JP6246337B2 - 回折多焦点眼用レンズおよび回折多焦点眼用レンズの製造方法 - Google Patents

回折多焦点眼用レンズおよび回折多焦点眼用レンズの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンタクトレンズや眼内レンズなどの眼用レンズに係り、特に回折光によって少なくとも3つの焦点を生成する回折多焦点眼用レンズに関する。
従来から、人眼の光学系における屈折異常の矯正用光学素子や水晶体摘出後の代替光学素子などとして、眼用レンズが用いられている。そのなかでも、人眼に装着して用いられるコンタクトレンズや、人眼に挿入して用いられる眼内レンズは、人眼に直接に用いられて大きな視野を提供すると共に、見え方の違和感を軽減することができることから、広く利用されている。
ところで近年では老眼年齢に達した人達においても継続してコンタクトレンズを使用する人が増えている。かかる老眼となった人は焦点の調節機能が低下しているため、近くのものにピントが合わせにくいという症状が現れる。よってかかる老眼患者に対しては近くのものにも焦点を合わすことができる多焦点コンタクトレンズが必要となる。また白内障手術を施術された患者においては調整機能を司る水晶体が除去されるため、その代替としての眼内レンズを挿入しても近方が見づらいという症状が残る。かかる眼内レンズにおいても複数の焦点を有する多焦点機能を有することが必要となっている。このように近年の高齢者社会を反映して多焦点眼用レンズの必要性は非常に高まっている。
かかる多焦点眼用レンズを実現する方法としては、屈折原理に基づき複数の焦点を形成する屈折型多焦点眼用レンズと回折原理に基づき複数の焦点を形成する回折型多焦点眼用レンズの例が知られている。後者の回折型の眼用レンズにおいては、レンズの光学部に同心円状に複数形成された回折構造を備えており、かかる複数の回折構造(ゾーン)を通過した光波の相互干渉作用によって複数の焦点を与えるものである。それ故、屈折率の相違する境界面からなる屈折面での光波の屈折作用によって焦点を与える屈折型レンズに比して、レンズ厚さの増大を抑えつつ大きなレンズ度数を設定することが出来る等の利点がある。
一般に回折型多焦点レンズは、フレネルゾーンというある規則に従いレンズ中心から周辺に向かうにつれて回折ゾーンの間隔が徐々に小さくなった回折構造を有しており、かかる構造から生成する0次回折光と1次回折光を利用して多焦点とするものである。通常は、0次回折光を遠方視用の焦点とし、+1次回折光を近方視用の焦点とする。かかる回折光の分配によって遠近用の焦点を有するバイフォーカルレンズとすることができる。具体的なフレネルゾーンの構成は、以下の[数1]で定められるゾーン外径半径を有するゾーン間隔を基本とする。この[数1]を以降、フレネルゾーン設定式と呼ぶこととする。
Figure 0006246337
n は、[数1]から得られる第n番目のゾーンの外径半径である。Kは定数である。Pは0次回折光の焦点を基準として1次回折光の焦点を設定するための付加屈折力で、これを変量することによって1次回折光の焦点位置を変更することができる。
たとえば、0次回折光による焦点を遠方用の焦点とし、1次回折光を近方用の焦点とした場合、Pを大きくすると近方用の焦点位置がレンズのより近くに移動する。すなわち、かかるレンズを人の眼に用いた場合は、より近くのものが目視できるようになる。反対にPを小さくすると近方用の焦点位置はレンズから遠ざかる。この場合、レンズを人の眼に用いると目視できる近方の地点は遠ざかることになる。
老眼が進んだ患者、あるいは眼内レンズが挿入された患者においては、水晶体の調節力が低下、消失しているので、前者のようなより近方に焦点が合ったレンズの適用が好ましい。つまり付加屈折力を大きく設定したものが必要となる。一方、さほど調節力が低下していない患者においては近方焦点位置がさほど近くになくても自己の調節力との併用によって近方を見ることが可能なので、大きな付加屈折力を設定しなくてもよい場合がある。これら患者の眼の状態を考慮してPを設定することによって患者ごとに異なる要求度に適用可能なバイフォーカルレンズを得ることができる。
しかし、かかるバイフォーカル型レンズにおいては以下のまだ解決すべき課題があることが分かった。
バイフォーカルレンズにおいては遠方用焦点と近方用焦点の二つの焦点が存在するが、この地点の間には焦点が存在しない空白領域が存在している。付加屈折力を大きくすればするほどこの空白領域は拡大する。調節力が低下している患者においては大きな付加屈折力を有する回折多焦点レンズが適用となるが、かかるレンズを用いた場合、遠方と近方は目視できるものの、両焦点間の間に存在するものを見た場合、鮮明に見えないという問題を引き起こす。
調節力は加齢とともに低下する。人によって残余調節力は異なるが、一般的な傾向として老眼が自覚され始める40歳代半ばでの残余調節力は約2〜3diopter、50歳代では約1.5diopter、60歳代になると1diopter未満まで低下するといわれている。なお以降の屈折力の単位としてdiopterはDと表記することとする。
通常、手前30cmのものを見る場合に必要な人の眼の調節力は約3.3Dで、例えば50歳代の人がかかる地点のものを見る場合、約1.8〜2Dの調節力が不足となる。かかる患者がバイフォーカルレンズを利用した場合、レンズには約1.8〜2Dの付加屈折力が必要となる。また、眼内レンズを挿入した患者においては水晶体が除去されているので残余調節力はほとんど存在しない。かかる患者では3〜3.5Dの付加屈折力が必要となる。なお、眼内レンズを多焦点眼用レンズとしてかかるレンズに付加屈折力を設定する場合は、眼内レンズの眼内における設定位置によってレンズに与える付加屈折力をさらに変更する必要があり、眼内レンズを挿入した眼において上記3〜3.5Dの付加屈折力を与えるようにするにはレンズそのものには3.5〜4Dの付加屈折力が必要となる。
かかる付加屈折力を持つように設計されたバイフォーカル眼用レンズを、老眼が進行した患者や眼内レンズを挿入した患者が使用した場合、遠方と近方の中間領域が見づらいという新たな問題が発生するのである。ここに空白領域にも焦点を生成することのできる多焦点レンズが必要とされている。
かかる問題点を勘案して、従来の回折多焦点レンズにおいても、さらに焦点数を増やした回折型多焦点眼用レンズが提案されている。具体的な例としては光の位相を変調するためのレリーフと呼ばれる回折構造を余弦波(あるいは正弦波)型、または矩形型とした回折型多焦点レンズの例がある。
特開平7−198909号公報(特許文献1)には、余弦波型、三角錐型、あるいは台形型などのレリーフ形状を基本とする3焦点回折眼用レンズについて示されている。かかる特許文献1では、たとえば余弦波型のレリーフを基調とすることによって0次回折光を中間焦点、−1次回折光を遠方用焦点、+1次回折光を近方用焦点に分配し、結果として遠、中、近の異なる3つの地点に焦点を生成する3焦点回折眼用レンズの仕様が述べられている。かかるレリーフ形状の3焦点レンズでは0次回折光となる中間焦点を基準として−1次回折光、+1次回折光に対して等しい付加屈折力が与えられる。この種のレリーフ構造においては、例えば+1次回折光への付加屈折力をPとすると、−1次回折光に対しても(焦点位置は逆になるが)同じPの付加屈折力が付与される。結果として遠方用焦点を基準とすると、中間用焦点はP(D)、近方用焦点は2P(D)の付加屈折力が付与されたのと同じ効果をもたらす。
特開2010−134282号公報(特許文献2)においても、矩形型のレリーフを基本とする3焦点回折眼用レンズについて示されている。かかる特許文献2でも、特許文献1と同様に遠方焦点、中間焦点、近方焦点がそれぞれ−1次回折光、0次回折光、+1次回折光で形成される3焦点回折眼用レンズの仕様が述べられている。
これら特許文献1,2に示された従来構造の回折レンズでは、各焦点間の付加屈折力が基本的には等屈折力となり、中間焦点の屈折力は必ず近方焦点用屈折力の1/2となる。例えば近方焦点が4Dとなるように設定した場合、中間焦点は2Dとなる。
近年ではパソコンの利用が増えるに従いパソコンのモニター画面を見る機会が高齢者においても増えている。一般にモニター画面を見る時の画面位置は平均すると手前約50〜60cmの位置にある。近方用焦点として3Dを設定した場合、先行文献のレンズでは半分の1.5Dに相当する位置に中間焦点がくる。かかる屈折力は距離に換算すると約67cmにあり、モニター画面位置より遠い位置に焦点が設定されたことになり、モニター画面をはっきりと見るには目の位置をモニター画面から遠ざける必要があり、無理な姿勢を強いることになる。また遠ざかればその分モニター上の文字などが小さくなるので、結局は見づらいという問題を引き起こすのである。
このように特許文献1,2に記載の従来構造の回折レンズでは、近方、中間、遠方の焦点が互いに連動して設定されるものであり、任意の中間領域に焦点が生成できないという問題があった。
特開平7−198909号公報 特開2010−134282号公報
[本発明が解決すべき課題]
本発明は上述の如き事情を背景としてなされたものであって、その解決課題とするところは、少なくとも3つの焦点を生成し得る回折型多焦点眼用レンズであって、焦点位置の設定自由度が大きい、新規な構造の回折型多焦点眼用レンズおよびその新規な製造方法を提供することにある。
[本発明が、任意的に解決し得る別の課題]
上述の如き課題を解決すべく本発明者が研究を重ねた結果、前述の従来構造の回折レンズが内在する別の課題も認識するに至り、且つ、かかる別の課題についても、本発明によれば必要に応じて解決することが可能であることが明らかとなった。従って、本発明は、上述の課題を解決することに加えて、以下に記載の別の課題にも、必要に応じて適宜に対処することができるのである。
本発明が任意的に解決し得る別の課題とは、回折型多焦点型眼用レンズにおいて、例えばレンズ使用者(患者)の状況に応じて好適な焦点群を適宜に発現させたり、各焦点位置での光の強度比を変量させたりする要求に対応することである。コンタクトレンズや眼内レンズなどの眼用レンズを眼に装着あるいは挿入した場合、これら眼用レンズから出射、あるいはレンズに入射する光の範囲は、眼の瞳孔の大きさによって定まる。したがって、実質的に光の入、出射を定めるレンズ側の有効開口径も瞳孔が変化すればそれに対応して変化することとなる。前記先行文献の回折多焦点レンズは、開口径が変わっても焦点の数、及び焦点の位置は変わらないことを基本特性としている。
かかる特性は時として不要な焦点生成による光のエネルギーの効率低下を招くという問題を引き起こすことがある。
瞳孔は光の明るさで大きさが変わり、明るい時、瞳孔は小さく、暗くなると大きくなる。瞳孔は眼に入る光量の調節という機能を持つが、併せて焦点深度を調節するという機能も有する。一般に快晴の屋外など、光の照度が非常に高い環境下では人の瞳孔はかなり小さくなっている。瞳孔が小さくなると焦点深度が深くなるので、たとえばかかる環境下では遠方に焦点があった単焦点レンズにおいても中間領域内まで目視できることがある。同様に遠方と近方に焦点があるバイフォーカル眼用レンズを使用した場合においても、快晴の屋外などではそれぞれの焦点の深度は深くなることとなる。この結果、中間領域は遠方の焦点深度のみならず近方の焦点深度の双方から補完されることとなり、遠方と近方の2焦点しかないバイフォーカル眼用レンズであっても中間領域にある物体を見ることは十分に可能となる。つまり、かかる環境下では敢えて中間焦点を設ける必要性はなくなる。翻って先行文献の回折レンズでは、開口径の大きさに依らず定常的に中間焦点が生成する特性を有する由、中間焦点が不要な前記状況においても中間焦点が生成することとなる。焦点数が増えることは、新たに設定した焦点生成のための光のエネルギー量を他焦点から分配することとなり、分配元の焦点においては物を見た時の明るさやコントラストが低下することがある。かかる明るさやコントラストの低下は見え方の質の低下につながるおそれがあるため、必要性がない状況においては不要な焦点の設定は行わないことが好ましい。
中間領域を見る際の対象作業として前記パソコンを用いた作業を考えると、かかる作業を行う環境は屋内の標準的な照度(蛍光灯下の明るさ)が主となる。かかる環境は前記快晴の屋外の環境よりも照度は低くなるので、その分瞳孔は幾分広がる。瞳孔が広がると焦点深度が浅くなるので、前記焦点深度による中間領域のカバーが困難となることとなる。したがって、ここにおいて初めてかかる環境の瞳孔径に対応したレンズ開口領域に中間焦点を生成する仕様を設けることが必要となるのである。かかる中間焦点の生成が必要となる開口領域を遷移領域とするならば、遷移領域より小さい開口径においては見え方の質を損なわないようにするために遠方と近方の2焦点の仕様とし、遷移領域になった状況で前記2焦点に加えて初めて中間焦点が生成するような回折構造の仕様とすることが好適となる。
かかるレンズ内の領域を違えて複数の異なる焦点を与える仕様は、前記遠、近の焦点に対する中間焦点との組合せ以外に、遠、近の焦点に対してさらに近方位置となる地点に焦点を付与するための回折眼用レンズにおいても必要となることがある。残余調節力が2Dほど残っている初期老視の患者においては遠方焦点から手前50cm程の地点までは目視可能である。したがって、かかる患者に対する多焦点眼用レンズの処方としては、中間焦点を生成するための仕様の必要性・重要性はさほど高くないと考えられるので、遠方用と近方用の2焦点が基本となる。しかし、かかる患者においても遠、近以外の異なる位置にさらに別の焦点が必要となることがある。薄暗い室内などの、照度が低下した環境下においては対象物のコントラストは一般に低下する傾向にある。この場合、近方用とした焦点が設けられていても文字の大きさやコントラストいかんで近くのものが十分に目視できなくなることがある。かかる状況において人は、より近くに物を近づけて見ようとする生理学的行動をとることが多い。この場合、前記遠、近の2焦点以外に、より近方側に位置する地点に別の焦点が付与されていると、さらに物を近づけた際にも鮮明な見え方を与えることが可能となる。かかる状況においては、薄暮下の明るさにおける瞳孔径に対応するレンズ開口径が遷移領域となる。したがってかかる使用状況に対応できる多焦点眼用レンズとしては、遷移領域までは遠方と近方のバイフォーカルを基本とし、それ以上の領域に、さらに近くまで見ることのできる別の近方焦点も付与できるような仕様とすることが好ましい。かかる多焦点眼用レンズでは瞳孔が拡大することにより新たに現れるレンズ領域(おそらく回折構造における外周部となるが)に、より近方の位置にも焦点を与える設計仕様とすることが必要となる。
