JP6222637B2 - 重合性非線形光学材料、非線形光学膜、光学素子、光変調素子、及び非線形光学膜の製造方法 - Google Patents
重合性非線形光学材料、非線形光学膜、光学素子、光変調素子、及び非線形光学膜の製造方法 Download PDFInfo
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Description
また、非線形光学材料に単量体を含有させ、ポーリング処理後に重合反応を行わせることも知られている。例えば特許文献3には、高分子化合物、揮発性の単量体(メチルアクリレート等)及び非線形光学効果を有する有機化合物を溶媒に溶解し、この溶液からフィルムを作製して有機非線形光学素子を製造する方法が記載され、フィルム形成の際にフィルムに電界を印加して、非線形光学効果を有する有機化合物を配向させ、続いて、ガラスマスクを乗せて紫外線照射により重合反応を行い、その後、不要な単量体を取り除いて光導波路を形成することが記載されている。
また、上記特許文献3に記載の方法では、非線形光学活性を有する化合物の配向状態を安定に保持することはできない。すなわち、特許文献3に記載の単量体は揮発性であるため、ポーリング時や重合反応時等に単量体が一定程度揮発し、単量体が存在していた場所が空の状態となる。その結果、残留する不揮発性成分の分子間の距離が長くなり、非線形光学活性を有する有機化合物の配向を強固に固定化することができない。さらに単量体の揮発は材料組成や上記フィルムの膜厚の変動を引き起こし、非線形光学性能にばらつきが生じる原因にもなる。
〔1〕
下記成分(a)〜(c)を含有し、ガラス転移温度が40℃以上120℃以下である重合性非線形光学材料であって、該重合性非線形光学材料中の重合性基を重合率80%に重合させた場合に、ガラス転移温度が120℃以上となる重合性非線形光学材料:
(a)非線形光学活性を有する有機化合物;
(b)下記(b−1)及び(b−2)から選ばれる1種又は2種以上の化合物;
(b−1)分子内に2つ以上の重合性基を有する化合物
(b−2)分子内に2つ以上の活性水素含有基を有する化合物
(c)ガラス転移温度が120℃以上のポリマー;
但し、上記重合性非線形光学材料が成分(b)として上記(b−1)を含有し、且つ上記(b−1)の重合性基が活性水素含有基と反応性を示す場合、重合性非線形光学材料は上記(b−2)を含有するか又は成分(a)の少なくとも1種が活性水素含有基を有し、
上記重合性非線形光学材料が上記(b−1)を含有しない場合、成分(a)の少なくとも1種が活性水素含有基と反応性を示す基を有する。
〔2〕
上記(b−1)が有する2つ以上の重合性基がエポキシ基、オキセタニル基及びエチレン性不飽和基から選ばれる基である、〔1〕に記載の重合性非線形光学材料。
〔3〕
成分(b)が、エポキシ基及びオキセタニル基から選ばれる重合性基を2つ以上有する化合物を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の重合性非線形光学材料。
〔4〕
重合性非線形光学材料が、重合性非線形光学材料中の重合性基を重合率80%に重合させた場合に、重合反応前に比べてガラス転移温度が40℃以上上昇する、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の重合性非線形光学材料。
〔5〕
成分(c)がポリカーボネートを含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の重合性非線形光学材料。
〔6〕
成分(a)〜(c)の総量に占める成分(b)の割合が10〜90質量%である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の重合性非線形光学材料。
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の重合性非線形光学材料を用いた非線形光学膜。
〔8〕
上記非線形光学膜が、上記重合性光学材料を用いて形成した膜をポーリング処理に付して成分(a)を配向させ、重合反応により成分(a)の配向状態を重合固定化してなる膜である、〔7〕に記載の非線形光学膜。
〔9〕
〔7〕又は〔8〕に記載の非線形光学膜を有する光学素子。
〔10〕
上記光学素子が光変調素子である、〔9〕に記載の光学素子。
〔11〕
〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の重合性非線形光学材料を基板上に塗布して成膜した後、ポーリング処理に付して成分(a)を配向させ、重合反応により成分(a)の配向状態を重合固定化することを含む、非線形光学膜の製造方法。
本発明の重合性非線形光学膜は、有機非線形化合物が高度に配向しており、且つ、この配向状態の安定性にも優れる。また、本発明の光学素子は、有機非線形化合物の高度な配向状態が安定に保持された非線形光学膜を有し、電気光学効果が高く、耐久性に優れる。
