<システム構成について>
図1は実施の形態に係る照明システム1の構成を示す図である。本実施の形態に係る照明システム1は、例えば、一戸建て及びマンション等の住宅に導入される照明システムである。照明システム1は、複数の照明装置2と、当該複数の照明装置2を制御する全体制御装置3とを備えている。照明装置2は、例えば、光源をLED(Light Emitting Diode)素子とするシーリングライト、つまりLEDシーリングライトである。なお、照明装置2は、シーリングライト以外の種類の照明装置であっても良い。
住宅の各部屋100の天井面110には、少なくとも一つの照明装置2が配置される。図1には2つの部屋100が示されている。図1の例では、左側の部屋100と右側の部屋100とは壁150及び扉140で仕切られており、各部屋100には一つの照明装置2が設けられている。
照明システム1では、照明装置2の光度(明るさ)が制御される。さらに、照明システム1では、照明装置2が使用されて、当該照明装置2が配置された部屋100での人の位置が推定される。以後、本実施の形態に係る照明システム1での位置の推定対象である人を「対象物」と呼ぶことがある。図1には、左側の部屋100の床面120に対象物500(人)が立っている様子が示されている。全体制御装置3は、例えば一つの部屋100に配置される。なお、全体制御装置3は、住宅における、部屋100以外の場所に配置しても良い。
<照明装置について>
図2は各照明装置2の構成を示す図である。図2に示されるように、各照明装置2は、照明器具(「灯具」とも呼ばれる)20と、通信モジュール21と、照度検出部としての照度センサー22とを備えている。本実施の形態では、照明器具20、通信モジュール21及び照度センサー22は一体化されている。
照明器具20は、光を照射する光源201と、当該光源201に電力を供給する電源回路200とを備えている。光源201は複数のLED素子で構成されている。電源回路200は定電流回路で構成されている。電源回路200は、光源201を構成する複数のLED素子のそれぞれに対して独立して電力を供給することが可能である。光源201及び電源回路200はカバー部材で覆われている。
通信モジュール21は、制御部210と、通信部211と、メモリ212とを備えている。通信モジュール21は、全体制御装置3等の外部機器と通信を行うとともに、照明器具20の光度を制御する。
通信部211は、全体制御装置3等の外部機器と通信を行う。通信部211と外部機器との通信では、無線通信及び電力線15を介した電力線通信(PLC:Power Line Communication)の少なくとも1つが使用される。本実施の形態では、通信部211は、無線通信及び電力線通信を使用して全体制御装置3等の外部機器と通信する。電力線15には商用電源180が接続されている。照明器具20の電源回路200には、電力線15を通じて商用電源180からの電力が供給される。
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)等で構成されている。制御部210は、通信部211を制御するとともに、照明器具20の電源回路200を制御する。照明器具20では、電源回路200が制御されることによって、光源201の光度が制御される。制御部210内のCPUが、メモリ212に記憶されたプログラムを実行することにより、制御部210の各種機能が実現される。
照度センサー22は、受光領域23で光を受光することによって、自身が属する照明装置2が取り付けられた部屋100での当該照明装置2が存在している領域の照度を検出する。照明装置2は、部屋100の天井面110に取り付けられていることから、照度センサー22は天井面110の照度を検出するとも言える。照明装置2が有する照度センサー22は、当該照明装置2が有する照明器具20からの直接光を受けないように、当該照明器具20の近くに配置されている。つまり、照明装置2が有する照度センサー22は、当該照明装置2が有する照明器具20が発する光については、当該光についての反射光のみを受光するように、当該照明器具20の近くに配置されている。照度センサー22での検出照度は制御部210に入力される。制御部210は、入力された検出照度を通信部211を通じて全体制御装置3に送信する。
<光源の照射範囲について>
図3は照明装置2が配置されている部屋100を天井から見た様子が示されている。図4は当該部屋100を横から見た様子が示されている。図3では、照明装置2のうち照明器具20だけが示されている。
本実施の形態では、光源201を構成する複数のLED素子202が、照射範囲が互いに異なる複数のLEDグループ203を形成している。本実施の形態では、図3に示されるように、複数のLED素子202は、照射範囲が互いに異なる2つのLEDグループ203a,203bを形成している。LEDグループ203a,203bのそれぞれは、例えば4つのLED素子202で構成されている。全体制御装置3は、LEDグループ203a,203bのそれぞれの光度を独立に制御可能である。
図3,4に示されるように、LEDグループ203aの照射範囲204aは、部屋100の半分をカバーしており、LEDグループ203bの照射範囲204bは、部屋100の残りの半分をカバーしている。本例のように、LEDグループ203が複数のLED素子202で構成されている場合には、当該LEDグループ203の照射範囲は、当該複数のLED素子202の照射範囲の重ね合わせとなる。また、LEDグループ203a,203bの配光特性に指向性を持たせることによって、図3,4に示されるような照射範囲204a,204bを実現することができる。LED素子202の実装面に傾斜を設けたり、反射板を用いたり、LED素子202を覆う、レンズ効果のあるカバー部材を設けたりすることによって、LEDグループ203の配光特性に指向性を持たすことができる。
なお、図3,4の例では、便宜上、照射範囲204a,204bが全く重ならないように示されているが、実際には、照射範囲204a,204bは部分的に重なるようになる。本実施の形態において、複数のLEDグループ203の照射範囲が互いに異なるとは、複数のLEDグループ203の照射範囲が完全に一致しないことを意味する。したがって、複数のLEDグループ203の照射範囲が互いに異なることには、複数のLEDグループ203の照射範囲が部分的に重なることも含まれる。