このように患者の使用環境・目的に応じてレンズの領域ごとに必要とされる焦点群を効果的に配した回折多焦点眼用レンズの提供が望まれることもあるが、従来構造の回折型多焦点眼用レンズでは、そのような要求に対応することが極めて困難であった。
[i]語句の定義
以下、本発明の説明に先立ち、本発明で用いられる語句などについて以下のように定義する。
振幅関数(分布)は、光の波としての特性を数学的に記述した関数(分布)のことであり、具体的には[数2]で表わされる。
Figure 0006246337
位相は、[数2]のφ(x)に相当するもので、光の波としての状態を示すパラメータの一つで、具体的には波の谷と山の位置、あるいは経過時間ごとのかかる位置を定めるものである。また、位相を変えることによって波の進行を早めたり、遅らせたりもする。なお、本発明では位相をφで表記することとし、その単位はラジアンである。例えば光の1波長を2πラジアン、半波長をπラジアンとして表わす。
位相変調は、レンズに入射した光に対して何らかの方法でその位相に変化を与えるようなレンズに設けられた構造あるいは方法を総じていう。
位相関数は、[数2]の指数部またはcos関数内の位相の変化を表す関数である。本発明では位相関数の変数は主にレンズの中心から半径方向の位置rとし、r地点におけるレンズの位相φを表すものとして用いられ、具体的には図1に示すようなr−φ座標系10で表わすこととする。また、位相変調構造が設けられた全域の位相の分布を同座標系で表したものを位相プロファイル(Profile)、あるいは単純にプロファイルと呼ぶ。なお、φ=0のr軸を基準線とし、φ=0の地点では入射した光はその位相を変化させることなく射出されることを意味する。そして、この基準線に対してφが正の値を取るとき、光はその位相分だけ進行が遅れ、φが負の値を取るとき、光はその位相分だけ進行が進むことを意味する。実際の眼用レンズにおいては回折構造が付与されていない屈折面がこの基準線(面)に相当する。
光軸は、レンズの回転対称軸で、ここではレンズ中心を貫き物体空間および像側空間へ延長された軸のことをいう。
0次焦点は、0次回折光の焦点位置をいう。以下、+1次回折光の焦点位置に対しては+1次焦点、・・・という。
ゾーンは、回折構造における最小の単位としてここでは用いる。例えば一つのブレーズが形成された領域を一つのゾーン又はゾーン領域と呼ぶ。
ブレーズは、位相関数の一形態で、例えば屋根状の形で位相が変化しているものを指す。本発明では、断面形状をあらわす図2に示すような一つのゾーンにおいて片流れ屋根形の山(稜線)12と谷(谷線)14の間が直線で変化するものをブレーズの基本とするが、山12と谷14の間を放物線状の曲線で変化するようにつながったもの(図2(b))や凹凸形状(方形波状)等も本発明ではブレーズの概念の中に含まれる。また、山12と谷14の間が正弦波の関数の一部で変化するようにつながれたもの(図2(c))、さらにはある関数において極値を含まない区間で変化するようにつながれたものもブレーズの概念の中に含まれる。本発明では特に断りがない限り図2(a)に示すように第i番目のゾーンのブレーズにおいて、ゾーンの外径半径ri の位置の位相φi と、内径半径ri-1 の位置の位相φi-1 の絶対値が基準面(線)に対して等しくなるように、つまり|φi |= |φi-1 |となるように設定することを基本とする。かかるブレーズの位相関数φ(r)は、[数3]のように表される。なお、必要に応じてブレーズを基準面(線)に対してφ軸方向に任意にずらしてもよい。かかるブレーズのずれ量は[数3]においてτで設定されるものとし、単位はラジアンである。
Figure 0006246337
位相定数は、ブレーズ形状の位相関数において[数4]で定義される定数hのことをいう。
Figure 0006246337
レリーフは、位相プロファイルで定められる位相に相当する光路長を反映して具体的にレンズの実形状に変換して得られるレンズの表面に形成される微小な凸凹構造の総称である。なお、位相プロファイルをレリーフ形状に変換する具体的な方法は以下の通りである。
光はある屈折率を有する媒体に入射するとその屈折率分だけ速度が遅くなる。遅くなった分だけ波長が変化し、結果として位相変化が生ずる。位相プロファイルにおけるプラスの位相は光を遅らせることを意味するので、屈折率の高い領域に光が入射するようにすればプラス位相を付与したことと同じになる。なお、これらプラス、マイナスとは相対的な表現であり、例えば位相が−2πと−πでは同符号であっても後者の方が位相は遅れているので、屈折率の高い領域を設定する。
たとえばブレーズ状の位相関数を有する場合、その実形状のブレーズ段差は、[数5]で表わされる。かかるレリーフ形状は精密旋盤による切削加工やモールド成形法などでレンズ面に設けることができる。
Figure 0006246337
強度分布は、レンズ通過後の光の強度をある領域に亘ってプロットしたもので、前記振幅関数の共役絶対値として表わされる。
[ii]本発明の態様
そして、前述の[本発明が解決すべき課題]の解決を目指して為された本発明の特徴的な態様は、上述の定義された語句を用いて以下のように表される。
すなわち、本発明の第一の態様は、同心円状の複数のゾーンから構成された回折多焦点眼用レンズにおいて、回折構造の一部または全部が、[数6]に基づき付加屈折力Pのフレネル間隔をもって設定されたゾーン領域(1)と、[数7]に基づき該ゾーン領域(1)とは異なる付加屈折力P’のフレネル間隔をもって設定されたゾーン領域(2)からなり、かつ、ゾーン領域(1)のn番目のゾーン半径とゾーン領域(2)のm番目のゾーン半径は同一であって、ゾーン領域(1)のn番目までのゾーンはゾーン領域(2)の内側に配され、ゾーン領域(2)のm+1番目以降のゾーンは、ゾーン領域(1)の第n番目のゾーンに隣接して外側に配されていることを特徴とするものである。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
本態様に従う構造とされた回折多焦点眼用レンズでは、後述する解析および実施例から明らかなように、少なくとも3つの焦点を、位置について大きな設計自由度をもって且つ良好な位置精度をもって、設定することが可能になる。
しかも、それぞれの焦点において、実用的に必要な光線強度も確保することが可能であり、良好な見え方が提供され得る。
加えて、後述する実施例にも具体的に示すように、レンズ径方向において各ゾーン領域の位置を調節設定することができることから、必要に応じて、例えば暗所視や明所視、あるいは薄明視における瞳孔径の変化を考慮して各ゾーン領域の位置を設定することにより、照度などの環境に応じて焦点を実質的に発現または焦点位置での光の強度割合を変量させることも可能となる。
なお、本発明に従う構造とされた回折多焦点眼用レンズは、設定式で定められたゾーン領域の接続部における特定構造を備えたものであり、かかるゾーン領域の接続部はレンズ径方向で一箇所に限定されるものでなく、レンズ径方向で複数箇所にゾーン領域の接続部を設定することも可能である。
また、かかる接続部をレンズ径方向で複数箇所に設けるに際しては、3種類以上のゾーン領域をそれぞれレンズ径方向で所定幅に亘って広がるように形成しても良いし、或いは、2種以上のゾーン領域をレンズ径方向で交互にまたは繰り返して所定幅で形成することも可能である。
さらに、回折多焦点眼用レンズに関する本発明は、以下の各態様でもそれぞれ構成され得る。
すなわち、本発明の第二の態様は、第一の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記ゾーン領域(2)が、互いに異なる付加屈折力P1 ’、P2 ’、・・・をもってレンズ径方向に複数あり、それら複数のゾーン領域(21 )、(22 )、・・・の互いにレンズ径方向で隣り合うもの同士が、互いに同一となるゾーン半径の位置で接続されることにより、該ゾーン半径位置で隣接して内周側と外周側に配されているものである。
本態様に従えば、0次回折光による焦点に加えて実質的に3つ以上の異なる焦点を与え得るゾーン領域を備えた回折多焦点眼用レンズが実現可能となる。なお、ゾーン領域(21 )とゾーン領域(22 )の関係は、ゾーン領域(1)とゾーン領域(2)の関係と同じに把握することもできる。従って、本明細書に記載されたゾーン領域(2n)とゾーン領域(2m)の関係式は、何れもゾーン領域(21 )とゾーン領域(22 )の関係式として用いることが可能であり、それらの関係式に従ってゾーン設定することが可能である。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記ゾーン領域(1)が与える前記付加屈折力Pと前記ゾーン領域(2)が与える前記付加屈折力P’が、[数8]の関係にあるようにされたものである。
Figure 0006246337
なお、上記[数8]に限らず、本発明を特定する数式は、技術思想を表すものであって設計上の指標となるものであるが、例えば製造工程等では誤差が発生する。それ故、本発明に従う構造をもって製造されて提供された回折多焦点眼用レンズの要件としては、目的とする技術的効果が達成されるように各数式の要件を満たすものであれば良いのであって、数学的に厳格に要件解釈される必要はなく、本発明の目的とする光学的な作用効果が発揮されるものであれば良い。
本発明の第四の態様は、第一〜三の何れかの態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記ゾーン領域(1)の第一番目のゾーン半径r1 と、前記ゾーン領域(2)の第一番目のゾーン半径r1 ’が、[数9]の関係にあるようにされたものである。
Figure 0006246337
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に係る回折多焦点眼用レンズであって、前記[数9]においてα=0とされたものである。
本発明の第六の態様は、第一〜五の何れかの態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記ゾーン領域(1)の第1番目のゾーン半径r1 と、前記ゾーン領域(2)の第1番目のゾーン半径r1 ’が、それぞれ[数10]、[数11]で表されるようにされたものである。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
本発明の第七の態様は、第一〜六の何れかの態様に係る回折多焦点眼用レンズであって、前記回折構造において前記ゾーンの少なくとも二つの径方向で隣接するゾーンが等間隔とされた等間隔ゾーンを含むものである。
後述する実施例にも示すように、回折ゾーンとして等間隔ゾーンを利用することにより、基本的な回折構造による光学特性を維持しつつ、焦点における光強度のピーク位置の調節などのチューニング自由度を大きくすることができる。
本発明の第八の態様は、前記第七の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記等間隔ゾーンが、前記ゾーン領域(1)内に配されているものである。
本発明の第九の態様は、前記第八の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記等間隔ゾーンが、前記ゾーン領域(1)の第(n−s)番目のゾーン半径地点から第(n−t)番目のゾーン半径地点の範囲に少なくとも二つ含まれているものである。ただし、0≦t< s< nであって、tおよびsは整数である。
本発明の第十の態様は、前記第七〜九の何れかの態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記等間隔ゾーンが、前記ゾーン領域(2)内に配されているものである。
本発明の第十一の態様は、前記第十の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記等間隔ゾーンが、前記ゾーン領域(2)の第(m−s’)番目のゾーン半径地点から第(m−t’)番目のゾーン半径地点の範囲に少なくとも二つ含まれているものである。ただし、0≦t’< s’< mであって、t’およびs’は整数である。
なお、上述の本発明の第七〜十一の態様に記載された等間隔ゾーンにあっては、ゾーン領域(1)とゾーン領域(2)の何れかのゾーン領域内で回折ゾーンとして部分的に採用することもできるし、それら両方のゾーン領域内にそれぞれ部分的に採用しても良い。
本発明の第十二の態様は、第一〜十一の何れかの態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、回折光によって少なくとも3つの焦点を生成することが可能とされているものである。
本発明の第十三の態様は、前記第十一の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記3つの焦点のうち一つは遠方視用焦点であり、他の一つの焦点が近方視用焦点であり、更に他の一つの焦点が中間視用焦点とされているものである。
本発明の第十四の態様は、前記第一三の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記遠方視用焦点が回折構造の0次回折光によって与えられ、前記近方視用焦点及び中間視用焦点が+1次回折光で与えられるものである。
本発明の第十五の態様は、第十二〜十四の何れかの態様に係る回折多焦点眼用レンズであって、前記少なくとも3つの焦点が、直径で1.2mm以上のレンズ開口径において生成するようにされたものである。前述の如き環境の明るさの程度に応じて瞳孔が縮小すると焦点深度が大きくなることを考慮して、一般に、直径が1.2mm以下の光学径とすることで、快晴の屋外等では中間視の発現を抑えることで、必要とされる焦点における光エネルギー量を効率的に確保してコントラストの向上を図ることが可能になる。
