JP6243234B2 - 肩部の上端に環状膨出部を備える合成樹脂製ブロー成形多層容器 - Google Patents

肩部の上端に環状膨出部を備える合成樹脂製ブロー成形多層容器 Download PDF

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Description

本発明は、ブロー成形によって製造される合成樹脂製容器、すなわち、合成樹脂製ブロー成形多層容器に関し、特に、合成樹脂製ダイレクトブロー成形多層容器に関する。より具体的には、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を備え、かつ、肩部が特有の構成の環状膨出部を備える合成樹脂製ブロー成形多層容器に関する。
液状の内容物が充填される合成樹脂製容器としては、パリソンまたはプリフォームを金型内で加圧気体等により容器形状に成形して得られるブロー成形容器が知られ、特に、多層の合成樹脂製ブロー成形容器、すなわち合成樹脂製ブロー成形多層容器が汎用されている。合成樹脂製ブロー成形多層容器の層構成としては、表層(外層及び/または内層)として、ポリエチレンやポリプロピレンまたはオレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂などを使用し、中間層(芯層)に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリ塩化ビニリデン樹脂等のバリア層を備える多層構造のものが広く使用されている。更に、接着層やスクラップを含有する層(回収層)を備える合成樹脂製ブロー成形多層容器が知られている。
特に、マヨネーズ、ケチャップ、ソースなどの粘稠な内容物が充填される合成樹脂製ブロー成形多層容器は、筒状の合成樹脂製のパリソンが溶融押出され、続いて、所定温度の金型内壁面の形状に規制されてブロー成形されるダイレクトブロー成形(「押出ブロー成形」ということもある。)によって製造されることが多い。特許文献1及び特許文献2に開示されるように、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えてなり、ダイレクトブロー成形により作成される合成樹脂製ブロー成形多層容器(合成樹脂製ダイレクトブロー成形多層容器)が知られている。
食品等の内容物が充填される合成樹脂製ブロー成形多層容器(以下、「ブロー成形多層容器」または「多層容器」ということがある。)は、容器成形工程(ブロー成形)、容器の移送工程、ユーザーによる食品等の内容物充填工程、内容物充填後の口部シール工程、キャップ装着工程、更に殺菌工程や容器包装工程などを経て、最終製品が製造される。
内容物充填工程においては、容器成形工程において成形された、例えば、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を有するブロー成形多層容器に食品等の内容物を充填し、必要に応じて加熱、殺菌及び冷却を行い、充填量等の検査を行った後に、口部シール装置まで容器を移送する。口部シール工程において、該多層容器の口部開口部をシール材で密封して密封容器とする。次いで、密封容器を整列させながら、キャップ装着装置(「キャッパー」ということもある。)まで移送して、キャップ装着工程においては、キャップ装着装置が、密封容器の口部にキャップを回転して巻き締める。
容器成形後の工程間の多層容器の移送は、通常、回転する搬送ホイールを用いて、多層容器を受け渡しながら行われる。例えば、多層容器への内容物の充填工程の後は、充填量や充填重量等を検査して、規格範囲を満たしていない多層容器を工程外に排出するので、複数の搬送ホイールを間欠回転しながら経由させることによって、多層容器の不連続な並びを、連続な並び、すなわち、等間隔の並びに整え、規格範囲を満たす充填済みの多層容器(充填容器)を整列させて、受渡ホイールを介して、口部シール工程に充填容器を引き渡す。
多層容器の受け渡しは、搬送ホイール(受渡ホイール、回転ステーション等ともいう。)の上面に、連続的に、すなわち、等間隔に並んだ多層容器(充填容器等)を把持手段で把持しながら、回転する搬送ホイール間で把持手段による把持を切り替えることによって行う。これにより、多層容器(充填容器等)を正立状態、または所定の姿勢状態に維持しながら、次の工程に多層容器を移送する。容器の正立状態等の維持を助けるために、各搬送ホイールには、案内板や案内溝を備えることができる。
口部シール工程では、充填容器は、把持手段で把持されながら、搬送ホイール上を回転移動する。充填容器がシール装置の直下に達すると、充填容器の上部を把持して、該充填容器を正立状態に(すなわち、容器の底部を地面側として、水平な地面の上方に向く垂直方向を容器軸とする状態に)固定したまま、通常、下面に低密度ポリエチレン等の熱接着剤層を備える蓋材(シール材)を供給して、充填容器の開口部に載置し、上方から加熱加圧することによって、充填容器の開口部に蓋材を溶着させて密封容器を形成する。アルミニウム等の金属製薄膜を備える蓋材(シール材)を使用し、上方から加圧しつつ高周波誘導加熱することによって、充填容器の開口部に蓋材を溶着させることもできる。
近年、生産性向上のために、合成樹脂製容器の製造装置の高速化が進んでいる。回転の角速度が大きくなると、遠心力が大きくなるほか、回転に伴う機械的振動を受けたり、隣接する搬送ホイール間で容器(充填容器等)が受ける慣性力に差が生じたりすることがある。この結果、容器(充填容器等)が種々の方向に揺動したり、傾いたりして、例えば、シール装置による口部シールが正確にされないことがある。場合によっては、倒れたりすることもある。そのため容器(充填容器等)の把持は重要性を増している。
容器成形後の容器(充填容器等)の把持手段としては、容器の胴部や底部を把持して容器を支持するものが知られているが、容器の大きさや胴部等の形状に応じて把持手段の更新や位置の調整等が必要となるので、手間がかかりコスト高となる。そこで、容器(充填容器等)の上部(口部、肩部等)を把持することにより容器を支持する把持手段が種々知られている。特許文献3には、口部に形成したねじ山の下方に形成されたフランジの下面側に挿入され左右方向から容器の口部を挟んで容器の上部を支持する支持部材、並びに対応する容器の外形形状が開示されている。特許文献4には、口部に形成したねじ部(雄螺条域)の下方に設けられた上方ネックリングと下方ネックリングのそれぞれの下方の空間に挿入され容器の上部を挟んで容器を支持するグリッパによって、容器の受け渡しと受け取りを行う容器の搬送装置、並びに対応する容器の外形形状が開示されている。また、特許文献5には、容器口部を保持するネックホルダーに加えて容器口部とグリッパとの位置決めを行うネックサポートを設けた容器グリッパ、並びに対応する容器の外形形状が開示されている。さらに、特許文献6には、注出口を形成する円筒部の外周に、キャップ巻き締め用のカブラ、突起、及びネックリングを順次設けた容器が開示されている。
容器の口部のねじ部(雄螺条域)の下方に形成されるフランジ、カブラあるいはネックリングは、その下方の空間に、容器の上部を支持する把持手段、すなわちグリッパ(具体的には、フォーク状のグリッパであるグリッパフォーク等)を挿入して容器の支持を行うため、通常、中実として強度を持たせており、パリソンの形成は、主として射出成形によっている。射出成形によってフランジを形成する場合、フランジ部に対応する金型部分は、容器の内壁面を容器軸方向に平行とするキャビティ面とともに、フランジの形状に沿って外壁方向に突出するキャビティ面を備えることで、射出された溶融樹脂が金型内キャビティを満たすことによって、形成されるフランジは、断面が樹脂で満たされた中実部として形成される。グリッパによる容器の支持においては、フランジ等の所定箇所(以下、「グリッパ受け部」ということがある。)に挿入し、次いで離脱する操作が必要とされる。したがって、グリッパの上面、下面、更には先端部が、容器のグリッパ受け部に当接したり、摺動したりすることがある。グリッパとしては、容器の上部を左右から挟むフォークが、平行移動するものや、一つの支点の回りを回動するものなどがあるが、容器のグリッパ受け部との当接や摺動が生じることは共通している。そして、合成樹脂製容器製造装置の高速化が進むもとで、特に内容物を充填した充填容器には、大きな遠心力が作用する結果、グリッパで支持される容器(充填容器)の正立状態や所定の姿勢状態を維持することが困難となる場合もあり、口部シールが正確にされなかったり、容器の転倒が発生したりするおそれが一層高まっている。
このため、合成樹脂製ブロー成形多層容器の上部の形状、特にグリッパ受け部近傍の形状を制御することによって、グリッパによる容器の把持を安定かつ確実なものとする試みがされている。具体的には、口部から胴部に至る部分の外面形状を厳密に制御することが考えられる。しかしながら、例えば、合成樹脂製ダイレクトブロー成形多層容器は、筒状の合成樹脂製のパリソンが溶融押出され、続いて、所定温度の金型内で容器の形状にブロー成形されることから、パリソンの溶融押出条件やブロー成形条件を調整して外面形状を厳密に制御することは、過大な試行錯誤を要するものと考えられている。
なお、容器成形後の諸工程間の搬送や充填容器製品の搬送において、合成樹脂製ブロー成形多層容器の滑り性を改善するために、従来、原料樹脂に、滑剤(スリップ剤)を添加することも行われている。滑剤は、通常、原料樹脂に、マスターバッチ方式で添加されたり、練り込まれたりする。合成樹脂製容器が多層の容器である場合は、表面層(内表面層または外表面層)に滑剤を添加することが多い。滑剤としては、有機滑剤、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミドまたはステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド(ベヘニン酸アミド)等の飽和脂肪酸アミドや、シリカ等の無機滑剤が使用される。これらの滑剤は、2種以上を混合して使用することも行われている。
したがって、合成樹脂製ブロー成形容器の製造が高速化するもと、容器成形後、内容物充填後の口部シール工程を始めとする諸工程間の搬送において、グリッパ挿入による把持を安定かつ確実に実施することができ、容器(充填容器)の正立状態や所定の姿勢状態を維持することができる合成樹脂製ブロー成形多層容器、特に合成樹脂製ダイレクトブロー成形多層容器が求められていた。
特開昭63−237924号公報 特開平7−32554号公報 特開平11−236123号公報 特開2008−247412号公報 特開2013−6647号公報 特開2007−99381号公報
