JP6231777B2 - 試料を調製、とりわけ被覆するための装置 - Google Patents

試料を調製、とりわけ被覆するための装置 Download PDF

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Description

本願は、オーストリア特許出願A50220/2012、2012年6月4日出願の優先権を主張するものであり、その開示内容は、引用をもって本願に記載されたものとする。
本発明は、例えば後で電子顕微鏡的に検査するために標本を被覆するための装置に関する。この装置は、
・金属容器の形態の真空室と、
・前記真空室に割り当てられた、被覆材料の少なくとも1つのソースと、
・調製すべき少なくとも1つの試料を前記真空室内で試料位置に位置決めすることのできる少なくとも1つの試料保持部と、
・制御電子回路と、
・前記制御電子回路に命令を入力するための操作コンソールと、
・少なくとも前記真空室と制御電子回路とを取り囲むハウジングと、
を有する。
前記形式の標本調製装置は種々の実施形態で公知であり、試料およびサブストレートを高真空および中真空の雰囲気下で被覆するために使用され、とりわけ電子顕微鏡標本を薄い導電金属層により被覆するために使用される。「スパッタ」、「スパッタ被覆」または「スパッタコーティング」の名称でも知られているカソードスパッタリングでは、エネルギーの豊富なイオン、通常は活性化希ガスプラズマまたは希ガスイオン流によって、例えばプラチナまたは金のようなターゲットから金属原子が打ち出され、この金属原子が試料に析着し、そこに層を形成する。同様に真空蒸発装置も十分に公知であり、この真空蒸発装置によって蒸発材料が、電流による加熱によって蒸発される。シャトルまたは螺旋体からの炭素繊維蒸発法、炭素ロッド蒸発法、金属蒸発法の公知の方法並びに電子流による蒸発は、電子顕微鏡で広く使用されており、とりわけ透過型電子顕微鏡のための複写膜または補強膜の作製、および走査型電子顕微鏡試料のための非常に薄い導電性表面層の作製に使用されている。さらに、種々の複数の試料調製技術を組み合わせることのできる多数の機器が使用されている。凍結走査型電子顕微鏡(Cro−REM)ないしは透過型電子顕微鏡(TEM)のために、とりわけフリーズフラクチャーおよびフリーズエッチング装置において高真空の下で試料が調製される。この装置の真空室には、被覆のために設けられた構成部材に加えて、フリーズフラクチャーまたはフリーズエッチングに必要な処理工具が配置されている。
電子顕微鏡試料を調製するための公知の機器は、例えばCressington社、Quorum Technokogies社、Denton Vacuum und Gatan社によって製作されている。公知の機器は、もっとも一般的な構成では実質的に、取り外し可能なガラスシリンダと、当該ガラスシリンダ用のカバーと、電子制御部を備えるソケットと、真空ポンプと、前記ガラスシリンダ用の収容部とからなり、前記ガラスシリンダ内では例えば試料台の形の試料保持部上に試料が配置されており、前記カバーは被覆材料のソースを含む。いくつかの機器では、真空室が金属受容器である。比較的大きな装置は正面ドアも有する。
欧州特許出願公開1531189A1には、真空析着装置が記載されている。この装置は、真空室よりも格段に大きな幅を有する。
欧州特許出願公開1531189A1
公知の機器には以下の欠点がある。
・多くの場合機器が非常に幅広であり、実験室内で大きな設置面積を必要とする。したがって大抵の場合狭い実験室スペースを効率的に使用することができない。
・取り外し可能なガラスシリンダがシール面において、破片によって容易に破損することがあり、それにより真空気密に関して問題が生じる。
・被覆材料のソースを備えるカバーは多くの場合、傾斜可能に支承されているが、このカバーが真空気密の点でしばしば問題である。
・試料を取り出すためにカバー内に収容された被覆源を、カバーの開放の際に移動しなければならない。その際に、不完全に蒸発した材料(例えば炭素繊維)の残滓またはソースの周囲から剥離した層粒子が試料に落下することがある。
・内破の危険性があるので安全のため、ガラスシリンダの周囲に破片保護部が必要である。
