本発明の混繊メルトブロー不織布は、少なくとも2種類の繊維群を含む混繊メルトブロー不織布であって、第1の繊維群はポリオレフィン系樹脂成分Aからなり各々の繊維径が7.0μm以下であり、第2の繊維群は樹脂成分Bからなり各々の繊維径が15μm〜100μmであり、前記混繊メルトブロー不織布の長さ方向における引張強力が単位目付あたり0.45(N/5cm)/(g/m2)以上であり、さらに前記混繊メルトブロー不織布に6kg/cm2の荷重をかけた後の圧力損失の上昇率が25%以下であることを特徴とする、混繊メルトブロー不織布である。
本発明の混繊メルトブロー不織布は、このように繊維径が異なる少なくとも2種類の繊維が混合された不織布からなるものである。
本発明の混繊メルトブロー不織布の素材は、非導電性を有する材料からなる繊維を主として含むものであることが好ましい。ここでいう非導電性は、体積抵抗率が1012・Ω・cm以上であることが好ましく、1014・Ω・cm以上であることがより好ましい態様である。
このような非導電性の材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリ乳酸等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリウレタンエラストマー等のエラストマー、およびこれらの共重合体または混合物などを挙げることができる。これらの中でも、エレクトレット性能を特に発揮するという観点から、ポリオレフィンを主体とする素材が好ましく、ポリプロピレンがより好ましく用いられる。
本発明において、第1の繊維群を構成するポリオレフィン系樹脂成分Aとして用いられる樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテン等のホモポリマーなどが挙げられる。また、これらのホモポリマーに異なる成分を共重合したコポリマーや、異なる2種以上のポリマーブレンドを用いることもできる。これらの中でも、帯電保持性の観点から、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが好ましく用いられる。また、安価に利用できるという観点から、ポリプロピレンがさらに好ましく用いられる。
ポリオレフィン系樹脂成分Aは、極細繊維を紡糸し易いように、メルトフローレート(MFR)の大きい成分を用いることが好ましい。230℃の温度で、21.2N荷重条件におけるMFRの値は、例えば、100g/10分以上が好ましく、より好ましくは500g/10分以上である。MFRがこの値よりも大きい原料を使用することによって、繊維を細化することが容易となり、目的とする繊維径範囲の繊維を容易に得ることができる。また、MFRの上限値としては、2000g/10分であることが好ましい。MFRがこの上限値を超えると、紡糸時の溶融粘度が低くなりすぎるため、ショット欠点が多発しやすくなる等、紡糸性に問題が発生する場合がある。
本発明において、第2の繊維群を構成する樹脂成分Bとして用いられる樹脂の種類としては、非導電性の材料であれば良く、好ましくはポリオレフィン系樹脂成分Aよりも融点が低い樹脂からなり、さらに好ましくはポリオレフィン系樹脂成分からなる樹脂である。その際、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの融点差は、好ましくは0〜40℃であり、より好ましくは10〜35℃であり、さらに好ましくは15〜30℃である。
本発明の混繊メルトブロー不織布をメルトブロー法によって製造する場合、樹脂成分Bからなり、単繊維径が比較的太く比較的固化が遅い半溶融状態の第2の繊維群が、ポリオレフィン系樹脂成分Aからなり、単繊維径が比較的細く比較的固化が早い第1の繊維群を絡め取りながらシート化される。このため、第1の繊維群におけるフライの発生が抑制され、結果として単繊維径の細い繊維を多く含む、捕集効率の高い混繊不織布が得られる。また、樹脂成分Bがポリオレフィン樹脂成分Aよりも低い融点からなる場合、第2の繊維群を構成する繊維の固化がより遅くなるため、繊維の自己融着が増加し、より強度が大きい混繊メルトブロー不織布が得られる。
樹脂成分Bがポリオレフィン系樹脂成分Aよりも高い融点をもつ、またはポリオレフィン系樹脂成分Aよりも低い融点をもつがそれらの融点差が5℃よりも小さい場合、絡め取りの効果が小さくなるため、細繊維を多く含む混繊不織布が得られず捕集効率が低下するとともに、繊維の固化が早くなるため、繊維の自己融着が減少して不織布の強度が低下してしまう傾向がある。一方、樹脂成分Bがポリオレフィン系樹脂Aよりも低い融点をもち、かつその融点差が40℃より大きい場合、繊維間融着が強くなりすぎるため、捕集効率が低下し圧力損失が上昇してしまう傾向がある。
本発明で用いられる樹脂成分Bの種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテン等のホモポリマーや、これらのポリマーに異なるオレフィン成分を共重合したコポリマーを使用することができる。特に、2種類以上のオレフィン成分を共重合したコポリマーを使用することが好ましい。
コポリマーは、共重合成分の配合比や配列の制御によって、様々な融点のポリマーを得ることができる。また、望ましい融点が得やすいという観点から、コポリマーの中でも、ポリプロピレン系のコポリマーであることが好ましく、プロピレン成分とエチレン成分を共重合した、プロピレンーエチレン共重合体であることがさらに好ましい態様である。共重合成分には、本発明の効果を失わない範囲において、他のオレフィン成分やオレフィン以外の成分が含まれていても構わない。また、共重合形態としては、ランダム共重合やブロック共重合等が挙げられるが、ランダム共重合体であることがより好ましい態様である。
