JP6214237B2 - セルロース系バイオマスを糖化するための粗酵素液およびその利用 - Google Patents

セルロース系バイオマスを糖化するための粗酵素液およびその利用 Download PDF

Info

Publication number
JP6214237B2
JP6214237B2 JP2013135578A JP2013135578A JP6214237B2 JP 6214237 B2 JP6214237 B2 JP 6214237B2 JP 2013135578 A JP2013135578 A JP 2013135578A JP 2013135578 A JP2013135578 A JP 2013135578A JP 6214237 B2 JP6214237 B2 JP 6214237B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
locust
cellulosic biomass
saccharification
cellulase
crude enzyme
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013135578A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014027927A (ja
Inventor
典子 大坂
典子 大坂
純子 井川
純子 井川
安佐美 齋藤
安佐美 齋藤
長谷川 功
長谷川  功
彩子 鈴木
彩子 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nihon University
Tokyo Gas Co Ltd
Original Assignee
Nihon University
Tokyo Gas Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nihon University, Tokyo Gas Co Ltd filed Critical Nihon University
Priority to JP2013135578A priority Critical patent/JP6214237B2/ja
Publication of JP2014027927A publication Critical patent/JP2014027927A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6214237B2 publication Critical patent/JP6214237B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Description

本発明は、新規セルラーゼおよびその利用に関するものであり、特に、セルロース系バイオマスを糖化するセルラーゼに関するものである。
植物性バイオマスのエネルギー変換は、再生可能なエネルギーソースとして重要である。そのようなエネルギー変換技術としては、油性植物種子の利用、セルロースの糖化および発酵によるエタノール生産、さらには直接的なガス化などが考えられており、その一部は実用化レベルに至っている。その中でも最も注目されているのが、植物性バイオマス(セルロース系バイオマス)のエタノール化技術である。すなわち、セルロース系バイオマスを糖化することによって得られる還元糖は、アルコール発酵原料として適している。そのため、セルロース系バイオマスを糖化する技術は、バイオエタノール工業に大きく寄与する。
植物性バイオマス(セルロース系バイオマス)の中でも、間伐材、オガクズ等の木質系バイオマスの糖化について、多くの研究が行われている。特許文献1〜4には、木質系バイオマスを好適に糖化する酵素が記載されている。
特開2003−70475号公報(2003年3月11日公開) 特開2010−178677号公報(2010年8月19日公開) 特開2011−147445号公報(2011年8月4日公開) 国際公開WO2008/108116パンフレット(2008年9月12日公開)
一方、農業における圃場残渣であるイナワラ、サトウキビの搾り粕等の草本系バイオマスについても、有効利用が検討されている。特に、イネ科植物は、農業だけでなく、金属汚染土壌の植物による浄化(ファイトレメディエーション)にも利用され得るため、その有効利用が強く求められている。
しかしながら、セルロース系バイオマスを糖化する酵素であっても、木質系バイオマスを好適に糖化する酵素については、特許文献1〜4に記載のように有望なものが見つかっているが、イナワラや牧草種などのイネ科植物バイオマスを好適に糖化することができる酵素はこれまで知られていない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、セルロース系バイオマスを糖化する酵素であって、特にイネ科植物バイオマスを好適に糖化することができる酵素を提供することを主たる目的とする。
例えば、市販のセルラーゼは、イナワラなどのイネ科植物に対する酵素活性が低い。イナワラは、セルロース性物質の割合がセルロース35:ヘミセルロース35:リグニン6であり、木材などに比べリグニン含有量が少なく、その他の成分(主としてケイ素などの無機成分)が多いことが特徴である。このイナワラに高濃度に含有されるケイ素が、ワラ体の可溶化に伴ってケイ素ポリマーを形成し、酵素反応を阻害していると考えられる。
そこで、本発明者らは、独自の創意に基づき、ケイ素の含有量が高いイネ科植物を主食としている昆虫であれば、イナワラを効率的に糖化し得る酵素を腸内に保有しているのではないかと考え、イネ科植物を食草とする昆虫(イナゴ、ショウリョウバッタおよび二化メイチュウの幼虫)について、それらの腸内に存在する酵素としてのセルラーゼの探索を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るセルラーゼは、イナゴ腸由来であって、下記の理化学的性質を有することを特徴としている:(a)作用および基質特異性:セルロースを含有する基質を分解し、還元糖を生成する;(b)至適pH:7.0;(c)至適温度:50℃;(d)分子量:約50kDa、約53kDaまたは約30kDa(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)。
上記セルラーゼは、さらに下記の理化学的性質を有することが好ましい:(e)作用:イナワラを基質としても酵素活性が低下しない。
上記セルラーゼは、エンド−β−グルカナーゼ又はβ−グルコシダーゼであることが好ましい。
本発明に係る微生物は、イナゴ、ショウリョウバッタまたはメイチュウの腸内に共生する微生物であって、セルロース分解能を有することを特徴としている。
上記微生物は、Exiguobacterium acetylicum、Exiguobacterium indicum、Pseudomonas mosselii、Pseudomonas mosselii、Stenotrophomonas maltophilia、Stenotrophomonas rhizophila、Serratia nematodiphila、Bacillus megateriumおよびBacillus aryabhattaiからなる群より選択されるものであることが好ましい。
本発明に係るセルラーゼは、上記微生物由来であるものであってもよい。
本発明に係るケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスを糖化するための糖化用組成物は、上記セルラーゼまたは上記微生物を含有していることを特徴としている。
本発明に係るケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスを糖化するための糖化用キットは、上記セルラーゼまたは上記微生物を備えていることを特徴としている。
本発明に係る糖化用組成物および糖化用キットの糖化の対象となるセルロース系バイオマスは、イネ科植物バイオマスであることがより好ましく、イナワラであることがより好ましく、重金属を含有していてもよい。また、本発明に係る糖化用組成物および糖化用キットは、β−ガラクトシダーゼをさらに有していてもよい。
本発明に係る抗体は、上記セルラーゼに特異的に結合することを特徴としている。
本発明に係るセルロース系バイオマスを糖化する方法は、上記セルラーゼ、上記微生物または上記糖化用組成物と、該セルロース系バイオマスとを接触させる工程を含有することを特徴としている。
上記セルロース系バイオマスを糖化する方法では、上記セルロース系バイオマスが、ケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスであってもよく、イネ科植物バイオマスであってもよく、イナワラであってもよい。
上記セルロース系バイオマスを糖化する方法では、上記セルロース系バイオマスが、例えば、ファイトレメディエーション後の植物のようにカドミウム等の重金属を含有していてもよい。
本発明によれば、セルロース系バイオマスを糖化するセルラーゼであって、特にイネ科植物バイオマスを好適に糖化することができるセルラーゼを提供することができる。
各昆虫の腸内粗酵素液のCMC分解酵素活性を示すグラフである。 酵素活性測定キットを用いたイナゴ腸内粗酵素液の酵素活性の検定の結果を示す図である。 ろ紙を基質としたときのイナゴ腸内粗酵素液の酵素活性を示すグラフである。 イナワラを基質としたときのイナゴ腸内粗酵素液の酵素活性を示すグラフである。 反応pHを変化させたときのイナゴ腸内粗酵素液の酵素活性を示すグラフである。 反応温度を変化させたときのイナゴ腸内粗酵素液の酵素活性を示すグラフである。 希釈したイナゴ腸内粗酵素液の酵素活性を示すグラフである。 硫安塩析の各分画試料の酵素活性を示すグラフである。 (a)は、ゲルろ過クロマトグラフィーの各分画試料のタンパク質量および酵素活性を示すグラフであり、(b)は、酵素活性の高い分画試料のSDS−PAGEの結果を示す図である。 Congo Red Cellulose培地によって、イナゴの腸内に共生する微生物であって、カルボキシ−メチル−セルロース(CMC)分解能を有する微生物を培養した結果を示す図である。 様々な基質に対するイナゴ腸内粗酵素液の酵素活性を示すグラフである。 イナゴ腸内粗酵素液のヘミセルラーゼ活性を示すグラフである。 酵素活性の高い分画試料をSDS−PAGEおよび銀染色した結果を示す図である。
本発明は、新規セルラーゼおよびその利用を提供する。本明細書において「セルラーゼ」とは、セルロースを分解し、還元糖を生成する酵素を指す。また、「セルロース」とは、繊維素とも呼ばれ、植物等に含有されるβ−D−1,4−グルカンを指し、I型であってもII型であってもよく、部分的に置換基によって置換されていてもよく、他の化合物と複合体を形成していてもよい。当該新規セルラーゼは、例えば、各種バイオマスの糖化のために好適に使用することができる。
詳細には、セルラーゼとしては、エンド−1,4−β−グルカナーゼ(EC3.2.1.4)、エキソセロビオヒドロラーゼ(EC3.2.1.91)およびβ−D−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)の2種類の酵素が存在しており、或る局面においては、この3種類の酵素が共同でセルロースを分解すると考えられている。
エンド−1,4−β−グルカナーゼ(EC3.2.1.4)は、エンド型の作用形式でセルロース鎖を加水分解し、グルコース、セロビオースおよびセロオリゴ糖を生じさせる。エンド−1,4−β−グルカナーゼは、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの非結晶性の基質をよく加水分解するが、綿繊維などの結晶性セルロースには殆ど作用しない。エキソセロビオヒドロラーゼ(EC3.2.1.91)は、セルロースをエキソ形式で加水分解しグルコースまたはセロビオースを特異的に遊離させる酵素である。エキソセロビオヒドロラーゼは、綿繊維やアビセルなどの結晶性セルロースに作用するが、CMCなどの非結晶性セルロースには殆ど作用しない。β−D−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)は、セロオリゴ糖、セロビオース糖およびβ−グルコシドに作用し、非還元末端からグルコースを遊離する酵素である。
すなわち、上記新規セルラーゼの利用としては、セルロース系バイオマスを糖化するための方法、糖化用組成物、キット等が挙げられる。本発明はまた、セルロース分解能を有する微生物、新規セルラーゼをコードするポリヌクレオチド、新規セルラーゼに特異的に結合する抗体、当該ポリヌクレオチドを含有するベクターおよび当該ポリヌクレオチドが導入された形質転換体を提供する。
〔セルラーゼおよび微生物〕
本発明の一実施形態に係る第一のセルラーゼは、イナゴ腸由来であって、下記の理化学的性質を有する:(a)作用および基質特異性:セルロースを含有する基質を分解し、還元糖を生成する;(b)至適pH:7.0;(c)至適温度:50℃;(d)分子量:約50kDa、約53kDaまたは約30kDa。なお、至適pHは、反応温度50℃において1刻みで反応pHを変化させたときの至適pHである。また、至適温度は、反応pH7.0において、10℃刻みで反応温度を変化させたときの至適温度である。また、分子量は、SDS−PAGE(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により測定された値である。なお、第一のセルラーゼは、至適pHは7.0であるが、pH4.0〜pH8.0の範囲で高い活性を呈する。また、第一のセルラーゼは、エンド−β−グルカナーゼ(EC3.2.1.4)またはβ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)であり得る。
ここで、市販のセルラーゼ等は、イナワラなどのイネ科植物に対する酵素活性が低い。これは、イナワラなどのイネ科植物は、一般の植物に比べてケイ素含量が多いため、このケイ素が可溶化してpHに応じてポリマーを形成するため、市販のセルラーゼ等の反応が阻害されると推測される。これに対し、上記第一のセルラーゼは、実施例において示すように、イナワラのようなケイ素を多く含有するセルロース系バイオマスに対しても酵素活性が低下しない。
また、上記第一のセルラーゼは、硫安塩析において、30〜50%飽和硫安で沈殿してくるものであり、ゲルろ過クロマトグラフィーにおいて、分子量30〜53kDaの分子が溶出する分画に溶出するものである。
