JP6195268B2 - 鼻炎の予防治療装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鼻炎の予防治療装置に関する。
乾癬、白班、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の治療おいて、狭帯域紫外線を使用した光線療法が行われている。狭帯域紫外線とは、308-313nmの非常に狭い波長域を持つ紫外線(狭帯域中波紫外線)であり、抗アレルギー作用を有しているので、上記のごとき皮膚疾患に使用されている(特許文献1、2参照)。
一方、花粉症として知られる季節性アレルギー性鼻炎や、通年性アレルギー性鼻炎などの鼻炎の患者が増えており、これらの鼻炎の予防や症状の軽減のための治療が行われている。例えば、坑ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン薬、抗アレルギー薬のような薬剤の系統的使用や、ステロイドスプレー、D.S.C.G.、局所うっ血除去薬による局所療法などが行われている。
近年、アレルギー性鼻炎等の予防や症状軽減のための治療として、光線療法が試みられている。
例えば、特許文献3、4には、赤色光を発光する発光体を鼻腔に挿入して赤色光を鼻腔内に照射する器具が開示されており、赤色光によって鼻炎を治療することができる旨が記載されている。
また、特許文献5には、ペンシル状のケース体に、紫外線光を発する発光ダイオードを設けた花粉症治療器が開示されており、その紫外光を患部に照射することによって、紫外光の滅菌作用により症状が改善される旨の記載がある。
さらに、非特許文献1〜3には、リノライト(Rhinolight)をアレルギー性鼻炎の治療に使用した例が開示されている。リノライトは、可視光線75%、長波紫外線(UVA)25%、中波紫外線(UVB)5%、を含む光を照射することができる器具である。そして、非特許文献1〜3には、リノライトが放出する光を鼻粘膜に照射することによって、アレルギー性鼻炎を改善できる旨の記載もある。
しかるに、特許文献3〜5には、赤色光や紫外光を患部に照射することにより鼻炎を治療することができる旨の記載はあるものの、かかる効果を実証する実験例は全く開示されておらず、赤色光やの紫外光を照射することによる鼻炎の治療効果は不明である。
一方、非特許文献1〜3では、リノライトの照射によるアレルギー性鼻炎の治療効果を示した実験データは開示されているものの、リノライトでは、可視光線、長波紫外線、中波紫外線、を含む光を照射しているため、どの波長の光が作用しているかは明確ではない。とくに、リノライトには中波紫外線は5%しか含まれていないため、非特許文献1〜3の実験結果から、中波紫外線や中波紫外線に含まれる狭帯域中波紫外線がアレルギー性鼻炎の治療効果に与える影響を把握することは困難である。
一方、特許文献6には、紫外線ビームを放射する紫外線源を備えた光線療法装置が開示されている。この特許文献6には、実験例として、raqweedによる枯草熱にかかっている患者の鼻腔内粘膜に塩化キセノン・レーザから供給される、308nm波長の紫外線ビーム(例1、2、4)または310〜315nmの波長を含む紫外線ビーム(例3)、を照射した例が開示されている。そして、かかる紫外線ビームを照射することによって患者の症状が改善された旨の記載がある。
特開2004−350946号公報 特開2008−73148号公報 実用新案登録第3138513号公報 特開平7−236700号公報 実用新案登録第3110728号公報 特許第4245476号公報