本発明の課題は、合成樹脂製ブロー成形容器の製造が高速化するもと、容器成形後の諸工程間の搬送の際、グリッパ挿入による把持を安定かつ確実に実施し、容器の所定の姿勢状態を維持できるブロー成形多層容器、特にダイレクトブロー成形多層容器を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、外周面に雄螺条域を有する口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を、容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器において、多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるとともに、環状凹部に連接する肩部の上端に、内面形状及び厚みが制御された特有の構造を有する環状膨出部を備えるものとすることにより、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であって、
多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものであり、
口部は、外周面に雄螺条域を有し、
環状凹部は、雄螺条域より縮径し、次いで拡径して肩部に連接し、
肩部は、上端に環状膨出部を備え、かつ、
環状膨出部は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有する
ことを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器が提供される。
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(5)の合成樹脂製ブロー成形多層容器が提供される。
(1)ダイレクトブロー成形により形成される前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
(2)バリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体から形成される前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
(3)回収層を備える前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
(4)内表面層とバリア層との間、または、バリア層と外表面層との間の一方または両方に接着層を備える前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
(5)環状膨出部のエチレン系樹脂を含有する内表面層が、有機滑剤である不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸アミドまたはそれらの混合物を含有するエチレン系樹脂の組成物から形成される前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
本発明によれば、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であって、多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものであり、口部は、外周面に雄螺条域を有し、環状凹部は、雄螺条域より縮径し、次いで拡径して肩部に連接し、肩部は、上端に環状膨出部を備え、かつ、環状膨出部は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有することを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器であることによって、合成樹脂製ブロー成形容器の製造が高速化するもと、容器成形後の諸工程間の搬送の際、グリッパ挿入による把持を安定かつ確実に実施し、容器の所定の姿勢状態を維持できるブロー成形多層容器、特にダイレクトブロー成形多層容器が提供されるという効果を奏する。
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の口部〜胴部の略正面図である。 本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の肩部の上端に備えられる環状膨出部近傍の略断面図である。 本発明の環状膨出部を有しない合成樹脂製ブロー成形多層容器の口部、環状凹部及び肩部の略断面図である。
I.合成樹脂製ブロー成形多層容器の層構成
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものである。なお、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備える合成樹脂製ブロー成形多層容器とは、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層の3つの層を、容器内側からこの順に備える容器である限り、例えば、後述する回収層や接着層等の1以上の層を、前記の3つの層の層間(1つの層間でも、複数の層間でもよい。)に備える多層容器、更には前記の3つの層のいずれか、例えば、バリア層を複数備える多層容器でもよいことを意味する。
1.エチレン系樹脂を含有する内表面層
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、エチレン系樹脂を含有する内表面層を備える多層容器である。内表面層に含有されるエチレン系樹脂としては、従来、合成樹脂製ブロー成形多層容器の内表面層を形成するために使用されているエチレン系樹脂を使用することができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)等の狭義のポリオレフィン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等のエチレン・α−オレフィン共重合体;プロピレン・エチレンランダム共重合体等のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体;変性オレフィン系樹脂(例えば、オレフィン類の単独または共重合体とマレイン酸やフマル酸等の不飽和カルボン酸や酸無水物やエステル若しくは金属塩等との反応物など);アイオノマー(IO);エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・メタクリル酸・不飽和脂肪族カルボン酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のアクリル系樹脂;などのポリオレフィンが挙げられる。これらの樹脂は、単独で、または他の樹脂とのブレンド物として使用することができる。
好ましいエチレン系樹脂としては、(i)低密度ポリエチレン、(ii)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、(iii)高密度ポリエチレン、(i)〜(iii)の少なくとも2種のブレンド物、または、(i)〜(iii)の少なくとも1種と他のエチレン系樹脂とのブレンド物などを採用することができる。(i)〜(iii)のエチレン系樹脂について更に説明する。
(1)(i)低密度ポリエチレン
(i)低密度ポリエチレン(LDPE)は、密度が910〜930kg/m3のポリエチレンであり、好ましくは912〜928kg/m3である。低密度ポリエチレンは、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.3〜5g/10分、更に好ましくは0.5〜2g/10分の範囲内のものを使用することができる。また、(i)低密度ポリエチレンは、分子量分布の指標である多分散度(Mw/Mn)(以下、単に「多分散度」ということがある。)が、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.7以上の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。該多分散度の上限は、3.0程度である。なお、ポリエチレンの密度及びMFRは、JIS K6922−2に従って測定し、多分散度は、JIS K7252に従って測定したものである(以下、測定方法は同様である。)。
(i)低密度ポリエチレンとしては、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた高圧法低密度ポリエチレンのほか、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などエチレンと他のオレフィン単量体との共重合体も使用することができる。(i)低密度ポリエチレンとしては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、住友化学株式会社製のスミカセン(登録商標)、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLD(登録商標)、三井・デュポンポリケミカル株式会社製の低密度ポリエチレンなどがある。
(2)(ii)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体
(ii)チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(以下、「チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体」ということがある。)は、α−オレフィンの立体規則性重合用触媒として周知のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である。
(ii)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、共重合体中におけるプロピレンから得られるモノマー単位の含有率(以下、「プロピレン含有率」ということがある。)が、100〜94質量%(ただし100質量%を除く。)、好ましくは99.7〜95質量%、より好ましくは99.5〜95.5質量%であり、共重合体中のα−オレフィンから得られるモノマー単位の含有率(以下、「α−オレフィン含有率」ということがある。)が、0〜6質量%(ただし0質量%を除く)、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4.5質量%の割合であるものである。プロピレンと共重合されるコモノマーであるα−オレフィンとしては、エチレン及び/または炭素数4〜20のα−オレフィンなどが挙げられ、具体的には、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。α−オレフィンは、2種以上を併用することもできる。α−オレフィン含有率が上記範囲内にあると、合成樹脂製ブロー成形多層容器が、実用上良好な剛性を保つことができる。特に好ましい共重合体は、エチレン含有率0.3〜5質量%、特に0.5〜4.5質量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体である。α−オレフィン含有率が多すぎると、結晶融点の温度が低くなり、所望の強度が得られなかったり、重合体の流動性が低下したりすることがある。なお、プロピレン含有率及びα−オレフィン含有率は、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定できる。
