(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る液体収納容器について説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係る液体収納容器としてのインクタンク1の斜視図を示す。また、図2にインクタンク1の正面図を示し、図3に図2におけるIII−III線に沿う断面を示した斜視図を示す。
インクタンク1は、ケース2及び蓋部材3とを有しており、ケース2に蓋部材3が取り付けられてインクタンク1の筐体が形成されている。ケース2の内側には、ケース2との間に空間が形成されるように、可撓性フィルム(可撓性部材)6が取り付けられている。可撓性フィルム6における図3に示されたX方向の両端部のみが熱溶着によりケース2に取り付けられることにより、可撓性フィルム6とケース2との間に空間が形成されるように可撓性フィルム6がケース2に取り付けられている。可撓性フィルム6とケース2との間の空間は、インク室(液体収納部)9として、内部にインク(液体)を収納可能である。インク室9がこのように構成されることにより、インク室9は、一部が可撓性部材としての可撓性フィルム6によって形成されている。
可撓性フィルム6は、撓むことによって屈曲することが可能に形成されている。本実施形態では、可撓性フィルム6は、ポリエチレンテレフタレートやポリオレフィンなどの光透過性材料から構成されている。特に、本実施形態では、可撓性フィルム6は、蓋部材3に近い側から順に、ナイロン、エチレンビニルアルコール、ポリプロピレンによって積層された積層フィルムにより構成されている。
ケース2には、インク供給部4が設けられている。インク供給部4は記録ヘッドに接続されており、インク供給部4を介して、インクタンク1内部に収容されたインクが記録ヘッドに供給される。
また、ケース2には、プリズム5が取り付けられている。本実施形態では、プリズム5は、溶着によりケース2に固定されている。プリズム5は、ポリカーボネートやポリオレフィン等の光透過性材料から構成されており、本実施形態ではポリプロピレンにより形成されている。プリズム5は、ケース2に固定されて取り付けられている。本実施形態では、プリズム5は、溶着によりケース2に固定されているが、接着や圧入により固定されていてもよく、また、インサート成型や、ケース2と一体に成形されていてもよい。
図3に示されるように、可撓性フィルム6の内側には、支持板8が取り付けられている。また、支持板8及びケース2のそれぞれに対して固定されるように、支持板8及びケース2にコイルスプリング7が取り付けられている。コイルスプリング7によって、支持板8が、蓋部材3に近接する方向へ付勢されている。支持板8が付勢されることにより、インク室9の内部の負圧が保たれている。このように、本実施形態では、インク室9が、内部を負圧に維持する負圧形成手段としてのコイルスプリング7を有している。蓋部材3と可撓性フィルム6の間の空間には、不図示の溝が形成されている。溝によって、蓋部材3と可撓性フィルム6との間の空間が、外気と連通している。
プリズム5におけるインク室9の内部に突出した部分の一部には、検出面(接触部)13が設けられている。検出面13は、インク室9内部のインクが消費されてインク室9が潰れたときに可撓性フィルム6と接触する。検出面13は、インク室9の内部に位置し、後述する発光部11から発光される検出光に対して傾いて配置されている。本実施形態では、検出面13は、検出光に対して45°傾いて設けられている。本実施形態では、プリズム5が台形の形状を有しており、インク室9内部のプリズム5におけるケース2の壁面から最も離れた平面の部分が、検出面13として形成されている。つまり、検出面13は、プリズム5によって形成されている。
ケース2における、コイルスプリング7の一端部が取り付けられ、図3のX方向に沿って、蓋部材3から最も離れた位置に配置された壁面を側壁部2aとする。可撓性フィルム6は、一部が折り返されて配置されている。可撓性フィルム6における折返された部分を屈曲部10とする。
上記のインクタンクは、インクジェット記録装置におけるキャリッジに搭載され、記録ヘッドにインク室9内部のインクが供給される。図4に、インクタンク1の搭載されるインクジェット記録装置(液体吐出装置)100の模式的な斜視図が示されている。インクジェット記録装置100は、シリアルスキャン方式の記録装置であり、ガイド軸120によって、キャリッジ101が主走査方向に移動できるようにガイドされている。キャリッジ101は、キャリッジモータおよびその駆動力を伝達するベルト等の駆動力伝達機構により、主走査方向に往復移動可能に形成されている。キャリッジ101には、インクを吐出可能な記録ヘッド(液体吐出ヘッド)102と、その記録ヘッド102にインクを供給するインクタンク1が搭載されている。本実施形態では、キャリッジ101には複数のインクタンク1が搭載されており、ここでは特に、5色のインクを吐出するように、5つのインクタンク1がキャリッジ101に搭載されている。