Brehmer D,"Endonasal phototherapy withRhinolight for the treatment of allergic rhinitis" Expert Review of MedicalDevices. 2010 Jan.7, Volume 7, Number 1. " Histopathologicalevaluation of the effect of intranasal phototherapy on nasal mucosa in rabbits",Journal ofphotochemistry and Photobiology B: Biology 105(2011) 94-97 " Effects of intranasalphototherapy on nasal mucosa in patients with allergic rhinitis",Journal ofphotochemistry and Photobiology B: Biology 89 (2007)163-169
しかるに、特許文献6において、308nm波長または310〜315nmの波長を含む紫外線ビームを照射することによって患者の症状が改善された旨が記載されているものの、紫外線の波長と症状改善との関係は何ら示されていない。
そして、特許文献6では、非常に短時間で高エネルギー(20mJ/cm/s以上)の紫外線を照射しており、かかる高エネルギーの紫外線を発生させるために、塩化キセノン・レーザを光源としている。このため、装置が大掛かりになりしかも紫外線のエネルギーが大きく危険を伴うため、病院での治療には使用できるものの、一般的家庭などにおいて、患者自身が予防的に使用することは不可能である。
本発明はかかる事情に鑑み、花粉症やアレルギー性鼻炎などの症状を引き起こす物質の発生を抑制することができ、しかも、一般的家庭などにおいて予防的に使用することができる鼻炎の予防治療装置を提供することを目的とする。
第1発明の鼻炎の予防治療装置は、鼻孔内に挿入される挿入部と、該挿入部に設けられた光源から放射される紫外線を外部に照射する光照射部と、を有する光供給手段を備えており、前記光照射部は、中心波長が310nm±2nmに調整された紫外線を外部に照射するものであり、前記挿入部は、その先端部に光検出器を備えており、前記光照射部は、鼻孔内に挿入されている状態よりも強い強度の光を前記光検出器が検出すると、外部への紫外線の照射を停止するように制御されていることを特徴とする。
第2発明の鼻炎の予防治療装置は、光源から放射される紫外線を外部に照射する光照射部が設けられた、鼻孔内に挿入される挿入部を有する光供給手段を備えており、前記光照射部は、中心波長が310nm±2nmに調整された紫外線を外部に照射するものであり、前記光照射部は、該光照射部から35mmの位置における紫外線の強度が、100〜300mJ/cm /hである紫外線を外部に照射するものであり、前記光照射部から鼻腔内の前側に位置する粘膜に照射される紫外線の一日の総照射量が、100mJ/cm より大きく800mJ/cm 以下となるように制御されていることを特徴とする。
第3発明の鼻炎の予防治療装置は、第1または第2発明において、前記光照射部は、外部に照射する紫外線の照射角度が60度±5度となるように調整されていることを特徴とする。
第4発明の鼻炎の予防治療装置は、第1、第2または第3発明において、前記挿入部は、該挿入部を鼻孔内に挿入する長さが10mm以下となるように規制する規制部を備えていることを特徴とする。
第5発明の鼻炎の予防治療装置は、第1、第2、第3または第4発明において、前記光源が、LEDであることを特徴とする。
第1発明によれば、鼻孔内に挿入部を挿入すれば、中心波長が310nm±2nmに調整された紫外線を光照射部から鼻腔内に照射することができる。すると、照射される紫外線の波長が上記範囲であるから、紫外線の強度が弱くても、花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状を抑制することができる。挿入部が鼻孔内に入っている状態以外では、紫外線の照射が停止されるので、誤って鼻孔内以外の部分に紫外線が照射される可能性を低くすることができる。
第2発明によれば、鼻孔内に挿入部を挿入すれば、中心波長が310nm±2nmに調整された紫外線を光照射部から鼻腔内に照射することができる。しかも、上記範囲の波長の弱い強度の紫外線を、所定の量だけ鼻腔内の粘膜に照射するので、花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状の発生を効果的かつ安全に抑制することができる。また、紫外線の強度が弱いので、照射される紫外線の取り扱い性がよくなるし、光照射部から紫外線を照射させるための装置を小型化できる。そして、専門知識のない人でも操作できるので、一般的家庭などにおいて、アレルギー性鼻炎の症状が発生しないように、予防的に使用することも可能となる。