また、本発明の一実施形態に係る微生物は、イナゴ、ショウリョウバッタまたはメイチュウ等、イネまたはイネ科植物を食草とする昆虫の腸内に共生する微生物であって、セルロース分解能を有する微生物であり、本発明の一実施形態に係る第二のセルラーゼは、当該微生物由来のセルラーゼである。実施例に示すように、イナゴ、ショウリョウバッタまたはメイチュウ等、イネまたはイネ科植物を食草とする昆虫の腸内に共生する微生物には、セルロース分解能を有する微生物が含まれている。イネ科植物を食草とするイナゴ等の腸内に共生する微生物であるため、第一のセルラーゼと同様に、イナワラのようなケイ素を多く含有するセルロース系バイオマスに対しても酵素活性が低下しないと考えられる。
なお、イナゴの腸内に共生する微生物であって、セルロース分解能を有する微生物としては、Exiguobacterium acetylicum、Exiguobacterium indicumおよびPseudomonas mosseliiが挙げられる。また、ショウリョウバッタの腸内に共生する微生物であって、セルロース分解能を有する微生物としては、Stenotrophomonas maltophiliaおよびStenotrophomonas rhizophilaが挙げられる。また、メイチュウの腸内に共生する微生物であって、セルロース分解能を有する微生物としては、Serratia nematodiphila、Bacillus megateriumおよびBacillus aryabhattaiが挙げられる。
これらの微生物が分泌するセルラーゼ(例えば、エンド−β−グルカナーゼ)は、各昆虫が自ら腸内に分泌するセルラーゼ(例えば、エンド−β−グルカナーゼ)およびヘミセルラーゼ(例えば、β−ガラクトシダーゼ)と共に、イナワラ等のセルロースおよびヘミセルロースを分解するものと考えられる。
なお、上記第一および第二のセルラーゼの酵素活性は、セルロースを含む基質、特に、イナワラ等のケイ素を多く含有するセルロース系バイオマスを基質として、酵素反応を行い、生成される還元糖の量を公知の方法(例えば、DNS法等)によって測定することによって、確認することができる。また、上記微生物のセルロース分解能は、微生物の抽出液について酵素活性を測定することによって確認してもよいし、Congo Red Cellulose培地のような、色素で修飾されたセルロースが添加された培地において微生物を培養することによって確認してもよい。
また、上記第一および第二のセルラーゼは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、上記第一および第二のセルラーゼは、グリコシル化され得るか、または非グリコシル化され得る。さらに、上記第一および第二のセルラーゼはまた、いくつかの場合、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
上記第一および第二のセルラーゼは、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであってもよいし、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖およびイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されない。
また、上記第一および第二のセルラーゼは、付加的なポリペプチドを含んでいてもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、His、Myc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
なお、タンパク質を構成するアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このタンパク質の構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
すなわち、上記第一および第二のセルラーゼは、上述したセルラーゼ酵素活性を失わない範囲で1または数個(例えば、1〜30個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個)のアミノ酸が置換、欠失または付加されている変異体を含む。当業者は、周知技術を使用してタンパク質のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、上記第一および第二のセルラーゼをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、上記第一および第二のセルラーゼをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。好ましい変異体は、保存性または非保存性アミノ酸置換、欠失、または付加を有する。これらは、本発明に係るセルラーゼ酵素活性を変化させない。また、これらの変異体は、上記第一または第二のセルラーゼに対し、アミノ酸配列において、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または99%以上の同一性を有していることが好ましい。
(製造方法)
一実施形態において、上記第一のセルラーゼは、イナゴの腸から上記第一のセルラーゼを精製することによって得ることができる。すなわち、周知の方法(例えば、細胞または組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)でイナゴの腸から細胞抽出液を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。また、精製工程は、例えば、各分画試料について、酵素活性を測定しながら精製を行うことにより、確実に目的のセルラーゼを取得することができる。
また、一実施形態において、上記第二のセルラーゼは、イナゴ、ショウリョウバッタまたはメイチュウの腸または糞から採取したセルロース分解能を有する微生物の抽出液から、上記第一のセルラーゼと同様の手法により、上記第二のセルラーゼを精製することによって得ることができる。
また、一実施形態において、上記微生物は、イナゴ、ショウリョウバッタまたはメイチュウの腸または糞から採取した微生物を培養することによって得ることができる。上記微生物の培養は、例えば、磨砕した腸または糞を含む試料液をCongo Red Cellulose培地等のセルロース分解能を検出し得る培地に播き、所定の間隔で、セルロース分解能を示したコロニーを新しい培地に植え継ぐことによって行うことができる。
また、当業者であれば、上記第一および第二のセルラーゼについて、公知の方法によってアミノ酸配列を解析することにより、上記第一および第二のセルラーゼをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を容易に取得することができる。これにより、以下の方法によっても、上記第一および第二のセルラーゼを製造することができる。
すなわち、他の実施形態において、上記第一および第二のセルラーゼは、当該セルラーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いる方法により製造してもよい。例えば、1つの局面において、上記第一および第二のセルラーゼの生産方法は、上記ベクターが組換え発現系において用いられることが好ましい。組換え発現系を用いる場合、上記第一および第二のセルラーゼをコードするポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込んだ後、公知の方法により発現可能な宿主に導入し、宿主内で翻訳されて得られるポリペプチドを精製するという方法などを採用することができる。組換え発現ベクターは、プラスミドであってもなくてもよく、宿主に目的ポリヌクレオチドを導入することができればよい。好ましくは、上記第一および第二のセルラーゼの生産方法は、上記ベクターを宿主に導入する工程を包含する。
このように宿主に外来ポリヌクレオチドを導入する場合、発現ベクターは、外来ポリヌクレオチドを発現するように宿主内で機能するプロモーターを組み込んであることが好ましい。組換え的に産生されたポリペプチドを精製する方法は、用いた宿主、ポリペプチドの性質によって異なるが、タグの利用等によって比較的容易に目的のポリペプチドを精製することが可能である。
本実施形態の他の局面において、上記第一および第二のセルラーゼの生産方法は、上記ベクターが無細胞タンパク質合成系において用いられることが好ましい。無細胞タンパク質合成系を用いる場合、種々の市販のキットが用いられ得る。好ましくは、上記第一および第二のセルラーゼの生産方法は、上記ベクターと無細胞タンパク質合成液とをインキュベートする工程を包含する。
無細胞タンパク質合成系は細胞内mRNAやクローニングされたcDNAにコードされているさまざまなタンパク質の同定等に広く用いられる手法であり、無細胞タンパク質合成系(無細胞タンパク質合成法、無細胞タンパク質翻訳系とも呼ぶ)に用いられるのが無細胞タンパク質合成液である。
無細胞タンパク質合成系としては、コムギ胚芽抽出液を用いる系、ウサギ網状赤血球抽出液を用いる系、大腸菌S30抽出液を用いる系、および植物の脱液胞化プロトプラストから得られる細胞成分抽出液が挙げられる。一般的には、真核生物由来遺伝子の翻訳には真核細胞の系、すなわち、コムギ胚芽抽出液を用いる系またはウサギ網状赤血球抽出液を用いる系のいずれかが選択されるが、翻訳される遺伝子の由来(原核生物/真核生物)や、合成後のタンパク質の使用目的を考慮して、上記合成系から選択されればよい。
なお、種々のウイルス由来遺伝子産物は、その翻訳後に、小胞体、ゴルジ体等の細胞内膜が関与する複雑な生化学反応を経て活性を発現するものが多いので、各種生化学反応を試験管内で再現するためには細胞内膜成分(例えば、ミクロソーム膜)が添加される必要がある。植物の脱液胞化プロトプラストから得られる細胞成分抽出液は、細胞内膜成分を保持した無細胞タンパク質合成液として利用し得るのでミクロソーム膜の添加が必要とされないので、好ましい。
本明細書中で使用される場合、「細胞内膜成分」は、細胞質内に存在する脂質膜よりなる細胞小器官(すなわち、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、葉緑体、液胞などの細胞内顆粒全般)が意図される。特に、小胞体およびゴルジ体はタンパク質の翻訳後修飾に重要な役割を果たしており、膜タンパク質および分泌タンパク質の成熟に必須な細胞成分である。
さらに他の実施形態において、上記第一および第二のセルラーゼの生産方法は、本発明に係るポリペプチドを化学合成することを特徴とする。当業者は、上記第一および第二のセルラーゼのアミノ酸配列に基づいて周知の化学合成技術を適用すれば、上記第一および第二のセルラーゼを化学合成できることを、容易に理解する。
以上のように、上記第一および第二のセルラーゼを生産する方法によって取得されるポリペプチドは、天然に存在するポリペプチドであっても、人為的に作製されたポリペプチドであってもよい。また、上述した種々の工程以外の工程を包含する生産方法も本発明の技術的範囲に属する。
〔糖化方法、糖化用組成物および糖化用キット〕
一実施形態において、上記セルラーゼは、セルロース系バイオマスを糖化するために用い得、より好ましくは、草本系バイオマスまたはイネ科植物バイオマスを糖化するために用いる得、特に、イナワラを糖化するために用い得る。糖化の結果得られた還元糖は、特に限定されないが、エタノール等の有用な有機化合物を製造するための原料として好適に用いることができる。すなわち、本発明の一実施形態に係るセルロース系バイオマスを糖化する方法は、上記セルラーゼと、セルロース系バイオマスとを接触させる工程を含有する。また、他の実施形態において、セルロース系バイオマスを糖化する方法は、上記セルロース分解能を有する微生物と、セルロース系バイオマスとを接触させる工程を含有するものであってもよい。
なお、本明細書において「セルロース系バイオマス」とは、セルロースを含有するバイオマスを指し、廃棄物系バイオマスであってもよいし、資源作物系バイオマスであってもよく、また、木質系バイオマスであってもよいし、草本系バイオマスであってもよい。また、本明細書において「木質系バイオマス」とは。木本植物の木質部またはその処理物を指し、「草本系バイオマス」とは、草本植物またはその処理物を指す。また、「イネ科植物バイオマス」とは、イネ科植物またはその処理物を指す。木質系バイオマスの例としては、スギ、ユーカリ、ヒノキ、マツ、ヤナギ、それらのオガクズ等が挙げられる。また、草本系バイオマスの例としては、イネ、イナワラ、モミガラ、ムギ(コムギ、オオムギ)、ムギワラ、サトウキビ、サトウキビの搾り粕、トウモロコシ、トウモロコシの葉茎、ソルガム、アシ、ススキ、芝および牧草等のグラス類などが挙げられ、そのうち、イネ科植物バイオマスの例としては、イネ、イナワラ、ムギ(コムギ、オオムギ)、ムギワラ、サトウキビ、サトウキビの搾り粕、トウモロコシ、ソルガム、アシ、ススキ、芝および牧草等のグラス類などが挙げられる。
また、本発明の一実施形態に係るセルラーゼは、実施例に示すように、イナワラのようなケイ素を多く含有するセルロース系バイオマスに対して優れた酵素活性を有している。それゆえ、一実施形態において、セルロース系バイオマスを糖化する方法は、ケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスを糖化する方法であり得る。ケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスとしては、特に限定されないが、例えば、イネ科植物バイオマスが挙げられる。特にイネは、ケイ素が必須栄養であり、ケイ素が欠乏すると軟弱になり倒伏したり、病中害に抵抗性がなくなるため、ケイ酸カルシウム肥料を施肥して生育される。そのため、イナワラには数%から多い場合は12〜13%のケイ素が含まれることになる。
また、上記セルラーゼまたは上記微生物と、セルロース系バイオマスとを接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、混合攪拌した後に加温するといった方法を用いることができる。
また、本発明の一実施形態に係るセルロース系バイオマスを糖化する方法は、上記セルラーゼまたは上記微生物と、セルロース系バイオマスとを接触させる工程の他にも、セルロース系バイオマスを磨砕する工程、セルロース系バイオマスを脱リグニンする工程、ならびに、バイオマスの種類に応じた、リグニン分解、亜臨界処理、および微生物処理といった工程をさらに包含していてもよい。
