上記の通り、ユーザ端末が複数の無線アクセスシステムに接続して通信を行う場合、無線接続の頻繁な切り替えや切断、無線接続の途中での帯域幅の低下などにより、ユーザ体感が悪化する恐れがある。このユーザ体感の悪化要因は、変化の激しい無線環境下でユーザ端末が無意味な電力消費動作をすることにある。そこで、本発明者らは、複数の無線アクセスシステムに接続するか否かを判定する同時接続判定と、当該複数の無線アクセスシステムを用いて通信を行うか否か判定する同時利用判定と、を行うことで、変化の激しい無線環境下でユーザ端末が無意味な電力消費動作をするのを防止することにより、ユーザ体感を向上させることを着想した。
具体的には、本発明では、ユーザ端末は、ユーザ端末の端末状態(例えば、ユーザ端末の表示画面のオン/オフ状態、ユーザ端末の温度、ユーザ端末の電池残量、ユーザ端末の在圏セルの識別情報、ユーザ端末の移動状態など)、現在時刻、現在日時などの少なくとも一つに基づいて、上記同時接続判定を行う。この同時接続判定によれば、ユーザ端末の端末状態が適切でない場合には複数の無線アクセスシステムに対する接続が行われないので、ユーザ体感を向上させることができる。
また、本発明では、ユーザ端末は、無線アクセスシステムの無線状態(例えば、各無線アクセスシステムで利用可能な帯域幅、各無線アクセスシステムにおける受信信号強度又は受信信号品質の変動幅、各無線アクセスシステムにおける接続セルの識別情報など)、要求信号のヘッダ情報、各無線アクセスシステムとの接続確立時間の少なくとも一つに基づいて、上記同時利用判定を行う。この同時利用判定によれば、ユーザ端末が複数の無線アクセスシステムに接続していても、無線状態が適切でない無線アクセスシステムを用いた通信は行われないので、ユーザ体感を向上させることができる。
また、本発明者らは、複数の無線アクセスシステムに同時接続して通信を行う場合に、サーバに対する要求信号を当該複数の無線アクセスシステムに分配することで、ロードバランス(負荷分散)を図ることを着想した。
具体的には、本発明では、ユーザ端末は、(1)アプリケーションで生成される一つの要求信号を異なるレンジ(範囲)指定の複数の要求信号に分割して複数の無線アクセスシステムに分配してもよいし、(2)アプリケーションで生成される複数の要求信号を複数の無線アクセスシステムに分配してもよいし、(3)一方の無線アクセスシステムに分配された要求信号を、他方の無線アクセスシステムに再分配してもよい。このような分配(再分配)によれば、要求信号を複数の無線アクセスシステムに適切に分配できるので、複数の無線アクセスシステム間のロードバランスを図ることができる。
なお、本発明において、無線通信システムが含む複数の無線アクセスシステムは、LTE(Long Term Evolution)/3G(3rd Generation)方式、LTE−A(LTE-Advanced)方式などのセルラ方式、Wi−Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)方式、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)(登録商標)方式、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)、IrDA(Infrared Data Association)、NFC(Near Field Communication)などのパーソナルエリアネットワーク(PAN)方式など、各種方式の少なくとも2つの無線アクセスシステムである。なお、PAN方式は、テザリングを想定したアクセス形態である。
以下、本実施の形態について、詳細に説明する。本実施の形態では、一例として、LTE/3G方式の無線アクセスシステム(以下、LTE/3Gシステムという)及びWi−Fi方式の無線アクセスシステム(以下、Wi−Fiシステム)を含む無線通信システムを説明する。
図2、3を参照し、本実施の形態に係る無線通信システムの構成を説明する。
(無線通信システムの構成)
図2は、本実施の形態に係る無線通信システムの概略構成図である。図2に示すように、無線通信システム1は、ユーザ端末10と、LTE/3Gシステムを構成する無線基地局20と、Wi−Fiシステムを構成するアクセスポイント30と、無線基地局20又は/及びアクセスポイント30を介してユーザ端末10に接続されるインターネット40と、インターネット40に接続されるサーバ50とを含む。
ユーザ端末(User Equipment)10は、例えば、携帯電話端末、パソコン、タブレットなどの端末装置である。ユーザ端末10は、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムそれぞれに対応する複数の通信部(RF(Radio Frequency)回路)を備え、無線基地局20とアクセスポイント30との双方に接続可能に構成される。
無線基地局20は、LTE/3Gシステムの無線基地局であり、eNB(eNodeB)などとも呼ばれる。アクセスポイント30は、Wi−Fiシステムの無線基地局である。なお、無線基地局20及びアクセスポイント30は、EPC(Evolved Packet Core)などのコアネットワーク(不図示)を介して、インターネット40に接続されてもよい。具体的には、無線基地局20及びアクセスポイント30は、コアネットワーク(不図示)上のゲートウェイ装置(例えば、PDN−GW:Packet Data Network-GateWay)に接続され、当該ゲートウェイ装置がインターネット40に接続されてもよい。
サーバ50は、例えば、Webサーバなどであり、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)、FTP(File Transfer Protocol)、RTP(Real-time Transport Protocol)など、の種々のプロコトルを用いて、インターネット40を介して、ユーザ端末10と通信する。具体的には、サーバ50は、ユーザ端末10からの要求信号(例えば、HTTPリクエストなど)を受信する受信部と、当該ユーザ端末10に対して応答信号(例えば、HTTPレスポンスなど)を送信する送信部とを具備する。
