(実施例1)
まず、本実施例の特徴となる混色キャリブレーションを単色キャリブレーションと比較して説明する。前述した通り、混色キャリブレーションの実施時には単色キャリブレーションが完了し単色の階調性が補正されていることが前提となる。単色の再現特性は画像処理手法の影響を受けやすいため、単色キャリブレーションは画像処理手法の種類ごとに行う必要がある。さらにハイライトの色再現性が不安定なため、例えばハイライト領域のパッチ画像を増やすことが求められる。
一方で混色は、C、M、Y、Kの色版が重なるため、印刷時の転写や定着における影響が色に大きく寄与してくる。
つまり、混色キャリブレーション実行時に形成される混色パッチ画像は色版が重なり、網点比率が高い(10〜15%以上)ので、画像処理手法の違いに応じて発生する色の差が、単色パッチ画像形成時よりも少ない。
以上のことから、画像処理手法による差を補正したり階調性を補正する単色キャリブレーションとは異なり、混色キャリブレーションはエンジン状態の変化がもたらす再現特性のずれを補正する処理と言える。
また、単色キャリブレーションでは単色しか用いないのに比べて、混色キャリブレーションではC、M、Y、Kが混ざった色を用いて補正する。
そのため、混色キャリブレーションを実行する際に用いられるチャート画像を印刷する際のトナー使用量は、単色キャリブレーションを実行する際に用いられるチャート画像を印刷する際のトナー量より多くなることは容易に考えられる。
また、単色キャリブレーションと混色キャリブレーション、それぞれを画像処理手法ごとにキャリブレーションを実行すると、出力するチャート画像が印刷された用紙の枚数も増えることは容易に考えられる。
以上の事を鑑み、本実施例では単色キャリブレーションは全ての画像処理手法に対して行い、混色キャリブレーションは1種類の画像処理手法のみで行う点を特徴とする。これにより、混色キャリブレーションの精度を保ち、用紙やトナーの消費を出来るだけ抑えた効率のよいキャリブレーションフローを提案する。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施例におけるシステムの構成図である。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(以下、C、M、Y、K)の各トナーを用いるカラー画像処理装置のMFP(Multi Function Printer)101はネットワーク123を介して他のネットワーク対応機器と接続されている。またPC124はネットワーク123を介してMFP101と接続されている。PC124内のプリンタドライバ125はMFP101へ印刷データを送信する。
MFP101について詳細に説明する。ネットワークI/F122は印刷データ等の受信を行う。コントローラ102はCPU103やレンダラ112、画像処理部114で構成される。CPU103のインタプリタ104は受信した印刷データのPDL(ページ記述言語)部分を解釈し、中間言語データ105を生成する。
そしてCMS106ではソースプロファイル107及びデスティネーションプロファイル108を用いて色変換を行い、中間言語データ(CMS後)111を生成する。ここでCMSとはColor Management Systemの略であり、後述するプロファイルの情報を用いて色変換を行う。また、ソースプロファイル107はRGBやCMYK等のデバイスに依存する色空間をCIE(国際照明委員会)が定めたL*a*b*(以下、Lab)やXYZ等のデバイス非依存の色空間に変換するためのプロファイルである。XYZはLabと同様にデバイス非依存の色空間であり、3種類の刺激値で色を表現する。また、デスティネーションプロファイル108はデバイス非依存色空間をデバイス(プリンタ115)に依存したCMYK色空間に変換するためのプロファイルである。
一方、CMS109ではデバイスリンクプロファイル110を用いて色変換を行い、中間言語データ(CMS後)111を生成する。ここでデバイスリンクプロファイル110はRGBやCMYK等のデバイス依存色空間をデバイス(プリンタ115)に依存したCMYK色空間に直接変換するためのプロファイルである。CMS106、CMS109のうち、どちらのCMSが選ばれるかはプリンタドライバ125における設定に依存する。
本実施例ではプロファイル(107、108及び110)の種類によってCMS(106及び109)を分けているが、1つのCMSで複数種類のプロファイルを扱ってもよい。また、プロファイルの種類は本実施例で挙げた例に限らずプリンタ115のデバイス依存CMYK色空間を用いるのであればどのような種類のプロファイルでもよい。
