JP6203760B2 - 併用療法のための医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、テソフェンシンとメトプロロールの治療的に有効な組み合わせを含み、ロバストな食物摂取抑制効果及び体重減少へ影響せず、テソフェンシンの心血管系副作用を予防するための医薬組成物の使用に関する。
過去数十年の間に、肥満率は、ほぼ全ての民族、人種及び社会経済集団において、両性別及び全ての年齢層において上昇した。肥満は、2型糖尿病、冠動脈性心疾患、高血圧及びその他の数多くの主要な疾病のリスクの顕著な上昇と関連しており、すべての要因が全死亡率となる。従って、体重低減は肥満患者にとって極めて重要である。よって、肥満をマネジメントするための新規及び代替的な治療の創出の要請がある。
テソフェンシンすなわち(1R,2R,3S,5S)-3-(3,4-ジクロロフェニル)-2-(エトキシメチル)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタンは、WO97/30997に初めて開示され、肥満の治療のために開発された3級モノアミン再取り込み阻害因子である。
WO 2005/070427は、体重を持続的に低減させるために、ある種のモノアミン神経伝達物質の再取り込み阻害因子を使用することを開示している。WO 2009/065845は、過食症の治療のためにある種のモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害因子を使用することを開示している。WO 2009/080691は、肥満の治療のために、追加の抗肥満剤と組み合せて
ある種のモノアミン神経伝達物質の再取り込み阻害因子を使用することを開示している。
テソフェンシンは、現在市販されている抗肥満薬で見られるものの約2倍の、肥満個体における体重減少を効率的にもたらす。また、テソフェンシンの臨床研究の結果は、当該化合物が優れた安全性プロファイルと優れた耐容性を有することを示した。しかしながら、臨床的に心血管に関連する有害事象又は変化が、血圧又は脈拍のいずれにも何ら見られなかったにも関わらず、いくつかの心血管作用が心拍数及び血圧における微増とともに測定された。このような小さな作用は、直ちに患者にとってリスクとはならないが、心血管系パラメータの小さな変化でさえも、患者の、ベネフィット/リスク評価において長期的な示唆を与えうるといういくつかの医学的及び日常的な懸念が観察研究に基づいて挙げられる。
前臨床データ及び臨床データにより、食欲抑制は、テソフェンシンがロバストな体重低減効果を発揮することによる、重要なメカニズムであることが示されている。とりわけ、テソフェンシン治療に対する強力な食欲減退応答(すなわち、食欲低下、摂食減少)が、ノルアドレナリン作動性及びドーパミン作動性神経伝達の中枢刺激と関連していることが示されている。しかしながら、テソフェンシンの交感神経様作用機序もまた、臨床設定での心拍数及び血圧の上昇とも関連している可能性がある。
WO 2009/080693は、ある種のβ阻害剤を組み合わせたある種のモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害因子を含む医薬組成物を開示している。WO 2011/100659は、薬剤誘導性の血圧上昇又は抗高血圧薬の投与による心拍数の増大を改善する方法を開示している。
このような併用療法は魅力的に思われるため、異なる作用メカニズムを示すテソフェンシンと抗高血圧剤の薬剤併用が研究されてきた。これらの実験に基づくと、抗高血圧剤には、実際にテソフェンシンの抗肥満効果を阻害するため、このような併用療法には適さないものがある。さらには、その他の抗高血圧剤には、実際に、テソフェンシンによる収縮期血圧及び心拍数の増大から回復させることができないものがある。
メトプロロールすなわち1-(イソプロピルアミノ)-3-[4-(2-メトキシエチル)-フェノキシ]-プロパン-2-オールは、様々な商品名でブランド化されている、選択的β1(アドレナリン作動性)受容体阻害因子であり、通常は、心血管系の様々な疾患特に高血圧の治療において使用される。
WO 97/30997 WO 2009/065845 WO 2009/080693
驚くべきことに、肥満の治療のための、テソフェンシンとの特定の併用療法におけるメトプロロールの使用により、テソフェンシンによるロバストな食物摂取抑制効果及び体重減少へ影響せず、テソフェンシンにより誘導される心血管作用を予防するという点で有望な結果が示すことが発見された。
従って、ある態様においては、本発明は、肥満又は肥満関連疾患の治療、予防又は緩和する方法、及び、テソフェンシンによる心血管系副作用の治療、予防もしくは緩和する方法を、ヒトを含む、生きている動物体において提供する。前記方法は、当該方法を必要とする生きている動物体に、治療的有効量のテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩をメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩との併用療法において、投与することを含む。
他の態様において、本発明は、テソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩とメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩との組み合わせ、肥満又は肥満関連疾患の治療、予防又は緩和、及び、テソフェンシンの心血管系副作用の治療、予防又は緩和を提供する。
本発明の第三の態様において、本発明は、医薬として使用するための、テソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩と、メトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩との組合せを提供する。
第四の態様において、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における、肥満又は肥満関連疾患の治療、予防又は緩和、及び、テソフェンシンの心血管系副作用の治療、予防又は緩和のための、テソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩と、メトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩との組合せを提供する。