インクジェット記録装置100は、記録動作と、その記録幅に対応する距離だけ記録媒体103を副走査方向に搬送する搬送動作と、を繰り返すことによって、記録媒体103上に順次画像を記録する。記録動作においては、インクジェット記録装置100は、記録ヘッド102を主走査方向に移動させつつ、記録媒体103の記録領域に向かってインクを吐出させて記録を行う。
次に、本実施形態のインクタンクにおける内部のインクが消費される過程でのインクタンクのそれぞれの状態について説明する。図5(a)〜(e)に、インク使用前の状態からインク使い切りまで、インクタンク1内部に収容されるインクの量を変化させたときのそれぞれのインク室9の状態について示す。図5(a)〜(e)には、インクタンク1内部のそれぞれの状態についての、図2におけるV−V線に沿う断面図が示されている。
インクジェット記録装置100は、検出面13からインク室9内に向う光を発光する発光部11を有している。また、インクジェット記録装置100は、インク室9内のインクの量の変化に対応する接触領域での光の光路の変化を検知する検知部を有している。検知部は、接触領域での光路の変化後の光を受光する受光部12を備えている。図5(a)に示されるように、インクタンク1のインクの残量を検知するための発光部11及び受光部12は、インクジェット記録装置100の本体部側に設けられている。なお、本実施形態では、インクタンク1のインクの残量を検知するための発光部11及び受光部12は、インクジェット記録装置100の本体部側に設けられることとした。しかしながら、インク残量の検知手段の取り付け位置は、インクジェット記録装置100の本体部側に限定されない。インクジェット記録装置100の他の部分に、インク残量の検知手段が取り付けられてもよい。インクタンク1の取り付け位置に近接した位置であれば、他の部分に取り付けられてもよい。例えば、インク残量の検知手段が記録ヘッド102やキャリッジ101等に設けられてもよい。
インク室9の内部の圧力はコイルスプリング7の付勢によって負圧となるように維持されているので、可撓性フィルム6にはケース2の側壁部2a側への力が作用する。その状態で可撓性フィルム6の一部の領域のみで、支持板8及びコイルスプリング7によって蓋部材3の方向への力が作用するので、可撓性フィルム6に屈曲部10が生じる。このように、インク室9は、可撓性フィルム6の少なくとも一部が屈曲するように形成されている。
図5(a)に示されるように、インク室9の内部にインクが消費されておらず、インク室9の内部がインクで満たされている状態では、可撓性フィルム6及び支持板8がケース2の側壁部2aから比較的離れた位置に存在している。従って、可撓性フィルム6及び支持板8は、蓋部材3に比較的近接した位置に配置されている。そのため、可撓性フィルム6が折れ曲がった屈曲部10は、蓋部材3に比較的近い場所に位置している。
インクタンク1におけるインク室9内(液体収納部内)のインクが記録ヘッド102へ供給されて消費されると、可撓性フィルム6及び支持板8がケース2の側壁部2aに近づく方向へ移動する。図5(b)に、インク室9内部のインクの一部が消費された状態のインクタンク1の断面図を示す。インク室9内部のインクが消費されることでインク量が減少すると、インク室9内部のインクの容積が減少して、支持板8がケース2の側壁部2a側へ移動する。これに伴い可撓性フィルム6も側壁部2a側へ移動する。このため、屈曲部10が、ケース2側に近づく方向へ移動する。このように、インク室9は、内部のインクが減少していくにつれて、可撓性フィルム6の屈曲した屈曲部10が移動しながら潰れていく。
そこから、インク室9内部のインクが消費されるにつれて、可撓性フィルム6及び支持板8がケース2の側壁部2a側へ向かう方向に移動していく。インク室9から記録ヘッド102へ供給されるインクの量に応じて、可撓性フィルム6及び支持板8が、ケース2の側壁部2a側へ向かう方向へ移動する。そのため、可撓性フィルム6及び支持板8の位置が、図5(b)に示される状態から、図5(c)に示される状態、図5(d)に示される状態へと変化していく。また、可撓性フィルム6及び支持板8の位置が、図5(b)に示される状態から、図5(c)、(d)に示される状態へと変化していくにつれて、屈曲部10の位置もケース2の側壁部2a側へ移動する。インク室9内部のインクが全て消費されると、図5(e)に示されるように、可撓性フィルム6及び支持板8が、コイルスプリング7を介してケース2と当接する位置に到達する。
