以下に、開示する分析装置、分析方法及び分析プログラムの実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る分析装置100の構成例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る分析装置100は、入力部101と、出力部102と、記憶部110と、制御部120とを備える。入力部101は、分析装置100の操作者からの各種操作を受付ける。出力部102は、例えば液晶ディスプレイ等であり、各種情報を出力する。
記憶部110は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。制御部120は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路である。
分析装置100が備える記憶部110及び制御部120の詳細な説明に先立ち、分析装置100による処理動作の概略を説明する。この分析装置100は、例えば、社会インフラストラクチャ設備(以下、「インフラ設備」或いは単に「設備」と称す)を保守する場合に、保守対象のインフラ設備の空間的な分散状況を定量的に把握するために、操作者によって利用される。ここで、操作者は、例えば、保守要員自身である場合や、保守要員に保守対象であるインフラ設備の保守を指示する管理者などである場合がある。
具体的には、分析装置100は、操作者から保守対象の領域と保守対象の設備とを受付けて、領域内において保守対象である設備を選択する。続いて、分析装置100は、各設備が設置された位置を示す位置情報に基づいて、領域内に設置された各設備の分散状況を示す情報を算出する。ここで、各設備の分散状況について説明する。図2〜図4は、分散状況の一例を説明するための図である。また、図2〜図4では、操作者から設定された領域を示す。また、図2〜図4に示す例では、領域を縦横それぞれ5つの正方形の領域に分割した場合を示す。なお、この分割した各正方形領域のことを「ボックス」或いは「メッシュ」と称する。また、図2〜図4では、インフラ設備を黒丸で示す。
図2に示す例では、領域内に3つのインフラ設備が設置されている場合を示す。図2に示すように、3つのインフラ設備は互いに独立して設置されており、点在している。このような場合、分散状況は、点的分散であると表現する。また、図3に示す例では、領域内に10のインフラ設備が設置されている場合を示す。図3に示すように、各インフラ設備は、直線状に設置されている。このような場合、分散状況は、線的分散であると表現する。そして、図4に示す例では、領域内に30のインフラ設備が設置されている場合を示す。図4に示すように、各インフラ設備は、点的や線的ではなく、全体的に分散している。このような場合、分散状況は、面的分散であると表現する。
図2〜図4に示すように、各設備の分散状況は、定性的に表現されていた。また、図2〜図4では、点的分散、線的分散、及び面的分散について特徴的な一例を示したが、実際に設置されたインフラ設備の分散状況は、より複雑である場合がある。例えば、点的分散と線的分散との融合型である場合や線的分散と面的分散との融合型である場合がある。このため、操作者は、分散状況を把握することが困難である場合がある。
このようなことから分析装置100は、分散状況を示す情報を算出することで、分散状況を定量的に把握可能とする。例えば、分析装置100は、対象設備の空間的な分散状況を把握するために、フラクタル次元を活用する。
フラクタル次元は、対象の図形的な複雑さを示すとされる。通常、次元数と言えば1次元、2次元、3次元などの整数値で示されるが、フラクタル次元は非整数値も取りうる。よって、例えば通常の実空間における地表面に設置されている設備を、2次元平面に存在するポイントデータとして分析した場合、分析装置100は、都市や地形による制約条件下において、所定の領域に設置されたインフラ設備が示す幾何学的な複雑性を示す値をフラクタル次元として算出する。このため、分析装置100は、このフラクタル次元と分散状況とを予め対応付けておくことで、対象設備の設置状況を点的分散、線的分散、或いは面的分散として把握することが可能となる。なお、対象設備の設置状況のことを「ばらつきの状況」とも言う。なお、フラクタル次元の算出処理の詳細については後述する。
続いて、分析装置100は、算出した情報に基づいて、領域内において設備が点的分散、線的分散、及び面的分散のうち、少なくともいずれの一つで設置されているかを判定する。そして、分析装置100は、算出結果を出力部102に出力させる。なお、インフラ設備は、主に、地上に広範囲に多数設置されているものとする。例えば、インフラ設備には、電柱やマンホールなどの電気通信設備、ビルや橋梁などの建造物などが含まれる。以下では、インフラ設備の一例として、電柱が鋼管柱である場合を説明する。
次に、分析装置100の各部の詳細について説明する。例えば、記憶部110は、図1に示すように、インフラ設備DB(Data Base)111と、地理DB112と、保守結果DB113と、仕様DB114と、道路DB115と、算出ログDB116とを有する。
インフラ設備DB111は、設置されたインフラ設備に関する情報を記憶する。図5は、第1の実施形態に係るインフラ設備DB111が記憶するデータ構造の一例を示す図である。図5に示すように、例えば、インフラ設備DB111は、「インフラ設備ID(identifier)」と、「インフラ設備種別」と、「型式」と、「位置情報」とを対応付けた情報を記憶する。
ここで、インフラ設備DB111が記憶する「インフラ設備ID」は、インフラ設備の識別子を示す。例えば、「インフラ設備ID」には、「0001」、「0002」などの値が格納される。また、インフラ設備DB111が記憶する「インフラ設備種別」は、インフラ設備の種別を示す。ここで言うインフラ設備の種別は、例えば、電柱、マンホール、ビル、及び橋梁などを示す。より具体的には、「インフラ設備の種別」には、電柱を示す「001」やマンホールを示す「002」などの値が格納される。
また、インフラ設備DB111が記憶する「型式」は、インフラ設備の種類を示す。例えば、同じ種別のインフラ設備であっても、性能や構造などが異なる場合には、異なる「型式」が付与される。言い換えると、インフラ設備は、同じ「インフラ設備種別」であっても、インフラ設備の種類が異なる場合には異なる「型式」を有することになる。例えば、「型式」には、「A001」、「A002」などの値が格納される。