図3,4の例では、LEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在している。全体制御装置3は、光源201を構成する複数のLEDグループ203のそれぞれについて、当該LEDグループ203の照射範囲に対象物500が存在するか否かを、照度センサー22での検出照度に基づいて推定する。
<全体制御装置について>
図5は全体制御装置3の構成を示す図である。全体制御装置3は、一種のコンピュータであって、図5に示されるように、制御部30と、通信部31と、メモリ32と、表示部33とを備えている。全体制御装置3は、各照明装置2と通信を行うことによって、各照明装置2を制御する。
通信部31は、照明装置2等の外部機器と通信を行う。通信部31と外部機器との通信では、無線通信及び電力線通信の少なくとも1つが使用される。本実施の形態では、通信部31は、無線通信及び電力線通信を使用して照明装置2等の外部機器と通信する。
制御部30は、CPU等で構成されており、通信部31及び表示部33を制御する。制御部30内のCPUが、メモリ32に記憶されたプログラムを実行することにより、制御部30の各種機能が実現される。
制御部30は、照明装置2の光源201を構成する複数のLEDグループ203のそれぞれについて、当該LEDグループ203の光度を制御するための光度制御信号を、当該照明装置2の照度センサー22での検出照度に基づいて生成する。制御部30で生成された、照明装置2の各LEDグループ203についての光度制御信号は、通信部31によって当該照明装置2に送信される。
全体制御装置3から光度制御信号を受信した照明装置2では、通信部211が、受信した光度制御信号を制御部210に出力する。制御部210は、入力された光度制御信号に基づいて電源回路200を制御する。これにより、光源201を構成する複数のLEDグループ203のそれぞれの光度が、全体制御装置3からの光度制御信号に応じた光度に設定される。その結果、照明装置2の光源201全体の光度が制御される。全体制御装置3は、このようにして、照明装置2が配置された部屋100の明るさが適切になるように、当該照明装置2の光源201の光度を制御することができる。
また制御部30は、照明装置2の照度センサー22での検出照度に基づいて、当該照明装置2が配置されている部屋100での対象物500の位置を推定する。具体的には、制御部30は、照明装置2の光源201を構成する複数のLEDグループ203のそれぞれについて、当該LEDグループ203の照射範囲に対象物500が存在するか否かを、当該照明装置2の照度センサー22での検出照度に基づいて推定する。
本実施の形態では、全体制御装置3は、対象物500の位置を推定する場合には、光度制御信号を利用して、照明装置2の各LEDグループ203の光度を、図6に示されるように、現在の値I0を中心(基準)にして、所定の振幅Aとなるように周期変動周波数f(=1/T)で周期変動する。周期変動された光度の波形は正弦波となっている。そして、全体制御装置3は、照明装置2の照度センサー22での検出照度から、LEDグループ203の光度の周期変動周波数fを有する周波数成分を抽出し、当該周波数成分の強度(振幅)に基づいて、当該LEDグループ203の照射範囲に対象物500が存在するか否か推定する。この位置推定処理については後で詳細に説明する。
<対象物の有無に起因する検出照度の変化について>
図7は、照明装置2の下方に対象物500が存在しない様子を示す図である。図8は、照明装置の下方に対象物500が存在する様子を示す図である。図7,8及び後述の図では照明装置2が点光源として示されている。
図7,8の例では、照明装置2の光源201から直下に出力された照射光300aが床面120で反射し、その反射光300bが当該照明装置2に向かって進んでいる。また図8の例では、照明装置2の光源201から斜め下方向に出力された照射光301aが、照明装置2の下方に存在する対象物500で反射し、その反射光301bは照明装置2に向かって進んでいる。
図7,8の例において、照明装置2の光源201の光度をIとし、床面120の反射率をR1とする。また、照明装置2と床面120との間の距離(床面120から照明装置2までの高さ)をL1とし、床面120からの反射光300bの照明装置2に対する入射角をθ1とする。
また図8の例において、照明装置2と対象物500との間の距離をL2とし、対象物500の反射率をR2とする。そして、対象物500からの反射光301bの照明装置2に対する入射角をθ2とする。
図7の例での照明装置2での水平面照度E0は、以下の式(1)で表される。
θ1=0°であることから、式(1)は以下の式(2)のようになる。
図8の例での照明装置2での水平面照度E0は、以下の式(3)で表される。
θ1=0°であることから、式(3)は以下の式(4)のようになる。
図7,8の例から理解できるように、照明装置2の下方に対象物500が存在するか否かによって、照明装置2の照射光が反射する反射体の種類、照明装置2から反射体までの距離、照明装置2の照射光が反射体で反射することによって得られる反射光についての照明装置2に対する入射角等が変化する。したがって、照明装置2の下方に対象物500が存在するか否かによって、照明装置2での水平面照度が変化する。よって、照明装置2の下方に対象物500が存在するか否かによって、照明装置2の照度センサー22での検出照度が変化する。
次に、図9に示されるように、照明装置2のLEDグループ203aの照射範囲204aに、反射率R11の対象物500aが存在し、照明装置2のLEDグループ203bの照射範囲204bに、反射率R12の対象物500bが存在する場合を考える。照明装置2のLEDグループ203a,203bの光度は周波数f1,f2でそれぞれ周期変動されている。
図9に示されるように、照明装置2のLEDグループ203aから斜め下方向に出力された照射光310aは、対象物500aで反射し、その反射光310bが照明装置2に向かって進んでいる。また、照明装置2のLEDグループ203bから斜め下方向に出力された照射光311aは、対象物500bで反射し、その反射光311bが照明装置2に向かって進んでいる。
ここで、周波数f1で周期変動されているLEDグループ203aの光度の振幅(最大値と最小値の差)をΔI1[f1]とし、周波数f2で周期変動されているLEDグループ203bの光度の振幅をΔI2[f2]とする。また照明装置2での水平面照度E0に含まれる、反射光310bに対応する、周波数f1を有する周波数成分の強度(振幅)をΔE1[f1]とする。また、照明装置2での水平面照度E0に含まれる、反射光311bに対応する、周波数f2を有する周波数成分の強度をΔE2[f2]とする。また、対象物500aと照明装置2との間の距離をL11とし、対象物500bと照明装置2との間の距離をL12とする。そして、反射光310bの照明装置2に対する入射角をθ11とし、反射光311bの照明装置2に対する入射角をθ12とする。ΔE1[f1]及びΔE2[f2]は、以下の式(5),(6)でそれぞれ表される。