・試料用の真空搬送装置を接続するために(例えば凍結電子顕微鏡で後の検査するため凍結固定試料を調製すべき場合)、側方フランジを備える金属シリンダによってガラスシリンダを置き換えなければならない。それにより面倒な取り扱いを別にしても、さらなる実験室スペースが必要である。
・オペレータにとって人間工学的な操作は、とりわけガラスシリンダを備える機器では困難である(上方からの操作)。
本発明の課題は、実験室での設置面積が小さく、人間工学的に操作することができ、改善されたモジュール構造の利点を有し、真空気密および試料汚染に関して公知の装置で発生する問題が回避された装置を提供することである。
本発明の一視点において、冒頭に述べた形式の、例えば後での電子顕微鏡的な検査のために試料を被覆する装置が提供される。該装置において、本発明にしたがいハウジングが実質的に真空室の幅に相当する幅を有しており、前記真空室が、当該室の前側に配置されたドアを有し、操作コンソールが前記真空室の下方に配置されたハウジングの脚部領域内にまたは脚部領域の前方に存在しており、少なくとも1つのソースが前記真空室の上側に取り付け可能であり、前記少なくとも1つのソースの上にスイッチ素子を有する保護カバーが配置されており、該スイッチ素子が前記保護カバーの開放の際に作動され、かつ該スイッチ素子が少なくとも1つのソースの電流供給に対する遮断部と接続されている
本発明において、以下の展開形態が可能である。
(形態2)前記真空室の前側は、その中に開口部が形成された平坦な面であり、前記ドアは、前記開口部の縁部に外側で保持されたプレートにより形成されており、該プレートにより前記開口部を真空気密に閉鎖することのできる装置が好ましい。
(形態3)前記真空室は立方体の基本形状を有し、当該立方体の一面が前記前側を形成する装置が好ましい。
(形態4)前記試料を調製するための装置は、電子顕微鏡での後の検査に合わせて設計されており、前記試料保持部上では、前記当該試料保持部上にリバーシブルに固定可能な試料収容部に少なくとも1つの試料を収容することができる装置が好ましい。
(形態5)各少なくとも1つのソースが取り外し可能なブッシングに収容されており、当該ブッシングにより前記真空室の上側に固定可能である装置が好ましい。
(形態6)前記少なくとも1つのソースの上にスイッチ素子を有する保護カバーが配置されており、該スイッチ素子が前記保護カバーの開放の際に作動され、かつ該スイッチ素子が少なくとも1つのソースの電流供給に対する遮断部と接続されている装置が好ましい。
(形態7)前記真空室の前記ハウジングは、当該真空室の最大側方広がりに横方向で当接するのが好ましい。
(形態8)前記制御電子回路は、前記真空室の下方および/または後方に配置されている装置が好ましい。
(形態9)前記ハウジングを貫通する拡張部を接続することができる、前記真空室の側方に存在するフランジを有する装置が好ましい。
(形態10)前記真空室は、真空供給のための接続端子を有し、当該接続端子は前記真空室の裏側にだけ配置されている装置が好ましい。
(形態11)前記真空室内には凍結試料調製を実施するための装置が配置されている装置が好ましい。
(形態12)前記真空室内には、析着された被覆材料層厚を測定するための水晶発振子が配置されている装置が好ましい。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照番号はもっぱら理解を助けるためであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
前記解決手段のおかげで、前記課題を特に効率的なやり方で解決することができる。装置の小さな幅が実質的に真空室の幅によって規定されることにより、実験室スペースを最大限有効に使用することができる。前側に存在するドアを備える真空室は金属製、例えばステンレス製またはアルミニウム製であるから、ガラス破片は内破の場合に(真空)室に落下する。これによりこの装置は、ガラスシリンダを備える上記公知の装置と比較して安全技術的に問題とならない。さらに本発明の装置は、オペレータにとって重要な利点を有する。なぜならドアが前側に配置されていることにより、人間工学的に有利に試料にアクセスすることができ、とりわけソースを前もって移動させる必要なしに試料を取り出すことができる。同じように真空室の下方に配置されたハウジングの脚部領域内にまたは脚部領域の前方に操作コンソールが配置されることは人間工学的に有利である。
