軸というベクトル軸を持っている。検出軸と同じ方向の磁束密度Bに対して最大の感度を持っているが、検出軸に直交する方向の磁束密度Bは検出しない。
従って、超伝導磁石が発生する磁束密度Bのベクトル軸に直交した方向に、磁気センサの検出軸を設定すれば、磁気センサの検出軸に加わる直流磁束密度Bは0である。従って、小さなダイナミックレンジしか持たない高感度磁気センサを使用しても、飽和することはない。その磁界内に磁性体が侵入した場合、磁束密度Bのベクトルが変化し、磁気センサの検出軸方向に磁束密度の変化デルタBが発生する。このデルタBを検知すれば、磁性体の侵入を検知することが可能である。
しかし、超伝導磁石が発生する磁束密度Bの方向は、場所によって異なり、一定方向ではない。診断室の大きさや磁気センサを取り付けるシールドドアの位置も様々である。磁気センサの位置に発生する磁束密度Bのベクトル軸方向は、超伝導磁石と磁気センサの位置関係、距離、発生する磁場の強さの他に、地磁気や建物内部の鉄筋や機器などの磁性体によって定まるものである。直流磁束密度Bのベクトル軸を測定器を用いて調査し、直交するように磁気センサの検出軸を調整すれば、対応可能である。しかし、専門的な知識と高度な技術が必要であり、一般の作業者によって設置する事は不可能である。
ここで、MRI診断装置が設置されている環境について考察する。一般的なMRI診断装置では、円筒形の超伝導磁石の中心軸を水平方向に設置している。磁石の中心軸は床面から約1mの位置であり、メーカや機種による差はあまりない。
一方シールドドアの大きさもあまり差がなく高さ約2mであり、メーカや機種による差はあまりない。
即ち、シールドドアの高さのほぼ中心に磁石の中心軸がある。
一方、MRI診断装置とシールドドアが取り付けられている診断室の壁までの距離は、漏洩する磁束密度Bを低くするために、ある程度の距離がある。設置場所によって異なるが、6〜15m程度である。
またシールドドアの幅は機種によって多少異なり、1〜1.4m程度である。したがって磁性体検知機のゲートは、シールドドア幅と同じか、それ以上の幅が必要である。
円筒形の磁石を水平に置いた場合、中心軸の水平面方向には直流磁束密度Bが発生するが、鉛直方向の直流磁束密度Bzは0である。従って、磁石の中心軸と同一水平面上に、磁気センサを設置し、検出軸を鉛直方向にすれば、磁気センサの検出軸方向に加わる直流磁束密度Bは0であり、飽和しない。
磁石の中心軸と同一水平面から上下に離れた位置の場合、鉛直軸方向にも直流磁束密度Bzが発生する。しかし、鉛直方向の直流磁束密度Bzは、水平方向の直流磁束密度Bx、Byより小さいという特徴がある。スカラ量Bが500(μT)という強い直流磁束密度の環境下であっても、磁気センサの検出軸方向に印加する直流磁束密度を低減することができる。磁気センサに加わる直流磁束密度Bzが小さければ、その分、ダイナミックレンジは低いが、分解能の高い高感度磁気センサを使用することが可能になる。
これは診断室の寸法が、鉛直方向より水平方向の方が大きいという特徴を利用したものである。先程の棒の長さで例えるならば、5mの長さの棒を斜めの方向から見れば、短く見ることができ、分解能が高いノギスを使用しても飽和せずに計測することが可能である。
単純に考えると、磁束密度の変化量デルタBも同じ比率で小さくなり、高分解能の磁気センサを用いても、結局検出できないと考えてしまう。しかし、磁束密度の変化デルタBも方向を持っており、その向きは直流磁束密度Bと同じ方向とは限らない。各種の条件によって磁束密度の変化デルタBのスカラ量が決まる。磁束密度の変化デルタBの方向と磁気センサの検出軸の方向が近い方向であれば、充分に検出することが可能である。
しかし、磁束密度の変化量デルタBの方向と磁気センサの検出軸の方向が一致するとは限らない。直交した場合は、全く検出することができない。そこで、磁気センサを複数備え、異なる位置で検出する。磁束密度の変化量デルタBの方向と検出軸の方向の相対的な方向の違いは、磁気センサの位置によってそれぞれ異る。ある磁気センサは直交して全く検出しない場合でも、別な磁気センサで変化量デルタBを検出することが可能である。
先にも述べたように、磁束密度の変化デルタBは、磁性体と磁気センサの距離の2乗に反比例する。従って、1個のセンサでは磁性体が通過する空間であるゲート全体を検出することは不可能である。ゲートの左右両側に磁気センサを備えることにより、ゲートの幅約1.4mの半分の約70cmの空間を検出すればよい。磁性体と磁気センサの最大距離が1/2になることによって、磁気センサの位置における磁束密度の変化デルタBを4倍にすることができる。
また、磁性体はシールドドアの上下位置のどの位置を通過するのか不定である。従って、上下方向に磁気センサを備えることにより、シールドドア全体の空間を検出することができる。
ゲートの両側の上下に磁気センサを備えた場合、磁石の中心軸平面から離れている上端と下端の磁気センサでは、中心軸付近の磁気センサに比べて、鉛直方向の直流磁束密度Bzが強く印加される。磁気センサの検出軸を厳密に鉛直方向に設置した場合でも、ある程度の直流磁束密度Bzが印加されてしまうのを防ぐことはできない。
また、磁気センサの検出軸の方向を厳密に鉛直方向にする事も技術的に困難である。ある程度の誤差はどうしても発生してしまう。磁気センサの検出軸を鉛直方向ではなく立体角θDの傾きに設置した場合、θDが大きければ検出軸方向の磁束密度Bsが大きくなり、飽和レベルに近づいてしまう。
以上を考慮すると、磁気センサの検出軸を厳密に鉛直方向に設置することは特に大きな意味は持たない。立体角θDにある程度の許容差を持たせても問題はない。
検出軸方向の直流磁束密度Bsを直流磁束密度Bの30%以下にするならば、下記の数1に示すように、磁気センサの検出軸と鉛直軸の立体角θDは、15°以下にすれば良い。この範囲以内であれば、飽和しにくくなる。
オープン型のMRI診断装置では、磁石の中心軸が鉛直方向を向いているものもある。そのような装置の場合、センサの検出軸を水平方向に設置すれば、同様の結果を得ることができる。この場合の磁気センサの検出軸と水平軸の立体角θDも、15°以下にすれば良い。
高感度磁気センサについては超伝導量子干渉素子の他にも、色々な種類のものが開発されている。MR(磁気抵抗効果素子)センサや、MI(磁気インピーダンス素子)センサやフラックスゲートセンサなど、多様なものがある。本発明では、磁気センサの種類を規定するものではなく、高感度のセンサであれば、ホール素子を含め種類について特定しない。
上記磁気センサは、磁場を発生させるコイルが不要なので、MRI診断に影響を与えることはなく、消費電力も抑制することができる。また、ゲート全体に検出コイルを巻く必要がないため、床に段差を付ける必要はない。
大きなコイルを作成する必要がないので、組み立て工数を少なくできるだけでなく、特殊な測定器や技能を使わずに設置できるため、総合的なコストを低減することが可能である。
さらに、本発明は、演算機能を備え、磁性体によって発生する磁束密度の変化デルタBの特徴を利用して、ゲートを通過しない磁性体の演算出力を抑制し、また、磁性体の移動速度の違いによる差異を抑制する構成になっている。
先にも述べたように、磁気センサは、物理的な原理から、磁性体がゲートを通過するか通過しないかを判断する手段を持たない。本発明における磁気センサも全く同じであり、磁気センサ自体には判断する手段がない。
しかし、磁気センサをゲートの周囲に適切に配置し、ゲートを通る磁性体と、ゲートを通らない磁性体によって発生する磁束密度の変化デルタBの特徴を抽出し、演算することによって、ゲートを通らない磁性体の演算値を抑制することは可能である。
また磁性体の移動速度の違いによる差異も、演算することによって抑制することは可能である。
演算機能には複数の演算方式を組み合わせる。
さらに、本発明は、演算方式の一つとして、同相信号成分を除去する同相信号除去演算機能と、該同相信号除去演算機能により得られた複数の同相信号成分除去信号を加算する加算演算機能を備え、各磁気センサから検出された検出信号の同相信号成分をそれぞれ同相信号除去演算機能を用いて除去し、該同相信号除去演算機能により得られた複数の同相信号成分除去信号を前記加算演算機能で加算し、該加算演算機能により得られた加算信号と閾値とを前記比較機能により比較する構成となっている。
ゲート状の検知空間に複数の磁気センサを異なる位置に配置した場合、磁気センサから見た近傍の磁性体までの距離やベクトル(角度)は大きく異なる。一方、磁気センサから見た遠方の磁性体までの距離やベクトル(角度)は、多少の違いはあるが大きな違いではない。したがって、近傍の磁性体による磁束密度の変化デルタBのベクトルやスカラ量はセンサの位置によって大きく異なるが、遠方の磁性体による磁束密度の変化デルタBの距離やベクトルは磁気センサの位置に関係なくほぼ同一であるという特徴を持つ。
同一のベクトル変化による磁気センサの出力変化は基本的に同一である。すなわち磁気センサの同相信号成分とは、遠方の磁性体によって発生するものであり、同相でない信号成分は近傍の磁性体によって発生すると判断することができる。
同相信号かどうかを判定するには、複数の磁気センサを備え、ゲート状の検知空間の周囲に配置し、かつ同時に動作されば良い。各磁気センサの出力のうち、同相成分を抽出し、これを減算すれば遠方の磁性体の影響を抑制することができる。
また、本発明は、演算方式の一つとして、前記磁気センサの検出信号から交流成分のみを取り出す交流成分演算機能と、該交流成分から前記同相信号除去演算機能により同相信号を除去することで得られた同相信号成分除去信号の絶対値を演算する絶対値演算機能と、該絶対値を時間積分演算する積分演算機能を備え、該積分演算機能により得られた複数の積分値を前記加算演算機能で加算し、該加算演算機能により得られた加算信号と閾値とを前記比較機能により比較する構成を採用し得る。
もう一つの問題として、磁性体の移動速度による影響がある。磁性体を高速で移動した場合、磁束密度の変化デルタBは大きくなるが、変化している時間は短くなる。逆に磁性体を低速で移動した場合、磁束密度の変化デルタBは小さくなるが、変化している時間は長くなる。
これは自転車等の発電機(ダイナモ)による発電と原理的には同じである。発電機を早く回せば電球が明るく光り、ゆっくり回せば暗くなる。一見、早く回した方が出力される電力量(エネルギー)が大きくなるように見える。しかし、実際には1回転で発生する電力量は、回転速度に関係なく一定である。早く回すことによって単位時間に発生する電力量が多くなることによって、電球の明るさ=電力=電力量/時間が大きくなっただけである。
ある磁性体が磁気センサの近傍を同一条件で通過した時に、磁気センサの位置で発生する磁気エネルギーは、通過速度に関係なく一定である。したがって、磁束密度の変化デルタBではなく、磁気エネルギーで評価すれば、磁性体の速度に関係なく、これを検知することが可能である。磁気エネルギーは、磁束密度の変化デルタBを時間で積分した値であり、特に複雑な演算は必要としない。
また、磁気センサには直流的なバラツキがある。複数の磁気センサを使用した場合、直流値が全て同じとは限らない。各磁気センサについて、1個づつ調整を行えばバラツキを抑制することは可能だが、高度な技術を必要とし、現実的には不可能である。
磁気センサの信号のうち、直流成分を取り除き、交流成分のみとすれば、バラツキの問題を解決することができる。
さらに、本発明は、演算方式の一つとして、少なくとも一以上の磁気センサを備えるセンサユニットが検知物の進行方向に対して前後に配置されて成るセンサ部を有する構成となっており、演算部は交流成分演算部と同相信号除去部と前後比率演算部と積分部と判定部とから構成されており、交流成分演算部は積分演算機能と減算演算機能とを備えた磁気センサと同数の交流演算からなり、同相信号除去部は減算演算機能を備えた磁気センサと同数の同相演算と加算演算機能と除算演算機能からなり、前後比率演算部は加算演算機能と比率演算機能と乗算演算機能と絶対値演算機能とを備えた磁気センサの半数の比率演算と加算演算機能からなり、積分部は積分演算機能からなり、判定部は閾値を入力する閾値入力機能と比較演算機能からなり、告知機能は所定手段により使用者に対して警告を告知する構成となっており、ゲート近傍の磁性体の影響を抑制する構成となっている。
上記構成からなる磁性体検知機において、複数の磁気センサを同時に動作させ、各磁気センサの検出信号の積分値を夫々交流成分演算部の積分演算機能で求め、夫々の検出信号とその積分値の減算値を交流成分演算部の減算演算機能で求め、得られた夫々減算値の加算値を同相信号除去部の加算演算機能で求め、得られた夫々加算値の除算値を同相信号除去部の除算演算機能で求め、夫々の減算値と除算値との減算値(第二減算値)を同相信号除去部の減算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の加算値(第二加算値)を前後比率演算部の加算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の比率を前後比率演算部の比率演算機能で求め、前後夫々の第二加算値と比率との乗算値を前後比率演算部の乗算演算機能で求め、得られた前後夫々の乗算値の絶対値を前後比率演算部の絶対値演算機能で求め、得られた全ての絶対値の加算値(第三加算値)を前後比率演算部の加算演算機能で求め、得られた第三加算値の積分値(第二積分値)を積分部の積分演算機能で求め、閾値を判定部の閾値入力機能で入力し、第二積分値と閾値との判定値を判定部の比較演算機能で求め、得られた判定値によって告知機能が動作されることとなる。
また、本発明は、演算方式の一つとして、前記磁性体検知機において、前記センサ部におけるセンサユニットが検知物の進行方向に対して前後及び左右に配置されるとともに、前記演算部に左右同相除去部が備えられた構成となっており、左右同相除去部は二つの同相率演算機能と左右計数演算機能と乗算演算機能からなり、同相率演算機能は減算演算機能と第一の絶対値演算機能と第二の絶対値演算機能とを備えた磁気センサの半数の絶対・減算演算機能と第一の加算演算機能と第一の除算演算機能と第二の加算演算機能と第三の加算演算機能と第二の除算演算機能からなる構成を採用し得る。