本発明の第十六の態様は、第一〜十五の何れかの態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記ゾーンが、光の位相を変調させうるための位相関数で特徴付けられた回折構造をもって形成されているものである。
本発明の第十七の態様は、前記第十六の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記位相関数が、ブレーズ形状の関数からなるものである。
本発明の第十八の態様は、前記第十七の態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記ブレーズ形状の位相関数φ(r)が、[数12]で表されるものである。
Figure 0006246337
本発明の第十九の態様は、第一〜十八の何れかの態様に係る回折多焦点眼用レンズにおいて、前記回折構造が、位相に相当する光路長を反映したレリーフ構造によって構成されているものである。
本発明において回折光を与える回折構造は、例えば位相を変調し得る屈折率の分布を以て構成することも可能である。しかし、本態様に従って幾何学的な山形等の凹凸形状で光路長を反映させたレリーフを用いることが好適であり、それによって焦点の設計や精度の向上が図られ得る。
また、本発明は、上述の第一〜十九の態様に記載の如き回折多焦点眼用レンズを有利に製造し得る方法として、以下の各工程を含む回折多焦点眼用レンズの製造方法も、特徴とする。即ち、本発明方法は、同心円状の複数のゾーンから構成された回折多焦点眼用レンズを製造するに際して、目的とする付加屈折力Pを与える回折構造(1)を決定する工程と、目的とする別の付加屈折力P’を与える回折構造(2)を決定する工程と、前記回折構造(1)におけるゾーン半径と前記回折構造(2)におけるゾーン半径とが同じ半径位置rとなる、該回折構造(1)におけるn番目のゾーンと該回折構造(2)におけるm番目のゾーンをそれぞれ求める工程と、該半径位置rの内周側に該回折構造(1)におけるn番目以下のゾーン領域を設ける一方、該半径位置rの外周側に該回折構造(2)におけるm+1番目以上のゾーン領域を設ける工程とを、含む回折多焦点眼用レンズの製造方法を、特徴とする。
さらに、かかる本発明方法では、前記半径位置rを、装用者における瞳孔の最小径以上で且つ最大径より小さい半径範囲内で設定する態様が、好適に採用され得る。これにより、例えば前記第十四の態様に係る回折多焦点眼用レンズなどが有利に提供され得る。
上述の説明から明らかなように、本発明に従えば、従来構造の回折多焦点レンズに比して焦点位置の設定自由度が大きく確保されるのであり、それによって、例えば近方、中間、遠方の3焦点を設定するに際しての焦点位置の連動性を回避して中間位置の焦点を独立して大きな自由度で位置設定することが可能になる。
また、必要とされる場合には、例えば装用者の瞳孔径の変化を考慮して、各ゾーン領域の位置を設定することにより、使用環境等に応じて実質的に発現したり強度割合が変化する焦点を設定することも可能になる。なお、このような技術的効果は必要に応じて享受することが可能なものであって、本発明において必ず達せられる必要はない。
回折レンズにおける光の位相φをレンズ半径方向位置rとの関係で表す、r−φ座標系における位相関数のグラフである。 回折レンズにおける位相関数の一形態としてのブレーズを例示するグラフである。 本発明の実施例1としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例2としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例3としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例4としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例5としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例6としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)、(c)はゾーン領域(1)、(21 )、(22 )の位相プロファイルを示したものであり、(d)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(e)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例7としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)、(c)はゾーン領域(1)、(21 )、(22 )の位相プロファイルを示したものであり、(d)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(e)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 ゾーン領域(1)、(21 )、(22 )、(23 )についてゾーン半径の一致条件に基づく回折構造の組み合わせパターンを示す図である。 本発明の実施例8としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例9としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例10としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例11としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)、(c)はゾーン領域(1)、(21 )、(22 )の位相プロファイルを示したものであり、(d)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(e)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例12としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例13としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例14としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例15としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)、(c)はゾーン領域(1)、(21 )、(22 )の位相プロファイルを示したものであり、(d)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(e)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例16としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)、(c)はゾーン領域(1)、(21 )、(22 )の位相プロファイルを示したものであり、(d)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(e)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例17としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)、(c)はゾーン領域(1)、(21 )、(22 )の位相プロファイルを示したものであり、(d)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(e)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例18としての回折多焦点眼用レンズにおける光軸方向の強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例19としての回折多焦点眼用レンズに関する図であって、(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイルを示したものであり、(c)は組み合わされた位相プロファイルを示すものであり、(d)は組み合わせによって構成された回折構造の光軸方向における強度分布を示すグラフである。 本発明の実施例20としての位相定数を変量した回折多焦点眼用レンズにおける位相プロファイルと光軸方向における強度分布を(a)、(b)に示したグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について述べることで、本発明をより具体的に明らかにする。
[A.フレネル間隔適用の実施例]
[A−1.標準フレネルゾーン設定式を用いた基本的態様]
前述のフレネルゾーン設定式である[数1]に基づき付加屈折力Pを与えるフレネルゾーンがあり、第n番目のゾーン半径が以下の[数13]で表されるとする。このゾーン領域をゾーン領域(1)とする。なお、以降の説明において特に断りのない限り、ゾーン半径とはゾーンの外径の半径のことを示すこととする。同様に前記[数1]に基づき付加屈折力P’を与える異なるフレネルゾーンをゾーン領域(2)とし、かかる領域の第m番目のゾーン半径は以下の[数14]で示されることとする。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
今、ゾーン領域(2)を形成するための付加屈折力P’が、ゾーン領域(1)を形成するための付加屈折力Pを用いて[数15]で表されるとする。
Figure 0006246337
[数15]を[数14]に代入すると以下の[数16]が得られる。
Figure 0006246337
ここで、rn とrm が等しいとすると、[数13]と[数16]から、[数17]の関係式が得られる。
Figure 0006246337
[数17]から以下の[数18]の関係式が得られる。
Figure 0006246337
かかる[数18]においてnとmはゾーン番号を表しているので、必ず整数値をとる。また、[数18]におけるa、bは整数であると定義したので、両辺が等しくなるnとmの組合せが必ず存在する。つまり、nとmは、aとbの公倍数であるa×b×Ω(Ωは1以上の整数)をそれぞれaまたはbで割ったものとなる。つまり、[数19]、[数20]でゾーン番号が表される。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
このようにゾーン領域(2)の付加屈折力P’を、ゾーン領域(1)の付加屈折力Pに対して[数15]となるように設定すると、ゾーン領域(1)のb×Ω番目のゾーン半径とゾーン領域(2)のa×Ω番目のゾーン半径が同じになることとなる。
なお、a、bに最大公約数がある場合は、最大公約数で割った数で表示する。たとえばa=6、b=8の場合は両者の最大公約数は2なので、これで割った値を用いる。a=6/2=3、b=8/2=4、といった具合である。
この関係を利用すると、ゾーン領域(1)のb×Ω番目のゾーンから、ゾーン領域(2)の(a×Ω+1)番目のゾーンにスムーズに切り替わって移行することができることになる。結果としてゾーン領域(1)、ゾーン領域(2)、それぞれのゾーンの間隔の一部が維持され繋がって共存する回折構造を形成することができるのである。かかる回折構造は、レンズ開口領域を違えて異なる付加屈折力にて定まる異なるゾーン間隔のものが複数存在することとなる。したがって、開口の大きさによってそれぞれの付加屈折力に相当する複数の焦点を回折レンズの異なる領域に付与することができるようになる。
なお、通常は[数1]の定数Kは、設計波長λを用いて[数21]として表す。前記[数13]、[数14]は、[数21]を用いると[数22]、[数23]で表される。[数22]、[数23]を、以降「標準設定式」と呼ぶこととする。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
Figure 0006246337
標準設定式で定められるゾーン間隔の具体的な例を[表1]に示す。[表1]は、ゾーン領域(1)の付加屈折力をP=4Dとし、ゾーン領域(2)は[数15]の(a, b)の組合せを変えて付加屈折力を定め、付加屈折力ごとに[数22]または[数23]を適用して算出されるゾーン半径を示したものである。なお、計算に際してはλ=546nmとした。
Figure 0006246337
[表1]においてゾーン領域(1)とゾーン領域(2)の付加屈折力とゾーン半径の関係を調べてみる。付加屈折力が3.2Dとされたゾーン領域(2)のゾーンに着目すると、P’は基準となるゾーン領域(1)の付加屈折力Pの(4/5)倍となっている。したがって、a=4、b=5と割り当てられる。前記[数19]、[数20]から、ゾーン半径が一致するゾーン番号は次のようになる。
ゾーン領域(1) ・・・ n=5Ω
ゾーン領域(2) ・・・ m=4Ω
これよりゾーン領域(1)のn=5、10、15番目、・・・のゾーン半径と、P’=3.2Dのゾーン領域(2)のm=4、8、12番目、・・・のゾーン半径がそれぞれ一致していることが[表1]から分かる。
ゾーン領域(2)の付加屈折力をP’= 2.6667Dとした場合は、P’=(2/3)×4=2.6667Dなので、a=2, b=3と割り当てられる。よって次のゾーン番号で一致する。
ゾーン領域(1) ・・・ n=3Ω
ゾーン領域(2) ・・・ m=2Ω
[表1]からゾーン領域(1)のn=3、6、9、・・・番目のゾーン半径と、P’=2.6667Dのゾーン領域(2)のm=2、4、6、・・・番目のゾーン半径がそれぞれ一致していることが分かる。
一方、P’が基準付加屈折力Pよりも大きい場合でもこの関係は成立する。たとえばP’=5Dの場合、a=5、b=4と割り当てられる。この場合、n=4Ω、m=5Ωとなり、ゾーン領域(1)のn=4、8、12、・・・番目のゾーン半径と、P’=5Dのゾーン領域(2)のm=5、10、15、・・・番目のゾーン半径が一致していることが分かる。
以上の関係から、ゾーン領域(1)の第n番目のゾーンの次にゾーン領域(2)の第(m+1)ゾーンを設定すれば、各領域のゾーン間隔を維持したまま一つの回折構造の中に異なるゾーン領域を組み込むことができるのである。