レンダラ112は生成した中間言語データ(CMS後)111からラスター画像113を生成する。画像処理部114はラスター画像113やスキャナ119で読み込んだ画像に対して画像処理を行う。画像処理部114について詳細は後述する。
コントローラ102と接続されたプリンタ115はC、M、Y、K等の有色トナーを用いて紙上に出力データを用いてカラー画像を形成するプリンタである。プリンタ115は給紙を行う給紙部116と画像形成された紙を排紙する排紙部117、測定部126を持つ。
測定部126は分光反射率、LabやXYZ等のデバイスに依存しない色空間の値を取得できる測色部のセンサ127を持ち、プリンタ115を制御するCPU129によって制御される。測定部126はプリンタ115で用紙等の記録媒体上にプリント出力されたパッチ画像を測定する。このパッチ画像は、単一濃度で所定の面積を有する測定用の画像である。このパッチ画像を、色を変えて複数個生成し、生成されたパッチ画像を記録媒体上に印刷したものをパターン画像と呼ぶ。このパターン画像を測定部126が有するセンサ127で読み取り、読み取った数値情報をコントローラ102へ送信する。コントローラ102はその数値情報を用いて演算を行い、この演算の結果を単色キャリブレーションや混色キャリブレーションを実行する際に利用する。
表示装置118はユーザへの指示やMFP101の状態を表示するUI(ユーザーインターフェース)である。後述する単色キャリブレーションや混色キャリブレーションを実行する際に利用する。
スキャナ119はオートドキュメントフィーダーを含むスキャナである。スキャナ119は束状のあるいは一枚の原稿画像を図示しない光源で照射し、原稿反射像をレンズでCCD(Charge Coupled Device)センサ等の固体撮像素子上に結像する。そして、固体撮像素子からラスター状の画像読み取り信号を画像データとして得る。
入力装置120はユーザからの入力を受け付けるためのインタフェースである。一部の入力装置をタッチパネルとし、表示装置118と一体化してもよい。
記憶装置121はコントローラ102で処理されたデータやコントローラ102が受け取ったデータ等を保存する。
測定器128はネットワーク上またはPC124に接続された外部の測定用デバイスであり、測定部126と同様に分光反射率、LabやXYZ等のデバイスに依存しない色空間の値を取得できる。
次に画像処理部114の流れについて図2を用いて説明する。図2はラスター画像113やスキャナ119で読み込んだ画像に対して行う画像処理の流れを示している。図2の処理の流れは画像処理部114内にある不図示のASIC(Application Specific Integrated Circuit)が実行することにより実現される。
ステップS201にて画像データを受信する。そしてステップS202にて受け取ったデータがスキャナ119から受信したスキャンデータかプリンタドライバ125から送られたラスター画像113かを判別する。
スキャンデータではない場合はレンダラ112によってビットマップ展開されたラスター画像113であり、CMSによってプリンタデバイスに依存するCMYKに変換されたCMYK画像211となる。
スキャンデータの場合はRGB画像203であるため、ステップS204にて色変換処理を行い、共通RGB画像205を生成する。ここで共通RGB画像205とはデバイスに依存しないRGB色空間で定義されており、演算によってLab等のデバイス非依存色空間に変換することが可能である。
一方、ステップS206にて文字判定処理を行い、文字判定データ207を生成する。ここでは画像のエッジ等を検出して文字判定データ207を生成する。
次にステップS208にて共通RGB画像205に対して文字判定データ207を用いてフィルタ処理を行う。ここでは文字判定データ207を用いて文字部とそれ以外で異なるフィルタ処理を行う。
次にステップS209にて下地飛ばし処理、ステップS210で色変換処理を行って下地を除去したCMYK画像211を生成する。
次にステップS212にて4D−LUT217を用いた混色の補正処理を行う。4D−LUTとはあるC、M、Y、K各トナーを出力する際の信号値の組み合わせを異なるC、M、Y、Kの信号値の組み合わせに変換する4次元のLUT(Look Up Table)である。この4D−LUT217は後述する「混色キャリブレーション」により生成される。4D−LUTを用いることで複数のトナーを使用した色である「混色」を補正することが可能になる。