概念「前側」とは、機器(装置)のユーザに向いた側であると理解すべできある。概念「長手方向」とは、前側に対して直角に経過する水平方向である。「深さ」(奥行き)は、長手方向に沿った(最大)広がり寸法である。概念「幅」は、長手方向に対して直角の水平方向での(最大)広がり寸法に関連する。
本発明でハウジングは、実質的に真空室の幅に相当する幅を有する。概念「実質的に」とは、装置のハウジングが、製造公差を考慮して必要な取り付け間隔以上には金属真空室(金属受容器)の外縁部から離れていないことを意味する。ここで金属受容器の外側の幅は、必要な壁厚、および正面ドアとその他のセンサのための保持閉鎖手段を取り付けるためのスペース分だけ内室に対して大きくされている。
当業者であれば、多数の被覆材料源および材料層を施与するための対応する方法を使用することができる。ソースは一側面では、蒸発源に取り入れられた繊維またはロッド形状の蒸発材料を備える蒸発源とすることができ、前記蒸発材料は冒頭に述べたように電流による加熱によって蒸発される。繊維またはロッド状の蒸発材料は、例えば炭素繊維または炭素ロッドとすることができる。さらにソースは、公知のカソードスパッタリング(「スパッタ」、「スパッタ被覆」または「スパッタコーティング」とも称される)方法に指向することができる。このカソードスパッタリングでは、上に述べたようにエネルギー豊富なイオン、すなわち典型的には希ガスプラズマまたは希ガスイオン流、金属原子(金、プラチナ等)がターゲットから打ち出され、これが試料に析着し、そこに層を形成する。さらにソースは、被覆材料の電子流蒸発(電子ビーム蒸発)に指向することができる。一側面では装置に、被覆すべき試料表面を表面処理し、クリーニングするためのグロー放電装置を装備することができる。
この装置は、1つまたは複数のソースを含むことができる。典型的には装置は、上記のソースを2つまで含む。本発明の装置の幅が小さいので、さらなる被覆方法が必要な場合には、スペースを節約して複数の装置を並置することができる。
少なくとも1つの試料は試料保持部に収容される。当業者であれば、一般的に使用可能な従来技術から十分に公知である多種多様な試料保持部を使用することができる。少なくとも1つの試料保持部は、例えば試料台として実現することができる。ここで当業者であれば、試料台の構成に関しても多種多様の変形を得ることができ、例えば傾斜および回転可能な試料台、ピン試料台または遊星運動式回転テーブルがある。できるだけ高いモジュール性を可能にするため、試料台は交換可能とすることができる。
取り外し可能なプレートまたは他のシールド装置によって、受容器の壁が被覆から保護されていると有利である。このプレートは、取り付けられた状態で簡単にクリーニングすることができる。これにより受容器の面倒なクリーニングが不要になる。さらに異なる被覆方法に対しては異なるセットの保護プレートを使用することができる。これにより、別の例えば壁からの二次スパッタによる被覆の影響が最小になる。
一側面では、中真空(Feinvakuum、10−3mbarまで)において試料を調製するための装置を使用することができ、別の側面では高真空(Hochvakuum、10−7mbarまで、特別の場合には10−8mbarまで)において試料を調製するための装置を使用することができる。
概念「試料」は、科学的実験または検査、すなわち例えば電子顕微鏡での検査のための標本に関連する。これらの検査のために、多くの場合、試料は電子顕微鏡試料支持体の上にある。ここで概念「試料支持体」は、電子顕微鏡および電子顕微鏡試料調製に適したすべての支持体に関連する。その例は、主にTEMで使用されるが、REMでも使用され、十分に公知であるグリッド(ネット支持体、スモールネット、ネット)であり、種々の形式に成形されたホール(ハニカム、スリット等)またはグリッドを規定するメッシュ数を有する。さらにREMでは、例えばシリコンウェハ、グラファイトディスク、および導電性二重接着ストリップ(導電性タブ)が使用される。
