JP6205513B1 - 球面すべり支承の施工方法、固定治具付き球面すべり支承、および固定治具 - Google Patents
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さらに、一般的に、球面すべり支承の設置後に、上部支承部の上面を基準として上部構造が施工される。スライダは上部支承部および下部支承部に対してスライド移動可能となっているため、上部構造の施工時には、上部支承部を固定して、スライダにより上部支承部が回転して傾くことを防止する必要がある。しかしながら、特許文献1には、上部構造の施工時の上部支承部の固定については何ら開示されていない。
本発明の球面すべり支承の施工方法は、球面すべり支承の上面視において矩形状に形成される上部支承部と、前記上面視において矩形状に形成される下部支承部と、前記上部支承部と前記下部支承部との間に設けられるスライダと、を有する球面すべり支承の施工方法であって、前記上面視において、前記上部支承部の角部と前記下部支承部の角部とを、前記球面すべり支承の中心軸線回りに周回する周方向に互いにずらして配置し、前記上部支承部の辺部と前記下部支承部の辺部とを、互いに交差させる工程と、屈曲部を介して第1板と第2板とが接続されてなり、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制する固定治具を、前記上部支承部および前記下部支承部に取付ける第1工程と、前記第1工程の後、前記上部支承部および前記下部支承部に、上部構造および下部構造をそれぞれ固定する第2工程と、前記第2工程の後、前記上部支承部および前記下部支承部のうちの少なくとも一方から前記固定治具を取り外す第3工程と、を備え、前記第1工程では、前記第1板が前記上面視において前記上部支承部の前記辺部に沿って延び、前記第2板が前記上面視において前記下部支承部の前記辺部に沿って延びるように、前記固定治具を、前記上部支承部の前記辺部と前記下部支承部の前記辺部との交差部分に配置することを特徴とする。
また、固定治具は上部支承部の辺部と下部支承部の辺部との交差部分に配置されるため、固定治具の取り付け位置が上部支承部および下部支承部の角部から離れている。したがって、上部支承部の角部や下部支承部の角部に上部構造や下部構造を固定する時に、固定治具が邪魔にならない。これにより、固定治具を球面すべり支承に取り付けたままであっても、上部支承部および下部支承部に上部構造および下部構造を容易に固定することが可能である。
さらに、固定治具を交差部分に配置することにより、上部支承部と下部支承部とが周方向に相対的に回転しようとした際に、上部支承部と下部支承部とから固定治具に作用する力を、固定治具が効果的に受け止めることができる。より具体的には、固定治具を交差部分以外の位置に配置し、固定治具を、高さ方向に対して傾斜するように配置した場合には、上部支承部と下部支承部とが周方向に相対的に回転しようとした際に、固定治具にねじれの力が大きく作用し易くなる。しかしながら、本発明においては、固定治具を交差部分に配置しているので、固定治具を、高さ方向に対して真直に配置することが可能になり、固定治具のそれぞれに作用するねじれの力を小さく抑えることができる。
また、本発明に係る球面すべり支承の施工方法は、上部支承部と、下部支承部と、前記上部支承部と前記下部支承部との間に設けられるスライダと、を有する球面すべり支承の施工方法であって、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制する固定治具を、前記上部支承部および前記下部支承部に取付ける第1工程と、前記第1工程の後、前記固定治具が有する吊り穴を用いて前記球面すべり支承を吊り下げ搬送し、前記上部支承部および前記下部支承部に、上部構造および下部構造をそれぞれ固定する第2工程と、前記第2工程の後、前記上部支承部および前記下部支承部のうちの少なくとも一方から前記固定治具を取り外す第3工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る固定治具付き球面すべり支承は、上部構造が固定される上部支承部、下部構造が固定される下部支承部、および前記上部支承部と前記下部支承部との間に配置されたスライダを有する球面すべり支承と、前記上部支承部および前記下部支承部に取り付けられ、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制する固定治具と、を備え、前記固定治具は、前記球面すべり支承を吊り下げて運搬するための吊り穴を有することを特徴とする。