また、樹脂成分Bは、ポリオレフィン系樹脂成分Aと同じ組成であるポリオレフィン系樹脂成分から構成されていても構わないが、樹脂成分Bは、ポリオレフィン系樹脂成分Aよりも低いMFRであることが好ましい。樹脂成分Bにおいて、230℃の温度で、21.2N荷重条件におけるMFRの値は、ポリオレフィン系樹脂成分Aよりも低ければ良く、樹脂成分BのMFRは、好ましくは500g/10分以下であり、さらに好ましくは100g/10分以下である。MFRがこの値を超えると、紡糸時の溶融粘度が低くなるため、第2の繊維群を構成する15μm以上の繊維が得られ難くなるためである。また、MFRの下限値としては、10g/10分であることが好ましい。MFRがこの値よりも低いと、紡糸時の溶融粘度が高くなりすぎるため、加圧空気による延伸がし難く、糸切れが生じてしまいショット欠点が多発しやすくなる等、紡糸性に問題が発生する場合がある。
また、ポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bの融点が低すぎる場合には、混繊不織布全体の耐熱性が低下するため、実用上の問題が生じ得ることがある。好ましいポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bの融点は100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。
ポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bの融点は、特に上限値の制限は無いが、350℃以下であることが好ましく、より好ましくは300℃以下である。融点がこの値よりも高い樹脂成分を使用する場合、溶融に必要なエネルギーが多くなる場合があったり、高耐熱設備が必要となる場合があったりし、経済的に不利となることがある。
本発明の混繊メルトブロー不織布は、構成樹脂および繊維径によって分類される第1の繊維群および第2の繊維群を含んでなるものである。第1の繊維群は、ポリオレフィン系樹脂成分Aからなり、その各々の繊維径は7.0μm以下の範囲である。繊維径は、好ましくは5.0μm以下であり、さらに好ましくは2.0μm以下である。第1の繊維群の繊維径が7.0μmを超えると、不織布内の繊維表面積が減少し、十分な捕集効率が得られない。また、第1の繊維群の繊維径は、高い捕集効率を得るために、2.0μm以下であれば特に細くても構わないが、実用上、下限値は0.10μm程度である。
また、第2の繊維群は、樹脂成分Bからなり、その各々の繊維径は、15μm〜100μmであり、好ましくは20μm〜70μmである。第2の繊維群の繊維径が15μm未満では、不織布内の空隙が広がらず、十分な低圧力損失化効果が得られない。また、第2の繊維群の繊維径が100μmを超えると、特に低目付の不織布を得る際に第1の繊維群と均一に混合することが困難となる。
また、本発明の混繊メルトブロー不織布においては、第1の繊維群および第2の繊維群以外に、ポリオレフィン系樹脂成分Aからなり繊維径が7.0μm以上の繊維や、樹脂成分Bからなり15μm未満の繊維である第3の繊維群を任意に含んでもよい。繊維径100μmを超える繊維は、細繊維と太繊維を均一に混合することが困難となる場合があるため、含まないことが好ましい。
本発明の混繊メルトブロー不織布において、低圧力損失かつ高捕集効率を得るための不織布の第1の繊維群および第2の繊維群の体積割合は、不織布単位面積において、好ましい体積割合は、第1の繊維群が30〜80vol%で、第2の繊維群が20〜70vol%であり、より好ましい体積割合は、第1の繊維群が40〜70vol%で、第2の繊維群が30〜60vol%である。
第1の繊維群の体積割合が30vol%より少ないと、不織布の繊維表面積が減少するため、特に低目付な不織布としたときに十分な捕集効率が得られず、また十分な捕集効率を得るために目付を大きくした場合、不織布の製造コストが増大する。また、体積割合が80vol%より多いと不織布内の空隙が減少し、圧力損失が増加してしまう。
また、第2の繊維群の体積割合が20vol%より少ないと、不織布内の空隙が増加せず圧力損失が増加してしまい、70vol%より多いと、不織布の繊維表面積が相対的に小さくなり、十分な捕集効率が得られない。
本発明の混繊メルトブロー不織布は、前記のように第3の繊維群の繊維を任意に含むことができるが、それらの体積割合は好ましくは0〜20vol%である。第3の繊維群の体積割合が20vol%より多いと第1の繊維群および第2の繊維群の効果による優れた捕集性能が十分に得られない。
本発明の混繊メルトブロー不織布において、加圧時の圧力損失の上昇率を低減するために、不織布の長さ方向における引張強力は、単位目付あたり0.45(N/5cm)/(g/m2)以上であることが好ましく、より好ましくは0.5(N/5cm)/(g/m2)以上である。不織布の長さ方向における引張強力が、単位目付あたり0.45(N/5cm)/(g/m2)より低い場合は、繊維間の融着が少ないことを意味し、不織布を加圧した際に、不織布が潰れて不織布内の空隙が減少するため、圧力損失が大きく上昇してしまい、十分な捕集性能が得られない。
不織布の引張強力を高める方法としては、目付を高くすることや繊維径を細くすることにより、繊維同士の接着箇所を増加させる方法が挙げられる。しかしながら、高目付や細繊維になると、コストや圧力損失が高くなってしまうことが考えられる。そのため、より好ましい方法としては、繊維同士の融着を増加させる方法が考えられる。例えば、紡糸温度を高くしたり、捕集距離(口金吐出孔とコレクタ間の距離)を短くしたり、あるいは樹脂成分の融点を低くすることにより、口金から吐出された繊維の冷却を遅くして繊維の自己融着を促進する方法が挙げられる。