また、インフラ設備DB111が記憶する「位置情報」は、インフラ設備が設置された位置情報を示す。言い換えると、「位置情報」は、地理的な設置情報を示す。ここで、位置情報は緯度及び経度で示される場合について説明する。例えば、「位置情報」には、「緯度xxx経度yyy」、「緯度xxy経度yyx」などの値が格納される。
一例をあげると、図5に示すインフラ設備DB111は、「インフラ設備ID」が「0001」であるインフラ設備が、型式「A001」の電柱であり、「緯度xxx経度yyy」に設置されていることを示す。同様に、図5に示すインフラ設備DB111は、「インフラ設備ID」が「0002」であるインフラ設備が、型式「A002」の電柱であり、「緯度xxy経度yyx」に設置されていることを示す。
地理DB112は、所定の領域ごとに、地図上に示される領域の位置情報と、地図上に示される領域の画像データとが対応付けられた情報を記憶する。図6は、第1の実施形態に係る地理DB112が記憶するデータ構造の一例を示す図である。図6に示すように、例えば、地理DB112は、「対象エリア」と、「位置情報」と、「画像データ」とを対応付けた情報を記憶する。
ここで、地理DB112が記憶する「対象エリア」は、領域の識別子を示す。ここで、領域の識別子は、例えば、各都道府県単位や各都道府県の市区町村単位で付与されるものとする。言い換えると、「対象エリア」として記憶される領域の識別子は、都道府県名や市区町村名に対応付けられる。例えば、「対象エリア」には、「001」などの値が格納される。
また、地理DB112が記憶する「位置情報」は、領域の位置情報を示す。ここで、領域は、地図上において正方形で示されるものとする。そして、領域の位置情報は、正方形の4隅の緯度と経度とで示される。例えば、「位置情報」には、「緯度aaa経度aaa,緯度bbb経度aaa,緯度aaa経度ccc,緯度bbb経度ccc」などの値が格納される。なお、地理DB112が記憶する「画像データ」には、領域の位置情報に対応する地図上の画像データが格納される。
一例をあげると、図6に示す地理DB112は、「対象エリア」が「001」である領域が、「緯度aaa経度aaa,緯度bbb経度aaa,緯度aaa経度ccc,緯度bbb経度ccc」で示される領域であることを示す。なお、地理DB112が記憶する「位置情報」及び「画像データ」は、対象エリア全体を含んだ正方形の領域として記憶されるものとする。このため、対象エリアの一部の領域は、他の対象エリアの「位置情報」及び「画像データ」に含まれる場合がある。
保守結果DB113は、領域内で保守対象であったインフラ設備の保守結果を示す情報を記憶する。この保守結果DB113は、保守が実施された後に、例えば操作者によって登録される情報である。図7は、第1の実施形態に係る保守結果DB113が記憶するデータ構造の一例を示す図である。図7に示すように、例えば、保守結果DB113は、「保守ID」と、「対象エリア」と、「インフラ設備ID」と、「劣化度」とを対応付けた情報を記憶する。
ここで、保守結果DB113が記憶する「保守ID」は、実施された保守作業の識別子を示す。例えば、保守IDは、年月日と通し番号とで構成される。例えば、「保守ID」には、2010年8月12日の1番目に実施された保守であることを示す「20100812−001」などの値が格納される。
保守結果DB113が記憶する「対象エリア」は、地理DB112が記憶する「対象エリア」と同様であり、保守結果DB113が記憶する「インフラ設備ID」は、インフラ設備DB111が記憶する「インフラ設備ID」と同様である。
また、保守結果DB113が記憶する「劣化度」は、インフラ設備の点検結果を、例えば「A」〜「E」の5段階で評価した評価値である。ここで、「A」は、劣化や故障が発生していない優良な状態を示し、「B」は、ほぼ劣化がなく、故障が発生していない状態を示し、「C」は、経年劣化はあるものの、顕著な故障が発生していない状態を示す。また、「D」は、整備可能な故障が発生した状態を示し、「E」は、劣化具合が酷い場合や故障が発生している場合を示す。例えば、「劣化度」には、「D」、「B」などの評価値が格納される。なお、劣化度の評価値の定義は、図7に示す例に限定されるものではなく、任意に変更可能である。
一例をあげると、図7に示す保守結果DB113は、2010年8月12日の1番目に実施された保守では、「対象エリア」が「001」である領域の保守が行われ、「インフラ設備ID」が「0001」であるインフラ設備の評価値が「D」であり、「インフラ設備ID」が「0002」であるインフラ設備の評価値が「B」であることを示す。
仕様DB114は、インフラ設備の種類に関する情報を示す。図8は、第1の実施形態に係る仕様DB114が記憶するデータ構造の一例を示す図である。図8に示すように、例えば、仕様DB114は、「型式」と、「インフラ設備種別」と、「耐久性」とを対応付けた情報を記憶する。
ここで、仕様DB114が記憶する「型式」は、インフラ設備DB111が記憶する「型式」と同様であり、仕様DB114が記憶する「インフラ設備種別」は、インフラ設備DB111が記憶する「インフラ設備種別」と同様である。
また、仕様DB114が記憶する「耐久性」は、インフラ設備の耐久性を示し、例えば、劣化のし易さや故障の発生頻度を「A」〜「D」の4段階で評価した評価値である。ここで、「A」は、劣化や故障が発生しにくいことを示し、「B」は、劣化や故障が比較的発生しにくいことを示す。また、「C」は、劣化や故障が使用年数に伴い増加する可能性があることを示し、「D」は、劣化や故障が比較的発生し易いことを示す。例えば、「耐久性」には、「D」、「A」などの評価値が格納される。なお、耐久性の評価値の定義は、図8に示す例に限定されるものではなく、任意に変更可能である。
一例をあげると、図8に示す仕様DB114は、「型式」が「A001」である電柱は、劣化や故障が比較的発生し易いことを示し、「型式」が「A002」である電柱は、劣化や故障が発生しにくいことを示す。
道路DB115は、地図上において道路を特定するための情報を記憶する。図9は、第1の実施形態に係る道路DB115が記憶するデータ構造の一例を示す図である。図9に示すように、例えば、道路DB115は、「道路ID」と、「道路名称」と、「始点位置」と、「終点位置」とを対応付けた情報を記憶する。