また、本発明の一実施形態に係るセルロース系バイオマスを糖化する方法は、例えば、ファイトレメディエーション後の植物のようにカドミウム等の重金属を含有しているセルロース系バイオマスを糖化するものであり得る。本実施形態によれば、金属汚染土壌の植物による浄化(ファイトレメディエーション)にも利用した植物を有効利用することができる。
例えば、Cd高吸収性のイネ「長香穀」は、吸収したCdを地上部へ移行しやすいこと、Cdの高移行がqCdT7遺伝子によって行われていること、Cdの高移行はOsHMA3遺伝子がCdを膜輸送する機能を喪失したことが原因であることが明らかとなっている。本実施形態に係るバイオマスを糖化する方法によれば、このようなバイオマスを糖化することができるため好ましい。
一実施形態において、セルロース系バイオマスを糖化するための糖化用組成物および糖化用キットが提供される。本発明の一実施形態に係る糖化用組成物は、上記セルラーゼおよび/または上記微生物を含んでいることを特徴としており、本発明に係る糖化用キットは、上記セルラーゼおよび/または上記微生物を備えていることを特徴としている。なお、上記セルラーゼの酵素活性を利用するための組成物およびキットを、本明細書中において「糖化用組成物」および「糖化用キット」と称する。
なお、本明細書中で使用される場合、「組成物」は各種成分が一物質中に含有されている形態であり、「キット」は各種成分の少なくとも1つが別物質中に含有されている形態であることが意図される。本発明に係る糖化用キットは、本発明に係るポリペプチド(またはポリヌクレオチド)、並びに他の酵素、補酵素などが同一容器内に備えられていても、別々に備えられていてもよい。
一実施形態において、セルロース系バイオマスを糖化するための糖化用組成物および糖化用キットは、本発明に係るセルラーゼまたは微生物を複数種類含んでいてもよく、より好ましくは、本発明に係る第一のセルラーゼを複数種類含んでおり、特に好ましくは、本発明に係るエンド−β−グルカナーゼおよびβ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)の両方を含み得る。
また、一実施形態において、本発明に係る糖化用組成物は、イナゴ腸由来のヘミセルラーゼ、特に、β−ガラクトシダーゼをさらに含有していてもよい。これにより、セルロース系バイオマスに含まれるガラクトンなどのヘミセルロースを糖化して、より効率的に還元糖を生成することができる。
なお、ヘミセルロースは、植物の細胞壁を構成するセルロースおよびペクチン以外の多糖と定義されている。このヘミセルロースを分解する酵素は、ヘミセルラーゼと総称され、キシラン分解酵素のエンド−1,4−β−D−キシラナーゼ(EC3.2.1.8)およびエキソ−1,4−β−キシロシダーゼ(EC3.2.1.27)、マンナン分解酵素のβ−D−マンノシダーゼ(EC3.2.1.25)およびエンド−1,4−β−D−マンナナ−ゼ(EC3.2.1.78)、ガラクタン分解酵素のβ−D−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)、エンド−1,4−β−D−ガラクタナーゼ(EC3.2.1.89)およびエンド−1,3−β−D−ガラクタナ−ゼ(EC3.2.1.90)、ならびに、アラビナン分解酵素のα−L−アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55)があり、これらは多糖を単糖に分解する。
また、本発明の一実施形態に係るセルラーゼは、実施例に示すように、イナワラのようなケイ素を多く含有するセルロース系バイオマスに対して優れた酵素活性を有している。それゆえ、一実施形態において、糖化用組成物および糖化用キットは、ケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスを糖化するための糖化用組成物および糖化用キットであることが好ましく、ケイ素を2質量%以上、3質量%以上、または5質量%以上含有するセルロース系バイオマスを糖化するための糖化用組成物および糖化用キットであることがより好ましい。
なお、糖化用組成物および糖化用キットが糖化する対象であるセルロース系バイオマスは、本発明に係るセルロース系バイオマスを糖化する方法において糖化する対象であるセルロース系バイオマスと同じであり、一実施形態において、イネ科植物バイオマスであることがより好ましく、イナワラであることがさらに好ましく、重金属を含有しているものであり得る。
また、本実施形態に係る糖化用組成物は、さらに、緩衝液等を含有していてもよい。また、本実施形態に係る糖化用キットは、さらに、緩衝液、キットの取扱説明書(紙または情報記録媒体)等を含有していてもよい。
〔ポリヌクレオチド、ベクター、形質転換体、抗体〕
(ポリヌクレオチド)
一実施形態において、上記セルラーゼをコードするポリヌクレオチドが提供される。当業者であれば、精製されたセルラーゼから、公知の方法に従って、そのアミノ酸配列を容易に取得することができる。そして、上記セルラーゼのアミノ酸配列が得られた場合、当該セルラーゼをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を容易に設計することができる。なお、本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
また、本発明の一実施形態に係るポリヌクレオチドは、上記セルラーゼのアミノ酸配列に対応する塩基配列の変異体を含む。本明細書中においてポリヌクレオチドに関して用いられる場合、用語「変異体」は、特定のポリペプチドの活性と同じ活性を保持しているポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図される。すなわち、当該変異体は、上記セルラーゼのアミノ酸配列に対応する塩基配列に対して、1または数個の塩基が置換、欠失または付加されている塩基配列からなるポリヌクレオチド;あるいは、上記セルラーゼのアミノ酸配列に対応する塩基配列の相補配列と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであり得る。
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。オリゴヌクレオチドは、短いものはジヌクレオチド(二量体)、トリヌクレオチド(三量体)といわれ、長いものは30マーまたは100マーというように重合しているヌクレオチドの数で表される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成されても、化学合成されてもよい。
本発明に係るポリヌクレオチドはまた、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。適切なハイブリダイゼーション温度は、塩基配列やその塩基配列の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとして用いる場合、50℃以下の温度が好ましい。
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。ポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチドによって、参照のポリヌクレオチドの少なくとも約15ヌクレオチド(nt)、そしてより好ましくは少なくとも約20nt、さらにより好ましくは少なくとも約30nt、そしてさらにより好ましくは約30ntより長いポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)が意図される。このようなポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチド)は、本明細書中においてより詳細に考察されるような検出用プローブとしても有用である。
(ベクターおよび形質転換体)
本発明に係るポリヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列またはベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。言い換えれば、本発明にかかるベクターは、上記本発明にかかるポリヌクレオチドを含むものである。上記本発明にかかるポリヌクレオチドを含むものであれば、その他の構成は特に限定されるものではない。
本発明にかかるベクターを構成するベースとなるベクターとしては、宿主に対して好適なベクターが適宜選択され得る。例えば、ベースとなるベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、アデノウイルス、またはレトロウイルスなどを使用することが可能であるが、これらに限定されない。
本発明にかかるベクターとしてプラスミドベクターを用いる場合、例えば、pBluescript(登録商標)、pUC18などが使用できる。この場合、ベクターが導入される宿主としては、例えば、酵母、大腸菌(エシェリヒア・コリーW3110(Escherichia coli)、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5α)、昆虫細胞、哺乳類細胞などが利用可能である。
更に、具体的には、上記宿主として、大腸菌(例えば、Escherichia coliなど)等の細菌、酵母(例えば、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeなど)、昆虫細胞、線虫(例えば、Caenorhabditis elegansなど)、アフリカツメガエル(例えば、Xenopus laevisなど)の卵母細胞、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)や各種ヒト培養細胞などを用いることが可能であるが、これらに限定されない。また、本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」には、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含まれる。
本発明にかかるベクターは、導入されるべき宿主に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)を含有することが可能である。プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)などが挙げられるが、これに限定されない。
上記ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、アンピシリン、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。上記選択マーカーを用いれば、本発明にかかるポリヌクレオチドが宿主に導入されたか否か、さらには宿主中で確実に発現しているか否かを確認することができる。
上記宿主に本発明にかかるベクターを導入する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。更に具体的には、エシェリヒア属に属する宿主微生物にベクターを導入する場合は、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAを導入する方法や、エレクトロポレーション法を用いる方法が適用され得る。その他、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイJM109、コンピテントハイDH5α;東洋紡績製)を用いて遺伝子導入が行われても良い。
本発明にかかるベクターを構築するには、本発明にかかるポリヌクレオチド(遺伝子)を分離および精製した後、制限酵素処理などを用いて切断した該ポリヌクレオチドの断片と、ベースとなるベクターを制限酵素で切断して得た直鎖ポリヌクレオチドとを結合閉鎖させて構築することができる。結合閉鎖する際には、ベクターおよび該ポリヌクレオチドの性質に応じてDNAリガーゼなどが使用され得る。本発明のベクターを複製可能な宿主に導入した後、ベクターのマーカーおよび酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、本発明のポリヌクレオチド(遺伝子)を含有する形質転換体を得ることができる。よって、本発明にかかるベクターには薬剤耐性遺伝子などのマーカー遺伝子が含まれていることが好ましい。
なお本発明は、上記本発明にかかるベクターで形質転換された形質転換体を包含する。本発明にかかるベクターによって形質転換される宿主は、特に限定されないが、上述したように酵母、大腸菌、昆虫細胞、および哺乳類細胞などが挙げられる。
(抗体)
また、一実施形態において、上記セルラーゼに結合する抗体、特に、上記セルラーゼと特異的に結合する抗体が提供される。本発明の一実施形態に係る抗体は、上記セルラーゼに結合し得るものであれば限定されず、上記セルラーゼに対するポリクローナル抗体等でもよいが、上記セルラーゼに対するモノクローナル抗体であることが好ましい。モノクローナル抗体は、性質が均一で供給しやすい、ハイブリドーマとして半永久的に保存ができるなどの利点を有する。
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgMおよびこれらのFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fcフラグメント)を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体および抗イディオタイプ抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
なお、「抗体」は、種々の公知の方法に従えば作製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当該分野において公知の技術(例えば、ハイブリドーマ法(Kohler,G.およびMilstein,C.,Nature 256,495−497(1975))、トリオーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,Immunology Today 4,72(1983))およびEBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R Liss,Inc.,77−96(1985))などを参照のこと)を用いれば容易に作製され得る。