なお、無線通信システム1において、ユーザ端末10とインターネット40を介して通信する装置は、サーバ50に限られず、他のユーザ端末などであってもよい。また、無線通信システム1を構成する各装置は、プロセッサ、メモリ、RF(Radio Frequency)回路、アンテナ、ディスプレイ、ユーザインタフェースなどを含むハードウェアを有しており、メモリには、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールが記憶されている。各装置の構成は、上述のハードウェアによって実現されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによって実現されてもよいし、両者の組み合わせによって実現されてもよい。
(ユーザ端末の構成)
図3は、本実施の形態に係るユーザ端末の詳細構成図である。図3に示すように、ユーザ端末10は、アプリケーション処理部11、表示部12、LTE/3G通信部13、Wi−Fi通信部14、通信制御部15を具備する。
アプリケーション処理部11は、例えば、Webブラウザやアプリケーションなどで構成され、サーバ50に対する要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を生成し、生成した要求信号を通信制御部15に出力する。また、アプリケーション処理部11は、通信制御部15から出力される応答信号(例えば、HTTPレスポンス)に基づいて、Webページなどを表示部12に表示させる。
表示部12は、例えば、ディスプレイや液晶画面などで構成され、アプリケーション処理部11の制御により画面を表示する。また、表示部12は、ユーザによるタッチ操作などによって、ユーザ指示を受け付けてもよい。
LTE/3G通信部13は、LTE/3G方式の信号の送受信処理(例えば、変調、復調、符号化、復号など)を行う。具体的には、LTE/3G通信部13は、サーバ50に対する要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を無線基地局20に送信する。また、LTE/3G通信部13は、サーバ50からの応答信号(例えば、HTTPレスポンス)を無線基地局20から受信する。
Wi−Fi通信部14は、Wi−Fi方式の信号の送受信処理(例えば、変調、復調、符号化、復号など)を行う。具体的には、Wi−Fi通信部14は、サーバ50に対する要求信号(例えば、HTTPリクエスト)をアクセスポイント30に送信する。また、Wi−Fi通信部14は、サーバ50からの応答信号(例えば、HTTPレスポンス)をアクセスポイント30から受信する。
通信制御部15は、例えば、アプリケーションソフトウェアやミドルウェアなどで構成され、LTE/3G通信部13及びWi−Fi通信部14による通信を制御する。具体的には、通信制御部15は、ポリシー管理部151、端末状態取得部152、日時取得部153、無線状態取得部154、判定部155、接続制御部156、分配制御部157、結合制御部158を具備する。なお、判定部155は、本発明の同時接続判定部及び同時利用判定部を構成する。また、分配制御部157、LTE/3G通信部13及びWi−Fi通信部14は、本発明の送信部を構成する。
ポリシー管理部151は、ユーザ端末10のポリシーを管理する。ここで、ポリシーとは、後述する判定部155や分配制御部157における判定条件を示す情報であり、例えば、混雑エリアのセルID(セルの識別情報)、同時接続が規制される時間帯(規制時刻)及び日時(規制日時)、各種閾値(例えば、受信信号強度、受信信号品質、温度、電池残量、帯域幅など)、ユーザ端末のモード情報(例えば、ユーザ体感向上モード)などが含まれてもよい。なお、ポリシーは、LTE/3G通信部13から入力されてもよいし、予めユーザ端末10に記憶されていてもよい。
端末状態取得部152は、ユーザ端末10の端末状態を取得して、判定部155に出力する。ここで、端末状態とは、表示部12のオン/オフ状態、表示部12のロック/ロック解除(Lock/Unlock)状態、ユーザ端末10の温度(本体又は電池の温度を含む)、ユーザ端末10の電池残量、ユーザ端末10の在圏セルのセルID、ユーザ端末10の移動状態、Wi−Fi通信のリンクスピードの少なくとも一つである。なお、ユーザ端末10の移動状態は、加速度センサ(不図示)で取得される加速度情報によって示されてもよい。
日時取得部153は、現在時刻、現在日時などを取得して、判定部155に出力する。なお、日時取得部153は、省略されてもよい。
無線状態取得部154は、各無線アクセスシステムの無線状態を取得して、判定部155に出力する。ここで、無線状態とは、各無線アクセスシステムで利用可能な帯域幅、各無線アクセスシステムにおける受信信号強度(例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)など)や受信信号品質(例えば、SINR(Signal−to−Interference plus Noise power Ratio)、SNR(Signal-to-Noise Ratio)など)、各無線アクセスシステムにおける接続セルのセルID(セルの識別情報)、前記要求信号のヘッダ情報の少なくとも一つである。
判定部155は、複数の無線アクセスシステム(ここでは、LTE/3Gシステム、Wi−Fiシステム)に接続するか否かを判定する。具体的には、判定部155は、表示部12のオン/オフ状態、表示部12のロック/ロック解除状態、ユーザ端末10の温度、ユーザ端末10の電池残量、ユーザ端末10の在圏セルのセルID、現在時刻、現在日時の少なくとも一つに基づいて、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方に接続するか否かを判定する。かかる同時接続判定の詳細動作は、図4を参照して後述する。
判定部155は、複数の無線アクセスシステム(ここでは、LTE/3Gシステム、Wi−Fiシステム)に接続する場合に、当該複数の無線アクセスシステムを用いて通信を行うか否かを判定する。具体的には、判定部155は、各無線アクセスシステムで利用可能な帯域幅、各無線アクセスシステムにおける受信信号強度又は受信信号品質の変動幅、ユーザ端末10の移動状態、各無線アクセスシステムにおける接続セルのセルID、アプリケーション処理部11から入力された要求信号のヘッダ情報(例えば、HTTPヘッダ)、各無線アクセスシステムとの接続確立時間の少なくとも一つに基づいて、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方を用いて通信を行うか否かを判定する。かかる同時利用判定の詳細動作は、図6を参照して後述する。