そしてステップS212にて混色の補正をした後、画像処理部114はステップS213にて1D−LUT218を用いてC、M、Y、Kの各単色の階調特性を補正する。1D−LUT とはC、M、Y、Kのそれぞれの色(単色)を補正する1次元のLUT(Look Up Table)のことである。この、1D−LUTは、後述する「単色キャリブレーション」により生成される。
最後にステップS214にて画像処理部114はスクリーン処理や誤差拡散処理のようなハーフトーン処理を行ってCMYK画像(2値)215を作成し、ステップS216にて画像データをプリンタ115へ送信する。
プリンタ115から出力される単色の階調特性を補正する「単色キャリブレーション」について図3を用いて説明する。単色キャリブレーションを実行することで、最大濃度特性及び階調特性などの単色の色再現特性が補正される。プリンタ115で用いられるC,M,Y,Kトナー其々に対応する色の再現特性は、キャリブレーション実行時に一緒に補正される。すなわち、C,M,Y,Kの各色に応じて図3の処理が一度に実行される。
図3は単色の階調特性を補正する1D−LUT218を作成する処理の流れを示している。図3の処理の流れはCPU103が実行することによって実現され、作成された1D−LUT218は記憶装置121に保存される。また表示装置118によってユーザへの指示をUIに表示し、入力装置120からユーザの指示を受け付ける。
ステップS301にて記憶装置121に格納してあるチャートデータ(A)302を取得する。チャートデータ(A)302は単色各色の最大濃度を補正するためのものであり、C、M、Y、Kの「単色」の最大濃度データが得られる信号値(例えば255)で構成される。
次にステップS303にてチャートデータ(A)302に対して画像処理部114にて画像処理を実行してプリンタ115からパターン画像であるチャート画像(A)304をプリント出力する。例を図5に示す。図5(a)の501はチャートデータ(A)302をプリント出力した際の例を示しており、パッチ画像502、503、504、505はそれぞれC、M、Y、K各色の最大濃度でプリント出力される。このようにパターン画像であるチャート画像(A)304は、パッチ画像を複数含む。ここで画像処理部114はステップS214にてハーフトーン処理のみ行い、ステップS213の1D−LUT補正処理やステップS212の4D−LUT補正処理は行わない。
次にステップS305にてスキャナ119や測定部126内のセンサ127を用いてチャート画像(A)304のプリント出力物の濃度測定を行い、測定値(A)306を得る。測定値(A)306はC、M、Y、K各色の濃度値となる。次にステップS307にて測定値(A)306と予め設定された最大濃度値の目標値(A)308を用いて各色の測定値(A)306の最大濃度の補正を実行する。ここでは最大濃度が目標値308(A)に近づくようにプリンタ115のデバイス設定値、例えば、レーザ出力や現像バイアス等を調整する。
次に、ステップS309にて記憶装置121に格納されたチャートデータ(B)310を取得する。チャートデータ(B)310はC、M、Y、Kの「単色」の階調データの信号値で構成される。このチャートデータ(B)310を用いて記録媒体にプリント出力されたパッチ画像を有するパターン画像であるチャート画像(B)312の例を図5に示す。図5(b)の506はチャートデータ(B)310を用いて記録媒体にプリント出力されたパッチ画像を有するチャート画像(B)312のプリント出力物の一例を示している。図5(b)に示されるパッチ画像507、508、509、510及び右に続く階調データは、C、M、Y、K各色の階調データで構成される。このようにパターン画像であるチャート画像(B)312は、パッチ画像を複数含む。
次にステップS311にてチャートデータ(B)310に対して画像処理部114にて画像処理を実行してプリンタ115からチャート画像(B)312をプリント出力する。ここで画像処理部114、ステップS214にてハーフトーン処理のみ行い、ステップS213の1D−LUT補正処理やステップS212の4D−LUT補正処理は行わない。また、プリンタ115はステップS307により最大濃度補正を行っているため、最大濃度が目標値(A)308と同等の値を出せる状態となる。
次にステップS313にてスキャナ119やセンサ127を用いて測定を行い、測定値(B)314を得る。測定値(B)314はC、M、Y、K各色の階調から得られる濃度値となる。次にステップS315にて測定値(B)314と予め設定された目標値(B)316を用いて単色の階調を補正する1D−LUT218を作成する。