また、ペプチド抗体は、当該分野に公知の方法(例えば、Chow,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910−914;およびBittle,F.J.ら、J.Gen.Virol.66:2347−2354(1985)(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。)に従えば容易に作製され得る。
FabおよびF(ab’)ならびに本発明に係る抗体の他のフラグメントが、本明細書中で開示される方法に従って使用され得ることは、当業者には明白である。このようなフラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生じる)またはペプシン(F(ab’)フラグメントを生じる)のような酵素を使用するタンパク質分解による切断によって産生され得る。あるいは、上記セルラーゼに結合するフラグメントは、組換えDNA技術の適用または化学合成によって産生され得る。
このように、本実施形態に係る抗体は、上記セルラーゼと特異的に結合するフラグメント(例えば、FabフラグメントおよびF(ab’)フラグメント)を備えていればよく、異なる抗体分子のFcフラグメントとからなる免疫グロブリンも本発明に含まれることに留意すべきである。
つまり、本発明の目的は、上記セルラーゼと特異的に結合する抗体およびその利用を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の免疫グロブリンの種類(IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM)、抗体作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得される抗体も本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
(1.昆虫の採取)
イネ科植物を食草とする昆虫であるイナゴ、ショウリョウバッタ、およびメイチュウを、日本大学生物資源科学部生物環境科学研究センター敷地内の水稲棚田において採取し、−80℃に凍結して保管した。
イナゴは直翅目バッタ科のグループに属し、雄の体長は30mm前後、雌の体長は40mm前後である。前胸下に突起を有し、後足脛節が端に広がり、全体的に緑色であるが、背面は褐色である。水田または湿地に棲み、特にイネ科植物を食草とする。
ショウリョウバッタは直翅目バッタ科の一種であり、雄の体長は50mm前後、雌の体長は80mm前後である。根元が太く先が細まっている剣状で平たい触覚を有し、前翅の先端が尖っており、後足腿節の膝部に小刺を有し、全体は緑色、褐色または両者の班である。日本全土に広く分布し、主に草原に棲むが、海岸にも棲息する。
メイチュウはメイガ(鱗翅目メイガ科)の幼虫であり、イネの青枯れ、褐色枯れ、枯死を引き起こす害虫として知られている。幼虫の体長は10mm前後であり、イネの根ぎわ、下茎部内等に食い込んで生活し、数本の茎を移り食い、3〜7週間でさなぎとなり、さらに5〜10日間で蛾となる。
(2.腸内pHの測定)
凍結保存しておいた昆虫を氷上にて解凍し、ハサミおよびピンセットを用いて腸を摘出した。摘出した腸をハサミにより細かくきざみ、腸内pHをpH計(twin pHメータ、HORIBA)を用いて測定した。結果、イナゴの腸内pHは6.5であり、ショウリョウバッタの腸内pHは6.5であり、メイチュウの腸内pHは8.0であった。
(3.腸内粗酵素液の調製)
凍結保存しておいた昆虫を氷上にて解凍し、腸を摘出した。各昆虫1匹の腸1個に対し、0.1Mリン酸またはクエン酸緩衝液(2.で測定した各昆虫の腸内pHに合わせてpHを調整したもの)を0.5mL加え、氷上においてガラスホモジナイザーを用いて磨砕した。さらに、高速冷却遠心機(MX−301、TOMY)を用いて12000rpm、4℃、5分間の条件で遠心し上清を回収する操作を2回行い、腸内粗酵素液を得た。
(4.腸内粗酵素液のCMC分解酵素活性の測定)
3.で得た各昆虫の腸内粗酵素液について、基質としてCMC(Carboxymethylcellulose)を用いて、セルロースを分解する酵素活性を測定した。CMCは、セルロースにカルボキシルメチル基が導入されてなる水溶性の高分子である。酵素活性の測定は、酵素がCMCを加水分解することによって生じる還元糖をDNS(Dinitro salictlic acid)法により定量することにより行った。
具体的には、3.で得た各昆虫の腸内粗酵素液に対し、2%(w/v)CMC含有50mMクエン酸緩衝液(2.で測定した各昆虫の腸内pHに合わせてpHを調整したもの)を基質として加え、30℃において30分間インキュベートし、CMCからの還元糖生成量をDNS法により測定した。
結果、図1に示すように、CMCから最も多くの還元糖を生成した腸内粗酵素液はイナゴのものであり、次いでショウリョウバッタのものであり、メイチュウの腸内粗酵素液は還元糖を殆ど生成しなかった。このことから、イナゴおよびショウリョウバッタ、特にイナゴは、CMC分解酵素を有しており、イネ科植物を食べたとき、腸内酵素により効率よくセルロースを糖化して吸収していると考えられる。
(5.イナゴ腸内酵素の検定)
4.においてイナゴ腸内粗酵素液がCMC分解能を有することが明らかとなった。そこで、精製されていない試料からも各種の酵素活性を検出することができる市販の酵素活性測定キットを用いて、セルロースの分解に関与する酵素であるβ−グルコシダーゼの存否を確認した。
まず、凍結保存しておいたイナゴを氷上にて解凍し、腸を摘出した。腸1個に対し滅菌生理食塩水2.0mLを加え、氷上においてペレットミキサーを用いて磨砕した。さらに、高速冷却遠心機(MX−301、TOMY)を用いて12000rpm、4℃、5分間の条件で遠心し上清を回収する操作を2回行い、酵素活性測定キット(アピザイムキット、BIOMERIEUX)を用いてイナゴ腸内酵素の種類を確認した。
結果、図2に示すように、β−グルコシダーゼに対応するウェル(17)が発色し、β−グルコシダーゼの存在を確認した。なお、β−グルコシダーゼは、セロオリゴ糖、セロビオース、およびβ−グルコシドに作用し、非還元末端からグルコースを遊離する酵素である。
また、図2に示すように、アルカリフォスファターゼに対応するウェル(2)、ナフトール−AS−BI−フォスフォヒドロラーゼに対応するウェル(12)、β−ガラクトシダーゼに対応するウェル(14)、およびβ−グルクロニダーゼに対応するウェル(15)の発色が特に強いことを確認した。
以上から、イナゴ腸内粗酵素液には、β−グルコシダーゼが存在するとともに、他にもヘミセルラーゼ類等の様々な酵素が含まれていることを確認した。
(6.イナゴ腸内粗酵素液と市販セルラーゼとの比較)
また、イナゴ腸内粗酵素液によるCMCの分解が確認されたため、イナゴ腸内粗酵素液が、CMCより糖化し難い基質であるろ紙およびイナワラを分解し得るか否かを確認した。
(6−1.ろ紙分解能の測定)
15mLチューブに、基質として幅1.0cm、長さ6.0cmのろ紙(約50mg、ワットマン製、FILTER PAPERS 1、Quanitative Circles、直径150mm、Cat No.1001−150)を入れ、3.で得たイナゴ腸内粗酵素液を0.5mL加えた。なお、当該ろ紙は、α-セルロース含有量が最低98%となるように処理された高品質コットンリターからなる。また、同様に、15mLチューブに同一のろ紙を入れ、市販のセルラーゼ(Trichoderma viride由来セルラーゼ、CELLULYSIN Cellulase、CALBIOCHEM、至適作用条件pH4.0および40℃)の酵素液0.5mL(約2U)を加えた。各々にpH6.6に調整した50mMクエン酸緩衝液1.0mLを混合して、50℃において1時間インキュベートし、DNS法により還元糖量を測定した。結果を図3に示す。
(6−2.イナワラ分解能の測定)
イナワラについては、元から含まれる還元糖を除くため、イナワラ(Cd高吸収性イネ「長香穀」)をミキサーにより粉砕し、目開き5mmの篩に掛け、その篩下を10倍量の蒸留水と混合し、沸騰水中で5分間加熱した後、ろ紙でろ過し、その残渣を乾燥させたものを用いた。なお、乾燥処理後のイナワラにおけるケイ素の含有量は、Siとして6.37質量%であった。
15mLチューブに、基質として還元糖を除いたイナワラ約50mgを入れ、基質としてろ紙を用いた場合と同様に還元糖量を測定した。結果を図4に示す。
図3に示すように、ろ紙を基質とした場合には、イナゴ腸内粗酵素液による還元糖の生成量は、市販のセルラーゼと同程度の少ない量であった。一方、図4に示すように、イナワラを基質とした場合には、イナゴ腸内粗酵素液による還元糖の生成量は著しく大きい値であり、市販のセルラーゼによる還元糖の生成量を遙かに超えていた(約40倍)。このことから、イナゴ腸内粗酵素液は、イナワラを基質としても酵素活性が低下しない、優れたイナワラ糖化酵素を含んでいると考えられる。
(7.イナゴ腸内粗酵素液の至適pHの測定)
凍結保存しておいたイナゴ10匹から摘出した腸10個に、pH5.0に調整した0.1Mクエン酸緩衝液5.0mLを加え、3.と同様にイナゴ腸内粗酵素液を調製した後、pH5.0に調整した0.1Mクエン酸緩衝液によって、10倍に希釈した。次いで、15mLチューブへ、基質として6.と同様のろ紙またはイナワラを入れ、得られたイナゴ腸内粗酵素液0.5mLを加えた。さらに、pH4.0、5.0、6.0、7.0および8.0に夫々調整した0.1M緩衝液(pH4.0〜5.0はクエン酸緩衝液、pH6.0〜8.0はリン酸緩衝液)1.0mLを加えて混合した。その後、50℃で1時間インキュベートし、DNS法で生成した還元糖量を測定した。結果を図5に示す。なお、図5では、還元糖量はイナゴ腸内粗酵素液のタンパク質含量当たりの値で示している。イナゴ腸内粗酵素液のタンパク質含量は、Braford法を用いたプロテインアッセイ(BIO−RAD)により測定した。
図5に示すように、ろ紙およびイナワラの何れを基質としたときでも、pH7.0において最も酵素活性が高くなっていた。そして、イナワラを基質としたときには、pH5.0〜8.0の範囲において一定の活性を示していた。これは、イナゴ腸内粗酵素液中に、複数の酵素が存在していることに起因するものと考えられる。また、イナワラを基質としたときに、pH4.0において急激に活性が低くなったが、これは、酸性条件によってイナワラ糖化酵素のタンパク質の変性が生じたものと考えられる。
(8.イナゴ腸内粗酵素液の至適温度の測定)
凍結保存しておいたイナゴ10匹から摘出した腸10個に、pH5.0に調整した0.1Mクエン酸緩衝液5.0mLを加え、3.と同様にイナゴ腸内粗酵素液を調製した後、pH5.0に調整した0.1Mクエン酸緩衝液によって、10倍に希釈した。次いで、15mLチューブへ、基質として6.と同様のろ紙またはイナワラを入れ、得られたイナゴ腸内粗酵素液0.5mLを加えた。さらに、pH7.0に調整した0.1Mリン酸緩衝液1.0mLを加えて混合した。なお、pH7.0は、7.で得た至適pHである。その後、反応温度を30℃、40℃、50℃、60℃に夫々設定して1時間インキュベートし、DNS法で生成した還元糖量を測定した。結果を図6に示す。なお、図6では、還元糖量はイナゴ腸内粗酵素液のタンパク質含量当たりの値で示している。タンパク質含量はプロテインアッセイ(BIO−RAD)により測定した。
図6に示すように、反応温度が50℃のときに酵素活性が最も高くなり、60℃で減少した。これは、反応温度の上昇に伴う酵素反応の反応速度の上昇と、熱による変性とのバランスによるものであり、最も効率よく作用する温度は50℃と考えられる。
(9.イナゴ腸内粗酵素液の濃度変化に伴うイナワラ糖化能の変化)
凍結保存しておいたイナゴ10匹から摘出した腸10個に、pH5.0に調整した0.1Mクエン酸緩衝液5.0mLを加え、3.と同様にイナゴ腸内粗酵素液を調製した後、pH5.0に調整した0.1Mクエン酸緩衝液によって、2倍、5倍および10倍に夫々希釈した。次いで、15mLチューブへ、基質として6.と同様のイナワラを入れ、各倍率に希釈されたイナゴ腸内粗酵素液0.5mLを加えた。さらに、pH7.0に調整した0.1Mリン酸緩衝液1.0mLを加えて混合した。なお、pH7.0は、7.で得た至適pHである。その後、反応温度を50℃に設定して1時間インキュベートし、DNS法で生成した還元糖量を測定した。なお、50℃は、8.で得た至適温度である。結果を図7に示す。なお、図7では、還元糖量はイナゴ腸内粗酵素液のタンパク質含量当たりの値で示している。タンパク質含量はプロテインアッセイ(BIO−RAD)により測定した。
図7に示すように、イナゴ腸内粗酵素液を2倍、5倍、10倍と希釈していく程、タンパク質1mg当たりの還元糖量が多くなった。これは、イナゴ腸内粗酵素液を希釈する程にイナワラ糖化酵素の活性が高まることを示している。この要因としては、イナゴ腸内粗酵素液中には様々な物質が存在しており、イナゴ腸内粗酵素液を希釈することによって、これらの物質の濃度が薄められて、イナワラ糖化酵素の活性が高まるものと考えられる。このことから、イナゴ腸内粗酵素液を精製することにより、イナワラ糖化酵素の活性がさらに高まると考えられる。
(10.イナゴ腸内粗酵素液の粗分画)
上述したように、イナゴ腸内粗酵素液のタンパク質当たりの還元糖生成量が希釈により向上したことから、精製により高い活性を呈することが示唆された。そのため、まず、硫安塩析により、イナゴ腸内粗酵素液の粗分画を行った。
(10−1.イナゴ腸内粗酵素液の調製)
氷上において、イナゴから摘出した腸40個に、プロテアーゼ阻害剤(Protease Inhibitor Mix、GE Healthcare)200μLを加えたpH7.0に調整した50mMリン酸緩衝液20mLを加えて、ガラスホモジナイザーを用いて磨砕し、高速冷却遠心機(CR22GII、日立)を用いて12000rpm、4℃、5分間の遠心操作を2回行い、イナゴ腸内粗酵素液を得た。
(10−2.硫安分画)
続いて、得られたイナゴ腸内粗酵素液を硫安塩析した。硫安塩析はタンパク質を安定的に処理し得る方法であり、一般に、タンパク質を硫安塩析により分画する際には、30〜60%飽和の範囲で、10%飽和間隔で順番に塩析を行い、目的タンパク質が何れの濃度で沈殿するのかを予め調べておく必要がある。なお、硫安濃度を増加させたときの塩析のされ方はタンパク質の種類によって異なり、30%飽和硫安の状態で分子量の非常に大きいタンパク質、タンパク質複合体、タンパク質脂質複合体(リポタンパク質)等が沈殿し、60%飽和まで増加させると酵素を含む多くのタンパク質が沈殿し、約80%飽和まで増加させると殆ど全てのタンパク質が沈殿する。