上述のように、照明装置2の下方に対象物500が存在するか否かによって、照明装置2での水平面照度E0が変化することから、光度が周波数f1で周期変動されているLEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在するか否かによって、照明装置2での水平面照度E0に含まれる、周波数f1を有する周波数成分の強度(振幅)が変化する。したがって、照明装置2のLEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在するか否かによって、当該照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f1を有する周波数成分の強度が変化する。照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f1を有する周波数成分の強度については、対象物500の反射率、床面120の反射率、対象物500の位置、対象物500の高さ等によって、大きくなったり、小さくなったりする。
同様に、光度が周波数f2で周期変動されているLEDグループ203bの照射範囲204bに対象物500が存在するか否かによって、照明装置2での水平面照度E0に含まれる、周波数f2を有する周波数成分の強度が変化する。したがって、照明装置2のLEDグループ203bの照射範囲204bに対象物500が存在するか否かによって、当該照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f2を有する周波数成分の強度が変化する。
このように、照明装置2のLEDグループ203の光度が周波数fで周期変動されている場合には、当該照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数fを有する周波数成分の強度が対象物500の影響を受けて変化することがある。本実施の形態では、この点に鑑みて、全体制御装置3の制御部30が、LEDグループ203の光度が周波数fで周期変動されている際の照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数fを有する周波数成分の強度の変化に基づいて、当該LEDグループ203に対象物500が存在するか否かを推定する。以下に全体制御装置3での対象物500の位置推定処理について詳細に説明する。
<対象物の位置推定処理について>
図10は、制御部30において、部屋100に配置されたある照明装置2が使用されて対象物500の位置の推定が行われる際の当該制御部30の動作を示すフローチャートである。制御部30は、本実施の形態に係る照明システム1が導入された住宅に設けられた各照明装置2を使用して、図10に示される一連の処理を定期的にあるいは不定期的に繰り返して行う。以後、説明の対象の照明装置2を「対象照明装置2」と呼ぶ。
図10に示されるように、制御部30は、ステップs1において、光度制御信号を使用して、対象照明装置2の光源201を構成する複数のLEDグループ203a,203bの光度を、上述の図6に示されるように、複数種類の周波数f1,f2でそれぞれ周期変動する。このとき、制御部30は、対象照明装置2が配置された部屋100に存在する人が、各LEDグループ203a,203bの光度の周期変動(周期変動)を感知できないように、各LEDグループ203a,203bの光度を周期変動する。LEDグループ203の光度の周期変動周波数や振幅を調整することによって、部屋100に存在する人が、LEDグループ203の光度の周期変動を感知できないようにすることが可能である。
次にステップs2において、制御部30は、対象照明装置2に対して、通信部31を通じて、照度センサー22での検出照度の出力指示を行う。全体制御装置3から出力指示を受信した対象照明装置2では、制御部210が照度センサー22での検出照度を通信部211を通じて全体制御装置3に送信する。全体制御装置3の通信部31が受信した検出照度は制御部30に入力される。これにより、制御部30は、LEDグループ203a,203bの光度が周波数f1,f2でそれぞれ周期変動されている際の照度センサー22での検出照度を取得することができる。制御部30は、対象照明装置2の照度センサー22での検出照度を取得すると、光度制御信号を使用して、LEDグループ203a,203bのそれぞれの光度の周期変動を停止する。
次にステップs3において、制御部30は、対象照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f1,f2をそれぞれ有する複数の周波数成分の強度を求める。対象照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f1の周波数成分及び周波数f2の周波数成分の強度については、フーリエ変換等を用いて当該検出照度を周波数解析することによって求めることができる。そして、制御部30は、求めた各周波数成分の強度の変化量を求める。
次にステップs4において、制御部30は、ステップs3で求めた各周波数成分の強度の変化量に基づいて、対象照明装置2が設けられた部屋100での対象物500の位置を推定する。
ステップs4において、まず制御部30は、ステップs3で求めた各周波数成分の強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断する。そして、制御部30は、周波数f1の周波数成分の強度の変化量がしきい値よりも大きい場合には、周波数f1で光度が周期変動されるLEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在すると推定する。一方で、制御部30は、周波数f1の周波数成分の強度の変化量がしきい値以下の場合には、LEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在しないと推定する。
同様に、制御部30は、周波数f2の周波数成分の強度の変化量がしきい値よりも大きい場合には、周波数f2で光度が周期変動されるLEDグループ203bの照射範囲204bに対象物500が存在すると推定する。一方で、制御部30は、周波数f2の周波数成分の強度の変化量がしきい値以下の場合には、LEDグループ203bの照射範囲204bに対象物500が存在しないと推定する。