第五の態様において、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における、肥満又は肥満関連疾患の治療、予防又は緩和、及び、テソフェンシンの心血管系副作用の治療、予防又は緩和のための医薬の製造のためのテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩と、メトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩との組合せの使用に関する。
第六の態様において、本発明は、肥満又は肥満関連疾患の治療、予防又は緩和、及び、テソフェンシンの心血管系副作用の治療、予防又は緩和のために、メトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩を含む医薬組成物と共に使用する併用療法のための、テソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩を含む医薬組成物を提供する。
第八の態様において、本発明は、治療的有効量のテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩と、治療的有効量のメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩とを、一つ以上のアジュバント、賦形剤、担体及び/又は希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。
第九の態様において、本発明は、少なくとも二つの分離した単位投与形態(A)及び(B)(前記(A)はテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩を含み、前記(B)はメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩を含む)と、場合により、テソフェンシン(A)及びメトプロロール(B)を、それを必要とする患者に、同時、連続的又は個別に投与するための指示書(C)とを含む部品キットを提供する。
本発明のその他の課題は、以下の詳細な説明および実施例から当業者に明らかである。
テソフェンシンは、中枢性3級モノアミン再取り込み阻害因子(monoamine reuptake inhibitor:MRI)であり、ノルアドレナリン、セロトニン及びドーパミンのトランスポーター機能の阻害活性を本来的に有している。プラセボ及び食餌効果を較正すると、長期間のテソフェンシン治療は、肥満患者において、現在市販されている抗肥満薬により達成されるものの2倍の約10%の体重減少をもたらした。
テソフェンシンの肥満治療効果は、満腹刺激による用量依存的な食欲減退によって説明され、このことは、テソフェンシンは負のエネルギーバランスをもたらす食欲抑制因子として機能することを示唆しているようである。さらに、テソフェンシンはヒト対象において夜間のエネルギー消費を増大させることも示されている。これらの発見は、近年裏付けられ、前臨床設定に拡張されて、テソフェンシンが、ラットの食餌性肥満(Diet-Induced Obesity:DIO)モデルにおいて、食欲抑制とエネルギー消費の漸増による長期に渡る体重低下をもたらし、ロバストで持続的な体重減少を誘導することを示した。とりわけ、DIOラットにおけるテソフェンシンの食欲減退効果は、刺激されたα1アドレナリン受容体活性に決定的に依存し、ドーパミンD1受容体機能にはそれほど依存しない。このことは、中枢ノルアドレナリン作動性及びドーパミン作動性神経伝達の促進が、テソフェンシンのロバストな食欲抑制効果の根底にある重要なメカニズムを構成していることを示している。
総じて、長期のテソフェンシン治療は、深刻でない有害事象及びわずかな心血管作用と関連しており、このことはテソフェンシンが耐容性に優れた長期の肥満治療であり得ることを示唆している。しかしながら、この点においては、心拍数の用量依存的な上昇及び最も高い試験用量における血圧の顕著な増大が肥満個体において報告されている。従って、我々は、テソフェンシンの交感神経刺激作用は、心血管機能への報告されている効果とも関連している可能性があると推測している。
この仮説を検証するため、我々は、テソフェンシン単独投与又はテソフェンシンと、異なる作用メカニズムを示す抗高血圧剤(すなわち、メトプロロール(すなわち、β1アドレナリン作動性アンタゴニスト))及びテルミサルタン(すなわち、アンジオテンシンAT1受容体アンタゴニスト)との併用投与において、telemetrized rat(すなわち、自然発症高血圧ラット)における心血管系パラメータと共に食物摂取及び体重制御の効果をモニターした。
驚くべきことに、今や、肥満又は肥満関連疾患の治療のための、テソフェンシンとの特定の併用療法におけるメトプロロールの使用により、テソフェンシンのロバストな食物摂取抑制効果及び体重減少へ影響せず、テソフェンシンにより誘導される心血管作用を予防するという点で有望な結果が示されることが発見された。
従って、ひとつの態様において、本発明は、肥満又は肥満関連疾患に罹患している患者おけるこのような疾患の治療、予防又は緩和のためのテソフェンシンとメトプロロールとを使用する併用療法に関する。
その他の態様において、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における、肥満又は肥満関連疾患の治療、予防又は緩和、及び、テソフェンシンの心血管系副作用の治療、予防又は緩和のための医薬の製造のための、テソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩と、メトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩との組合せの使用に関する。
肥満及び肥満関連疾患
肥満は、過剰な体脂肪が、健康を害する効果を有し、寿命の短縮及び/又は健康問題の増大に繋がる可能性がある程度までに蓄積した医学的状態である。体格指数(body mass index:BMI)は、体重と身長を比較する測定法であり、ヒトのBMIが25〜30kg/m2の場合は体重過多(前肥満)であると定義し、30kg/m2よりも大きい場合は肥満であると定義する。
好ましい態様において、本発明の併用療法は、BMIが25〜30kg/m2である前肥満対象の治療に有用であると考えられる。
他の好ましい態様において、本発明の併用療法は、肥満対象(すなわち、BMIが30kg/m2より大きい)の治療に有用であると考えられる。
第三の好ましい態様において、本発明の併用療法は、病的肥満対象(すなわち、BMIが35g/m2より大きい)の治療に有用であると考えられる。