接続制御部156は、判定部155による判定結果に基づいて、LTE/3Gシステム又は/及びWi−Fiシステムに対する接続処理を制御する。例えば、接続制御部156は、LTE/3G通信部13を介して、無線基地局20との無線リンクの設定処理などを行う。また、接続制御部156は、Wi−Fi通信部14を介して、アクセスポイント30との無線リンクの設定処理などを行う。
また、接続制御部156は、LTE/3Gシステム又は/及びFi−Fiシステムとの接続確立時間を計算してもよい。ここで、接続確立時間とは、ユーザ端末10とサーバ50との間の接続の確立に要する時間である。接続確立時間は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)のスリーウェイハンドシェイク(3-way handshake)において、ユーザ端末10からSYNパケットを送信してから、サーバ50からのSYN−ACKパケットを受信するまでの時間(RTT:Round Trip Time)であってもよい。なお、SYNパケットは、ユーザ端末10からのサーバ50に対する接続要求を意味する。また、SYN−ACKパケットは、サーバ50からのユーザ端末10に対する接続許可を意味する。
分配制御部157は、判定部155による判定結果に基づいて、要求信号の分配処理を制御する。具体的には、分配制御部157は、判定部155によってLTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方を用いて通信を行うと判定される場合、アプリケーション処理部11から入力される要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を、LTE/3Gシステム(すなわち、LTE/3G通信部13)及びWi−Fiシステム(すなわち、Wi−Fi通信部14)の双方に分配する。
具体的には、分配制御部157は、アプリケーション処理部11によって生成される一つの要求信号を異なるレンジ(範囲)指定の複数の要求信号に分割し、分割された複数の要求信号をLTE/3G通信部13及びWi−Fi通信部14に出力してもよい。例えば、分配制御部157は、あるコンテンツ(例えば、Webページ)を要求する要求信号を、前半部分を指定する要求信号と後半部分を指定する要求信号とに分割し、前半部分を指定する要求信号をLTE/3G通信部13に出力し、後半部分を指定する要求信号をWi−Fi通信部14に出力してもよい。このように、レンジ(範囲)指定とは、要求信号で要求するコンテンツの範囲を指定することをいう。
また、分配制御部157は、ラウンドロビン、各無線アクセスシステムで利用可能な帯域幅の比率、各要求信号で要求するファイルの属性、各要求信号を生成するアプリケーションの種別、各無線アクセスシステムとの接続確立時間の少なくとも一つに基づいて、アプリケーション処理部11によって生成される複数の要求信号をLTE/3G通信部13及びWi−Fi通信部14に出力してもよい。例えば、分配制御部157は、コンテンツ1を要求する要求信号をLTE/3G通信部13に出力し、コンテンツ2を要求する要求信号をWi−Fi通信部14に出力してもよい。
また、分配制御部157は、LTE/3G通信部13及びWi−Fi通信部14のいずれか一方に分配された要求信号を送信してから該要求信号に対する応答信号を受信するまでの時間、当該一方の無線アクセスシステムの帯域幅、接続状態の少なくとも一つに基づいて、前記要求信号を他方の無線アクセスシステムに再分配してもよい。例えば、分配制御部157は、あるコンテンツを指定する要求信号をWi−Fi通信部14(又はLTE/3G通信部13)に出力してから所定期間(例えば、5秒程度のタイムアウトよりも短い時間)経過後に、LTE/3G通信部13(又はWi−Fi通信部14)に出力してもよい。
また、分配制御部157は、判定部155によって、LTE/3Gシステム又はWi−Fiシステムのいずれかを用いて通信を行うと判定される場合、アプリケーション処理部11から入力される要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を、LTE/3Gシステム(すなわち、LTE/3G通信部13)又はWi−Fiシステム(すなわち、Wi−Fi通信部14)のいずれかに分配する。
結合制御部158は、判定部155によってLTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムを用いて通信を行うと判定される場合、LTE/3G通信部13及びWi−Fi通信部14から入力される複数の応答信号(例えば、コンテンツの前半部分を含むHTTPレスポンスと、コンテンツの後半部分を含むHTTPレスポンス)を結合して、アプリケーション処理部11に出力する。
次に、図4−8を参照し、本実施の形態に係る無線通信システムの動作を説明する。なお、図4−8における各種パラメータと閾値との比較は、図示したものに限られない。
(接続判定動作)
図4は、本実施の形態に係るユーザ端末の接続判定動作を示すフローチャートである。なお、図4では、ユーザ端末10は、セルラ接続状態であるものとする。ここで、セルラ接続状態とは、ユーザ端末10がLTE/3Gシステムに接続している状態、すなわち、ユーザ端末10とゲートウェイ装置(例えば、PDN GW)との間でコネクション(例えば、PDN(Packet Data Network)コネクション)が確立されている状態である。
図4に示すように、ユーザ端末10のポリシー管理部141は、ポリシーを記憶しているか否かを判定する(ステップS101)。上述のように、ポリシーは、例えば、混雑エリアのセルID、規制時刻、各種閾値(例えば、受信信号強度、温度、電池残量、帯域幅など)などを含んでもよい。ポリシー管理部141は、ポリシーを記憶していない場合(ステップS101;NO)、LTE/3G通信部13を介して、ポリシーを取得する(ステップS102)。
ユーザ端末10の判定部155は、表示部12がオン状態又はロック解除(unlock)状態であるかを判定する(ステップS103)。表示部12がオン状態又はロック解除状態である場合(ステップS103;YES)、判定部155は、ユーザ端末10の温度が所定の閾値より高いか否かを判定する(ステップS104)。ここで、ユーザ端末10の温度は、端末本体の温度であってもよいし、端末本体に搭載される電池の温度であってもよい。
