JP6197238B2 - 地下水密閉循環式屋根融雪システム - Google Patents
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Description
しかし限られた面積の土地では得られる熱量にも限度があり、豪雪地での屋根融雪には能力不足である。
地下水散水方式は地下水の熱を直接雪に伝えて融雪するため、人為的な熱源が必要なく、地下水を組み上げるための動力だけで済むので、極めて経済性の高い融雪方法である。
設備のための初期費用も安く、運転費用も安い。
しかし多くの地域の地下水には鉄分が多く含まれ、屋根全体が赤さび色に汚れてしまうなどの問題がある。
さらに地下水の汲み上げ過多によって地盤沈下が発生する事態も生じている。
この地盤沈下問題を解決するため、散水後の水を融雪水とともに回収し、再び地下水層に戻す方法も提案されている(例えば、特許文献2、3参照)が、この方法では汚れた融雪水も地下水層に混入してしまうため、地下水の汚染が懸念される。
実用化例として(株)リビエラの「リビエラ低温融雪」がある。
この地下水密閉循環方式を用いれば、従来地下水の利用で問題となっている地盤沈下や地下水汚染を心配することなく、地下水を融雪に利用することができる。
特許文献5では屋根の配管上部に真空破壊用逆止弁を設けることにより、ポンプ停止時に真空破壊用逆止弁より空気を吸い込み、融雪用金属管及び送水管とも水は落水するとしている。
しかし実験をしてみると、U字形になった配管部分には水が残ってしまうことが判明した。
従ってこの方法では管の中の水を完全に抜くことはできず、水が凍結して運転できなくなるおそれがある。
また、特許文献6には、ポンプ停止時に圧縮空気を配管内に自動的に送り込み、内部の水を強制排水する方法が示されている。
1本の管だけの場合にはこの方法は有効かもしれないが、給水配管が枝分かれしたり、給水配管からさらに多数のパイプが繋がったりしているような場合には適用できないものと考えられる。
低温の熱源である地下水で十分な融雪能力を発揮するためには、効率のいい熱伝達システムを構築することが、ことに重要であるが、従来の取り組みは十分ではなかった。
特許文献4においては、地下水の通る金属管を熱伝導の良い接着剤(例えば金属粉混入のアクリル樹脂添加のアスファルト)により鉄板屋根と一体化させることにより地下水の熱が屋根全面にほぼ均等に伝播するとしている。
しかし接着剤の熱伝導性能には疑問があるとともに、屋根を覆うトタン材は一般には1mmにも満たない薄さであり、熱伝達経路の断面積が不足し熱伝達能力が十分でないため、屋根全面で均等な融雪能力を発揮することは期待できない。
また特許文献5では、地下水を通す熱伝導パイプとシートを酢酸ビニールで一体成型して屋根に貼り付ける、もしくは熱伝導パイプを個別に屋根に貼り付けることとしているが、一般的に樹脂は熱伝導率の点で劣っており、重要な伝熱部材に用いていることには問題がある。
また特許文献4について述べたことと同じ理由で屋根材への均一な熱伝導は期待できず、熱伝導パイプ上に直接降る雪以外は融かすことが難しいと思われる。
前述した(株)リビエラの実用化例では、雪に熱を伝える役目を果たすパイプは設置間隔が広く、パイプの上に直接降る雪以外には熱が伝わりにくい。
またパイプの材質も塩ビであるので熱伝導率は小さい。
従って豪雪地で使うには融雪能力が不足するものと思われる。
パイプの中を流れる地下水は、流れるにつれて、雪を融かすごとにその熱を奪われていくので、パイプ1本の長さが長いと、パイプ終端部では温度が低下し、伝わる熱の量が減少して融雪ムラが生ずる。
特許文献5及び前述の実用化例では1本の長いパイプを何度も折り返しながら使っており、融雪ムラが生じる可能性が高い。
屋根の上は地面より温度が低下しやすいためである。
本発明では、運転を停止した時、屋根の上の配管内は負圧になるため、逆止弁10が開いて空気が入り、屋根の配管4,8やパイプ5の中にあった水の大半は重力に従って井戸1,9に戻る。
配管4,8のうち、水が抜けない部分には、運転停止時に開いている逆止弁11が設けられているため、溜まった水は開いた逆止弁11から配管外に流れ出し、配管4,8やパイプ5の中に溜まったままになることがない。
従って、夜間などに気温が氷点下に下がった場合でも、配管4,8やパイプ5が凍結する心配はない。
また、融けた融雪水は、融雪板の上に留まらずに下の屋根材に流れ落ちてしまうため、融雪水に余計な熱を奪われることがなく、熱が有効に融雪に使われる。
また、固体間に単位時間に伝わる熱量は、固体間の接触面積、及び各個体材料の熱伝導率、及び伝熱経路の断面積に比例する。
地下水は15℃程度の温度しかなく、約0℃の雪との温度差は小さいため、熱が伝わりにくい。