本発明の混繊メルトブロー不織布においては、不織布に6kg/cm2の荷重をかけた後の圧力損失の上昇率が25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。圧力損失の上昇率が25%を超えると、不織布をフィルターとして用いる際、成形などの加工工程において圧力損失が大きく上昇してしまい、優れたフィルター性能が得られないことがある。
本発明の混繊メルトブロー不織布は、高捕集性能エアフィルターに用いるという観点から、濾過風速4.5m/分における粒子径0.3〜0.5μmのポリスチレン粒子の捕集効率が好ましくは99.9%以上であり、かつQF値が0.20以上であることが好ましく、より好ましくは捕集効率が99.92%以上であり、かつQF値が0.22以上であることが好ましい。さらにより好ましくは、不織布に6kg/cm2の荷重をかけた後のQF値は、0.20以上である。
本発明の混繊メルトブロー不織布に含有される第1の繊維群と第2の繊維群からなる繊維において、ポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bからなる繊維をそれぞれ判別する方法としては、種々の方法を使用することができる。例えば、2種類の繊維の融点差や薬液への耐性差を利用し、一方の繊維だけを消失させ、残留した繊維について、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの各種顕微鏡を用いて繊維径を測定する方法を用いることができる。
また、顕微ラマン分光法、顕微赤外分光法、電子線マイクロアナライザ、および飛行時間型二次イオン質量分析法などの各種微小領域の物質分布が分析可能な手法を用いて、繊維の成分を判別しながら計測する方法を用いることができる。例えば、本発明の混繊不織布において、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bが互いに異なる融点を有する場合、混繊不織布を2つの樹脂成分の融点の間の温度で熱処理し、低融点繊維を融解させたときの不織布を構成する繊維の各々の繊維径を、熱処理前の不織布を構成する各々の繊維径と比較し、その差を取ることによりポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bからなる繊維を区別する方法を取ることができる。
次に、本発明の混繊メルトブロー不織布の製造方法について説明する。
本発明の混繊メルトブロー不織布の製造方法としては、メルトブロー法が挙げられる。また、第1の繊維群と第2の繊維群を製造する工程が必ずしも同一種類である必要はない。例えば、第1の繊維群をエレクトロスピニング法によって紡糸し、第2の繊維群をメルトブロー法によって紡糸する方法や、第1の繊維群をメルトブロー法によって紡糸し、第2の繊維群をスパンボンド法で紡糸する方法や、第1の繊維群をメルトブロー法で紡糸し、第2の繊維群として別個に製造された短繊維を吹き込むことによって混合する方法など、2種類以上の方法を組み合わせることもできる。
これらの方法の中でも、複雑な工程を必要とせず、繊維径が異なる繊維群を同時に紡糸製造することができるという観点から、メルトブロー法を用いることが好ましい態様である。メルトブロー法における紡糸条件としては、ポリマー吐出量、ノズル温度、加圧空気圧力および加圧空気温度等があるが、これら紡糸条件の最適化を行うことにより、所望の単繊維径と繊維本数割合を有する混繊不織布を得ることができる。
具体的に好適には、(1)第1の繊維群の原料として溶融粘度の小さい原料を使用し、第2の繊維群の原料として溶融粘度の大きい原料を使用すること、(2)第1の繊維群の吐出孔からのポリマー単孔吐出量を小さくし、第2の繊維群の吐出孔からのポリマー単孔吐出量を大きく設定すること、を適宜組み合わせることにより、所望の繊維径を有する混繊不織布を得ることができる。
また、メルトブロー法による製造方法としては、例えば、先行技術文献の特許文献3および特許文献6に記載された一つの紡糸口金内にて、同一もしくは異なるポリマーがそれぞれ異なる流路を通った後に、それぞれ異なる口金孔から吐出可能である口金孔が交互に一列に配列した構造の紡糸口金を用いる混繊メルトブロー法が挙げられる。その際、細繊維と太繊維を得る手段として、同種からなるポリマー以外に、異なるポリマーとして粘度や種類の異なるポリマーを用いて紡糸し、混繊させることもできる。また、各ポリマーが吐出される口金孔の数や孔径または吐出量を変更させることもできる。混繊メルトブロー法では、細繊維と太繊維をそれぞれ異なる流路を通すことにより、安定した条件で任意の繊維径を得ることが容易となり、かつ細繊維と太繊維が均一に混繊された不織布シートが得られやすい。また、細繊維と太繊維を同時に紡糸することにより、繊維の自己融着によるフライの抑制やシート強度の上昇の効果が得られやすい。
また、先行技術文献の特許文献5に記載されたメルトブロー繊維の中に短繊維を吹き込む方法が挙げられる。ただしこの製造方法では、複雑な装置が必要であり、かつ細繊維と太繊維を均一に混合することが困難な場合が考えられる。さらには、メルトブロー繊維と短繊維の繊維同士の融着が少なく強度が低下することや、融着を増すために熱処理などの工程が必要であり、熱処理時に繊維同士の融着が大きくなりすぎて圧力損失が上昇してしまうことが考えられる。
また、別々に製造した細繊維からなる不織布と太繊維からなる不織布を積層し、その後必要に応じて熱処理や交絡処理等による貼り合わせ加工を施しても良い。ただしこの製造方法では、細繊維と太繊維が均一に混合されていないため、低圧力損失かつ高捕集効率の効果が得られにくいことが考えられる。