上記構成からなる磁性体検知機において、複数の磁気センサを同時に動作させ、各磁気センサの検出信号の積分値を夫々前記交流成分演算部の積分演算機能で求め、夫々の検出信号とその積分値の減算値を前記交流成分演算部の減算演算機能で求め、得られた夫々減算値の加算値を前記同相信号除去部の加算演算機能で求め、得られた夫々加算値の除算値を前記同相信号除去部の除算演算機能で求め、夫々の減算値と除算値との減算値(第二減算値)を前記同相信号除去部の減算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の加算値(第二加算値)を前記前後比率演算部の加算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の比率を前記前後比率演算部の比率演算機能で求め、前後夫々の第二加算値と比率との乗算値を前記前後比率演算部の乗算演算機能で求め、得られた前後夫々の乗算値の絶対値を前記前後比率演算部の絶対値演算機能で求め、得られた全ての絶対値の加算値(第三加算値)を前記前後比率演算部の加算演算機能で求め、左右夫々の第二減算値の絶対値(第二絶対値)を左右同相除去部の第一の絶対値演算機能で求め、左右夫々の第二減算値の加算値(第四加算値)を左右同相除去部の第一の加算演算機能で求め、得られた左右夫々の第四加算値の除算値(第二除算値)を左右同相除去部の第一の除算演算機能で求め、左右夫々の第二減算値と第二除算値との減算値(第三減算値)を左右同相除去部の減算演算機能で求め、得られた左右夫々の第三減算値の絶対値(第三絶対値)を左右同相除去部の第二の絶対値演算機能で求め、左右夫々の第二絶対値の加算値(第五加算値)を左右同相除去部の第二の加算演算機能で求め、左右夫々の第三絶対値の加算値(第六加算値)を左右同相除去部の第三の加算演算機能で求め、左右夫々の第五加算値と第六加算値との除算値(第三除算値)を左右同相除去部の第二の除算演算機能で求め、左右の第三除算値の係数を左右同相除去部の左右計数演算機能で求め、第三加算値と係数との乗算値(第二乗算値)を左右同相除去部の乗算演算機能で求め、得られた第二乗算値の積分値(第二積分値)を前記積分部の積分演算機能で求め、閾値を前記判定部の閾値入力機能で入力し、第二積分値と閾値との判定値を前記判定部の比較演算機能で求め、得られた判定値によって告知機能が動作されることとなる。
以上の構成により、本発明は、磁性体検知機において、磁気センサをゲートの左右だけでなく前後に配置し、ゲートに対して通過する方向に移動する磁性体と、通過しない方向に移動する磁性体の検出信号の違いを前後比率演算アルゴリズムにより分別し、非通過磁性体の検出値を抑制するものである。
また、本発明は、前記磁性体検知機において、物体のゲート通過または近接を検出する物体検知機能を備え、該物体検知機能が物体を検知した場合のみ、該告知機能を作動させる構成となっている。
使用者がシールドドアを通る場合、当然であるがシールドドアの前に設置される磁性体検知機のゲートを通過する。一方、使用者が単にシールドドアに近づいた場合は、磁性体検知機のゲートを通過しない。従って、磁性体検知機のゲートの通過を検出すれば、使用者がシールドドアを通る意思がある事が判る。物体の通過または近接を検出する物体検知センサを用いて、物体の認識と同時に磁性体の検知を行った場合のみに告知する機能を追加する。この方法によって、無用な告知が低減する。
さらに、本発明は、前記磁性体検知機において、前記センサ部におけるセンサユニット内に三個以上の磁気センサが鉛直方向に間隔を開けて配置されるとともに、磁気センサ間の間隔が上方よりも下方へ向かうに従って狭く配置されている構成を採ることも可能である。
かかる構成を採用することにより、一般的に磁性体の位置が下方に配置されている用品について、磁気センサと磁性体との距離が短くなり、磁性体の検出感度を向上することが可能となる。
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、少なくとも一以上の磁気センサを備える第二センサユニットが検知物の下方に付加配置されるとともに、演算機能と閾値入力機能と比較演算機能とを備える第二演算部が備えられ、かつ、論理和演算機能を備えた構成を採ることができる。
上記構成からなる磁性体検知機において、第二センサユニットに備えられた磁気センサの出力信号の演算値を演算機能で演算し、閾値(第二閾値)を閾値入力機能で入力し、演算値と第二閾値との判定値(第二判定値)を比較演算機能で求め、前記判定値と第二判定値の論理和値を論理和演算機能で求め、得られた該論理和値によって前記告知機能が動作されることとなる。
かかる構成を採用することにより、ゲート中央を通過する点滴台等について、磁気センサと磁性体との距離を短かくすることが可能になり、磁性体の検出感度を向上することが可能となる。
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、前記磁気センサのアナログ出力量をディジタル量に変換する変換回路を各磁気センサの直近に設置する構成を採ることができる。
磁性体の有無の判断を誤らせる原因として、電気的ノイズがある。電気的ノイズはケーブルと電気的ノイズ源が構成してしまう相互インダクタンスMによって侵入する。磁気センサと演算部の距離が長い場合、長いケーブルによって接続しなければならないが、長いケーブルは原理的に大きな相互インダクタンスMを持つため、磁気センサの検出出力に電気的ノイズが重畳されてしまう。その結果、磁性体の有無の判断を誤ってしまう。
磁気センサと演算部を近接すればケーブルが短くなるので、相互インダクタンスMが小さくなり、電気的ノイズを小さくすることが可能である。しかし、磁気センサをゲートに取り付けなければならないため、ケーブルを短くすることは不可能である。そこで、磁気センサの直近にアナログ値である磁気センサの出力信号をディジタル値に変換する変換回路を備えることが有効である。ディジタル値であれば、ケーブルが長くても、伝送品質を確保すればノイズの影響を受けない。
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、電源回路の数量を前記磁気センサと同数備え、各磁気センサと前記変換回路の直近に該電源回路を設置する構成を採ることができる。
磁気センサに供給する電源に電源変動があった場合、出力信号にその変動の影響が出てしまう。ケーブルが長い場合、抵抗成分Rがあるため、負荷電流が変動した場合、電源電圧の変動になってしまう。そこで、磁気センサの直近に電源回路を設け、負荷電流の変動があっても、磁気センサに安定的に電源を供給することが可能となる。
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、回路電流を測定する電流検知機能と、該電流検知機能に流れる電流を一定に制御する制御機能と、該制御機能によってダミー電流を流すダミー電流機能を備え、電流検知機能にダミー電流機能を接続し、回路電流とダミー電流の合計を一定にする構成を採用し得る。
かかる構成を採用することにより、回路の消費電流の変動を抑制し、全体の消費電流を一定にすることにより、磁気センサの誤動作を抑制することが可能になる。
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、前記閾値を可変にする機能を備える構成を採用し得る。
かかる構成を採用することにより、使用する環境における定常的な磁気的ノイズに合わせた適切な判定閾値を設定することにより、磁性体検知機の誤動作を抑制することが可能になる。
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、第三閾値を入力する第三閾値入力機能と前記磁気センサの出力と該第三閾値を比較する第二比較機能を備え、該第二比較機能の第二比較結果によって前記告知機能を有効にする構成を採用し得る。
すなわち、絶対持ち込んではならない鉄製酸素ボンベのような大きな磁性体をゲートに近づけた場合、仮にゲートを通過する意思がなくても告知する必要もあるため、物体検知センサの検出出力に関係なく、告知する設定も必要になる。
上記本発明による構成によれば、告知する磁性体検知の閾値は、ゲートを通過する時に使用する閾値とは別の値が設定することが可能となる。
さらに、本発明は、前記磁性体検知機において、前記比較結果によって前記告知機能を有効にする機能と、前記第二比較結果によって前記告知機能を有効にする機能を、選択するための選択機能を備えた構成を採用し得る。
使用する環境によって、物体を検知した時の磁性体検知結果と、物体を検知しない時の磁性体検知結果の一方だけが必要な場合もある。また両方の結果が必要な場合もある。これらは、上記本発明にかかる構成とすることで、スイッチ等によって選択可能にして解決することができる。
さらに、本発明は、前記磁性体検知機において、電気接点を備えるとともに、前記告知機能に同期して該電気接点を開閉する機能を備える構成を採用し得る。
ゲートを通過した後でも容易に警告を認識させるには、進行方向に告知手段を設けることである。そこで、告知手段を動作させるために、電気接点を備え、告知手段を動作させることで解決することができる。
ゲートを通過する使用者の他に、告知手段を他に備えることにより、制御室に居る検査技師にも告知することが可能である。更に通信手段を使用することにより、病院の内部及び外部の管理者等に告知することも可能である。
さらに、本発明は、前記磁性体検知機において、ドア枠を備え、該ドア枠に前記磁性体検知機の各機能のうちすくなくとも一以上を内臓させた構成を採用し得る。
設置コストを低減するために、ドア枠自体に各機能の全てまたは一部を組み込む手段を用いることが有効である。ドア枠内部に機能を持っているため、設置作業はドア枠を取り付ける作業と同等で済むため、安価に設置することができる。また外観にケーブル等が露出しないので、外観も向上する。
さらに、本発明は、磁束密度を検出する磁気センサとゲートを通過した事を検出する通過センサと判定演算機能と告知機能からなる磁性体検知機において、2枚の高透磁率の磁性体を備えることにより、その中央付近を通過する小さな被検知磁性体の検知出力を大きくする構成を採用することもできる。
また、磁気センサの近傍に透磁率が高い磁性体を備えることにより、ゲート外の磁性体やシールドドアに含まれる磁性体の影響を抑制する構成を採用し得る。
また、一般的にICタグシステムと呼ばれる機能を備え、通過する用品や使用者に付けられたICタグのID番号によって、告知を行う判定閾値を選定することにより、適切な告知を行う構成となっている。
磁気センサは磁束密度Bの変化を検出するデバイスである。従って、磁束密度Bの変化が大きい物程確実に被検知磁性体を検知することができる。一般的に形状の大きな磁性体ほど磁束密度Bの変化が大きい。従って小さな形状の被検知磁性体程検出は困難である。
対象とする被検知磁性体を大きくすることはできないが、等価的な磁性体の形状を大きくすることは可能である。磁束線は磁性体に引き寄せられる性質を持つ。複数の磁性体を接触または近接させることによって、1つの大きな磁性体を形成することができる。
点滴台の台座の場合、床面近くを移動するという特徴がある。そこで2枚の磁性体板を床面に配置すれば、通過時に近接する。近接すれば、点滴台と2枚の磁性体板によって1つの大きな磁性体を等価的に形成する。等価的に大きな磁性体を形成することによって、磁束密度Bは大きく変化する。その結果、点滴台の台座のような小さな磁性体であっても確実に検知することが可能になる。
磁気センサは、磁束密度Bの変化を検出することができるが、変化を発生させた磁性体がどの位置にあるのかを検知する機能は持たない。従って、磁性体がゲートを通過する物なのか、ゲートを通過しない物なのかを区別することはできない。
使用者から見た場合、ゲートを通過する物体に限定して磁性体/非磁性体の判定を行うことが望ましい。ゲートを通過しない物体は、磁性体であってもこれを告知しないことが望ましい。したがってゲートを通過する磁性体は信号であり、ゲートを通過しない磁性体はノイズである。
ゲートを通過しない磁性体はノイズであり、告知する必要はない。そこでゲートに物体検知機能を設け、物体が通過した時だけ告知を有効にする。この方法により、ゲートに物体が通過しなければ、不要な告知を行わないようにすることが可能になった。
しかし前記物体検知機能を使用しても、磁性体を所持しない使用者がゲートを通過した時に、ゲートを通過しない磁性体が移動した場合、磁気センサがこれを検知して、不要な告知を行なってしまうという問題があった。告知された使用者が、磁性体の所持を改めて確認しても、磁性体は所持していない。したがって使用者は、磁性体検知機が誤動作したと判断する。
以上の問題があるため、物体の通過の有無とは関係なく、ゲートを通過しない磁性体を全く検知しない事が望ましい。しかし磁束密度の変化は、磁性体の大きさと透磁率と磁気センサまでの距離によって決定される物理的な性質を持っており、ゲートを通過するか通過しないかには関係がない。したがって、ゲートを通過しない磁性体を完全に排除する方法は原理的に存在しない。
ゲートを通過しない磁性体を完全に排除する方法は存在しないが、抑制する事は可能である。その方法として磁気シールド法がある。ゲートの外側を磁性体で形成することによって、ゲートの内側の磁束密度Bの変化を抑制する方法である。ゲートの内側に磁気センサを設置すれば、ゲートを通過しない磁性体を抑制することができる。
ゲートを通過しない磁性体として、廊下を通る車椅子や、シールドドアに含まれる磁性体などが想定される。
但し磁気シールドにより、ゲートを通過しない磁性体の影響を抑制することは可能であるが、完全に排除することはできない。
MRI診断室には、危険な磁性体を含む物体を持ち込んではならない。ここで説明する危険な物体とは、MRI装置の強力な磁石に吸引されることによって、人的または物的な被害を発生させる物体のことである。これらの被害を与えなければ、磁性体を含んでいても危険な物体ではない。
例えば、車椅子のベアリング等には磁性体である鋼鉄が使用される場合が多い。しかし車椅子全体の質量に比べ、ベアリングの質量が極めて小さければ、吸引されることはない。また、技師や看護士などの使用者が身に付けている筆記用具や衣類や靴にも磁性体が使用される場合がある。しかし、これらの質量が小さければ吸引されることはない。
危険か危険でないかは、使用者の主観に基づく判断によるものであり、磁性体の質量や形状には直接的な関係がない。
前記したように磁気センサは磁束密度Bの変化を検出するデバイスである。磁性体を含む物体の質量比を検知したり、使用者の意図を汲み取って危険か危険でないかを判定する機能は持たない。単純に磁束密度Bの変化が大きければ、これを検出して告知する。
危険でない物体に含まれる磁性体によって、磁束密度Bの変化が判定閾値より大きな値になった場合、磁性体検知機は告知する。これは磁性体検知機から見た場合、正常な動作であり問題はない。
しかし、使用者から見た場合、告知する必要のない物まで告知されるため、煩わしいと感じ、無視するようになる。無視するようになった結果、使用者が実際に危険な磁性体を含む物体を持ち込んで告知されても無視してしまい、吸引事故が発生してしまう危険性が生じてしまう。
告知を有効にするには、危険でない物体について告知しないようにする必要がある。