本発明の一側面によれば、真空室の前側はその中に形成された開口部を有する平坦な面であり、ドアはこの開口部の縁部の外側に保持されたプレートによって形成され、このプレートにより開口部を真空気密に閉鎖することができる。これによりとりわけ良好な密閉が可能であり、密閉性の問題が回避される。一従属的側面によれば、真空室が立方体の基本形状を有し、立方体の一面が前記前側を形成する。
好ましくは真空室内で経過するプロセスを監視できるようにするため、ドアは監視窓を有する。
電子顕微鏡の試料を調製し、引き続き試料を装置から電子顕微鏡に移すために、試料を調製するための装置が電子顕微鏡での後の検査に合わせて設計されており、試料保持部上で少なくとも1つの試料が、この試料保持部にリバーシブルに固定可能な試料収容部に収容可能であると好ましい。これにより試料収容部をその中に収容された少なくとも1つの試料も含めて試料台から外すことができ、後での電子顕微鏡検査のために電子顕微鏡に移すことができる。そのために電子顕微鏡は、試料収容部用の適当な保持部を有する。
ソースを交換および/またはクリーニングするために、各少なくとも1つのソースが取り外し可能なブッシングに収容され、このブッシングにより真空室の上側に固定可能であると好ましい。
安全技術的理由から、少なくとも1つのソースの上にスイッチ素子を有する保護カバーが配置されており、このスイッチ素子は保護カバーの開放の際に作動され、かつこのスイッチ素子が少なくとも1つのソースの電流供給に対する遮断部と接続されていると好ましい。保護カバーは有利には、交換可能なソースの上に配置されたフラップとして実現され、このフラップには安全スイッチが装備されている。保護カバーを開放すれば、交換および/またはクリーニングのためにソースを簡単かつ確実に取り出すことができる。
特に小さな幅を可能にし、したがって実験室設置面積を最適に利用することができるようにするため、真空室のハウジングが真空室の最大側方広がりに横方向で当接すると好ましく、確実な取り付けのために必要な公差間隔以下であると有利であり得る。
操作コンソールは好ましくは、公知の形式のタッチスクリーンとして実現されている。一側面では、制御電子回路が真空室の下方および/または後方に配置されている。しかし制御電子回路は好ましくは真空室の下方に配置される。なぜならそれにより真空室が高くなることによってオペレータに対する人間工学性が改善されるからである。
多くの適用および調製方法では、真空室に拡張部を接続することが望まれる。したがって別の側面では、装置が真空室の側方に存在するフランジを有し、ハウジングを通して案内される拡張部、とりわけ移送装置、エアロック、または冷凍用の貯蔵庫を備える冷却装置をこのフランジに接続することができる。幅が小さく、したがって装置の形態も細いので、側方のフランジを介して拡張部を右または左に接続することができ、過度に多くの実験室設置面積を必要としない。例えば氷結晶形成を回避するために非常に高速に冷却される凍結試料は、冷却状態でのさらなる試料調製のために本発明の装置に移送しなければならない。凍結試料のこの移送は非常にクリティカルである。なぜなら試料が湿った空気と接触すると直ちに氷結晶により覆われるからである。したがって移送は好ましくは専用の(真空)移送装置、例えばライカ社の形式EM VCT100の真空冷凍移送装置を用いて行われる。さらにエアロックを介して、冷却されていない試料ホルダをその中に収容された試料とともに装置の真空室に送り込むことができる。さらに一従属的側面によれば、真空室に存在する試料を冷却ベルトを介して冷却するために、および/またはクライオポンプと同じように機能する容器の冷えた表面に起因する真空を改善するために、冷却装置、すなわち例えば液体窒素を備える容器を接続することができる。
特にスペースが節約される変形例では、真空室が真空供給のための接続端子を有し、この端子は真空室の裏側にだけ配置されている。
本発明の一展開形態では、真空室内に凍結試料調製用の装置、とりわけフリーズフラクチャー、フリーズエッチング、凍結乾燥および複写技術のための装置が配置されている。この一形態により、10−7mbar以上の高真空下で1つまたは複数の被覆技術(例えば金属被覆および/または炭素被覆)と組み合わせた凍結試料調製を適用して、ただ1つの機器で試料の調製を行うことができる。対応して真空室には、凍結調製に必要であり、十分に公知の処理工具、例えば冷えたナイフが配置されている。真空室の前側に存在するドアは好ましく監視窓を有し、このドアによりオペレータは試料の操作中に人間工学的な姿勢を取ることができる。