そのため、本発明の混繊メルトブロー不織布の製造方法としては、前記の特許文献3および特許文献6に記載された混繊メルトブロー法がより好ましい態様である。
本発明の混繊メルトブロー不織布を混繊メルトブロー法によって製造する場合、第1の繊維群と第2の繊維群を吐出する口金の孔数(個)の比は、1:15〜15:1であることが好ましく、より好ましくは1:1〜11:1であり、さらに好ましくは2:1〜7:1である。第1の繊維群の吐出孔の数が少ない場合、本発明が好ましいとする繊維本数の比を達成することが困難となることがある。また、第2の繊維群の吐出孔の数が、第1の繊維群の吐出孔の数に比べて少なすぎる場合、第1の繊維群を混繊不織布の平面上に均一に分散させることが困難となることがある。第1の繊維群の吐出孔と第2の繊維群の吐出孔を一列に配置する場合、2種の吐出孔は交互に配列しても良く、その代わりの所望の方法で配列させることができる。例えば、2種の吐出孔aとbを、abba、aabbbaa、aaaabbbaaaa、というような配列を取ることもできる。均一な混繊不織布を得るという観点からは、2種の吐出孔が交互に配列されている形態が好ましい態様である。また、必要に応じて、第1の繊維群および第2の繊維群の吐出孔以外の、第3の繊維の吐出孔を備えていてもよい。
さらに、ポリオレフィン系樹脂成分Aの吐出孔aの孔径da(mm)は、φ0.10〜0.40mmの範囲であることが好ましく、より好ましくはφ0.15〜0.30mmの範囲である。粘度の低いポリオレフィン系樹脂成分Aを用いて、目的とする繊維径の繊維を紡糸するとき、孔径daが前記の範囲よりも大きい場合、背圧が小さくなり、吐出が不安定になる場合がある。また、孔径daが前記の範囲よりも小さい場合、孔に異物詰まりなどが発生し、吐出が不安定になる場合がある。
また、樹脂成分Bの吐出孔bの孔径dbは、φ0.40mm〜1.2mmの範囲であることが好ましく、より好ましくはφ0.50〜1.0mmの範囲である。
本発明において、より粘度の高い樹脂成分Bを用いて、目的とする繊維径の繊維を紡糸するとき、孔径dbが前記の値よりも小さい場合、背圧が高くなり過ぎるため、ポリマー漏れや口金の変形等が発生する場合がある。孔径dbが前記の値よりも大きい場合、背圧が小さくなり吐出が不安定になる場合がある。
本発明の混繊メルトブロー不織布をメルトブロー法によって製造する場合、捕集距離は、5cm〜40cmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10cm〜30cmである。捕集距離が大きくなった場合、繊維がコレクタに捕集されるまでに冷却される時間が長くなるため、繊維の自己融着が減少し不織布の強度が低下してしまう。また、紡糸された繊維同士の絡みあいが増え、フィルターとして有効に機能する繊維表面積が減少する。さらには、混繊メルトブロー不織布の目付斑も悪化するため、フィルター濾材としては不適となる。
また、捕集距離を小さくとりすぎた場合、繊維の固化が十分に進まないままシート化することになるため、繊維間融着が大きくなるすぎるため、圧力損失の上昇や捕集効率の低下を招くことがある。
また、本発明の混繊メルトブロー不織布の目付は、10〜80g/m2であることが好ましく、より好ましくは15〜70g/m2であり、さらに好ましくは20〜60g/m2である。
目付が10g/m2より低いと、不織布の厚み方向の繊維本数が減少するため低圧力損失となるが、ダストを捕捉するための有効繊維本数が減少してしまい、十分な捕集効率が得られないことがある。一方、目付が80g/m2より高いと、有効繊維本数が増加して高捕集効率となるが、繊維本数の増加により高圧力損失となってしまう傾向を示す。また、目付が80g/m2よりも大きい場合、不織布のコストの観点からも不適となる。
本発明の混繊メルトブロー不織布は、前述の濾過風速4.5m/分における粒子径0.3〜0.5μmのポリスチレン粒子の捕集効率(%)と、目付(g/m2)の関係が、次の式を満足することが好ましい。
−log(1−[捕集効率]/100)/[目付]≧0.1。
上記の式の左辺によって表現される値は、目付10g/m2あたりの捕集効率に相当する。一般に、フィルター濾材の捕集効率は、濾材の目付が大きいほど高くなる。しかしながら、目付が大きくなるとコストの観点から不利になる。上記の目付10g/m2あたりの捕集効率が、0.1よりも大きい場合、小さい目付でエアフィルター用濾材に要求される捕集効率が達成可能となり、コスト面で有利となる。
さらに、本発明の混繊メルトブロー不織布は、エレクトレット処理が施され、エレクトレット化されていることが望ましい。特に、エレクトレット化不織布にすることにより、静電気吸着効果により、更に低圧力損失と高捕集効率を得ることができる。
エレクトレット化の方法としては、高性能を有する混繊メルトブロー不織布を得る上で、水を不織布に付与した後に乾燥させることによりエレクトレット化する方法が好ましく用いられる。水を不織布に付与する方法としては、水の噴流もしくは水滴流を不織布内部まで水が浸透するのに十分な圧力にて噴霧する方法や、水を付与した後もしくは付与しながら不織布の片側から吸引して不織布内に水を浸透させる方法、およびイソプロピルアルコール、エチルアルコールおよびアセトンなどの水溶性有機溶剤と水との混合溶液に不織布を浸漬させて水を不織布内部まで浸透させる方法等が挙げられる。
また、本発明の混繊メルトブロー不織布を構成する各繊維には、耐候性を向上させ、またエレクトレット性能を良好にするという観点から、ヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれていることが好ましい。