そこで、使用者の主観に基づく危険でない磁性体を含む物体について、その物体が発生させる磁束密度Bの変化を予め記録し、その記録した値より低い値であれば告知しないような仕組みを持てば、不要な告知を防ぐことができる。
近年、一般的にICタグシステムと呼ばれる機能が普及しつつある。一般的に固有のID情報を持ったICチップとアンテナを備えたタグを商品などに付け、そのID情報をアンテナと処理装置から構成される非接触式のリーダで読み出すシステムである。ICタグ自体には電池のような電源は備えずに、リーダから電波を使用して電源を供給する。ICタグ自体は比較的安価で小型であり、商品などに貼り付けて使用するのが一般的である。
一般的に病院において、MRI診察室で使用できるMRI用品や入室許可されている技師や看護士などの使用者は制限されている。そこで、ICタグをMRI用品や技師や看護士に取り付ける。技師や看護士は通常名札を付けているので、この名札にICタグを貼り付けることも可能である。
このICタグシステムを使用すれば、通過する用品や使用者のID情報を読み出すことができる。通過する用品や使用者による磁束密度Bの変化が、予め記録されていた値より小さければ告知する必要はない。
ICタグを付けていない用品や使用者が通過し、かつ、判定閾値より磁束密度Bの変化が大きい場合、告知する。
本発明は、前記磁性体検知機において、透磁率が高い2枚の磁性体と、その中央付近を通過する小さな被検知磁性体により、仮想的に大きな磁性体を形成し、検知出力を大きくする構成となっている。
さらに本発明は、磁気センサの近傍に透磁率が高い磁性体を備えることにより、ゲート外の磁性体やシールドドアに含まれる磁性体の影響を抑制する構成となっている。
さらに本発明は、ICタグを読み取る機能を備え、通過する用品や使用者に付けられたICタグのID番号によって、告知を行う判定閾値を設定することにより、適切な告知判定を行う構成とになっている。
本発明にかかる磁性体検知機によれば、強い直流磁束密度Bの環境下であっても、高感度の磁気センサを使用することが可能なため、小さな磁性体による微小な磁束密度の変化デルタBを検出することが可能である。
また、本発明では、装置からMRI診断に影響を与える磁界を発生させず、床に段差を設けずに、低コストかつ低消費電力の磁性体検知機を構成することが可能である。
また、本発明では、ゲートを通過しない遠方や近傍の磁性体の動きによって発生する磁束密度の変化デルタBの影響を抑制することができるので、検出目的であるゲートを通過する磁性体を検出することが容易である。
また、本発明では、磁性体の移動速度の影響も抑制することができるので、磁性体の検出結果の信頼性を高くすることが可能である。
また、本発明では、必要な条件が成立した時のみに告知を出すので告知の有効性を高めることが可能である。
また、本発明では、医療用品の下方に配置されている事が多い磁性体も、磁気センサとの距離を短くすることができるので、検知感度を高めることが可能である。
また、本発明では、電気的なノイズや回路に流れる電流に起因する誤動作を抑制することが可能である。
また、本発明では、定常的な磁気ノイズ環境に合わせ、誤動作を抑制することが可能である。
また、本発明では、ゲートを通過しなくても、近づいただけで告知機能を動作させることも可能である。
また、本発明では、使用する環境に応じて告知機能を動作させる条件を設定することができることが可能である。
また、本発明では、告知情報をゲート以外の場所でも受け取れるようにすることが可能である。
また、本発明では、設置コストを低減し、外観を向上させることが可能である。
また、本発明では、点滴台のような小さな磁性体がゲートの中央を通過する場合であっても、磁束密度Bの変化を大きくすることができるので、確実にこれを検出することが可能である。
また、本発明では、ゲート外の磁性体やシールドドアに含まれる磁性体の影響を抑制することができるので、不要な告知を防ぐことが可能である。
また、本発明では、磁性体を一部含む用品に対して、適切な判定閾値にすることができるので、不要な告知を防ぐことが可能である。
本発明にかかる磁性体検知機は、磁気センサの検出軸を鉛直方向または水平方向に設定することにより、飽和することなく微小な磁束密度の変化デルタBを検出する。また、同時に動作し、検出空間の周囲に配置する複数の磁気センサによって、遠方の磁性体の移動による磁束密度の変化デルタBの同相成分を除去すると共に、移動速度に影響される磁束密度の変化デルタBの大きさではなく、通過によって発生する磁気エネルギーを検出することによって、磁性体の有無を判定する。また、前後に配置した磁気センサが検出した磁束密度の変化量デルタBの大きさの比率によってゲート方向に磁性体が移動しているのか、移動していないかを判定するものである。更にゲートの左右に配置された磁気センサが検出した磁束密度の変化量デルタBの同相信号成分から磁性体の距離を判定し、ゲート内を通過するのか、ゲート外を通過するのかを判定する。また、物体検知センサによって、必要な条件が成立した時のみに告知を出す。また、一般的な磁性体である鉄が重量物であることから下方に配置されるという特徴を利用し、磁気センサを不等間隔に配置し、下方の磁性体の検出値を向上するものである。また、点滴台のような磁性体の場合、重量物である鉄が台座に使用されている場合が多いという特徴を利用し、床下に磁気センサを配置することによって、磁性体と磁気センサとの距離を近接させ、磁気センサの出力を大きくすることによって磁性体の検出値を向上するものである。また、電気的なノイズや回路に流れる電流に起因する誤動作を抑制するものである。また、定常的な磁気ノイズ環境に合わせ、誤動作を抑制することである。また、ゲートを通過しなくても、近づいただけで告知機能を動作させることも可能である。また、本発明では、使用する環境に応じて告知機能を動作させる条件を設定することができることが可能である。また、本発明では、告知情報をゲート以外の場所でも受け取れるようにすることが可能である。また、本発明では、設置コストを低減し、外観を向上させる。また、小さな磁性体がゲート中央付近を通過する際に、2枚の高透磁率の板と組み合わせて、等価的に一つの大きな磁性体を形成することによって、磁束密度Bの変化を大きくし、確実に小さな磁性体を検知するものである。さらに高透磁率の板をゲートの外側に設置することによって、ゲート外の磁性体による磁束密度Bの変化を抑制することで、不要な告知を低減するものである。さらに持ち込まれるMRI用品に含まれる磁性体に応じた判定閾値に変更することによって、不要な告知を低減するものである。
以下、本発明にかかる磁性体検知機の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明にかかる磁性体検知機の構成態様を示す概略説明図である。図1は、磁石4の中心軸5が水平の場合に適用されるものである。磁気センサ1の検出軸2と鉛直軸3との立体角θDが15°以内にあることを示している。磁石4の中心軸5は水平に設置されている。なお磁気センサ1と磁石4の形状は、具体的な形状を示すものではなく、機能を模式的に示すものである。
図2は、本発明にかかる磁性体検知機の構成態様を示すもう一つの概略説明図である。図2では、磁石4の中心軸5が鉛直の場合に適用されるものである。磁気センサ1の検出軸2と水平軸6との立体角θDが15°以内にあることを示している。
次に順を追って、図1及び図2に示す構成態様が有効であることを説明する。
最初に磁気センサ1によって磁性体7を検出する原理を説明する。図3に磁界内に磁気センサ1のみが設置された状態を示す。模式的に直流磁束密度Bのベクトルを四角錐で表現する。磁気センサ1にはスカラ量Bt1を持つ直流磁束密度8が印加されている。検出軸2と直流磁束密度8の方向は立体角θ1の関係にある。磁気センサ1が検出するものは、検出軸2の方向の成分のみであり、このスカラ量をBs1とする。Bt1とBs1は次の数2で表される。
次に磁界内に磁性体7が入って来た状態を図4に示す。磁性体7によって、直流磁束密度8が直流磁束密度9に変化する。スカラ量がBt1からBt2に変化し、立体角もθ1からθ2に変化する。その結果磁気センサ1の検出軸2の方向成分のスカラ量Bs2は次の数3のように変化する。
従って、磁性体7によって磁気センサ1の検出軸2の方向成分のスカラ量の変化量デルタBsは次の数4で示すことができる。
磁気センサ1の検出出力の変化量デルタVoは、変換係数をαとすると、次の数5で示される。
デルタVoの値をある閾値で判定することによって、磁性体の有無を判定することができる。
ここで数2を見ると、同じスカラ量B1tを持つ直流磁束密度8を印加しても、直流磁束密度8と検出軸2の立体角θ1によって、検出軸2方向の磁束密度のスカラ量Bs1が変化する事が判る。直流磁束密度8の方向と検出軸2の方向が一致すればcos0°=1となり、スカラ量Bt1全てが磁気センサ1に印加される。スカラ量Bt1が磁気センサ1の入力許容範囲であるダイナミックレンジを超えた場合、飽和してしまい、検出することができなくなる。なお、直流磁束密度8の方向と検出2xの方向が逆方向の場合もcos180°=−1となり、同様に飽和する。
一方、直流磁束密度8の方向と検出軸2の方向が直交すればcos90°=0となり、スカラ量Bt1は磁気センサ1に印加されない。従ってスカラ量Bt1がどのような大きな値であっても、磁気センサ1は飽和しない。
磁気センサに限らず、分解能が高いセンサは、必然的にダイナミックレンジが小さい。センサを飽和させずに動作させるには、センサに入力する直流成分を小さくしなければならない。従って、小さな磁性体を検出するには、直流磁束密度8のベクトルと磁気センサ1の検出軸2のベクトルの立体角θ1を、直交または直交に近い角度に設定する必要がある。
磁性体検知機を設置する時に、直流磁束密度8の方向を測定器を用いて測定し、検出軸2との立体角θ1を直交するように調整すれば、上記問題は解決する。しかし、直流磁束密度8の方向は設置環境によって千差万別であり、一定方向ではない。これを調整するには測定器と、設置者の技能が求められる。設置費用を含めた総合的なコストを低減するには、特別な測定器や技能なしで設置しても、高分解能の磁気センサ1を強い直流磁束密度環境下で使用できるようにしなければならない。
図5にMRI診断装置が設置されている診断室10の模式図を示す。MRI装置の磁石4の中心軸5は水平に設置されている。診断室10の4方向には壁11、壁12、壁13、壁14があり、上方には天井15、下方には床16がある。診断室の外部に漏洩する直流磁束密度Bを低減するために、診断室の幅及び奥行きは6〜15m程度ある。幅及び奥行きや形状は、設置環境によって異なる。
診察室10の壁11〜14のいづれかにはシールドドア17が設置されている。シールドドア17の高さは約2m、幅は約1〜1.4mであり、設置環境による大きな違いはない。シールドドア17は壁11〜14のいづれかに設置されるが、どの壁に設置されるのかは不定であり、MRI診断装置に備わる磁石4との相対的な位置は設置環境によって異なる。実際の天井15の高さはシールドドアの高さより一般的に高いが、本発明による磁性体検知機は、シールドドア17を通過して侵入する磁性体を検知すれば問題ないので、等価的な天井の高さは約2mである。磁石4の中心軸5は水平に設置しており、この方向を以下x軸とする。x軸に直交する水平軸を以下y軸とし、鉛直軸を以下z軸とする。中心軸5と床16の間隔は約1mであり、設置環境による大きな違いはない。なお、図5では診察室の形状を上方から見て長方形としたが、壁11〜14がほぼ鉛直であれば、形状を規定するものではない。
図6に中心軸が水平に設置されている磁石4が発生する立体的な磁束線による直流磁束密度Bのベクトル8を立体的に示す。ベクトル8はx、y、zの座標で表現される空間によって、立体的に色々な向きとスカラ量を持っている。診断室10外に漏洩する磁束密度のスカラ量は、設置上の勧告基準として500μT以下という値が設定されている。以降、具体的な数値を例にして計算を行うが、磁石の強さや診察室の大きさなどの数値は計算例であり、これらの数値に拘束されるものではない。
1.5T相当の磁石をシミュレーションするために、直径1m、長さ1mの磁石4に約4.4MA/m2の電流を流し、磁界を発生させる。漏洩直流磁束密度Bの勧告基準である500μT以下にする診察室10の大きさは、x軸方向9m、y軸方向7.2mである。以降、このような形状の診断室10の壁にシールドドア17を設置した場合を想定して計算を行う。なお座標原点は、磁石4の中心とする。
図7に診断室10のz=0の平面上の直流磁束密度Bのベクトル8を示す。図8に図7で示した壁11におけるx、y、z方向成分とスカラ量の直流磁束密度Bx、By、Bz、及びBtを示す。同様に図9に壁12における直流磁束密度Bx、By、Bz、及びBtを示す。なお、壁13及び壁14の直流磁束密度は、壁11及び壁12の符号が反転したものであり、絶対値は同じである。
図8及び図9より、直流磁束密度のスカラ量Btは、200〜500μTと大きな値を持っている事が判る。
磁気センサ1の検出軸2を水平にして、x方向またはy方向に設置した場合、検出軸2方向に印加される直流磁束密度は、BxまたはByの値である。図8及び図9から、BxまたはByの値は、場所によっては0μTだが、最大値は500μTである。
従って検出軸2を水平に設置した場合、飽和せずに動作させるには、磁気センサ1のダイナミックレンジは500μT以上必要になる。ダイナミックレンジの大きなセンサは、必然的に分解能が低い。従って、小さな磁性体がゲートを通過しても、これを検知することができない。
再度図8及び図9を見ると、z方向、即ち鉛直方向の直流磁束密度Bzは、どの位置であっても0である。これは、磁石4の中心軸5に直交する方向には、直流磁束密度Bが発生しないためである。従って、z=0の平面上に磁気センサ1を配置し、検出軸2を鉛直方向であるz軸方向に設置すれば、シールドドア17の設置位置に関係なく、検出軸2方向の直流磁束密度は、Bz=0となる。
したがって、z=0の平面上に磁気センサ1の検出軸2を鉛直方向に設置すれば、ダイナミックレンジの小さな磁気センサを使用しても飽和することはない。ダイナミックレンジは小さいが、高分解能の磁気センサであれば、小さな磁性体を検出することが可能である。
しかし、磁気センサ1をz=0の平面上に配置するには、磁石4の中心軸5を測定してその位置に合わせなければならない。実際の設置作業において、このような作業を行うには専門的な知識が必要であり、現実的ではない。色々な要因によって、z=0の平面上と磁気センサ1の距離は0にはならない事を前提にする必要がある。
視点を変え、診断室10のy=0の正面上の直流磁束密度Bのベクトル8を図10に示す。発生する直流磁束密度Bのベクトル8の向きとスカラ量は図7と全く同じである。しかし、天井15と床16という構造物までの距離が異なる。