ユーザ端末10の温度が所定の閾値以下である場合(ステップS104;NO)、判定部155は、電池残量が所定の閾値よりも少ないか否かを判定する(ステップS105)。電池残量が所定の閾値以上である場合(ステップS105;NO)、判定部155は、在圏セルのセルIDが特定のセルIDに含まれるか否かを判定する(ステップS106)。ここで、特定のセルIDは、例えば、混雑エリアのセルIDである。
在圏セルのセルIDが特定のセルIDに含まれる場合(ステップS106;YES)、判定部155は、現在時刻が規制時刻に含まれるか否かを判定する(ステップS107)。ここで、規制時刻は、例えば、17時以降などの混雑する時間帯である。なお、ステップS107において、ユーザ端末10は、現在日時が規制日時(例えば、平日の17時以降など)に含まれるか否かを判定してもよい。
在圏セルのセルIDが特定のセルIDに含まれない場合(ステップS106;NO)、又は、在圏セルのセルIDが特定のセルIDに含まれるが(ステップS106;YES)現在時刻が規制時刻に含まれない場合(ステップS107;No)、判定部155は、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方に接続する(同時接続モード)と判定する(ステップS108)。
ユーザ端末10の温度が所定の閾値より高い場合(ステップS104;YES)、又は、ユーザ端末10の電池残量が所定の閾値よりも少ない場合(ステップS105;YES)、又は、在圏セルのセルIDが特定のセルIDに含まれるとともに(ステップS106;YES)現在時刻が規制時刻に含まれる場合(ステップS107;YES)、判定部155は、LTE/3Gシステム又はWi−Fiシステムのいずれか一方に接続する(単体接続モード)と判定する(ステップS109)。
以上のように、ユーザ端末10の判定部155は、ユーザ端末10の端末状態に基づいて、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムに接続するか否かを判定するので、ユーザ端末10の電池残量の低下や、発熱に伴うユーザ端末への悪影響(例えば、熱暴走、故障、寿命低下)を防止できる。この結果、ユーザ体感を向上させることができる。
(単体利用判定動作)
図5は、本実施の形態に係る単体利用判定動作を示すフローチャートである。図5では、図4のステップS109において判定部155が、LTE/3Gシステム又はWi−Fiシステムのいずれか一方に接続する(単体接続モード)と判定するものとする。
図5に示すように、単体接続モードのユーザ端末10の接続制御部156は、Wi−Fi通信部14を介して、Wi−Fiスキャンを行う(ステップS201)。具体的には、接続制御部156は、Wi−Fi通信部14を介して所定の周波数帯域をスキャンする。
判定部155は、Wi−Fiスキャン結果に基づいて、接続可能なアクセスポイント30があるか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、判定部155は、Wi−Fi通信部14によってアクセスポイント30からのプローブ応答が受信される場合、接続可能なアクセスポイント30があると判定する。
接続可能なアクセスポイント30がある場合(ステップS202;YES)、接続制御部156は、当該アクセスポイント30からの受信信号強度が所定の閾値より良いか否かを判定する(ステップS203)。ここで、受信信号強度は、RSSIなどによって示されてもよい。また、受信信号強度に代えて、受信信号品質(例えば、SINR、SNRなど)が用いられてもよい。
アクセスポイント30からの受信信号強度が所定の閾値よりも良い場合(ステップS203;YES)、接続制御部156は、Wi−Fiシステムに対する接続処理を行う(ステップS204)。例えば、接続制御部156は、Wi−Fi通信部14を介して、アクセスポイント30に接続要求(Association Request)を送信したり、アクセスポイント30から応答(Association Response)を受信したりしてもよい。
Wi−Fiシステムに対する接続処理が完了すると、LTE/3Gシステムを用いずに、Wi−Fiシステム経由で通信が行われる(ステップS205)。例えば、分配制御部157は、アプリケーション処理部11から入力される要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を、Wi−Fi通信部14に出力する(ステップS205)。なお、ステップS205において、LTE/3Gシステムに対する接続は中止されてもよい。
一方、接続可能なアクセスポイント30がない場合(ステップS202;NO)、又は、アクセスポイント30からの受信信号強度が所定の閾値以下である場合(ステップS203;NO)、Wi−Fiシステムに対する接続処理を行わずに、LTE/3Gシステム経由で通信が行われる(ステップS206)。例えば、分配制御部157は、アプリケーション処理部11から入力される要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を、LTE/3G通信部13に出力する。
以上のように、単体接続モードの場合、無線状態などに基づいてLTE/3Gシステム又はWi−Fiシステムのいずれを経由して通信を行うか否かが選択される。このため、無線接続の切断や帯域幅の低下が起こる無線アクセスシステムで通信が行われるのを防止でき、ユーザ体感を向上させることができる。
(同時利用判定動作)
図6は、本実施の形態に係る同時利用判定動作を示すフローチャートである。図6では、図4のステップS108において判定部155が、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方に接続する(同時接続モード)と判定するものとする。
図6に示すように、単体接続モードのユーザ端末10の接続制御部156は、Wi−Fi通信部14を介して、Wi−Fiスキャンを行う(ステップS301)。接続制御部156は、Wi−Fi通信部14によるWi−Fiスキャン結果に基づいて、接続可能なアクセスポイント30があるか否かを判定する(ステップS302)。