ここで、道路DB115が記憶する「道路ID」は、道路の識別子を示す。例えば、「道路ID」には、「0001」などの値が格納される。また、道路DB115が記憶する「道路名称」は、道路の名称を示す。例えば、「道路名称」には、「国道○号線」などの道路名称が格納される。
また、道路DB115が記憶する「始点位置」は、道路の始点位置を示す。そして、始点位置は、緯度と経度とで示される。例えば、「始点位置」には、「緯度xxx経度yyy」などの値が格納される。また、道路DB115が記憶する「終点位置」は、道路の終点位置を示す。そして、終点位置は、緯度と経度とで示される。例えば、「終点位置」には、「緯度xxx経度zzz」などの値が格納される。
一例をあげると、図9に示す道路DB115は、「道路ID」が「0001」である道路は、「緯度xxx経度yyy」から「緯度xxx経度zzz」までの国道○号線であることを示す。なお、電柱などのインフラ設備は、通常道路沿いに設置される。このため、操作者は、インフラ設備の保守を実施する際に、この道路DB115を参照することで、保守の実施範囲を特定することが可能となる。
算出ログDB116は、算出部123による算出処理の過程や算出処理結果、及び判定部124による判定処理の結果を記憶する。
図1に戻る。制御部120は、図1に示すように、受付部121と、選択部122と、算出部123と、判定部124と、出力制御部125とを有する。受付部121は、領域の設定と、領域内において保守対象とするインフラ設備の設定とを操作者から受付ける。なお、以下では、保守対象の設備は、地上に設置されている電柱とする。また、この電柱のインフラ設備の種別を「設備A」とする。設備Aの総数は8万あまりである。この設備Aの多くは道路に沿って設置されているが、場所によっては必ずしも道路沿いに設置されていない。また、保守対象のエリアはX県全域とする。
例えば、受付部121は、領域の設定として、市区町村名の入力を受付ける。或いは、受付部121は、領域の設定として、位置情報の入力を受付けるようにしてもよい。なお、受付部121は、キーボードなどを介した手入力で領域の設定を受け付けてもよいし、予め設定されたメニューから領域の選択を受付けてもよい。
また、受付部121は、保守対象とするインフラ設備の設定として、インフラ設備の種別を受付ける。或いは、受付部121は、保守対象とするインフラ設備の設定として、インフラ設備の種別とインフラ設備の種類とを受付けるようにしてもよく、また、インフラ設備の識別子を受付けるようにしてもよい。なお、受付部121は、キーボードなどを介した手入力でインフラ設備の設定を受け付けてもよいし、予め設定されたメニューからインフラ設備の選択を受付けてもよい。そして、受付部121は、受付けた領域と領域内において保守対象とするインフラ設備とを選択部122に受け渡す。
選択部122は、領域内において保守対象であるインフラ設備を選択する。言い換えると、選択部122は、設備Aの位置情報に基づいて、X県における設備Aを選択する。例えば、保守対象として設定されたインフラ設備のうち、設定された領域内に設置されたインフラ設備を選択する。より具体的には、選択部122は、地理DB112が記憶する「対象エリア」を参照して、操作者から受付けた領域と一致する対象エリアを特定する。そして、選択部122は、特定した対象エリアに対応付けられた位置情報と画像データとを読み出す。
また、選択部122は、インフラ設備DB111を参照して、操作者から受付けたインフラ設備のうち、対象エリアに設置されたインフラ設備を選択する。より具体的には、操作者からインフラ設備の種別を受付けた場合には、インフラ設備DB111が記憶する「インフラ設備種別」から受付けたインフラ設備を特定する。そして、選択部122は、インフラ設備DB111が記憶する「位置情報」を参照して、特定したインフラ設備のうち、緯度及び経度が対象エリアとして設定された領域の範囲内に含まれるインフラ設備を選択する。
算出部123は、各設備が設置された位置を示す位置情報に基づいて、領域内に設置された各設備の分散状況を示す情報を算出する。例えば、算出部123は、分散状況を示す情報としてフラクタル次元を算出する。フラクタル次元の算出、或いはフラクタル次元の推定方法は複数存在する。ここでは、算出部123は、地理分析で比較的よく用いられるボックスカウント法を用いてフラクタル次元を算出するものとして説明する。ボックスカウント法によるフラクタル次元Dの定義式を式(1)に示す。算出部123は、この式(1)を用いて、例えば、X県における設備Aを対象にしてフラクタル次元を算出する。
ボックス辺長δは分析対象によって変化する。ここではボックスを正方メッシュにより設定し、その辺長を10km、5km、2km、1km、500m、250m、100mの7種とする。すなわち、算出部123は、ボックスカウント法において、領域を格子状に分割し、各分割領域に設置された設備の数を計数してフラクタル次元を算出する。
より具体的には、算出部123は、選択されたX県の領域を、10km四方の複数のボックスに分割する。そして、各ボックス内の位置情報と、設備Aの位置情報とに基づいて、設備Aを内包するボックスの数を計数する。また、算出部123は、選択されたX県の領域を、5km四方の複数のボックスに分割する。そして、各ボックス内の位置情報と、設備Aの位置情報とに基づいて、設備Aを内包するボックスの数を計数する。このようにして、算出部123は、7種のボックス辺長δについて、設備Aを内包するボックスの数N(δ)をそれぞれ計数する。
そして、算出部123は、7種のボックス辺長δそれぞれについて、設備Aを内包するボックスの数N(δ)をプロットする。ここで、算出部123は、複数のボックス辺長δとボックスの数N(δ)とによる両常用対数プロットの直線回帰を近似する。ここで、直線回帰は、1次式による回帰である。そして、算出部123は、直線回帰の傾きをフラクタル次元Dとして算出する。図10は、第1の実施形態に係る算出部123による算出結果の一例を示す図である。