本発明の内容に照らすと、肥満関連疾患は、過食症、神経性過食症、気晴らし食い症候群、強迫性過食症、食欲制御障害 (impaired appetite regulation)、メタボリックシンドーム、2型糖尿病、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症及び薬剤誘導性肥満(例えば、抗うつ薬又は抗精神病薬による治療後)から成る群から選択される疾患または状態である。
薬学的に許容可能な塩
本発明に使用するための活性化合物は意図する投与に適する任意の形態で提供されてよい。適する形態は、薬学的(すなわち生理学的)に許容可能な塩、及び本発明の化合物のプレドラッグ又はプロドラッグの形態を含む。
薬学的に許容可能な付加塩の例は、制限なく、非毒性の無機酸及び有機酸の付加塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、aconate、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイヒ酸塩、クエン酸塩、embonate、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン2-スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルベート、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン-p-スルホン酸塩など)を含む。このような塩は、当業者に周知で記載された手順で形成される。
本発明の化合物の医薬として許容可能は陽イオン性塩の例は、制限されることなく、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、リチウム塩、コリン塩、lysinium、及びアンモニウム塩等、並びに陰イオン基を含む本発明の化合物を含む。このような塩は、当業者に周知で記載された手順で形成される。
本発明の内容に照らすと、含窒素化合物の「オニオム塩」はまた、薬学的に許容可能な塩としても考えられる。好ましい「オニオム塩」は、アルキルオニオム塩、シクロアルキルオニオム塩及びシクロアルキルアルキルオニオム塩を含む。
本発明の使用のための化合物のプレドラッグ又はプロドラッグの例は、本発明の使用のための物質の適するプロドラッグの例を含み、親化合物の反応性の基又は誘導体化することができる基の一つ以上を修飾した化合物を含む。特に興味のある化合物は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基で修飾された化合物である。適する誘導体の例はエステル又はアミドである。
本発明の使用のための化合物は、可溶性形態または不溶性形態で、薬学的に許容可能な溶媒(水、エタノールなど)と共に提供されてよい。不溶性形態はまた、水和物形態(一水和物、二水和物、三水和物、四水和物など)を含んでよい。一般的に、可溶性形態は、本発明の目的において不溶性形態と等しいものと考えられる。
医薬組成物
他の態様において、本発明は、医薬として使用するための、テソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩、及び、メトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩に関する。
さらなる態様において、本発明は、肥満若しくは肥満関連疾患の治療、予防又は緩和のために、及び、テソフェンシンによる心血管系副作用の治療、予防若しくは緩和のために、メトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩を含む医薬組成物と共に、併用療法において使用するための、テソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩を含む医薬組成物を提供する。
よりさらなる態様において、本発明は、治療的有効量のテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩と、治療的有効量のメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩とを、一つ以上のアジュバント、賦形剤、担体及び/又は希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。
本発明の使用のための化合物は、原料化合物の形態で投与されても良いが、活性成分は、場合により、生理学的に許容可能な塩の形態で、一つ以上のアジュバント、賦形剤、担体、バッファー、希釈剤及び/又はその他の通常の製剤補助剤と共に医薬組成物中に導入されるのが好ましい。
好ましい態様において、本発明は、活性化合物又は薬学的に許容可能なその塩若しくは誘導体を、一つ以上の薬学的に許容可能な担体と共に含み、従って、場合により、当業界において知られ、使用されている他の治療的及び/又は予防的成分を含む医薬組成物を提供する。担体は、製剤の他の成分と両立するという意味において「許容可能」でなくてはならず、レシピエントに有害であってはならない。
本発明の医薬組成物は、望ましい療法に適する任意の都合の良い方法で投与されて良い。好ましい投与方法は、経口投与、特にタブレット、カプセル、糖衣錠、粉末又は液体の形態、及び、非経口投与、特に皮膚、皮下、筋肉内又は静脈内注入の形態を含む。本発明の医薬組成物は、当業者により、望ましい剤形に応じた標準的な方法及び従来の技術を使用して、製造され得る。要求があれば、活性成分の持続的な放出に適合する組成物を用いてもよい。
製剤化技術及び投与技術のさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版で得ることができる(Maack Publishing Co., Easton, PA)。
製剤Iの化合物の用量を、遊離塩として計算されたAPI (Active Pharmaceutical Ingredient)として決定する。各活性成分の実際の用量は、治療される疾患の性質及び重篤度、厳密な投与モード、投与形態に依存し、医師の裁量の範囲内であり、望ましい治療効果を生むために、本発明の特定の状況によって、用量漸増法により変化してよい。
現在、テソフェンシンの一日当たりの用量は、約0.1〜約1mg活性成分、好ましくは約0.1〜約0.5mg活性成分の範囲が治療に適すると考えられている。テソフェンシンの一日当たりの用量は、一日あたり一回または数回(例えば2回)で投与されて良い。一つの態様において、一日当たりの用量は、一回で投与される。
現在、メトプロロールの一日当たりの用量は、約25〜約200mg活性成分、好ましくは約25〜約100mg活性成分の範囲であると考えられる。メトプロロールの一日当たりの用量は、一日あたり一回または数回(例えば2回)で投与されて良い。一つの態様において、一日当たりの用量は、一回で投与される。