(ii)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体は、密度が、通常880〜930kg/m3、好ましくは885〜925kg/m3の範囲であり、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が、通常0.5〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分の範囲である。MFRが上記範囲を上回ると合成樹脂製ブロー成形多層容器の衝撃強度が不足する傾向があり、MFRが上記範囲を下回ると成形性が不良となることがある。また、多分散度は、通常1.2〜5、好ましくは1.5〜4.5、より好ましくは2〜4の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。
前記の(ii)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体としては、合成品を使用することもできるが、市販品を使用してもよい。市販品としては、日本ポリエチレン株式会社製の商品名ノーブレン(登録商標)などがある。
(3)(iii)高密度ポリエチレン
(iii)高密度ポリエチレンは、一般に、密度が942kg/m3以上のポリエチレンである。通常は、密度が980kg/m3以下のポリエチレンであり、好ましくは、945〜970kg/m3、より好ましくは948〜965kg/m3である。高密度ポリエチレンは、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.3〜5g/10分、更に好ましくは0.5〜2g/10分の範囲内のものを使用することができる。また、多分散度が、好ましくは2.5以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上の範囲にあるものが成形性の改善の点で有効である。該多分散度の上限は、12程度である。
(iii)高密度ポリエチレンは、合成品を使用することができるが、市販品の中から選択して使用することもできる。市販品としては、いわゆる、チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた低圧法高密度ポリエチレンである、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックHD(登録商標)、株式会社プライムポリマー製のハイゼックス(登録商標)などがある。
先に述べたように、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の内表面層に含有されるエチレン系樹脂として好ましい、(i)低密度ポリエチレン、(ii)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体または(iii)高密度ポリエチレンは、それぞれ単独で使用することができ、また、(i)〜(iii)の少なくとも2種のブレンド物を使用することもできる。ブレンド物を使用する場合は、(i)〜(iii)のいずれかを、通常99.9〜0.1質量%、好ましくは95〜5質量%、より好ましくは90〜10質量%の範囲となるようにして(合計量は100質量%である。)、目的に応じて調製すればよい。
(4)他のエチレン系樹脂
さらに、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の内表面層に含有されるエチレン系樹脂として、(i)〜(iii)の少なくとも1種と他のエチレン系樹脂とのブレンド物を使用することもできる。他のエチレン系樹脂としては、例えば、メタロセン触媒を用いて得られたポリプロピレンからなる重合体のブロックとエチレン・プロピレン共重合体からなる重合体のブロックとからなるブロック共重合体(以下、単に「メタロセン触媒ブロック共重合体」ということがある。)や、メタロセン触媒を用いて得られたエチレン系ポリオレフィン(以下、単に「メタロセン触媒エチレン系ポリオレフィン」ということがある。)などが好ましく挙げられる。また、他のエチレン系樹脂として、いわゆる高密度または中密度ポリエチレンを更に併用してもよい。これら他のエチレン系樹脂の含有量は、(i)〜(iii)の少なくとも1種と他のエチレン系樹脂との合計量を100質量%としたときに、通常0.5〜40質量%、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは2〜30質量%の範囲で、目的に応じて調製すればよい。特に好ましい組み合わせとしては、(ii)チーグラー触媒プロピレンランダム共重合体とメタロセン触媒ブロック共重合体との組成物や、(i)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒エチレン系ポリオレフィン及び(iii)高密度ポリエチレンのブレンド物が挙げられる。
(5)添加剤
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の内表面層に含有されるエチレン系樹脂には、成形加工性を改善したり、合成樹脂製ブロー成形多層容器の諸特性を改良するために、必要に応じて一般に使用される各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、有機物質(重合体でもよい。)または無機物質のいずれも使用することができ、滑剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、帯電防止剤、防曇剤、フィラー(充填剤)、顔料などが挙げられ、用途に応じて、最適の組み合わせが選択される。これらの添加剤を含有する場合の含有量は、添加剤の種類や目的によって最適の量を定めればよい。
〔滑剤〕
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、内部に充填されるマヨネーズ、ケチャップ、ソースなどの粘稠な内容物との滑り性を改良するために、内表面層が、滑剤を含有することが好ましい。これにより容器の内表面の滑り性が向上するので、内容物の充填がスムーズに行われ、消費者の使用時に内容物の液切れ性が優れるなどの効果が得られることがある。滑剤としては、有機滑剤と無機滑剤のいずれを使用することもできるが、有機滑剤が好ましく、有機滑剤である不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸アミドまたはそれらの混合物がより好ましい。これらの滑剤は、2種以上を混合して使用してもよく、例えば、不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドを併用してもよい。不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、6−テトラデセン酸アミド、オレイン酸アミド、8−オクタデセン酸アミド、エルカ酸アミド、アラキドン酸アミド等が挙げられ、好ましくはオレイン酸アミドまたはエルカ酸アミドである。飽和脂肪酸アミドとしては、酪酸アミド、吉草酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミド(ベヘニン酸アミド)等が挙げられ、好ましくはステアリン酸アミドまたはベヘン酸アミドである。エチレン系樹脂を含有する内表面層が滑剤、より好ましくは有機滑剤を含有する場合の、その含有量は、エチレン系樹脂を含む樹脂成分に対して通常100〜5000ppm、好ましくは150〜4500ppm、より好ましくは200〜4000ppmである。
2.バリア層
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、バリア層を備えることにより、酸素バリア性、炭酸ガスバリア性等のガスバリア性や、水または水蒸気に対するバリア性を有する合成樹脂製ブロー成形多層容器であり、多層容器内に充填される内容物の保存性を高めることができる。
バリア層を形成する樹脂としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体またはエチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(以下、これらを総称して「EVOH」ということがある。)、ポリグリコール酸、グリコール酸・乳酸共重体、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から形成される芳香族ポリアミド(MXD6)や、ポリ塩化ビニリデンなどを使用することができ、好ましくはEVOHである。本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、通常バリア層を1層備えるものでよいが、バリア層を2層以上備えるものとすることもできる。
バリア層として好ましく使用されるEVOHとしては、エチレン含有率が20〜60モル%、好ましくは25〜55モル%、より好ましくは30〜50モル%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上、特に好ましくは99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。このEVOHは、フィルムを形成し得るに足りる分子量を有するものであり、一般に、MFR(温度190℃、荷重21.18N)が6g/10分以下、好ましくは5g/10分以下、より好ましくは4g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210に準拠して測定するものである。
3.エチレン系樹脂を含有する外表面層
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、エチレン系樹脂を含有する内表面層及びバリア層に加えて、エチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備える多層容器である。
外表面層に含有されるエチレン系樹脂としては、内表面層に含有されるエチレン系樹脂と同様の樹脂を使用することができる。また、外表面層に含有されるエチレン系樹脂には、内表面層と同様に、成形加工性を改善したり、合成樹脂製ブロー成形多層容器の諸特性を改良するために、必要に応じて一般に使用される滑剤その他の各種添加剤を含有させることができる。これらの添加剤を含有する場合の含有量は、添加剤の種類や目的によって最適の量を定めればよい。特に、外表面層が、不飽和脂肪酸アミド等の滑剤を含有すると、ブロー成形多層容器の製造中、搬送中または内容物の充填中に、隣接する容器同士または装置類との接触等によって、不良品の発生、製造ラインの停止、装置の故障等が生じることを防止することができたり、多層容器を把持するために挿入されるグリッパを、安定かつ確実に保持することができたりする効果があり、また、表面光沢も優れたものとなることがある。