インクが消費されるにつれて可撓性フィルム6がケース2の側壁部2a側へ移動するのに伴い、可撓性フィルム6の屈曲部10の位置も側壁部2a側へ移動する。このとき、インク室9内部の圧力が負圧に保たれていることから、可撓性フィルム6がケース2の壁面に向かう方向への力を受けながら、屈曲部10が側壁部2aに向かう方向へ移動することになる。つまり、可撓性フィルム6が、ケース2の壁面に押し付けられ、それと共に、屈曲部10が検出面13に向かう方向へ押圧されながら、側壁部2aに向かう方向へ移動する。これにより、屈曲部10が、壁面に押し付けられながら、検出面13上をケース2の側壁部2aに近づく方向に移動する。このように、インク室9内部のインクが消費され、可撓性フィルム6が側壁部2aに向かって移動する過程で、可撓性フィルム6がケース2の壁面に押し付けられながら移動する。そのため、可撓性フィルム6は、インク室9内のインクが所定量以下に減少したときに検出面13と接触する。
また、本実施形態のインクタンク1は、随時、プリズム5に向かって光を発することによって、インク室9内部に所定量のインクが残っているかどうかを検知することができる。以下、インク室9内部に所定量のインクが残っているかどうかを検知する検知動作について説明する。
本実施形態では、インク室9内部に所定量のインクが残っているかどうかの検知が行われる際には、まず、発光部11で検出光をプリズム5を介して可撓性フィルム6の有無の検出される領域(検出領域)に向けて発光させる。インク室9内部にインクが十分に満たされている場合には、発光部11から発せられた検出光は、インク室9に入射される。この状態では、可撓性フィルム6の有無の検出される領域には、可撓性フィルム6は存在していない。本実施形態では、インク室9内部における検出面13上の表面に近接した位置が検出領域である。このときの検出光の軌道が、図5(b)、(c)に示されている。図5(b)、(c)に示されるように、発光部11から検出光が出射されると検出光入射部15を通ってプリズム5に検出光が入射され、検出光が検出面13に到達する。このとき、プリズム5の屈折率をN1、入射角θ1、インクは大部分が水で構成されているため、インクの代用として水の屈折率1.33、入射角をθwとすると、スネルの法則より、
N1sinθ1=1.33sinθw
が成り立つ。
ポリプロピレンの屈折率を1.53とすると、検出面13と検出光の角度が45°より、
θw=sin−1((1.53/1.33)sin45°)=54.4°
となり、図5(b)、(c)に示されるように、検出光は検出面13で屈折するのみでインク中を進み、受光部には到達しない。
これに対し、インク室9内部にインクが十分に残ってなく、比較的インク切れに近い状態における、検出光の軌道について説明する。インク室9内部のインク残量が少なくなると、それに伴い可撓性フィルム6の屈曲部10がケース2の側壁部2aに近づく方向に移動し、屈曲部10が検出面13上を通過する。屈曲部10が検出面13上を通過し、検出面13よりもケース2の側壁部2aに近い側に位置する状態のインクタンク1について、図5(d)、(e)に示されている。
図5(d)に示されるように、インク室9内部のインクが消費されることでインク残量が少なくなると、検出面13上に屈曲部10が位置する。このとき、インク室9内部の圧力が負圧に維持されているので、屈曲部10よりも蓋部材3に近い部分の可撓性フィルム6が、ケース2の壁面及び検出面13上に押圧されて押し付けられる。図5(d)に示される状態よりもさらにインクが消費されると、屈曲部10が検出面13に押圧されながらケース2の側壁部2aに向かう方向に移動する。このように検出面13の一端から他端に向かって、検出面13上を一方向に沿って、屈曲部10がケース2の壁面及び検出面13に押圧されながら移動する。本実施形態では、屈曲部10は、蓋部材3の側からケース2における側壁部2aに向かう方向に沿って、一方向に検出面13上を移動する。そのため、インク室9内のインクが減少して可撓性フィルム6が検出面13と接触した後に、そこからインク室9内のインクがさらに減少すると、インク室9内のインクのさらなる減少に伴って検出面13との接触面積が一方向に増大する。