図11に壁11のy=0における直流磁束密度Bx、By、Bz、及びBtを示す。また図12に壁12のx=0における直流磁束密度Bx、By、Bz、及びBtを示す。なお、壁13及び壁14の直流磁束密度は、壁11及び壁12の符号が反転したものであり、絶対値は同じである。
図11に示すように、中心軸5から最も離れている天井15、即ちz=1mと、床16、即ちz=−1mの位置であっても、Bzの最大値は150μTであり、Bx、Byの最大値の500μTより小さな値になっている事が判る。
磁気センサ1の検出軸2を鉛直軸3に設置した場合、検出軸2に印加される直流磁束密度Bzの値は、検出軸2を水平方向に設置した場合より小さくなる。これは、磁石の中心軸5と天井15及び床16との距離が、壁11〜壁14の距離よりも短いためである。zの座標がz=0より離れるに従って、直流磁束密度Bzの値が大きくなるが、BxやByより小さい値で済む。
磁気センサ1と磁石4の中心軸5との取り付け位置の最大公差を0.25mとし、z=0.25mの位置の壁11及び壁12の位置に磁気センサ1を取り付けた場合の直流磁束密度Bx、By、Bz、及びBtを計算した結果を図13と図14に示す。なお、z=−0.25mの位置の磁束密度は符号が変わるだけで、絶対値は同じ値である。
図13及び図14より、鉛直方向の直流磁束密度Bzの最大値の絶対値は50μTであることが判る。従って検出軸2を水平軸方向に設置する場合に比べ、鉛直軸方向に設置すれば、1/10のダイナミックレンジの磁気センサ1を使用しても、飽和せずに検知動作を行うことができる。これは、検出軸2を水平軸方向に設置する場合に比べ、鉛直軸方向に設置すれば、10倍の分解能を持つ磁気センサ1を使用しても飽和せずに、小さな磁性体を検知できるという意味である。
以上説明したように、磁気センサ1の検出軸2を鉛直方向に設置することによって、強い直流磁束密度の磁石4の近傍でも、飽和せずに使用することが可能になる。高感度の磁気センサ1を使用することが可能になるので、小さな磁性体を検出することが可能になる。
しかし、図15に示すように、磁気センサ1を筐体18に取り付ける時、必ず検出軸2と筐体18の筐体軸19が一致するとは限らない。同様に筐体18を壁20に取り付ける時、筐体軸19と鉛直軸3が一致するとは限らない。色々な公差などの誤差によって、検出軸2を鉛直軸3に完全に一致させる事は、不可能である。
そこで、検出軸2と鉛直軸3の立体角にある程度の公差θDを予め設けることにする。しかし、θDが大きくなり過ぎると、磁気センサ1の検出軸2に発生する直流磁束密度Bsが大きくなるため、飽和してしまって動作することができない。検出軸方向の直流磁束密度Bsを直流磁束密度Bの30%以下にするならば、上記数1より磁気センサ1の検出軸2と鉛直軸3の立体角θDは、15°以下にすれば良い。この範囲以内であれば、飽和しにくくなる。
以上の説明は、MRI診断装置に備わる磁石4の中心軸5が水平方向に設置されている場合に適用される。しかし、オープン型MRI診断装置の中には、図2に示したように、磁石4の中心軸5が鉛直方向に設置されている物もある。このようなMRI診断装置では、鉛直方向の直流磁束密度Bが大きく、水平方向の直流磁束密度Bが小さい。従って、磁気センサ1の検出軸2を鉛直方向に設置した場合、飽和して動作することができない。
磁石4の中心軸5が鉛直方向に設置されている環境では、磁気センサ1の検出軸2を、水平に設置する。同様に取り付け公差が存在するため、磁気センサ1の検出軸2と水平軸6の立体角θDは、15°以下にすれば良い。この範囲以内であれば、飽和しにくくなる。
磁石4の中心軸5の設置方向によって、磁気センサ1の検出軸2の方向が異なる。従って1種類の磁性体検知機で2種類のMRI診断装置に適用させるのは不可能である。しかし、2種類のMRI診断装置を同一場所で使用することはないので、特に問題はない。
磁気センサ1の検出軸2の立体角度は、鉛直軸または水平軸に対して15°以下であれば問題ないが、特殊な環境条件を考慮して、角度を調整する機能を設けても問題はない。
また、角度を調整する機能を使用して、中心軸の異なる2種類のMRI診断装置に対応しても問題はない。
本発明に使用する磁気センサとして、磁気コイル以外のMRセンサや、MIセンサやフラックスゲートセンサやホール素子など、自分自身で磁場を発生させない磁気センサであれば、磁気干渉や段差やコストや消費電力の問題について解決することができる。
次に本発明に係わる複数の磁気センサによる小さな磁性体の検出について以下説明する。
磁性体によって発生する磁気センサの位置における磁束密度の変化デルタBは、色々なパラメータによって複雑に変化する。
その値は、磁性体の透磁率や形状や寸法や向きなどによって、大きく変化する。また、磁気センサとの距離や向きによっても大きく変化する。これらは基本的に物理的な法則による単純な数式で表現することができるが、実際の形状等が複雑であるため、単純に求めることはできない。極めて複雑な解析を行なう必要がある。
これらの中の重要なパラメータの一つとして、磁性体と磁気センサとの距離がある。基本的な物理的法則として、磁束密度の変化デルタBは、磁性体と磁気センサ間の距離の2乗に反比例する。この物理法則のため、磁気センサから近い位置の磁性体には大きく反応するが、遠い位置の磁性体の反応は小さくなる。
実際には複雑なパラメータがあるため、単純な計算通りにはならないが、概ね法則に従う。
シールドドアの高さを約2m、幅を約1.4mとし、1つの角に磁気センサを設置した場合、対角までの距離は約2.4mになる。
磁性体が磁気センサの直近を通過した場合、磁気センサは大きく反応する。しかし、対角を通過した場合、極めて小さな反応しかない。この現象は、距離によって決定される磁束密度の変化デルタBで決まるものであり、磁気センサの種類や感度には全く関係がない。
したがって、偶然、磁性体が磁気センサから遠い位置を通過した場合、これを検出できなくなる可能性がある。
そこで図16に示すように、シールドドアに相当するゲート21の周囲に、複数の磁気センサ22〜29を設置する。通過磁性体30は、ゲート21を通過する。
図16では8個の磁気センサを示しているが、必要に応じた数量を備える。またゲート21は、使用者や物体が通過し、通過磁性体30を検出する空間を意味する。したがってゲート21は具体的な構造物で構成する必要はない。
通過磁性体30が、ゲート21のどの位置を通過するかは不定である。しかし、どの位置を通過しても、磁気センサ22〜29のいづれかには近づく。
通過磁性体30がゲート21の中央を通過した場合、最も磁気センサ22〜29から遠い位置になるが、ゲート21の幅約1.4mの半分の約70cmで済む。
磁気センサが1個の場合の対角距離約2.4mに比べ、約0.3倍の距離になるため、11.8倍大きな磁束密度の変化デルタBになる。
通過磁性体30と、ある磁気センサが遠い位置であっても、他の磁気センサが近い位置であれば、通過磁性体30を検出することは可能である。したがって、装置全体の検出機能としては問題はない。
先にも述べたように、磁束密度の変化デルタBは、磁性体と磁気センサの距離の2乗に反比例する。従って、1個のセンサでは磁性体が通過する空間であるゲート全体を検出することは不可能である。ゲートの左右両側に磁気センサを備えることにより、の空間を検出すればよい。磁性体と磁気センサの最大距離が1/2になることによって、磁気センサの位置における磁束密度の変化デルタBを4倍にすることができる。
以上説明したように、ゲート21の周囲に、複数の磁気センサ22〜29を設置することによって、通過磁性体30を検出することが可能になる。
次に本発明に係わる演算によるゲートを通過しない遠方や近傍の磁性体の動きによって発生する磁束密度の変化デルタBの影響を抑制と磁性体の移動速度の影響の抑制について以下説明する。
図17に、本磁性体検知機のブロック図を示す。
センサ部34は、ゲート21の前後左右に配置された4つのセンサユニット35〜38から構成されている。センサユニット35〜38には複数の磁気センサ22〜29が内臓されている。図17では1つのセンサユニットに2個の磁気センサを示しているが、必要に応じた数量を備える。通過磁性体30はゲート21を通過する磁性体である。非通過磁性体31は、ゲート21を通過しない磁性体である。ゲート外通過磁性体32は、ゲート21の外側を通過する磁性体である。遠方磁性体34は、ゲート21から遠方にある磁性体である。
演算部39は、磁気センサの磁気信号処理部40と判定部41から構成されている。判定部41は、閾値を入力する閾値入力機能42と比較演算機能43から構成されている。
告知機能44は、使用者に対して警告を告知する機能である。告知する手段としては、光によるものや音声による方法などがある。また複数の手段を使用する方法もある。告知する場所も1箇所だけでなく、複数の場所で告知する方法もある。
本磁性体検知機は、通過磁性体30を検出し、その検出値が閾値以上であれば、告知機能44を動作させる。
しかし、センサ部34に存在する磁性体は、通過磁性体30だけではない。非通過磁性体31や、ゲート外通過磁性体32や、遠方磁性体33などが存在する。これらについて検出し、告知機能44を動作させた場合、不要な告知が多発する。磁性体31〜33によって不要な告知が頻繁に行われた場合、使用者は本磁性体検知機が誤動作したと判断する。連続して不要な告知を受けた場合、使用者は本磁性体検知機について信用しなくなったり、あるいは無視したり、機能を停止させてしまう。
このような状態において、実際に通過磁性体30をゲート21を通過させてMRI診断室に持ち込んだ場合、告知を受けても無視し、結果的に吸引事故を発生させてしまう危険性がある。
以上の理由から、通過磁性体30については告知動作を行うが、非通過磁性体31や、ゲート外通過磁性体32や、遠方磁性体33などについては告知動作を行わないことが理想である。したがって、通過磁性体30のみを検出し、その他の磁性体は検出しない事が望ましい。
しかし、磁気センサ22〜29は、磁性体がどの位置にあっても検知する。これは磁気の物理的な法則であり、通過磁性体30のみを検出することは原理的に不可能である。
磁気センサ22〜29に通過磁性体30のみを検出させることは不可能であるが、非通過磁性体31や、ゲート外通過磁性体32や、遠方磁性体33などの検出信号の特徴を抽出し、これを抑制することは可能である。
本磁性体検知機では、信号処理部40にてこれらの信号処理を行う。
また、通過磁性体30についても、必ず同じ速度で移動するとは限らない。早く移動する場合もあれば、ゆっくり移動する場合もある。
早く移動した場合、磁束密度の変化デルタBは、変化量が大きいが、短時間で元に戻る。一方ゆっくり移動した場合、磁束密度の変化デルタBは、長時間変化するが、変化量が小さい。この現象も物理的な法則に基づくものであり、変えることは不可能である。
磁性体の移動速度の違いについても、信号処理部40にてこれらの信号処理を行うことによって差異を抑制する。
次に順を追って、図17に示す構成態様が有効であることを説明する。
最初に1個の磁気センサ22の検出信号によって告知機能44を動作させる基本的な方法を以下説明する。
図18に磁気センサ22の近傍で通過磁性体30をある方向に動かした時の磁束密度Bfの変化を示す。地球上には30μT程度の地磁気があり、近傍に強力な磁石がない場合は、この地磁気が印加された状態で磁束密度Bが変化する。図7を見て判るように、磁気センサ22の出力信号Bfは31.4μTを中心に変化している。
この信号を最も簡単に検出する方法として、図19に示すように比較機能43を用いた構成がある。磁気センサ22の検出信号Bfと閾値入力機能42によって入力した閾値を比較機能43を用いて判定し、告知機能44を動作させるものである。図18より、閾値として31.8μT程度に設定すれば、磁性体30を検知して告知することが可能である。
しかし、通過磁性体30がゲート21のどの位置を通過しても充分な磁束密度の変化デルタBを得られるように、複数の磁気センサ22〜29を備える。
図20に例としてB1〜B8で示す8個の磁気センサ22〜29の出力Bnを示す。図20に示すように各磁気センサの出力の中心は、31.3〜31.9μTとバラバラである。これは、磁気センサが工業製品であるので、バラツキは0ではないためである。また、地磁気は時間によって多少変化する。磁気センサ自体にも温度特性や経時変化などがあり、常に出力の中心が一定とは限らない。なお、図20では8個の磁気センサの出力値を示したが、複数個であれば数量については規定しない。
したがって、図19の構成では、閾値入力機能42を磁気センサの数量だけ備え、1個づつ常に調整し続けなければならない。この調整には専門的な知識が必要であり、一般の使用者が調整するのは極めて困難であり、現実的ではない。
図19の構成で問題になる根本的な理由は、磁気センサの出力Bnに直流成分があり、その直流成分にバラツキが発生することである。そこで、図21に示すように、磁気センサの検出信号のうち、交流成分のみを取り出す交流成分演算機能45を備えることで解決できる。具体的な交流成分演算機能45の構成方法として、積分機能46と減算機能47を組み合わせる方法や、電気的にコンデンサと抵抗を用いて直流成分を除去する方法などがある。
図21の構成を用いて得られる磁束密度Bfの交流成分信号bfを、図22に示す。直流成分がないため、閾値を500nT程度に設定すれば、通過磁性体30の通過の有無を判定することが可能である。この構成を使用すれば、複数の磁気センサを備えても、1個づつ閾値を調整する必要がなくなる。
しかし、通過磁性体30が移動する方向は必ずしも同じ方向ではなく、反対方向から移動する場合もある。また、移動速度も一定ではなく、速い場合や遅い場合もある。図23に、通過磁性体30が図18示した反対方向から遅い速度で移動した場合の磁気センサの出力Bsの交流成分信号bsを示す。
図23に示すように、bsの波高値の大きい極性は負側であり、閾値を500nT程度に設定した場合、bfは検出できるが、bsは検出することが不可能である。
通過磁性体30がどちらの方向から移動しても大きな波高値で検出する方法として、図24に示すような絶対値演算機能48を備える方法がある。絶対値演算機能48の構成方法としては、数値演算を行う方法の他に、電気的にダイオードブリッジ等を使用して構成する方法などがある。
図25に、図24の絶対値演算機能48を追加した場合の出力|bf|、|bs|を示す。図25に示す通り、通過磁性体30がどちらの方向から移動しても、大きな波高値で検出することが可能である。