[重合性非線形光学材料]
本発明の重合性非線形光学材料(以下、単に「本発明の材料」という。)は下記成分(a)〜(c)を含有し、ガラス転移温度が40℃以上120℃以下である。
(a)有機非線形光学化合物
(b)下記(b−1)及び(b−2)から選ばれる1種又は2種以上の化合物
(b−1)分子内に2つ以上の重合性基を有する化合物
(b−2)分子内に2つ以上の活性水素含有基を有する化合物
(c)ガラス転移温度が120℃以上のポリマー
本発明の材料が成分(b)として上記(b−1)を含有し、且つ上記(b−1)の重合性基が活性水素含有基と反応性を示す場合、本発明の材料は上記(b−2)を含有するか又は成分(a)の少なくとも1種が活性水素含有基を有し、
本発明の材料が上記(b−1)を含有しない場合、成分(a)の少なくとも1種が活性水素含有基と反応性を示す基を有する。
本発明の材料は組成物の形態であることが好ましい。すなわち、本発明の材料は各成分が均質に混合された形態であることが好ましい。本発明の材料は液体状であっても特定の形状を有していてもよい。後述するように、本発明の材料(組成物)を用いることで、非線形光学活性を示す材料(非線形光学膜等)を製造することができる。
本発明の材料は、少なくとも1種の有機非線形化合物(成分(a))を含有する。成分(a)の化合物は、非線形光学活性を有する有機化合物であれば特に制限はなく、従来公知の有機非線形化合物を用いることができる。例えば、米国特許第7307173号の図4,5、8〜16、18〜23に記載の化合物、米国特許第7961988号の図13に記載の化合物、特開2010−66325号公報の段落[0100]、[0135]、[0158]、[0197]、[0223]、[0252]、[0278]、[0294]、[0324]、[0350]、[0376]、[0402]及び[0422]に記載の化合物を成分(a)として用いることができる。また、市販品としてDisperse Red 1(商品名、Sigma Aldrich社製)、CLD−1(商品名、Sigma Aldrich社製)、Disperse Red 19(商品名、Sigma Aldrich社製)等を用いることもできる。
成分(a)の化合物が活性水素含有基を有する場合、成分(a)の化合物1分子中の活性水素含有基の数は1〜6が好ましく、2〜5がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。成分(a)の化合物が有しうる活性水素含有基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、スルホ基、メルカプト基及びイミノ基から選ばれる基が挙げられる。なかでも、成分(a)の化合物が有する活性水素含有基は水酸基、カルボキシ基及びアミノ基から選ばれる基が好ましく、さらに好ましくは水酸基である。成分(a)の化合物は1分子中に2種以上の活性水素含有基を有していてもよい。活性水素含有基を有する有機非線形化合物は、上記例示の有機非線形化合物に活性水素含有基を常法により導入して得ることができる。
成分(a)の化合物が活性水素反応性基を有する場合、成分(a)の化合物1分子中の、活性水素反応性基の数は、1〜6が好ましく、2〜5がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。成分(a)の化合物が有しうる、活性水素反応性基に特に制限はないが、エポキシ基及びオキセタニル基から選ばれる基を好適に用いることができる。成分(a)の化合物は、分子内にオキセタニル基又はエポキシ基を3つ有することが特に好ましい。
また、成分(a)の化合物はアントリル基を有していてもよい。アントリル基はエチレン性不飽和基とDiels−alder反応により連結することができる。
本発明の材料中、成分(a)〜(c)の総量に占める成分(a)の割合は1〜60質量%であることが好ましく、2〜55質量%であることがより好ましく、3〜50質量%であることがさらに好ましい。
本発明の材料は、(b−1)及び(b−2)から選ばれる1種又は2種以上の化合物(成分(b))を含有する。成分(b)は分子量200以上の化合物であることが好ましい。成分(b)の化合物の分子量を200以上とすることで、成分(b)が揮発しにくく、ポーリング処理等の際に成分(b)の揮発が抑えられる。これにより、本発明の材料で形成した膜の膜厚の変動を抑えることができ、性能のばらつきを抑えることができる。また、成分(a)の化合物の配向固定化状態をより安定に保持することができる。
本発明の材料は、(b−1)の少なくとも1種及び(b−2)の少なくとも1種を含有することが好ましい。
(b−1)の化合物及び(b−2)の化合物について以下に説明する。
本発明の材料は、成分(b)として分子内に2つ以上の重合性基を有する化合物(b−1)を有しうる。(b−1)の化合物が有する重合性基に特に制限はないが、活性水素反応性基又はエチレン性不飽和基を有する基が好ましい。また、(b−1)の化合物は重合性基としてアントリル基を有していてもよい。