これにより、検出面13上のインクをしごき出しながら、屈曲部10がケース2の側壁部2aに向かって移動する。そのため、可撓性フィルム6と検出面13との間のインクを排除しながら、可撓性フィルム6の屈曲部10がケース2の側壁部2aに向かって移動していく。これにより、図5(d)、(e)に示されるように、インク室9内部のインク残量が所定量よりも少なくなった状態では、可撓性フィルム6と検出面13との間にインクを残留させずに、屈曲部10が検出面13上を一方向に沿って通過する。
次に、インクが消費されることで支持板8が側壁部2aに近づく方向へ移動し、可撓性フィルム6の屈曲部10が検出面13上を通過した後の状態のインクタンク1についての、インク室9内部に所定量のインクが残っているかどうかの検知について説明する。この状態では、プリズム5に光を入射することによって可撓性フィルム6の有無の検出される検出領域としての、検出面13の表面に近接した部分に、可撓性フィルム6が位置している。
発光部11から検出光がプリズム5に入射されると、可撓性フィルム6に検出光が導入される。本実施形態では、可撓性フィルム6が、最内層、中間層、最外層の3層を有して構成されている。可撓性フィルム6における最内層、中間層、最外層の絶対屈折率をN2、N3、N4とし、検出光の各層での入射角度をθ2、θ3、θ4とすると、スネルの法則により、
N1sinθ1=N2sinθ2
が成り立つ。
プリズム5、可撓性フィルム6の最内層はポリプロピレンで構成されているため、N1=N2=1.53より、
θ2=45°
となる。同様に、
N2sinθ2=N3sinθ3
より、可撓性フィルム6の中間層であるエチレンビニルアルコールの屈折率を1.5とすると、
θ3=46°
となり、
N3sinθ3=N4sinθ4
より、可撓性フィルム6の最外層であるナイロンの屈折率を1.53とすると
θ4=45°
空気の屈折率を1.00とすると、
N4sinθ4=1.08
より、ナイロンと空気との界面で検出光は全反射する。
全反射した検出光は、図5(d)、(e)に示されるように、プリズム5に設けられた第2反射面14に入射される。第2反射面14は空気と接しており、ここでも全反射し、反射光は検出光出射部16から出射され、受光部12に検出光が到達する。すなわち、可撓性フィルム6は、光を当てられた際に、光を反射させることが可能に形成されている。つまり、本実施形態では、可撓性フィルム6と検出面13とが接触する接触領域では、検出面13からインク室9内に入る光が反射される。プリズム5に向けて光が発せられたときに、検出領域としての検出面13の表面に近接した位置に可撓性フィルム6が位置している場合には、光はプリズム5を通過した後に可撓性フィルム6に当たって反射する。また、検出領域に可撓性フィルム6が位置していない場合には、光はプリズム5を通過した後に検出面13で屈折し、インク内をそのまま進む。このように、可撓性フィルム6と検出面13とが接触する接触領域では、検出面13からインク室9内に入る光の光路が変化する。
受光部12で検出光が受光されると、そのことを検知することによって、屈曲部10が検出面13よりもケース2における側壁部2aに近い側の位置に移動していることを検出することができる。可撓性フィルム6に当たって反射した光の有無を検出することで、検出領域に可撓性フィルムが位置しているかどうかを検出することができる。つまり、受光部12で受光があるときに、検出領域に可撓性フィルム6が位置していることが検出される。このように、インクジェット記録装置100は、受光部12による受光の有無に基づいて、インク室9内のインクが所定量以下であることを検知する。検出領域に可撓性フィルム6が位置していることが検出されることにより、インク室9内部のインクが消費されて、インク室9内部のインクが所定量の残量よりも少ない状態にあることを検出することができる。従って、インク室9内部のインク切れが近づいていることを検出することができる。
なお、本実施形態では、可撓性フィルム6と検出面13とが接触する接触領域で、検出面13からインク室9内に入る光が反射しているが、本発明は上記実施形態に限定されない。可撓性フィルム6と検出面13とが接触する接触領域で、検出面13からインク室9内に入る光が所定方向に屈折する形態であってもよい。その場合、所定方向に屈折した光を検出することにより、可撓性フィルム6と検出面13とが接触していることを検出することができる。つまり、反射した光ではなく、所定方向に屈折した光を検出することによって、検出領域に可撓性フィルム6が位置しインク室9内部のインクが所定量の残量よりも少ない状態にあることを検出することができる。