図10では、横軸にボックス辺長δを常用対数プロットし、縦軸にボックスの数N(δ)を常用対数プロットしている。すなわち、横軸の1は、10kmであり、0は、1kmであり、−1は、100mであることを示す。図10に示すyは、直線回帰を示す関数である。図10に示す例では、フラクタル次元Dは1.45となる。すなわち、フラクタル次元Dは、1次元と2次元との中間付近であることを示す。また、図10に示すR2は、決定係数を示す。図10に示す例では、決定係数が0.9906であることから、導かれた回帰式は両対数プロットとよくあてはまっていると言える。なお、算出部123は、算出した数値などの平均、分散、標準偏差などの基本的な統計量を算出する機能を有する。
判定部124は、算出部123により算出された情報に基づいて、領域内において設備が点的分散、線的分散、及び面的分散のうちいずれの分散で設置されているかを判定する。ここで、一般的に1次元が線、2次元が面の状態を表すことを考慮した場合、例えば、判定部124は、算出されたフラクタル次元の値が、例えば0.7未満である場合には、点的分散であると判定する。また、判定部124は、算出されたフラクタル次元の値が、例えば0.7以上1.5未満の範囲である場合には、線的分散であると判定し、算出されたフラクタル次元の値が、例えば1.5以上である場合には、面的分散であると判定する。すなわち、判定部124は、対象設備の設置状況を点的分散、線的分散、或いは面的分散として把握することが可能となる。
より具体的には、例えば、算出されたフラクタル次元が1.1であった場合、対象設備は線的な設置状況であると判断できるようになる。また、判定部124は、フラクタル次元Dが1.45である場合、設備Aは道路に沿って設置されているものが多いことを考慮すると、X県における設備A全体を対象とした分散状況は、基本的に線状であるが面的にちらばっている側面もある状況と判断する。
出力制御部125は、判定部124による判定結果を所定の出力部102に出力させる。より具体的には、出力制御部125は、インフラ設備の分散状況が点的、線的、及び面的のいずれであるかを示す判定結果を出力部102に出力させる。なお、出力制御部125は、例えば、図10に示した算出結果を出力部102に表示させるようにしてもよい。
次に、図11を用いて、第1の実施形態に係る分析装置100による照合処理を説明する。図11は、第1の実施形態に係る分析装置100による処理手順を示すフローチャートである。図11に示すように、受付部121は、保守対象の設備の設定を受付ける(ステップS101)。また、受付部121は、保守対象のエリアの設定を受付ける(ステップS102)。そして、選択部122及び算出部123は、フラクタル次元算出処理を実行する(ステップS103)。なお、ステップS103の詳細については、図12を用いて説明する。続いて、判定部124は、分散状況を判定する(ステップS104)。そして、出力制御部125は、判定結果を出力する(ステップS105)。
図12は、第1の実施形態に係るフラクタル次元算出処理の手順を示すフローチャートである。なお、この処理は、図11に示すステップS103の処理に対応する。図12に示すように、選択部122は、保守対象エリア内における保守対象設備の設置場所の位置情報を取得する(ステップS201)。続いて、算出部123は、分割サイズを選択する(ステップS202)。例えば、選択部122は、10km、5km、2km、1km、500m、250m、100mの7種のボックス辺長δのうち未選択のボックス辺長を選択する。
また、算出部123は、保守対象エリアをサイズdの正方格子に分割する(ステップS203)。そして、算出部123は、保守対象設備を含んだ正方格子の数を計数する(ステップS204)。続いて、算出部123は、未選択の分割サイズが存在するか否かを判定する(ステップS205)。ここで、算出部123は、未選択の分割サイズが存在すると判定した場合(ステップS205、Yes)、ステップS202に移行して未選択の分割サイズを選択する。
一方、算出部123は、未選択の分割サイズが存在すると判定しなかった場合(ステップS205、No)、フラクタル次元を算出する(ステップS206)。例えば、算出部123は、7種のボックス辺長δとボックスの数N(δ)とによる両常用対数プロットの直線回帰を近似する。
上述してきたように、第1の実施形態に係る分析装置100は、フラクタル次元を用いて、設備の地理的な分散状況を示す情報を算出する。これにより、操作者は、保守対象となるインフラ設備の分散状況を定量的に把握することが可能となる。これにより、操作者は、保守対象領域における最適な保守方法を選択することが可能となる。より具体的には、ある道路沿いを順番に点検する手順の設定や投入する人員や順番などを最適化することが可能となる。この結果、第1の実施形態に係る分析装置100によれば、メンテナンス稼働の効率を向上させることができる。
なお、第1の実施形態では、X県全域を対象としたが、もちろん一部のエリアや、あるいは全域をいくつかのエリアに分割してそれぞれのエリアで上記と同様の処理を行うことで、エリアごとの分散状況の差を把握することが可能である。たとえば、住宅密集地を多く含む、すなわち道路密度が高いエリアは、郊外エリアと比して、エリア全体に設備が密に設置されている状況にあることが考えられる。このような場合も、各エリアのフラクタル次元が他と比べてどの程度大きいか、あるいは小さいかを定量的に把握でき、これによって分散状況の差を判断することにつながる。
また上述した実施形態では、保守対象とするインフラ設備の設定として、インフラ設備の種別を受付ける場合やインフラ設備の種別とインフラ設備の種類とを受付ける場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、保守対象として設定したインフラ設備のうち、保守結果DB113の「劣化度」がある評価値より低いものを更に選択してもよい。或いは、保守対象として設定したインフラ設備のうち、仕様DB114の「耐久性」がある評価値より低いものを更に選択してもよい。