活性水素反応性基に特に制限はないが、エポキシ基及びオキセタニル基から選ばれる基を好適に用いることができる。また、エチレン性不飽和基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基等として導入されていることが好ましい。(b−1)はエポキシ基及びオキセタニル基から選ばれる重合性基を2つ以上有する化合物を含むことが好ましく、エポキシ基及びオキセタニル基から選ばれる重合性基を2つ以上有する化合物であることがより好ましい。
(b−1)の化合物1分子中の重合性基の数は2〜6が好ましく、2〜4がより好ましく、2又は3がさらに好ましい。また、(b−1)の化合物が活性水素反応性基(好ましくはエポキシ基又はオキセタニル基)である場合、(b−1)の化合物1分子中の重合性基の数を2とすることが特に好ましい。
(b−1)の化合物は低分子化合物であってもオリゴマーであってもよいが、いずれの場合も、その分子量は200〜1000であることが好ましく、200〜500であることがより好ましい。
本発明の材料は、成分(b)として分子内に2つ以上の活性水素含有基を有する化合物(b−2)を含有しうる。(b−2)の化合物が有する活性水素含有基に特に制限はなく、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、スルホ基、メルカプト基及びイミノ基から選ばれる基が挙げられる。なかでも、成分(b−2)の化合物が有する活性水素含有基は水酸基、カルボキシ基及びアミノ基から選ばれる基が好ましく、さらに好ましくは水酸基である。(b−2)の化合物は1分子中に2種以上の活性水素含有基を有していてもよい。(b−2)の化合物1分子中の活性水素含有基の数は2〜6が好ましく、2〜4がより好ましく、2〜3がさらに好ましい。
(b−2)の化合物の分子量は200〜1000であることが好ましく、200〜500であることがより好ましい。
本発明の材料が含有するガラス転移温度が120℃以上のポリマー(成分(c))は、ガラス転移温度が120℃以上であれば特に制限はなく、例えば、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(好ましくはポリ(メタ)アクリル酸メチル)、アモルファスフロロポリマー、ポリイミド等を広く用いることができる。また、本発明の材料は成分(c)として2種以上のポリマーを含有してもよい。成分(c)はポリカーボネートを含むことが好ましく、成分(c)がポリカーボネートであることがより好ましい。
成分(c)のポリマーの重量平均分子量は5000〜100000であることが好ましく、10000〜50000であることがより好ましい。重量平均分子量は、例えば、高速GPC装置(東洋曹達株式会社製、HLC−802A)を使用して、0.5質量%のTHF溶液を試料溶液とし、カラムはTSKgel HZM−M 1本を使用し、200μLの試料を注入し、前記THF溶液で溶離して、25℃で屈折率検出器又はUV検出器(検出波長254nm)により測定することができる。測定結果はポリエチレングリコール換算の分子量とする。
成分(c)のポリマーのTgは130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また、成分(c)のTgが高すぎると、成分(c)の配合量にもよるが材料全体のTgが高くなりすぎる場合があり、後述のポーリング処理の温度を低く抑えることができなくなるおそれがあるため、成分(c)のTgは通常は250℃以下であり、200℃以下であることが好ましい。
本発明の材料は成分(c)のポリマー(高Tgポリマー)を含有することで、成分(c)のポリマーを含まない場合に比べて材料を重合反応させた後のTgをより高めることができ、ポーリング処理後における有機非線形化合物の配向状態が安定に保たれる。
本発明の材料は、上記成分(a)〜(c)の他に、硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機溶剤等を含有してもよい。
本発明の材料は、Tgが40℃以上120℃以下である。本発明の材料のTgを本発明で規定する範囲内とすることで、ポーリング処理を低い温度で行っても有機非線形材料を高い秩序度で配向させることができる。したがって、有機非線形化合物の耐熱温度より低い温度でポーリング処理を行うことが可能となる。本発明の材料のTgは好ましくは110℃以下であり、より好ましくは100℃以下であり、さらに好ましくは95℃以下であり、さらに好ましくは90℃以下である。また、本発明の材料のTgが40℃よりも低いと、有機非線形化合物の配向状態を重合固定化しても十分にTgを上げることができず、配向安定性が低下してしまう。本発明の材料のTgは、45℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、55℃以上がさらに好ましい。なお、Tgの測定では揮発成分は熱により揮発するので、重合性非線形光学材料のTgはすなわち重合性非線形光学材料の固形分のTgとなる。