本実施形態では、インク室9内部のインクが消費されて屈曲部10が検出面13上を通過する際に、可撓性フィルム6がケース2の壁面及び検出面13に押し付けられながら、屈曲部10が検出面13上を移動する。そのため、屈曲部10が検出面13上を移動する過程で、屈曲部10が、可撓性フィルム6とケース2の壁面との間に存在するインクをしごいて、インクをそこから排除させながら、検出面13上を移動する。そして、検出光によってインク室9内部に所定量のインクが残っているかどうかを検出する際には、可撓性フィルム6とケース2の壁面との間からインクが排除された状態で検出動作を行うことができる。可撓性フィルム6とケース2の壁面との間からインクが排除された状態で検出動作が行われるので、インク室9内部に所定量のインクが残っているかどうかの検出動作における検出精度をより向上させることができる。可撓性フィルム6と検出面13との間にインクが残らずに、可撓性フィルム6が検出面13に当接するので、検出動作の際に、検出光がインクに遮られることなく可撓性フィルム6と空気との界面に到達でき、安定した検知動作が可能となる。
そのため、インク室9内部のインクが消費されてインク室9内部のインクが所定量よりも減少したことを検出されたタイミングを把握することにより、インク室9内部のインクが使い切られるタイミングを推定することができる。従って、インクタンク1内部にインクが十分に残っているにもかかわらずインクタンク1が新たなものに交換されることにより、インクタンク1内部のインクが無駄に廃棄されることを抑えることができる。そのため、廃棄されるインクの量を少なく抑えることができるので、インクタンク1内部のインクをより効率的に使用することができる。また、インクタンク1内部のインクがわずかしか残っていないのに、インクタンク1内部のインクを用いて記録を続行することで同一の記録媒体への記録の途中でインク切れが生じることを抑えることができる。そのため、一枚の記録媒体に対する記録において、そこまでの記録工程が無駄になることを抑えることができる。
特に、商業分野における記録においては、要求として、記録画像の画質だけではなく、ポスターなど展示物に使用される場合に、記録画像における長期保存性などの耐候性や堅牢性が求められる場合がある。また、その他の要求として、ビジネスドキュメントを記録する場合等に、記録速度の高速化が求められている。これらの要求に対応するために、例えば、インクの耐候性や堅牢性を向上させるために染料成分に代えて顔料成分を色材として含有させたり、高速化するために定着促進用の樹脂成分を添加したりするなど、改良されたインクが用いられる場合がある。定着性の高いインクは、インクタンク内面になじんで張り付き易く、可撓性フィルム6と検出面13との間にインクが残り易い。また、インクに顔料成分を色材として含有していると、顔料は光透過性が低いため、少しでもこれらの間に残ると反射光量が比較的大きく減少し、検出精度が不安定となる場合がある。また、インク定着促進や、光沢性制御のために、クリアインクが用いられることもある。その場合には、クリアインクが可撓性フィルム6と検出面13との間に残ると、クリアインクは光透過性が高いため、これが反射面との距離変化に伴う光量変化が少なくなるため、検出精度が低くなってしまう。そのような場合に、本発明を適用することにより、可撓性フィルム6と検出面13との間のインクが効率良く排除された状態で、インク室9内部のインクが所定量の残量よりも少ない状態にあることを検出することができる。従って、インク室9内部のインクが所定量の残量よりも少ない状態にあることを検出する検出動作における検出精度を高く維持することができる。
また、図5(c)に示した屈曲部10が検出面13の一端に当接した状態から、図5(d)に示した屈曲部10が検出面13の他端に到達した状態に至るまで、可撓性フィルム6と検出面13の当接面積は次第に大きくなっていく。このとき、当接面積によって検出光の反射角度が徐々に変化していき、当接面積によって反射光量が変化する。そのため、反射光量レベルとインク残量のテーブルを作成しておけば、テーブルを参照することにより、反射光量レベルに応じたインク残量を検出することができる。
このように、プリズム5に向けて光が発せられたときの、可撓性フィルム6に当たって反射した光の反射光量が検出される。そして、予め得られている、プリズム5に向けて光が発せられたときの反射光量とインク室9の内部に残っているインクの量との間の関係が格納されたテーブルに基づいて、インク室9の内部に残っているインクの量が検出される。インク室9の内部に残っているインクの量の検出の際には、検出された可撓性フィルム6に当たって反射した光の反射光量から、テーブルを参照することにより、インク室9の内部に残っているインクの量が検出される。