第3発明によれば、鼻腔内に花粉が接触する、鼻腔内の前側に位置する粘膜(下鼻甲介の粘膜)のほぼ全体に紫外線を照射させることができる。したがって、外出する前などに紫外線を照射しておけば、花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状が発生することを抑制することができる。
第4発明によれば、挿入部が鼻前庭よりも奥に入ること防止することができるので、挿入部によって鼻粘膜が損傷することを防ぐことができる。
第5発明によれば、光源を挿入部に設けることが可能となるので、装置の取り扱い性を向上させることができる。
本実施形態の鼻炎の予防治療装置1の概略説明図である。 鼻炎の予防治療装置1における光照射部10の挿入部12先端の概略断面図である。 他の実施形態の鼻炎の予防治療装置1Cの概略説明図である。 さらに他の実施形態の鼻炎の予防治療装置1の概略説明図である。 鼻炎の予防治療装置1Bによって鼻腔内粘膜に紫外線を照射している状況の概略説明図である。 (A)は実験に使用する310nmLEDのスペクトル特性を示したグラフであり、(B)は実験に使用する315nmLEDのスペクトル特性を示したグラフであり、(C)実験に使用した光源の概略説明図である。 (A)は実施例1の実験フローの説明図であり、(B)は実施例1の実験結果を示した図である。 (A)は実施例2の実験フローの説明図であり、(B)は実施例2の実験結果を示した図である。
本発明の鼻炎の予防治療装置は、鼻炎の予防または治療に使用される装置であって、専門家以外でも簡単に使用できるものである。
本発明の鼻炎の予防治療装置によって予防または治療される鼻炎は、花粉症等の季節性アレルギー性鼻炎や通年性アレルギー性鼻炎等を原因とする鼻炎などであるが、とくに限定されない。
本発明の鼻炎の予防治療装置は、従来の紫外線を利用した光線治療装置に比べて強度の弱い狭帯域紫外線であっても、アレルギー性鼻炎の症状を改善できるものである。
従来の紫外線を利用した光線治療装置では、紫外線の強度が強いため(例えば、数秒間で100mJ/cm、特許文献6の例参照)、鼻腔内の粘膜などに紫外線を短時間しか照射することができなかった。
しかし、本発明者らは、特定の周波数の紫外線であれば、その強度が弱くてもアレルギー性鼻炎などの症状の原因となる物質の発生を抑制できること、およびかかる強度が弱い紫外線をある程度長い時間照射することによって前記物質の発生をより確実に抑制できること、を初めて確認して、本発明を完成させたのである。
例えば、スギ花粉等の抗原がIgE抗体と結合すると、肥満細胞がヒスタミンを放出し、このヒスタミンがヒスタミンH1受容体と結合する。すると、ヒスタミンH1受容体はアレルギー疾患感受性遺伝子であるので、アレルギー症状が発症し、アレルギー性鼻炎が発症する。
しかし、本発明者らは、従来に比べて弱い強度の狭帯域紫外線をある程度の時間照射することによって、ヒスタミンH1受容体の遺伝子発現の亢進が抑制されることを確認した。ヒスタミンH1受容体の遺伝子発現の亢進が抑制されれば、肥満細胞がヒスタミンを放出しても、ヒスタミンがヒスタミンH1受容体と結合が抑制されるので、アレルギー症状を抑制することができるのである。
また、IgE抗体の産生を誘導するアレルギー関連サイトカインであるIL-4の遺伝子発現が亢進することによって、アレルギー症状が発症し、アレルギー性鼻炎が発症する。
しかし、本発明者らは、従来に比べて弱い強度の狭帯域紫外線をある程度の時間照射すると、アレルギー関連サイトカインであるIL−4の遺伝子発現の亢進が抑制されることを確認した。アレルギー関連サイトカインであるIL−4の遺伝子発現の亢進が抑制されれば、IgE抗体が減少するので、アレルギー症状を抑制することができるのである。