医薬部品キット
本発明によると、少なくとも二つの分離した単位投与形態(A)及び(B)(前記(A)はテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩を含み、前記(B)はメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩を含む)と、場合により、テソフェンシン(A)及びメトプロロール(B)を、それを必要とする患者に、同時、連続的又は個別に投与するための指示書(C)とを含む部品キットがある。
本発明の使用のためのテソフェンシン及び本発明の使用のためのメトプロロールは、好ましくは、他方と組み合わせて投与するのに適する形態で提供されて良い。このことは、二つの製剤の一方または他方が、他方の成分の投与の前、後及び/又は同時に(場合により繰り返し)投与される場合を意図している。
また、本発明の使用のためのテソフェンシン及び本発明の使用のためのメトプロロールは、組み合された形態で又は個別に若しくは個別且つ連続的に投与されて良く、連続的な投与は、時間的に近接し又は離れている。このことは、特に、関連のある状態の治療の期間中を通じて二つの製剤のうち一方が、他方の製剤の非存在下で(場合により繰り返し)投与される場合よりも、患者に有益な効果をもたらすように、関連のある状態の治療の期間中を通じて、二つの製剤が十分に短時間で(場合により繰り返し)投与されることを含んでよい。併用が、特定の状態について、治療に期間中を通じてより有益な効果をもたらすか否かを決定することは、治療又は予防される状態に依存するが、日常的には当業者により行われて良い。
本明細書において使用する場合、「同時に投与される」なる語は、テソフェンシン及びメトプロロールの個別用量が、互いに48時間以内(例えば24時間)で投与されることを含む。
二つの成分を互いに合わせることは、成分(A)及び成分(B)が個別の製剤として(すなわち互いに独立して)提供されて良いこと、つまり、併用療法において互いに組み合わせて使用するために、後で混合すること、又は、併用療法において互いに組み合わせて使用するために、成分が分離した(すなわち、互いに独立した)、「組み合わせ包装」として包装され、存在してよいことを含む。
療法
他の態様において、本発明は、ヒトを含む生きている動物体における肥満又は肥満関連疾患の治療、予防又は緩和方法を提供し、当該方法を必要とする生きている動物体に、治療的有効量のテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩とメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩と組み合わせて、投与するステップを含む。
好ましい態様において、肥満関連疾患は、過食症、神経性過食症、気晴らし食い症候群、強迫性過食症、食欲制御障害 (impaired appetite regulation)、メタボリックシンドーム、2型糖尿病、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症及び薬剤誘導性肥満から成る群から選択される疾患または状態である。
現在、テソフェンシンの一日当たりの用量は約0.1〜約1mg活性成分、好ましくは約0.1〜約0.5mg活性成分の範囲が治療に適すると考えられている。テソフェンシンの一日当たりの用量は、一日あたり一回または数回(例えば2回)で投与されて良い。一つの態様において、一日当たりの用量は、一回で投与される。
現在、メトプロロールの一日当たりの用量は、約25〜約200mg活性成分、好ましくは約25〜約100mg活性成分の範囲であると考えられる。メトプロロールの一日当たりの用量は、一日あたり一回または数回(例えば2回)で投与されて良い。一つの態様において、一日当たりの用量は、一回で投与される。
図1は、テソフェンシン(1.0〜5.0 mg/kg, p.o.)が、telemetrized ratにおいて、用量依存的に食物摂取を阻害し、体重を減少させ、自発運動を刺激することを示す。パネルA:テソフェンシン又は生理食塩水ビヒクルの急性投与後、48時間にわたって測定した平均累積食物摂取量(2時間ごと)。パネルB:平均して各12時間ごとの明暗期下で、48時間にわたって測定した平均食物摂取量。パネルC及びD:第0日目の投与前に測定した体重と比較した相対的割合(%)及び絶対値(g)でそれぞれ示した正味の体重増加。パネルE: 平均して各12時間ごとの明暗条件下で、48時間にわたり測定した自発運動。X軸より下の、黒色及び白色の水平バーは、12時間の暗期及び12時間の明期をそれぞれ示す。略語:VEH, ビヒクル; TESO, テソフェンシン. *p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001 (VEHと比較); 図2は、テソフェンシン(1.0〜5.0 mg/kg, p.o.)が、telemetrized ratにおいて、用量依存的に心拍数及び血圧を上昇させることを示す。パネルA:12時間ごとの、平均化した平均心拍数±平均値の標準誤差(SEM)。パネルB: 12時間ごとの、平均化した拡張期血圧。パネルC: 12時間ごとの、平均化した収縮期血圧。X軸より下の、黒色及び白色の水平バーは、12時間の暗期及び12時間の明期をそれぞれ示す。略語:VEH, ビヒクル; TESO, テソフェンシン, bpm;1分当たりの心拍数 *p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001 (VEHと比較); 図3は、テソフェンシン(3.0 mg/kg、 p.o.) と組み合わせたメトプロロール(10、20 mg/kg, p.o.)の用量依存的効果、及び、メトプロロールがテソフェンシンの食欲減退効果及び体重低減効果に影響を与えず、テソフェンシン誘導性の自発運動をtelemetrized ratにおいて阻害することを示す。パネルA: メトプロロール+テソフェンシンの組み合わせ又は生理食塩水ビヒクルの急性投与後、48時間にわたって測定した平均累積食物摂取量(2時間ごと)。パネルB:平均して各12時間ごとの明暗期下で、48時間にわたって測定した平均食物摂取量。パネルC及びD:第0日目の投与前に測定した体重と比較した相対的割合(%)及び絶対値(g)でそれぞれ示す正味の体重増加。パネルE: 平均して各12時間ごとの明暗条件下で、48時間にわたって測定した自発運動。X軸より下の、黒色及び白色の水平バーは、12時間の暗期及び12時間の明期をそれぞれ示す。