まず、50mLチューブに、得られたイナゴ腸内粗酵素液と、当該イナゴ腸内粗酵素液の1/10程度のpH7.0に調整した200mMリン酸緩衝液とを加えてよく混合した。そこへ、予め乳鉢で砕いておいた硫酸アンモニウム(硫安)を少量ずつ溶解させ、30%飽和状態にしてから1時間放置した。その後、高速冷却遠心機(CR22GII、日立)を用いて15000rpm、4℃、30分間の遠心操作を行い、上清を新しい50mLチューブに移して、沈殿を回収した。得られた上清に対して、10%飽和間隔で飽和度を増加させながら同様の操作を行い、最終的に、30〜70%飽和の各沈殿を夫々回収した。各沈殿は、pH7.0に調整した20mMリン酸緩衝液1200μLに溶かし、30〜70%飽和の各分画試料とした。
(10−3.透析)
続いて、アイスバケツ中に、pH7.0に調整した20mMリン酸緩衝液500mLが入ったビーカーを設置し、30〜70%飽和の各分画試料を入れたセルロースチューブ(24/32、エーディア、分画分子量12〜16KDa)を入れ、スターラー上で静かに攪拌した。2時間毎にビーカー内の緩衝液を交換し、計6時間攪拌することによって透析を行った。透析後、平衡化した分画試料を回収し、−80℃で保管した。
(10−4.分画試料のイナワラ分解能測定)
15mLチューブへ、基質として6.と同様のイナワラを入れ、透析した分画試料0.5mLを加え、さらにpH7.0に調整した20mMリン酸緩衝液1.0mLを加えて混合し、反応温度を50℃として1時間インキュベートし、DNS法により還元糖を測定した。結果を図8に示す。なお、図8では、還元糖量は分画試料のタンパク質含量当たりの値で示している。タンパク質含量はプロテインアッセイ(BIO−RAD)により測定した。
図8に示すように、30〜50%飽和の分画試料において酵素活性が高く、特に50%飽和の分画試料が最も高い活性を示した。これにより、30〜50%飽和硫安で沈殿してくるタンパク質に、イナワラ糖化酵素が多く存在することが示された。
(11.イナゴ腸内粗酵素液中のイナワラ糖化酵素の精製)
さらなる精製のため、イナゴ腸由来の30〜50%飽和硫安分画試料について、カラム(Superdex75 10/300GL、GE Healthcare)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーを行った。カラム(Superdex75 10/300GL、GE Healthcare)は、分画範囲3〜70kDa、カラムサイズ直径1.0cm×高さ30.0cm、ベット体積24mLである。
(11−1.ランニングバッファーの調製)
pH7.0に調整した50mMリン酸緩衝液(0.15M NaCl)を、0.22μmメンブレンフィルター(IWAKI)に掛け、バキュームポンプにより脱気を行い、4℃に冷却することにより、ゲルろ過クロマトグラフィーに用いるランニングバッファーを調製した。
(11−2.試料の調製)
10.において得られたイナゴ腸由来の30〜50%飽和硫安分画試料を、注射器(1mLテルモシリンジ、TERUMO)を用いて0.22μmフィルター(Syringe Driven Filter Unit、MILLIPORE)に掛け、ゲルろ過クロマトグラフィーに供する試料を調製した。
(11−3.試料の溶出)
ゲルろ過クロマトグラフィーでは、4℃条件下で、試料250μLを流速約0.07mL/minでカラムに流した。分画された試料は、フラクションコレクター(SF−2120、ADVANTEC)により、1チューブ当たり0.5mLずつ、計80本(40mL)採取した。
(11−4.吸光度測定)
得られた分画試料の280nmにおける吸光度を分光光度計(UV−1700、島津製作所)を用いて測定した。結果、図9(a)に示すように、主に6つのタンパク質のピークが示された。
(11−5.イナワラ分解能測定)
この6つのピークに対応する各分画試料について、イナワラ分解能を測定した。測定は、用いる緩衝液をpH7.0に調整した50mMリン酸緩衝液に変更したこと以外は10−4.と同様に行った。結果、図9(a)に示すように、溶出液量(Ve)における二つ目のピークに対応する分画試料の酵素活性は高かったが、他のピークでは活性は示されなかった。
そして、活性の高い二つ目のピーク付近に対応するF1〜F4の分画試料(溶出液量11.5mL(F1)、12.0mL(F2)、12.5mL(F3)および13.0mL(F4))についても夫々イナワラ分解能を測定したところ、図9(a)に示すように、F2の酵素活性が最も高く、F1、F3およびF4についてもF2程ではないが活性が示された。
(11−6.タンパク質の純度検定)
F1〜F4の分画試料について、SDS−PAGEを行った。具体的には、まず、F2試料20μLを等量の2×サンプルバッファーと混合した後、95℃において3分間加熱した。そのうち7μLを、ミニゲル用電気泳動装置(ATTO)にセットしたゲル(12.5%均一濃度PAGEL、ATTO)のウェルにアプライし、20mAの電流で約80分間電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルをCBB染色した。図9(b)に、染色後のゲルの写真を示す。図9(b)に示すように、酵素活性が最も高かったF2において、3つのバンドが検出された。この3つのバンドに対応するタンパク質の分子量は、それぞれ約53kDa(f1)、約50kDa(f2)、約30kDa(f3)と推定され、これら三つのタンパク質がイナワラ糖化酵素であると考えられる。なお、これら三つのタンパク質のうち、特にf2が、イナワラを効率よく分解して還元糖を精製することができるセルラーゼであると推定される。
(12.昆虫の腸内に共生するセルロース分解微生物の探索)
自然界において、セルロースは主に微生物の働きによって分解されている。これまでに数多くのセルロース分解微生物が知られている。セルロース分解微生物は、土壌および草食動物の消化管等に生息しており、これらの微生物は菌体外に複数のセルロース分解酵素を分泌して植物体の細胞壁等のセルロースを分解している。そこで、Congo Red Cellulose培地を用いて、イネ科植物を食草とする昆虫の腸内に共生する微生物の中からの、CMCを分解する能力を有する微生物の分離を試みた。
(12−1.昆虫の腸および糞からの試料液の調製)
イネ科植物を食草とする昆虫であるイナゴ、ショウリョウバッタ、およびメイチュウを、日本大学生物資源科学部生物環境科学研究センター敷地内の水稲棚田において採取した。イネを入れたそれぞれの飼育容器で各昆虫を一晩飼育し、飼育容器から糞を採取した。昆虫を飼育容器から取り出し、酢酸エチルを染み込ませたガーゼを入れた密閉容器に移し、酢酸エチルによって昆虫が動かなくなってからクリーンベンチに移した。70%エタノールに漬け、昆虫の表体を滅菌し、滅菌水で洗い流した。その後、ハサミおよびピンセットにより、腸を摘出した。
腸1個または糞5個を1.5mLチューブに入れ、滅菌生理食塩水1.0mLを加え、ペレットミキサーにより磨砕し、試料液とした。
(12−2.Congo Red Cellulose培地によるセルロース分解微生物の単離)
蒸留水1Lに、CM−Cellulose(セロゲンBS、第一工業製薬)を1.88g、KHPOを0.20g、MgSOを0.25g、Gelatinを2.00g、Yeast Extractを1.00g、Congo Redを0.20g、Agarを15.00g混合し、121℃で15分間オートクレーブすることによりCongo Red Cellulose培地を作製した。
この培地に、12−1.で調整した試料液を塗沫して、30℃において24時間培養した。ここで、Congo Red Cellulose培地では、CMC分解能を有する微生物は、コロニー周囲の色素結合セルロースを酵素で分解してハローを生じるため、容易にCMC分解微生物を選抜することができる。結果、図10に一例を示すように、イナゴ腸由来の8株、イナゴ糞由来の3株、ショウリョウバッタ糞由来の4株、メイチュウ腸由来の5株、メイチュウ糞由来の4株の計24株が、コロニー周囲にハローを形成した。
そのため、イナゴ、ショウリョウバッタおよびメイチュウの何れにも、CMC分解微生物が存在しており、菌体外にCMC分解酵素を分泌していることが示された。
また、得られた上記微生物を、以下のように継代培養した。継代培養は、3週間程度で行った。すなわち、約3週間毎に、CMCの分解を示すハローが生じているコロニーを白金耳でとり、LB培地(Trypton 10g/L、Yeast Extract 5g/L、NaCl 5g/L)に接種した。このLB培地を、30℃で24時間、121rpmにて振とう培養し、前述したものと同様の新しいCongo Red Cellulose培地にストークした。このCongo Red Cellulose培地を、室温にて24時間培養し、コロニーの周辺にハローが生じたことを確認した後、4℃で保存した。以上により、上記微生物を首尾よく継代培養することができた。
(13.異なる基質に対するイナゴ腸由来糖化酵素の糖化能の比較)
6.に示すように、イナゴ腸由来糖化酵素(セルラーゼ)は、ろ紙に対しては、市販のセルラーゼ(Trichoderma viride由来セルラーゼ、CELLULYSIN Cellulase、CALBIOCHEM、至適作用条件pH4.0および40℃)2Uとほぼ同程度の糖化能であったが、イナワラに対しては特異的に高い糖化能を有していた。そこで、異なる基質に対するイナゴ腸由来のセルラーゼの糖化能をより詳細に調べるために、各種イネ科植物のセルロースを基質とした場合のイナゴ腸由来のセルラーゼと市販のセルラーゼの糖化能とを比較検討した。基質としては、イナワラに加えて、ソルガムおよびケンタッキー芝を用いた。
(13−1.糖化前処理(基質中に存在する還元糖の除去))
基質として用いるイナワラ、ソルガムおよびケンタッキー芝の乾燥物を、ミキサーで粉砕し、5mmの篩いを通過させ、篩下を10倍量の蒸留水と混合し、沸騰湯中で5分間加熱し、ろ紙(FTLTER PAPERS 1、Whatman)によりろ過した。得られたろ物を、乾燥機(CONVECTION OVEN LC−722、ESPEC)内において105℃で一晩乾燥させることにより、前処理済みの基質を得た。なお、この前処理は、基質中に元々含まれる還元糖を除いて、測定値のバックグランドを低くするための処理である。
(13−2.灰分の測定)
前処理済みの基質の一部を、乾燥機内に入れ、105℃で4時間程度加熱した。続いて、基質をデシケーター内に移し、冷却して重量を測定した後に、再び乾燥器内で1時間加熱することを、重量の変化が±0.3mg未満になるまで繰り返して、絶乾した基質を得た。
次いで、絶乾した基質を、0.1mgの精度で0.1g秤取り、るつぼ(マッフル炉、Muffle Furnace、ISUZU)内に入れ、575℃で4時間程度加熱した。続いて、基質をデシケーター内に移し、冷却して重量を測定した後に、再び乾燥器内で1時間加熱することを、重量の変化が±0.3mg未満になるまで繰り返して、灰化した基質を得た。
灰化後の基質の重量を、絶乾重量で割ることにより、絶乾重量に対する灰分の割合として灰分を算出した。なお、灰分には、ケイ素の他、カリウム、マグネシウム、鉄などのミネラルも僅かに含まれるが、主成分はケイ素である。各基質の前処理後の段階での還元糖量および灰分を表1に示す。表1に示すように、基質中に残存する残存還元糖量は、ソルガムおよびケンタッキー芝の方が、イナワラよりも若干高いが、何れも殆ど存在していない。また、灰分は、何れの基質においても同程度であり、かつ、ケイ素の含有量が1%を超えていることを示している。
(13−3.還元糖量の測定)
測定において用いる基質として、13−1.において前処理したイナワラ、ソルガムおよびケンタッキー芝の各々50±1mgと、幅1.0cm、長さ6.0cmのろ紙(FILTER PAPERS 1、Whatman)とをそれぞれ15mlチューブに入れた。
また、測定において用いる酵素として、3.において得られたイナゴの腸内粗酵素液を10倍希釈したものと、市販のセルラーゼ(CELLULYSIN Cellulase,Trichoderma viride、CALBIOCHEM、至適作用条件pH4.0、40℃)の酔素液約2Uとの2種類を用いた。
この両酵素液各々を0.5mlずつ各基質に加え、さらにpH7.0の20mMリン酸緩衝液1.0mlと混合して50℃で1時間インキュベートし、DNS法により還元糖を測定した。結果を図11に示す。
図11に示すように、イナゴ腸由来の糖化酵素液による還元糖精製量は市販のセルラーゼと比較して、イナワラについて約40倍、ソルガムについて約8倍、ケンタッキー芝について約4倍であり、イナゴ腸由来のセルラーゼはイネ科植物を特異的に糖化する酵素であることが明らかとなった。そして、活性(糖化量)は、基質としてイナワラを用いた場合が、最も高くなった。
(14.イナゴ腸由来糖化酵素のヘミセルラーゼ活性の検討)
3.において得られたイナゴの腸内粗酵素液について、ヘミセルラーゼの有無を確認した。
(14−1.キシラン分解関連酵素エンド−1,4−β−D−キシラナ−ゼ活性の測定)
D−XYLOSE ASSAY KIT(Megazyme)を用いて、イナゴの腸内粗酵素液のエンド−1,4−β−D−キシラナ−ゼ活性を測定した。滅菌水2.00mlに腸内粗酵素液試料0.10mlを加え、さらにsolution 1を0.40ml、solution 2を0.40ml、suspension 3を0.02mlそれぞれ加えた。5分後に分光光度計を用いて340nmの吸光度を測定し、続いて、solution4を0.05ml加え、6分以内に340nmの吸光度を測定した。そして、solution4を加えた前後でキシロースの濃度を検討した。結果、図12に示すように、キシラーゼ活性は検出されなかった。
(14−2.マンナン分解関連酵素エンド−1,4−β−D−マンナナ−ゼ活性の測定)
腸内粗酵素液試料0.5mlに、色素標識したアゾ−カロブガラクトマンナン(Megazyme)であるカロブ(ローカスト)ガラクトマンナンを基質とした溶液0.5mlを加え、攪拌し、40℃で、10分間インキュベートした。その後、エタノール2.5mlを加えて高分子の基質を沈殿させ、室温で10分間放置し、1000gで、10分間遠心分離を行った。その後、590nmの吸光度を測定し、β−マンナナ−ゼ活性を測定した。結果、図12に示すように、マンナナーゼ活性は検出されなかった。