ステップs4において対象物500の位置が推定されると、制御部30は、対象照明装置2を使用した対象物500の位置推定処理を終了する。
ここで、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数fの周波数成分を「周波数成分[f]」とする。本実施の形態では、ステップs3で求められる、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の変化量は、当該照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度についての基準強度からの変化量である。そして、本実施の形態では、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度についてのプラス側の変化量に対応したプラス側しきい値と、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度についてのマイナス側の変化量に対応したマイナス側しきい値とが設けられている。
照度センサー22での検出照度(対象照明装置2から全体制御装置3に通知される検出照度)に含まれる周波数成分[f]の強度をSとし、基準強度をSrefとし、プラス側しきい値をSth1とし、マイナス側しきい値をSth2する。制御部30は、(S−Sref)>Sth1を満足する場合には、言い換えれば、S>(Sref+Sth1)を満足する場合には、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度についてのプラス側の変化量(より詳細には、当該強度についての基準強度に対するプラス側の変化量)がしきい値よりも大きいと判定する。
また制御部30は、(Sref−S)>Sth2を満足する場合には、言い換えれば、S<(Sref−Sth2)を満足する場合には、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度についてのマイナス側の変化量(より詳細には、当該強度についての基準強度に対するマイナス側の変化量)がしきい値よりも大きいと判断する。
そして制御部30は、(S−Sref)>Sth1を満足せず、かつ(Sref−S)>Sth2を満足しない場合には、言い換えれば、S>(Sref+Sth1)を満足せず、かつS<(Sref−Sth2)を満足しない場合には、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]についての変化量がしきい値以下であると判断する。プラス側しきい値Sth1とマイナス側しきい値Sth2は、互いに同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。
本実施の形態では、対象照明装置2の照度センサー22で検出される検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度と比較される基準強度は、対象照明装置2における、光度が周波数fで周期変動されるLEDグループ203の照射範囲に対象物500が存在しない状況で、当該LEDグループ203の光度が周波数fで周期変動されている場合に、対象照明装置2の照度センサー22で検出される検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度である。言い換えれば、対象照明装置2の照度センサー22で検出される検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度と比較される基準強度は、対象照明装置2における、光度が周波数fで周期変動されるLEDグループ203の光度が周波数fで周期変動されている場合において、対象照明装置2の照度センサー22で検出される検出照度が対象物500の影響を受けないときの当該検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度である。
基準強度は全体制御装置3のメモリ32に記憶されている。制御部30は、照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断する際には、メモリ32内から、当該変化量と比較される基準強度を読み出す。
なお、上記の例では、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]についてのプラス側の変化量とマイナス側の変化量にそれぞれ対応するプラス側及びマイナス側しきい値を設けているが、当該プラス側の変化量と当該マイナス側の変化量に共通の一つのしきい値を設けても良い。この場合には、制御部30は、例えば、照度センサー22での現在の検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度と基準強度との差分の絶対値がしきい値よりも大きければ、当該周波数成分[f]の変化量がしきい値よりも大きいと判断する。そして、制御部30は、当該差分の絶対値がしきい値以下であれば、当該周波数成分[f]の強度の変化量がしきい値以下であると判断する。
以上のように、本実施の形態では、照明装置2が使用されて対象物500の位置が推定されることから、照明装置2とは別に、赤外線センサーなどの位置検出用のセンサー等を用意する必要がない。よって、簡単な構成で対象物500の位置を推定することができる。
また、太陽光などの外乱光が窓等から部屋100に入射されると、照度センサー22の検出照度が外乱光の影響を受けることがある。したがって、太陽光等の外乱光が時間等に応じて変化すると照度センサー22の検出照度が変化することがある。しかしながら、本実施の形態では、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数fの周波数成分の強度の変化に基づいて対象物500の位置を推定していることから、周波数f、つまりLEDグループ203の光度の周期変動周波数fを、外乱光が時間等に応じて変化する際の周波数と異ならせることによって、対象物500の位置推定に外乱光が与える影響を抑制することができる。よって、対象物500の位置推定精度が向上する。
なお、上記の例では、光源201を構成する複数のLED素子202は、照射範囲が異なる2つのLEDグループ203を形成していたが、照射範囲が異なる3つ以上のLEDグループ203を形成しても良い。