これら化合物を含有させた混繊メルトブロー不織布を得るための手段としては、あらかじめ、これらの化合物と非導電性材料を混練押出機や静止混練機等で混練りしてマスターチップを作製し、これを押出機内で溶融し口金部に供給する方法や、紡糸機の押出機ホッパーに非導電性材料とこれら化合物を混合して供給し、押出機内で混練りして直接口金へ供給する方法、さらには、非導電性材料とこれら化合物をそれぞれ異なる押出機ホッパーに供給した後、これらを合流せしめてブレンドし押出機によって溶融・混錬し口金部へ供給する方法等がある。
上記のヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)](BASF・ジャパン(株)製、“キマソーブ”(登録商標)944LD)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(BASF・ジャパン(株)製、“チヌビン”(登録商標)622LD)、および2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(BASF・ジャパン(株)製、“チヌビン”(登録商標)144)などが挙げられる。
また、上記のトリアジン系添加剤としては、前述のポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)](BASF・ジャパン(株)製、“キマソーブ”(登録商標)944LD)、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール(BASF・ジャパン(株)製、“チヌビン”(登録商標)1577FF)などを挙げることができる。これらの中でも、特にヒンダードアミン系化合物が好ましく用いられる。
混繊メルトブロー不織布において、付与されるヒンダードアミン系化合物および/またはトリアジン系化合物の含有量は、ポリオレフィン繊維中に含有させる場合は、不織布全質量に対して0.5〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.7〜3質量%の範囲である。また、ヒンダードアミン系化合物および/またはトリアジン系化合物を、不織布もしくは繊維表面に付着させるなどの場合は、不織布全質量に対して0.1〜5.0質量%の範囲であることが好ましい。
混繊メルトブロー不織布には、上記化合物の他に、熱安定剤、耐候剤および重合禁止剤等の一般にエレクトレット加工品の不織布に使用されている通常の添加剤を添加することができる。
さらに、本発明の混繊メルトブロー不織布は、他のシートと積層して積層繊維不織布とすることができる。例えば、本発明の混繊不織布とそれよりも剛性の高いシートを積層して、製品強力を向上させて使用することや、脱臭や抗菌等機能性を有するシートと組み合わせて使用することもできる。本発明の混繊メルトブロー不織布と積層させる他のシートとしては、不織布、織編物およびニットなど任意に選択することができるが、通気性が高くかつプリーツ形状の保持性に優れる不織布を用いることが好ましい。その素材としては、合成樹脂、合成繊維、天然繊維、無機繊維および金属繊維などを用いることができる。
積層方法としては、接着剤を用いて2種類の不織布を貼り合わせる方法や、メルトブロー法以外の製法で製造した不織布の上にメルトブロー法により積層する方法が挙げられる。その他、2種類の不織布を貼り合わせる方法としては、湿気硬化型ウレタン樹脂をスプレー法で散布する方法、熱可塑性樹脂や熱融着繊維を散布し熱路を通して貼り合わせる方法などあるが、2種類の不織布を貼り合わせることが出来る方法が用いられる。
しかしながら、本発明の混繊メルトブロー不織布は、使用用途がフィルターに好適に使用される不織布であるため、圧力損失が上昇する貼り合わせ方法は好ましくない。その観点で、湿気硬化型ウレタン樹脂によるスプレー法は、2枚の不織布をプレスすることなく貼り合わせることが可能なため、貼り合わせ時の圧力損失の上昇が少なく好ましい方法である。
本発明の混繊メルトブロー不織布は、フィルターの濾材として好適に用いることができる。濾材は、エアフィルター全般、なかでも空調用フィルター、空気清浄機用フィルター、および自動車キャビンフィルターの高性能用途に好適であるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
次に、実施例を挙げてより具体的に本発明の混繊メルトブロー不織布について説明する。実施例において使用する特性値は、次の測定法により測定したものである。
(1)混繊メルトブロー不織布の目付
タテ×ヨコ=15cm×15cmの不織布の質量を1点測定し、得られた値を1m2当たりの値に換算して有効数字0.1g/m2とし、混繊メルトブロー不織布の目付(g/m2)を算出した。
(2)繊維径
(a)繊維径10μm未満の繊維
混繊メルトブロー不織布の任意の場所から、タテ×ヨコ=3mm×3mmの測定サンプルを10個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を調節して、採取したサンプルから繊維表面写真を各1枚ずつ、10枚を撮影した。倍率は1000〜3000倍とし、写真の中の繊維直径がはっきり確認できる10μm未満の繊維についてすべて有効数字0.01μmにて測定した。
これらのうち、各々の繊維が7.0μm未満であり、かつポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維を第1の繊維群とした。
(b)繊維径10μm以上の繊維