また、例えば、判定部124は、設備の分散状況を、例えば点的分散、線的分散、面的分散のいずれかで判定するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、設備の分散状況を、例えば点的分散、線的分散、面的分散、点的分散と線的分散の融合した状態、線的分散と面的分散の融合した状態として判定するようにしてもよい。かかる場合、判定部124は、算出されたフラクタル次元の値が、例えば0.5未満である場合には、点的分散であると判定する。また、判定部124は、算出されたフラクタル次元の値が、例えば0.8以上1.2未満の範囲である場合には、線的分散であると判定し、算出されたフラクタル次元の値が、例えば2.0以上である場合には、面的分散であると判定する。そして、判定部124は、算出されたフラクタル次元の値が、例えば0.5以上かつ0.8未満である場合には、点的分散と線的分散の融合した状態であると判定し、算出されたフラクタル次元の値が、例えば1.2以上かつ2.0未満である場合には、線的分散と面的分散の融合した状態であると判定する。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、X県全域に設置されたインフラ設備の種別が「設備A」である電柱の全てを保守する場合に、フラクタル次元を用いて、インフラ設備の分散状況を判定するものとして説明した。第2の実施形態では、対象設備の劣化や故障の発生率を変化させてフラクタル次元のシミュレーションを行うことで、発生率とフラクタル次元の関係性を把握する場合について説明する。なお、保守対象は、第1の実施形態と同様に、X県における設備Aとする。また、対象設備の劣化や故障の発生率のことを異常発生率とも言う。
図13は、第2の実施形態に係る分析装置200の構成例を示す図である。なお、図13において、図1に示した第1の実施形態に係る分析装置100と同一の構成については、同一の符号を付与し詳細な説明を省略する。
図13に示すように、分析装置200は、入力部101と、出力部102と、記憶部110と、制御部220とを備える。制御部220は、CPUやMPUなどの電子回路やASICやFPGAなどの集積回路である。この制御部220は、図13に示すように、受付部221と、設定部222と、選択部223と、試行回数決定部224と、算出部225と、判定部226と、出力制御部227とを有する。
受付部221は、第1の実施形態に係る受付部121と同様の機能を実行可能である。すなわち、受付部221は、領域の設定と、領域内において保守対象とするインフラ設備の設定とを操作者から受付ける。
また、受付部221は、劣化・故障の発生率とフラクタル次元の関係性を算出する処理の要求を操作者から受付ける。かかる場合、受付部221は、劣化・故障の発生条件が既知であるか否かの選択を受付ける。言い換えると、受付部221は、対象設備の劣化や故障の発生が特定の設置場所や環境等に依存するか否かの選択を受付ける。ここで、受付部221は、対象設備の劣化や故障の発生が特定の設置場所や環境等に依存する場合、発生条件を反映した保守対象設備の候補の設定を受付ける。一方、受付部221は、対象設備の劣化や故障の発生が特定の設置場所や環境等に依存しない場合、保守対象設備の候補の設定を受付ける。そして、受付部221は、受付けた設定を選択部223及び算出部225に受け渡す。
また、受付部221は、判定結果を比較する要求を受付ける。ここで、受付部221は、比較元の判定結果に対して比較対象となる判定結果の指定を受付ける。そして、受付部221は、比較元になる判定結果及び比較対象となる判定結果とともに、判定結果を比較する要求を判定部226に受け渡す。
設定部222は、保守対象である設備における異常発生率を設定する。例えば、設定部222は、保守対象とするインフラ設備によって適宜異常発生率を設定する。以下では、設備Aに対して、設定部222が、0.1%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の12種の異常発生率を設定した場合について説明する。
選択部223は、第1の実施形態に係る選択部122と同様の機能を実行可能である。すなわち、選択部223は、領域内において保守対象である設備を選択する。また、選択部223は、保守対象である設備における異常発生率が設定された場合には、設備に対して設定された異常発生率に基づいて、領域内において保守対象である設備を選択する。ここで、例えば、選択部223は、対象設備の劣化や故障の発生が特定の設置場所や環境等に依存するか否か判定する。そして、選択部223は、対象設備の劣化や故障の発生が特定の設置場所や環境等に依存しない場合、設定した発生率に従い、乱数等を用いてランダムに保守対象設備の候補から設備Aを選択する。例えば、領域内において保守対象である設備Aの候補の数が50台であり、発生率が10%である場合、選択部223は、ランダムに5台の設備Aを選択する。
一方、選択部223は、対象設備の劣化や故障の発生が特定の設置場所や環境等に依存する場合、依存条件の過去・現在・将来の変動に従った各地の劣化・故障発生率を設定する。そして、選択部223は、設定した発生率に従い、乱数等を用いてランダムに保守対象設備の候補から設備Aを選択する。
試行回数決定部224は、算出部225によるフラクタル次元を算出する処理の回数を決定する。例えば、試行回数決定部224は、算出ログDB116が記憶する過去の統計量や算出結果を参照して、劣化・故障の発生率とフラクタル次元の関係性について、決定係数が1.0に近似可能と考えられる試行回数を決定する。
算出部225は、第1の実施形態に係る算出部123と同様の機能を実行可能である。すなわち、算出部225は、各設備が設置された位置を示す位置情報に基づいて、領域内に設置された各設備の分散状況を示す情報を算出する。例えば、算出部225は、分散状況を示す情報としてフラクタル次元を算出する。より具体的には、算出部225は、領域を格子状に分割し、各分割領域に設置された設備の数を計数してフラクタル次元を算出する。
また、算出部225は、保守対象である設備における故障の発生率が設定された場合には、更に以下の機能を実行可能である。すなわち、算出部225は、設定された各異常発生率に対して、選択された設備の分散状況を示す情報を算出して、各異常発生率に対して分散状況を示す情報を対応付けた近似曲線を導出する。
例えば、算出部225は、選択された設備Aについて式(2)により平均フラクタル次元Di−aveを算出する。なお、ここで言う平均は相加平均を指す。また、式(2)は、乱数等による設備Aの選択を複数回試行し、その平均をとることで算出結果の精度を高めている。