しかし、通過磁性体30の移動速度が遅い場合の信号|bs|は、移動速度が速い場合の信号|bf|より小さな波高値である。これは、通過磁性体30が移動することによって発生するエネルギーがbfとbsで同じにも係わらず、通過に要する時間がbsの方が長いため、波高値が低くなったためである。
そこで、|bn|を時間で積分する積分演算機能49を追加する構成を図26に示す。積分演算機能49の構成方法としては、数値演算を行う方法の他に、電気的にコンデンサと抵抗で構成する方法などがある。
図27に、図26の積分演算機能49を追加した場合の出力DSf、DSsを示す。図27より、通過磁性体30の移動速度の影響を抑制し、ほぼ同じ値を示していることを示す。図20の場合、閾値を200nT・sec程度に設定すれば、DSfもDSsも検知することが可能である。このように変化量(デルタ)を積分(シグマ)する演算手法をデルタ・シグマ演算法と呼ぶ。
図28に、複数の磁気センサを備えた場合の構成を示す。各磁気センサの交流演算処理を行う機能ブロック45と絶対値演算機能48を複数備え、それらの出力信号|bn|を加算機能50を用いて加算し、積分演算機能49を用いてデルタ・シグマ値DSを求め、比較機能43で比較する。加算演算と積分演算は、順番が逆であっても同じ結果になる。ここでは加算演算後に積分演算を行う。この方法によって、通過磁性体30がゲート21を通過する位置や、移動方向や、移動速度による影響を抑制して検出することが可能になる。
以上説明したように、磁気センサが設置された場所の磁束密度の変化を演算することによって、磁性体の検知を行うことが可能である。しかし、磁束密度を変化させる磁性体が必ずゲート21を通過するとは限らない。図29にゲート21と色々な磁性体の平面的な位置関係を示す。図29に示すように、使用者にとって検出したい磁性体は、ゲートを通過する通過磁性体30のみである。
磁性体を持たない使用者がゲート21を通過した時と同時に、他の磁性体が動いた場合、磁気センサは磁束密度の変化を検出し、告知する。その結果、使用者は磁性体を所持していないため、磁性体検知機が誤動作したと判断してしまう。このような状態が何度も繰り返された場合、磁性体検知機に対する信頼性が低下してしまう。実際に使用者が磁性体を所持して、これを告知されても、告知を無視して磁性体を持ち込む可能性が高くなってしまう。したがってゲート21を通過しない非通過磁性体31や、ゲート外を通過するゲート外通過磁性体32や、遠方にある遠方磁性体33は検出しない方が望ましい。
使用者にとって、通過磁性体30は有用な信号Sであるが、非通過磁性体31やゲート外通過磁性体32や遠方磁性体33は無用なノイズNである。従って、ゲート21を通過する通過磁性体30のみを検出し、それ以外の磁性体を全て無視することが望ましい。しかし、磁気センサは使用者の意図を理解して動作するデバイスではなく、磁束密度の変化を検出するデバイスである。使用者が信号Sと考えるかノイズNと考えるかには全く関係がなく、磁束密度の変化があれば、これを検出する。
磁気センサ自体は、磁束密度を変化させた原因が、どの磁性体であるのかを判断する機能を持たない。したがって使用者にとって無用な磁性体を完全に除去することは理論上不可能であり、抑制するしか方法はない。本発明では、磁気センサの位置と演算によってゲート21を通過する通過磁性体30以外を抑制する手段を提供する。
次に、遠方磁性体33の影響の抑制について説明する。
図30に磁性体がほとんど動いていない時の8個の磁気センサの信号Bnを示し、図31に遠方で大きな遠方磁性体33が動いた時の各磁気センサの信号Bnを示す。図30と図31を比較すると、殆ど違いがないように見える。しかし、これらの信号を図28に示した演算処理を行ったDSの値を図32と図33に示す。磁性体がほとんど動いていない図32ではDSの値が小さいが、遠方磁性体33が動いた図33ではDSの値が大きくなっていることが判る。
使用者から見た場合、ゲート21を通過する近傍の通過磁性体30のみを信号Sとして検出し、ゲート21から離れた遠方磁性体33はノイズNとして検出しないことが望ましい。しかし、磁気センサ単体から見た場合、どちらも同じ信号であり、図28の演算処理では区別することはできない。
ここで図34に、磁気センサ22と磁気センサ26から遠方の位置にある大きな遠方磁性体33によって変化する磁束線の模式図を示す。大きな遠方磁性体33の近傍では磁束線が大きく変化しているが、磁気センサ22及び磁気センサ26の位置での磁束線のベクトル変化B1AとB2Aは小さい。また2つの磁束線のベクトル変化B1AとB2Aのスカラ量は、ほぼ同じである。
また図35に、磁気センサ22と磁気センサ26の近傍かつほぼ中間の位置にある小さな通過磁性体30によって変化する磁束線の模式図を示す。通過磁性体30が小さいため、磁気センサ22及び磁気センサ26の位置での磁束線のベクトル変化B1BとB21Bは小さい。また2つの磁束線のベクトル変化B1BとB2Bのスカラ量は、ほぼ同じである。
図34と図35に示す磁気センサ22及び磁気センサ26の位置でのスカラ量の変化は、ほぼ同じであり区別することはできない。これは、磁性体までの距離L1AとL2A及びL1BとL2Bがほぼ同じであるためである。
しかし図34と図35における、磁気センサ22の磁束線のベクトル変化と磁気センサ26の位置での磁束線のベクトル変化では向きが逆であるという違いがある。すなわち、図34に示す遠方磁性体33によって発生するベクトルの変化B1AとB2Aは同相であるが、図35に示す近傍の通過磁性体30によって発生するベクトルの変化B1BとB2Bは同相ではないという特徴を持っている。これは、磁性体との角度θ1Aとθ2Aはほぼ同じであるが、θ1Bとθ2Bには大きな違いがあるためである。
図36に、磁気センサ22と磁気センサ26の近傍かつ片方に寄った位置にある小さな通過磁性体30によって変化する磁束線のベクトルの模式図を示す。この場合2つの磁束線のベクトル変化B1CとB2Cのスカラ量は、同じではない。すなわち、同相成分の大きさは同じではないという意味になる。
図34と図35と図36の結果から、遠方磁性体33によって発生する磁束密度Bの変化は、ほぼ同相でほぼ同じ大きさであることが判る。したがって、各磁気センサから同相成分を減算すれば、遠方磁性体33の影響を抑制することが可能になる。同相信号を除去するには、図32に示すように交流成分演算を行った後で、同相信号除去機能51を用いて除去する。同相信号除去機能51は、同相成分である平均値bavを各磁気センサの交流成分bnから減算する機能である。
同相信号除去機能51は、磁気センサと同数の同相演算機能52と、加算演算機能53と除算演算機能54から構成する。同相演算機能52は、減算演算機能55から構成する。全ての磁気センサの交流成分bnを加算演算機能53で加算し、除算演算機能54で同相成分である平均値bavを求める。各磁気センサの交流成分bnから平均値bavを減算演算機能55を用いて減算すれば、同相成分を除去した信号bdnが得られる。同相信号除去機能51の構成方法としては、数値演算を行う方法の他に、電気的に減算回路と加算回路と抵抗分圧等で構成する方法などがある。
図20と図30と図31で示した8個の磁気センサの交流成分信号bnと、それらの同相成分である平均値bavを図38と図39と図40に示す。近傍の小さな通過磁性体30が動いた場合の図38では、各センサの交流成分信号bnがバラバラに変化し、その平均値bavの変化は小さい。磁性体がほとんど動いていない場合の図39では、各センサの交流成分信号bnがバラバラに変化し、その平均値bavの変化は小さい。遠方の大きな遠方磁性体33が動いた場合の図40では、各磁気センサの交流成分信号bnがほぼ同じ位相で、かつ、ほぼ同じ大きさで変化し、その平均値bavも同じように変化することが判る。
図38と図39と図40で示した各磁気センサの交流成分信号bnから平均値bavを減算した同相信号除去演算値bdnを、図41と図42と図43に示す。遠方磁性体33が動いていない図38と図39では、ほとんど交流成分信号bnと同相信号除去演算値bdnの波形の変化がないが、遠方磁性体33が動いている図43では、同相信号除去演算値bdnが大幅に小さくなっていることが判る。
図20と図30と図31で示した8個の磁気センサが検出した磁束密度Bnを図21で示した演算処理によって求めたDS値と、図37で示した演算処理によって求めた積分値を、図44と図45と図46に示す。図44より、近傍の小さな通過磁性体30が動いた場合、どちらの演算処理でもこれを検知することが可能であることが判る。図45より、磁性体がほとんど動いていない場合は、どちらの演算処理でも検知していないことが判る。図46より、遠方の大きな遠方磁性体33が動いた場合、図28の演算処理ではこれを検知してしまうが、図37の演算処理ではこれを検知ないことが判る。図37に示す演算処理を行うことによって、使用者から見た場合の信号Sである近傍の通過磁性体30を検出し、ノイズNである遠方磁性体33を抑制することが可能になる。
次に本発明に係わる近傍の磁性体の影響の抑制のうち、ゲート21を通過しない非通過磁性体31を除去する前後比率演算アルゴリズムについて以下説明する。
近傍の磁性体には、ゲート21を通過する通過磁性体30とゲート21を通過しない非通過磁性体31とゲート21の外側を通過するゲート外通過磁性体32の3種類がある。図37に示した演算アルゴリズムでは、これらの3種類の磁性体を区別することは不可能である。
ゲート21を通過する通過磁性体30と、ゲート21を通過しない非通過磁性体31では、磁性体が移動する方向が異なる。従ってこの方向を判定する手段を設ければ良い。そこでゲート21の前後方向に、2個の磁気センサユニットを設ける。動作を説明するための平面的な模式図を図47に示し、左上側の磁気センサ22、24で説明する。この磁気センサ22、24に対して通過磁性体30や非通過磁性体31が移動する。
通過磁性体30を移動させた時の磁気センサ22、24の出力の交流成分b1とb3を図48に示す。図48より、通過磁性体30を移動させた場合、ほぼ同じ振幅で同じ位相でタイミングが異なるb1とb3の波形が出力される。これは、通過磁性体30と2つの磁気センサ22と24に最接近する方向と距離がほぼ等しく、最接近する時間が異なるためである。
次に非通過磁性体31を移動させた時の磁気センサ22と24の出力の交流成分b1とb3を図49に示す。図49より、非通過磁性体31を移動させた場合、ほぼ同じ位相で異なる振幅でほぼ同じタイミングのb1とb3の波形が出力される。これは、非通過磁性体31が2つの磁気センサ22と24に最接近する距離が異なり、最接近する時間がほぼ同じになるためである。
通過磁性体30と非通過磁性体31では、図48と図49に示すように、磁気センサ22と24の出力の交流成分b1とb3に違いがある。したがってこの違いを抽出し、非通過磁性体31による検出値を抑制すれば実現可能である。
図50に通過磁性体30が移動した時と、非通過磁性体31が移動した時の2つの磁気センサ22と24の出力の交流成分b1とb3の模式図を示す。図50より、通過磁性体30を移動させた場合、同時刻におけるb1とb3の振幅の比率sjは1に近い値になる。一方、非通過磁性体31を移動させた場合、同時刻におけるb1とb3の振幅の比率sjは1により小さな値になる。従って2つの信号の振幅の比率を求めれば、その磁性体が通過磁性30であるのか、非通過磁性体31であるのかを判断することが可能である。
しかし、比率sjだけでは、b1とb3の変化の大きさを判断することができない。そこで比率sjをパラメータとする演算を行う。
演算方法としては色々な方法が想定される。ここではb1b2の加算値adfrと比率sjを乗算した値である乗算値majを使用する。
この演算方法は、本発明の一例であり、他の演算方法を使用しても問題はない。
比率sjを求める方法には色々な方法があるが、最も簡単な方法として小さな値を大きな値で除算し、絶対値を求める方法がある。図50ではb1の方がb3より大きな信号になっているが、磁性体が反対の位置で非通過した場合は、b3の方がb1より大きくなる。従って、b1とb3の絶対値を比較して、小さい値を大きな値で除算する必要がある。また、b1とb3が同時に0になる場合もある。0で除算を行うことは不可能であるので、強制的にsjをある値にする特例も必要である。2つの信号の加算値adfrを求め、比率sjを乗算すれば、乗算値majを求めることができる。
磁気センサ22と24の出力の交流成分b1とb3が、磁性体を検知していない場合、0に近い出力信号になる。0に近い値であってもホワイトノイズ成分があるため、b1とb3の値に相関関係がなくなる。したがって比率sjは不定になってしまう。比率sjは不定になるが、2つの加算値adfrは0に近い値になるため、乗算値majは0に近い値になる。したがって比率sjが不定であっても演算処理を妨げることはない。
乗算値majを求める方法としては、図51に示すように加算演算機能56と比率演算機能57と乗算演算機能58で構成することができる。比率演算機能57は、絶対値演算機能59と絶対値演算機能60と切替機能61と切替機能62と除算機能63と比較機能44と比較機能65と比較機能66と論理積演算機能67と切替機能68で行なうことができる。2つの入力信号の絶対値を絶対値演算機能59と60で求め、どちらが大きいかを比較演算機能64で比較する。比較した結果に従って、切替機能61と62を用いて2つの入力のうち、小さい方の値を除算演算機能63の分子に、大きな方の値を分母にする。除算演算機能63を用いて分子を分母で除算することにより、比率sjを求めることができる。特例として、比較演算機能65と比較演算機能66を用いて2つの入力信号を0と比較し、同時に0になった場合を論理積演算機能67を用いて判定する。同時に0になったと判定された場合、切替機能68を用いて分母を0以外の定数とし、0で除算することを防止する。これらの演算は、数値的な演算方法の他に、乗算回路や除算回路などによる電気的な演算回路で構成する方法などがある。
図48と図49で示した通過磁性体30と非通過磁性体31の波形について、図51で示した演算アルゴリズムを用いて乗算値majを求めた結果を図54と図55に示す。図54より通過磁性体30が移動した場合、乗算値majは元の信号b1とb3より若干小さな値になっていることが判る。一方、図55より通非過磁性体31が移動した場合、乗算値majは元の信号b1とb3より大幅に小さな値になっていることが判る。したがって図51の演算アルゴリズムを使用することにより、非過磁性体31を抑制することが可能である。
図51で示した演算アルゴリズムを用いて、ゲート21の前後に配置した磁気センサ22〜29全てに演算し、その加算値dspを用いたデルタ・シグマ演算値をDSPとする。