次に、プリンタ115から出力される混色の特性を補正する「混色キャリブレーション」について図4を用いて説明する。混色キャリブレーションを実行することで、複数色のトナーの組み合わせ(重ね合わせなど)で表現される混色の再現特性が補正される。以下の処理の流れはコントローラ102内のCPU103が実行することにより実現される。この取得された4D−LUT217は記憶装置121に保存される。また表示装置118によってユーザへの指示をUIに表示し、入力装置120からユーザの指示を受け付ける。
混色キャリブレーションは、単色キャリブレーション実施後にプリンタ115から出力される混色を補正する。そのため、単色キャリブレーションを行った直後に混色キャリブレーションを行うことが望ましい。
ステップS401にて記憶装置121に格納してある「混色」で構成されたチャートデータ(C)402の情報を取得する。チャートデータ(C)402は混色を補正するためのデータであり、C、M、Y、Kの組み合わせである「混色」の信号値で構成される。このチャートデータ(C)402を用いて記録媒体にプリント出力された複数のパッチ画像を有するパターン画像であるチャート画像(C)404の一例を図5に示す。図5(c)の511はチャートデータ(C)402をプリント出力した際の例を示しており、パッチ画像512及び511上に印字された全てのパッチ画像はC、M、Y、Kを組み合わせた混色で構成されている。このようにパターン画像であるチャート画像(C)404は、パッチ画像を複数含む。
次にステップS403では画像処理部114にてチャートデータ(C)402に対して画像処理を実行してプリンタ115にてチャート画像(C)404をプリント出力する。混色キャリブレーションは単色キャリブレーション実施後のデバイスの混色特性を補正するため、画像処理部114での画像処理の実行には単色キャリブレーション実行時に作成された1D−LUT218を用いる。
次にステップS405にてスキャナ119や測定部126内のセンサ127を用いてチャート画像(C)404のプリント出力物の混色の測定を行い、測定値(C)406を取得する。測定値(C)406は単色キャリブレーション実施後のプリンタ115の混色特性を示す。また、測定値(C)406はデバイスに依存しない色空間での値であり、本実施例ではLabとする。スキャナ119を用いた場合は図示しない3D−LUT等を用いてRGB値をLab値に変換する。
次にステップS407にて記憶装置121に格納してあるLab→CMYの3D−LUT409を取得し、測定値406(C)と予め設定された目標値(C)408との差分を反映させてLab→CMYの3D−LUT(補正後)410を作成する。ここでLab→CMYの3D−LUTとは、入力されたLab値に対応するCMY値を出力する3次元のLUTのことである。
具体的な作成方法を以下に示す。Lab→CMYの3D−LUT409の入力側のLab値に対して測定値406(C)と予め設定された目標値(C)408との差分を加え、差分が反映されたLab値に対してLab→CMYの3D−LUT409を用いて補間演算を実行する。この結果、Lab→CMYの3D−LUT(補正後)410を作成する。
次にステップS411にて記憶装置121に格納してあるCMY→ Labの3D−LUT412を取得して、Lab→CMYの3D−LUT(補正後)410を用いて演算を行う。これにより、CMYK→CMYKの4D−LUT217を作成する。ここでCMY→Labの3D−LUTとは、入力されたCMY値に対応するLab値を出力する3次元のLUTのことである。
CMYK→CMYKの4D−LUT217の具体的な作成方法を以下に示す。CMY→ Labの3D−LUT412とLab→CMYの3D−LUT(補正後)410からCMY→CMYの3D−LUTを作成する。次にKの入力値と出力値が同一となるようにCMYK→CMYKの4D−LUT217を作成する。ここでCMY→CMYの3D−LUTとは、入力されたCMY値に対応する補正後のCMY値を出力する3次元のLUTのことである。
単色キャリブレーションおよび混色キャリブレーションを選択的に実行する際のUI表示の例を図10に示す。図10のUI画面1001は表示装置118にて表示される。1002は単色キャリブレーションの開始を受け付けるボタンであり、1003は混色キャリブレーションの開始を受け付けるボタンである。また、1004は単色キャリブレーション実行後、混色キャリブレーションを実行するキャリブレーションの開始を受け付けるボタンである。
ボタン1004が選択されると、単色キャリブレーションが開始され、実行された後、混色キャリブレーションが開始される。