そして、算出部225は、発生率ごとに算出したフラクタル次元を2軸としてプロットし、最小二乗法等により近似曲線を求める。図14は、第2の実施形態に係る算出部225による算出結果の一例を示す図である。図14では、横軸に異常発生率を常用対数プロットし、縦軸にフラクタル次元を常用対数プロットしている。図14に示すyは、近似曲線を示す関数である。図14では、求まった近似曲線が、f(x)=0.1919*Logex+1.4822であることを示す。求めた近似曲線f(x)が、X県における設備Aの劣化・故障発生率とフラクタル次元の関係性を示す関数式となる。このf(x)が求まることで、たとえば発生率がどの程度になれば劣化をしている設備Aが線的に並ぶのか、といったことが一意に求まる。なお、図14に示すR2は、決定係数を示す。図14に示す例では、決定係数が0.9958であることから、導かれた回帰式は両対数プロットとよくあてはまっていると言える。
判定部226は、近似曲線に基づいて、保守の実施に適した故障の発生率を判定する。例えば、判定部226は、近似曲線を参照して、ある道路沿いに順に設備Aの点検を計画する際、劣化・故障の発生率がどの程度になった時点で点検すれば、劣化している設備Aの点検効率が上がるかを判定する。図14を用いて具体例を説明する。例えば、判定部226は、設備Aが線的分散すると考えられるフラクタル次元を1.2以上とした場合、劣化・故障の発生率が20%になった時点で点検すれば劣化している設備Aの点検効率が上がると判定する。
また、判定部226は、比較元になる判定結果及び比較対象となる判定結果とともに、判定結果を比較する要求を受付けた場合には、比較元になる判定結果と比較対象となる判定結果とを比較する。例えば、判定部226は、都市部のエリアAと過疎地域のエリアBとの分散状況を示す値を比較する要求を受付けた場合、フラクタル次元を比較し、異なるエリア間でどちらのフラクタル次元が大きいかを判定する。このような場合、都市部では、道路が細かくなって建物も多くなり、一方、過疎地域では、一本の国道沿いにインフラ設備が設置されている場合が多い。このため、判定部226は、都市部のエリアAでは、フラクタル次元の値が大きくなり、過疎地域のエリアBではフラクタル次元の値が小さくなる結果を得る。
また、判定部226は、種別が同一のインフラ設備について、異なる型式で発生率とフラクタル次元の関係性をそれぞれ算出し、算出結果を比較するようにしてもよい。これにより、操作者は、例えば、同一のインフラ設備であっても、点検効率が上がる異常発生率が型式ごとに異なるか否かを判断することが可能となる。
出力制御部227は、算出部225による算出結果を所定の出力部102に出力させる。例えば、出力制御部227は、判定部226による判定結果を所定の出力部102に出力させる。すなわち、出力制御部227は、劣化している設備Aの点検効率が上がる劣化・故障の発生率を出力する。或いは、出力制御部227は、比較結果を出力する。なお、出力制御部227は、図14に示す近似曲線を所定の出力部102に出力させるようにしてもよい。
図15は、第2の実施形態に係る分析装置200による処理手順を示すフローチャートである。なお、図15では、分析装置200が、フラクタル次元を用いて、インフラ設備の分散状況を示す値を算出した後に、発生率とフラクタル次元の関係性を把握するか否かを判定する場合について説明する。図15に示すように、受付部221は、保守対象の設備の設定を受付ける(ステップS301)。また、受付部221は、保守対象のエリアの設定を受付ける(ステップS302)。そして、選択部223及び算出部225は、フラクタル次元算出処理を実行する(ステップS303)。なお、ステップS303におけるフラクタル次元算出処理の詳細は、図12に示した処理と同様である。
続いて、受付部221は、劣化・故障の発生率とフラクタル次元の関係性を算出するか否かを判定する(ステップS304)。例えば、受付部221は、劣化・故障の発生率とフラクタル次元の関係性を算出する処理の要求を操作者から受付けたか否かを判定する。ここで、受付部221は、劣化・故障の発生率とフラクタル次元の関係性を算出すると判定した場合(ステップS304、Yes)、劣化・故障の発生条件が既知であるか否かを判定する(ステップS305)。なお、受付部221は、劣化・故障の発生率とフラクタル次元の関係性を算出すると判定しなかった場合(ステップS304、No)、ステップS311に移行する。
受付部221は、劣化・故障の発生条件が既知であると判定しなかった場合(ステップS305、No)、保守対象設備の候補の設定を受付ける(ステップS306)。一方、受付部221は、劣化・故障の発生条件が既知であると判定した場合(ステップS305、Yes)、発生条件を反映した保守対象設備の候補の設定を受付ける(ステップS307)。
続いて、設定部222は、発生率を設定する(ステップS308)。そして、選択部223、試行回数決定部224及び算出部225は、関係性算出処理を実行する(ステップS309)。なお、ステップS309の詳細については、図16を用いて説明する。また、この関係性算出処理では、ステップS302で設定された保守対象エリアについて発生率とフラクタル次元との関係性を算出するものとするが、保守対象エリアを変更して発生率とフラクタル次元との関係性を算出するようにしてもよい。かかる場合、ステップS309の処理を実行する前に、再度保守対象エリアの設定を受付ける。
ステップS309の後、算出部225は、近似曲線を算出する(ステップS310)。そして、判定部226は、分散状況を判定する(ステップS311)。また、分析装置200は、算出過程、算出結果及び判定結果を記録する(ステップS312)。例えば、算出部225は、算出過程及び算出結果を算出ログDB116に格納し、判定部226は、判定結果を算出ログDB116に格納する。
続いて、判定部226は、判定結果を比較する要求を受付けたか否かを判定する(ステップS313)。ここで、判定部226によって、判定結果を比較する要求を受付けたと判定されなかった場合(ステップS313、No)、出力制御部227は、判定結果を出力する(ステップS314)。一方、判定部226によって、判定結果を比較する要求を受付けたと判定された場合(ステップS313、Yes)、出力制御部227は、判定部226による比較結果を出力する(ステップS315)。ステップS314又はステップS315の処理の終了後、分析装置200は、処理を終了する。