図54に16個の磁気センサを用い、通過磁性体30を移動させた場合の演算値DSとデルタ・シグマ演算値DSPを示し、図55に非通過磁性体33を移動させた場合の演算値DSとデルタ・シグマ演算値DSPを示す。図54より通過磁性体30を移動させた場合、DSとDSPの値には大きな違いはない。しかし図55より非通過磁性体31を移動させた場合、DSに比べてDSPの値が抑圧されて小さくなっている。したがって図51に示す前後比率演算アルゴリズムによって、通過磁性体30と非通過磁性体31を区別できる。使用者にとって不要な非通過磁性体31を抑制しており、効果がある。
次に本発明に係わる近傍の磁性体の影響の抑制のうち、ゲート外通過磁性体32を除去する左右同相除去演算アルゴリズムについて以下説明する。
ゲート21近傍にある使用者にとって不要な磁性体には、非通過磁性体30の他に、ゲートの外側を通過するゲート外通過磁性体32もある。図56に通過磁性体30とゲート外通過磁性体32の平面的な動きを示す。磁気センサは模式的に上側だけを示す。
図57にゲート外通過磁性体32を移動させた時の、図37に示した演算アルゴリズムによる演算値DSと、図51に示した前後比率演算アルゴリズムによる演算値DSPを示す。図57よりDSとDSPの値には大きな違いはない。従って、図51に示した前後比率演算アルゴリズムは、ゲート外通過磁性体32に対しては効果がない。図56に示すように、ゲート21を通過する通過磁性体30とゲート外通過磁性体32は同じ向きに移動する。従って、前後比率演算アルゴリズムでは両者の違いが無いため、これを区別することは原理的に不可能である。
ここで、センサユニット22〜29と通過磁性体30とゲート外通過磁性体32の位置関係を、立体的に表現した模式図を図58に示す。通過磁性体30と磁気センサ22〜29の距離は比較的近い。したがって各磁気センサ22〜29と通過磁性体30までの方向と距離はバラバラである。
ゲート外通過磁性体32と近い方の磁気センサ26〜29の距離も比較的近い。したがって近い方の磁気センサ26〜29と通過磁性体32までの方向と距離もバラバラである。しかし、ゲート外通過磁性体32と遠い方の磁気センサ22〜25の距離は比較的遠い。したがって遠い方の磁気センサ22〜25とゲート外通過磁性体32までの方向と距離は、ほぼ同じである。
1個のセンサユニットに4個の磁気センサを設けた条件において、通過磁性体30を移動させた時の左右各8個づつの遠方同相信号を除去した信号bdnの波形を図59と図60に示す。また、ゲート外通過磁性体32を移動させた時の左右各8個づつのbdnの波形を図61と図62に示す。図59と図60に示すように、通過磁性体30を移動させた場合は、左右8個のbdnの位相と振幅はバラバラである。図61に示すように、ゲート外通過磁性体32を移動させた場合、近い方の8個のbdnの位相と振幅もバラバラである。しかし、図62に示すように、遠い方の8個のbdnの位相と振幅はほぼ同じである。
この現象は、磁気センサのbdnの位相と振幅が、磁性体までの方向と距離によって決定されるためである。異なる方向と異なる距離ならば、異なる位相と異なる振幅になる。遠方磁性体33による影響と同様に、ほぼ同じ方向とほぼ同じ距離ならば、ほぼ同じ位相とほぼ同じ振幅になる。
同じ位相で同じ振幅の信号を除去する方法は、遠方磁性体33の影響を抑制する方法と基本的に同じである。遠方磁性体33の場合、全ての磁気センサの同相成分を除去したが、左右単位で同相成分を除去し、同相成分除去信号wdbnを求める。同相成分を除去する方法は、図63に示すように加算演算機能69と除算演算機能70と磁気センサと同数の減算演算機能71で構成し、同相信号である平均値wavを減算演算する。
図59〜図62に示したdbn波形を図63の演算機能を用いて演算した結果を図64〜図67に示す。図64と図65に示すように、通過磁性体30を移動させた場合は、同相成分除去信号wdbnは、元々の信号であるdbnの波形と大きな違いはない。図66に示すように、ゲート外通過磁性体32を移動させた場合、近い方の8個の同相成分除去信号wdbnも、元々の信号dbnの波形と大きな違いはない。しかし図67に示すように、遠い方の8個の同相成分除去信号wdbnは、極めて小さな値になるという特徴がある。したがってこの特徴を抽出し、ゲート外通過磁性体32による検出値を抑制すれば実現可能である。
しかし、図64〜図67に示した値だけでは、磁性体が近いのか遠いのかを判断することはできない。磁性体との距離が遠い場合であっても、磁性体の大きさが大きい場合は、絶対的な値が大きくなるからである。磁性体の大きさに影響されない値に変換しなければならない。図59〜図62と図64〜67を比較すると、同相信号を除去する前と除去した後で、センサユニット35〜38のうち、ゲート外通過磁性体32が遠い方を通過した場合だけが大きく変化している。従って、同相信号除去後の信号wdbnを同相信号除去前の信号dbnで除算し、同相率wsjを求めれば判断することが可能である。しかし、wdbnとdbnの各信号は正負のどちらにも変化するため、絶対値を求めてからそれぞれ加算し、加算値|swdb|と|sdb|を求めてから除算を行い、同相率wsjを求める。
左右単位の2つの同相率wsjを求める事は可能であるが、最終的に1つの演算値にする必要がある。2つの同相率wsjから左右係数wfを求める。左右係数wfを求めるには、2つの同相率wsjの平均値演算や比率演算や最小値選択など、いくつかの演算手段があり、その演算手段によって左右方向の除去率が変化する。あまり極端に左右方向を除去した場合、ゲート通過磁性体30であっても、ゲートの端を通過した時に除去し過ぎて、検知できない場合もある。本説明では平均値演算を使用した例を示す。
但し、この演算方法は、本発明の一例であり、他の演算方法を使用しても問題はない。
図68に左右同相除去演算機能72の例を示す。左右同相除去演算機能72は、左右2つの同相率演算機能73と左右係数演算機能74と乗算演算機能75から構成する。一つの同相率演算機能73は、磁気センサの半数の絶対・減算演算機能76と加算演算機能69と除算演算機能70と加算演算機能77と加算演算機能78と除算演算機能79から構成する。絶対・減算演算機能76は、減算演算機能71と絶対値演算機能80と絶対値演算機能81から構成する。なお除算演算機能81には0で除算を行わないように例外処理を持たせる。これらの演算は、数値的な演算方法の他に、乗算回路や除算回路などによる電気的な演算回路で構成する方法などがある。
図69に通過磁性体30が移動した時の同相率wsjと左右係数wfを示す。図69より、通過磁性体30が移動した時は、2つの同相率wsjが100%に近い値を示す。したがって2つの同相率wsjの平均値である左右係数wfも100%に近い値を示す。
図70にゲート外通過磁性体32が移動した時の同相率wsjと左右係数wfを示す。図70より、ゲート外通過磁性体32が移動した時は、近い方の同相率wsjは100%に近い値を示すが、遠い方の同相率wsjは0%に近い値を示す。したがって左右係数wfは50%に近い値を示す。
図71に、図68に示した左右同相除去演算アルゴリズムによる左右係数wfを用い、図51で示した前後比率演算アルゴリズムの演算結果dspと乗算演算機能75で乗算した演算結果dswを用い、積分演算した結果である検出値DSWを求める演算機能を示す。
図72に通過磁性体30を移動させた場合の検出値DSと検出値DSPと図71に示す左右同相除去演算アルゴリズムを加えて処理した検出値DSWを示す。図72より通過磁性体30を移動させた場合、3つの検出値DSとDSPとDSWには大きな違いはない。
図73にゲート外通過磁性体32を移動させた場合の検出値DSと検出値DSPと図71に示す左右同相除去演算アルゴリズムを加えて処理した検出値DSWを示す。図73よりゲート外通過磁性体32を移動させた場合、2つの検出値DSとDSPには大きな違いはない。しかし、左右同相除去演算アルゴリズムを付加した検出値DSWは前者に比べて小さな値になっている。したがって使用者にとって不要な非通過磁性体32を抑制しており、効果がある。
次に本発明に係わる通過する物体のみに告知を行う発明について、以下説明する。
図74は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、図71に示した本磁性体検知機に物体検知センサ85と物体検知信号処理機能86と論理積算機能87を付加したものである。
図71に示した構成によって、非通過磁性体31や、ゲート外通過磁性体32や、遠方磁性体33などの検出信号の特徴を抽出し、これを抑制することは可能になったが、完全に抑制することは不可能である。大きな磁性体が動いた場合や、ゲート21に極めて近い距離を通過した場合は、どうしても検出してしまう。
そこで、物体検知センサ85を用いて物体がゲート21を通過したかどうかを検知し、物体検知信号処理機能86で通過を判定し、物体が通過した場合のみ論理積算機能87を通して告知機能44を動作させる。磁性体がゲート21に近づいた場合でも、通過しなければ告知機能44は動作しない。
物体検知センサ85には、光線遮断や超音波計測など色々な種類の検知方法があるが、ここでは規定しない。例えば光遮断の場合は一方が発光になり一方が受光になる。このように機能を分割したり、複数備えても問題はない。
物体がゲート21を通過し、その物体が磁性体であり、その磁性体の検出値が閾値以上であった場合のみ告知機能が動作する。必要な条件が成立した時のみ告知されるため、使用者は有効な告知を受けることが可能となる。
次に本発明に係わる下方に配置されている磁性体の検出値を向上する発明について、以下説明する。
図75は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、一つのセンサユニット88には複数の磁気センサ89〜92が設置されているが、磁気センサ89〜92の設置間隔を上方に比べて下方を狭くしている。
実際の病院における用品には、色々な種類がある。医療に係わる医療用品以外にも、脚立などの工事用品や、ポリッシャーなどの清掃用品もある。これらの用品は、磁性体の比率が小さいMRI用品もあれば、磁性体の比率が大きい非MRI用品もある。
磁性体の材料には色々な種類があるが、最も多く使用されている磁性体材料は鉄である。鉄は丈夫で安価で入手が容易なため、非MRI用品に多用されている。また鉄は比重が大きいという特徴がある。比重が大きい鉄を下方に配置すれば、重心が下方になるため安定度が高くなる。
図76に一般的な医療用品等の例を示す。ストレッチャー93や車椅子94や点滴台95やボンベ96がある。非MRI用の医療用品では、鉄が多用されている。ストレッチャー93や車椅子94や点滴台95では、安定度を高めるために重量物である鉄材を下方に配置する場合が多い。特に点滴台では安定度を重視し、重い鉄製の台座を用いて重心を下方に設定する物も多い。支柱には透磁率が低いステンレスや軽量の非磁性体であるアルミなどを使用している場合も多い。ボンベ96のうち鉄製のボンベは重量物である。単体で運搬する場合、使用者97は手にぶら下げて持ち運ぶ場合が多い。ボンベ96をストレッチャー93や車椅子94に固定して運搬する場合には、落下した場合に危険であるので、高い位置に設置せずに、低い位置に設置するのが一般的である。以上のように重量物で磁性体である鉄は、一般的にゲート21の上方ではなく、下方の床面98の近くで移動する場合が多いという特徴がある。
実際の病院におけるMRI診断装置の吸引事故のうち、点滴台95によるものが高い割合を占めている。従って点滴台95を検知して警告する必要がある。点滴台95には安定度を高めるために重い鉄製の台座を使用して、重心を下方に設定する物も多い。支柱には透磁率が低いステンレスや軽量の非磁性体であるアルミなどを使用している場合も多い。このような鉄製台座の点滴台95は、磁性体部が床面近くにあるという特徴がある。
磁気センサと磁性体の距離に関し、磁束密度の変化デルタBは、磁気センサと磁性体の距離の2乗に反比例する。即ち、距離が長くなるに従って、磁気センサの出力が急激に減少するという事を意味している。磁性体の検出値を向上させるには、磁性体と磁気センサとの距離を短くすることが望ましい。
図77に示すように、1本のセンサユニット88に複数の磁気センサ89〜92を等間隔に配置した場合を想定する。なお、図77では4個の磁気センサで表記したが、必要に応じて数量は変えても同じである。各磁気センサ89〜92と下方にある通過磁性体30までの距離は、一番下に設置した磁気センサ92との距離da4が最も近く、磁気センサの位置が高くなるに従ってda3、da2、da1の順に遠くなる。磁束密度の変化は、磁気センサ89〜92と通過磁性体30の距離の2乗に反比例するため、それぞれの磁気センサの検出出力は、92、91、90、89の順に小さくなる。
下方にある通過磁性体30だけを検出するならば、全ての磁気センサ89〜92を下方に設置すれば、磁気センサの検出出力を大きくすることが可能である。しかし、ゲート21を通過する通過磁性体30が必ず下方を移動するとは限らない。したがって上方にも磁気センサは必要である。
上方や下方の全ての位置の磁性体の検出出力を大きくするには、沢山の磁気センサを備えればよい。しかし磁気センサは高価であり、沢山使用した場合に製品コストが上昇するという問題がある。そこで、磁気センサの数量を増やさずに、下方にある通過磁性体30の検出出力を高める必要がある。
次に、図78にdhb1≧dhb2≧dhb3とし、磁気センサ89〜92の間隔を下方は短く、上方は広く配置した場合を示す。一番上の磁気センサ89と一番下の磁気センサ82の床面98からの位置が同じならば、磁気センサ89と磁気センサ92の検出出力は同じである。
しかし、中間にある磁気センサ90と91は、図77に示す等間隔に配置された場合より、図78に示す不等間隔に配置された場合の方が下方にある通過磁性体30に近くなる。従って、磁気センサ90と91の検出出力は、図77より図78の方が大きくなる。したがって、図77に示すように磁気センサ89〜92を等間隔に配置するより、図78に示すように不等間隔に配置した方が、下方の通過磁性体30の検出出力が大きくなる。
磁気センサの数量を増やさずに、磁気センサの間隔を非等間隔にすることにより、下方にある磁性体の検出値を向上させることが可能であり、効果がある。この方法によれば、コストの上昇はない。
次に、本発明に係わるゲートの中央付近を通過する磁性体の検出値を向上するもう一つの発明について、以下説明する。
図79は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、図17に示した構成の検出部34にセンサユニット99と第二演算部100と論理和演算機能101から構成されている。