図11は、部屋100に配置された照明装置2の光源201を構成する複数のLED素子202が、照射範囲が異なる4つのLEDグループ203a〜203dを形成している様子を示す図である。図11に示されるように、LEDグループ203aの照射範囲204aと、LEDグループ203bの照射範囲204bと、LEDグループ203cの照射範囲204cと、LEDグループ203dの照射範囲204dとは互いに異なっている。
また、図11に示される複数のLEDグループ203の照射範囲は、光源201の中心から外側に向かって放射線状に延びているが、複数のLEDグループ203の照射範囲の形状はこれ以外であっても良い。
図12〜14は複数のLEDグループ203の照射範囲の形状の一例を示す図である。図12には、照明装置2の光源201を構成する複数のLED素子202が形成する5つのLEDグループ203の照射範囲204a〜204eが示されている。図13には、照明装置2の光源201を構成する複数のLED素子202が形成する9つのLEDグループ203の照射範囲204a〜204iが示されている。図14には、照明装置2の光源201を構成する複数のLED素子202が形成する40個のLEDグループ203の照射範囲204a〜204z,204A〜204Nが示されている。
図12及び図13の例では、制御部30は、照明装置2の直下に対象物500が存在するか否かを検出することができる。また図13の例の方が図12の例よりも対象物500の位置推定の精度が向上し、図14の例の方が図13の例よりも対象物500の位置推定の精度が向上する。
また、制御部30は、対象物500の位置推定結果に基づいて、対象照明装置2全体の照射範囲内での対象物500の密度(密集度)を推定しても良い。例えば、対象照明装置2の光源201を構成する複数のLED素子202が形成する複数のLEDグループ203のそれぞれの照射範囲に1つの対象物500しか存在できない場合には、制御部30は、複数のLEDグループ203のうち、照射範囲に対象物500が存在すると推定したLEDグループ203の数Zを求める。制御部30は、この数Zを、対象照明装置2の照射範囲内での対象物500の数とする。これにより、対象照明装置2の照射範囲内での対象物500の密度が推定される。したがって、照明装置2が設けられた部屋100での対象物500の密度を求めることが可能となる。
また、対象物500は人以外の物であっても良い。対象物500は例えばペットであっても良い。
<検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の算出例>
上記のように、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度についてはフーリエ変換等を用いて求めることができる。以下に、一例として、フーリエ変換を用いた周波数成分[f]の強度の算出例について説明する。
照度センサー22での検出照度をF(x)で表すと、F(x)はフーリエ級数を用いて以下の式(7)で表すことができる。
係数An及びBnは、検出照度F(x)に含まれる周波数成分を、余弦波成分と正弦波成分に分けて考えた際の当該余弦波成分及び当該正弦波成分の強度(振幅)をそれぞれ示している。また、係数√(An2+Bn2)は、検出照度F(x)に含まれる周波数成分を正弦波成分として考えた際の当該正弦波成分の強度(振幅)を示している。
ここで、フーリエ変換等が用いられる場合、照度センサー213での検出照度は所定周期でサンプリングされることになる。LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングの開始タイミングとが同期していない場合には、両者の開始タイミングの間の時間関係がばらつくことから、検出照度のサンプリングの開始タイミングに応じてAn及びBnは変化する。言い換えれば、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングの開始タイミングとが同期している場合には、検出照度のサンプリングの開始タイミングに応じてはAn及びBnは変化しない。
一方で、√(An2+Bn2)については、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングの開始タイミングとが同期していない場合であっても、検出照度のサンプリングの開始タイミングに応じては変化しない。
そこで、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングタイミングとを同期させる場合には、AnあるいはBnのどちらか一方だけを求めて、その一方を、検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度として位置推定に使用する。ここで、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングタイミングとを同期させるとは、両者の開始タイミングを同じにする必要はなく、両者の開始タイミングの間の時間関係を一定にすれば良い。
一方で、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングタイミングとを同期させない場合には、√(An2+Bn2)を、検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度として位置推定に使用する。
前者の場合には、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングの開始タイミングとを同期させる必要があるものの、AnあるいはBnのどちらか一方だけを求めるだけで良いことから、演算負荷を低減できる。一方で、後者の場合には、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングの開始タイミングとを同期させる必要はないものの、An及びBnの両方を求める必要があることから、演算負荷が少し増加する。
なお、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングタイミングとを同期させる場合には、An及びBnのどちらか一方が“0”となるように、LEDグループ203の光度の周期変動の開始タイミングと、検出照度のサンプリングタイミングとを同期させることが望ましい。この場合には、An及びBnのうち“0”でない方の係数を大きくすることができるとともに、An及びBnのうち“0”の方の係数の演算が不要となる。