具体的には、単色キャリブレーション終了後に、混色キャリブレーション用のチャート画像(C)404をプリント出力することで、混色キャリブレーションを開始する。または、ユーザに混色キャリブレーションを開始するためのボタンをUI画面に表示し、そのボタンがユーザにより押下されてから、混色キャリブレーションが開始されても良い。
一方、ボタン1002が選択されると、単色キャリブレーションのみ実行される。同様に、ボタン1003が選択されると、混色キャリブレーションのみ実行される。
単色キャリブレーションと混色キャリブレーションでボタンを分けている理由について説明する。混色キャリブレーション実行時に使用するチャート画像(C)404をプリント出力する時、単色キャリブレーションで作成した1D−LUT218を使用する。よって、単色キャリブレーションの直後、単色の再現特性が補正された直後に混色キャリブレーションを行い、混色の再現特性を補正することが望ましい。しかし、2種類のキャリブレーションを両方実行すると、ユーザがキャリブレーションのために費やす処理時間が多くかかってしまう。
よって、処理時間を短縮するためにユーザの使用環境に応じて単色キャリブレーションと混色キャリブレーションのいずれかを実行させる。すると、両キャリブレーションの実行頻度が異なる状況が発生する。例えば単色プリントを行う機会が多いユーザは、混色キャリブレーションを実行する頻度が低くなる。また、写真のような混色のカラープリントを行う機会が多いユーザは、混色キャリブレーションを実行する頻度が高くなる。
また、この色補正メニューの選択が可能なタイミングを制御してもよい。
通常、画像処理装置は、電源を夜間切り、朝入れるケースが多い。よって、MFP101のメイン電源スィッチがオンになり、電源が投入された時には、ボタン1004しか選択できないようにする。または、予め定められた時間内に、両方のキャリブレーションが実行されない場合には、ボタン1004しか選択できないようにしてもよい。または、予め定められた枚数の用紙を用いて印刷が実行されるまでに、両方のキャリブレーションが実行されない場合には、ボタン1004しか選択できないようにしてもよい。
または、予め定められた時間が経過したり、予め定められた枚数の用紙を用いて印刷が実行されたり、電源が投入された場合に、自動的に単色キャリブレーションと混色キャリブレーションが順次実行されてもよい。
このように、所定のタイミングではユーザがキャリブレーションを実行する際に、ボタン1004のみ選択できるようにして、予め定められた一定時間ごとに単色キャリブレーション実行直後に混色キャリブレーションを実行するように促す。
よって、上記のように単色キャリブレーション実行後に混色キャリブレーションを実行して両方のキャリブレーションを実行するか、単色キャリブレーション、混色キャリブレーションのいずれかを実行するかを選択することができる。これにより、ユーザの使用に適したキャリブレーションを実行することが可能になる。
また、一定時間ごとに両方のキャリブレーションを実行することのみ選択できるように制御することで、いずれか一方のキャリブレーションのみ実行されることによりキャリブレーションによる再現特性の補正精度の低下を抑制することが可能になる。本実施例では、図10の1004が選択され単色キャリブレーション実行後に混色キャリブレーションが実行されるよう指示された場合、図6に示す動作を実行する。
図6が本実施例の処理の流れを表すフローである。本実施形態を実現する不図示の制御プログラムは記憶装置121に格納されており、不図示のRAMにロードされて、CPU103によって実行されるものである。
図6のフローチャートの流れに沿って本手法を説明する。まず、S600で図3に示された単色キャリブレーションを実行する。このとき、S311の画像処理の実行及び出力では画像処理部114にて任意の種類の画像処理手法を行い、S315の後に1D−LUT218が作成される。次に、S601で適用する全て種類の画像処理手法で1D−LUT218が生成されたか否かを判定する。適用する全て種類の画像処理手法の1D−LUT218が更新されていない場合にはS600に戻り、単色キャリブレーションを継続する。その際には、最大濃度の補正(S301〜S307)は行わず、S309の階調補正から実行する。なぜなら、どの画像処理手法で出力されたチャート画像を用いて1D−LUTを更新しても、最大濃度の補正結果は同じだからである。
この時、S311の画像処理の実行及び出力では、画像処理部114にてまだ単色キャリブレーションを実行するためのチャート画像を出力していない画像処理手法を選択する。