センサユニット99は、磁気センサ102〜103から構成し、ゲート21の下方に配置する。図79では2個の磁気センサ102〜103を示しているが、必要に応じた数量を備える。第二演算部100は、第二磁気信号処理部104と第二閾値を入力する閾値入力機能105と比較演算機能106から構成されている。
図79の床面に近い部分を拡大したものを図80に示す。
使用者97がゲート21を通って通過磁性体30を持ち込む場合、どの位置を通過するかは不定である。左側のセンサユニット35〜36近傍の場合もあれば、右側のセンサユニット37〜38近傍の場合もあれば、左右のセンサユニットの中央を通過する場合もある。図80に示すようにほぼ中央を通過した場合、磁気センサ23、27からの距離ddp2とddp6が最も遠くなる。
磁気センサと磁性体の距離に関し、磁束密度の変化デルタBは、磁気センサと磁性体の距離の2乗に反比例する。即ち、距離が長くなるに従って、磁気センサの出力が急激に減少するという事を意味している。磁性体の検出値を向上させるには、磁性体と磁気センサとの距離を短くすることが望ましい。
磁気センサの出力を大きくするには、磁束密度の変化デルタBが大きくなる位置に磁気センサを設置すれば良い。
しかし、磁気センサをゲート21の中央に設置した場合、通行を妨げてしまう。
そこで図80に示すように、磁気センサ102〜103を備えた床下センサユニット99を床面98の下に設置する。床面98の下に設置すれば、点滴台のような通過磁性体30までの距離ddp2、ddp6を短くすることが可能であり、かつ、通行の妨げにならない。磁気センサ102〜103の数量は必要に応じて1個以上を備えればよい。
左右に設置した磁気センサユニット35〜38より、床下に設置した磁気センサユニット99の方が、ゲート21の中央付近を通過する点滴台のような通過磁性体30までの距離が短かくなるため、検出出力を大きくすることができる。検出出力が大きければ、確実に磁性体を検知できるため、効果がある。
図71や図79の機能を具体的に構成する方法には、色々な方法がある。図81に示すように、磁束密度Bを電気に変換する磁気センサ1の出力を、オペアンプや抵抗やコンデンサ等によって構成するアナログ演算回路107で処理しても可能である。
また、図82に示すように、磁束密度Bを電気に変換する磁気センサ1の出力を、アナログ値からディジタル値に変換するアナログ・ディジタル変換回路108を用いて数値に変換し、以降数値処理を行うディジタル演算装置109を用いる方法もある。その他にも磁束密度Bを機械的に変換して機構的に処理したり、これらを複数組み合わせる方法もある。
また、演算の方法にも色々な方法がある。例えば乗算してから除算しても、除算してから乗算しても結果は同じである。同様に、複数の積分機能を使って積分してから加算しても、加算してから1個の積分機能を使って積分しても結果は同じである。一般的な数式と同じように、演算結果が同じならば、演算の順番や演算素子の構成には関係はない。従って、必ずしも図71や図79に示す順番や構成で実現する必要はない。
次に、本発明に係わる耐電気的ノイズ性能を向上する発明について、以下説明する。
図83は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機の磁気センサ部110は、磁気センサ1とアナログ・ディジタル変換回路108と電源回路111から構成されている。
磁気センサには色々な種類があるが、ここでは、磁束密度Bを電気量に変換する磁気センサを想定する。センサの出力は、入力される磁束密度Bに相関関係を持つ電気量であり、アナログ値である。
図84に磁気センサの配置例を示す。なお、図84では説明のための一つの実施例として、磁気センサを4個備えた場合で説明するが、無論、磁気センサの数は4個に規定されるものではない。
図84に示すように、本発明のような磁性体検知機では、ゲート21の左右に複数の磁気センサ112〜115を備えなければならない。一方、磁性体の有無の総合的な判定は、最終的に1つの制御部116で行わなければならない。従って、磁気センサ112〜115と制御部116をケーブル117で接続しなければならない。
制御部116の位置はどの位置にあっても特に問題はないが、どのような手段を用いても、磁気センサ113と磁気センサ115の間のケーブル117の総長は3m以上になる。
磁気センサ112〜115のアナログ出力信号を長いケーブル117を用いてアナログ・ディジタル変換回路108に接続した場合、ケーブル117にノイズNLが重畳されてしまう。磁性体の侵入による磁束密度の変化デルタBは小さな値であるため、磁気センサ112〜115の検出出力の変化デルタVoも小さな値である。この小さな検出出力デルタVoに外来ノイズNEが重畳し、ノイズNLが加算された場合、アナログ・ディジタル変換回路108の入力信号の変化デルタViがデルタVoによって変化したものなのか、NLによって変化したものなのか判定することができなくなり、誤動作してしまう。従ってノイズNLを低減させないと、正しい動作を行うことができない。
ノイズNLの大きさは色々な要因によって変化するが、装置自体に関する最も大きい要因としてケーブル117の長さがある。ケーブル117の長さが長い場合、必然的にインダクタンスLLが増加し、外来ノイズNEとの相互インダクタンスMLも大きくなる。相互インダクタンスMLが大きくなれば、ケーブルに重畳するノイズNLが大きくなり、誤動作を引き起こす。これを防ぐにはケーブル117の長さを短くする必要がある。しかし、磁気センサ112〜115と制御部116の物理的な距離を短くすることは不可能である。
そこで、図85に示すように、各磁気センサ112〜115の直近にそれぞれアナログ・ディジタル変換回路119〜122を備える。各磁気センサ112〜115とアナログ・ディジタル変換回路119〜122の距離が極めて短くなるため、接続ケーブルのインダクタンスLAと外来ノイズNEとの相互インダクタンスMAは小さくなる。従って変換回路119〜122の入力信号に重畳する外来ノイズNEによるノイズNAが小さくなるため、誤動作を低減することが可能になる。ケーブル117は長いため、図84と同様にノイズNLが大きく重畳されるが、ディジタル化された量であるので、伝送品質を確保すればノイズNLの影響を0にすることが可能である。
ノイズが重畳するもう一つの要因として、電源がある。図84に示すように、1つの制御部電源回路118から、ケーブル117を通して各部へ電源を供給する場合、ケーブルが長いため、電源線に抵抗成分Rを持ってしまう。負荷変動によって、消費電流が変動した場合、磁気センサ112〜115に供給される電源電圧VcLが抵抗成分Rによって変動してしまう。その結果、磁気センサ112〜115の電源電圧が変動するため、磁束密度に関係なく検出出力Voを変動させてしまう。
これを防ぐため、図85に示すように、各磁気センサ112〜115の直近にそれぞれ電源回路123〜126を備える。負荷変動によってVcLは変動するが、磁気センサ112〜115に供給される電源電圧VcAは変動しない。
図85に示すように、アナログ・ディジタル変換回路119〜122や電源回路123〜126を複数備えることにより、コストの面では不利になる。しかし、性能を確保するためには必要なものである。
次に、本発明に係わる耐電気的ノイズ性能を向上するもう一つの発明について、以下説明する。
図86は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、図83を構成する電気回路の一部を構成する磁気センサ部110に、電流検知機能127と制御機能128とダミー電流機能129から構成されている。
本発明では1台のセンサユニット35〜38に複数の磁気センサを使用する。従って図87に示すように、磁気センサ1近傍に別の磁気センサや他の回路から構成される磁気センサ部110が電源118と電線130〜131を経由して接続される。また電線130〜131は、磁気センサ1の近傍に構造的に配置される。
磁気センサ部110の消費電流132は一定ではない。変動負荷によって変化する変動電流である。磁気センサ部110に消費電流132の変動が発生した場合、電線130には消費電流132と等しい電流133が流れるためアンペールの法則に従って磁場134が変動する。電線130から距離dc1離れた磁気センサ1の位置には磁場134の変動によって磁束密度の変化135が発生する。同時に、電線131にも電流133が流れるため磁場136が変動する。電線131から距離dc2離れた磁気センサ1の位置には磁場136の変動によって磁束密度の変化137が変動する。磁束密度の変化135と磁束密度の変化137は逆方向のため、その差分である磁束密度の変化138が磁気センサ1の位置に発生する。
磁気センサ1は、磁束密度の変化デルタBを検知する。したがって磁気センサ部110の消費電流132の変動によって磁束密度の変化138が発生すれば、これを検知して誤動作する。
誤動作を防ぐためには、磁気センサ1の位置に発生する磁束密度の変化138を0にすれば良い。電線130と磁気センサ1の距離dc1と、電線131と磁気センサ1の距離dc2が同じであれば、磁束密度の変化135と磁束密度の変化137は同じ大きさで逆向きであるため、磁束密度の変化138は0になり、誤動作しない。したがって、距離dc1と距離dc2が等しい値になるように設置すれば誤動作しない。
しかし、電線130と電線131の位置を正確に同じ距離に配置するのは極めて困難である。図87では電線130と電線131を単純な平行線で示したが、傾きがある場合は、補正を行わなければならない。途中で電線が曲がった場合も補正しなければならない。これらの作業を行うには多大な時間が必要であり、作業コストが高くなってしまう。
磁束密度の変化138を0にするもう一つの手段として、磁気センサ部110の消費電流132の変動を0にする方法がある。消費電流132の変動が0であれば、磁束密度の変化138も0であるので誤動作することがない。しかし磁気センサ部110の消費電流132は、色々な要因によって決定されるものであり、完全に一定にすることは不可能である。
磁気センサ部110の消費電流132が一定でなくても、電線130と電線131に流れる電流133が一定であれば、磁束密度の変化138は0である。そこで、図88に示すように、電流検知機能127と制御機能128とダミー電流139を流すダミー電流機能129を備え、回路110の消費電流132の変動分を補完するダミー電流139を流す。消費電流132とダミー電流139の総和は一定であるので、電線130と電線131に流れる合計電流133は一定である。
したがって、磁気センサ部110の消費電流132の変動に伴う磁束密度の変化138は発生しない。
図88の具体的な回路例として、電流検知機能127は抵抗140から構成されている。制御機能128は定電圧ダイオード141と抵抗142と演算増幅器143から構成されている。ダミー電流機能129はトランジスタ144から構成されている。
演算増幅器143は抵抗140に流れる電流によって発生する電圧Vnと、定電圧ダイオード141と抵抗142によって発生する電圧Vpが等しくなるように、トランジスタ144を制御する。回路110の消費電流132の変動分を補うようにダミー電流139が流れるため、消費電流132とダミー電流139の合計値である電流133には変動がない。電流133に変動がなければ、磁束密度の変化138は発生しない。したがって磁気センサ1に磁気的な影響を与えないので、誤動作しない。
図88に示した構成は、この機能を実現するための一例である。電流検知機能127として、抵抗140の他に電流トランスやホール素子などの色々な方法がある。その他にアナログ回路だけでなく、ディジタル回路で構成したり、アナログとディジタルを混合して構成することも可能である。
次に、本発明に係わる定常的な磁気ノイズに対応する発明について、以下説明する。
図89は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、図74に示した構成に閾値を外部から設定できる可変閾値入力装置145から構成されている。
どのような環境であっても、磁気的なノイズは0ではない。磁気ノイズの大きさはは、使用される環境によって異なる。磁性体の有無を判定する閾値を固定にした場合、ノイズが小さい環境では問題がないが、ノイズが大きい環境では誤動作する場合がある。
そこで、閾値入力装置145を用いて、設置環境に合わせた閾値を設定する。具体的な閾値入力装置145としては、可変抵抗器等を想定する。
次に、本発明に係わる通過しない磁性体について告知する発明について、以下説明する。
図90は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、図89に示した構成に、第三閾値入力装置146と、第三比較機能147と、論理和機能148と、選択装置149から構成されている。
例えば、MRI診断装置の近傍に鉄製の酸素ボンベのような大型の磁性体を近づけることは、極めて危険な行為である。このような危険な行為は、ゲート21を通過する意図があってもなくても、告知しなければならない場合もある。このような場合、磁気信号処理部40の信号と第三閾値入力装置146から設定される第三閾値を第三比較機能147で比較し、第三閾値より大きな値であれば、物体のゲート21の通過には関係なく告知機能44を動作させる。
使用する環境によっては、告知機能44を動作させる要因として、閾値だけで良い場合もあれば、第三閾値だけで良い場合もある。また、閾値と第三閾値の両方でを要因とする場合もある。
いづれかを選択できるように、閾値と第三閾値を選択できる選択装置149を用いる方法がある。また、閾値と第三閾値の両方が必要になる場合もある。これらの要求に対応するため、論理和機能148を用いて論理和信号を作成し、3種類を選択できる選択機能149を用いる方法がある。
また第三閾値入力装置146は可変であっても良い。
これらを実現する1つの方法として、図91に可変閾値入力装置145と第三閾値入力装置146と選択装置149の配置例を示す。但し図91は配置例であり、具体的な形状を示すものではない。
次に、本発明に係わる外部への告知手段について、以下説明する。
図92は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、図90に示した構成に電気接点150を加え構成されている。
磁性体を所持した使用者97がゲート21を通過した時、告知機能44が動作する。告知機能44は光や音にて使用者97に告知を行う。しかし、通常、使用者97は前方を見て歩くため、告知機能44を認識するのが困難である。
そこで、電気接点150を用いて、外部告知機能151を動作させる。外部告知機能151を使用者97の進行方向に設置すれば、使用者97は外部告知機能151認識するのが容易になり、磁性体を所持していることに気が付く。このような外部告知機能151は、使用者97の前方だけでなく、MRI制御室等に設置し、管理者に告知する応用方法もある。