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器が備えるエチレン系樹脂を含有する内表面層とエチレン系樹脂を含有する外表面層とは、異なる組成のものでもよいし、同一の組成のものでもよい。したがって、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、内表面層及び外表面層、すなわち表層を同一の樹脂組成物から形成することができる。
4.回収層
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるとともに、更に回収層を備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であることが好ましい。回収層を備えることにより、合成樹脂製ブロー成形多層容器の強度を高め、また、資源のリサイクル性を高めることができる。回収層は、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器それ自体から回収される材料(バリや製品容器の不要部分、製品規格外の容器の回収品など)、または、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器を製造する工程において回収される材料を、主成分として含有する層である。特に、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、筒状の溶融パリソンにブローエアーを導入して容器形状のブロー成形品を形成した後に多層容器の頭部(以下、「袋部」ということがある。)を切除する必要があるが、該切除された袋部を、破砕機にて粉末化した回収樹脂を原料として、回収層とすることができる。また、容器形状のブロー成形品の前記の袋部以外の部分を切除して回収した樹脂や、ブロー成形前のパリソン、更には、合成樹脂製ブロー成形多層容器の各層を形成する材料や原料などを、主成分として含有するものでもよい。
回収層には、更に本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の各層を形成するための原材料、例えば、種々の樹脂原料や配合剤、接着剤等を含有させてもよい。
5.接着層
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、多層容器を構成する各層の層間剥離強度を高めるために、更に接着層を各層の間に介在させることができる。合成樹脂製ブロー成形多層容器においては、耐熱性や成形加工性の観点から、接着層を介在させなくてもよい場合もあるが、機械的特性、耐衝撃性や耐層間剥離性などが要望される用途には、接着層を介在させることが好ましい。具体的には、内表面層とバリア層との間、または、バリア層と外表面層との間の一方または両方に接着層を備える合成樹脂製ブロー成形多層容器が好ましい。さらに、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器が、回収層を備える場合、または、バリア層を2層以上備えるものである場合は、これらの層のいずれかに隣接するように接着層を備えるものとしてもよい。
接着層に含有される接着性樹脂としては、押出加工が可能で、かつ、各層に対して良好な接着性を有する樹脂であることが好ましく、例えば、エチレン・極性コモノマー共重合体、酸変性ポリオレフィン、グリシジル基含有エチレンコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド・アイオノマー、ポリアクリルイミドなどを挙げることができ、エチレン・極性コモノマー共重合体または酸変性ポリオレフィンが好ましい。エチレン・極性コモノマー共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・炭素数1〜4のアルキルアクリレート共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸・不飽和カルボン酸共重合体などが挙げられる。酸変性ポリオレフィンとしては、オレフィンの単独若しくは共重合体と、マレイン酸若しくはフマル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸無水物、そのエステル若しくは金属塩との反応物が挙げられ、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。接着性樹脂の融解温度は、適宜選択することができるが、好ましくは70〜130℃であり、より好ましくは80〜120℃である。接着性樹脂の密度は、好ましくは880〜960kg/mであり、より好ましくは、900〜940kg/mである。また、接着性樹脂のMFR(温度190℃、荷重21.18N)は、0.5〜20g/10分であることが好ましく、より好ましくは、1.0〜15g/10分である。なお、MFRは、JIS K7210に準拠して測定するものである。接着層に含有される接着性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、また2種以上を併用してもよい。また、接着層に含有される接着性樹脂には、所望により、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、染料などの各種添加剤を添加して含有させてもよい。接着層の厚みは、特に限定されないが、通常0.5〜10μmであり、多くの場合1〜5μmである。
6.合成樹脂製ブロー成形多層容器の層構成
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備える多層容器である。好ましくは、更に回収層を備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であり、また更に接着層を備える合成樹脂製ブロー成形多層容器である。具体的な層構成としては、例えば、内表面層/回収層/バリア層/外表面層の層構成、内表面層/接着層/バリア層/外表面層の層構成、内表面層/バリア層/接着層/外表面層の層構成、内表面層/接着層/バリア層/接着層/外表面層の層構成、内表面層/回収層/接着層/バリア層/接着層/外表面層の層構成、更には、内表面層/回収層/バリア層/接着層/バリア層/外表面層の層構成を有する合成樹脂製ブロー成形多層容器などが挙げられる。したがって、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器のより具体的な層構成を例示すると、
内表面層/バリア層/外表面層、
内表面層/回収層/バリア層/外表面層、
内表面層/接着層/バリア層/外表面層、
内表面層/バリア層/接着層/外表面層、
内表面層/接着層/バリア層/接着層/外表面層、
内表面層/回収層/接着層/バリア層/接着層/外表面層、
内表面層/回収層/バリア層/接着層/バリア層/外表面層、
内表面層/回収層/接着層/バリア層/接着層/回収層/外表面層、
内表面層/接着層/バリア層/バリア層/接着層/外表面層、
内表面層/接着層/バリア層/接着層/バリア層/接着層/外表面層、
内表面層/回収層/接着層/バリア層/バリア層/接着層/外表面層、
内表面層/回収層/接着層/バリア層/接着層/バリア層/接着層/外表面層、
内表面層/回収層/接着層/バリア層/バリア層/接着層/回収層/外表面層、及び、
内表面層/回収層/接着層/バリア層/接着層/バリア層/接着層/回収層/外表面層などの層構成が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の厚みは、特に限定されないが、胴部の全層厚みは、通常20μm〜5mm、好ましくは100μm〜3mm、より好ましくは200μm〜1mmの範囲内である。本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、容器全体の厚みが、均一でもよいが、部分により厚みを変化させてもよい。一般に、容器の底部は、厚みを大きくすることが好ましい。
全層厚みに対する表層の厚み(内表面層及び外表面層の厚みの合計を意味する。)は、全層厚みに対して通常60〜99%(厚み比率、以下同様である。)であり、好ましくは65〜98%、より好ましくは70〜97%である。バリア層の厚みは、通常1〜40%であり、好ましくは2〜8%、より好ましくは3〜6%(厚み比率)である。回収層を備える場合、その厚みは、通常5〜30%、好ましくは10〜25%、より好ましくは15〜25%である。接着層を備える場合は、接着層の合計厚みで、通常0.005〜2%、好ましくは0.007〜1.5%、より好ましくは0.008〜1.2%である。
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器における表層(内表面層及び外表面層)のうち外表面層の表層全体に占める比率は、特に限定されないが、通常10〜80%、好ましくは15〜75%、より好ましくは20〜70%、特に好ましくは25〜65%である。
II.口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であって、多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものであり、口部は、外周面に雄螺条域を有し、環状凹部は、雄螺条域より縮径し、次いで拡径して肩部に連接し、肩部は、上端に環状膨出部を備え、かつ、環状膨出部は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有することを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器である。すなわち、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える多層容器であり、多層容器を正立姿勢とするときには、上方から下方に向かって、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を順次備えることによって、底部が接地面に当接し、正立することができる多層容器である。本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、後に詳述するように、環状凹部に連接する肩部が、その上端に特有の内面形状及び厚みを有する環状膨出部を備える点に特徴を有する。本発明のブロー成形多層容器の容積は、特に限定されないが、好ましくは100〜3000cm、より好ましくは200〜2000cm、更に好ましくは300〜1000cmの範囲である。
以下、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器について、図面を参照しつつ更に説明する。なお、図面は、本発明の容器の態様を理解することに資するための略断面図である。
1.口部、及び雄螺条域