<対象物の位置推定結果の利用例>
以下に、対象物500の位置推定結果の各種利用例について説明する。
<エネルギーマネジメント>
制御部30は、対象物500の位置の推定結果に基づいて、空調機器及び照明装置2の制御を行うことが可能である。
例えば、制御部30は、対象照明装置2の複数のLEDグループ203の照射範囲のうち、対象物500が存在しないと推定した照射範囲の照度が小さくなるように、対象物500が存在しないと推定した照射範囲を有するLEDグループ203の光度を光度制御信号を使用して小さくする。これにより、対象物500が存在する場所の照度を適切に維持しつつ、対象物500が存在しない場所の照度を小さくすることができる。その結果、照明システム1全体での消費電力を低減することができる。
また、対象照明装置2の複数のLEDグループ203の照射範囲での空調をそれぞれ制御する複数の空調機器が設けられている場合には、制御部30は、対象照明装置2の複数のLEDグループ203の照射範囲のうち、対象物500が存在しないと推定した照射範囲での空調を制御する空調機器を停止する。
また、制御部30は、照明装置2を利用した対象物500の位置推定の結果から、対象物500が存在しない部屋100を特定し、当該部屋100の空調を制御する空調機器を停止したり、当該部屋100に配置された照明装置2を消灯したりしても良い。
また、制御部30は、部屋100での対象物500の密度を推定する場合には、当該部屋100に設けられた空調機器を制御することによって、当該部屋100の空調を、推定した対象物500の密度に応じて制御しても良い。
このように、対象物500の位置の推定結果に基づいて、空調機器及び照明装置2の制御を行うことによって、無駄にエネルギーが消費されることを抑制することができる。
<見守りシステム>
対象物500が独居老人、子供、ペット等である場合には、照明システム1を利用して対象物500を見守る見守りシステムを構築することが可能となる。
例えば、制御部30は、各部屋100での対象物500の位置の推定結果に基づいて、部屋100内での対象物500の移動及び部屋100間での対象物500の移動を監視し、その監視結果に基づいて対象物500の異常の有無を判定する。例えば、制御部30は、所定の期間において、部屋100内での対象物500の移動あるいは部屋100間での対象物500の移動があれば、対象物500に異常は無いと判定する。一方で、制御部30は、所定の期間において、部屋100内での対象物500の移動及び部屋100間での対象物500の移動がなければ、対象物500に異常が有ると判定する。制御部30は、対象物500の異常の有無を判定すると、その判定結果を、通信部31を使用して、対象物500を見守る側の機器に通知する。対象物500が独居老人である場合には、対象物500の異常の有無の判定結果は、例えば、介護者あるいは民生委員が有する機器に通知される。また、対象物500が子供である場合には、対象物500の異常の有無の判定結果は、例えば、保護者あるいは幼稚園の職員が有する機器に通知される。そして、対象物500がペットである場合には、対象物500の異常の有無の判定結果は、例えば飼い主が有する機器に通知される。
また、制御部30は、各部屋100での対象物500の位置の推定結果に基づいて、特定の部屋(キッチンやトイレなど)への対象物500の移動を監視し、その監視結果に基づいて対象物500の異常の有無を判定する。例えば、制御部30は、所定の期間において対象物500の特定の部屋への移動があれば、対象物500に異常は無いと判定する。一方で、制御部30は、所定の期間において対象物500の特定の部屋への移動が無ければ、対象物500に異常が有ると判定する。
また、制御部30は、各部屋100での対象物500の位置の推定結果に基づいて、対象物500の行動パターンが日常の行動パターンと相違するかどうかを判断し、その判断結果に基づいて対象物500の異常の有無を判定する。例えば、制御部30は、対象物500が移動するもののトイレに行かない場合、対象物500が移動するもののキッチンに行かない場合、対象物500がトイレに行く回数が多い場合、対象物500が移動する速度が異常に遅い場合などには、対象物500の行動パターンが日常の行動パターンと相違すると判断して、対象物500に異常が発生したと判定する。
また、制御部30は、各部屋100での対象物500の位置の推定結果に基づいて、対象物500の屋外への移動を監視し、その監視結果に基づいて対象物500の異常の有無を判定する。例えば、制御部30は、対象物500が屋外に移動すると、対象物500に異常が有ると判定する。一方で、制御部30は、対象物500が屋外に移動していない場合には、対象物500に異常は無いと判定する。
このように、照明システム1を利用して見守りシステムを構築することができるため、カメラシステム等で見守りシステムを構築する場合と比較して、見守られている側が「見られている」という心理的な負担を感じることを軽減することができる。
<家電及びAV機器の制御>
制御部30は、対象物500の位置の推定結果に基づいて、家電及びAV機器の電源の制御を行うことが可能である。
例えば、制御部30は、照明装置2を利用した対象物500の位置推定の結果から、対象物500が存在しない部屋100を特定し、当該部屋100に設けられた家電及びAV機器の電源をオフにする。これにより、家電及びAV機器の消費電力を低減することが可能である。
<セキュリティシステム、監視システム>
本実施の形態に係る照明システム1を利用してセキュリティシステムあるいは監視システムを構築することが可能となる。
例えば、全体制御装置3の動作モードとして、照明システム1が導入された住宅への不審者を監視する監視モードを設ける。ユーザは、全体制御装置3に設けられた操作部を操作することによって全体制御装置3の動作モードを監視モードに設定することができる。全体制御装置3の動作モードが監視モードに設定されると、制御部30は、各照明装置2を点灯し、各照明装置2の各LEDグループ203の光度を周期変動させて、対象物500の位置の推定を行う。そして、制御部30は、各部屋100での対象物500の位置の推定結果に基づいて、照明システム1が導入された住宅への不審者の侵入を監視する。例えば、制御部30は、玄関等の人の出入り口以外の場所から対象物500が住宅に侵入したか否かを判断する。制御部30は、住宅に不審者が侵入したと判断すると、例えば、各照明装置2を特別な方法で点灯させて不審者に対して威嚇を行うとともに、通信部31を使用して、外部機器、例えばセキュリティ会社の機器に対して不審者の侵入があったとことを通知する。監視モードでは、制御部30は、各照明装置2を少しの時間だけ点灯して対象物500の位置の推定を行う処理を周期的に行う。