また、本発明の材料は、本発明の材料中の重合性基を重合率80%に重合させた場合に、重合反応前に比べてTgが30℃以上上昇することが好ましく、40℃以上上昇することがより好ましく、50℃以上上昇することがさらに好ましい(すなわち、本発明の材料のTgと、本発明の材料を重合性基の重合率が80%になるように重合反応させた後のTgとの差(重合反応後のTgから重合反応前のTgを引いた値)は30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい)。このようなTgの上昇をもたらす材料組成とすることで、重合反応前のTgを低くしてポーリング時により低い温度で有機非線形化合物を高度に配向させ、さらに重合反応によりこの配向状態をより強固に固定化することが可能となる。また、重合反応前と重合反応後のTgの差は大きい方が好ましいのであるが、通常は、本発明の材料のTgと、本発明の材料を重合性基の重合率が80%になるように重合反応させた後のTgとの差は130℃以下である。
本明細書において、上記重合性基の重合率は、反射型赤外分光法測定(IR)により、重合反応の前の材料の重合性基に起因するピーク面積と、重合反応後の材料の重合性基に起因するピーク面積とを比較することで算出される。より詳細には、重合反応前における重合性基に起因するピーク面積を100%として、重合反応後における重合性基に起因するピーク面積(%)を求め、重合性基の重合率とした。なお、エポキシ基に起因するピークは916cm−1付近にあり、オキセタニル基に起因するピークは982cm−1付近にあり、エチレン性不飽和基に起因するピークは810cm−1付近にある。
(a1)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の活性水素含有基を有し、且つ、非線形光学活性を有する有機化合物、
(b1)下記(b1−1)の化合物及び(b1−2)の化合物、
(b1−1)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の、活性水素含有基と反応性を示す基を有する化合物
(b1−2)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の活性水素含有基を有する化合物
(c1)ガラス転移温度が120℃以上のポリマー。
(a2)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の、活性水素含有基と反応性を示す基を有し、且つ、非線形光学活性を有する有機化合物、
(b2)下記(b2−1)の化合物及び(b2−2)の化合物、
(b2−1)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の、活性水素含有基と反応性を示す基を有する化合物
(b2−2)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の活性水素含有基を有する化合物
(c2)ガラス転移温度が120℃以上のポリマー。
(a3)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の、活性水素含有基と反応性を示す基を有し、且つ、非線形光学活性を有する有機化合物、
(b3)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の活性水素含有基を有する化合物、
(c3)ガラス転移温度が120℃以上のポリマー。
(a4)非線形光学活性を有する有機化合物、
(b4)下記(b4−1)の化合物及び(b4−2)の化合物、
(b4−1)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の、活性水素含有基と反応性を示す基を有する化合物
(b4−2)分子内に2〜6個(好ましくは2又は3個)の活性水素含有基を有する化合物
(c4)ガラス転移温度が120℃以上のポリマー。
(但し、上記(a4)の化合物は分子内の活性水素含有基の数が0又は1であり、且つ、分子内の、活性水素含有基と反応性を示す基の数が0又は1である。)
本発明の非線形光学膜は、本発明の非線形光学材料を用いて形成される。より詳細には、本発明の非線形光学材料を用いて成膜し、後述のポーリング処理に付して成分(a)の化合物を配向させ、重合して形成される膜である。成膜方法に特に制限はないが、上記成分(a)〜(c)、その他の成分を有機溶剤に溶解させてなる本発明の材料(組成物)を、スピンコート法、ブレードコート法、浸漬塗布法、インクジェット法、スプレー法等の方法を用いて基板上に塗布することによって成膜する湿式塗布法を採用することが好ましい。