また、本発明に係る固定治具は、上部構造が固定される上部支承部、下部構造が固定される下部支承部、および前記上部支承部と前記下部支承部との間に配置されたスライダを有する球面すべり支承に取り付けられる固定治具であって、前記上部支承部および前記下部支承部に取り付けられ、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制し、前記球面すべり支承を吊り下げて運搬するための吊り穴を有することを特徴とする。
図1および図2に示すように、球面すべり支承1は、上部支承部11と、下部支承部12と、上部支承部11と下部支承部12との間に設けられるスライダ13と、を有する。
なお、上部支承部11、下部支承部12およびスライダ13は、初期状態において互いに同軸に配置されている。以下、初期状態における上部支承部11、下部支承部12およびスライダ13の共通軸を、球面すべり支承1の中心軸線Cという。
なお、本実施形態においては、上面視において、上部支承部11の辺部11cと下部支承部12の辺部12cとが全長にわたって重なり合っている状態から、上部支承部11を下部支承部12に対して周方向に45度回転させて配置する。この結果、上面視において、交差部分P1〜P8における上部支承部11の辺部11cと、下部支承部12の辺部12cとのなす角は135度となる。
第1板21の下角部には切欠き21bが形成される。第2板22の上角部には切欠き22bが形成される。切欠き21bは、直線状に形成され、切欠き22bは曲線状に形成されている。
第1板24の下角部には切欠き24bが形成される。切欠き24bは、直線状に形成される。第2板25の上部には、球面すべり支承1を吊り下げて運搬するための吊り穴25bが第2板25を貫通して設けられる。
まず、例えば工場にて、上部支承部11と、下部支承部12と、スライダ13とを初期状態に組み立てる。その後、固定治具2(2A、2B)を上部支承部11および下部支承部12に取付ける(第1工程)。これにより、初期状態で、上部支承部11と下部支承部12との相対変位が規制される。
まず、第1固定治具2Aを、第1板21が上部支承部11の辺部11cに当接し、第2板22が下部支承部12の辺部12cに当接するように配置する。第1のボルト31aをボルト穴21aおよびボルト穴11fに挿通して第1板21を上部支承部11とボルト締めし、第2のボルト31bをボルト穴22aおよびボルト穴12fに挿通して第2板22を下部支承部12とボルト締めすることにより、第1固定治具2Aを上部支承部11および下部支承部12に固定する。
なお、球面すべり支承1や第1固定治具2Aの製造誤差により、ボルト穴11fとボルト穴21aとの位置、あるいはボルト穴12fとボルト穴22aとの位置が高さ方向においてずれている場合がある。しかしながら、ボルト穴21aは楕円形であるので、ボルト穴21aが高さ方向のずれを許容して、第1固定治具2Aを上部支承部11および下部支承部12に取り付けることが可能である。
この時も、ボルト穴24aは楕円形であるので、ボルト穴11fとボルト穴24aとの位置、あるいはボルト穴12fとボルト穴25aとの位置が高さ方向においてずれている場合であっても、ボルト穴24aが高さ方向のずれを許容して、第2固定治具2Bを上部支承部11および下部支承部12に取り付けることが可能である。
その後、ベースプレート100a上にコンクリートを打設することにより、上部構造100の残りの部分を施工する。
本実施形態においては、第1工程で行われた固定治具2(2A、2B)と上部支承部11および下部支承部12とのボルト締めを全て解除し、固定治具2を球面すべり支承1から完全に取り外す。
これにより、球面すべり支承1の施工が完了する。
また、本実施形態に係る固定治具2付き球面すべり支承1は、上部支承部11、下部支承部12、スライダ13を有する球面すべり支承1と、上部支承部11および下部支承部12に取り付けられ、上部支承部11と下部支承部12との相対変位を規制する固定治具2と、を備える。
第1工程において、例えば工場にて固定治具2を球面すべり支承1に取り付けることにより球面すべり支承1の上部支承部11と下部支承部12との相対変位を規制し、その後、第2工程において、球面すべり支承1を工事現場まで運搬して設置する。第2工程を実施する前に、工場などで、下部支承部12に対する上部支承部11の相対位置を調整することができるため、上部支承部11と下部支承部12との位置決めを精密に行い、球面すべり支承1を精度よく組み立てることができる。また、上部支承部11と下部支承部12との相対変位が規制された状態で、球面すべり支承1を上部構造100および下部構造200に固定することができるので、球面すべり支承1の施工が簡単であり、工期も短くてすむ。この結果、球面すべり支承1の施工性が向上する。