多数の電子顕微鏡適用に対しては、試料上に析着される材料層が所定の厚さを有することが非常に重要であり、この厚さは所定の公差範囲を上回っても下回ってもならない。この理由から、析出された被覆材料層厚を測定するための水晶発振子を真空室に配置すると有利である。この種の水晶発振子は、関連の当業者には十分に公知であり、典型的には試料のごく近傍に配置される。
本発明をさらなる詳細と利点も含めて、以下、添付図面に示された2つの実施例に基づいて詳細に説明する。すなわち、中真空において試料を調製するための装置と、高真空において試料を調製するための装置に基づいて説明する。図面は詳細を概略的に示している。
中真空において試料調製をするための本発明の装置の第1実施例を左上から見た斜視図である。 図1の装置を右上から見た斜視図である。 図1の装置の側面図である。 図1の装置の背面図である。 ドアが開放されており、ハウジング、制御電子回路および操作コンソールを備えていない図1の装置の真空室の斜視図である。 図5に示したのと同様の真空室の正面図である。 図5に示したのと同様の真空室の後方領域の斜視図である。 高真空において試料調製をするための本発明の装置の別の実施例を左上方から見た斜視図である。 図8の装置を右上から見た斜視図である。 図8の装置の側面図である。 図8の装置の背面図である。
図1は、装置100を左上から見た斜視図である。この装置は、中真空(Feinvakuum)、すなわち10−3mbarまでの真空において試料を調製するために設けられている。図2は、装置100を右上から見た斜視図を示す。ハウジング101内には、金属製の真空室105と図1には図示されていない制御電子回路とが配置されている。制御電子回路は、真空室105の下方の脚部(ないし基部)領域102と後方の領域に存在する。したがって脚部領域102は、真空室105の下縁部の下方に存在する領域である。ハウジング101の脚部領域102の前方には例えばタッチスクリーン104を備える操作コンソール103がある。試料は、真空室105内の試料台120(図5と6参照)の上にある。真空室105は前側にドア106を有し、このドアにはガラス板から形成された監視窓107が、真空室105内で行われる調製過程を視覚的に監視するために嵌め込まれている。監視窓107を取り囲むフレーム108は、監視窓107からパッキン109にまで延在する(すなわち、フレーム108によりパッキン109が装着される。図5と6参照)。ドア106を錠112により閉鎖することにより、真空室105は真空気密に閉鎖される。ハウジング101は幅bを有し、この幅bはその中に格納された真空室105の幅b’に実質的に相当する。概念「実質的に」とは、ハウジング101が製造公差を考慮して必要な取り付け間隔以上には真空室105の外縁部から離れていないことを意味する。ここで真空室105の外幅b’は、必要な壁厚とドア106および場合によりセンサのための保持閉鎖手段(例えば錠112)を取り付けるためのスペース分だけ、真空室105の内室110(図5参照)に対して大きくされている。被覆材料の少なくとも1つのソースは、例えば炭素繊維のための蒸発源、または例えば金、プラチナ等からなるスパッタターゲットを備えるスパッタ源であり、真空室105の上側に配置されている。ソースを交換および/またはクリーニングするためにハウジング101のフラップ111(旋回開閉可能な蓋部材)によって真空室105への入口が形成される。ここで真空室105自体は、後で図5と6で詳しく説明するようにその上側に、少なくとも1つのソースを収容するための取り外し可能なブッシングを有する。
図3は、装置100の側面図である。さらに図4には装置100の背面図が示されており、この図はハウジング101の裏領域113を示す。裏領域113には必要な機器接続端子、例えば真空接続端子114、電源端子115およびLAN端子116、並びにオン/オフスイッチ117とプロセスガス(例えばアルゴンのような希ガス、酸素等)用供給ホースのための出入口がある。