接続可能なアクセスポイント30がない場合(ステップS302;NO)、Wi−Fiシステムに対する接続処理を行わずに、LTE/3Gシステム経由で通信が行われる(ステップS303)。接続可能なアクセスポイント30がある場合(ステップS302;YES)、接続制御部156は、Wi−Fiシステムに対する接続処理を行う(ステップS304)。なお、ステップS301、S302、S304の詳細は、図5のステップS201、S202、S204と同様であるため、説明を省略する。
Wi−Fiシステムに対する接続処理が完了すると、判定部155は、ポリシー管理部151で管理されるポリシーがユーザ体感向上モードを示すか否かを判定する(ステップS305)。ここで、ユーザ体感向上モードとは、移動中等Wi−Fiの通信状態変化が大きいと想定される状況において、Wi−Fiの通信状態悪化に伴うタイムアウト発生等によるユーザ体感悪化を未然に防止するモードである。なお、判定部155は、ポリシーの代わりに、ユーザ端末のUIに基づいてユーザ端末10がユーザ体感向上モードであるか否かを判定してもよい。
ポリシーがユーザ体感向上モードである場合(ステップS305;YES)、ユーザ端末10の移動状態が移動中であるか否かを判定する(ステップS306)。ここで、ユーザ端末10の移動状態は、端末状態取得部152によって加速度センサ(不図示)で取得される加速度情報によって示されてもよい。また、ユーザ端末10の移動状態は、無線基地局20又はアクセスポイント30からの受信信号強度又は受信信号品質の変動幅に基づいて、推定されてもよい。
ここで、受信信号強度又は受信信号品質の変動幅(変動量)に基づく移動状態の判定方法について詳述する。例えば、判定部155は、下記式(1)で算出されるfが所定の閾値より小さい場合、移動中でないと判定し、fが所定の閾値以上である場合、移動中であると判定してもよい。
なお、式(1)において、Tは、例えば、30−60秒程度の時間又はサンプル数である。また、P(t)は、測定タイミングtにおける受信信号強度(例えば、RSSIなど)又は受信信号品質(例えば、SINR、SNRなど)である。fは、前回の測定タイミングt−1と今回の測定タイミングtとの受信信号強度又は受信信号品質の変動量(ここでは、差)の絶対値を、時間Tだけ加算した値である。
ポリシーがユーザ体感向上モードでない場合(ステップS305;NO)、又は、ユーザ端末10の移動状態が移動中でない場合(ステップS306;NO)、判定部155は、無線基地局20又はアクセスポイント30からの受信信号強度の変動幅が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS307)。ここで、受信信号強度の変動幅は、RSSIなどの所定期間における変動値である。なお、当該変動幅は、2時点間における受信信号強度の変動幅であってもよいし、一定時間(例えば、一分程度)における受信信号強度の変化量(絶対値)の加算値であってもよい。また、受信信号強度に代えて、受信信号品質(例えば、SINR、SNRなど)が用いられてもよい。
ユーザ端末10の移動状態が移動中である場合(ステップS306;YES)、又は、アクセスポイント30からの受信信号強度の変動幅が所定の閾値よりも大きい場合(ステップS307;YES)、判定部155は、Wi−Fiシステム経由で通信を行わずに、LTE/3Gシステム経由で通信を行うと判定する(ステップS308)。この場合、分配制御部157は、アプリケーション処理部11から入力される要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を、LTE/3G通信部13に出力する。
このように、ステップS306では、ユーザ端末10は、LTE/3GシステムとWi−Fiシステムとの双方に接続していても、LTE/3Gシステムだけで通信が行われる。これにより、ユーザ端末10が移動中である場合や、アクセスポイント30からの安定的な受信信号強度を確保できない場合に、LTE/3GシステムとWi−Fiシステムとの双方を用いることがなく、ユーザ体感を向上させることができる。
アクセスポイント30からの受信信号強度の変動幅が所定の閾値以下である場合(ステップS307;NO)、判定部155は、ユーザ端末10によって検出されたアクセスポイント30の識別情報が特定のアクセスポイント30の識別情報に含まれるか否かを判定する(ステップS309)。ここで、アクセスポイント30の識別情報は、例えば、SSID(Service Set Identifier)、BSSID(Basic Service Set Identifier)などである。特定のアクセスポイント30は、例えば、自宅や会社に設置されるアクセスポイント30である。
アクセスポイント30の識別情報が特定のアクセスポイント30の識別情報に含まれない場合(ステップS309;YES)、判定部155は、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方を用いて通信を行うと判定する(同時利用1)(ステップS310)。
アクセスポイント30の識別情報が特定のアクセスポイント30の識別情報に含まれる場合(ステップS309;YES)、判定部155は、Wi−Fi帯域幅が閾値2以上であるか否かを判定する(ステップS311)。ここで、閾値2は、Wi−Fiシステム単体で通信するのに十分な帯域幅であるか否かを示す閾値であり、後述する閾値1よりも大きい。
Wi−Fi帯域幅が閾値2以上である場合(ステップS311;YES)、判定部155は、LTE/3Gシステム経由で通信を行わずに、Wi−Fiシステム経由で通信を行うと判定する(ステップS312)。このように、ステップS312では、ユーザ端末10は、LTE/3GシステムとWi−Fiシステムとの双方に接続していても、Wi−Fiシステムだけで通信を行う。これにより、Wi−Fi帯域幅がWi−Fiシステム単体で通信するのに十分な帯域幅である場合、Wi−Fiシステムへのオフロードを図ることができる。
Wi−Fi帯域幅が閾値2未満である場合(ステップS311;NO)、判定部155は、主にLTE/3Gシステムを経由して通信を行い、特定の通信を行う場合にWi−Fiシステムを経由して通信を行うと判定する(同時利用2)(ステップS313)。ここで、特定の通信とは、例えば、会社に設置されたアクセスポイント30を介して会社のリソースにアクセスする場合や、自宅に設置されたアクセスポイント30を介してビデオの録画映像を取得する場合などである。