なお、図15に示す例では、分析装置200が、フラクタル次元を用いて、インフラ設備の分散状況を判定した後に、発生率とフラクタル次元の関係性を把握するか否かを判定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2の実施形態に係る分析装置200は、インフラ設備の分散状況を示す値を算出せずに、発生率とフラクタル次元との関係性を算出するようにしてもよい。かかる場合、分析装置200は、ステップS302の処理の後、ステップS303及びステップS304を実行せずに、ステップS305の処理を実行する。また、ステップS303の処理を実行後に、保守対象領域と保守対象設備を変更せずに発生率とフラクタル次元との関係性を算出するのであれば、発生率が100%ある場合のフラクタル次元を算出する処理を実行しなくてもよい。かかる場合、ステップS303によるフラクタル次元の算出結果を利用して、発生率とフラクタル次元との関係性を算出する。
図16は、第2の実施形態に係る関係性算出処理の手順を示すフローチャートである。なお、この処理は、図15に示すステップS309の処理に対応する。図16に示すように、選択部223は、発生確率を選択する(ステップS401)。ここで、選択部223は、例えば、設定された12種の発生確率のうち未選択の発生確率を選択する。続いて、選択部223は、乱数により設備を選択する(ステップS402)。例えば、選択部223は、エリア内に設置された保守対象の設備の総数と選択した発生確率とに基づいて選択する設備の数を決定し、決定した数に相当する設備を乱数により選択する。
続いて、試行回数決定部224は、試行回数を決定する(ステップS403)。そして、算出部225は、選択された設備についてフラクタル次元の算出処理を実行する(ステップS404)。なお、フラクタル次元の算出処理の詳細は、図12に示した処理と同様である。
算出部225は、試行回数に達したか否かを判定する(ステップS405)。ここで、算出部225によって、試行回数に達したと判定されなかった場合(ステップS405、No)、分析装置200は、試行回数に達するまでステップS402からステップS405の処理を繰り返し実行する。一方、算出部225は、試行回数に達したと判定した場合(ステップS405、Yes)、選択した発生率でのフラクタル次元の平均値を算出する(ステップS406)。すなわち、算出部225は、選択した発生率において、決定された試行回数分実行したフラクタル次元の算出処理の結果の平均値を算出する。
続いて、算出部225は、未選択の発生率が存在するか否かを判定する(ステップS407)。ここで、算出部225によって、未選択の発生率が存在すると判定された場合(ステップS407、Yes)、分析装置200は、未選択の発生率が存在しなくなるまでステップS401からステップS407の処理を繰り返し実行する。一方、算出部225によって、未選択の発生率が存在すると判定されなかった場合(ステップS407、No)、分析装置200は、関係性算出処理を終了する。
このように、第2の実施形態に係る分析装置200は、対象設備の劣化や故障の発生率を変化させてフラクタル次元のシミュレーションを行うことで、発生率とフラクタル次元の関係性を算出する。そして、第2の実施形態に係る分析装置200は、対象設備の劣化や故障の発生率とフラクタル次元の関係性を近似によって関数化する。これにより、操作者は、例えば、道路に沿って順に点検していく方法で効率が良くなるのは、発生率がどの程度になったときなのかを判断することができるようになる。
なお、第2の実施形態では、劣化や故障の各発生率におけるフラクタル次元の相加平均値を用い、また式(2)も平均値を求めるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、相加平均値以外の統計量、例えば、中央値を採用するようにしてもよい。
(その他の実施形態)
その他の実施形態について開示する。
上述した実施形態では、電柱を保守する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、築年数が所定の年数以上である建築物を保守する場合にも適用可能である。また、上述した実施例では、対象設備の平面での位置を例として説明したが、空間、すなわち3次元を対象としても基本的に上述の方法で実施可能である。この場合、フラクタル次元の最大値は3.0となり、2.0を超えて3.0に近づくほど、分析対象設備の配置は3次元立体的に分散していることを示す。またこの時、ボックスカウント法によるフラクタル次元の算出では、分析対象空間の分割は、たとえば正立方体のような同じ形状・大きさの立体による。
(システム構成等)
上述した実施形態では、分析装置100及び分析装置200は、入力部101を介して操作者から各種設定を受付ける場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、分析装置100及び分析装置200は、ネットワークを介して接続されたクライアント端末から各種設定を受付けるようにしてもよい。一例をあげると、分析装置100は、クライアント端末から保守対象の領域と保守対象の設備とを受付けて、領域内において保守対象である設備を選択する。続いて、分析装置100は、各設備が設置された位置を示す位置情報に基づいて、領域内に設置された各設備の分散状況を示す情報を算出する。続いて、分析装置100は、算出した情報に基づいて、領域内において設備が点的分散、線的分散、及び面的分散のうち、少なくともいずれの一つで設置されているかを判定する。そして、分析装置100は、クライアント端末が有する所定の出力部に判定結果を出力させる。或いは、分析装置200は、クライアント端末から異常発生率とフラクタル次元の関係性を算出する処理の要求を受付けて、設備に対して設定された異常発生率に基づいて、領域内において保守対象である設備を選択する。続いて、分析装置200は、設定された各異常発生率に対して、選択された設備の分散状況を示す情報を算出して、各異常発生率に対して分散状況を示す情報を対応付けた近似曲線を導出する。続いて、分析装置200は、近似曲線に基づいて、保守の実施に適した故障の発生率を判定する。そして、分析装置200は、クライアント端末が有する所定の出力部に判定結果を出力させる。