図5は、ドア106が開放され、内室110が見えるようにした図1の装置の真空室105の斜視図である。ここでは真空室105を見やすくするために、ハウジング101、制御電子回路および操作コンソール103は除去(図示省略)されている。監視窓107を取り囲むフレーム108は、監視窓107をパッキン109に案内する。制御電子回路は上に述べたように、金属製真空室105の後方および下方に格納されており、とりわけスタンド脚部118により形成された自由な脚部領域102内に格納されている。真空室105の下方には、真空室105の底部領域119に脱着可能に固定された試料台120がある。試料台は高さ調整可能かつ交換可能であり、試料を容易に固定するため真空室105から取り外すことができる。試料台120の上には試料を収容するための複数の試料収容部121がある。ここで試料は通常、適切な試料支持体の上に、上記明細書冒頭部に述べたように取り付けられる。真空室は幅b’を有し、ハウジングは上に述べたように、真空室105の幅b’に実質的に相当する幅bを有する。真空室105の内面の上側には被覆材料の少なくとも1つのソース、例えば炭素繊維に対する少なくとも1つの蒸発源および/または例えば金、プラチナ等からなるスパッタターゲットを備える少なくとも1つのスパッタ源が配置されている。ソースはそれぞれブッシングに収容されており、ブッシングは真空室と脱着可能の真空気密に接続されている。対応して真空室105はその上側の天井領域122に開口部123を有する。この開口部はブッシングによって真空気密に閉鎖することができる。ソース用の取り外し可能なブッシングによって、ソースを容易に交換ないしはクリーニングすることができる。安全技術的理由から、ブッシングの上にはスイッチ素子を有する保護カバー(図1から3)が配置されており、このスイッチ素子は保護カバー111の開放の際に作動され、かつ例えば安全スイッチの形の、ソースの電流供給に対する遮断部と接続されている。保護カバー111を開放すれば、交換および/またはクリーニングのためにソースを簡単かつ確実に取り出すことができる。同様に図5には、真空室105を装置100の外部にある真空ポンプ並びにプロセスガス用の供給ホース125に接続するための真空接続管124が図示されている。
図6は、図5に示したような真空室105の正面を示し、開放された真空室105の内室110が直接見える。ここには試料台120用の取付支持機構130が図示されており、この取付支持機構は真空室105の下側と接続されている。図示の実施例では、台が手動で高さ調整可能であり、ローレットねじ131により固定される。同様に高さ調整は電動で、例えばスピンドル駆動部を介して行うこともできる。この場合、モータと駆動機構および対応する真空ブッシングが簡単な取付支持部130と置き換わる。図6にはさらにシャッタ132が図示されており、このシャッタは、ソースのクリーニング過程および点火過程の際に試料を場合による汚染から保護するためにソースと試料との間で開け閉めすることができる。シャッタ132は図示の実施例では、アーム133により電動的に片側に押し付けられ、(図示しない)ばねによりアーム133の復帰回転の際にソースと試料との間に位置決めされる。さらに真空室内の左上には層厚測定ヘッド(図示せず)、すなわち例えば水晶センサ用の取付部134が見える。この取付部134の個別のエッジはソースに対してあらかじめ規定された所定の間隔を同時にマークする。これにより簡単に、試料台120上に収容された試料と被覆源との間隔を調整することができる。
図7は、図5と同様に真空室105の裏側領域を斜視図に示す。この裏側領域には上に述べたように真空、電源およびプロセスガス用の接続端子が存在する。さらにここには、プロセスガスの制御用および真空室105の換気用の弁135がある。シャッタ132は上に述べたようにモータ136により移動されるアーム133によって操作される。これらすべての端子および制御エレメントは裏側領域から後方に伸びているから、真空室105の幅b’および結果として装置100の幅bも非常に小さく維持される。