従って、インクジェット記録装置100においては、受光部12での受光量に基づいて、インク室9内のインクの量の変化が検知される。発光部11によってプリズム5に向けて光が発せられたときの、可撓性フィルム6に当たって反射し、受光部12で受光された光の反射光量が検出される構成であってもよい。そして、予め得られている、発光部11によってプリズム5に向けて光が発せられたときの受光部12で受光された反射光量とインク室9の内部に残っているインクの量との間の関係に基づいて、インク室9の内部のインク残量が検出される構成であってもよい。つまり、検出された可撓性フィルム6に当たって反射した光の反射光量から、インク室9の内部に残っているインクの量が検出される構成であってもよい。
反射光量レベルに応じてインク残量の検出を行う際には、可撓性フィルム6と検出面13との間のインクが排除された状態で、可撓性フィルム6における検出面13への当接面積によってインク残量を検知することができる。そのため、インク室9内部のインクとして、顔料インクやクリアインクなどの光透過性の異なるインクを使った場合でも、インクの種類ごとに反射光量とインク残量のテーブルを作成する必要がない。そのため、インクの種類によらず安定した残量検知が可能となる。
また、インク室9内部のインクが所定のインクの残量よりも減少したことを検出するための検知動作が行われる場合において、検出面13を配置する位置を変えることで、検知対象の所定のインク残量を変化させることができる。つまり、インク室9内部のインク切れが近づいているかどうかの検出動作において、インク残量が所定量を下回ったときに検出される場合の所定量を設定することが可能となる。例えば、検出面13を図6(a)、(b)に示されるように、よりケース2の側壁部2aに近い位置に配置した場合には、インク残量がより減少し、インク残量がごく僅かになった状態のときに、インク室9内部のインク残量が所定量よりも減少していると検出する。
また、この場合であっても、インクジェット記録装置100が、反射光量レベルに応じてインク残量の検出を行うように構成されていてもよい。図6(a)に示される状態から、インク室9内部のインクが消費され、図6(b)に示される状態になったとき、検出面13上に位置する可撓性フィルム6の面積が変化する。図6(a)、(b)には、可撓性フィルム6と検出面13とが接触した接触領域18が示されている。インク室9内部のインクが消費されるにつれて、検出面13上に位置する可撓性フィルム6の面積が徐々に増加する。従って、発光部11によってプリズム5に向けて光が発せされたときに、反射する反射光の光量が増加していく。受光部12で受光された光の反射光量を検出することにより、インク室9の内部に残っているインクの量を検出することができる。従って、検出面13をケース2の側壁部2aに隣接する位置に配置することにより、インク室9内部のインクがほとんど全て消費されてインク切れが起こるまでの過程においてインク量を検出することができる。
なお、本実施形態では、図3に示されるように、検出面13は、断面が台形となるようなプリズム5上に形成されているが、本発明はこれに限定されない。図7に示されるように、検出面13’を形成するプリズムが凸曲面であってもよい。このように検出面13’が形成されることにより、屈曲部10が図7の矢印方向へ検出面13’上を移動することで可撓性フィルム6と検出面13との間のインクを排除する際のインクの排出性を高めることができる。また、この実施形態では、検出面13’を形成するプリズムのうち、インク室9内部に突出した部分が、屈曲部10の移動する方向に沿って長く形成された凸曲面によって形成されているが、本発明はこれに限定されない。屈曲部10の移動する方向に交差する方向に沿って長く形成された凸曲面によって形成されてもよい。検出面13’を形成するプリズムが凸曲面によって形成され、インク室9内のインクが消費されて潰れていく際に、可撓性フィルム6と検出面13との間のインクが排除され易い形状であれば、プリズムは他の形状であってもよい。