(分配動作)
次に、図7及び8を参照し、ユーザ端末10がLTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方を用いて通信を行う場合(図6のステップS310)における要求信号の分配動作を詳述する。なお、以下では、要求信号がHTTPリクエストである場合の分配動作を説明するが、本分配動作は、FTP、RTPなどHTTP以外の各種プロトコルにも適用可能である。
図7は、本実施の形態に係る同時利用時の分配動作を示すフローチャートである。図7に示すように、アプリケーション処理部11で生成される要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を受信すると、分配制御部157は、Wi−Fi帯域幅が閾値1以上であるか否かを判定する(ステップS400)。ここで、Wi−Fi帯域幅とは、Wi−Fiシステムにおいてユーザ端末10が利用可能な帯域幅である。また、閾値1は、Wi−Fiシステムにおいて最低限通信可能な帯域幅を示す閾値であり、上述の閾値2よりも小さい。
なお、Wi−Fi帯域幅は、Wi−Fi通信部14又は端末状態取得部152から取得されるWi−Fi通信のリンクスピードに基づいて推定されてもよい。また、Wi−Fi帯域幅は、アクセスポイント30からの受信信号強度(例えば、RSSIなど)又は受信信号品質(例えば、SINRなど)に基づいて推定されてもよい。また、Wi−Fi帯域幅は、直近の実測値に基づいて推定されてもよい。また、Wi−Fi帯域幅は、PingなどのテストパケットのRTT(Round Trip Time)に基づいて推定されてもよい。
Wi−Fi帯域幅が閾値1未満である場合(ステップS400;NO)、分配制御部157は、Wi−Fiシステム経由で通信を行わずに、LTE/3Gシステム経由で通信を行うと判定する(ステップS405)。この場合、分配制御部157は、アプリケーション処理部11から入力される要求信号(例えば、HTTPリクエスト)を、LTE/3G通信部13に出力する。
Wi−Fi帯域幅が閾値1以上である場合(ステップS400;YES)、分配制御部157は、アプリケーション処理部11で生成される要求信号(例えば、HTTPリクエスト)のヘッダにRAT(Radio Access Technology)指定が含まれるか否かを判定する(ステップS401)。ここで、RAT指定とは、要求信号の送信に用いる無線アクセスシステムを指定するヘッダ情報である。
要求信号のヘッダにおいてRAT指定がある場合(ステップS401;YES)、分配制御部157は、RAT指定が”自動”であるか否かを判定する(ステップS402)。RAT指定が”自動”でない場合(ステップS402;NO)、分配制御部157は、RAT指定がセルラシステム(例えば、LTE/3Gシステム)であるか否かを判定する(ステップS403)。
RAT指定がセルラシステムでない場合(ステップS403;NO)、分配制御部157は、アプリケーション処理部11で生成された要求信号をWi−Fiシステムを用いて送信することを決定する(ステップS404)。この場合、要求信号は、Wi−Fi通信部14に出力されて、アクセスポイント30を経由して、サーバ50に送信される。
RAT指定がセルラシステムである場合(ステップS403;YES)、分配制御部157は、アプリケーション処理部11で生成された要求信号を、LTE−3Gシステムを用いて送信することを決定する(ステップS405)。この場合、要求信号は、LTE/3G通信部13に出力されて、無線基地局20を経由して、サーバ50に送信される。
要求信号のヘッダにおいてRAT指定がない場合(ステップS401;NO)、又は、要求信号のヘッダにおけるRAT指定が“自動”である場合(ステップS402;YES)、分配制御部157は、レンジ分割に適合するか否かを判定する(ステップS406)。ここで、レンジ分割とは、あるコンテンツを、レンジ(範囲)を指定して要求することをいう。図8を参照し、レンジ分割の適合判定動作を詳述する。
図8は、本実施の形態に係るレンジ分割の適合判定動作を示すフローチャートである。図8に示すように、分配制御部157は、アプリケーション処理部11から受信した要求信号の要求URI(例えば、HTTPリクエストのリクエストURI)に特定の拡張子が含まれるか否かを判定する(ステップS501)。ここで、要求URI(Uniform Resource Identifier)とは、要求信号によって要求されるコンテンツの識別情報である。また、特定の拡張子とは、例えば、zip、mp4、apkなど、レンジ分割に適したファイルの拡張子である。
要求信号の要求URIに特定の拡張子が含まれる場合(ステップS501;YES)、分配制御部157は、HEADメソッドが指定された要求信号(以下、制御用要求信号という)をサーバ50に送信させ、当該HEADリクエストに応じてサーバ50から受信されたHTTPレスポンスを取得する(ステップS502)。
ここで、制御用要求信号とは、ペイロードを含まない応答信号を要求する要求信号(例えば、HEADメソッドのHTTPリクエスト)である。この制御用要求信号は、応答信号(例えば、HTTPレスポンス)に含まれるヘッダによって、サーバ50の情報(例えば、後述するレンジ指定の対応有無)を取得するために送信される。なお、制御用要求信号は、LTE/3G通信部13又はWi−Fi通信部14のいずれを介してサーバ50に送信されてもよい。
分配制御部157は、サーバ50がレンジ分割(レンジ指定)に対応するか否かを判定する(ステップS503)。例えば、分配制御部157は、ステップS502で取得されたHTTPレスポンスのAccept-Rangesフィールドに基づいて、サーバ50がレンジ分割に対応するか否かを判定してもよい。
サーバ50がレンジ分割に対応する場合(ステップS503;YES)、分配制御部157は、上記要求URIで識別されるコンテンツのサイズ(Content-Length)が所定の閾値より大きいか否かを判定する(ステップS504)。例えば、分配制御部157は、ステップS502で取得されたHTTPレスポンスのContent-Lengthフィールドに基づいて、上記リソースのサイズが所定の閾値より大きいか否かを判定してもよい。