混繊メルトブロー不織布の任意の場所から、タテ×ヨコ=1mm×1cmの測定サンプルを10個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を調節して、採取したサンプルから繊維断面写真を各1枚ずつ、10枚を撮影した。倍率は100〜300倍とし、写真の中の繊維直径がはっきり確認できる10μm以上の繊維について、すべて有効数字0.01μmによって測定した。
これらのうち、上記の(a)と(b)で測定した各々の繊維について、前述した方法により、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bからなる繊維を区別した。さらに上記の(a)と(b)の方法で得られた繊維径を合算する際には、走査型電子顕微鏡での測定倍率により、繊維本数の存在比を換算した。例えば、(a)では測定倍率2000倍にて観察し、(b)では測定倍率200倍で観察した際、(a)で得られた各々の繊維の存在比率は、(b)で得られた各々の繊維の存在比率の1/10であるため、(a)で得られた各々の繊維の本数を10倍にし、(b)で得られた各々の繊維と合算した。これらのうち、樹脂成分Bからなり、かつ15μm〜100μmの繊維を第2の繊維群とした。さらに第1の繊維群および第2の繊維群に含まれない各々の繊維を第3の繊維群とした。
(3)繊維群の体積割合
第1の繊維群および第2の繊維群および第3の繊維群の体積割合は、得られた繊維径の値を用い、次式により算出した。ここで、各繊維群に含まれる繊維の長さは一定(X)と仮定して、体積を算出している。
・各繊維の体積 :Y=π(繊維径/2)2×X
・第1の繊維群の体積:Z(1)=第1の繊維群におけるYの総和
・第2の繊維群の体積:Z(2)=第2の繊維群におけるYの総和
・第3の繊維群の体積:Z(3)=第3の繊維群におけるYの総和
・第1の繊維群の体積割合(vol%)=Z(1)/[Z(1)+Z(2)+Z(3)]
・第2の繊維群の体積割合(vol%)=Z(2)/[Z(1)+Z(2)+Z(3)]
・第3の繊維群の体積割合(vol%)=Z(3)/[Z(1)+Z(2)+Z(3)]。
(4)混繊不織布のタテ引張強力
JIS L1913(2010年)の6.3.1に準じ、混繊不織布の中心付近から長さ方向×幅方向=20cm×5cm(長さ方向)の長方形状のサンプルをそれぞれ長さ方向に3点切り抜いた。各サンプルの長辺に対してつかみ間隔10cm、引張速度10cm/分の条件で、サンプルが破断するまで引張試験を行った。このときの最大荷重(N/5cm)の平均値について、小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
(5)捕集効率および圧力損失
混繊メルトブロー不織布の縦方向5カ所でタテ×ヨコ=15cm×15cmの測定用サンプルを採取し、それぞれのサンプルについて、図1に示す捕集効率測定装置で測定した。この図1の捕集効率測定装置は、測定サンプルMをセットするサンプルホルダー1の上流側にダスト収納箱2を連結し、下流側に流量計3、流量調整バルブ4、およびブロワ5を連結している。また、サンプルホルダー1にパーティクルカウンター6を使用し、切替コック7を介して、測定サンプルMの上流側のダスト個数と下流側のダスト個数とをそれぞれ測定することができる。さらに、サンプルホルダー1は圧力計8を備え、測定サンプルMの上流と下流での静圧差を読み取ることができる。捕集効率の測定にあたっては、ポリスチレン0.309U 10%溶液(メーカー:ナカライテスク(株))を蒸留水で200倍まで希釈し、ダスト収納箱2に充填する。次に、測定サンプルMをサンプルホルダー1にセットし、風量をフィルター通過速度が4.5m/分になるように、流量調整バルブ4で調整し、ダスト濃度を1万〜4万個/2.83×10−4m3(0.01ft3)の範囲で安定させ、測定サンプルMの上流のダスト個数Dおよび下流のダスト個数dをパーティクルカウンター6(リオン社製、KC−01B)で1個の測定サンプル当り3回測定し、JIS K 0901(1991)「気体中のダスト試料捕集用ろ過材の形状、寸法並びに性能試験方法」に基づいて、下記計算式を用いて0.3〜0.5μm粒子の捕集効率(%)を求めた。5個の測定サンプルの平均値を、最終的な捕集効率とした。
・捕集効率(%)=〔1−(d/D)〕×100
(ただし、dは下流ダストの3回測定トータル個数を表し、Dは上流のダストの3回測定トータル個数を表す。)
高捕集の混繊メルトブロー不織布ほど、下流のダスト個数が少なくなるため、捕集効率の値は高くなる。また、圧力損失は、捕集効率測定時の測定サンプルMの上流と下流の静圧差を圧力計8で読み取り求めた。5個の測定サンプルの平均値を最終的な圧力損失とした。
(6)混繊メルトブロー不織布のQF値
濾過性能の指標となるQF値(Pa−1)は、前記の捕集効率(%)および圧力損失(Pa)を用いて、次式により計算される。低圧力損失かつ高捕集効率であるほどQF値は高くなり、濾過性能が良好であることを示す。
・QF値=−[ln(1−捕集効率/100)]/圧力損失。
(7)混繊メルトブロー不織布の加圧処理前後の圧力損失の上昇率(%)
混繊メルトブロー不織布の縦方向3カ所でタテ×ヨコ=15cm×15cmの測定用サンプルを採取し、それぞれのサンプルについて、平滑な金属板で挟み、油圧プレス装置を用いて常温下で6kg/cm2の荷重を3分間かけた。加圧処理したサンプルの圧力損失を前記の(3)の方法によって測定し、次式により、加圧処理前後の圧力損失の上昇率を計算し、3個の測定サンプルの平均値を最終的な加圧処理前後の圧力損失の上昇率とした。
・加圧処理前後の圧力損失の上昇率=[(加圧処理後の圧力損失/加圧処理前の圧力損失)−1]×100。
[実施例1]