画像処理手法はスキャンデータを処理する際に適用するもの、PDLジョブでビットマップなどのラスタデータを処理する際に適用するもの、文字部を処理する際に適用するものなど複数種類用意されている。よって、複数種類用意された各画像処理手法に対応する1D−LUT218を更新するため、S600を複数回繰り返す。もしくは、予め使用用途を指定してキャリブレーションを開始した場合には、指定された用途の画像処理手法で出力されたチャート画像のみを用いてキャリブレーションが完了するまで繰り返せばよい。
画像処理手法の具体例を、図9を用いて説明する。図9は異なる線数および異なる角度のディザマトリクスを用いて実行される疑似階調処理で生成されるディザの一例を表している。最も線数の低い画像処理手法1は安定性が高く、やや線数の高い画像処理手法2は画像処理手法1よりも入力画像がもつ周期と干渉が起りにくい。最も線数の高い画像処理手法3は文字エッジの滑らかさを良好にする。このように、各画像処理手法には固有の特徴があり、出力画像のジョブ種やオブジェクトによって最適なものが使用される。混色チャート用画像処理手法については後に詳細を述べる。
S601で全ての画像処理手法の1D−LUT218が更新されたと判定された際には、S602に進み、混色キャリブレーションに用いるチャート画像の画像処理手法を決定する。前述したように画像処理手法は複数あるが、その中から1種類を選ぶ方法でも、予め混色補正用の画像処理手法を設定しておく方法でもよい。図9(a)は前者の場合に用いるディザマトリックスを示す。すなわち、単色キャリブレーションに用いるチャート画像を作成する際に用いた画像処理手法の中の1つである線数が中間的な画像処理手法2を選択し、混色キャリブレーションに用いるチャート画像を出力する際に用いる。図9(b)は後者の場合に用いるディザマトリックスを示している。すなわち、混色キャリブレーションに用いるチャート画像を出力する際の画像処理手法を、単色キャリブレーションに用いるチャート画像を作成する際に用いた画像処理手法とは別に用意している。この場合、使用可能な複数の画像処理手法のうち、第1の画像処理手法以外を単色キャリブレーションに用いるチャート画像を出力する際に用いる。そして、第1の画像処理手法を混色キャリブレーションに用いるチャート画像を出力する際に用いる。
また、混色キャリブレーションに用いるチャート画像を出力する際に選択する画像処理手法は、通常は予め決まっており、その選択をユーザが任意で切り換えられるようにしてもよい。なお、各画像処理手法にて用いられるディザは通常、C、M、Y、Kそれぞれに対して異なるものが用いられる。図9では画像処理手法の特徴を示すため代表的な種類を示したが、実際には、予め決められた組合せのC、M、Y、Kそれぞれの画像処理手法をセットで選択することになる。以後、画像処理手法とはC、M、Y、Kそれぞれの画像処理手法のセットを指すものとする。
S602にて画像処理手法が決定すると、S603に進み、混色キャリブレーションを実行する。S603で実行される混色キャリブレーションの詳細は図4の通りであるが、S403にて画像処理を実行する際に、S602で決定した混色画像処理手法を適用した画像処理を行う。混色の変化は画像処理手法による違いよりも、エンジン状態の変化を大きく反映している。そのため、各色とも1種類の画像処理手法のみで補正することで、混色キャリブレーションの効果を得ることが出来る。また、画像処理手法は、図9に示したディザ法のみでなく、誤差拡散法やFMスクリーン法など複数種類あってもよい。
以上のように本実施例では、混色キャリブレーションでは全ての画像処理手法により出力された複数のチャート画像を用いて補正を行うのではなく、選択された1種類の画像処理手法により出力されたチャート画像のみを用いて補正を行う。これにより、補正の効果を得ながら、使用する用紙やトナーの量が増加するのを抑制し、ユーザにかかる手間を増やさずに混色の再現特性を補正することが出来る。
さらに、本件では、単色キャリブレーション実行時には、すべての画像処理手法を用いて作成されたチャート画像を用いて測定した結果を用いて単色の再現特性を補正する。
よって単色の再現特性は精度よく補正することができるため、単色キャリブレーションが適切に行われていることが前提とされている混色キャリブレーションによる補正の精度を保つことも出来る。
(実施例2)
ここでは、実施例1と異なる部分のみを説明する。本実施例ではユーザの利用状況を解析し、最も頻繁に用いられている画像処理手法で出力したチャート画像を用いて混色キャリブレーションを行う。混色の再現特性は画像処理手法の違いによる影響を受けにくいと言える。しかし、当然ながら、キャリブレーション用のチャート画像を出力した時に用いた画像処理手法に対して最も精度よく補正が出来る。そこで、ユーザが頻繁に使用する画像処理手法を用いて混色キャリブレーション用のチャート画像を出力することで、ユーザにとって最も効果のある混色キャリブレーションの実施が可能となる。