以上のように、制御部30での対象物500の位置の推定結果を利用して様々なシステムを構築することができる。
<各種変形例>
以下に本実施の形態に係る照明システム1の各種変形例について説明する。
<第1変形例>
上記の例では、照明装置2の複数のLEDグループ203の光度を互いに異なる複数種類の周期変動周波数で同時に周期変動している際の照度センサー22での検出照度に含まれる、当該複数種類の周期変動周波数をそれぞれ有する複数の周波数成分の強度に基づいて、当該複数のLEDグループ203のそれぞれについて、当該LEDグループ203の照射範囲に前記対象物が存在するか否かを推定していた。
これに対して、本変形例では、照明装置2の複数のLEDグループ203の光度を共通の周期変動周波数fcで順番に周期変動しながら、当該複数のLEDグループ203のそれぞれについて当該LEDグループ203の照射範囲に対象物500が存在するか否かを推定する。
図15は本変形例に係る制御部30の動作を示すフローチャートである。図15には、制御部30において、対象照明装置2が使用されて対象物500の位置の推定が行われる際の当該制御部30の動作を示すフローチャートが示されている。制御部30は、照明システム1が導入された住宅に設けられた各照明装置2を使用して、図15に示される一連の処理を定期的にあるいは不定期的に繰り返して行う。
図15に示されるように、ステップs11において、制御部30は、対象照明装置2の複数のLEDグループ203から一つのLEDグループ203を選択する。そして、ステップs12において、制御部30は、光度制御信号を使用して、選択したLEDグループ203の光度を周波数fcで周期変動する。
次にステップs13において、制御部30は、対象照明装置2に対して、通信部31を通じて、照度センサー22での検出照度の出力指示を行う。全体制御装置3から出力指示を受信した対象照明装置2では、制御部210が照度センサー22での検出照度を通信部211を通じて全体制御装置3に送信する。全体制御装置3の通信部31が受信した検出照度は制御部30に入力される。これにより、制御部30は、選択したLEDグループ203の光度が周波数fcで周期変動されている際の照度センサー22での検出照度を取得することができる。制御部30は、対象照明装置2の照度センサー22での検出照度を取得すると、光度制御信号を使用して、選択したLEDグループ203の光度の周期変動を停止する。
次にステップs14において、制御部30は、対象照明装置2での検出照度に含まれる、周波数fcを有する周波数成分(周波数成分[fc])の強度を求める。そして、制御部30は、求めた周波数成分[fc]の強度の変化量を求める。
次にステップs15において、制御部30は、ステップs14で求めた周波数成分[fc]の強度の変化量としきい値とを比較する。制御部30は、周波数成分[fc]の強度の変化量がしきい値よりも大きい場合には、選択したLEDグループ203の照射範囲に対象物500が存在すると判定する。一方で、制御部30は、周波数成分[fc]の強度の変化量がしきい値以下の場合には、選択したLEDグループ203の照射範囲に対象物500が存在しないと判定する。
ステップs15が実行されると、ステップs16において、制御部30は対象照明装置2の複数のLEDグループ203のすべてを選択したかを判断する。ステップs16において、制御部30は、対象照明装置2の複数のLEDグループ203のすべてを選択したと判断すると、対象照明装置2を使用した対象物500の位置推定処理を終了する。一方で、制御部30は、対象照明装置2の複数のLEDグループ203において、選択していないLEDグループ203が存在すると判断すると、再度ステップs11を実行して、未選択のLEDグループ203から一つのLEDグループ203を選択する。以後、制御部30は同様に動作する。
なお、本変形例のように、制御部30が、複数のLEDグループ203を順番に処理する場合には、対象物500が高速に移動する際には、すべてのLEDグループ203についての処理が完了するまでに、対象物500の位置が変化する可能性がある。その結果、対象物500の位置の推定精度が劣化する可能性がある。
これに対して、上述の図10に示される位置推定処理では、複数のLEDグループ203の光度が互いに異なる複数種類の周期変動周波数で同時に周期変動されている際の照度センサー22での検出照度が使用されることから、対象物500が高速に移動する場合であっても、対象物500の位置の推定精度が劣化することを抑制することができる。
<第2変形例>
上述の図9に示される状況において、反射光310bの照明装置2に対する入射角θ11が小さくなれば、上述の式(5)から理解できるように、照明装置2での水平面照度E0に含まれる、反射光310bに対応する、周波数f1を有する周波数成分の強度ΔE1[f1]は大きくなる。したがって、照明装置2のLEDグループ203aから照射された光の反射光についての照度センサー22の受光領域23に対する入射角が小さくなれば、当該照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f1を有する周波数成分の強度は大きくなる。よって、照明装置2のLEDグループ203aから照射された光の反射光についての照度センサー22の受光領域23に対する入射角が小さくなれば、制御部30は、当該照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f1を有する周波数成分の強度の変化を検出し易くなる。その結果、LEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在するか否かの推定の精度が向上する。
同様に、照明装置2のLEDグループ203bから照射された光の反射光についての照度センサー22の受光領域23に対する入射角が小さくなれば、制御部30は、当該照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f2を有する周波数成分の強度の変化を検出し易くなる。よって、LEDグループ203bの照射範囲204bに対象物500が存在するか否かの推定の精度が向上する。