また、本実施形態では、発光部11が発光した際に、可撓性フィルム6と検出面13とが接触していない状態では、検出面13からインク室9内に入る光は反射せずに受光部12によって受光されない。そのため、可撓性フィルム6と検出面13とが接触していないことが検知され、インク室9内部にインクが十分に残っていることが検知される。一方、可撓性フィルム6と検出面13とが接触した状態では、接触領域で、検出面13からインク室9内に入る光が反射し、反射した光を受光部12によって受光される。これにより、可撓性フィルム6と検出面13とが接触していることが検知され、インク室9内部のインクが所定量以下であることが検知される。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されず、可撓性フィルム6と検出面13とが接触する接触領域における、検出面13からインク室9内に入る光の光路が変化した際の光路の変化を検知できるのであれば、他の形態であってもよい。例えば、検出面13上に可撓性フィルム6が位置していないときの光路を検出可能な位置に受光部12が配置されてもよい。これによって、検出面13上に可撓性フィルム6が位置していないことを検知することにより、インク室9内にインクが十分に残っていることが検知される構成であってもよい。また、この場合、検出面13上に可撓性フィルム6が位置したときには、検出光の光路が変化し、受光部12によって受光されなくなる。このように、受光部12による受光がなくなったことを検知することによって、検出面13上に可撓性フィルム6が位置していることを検知し、インク室9内のインク残量が所定量以下となったことを検知する構成であってもよい。
また、受光部12での受光量に基づいて、インク室9内のインクの量の変化を検知する場合においても、検出面13上に可撓性フィルム6が位置していないときに光量が多くなるような位置に受光部12を配置してもよい。その場合、インク残量が少なくなるにつれて、受光部12による受光量が少なくなるような構成であってもよい。つまり、検知部は、検出面13と可撓性フィルム6との接触領域での光路の変化前における光を受光する受光部12を備えていてもよい。結果的に、検知部は、検出面13と可撓性フィルム6との接触領域での光路の変化前および変化後の少なくとも一方における光を受光する受光部12を備えていればよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る液体収納容器としてのインクタンク1’について説明する。図8に、第2実施形態に係るインクタンク1’の一部を破断して示した斜視図を示す。本実施形態では、プリズム19におけるインク室9の内部に突出した検出部が、二つの検出面である第1検出面20及び第2検出面21を有している。また、検出部には、プリズム19の一部がくり抜かれ、これによって形成された斜面である第1反射面22が形成されている。また、プリズム19が外気と触れる部分には、第2反射面23が形成されている。このように、第2実施形態のインクタンク1’におけるプリズム19には、第1検出面20、第2検出面21、第1反射面22、第2反射面23が設けられている。つまり、インクタンク1’において、検出面20、21が、一方向にずれた位置に複数備えられている。本実施形態では、二つの検出領域が備えられている。
第1検出面20と第2検出面21はインク室9の内部に設けられ、インクが十分にある状態ではインクに接している。第1反射面22、第2反射面23は、インク室9の外部に設けられ外気と接している。また、本実施形態では、インクタンク1’と記録ヘッド102が、発光部11と受光部12に対して相対的に移動可能なキャリッジ101に搭載されている。キャリッジ101が走査することで、インクタンク1’が発光部11及び受光部12に対して相対的に移動することが可能である。ここで、本実施形態では、発光部11及び受光部12がキャリッジ101による走査方向に沿って並べられており、キャリッジ101が移動することで、検出面20、21に対する発光部11及び受光部12の位置を移動させることができる。すなわち、インクタンク1’は、検出面20、21を一方向にずれた位置に複数備えており、キャリッジ101は、複数の検出面20、21のそれぞれに対応する位置に移動するように、発光部11及び受光部12に対し相対的に移動可能である。
第2実施形態におけるインクタンク1’でのインク室9内部に所定量のインクが残っているかどうかの検出動作について説明する。
図9(a)には、インクタンク1’では、インクが消費されて、支持板8がケース2の側壁部2a側に移動し、可撓性フィルム6の屈曲部10が第1検出面20上を移動している状態のインクタンク1’が示されている。図9(a)に示される状態では、可撓性フィルム6がケース2の壁面及び第1検出面20に押し付けられながら、可撓性フィルム6の屈曲部10が、第1検出面20上を移動する。
このとき、キャリッジ101が第1検出面20に検出光を入射可能な位置に配置されるようにキャリッジ101を移動させ、そこで発光部11から検出光を発光させると、検出光は第1検出面20に向けて発せられる。この状態では、可撓性フィルム6の屈曲部10が第1検出面20を通過しているので、可撓性フィルム6が第1検出面20に押し付けられ、可撓性フィルム6が第1検出面20に当接した状態で配置されている。