(本実施形態の鼻炎の予防治療装置1の説明)
図1に示すように、本実施形態の鼻炎の予防治療装置1(以下単に装置1という)は、光供給手段10と、この光供給手段10の作動を制御する制御手段20と、を備えている。
まず、光供給手段10について説明する。
図1に示すように、光供給手段10は、グリップ部11と挿入部12とを備えている。
図1に示すように、グリップ部11は、略筒状に形成された部材である。このグリップ部11は、人が光供給手段10を操作するときに人が持つ部分である。
例えば、グリップ部11は、直径2〜3cm程度の筒体の周囲にゴムシート等の滑り止め部材を巻いたもので形成することができる。また、図3に示すように、グリップ部11にハンドル部11gを設けて、このハンドル部11gを人が握るようにしてもよい。つまり、グリップ部11は、人が持って光供給手段10を操作しやすい形状や大きさ、具体的には、人が挿入部12を鼻孔に入れやすく、しかも、挿入部12を鼻孔に入れた状態を人が安定して維持できるような形状や大きさに形成されていればよい。
図1に示すように、グリップ部11の先端には、挿入部12が設けられている。この挿入部12は、グリップ部11とほぼ同軸な軸状の部材であり、その先端に紫外線を外部に照射し得る光照射部13が設けられている。このため、挿入部12の先端を鼻孔に挿入すると、鼻腔内粘膜に紫外線を照射することができる。この挿入部12の構成については、後述する。
つぎに、制御手段20を説明する。
制御手段20は、挿入部12の光照射部13の作動を制御するものである。具体的には、制御手段20は、光照射部13を作動させる電力を供給したり、光照射部13による紫外線の照射停止を制御したりするものである。また、制御手段20は、光照射部13に供給する電力を調整して、光照射部13から照射される紫外線の強度を調整する機能を有していてもよい。
この制御手段20と光照射部13は電気的に接続されており、電力や制御信号を制御手段20から光照射部13に供給できるようになっている。電力や制御信号を制御手段20から光照射部13に供給できるようになっていれば、両者を電気的に接続する方法はとくに限定されない。
例えば、コード21をグリップ部11や挿入部12内に挿通して、このコード21によって挿入部12の先端に位置する光照射部13と制御手段20を接続することができる。
また、グリップ部11や挿入部12内に光照射部13と電気的に接続された基盤等を設けて、この基盤等にコード21を接続して、コード21と基盤等とを介して制御手段20と光照射部13とを電気的に接続するようにしてもよい。
さらに、制御手段20と光照射部13とを物理的に接続しなくてもよい。例えば、光供給手段10内(例えばグリップ部11内等)に電源を設けて、この電源から光照射部13に電力を供給するようにして、制御信号だけを制御手段20から光照射部13に対してワイヤレスで送信するようにしてもよい。
もちろん、図4に示すように、光供給手段10と別に制御手段20設けず、グリップ部11に制御手段20の機能を全て設けてもよい。
装置1が以上のような構造であるので、図5に示すように、光供給手段10のグリップ部11を人が保持して、挿入部12の先端を鼻孔に挿入し、制御手段20によって光照射部13が紫外線を外部に照射するように作動させれば、鼻腔内粘膜に紫外線を照射することができる。
そして、光供給手段10のグリップ部11を人が保持しやすい形状大きさに形成すれば、光供給手段10の挿入部12の先端を鼻孔に挿入しやすくなるので、取り扱い性が向上する。
つぎに、光供給手段10の挿入部12について、詳しく説明する。
図2に示すように、挿入部12は、その先端に光照射部13が設けられている。この光照射部13は、その先端面から紫外線を照射できる機能を有しており、紫外線を放射する光源となるLED14を備えている。このLED14は、狭帯域紫外線を発光することができるLEDである。具体的には、このLED14は、中心波長が310nm±2nm、好ましくは、310nm±1nmに調整された紫外線を放射することができるものである。