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、図1に示すように、口部1を備え、さらに、口部1は、外周面に雄螺条121が膨出する雄螺条域12を有するものである。具体的には、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の口部1は、容器軸(図示しない。)に沿う上端、すなわち口部1の最上端に開口部11を有し、該開口部11の下方にある雄螺条域12に、その周面から外方に雄螺条121が膨出している。雄螺条121は、合成樹脂製ブロー成形多層容器に内容物を充填し、開口部11をシールした後に、内周面に雌螺条を有するキャップ(蓋)を取り付けるために設けられるものである。
合成樹脂製ブロー成形多層容器の口部1に設けられる雄螺条121としては、1条ねじ構造のものでもよいが、キャップ(蓋)の脱着に要する回動操作量を少なくするとともに、合成樹脂製ブロー成形多層容器の口部を成形するのに必要な合成樹脂材料の量を少なくするために、多条ねじ構造、例えば2条ねじ構造を採用してもよい。
雄螺条域12の容器軸方向の長さ、すなわち上下方向の長さは、口部1の容器軸方向の長さに対して、通常50〜90%、好ましくは55〜80%、より好ましくは60〜75%の範囲である。雄螺条域12は、キャップ(蓋)を円滑に装着することができるようにするため設けられるものであり、必要に応じて開口部11から下方に設けられる蓋装着誘導域を介して設けられ、口部1の略下端までに亘って形成されている。蓋装着誘導域を設ける場合は、口部1の容器軸方向の長さに対して、通常1〜50%、好ましくは3〜45%、より好ましくは5〜40%の範囲の長さで設けることができる。なお、合成樹脂製ブロー成形多層容器においては、該多層容器の口部の下端部に、内表面が平滑であってかつ外方に凸である、サポートリングとして機能するネックリングが設けられる場合があり、射出成形によりパリソンが形成される合成樹脂製ブロー成形多層容器においては一般的であるが、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器、特にダイレクトブロー成形より形成される多層容器においては、ネックリングを設ける必要はない。
2.環状凹部
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、口部1の雄螺条域12に連接して雄螺条域12より縮径し、次いで拡径して肩部3に連接する環状凹部2を備えるものである。環状凹部2は、口部1の雄螺条域12に連接することから、その断面形状が略円形状の外径及び内径を有する環状であり、また、その外径が雄螺条域12の外径より小さいことから凹部が形成されているので、環状凹部という。環状凹部2の外径は、口部1の外径に対して、通常75〜100%、好ましくは80〜100%、より好ましくは85〜100%の範囲であり、環状凹部2の容器軸方向の長さは、口部1の雄螺条域12の容器軸方向の長さに対して、通常15〜50%、好ましくは17〜40%、より好ましくは20〜35%の範囲である。
環状凹部2は、雄螺条域12に縮径して連接することによって、口部1の雄螺条域12にキャップを嵌めて閉蓋するときに、キャップのスカート部内側の雌螺条が容器の口部1の雄螺条域12から外れ、更にキャップ天板裏が容器の口部1の上端に当接するまで自由回動する際のスカート部末端の搖動を吸収する空間を形成することができるので、キャッパーによる閉蓋時の閉めトルクの急増を避けることができる。なお、キャップの斜め掛かりやキャップ閉蓋時の途中止まりが生じると、密封不良となり、容器内に外気が侵入して充填した内容物の腐敗や変色の原因となることがある。また、環状凹部2は、拡径して肩部3に連接することによって、キャップ閉蓋時に、口部1の上端がキャップ天板裏に当接して閉蓋完了する際に、キャップのスカート部末端を容器の肩部3の上面に当接して位置規制を行うことができるので、口部1の上端の押圧が所定圧力以上になるようなことがなく、口部1の上端の変形が抑制される。
3.肩部、及び環状膨出部
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、環状凹部2に連接する肩部3が、その上端に環状膨出部31を備えるものである。肩部3の上端に備えられる環状膨出部31は、その断面形状が略円形状の外径及び内径を有する環状であり、その外径が口部1の外径より大きいことにより、口部1と比較して膨出部を形成することから、環状膨出部という。本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、肩部3に特有の内面形状及び厚みを有する環状膨出部31を備えることにより、該環状膨出部31の下端面にグリッパ(図示しない。)を挿入して多層容器を把持し、多層容器の姿勢を正立状態に保持することができ、多層容器の正立状態のまま容器の搬送を行うことができる。また、環状膨出部31の外径は略円形状であるので、グリッパの挿入を多層容器のいずれの方向からでも容易に行うことができる。なお、肩部3とは、環状凹部2の下端から胴部4まで、同径または拡径しながら連接する部位をいう。また、口部1及び環状凹部2の断面形状は通常略円形であるので、環状凹部2の下端に連接する肩部3とは、その断面形状が、略円形の形状から、後述する胴部4及び底部の所定の形状に容器軸方向に沿って遷移する領域をいう。肩部3は、その上端に備えられる環状膨出部31の下端面に挿入されるグリッパと常時または頻繁に接触または摺接することがあるので、少なくともその外表面が滑り性に優れることが好ましい。
〔環状膨出部〕
環状膨出部31の径及び容器軸方向の長さは、環状凹部2及び肩部3の外径、グリッパの大きさ及び形状などを勘案して定めることができる。環状膨出部31の径は、口部1の径に対して、通常110〜600%、好ましくは130〜400%、より好ましくは150〜300%の範囲である。環状膨出部31の容器軸方向の長さは、口部1の雄螺条域12の容器軸方向の長さに対して、通常10〜50%、好ましくは12〜40%、より好ましくは15〜30%の範囲である。環状膨出部31の径及び容器軸方向の長さを上記の範囲内とすることにより、容器の成形後、口部シール工程その他の生産工程における合成樹脂製ブロー成形多層容器の搬送のために該環状膨出部31に挿入され、環状膨出部31の下面と当接して合成樹脂製ブロー成形多層容器を支えるグリッパを安定かつ確実に保持することができ、グリッパの挿入による容器の把持を安定かつ確実とすることができる。環状膨出部31の径が小さすぎたり、容器軸方向の長さが短すぎると、グリッパの挿入が不十分または不可能となり、容器を安定かつ確実に把持することができないおそれがある。また、環状膨出部31の径が大きすぎたり、容器軸方向の長さが長すぎたりすると、容器を安定かつ確実に把持することができなかったり、容器の受け渡しが円滑でなくなったりするおそれがある。
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、肩部3がその上端に環状膨出部31を備えるとともに、環状膨出部31が、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部1の厚みに対し20〜55%の厚みを有することを特徴とする。すなわち、図2に示すように、環状膨出部31は、その外径が口部1の外径より大きいことから、その断面において外表面層の容器外側の表面が容器外方に向いて容器軸方向に沿い屈曲する箇所(すなわち、大径である箇所)を有することは明らかであるが、さらに、環状膨出部31は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部1の厚みに対し20〜55%の厚みを有する点に特徴を有する。環状膨出部31の厚みとは、該環状膨出部31の先端部近傍の厚みをいう。環状膨出部31の厚みは、口部1の厚みに対し、好ましくは22〜52%%、より好ましくは25〜50%である。ここで、口部1の厚みとは、口部1の雄螺条域12にあって、雄螺条121が存在しない部分の雄螺条域12にある口部1の厚みをいう。なお、口部1は、ブロー圧力による延伸及び薄肉化の影響がほとんどないので、口部1の厚みは、ブロー成形前のパリソンの厚みとほぼ同等であり、また、環状凹部2の厚みともほぼ同等である。
内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成される環状膨出部31は、該環状膨出部31が、ブロー成形によるパリソンの延伸とそれに伴う薄肉化によって形成されるものであることに由来する。これに対して、例えば射出成形によってパリソンに形成されたフランジは、内表面層の容器内側の表面が略平坦曲面であって、通常、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成される環状膨出部31に該当するものではない。
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、肩部3の上端に前記の環状膨出部31を備えることにより、ブロー成形容器の製造が高速化するもとでも、容器成形後の諸工程において、例えば内容物を充填した合成樹脂製ブロー成形多層容器のグリッパ挿入による把持を安定かつ確実に実施することができ、また、容器成形後の諸工程間の搬送において、容器の所定の姿勢状態を維持することができるという、従来予期されなかった顕著な効果を奏する。その理由は明らかではないが、肩部3の上端に備えられる環状膨出部31が特有の内面形状と厚みを有するものであることによって、該環状膨出部31が強いバネ機能を有することとなる結果、容器成形後の容器の把持や搬送において形状復元力が増大するものと推察される。
これに対して、通常、ブロー成形によって容器の外方に延出する環状膨出部を形成しようとする場合は、該環状膨出部が、内表面層の容器内側の表面が容器外方に向いて容器軸方向に沿って屈曲してなるものの、環状膨出部に対応する位置にあるパリソンが該環状膨出部の形状となるようにブロー圧力によって伸長させられる結果、環状膨出部は、その根元から環状膨出部の頂点に至る領域が薄肉化され、口部の厚みに対し20%未満の厚みとなることが通例である。したがって、形成される環状膨出部は、図2に示した本発明の多層容器における環状膨出部31には該当しない。口部の厚みに対して20%未満の厚みを有する薄い環状膨出部(先に述べたように、通常ブロー成形によって形成される形状である。)を備える多層容器においては、環状膨出部の強度が不足するとともに、該環状膨出部に強いバネ機能が期待できない結果、容器成形後の容器の把持や搬送において形状の復元力が不足する。他方、環状膨出部が、口部の厚みに対し55%超過の厚みである場合には、環状膨出部の成形不良(環状膨出部の下面が完全な平面でなかったり、環状膨出部の外径が金型形状に忠実なものとなっていなかったりする。)の結果、強いバネ機能の発揮が期待できず、容器成形後の容器の把持や搬送において形状の復元力が不足したり、環状膨出部の重量が増大するとともに、グリッパによる把持が確実でなく、把持中に容器が落下してしまうおそれがある。さらに、図3に示すように、環状膨出部が、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものでなく、略平坦に垂下する、合成樹脂が充満される厚肉部である形状(すなわち、内表面が平滑であってかつ外方に凸である形状。通常射出成形によって形成されると想定される形状である。)である場合は、強いバネ機能の発揮が期待できない結果、容器成形後の容器の把持や搬送において形状の復元力が不足するとともに、環状膨出部の重量及び容器の重量が増大する。