略語:VEH, ビヒクル; TESO, テソフェンシン、MET, メトプロロール、**p<0.01, ***p<0.001 (VEH+VEHと比較); #p<0.05, ##p<0.01 (VEH + TESO 3.0と比較); 図4は、メトプロロールが、用量依存的にテソフェンシン誘導性の心拍数及び血圧上昇を、telemetrized ratにおいて阻害することを示す。パネルA: 12時間ごとの、平均化した平均心拍数±平均値の標準誤差(SEM)。パネルB: 12時間ごとの、平均化した拡張期血圧。パネルC: 12時間ごとの、平均化した収縮期血圧。X軸より下の、黒色及び白色の水平バーは、12時間の暗期及び12時間の明期をそれぞれ示す。略語:VEH, ビヒクル; TESO, テソフェンシン、MET, メトプロロール、**p<0.01, ***p<0.001 (VEH+VEHと比較); #p<0.05, ##p<0.01、###p<0.001 (VEH + TESO 3.0と比較); 図5は、テソフェンシン(3.0 mg/kg, p.o.)と組み合わせたテルミサルタン(1.0、3.0 mg/kg, p.o.)の用量依存的効果、及び、テルミサルタンがテソフェンシンの食欲減退効果及び体重減少に影響を与えず、telemetrized ratにおいてテソフェンシン誘導性の自発運動に影響しないことを示す。パネルA: テルミサルタン+テソフェンシンの組み合わせ又は生理食塩水ビヒクルの急性投与後、48時間にわたって測定した平均累積食物摂取量(2時間ごと)。パネルB:平均して各12時間ごとの明暗期下で、48時間にわたって測定した平均食物摂取量。パネルC及びD:第0日目の投与前に測定した体重と比較した相対的割合(%)及び絶対値(g)でそれぞれ示す正味の体重増加。パネルE: 平均して各12時間ごとの明暗条件下で、48時間にわたって測定した自発運動。X軸より下の、黒色及び白色の水平バーは、12時間の暗期及び12時間の明期をそれぞれ示す。略語:VEH, ビヒクル; TESO, テソフェンシン、TEL, テルミサルタン、*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001 (VEH+VEHと比較);及び 図6は、心拍数及び血圧に対する、telemetrized ratにおけるテソフェンシン+テルミサルタン併用薬剤治療の効果を示す。パネルA: 12時間ごとの、平均化した平均心拍数±平均値の標準誤差(SEM)。パネルB: 12時間ごとの、平均化した拡張期血圧。パネルC: 12時間ごとの、平均化した収縮期血圧。X軸より下の、黒色及び白色の水平バーは、12時間の暗期及び12時間の明期をそれぞれ示す。略語:VEH, ビヒクル; TESO, テソフェンシン、TEL, テルミサルタン、*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001 (VEH+VEHと比較); #p<0.05, (VEH + TESO 3.0と比較);
本発明を更に、以下の実施例によって例示するが、当該実施例は本発明の範囲をいかなる意味においても限定することを意図しない。
動物のケア及び飼育
5か月齢の正常血圧のSprague-Dawleyラット(508 ± 18 g, Harlan, Horst, オランダ)を、ソリッド底(Plexiglas製)ケージで、ダストフリー木材チップ及びボール紙の筒を使用して飼育した。室内は12時間毎の明/暗サイクル下に維持した(ライトオフ(lights off)1500時間)。室温は18.0〜22.0℃であり、相対湿度は40〜60%であった。暗期の間は、暗赤色灯が唯一の光源であった。ラットは、標準飼料((Altromin 1324、 カロリーの10%が脂質由来で、エネルギー密度(energy density)2.85 kcal/g, Altromin GmbH, Lage, ドイツ)を自由摂食及び自由摂水した。すべての実験は承認を受けており(承認番号2007/561-1343)、デンマークのthe Animal Experimentation Inspectorate, Ministry of Justiceのガイドラインに従って行われた。
Telemetrized ratにおける摂餌及び心血管系のリアルタイム同時モニタリング
Telemetryセットアップ
Harlan laboratories(Horst, the Netherlands)にて、DSI社(Data Science International、St. Paul、USA)製品のPhysiotel PA-C40送信器を、製造者の記載に従ってラットに移植した。簡潔に言うと、ラットをイソフランで麻酔し、酸素供給して、無菌状態で開腹した。圧カテーテルを分離腹部大動脈に挿入し、Vetbond (3M, St. Paul, USA)で適切な位置をシールした。最後に、送信器を腸の上に長体軸と並行するように設置して腹壁に固定し、腹筋及び皮膚を可溶性の縫合糸で縫合した。動物は、輸送される前に、完全に術後回復させた。血圧(収縮期及び拡張期の動脈血圧)及び心拍数(脈拍数)データは、Dataquest A.R.T (v.4.3)で500Hzにて、Ponemah software (v.5.0) (DSI, St. Paul, USA)で個々の送信器について製造者により提供された較正値を使用して、正確な血圧測定を可能にするためにAmbient Pressure Reference Monitor (DSI, St. Paul, USA)で、収集した。データは連続して48時間収集し、5秒間隔で破棄した。
Telemetrized ratにおけるリアルタイム摂食モニタリング
術後回復の2〜3週間で、ラットを、以下のマイクロチップにより個々の食物摂取を決定し及びtelemetryにより心血管状態を同時に決定することができるよう加工した食物摂取全自動モニタリングケージ(HM-2, MBRose, Faaborg, Denmark)に移した。組み合わせtelemetry分析のために、二つの受容器(RPC-1, Data Sciences International, St. Paul, MN)を、各HM-2食物摂取モニタリングケージの底部に配置し、よってケージ表面領域を全体的にカバーした。加工HM-2食物摂取モニタリングケージは、遮光ドア及び明暗サイクル(Scanbur BK, Karslunde, Denmark)を、部屋(holding roorn)と同じにするよう、キャビネットベースで制御するための光源キットを有する加工酸素供給キャビネット中に配置した。キャビネットの温度が24〜26℃で、相対的湿度は40〜60℃であった。動物は、薬剤治療法の開始前少なくとも5日間、HM-2食物摂取モニタリングシステムに慣らされた。