上記要求URIで識別されるコンテンツのサイズが所定の閾値より大きい場合(ステップS504;YES)、分配制御部157は、レンジ分割に適合すると判定する(ステップS505)。
一方、要求URIに特定の拡張子を含まない場合(ステップS501;NO)、又は、サーバ50がレンジ分割に対応しない場合(ステップS503;NO)、又は、上記要求URIで識別されるコンテンツのサイズが所定の閾値以下である場合(ステップS504;NO)、分配制御部157は、レンジ分割に適合しないと判定する(ステップS506)。
以上のように、図7のステップS406において、分配制御部157は、レンジ分割に適合するか否かを判定する。なお、分配制御部157は、アプリケーションの種別に応じて、レンジ分割に適合するか否かを判定してもよい。例えば、分配制御部157は、ソフトウェア更新を要求する要求信号の場合、レンジ分割に適合すると判定してもよい。
レンジ分割に適合する場合(ステップS406;YES)、分割ダウンロードが行われる(ステップS407)。具体的には、分配制御部157は、アプリケーション処理部11で生成される1つの要求信号(例えば、GETメソッドのHTTPリクエスト)を異なるレンジ指定の複数の要求信号に分割し、分割された複数の要求信号をLTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムに分配して送信する。なお、当該複数の要求信号に対応する複数の応答信号は、結合制御部158で結合されて、アプリケーション処理部11に出力される。
一方、レンジ分割に適合しない場合(ステップS406;NO)、分配制御部157は、ラウンドロビン、各無線アクセスシステムで利用可能な帯域幅の比率、各要求信号で要求するファイルの属性、各要求信号を生成するアプリケーションの種別の少なくとも一つに基づいて、アプリケーション処理部11によって生成される複数の要求信号をLTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムに分配して送信する(ステップS408)。
例えば、分配制御部157は、サイズが相対的に大きいコンテンツ(例えば、画像や動画など)を要求する要求信号をWi−Fiシステムに分配し、サイズが相対的に小さいコンテンツ(例えば、テキスト)を要求する要求信号をLTE/3Gシステムに分配してもよい。また、分配制御部157は、通話アプリなどペイロードが相対的に小さい要求信号をLTE/3Gシステムに分配し、クラウドとの同期アプリなどペイロードが相対的に大きい要求信号をWi−Fiシステムに分配してもよい。
また、分配制御部157は、LTE/3G通信部13及びWi−Fi通信部14のいずれか一方に分配された要求信号を送信してから該要求信号に対する応答信号を受信するまでの時間、当該一方の無線アクセスシステムの帯域幅、接続状態の少なくとも一つに基づいて、前記要求信号を他方の無線アクセスシステムに再分配してもよい。例えば、分配制御部157は、あるコンテンツを指定する要求信号をWi−Fi通信部14(又はLTE/3G通信部13)に出力してから所定期間(例えば、5秒程度のタイムアウトよりも短い時間)経過後に、LTE/3G通信部13(又はWi−Fi通信部14)に出力してもよい。
以上のように、本実施の形態に係る無線通信システム1によれば、判定部155がLTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方に接続するか否かを判定する(同時接続判定)ことにより、ユーザ端末の端末状態が適切でない場合には複数の無線アクセスシステムに対する接続が行われないので、ユーザ体感を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る無線通信システム1によれば、判定部155がLTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方を用いて通信を行うか否かを判定することにより、ユーザ端末が複数の無線アクセスシステムに接続していても、無線状態が適切でない無線アクセスシステムを用いた通信は行われないので、ユーザ体感を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る無線通信システム1によれば、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方に接続して通信を行う場合に、サーバ50に対する要求信号が当該複数の無線アクセスシステムに分配されるので、ロードバランスを図ることができる。
(変更例)
図9を参照し、本実施の形態に係るユーザ端末の動作の変更例を説明する。変更例では、図7のステップS408において、ユーザ端末10の分配制御部157は、ラウンドロビン、各無線アクセスシステムで利用可能な帯域幅の比率、各要求信号で要求するファイルの属性、各要求信号を生成するアプリケーションの種別の少なくとも一つに加えて又は代えて、各無線アクセスシステムとの接続確立時間に基づいて、アプリケーション処理部11によって生成される複数の要求信号をLTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムに分配して送信する。
図9は、変更例に係るユーザ端末10の接続確立時間の取得動作の説明図である。なお、図9では、ユーザ端末10とサーバ50の接続がTCPを用いて確立される場合を説明するが、TCP以外のプロトコルを用いて接続が確立されてもよい。
図9Aに示すように、ユーザ端末10は、LTE/3Gシステム又はWi−Fiシステムを経由して、サーバ50に対して、SYNパケット(接続要求)を送信する(ステップS601)。上述のように、SYNパケットは、サーバ50に対する接続要求を意味する。ユーザ端末10は、SYNパケットに応じてサーバ50から送信されるSYN−ACKパケット(接続許可)を、LTE/3Gシステム又はWi−Fiシステムを経由して受信する(ステップS602)。ユーザ端末10は、サーバ50からのSYN−ACKパケットに応じて、ACKパケットをLTE/3システム又はWi−Fiシステムを経由してサーバ50に送信する(ステップS603)。
図9Aにおいて、接続確立時間とは、ステップS601においてユーザ端末10がSYNパケットをLTE/3Gシステム又はWi−Fiシステム経由で送信してから、ステップS603においてユーザ端末10がLTE/3Gシステム又はWi−Fiシステム経由でSYN−ACKパケットを受信するまでの時間であり、RTT(Round Trip Time)とも呼ばれる。