さらに、環状膨出部31のエチレン系樹脂を含有する内表面層が、滑剤、好ましくは有機滑剤である不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸アミドまたはそれらの混合物を含有するエチレン系樹脂の組成物から形成されるものであると、該環状膨出部31は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成される形状を有するので、例えば、ブロー成形多層容器が、粘稠な内容物を充填する容器である場合に、内容物の多層容器内面への付着性が低下して排出がスムーズになり、液切れ性が向上することなどから、好ましい。なお、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器においては必須ではないが、環状膨出部31のエチレン系樹脂を含有する外表面層が、滑剤、好ましくは有機滑剤である不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸アミドまたはそれらの混合物を含有するエチレン系樹脂の組成物から形成されるものであると、環状膨出部31の容器外側の表面の滑り性が向上する結果、ブロー成形多層容器を把持するために挿入されるグリッパ等を安定かつ確実に保持することができる効果が奏される。
4.胴部、及び底部
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、口部1、環状凹部2、肩部3、胴部4及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器である。胴部4及び底部は、通常の合成樹脂製ブロー成形多層容器と同様の構成とすることができ、その断面形状は、口部1及び環状凹部2に肩部3を介して滑らかに連接することができる限り、特に限定されず、円形、楕円形その他の汎用の形状とすることができる。
III.合成樹脂製ブロー成形多層容器の製造方法
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であって、多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものであり、口部は、外周面に雄螺条域を有し、環状凹部は、雄螺条域より縮径し、次いで拡径して肩部に連接し、肩部は、上端に環状膨出部を備え、かつ、環状膨出部は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有することを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器を得ることができる限り、その製造方法は限定されない。したがって、本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器の製造方法としては、所定の層構成を有する多層のパリソン(以下、「多層パリソン」ということがある。)を、所望の容器形状のキャビティ壁を備える割金型内でブロー成形することによって、ブロー成形品である多層の合成樹脂製ブロー成形多層容器を得ることができればよい。多層パリソンを製造した後、常温または室温に保存しておき、ブロー成形を行うときに所定温度まで加熱するコールドパリソン方式によってもよいし、該多層パリソンを製造し、連続してブロー成形を行うホットパリソン方式によってもよい。多層パリソンは、射出成形により製造することもできるが、溶融押出成形によって筒状(以下、「管状」または「パイプ状」ということがある。)の多層パリソンを製造する方法が好ましく、溶融押出成形方法により共押出した多層パリソンを、続けて容器形状にブロー成形するダイレクトブロー成形方法がより好ましい。以下、ダイレクトブロー成形により形成される合成樹脂製ブロー成形多層容器(ダイレクトブロー成形多層容器)を得る方法について説明する。
1.多層パリソンの製造
所望の層構成を有する多層パリソンを共押出によって製造する方法としては、環状ダイを用いる共押出法、Tダイを用いる共押出法、インフレーション成形による共押出法などの方法が挙げられるが、いわゆるボトル形状の容器をブロー成形によって製造する場合は、環状ダイを用いる共押出法により筒状(パイプ状)の多層パリソンを製造することが好ましい。環状ダイを用いる共押出法で多層パリソンを製造する場合は、樹脂の種類に対応する数の押出機を使用し、各層に対応する樹脂をそれぞれ環状に展開しながら、ダイ通路内で溶融樹脂を所定の層構成の積層順序となるように合流させる。表層である内表面層と外表面層が同種の樹脂からなる場合には、更に分岐チャンネルを経て、他の層を形成する樹脂原料等を挟み込むように分岐させ、その後、押出ダイ内で合流させ、環状形状のダイヘッドから所望の層構成に整列積層した状態で樹脂を押し出す。ダイヘッドの温度は通常120〜240℃であり、好ましくは130〜230℃、より好ましくは140〜220℃の範囲の温度を採用することができる。ダイオリフィスの形状としては、円形のほか偏平形状のものも使用可能である。環状ダイを用いる共押出法によれば、多層パリソンの肉厚の変更等の制御調整を比較的容易に行うことができる。
なお、先に述べたように、多層パリソンを共射出成形によって製造することもできる。この場合、複数台の射出シリンダを備えた成形機を用いて、単一のパリソン用射出成形金型のキャビティ内に、一回の型締め動作で、1つのゲートから、溶融した表層(外表面層及び/または内表面層)を形成する樹脂の組成物及び他の層を形成する樹脂材料を共射出して有底の多層パリソンを形成する。多層パリソンの底部の一部若しくは全部には、EVOH層等のバリア層が存在していなくてもよい。すなわち、一般に底部の厚みは胴部の厚みに比べて大きいため、底部が実質的にエチレン系樹脂の組成物層だけでもバリア性を発揮することができる。胴部のみにバリア層を配置することにより、多層の合成樹脂製ブロー成形多層容器の機械的強度の低下を防ぐとともに、バリア層の厚みを均一に制御することが容易になることがある。
2.ブロー成形
ブロー成形によってパリソンから容器形状のブロー成形品を成形する場合には、前記の方法で共押出した筒状の多層パリソンを、割金型で挟んで、下端を必要に応じて融着させて塞ぐとともに、上端を切断した後、開口した上端から加圧気体等を吹き込んで容器形状に成形し、次いで、不要となる容器の口部の上方に相当する部分(頭部または袋部)を切除することによって、合成樹脂製ブロー成形多層容器を得る。該ブロー成形によって一体成形した容器の底部には、筒状のパリソンを、割金型で挟んで下端を融着して塞いだ痕跡として、ピンチオフ部がパーティングラインの一部として形成される。なお、射出成形によってパリソンを成形する場合には、ブロー成形多層容器の底部にゲート痕が形成される。
ブロー成形用の割金型としては、鏡面仕上げのものでも、サンドブラスト加工したものでも使用でき、割金型の表面温度は一般に10〜50℃の範囲にあることが好ましい。また、ブロー成形用の加圧気体としては、空気や窒素等を使用することができるが、滅菌処理した空気を用いることが好ましく、その圧力は1.0〜15kg/cmの範囲にあるのが適当である。
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、ダイレクトブロー成形して製造することができる。ダイレクトブロー成形工程では、多層パリソンを膨張可能な温度に調整した後、ブロー成形用金型のキャビティ内に挿入し、加圧気体等を吹き込んでダイレクトブロー成形を行う。ダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製ブロー成形多層容器における全膨張倍率は、通常6〜9倍程度である。本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、特有の内面形状及び厚みを有する環状膨出部を備えるものであることから、形状の制御や調整が容易である観点で、ダイレクトブロー成形が好ましい。
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、延伸ブロー成形して製造することもできる。延伸ブロー成形工程では、多層パリソンを延伸可能な温度に調整した後、ブロー成形用金型のキャビティ内に挿入し、空気などの加圧気体等を吹き込んで延伸ブロー成形を行う。長さ方向の延伸を行うためには、延伸ロッドを使用してもよい。延伸ブロー成形は、ホットパリソン方式またはコールドパリソン方式のいずれかの方式により行うことができる。全延伸倍率は、通常6〜9倍程度である。
内容物の熱充填に適した耐熱性の合成樹脂製ブロー成形多層容器を製造する場合には、熱充填時の容器の熱収縮・変形を防止するために、ブロー成形用金型の温度を100℃以上に昇温し、金型内で熱処理(熱固定)してもよい。金型温度は、100〜165℃であり、一般耐熱容器の場合は145〜155℃、高耐熱容器の場合には、160〜165℃の範囲とすることが好ましい。熱処理時間は、合成樹脂製ブロー成形多層容器の厚みや熱処理温度により変動するが、通常1〜30秒間、好ましくは2〜20秒間である。
3.環状膨出部の形状の調整
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、肩部の上端に備えられる環状膨出部が、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有することを特徴とする。かかる環状膨出部の特有の構成は、環状ダイからブロー成形金型への溶融パリソンの供給速度(吐出速度または押出速度)、エチレン系樹脂を含有する内表面層の組成や厚み、場合によっては更にエチレン系樹脂を含有する外表面層の組成や厚み、ブロー条件(吹込気体の圧力及び吹込速度等)などを調整することによって得ることができる。環状ダイからブロー成形金型への溶融パリソンの供給速度の制御は、溶融パリソンの一部を引き伸ばしたり、溶融パリソンの鉛直下向き方向の速度を制御する、いわゆるパリソンコントローラーによって行うことができる。
IV.合成樹脂製ブロー成形多層容器の搬送及び把持
ダイレクトブロー成形等によって製造された合成樹脂製ブロー成形多層容器は、通常、容器成形工程後、内容物充填工程において、食品等の内容物を多層容器に充填し、必要に応じて加熱、殺菌及び冷却を行い、充填量等の検査を行った後に、口部シール装置まで容器を搬送して、口部シール工程において、容器の口部開口部をシール材で密封して密封容器とする。次いで、密封容器を整列させながら、キャップ装着装置(キャッパー)まで搬送して、キャップ装着工程において、キャップ装着装置により、密封容器の口部にキャップを巻き締める。