本発明を以下の具体的な実施例にてさらに詳細に説明する。詳細な説明に際して、本発明で用いられる計算シミュレーションの方法、条件、出力データを以下に示す。
計算ソフトは、スカラー回折理論と呼ばれる該分野にて知られた理論から導出される回折積分式に基づいて、各ゾーンからの振幅分布や強度分布を計算できるものを用いた。かかる計算ソフトを用いて光軸上の強度分布を計算した。計算に際しては、光源は遠方に存在する点光源として設定し、レンズには同位相の平行光が入射するとして計算した。また、物体側空間および像側空間の媒体は真空、レンズは収差が存在しない理想レンズ(レンズから出た光は射出位置に関わらず全て同一の焦点に結像する)として計算した。また計算は、波長=546nm、レンズの0次回折光の屈折力(ベースとなる屈折力)=7Dで行った。
光軸上の強度分布は、レンズを基点とした光軸上の距離をdiopterに換算し、0次回折光の焦点位置を0Dとして規格化し、かかる規格化されたスケールに対して強度をプロットした。
計算対象のレンズ開口範囲は、特に断りがない限り、実施例の各表に記載されているゾーン番号までの領域とした。
[実施例1]
前記[表1]において付加屈折力PをP=4Dとしたゾーン領域(1)に対して、ゾーン領域(2)の付加屈折力を前記[数15]に基づきa=4、b=5とし、P’=(4/5)×P=3.2Dとした場合の回折多焦点眼用レンズの一実施形態を具体的に示すものである。
前記[数19]、[数20]より、かかるゾーン領域の間ではゾーン領域(1)のn=5番目のゾーン半径と、ゾーン領域(2)のm=4番目のゾーン半径が一致する。したがって、ゾーン領域(1)のn=1から5番目のゾーンと、ゾーン領域(2)のm=5から7番目のゾーンを組み合わせることによってフレネル間隔の規則性を維持したままで新たな回折構造として設定することが可能となる。具体的な構成は、ゾーン領域(1)を回折構造の中央に配し、ゾーン領域(2)をその外側に配したものとなり、まるで鉄道の線路のポイントを切り替えるがごとく、ゾーン領域(1)からゾーン領域(2)への切り換えがなされた構造となるのである。このように構成されたゾーン間隔に対して位相関数をブレーズ状の関数(前記[数3]に基づく関数)とし、位相定数h=0.5として設定した。なお、以降の例において特に断りがない限り、ブレーズの位相定数はh=0.5、位相ずれ量はτ=0とした。かかる位相構造と組み合わされたゾーン間隔に基づく回折多焦点眼用レンズのプロファイルを[表2]に示した。表中、「ゾーン領域(1)」、「ゾーン領域(2)」の欄は各領域のゾーン間隔を示すもので、「組み合わせたプロファイル」欄はゾーン半径が一致する地点でゾーン領域が切り替わって組み合わされたゾーン間隔を示している。なお、「組み合わせたプロファイル」欄のゾーン番号の表記はiとし、新たな通し番号で表示するものとする。
Figure 0006246337
組み合わされたゾーン間隔に基づく回折多焦点眼用レンズのプロファイルを図3に示す。図3(a)、(b)はゾーン領域(1)、(2)の位相プロファイル16,18を示したもので、図中の実線は組み合わせる対象のゾーン領域を示したものである。図3(c)は組み合わされたゾーン間隔に基づく位相プロファイル20を示すものである。以降の例においても各ゾーン領域と組み合わされたゾーン領域の位相プロファイルを同様の図として示す。かかるゾーンの切り換えによって構成された回折構造の光軸方向の強度分布22を図3(d)に示す。
図3(d)において0Dに位置する強度ピークはゾーン領域(1)及び(2)の0次回折光に由来するものである。約3.7Dの地点に生成する強度ピークは主にゾーン領域(1)からの+1次回折光の焦点に由来するもので、約3Dの地点に生成する強度ピークは主にゾーン領域(2)からの+1次回折光による焦点に由来するものである。0Dの焦点は遠方視用焦点として設定され、約3.7Dの焦点は主に読書などの近方作業に対応した焦点となり、約3Dの焦点は中間視用焦点となるもので、本例から得られる回折多焦点眼用レンズは、遠方、中間、近方領域に焦点を与える多焦点眼用レンズとなることが分かる。
前記従来技術に基づく三焦点回折多焦点眼用レンズの例においては中間領域の焦点は近方領域の焦点の1/2となり、例えば近方視用焦点の位置が4Dにあるとしたら中間視用焦点は2Dとなる。一方、本発明ではかかる制限はなく、ゾーン領域(1)と(2)の付加屈折力の設定いかんで近方と中間領域の焦点位置を任意に変量しうることが分かる。
本例ではゾーン領域(1)はレンズの中央に配されているので開口径(直径)が約2.3mmまでの結像特性はゾーン領域(1)からの寄与が主となる。したがって瞳孔径がかかる開口径に相当する大きさ以下の時、すなわち照度が高い場合は、ゾーン領域(1)の結像特性である、遠方視領域と付加屈折力P=4Dに相当する近方視領域に二つの焦点を与える2焦点眼用レンズとして機能する。次に照度が低くなり瞳孔が広がるとゾーン領域(2)が含まれる状況となるので、かかる段階においては図3(d)に示すように新たに中間領域にピークが生成することとなる。したがって前記課題(本発明が、任意的に解決し得る別の課題)で説明したように人の瞳孔の生理学的機序に対応して必要な時に必要な焦点を適切に生成しうる回折多焦点眼用レンズが得られることとなるのである。以降の例においても基本的にはゾーン領域(1)を回折構造の中央に配す仕様を対象とする。したがって、瞳孔の小さな状況においては本例と同様にゾーン領域(1)の結像特性がまず発現され、瞳孔が広がった状況においては他の異なるゾーン領域の結像特性が加えて発現されるものとなる。
[実施例2]
ゾーン領域(1)の付加屈折力は実施例1と同じとし、ゾーン領域(2)の付加屈折力をa=3、b=5としてP’= (3/5)×P=2.4Dとした場合の例を示す。かかる例ではゾーン領域(1)のn=5番目のゾーン半径とゾーン領域(2)のm=3番目のゾーン半径が一致する。したがって回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1から第5番目のゾーンで、そしてその外側にゾーン領域(2)の第4から6番目のゾーンを配した新たな回折構造を設定した。なお、ゾーン領域(2)のゾーン間隔は[数23]の標準設定式から定めた。かかる回折構造の詳細を[表3]に示した。また図4(a),(b),(c)にかかる回折構造の位相プロファイル24,26,28と図4(d)に光軸方向の強度分布30を示した。
Figure 0006246337
約3.9Dの地点に生成する強度ピークは主にゾーン領域(1)からの+1次回折光の焦点に由来するもので、約2〜3Dの地点に生成する強度ピークは主にゾーン領域(2)からの+1次回折光による焦点に由来するものである。ゾーン領域(2)の付加屈折力がP’=2.4Dと実施例1よりも付加屈折力が小さく設定されているため、その分、遠方用ピーク(0D)側へシフトしていることが分かる。
本例も前記実施例1と同様にレンズ開口径がゾーン領域(2)を含む範囲まで広がると任意に設定された中間領域に新たに焦点ピークが生成することから前記課題(本発明が、任意的に解決し得る別の課題)を解決しうる回折多焦点眼用レンズとなりうることが分かるのである。
[実施例3]
ゾーン領域(1)の付加屈折力は実施例1と同じとし、ゾーン領域(2)の付加屈折力をP’= (2/3)×P=2.6667Dとして設定した。したがって、a=2、b=3となることから本例ではゾーン領域(1)のn=3番目と、領域(2)のm=第2番目のゾーン半径が一致する。ところで、一致するゾーン半径はかかるゾーン番号だけに限定されるものではなく、前記[数19]、[数20]に示すようにaとbの公倍数となるゾーン間でも一致する。[数19]、[数20]のΩをΩ=2とした場合、ゾーン領域(1)ではn=3×2=6番目、ゾーン領域(2)ではm=2×2=4番目のゾーン半径でも一致する。したがって本例ではかかる関係に基づき、回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1から6番目のゾーンとし、その外側をゾーン領域(2)の第5から8番目のゾーンを配した新たな回折構造を設定した。かかる回折構造の詳細を[表4]に示す。また図5(a),(b),(c)にこの回折構造の位相プロファイル32,34,36と図5(d)に光軸方向の強度分布38を示す。
Figure 0006246337
前記したようにa、bの公倍数となる値でもゾーン半径が一致することから、本例は任意の公倍数でゾーンを一致させてゾーン領域を切り替えた例となっている。公倍数となるゾーン間でゾーンを切り替えても設定の付加屈折力のP’には影響がないので、ゾーン領域(2)に基づく+1次回折光は約2.5〜3Dの強度ピークとなり、設定付加屈折力P’の範囲で設定できていることが分かるのである。
[実施例4]
本例は前記実施例3と同じゾーン領域(1)、(2)の組合せを用いて実施例3とは異なるゾーン番号でゾーン領域(2)へ切り替え、再びゾーン領域(1)へ戻るという構成からなるものである。ゾーン領域(1)とゾーン領域(2)のゾーン半径が一致するのは、ゾーン領域(1)のn=3、6、・・・番目とゾーン領域(2)のm=2、4、・・・番目である。そこで、回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1〜3番目とし、その外側にゾーン領域(2)の第3〜4番目のゾーンを配し、そしてさらにその外側に再びゾーン領域(1)の第7〜9番目のゾーンを配した構成としたものである。かかる回折構造の詳細を[表5]に示す。また、図6(a),(b),(c)にこの回折構造の位相プロファイル40,42,44と図6(d)に光軸方向の強度分布46を示す。
Figure 0006246337
0次回折光に基づく0Dのピークとゾーン領域(1)の+1次回折光による約4Dのピークに加えて、ゾーン領域(2)に由来する約2.4Dと3.3Dの合計4つの強度ピークが主に生成した。かかる強度分布においては近方と遠方の間の中間領域に二つのピークが存在するため中間領域の視認性がより一層確実となる回折多焦点眼用レンズを提供しうるものとなる。このようにゾーン領域(1)と(2)の間のゾーン半径が一致する地点で領域を複数回切り替えても回折多焦点眼用レンズを得ることができるのである。
[実施例5]
本例は、前記実施例2におけるゾーン領域(1)と(2)の設定の位置を逆にした例である。すなわち実施例2におけるゾーン領域(1)、(2)を本例ではゾーン領域(2)、(1)とそれぞれ逆転させ、ゾーン領域(1)の付加屈折力をP=2.4Dとし、ゾーン領域(2)の付加屈折力をP’=(5/3)×P=4Dで設定したものである。ゾーン半径が一致するゾーン番号は実施例2と同じであるが、回折構造の内側が付加屈折力P=2.4Dのゾーン領域(1)の第1から第3番目のゾーンで、その外側に付加屈折力4Dのゾーン領域(2)の第6から第10番目のゾーンで構成されたものである。かかる回折構造の詳細を[表6]に示した。また、図7(a),(b),(c)にこの回折構造の位相プロファイル48,50,52と図7(d)に光軸方向の強度分布54を示す。
Figure 0006246337
ゾーン領域を入れ替えて構成した回折構造においてもそれぞれのゾーン領域の付加屈折力に相当する地点に強度ピークが生成することが分かる。なお実施例2との対比において近方、中間領域のピークの形状が若干異なっているが、これはゾーン領域の順列によって光の干渉の仕方が異なることによるものと考えられる。
本例では付加屈折力P=2.4のゾーンが内側に配されているので、開口径が小さい場合はかかる付加屈折力に基づいた位置に焦点が生成し、開口径が広くなるとゾーン領域(2)の付加屈折力P’=4に基づく焦点が生成するという仕様となっている。かかる開口径と焦点生成の関係は、前述の老視の初期段階にある患者に対して、照度が低下した環境下においてより近くを目視したいという要求に応じた多焦点眼用レンズの仕様となるものである。このように目的に応じてゾーン領域(1)の付加屈折力は任意に定めればよく、ゾーン領域(2)の付加屈折力はこれよりも大きく設定しても小さく設定しても構わないのである。
以上の実施例から、異なる付加屈折力を与える異なるゾーン領域がある場合、[数15]に基づき付加屈折力を設定することにより、特定のゾーン地点でそれぞれのゾーン領域を切り替えて組み合わさった新たな回折構造を設定することが可能となり、所望の回折多焦点眼用レンズを得ることができるのである。
[A−1−1.複数のゾーン領域に亘るゾーンの切り替え]
前記[表1]からも明らかなように、異なるゾーン領域(2)の間でゾーン半径が一致する組合せがある。たとえば、[表1]においてP’= 3Dとした場合の第3ゾーンと、P’= 2Dとした場合の第2ゾーンは同じゾーン半径となっている。これ以外にもいくつかの組で同一となるゾーン半径が存在する。
この関係は以下のように説明される。なお、以降の実施例、説明において異なるゾーン領域(2)の表記の仕方は、異なるゾーン領域(2)ごとにゾーン領域(21 )、(22 )、(23 )、・・・・と表し、それぞれの領域の付加屈折力はP1 ’、P2 ’、P3 ’、・・・、ゾーン番号はm1 、m2 、m3 、・・・、また付加屈折力を定める整数は(a1 、b1 )、(a2 、b2 )、(a3 、b3 )、・・・と表記することとする。
1 ’、P2 ’、P3 ’、・・・は基準となるゾーン領域(1)の付加屈折力Pに対してそれぞれ(a1 /b1 )、(a2 /b2 )、(a3 /b3 )、・・・倍して設定されるものとする。この中で付加屈折力P1 ’とP2 ’に着目すると、両者の付加屈折力は基準付加屈折力Pを用いて[数24]、[数25]として表される。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
これら[数24]と[数25]から[数26]が得られる。
Figure 0006246337
ゾーン領域(21 )の第m1 番目のゾーン半径と、ゾーン領域(22 )の第m2 番目のゾーン半径が一致するという条件下では[数18]と同様の関係式として[数27]を得ることができる。
Figure 0006246337
[数27]においてa1 、b1 、a2 、b2 は整数で定義されているので、前記[数19]、[数20]と同様に[数28]、[数29]で示すゾーン番号でゾーン半径が一致する。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