図7が本実施例の処理の流れを表すフローである。実施例1と異なるのは、混色キャリブレーションの前にS701でユーザの利用状況の解析を行う点である。ユーザの利用状況の解析S701について図8を用いて詳しく説明する。
図8は、ユーザの利用状況の解析S701を行うためのデータ収集のフローである。ユーザの利用状況の解析S701を行うプログラムは記憶装置121に格納されており、不図示のRAMにロードされて、CPU103によって実行される。プリンタドライバ125から送られたラスター画像113を印刷する場合を例に説明する。まず、S801で、1ページの画像データを印刷する際に使用する画像処理手法が複数あるか否か、すなわち印刷対象の1ページの画像データを形成する際に画像処理手法の切換えがあるかどうかを判定する。画像処理手法の切換えは一般的に入力画像の像域データを基に行われるため、像域データを参照して画像処理手法の切換えがあるか否かを判定する。もしくは、その他の出力時の設定から、画像処理手法の切換えがあるか否かを判定できればそちらを用いてもよい。S801にて、ページ内に画像処理手法の切換えがないと判定された場合にはS804に進む。そして、S804にて、出力時に使用される画像処理手法1種類のみをカウントする。カウント結果は、記憶装置121に格納される。一方、S801にて、ページ内に画像処理手法の切換えがあると判定された場合にはS802に進む。
そして、S802にてページ内における各種画像処理手法の使用率(ページ内使用率)を取得する。
ページ内使用率は、1ページを印刷する際に、各画像処理手法のそれぞれが使用された割合を示す。
S802にて取得した各画像処理手法のページ内使用率がどの画像処理手法も閾値以上である場合にはS803に進む。そしてS803にて、使用される全ての画像処理手法をカウントする。一方、S802にて取得した各画像処理手法のページ内使用率のうち、特定の画像処理手法のページ内使用率のみ閾値以上である場合には、S804に進む。そしてS804にてページ内使用率が高い特定の画像処理手法のみをカウントする。ページ内使用率が高いか否か判定する閾値は予め定めておく。例えば30%など設定した場合、ページ内使用率が30%以上の画像処理手法はページ内使用率が高い画像処理手法であると判定し、ページ内使用率が30%以下の画像処理手法はページ内使用率が低い画像処理手法であると判定する。
図7のフローに戻り、S702 では、S701で収集したデータから、データを収集した期間で最も頻繁に使用された画像処理手法を決定する。
画像処理手法の全体の使用率は、全種類の画像処理手法が使用された回数(総カウント数)に対して、各画像処理手法が使用された回数(カウント数)を求めることで各画像処理手法の使用率が得られる。また、カウントする期間(データを収集する期間)は、前回の混色キャリブレーション実行時から、S701でユーザの利用状況の解析を行うまでの間でもよいし、例えば1ヵ月などと予め定めた期間ごとでもよい。電子写真装置を共有する人数が少ない場合には、短期間で取得されたカウント回数を採用することも有効であると考えられる。
次にS703に進み混色キャリブレーションを実行する。この詳細は図4の通りであるが、S403にて画像処理を実行する際に、S702で決定した画像処理手法を適用する。
本実施例の説明では、図8に示すように、1ページを印刷する際に画像処理手法の切換えのありなしを判定して画像処理手法をカウントする手法を説明したが、画像処理手法を使用した頻度が抽出できる有効な方法が他にあれば、そちらを用いても構わない。例えば、コピージョブとPDLジョブとで画像処理手法が異なる場合には、ジョブ種ごとに画像処理手法の切り替えをカウントする方法も有効である。以上のように、ユーザの利用状況を解析し、最も頻繁に用いられている画像処理手法で作成されたチャート画像を用いて混色キャリブレーションを行うことで、ユーザが頻繁に目にする特徴の画像に最も適した混色の再現特性の補正が可能となる。
(その他の実施例)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
また、上記実施例について電子写真装置を例に説明をしたが、インクジェットプリンタ、サーマルプリンタ等でもよく、本発明の主旨はプリンタの種類に限定されるものではない。また、記録剤として、電子写真印刷におけるトナーを例に説明したが、印刷に用いる記録剤は、トナーに限らずインク等他の記録剤であってもよく、本発明の主旨は記録剤の種類に限定されるものではない。