上面視において、上部支承部11の角部11dと下部支承部12の角部12dとが周方向に互いにずらされて配置されている。したがって、例えば、上部支承部11の角部11dや下部支承部12の角部12dに上部構造100や下部構造200を固定する時に、各角部11d、12dを上方または下方に露出させておくことができる。これにより、上部支承部11の角部11dや下部支承部12の角部12dに、例えばボルトを容易に施工することが可能になり、施工性を向上させることができる。
また、固定治具2は上部支承部11の辺部11cと下部支承部12の辺部12cとの交差部分P1〜P8に配置されるため、固定治具2の取り付け位置が上部支承部11および下部支承部12の角部11d、12dから離れている。したがって、上部支承部11の角部11dや下部支承部12の角部12dに上部構造100や下部構造200を固定する時に、固定治具2が邪魔にならない。これにより、固定治具2を球面すべり支承1に取り付けたままであっても、上部支承部11および下部支承部12に上部構造100および下部構造200を容易に固定することが可能である。
さらに、固定治具2を交差部分P1〜P8に配置することにより、上部支承部11と下部支承部12とが周方向に相対的に回転しようとした際に、上部支承部11と下部支承部12とから固定治具2に作用する力を、固定治具2が効果的に受け止めることができる。より具体的には、固定治具2を交差部分P1〜P8以外の位置に配置し、固定治具2を、高さ方向に対して傾斜するように配置した場合には、上部支承部11と下部支承部12とが周方向に相対的に回転しようとした際に、固定治具2にねじれの力が大きく作用し易くなる。しかしながら、本実施形態においては、固定治具2を交差部分P1〜P8に配置しているので、固定治具2を、高さ方向に対して真直に配置することが可能になり、固定治具2のそれぞれに作用するねじれの力を小さく抑えることができる。
したがって、複数の固定治具2(2A、2B)にて、上部支承部11と下部支承部12との相対変位をより確実に規制することができる。
固定治具2(2A、2B)の第1板21、24を上部支承部11の辺部11cに固定し、固定治具2(2A、2B)の第2板22、25を下部支承部12の辺部12cに固定することができるため、上部支承部11と下部支承部12との周方向における相対的な回転を効果的に阻止することができる。したがって、固定治具2(2A、2B)により、上部支承部11と下部支承部12との相対変位をより効果的に規制することができる。
切欠き21b、22b、24bにより、上部支承部11および下部支承部12を上部構造100および下部構造200にそれぞれ取り付ける際の作業空間を広く確保することができる。したがって、球面すべり支承1の施工性が向上する。
したがって、固定治具2付き球面すべり支承1を、吊り穴25bを用いて容易にかつ安全にクレーン等にて吊り下げて運搬することができる。
例えば、本実施形態においては、上面視において、上部支承部11の角部11dと下部支承部12の角部12dとが、周方向に45度ずらされて配置されている。しかしながら、施工条件等に応じて、上部支承部11の角部11dと下部支承部12の角部12dとを45度以外の角度でずらしてもよい。
また、本実施形態においては、固定治具2(2A、2B)の第1板21、24と第2板22、25とのなす角が135度となっている。しかしながら、上部支承部11の角部11dと下部支承部12の角部12dとのずれ角度に応じて、第1板と第2板とのなす角も適宜設定される。
Claims (9)
- 球面すべり支承の上面視において矩形状に形成される上部支承部と、前記上面視において矩形状に形成される下部支承部と、前記上部支承部と前記下部支承部との間に設けられるスライダと、を有する球面すべり支承の施工方法であって、
前記上面視において、前記上部支承部の角部と前記下部支承部の角部とを、前記球面すべり支承の中心軸線回りに周回する周方向に互いにずらして配置し、前記上部支承部の辺部と前記下部支承部の辺部とを、互いに交差させる工程と、
屈曲部を介して第1板と第2板とが接続されてなり、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制する固定治具を、前記上部支承部および前記下部支承部に取付ける第1工程と、
前記第1工程の後、前記上部支承部および前記下部支承部に、上部構造および下部構造をそれぞれ固定する第2工程と、
前記第2工程の後、前記上部支承部および前記下部支承部のうちの少なくとも一方から前記固定治具を取り外す第3工程と、
を備え、