1 ’= 3Dとした場合は、(a1,b1 )=(3, 4)、P2 ’= 2Dでは(a2,b2 )=(1, 2)なので、[数30]、[数31]の通りとなる。それぞれの係数の最大公約数の「2」で割って表示すると以下の通りとなる。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
したがって、P1 ’=3Dの第3、6、9番目のゾーンに対して、P2 ’=2Dの第2、4、6番目のゾーン半径が一致する。
このように異なるP’間でもそれぞれのフレネルゾーン間隔を維持したままゾーンの切り換えができるのである。
以上の関係を用いると、基準付加屈折力を与えるゾーン領域(1)と、ゾーン領域(2)において異なる付加屈折力を与える別のゾーンも回折構造の中に組み込むことが可能となる。かかる関係に基づき具体的に回折多焦点眼用レンズを設計した例を以下に示す。
[実施例6]
ゾーン領域(1)の付加屈折力をP=4Dとし、ゾーン領域(2)に関しては付加屈折力P1 ’=2.4DとP2 ’=3Dの二つのゾーンが構成単位となる複数のゾーンを用いた。なお、P1 ’=2.4Dのゾーン領域をゾーン領域(21 )、P2 ’=3Dのゾーン領域をゾーン領域(22 )と表記した。各ゾーン領域のゾーン半径を[表7]に示す。
Figure 0006246337
ゾーン領域(21 )の付加屈折力はP1 ’=(3/5)×P=2.4Dなので、a1 =3、b1 =5となり、ゾーン領域(1)のn=5番目と、ゾーン領域(21 )のm1 =3番目のゾーン半径が一致する。ここでまず切り替え可能なゾーンが存在する。ゾーン領域(22 )の付加屈折力はP2 ’=(3/4)×P=3Dなので、a2 =3、b2 =4となり、ゾーン領域(1)のn=4、8、・・・番目と、ゾーン領域(22 )のm2 =3、6、・・・番目のゾーン半径が一致する。一方、ゾーン領域(21 )とゾーン領域(22 )の間には、[数28]、[数29]より、m1 =3×4×Ω=12Ω、m2 =3×5×Ω=15Ωとなり、これらの最大公約数「3」で割った4Ω、5Ωのゾーンでゾーン半径が一致する。これらゾーン半径の関係から以下のように回折構造のプロファイルを設定した。
まず回折構造の中央をゾーン領域(1)の第1〜5番目のゾーンとし、その外側にゾーン領域(21 )の第4番目のゾーンを配した。その外側にはゾーン領域(22 )の第6番目のゾーンを設け、さらにその外側にゾーン領域(1)の第9、10番目のゾーンを配した。かかるゾーン領域が切り替わった位相プロファイル56,58,60,62を[表7]及び図8(a)〜(d)に示した。またかかる回折構造の光軸方向の強度分布64を図8(e)に示した。なお、位相プロファイル56,58,60,62は前記実施例群と同様のブレーズ形状で位相定数h=0.5としたものである。
本例の強度分布は、ゾーン領域(21 )、ゾーン領域(22 )が組み込まれていることから、かかるゾーン領域群とゾーン領域(1)の相互干渉などの影響もあって付加屈折力2〜4Dに亘って多峰状のピークが連なる強度分布となる。本例においても開口径が小さい場合はゾーン領域(1)の寄与のみからなる2焦点の結像特性となり、開口径が大きくなると図8(e)に示す強度分布64となる。開口径が大きくなった際には図8(e)に示す強度分布64となるため、近方から中間領域をほぼ網羅できる多焦点眼用レンズとして有用なものとなる。
ゾーン半径が一致する関係式である[数19]、[数20]、[数28]、[数29]は、ゾーン領域(1)の付加屈折力Pの値に依らないことから、これまでに示した結果は基準となる付加屈折力Pを変量しても同様に成り立つこととなる。
実施例6のゾーン領域(21 )、(22 )の付加屈折力設定のための整数比は変えず、ゾーン領域(1)の付加屈折力のみP=2.5Dに変更した場合でも同様のゾーンの切り替えが可能であることを実施例7で示す。
[実施例7]
前記実施例6においてゾーン領域(1)の付加屈折力をP=4DからP=2.5Dに変更し、ゾーン領域(2)うちの2つのゾーン領域(21 )と(22 )に関しては実施例6と同様に、a1 =3、b1 =5、a2 =3、b2 =4で付加屈折力を設定した。かかる条件で設定した各ゾーン領域の付加屈折力は以下のようになる。
・ゾーン領域(21 );P1 ’=(3/5)×P=1.5D
・ゾーン領域(22 ):P2 ’=(3/4)×P=1.875D
このように設定したものは実施例6と同じゾーン番号で各ゾーン領域に切り替えることが可能となる。かかる回折構造の詳細を[表8]に示す。また図9(a)〜(d)に回折構造の位相プロファイル66,68,70,72と図9(e)に光軸方向の強度分布74を示す。
Figure 0006246337
本実施例ではゾーン領域(1)の付加屈折力をP=2.5Dと変量しているため、ゾーン領域(1)の+1次回折光による焦点は約2.5Dの地点の強度ピークとして現れる。他の焦点ピークに関しては実施例6と同じ分布を示しており、約1.3Dから2.2Dに亘って多峰状の強度分布を示すものとなる。本例から、ゾーン半径が一致する関係式を用いると基準となるゾーン領域(1)の付加屈折力を任意に変更しても同じパターンの強度分布を示すことが分かるのである。なお、本例に示したようなゾーン領域(1)の付加屈折力を2.5Dとした場合は、まだ自身の眼の調節力が少しは残っている患者に対する眼用レンズ、たとえば多焦点コンタクトレンズとして有用なものとなるのである。
以上の例から見て分かるように、[数15]のaとbの値を変量することで基準付加屈折力と異なる付加屈折力を任意に設定できることとなる。たとえば基準付加屈折力のちょうど半分の付加屈折力のゾーンを組み込む場合は、a=1、b=2とすればよい。また、もう少し付加屈折力を大きくしたい場合は、a=2、b=3、あるいはa=3、b=4、のようにaとbが整数である範囲内で自由に設定することができるのである。この特徴によって先行文献では中間領域焦点の設定に制約があったものが本発明では任意に設定できるのである。
また、本例に示すゾーン構造を有する回折レンズにおいては、区分されたゾーン領域ごとに、該領域で定められる付加屈折力を持つ+1次回折光が追加生成される。結果としてかかる回折構造からなる回折多焦点眼用レンズは、領域を異ならせて複数の異なる焦点を形成することが可能となり、環境による瞳孔径の変化に応じて必要となる焦点を付与しうる回折多焦点眼用レンズをも得ることができるのである。
この特性は、レンズにおける光の実質的な入射、または射出範囲を定める開口径と焦点深度の関係から鑑みて理想的なものである。つまり、人の眼において瞳孔径が小さい時は焦点深度が深いので、たとえ遠近の2か所にしか焦点がこないように設計されたレンズにおいても実質的には中間領域まで焦点深度がかかること、また、かかる瞳孔径が小さい環境は快晴の屋外などの照度が高い場合であり、かかる環境下で中間領域に相当する距離を目視するような作業頻度はあまりないこと、などから敢えて中間領域への焦点生成は考慮しなくてもよい。しかし、作業環境がオフィス内に変わった場合などの、標準的な照度の環境下においては瞳孔径がやや拡大し、焦点深度は浅くなるが、本発明のレンズではかかる状態の遷移に合わせて中間領域における焦点がちょうどよいタイミングで生成し始めるのである。
また、一般に薄暮などの照度が低下した環境下では近方が見づらくなるが、暗くなってきた時により近くが見たいという要求に対しては、照度が低くなり瞳孔が拡大して新たに現れる回折ゾーン領域に、内側のゾーンに設定した近方焦点よりもさらに手前に焦点を生成する異なる近方用焦点を設定することも可能となるのである。
[A−2.拡張設定式を用いたゾーンの切り替え]
(ゾーン第一半径を任意に設定する場合等の設定式)
ゾーンの設定は、[数1]に限定されず他の設定式を用いることもできる。たとえば以下の[数32]に示す拡張設定式を用いることも本発明では可能である。
Figure 0006246337
前記[数1]は第一ゾーン径を含めた形でゾーン径を設定する形式のものであった。一方、[数32]は第一ゾーン径を任意で設定することができる形式となっている。かかる設定式を用いても本発明におけるゾーンの切り替えが可能である。
ここでは第一ゾーン径をr1 、付加屈折力をP、設計波長をλ、そして第n番目のゾーン径をrn としてある。[数32]でゾーン半径が定められる領域を前記と同様ゾーン領域(1)とする。
ゾーン領域(2)に関しても同様の式で表されるとする。ゾーン領域(2)の付加屈折力P’、第一ゾーン半径をr1 ’とすると、ゾーン領域(2)の第m番目のゾーン半径rm は[数33]で表される。
Figure 0006246337
両ゾーン領域のゾーン半径が一致する条件は、rn =rm なので[数32]と[数33]から[数34]が得られる。
Figure 0006246337
[数34]を整理すると[数35]が得られる。
Figure 0006246337
今、[数35]の左辺が[数36]で表されるとする。
Figure 0006246337
[数35]と[数36]から[数37]が得られる。
Figure 0006246337
ゾーン領域(2)の付加屈折力P’は前記[数15]で表されるとする。[数15]と[数37]から[数38]が得られる。
Figure 0006246337
したがって任意の(a, b)に対するゾーン番号(n, m)は[数39]、[数40]で設定されることとなる。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
ただし、[数39],[数40]において、Ω’=Ω+γ(γは[数36]と同じ)である。
[数38]は、ゾーン領域(2)の付加屈折力を設定するための変数a、bに加えて変数αも組み込まれたものとなっている。ゾーン半径が一致するための条件としてαを変量する条件が新たに追加されたこととなり、ゾーン領域(1)またはゾーン領域(2)の第一番目のゾーン半径を任意に設定することが可能となり、回折多焦点眼用レンズの設計の自由度がさらに増すこととなる。このようにαを導入することによってr1 とr1 ’の設定の自由度を高めた設定式[数36]および[数32],[数33]の一連の式群を以降、「拡張設定式」と呼ぶこととする。
[数38]、[数39]、[数40]に基づきαをα=0、±1、±2、±3、±0.5の任意の値で変量した場合の(a, b)と(n, m)の組合せを[表9]〜[表16]に示す。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
Figure 0006246337
Figure 0006246337
Figure 0006246337
Figure 0006246337
Figure 0006246337
Figure 0006246337
α=0の場合、[数36]よりr1 =r1 ’となり、ゾーン領域(1)と(2)の第一ゾーン半径を等しくして任意に変量できることとなる。この場合、[数39]、[数40]は[数41]、[数42]となり、標準設定式で一致するゾーン番号に1を加えた番号でゾーン半径が一致することとなる。
Figure 0006246337
Figure 0006246337
たとえば、ゾーン領域(1)の付加屈折力をP=4Dとし、ゾーン領域(2)の付加屈折力をP’=3Dで設定する時の(a, b)は、(a, b)=(3, 4)である。この時、ゾーン半径が一致するゾーン番号は[表9]より、(n, m)=(5, 4)、(9, 7)、(13, 10)、・・・となる。
αをゼロ以外の値で設定する場合は、ゾーン領域(1)の第一ゾーン半径を任意で設定しつつ、ゾーン領域(2)の第一ゾーン半径を異ならせて設定することに相当する。
[表10]はα=1で設定した場合の(a, b)と(n, m)の組合せを示すもので、(a, b)=(8, 9)でゾーン領域(2)の付加屈折力P’を設定した場合は、(n,
m)=(5, 5)、(14, 13)、・・・のゾーン番号で領域(1)と(2)のゾーン半径が一致する。また、(a, b)=(6, 7)でP’を設定した場合は(n, m)=(4, 4)、(11, 10)、(18, 16)、・・・でゾーン半径が一致する。
前記標準設定式で設定する場合は、(a, b)=(8, 9)では(n, m)=(9, 8)となるところが、本例に示すαを導入した拡張設定式においては最小番号で一致するのが(n, m)=(5, 5)であり、より小さなゾーン領域でゾーンの切り替えが可能となる。
また、同一(a, b)においてもαを変量すると(n, m)の組合せも変わる。例えば、α=3とすると、(a, b)=(8, 9)に対しては(n, m)=(4, 5)、(13, 13)、・・・とα=1で設定した場合とは異なる番号でゾーン半径が一致するようになる([表12])。このようにαの設定の仕方いかんでゾーン半径の一致条件を微調整することができ、より自由度の高い回折多焦点眼用レンズの設計が可能となるのである。
なお、α=±0.5の場合([表16])においてもゾーン半径が一致する番号が存在する。したがって前記[数36]にてα=β+ γとし、βは整数、γは0または0.5としてある。
また、前記[A−1]欄で説明した複数のゾーン領域に亘るゾーンの切り換えも同様に可能である。
たとえば[表9]において(a, b)=(3, 4)とした場合、ゾーン領域(1)と(21 )のゾーン半径は(n, m)=(5, 4)となるゾーン番号で一致する。したがって、回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1から5番目のゾーンで設定し、その外側にゾーン領域(21 )の第5番目のゾーンから設定することができる。ゾーン領域(21 )を第7番目まで設定したとすると、かかる第7番目のゾーンで再びゾーン領域(1)の第9番目のゾーン半径と一致するので、ゾーン領域の(21 )の外側にゾーン領域(1)の第10番目からのゾーンを設定することが可能となる。 また、ゾーン領域(1)の第9番目のゾーン半径は、(a, b)=(7, 8)とした場合のゾーン領域(22 )の第8番目のゾーン半径、あるいは(a, b)=(1, 2)とした場合のゾーン領域(23 )の第5番目のゾーン半径とも一致する。したがって、ゾーン領域(21 )の第7番目の外側にはゾーン領域(1)以外に、(a, b)=(7, 8)となるゾーン領域(22 )の第9番目以降のゾーン、あるいは(a, b)=(1, 2)となるゾーン(23 )の第6番目以降のゾーンを配してもよいこととなる。これら一連のゾーン半径が一致するゾーン間の関係を[表17]に示し、一致条件に基づく回折構造の組み合わせパターンを図10に示す。