食物摂取全自動モニタリングケージに戻される前に、ラットに、実験の全期間を通じて各動物個体の摂食行動を同時に同定しリアルタイムモードで追跡するための、マイクロチップ(#402575, eVet, Haderslev, Denmark)を皮下移植した。自発運動は、上記ケージ中に配置された統合型赤外線センサーによって測定した。標準HM-2コントロールユニットの設定は、過去にっさらあなる詳細が報告されている7。すべての薬剤及び生理食塩水ビヒクルは、暗期開始の30分前に投与した。個別の各実験において、同じ治療を受けた全てのラットを使用し(並行試験デザイン)、治療から、ベースラインレベルの食物摂取、自発運動、心拍数及び血圧が確実に再構築されるまでの間に、少なくとも5日間のウォッシュアウト期間を用いた。ホームケージを、薬剤投与の間HM-2食物摂取モニタリングシステムから除き、薬剤投与の完了後直ちに戻し、すぐに個々の動物個体の食物摂取行動及び心血管パラメーターの自動モニタリングを再開した。体重及び食物摂取のミクロ分析は、data reporting software(HMView, MBRose, Faaborg, Denmark)を使用して実施した。
統計
データは、標準グラフィック及び統計分析プログラムに供した(GraphPad Prism v.4.03)。体重データは、絶対値(g)又は薬剤投与の初日(第0日目)に対する、毎日の体重の増加(対照レベル=100%)として計算した。体重増加及び食物摂取は、n個体の平均値±S.E.Mで表した。Telemetryデータを得た後、12時間の平均をMicrosoft Excel 2007を使用して計算した。最後に、統計分析及びデータ表示(平均±S.E.M.)をGraphPad Prism v.4.03を使用して実施した。すべてのデータは、反復測定一元配置分散分析法(repeated-measure one-way ANOVA)とTukey多重比較検定(post-hoc test)を適用して評価し、治療群間での統計的な比較を実施した。p値は、0.05未満であり、統計的に有意であると考えられた。
薬剤
テソフェンシン(8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-(3,4-ジクロロフェニル)-2-(エトキシメチル)-8-メチル-[1R-(2-エンド,3-エキソ)]-2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボキシレート)は、アザビシクロオクタンシトレートの誘導体であり、NeuroSearch A/Sの医薬品化学部門にて合成された。
メトプロロール及びテルミサルタンはSigma (St. Louis, MO)から購入した。テソフェンシン及びメトプロロールは、0.9%生理食塩水溶液に溶解し、テルミサルタンは1N NsOHに溶解してその後1N HClでpH7.4まで滴定した。
全ての薬剤は、p.o.(1.0 ml/kg)で投与した。薬剤併用実験においては、テソフェンシン及び抗高血圧剤と同時に(1分未満の間隔で)、個別の薬剤溶液で投与した。
結果
食物摂取及び体重
急性テソフェンシン投与は、telemetrized ratにおいて、ロバストに食物摂取の低下を誘発した(図1A及び1B)。テソフェンシン治療したラットにおいて、食物摂取は用量及び時間依存的に減少し、最も高い経口用量(5.0 mg/kg)で投与後12時間後においては、食物摂取は対照レベルの約50%に低下した(p<0.001)。テソフェンシンの食欲減退効果は、投与後、それぞれ最大12時間(全ての用量)、最大24時間(3.0〜5.0mg/kg)及び最大48時間(5.0mg/kg)持続し、その後すぐ食物摂取がベースラインのレベルにまで回復した(図1B)。テソフェンシンの食欲減退効果は、最高用量(3.0〜5.0mg/kg)における対応する用量依存的な体重減少(負の体重増加)と並行しており、薬剤投与後少なくとも48時間後においては、1.0-1.5%の、明らかに有意な正味の体重低減(ビヒクル処理したラットの体重と比較して、8〜11gに相当する)をもたらした(図1C及び1D)。テソフェンシンはまた、短時間ではあるが、3.0〜5.0 mg/kgの用量範囲において、用量依存的で有意に、自発運動の増大を誘導した。
中間用量(3.0mg/kg)のテソフェンシンを、抗高血圧剤であるメトプロロール(図3)及びテルミサルタン(図5)のそれぞれとの急性薬剤併用試験におけるさらなる特性評価のために選択した。これらの薬剤相互作用研究は、いずれの抗高血圧薬剤も、それ自体は食物摂取及び体重制御において効果を示さなかったこと、及び、テソフェンシン誘導性の食物摂取低下(図3A、3B、5A、5B)及び体重低下(図3C、3D、5C、5D)に影響を与えなかったことを示した。一方、メトプロロール(図3E、p<0.05 テソフェンシン単独と比較)は、テルミサルタン(図5E、p=0.98 テソフェンシン単独と比較)と異なり、テソフェンシンにより誘導された自発運動を完全に予防した。
心血管系パラメータに対する効果
予想通り、血圧及び心拍数のtelemetricモニタリングにおいては、明らかな日内変動が見られ(図2)、活動期(夜間)の間に、より高い血圧及び心拍数が観察された。
テソフェンシンの急性治療により、試験したすべての用量において、用量依存的に、最大で治療後48時間にわたって心拍数が増大した(図2A)。同様に、収縮期血圧において、薬剤投与後48時間まで、用量依存的(3.0 mg/kg及び5.0 mg/kg)に穏やかな増大が観察された(図2C)。従って、テソフェンシン3.0mg/kgの心拍数及び収縮期血圧に対する効果は、テソフェンシン3.0mg/kgの食欲減退効果より長く続く。拡張期血圧の用量依存的増大傾向も観察されたが、最も高用量においても、統計的に有意な差は得られなかった(p=0.20、図2B)。
二剤併用薬剤研究は、抗高血圧治療がテソフェンシンによる二次的高血圧及び心拍数の増大を予防又は低減させることが出来るか否かを調査するために実施した。テソフェンシン(3.0 mg/kg)及びβ1アドレナリン受容体アンタゴニストであるメトプロロール(10 mg/kg及び20 mg/kg)による併用治療は、テソフェンシン誘導性の頻脈を完全に回復させた(図4A)。しかしながら、メトプロロールの心拍数減少効果は、投与後24時間の間に観察されるのみであるが、メトプロロールとテソフェンシンの併用群においては、心拍数は対照レベルにまで正常化された(図4A)。メトプロロールの短期持続効果は、ラットにおける薬物動態特性を反映している。収縮期血圧の正常化もまた、メトプロロール(20 mg/kg)との同時治療の後に最大24時間観察された。同様に、最初の明期(治療後12〜24時間)におけるテソフェンシン惹起性の拡張期血圧の増大は、メトプロロール(20 mg/kg)との同時治療により回復した(図4B)。単独投与の場合、メトプロロール(20 mg/kg)は最初の24時間における拡張期血圧に何ら有意な影響を及ぼさなかった(図4)。