(14−3.ガラクタン分解関連酵素β−ガラクトシダーゼ活性の測定)
p−Galactosidase Enzyme Assay System with Reporter Lysis Buffer(Promega)を用いて、イナゴの腸内粗酵素液のβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。96ウェルのマイクロプレートリーダーBenchmark Plus(Bl0−RAD)に、lxRLB20μlおよび腸内粗酵素液試料30μlを入れ、さらに、基質ONPG(O−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド)を含むAssay Buffer(2x)を加え、37℃で、30分間反応させた。その後、1M炭酸ナトリウムを150μl加え、反応を停止させて分光光度計で420nmの吸光度を測定した。結果、図12に示すように、約17mUのβ−ガラクトシダーゼ活性が検出された。この結果は、5.におけるアピザイムキットを用いた検定結果と一致する。
(14−4.アラビナン分解関連酵素α−L−アラビノフラノシーダーゼ活性の測定)
ARABLNAN ASSAY KIT(Megazyme)を用いて、イナゴの腸内粗酵素液のアラビノース活性を測定した。腸内粗酵素液試料0.10mlに滅菌水を2.12ml、solution 1を200μl、solution 2を100μlそれぞれ加えて、3分後、分光光度計で340nmの吸光度を測定した。さらに、solution 3を20μl加えて混合し、40℃で10分間インキュベートした後、分光光度計で340nmの吸光度を測定した。結果、図12に示すように、アラビノシダーゼ活性は検出されなかった。
(15.イナワラ糖化能を有するタンパク質の質量分析による同定)
11.において得られたイナワラ糖化酵素の活性が最も高かった分画試料について、質量分析によりタンパク質の同定を行った。
(15−1.SDS−PAGEによるタンパク質の分離)
11.において得られた分画試料(f2)25μlを等量の2×サンプルバッファーと混合し、95℃で3分間加熱し、ミニゲル用電気泳動装置(ATTO)にセットしたゲル(12.5%均一濃度PAGEL、ATTO)のウェルに15μlアプライし、20mAの電流で約80分間電気泳動を行った。なお、タンパク質の量を確保するため、試料は3レーン流した。
(15−2.質量分析用の銀染色)
ゲルを取り出し、固定液(50%メタノール、5%酢酸)の入った容器に入れ、室温で20分間振とう後、固定液を捨てた。さらに、洗浄液(50%メタノール)を入れ、室温で1O分間振とう後、洗浄液を捨てた。次に、増感液(0.02%Na)を入れ、室温で1分間振とうした。次に、MilliQ水を入れ、1分間振とうさせた後、水を捨てる操作を3回繰り返した。次に、硝酸銀液(0.1%AgNO)を入れ、4℃で20分間振とうさせた。次に、MilliQ水を入れ、室温で1分間振とうさせた後、水を捨てる操作を3回繰り返した。そして、現像液(0.04%HCHO、2%NaCO)を入れ、ゲルの染色の様子を見ながら室温で2〜5分間振とうさせた後に、停止液(5%酢酸)を入れ、室温で10分間振とうした。最後に、MilliQ水を入れ、室温で5分間振とうさせた後、水を捨てる操作を3回繰り返した。
(15−3.プロテアーゼによるゲル内消化)
以下の作業は全てクリーンルーム内で行った。まず、OHPシートを敷いたライトボックスにゲルを載せ、メスを用いてゲルの切り出しを行った。図13に示すように、泳動後のゲルについて、1レーンずつ、ゲルの上端から泳動の終端(上端から65mm)まで6mmサイズ毎に11断片を切り出した。
次いで、ゲルの脱色操作を行った。まず、ゲル片に対して、脱色液(15mM フェリシアン化カリウム 50mM チオ硫酸ナトリウム)100μlを加え、Thermomixercomfort(Eppendorf)を用いて、室温にて、13,000rpmで10分間振とうし、液を取り除いた。その後、MilliQ水500μlを加え、室温にて13,000rpmで15分間振とうした後、水を取り除く操作を3回繰り返した。さらに、アセトニトリル100μlを加え、室温にて13,000rpmで5分間振とうした後、液を取り除いた。以上により、ゲルの脱色を行った。その後、遠心エバポレーターCVE−200Dを用い、15分間ゲルを乾燥した。
次いで、還元およびアルキル化操作を行った。まず、タンバク質のS−S結合を切断するための処理として、ゲルに還元液(10mMDTT、25mM重炭酸アンモニウム)100μlを加え、56℃にて、13,000rpmで1時間振とうした後、液を取り除いた。そして、洗浄用バッファー(25mM重炭酸アンモニウム)を加え、室温にて13.000rpmで10分間振とうした。その後、アルキル化液(55mM ヨードアセトアミド、25mM重炭酸アンモニウム)100μlを加え、遮光して室温にて13,000rpmで45分間、振とうした後、液を取り除いた。さらに、洗浄用バッファー100μlを加え、室温にて13,000rpmで10分間振とうした。
最後に、ゲル内消化操作を行った。まず、ゲルに脱水液(50%アセトニトリル、25mM重炭酸アンモニウム)を加え、室温にて13,000rpmで10分間振とう後、液を取り除く操作を2回繰り返した。その後、遠心エバポレーターで15分間真空にしてゲルを乾燥させた。その後、トリプシン溶液(10μg/ml、25mM重炭酸アンモニウム)30μlを加え、氷上で30分間放置後、余分なトリプシン溶液を取り除き、37℃で一晩反応させた。その後、抽出液(50%アセトニトリル、5%トリフルオロ酢酸)50μlを加え、室温にて13.000rpmで30分間振とうした後、液を回収した。さらに抽出液25μlを加え、室温にて13,000rpmで30分振とうした後、液を回収した。この2回分の抽出液を合わせたものを、遠心エバポレーターCVE−200D(EYELA)を用いて、乾固するまで乾燥させた。そして、0.1%ギ酸を13μl添加して混合し、Centrifuge5415R(eppendorf)を用いて、4℃にて12,000rpmで10min遠心した。ここから沈殿を吸わないように12μl採取して4℃で保管し、これをゲル内消化された試料として質量分析に用いた。
(15−4.LCQ DECA XPを用いたペプチドの質量分析)
15−3.において得られた試料について、日本大学生物資源科学部生物環境科学研究センターに設置されたLCQ DECA XP(ThemoFisherScientific)によりLC−MS/MS解析を行った。試料は10μlを分析に用いた。測定条件は、カラム:L−Column Micro 711290 F1107533−P 0.2×50mm,L2−C18,3μm、流速:1.5μL/min、移動相A:98%水、2%アセトニトリル、0.1%ギ酸、移動相B:90%アセトニトリル、10%水、0.1%ギ酸、グラジェント:A:B−95:5(0min)−5:95(20min)、モニターイオン:m/z450〜2000で行った。
(15−5.LC−MS/MS解析結果についてのデータベース検索)
NCBIより、セルロース分解関連酵素としてEC3.2.1.4、EC3.2.1.21、EC3.2.1.74およびEC3.2.1.91の4種類、ヘミセルロ−ス分解関連酵素としてキシラン分解酵素EC3.2.1.8およびEC3.2.1.27、マンナン分解酵素EC3.2.1.25およびEC3.2.1.78、ガラクタン分解酵素EC3.2.1.23、EC3.2.1.89およびEC3.2.1.90ならびにアラビナン分解酵素EC3.2.1.55の8種類で合計12種類の13934件のタンパク質のデータベースを取り込んだ。そして、BioworksVer3.3(ThermoFisherScientific)を用いて、15−4.における各ゲル断片の質量分析結果から得られた部分アミノ酸配列と、データベース上のセルロース分解関連酵素およびヘミセルロース分解関連酵素の配列とを比較した。
その結果、ゲル断片N0.5から得られた部分アミノ酸配列(配列番号1)が、既知のエンド−β−グルカナーゼ(EC3.2.1.4、Hodotermopsis Sjoestedti、M.W.42738、グリコシルヒドロラーゼファミリー9(GHF9)、gi:44885830、配列番号2)の第12位〜第38位と一致した。
また、ゲル断片NO.3から得られた部分アミノ酸配列(配列番号3、4)が、既知のβ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21、Prevotella Multisaccharivorax、M.W.95077、gi:336399370、配列番号5)の第746位〜第759位、第801位〜第813位とそれぞれ一致した。なお、これらの部分アミノ酸配列には、PRK15098(β−D−グルコシダーゼグルコヒドロラーゼ)の領域が存在していた。
また、β−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)も検出された。この結果は、5.の結果と一致し、イナゴ腸内粗酵素液には、β−ガラクトシダーゼが含まれると考えられる。
以上のことから、イナゴ腸内粗酵素液には、エンド−β−グルカナーゼ(EC3.2.1.4)およびβ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)が含まれており、イナゴの腸内では、例えば、イナワラのセルロースにエンド−β−グルカナーゼが作用することで、セルロースが加水分解されてセロビオースおよびセロオリゴ糖が生成する。そして、生成したセロビオースおよびセロオリゴ糖にβ−グルコシダーゼが作用することでグルコースを生成していると考えられる。なお、同じくセルラーゼに包摂されるエキソセロビオヒドロラーゼは検出されなかったが、非結晶性セルロースに殆ど作用しないエキソセロビオヒドロラーゼが、イナワラを常食とするイナゴ腸内から検出されなかったことは矛盾しない。
また、イナワラには、セルロースと同程度のヘミセルロースが含まれており、イナゴの腸内ではヘミセルロースのガラクタンが、β−ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)によって分解されガラクトースを生成している可能性が考えられる。
なお、エンド−β−グルカナーゼ(EC3.2.1.4)は、Hodotermopsis Sjoestedtiという昆虫が分泌することが知られており、イナゴの消化酵素であることが示唆される。一方、β−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)はPrevotella Multisaccharivoraxという微生物が分泌することが知られており、イナゴの腸内に共生する微生物に由来する可能性が考えられる。すなわち、イナゴ腸内では、イナワラをイナゴ自身の消化酵素による糖化とともに、腸内に共生する微生物由来の酵素の両方で糖化していることが考えられる。
(16.単離したCMC分解微生物の16S rDNA−500Rapid解析)
「株式会社テクノスルガ・ラボ」に委託して、単離したCMC分解微生物の16S rDNA−500Rapid解析を以下のように実施した。
まず、12−2.において単離したCMC分解微生物(試料菌株)の各々(イナゴ腸由来菌株I−1〜8、イナゴ糞由来菌株I−1〜2、ショウリョウバッタ糞由来菌株D−1〜2、メイチュウ腸由来菌株D−1〜2、メイチュウ糞由来菌株H−1〜2)について、アクロモペプチダーゼ(和光純薬)を用いてDNAを抽出した。抽出したDNAに対し、16S rDNAの部分配列を増幅するためのプライマー(配列番号6、7)およびPrime STAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ)を用いて、PCR法を実施した。得られた各DNA断片について、サイクルシーケンスBig Dye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(LifeTechno)およびChromas Pro 1.5(Technelysium Pty Ltd.)を用いて、塩基配列を決定した。決定した各塩基配列について、国際塩基配列データベースおよび微生物同定用DNAデータベース&系統解析システムアポロン2.0(テクノスルガ・ラボ)に対してBLAST法による相同性検索を行った。表2に、各CMC分解生成物について、同定結果および相同率(%)を示す。
表2に示すように、イナゴ腸由来でCMC分解能を有する菌は、細菌のExiguobacterium acetylicumおよびExiguobacterium indicumと同定された。また、イナゴ糞由来でCMC分解能を有する菌は、Pseudomonas mosseliiと同定された。また、ショウリョウバッタ糞由来でCMC分解能を有する菌は、Stenotrophomonas maltophiliaおよびStenotrophomonas rhizophilaと同定された。また、メイチュウ腸由来でCMC分解能を有する菌は、Serratia nematodiphilaと同定された。また、メイチュウ糞由来でCMC分解能を有する菌は、Bacillus megateriumおよびBacillus aryabhattaiと同定された。
Exiguobacterium acetylicum、Exiguobacterium indicum、Pseudomonas mosselii、Stenotrophomonas maltophilia、Stenotrophomonas rhizophila、Serratia nematodiphilaおよびBacillus megateriumおよびBacillus aryabhattaiは、何れも昆虫腸内に共生する細菌であり、エンド−β−グルカナーゼを分泌し、昆虫が自ら腸内に分泌するエンド−β−グルカナーゼと共に、イナワラ等のセルロースを分解するものと考えられる。
なお、イナゴ腸由来菌株I−4、イナゴ腸由来菌株I−5、イナゴ腸由来菌株I−6およびイナゴ腸由来菌株I−8から得られたDNA断片の塩基配列は同一であり、同一の菌株と考えられる。また、イナゴ糞由来菌株F−1およびイナゴ糞由来菌株F−2から得られたDNA断片の塩基配列は同一であり、同一の菌株と考えられる。また、メイチュウ腸由来菌株D−1およびメイチュウ腸由来菌株D−2から得られたDNA断片の塩基配列は同一であり、同一の菌株と考えられる。
本発明は、セルロース系バイオマスを原料とする有機化合物の製造分野において利用可能である。