Figure 0006246337
以上説明したように[表9]〜[表17]は切り替え可能なゾーンの系譜を示しており、かかる系譜から望みの配列、組合せを選択することが可能となる。なお、本発明はかかる説明事例に限定されるものではなく、その他の組合せにも適応できるものである。
このように拡張設定式を用いることによってゾーン領域(1)の第一ゾーン半径を任意に設定しつつ、ゾーン領域の切り替えが可能となり、また、ゾーン半径が一致する条件もより多様化することとなり、設計の自由度がさらに増すのである。かかる拡張設定式を用いてゾーンの切り替えを行った回折多焦点眼用レンズの具体例を以下に示す。
[実施例8]
ゾーン領域(1)の付加屈折力をP=4D、第一番目のゾーン半径をr1 =0.3950mmとして[数32]を用いてゾーン領域(1)のゾーン半径を設定した。次にα=1として[数36]からゾーン領域(2)の第一ゾーン半径を求めたところr1 ’=0.1396mmとなった。かかる値を用いてゾーン領域(2)の付加屈折力がP’=(2/3)×P=2.6667Dとなるように(a, b)=(2, 3)として[数33]よりゾーン領域(2)のゾーン間隔を設定した。
かかる設定条件では[表10]よりゾーン領域(1)とゾーン領域(2)は(n, m)=(2, 2)、(5, 4)、(8, 6)、・・・のゾーン番号で一致する。そこで、回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1と2番目のゾーンで設定し、その外側にゾーン領域(2)の第3と4番目のゾーンを設定し、さらにその外側に再びゾーン領域(1)の第6〜8番目のゾーンが配されるようにゾーンの切り換えを行い回折構造を設定した。かかる回折構造の位相プロファイル78,80,82の詳細を[表18]、及び図11(a)〜(c)にそれぞれ示す。またかかる回折構造の光軸方向の強度分布84を図11(d)に示した。
Figure 0006246337
本実施例は拡張設定式を用いてゾーン領域(1)の第一ゾーン半径を小さくし、またα=1としてゾーン領域(2)の第一ゾーン径も小さく設定したものである。本例は、前記実施例4において(n, m)=(3, 2)でゾーン半径が一致したものが、第2番目同士で一致したものとなっており、ゾーン領域(1)のゾーン数が一つ分少ない構造となっている。本例と実施例4の光軸強度分布はほぼ同じ分布となっており、領域(1)のゾーンが一つ減っても同様の効果を与えることが分かる。本例では回折構造の最外径は半径で約1.438mmであり前記実施例4の最外径(半径で約1.567mm)よりも小さい径で同様の結像特性を実現できることとなり、開口径が小さくても機能する眼用レンズの応用例としては、加齢に伴い瞳孔径が小さくなった高齢者に対する眼用レンズ、例えば眼内レンズとして有用なものとなる。このように拡張設定式を用いるとより設計の自由度が高まることが本例から分かるのである。
[実施例9]
ゾーン領域(1)の付加屈折力をP=4D、第一番目のゾーン半径をr1 =0.6033mmとして[数32]を用いてゾーン領域(1)のゾーン半径を設定した。かかる設定値は標準設定式で与えられるものよりも少し大きい値としている。本例ではα=0としてゾーン領域(2)の第一ゾーン半径を領域(1)と同じとした。かかる値を用いてゾーン領域(2)の付加屈折力がP’=(2/3)×P=2.6667Dとなるように(a, b)=(2, 3)としてゾーン領域(2)のゾーン間隔を設定した。
かかる設定条件では[表9]よりゾーン領域(1)と(2)は(n, m)=(4, 3)、(7, 5)、(10, 7)、・・・のゾーン番号で一致する。そこで、回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1から7番目のゾーンで設定し、その外側にゾーン領域(2)の第6〜8番目のゾーンを配した回折構造とした。かかる回折構造の位相プロファイル86,88,90の詳細を[表19]及び図12(a)〜(c)に示す。
Figure 0006246337
かかる回折構造の光軸方向の強度分布92は図12(d)の通りで、ゾーン領域(1)と(2)に基づき近方領域と中間領域に焦点を形成するピークが生成する。ゾーン領域(1)と(2)の付加屈折力が本例と同じ実施例3と比較すると、実施例3ではゾーン領域(1)が第1〜6番目、領域(2)が第5〜8番目のゾーンから構成されたものに対して、本例は前記した通り、領域(1)が第1〜7番目、領域(2)が第6〜8番目となり、構成ゾーンの総数は変わらないが、各領域の構成ゾーン数は領域(1)では一つ多く、領域(2)では一つ少ない点が異なっている。本例では図12(d)に示すように実施例3(図5(d))とほぼ似た強度分布92を与えるが、約2.1D付近にも強度ピークが生成する(図12(d)矢印)。この挙動により中間領域における焦点生成の範囲が実施例3よりも一層広がっていることが分かる。
このように拡張設定式を用いることによってより詳細な焦点生成の調整が可能となることが分かる。
拡張設定式ではゾーン領域(1)の第一ゾーン半径を任意に設定することができるが、標準設定式から定めたものを用いても良い。この場合、ゾーン領域(2)の第一ゾーン半径はαを変量するとによって標準設定式によるものとは異なる半径で設定することが可能となる。したがって、前記実施例群と同様の自由度の高い設計が可能である。
この場合、[数22]、[数36]からゾーン領域(2)の第一ゾーン半径は[数43]で定められる。
Figure 0006246337
ゾーン領域(1)の第一ゾーン半径を標準設定式で定めつつαを変量した例を次に示す。
[実施例10]
ゾーン領域(1)の付加屈折力をP=4D、第一番目のゾーン半径をこれまで通りの標準設定式で定めr1 =0.5225mmとした。拡張設定式におけるαをα=−1とし、[数43]に基づきゾーン領域(2)の第一ゾーン半径を求めたところr1 ’=0.6399mmとされた。ゾーン領域(2)の付加屈折力をP’=(4/5)×P=3.2Dとなるように[数33]にてゾーン領域(2)の間隔を求めた。かかる組合せでは[表13]よりゾーン領域(1)の第4番目と、ゾーン領域(2)の第3番目のゾーン半径が一致する。したがって回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1〜4番目のゾーンで構成し、その外側にゾーン領域(2)の第4番目から6番目までのゾーンで構成した。かかる回折構造の位相プロファイル94,96,98の詳細を[表20]及び図13(a)〜(c)にそれぞれ示す。また、光軸方向の強度分布100を図13(d)に示す。
Figure 0006246337
本例と実施例1は付加屈折力設定の(a, b)が同じ組合せとされたものであるが、本例ではゾーン領域(1)のゾーン数が実施例1よりも一つ少ない構成となっている。その分、本例は回折構造の最外半径が約1.455mmで、実施例1の最外径約1.546mmよりも小さい最外半径でほぼ同じ強度分布を発現していることが分かる。本例も瞳孔径が小さい患者に適用しうる眼用レンズの例として有用なものとなる。
[実施例11]
ゾーン領域(1)の付加屈折力、第一ゾーン半径、αは実施例10と同じとし、ゾーン領域(2)を異なる二種類の付加屈折力を与えるゾーン領域(21 )と(22 )で構成した。ゾーン領域(21 )の付加屈折力をP1 ’=(2/3)×P=2.6667D、ゾーン領域(22 )の付加屈折力をP2 ’=(4/5)×P=3.2Dとした。なお、領域(21 )と(22 )の第一ゾーン半径は[数43]より0.6399mmとされ、[数33]から各付加屈折力に対応したゾーン間隔を定めた。かかる組合せにおいては[表13]より、ゾーン領域(1)の第6番目とゾーン領域(21 )の第4番目のゾーン半径が一致する。また、領域(1)の第9番目のゾーン半径は、領域(21 )の第6番目と領域(22 )の第7番目のゾーン半径にそれぞれ一致することから、ゾーン領域(21 )の6番目と領域(22 )の第7番目のゾーン半径も一致することとなる。かかる関係から回折構造を以下のように設定した。回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1から第6番目のゾーンで構成し、その外側にゾーン領域(21 )の第5と6番目のゾーンを配し、さらにその外側にはゾーン領域(22 )の第8と9番目のゾーンを配した。本例の回折構造の位相プロファイル102,104,106,108の詳細を[表21]及び図14(a)〜(d)に示す。またかかる回折構造の光軸方向の強度分布110を図14(e)に示す。
Figure 0006246337
本例では約4Dの近方視用領域と3Dの中間視用領域に、強度がほぼ等しいピークが生成する。かかる焦点領域は眼内レンズを挿入された患者にとって読書及びパソコンのモニターを視認するにちょうど良い距離にあたるため、かかる作業を重視する患者に好適な多焦点眼内レンズとなる。
なお、本例のゾーン領域の組合せはゾーン領域(1)、(2)とも前記標準設定式を用いた場合でも可能であるが、標準設定式を用いた場合はゾーン領域(21 )と領域(22 )が切り替わるゾーン番号は本例のような小さな番号とはならず、m1 =10、m2 =12と大きくなる。したがって、領域(22 )は回折構造のかなり外側(ゾーン半径で約2mm)に配されることとなるため一般的な照度における瞳孔径の範囲内に入らないおそれがあり、目的とする結像特性が発現できないことがある。しかし、本例のように拡張設定式を用いると瞳孔内に十分入る領域内でゾーンの切り換えが実現でき、かかる懸念を回避できるのである。このように拡張設定式を用いるとより細やかな設計が可能となる。
なお、αを用いた拡張式においてゾーン領域(1)は標準設定とし、α=2とした場合は[数43]より、ゾーン領域(2)の第一ゾーン半径がゼロとなることとなり、第二ゾーン半径が実質的な第一ゾーン半径となる([表22])。これは、ゾーン領域(2)も標準設定式で定めた場合([表1])の第一ゾーンが第二ゾーンに置き換わった例となる。この場合は、[数38]のゾーン半径が一致するゾーン番号は、a×n=b×(m−1)となるので、m−1=m’と置き換えればa×n=b×m’となり、標準設定式の[数18]と全く同じものとなる。つまり、αを導入した式群([数36]〜[数43])は標準設定式をも包括した、ゾーン径一致のための拡張式となっていることが分かる。
Figure 0006246337
[A−3.付加屈折力を整数比で定めなくてもゾーン半径を一致させうる態様(一般設定式による態様)]
ここまではゾーン半径一致の条件としてゾーン領域(2)の付加屈折力P’を前記[数15]に基づき整数比で表すこととしてゾーン半径一致の条件を定めた。次にかかる整数比で定めることなく任意の付加屈折力でゾーン半径を一致させうる方法について説明する。
前記[数32]と[数33]で表されるゾーン領域(1)と(2)の第nとm番目のゾーン半径が同じだとすると[数44]の関係式が得られる。
Figure 0006246337
[数44]は、ゾーン領域(2)の第一ゾーン半径を定める関係式を示すものであるが、かかる式は、入力値としてのゾーン領域(1)の第一ゾーン半径、ゾーン領域(2)の付加屈折力P' および一致しうるゾーン番号を任意としても構わないことを示すものである。すなわち、かかる第一ゾーン半径に基づき構成されたゾーン領域(2)は、ゾーン領域(1)との間で前記入力値に対してゾーン半径が一致することとなるのである。よって本式を用いるとゾーン領域(2)の付加屈折力は特に整数比で定める必要はなく、また、一致しうるゾーン番号も任意で設定することも可能となる。かかる式に基づき設定されたゾーン領域間でのゾーンの切り換えに基づく回折多焦点眼用レンズの例を以下に示す。
[実施例12]
ゾーン領域(1)の付加屈折力をP=4D、第一ゾーン半径を標準設定式よりr1 =0.5225mmとした。ゾーン領域(2)の付加屈折力はP’=(1/√4.5)×P=1.8856Dとし、ゾーン領域(1)とゾーン領域(2)がゾーン番号(n, m)=(5, 3)で一致するように[数44]からゾーン領域(2)の第一ゾーン半径r1 ’を求めたところr1 ’=0.4547mmとなった。かかる第一ゾーン半径を基にゾーン領域(2)のゾーン間隔を[数33]から求めたところ[表23]に示すゾーン間隔となった。
Figure 0006246337
[表23]からゾーン領域(1)の第5番目とゾーン領域(2)の第3番目のゾーン半径が一致していることが分かる。かかる関係に基づき回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1から第5番目のゾーンを配し、その外側にゾーン領域(2)の第4から第6番目までのゾーンを配したものを回折構造とした。かかる回折構造の位相プロファイル112,114,116の詳細を[表23]及び図15(a)〜(c)に示す。また、かかる回折構造の光軸方向の強度分布118を図15(d)に示す。図15(d)よりゾーン領域(1)と(2)に由来するピークが近方(約3.9D地点)と中間視領域(約1.6〜1.9D地点)にそれぞれ生成していることが分かる。
本例はゾーン領域(2)の付加屈折力を(1/√4.5)×P=1.8856Dで設定したものである。かかる付加屈折力はゾーン領域(1)の付加屈折力Pに対してa、bの整数比で定められたものではないが、[数44]を用いると整数比で表せない付加屈折力に対してもゾーンの切り換えを可能とするゾーン間隔の設定ができることが分かる。本例はゾーン領域(2)の付加屈折力が1.8856Dとこれまでの実施例群よりも小さく設定されている。したがって眼内レンズとして利用した際には、遠方視及び近方視用焦点に加えて、テレビなどの少し離れた地点のものを見るのに適した位置に中間視用焦点が設定された回折多焦点眼内レンズとなる。
[実施例13]