なお、LED14が発光する狭帯域紫外線のスペクトル波形はとくに限定されないが、スペクトル波形の半値幅が狭い波形のほうが所定の狭帯域紫外線を照射できるので好ましい。例えば、上述したように、中心波長が310nm±2nmであれば、半値幅が5〜20nm程度、好ましくは半値幅が5〜15nm程度、よリ好ましくは5〜10nm程度であるスペクトル波形を有する狭帯域紫外線が好ましい。
このLED14は、上述したコード21や基盤等に接続された配線15を介して、制御手段20の電源に接続されている。そして、このLED14は、制御手段20の電源から供給される電力に応じた強度の紫外線を外部に放出するように構成されている。具体的には、LED14は、供給する電力を調整すれば、光照射部13から35mmの位置における強度が100〜400mJ/cm/h程度の紫外線を外部に照射することができる機能を有している。つまり、制御手段20によってLED14に供給する電力を調整すれば、100〜400mJ/cm/h程度の強度の紫外線を、鼻腔内粘膜に照射することができるのである。
光照射部13が以上のごとき構成であるので、鼻孔内に挿入部12の先端部を挿入すれば、中心波長が310nm±2nmに調整された紫外線を鼻腔内粘膜に照射することができる。かかる波長の紫外線であれば、紫外線の強度が弱くても、花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状を抑制することができる。つまり、100〜400mJ/cm/h程度、好ましくは300mJ/cm/h程度の紫外線であっても、鼻腔内粘膜に照射すれば、花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状を抑制することができる。
そして、紫外線の強度が弱いので、専門知識のない人でも装置1を操作して、鼻腔内粘膜に紫外線を照射することが可能となる。すると、一般的家庭などにおいて、患者自身や家族などが装置1を用いて、アレルギー性鼻炎の症状が発生しないように予防したり、症状が軽い段階でのアレルギー性鼻炎の症状を改善する治療を行ったりすることが可能となる。
また、アレルギー性鼻炎等の症状を抑制する上では、上述した波長の紫外線を、ある程度の量、鼻腔内粘膜に照射することが望ましい。例えば、一人の患者(治療者)について、1日あたりの総照射量が、10〜800mJ/cm程度、好ましくは100〜600mJ/cm程度、さらに好ましくは200〜400mJ/cm程度となるように、鼻腔内の前側に位置する粘膜(下鼻甲介)に紫外線を照射すれば、アレルギー性鼻炎等の症状を抑制する効果をより高めることができる。
ここで、紫外線の強度が強い場合には、所定の総照射量に達するまでの時間、つまり、紫外線の照射時間を短くすることができるものの、短時間の照射になるので、鼻腔内粘膜の適切な位置に十分な量の紫外線を照射することは難しい。
一方、本実施形態の装置1の場合、紫外線の強度が100〜400mJ/cm/hであり紫外線の強度が弱いので、所定の総照射量に達するまでの時間は長くなる。例えば、総照射量を300mJ/cm程度とするには、150mJ/cm/hの紫外線の強度であれば2時間程度、200mJ/cm/hの紫外線の強度であれば1.5時間程度、紫外線を鼻腔内粘膜に照射することになる。ある程度長時間紫外線を鼻腔内粘膜に照射することができれば、鼻腔内粘膜のほぼ全体に満遍なく紫外線を照射することが容易になる。すると、鼻腔内粘膜のほぼ全体で、花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状の発生を効果的に抑制することができるという利点が得られる。
なお、紫外線は所定の総照射量になるまで連続して鼻腔内粘膜に照射してもよいし、何回かに分けて紫外線を鼻腔内粘膜に照射してもよい。つまり、1日に紫外線を照射した総量(同じ強度の紫外線を照射する場合には照射時間)が所定の量(時間)となるように、紫外線を照射するようにすればよい。
ここで、何回かに分けて紫外線を鼻腔内粘膜に照射する場合には、1日にどの程度の紫外線を照射したかを把握しなければならない。しかし、本実施形態の装置1を使用する人が、どの程度の紫外線を照射したかを記憶しておくことは難しい。