そこで、本変形例では、図16に示されるように、照明装置2の光源201を構成する複数のLEDグループ203a,203bにそれぞれ対応する複数の照度センサー22を当該照明装置2に設ける。つまり、照明装置2の照度検出部を、複数のLEDグループ203a,203bにそれぞれ対応する複数の照度センサー22で構成する。そして、複数の照度センサー22のそれぞれについて、当該照度センサー22の受光領域23を、当該照度センサー22に対応するLEDグループ203の照度範囲の方に向ける。
具体的には、LEDグループ203aに対応する照度センサー22の受光領域23は、LEDグループ203aの照射範囲204aの方に向ける。また、LEDグループ203bに対応する照度センサー22の受光領域23は、LEDグループ203bの照射範囲204bの方に向ける。これにより、LEDグループ203aに対応する照度センサー22の受光領域23に対する、当該LEDグループ203aから照射された光の反射光の入射角が小さくなる。同様に、LEDグループ203bに対応する照度センサー22の受光領域23に対する、当該LEDグループ203bから照射された光の反射光の入射角が小さくなる。
そして、制御部30は、複数のLEDグループ203のそれぞれについて、当該LEDグループ203に対応する照度センサー22での検出照度に含まれる、当該LEDグループ203の光度の周期変動周波数を有する周波数成分の強度に基づいて、当該LEDグループ203の照射範囲に対象物500が存在するか否かを推定する。
具体的には、制御部30は、LEDグループ203aに対応する照度センサー22での検出照度に含まれる、当該LEDグループ203aの光度の周期変動周波数f1を有する周波数成分の強度の変化量としきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、当該LEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在するか否かを推定する。また、制御部30は、LEDグループ203bに対応する照度センサー22での検出照度に含まれる、当該LEDグループ203bの光度の周期変動周波数f2を有する周波数成分の強度の変化量としきい値とを比較し、その比較結果に基づいて、当該LEDグループ203bの照射範囲204bに対象物500が存在するか否かを推定する。
このように、本変形例では、LEDグループ203aに対応する照度センサー22の受光領域23に対する、当該LEDグループ203aから照射された光の反射光の入射角が小さくなるため、制御部30は、当該照度センサー22での検出照度に含まれる、周波数f1を有する周波数成分の強度の変化を検出し易くなる。よって、LEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在するか否かの推定の精度が向上する。同様にして、LEDグループ203bの照射範囲204bに対象物500が存在するか否かの推定の精度が向上する。
<第3変形例>
上記の例では、全体制御装置3が、照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断していたが、照明装置2が、自身の照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断しても良い。以下に、この場合の照明システム1での位置推定処理を説明する。
まず制御部30は、上述のステップs1と同様に、光度制御信号を使用して、対象照明装置2の光源201を構成するLEDグループ203a,203bの光度を周波数f1,f2でそれぞれ周期変動する。
次に、制御部30は、対象照明装置2に対して、対象照明装置2の照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f1]及び周波数成分[f2]のそれぞれの強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かの判断を行うことを指示する信号(以後、「判断指示信号」と呼ぶ)を通信部31を通じて送信する。全体制御装置3から判断指示信号を受信した照明装置2では、制御部210が、メモリ212内の基準強度を使用して、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f1]及び周波数成分[f2]のそれぞれの強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断する。そして、制御部210は、その判断結果を、通信部211を通じて全体制御装置3に送信する。
対象照明装置2から判断結果を受信した全体制御装置3では、制御部30は、光度制御信号を使用して、対象照明装置2のLEDグループ203a,203bの光度の周期変動を停止する。そして、制御部30は、対象照明装置2から受信した判断結果に基づいて、上記と同様にして、LEDグループ203aの照射範囲204aに対象物500が存在するか否かを推定するとともに、LEDグループ203bの照射範囲204bに対象物500が存在するか否かを推定する。これにより、対象照明装置2が使用された対象物500の位置推定処理が終了する。
このように、照明装置2が、自身の照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断することによって、全体制御装置3での処理負荷を軽減することができる。本変形例のように、照明装置2において、制御部210が、メモリ212内の基準強度を使用して、照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断し、通信部211がその判断結果を全体制御装置3に送信する場合には、照明装置2の通信モジュール21と全体制御装置3とが、当該照明装置2の照度センサー22での検出照度に基づいて対象物500の位置を推定する装置として機能する。
なお、第1及び第2変形例においても、照明装置2が、自身の照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断し、その判断結果を全体制御装置3に通知しても良い。
また、照明装置2では、制御部210が照度センサー22での検出照度に含まれる周波数成分[f]の強度の変化量を求めて、通信部211がその変化量を全体制御装置3に送信しても良い。そして、全体制御装置3では、制御部30が、照明装置2から通知された変化量がしきい値よりも大きいか否かを判断しても良い。この場合であっても、全体制御装置3での処理負荷を軽減することができる。
以上のように、照明システム1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。