本発明の非線形光学膜は、有機非線形化合物が配向しており、これにより2次の非線形光学活性を示す。有機非線形化合物の配向は、光ポーリング法、光アシスト電界ポーリング法、電界ポーリング法等の公知のポーリング処理により行うことが好ましい。これらの中でも、電界ポーリング法は、装置の簡便性、得られる配向度合いの高さ等の点で特に好ましい。
上記経時による配向状態のランダム化は、非線形光学材料の置かれる環境温度と非線形光学材料のTgとの差が大きい程、緩やかに進行する。そのため、非線形光学材料中にTgの高いバインダー樹脂を用い、非線形光学材料のガラス転移温度を高く設計することによってランダム化を抑えることができる。しかし、非線形光学材料のTgを上げると、高温で電界ポーリングを行う必要が生じ、耐熱性の低い有機非線形化合物を用いた場合には有機非線形化合物の熱分解や熱変性が生じてしまう。
しかし、本発明の材料は、材料のTgが40〜120℃の範囲にあるため、成膜後にポーリング処理を比較的低温で行っても有機非線形化合物を高い秩序度で配向させることができる。また、本発明の材料は重合性であるため、後述する重合反応により膜を硬化させて有機非線形化合物を固定化することができる。しかも、本発明の材料は成分(c)として高Tgポリマーを含有するため、重合反応後(硬化後)の材料のTgがより高められる。すなわち、配向させた有機非線形化合物のランダム化を効果的に抑えることができる。
ポーリング処理の処理時間に特に制限はないが、5〜60分が好ましく、10〜30分がより好ましい。
本発明の非線形光学膜は、上述のように本発明の材料を用いて成膜し、これをポーリング処理に付して成分(a)の化合物を配向させ、重合反応により成分(a)の配向状態を重合固定化して形成することが好ましい。本発明において「ポーリング処理に付して成分(a)の化合物を配向させ、重合反応により成分(a)の配向状態を重合固定化する」とは、ポーリング処理を行った後に重合反応を行う態様、及び、ポーリング処理と同時に重合反応を行う(ポーリング処理によって重合反応が進行する)態様の両態様を含む意味に用いる。なかでもポーリング処理と同時に重合反応を行う態様が好ましい。
上記オーダーパラメータは、全ての分子が完全に配向した理想的な状態では1、完全にランダムなときは0となる数値であり、値が大きいほど全体としての分子の配向度が高いことを表わす。この値を測定することにより、どれだけ効率よくポーリングできたかが判断でき、また、その安定性なども評価できる。
本発明の光学素子は、本発明の非線形光学膜を有し、非線形光学効果に基づき動作するものであれば如何なるものでもよい。本発明の光学素子の具体例としては、例えば、波長変換素子、フォトリフラクティブ素子、電気光学素子、等が挙げられる。特に好ましくは、電気光学効果に基づき動作する光スイッチ、光変調器(光変調素子)、位相シフト器等の電気光学素子である。
このような基板を構成する材料としては、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、クロム、チタン等の金属;シリコン、酸化チタン、酸化亜鉛、ガリウム−ヒ素などの半導体;ガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリイミド等のプラスティック;等を用いることができる。
下記表1に示す有機非線形化合物、分子内に2つ以上の重合性基を有する化合物、分子内に2つ以上の活性水素含有基を有する化合物、Tgが120℃以上のポリマー、硬化剤、硬化促進剤、溶媒を、下記表1に示す割合(質量部、表1中[ ]内の数値)で均質に混合し、重合性非線形光学材料(液状組成物)を得た。各重合性非線形光学材料は。その固形分濃度をいずれも、塗布後膜厚が1800nmとなるように調整した。
この調製例で使用した有機非線形化合物の構造を以下に示す。
5cm角サイズのITO基板(厚さ:700μm)上に、上記調製例で調製した重合性非線形光学材料をスピンコート法で塗布し、乾燥して成膜した(膜厚1800nm)。
上記で得られた膜をITO基板ごとホットプレート上に設置し、コロナポーリング処理を行った。より詳細には、放電電極を膜から30mmの距離となるよう設置して13kVの帯電電圧を印加した状態で、100℃で15分間保持した。その状態から帯電電圧を印加したまま30℃まで1分間かけて冷却した後、帯電電圧を除去し、ポーリング処理を完了した。
このポーリング処理時の熱により、上記調製例1〜7及び9〜13、比較調製例2及び5の材料を用いて成膜した膜において熱重合反応も同時に進行する。
また、調製例8及び比較例4については、ポーリング時に光照射して光重合反応を行った。光照射は、高圧水銀ランプ(SP−9−250DB spotcure、ウシオ社製)を使用し、5J/cm2の照射エネルギーで紫外線照射することで実施した。
上記ポーリング処理後の膜について、膜中の重合性基の重合率を上述の方法で測定した。結果を下記表2に示す。