そこで、本実施形態の装置1の制御手段20は、1日の紫外線照射量を記憶しておき、一人に照射される総照射量が一定の量を越えた場合には、紫外線を照射しないよにする機能(照射量制御部)を有していてもよい。すると、所定の総照射量以上の紫外線が鼻腔内粘膜に照射されることを防ぐことも可能となる。
例えば、制御手段20に、照射強度調整機能、タイマー機能および総照射量設定機能を有する照射量制御部を設ける。この照射量制御部では、総照射量は予め設定されており使用者による変更が自由にできないようにしておき(管理者(例えば医師や保護者等)による変更は可能)、照射強度や一回の照射時間は、使用する度に使用者が設定できるようにしておく。かかる構成の場合、毎回使用する度に、照射量(照射強度×照射時間)が記憶されるようにしてけば、照射量を積算することによって、現在までの照射量(積算照射量)を把握できる。そして、積算照射量が予め設定されている総照射量を越えた場合、紫外線の照射を停止する(または照射できないようにする)ようにしておけば、総照射量以上の紫外線が鼻腔内粘膜に照射されたことによる鼻腔内粘膜の損傷などを防ぐことができる。
なお、複数人で一つの装置を使用するような場合には、使用する人毎の情報(紫外線強度や紫外線の総照射量など)を記憶できるようになっていることが好ましい。この場合、使用する際に、誰が使用しているのかを特定する(指定する)ボタンや入力部を設けておけば、各使用者について、最適な紫外線を適切な量だけ照射することが可能となる。
(照射角度)
なお、光照射部13は、外部に照射する紫外線の照射角度θが、光照射部13の中心軸CLを挟んで60度±5度(言い換えれば、光照射部13の中心軸に対して30度±2.5度程度)となるように調整されていることが望ましい。すると、挿入部12の先端を鼻孔内に挿入して光照射部13から紫外線を照射すると、鼻腔内の前側に位置する粘膜(下鼻甲介)のほぼ全体に紫外線を照射させることができる。鼻腔内の前側に位置する粘膜は、鼻腔内において花粉が接触する部分である。
したがって、外出する前などに本実施形態の装置1を用いて鼻腔内粘膜に紫外線を照射しておけば、外出時に花粉が鼻腔内の粘膜に接触しても、花粉症などのアレルギー性鼻炎の症状が発生することを抑制することができる。
紫外線の照射角度θを上述したような角度とする方法はとくに限定されない。例えば、LED14自体が上記のごとき角度で紫外線を放射するように製造されている場合には、LED14をそのまま光照射部13の先端に設ければよい。
また、LED14の前面にレンズなどを設けて上記角度となるようにしてもよい。例えば、UVホログラフィックディフューザーをLED14の前面に設ければ、紫外線の照射角度を、所望の照射角度(60度±5度等)となるようにすることができる。
しかも、レンズなどを設けた場合、レンズなどによってLED14が覆われるので、レンズなどをLED14を保護する保護部材としても機能させることもできる。
さらに、レンズなどの前面(レンズなどを設けない場合にはLED14の前)にLED14を保護する保護部材を設けてもよい。例えば、石英ガラス製のブロックなどを保護部材として設ければ、鼻水などがLED14に接触することなどを防止できる。とくに、紫外線の照射角度を広げる場合には、砲弾型に形成された石英ガラス製のブロック17を保護部材として、LED14の前面に配置してもよい(図2(B)参照)。
(光検出器)
また、上述したように、装置1の光照射部13から放射される紫外線の強度は弱いものの、かかる紫外線が人の目などに入ると危険である。そこで、光照射部13は、鼻孔内に挿入されていない状態では、光照射部13から紫外線が放射されないようになっていることが好ましい。例えば、挿入部12の先端部に、光照射部13とともに、光の強度を検出するフォトトランジスタ等の光検出部16を設ける。そして、光検出部16からの信号によって、一定の強度以上(言い換えれば鼻孔内に挿入されている状態よりも強い強度)の光が検出された場合には、光照射部13による紫外線の照射を停止するように、光照射部13の作動を制御する。すると、挿入部12が鼻孔内に入っている状態以外では、紫外線の照射を停止するので、誤って鼻孔内以外の部分に紫外線が照射される可能性を低くすることができる。