そのため、発光部11により第1検出面20に向けて発せられた検出光は、プリズム19を透過し可撓性フィルム6で反射して、第1反射面22に向けて進む。検出光は、第1反射面22で反射し、プリズム19を通って、受光部12に向けて進む。検出光が受光部12に到達すると、そこで受光部12による受光が検出され、屈曲部10が第1検出面20を通過する領域に位置するまでインク室9内部のインクが消費されていることが検知される。これにより、インク室9内部には、図9(a)に示されている程度のインクが残っていることが検知される。そのため、インク室9内部に残るおおよそのインク残量を検出することができる。
図9(a)に示された状態からさらにインクが消費されると、インク室9内部のインクがほぼ消費し尽くされ、図9(b)に示されるように、支持板8がコイルスプリング7を介してケース2の側壁部2aにほぼ当接した状態になる。図9(b)に示される状態では、可撓性フィルム6の屈曲部10が、第2検出面21を通過して、ケース2の側壁部2aに隣接した位置に到達している。その結果、第2検出面21の表面全体に亘って、可撓性フィルム6が第2検出面21に当接している。
このとき、キャリッジ101を移動させることにより、インクタンク1’の位置を、図9(a)に示される位置から、X軸に沿ってケース2の側壁部2aに向かう方向へ移動させる。これにより、発光部11の位置が第2検出面21に対応した位置となるように、インクタンク1’が図9(b)に示される位置に配置される。この状態で発光部11から第2検出面21に向けて検出光を発光させると、検出光はプリズム19を透過して可撓性フィルム6の外表面で反射する。
第2検出面21で可撓性フィルム6の外表面に反射した検出光は、そこから可撓性フィルム6で反射して第2反射面23に向かい、第2反射面23でさらに反射する。第2反射面で反射した検出光は、プリズム19を通って受光部12に向かい、最終的に受光部12に到達して、受光部12で受光される。これにより、可撓性フィルム6の屈曲部10が第2検出面21を通過する程度にインク室9内部のインク残量が僅かになった状態であることが検出され、インク残量がさらなる所定値を下回っていることを検出することができる。
本実施形態によれば、一対の発光部11、受光部12だけを用い、インクタンク1’を移動させることにより、インク室9内部のインク残量が所定値を下回ったことを検出する際の所定値を2段階に設定することができる。そのため、インク室9内部のインク残量をより高い精度で推定することができる。
このように、インクタンク1’のように、検出領域としての検出面20、21が、複数配置されてもよい。複数の検出領域としての検出面20、21のそれぞれで、可撓性フィルム6が位置しているかどうかを検出する構成であってもよい。また、複数配置された検出面20、21のそれぞれで、可撓性フィルム6に当たって反射した光の反射光量から、インク室9の内部に残っているインクの量が検出される構成であってもよい。
なお、上記実施形態では2つの検出面、反射面を設けた場合について説明したが、さらに複数の検出面・反射面を設けることでさらに細かくインク残量検出を行うことができる。これにより、検出動作において、より多段階の所定値を設定することができる。そのため、インク室9内部のインク残量をさらに高い精度で推定することができる。
また、本実施形態では、発光部11及び受光部12に対する検出面20、21の位置を相対的に移動させるために、インクタンク1’を搭載したキャリッジ101を移動させているが、本発明はこれに限定されない。発光部11及び受光部12が移動することにより、発光部11及び受光部12に対する検出面20、21の位置が相対的に移動する構成であってもよい。
また、本実施形態では、インクタンク1’の検出部における第1検出面20と第2検出面21とが、溝を挟んで別々の検出面として構成されているが、これらの第1検出面20と第2検出面21とは、同一面で構成されていてもよい。
(別の実施形態)
なお、「記録装置」とは、プリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント機能を有する装置、ならびにインクジェット技術を用いて物品の製造を行なう製造装置を含む。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを表すものとする。
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。