しかし、熱伝導率の良いアルミや銅をパイプや融雪板の材料として使うとともに、パイプと融雪板の接触面積を大きくし、かつ厚みの厚い融雪板を用いて、太い伝熱経路を確保することにより、低温熱源を用いることのハンディキャップを克服できるものと考えられる。
本発明では、請求項2,4,6に記したような方策により、パイプ5と融雪板6の伝熱経路の接触面積を確保して熱伝達性能の向上を図っているため、パイプの中を流れる地下水の熱を効率よく融雪板6に伝えることができる。
本発明は、給水井戸1に連結し屋根の軒先に沿って設置した給水配管4と、屋根の棟に沿って設置し戻り井戸9又は給水井戸1まで連結した戻り配管8と、屋根の上で一端を給水配管4に接続し他端を戻り配管8に接続したパイプ5と、地下水2を汲み上げ給水配管4に供給するポンプ3と、パイプ5の上に接合した融雪板6と、棟沿いの戻り配管8に設けた逆止弁10と、運転停止時に水が抜けない配管部分の底に設けた逆止弁11とで構成される。
パイプ5および融雪板6はアルミ、銅など熱伝導率の良い材料を用いるのが基本である。
逆止弁11は、運転停止中で水圧がかからない状態では常に弁が開いていて、運転中に水圧がかかったら閉じる仕様のものを用いる。
図2、図3のパイプ5a、5bの外周の一部を平滑面12,13とし、その平滑面12,13に融雪板6を接合する。
また、パイプ5a、5bの平滑面12,13の幅を下流側であるほど広くする。
図2のパイプ5aの作り方は、例えば断面が円形のパイプをベッドの長いフライス盤に片方の端が高くなるように固定し、で適当な一定の高さで正面フライス加工をすればよい。
この場合、パイプの肉が薄くなり、融雪板への熱伝達がさらに良好となる。
図3のパイプ5bの作り方は、例えば断面が四角形のパイプをベッドの長いフライス盤に斜めに固定し、パイプ上面の一部を長手方向に削り取ればよい。
図4の融雪板6aがパイプと接合する部分において、融雪板6aはパイプ5の形状に隙間無く合致するように形成する。
また、融雪板6aの取り付け位置が下流側であるほど、融雪板6aとパイプ5との合致幅を大きくする。
図4の融雪板6aの作り方は、例えばパイプ5が円形断面である場合、融雪板6aをフライス盤に固定し、パイプの外形と一致するボールエンドミルを用いて加工する。
この場合、下流に用いる融雪板ほどエンドミルの切り込み深さを大きくし、パイプとの合致幅が広くなるようにする。
図5の融雪板6とパイプ5が接合する部分に熱伝導部品7を挟んでおり、その熱伝導部品のパイプ5側はパイプ5の形状に隙間無く合致するように形成し、融雪板6側は平滑面を形成する。
また、融雪板6の取り付け位置が下流側であるほど、挟まれる熱伝導部品7の平滑面の面積を大きくする。
熱伝導部品をその平面の広さが異なるものと交換することで、簡単にパイプと融雪板の接触面積を調節することができる。
ポンプ5の運転は降雪センサーと連動して雪が降り始めたらすぐに開始すると効率的に融雪できる。
また、降雪量が多い地域ほどポンプ3の汲み上げ量を増やす必要がある。
戻りの地下水は戻り配管8を通して戻り井戸9又は給水井戸1に導き、地下水層に戻す。
運転を停止した時、屋根の上の配管内は負圧になるため、逆止弁10が開いて空気が入り、屋根の配管4,8やパイプ5の中にあった水の大半は重力に従って井戸1,9に戻る。
配管4,8のうち水が抜けない部分には、運転停止時に開いている逆止弁11が設けられているため、溜まった水は開いた逆止弁11から配管外に流れ出し、配管4,8やパイプ5の中に溜まったままになることがない。
従って、夜間などに気温が氷点下に下がった場合でも、配管4,8やパイプ5が凍結する心配はない。
融雪能力を左右する要素としては、図1におけるパイプ5の材質、設置間隔や長さ、融雪板6の材質や厚み、パイプと融雪板の接触面積や接合状態、地下水の汲み上げ量等が挙げられる。
パイプや融雪板の材質はアルミニウムや銅など熱伝導率の良い材料を選ぶことが肝要であるが、耐久性や強度を重視すればステンレス鋼も選択肢として考えられる。
パイプの設置間隔は30cm以下とすることが融雪板の温度の均一性を保つために望ましい。
パイプ下流側の水温の大幅な低下を避けるためにはパイプの長さはなるべく短いほうが望ましいが、どうしても長くする必要があれば内径の大きなパイプを採用し、地下水供給流量も増やす必要がある。
融雪板の厚みは伝熱能力に大いに関係する。
いくら熱伝導率の良い材料を使っても十分な厚みが無ければ必要な熱量を伝達することはできない。
また、何らかのアクシデントでシステムが稼働せず、融雪板の上に大量の雪が積もってしまうことも考えられ、その荷重に耐えるためにも融雪板はある程度の厚みが必要である。
以上のことを勘案し、融雪板の厚みは3mm以上であることが望ましい。