容器成形後の容器の搬送は、通常、回転する搬送ホイール間で、容器を受け渡しながら行われる。例えば、内容物充填工程の後は、充填量や充填重量等を検査して、規格範囲を満たしていない容器を排出するので、図示しない複数の搬送ホイールを間欠回転しながら経由させることにより、容器の不連続な並びを、連続な並び、すなわち等間隔の並びに整え、規格範囲を満たす充填済みの容器を整列させて、口部シール工程に容器を引き渡す。
回転する搬送ホイール間での容器の受け渡しにおいては、充填容器の底部を把持して案内する底部グリッパによる把持、充填容器の胴部を把持して案内する胴部グリッパによる把持、及び、充填容器の上部を把持するグリッパによる把持を適宜選択し、または組み合わせて行うことができる。本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、環状膨出部の下面にグリッパを挿入して充填容器を安定かつ確実に把持することができるので、回転する搬送ホイール間での容器の受け渡しを安定かつ確実に行うことができるとともに、底部グリッパによる把持や胴部グリッパによる把持において併用されることが多い案内板や案内溝を備える必要がない。
V.合成樹脂製ブロー成形多層容器の特性
本発明の、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であって、多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものであり、口部は、外周面に雄螺条域を有し、環状凹部は、雄螺条域より縮径し、次いで拡径して肩部に連接し、肩部は、上端に環状膨出部を備え、かつ、環状膨出部は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有することを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、軸対称戻り性に優れる多層容器である。
〔軸対称戻り性〕
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、軸対称戻り性に優れる多層容器であり、搬送工程において多層容器の正確な把持や受け渡しに支障が生じたり、キャップの装着に支障を生じたりすることがなく、更に内容物を充填した多層容器製品の取扱い中に不測のトラブルが生じたりするおそれもないので、生産効率が向上する。
ブロー成形多層容器の軸対称戻り性は、以下(1)〜(4)の方法で評価することができる。
(1)多層容器に水500cm3を充填して水平面上に鉛直に正立させ、環状膨出部の下面にグリッパが当接するように把持して、多層容器を吊り下げる。試験環境及び水の温度は、常温(20±5℃)とする。
(2)次いで、グリッパを水平から+30度傾斜させ、次に−30度傾斜させる一対の揺動動作を、毎分20対の速さで60分間行った後に、充填した水を抜いた空の多層容器を検体(5本)とする。
(3)前記の検体を水平面上に鉛直に正立させ、口部から直径に沿って鉛直に切断し、光学式拡大器を用いて写真撮影を行い、対向する断面の開口角度(垂直からのずれ角度)を、デジタル式度数計または市販の分度器を使用して、それぞれ測定する。測定された対向する断面の開口角度の差の絶対値(単位:度)を算出(5本の検体の算術平均値)して、多層容器の絶対値算術平均(単位:度)とする。
(4)前記の絶対値算術平均が3度以内であれば、ブロー成形多層容器は「軸対称戻り性に優れる」と評価する。前記の絶対値算術平均が4度を超える場合は、ブロー成形多層容器は「軸対称戻り性に劣る」と評価する。
(5)なお、揺動動作中にグリッパが外れる多層容器検体があった場合は、当該検体について、再度(1)〜(4)の試験を実施するが、再試験を行った旨を表示する。
前記の絶対値算術平均は、0度であることが理想であるが、0.5〜2.5度であれば、軸対称戻り性に特に優れるということができる。これに対し、軸対称戻り性に劣るブロー成形多層容器は、前記の多層容器に水を充填して行う揺動動作によって、口部及び環状膨出部の変形が生じていることから、内容物を充填する多層容器の生産工程において、多層容器の正確な把持や受け渡しに支障が生じたり、キャップの装着に支障を生じたり、更に内容物を充填した多層容器製品の取扱い中に不測のトラブルが生じたりするおそれがある。絶対値算術平均が5度を超えると上記の支障やトラブルの頻度が増加し、絶対値算術平均が7度を超えると上記の支障やトラブルが顕著となる。
〔容器内壁非付着性〕
本発明の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、所望により環状膨出部のエチレン系樹脂を含有する内表面層が有機滑剤を含有することにより、容器内壁非付着性に優れる多層容器とすることができる。例えばトマトケチャップ等の粘稠な内容物を充填する容器から内容物を排出させようとするときに、内容物の所望量を短時間で排出することができるので、使用感に優れるともに、内容物を無駄なく使用することができる。
ブロー成形多層容器の容器内壁非付着性は、以下(1)〜(4)の方法で評価判定することができる。
(1)多層容器に市販のトマトケチャップ(JAS特級品)500gを充填して、水平面上に鉛直に正立させて検体とする(検体数は5本とする。)。試験環境及びトマトケチャップの温度は、常温(20±5℃)とする。
(2)多層容器を倒立させて、内容物であるトマトケチャップを自由落下させて約100gを取り出した後、直ちに蓋をして、倒立状態で10分間静置する(倒立処理)。次いで、多層容器を正立させて24時間静置し、再び多層容器を倒立状態で10分間静置する(正立処理)。前記のトマトケチャップの自由落下による取り出し、倒立処理及び正立処理を1単位として、内容物であるトマトケチャップが、ボトル内壁付着分を除いて、なくなるまでの5単位または6単位を繰り返す。
(3)内容物であるトマトケチャップがボトル内壁付着分を除いてなくなった多層容器について、多層容器内面のトマトケチャップの滑落の有無を目視で観察し、内面に付着するトマトケチャップの滑落があるものを「○」評価とし、トマトケチャップの滑落がなく付着したままのものを「×」評価とする。
(4)以下の基準により、ブロー成形多層容器の容器内壁非付着性の評価判定を行う。容器内壁非付着性が、優良または良好と判定されれば、容器内壁非付着性に優れるということができる。
<容器内壁非付着性の判定基準>
優良: 5つの検体のすべてが「○」評価である。
良好: 1〜4つの検体が「○」評価である。
不良: 5つの検体のすべてが「×」評価である。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂原料及び合成樹脂製ブロー成形多層容器の特性または物性の測定方法は、以下のとおりである。
〔密度及びMFR〕
エチレン系樹脂及びEVOHの密度及びMFRは、JIS K6922−2またはJIS K7210に準拠して測定した。
〔軸対称戻り性〕
ブロー成形多層容器の軸対称戻り性は、以下(1)〜(4)の方法で評価した。
(1)多層容器に水500cm3を充填して水平面上に鉛直に正立させ、環状膨出部の下面にグリッパが当接するように把持して、多層容器を吊り下げた。試験環境及び水の温度は、常温(20±5℃)とした。
(2)次いで、グリッパを水平から+30度傾斜させ、次に−30度傾斜させる一対の揺動動作を、毎分20対の速さで60分間行った後に、充填した水を抜いた空の多層容器を検体(5本)とした。
(3)前記の検体を水平面上に鉛直に正立させ、口部から直径に沿って鉛直に切断し、光学式拡大器を用いて写真撮影を行い、対向する断面の開口角度(垂直からのずれ角度)を、デジタル式度数計または市販の分度器を使用して、それぞれ測定する。測定された対向する断面の開口角度の差の絶対値(単位:度)を算出(5本の検体の算術平均値)して、多層容器の絶対値算術平均(単位:度)とした。
(4)前記の絶対値算術平均が3度以内であれば、ブロー成形多層容器は「軸対称戻り性に優れる」と評価した(「○」と表示する。)。前記の絶対値算術平均が4度を超える場合は、ブロー成形多層容器は「軸対称戻り性に劣る」と評価した(「×」と表示する。)。
(5)なお、揺動動作中にグリッパが外れる多層容器検体があった場合は、当該検体について、再度(1)〜(4)の試験を実施するが、再試験を行った旨を表示した。
〔容器内壁非付着性〕
ブロー成形多層容器の容器内壁非付着性は、以下(1)〜(4)の方法で評価判定した。
(1)多層容器に市販のトマトケチャップ(JAS特級品)500gを充填して、水平面上に鉛直に正立させて検体とした(検体数は5本とした。)。試験環境及びトマトケチャップの温度は、常温(20±5℃)とした。
(2)多層容器を倒立させて、内容物であるトマトケチャップを自由落下させて約100gを取り出した後、直ちに蓋をして、倒立状態で10分間静置した(倒立処理)。次いで、多層容器を正立させて24時間静置し、再び多層容器を倒立状態で10分間静置した(正立処理)。前記のトマトケチャップの自由落下による取り出し、倒立処理及び正立処理を1単位として、内容物であるトマトケチャップが、ボトル内壁付着分を除いて、なくなるまでの5単位または6単位を繰り返した。
(3)内容物であるトマトケチャップがボトル内壁付着分を除いてなくなった多層容器について、多層容器内面のトマトケチャップの滑落の有無を目視で観察し、内面に付着するトマトケチャップの滑落があるものを「○」評価とし、トマトケチャップの滑落がなく付着したままのものを「×」評価とした。
(4)以下の基準により、ブロー成形多層容器の容器内壁非付着性の評価判定を行った。
<容器内壁非付着性の判定基準>
優良: 5つの検体のすべてが「○」評価である。
良好: 1〜4つの検体が「○」評価である。
不良: 5つの検体のすべてが「×」評価である。
[実施例1]
複数の押出機と環状ダイを用いて、層構成が、それぞれ以下の組成からなる外表面層/接着層/バリア層/接着層/回収層/内表面層である筒状パリソンを押し出し、ロータリー式のダイレクトブロー成形機により、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を一体成形した内容積が540cmである多層構成のダイレクトブロー成形によって製造される合成樹脂製ブロー成形多層容器(以下、「多層容器」ということがある。)を得た。多層容器の口部は、外径23mm、内径20.2mm、厚み(雄螺条域にあって、雄螺条が存在しない部分の厚みである。)1.4mm、容器軸方向の長さ12mmであり、容器軸に沿う長さ8mmの雄螺条域を有していた。また、雄螺条域から縮径する、外径22.5mm、厚み1.4mm、容器軸方向の長さ2.5mmの環状凹部から拡径して連接する肩部の上端に、外径41mm、容器軸方向の長さ2mmの環状膨出部を備えるものとした。環状膨出部は、内表面の表面が、多層容器軸方向に沿って、多層容器外方に向いて最大深さ約9mmで屈曲し、次いで、多層容器内方に向いて屈曲してなる厚み約0.42mm(口部の厚みに対して、30.0%に相当する。)の薄肉部であった。多層容器の胴部は、外径60mm内径59mm(すなわち厚み0.5mm)であった。多層容器の質量は、20gであった。