薬剤事後併用研究において、テソフェンシン及びAT-1受容体アンタゴニストテルミサルタンを調査した。メトプロロールの研究において、同様の用量のテソフェンシン(3.0 mg/kg)が心拍数を有意に増大させることを発見した。テルミサルタン(1.0 mg/kg及び3.0 mg/kg)との併用治療は、テソフェンシン投与後の心拍数の増大を回復せず、最高用量のテルミサルタンとテソフェンシンでは、テソフェンシン単独で投与した場合と比較して、心拍数の有意な増大が観察された(図6A)。テルミサルタンとの併用治療においては、テソフェンシンによりもたらされる拡張期血圧及び収縮期血圧の増大が減弱することが観察されたが、テソフェンシン誘導性の高血圧の有意な予防にはつながらなかった(p>0.05、テソフェン新単独と比較した場合 図6B及び 6C)。テルミサルタン単独(3.0 mg/kg)では心拍数および血圧に影響しなかった(図6)。
考察
体重減少はしばしば、体重の再増加の重要な予兆として同定されている、空腹及び食欲感覚の認識の増大を伴い、従って、食欲機能の抑制は、体重減少を維持するために非常に重要であると考えられている。
最近の臨床及び前臨床報告では、テソフェンシンが強力な食欲抑制因子として、満腹感及び充足感を誘発することにより作用することが示され、このことは、テソフェンシンのロバストな抗肥満効果の根底にある重要なメカニズムであると考えられている。よって、telemetrized ratにおけるテソフェンシン誘導性の無食欲という本発明によるデータは、この見解をより一層支持している。テソフェンシン用量依存的に誘発される急速な食欲減退応答は、投与された用量に応じて最大12〜48時間持続する。テソフェンシンの生物学的活性のある一次代謝産物M1(triple MRIともいう)が、げっ歯類において定常状態での有意に高い濃度及びより長い半減期T1/2を示すため、テソフェンシンの食欲低減効果の長期持続は、代謝産物M1(triple MRIともいう)が、ラットにおける食欲減退及び体重減少効果に寄与していることを示唆している。
一方で、ヒトにおける定常状態でのM1の血漿濃度は、テソフェンシンのそれと比較して約60%低く、このことは、活性全体へのM1の寄与は、ヒトにおいてはより低い可能性があることを意味する。さらに、エネルギー代謝の増大は、テソフェンシンにより誘導されるロバストな体重減少に寄与する可能性がある。従って、近年の呼吸熱量研究は、体重過多及び中程度の肥満男性における短時間のテソフェンシン治療の後、脂肪酸化及び夜間の熱産生が中程度上昇することを示した。また、DIOラットが、長期のテソフェンシン治療レジメンの間、長期間の持続的な体重低減を示す一方で、食欲減退は、テソフェンシンの食欲低減効果に対する耐容性の段階的成立に続くまでの最初の週の治療の間、最も明らかであった。従って、このことは間接的に臨床知見に合致する。
本発明の研究においては、テソフェンシン用量依存的な自発運動が最初の暗期の12時間で増大した。従って、自発運動の増大はtelemetrized ratにおける体重減少に寄与した可能性がある(例えば、食物探索行動又はエネルギー消費に変化をもたらすことによる)と仮定し得る。しかしながら、テソフェンシンの食欲減退効果は、テソフェンシンが自発運動を誘導する能力(最大12時間)と比較して、より強力かつ長時間(最大で48時間)持続した。この点において、食物摂取及び自発運動における異なる時間薬理が、テソフェンシンの薬物動態に関与しているようである。
テソフェンシンと比較して、M1代謝産物はより長いT1/2(上記を参照のこと)を有し、ドーパミン再取り込みトランスポーター阻害のin vivoでの有効性が4〜5倍低く、このことは、前記代謝産物がテソフェンシン誘導性の自発運動に有意に寄与しないことの根拠となる。また、メトプロロールが、食欲減退及び体重減少に対するテソフェンシンの効果に影響することなく、完全にテソフェンシンの自発運動刺激効果を予防したという事実は、自発運動の中程度の増大が、エネルギー代謝を促進しなかったことを示している。これらのデータより、我々は、自発運動効果が、テソフェンシンの食欲抑制及び体重減少効果に何ら影響しなかったと推測している。さらに、様々なβ1メトプロロールがラット線条体のドーパミン放出を阻害すると報告されているように、メトプロロールが、線条体ドーパミン神経伝達における間接的な作用によるテソフェンシン誘導性自発運動を拮抗阻害することを推測し得る。
覚醒ラット及び自由運動ラットにおけるテソフェンシンの心血管作用の前臨床の知見は、臨床知見と合致し、拡張期及び収縮期の血圧の上昇に要するよりも低いレベルの用量で、心拍数における有意な用量依存的上昇を示す。とりわけ、心血管作用は、テソフェンシン急性投与後の食欲減退効果より長く続いた。テソフェンシン及びM1代謝産物は、in vitroでのノルアドレナリン再取り込みを等しく阻害することが示されたことから、M1代謝産物はテソフェンシンの心血管作用に寄与しているようである。
β1アドレナリン受容体のメトプロロール共投与による遮断は、テソフェンシンの心血管作用を完全に予防したため、このことは、ノルアドレナリン再取り込み阻害因子であるテソフェンシンは、テソフェンシンの有害な心血管作用における圧倒的に重要な基準であることを示している。
テソフェンシンが肥満ラットにおける血圧及び心拍数に対し、それぞれに影響するかどうかについては、現在の報告では取り上げられておらず、更なる研究が待たれる。また、現在の見解は、テソフェンシンの急性作用に限定されており、長期のテソフェンシン治療後のtelemetrized ratにおける心血管パラメータの変化が、臨床結果によく似ている可能性があることを除外していないことにも留意すべきである。また、臨床及び前臨床報告とよく合致し、テソフェンシンは、telemetrized ratにおいて、体重の低下に対応する、強力な食欲減退応答をもたらした。餌を与えた正常体重のマウスを使用した際の、本発明の研究において観察されたテソフェンシン誘導性の食欲減退及び体重減少の効果及び時間的パターンは、DIOラットにおける類似の知見と合致しており、このことは、テソフェンシンの急性抗肥満効果は非肥満のtelemetrized ratにおいても研究され得ることを示している。
総じて、本発明の研究において使用される実験用のin vivo設定は、心血管パラメータ及び食物摂取パラメータを、リアルタイムモードで同時にモニタニングすることが可能であり、臨床的に意義のある抗肥満及び抗肥満薬剤の、生体信号効果を同時に調べるための合理的で妥当な方法論を表している。
興味深いことに、本発明の結果は、テソフェンシン+β1阻害剤併用療法の薬理プロファイルは、シブトラミン(セロトニン及びノルアドレナリンの二重再取り込み阻害因子)と比較して、異なることを示している。シブトラミンは、かなり低い体重減少及び肥満患者における心拍数及び血圧の有意な上昇を示しており、このことは、シブトラミンの臨床使用における主要な懸念となっている。
肥満で高血圧の患者における臨床研究では、Ca2+チャネルアンタゴニスト+ACE阻害剤又はメトプロロール+ヒドトクロロチアジド治療と併用するシブトラミン治療が、それぞれ、有意にシブトラミンの抗肥満効果を減弱させたことが示された。後者の併用が、最もシブトラミンの体重減少効果に対して負の影響を及ぼしており、このことは、β阻害剤それ自体は、体重増加を誘導するという一般的な見解により説明し得る。
一方、メトプロロール療法は、正常血圧の肥満患者におけるシブトラミンの抗肥満効果および代謝作用を有意に阻害しなかった。現在のところ、β1阻害剤治療との併用が、肥満対象において、シブトラミンの有害な心血管作用を低下させることができるか否かについては、未解明である。シブトラミンの食欲低減効果は、シブトラミン誘導性食欲減退が、プラゾシン及びメトプロロールによりそれぞれ拮抗阻害されることから、α1-アドレナリン受容体及びβ1-アドレナリン受容体機能と密接に関連していると考えられていることに留意すべきである。
これらの研究による知見は、ノルアドレナリン活性を有する抗肥満薬剤は、交感神経系心血管作用を改善するためにβ阻害剤と組み合せた際、より低い抗肥満効果を有する可能性があるということである。しかしながら、メトプロロールのとの併用治療はテソフェンシンの抗肥満効果に影響しなかったことから、本発明における研究は、このことがテソフェンシンの場合に当てはまらない可能性があることを示している。よって、この見解は、テソフェンシンの二つの区別できる重要な作用メカニズム、すなわちβ1アドレナリン受容体刺激と関連する抗肥満効果と、β1アドレナリン受容体機能の増大と関係する心血管作用とは、薬理学的に明らかに別のものであることを示している。テソフェンシンのβ1アドレナリン受容体に対する効果は、二次的に視床下部のシナプスのノルアドレナリン再取り込みを遮断し、視床下部内の食欲シグナル経路の阻害をもたらし、満腹応答を惹起するものであることが示唆されている。
一方、最も想定されるのは、テソフェンシンの心血管作用は末梢のノルアドレナリントーヌスの増大を介することである。シブトラミンついてもまた、テソフェンシンの食欲低減効果は、β1アドレナリン受容体及びドーパミンD1受容体機能の両方を刺激することが必要であり、その結果DIOラットにおいて完全な食欲抑制活性が得られ、よって、テソフェンシン治療がドーパミン作動性神経伝達の動員をもたらす可能性があることを間接的に指摘している。このことは、肥満ヒト対象が中枢ドーパミン活性障害の指標を有するときに、低下した快楽感を埋め合わせるために過食行動に駆り立てられるという見方と関連性がある。
健康なヒトのボランティアにおいて、テソフェンシンは神経ドーパミン再取り込みトランスポーター(dopamine uptake transporter:DAT)を、肥満個体に体重減少を引き起こす濃度において、阻害した。この発見は、テソフェンシンのドーパミン促進効果は、体重減少効果を調節することと関係することを示している。
我々は、テソフェンシンとメトプロロールとの併用治療は、ラットにおいて、テソフェンシンの抗肥満効果を保持するとともに、心拍数及び血圧の上昇を予防することを結論として示す。これらの発見は、テソフェンシンによる抗高血圧治療との併用が、肥満患者において有効である可能性に繋がる。

Claims (13)

  1. 治療的有効量のテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩及びメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩を含む、ヒトを含む生きている動物体における肥満又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム、過食症、食欲制御障害、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症及び薬剤誘導性肥満から成る群から選択される肥満関連疾患の治療、予防又は緩和のための医薬。
  2. さらに、テソフェンシンによる心血管系副作用を治療、予防もしくは緩和するための、請求項1に記載の医薬。
  3. 前記肥満関連疾患が2型糖尿病である、請求項1に記載の医薬。
  4. 前記肥満関連疾患がメタボリックシンドロームである、請求項1に記載の医薬。
  5. 前記テソフェンシンが一日あたり0.1〜1mgの医薬品有効成分(API)の範囲の用量である、請求項1に記載の医薬。
  6. 前記メトプロロールが一日あたり25〜200mgの医薬品有効成分(API)の範囲の用量である、請求項1に記載の医薬。
  7. 前記生きている動物体が、30 kg/m2超の体格指数(BMI)を有する対象である、請求項1に記載の医薬。
  8. 前記生きている動物体が、25〜30 kg/m2の間の体格指数(BMI)を有する対象である、請求項1に記載の医薬。
  9. 前記生きている動物体が、35 kg/m2超の体格指数(BMI)を有する対象である、請求項1に記載の医薬。
  10. 前記生きている動物体がヒトである、請求項1に記載の医薬。
  11. つ以上のアジュバント、賦形剤、担体及び/又は希釈剤をさらにむ、請求項1に記載の医薬。
  12. 少なくとも二つの分離した単位投与形態(A)及び(B)を含む、ヒトを含む哺乳動物における肥満又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム、過食症、食欲制御障害、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症及び薬剤誘導性肥満から成る群から選択される肥満関連疾患の治療、予防又は緩和のためのパーツキットであって、
    前記(A)はテソフェンシン又は薬学的に許容可能なその塩を含み、
    前記(B)はメトプロロール又は薬学的に許容可能なその塩を含み、
    (A)のテソフェンシン及び(B)のメトプロロールは、それを必要とする患者に同時、連続的又は個別に投与される、パーツキット。
  13. さらに、ヒトを含む哺乳動物におけるテソフェンシンによる心血管系副作用の治療、予防若しくは緩和のための、請求項12に記載のパーツキット。
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