外部に告知動作を伝える方法として、通信手段152を備える方法もある。RS−232やRS−422やイーサネット(登録商標)などによる通信インタフェースを備えることにより、病院内部や病院外部の管理用機器153に告知動作を伝えることも可能である。
次に、本発明に係わるシールドドア枠一体型の磁性体検知機について、以下説明する。
図93は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、図17に示した構成に、ドア枠154とシールドドア155から構成されている。
図17の例では、ドア枠154とシールドドア155とは別に本磁性体検知機を設置し、ケーブルを接続する必要がある。これらの機器の据付作業が必要であり、据付コストが掛かるだけではなく、ケーブルが外部から見えるため、外観を損ねてしまうという問題があった。そこで、ドア枠154内に本磁性体検知機の機能の一部または全てを内蔵する。
磁性体検知機の機能をドア枠154に内臓することにより、通常のドア枠を設置する場合とほぼ同じ据付作業で済み、かつ、外観も損ねない。生産工場で一体化したものを組み立てられるので、使用場所での据付作業だけで済む。
その他にも、必要によっては磁性体検知とは別の告示機能を備えなければならない場合もある。その場合、告示機能156を同じドア枠154に設置すれば、設置コストも低減でるだけでなく、外観も向上することが可能である。シールドドア155やドア枠154は、設置場所までの運搬性を考慮し、いくつかの部分に分割して輸送できるようにしても問題はない。設置場所にて組み立て作業を行う。
但し図93は配置例であり、具体的な形状を示すものではない。また、告示機能156は複数あっても良い。
図94は、本発明にかかる磁性体検知機の構成態様を示す概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、磁気センサ161,162と間隔d1を開けた2枚の高透磁率の板163,164から構成されている。これらは磁束線165で示される磁界内に配置される。
被検知対象物である磁性体166が、磁気センサ161,162のほぼ中央を通過する場合、板163,164と磁性体166の距離はd2及びd3になる。磁束線165は、板163,164と磁性体166によって曲がる。
次に、図94に示す構成態様が有効であることを説明する。
図97に地磁気などの平行磁界内に2個の磁気センサ161,162が配置された状態を示す。磁束線165は平行の状態である。
図98に図97に示した磁界内に点滴台のような磁性体166が一方の磁気センサ161に近寄った状態で侵入した場合を示す。磁束線165は、透磁率が高い物体である磁性体6に引き寄せられる性質を持つため、曲がってしまう。磁束線165が曲がってしまうため、磁気センサ161,162の位置における磁束密度Bのベクトルが変化する。この磁束密度Bのベクトルの変化を磁気センサ161,162が検出し、磁性体の有無を判定することができる。
図98において、磁性体166に近い方の磁気センサ161では、磁束線165のベクトルの変化が大きいが、磁性体166に遠い方の磁気センサ162では、磁束線165のベクトルの変化が小さい。これは磁束線165の変化が、距離の2乗に反比例する性質を持つためである。
図98において、磁性体166に遠い方の磁気センサ162では、磁束線165のベクトルの変化が小さいため、充分な検出値を得ることができない。しかし、磁性体166に近い方の磁気センサ161では、磁束線165のベクトルの変化が大きいため、充分な検出値を得ることができる。従って磁性体検知機のシステムとしては、磁性体166を検知して告知することが可能である。
しかし、磁性体166が必ず磁気センサ161又は磁気センサ162のいずれかに近い場所を通過するとは限らない。磁気センサ161及び磁気センサ162の両方から最も遠い位置である、中央付近を通過する場合もある。
図99に図97に示した磁界内に磁性体166が磁気センサ161と磁気センサ162のほぼ中央に侵入した場合を示す。磁束線165は、磁性体166に引き寄せられて曲がってしまう。しかし、磁性体166と磁気センサ161及び162との距離が遠いため、磁気センサ161及び162の位置における磁束線165のベクトル変化は小さくなる。
磁性体166が磁気センサ161と162のほぼ中央にある場合、最も距離が長くなる。従って、中央を通過する磁性体166を検出することが困難になる。
次に図100に図97に示した磁界内に2枚の高透磁率を持つ板163,164を間隔d1を置いて床面の位置に配置したものを示す。磁束線165は、板163,164に引き寄せられて曲がってしまう。2枚の板163,164は等価的に1個の磁性体と見なすことができる。しかし、間隔d1があるため、磁気的には小さな磁性体と見なすことができる。
図94は、図100に示した磁界内に点滴台のような磁性体166がほぼ中央に侵入した図である。磁性体166と2枚の板163,164は直接接触はしていないが、その間隔d2及びd3はd1に比べて極めて小さくなる。その結果、磁性体166と板163,164によって等価的に一つの大きな形状の磁性体を生成する。図100で示した場合より、等価的に大きな形状の磁性体によって、磁束線165が大きく曲がる。従って、磁気センサ161,162の位置における磁束線165のベクトルが大きく変化する。磁束線165のベクトルが大きく変化すれば、磁気センサ161,162が検出する磁束密度Bの変化も大きくなり、確実に磁性体166を検知することが可能になる。
板163,164による等価的に小さな磁性体が元々存在している空間に、磁性体166が通過することによって、等価的に大きな磁性体が合成される。この差分が大きいため、磁性体166を確実に検知できる。
次に、ゲート168を通過しない磁性体169の影響の抑制について説明する。
図101に地磁気などの平行磁界内に1個の磁気センサ161とゲート168が配置された状態を示す。磁束線165は平行の状態である。
図102に図101に示した磁界内に、検知を希望していない磁性体169がゲート168の外側に侵入した場合を示す。磁束線165は、磁性体169に引き寄せられる性質を持つため、曲がってしまう。磁束線165が曲がってしまうため、磁気センサ161の位置における磁束密度Bのベクトルが変化するため、磁性体169を検知してしまう。
ここで、ゲート168の内側と外側とは、使用者が便宜上定めたものであり、磁気センサ161から見た場合、両者の違いはない。従って、使用者が検知を希望しているゲート168の内側に磁性体があっても、使用者が検知を希望しないゲート168の外側に磁性体169があっても、等しくこれを検知する。
次に図103に磁気センサ1の外側に高透磁率の板167を配置した図を示す。磁束線165は板167に引き寄せられるため、曲がってしまう。
図95は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、磁気センサ161と高透磁率の板167及びゲート168から構成されている。これらは磁束線165で示される磁界内に配置される。
被検知対象物でない磁性体169が、ゲート168の外側に存在する。磁束線165は、板167と磁性体169によって曲がる。
なおゲート168は、用品や使用者が通過する空間を意味し、具体的な構造物で構成する必要はない。
次に、図95に示す構成態様が有効であることを説明する。
図95は、図103に示した磁界内のゲート168の外側に磁性体169が侵入した図である。磁性体169によって磁束線165が引き寄せられ曲がってしまう事自体は同じである。しかし板167によって、磁気センサ161側の磁束線165の曲がり方は緩和される。したがって、磁気センサ161の位置における磁束密度Bの変化が小さくなり、影響を受けにくくなる。
ゲート168の外側の磁性体169としては、MRI室に入らない一般の磁性体医療用具やシールドドアに内蔵される磁性体などがある。これらについては、検知しない方が望ましいため、高透磁率の板7によって磁気シールドして影響を抑制する。但し、ゲート168に使用者や用品を通過させる必要があるので、完全な磁気シールドはできない。
図96は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、ゲート168と、1つ又は複数の磁気センサを内臓する磁気センサ集合体170,171と、ゲート168に物体が通過したことを検知する通過センサ172と、ICタグの情報を読み出すICタグセンサ173と、磁気センサ集合体170,171の出力を検出値に変換する磁性体検出機能174と、通過センサ172の信号によって物体が通過したかどうかを判定する通過検出機能175と、ICタグセンサ173の信号によってIDを判定するID判定機能176と、ID判定機能176によるIDを閾値に変換する変換表177と、磁性体検出機能174の検出値と変換表177によって得られた閾値を比較する比較機能178と、通過検出機能175の出力と比較機能178の出力の論理積を演算する論理積演算機能179と、論理積演算機能179の出力によって動作する告知機能180と、磁性体検出機能174の検出値を変換表177に記録する記録手段機能181から構成されている。
ゲート168には、MRI用品182,183や使用者184が通過する。これらにはICタグ185,186,187が付けられている。ゲート168には、ICタグを付けていない用品188や使用者189も通過する。
次に、図96に示す本システムの説明図に基づいて、持ち込まれるMRI用品に含まれる磁性体に応じた判定閾値を選択することによって、不要な告知を抑制する方法について説明する。
MRI用品は、MRI装置の磁石に吸引されない用品である。しかしMRI用品の中には磁性体を含む物もある。磁性体を含んでいても、全質量に比べてその質量が小さい場合、吸引されることはなく安全である。
また、MRI室に出入りする技師や看護士などの使用者も、筆記用具や衣類や名札や靴などの磁性体を含む物を身に付けている場合がある。これらについても、吸引事故が起こらなければ持ち込んでも問題はない。
一方、磁気センサは、磁性体の質量や非磁性体の質量を検出するデバイスではない。磁束密度Bを変化させた物体が、MRI室に入った場合に吸引されるかどうかを検出するデバイスでもない。また吸引された場合、危険か危険でないかを判断する機能もない。
磁気センサは、設置された場所における磁束密度Bの変化を検出するデバイスである。磁束密度Bの変化が設定された判定閾値以上であれば、使用者の意図に係わらず一律に告知する。
これらの吸引事故を起こさない用品等についても全て告知した場合、頻繁に告知が行われる。頻繁に告知された場合、使用者は告知に慣れてしまい、無視するようになる。その結果、質量の大きな磁性体を持ち込んでも、告知を無視してしまい、吸引事故を発生させる可能性が高くなる。従って、吸引事故を起こさない用品等の場合は告知を行わない方が望ましい。
MRI室に持ち込める用品や使用者は限られている。これらの用品や使用者について区別を付け、個別の判定閾値を設ければ、不要な告知を低減することが可能である。不要な告知が低減されれば、機器に対する信頼度が向上し、実際に磁性体が持ち込まれた場合の警告を信頼し、これを確認することができる。
一般的にICタグと呼ばれるシステムがある。ICチップ内に個別のID情報を持ち、リーダと呼ばれる専用の読み取り装置でIDを読み取ることができる。ICタグシステムは無線方式で、近くにあるICタグを読みとることができる。電池などの電源を搭載せずに、リーダから供給される無線を使用した電源供給方式で動作する。このシステムを本装置に組み込んで機能を実現する。
なお、ICタグの周波数や通信プロトコルや電源供給方法などの方式については、本発明では特に規定しない。
図96に示すように、ICタグ185,186,187を用品182,183や使用者184に取り付ける。使用者184にICタグ187を取り付ける場合、人体に直接取り付ける他に、名札などに取り付ける場合が想定される。
ICタグ185,186,187が持つIDをICタグセンサ173で読み取り、ID判定機能176でIDを判定する。得られたIDを使用して、変換表177に記録されている閾値を読み出す。
磁気センサ集合体170,171にてゲート168を通過する物体による磁束密度Bの変化量を検出し、検出値に定量化する。同時にゲート168を通過することを検出する通過センサ172によって物体を検知し、通過検出機能175にて通過の有無を判定する。
磁束密度の変化量の検出値が、IDによって得られた閾値より大きな値であることを、比較判定機能178によって判定する。同時に物体の通過を判定したことを論理演算積機能179を用い、告知機能180を動作させる。告知機能180によって使用者184は、磁性体の持込の有無を判断することができる。
ICタグを付けていない非MRI用品188や使用者189が通過した場合、変換表177のうちID情報なしの閾値を使用する。通過した物体や使用者によって発生する磁束密度Bの変化が、閾値より大きな値であれば告知し、閾値より小さな値であれば告知しない。
例えば、ICタグを付けていない一般の患者が通過した場合、磁性体を所持していれば告知を受け、磁性体を所持してなければ告知されない。
本方式を実施するには、事前に対象物が発生させる検出値を変換表177に記録しなければならない。そこで記録手段機能181を用いて対象物が発生させた検出値を変換表177に記録する。変換表177に閾値を記録する場合、磁束密度Bの変化量の検知値のバラツキを考慮して、検出値より大きな値を記録する。
一般的に用品だけが単体で移動することは少ない。患者を乗せた車椅子を看護士が移動させるなど、用品と使用者が同時に通過することが多い。従って、複数のICタグが同時にゲート168を通過することが想定される。
複数のICタグがタグセンサ173で検出された場合、変換表177の複数の値を読み出し、演算した結果を閾値として使用する方法もある。演算方法としては、加算などがある。
ICタグ187を付けた使用者184が、ICタグを付けた用品を持ち込んだ場合、複数のICタグによって得られた情報によって、適切な閾値を演算し、検出値が演算された閾値以下であれば告知されない。
ICタグ27を付けた使用者184が、鉄製車椅子などのICタグを付けていない非MRI用品188を持ち込んだ場合、鉄製車椅子などの非MRI用品188によって検出した検出値が、ICタグ187によって定められた閾値以上になってしまうため、告知される。告知されることによって使用者184は、危険な磁性体の持込を認識することができる。
これらの機能を実現する方法として、各信号をアナログ回路で処理する方法やディジタル回路で処理する方法がある。また、これらを混合して処理する方法がある。