ゾーン領域(1)の第一ゾーン半径をr1 =0.4mmとした他は実施例12と同じとした例について示す。この場合、実施例12と同じゾーン番号でゾーン半径が一致するためのゾーン領域(2)の第一ゾーン半径はr1 ’=0.3062mmとなった。それぞれの第一ゾーン半径に基づき[数32],[数33]から設定される両領域のゾーン間隔は[表24]の通りとなる。かかる関係から実施例12と同様にゾーン領域(1)と(2)を組み合わせたものを回折構造とした。本例の位相プロファイル120,122,124の詳細を[表24]及び図16(a)〜(c)に示す。また光軸方向の強度分布126を図16(d)に示す。実施例12と同様の強度分布を示すことが分かる。このようにゾーン領域(2)の付加屈折力を非整数比で表しつつ、ゾーン領域(1)の第一ゾーン半径を任意で変量してもゾーンの切り換えが可能となることが本例から分かる。
Figure 0006246337
[数44]を用いることによってゾーン領域(2)の付加屈折力P’を整数比で設定しなくてもゾーンの切り換えが可能な領域を設定できることを以上の例から説明した。このように[数44]は任意の付加屈折力に適応できる、より一般化された設定式(以下、この式を「一般設定式」と称す)となるのである。[数44]は当然のことながら、前記標準、または拡張設定式で用いられた整数比で表すことのできる付加屈折力に関しても適用できる。次に整数比で表した場合の[数44]の適用例について示す。
[実施例14]
ゾーン領域(1)の付加屈折力、第一ゾーン半径をそれぞれP=4D、r1 =0.5225mmとし、ゾーン領域(2)の付加屈折力をP’=2.75Dで設定した。[数44]に基づきゾーン半径が一致するゾーン番号を(n, m)=(6, 4)となるようにゾーン領域(2)の第一ゾーン半径を求めたところr1 ’=0.6684mmとなった。[数32]、[数33]から求めた各領域のゾーン間隔は[表25]に示す通りとなる。かかるゾーン半径の一致の関係から回折構造の内側にゾーン領域(1)の第1から第6番目のゾーンを配し、その外側にゾーン領域(2)の第5から7番目のゾーンを配した。この回折構造の位相プロファイル128,130,132の詳細を[表25]及び図17(a)〜(c)に示す。また光軸方向の強度分布134を図17(d)に示す。ゾーン領域(1)と(2)の+1次回折光に基づき近方領域および中間領域に焦点を与えるピークが生成することが分かる。
Figure 0006246337
本例における付加屈折力P’は、P’=(11/16)×4=2.75Dで設定されるものであり、標準設定式では、a=11、b=16と整数比で表すことができるものとなっている。この場合のゾーン半径の一致箇所はゾーン領域(1)の第16番目のゾーン、つまりr16=2.09mmとなるため、レンズのかなり外側で領域(1)と領域(2)が切り替わることとなる。ゾーン半径の一致地点がレンズのかなり外側にあると、ゾーンの切り換え地点が瞳孔内に入らない可能性が高くなり、ゾーン領域(2)を、瞳孔に対応したレンズ開口径内に設定できなくなるおそれがある。したがって、付加屈折力P’が整数比で表される場合においてもゾーン半径が一致する番号が大きい場合には、本例に示すように一般設定式である[数44]を用いるのが望ましい。
なお、一般設定式で定められるゾーン領域(2)のゾーン半径rm は、[数33]においてr1 ’をゾーン領域(1)の最外半径とした場合のゾーン半径と等価となる。つまり、[数33]におけるr1 ’をr1 ’=rn として、m=2以降で定められるゾーン半径を、切り換え後のゾーン領域(2)のゾーン半径としてもよいのである。具体的な表式は[数45]に示す通りとなり、[数45]を用いることにより、[数44]を経由することなく、ゾーン領域(1)から領域(2)への切り換え可能なゾーン半径が直ちに求められる。
Figure 0006246337
前記実施例12においてゾーン領域(1)の最外半径となるゾーン番号n=5のゾーン半径r5 =1.1683mmを[数45]のrn に代入し、m=2以降の番号で算出されるゾーン領域(2)のゾーン半径を[表26]に示す。参考までに実施例12で示したゾーン領域(2)のゾーン半径([数33]、[数44]より定められたもの)も示した。1.1683mm以降のゾーン半径が一致していることが分かる。前記実施例13、14のゾーン領域(2)に関しても同様に[数45]を用いて計算すると、切り換え後のゾーン領域(2)のゾーン半径と、[数45]で求められるゾーン半径は同じとなることが分かるのである。
Figure 0006246337
このように[数45]を用いると、任意の地点で任意の付加屈折力の領域を容易に設定することが可能となる。付加屈折力を任意に定め、かつ任意のゾーン位置でゾーンを切り替えた例を[表27]に示す。第1から4番目は標準設定式を用いて付加屈折力P=4Dのゾーン領域(1)としたものである。第5〜7番目のゾーンはゾーン領域(21 )に対応するもので[数45]を用いて、付加屈折力をP1 ’=2.6D、ゾーン領域(1)の最外半径(第4番目のゾーン半径)をrn 、そしてmをm=2〜4までとして計算して求めたものである。第8〜11番目のゾーンはゾーン領域(22 )に対応するもので、同じく[数45]を用いて付加屈折力をP2 ’=3.3D、ゾーン領域(21 )の最外半径(表中の第7番目のゾーン半径)をrn 、そしてmをm=2〜5までとして計算して求めたものである。かかる計算にて求めた各領域のゾーンは切り替え地点でゾーン半径が一致したものとなって一つの回折構造を形成するのである。
Figure 0006246337
以上説明したように、まず標準設定式において付加屈折力を整数比で表す、と着想することによってゾーン半径が一致することを見出し、かかる一致地点にてゾーン領域が切り換わった回折構造を設定できることを示した。
そして、標準設定式を拡張し一般化することによってゾーンの切り換えの自由度をさらに高めることができることを示した。このようにゾーン領域が切り換わった回折構造は異なる環境に対応した開口径ごとに焦点形成を最適化することができるため、前述の諸課題を解決しうる多焦点眼用レンズとして有用なものとなるのである。
[B.非フレネル間隔を含む態様]
前記[A]欄で説明したゾーン領域の切り換えは基本的には[数1]で定められるフレネルゾーン間隔で構成することを基本としている。しかし、場合によっては非フレネルゾーン間隔を構成の一部としてもよい。
ここでいう非フレネル間隔とは、ある領域内においてゾーン半径が[数1]にて定められないゾーン間隔のことをいう。一般に、ゾーン間隔が演算式等で設定され得て、ゾーン領域の回折作用によって焦点をコントロールして発現させることのできる各種の回折構造が採用可能である。たとえばゾーン間隔が等しいゾーンを領域内に有する場合はかかる等間隔関係にあるゾーンは非フレネル間隔の一例となる。
非フレネル間隔として等間隔ゾーンを構成の一部とした場合のゾーンの切り換え方法に関して以下の実施例に基づき説明する。
[実施例15]
付加屈折力をP=4D、第一ゾーン半径をr1 =0.5225mmとしたフレネル間隔において第2番目のゾーン半径から第5番目のゾーン半径に相当する区間を3等分し、等間隔とされたゾーンをそれぞれ第3、4、5番目のゾーンとした。かかるゾーン構成からなるものを本例ではゾーン領域(1)とした。ゾーン領域(21 )の付加屈折力をP1 ’=2.4D、ゾーン領域(22 )の付加屈折力をP2 ’=3Dとし、いずれも標準設定式を用いてかかる領域のゾーン間隔を定めた。かかる各領域のゾーン間隔を[表28]に示す。
Figure 0006246337
ゾーン領域(21 )は付加屈折力がP1 ’=(3/5)×4=2.4Dとして設定されるので、ゾーン領域(1)の第5番目とゾーン領域(21 )の第3番目のゾーン半径が一致する。また、ゾーン領域(21 )の第4番目とゾーン領域(22 )の第5番目のゾーン半径が一致する。また、ゾーン領域(22 )の第6番目とゾーン領域(1)の第8番目のゾーン半径も一致する。以上の関係に基づき以下のようにして回折構造を定めた。回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1から5番目のゾーンで配し、その外側にゾーン領域(21 )の第4番目のゾーン、さらにその外側にゾーン領域(22 )の第6番目のゾーン、そしてその外側に再びゾーン領域(1)に戻りかかる領域の第9、10番目のゾーンをそれぞれ配した。かかる回折構造の位相プロファイル136,138,140,142の詳細を[表28]及び図18(a)〜(d)に示す。また光軸方向の強度分布144を図18(e)に示す。
本例は、前記実施例6におけるゾーン領域(1)の第2番目のゾーン半径から第5番目のゾーン半径の区間を3等分し、第3、4、5番目のゾーン間隔がΔr=0.1431mmとされた等間隔のゾーンで構成されたものとなっており、それ以外は実施例6と同じ仕様のものとなっている。本例においても回折構造の中央に配された領域(1)の最外半径に変わりはないので、実施例6と同様に他の領域と同じゾーン番号で切り替えが可能である。本例の光軸方向の強度分布144と実施例6の光軸方向の強度分布64(図8(e))と比較すると、遠方視用領域のピーク(0D)と近方視用領域のピーク(約4D)の出現位置及び強度に差異はないが、実施例6で約3.4Dの位置にあったピークが本例では強度が減少し、代わって約2.9Dの位置のピーク強度が増大している(図中矢印)。結果として実施例6において中間視用焦点としての約3.4Dのピークが本例では少し離れた2.9D地点にシフトできたこととなり、かかる等間隔ゾーンの導入によって微調整がなされたことが分かる。本例にて示された強度分布144は、眼内レンズが挿入された患者において、ちょうどパソコンモニターを視認するに適した距離に中間焦点が生成する分布となっており、パソコンを多用する患者に対して好適な多焦点眼内レンズとなりうるのである。
[実施例16]
付加屈折力をP=4D、第一ゾーン半径をr1 =0.5225mmとしたフレネル間隔において第2番目のゾーン半径から第6番目のゾーン半径に相当する区間を4等分し、等間隔とされたゾーンをそれぞれ第3、4、5、6番目のゾーンとした。かかるゾーン構成からなるものを本例ではゾーン領域(1)とした。ゾーン領域(21 )の付加屈折力をP1 ’=2.6667D、ゾーン領域(22 )の付加屈折力をP2 ’=3.2Dとし、いずれも標準設定式を用いてかかる領域のゾーン間隔を定めた。かかるゾーン間隔を[表29]に示す。
ゾーン領域(21 )は付加屈折力がP1 ’=(2/3)×4=2.6667Dとして設定されるので、ゾーン領域(1)の第6番目とゾーン領域(21 )の第4番目のゾーン半径が一致する。また、ゾーン領域(21 )の第5番目とゾーン領域(22 )の第6番目のゾーン半径が一致する。
以上の関係に基づき以下のようにして回折構造を定めた。回折構造の内側をゾーン領域(1)の第1から6番目のゾーンで配し、その外側にゾーン領域(21 )の第5番目のゾーン、さらにその外側にゾーン領域(22 )の第7、8番目のゾーンをそれぞれ配した。かかる回折構造の位相プロファイル146,148,150,152の詳細を[表29]及び図19(a)〜(d)に示す。また光軸方向の強度分布154を図19(e)に示す。
Figure 0006246337
本例のゾーン領域(1)は、[数22]で定められるフレネル間隔のうち、第2番目のゾーン半径から第6番目のゾーン半径に相当する区間を4等分し、一つの間隔がΔr=0.1352mmとされたゾーンを第3から6番目の構成ゾーンとしたものである。実施例15と比べると等間隔ゾーンの間隔が狭くなり、かつ等間隔ゾーンの数が一つ多くなったものとなっている。本例の回折構造の最外半径は実施例15と同じとなっている。かかる回折構造の範囲で強度分布を比較すると実施例15における近方視用ピークと中間視用ピークの強度がちょうど逆転した分布となっている。したがって本例に基づく眼用レンズを眼内レンズとして使用した際に、中間領域の見え方が実施例15よりも増強されたものとなり、パソコンモニター画面などがより鮮明に見える仕様となる。本例に示すように等間隔ゾーンの構成を少し変更することによってかかる強度バランスの微調整も可能となるのである。
[実施例17]
付加屈折力をP=3D、第一ゾーン半径をr1 =0.6033mmとしたフレネル間隔において第2番目のゾーン半径から第5番目のゾーン半径に相当する区間を3等分し、等間隔とされたゾーンをそれぞれ第3、4、5番目のゾーンとした。かかるゾーン構成からなるものを本例ではゾーン領域(1)とした。ゾーン領域(21 )の付加屈折力をP1 ’=1.8D、ゾーン領域(22 )の付加屈折力をP2 ’=2.25Dとし、いずれも標準設定式を用いてかかる領域のゾーン間隔を定めた。かかるゾーン間隔を[表30]に示す。
Figure 0006246337
本例は、実施例15における等間隔ゾーンの設定条件、ゾーン領域(21 )、(22 )の付加屈折力設定条件(整数比)は変えずに、ゾーン領域(1)の付加屈折力のみP=3Dに変更したものである。なお、等間隔ゾーンの間隔は、かかる付加屈折力の設定に伴いΔr=0.1653mmに変量されている。本例の回折構造の位相プロファイル156,158,160,162の詳細を[表30]及び図20(a)〜(d)に示す。また光軸方向の強度分布164を図20(e)に示す。
本例はゾーン領域(1)の付加屈折力をP=3Dとした以外は実施例15と同条件でゾーン構成を行ったものである。したがって、+1次回折光によるピークが出現する位置は付加屈折力の変更に伴い遠方ピーク側へ全体的にシフトする。しかし、強度分布164そのものは実施例15の相似となっている。このようにゾーン領域(1)の付加屈折力を変更してもゾーン切り替え番号などの設定条件が同一であれば、焦点位置の変動はあるものの強度分布の形態は維持されるのである。つまり、ある強度分布を維持してピーク位置のみ変更したい場合は、本例で示すような設定条件とすればよいことが分かる。
本例のように付加屈折力を全体的に弱めた眼用レンズは、眼内レンズ対象者においても特に約40〜1mの範囲の視認性を重要視する患者に対して有用な多焦点眼内レンズとなる。一方、コンタクトレンズ使用者においては、調節力の低下分を補完しより近くまで視ることを希望する患者に対して有用な多焦点コンタクトレンズとなる。
実施例15〜17においてはゾーンの構成は標準設定式に基づき行ったものとなっているが、非フレネル間隔を含む場合においても前記拡張設定式、あるいは一般設定式を用いて構成してもよい。