ポリオレフィン系樹脂成分Aとして、温度230℃で21.2N負荷時におけるMFRが860g/10分のポリプロピレン(PP)樹脂に、ヒンダードアミン系化合物として“キマソーブ”(登録商標)944(BASF・ジャパン(株)製)を1質量%添加したものを使用し、また樹脂成分Bとして、日本ポリプロ(株)製“ウィンテック”(登録商標)WMG03(プロピレンとエチレンのランダム共重合体、エチレン含有量2モル%)、温度230℃におけるMFRが30g/10分、融点142℃)を使用し、2機の押出機およびギヤポンプ、2種類の吐出a、bを備えた混繊紡糸用メルトブロー口金(a孔径:0.25mm、b孔径:0.6mm、a孔深度:2.5mm、b孔深度:3.5mm、a−a孔ピッチ:1mm、a−b孔ピッチ:2mm、孔配列:b孔の間に5つのa孔を挿入して一列に配列)、圧縮空気発生装置および空気加熱機、捕集コンベア、および巻取機からなる装置を用いて、混繊メルトブロー不織布の製造を行った。
それぞれの押出機に、上記のポリオレフィン系樹脂成分Aおよび上記の樹脂成分Bのペレットをそれぞれ投入し、260℃の温度で加熱溶融させ、ギヤポンプを上記のポリオレフィン系樹脂成分:樹脂成分Bの質量比(%)が55:45となるように設定し、上記のポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bを、それぞれ混繊紡糸用メルトブロー口金のa孔およびb孔に導き、それぞれ0.15g/分/ホール、0.64g/分/ホールの単孔吐出量でノズル温度280℃の温度条件で吐出した。この吐出ポリマーを、風速5.7m/秒、温度300℃の温度の加圧空気で細化し、口金吐出孔から20cmの距離に設置した捕集コンベアに吹き付けることによりシート化した。捕集コンベア速度を調整し、目付が26.7g/m2の混繊メルトブロー不織布を得た。
この実施例1で得られた混繊メルトブロー不織布の繊維径を計測した後、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの融点の間の温度で熱処理を行うことによって、樹脂成分Bからなる繊維を融解させた。この混繊メルトブロー不織布の繊維径を計測し、熱処理前後の差によりポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bからなる繊維を区別し、第1の繊維群および第2の繊維群からなる繊維の数平均繊維径を算出した。
次に、得られた混繊メルトブロー不織布の長さ方向の引張強力を測定した。次に、得られた混繊メルトブロー不織布を、純水とイソプロピルアルコールの成分質量比(%)が70:30である混合水溶液に含浸させ、次いで自然乾燥することにより、エレクトレット化メルトブロー混繊不織布を得た。このエレクトレットメルトブロー混繊不織布の圧力損失と捕集効率を測定した。次に、得られたエレクトレットメルトブロー混繊不織布に、6kg/cm2の荷重を3分間かけ、荷重処理前後の圧力損失を測定し圧力損失の上昇率を算出した。
これらの各測定値と算出値を、表1に示す。
[実施例2]
実施例1で使用したポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bを用い、ノズル温度を287℃とし、加圧空気の風速を5.9m/秒としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、目付が27.2g/m2の混繊メルトブロー不織布を得た。
得られた混繊メルトブロー不織布について、実施例1と同様の方法により各特性値を測定した。得られた結果を、表1に示す。
[実施例3]
実施例1で使用したポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bを用い、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの質量比(%)を71:29とし、a孔およびb孔の単孔吐出量をそれぞれ0.30、0.60g/分/ホールとし、ノズル温度265℃の温度条件で吐出した。この吐出ポリマーを、圧力0.15MPa、温度285℃の加圧空気で細化し、目付を26.7g/m2にするため捕集コンベアの速度を調整したこと以外は、実施例1と同じ方法により混繊メルトブロー不織布を得た。
得られた混繊メルトブロー不織布について、実施例1と同様の方法により各特性値を測定した。得られた結果を、表1に示す。
[比較例1]
実施例1で使用したポリオレフィン系樹脂成分Aおよび樹脂成分Bを用い、ノズル温度を265℃とし、加圧空気の圧力と温度をそれぞれ0.15MPaと285℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法により、目付が27.2g/m2の混繊メルトブロー不織布を得た。得られた混繊メルトブロー不織布を実施例1と同様の方法により各特性値を測定した。得られた結果を、表1に示す。
[比較例2]
実施例1で使用したポリオレフィン系樹脂成分Aと、樹脂成分Bとして、温度260℃で、21.2N荷重条件におけるMFRが110g/10分であるポリスチレンホモポリマーを使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの質量比(%)を49:51とし、b孔の単孔吐出量を0.72g/分/ホールとし、ノズル温度265℃の温度条件で吐出した。この吐出ポリマーを、圧力0.10MPa、温度285℃の温度の加圧空気で細化し、目付を30.2g/m2にするため捕集コンベアの速度を調整したこと以外は、実施例1と同じ方法により混繊メルトブロー不織布を得た。