Claims (14)

  1. イナゴ腸由来であって、セルラーゼを含み、下記の理化学的性質を有することを特徴とする、ケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスを糖化するための粗酵素液
    (a)作用および基質特異性:セルロースを含有する基質を分解し、還元糖を生成する;
    (b)至適pH:7.0;
    (c)至適温度:50℃;
    (d)分子量:約50kDa、約53kDaまたは約30kDa(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)。
  2. 上記セルラーゼが、エンド−β−グルカナーゼ又はβ−グルコシダーゼであることを特徴とする請求項に記載の粗酵素液
  3. 請求項1または2に記載の粗酵素液を含有していることを特徴とするケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスを糖化するための糖化用組成物。
  4. 上記セルロース系バイオマスが、イネ科植物バイオマスであることを特徴とする請求項に記載の糖化用組成物。
  5. 上記セルロース系バイオマスが、ケイ素を5質量%以上含有することを特徴とする請求項3に記載の糖化用組成物。
  6. 上記セルロース系バイオマスが、イナワラであることを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の糖化用組成物。
  7. 上記セルロース系バイオマスが、重金属を含有していることを特徴とする請求項3〜6の何れか一項に記載の糖化用組成物。
  8. β−ガラクトシダーゼをさらに含有していることを特徴とする請求項3〜7の何れか一項に記載の糖化用組成物。
  9. 請求項1または2に記載の粗酵素液を備えていることを特徴とするケイ素を1質量%以上含有するセルロース系バイオマスを糖化するための糖化用キット。
  10. セルロース系バイオマスを糖化する方法であって、
    請求項1または2に記載の粗酵素液、または請求項3〜8の何れか一項に記載の糖化用組成物と、該セルロース系バイオマスとを接触させる工程を含有することを特徴とする方法。
  11. 上記セルロース系バイオマスが、ケイ素を質量%以上含有するセルロース系バイオマスであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 上記セルロース系バイオマスが、イネ科植物バイオマスであることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
  13. 上記セルロース系バイオマスが、イナワラであることを特徴とする請求項1012の何れか一項に記載の方法。
  14. 上記セルロース系バイオマスが、重金属を含有していることを特徴とする請求項1013の何れか一項に記載の方法。
JP2013135578A 2012-06-28 2013-06-27 セルロース系バイオマスを糖化するための粗酵素液およびその利用 Expired - Fee Related JP6214237B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013135578A JP6214237B2 (ja) 2012-06-28 2013-06-27 セルロース系バイオマスを糖化するための粗酵素液およびその利用