また、上述した実施形態では、ボックスカウント法において、ボックスを正方メッシュにより設定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ボックスが互いに重ならないという条件を満たすならば、半径δの円や6角形などの他の図形により設定してもよい。
また、上述した実施形態では、N(δ)を、対象設備を含むボックス(メッシュ)数としたが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、対象設備を覆うために必要な、サイズの上限がδであるボックスの最小個数をN(δ)としてもよく、或いは、対象設備を中に含み、互いに重ならない、大きさがδであるボックスの最大個数をN(δ)としてもよい。
また、上述した実施形態では、ボックスカウント法によるフラクタル次元を算出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、他の算出方法によってフラクタル次元を算出してもよい。例えば、スケール変換法、回転半径法などによってフラクタル次元を算出してもよい。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
(プログラム)
また、上記第1の実施形態において説明した分析装置100が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。例えば、第1の実施形態に係る分析装置100が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述した分析プログラムを作成することもできる。この場合、コンピュータが分析プログラムを実行することにより、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、かかる分析プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された分析プログラムをコンピュータに読み込ませて実行することにより上記第1の実施形態と同様の処理を実現してもよい。以下に、図1に示した、第1の実施形態に係る分析装置100と同様の機能を実現する分析プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。
図17は、分析プログラムを実行するコンピュータ1000を示す図である。図17に例示するように、コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010と、CPU1020と、ハードディスクドライブインタフェース1030と、ディスクドライブインタフェース1040と、シリアルポートインタフェース1050と、ビデオアダプタ1060と、ネットワークインタフェース1070とを有し、これらの各部はバス1080によって接続される。
メモリ1010は、図17に例示するように、ROM(Read Only Memory)1011及びRAM(Random Access Memory)1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、図17に例示するように、ハードディスクドライブ1031に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、図17に例示するように、ディスクドライブ1041に接続される。例えば磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が、ディスクドライブ1041に挿入される。シリアルポートインタフェース1050は、図17に例示するように、例えばマウス1051、キーボード1052に接続される。ビデオアダプタ1060は、図17に例示するように、例えばディスプレイ1061に接続される。
ここで、図17に例示するように、ハードディスクドライブ1031は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093、プログラムデータ1094を記憶する。すなわち、上記の分析プログラムは、コンピュータ1000によって実行される指令が記述されたプログラムモジュールとして、例えばハードディスクドライブ1031に記憶される。具体的には、上記実施形態で説明した算出部123と同様の情報処理を実行する算出手順と、判定部124と同様の情報処理を実行する判定手順とが記述されたプログラムモジュールが、ハードディスクドライブ1031に記憶される。
また、上記第1の実施形態で説明した各種データは、プログラムデータとして、例えばメモリ1010やハードディスクドライブ1031に記憶される。そして、CPU1020が、メモリ1010やハードディスクドライブ1031に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出し、各種処理手順を実行する。なお、第1の実施形態に係る分析装置100が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述した分析プログラムを作成するのと同様にして、第2の実施形態に係る分析装置200が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述した分析プログラムを作成することもできる。かかる場合、分析プログラムは、図13に示した、第2の実施形態に係る分析装置200と同様の機能を実現する。より具体的には、選択部223と同様の情報処理を実行する選択手順と、算出部225と同様の情報処理を実行する算出手順と、判定部226と同様の情報処理を実行する判定手順とが記述されたプログラムモジュールが、ハードディスクドライブ1031に記憶される。
なお、分析プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1031に記憶される場合に限られず、例えば着脱可能な記憶媒体に記憶され、ディスクドライブ等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、分析プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等)を介して接続された他のコンピュータに記憶され、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。