図8は、高真空において、すなわち10−3mbar超から10−7mbar、場合により10−8mbarまでの真空において試料を調製するための本発明の装置200を左上から見た別の実施例の斜視図である。図9は、装置200を右上から見た斜視図を示す。図1から7に示した中真空で試料調製するための装置と同じように、装置200ではハウジング201の下方に金属製の真空室205と図示されていない制御電子回路とが配置されている。制御電子回路並びに必要なポンプ、例えばターボ分子ポンプと前置接続されたダイヤフラムポンプは真空室205の下方かつ後方に、好ましくはハウジング201の脚部領域202にある。ハウジングの脚部領域202の前方にはタッチスクリーン204を備える操作コンソール203がある。試料は真空室205内にあり、装置100と同様に試料台の上に配置されている。真空室205は前側にドア206を有し、このドアにはガラス板から形成された監視窓207が、真空室205内で行われる調製過程を視覚的に監視するために嵌め込まれている。監視窓207を取り囲むフレーム208は、監視窓207をパッキンに案内する。ドアを錠212により閉鎖することにより、真空室205は真空気密に閉鎖される。装置100と同様に、ハウジング201も幅b''を有し、この幅b''はその中に格納された真空室205の幅に実質的に相当する。被覆材料の少なくとも1つのソースは、例えば炭素繊維のための蒸発源、および/または例えば金、プラチナ等からなるスパッタターゲットを備えるスパッタ源であり、真空室205の上側に配置されている。ソースを交換および/またはクリーニングするために、ハウジング201のフラップ211によって真空室205への入口が形成される。ここで真空室205自体は、上に述べた真空室105と同じように、各配置されたソースに対してそれぞれ1つの取り出し可能なブッシングを前記フラップ211の下方に有する。フラップ211は、フラップ111と同じように保護カバーの機能も満たす。さらに真空室205の側方にはフランジが配置されており、このフランジは図ではブラインドフランジ215(図8)および216(図9)によって閉鎖されている。このフランジには、ハウジング201を貫通する拡張部、とりわけ移送装置、エアロック、または冷凍用の貯蔵庫を備える冷却装置を接続することができる。幅が小さく、したがって装置200の形態も細いので、側方のフランジを介して拡張部を接続することができ、これにより過度に多くの実験室設置面積を必要としない。例えば氷結晶形成を回避するために非常に高速に冷却される凍結試料は、さらなる試料調製(例えばフリーズフラクチャー、フリーズエッチング、凍結乾燥等)のために冷却された状態で本発明の装置に移送しなければならない。凍結試料のこの移送は非常にクリティカルである。なぜなら試料が湿った空気と接触すると直ちに氷結晶により覆われるからである。したがって移送は専用の(真空)移送装置、例えばライカ社の形式EM VCT100の真空冷凍移送装置を用いて行われる。対応してこの目的のために、真空室205内には必要な処理工具および凍結試料(例えばフリーズフラクチャー、フリーズエッチング)用の装置が設けられている。さらにエアロックを介して、冷却されていない試料ホルダをその中に収容された試料とともに装置の真空室に送り込むことができる。さらに真空室に存在する試料を冷却ベルトを介して冷却するために、および/またはクライオポンプと同じように機能する容器の冷えた表面に起因する真空を改善するために、冷却装置、すなわち例えば液体窒素が充填されたデュワー瓶(真空瓶)を接続することができる。
図10は、装置200の側面を示す。さらに図11には、装置200の背面図が示されており、この図はハウジング201ないしは装置200の裏領域213を示す。必要な機器端子、例えばプロセスガス接続端子、電源端子およびLAN端子はもっぱら裏領域213に存在しており、これにより装置200の幅b''が非常に小さく維持される。
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
100、200 標本を被覆するための装置
101、201 ハウジング
105、205 真空室
120 試料保持部(保持台)
103、203 操作コンソール
106、206 ドア
102、202 脚部領域
111、211 保護カバー
114、124 端子
113、213 裏側領域

Claims (11)

  1. ・金属容器の形態の真空室(105、205)と、
    ・前記真空室(105、205)に割り当てられた、被覆材料の少なくとも1つのソースと、
    ・調製すべき少なくとも1つの試料を前記真空室(105、205)内で試料位置に位置決めすることのできる少なくとも1つの試料保持部(120)と、