配向度は、上記ポーリング処理を完了した直後の膜を用いて、上述のオーダーパラメータ(ODP)を指標にして有機非線形化合物の配向度を下記評価基準により評価した。
−配向度の評価基準−
A:ODPが0.1以上
B:ODPが0.05以上0.1未満
C:ODPが0.05未満
結果を下記表2に示す。
上記ポーリング処理を完了した膜を、ポーリング処理直後および24時間室温で保管した後、ODPを測定した。ポーリング処理を完了した直後のODPに対する、24時間室温で保管した後のODPの維持率を下記式により求め、配向状態の安定性下記評価基準により評価した。
維持率(%)=100×[24時間室温で保管した後のODP]/[ポーリング処理を完了した直後のODP]
−配向状態の安定性評価基準−
A:ODPの維持率が90%以上
B:ODPの維持率が70%以上90%未満
C:ODPの維持率が70%未満
結果を下記表2に示す。
また、非線形光学材料のTgが本発明で規定する範囲内にある場合は、ポーリング処理後の配向度は良好である。しかしその場合でも、非線形光学材料が重合性を有さない場合や、重合性基を有する化合物が単官能の揮発性化合物である場合には、有機非線形化合物の配向状態を安定に保持できなかった(比較例3及び4)。
また、非線形光学材料が高Tgポリマーを含まず、材料のTgが本発明で規定するよりも低い場合には、有機非線形化合物の配向度、及び配向性状態の安定性のいずれも劣る結果となった(比較例5)。
これに対し本発明の重合性非線形光学材料を用いると、100℃のポーリング処理によって有機非線形化合物の良好な配向状態を作り出すことができ、且つ、ポーリング処理時に重合反応を行わせることで、有機非線形化合物の配向状態を安定に保持できることがわかった。すなわち、本発明の重合性非線形光学材料を用いることで、有機非線形化合物が高度に配向しており、且つ、この配向状態の安定性にも優れる非線形光学膜が得られることが示された(実施例1〜13)。
Claims (11)
- 下記成分(a)〜(c)を含有し、ガラス転移温度が40℃以上120℃以下である重合性非線形光学材料であって、該重合性非線形光学材料中の重合性基を重合率80%に重合させた場合に、ガラス転移温度が120℃以上となる重合性非線形光学材料:
(a)非線形光学活性を有する有機化合物;
(b)下記(b−1)及び(b−2)から選ばれる1種又は2種以上の化合物;
(b−1)分子内に2つ以上の重合性基を有する化合物
(b−2)分子内に2つ以上の活性水素含有基を有する化合物
(c)ガラス転移温度が120℃以上のポリマー;
但し、前記重合性非線形光学材料が成分(b)として上記(b−1)を含有し、且つ前記(b−1)の重合性基が活性水素含有基と反応性を示す場合、重合性非線形光学材料は前記(b−2)を含有するか又は成分(a)の少なくとも1種が活性水素含有基を有し、
前記重合性非線形光学材料が前記(b−1)を含有しない場合、成分(a)の少なくとも1種が活性水素含有基と反応性を示す基を有する。 - 前記(b−1)が有する2つ以上の重合性基がエポキシ基、オキセタニル基及びエチレン性不飽和基から選ばれる基である、請求項1に記載の重合性非線形光学材料。
- 成分(b)が、エポキシ基及びオキセタニル基から選ばれる重合性基を2つ以上有する化合物を含む、請求項1又は2に記載の重合性非線形光学材料。
- 前記重合性非線形光学材料が、該重合性非線形光学材料中の重合性基を重合率80%に重合させた場合に、重合反応前に比べてガラス転移温度が40℃以上上昇する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性非線形光学材料。
- 成分(c)がポリカーボネートを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性非線形光学材料。
- 成分(a)〜(c)の総量に占める成分(b)の割合が10〜90質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合性非線形光学材料。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性非線形光学材料を用いた非線形光学膜。
- 前記非線形光学膜が、前記重合性光学材料を用いて形成した膜をポーリング処理に付して成分(a)を配向させ、重合反応により成分(a)の配向状態を重合固定化してなる膜である、請求項7に記載の非線形光学膜。
- 請求項7又は8に記載の非線形光学膜を有する光学素子。
- 前記光学素子が光変調素子である、請求項9に記載の光学素子。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性非線形光学材料を基板上に塗布して成膜した後、ポーリング処理に付して成分(a)を配向させ、重合反応により成分(a)の配向状態を重合固定化することを含む、非線形光学膜の製造方法。
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