たとえば実施例16は、ゾーン領域(21 )の次に付加屈折力P2 ’=3.2Dとなるゾーン領域(22 )への切り換えを行った例であるが、領域(22 )への切り換え先として他の異なる付加屈折力を与えるゾーン領域に切り替えたいとした場合、一般設定式[数44]または[数45]を用いると容易に任意の付加屈折力のゾーンへ切り換えることが可能となる。
[実施例18]
実施例16におけるゾーン領域(21 )から別の異なる付加屈折力を与えるゾーン領域(22 )への切り換えを一般設定式である[数45]に基づき行った。ゾーン領域(21 )の最外半径は1.4309mmであったので、この値を[数45]のrn とし、変更するゾーン領域(22 )の付加屈折力を3.8Dとし、かかる付加屈折力を[数45]のP’へ代入し、ゾーン領域(22 )のゾーン間隔を決定した。本例の回折構造の詳細を[表31]に示す。また光軸方向の強度分布166を図21に示す。なお、表中では、ゾーン領域(21 )の最外半径を、領域(22 )の第一ゾーン半径として表記してある。ゾーン領域(22 )の付加屈折力を3.8Dと変更したことにより実施例16と比較して近方視用ピークと中間視用ピークの強度がほぼ等しい強度分布となる。
Figure 0006246337
実施例18から分かるように、非フレネル間隔を含むものに関しても一般設定式が利用でき、より自由度に富む設計が行えるのである。
実施例15〜18では非フレネル間隔としての等間隔ゾーンを、ゾーン領域(1)の構成の一部とした例について説明したが、等間隔ゾーンを他の領域に設けてもよく、ゾーン領域(1)、(21 )、(22 )、・・・などのいずれか一つのゾーン、あるいは複数の領域に設定してもよい。
[実施例19]
実施例3に基づきゾーン領域(2)の構成の一部を等間隔ゾーンとした設定例を次に示す。実施例3におけるゾーン領域(2)の第6番目のゾーンを二等分して等間隔とされたゾーンを本例ではゾーン領域(2)の第6、7番目のゾーンとした。この際の等間隔ゾーンの間隔はΔr=0.0683mmとなる。ゾーンが二等分された結果、本例ではゾーン領域(2)の構成ゾーン数が一つ増えた仕様となる。かかる等間隔ゾーンが設定された以外は実施例3からの変更はない。本例の回折構造の位相プロファイル168,170,172の詳細を[表32]及び図22(a)〜(c)に示す。また光軸方向の強度分布174を図22(d)に示す。本例は実施例3の第6番目のゾーンが二等分されたものなので、間隔が狭くなったゾーンが二つ配されたプロファイルとなる。本例では、かかる等間隔ゾーンが配された影響から実施例3よりも中間領域のピークの強度が低減し、代わりに近方領域のピーク強度が増大する強度分布を示すものとなる。すなわち、実施例3では中間領域のピーク強度が増強されたものであったが、本例では実施例3のピーク位置を維持しつつ、中間領域のピークの強度を抑え、近方領域の強度を増強させた仕様となる。したがって、実施例3と比較して近方視に重点を置いた多焦点眼用レンズとして有用なものとなるのである。
Figure 0006246337
本例で示すように非フレネル間隔の一例として等間隔ゾーンを設定する場合、かかるゾーンの設定箇所としてゾーン領域(1)以外の領域を対象としてもよいのである。
また、実施例15から19においては非フレネル間隔としてゾーン間隔が等しい等間隔ゾーンを用いた例について説明したが、非フレネル間隔としては等間隔ゾーンに限定されることはない。間隔の異なるゾーンが含まれた構成も本発明では好適に用いることができる。
本発明では、ブレーズの位相定数hはh=0.5で設定したものを主に説明したが、本発明はかかる値に限定されるものではない。一般にブレーズ型の位相プロファイルからなる回折多焦点レンズにおいては位相定数hを変量することによって0次回折光とそれ以外の次数の回折光の分配割合を変量することができる。本発明においても位相定数を変量して各焦点におけるピーク強度を制御することができる。実施例20は位相定数hを変量した場合の一例である。
[実施例20]
位相定数hを変量した例として実施例4のプロファイルを対象としたものを次に示す。実施例4では中間領域のピーク強度が近方領域のそれよりも少し大きくなる特性を示した。本例では実施例4のピーク出現位置を維持したまま近方と中間領域のピーク強度比を変量する目的で位相定数hを変量した。本例の回折構造のゾーン半径は実施例4と同じとし、位相定数を[表33]に示すように変量した。かかる位相定数の変量に伴う回折構造の位相プロファイル176の詳細を[表33]及び図23(a)に示す。本例ではゾーン番号i=3と6番目のゾーンの位相定数をh=0.7とし、ゾーン番号i=4と5番目のゾーンの位相定数をh=0.3と変量したものである。本例の回折構造の強度分布178を図23(b)に示す。かかる位相定数の変量に伴い本例では、中間領域のピーク強度が減少し、近方領域のピーク強度が増加する強度分布を示すことが分かる。なお、各ピークの出現位置は実施例4と同じで位相定数を変量することによっても各ピーク強度の微調整が可能となることが分かるのである。
Figure 0006246337
なお、位相定数の変調の仕方としては、かかる実施例に限定されることなく、位相定数をゾーンごとに一定の規則のもとで変調させた構造、たとえばアポダイゼーションと称される位相変調構造としてもよい。
[付記]
以上、本発明の技術思想について幾つかの代表的な実施例を示しつつ詳述してきたが、本発明は、これらの具体的な記載内容によって限定して解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えうるものであり、また、そのような態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものである。
例えば、回折構造の設置個所に関して、前記各実施例などで示された回折構造は目的とする眼用レンズの前面、または後面のどちらかに設定されてもよい。あるいはレンズの内部に設置されていてもよい。また、例えば特開2001−42112号公報等に記載のように、屈折率が異なる二つの材質からなる積層面に、本発明にかかる回折構造を形成することも可能である。
また、本発明の適用可能な眼用レンズとしては、コンタクトレンズ、眼鏡、眼内レンズなどが、何れも具体的な対象となる。さらには角膜実質内に埋植して視力を矯正する角膜挿入レンズ、あるいは人工角膜などにも適用可能である。またコンタクトレンズにおいては硬質性の酸素透過性ハードコンタクトレンズ、含水または非含性のソフトコンタクトレンズ、さらにはシリコーン成分を含有した酸素透過性の含水または非含水性のソフトコンタクトレンズなどに好適に用いることができる。また、眼内レンズにおいても硬質性の眼内レンズや、折り畳んで眼内に挿入可能な軟質眼内レンズ、有水晶体眼用眼内レンズ(phakic IOL)、追加挿入用眼内レンズ(add−on IOL)など、いずれの眼内レンズにも好適に用いることができる。
16,24,32,40,48,56,66,78,86,94,102,112,120,128,136,146,156,168:位相プロファイル(ゾーン領域(1))、
18,26,34,42,50,80,88,96,114,122,130,170:位相プロファイル(ゾーン領域(2))、
20,28,36,44,52,62,72,82,90,98,108,116,124,132,142,152,162,172,176:位相プロファイル(組み合わせ)、
58,68,104,138,148,158:位相プロファイル(ゾーン領域(21 ))、
60,70,106,140,150,160:位相プロファイル(ゾーン領域(22 ))

Claims (21)

  1. 同心円状の複数のゾーンから構成された回折多焦点眼用レンズにおいて、回折構造の一部または全部が、[数1]に基づき付加屈折力Pのフレネル間隔をもって設定されたゾーン領域(1)と、[数2]に基づき該ゾーン領域(1)とは異なる付加屈折力P’のフレネル間隔をもって設定されたゾーン領域(2)からなり、かつ、ゾーン領域(1)のn番目のゾーン半径とゾーン領域(2)のm番目のゾーン半径は同一であって、ゾーン領域(1)のn番目までのゾーンはゾーン領域(2)の内側に配され、ゾーン領域(2)のm+1番目以降のゾーンは、ゾーン領域(1)の第n番目のゾーンに隣接して外側に配されていることを特徴とする回折多焦点眼用レンズ。
    Figure 0006246337
    Figure 0006246337
  2. 前記ゾーン領域(2)が、互いに異なる付加屈折力P1 ’、P2 ’、・・・をもってレンズ径方向に複数あり、それら複数のゾーン領域(21 )、(22 )、・・・の互いにレンズ径方向で隣り合うもの同士が、互いに同一となるゾーン半径の位置で接続されることにより、該ゾーン半径位置で隣接して内周側と外周側に配されている請求項1に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  3. 前記ゾーン領域(1)が与える前記付加屈折力Pと前記ゾーン領域(2)が与える前記付加屈折力P’が、[数3]の関係にある請求項1又は2に記載の回折多焦点眼用レンズ。
    Figure 0006246337
  4. 前記ゾーン領域(1)の第一番目のゾーン半径r1 と、前記ゾーン領域(2)の第一番目のゾーン半径r1 ’が、[数4]の関係にあることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の回折多焦点眼用レンズ。
    Figure 0006246337
  5. 前記[数4]においてα=0である請求項4に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  6. 前記ゾーン領域(1)の第1番目のゾーン半径r1 と、前記ゾーン領域(2)の第1番目のゾーン半径r1 ’が、それぞれ[数5]、[数6]で表される請求項1〜5の何れか一項に記載の回折多焦点眼用レンズ。
    Figure 0006246337
    Figure 0006246337
  7. 前記回折構造において前記ゾーンの少なくとも二つの径方向で隣接するゾーンが等間隔とされた等間隔ゾーンを含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  8. 前記等間隔ゾーンが、前記ゾーン領域(1)内に配されていることを特徴とする請求項7に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  9. 前記等間隔ゾーンが、前記ゾーン領域(1)の第(n−s)番目のゾーン半径地点から第(n−t)番目のゾーン半径地点の範囲に少なくとも二つ含む請求項8に記載の回折多焦点眼用レンズ。
    ただし、0≦t< s< nであって、tおよびsは整数である。
  10. 前記等間隔ゾーンが、前記ゾーン領域(2)内に配されている請求項7〜9の何れか一項に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  11. 前記等間隔ゾーンが、前記ゾーン領域(2)の第(m−s’)番目のゾーン半径地点から第(m−t’)番目のゾーン半径地点の範囲に少なくとも二つ含む請求項10に記載の回折多焦点眼用レンズ。
    ただし、0≦t’< s’< mであって、t’およびs’は整数である。
  12. 少なくとも3つの焦点を生成することが可能である請求項1〜11の何れか一項に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  13. 前記3つの焦点のうち一つは遠方視用焦点であり、他の一つの焦点が近方視用焦点であり、更に他の一つの焦点が中間視用焦点である請求項12に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  14. 前記遠方視用焦点が回折構造の0次回折光によって与えられ、前記近方視用焦点及び中間視用焦点が+1次回折光で与えられる請求項13に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  15. 前記少なくとも3つの焦点が、直径で1.2mm以上のレンズ開口径において生成する請求項12〜14の何れか一項に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  16. 記ゾーンが、光の位相を変調させうるための位相関数で特徴付けられた回折構造をもって形成されている請求項1〜15の何れか一項に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  17. 前記位相関数が、ブレーズ形状の関数からなる請求項16に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  18. 前記ブレーズ形状の位相関数φ(r)が、[数7]で表される請求項17に記載の回折多焦点眼用レンズ。
    Figure 0006246337
  19. 前記回折構造が、位相に相当する光路長を反映したレリーフ構造によって構成されている請求項1〜18の何れか一項に記載の回折多焦点眼用レンズ。
  20. 同心円状の複数のゾーンから構成された回折多焦点眼用レンズを製造するに際して、
    目的とする付加屈折力Pを与える回折構造(1)を決定する工程と、
    目的とする別の付加屈折力P’を与える回折構造(2)を決定する工程と、
    前記回折構造(1)におけるゾーン半径と前記回折構造(2)におけるゾーン半径とが同じ半径位置rとなる、該回折構造(1)におけるn番目のゾーンと該回折構造(2)におけるm番目のゾーンをそれぞれ求める工程と、
    該半径位置rの内周側に該回折構造(1)におけるn番目以下のゾーン領域を設ける一方、該半径位置rの外周側に該回折構造(2)におけるm+1番目以上のゾーン領域を設ける工程と
    を、含むことを特徴とする回折多焦点眼用レンズの製造方法。
  21. 前記半径位置rを、装用者における瞳孔の最小径以上で且つ最大径より小さい半径範囲内で設定する請求項20に記載の回折多焦点眼用レンズの製造方法。
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