なお、光検出部16が光を検出する位置はとくに限定されない。例えば、図2に示すように、挿入部12の側方に設けた検出孔12hを通して光を検出するようにすることができる。この場合、光検出部16を設ける位置、つまり、挿入部12に検出孔12hを設ける位置を適切な位置としておけば、光検出部16の信号によって、挿入部12の挿入量を検出することができる。
例えば、制御手段20に光照射部13が紫外線を照射しているか否かを示すインジケータを設けておく(具体的には、紫外線が照射されている状態で点灯するインジケータを設けておく)。また、挿入部12が鼻孔内に適切な長さだけ挿入されたときに、鼻孔内に検出孔12hが位置するように、検出孔12hを設けておく。すると、検出孔12hの位置まで挿入部12が鼻孔に挿入されると、紫外線が照射されていることを示すインジケータが点灯するので、挿入部12が鼻孔内に適切な長さだけ挿入されたことを使用者が把握することができる。
(規制部)
また、鼻腔内の粘膜に挿入部12が接触すると、粘膜に傷が付く可能性がある。一方、鼻孔の入り口から10mm程度であれば鼻前庭の領域であり、鼻前庭は皮膚で形成されているので、挿入部12が接触しても損傷する可能性が低い。そこで、挿入部12が鼻腔内の粘膜と接触しないように、挿入部12が鼻孔内に10mmより長く進入しないように規制する規制部を設けることが好ましい。
なお、規制部の構造はとくに限定されないが、例えば、挿入部の12の外面に、フランジ状の板や棒状の部材などによって形成されたストッパーなどを設けて規制部とすることができる。
また、ストッパーなどのように物理的に挿入量を規制する規制部を設けず、上述した検出孔12hなどを規制部として機能させることも可能である。しかし、物理的な規制部を設けた場合には、使用者の不注意によって挿入部12の挿入量が大きくなりすぎて、挿入部12が粘膜に接触するという問題が生じることを防止できるので、より望ましい。
(他の光源について)
上記例では、光源としてLED14を使用する場合を説明した。しかし、光源は、上述した波長かつ強度の紫外線を放射できるものであればよく、とくに限定されない。例えば、紫外線ランプなどから放射される紫外線をフィルタに通して、上記の波長帯に含まれる紫外線だけが外部に照射されるようにしてもよい。
なお、LED以外の光源を使用した場合には、光源を挿入部12に設けることは実質的に難しい。したがって、LED以外の光源を使用する場合には、制御手段20などに光源を設けて、光ファイバーなどを利用して、光源が放射した紫外線が光照射部13の先端から外部に照射されるようにすればよい。
本発明の鼻炎の予防治療装置のように、弱い強度の狭帯域中波紫外線によって、アレルギー性鼻炎などの予防や治療を行うことができることを実験により確認した。
実験では、紫外線の照射がヒスタミンH1受容体mRNA発現に与える影響を確認した。
実験では、培養したHeLa培養細胞に対して、室温において、所定の強度に調整された紫外線を3時間照射した。
紫外線を照射した後、HeLa培養細胞をCOインキュベータに戻して、PMA刺激を加えた。
PMA刺激を開始してから3時間後、培養容器内のHeLa培養細胞からRNAを調整し、real time PCRによりヒスタミンH1受容体mRNA発現に与える影響を確認した(図7(A)参照)。
なお、比較のために、紫外線の照射を行わずPMA刺激を加えた場合(図7(B)のPMA)と、紫外線の照射とPMA刺激の両方をしない場合(図7(B)のcontrol)についても、ヒスタミンH1受容体mRNAの発現を確認した。
実験では、照射する紫外線の波長を、310nmと315nmで変化させて、ヒスタミンH1受容体の発現に、紫外線の波長が与える影響を確認した。