(1)表層(エチレン系樹脂を含有する内表面層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層は同一厚みとした。)〔口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部の内表面及び外表面の組成は同じである。〕:
エチレン系樹脂として、低密度ポリエチレン〔住友化学株式会社製のスミカセン(登録商標);密度920kg/m3、MFR(温度190℃、荷重21.18N)1.4g/10分〕を使用し、有機滑剤である不飽和脂肪酸アミドとして、オレイン酸アミド〔H2N−CO−(−CH2−)7−CH=CH−(−CH2−)7−CH3〕を、低密度ポリエチレンに対して、1000ppmとなるように配合した。
(2)EVOH層(バリア層):株式会社クラレ製の商品名エバール(登録商標)〔エチレン含有率44モル%のエチレン・ビニルアルコール共重合体。密度1140kg/m、MFR(温度190℃、荷重21.18N)1.7g/10分、結晶融点165℃〕
(3)回収層:本実施例により製造した多層容器をダイレクトブロー成形する際に生じる容器の頭部(=袋部)を切除して、破砕機にてそれを粉末化した樹脂(回収樹脂)を原料とした。
(4)接着層:三菱化学株式会社製の無水マレイン酸変性ポリオレフィン、商品名モディック(登録商標)
(1)〜(4)の層の厚み比率は、75:4:20:1とした。多層容器の軸対称戻り性及び容器内壁非付着性の評価・判定結果を表1に示す。
[実施例2]
筒状パリソンの押出速度及びブロー圧力を調整して、環状膨出部の厚みを、口部の厚みに対して47.3%に変更した多層容器の形状の変更を除いて、実施例1と同様にして、合成樹脂製ブロー成形多層容器を得た。多層容器の軸対称戻り性及び容器内壁非付着性の評価・判定結果を表1に示す。
[実施例3]
筒状パリソンの押出速度及びブロー圧力を調整して、環状膨出部の厚みを、口部の厚みに対して28.0%に変更した多層容器の形状の変更、及び、有機滑剤であるオレイン酸アミドを含有しなかった表面層(内表面層及び外表面層)の組成の変更を除いて、実施例1と同様にして、合成樹脂製ブロー成形多層容器を得た。多層容器の軸対称戻り性及び容器内壁非付着性の評価・判定結果を表1に示す。
[比較例1]
筒状パリソンの押出速度及びブロー圧力を調整して(ブロー圧力を高く設定した。)、環状膨出部の厚みを、口部の厚みに対して15.0%に変更した多層容器の形状の変更、及び、有機滑剤であるオレイン酸アミドを含有しなかった表面層の組成の変更を除いて、実施例1と同様にして、合成樹脂製ブロー成形多層容器を得た。多層容器の軸対称戻り性及び容器内壁非付着性の評価・判定結果を表1に示す。
[比較例2]
筒状パリソンの押出速度及びブロー圧力を調整して(ブロー圧力を低く設定した。)、環状膨出部の厚みを、口部の厚みに対して60.0%に変更した多層容器の形状の変更、及び、有機滑剤であるオレイン酸アミドを含有しなかった表面層の組成の変更を除いて、実施例1と同様にして、合成樹脂製ブロー成形多層容器を得た。多層容器の軸対称戻り性及び容器内壁非付着性の評価・判定結果を表1に示す。なお、軸対称戻り性の評価試験において、グリッパ揺動動作中にグリッパが外れる多層容器検体が1個あったので、当該検体について再試験を行った。
Figure 0006243234
表1から、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であって、多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものであり、口部は、外周面に雄螺条域を有し、環状凹部は、雄螺条域より縮径し、次いで拡径して肩部に連接し、肩部は、上端に環状膨出部を備え、かつ、環状膨出部は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有することを特徴とする実施例1〜3の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、軸対称戻り性の評価が「○」評価であることから、優れた搬送適性を有するものであることが分かった。したがって、実施例1〜3の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、合成樹脂製ブロー成形容器の製造が高速化するもと、容器成形後の諸工程間の搬送において、グリッパ挿入による把持を安定かつ確実に実施することができ、多層容器の所定の姿勢状態を維持することができる。さらに、滑剤を含有する実施例1及び2の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、例えばトマトケチャップ等の粘稠な内容物を充填するものである場合、内容物の所望量を短時間で目視にて内容物が見えなくなるほどに排出することができるので、使用感に優れるとともに、内容物を無駄なく使用することができる多層容器であることが分かった。
これに対し、環状膨出部の厚みが、口部の厚みに対し15.0%の比率であって、更に表面層が有機滑剤を含有しない比較例1の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、軸対称戻り性の絶対値算術平均が7.0度であり、「×」評価であることから、優れた搬送適性を有しないものであることが分かった。比較例1の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、合成樹脂製ブロー成形容器の製造が高速化するもと、容器成形後の諸工程間の搬送において、グリッパ挿入による把持を安定かつ確実に実施することができず、多層容器の所定の姿勢状態を維持することができないものと評価される。また、比較例1の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、滑剤を含有しなかった結果、多層容器の所定の姿勢状態を維持することができないことと相まって、例えばトマトケチャップ等の粘稠な内容物を充填するものである場合、内容物が滑落しきれず付着残留するおそれがある多層容器であることが分かった。
また、環状膨出部の厚みが、口部の厚みに対し60.0%の比率であって、更に表面層が有機滑剤を含有しない比較例2の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、軸対称戻り性の評価試験において、グリッパ揺動動作中にグリッパが外れる多層容器検体が1個あったので、当該検体について再試験を行わざるを得なかった。その原因は必ずしも明確ではないが、ブロー成形においてブロー圧力を低く設定して多層容器の成形を行ったため、環状膨出部の下面先端部の形状が成形金型の形状どおりとならない成形不良が生じた結果、グリッパからの容器の脱落が生じたものと推察された。比較例2の合成樹脂製ブロー成形多層容器は、合成樹脂製ブロー成形容器の製造が高速化するもと、容器成形後の諸工程間の搬送において、グリッパ挿入による把持を安定かつ確実に実施することができず、多層容器の所定の姿勢状態を維持することができないものと評価される。
本発明は、口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であって、
多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものであり、
口部は、外周面に雄螺条域を有し、環状凹部は、雄螺条域より縮径し、次いで拡径して肩部に連接し、肩部は、上端に環状膨出部を備え、かつ、環状膨出部は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有することを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器であることによって、合成樹脂製ブロー成形容器の製造が高速化するもと、容器成形後の諸工程間の搬送の際、グリッパ挿入による把持を安定かつ確実に実施し、容器の所定の姿勢状態を維持できるブロー成形多層容器、特にダイレクトブロー成形多層容器が提供されるので、産業上の利用可能性が高い。
1 口部
11 開口部
12 雄螺条域
121 雄螺条
2 環状凹部
3 肩部
31 環状膨出部
4 胴部

Claims (6)

  1. 口部、環状凹部、肩部、胴部及び底部を容器軸方向に沿って順次備える合成樹脂製ブロー成形多層容器であって、
    多層容器の層構成は、少なくとも、エチレン系樹脂を含有する内表面層、バリア層及びエチレン系樹脂を含有する外表面層を容器内側からこの順に備えるものであり、
    口部は、外周面に雄螺条域を有し、
    前記環状凹部は、前記雄螺条域より縮径し、次いで拡径して肩部に連接し、
    肩部は、上端に環状膨出部を備え、かつ、
    前記環状膨出部は、内表面層の容器内側の表面が、容器軸方向に沿って、容器外方に向いて屈曲し、次いで、容器内方に向いて屈曲することにより形成されるものであって、口部の厚みに対し20〜55%の厚みを有し、
    前記環状膨出部の容器軸方向の長さは、前記雄螺条域の容器軸方向の長さに対して、10〜50%の範囲である
    ことを特徴とする前記の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
  2. ダイレクトブロー成形により形成される請求項1記載の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
  3. バリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体から形成される請求項1または2記載の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
  4. 回収層を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
  5. 内表面層とバリア層との間、または、バリア層と外表面層との間の一方または両方に接着層を備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
  6. 前記環状膨出部のエチレン系樹脂を含有する内表面層が、有機滑剤である不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸アミドまたはそれらの混合物を含有するエチレン系樹脂の組成物から形成される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の合成樹脂製ブロー成形多層容器。
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