前記第1工程では、前記第1板が前記上面視において前記上部支承部の前記辺部に沿って延び、前記第2板が前記上面視において前記下部支承部の前記辺部に沿って延びるように、前記固定治具を、前記上部支承部の前記辺部と前記下部支承部の前記辺部との交差部分に配置することを特徴とする球面すべり支承の施工方法。 - 球面すべり支承の上面視において矩形状に形成され、上部構造が固定される上部支承部、前記上面視において矩形状に形成され、下部構造が固定される下部支承部、および前記上部支承部と前記下部支承部との間に配置されたスライダを有する球面すべり支承と、
前記上部支承部および前記下部支承部に取り付けられ、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制する固定治具と、を備え、
前記上面視において、前記上部支承部の角部と前記下部支承部の角部とが、前記球面すべり支承の中心軸線回りに周回する周方向に互いにずらされて配置され、前記上部支承部の辺部と前記下部支承部の辺部とが、互いに交差し、
前記固定治具は、前記上部支承部の前記辺部と前記下部支承部の前記辺部との交差部分に配置され、
前記固定治具は、
前記上面視において前記上部支承部の前記辺部に沿って延びる第1板と、
前記上面視において前記下部支承部の前記辺部に沿って延びる第2板と、
前記第1板と前記第2板とを接続する屈曲部と、を備えることを特徴とする固定治具付き球面すべり支承。 - 前記固定治具の前記第1板および前記第2板の少なくとも1つは角部に切欠きを有することを特徴とする請求項2に記載の固定治具付き球面すべり支承。
- 前記固定治具は、前記球面すべり支承を吊り下げて運搬するための吊り穴を有することを特徴とする請求項2または3に記載の固定治具付き球面すべり支承。
- 複数の前記固定治具が前記上部支承部および前記下部支承部に取り付けられることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の固定治具付き球面すべり支承。
- 球面すべり支承の上面視において矩形状に形成され、上部構造が固定される上部支承部、前記上面視において矩形状に形成され、下部構造が固定される下部支承部、および前記上部支承部と前記下部支承部との間に配置されたスライダを有し、前記上面視において、前記上部支承部の角部と前記下部支承部の角部とが、前記球面すべり支承の中心軸線回りに周回する周方向に互いにずらされて配置され、前記上部支承部の辺部と前記下部支承部の辺部とが、互いに交差する球面すべり支承に取り付けられる固定治具であって、
前記上部支承部の前記辺部と前記下部支承部の前記辺部との交差部分に配置されて前記上部支承部および前記下部支承部に取り付けられ、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制し、
前記上面視において前記上部支承部の前記辺部に沿って延びる第1板と、
前記上面視において前記下部支承部の前記辺部に沿って延びる第2板と、
前記第1板と前記第2板とを接続する屈曲部と、
を備えることを特徴とする固定治具。 - 上部支承部と、下部支承部と、前記上部支承部と前記下部支承部との間に設けられるスライダと、を有する球面すべり支承の施工方法であって、
前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制する固定治具を、前記上部支承部および前記下部支承部に取付ける第1工程と、
前記第1工程の後、前記固定治具が有する吊り穴を用いて前記球面すべり支承を吊り下げ搬送し、前記上部支承部および前記下部支承部に、上部構造および下部構造をそれぞれ固定する第2工程と、
前記第2工程の後、前記上部支承部および前記下部支承部のうちの少なくとも一方から前記固定治具を取り外す第3工程と、
を備えることを特徴とする球面すべり支承の施工方法。 - 上部構造が固定される上部支承部、下部構造が固定される下部支承部、および前記上部支承部と前記下部支承部との間に配置されたスライダを有する球面すべり支承と、
前記上部支承部および前記下部支承部に取り付けられ、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制する固定治具と、を備え、
前記固定治具は、前記球面すべり支承を吊り下げて運搬するための吊り穴を有することを特徴とする固定治具付き球面すべり支承。 - 上部構造が固定される上部支承部、下部構造が固定される下部支承部、および前記上部支承部と前記下部支承部との間に配置されたスライダを有する球面すべり支承に取り付けられる固定治具であって、
前記上部支承部および前記下部支承部に取り付けられ、前記上部支承部と前記下部支承部との相対変位を規制し、
前記球面すべり支承を吊り下げて運搬するための吊り穴を有することを特徴とする固定治具。
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