ユーザ端末10の接続制御部156は、無線アクセスシステム毎に所定数(例えば、10−30)のRTTを保持しておく。例えば、図9Bでは、接続制御部156は、RTTCellと、RTTWi−Fiとを保持する。RTTCellは、LTE/3Gシステム経由の直近の所定数(例えば、10−30個)のRTTである。また、RTTWiFiは、Wi−Fiシステム経由の直近の所定数(例えば、10−30個)のRTTである。
分配制御部157は、アプリケーション処理部11から要求信号(例えば、HTTPリクエスト)が入力されると、無線アクセスシステム毎にRTTの移動平均値を算出する。具体的には、分配制御部157は、LTE/3GシステムのRTTの移動平均値(すなわち、RTTCellの平均値)と、Wi−FiシステムのRTTの移動平均値(すなわち、RTTWi−Fiの平均値)と、を算出する。
例えば、LTE/3GシステムのRTTの移動平均値は下記式(2)で算出され、Wi−FiシステムのRTTの移動平均値は下記式(3)で算出されてもよい。
式(2)(3)において、xは、平均値が算出されるRTTの数(例えば、10−30個)である。なお、xは、T<xの場合、x=Tとする。また、Tは、サーバ50に対する接続回数であり、図9AのRTTを記録する毎に、Tは1加算される。なお、Tは、サーバ50に対するアクセスが所定期間ない場合、初期化されてもよい。
また、分配制御部157は、各無線アクセスシステムのRTTの移動平均値に基づいて選択される無線アクセスシステムに、アプリケーション処理部11から入力された要求信号を分配する。具体的には、分配制御部157は、LTE/3GシステムのRTTの移動平均値及びWi−FiシステムのRTTの移動平均値の比率に基づいて、LTE/3GシステムのメトリックMCellと、Wi−FiシステムのメトリックMWi−Fiと、を算出し、算出結果に基づいて、LTE/3Gシステム又はWi−Fiシステムのいずれかに、アプリケーション処理部11から入力された要求信号を分配して送信する。
例えば、LTE/3GシステムのメトリックM
Cellは下記式(4)で算出され、Wi−FiシステムのメトリックM
Wi−Fiは下記式(5)で算出されてもよい。
式(4)において、N
Cellは、LTE/3Gシステムにおける現在の接続数(アクティブな接続数)である。また、k
Cellは、補正係数であり、LTE/3Gシステムの電波状態が悪化しているなどLTE/3Gシステムに要求信号を分配すると支障がある場合などに、0<k
cellの値を代入する。また、式(5)において、N
Wi−Fiは、Wi−Fiシステムにおける現在の接続数(アクティブな接続数)である。また、k
Wi−Fiは、補正係数であり、Wi−Fiシステムの電波状態が悪化しているなどWi−Fiシステムに要求信号を分配すると支障がある場合などに、0<k
Wi−Fiの値を代入する。なお、N
Cell、N
Wi−Fiは、それぞれ、各無線アクセスシステムにおける直近一定期間内の接続カウント数であってもよい。
或いは、LTE/3GシステムのメトリックM
Cellは上記式(4)の代わりに下記式(4)’で算出されもよい。また、Wi−FiシステムのメトリックM
Wi−Fiは、上記式(5)の代わりに、下記式(5)’で算出されてもよい。
式(4)’において、N
Cellは、LTE/3Gシステムにおける現在の接続数(アクティブな接続数)である。また、k
Cellは、補正係数であり、LTE/3Gシステムの電波状態が悪化しているなどLTE/3Gシステムに要求信号を分配すると支障がある場合などに、0<k
cellの値を代入する。また、式(5)’において、N
Wi−Fiは、Wi−Fiシステムにおける現在の接続数(アクティブな接続数)である。また、k
Wi−Fiは、補正係数であり、Wi−Fiシステムの電波状態が悪化しているなどWi−Fiシステムに要求信号を分配すると支障がある場合などに、0<k
Wi−Fiの値を代入する。なお、N
Cell、N
Wi−Fiは、それぞれ、各無線アクセスシステムにおける直近一定期間内の接続カウント数であってもよい。
分配制御部157は、LTE/3GシステムのメトリックM
Cellと、Wi−FiシステムのメトリックM
Wi−Fiとの比較結果に基づいて、要求信号が分配される無線アクセスシステムを選択する。要求信号が分配される無線アクセスシステムは、例えば、下記式(6)により選択されてもよい。
なお、式(6)では、LTE/3GシステムのメトリックM
CellがWi−FiシステムのメトリックM
Wi−Fiより小さい場合に、LTE/3Gシステムが選択されるが、これに限られない。LTE/3GシステムのメトリックM
CellがWi−FiシステムのメトリックM
Wi−Fi以下である場合に、LTE/3Gシステムが選択されてもよい。この場合、LTE/3Gシステムが、Wi−Fiシステムよりも優先して選択される。
上述のように、変更例では、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方を同時利用する場合、分配制御部157が、各無線アクセスシステムとの接続確立時間に基づいて、要求信号を各無線アクセスシステムに分配する。このため、図9に示すように、Wi−Fiシステム(バックホール回線)が混雑している場合に、Wi−Fiシステムだけを利用する場合と比較して、Wi−FiシステムとLTE/3Gシステムとを同時利用する場合に、上記表示時間を短縮できる。このように、変更例では、LTE/3Gシステム及びWi−Fiシステムの双方を同時利用する場合に、表示時間を短縮しながら、無線アクセスシステム間でロードバランスをより適切に図ることができる。
なお、各無線アクセスシステムとの接続確立時間は、図6で説明した同時利用判定動作で用いられてもよい。例えば、図6のステップS311におけるWi−Fi帯域幅に加えて又は代えて、上記接続確立時間に基づいて、LTE/3GシステムとWi−Fiシステムとの同時利用を行うかを決定してもよい。また、各無線アクセスシステムとの接続確立時間は、図7のステップS400におけるWi−Fi帯域幅に加えて又は代えて、用いられてもよい。
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。