    ・制御電子回路と、
    ・前記制御電子回路に対する命令を入力するための操作コンソール(103、203)と、
    ・少なくとも前記真空室(105、205)と前記制御電子回路とを取り囲むハウジング(101、201)と、を有する標本を被覆するための装置(100、200)であって、
    前記ハウジング(101、201)は、前記真空室(105、205)の幅(b’)に相当する幅(b、b'')を有し、
    前記真空室(105、205)は、当該室の前側に配置されたドア(106、206)を有し、
    前記操作コンソール(103、203)は、前記真空室(105、205)の下方に配置された前記ハウジング(101、201)の脚部領域(102、202)内にまたは当該脚部領域の前方に存在しており、
    前記少なくとも1つのソースは前記真空室(105、205)の上側に取り付け可能であり、
    前記少なくとも1つのソースの上にスイッチ素子を有する保護カバー(111、211)が配置されており、該スイッチ素子が前記保護カバー(111、211)の開放の際に作動され、かつ該スイッチ素子が少なくとも1つのソースの電流供給に対する遮断部と接続されている
    ことを特徴とする装置。
  2. 前記真空室(105、205)の前側は、その中に開口部が形成された平坦な面であり、前記ドア(106、206)は、前記開口部の縁部に外側で保持されたプレートにより形成されており、該プレートにより前記開口部を真空気密に閉鎖することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. 前記真空室(105、205)は立方体の基本形状を有し、当該立方体の一面が前記前側を形成する、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
  4. 前記試料を調製するための装置は、電子顕微鏡での後の検査に合わせて設計されており、前記試料保持部(120)上では、前記当該試料保持部上にリバーシブルに固定可能な試料収容部に少なくとも1つの試料を収容することができる、ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の装置。
  5. 各少なくとも1つのソースが取り外し可能なブッシングに収容されており、当該ブッシングにより前記真空室(105、205)の上側に固定可能である、ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置。
  6. 前記真空室(105、205)の前記ハウジング(101、201)は、当該真空室の最大側方広がりに横方向で当接する、ことを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の装置。
  7. 前記制御電子回路は、前記真空室(105、205)の下方および/または後方に配置されている、ことを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の装置。
  8. 前記ハウジングを貫通する拡張部を接続することができる、前記真空室(205)の側方に存在するフランジを有する、ことを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の装置。
  9. 前記真空室(105、205)は、真空供給のための接続端子(114、124)を有し、当該接続端子は前記真空室(105、205)の裏側(113)にだけ配置されている、ことを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の装置。
  10. 前記真空室(105、205)内には凍結試料調製を実施するための装置が配置されている、ことを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の装置。
  11. 前記真空室(105、205)内には、析着された被覆材料層厚を測定するための水晶発振子が配置されている、ことを特徴とする請求項1から10までのいずれか一項に記載の装置。
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