パイプから融雪板への熱の伝わり方は接合部分の接触面積だけではなく、パイプと融雪板の接触圧や接触面の仕上がり状態により大きな影響を受ける。
パイプと融雪板の接合は、適切な止め具で締め付け、接触圧を保つ必要がある。
また、接触面はなるべく滑らかに正確に仕上げ、密着させることが望ましい。
地下水を汲み上げるポンプの能力は、雪の多い地域では屋根面積1m2当たり1l/min以上であることが望ましい。
この汲み上げ量は、時間当たり降雪量が少ない時には過分な量となる。
そこで、ポンプをインバーター方式にして降雪量に応じて出力を調節できるようにすれば、経済的な運転が可能となり、運転経費の節約になる。
また、地下水の熱を無駄なく融雪だけに使うためには、融雪に使う面を除いて断熱処理することが有効である。
山間部など積雪が極端に多く寒い地域や、地下水の温度が低い地域では、汲み上げる地下水の量を増やしても融雪能力が不足し、補助熱源が必要となることが考えられる。
その場合、図6に示すように、ヒートポンプを用いて戻り配管の水から吸熱し、その熱を給水配管の水に放熱し、その温度を上げることで、効率的に融雪能力を高めることができる。
地下水を豊富に使える環境であれば、図7に示すように、汲み上げた地下水の一部をそのままヒートポンプの熱源として使用できる。
この場合、ヒートポンプの熱源となる水は第2実施例よりも高い温度となるので、融雪に使う給水配管の水の温度をより効率良く上げることができ、さらに融雪能力を高めることができる。
補助熱源を使うなら従来の温水循環方式と同じとも思えるが、従来の温水循環方式は、融雪に必要な熱を全てボイラーなどの人工的な熱源に頼らなければならないのに対し、本発明では地下水の熱を主に使い、不足する部分を補うだけなので、必要な補助熱源はずっと少なくて済む。
これらの場合には、配管やパイプ、融雪板はコンクリートやアスファルトで埋め、表面はコンクリート舗装又はアスファルト舗装とするとよい。
本発明を応用する利点は、地下水の汲み上げによる地盤沈下が起こらないこと、及び従来散水法のように歩行者に散水がかかり、歩行者の着物が汚れる心配が無いことである。
しかも、熱伝達効率に優れた融雪板を具備しているため、パイプだけしかない従来の地下水密閉循環方式より融雪能力が高く、かつ融雪ムラがないことが大きな利点となる。
これにより、風呂水を温めるための光熱費を節約することができる。
また、温まった水を地下水層に戻すことによって、地下水の温度が上がるので、冬季の運転時にはさらに効率的に融雪することができる。
2 地下水
3 ポンプ
4 給水配管
5 パイプ
5a 外周の一部に平滑面を持つパイプ
5b 外周の一部に平滑面を持つパイプ
6 融雪板
6a パイプ形状に合わせて形成した融雪板
7 熱伝導部品
8 戻り配管
9 戻り井戸
10 逆止弁
11 逆止弁
12 平滑面
13 平滑面
14 ヒートポンプ
Claims (7)
- 給水井戸に連結され屋根の軒先に沿って設置された給水配管と、屋根の棟に沿って設置され戻り井戸又は給水井戸まで連結された戻り配管と、屋根の上で一端を給水配管に接続され他端を戻り配管に接続されたパイプと、地下水を汲み上げ給水配管に供給するポンプと、パイプの上に接合された融雪板と、棟沿いの戻り配管に設けられた逆止弁と、運転停止時に水が抜けない配管部分の底に設けられた逆止弁とで構成されることを特徴とする地下水密閉循環式屋根融雪システム。
- 請求項1に記載の屋根融雪システムであって、パイプの外周の一部が平滑面となっており、その平滑面に融雪板が接合されていることを特徴とする地下水密閉循環式屋根融雪システム。
- 請求項2に記載の屋根融雪システムであって、パイプの平滑面の幅が下流側であるほど広くなっていることを特徴とする地下水密閉循環式屋根融雪システム。
- 請求項1に記載の屋根融雪システムであって、融雪板がパイプと接合する部分において、融雪板はパイプ形状に隙間無く合致するように形成されていることを特徴とする地下水密閉循環式屋根融雪システム。
- 請求項4に記載の屋根融雪システムであって、融雪板の取り付け位置が下流側であるほど、融雪板のパイプとの合致幅が大きくなっていることを特徴とする地下水密閉循環式屋根融雪システム。
- 請求項1に記載の屋根融雪システムであって、融雪板とパイプが接合する部分に熱伝導部品を挟んでおり、その熱伝導部品のパイプ側はパイプ形状に隙間無く合致するように形成され、融雪板側は平滑面が形成されていることを特徴とする地下水密閉循環式屋根融雪システム。
- 請求項6に記載の屋根融雪システムであって、融雪板の取り付け位置が下流側であるほど、挟まれる熱伝導部品の平滑面の面積が大きくなっていることを特徴とする地下水密閉循環式屋根融雪システム。
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