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012146129 2012-06-28
JP2012146129 2012-06-28
JP2013135578A JP6214237B2 (ja) 2012-06-28 2013-06-27 セルロース系バイオマスを糖化するための粗酵素液およびその利用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014027927A JP2014027927A (ja) 2014-02-13
JP6214237B2 true JP6214237B2 (ja) 2017-10-18

Family

ID=50201046

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013135578A Expired - Fee Related JP6214237B2 (ja) 2012-06-28 2013-06-27 セルロース系バイオマスを糖化するための粗酵素液およびその利用

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6214237B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102008974B1 (ko) * 2017-11-06 2019-08-08 한림대학교 산학협력단 이동성 메뚜기 성충 뇌에서 분리한 miRNAs 및 이의 용도
CN109810993B (zh) * 2019-03-25 2022-05-31 临沂大学 一种蝗虫β-D-葡萄糖苷水解酶基因及其应用
CN110819553B (zh) * 2019-08-14 2021-04-20 浙江树人学院(浙江树人大学) 一株阿耶波多氏芽孢杆菌及其在丙烯酸降解上的应用

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014027927A (ja) 2014-02-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ma et al. Genomic and secretomic insight into lignocellulolytic system of an endophytic bacterium Pantoea ananatis Sd-1
Marx et al. Comparative secretome analysis of Trichoderma asperellum S4F8 and Trichoderma reesei Rut C30 during solid-state fermentation on sugarcane bagasse
Alves-Prado et al. Screening and production study of microbial xylanase producers from Brazilian Cerrado
Zhang et al. Carbohydrate‐active enzymes revealed in Coptotermes formosanus (Isoptera: Rhinotermitidae) transcriptome
Sanjivkumar et al. Biosynthesis, purification and characterization of β-1, 4-xylanase from a novel mangrove associated actinobacterium Streptomyces olivaceus (MSU3) and its applications
Quiroz-Castaneda et al. Evaluation of different lignocellulosic substrates for the production of cellulases and xylanases by the basidiomycete fungi Bjerkandera adusta and Pycnoporus sanguineus
NZ598403A (en) Polypeptides having cellulolytic enhancing activity and polynucleotides encoding same
Li et al. Characterization of a novel thermostable and xylose-tolerant GH 39 β-xylosidase from Dictyoglomus thermophilum
Dehghanikhah et al. Purification and biochemical characterization of alkalophilic cellulase from the symbiotic Bacillus subtilis BC1 of the leopard moth, Zeuzera pyrina (L.)(Lepidoptera: Cossidae)
Wu et al. Molecular cloning and characterization of an endogenous digestive β‐glucosidase from the midgut of the fungus‐growing termite M acrotermes barneyi
Pathania et al. Utilization of horticultural waste (Apple Pomace) for multiple carbohydrase production from Rhizopus delemar F2 under solid state fermentation
Zafar et al. Cloning, expression, and purification of xylanase gene from Bacillus licheniformis for use in saccharification of plant biomass
Pereira et al. Solid-state cultivation of recombinant Aspergillus nidulans to co-produce xylanase, arabinofuranosidase, and xylooligosaccharides from soybean fibre
Hooker et al. Hydrolysis of untreated lignocellulosic feedstock is independent of S-lignin composition in newly classified anaerobic fungal isolate, Piromyces sp. UH3-1
Orencio-Trejo et al. Cellulase and xylanase production by the Mexican strain Talaromyces stollii LV186 and its application in the saccharification of pretreated corn and sorghum stover
JP6214237B2 (ja) セルロース系バイオマスを糖化するための粗酵素液およびその利用
Nanjundaswamy et al. Comprehensive optimization of culture conditions for production of biomass-hydrolyzing enzymes of Trichoderma SG2 in submerged and solid-state fermentation
Yu et al. Cloning and heterologous expression of a novel halo/alkali-stable multi-domain xylanase (XylM 18) from a marine bacterium Marinimicrobium sp. strain LS-A18
Lama et al. Degradative actions of microbial xylanolytic activities on hemicelluloses from rhizome of Arundo donax
Shrivastava et al. Purification and preliminary characterization of a xylanase from Thermomyces lanuginosus strain SS-8
Ni et al. cDNA cloning and heterologous expression of an endo‐β‐1, 4‐glucanase from the fungus‐growing termite Macrotermes barneyi
JP2008187927A (ja) 新規なフェノール配糖化酵素
Hideno et al. Comparison of the enzymatic digestibility of physically and chemically pretreated selected line of diploid-Miscanthus sinensis Shiozuka and triploid-M.× giganteus
Li et al. A novel digestive GH16 β-1, 3 (4)-glucanase from the fungus-growing termite Macrotermes barneyi
Silveira et al. Hydrolysis of sugarcane bagasse with enzyme preparations from Acrophialophora nainiana grown on different carbon sources

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160421

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160421

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170328

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170529

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170905

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170919

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6214237

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees