JP6200410B2 - 補修溶接方法及び補修溶接用プラグ、並びに原子炉容器 - Google Patents

補修溶接方法及び補修溶接用プラグ、並びに原子炉容器 Download PDF

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Description

本開示は、構造物の欠陥部位を補修するための補修溶接方法及び補修溶接用プラグ、並びに原子炉容器に関する。
一般に、構造物に欠陥が生じた場合に、欠陥部位を除去した後、欠陥除去により発生したキャビティを埋め戻すための補修溶接が行われる。補修溶接方法の一つとして、欠陥部位に形成されたキャビティにプラグを嵌め込み、プラグをキャビティに仮付け溶接した後、プラグを含む溶接部位に溶接ワイヤを供給しながらレーザ溶接することによって、キャビティを封止溶接する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、原子炉容器に発生した欠陥を補修溶接する方法が記載されている。この方法では、原子炉容器の開先溶接部を除去してプラグ装着部を加工し、このプラグ装着部にプラグを装着して押付荷重を付与した状態でプラグを溶接して固定するようになっている。
特開2014−130109号公報
ところで、特許文献1に記載されるプラグを用いた補修溶接方法においては、キャビティとプラグとの間の隙間の影響により溶接の健全性が損なわれる可能性がある。すなわち、通常、プラグの寸法はキャビティの寸法よりも小さく形成されているため、キャビティにプラグを装着した状態においてキャビティとプラグとの間に隙間が存在する。そのため、この隙間の影響により、溶接時にキャビティとプラグとの境界で溶接ビードが途切れてしまう可能性がある。例えば、溶接の熱影響を抑制する目的から、補修溶接において溶接入熱量を抑えたレーザ溶接を用いることがある。この場合、溶接ビードが小さくなるためビームがキャビティとプラグとの隙間を通過してしまい、この部位で溶接ビードが途切れてしまい溶接施工が困難であった。特に、キャビティにプラグを仮付け溶接する場合には、通常は溶接ワイヤを供給しないため、封止溶接に比べて隙間の影響を受けやすく、更に施工が困難となる。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、キャビティとプラグとの間の隙間の影響による溶接施工の困難性を改善し得る補修溶接方法及び補修溶接用プラグ、並びに原子炉容器を提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る補修溶接方法は、
母材に形成された凹部の底面にプラグの底面が当接し、且つ、前記凹部の側壁と前記プラグの外周壁との間に隙間が形成されるように、前記凹部に前記プラグを嵌め込むプラグ設置ステップと、
前記凹部に嵌め込まれた前記プラグと前記母材とをレーザ溶接により接合する溶接ステップと、を備える補修溶接方法であって、
前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態において、前記プラグの外周縁が前記凹部の外側に位置することを特徴とする。
上記(1)の方法によれば、母材に形成された凹部にプラグが嵌め込まれた状態において、プラグの外周縁が凹部の外側に位置するので、プラグと凹部との隙間がプラグの外周縁で覆われた状態となる。そのため、プラグと母材とをレーザ溶接により接合する際に、凹部とプラグとの隙間をビームが通り抜けてしまうことに起因した溶接ビードの途切れの発生を防止できる。こうして、凹部とプラグとの間の隙間の影響を受けず、健全な補修溶接を行うことが可能となる。
なお、上記(1)の方法において、母材の凹部底面にプラグの底面が当接するようにしているのは、補修溶接後に、プラグに対して圧力が加わったときに、プラグから母材に荷重を適切に伝えるためである。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記凹部の前記側壁は、前記凹部の深さとともに前記凹部の中央に近づくように前記母材の表面の法線に対して傾斜しており、
前記プラグの前記外周壁は、前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態において前記凹部の前記側壁に沿って前記法線に対して傾斜しており、
前記プラグの厚さは、前記凹部の深さよりも大きい。
上記(2)の方法においては、凹部の側壁が上記したような傾斜を有しており、且つプラグの外周壁も凹部の側壁に沿って傾斜しているため、凹部の深さよりもプラグが厚く形成されることにより、プラグの外周縁が凹部の外側に突出し、凹部とプラグとの隙間がプラグの外周縁によって覆われる。この方法によれば、プラグにフランジ等を設けなくても、プラグの外周縁が凹部の外側に位置する状態をプラグの厚さ管理によって実現できる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、
前記プラグは、前記プラグが前記凹部に嵌め込まれたときに前記凹部の周囲の前記母材を覆うフランジを含み、
前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態で、前記フランジの前記母材に対向する面と、前記母材との間には隙間が形成される。
上記(3)の方法においては、凹部の周囲の母材を覆うフランジをプラグに設けたので、プラグの外周縁(フランジ)が凹部の外側に突出し、凹部とプラグとの隙間がプラグの外周縁(フランジ)によって覆われる。この方法によれば、プラグの外周縁が凹部の外側に位置する状態をプラグのフランジの突出量管理によって実現できる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの方法において、
前記溶接ステップでは、前記母材の表面の法線方向に沿った断面内における前記隙間の延在方向に対してレーザ照射方向を傾斜させて前記レーザ溶接の少なくとも一部を行う。
上記(4)の方法によれば、凹部とプラグとの隙間の延在方向に対してレーザ照射方向が傾斜しているので、凹部とプラグとの境界部分へのレーザ照射時において、ビームが凹部とプラグとの隙間を通り抜けることなく、プラグの外周縁又は凹部の側壁にビームを照射することができる。よって、健全な補修溶接を容易に実施することができる。
(5)一実施形態では、上記(4)の方法において、
前記凹部の前記側壁は、前記凹部の深さとともに前記凹部の中央に近づくように前記母材の表面の法線に対して傾斜しており、
前記プラグの前記外周壁は、前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態において前記凹部の前記側壁に沿って前記法線に対して傾斜しており、
前記溶接ステップでは、前記凹部の前記側壁および前記プラグの前記外周壁の前記法線に対する傾斜方向とは反対側に前記レーザ照射方向を前記法線に対して傾斜させて前記レーザ溶接の少なくとも一部を行う。
上記(5)の方法によれば、凹部とプラグとの境界部分へのレーザ照射時において、母材表面の法線に対して僅かにレーザ照射方向を傾斜させるだけで、前記隙間の延在方向に対してレーザ照射方向がなす適切な角度を確保できる。これにより、ビームが凹部とプラグとの隙間を通り抜けることなく、健全な補修溶接を容易に実施することができる。
(6)一実施形態では、上記(5)の方法において、
前記溶接ステップでは、
レーザ進行方向にレーザヘッドを繰り返し移動させて前記レーザ進行方向に沿った複数本の溶接ビードを形成するとともに、
前記レーザ進行方向に直交する方向における前記レーザ照射方向の前記法線に対する傾斜角を、前記凹部の中心を通り、且つ、前記レーザ進行方向に平行な中央線を挟んで両側に位置する前記凹部の第1領域と第2領域との間で異ならせる。
凹部とプラグとの隙間の延在方向は一定ではなく、凹部の周方向における位置に応じて変化する。このため、凹部の中心を通り、レーザ進行方向に平行な中央線を挟んで両側に位置する凹部の第1領域と第2領域とでは、凹部とプラグとの隙間の延在方向は逆向きとなる。
この点、上記(6)の方法によれば、凹部の第1領域と第2領域との間で、母材表面の法線に対するレーザ照射方向の傾斜角に差を持たせたので、前記隙間の延在方向が逆向きである第1領域と第2領域とについて、それぞれ、前記隙間の延在方向に対してレーザ照射方向がなす適切な角度を確保できる。これにより、ビームが凹部とプラグとの隙間を通り抜けることなく、健全な補修溶接を容易に実施することができる。
(7)一実施形態では、上記(6)の方法において、
前記凹部は、上面視において、前記凹部の前記中心を通る第1軸と、前記中心を通り且つ前記第1軸に直交して前記第1軸よりも長い第2軸を有し、
前記溶接ステップでは、前記第2軸に平行な前記レーザ進行方向に沿って前記溶接ビードを形成する。
上記(7)の方法によれば、凹部とプラグとの境界部分の溶接時の大部分において、前記隙間の延在方向に対するレーザ照射方向の大きな傾斜角を得ることができる。よって、ビームが凹部とプラグとの隙間を通り抜けることに起因した溶接ビードの途切れをより一層効果的に防止でき、健全な補修溶接を容易に実施することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの方法において、
前記溶接ステップでは、
前記プラグの前記外周縁のうち複数箇所を前記母材に対して溶接する仮付け溶接を行った後、
前記プラグの全周に亘って、前記母材に対して封止溶接を行う。
上記(8)の方法によれば、溶接ワイヤを用いずに仮付け溶接する場合であっても、上述したように凹部とプラグとの隙間をビームが通り抜けてしまうことを回避できることから、仮付け溶接によるプラグの安定した固定が可能となる。
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの方法において、
欠陥を含む前記母材の一部分を除去して前記凹部を形成する凹部形成ステップと、をさらに備える。
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの方法において、
前記母材は、母材本体と、前記母材本体を覆うクラッド層と、を含み、
前記母材本体は低合金鋼により構成され、
前記クラッド層はオーステナイト系ステンレス鋼によって構成される。
上記(10)の方法によれば、低合金鋼により構成される母材本体がオーステナイト系ステンレス鋼により構成されるクラッド層によって覆われているため、母材の耐食性を向上できる。
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの方法において、
前記母材が、原子炉容器の壁材である。
一般的に、原子炉容器の壁材は低合金鋼から構成されることが多く、低合金鋼からなる母材が中性子の照射を受けると、母材中にヘリウムが発生する可能性がある。ヘリウムを含む母材に溶接を行うと、ヘリウムが溶接熱影響部の結晶粒界に集積して溶接割れが発生することがある。この溶接割れを抑制するためには、溶接入熱量を低減することが求められる。溶接入熱量を抑えたレーザ溶接はビードが小さいため凹部とプラグとの隙間の影響を受けやすいが、上述の実施形態を適用することにより凹部とプラグとの隙間に関わらず健全な補修溶接が可能であるため、原子炉容器の壁材に対して溶接入熱量を抑えたレーザ溶接を用いた補修溶接を適切に実施することができる。
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る補修溶接用プラグは、
母材の補修溶接用のプラグであって、
前記母材に形成された凹部に嵌め込まれたときに、
前記凹部の底面に前記プラグの底面が当接し、
前記凹部の側壁と前記プラグの外周壁との間に隙間が形成され、
前記プラグの外周縁が前記凹部の外側に位置する
ことを特徴とする。
上記(12)の補修溶接用プラグは、母材に形成された凹部に嵌め込まれたときに、プラグの外周縁が凹部の外側に位置するので、プラグと凹部との隙間がプラグの外周縁で覆われた状態となる。そのため、プラグと母材とをレーザ溶接により接合する際に、凹部とプラグとの隙間をビームが通り抜けてしまうことに起因した溶接ビードの途切れの発生を防止できる。こうして、凹部とプラグとの間の隙間の影響を受けず、健全な補修溶接を行うことが可能となる。
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記凹部の前記側壁は、前記凹部の深さとともに前記凹部の中央に近づくように前記母材の表面の法線に対して傾斜しており、
前記プラグの前記外周壁は、前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態において前記凹部の前記側壁に沿って前記法線に対して傾斜しており、
前記プラグの厚さは、前記凹部の深さよりも大きい。
上記(13)の構成においては、凹部の側壁が上記したような傾斜を有しており、且つプラグの外周壁も凹部の側壁に沿って傾斜しているため、凹部の深さよりもプラグが厚く形成されることにより、プラグの外周縁が凹部の外側に突出し、凹部とプラグとの隙間がプラグの外周縁によって覆われる。この構成によれば、プラグにフランジ等を設けなくても、プラグの外周縁が凹部の外側に位置する状態をプラグの厚さ管理によって実現できる。
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉容器は、
燃料集合体を収容する原子炉容器であって、
前記原子炉容器の壁材は、
凹部が形成された母材と、
前記母材の前記凹部に嵌め込まれた状態で前記母材に対して接合された上記(12)又は(13)の補修溶接用プラグと、
を含むことを特徴とする。
上記(14)の原子炉容器によれば、原子炉容器の壁材の補修時に、上述の理由により健全な補修溶接が可能である。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、母材と、該母材の凹部に嵌め込まれたプラグとをレーザ溶接により接合する際に、凹部とプラグとの隙間をビームが通り抜けてしまうことに起因した溶接ビードの途切れの発生を防止できる。そのため、凹部とプラグとの間の隙間の影響を受けず、健全な補修溶接を行うことが可能となる。
幾つかの実施形態に係る原子力発電プラントを示す概略構成図である。 幾つかの実施形態に係る補修溶接方法のフローチャートである。 一実施形態における凹部を示す図であって、(a)は凹部を上面視した図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。 一実施形態における溶接前の凹部及びプラグを上面視した図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。 他の実施形態における溶接前の凹部及びプラグを上面視した図であり、(b)は(a)のC−C線断面図である。 一実施形態における仮付け溶接を示す図であって、(a)は凹部及びプラグを上面視した図であり、(b)は(a)のD−D線断面図であり、(c)は(b)のE部拡大図である。 一実施形態における封止溶接を示す図であって、(a)は凹部及びプラグを上面視した図であり、(b)は(a)のF−F線断面図である。 一実施形態における補修溶接の手順を示す図であって、(a)は凹部及びプラグを上面視した図であり、(b)は(a)のG−G線断面図であり、(c)は第1領域の溶接時における(a)のH−H線断面図であり、(d)は第2領域の溶接時における(a)のH−H線断面図である。 他の実施形態における補修溶接の手順を示す図であって、(a)は凹部及びプラグを上面視した図であり、(b)は(a)のI−I線断面図であり、(c)は第1領域の溶接時における(a)のJ−J線断面図であり、(d)は第2領域の溶接時における(a)のJ−J線断面図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
最初に、図1を参照して、本実施形態に係る補修溶接方法が適用される対象構造物の一例として、原子炉容器11について、その周辺構造とともに説明する。なお、図1は、幾つかの実施形態に係る原子力発電プラント1を示す概略構成図である。
図1に示すように、幾つかの実施形態に係る原子力発電プラント1は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を含む。加圧水型原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器13に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気を蒸気タービン21へ送って発電機24で発電する構成となっている。但し、本実施形態に係る原子炉のタイプは、加圧水型原子炉に限定されるものではない。
原子力発電プラント1は、高温高圧の熱水(1次冷却水)を生成するための原子炉系10と、前記熱水により生成された蒸気(2次冷却水)を利用して発電するためのタービン系20と、1次冷却水と2次冷却水との熱交換を行う蒸気発生器13と、を備える。
具体的には、原子炉系10は、原子炉容器11と、加圧器12と、1次冷却水ポンプ14と、を含んでいる。原子炉系10の各機器及び蒸気発生器13の間はそれぞれ配管で接続されており、1次冷却水が循環するようになっている。これらの原子炉容器11、加圧器12及び1次冷却水ポンプ14と、さらに蒸気発生器13とは、原子炉格納容器15に格納される。
原子炉容器11は、炉心及び燃料集合体を収容している。原子炉容器11で加熱され、加圧器12で加圧された高温高圧の1次冷却水(熱水)は、蒸気発生器13に供給される。蒸気発生器13で熱交換された低温の1次冷却水は、1次冷却水ポンプ14を介して原子炉容器11に戻される。
タービン系20は、高圧タービン22及び低圧タービン23を含む蒸気タービン21と、蒸気タービン21により駆動されて発電を行うように構成された発電機24と、湿分分離加熱器25と、蒸気タービン21で仕事をした蒸気を冷却して液化する復水器26と、
復水ポンプ27と、低圧給水加熱器28と、脱気器29と、給水ポンプ30と、高圧給水加熱器31と、を含んでいる。タービン系20の各機器及び蒸気発生器13の間はそれぞれ配管で接続されており、2次冷却水が循環するようになっている。
蒸気タービン21は、蒸気発生器13から供給された蒸気により駆動するように構成されている。
復水器26は、例えば海水を使って蒸気を冷却して水に戻すように構成されている。
給水ポンプ30は、復水器26からの2次冷却水が蒸気発生器13に供給されるように作動する構成となっている。
次に、原子炉容器11を補修するための補修溶接方法について説明する。但し、以下の説明では、原子炉容器11の補修溶接について例示しているが、補修溶接対象はこれに限定されるものではない。
例えば、原子炉容器11の内面の非破壊検査によって欠陥が検出された場合、通常、欠陥を除去することによって形成された母材の凹部を埋め戻すための補修溶接(以下、埋め戻し補修溶接と称する)を行う。しかし、埋め戻し補修溶接は時間を要することから、応急的な工法として、欠陥除去により母材に形成された凹部に補修溶接用プラグ(以下、プラグと称する)を嵌め込んで該プラグを溶接する封止溶接を実施することがある。以下の実施形態は、主としてこの封止溶接を行うものである。なお、欠陥は、原子炉容器11の少なくとも一部に生じた割れ(き裂)であってもよい。
以下、図2に示すフローチャートに沿って本実施形態に係る補修溶接方法について詳細に説明する。この説明においては、図3乃至図9に示す各部位の符号を適宜用いている。なお、図2は、幾つかの実施形態に係る補修溶接方法のフローチャートである。
幾つかの実施形態に係る補修溶接方法は、まず、ステップS1(凹部形成ステップ)において、欠陥を含む母材40の一部分を除去して、母材40に凹部45を形成する。なお、図3乃至図9では、母材40の耐久性向上を目的として、母材40が、低合金鋼により構成される母材本体42と、該母材本体42を覆うように設けられ、オーステナイト系ステンレス鋼によって構成されるクラッド層41と、を含む場合を例示している。但し、母材40の構成はこれに限定されるものではなく、例えば母材本体42が炭素鋼で構成されてもよいし、クラッド層41を有しない構成であってもよい。
凹部45は、底面46及び側壁47を有する。
図3は、一実施形態における凹部45を示す図であって、(a)は凹部45を上面視した図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。同図に示す例では、凹部45は上面視において略楕円形状であり、凹部45の中心Cを通る第1軸48と、中心Cを通り且つ第1軸48に直交して該第1軸48よりも長い第2軸49と、を有している。なお、中心Cは、例えば、凹部45の上面視において、最も短い径(第1軸48)と最も長い径(第2軸49)との交点であってもよい。また、凹部45の側壁47は、凹部45の深さとともに凹部45の中央に近づくように、母材40の表面の法線Nに対して0°以上の角度αを有して傾斜している。すなわち、凹部45の底面46の径よりも、凹部45の開口付近(母材40の表面付近)の径の方が大きくなるように、側壁47はテーパ状に傾斜している。また、凹部45の底面46又は側壁47は湾曲した形状であってもよい。なお、凹部45の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、上面視において略正円形状であってもよいし、略楕円形状であってもよいし、略方形形状であってもよい。あるいは、図9に示すように、凹部45の側壁47の延在方向が、母材40の表面の法線Nと概ね一致しており、底面46に対して側壁47が略垂直に形成されていてもよい。
次いで、ステップS2(プラグ設置ステップの一部)において、凹部45に対応したプラグ50を形成する。
図4は、一実施形態における溶接前の凹部45及びプラグ50を上面視した図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。同図に示す例では、プラグ50は、底面51、外周壁52及び外周縁53を有しており、凹部45に対応した形状に形成される。すなわち、上面視において略楕円形状であり、且つ、プラグ50の外周壁52は、プラグ50の厚さ方向において底面51側に向かうにつれてプラグ50の中央に近づくように、母材40の表面の法線Nに対して0°以上の角度αを有して傾斜している。また、プラグ50は、凹部45の底面46にプラグ50の底面46を当接させた状態で、凹部45の側壁47とプラグ50の外周壁52との間に隙間60が形成されるような形状となっている。
図5は、他の実施形態における溶接前の凹部45及びプラグ50を上面視した図であり、(b)は(a)のC−C線断面図である。同図に示す例では、プラグ50は、プラグ50が凹部45に嵌め込まれたときに凹部45の周囲の母材40を覆うフランジ54を含む。
なお、プラグ50は、原則として凹部45に対応した形状を有しているため、図9に示すように、プラグ50の外周壁52の延在方向が、母材40の表面の法線Nと概ね一致しており、底面51に対して外周壁52が略垂直に形成された構成であってもよい。
続いて、ステップS3(プラグ設置ステップの他の一部)において、図4(a)及び(b)、並びに図5に示すように、凹部45にプラグ50を嵌め込む。上述したように、プラグ50は、凹部45に嵌め込まれた状態で、凹部45の底面46にプラグ50の底面51が当接し、且つ、凹部45の側壁47とプラグ50の外周壁52との間に隙間60が形成される。
例えば、凹部45の側壁47とプラグ50の外周壁52との間に隙間60が形成されない場合、プラグ50を凹部45に挿入する際に、凹部45の底面46にプラグ50の底面51が当接する前にプラグ50が凹部45の側壁47に挟まれた状態で止まってしまう可能性がある。この場合、凹部45の底面46とプラグ50の底面51との間に空間が残存した状態で溶接されるので、補修溶接後にプラグ50に対して圧力が加わったときに、プラグ50の底面51側の空間によってプラグ50から母材40に荷重が適切に伝達されない。例えば、補修溶接対象が図1に示す原子炉容器11であり、容器内空間にプラグ50が面するように補修溶接が実施された場合、原子炉容器11の内圧が高くなるとプラグ50の底面51側の空間の存在により、母材40表面からプラグが凹んでしまうおそれがある。
そのため、上記したように、ステップS3では、母材40に形成された凹部45の底面46にプラグ50の底面51が当接し、且つ、凹部45の側壁47とプラグ50の外周壁52との間に隙間60が形成されるように、凹部45にプラグ50を嵌め込む。これにより、補修溶接後において、プラグ50に対して圧力が加わったときに、プラグ50から母材40に荷重を適切に伝えることができる。
また、図4(a)及び(b)、並びに図5に示すように、プラグ50が凹部45に嵌め込まれた状態において、プラグ50の外周縁53は凹部45の外側に位置する。図4(a)及び(b)に示す例では、プラグ50の外周壁52は、母材40の法線Nに対して傾斜しているので、凹部45の深さよりもプラグ50が厚く形成されていることにより、プラグ50の外周縁53が凹部45の外側に突出する。そのため、上面視において、凹部45とプラグ50との隙間60がプラグ50の外周縁53によって覆われることとなる。これにより、プラグ50にフランジ等を設けなくても、プラグ50の外周縁53が凹部45の外側に位置する状態をプラグ50の厚さ管理によって実現できる。
一方、図5(a)及び(b)に示す例では、プラグ50が凹部45に嵌め込まれた状態で、フランジ54の母材40に対向する面54aと、母材40との間には隙間dが形成される。このように、凹部45の周囲の母材40を覆うフランジ54をプラグ50に設けることによって、プラグ50の外周縁53(フランジ54)が凹部45の外側に突出し、凹部45とプラグ50との隙間60がプラグ50の外周縁53(フランジ54)によって覆われる。これにより、プラグ50の外周縁53が凹部45の外側に位置する状態をプラグ50のフランジ54の突出量管理によって実現できる。
次に、ステップS4及びステップS5(溶接ステップ)において、母材40の凹部45に嵌め込まれたプラグ50と、母材40とをレーザ溶接により接合する。
具体的には、ステップS4において、プラグ50の外周縁53のうち複数箇所を母材40に対して溶接する仮付け溶接を行った後、ステップS5において、プラグ50の全周に亘って、母材40に対して封止溶接を行う。
ステップS4では、母材40とプラグ50との仮付け溶接を行う。
図6は、一実施形態における仮付け溶接を示す図であって、(a)は凹部45及びプラグ50を上面視した図であり、(b)は(a)のD−D線断面図であり、(c)は(b)のE部拡大図である。同図に示すように、母材40に形成された凹部45にプラグ50が嵌め込まれた状態において、プラグ50の外周縁53が凹部45の外側に位置するので、プラグ50と凹部45との隙間60がプラグ50の外周縁53で覆われた状態となる。そのため、プラグ50と母材40とを仮付け溶接する際に、凹部45とプラグ50との隙間60をビームが通り抜けてしまうことを防止できる。特に、溶接ワイヤを用いずに仮付け溶接する場合であっても、上述したように凹部45とプラグ50との隙間60をビームが通り抜けてしまうことを回避できることから、仮付け溶接によるプラグ50の安定した固定が可能となる。
ステップS5では、母材40とプラグ50との封止溶接を行う。
図7は、一実施形態における封止溶接を示す図であって、(a)は凹部45及びプラグ50を上面視した図であり、(b)は(a)のF−F線断面図である。同図に示すように、封止溶接においては、プラグ50が凹部45に嵌め込まれた状態においてプラグ50の外周縁53が凹部45の外側に位置しており、この状態で、凹部45に嵌め込まれたプラグ50と母材40とをレーザ溶接により接合する。例えば、封止溶接では、レーザ照射装置の光学ヘッド(レーザヘッド)を第2軸49に平行なレーザ進行方向に沿って移動させて、1ビードずつ溶接ビード64を形成する。また、レーザ進行方向を第1軸48に沿ってずらしながら、第1軸48の方向に複数パスの溶接ビード64を形成する。そして、プラグ50の全面を覆う溶接ビード64が形成されたら、これらの手順を繰り返し行い、厚さ方向に多層の溶接ビード64を形成する。このステップにおいては、母材40に形成された凹部45にプラグ50が嵌め込まれた状態において、プラグ50の外周縁53が凹部45の外側に位置するので、プラグ50と凹部45との隙間60がプラグ50の外周縁53で覆われた状態となる。そのため、プラグ50と母材40とをレーザ溶接により接合する際に、凹部45とプラグ50との隙間60をビームが通り抜けてしまうことに起因した溶接ビードの途切れの発生を防止できる。こうして、凹部45とプラグ50との間の隙間60の影響を受けず、健全な補修溶接を行うことが可能となる。
上述した溶接ステップにおいては、以下の手順をさらに備えていてもよい。
図8は、一実施形態における封止溶接の手順を示す図であって、(a)は凹部45及びプラグ50を上面視した図であり、(b)は(a)のG−G線断面図であり、(c)は第1領域の溶接時における(a)のH−H線断面図であり、(d)は第2領域の溶接時における(a)のH−H線断面図である。
同図に示すように、一実施形態において、溶接ステップでは、レーザ照射装置の光学ヘッド(レーザヘッド)70を直線状のレーザ進行方向に沿って移動させ、1つの溶接ビード64を施工した後、光学ヘッド70をレーザ照射方向と直交する方向にずらして、再度、光学ヘッド70を直線状のレーザ進行方向に沿って移動させて1つの溶接ビード64を施工する。一つの溶接ビード64を形成する際、母材40の表面の法線Nの方向に沿った断面内における隙間60の延在方向に対してレーザ照射方向(レーザ照射装置の光学ヘッド70)を傾斜させてレーザ溶接の少なくとも一部を行う。このとき、凹部45の側壁47およびプラグ50の外周壁52の法線Nに対する傾斜方向とは反対側にレーザ照射方向を法線Nに対して傾斜させてレーザ溶接の少なくとも一部を行ってもよい。これによれば、凹部45とプラグ50との隙間60の延在方向に対してレーザ照射方向が傾斜しているので、凹部45とプラグ50との境界部分へのレーザ照射時において、ビームが凹部45とプラグ50との隙間60を通り抜けることなく、プラグ50の外周縁53又は凹部45の側壁47にビームを照射することができる。よって、健全な補修溶接を容易に実施することができる。また、凹部45とプラグ50との境界部分へのレーザ照射時において、母材表面の法線Nに対して僅かにレーザ照射方向を傾斜させるだけで、隙間60の延在方向に対してレーザ照射方向がなす適切な角度を確保できる。これにより、ビームが凹部45とプラグ50との隙間60を通り抜けることなく、健全な補修溶接を容易に実施することができる。
また、レーザ進行方向に直交する方向におけるレーザ照射方向の法線Nに対する傾斜角θを、凹部45の中心Cを通り、且つ、レーザ進行方向に平行な中央線66を挟んで両側に位置する凹部の第1領域と第2領域との間で異ならせてもよい。具体的には、第1領域においては、レーザ照射装置の光学ヘッド70をプラグ50の外周壁52の法線Nに対する傾斜方向とは反対側に0°以上の傾斜角θ1で傾斜させる。この状態で、第2軸49に沿って、プラグ50の一端側から他端側まで光学ヘッド70を直線状に移動させながら溶接ビード64を形成する。溶接ビードが終端まで到達したら、光学ヘッド70を第1軸に沿った方向にずらして、再度、第2軸49に沿って、プラグ50の一端側から他端側まで光学ヘッド70を直線状に移動させながら溶接ビード64を形成する。この手順を繰り返して第1領域の封止溶接を行う。そして、光学ヘッド70が中央線66を超えて第2領域に侵入したら、光学ヘッド70の傾斜方向を変更する。第2領域においては、光学ヘッド70をプラグ50の外周壁52の法線Nに対する傾斜方向とは反対側に0°以上の傾斜角θ2で傾斜させる。この状態で、上記第1領域と同様にして、第2領域の封止溶接を行う。
通常、凹部45とプラグ50との隙間60の延在方向は一定ではなく、凹部45の周方向における位置に応じて変化する。このため、凹部45の中心Cを通り、レーザ進行方向に平行な中央線66を挟んで両側に位置する凹部45の第1領域と第2領域とでは、凹部45とプラグ50との隙間60の延在方向は逆向きとなる。そのため、上記したように、凹部45の第1領域と第2領域との間で、母材表面の法線Nに対するレーザ照射方向の傾斜角θに差を持たせることによって、隙間60の延在方向が逆向きである第1領域と第2領域とについて、それぞれ、隙間60の延在方向に対してレーザ照射方向がなす適切な角度を確保できる。これにより、ビームが凹部45とプラグ50との隙間60を通り抜けることなく、健全な補修溶接を容易に実施することができる。
上述した実施形態に係る補修溶接方法とは別の実施形態として、以下の方法を適用することもできる。
図9は、他の実施形態における補修溶接の手順を示す図であって、(a)は凹部及びプラグを上面視した図であり、(b)は(a)のI−I線断面図であり、(c)は第1領域の溶接時における(a)のJ−J線断面図であり、(d)は第2領域の溶接時における(a)のJ−J線断面図である。
この補修溶接方法では、凹部45にプラグ50を嵌め込むプラグ設置ステップと、プラグ50と母材40とをレーザ溶接により接合する溶接ステップと、を備える.
プラグ設置ステップでは、母材40に形成された凹部45の底面46にプラグ50の底面51が当接し、且つ、凹部45の側壁47とプラグ50の外周壁52との間に隙間60が形成されるように、凹部45にプラグ50を嵌め込む。このとき、凹部45の深さと、プラグ50の厚さは概ね一致している。
溶接ステップでは、母材40の表面の法線Nの方向に沿った断面内における隙間60の延在方向に対してなす角度(傾斜角)θ1,θ2が大きくなるように、法線Nの方向に対してレーザ照射方向を傾斜させてレーザ溶接の少なくとも一部を行う。ここで、図8と同様に、第1領域においては、レーザ照射装置の光学ヘッド70をプラグ50の外周壁52の法線Nに対する傾斜方向とは反対側に0°以上の傾斜角θ1で傾斜させ、第2領域においては、法線Nに対する傾斜方向とは反対側に0°以上の傾斜角θ2で傾斜させてもよい。
この方法によれば、溶接ステップにおいて、凹部45とプラグ50との隙間60の延在方向に対してレーザ照射方向が傾斜しているので、凹部45とプラグ50との境界部分へのレーザ照射時において、ビームが凹部45とプラグ50との隙間60を通り抜けることなく、プラグ50の外周縁53又は凹部45の側壁47にビームを照射することができる。よって、健全な補修溶接を容易に実施することができる。
なお、図9では、一例としてプラグ50の外周壁53の延在方向が母材40の法線Nの方向に沿っている場合について示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図3(b)に示すように、プラグ50の外周壁53の延在方向が母材40の法線Nの方向に対して傾斜していてもよい。
以上説明したように、上述の実施形態によれば、母材40と、該母材40の凹部45に嵌め込まれたプラグ50とをレーザ溶接により接合する際に、凹部45とプラグ50との隙間60をビームが通り抜けてしまうことに起因した溶接ビード64の途切れの発生を防止できる。そのため、凹部45とプラグ50との間の隙間60の影響を受けず、健全な補修溶接を行うことが可能となる。
また、上述の実施形態を図1に示した原子炉容器11に適用することによって、以下の利点が得られる。
一般的に、原子炉容器11の壁材は低合金鋼から構成されることが多く、低合金鋼からなる母材40が中性子の照射を受けると、母材40中にヘリウムが発生する可能性がある。ヘリウムを含む母材40に溶接を行うと、ヘリウムが溶接熱影響部の結晶粒界に集積して溶接割れが発生することがある。この溶接割れを抑制するためには、溶接入熱量を低減することが求められる。溶接入熱量を抑えたレーザ溶接はビードが小さいため凹部45とプラグ50との隙間60の影響を受けやすいが、上述の実施形態を適用することにより凹部45とプラグ50との隙間60に関わらず健全な補修溶接が可能であるため、原子炉容器11の壁材に対して溶接入熱量を抑えたレーザ溶接を用いた補修溶接を適切に実施することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述の実施形態では、補修溶接を行う対象として原子炉容器11の壁材について説明したが、対象構造物はこれに限定されるものではない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
1 原子力発電プラント
10 原子炉系
11 原子炉容器
20 タービン系
40 母材
41 クラッド層
42 母材本体
45 凹部
46 (凹部の)底面
47 (凹部の)側壁
48 第1軸
49 第2軸
50 プラグ
51 (プラグの)底面
52 (プラグの)外周壁
53 (プラグの)外周縁
54 (プラグの)フランジ
60 隙間
64 溶接ビード
66 中央線
70 光学ヘッド
d 隙間

Claims (14)

  1. 母材に形成された凹部の底面にプラグの底面が当接し、且つ、前記凹部の側壁と前記プラグの外周壁との間に隙間が形成されるように、前記凹部に前記プラグを嵌め込むプラグ設置ステップと、
    前記凹部に嵌め込まれた前記プラグと前記母材とをレーザ溶接により接合する溶接ステップと、を備える補修溶接方法であって、
    前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態において、前記プラグの外周縁が前記凹部の外側に位置することを特徴とする補修溶接方法。
  2. 前記凹部の前記側壁は、前記凹部の深さとともに前記凹部の中央に近づくように前記母材の表面の法線に対して傾斜しており、
    前記プラグの前記外周壁は、前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態において前記凹部の前記側壁に沿って前記法線に対して傾斜しており、
    前記プラグの厚さは、前記凹部の深さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の補修溶接方法。
  3. 前記プラグは、前記プラグが前記凹部に嵌め込まれたときに前記凹部の周囲の前記母材を覆うフランジを含み、
    前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態で、前記フランジの前記母材に対向する面と、前記母材との間には隙間が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の補修溶接方法。
  4. 前記溶接ステップでは、前記母材の表面の法線方向に沿った断面内における前記隙間の延在方向に対してレーザ照射方向を傾斜させて前記レーザ溶接の少なくとも一部を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の補修溶接方法。
  5. 前記凹部の前記側壁は、前記凹部の深さとともに前記凹部の中央に近づくように前記母材の表面の法線に対して傾斜しており、
    前記プラグの前記外周壁は、前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態において前記凹部の前記側壁に沿って前記法線に対して傾斜しており、
    前記溶接ステップでは、前記凹部の前記側壁および前記プラグの前記外周壁の前記法線に対する傾斜方向とは反対側に前記レーザ傾斜方向を前記法線に対して傾斜させて前記レーザ溶接の少なくとも一部を行うことを特徴とする請求項4に記載の補修溶接方法。
  6. 前記溶接ステップでは、
    レーザ進行方向にレーザヘッドを繰り返し移動させて前記レーザ進行方向に沿った複数本の溶接ビードを形成するとともに、
    前記レーザ進行方向に直交する方向における前記レーザ照射方向の前記法線に対する傾斜角を、前記凹部の中心を通り、且つ、前記レーザ進行方向に平行な中央線を挟んで両側に位置する前記凹部の第1領域と第2領域との間で異ならせる
    ことを特徴とする請求項5に記載の補修溶接方法。
  7. 前記凹部は、上面視において、前記凹部の前記中心を通る第1軸と、前記中心を通り且つ前記第1軸に直交して前記第1軸よりも長い第2軸を有し、
    前記溶接ステップでは、前記第2軸に平行な前記レーザ進行方向に沿って前記溶接ビードを形成することを特徴とする請求項6に記載の補修溶接方法。
  8. 前記溶接ステップでは、
    前記プラグの前記外周縁のうち複数箇所を前記母材に対して溶接する仮付け溶接を行った後、
    前記プラグの全周に亘って、前記母材に対して封止溶接を行う
    ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の補修溶接方法。
  9. 欠陥を含む前記母材の一部分を除去して前記凹部を形成する凹部形成ステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の補修溶接方法。
  10. 前記母材は、母材本体と、前記母材本体を覆うクラッド層と、を含み、
    前記母材本体は低合金鋼により構成され、
    前記クラッド層はオーステナイト系ステンレス鋼によって構成されたことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の補修溶接方法。
  11. 前記母材が、原子炉容器の壁材であることを特徴とする請求項1乃至10に記載の補修溶接方法。
  12. 母材の補修溶接用のプラグであって、
    前記母材に形成された凹部に嵌め込まれたときに、
    前記凹部の底面に前記プラグの底面が当接し、
    前記凹部の側壁と前記プラグの外周壁との間に隙間が形成され、
    前記プラグの外周縁が前記凹部の外側に位置する
    ことを特徴とする補修溶接用プラグ。
  13. 前記凹部の前記側壁は、前記凹部の深さとともに前記凹部の中央に近づくように前記母材の表面の法線に対して傾斜しており、
    前記プラグの前記外周壁は、前記プラグが前記凹部に嵌め込まれた状態において前記凹部の前記側壁に沿って前記法線に対して傾斜しており、
    前記プラグの厚さは、前記凹部の深さよりも大きいことを特徴とする請求項12に記載の補修溶接用プラグ。
  14. 燃料集合体を収容する原子炉容器であって、
    前記原子炉容器の壁材は、
    凹部が形成された母材と、
    前記母材の前記凹部に嵌め込まれた状態で前記母材に対して接合された請求項12又は13に記載の補修溶接用プラグと、
    を含むことを特徴とする原子炉容器。
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