次に、この比較例2で得られた混繊メルトブロー不織布の繊維径を測定した後、トルエンに50分間浸漬させ、ポリスチレン繊維を溶解させた。この混繊メルトブロー不織布について、再度繊維径を測定し、残存している繊維をポリオレフィン系樹脂成分A、溶解処理により消失した繊維を樹脂成分Bとし、第1の繊維群および第2の繊維群それぞれの数平均繊維径を算出した。
それ以外の各特性値については、実施例1と同様の方法により測定した。得られた結果を、表1に示す。
[比較例3]
実施例1で使用したポリオレフィン系樹脂成分Aと、樹脂成分Bとして、イソフタル酸を11モル%共重合した、酸化チタンを0.3質量%含むポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(融点230℃)を使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの質量比(%)を41:59とし、b孔の単孔吐出量を1.01g/分/ホールとして吐出した。この吐出ポリマーを、圧力0.05MPa、温度305℃の加圧空気で細化し、目付を30.0g/m2にするため捕集コンベアの速度を調整したこと以外は、実施例1と同じ方法により混繊メルトブロー不織布を得た。
比較例3で得られた混繊メルトブロー不織布を、175℃の温度の熱風乾燥機を用いて5分間加熱処理し、ポリプロピレン(PP)繊維を融解させた。この不織布について、繊維径を計測して第2の繊維群の数平均繊維径を算出した。
次に、比較例3で得られた混繊メルトブロー不織布を、2−クロロフェノールで処理し、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を溶解させた。この不織布について、繊維径を計測して第1の繊維群の数平均繊維径を算出した。
それ以外の各特性値については、実施例1と同様の方法により測定した。得られた結果を、表1に示す。
[比較例4]
実施例1で使用したポリオレフィン系樹脂成分Aと、樹脂成分Bとして、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(融点225℃)を使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの質量比(%)を60:40とし、a孔およびb孔の単孔吐出量をそれぞれ0.28g/分/ホール、0.90g/分/ホールとして吐出した。この吐出ポリマーを、圧力0.06MPa、温度305℃の加圧空気で細化し、目付を29.8g/m2にするため、捕集コンベアの速度を調整したこと以外は、実施例1と同じ方法により混繊メルトブロー不織布を得た。
この比較例4で得られた混繊メルトブロー不織布を、175℃の温度の熱風乾燥機を用いて5分間加熱処理し、ポリプロピレン(PP)繊維を融解させた。この不織布について、繊維径を計測して第2の繊維群の数平均繊維径を算出した。次に、この比較例4で得られた混繊不織布を、2−クロロフェノールで処理し、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を溶解させた。この不織布について、繊維径を計測して第1の繊維群の数平均繊維径を算出した。
それ以外の各特性値については、実施例1と同様の方法により測定した。得られた結果を、表1に示す。
[比較例5]
実施例1で使用したポリオレフィン系樹脂成分Aと、樹脂成分Bとして、“キマソーブ”(登録商標)944(BASF・ジャパン(株)製)を1質量%添加したポリプロピレン(MFR=60)を使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの質量比(%)を43:57とし、b孔の単孔吐出量を0.90g/min/ホールとし、ノズル温度265℃の温度条件で吐出した。この吐出ポリマーを、圧力0.10MPa、温度285℃の加圧空気で細化し、目付を30.0g/m2にするため捕集コンベアの速度を調整したこと以外は、実施例1と同じ方法により混繊メルトブロー不織布を得た。
次に、この比較例5の紡糸条件において、ポリオレフィン系樹脂成分Aのみを吐出して得られた不織布の繊維径を計測したところ、15μm以上の繊維径を有さないことを確認し、比較例5から得られた混繊メルトブロー不織布の繊維径を計測し、第1の繊維群と第2の繊維群の数平均繊維径を算出した。
それ以外の各特性値については、実施例1と同様の方法により測定した。得られた結果を、表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜3ではいずれも、原料のMFRと融点、紡糸温度、エア圧力および単孔吐出量を調整することにより、第1の繊維群と第2の繊維群が混合され、単位目付あたりのタテ引張強力が0.45(N/5cm)/(g/m2)である混繊不織布が得られ、これらは加圧時の圧力損失の上昇率が25%以下であり、低圧力損失かつ高捕集効率を示した。
これに対し、比較例1と5では、第1の繊維群および第2の繊維群が混合されているものの、紡糸温度が低いため繊維間融着が低減し、単位目付あたりのタテ引張強力が0.45(N/5cm)/(g/m2)未満となり、加圧時の圧力損失が大きいものとなった。また、比較例2〜4では、樹脂成分Bがポリオレフィン系樹脂成分Aよりも高融点であり口金から吐出された繊維の冷却が早く進むため繊維間融着が低減し、単位目付あたりのタテ引張強力が0.45(N/5cm)/(g/m2)未満となり、加圧時の圧力損失が大きいものとなった。
以上のように本発明では、細繊維と太繊維の混繊メルトブロー不織布において、細繊維と太繊維を構成する樹脂成分および繊維径と体積割合、さらには混繊メルトブロー不織布の強度を特定の範囲に制限することにより、加圧時の圧力損失の上昇が少なく、捕集性能に優れる不織布を得ることができた。