また、照射する紫外線の強度も、各波長について、3時間の照射時間で、総照射量が100、300、600mJ/cmとなるように変化させて、ヒスタミンH1受容体の発現に、紫外線の強度が与える影響も合わせて確認した。なお、紫外線の照射時間が3時間であるので、各総照射量における紫外線の強度は、それぞれ、約30mJ/cm/h(100mJ/cm)、約100mJ/cm/h(300mJ/cm)、約200mJ/cm/h(600mJ/cm)となる。
光源には、310nmおよび315nmの波長を中心波長とする紫外線を発光するLEDを基板上に複数配列したものを使用した(図6(C)参照)。使用した各LEDの波長スペクトル特性は、図6(A)のとおりである。
図6(C)に示すようにLEDを配列した光源の場合、光源から20mm離れた位置では、紫外線密度はLED単体を光源とした場合とほぼ一致した。
したがって、発熱などを考慮して、光源は、HeLa培養細胞から35mm離して設置して、紫外線をHeLa培養細胞に照射した。
なお、紫外線の強度は、各LEDに供給する電流を調整することによって制御した。
また、紫外線の強度は、光源から35mm離した位置における強度である。紫外線の強度は、UVメーター(フナコシ株式会社製:型番UVP 97−0015−02)によって測定した。
結果を図7(B)に示す。なお、図7(B)の結果は、各条件について4回実験を行った場合における平均値を示している。
図7(B)に示すように、紫外線の総照射量が100mJ/cmの場合には、310nmおよび315nmの波長の紫外線を照射した場合、PMAに比べてヒスタミンH1受容体の発現が若干少なくなっているものの、ヒスタミンH1受容体の発現を抑制する十分な効果は得られなかった。
紫外線の総照射量が300mJ/cmとした場合、310nmでは、controlと同等程度までヒスタミンH1受容体mRNAの発現が抑制されていることが確認できる。
一方、315nmでは、PMAと同等程度のヒスタミンH1受容体mRNAが発現していることが確認できる。
つまり、紫外線の総照射量が100mJ/cmとした場合には、ある程度の時間、310nmの紫外線を照射すれば、他の波長の紫外線に比べて、特異的にヒスタミンH1受容体の発現を抑制でき、しかも、その効果が非常に大きいことが確認できた。
紫外線の総照射量が600mJ/cmとした場合、310nm、315nmとも、ヒスタミンH1受容体mRNAの発現が抑制されていることが確認できる。しかし、310nm、315nmとも、control以下までヒスタミンH1受容体の発現が抑制されていることから、これらの波長に特有の効果ではなく、紫外線の有する殺菌力などが作用したものであると考えられる。
また、紫外線の強度を変化させても、310nmの紫外線は、315nmの紫外線に比べて、ヒスタミンH1受容体mRNAの発現が抑制されていることから、310nmの紫外線は、ヒスタミンH1受容体mRNAの発現を抑制する機能を特異的に有するものと推察される。
以上の結果より、310nmの波長の紫外線では、ヒスタミンH1受容体mRNAの発現を抑制する機能を特異的に有しており、100mJ/cm/h程度の弱い強度であっても、総照射量を300mJ/cm程度とすれば、ヒスタミンH1受容体mRNAの発現を抑制する機能を十分に発揮することが確認できた。
実験では、紫外線の照射がIL4の遺伝子の発現に与える影響を確認した。
まず、培養した好塩基球細胞に対して、IgE刺激を12時間加えた後、IgEが存在する状態で、所定の強度に調整された紫外線(310nm、315nm)を、200mJ/cm/hの強度で1.5時間、つまり、総照射量が300mJ/cmとなるように照射した。
紫外線を照射した後、好塩基球細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)によって洗浄してIgEを除去した。
IgEが除去された好塩基球細胞を一定時間放置した後、好塩基球細胞にDNP刺激を加えた。
そして、DNP刺激を行なってから1時間後に、好塩基球細胞からRNAを調整し、real time PCRにより好塩基球細胞におけるIL4のmRNAの発現に与える影響を確認した(図8(A)参照)。
比較のために、紫外線の照射を行わずDNP刺激を加えた場合(図8(B)のIgE+Ag)と、紫外線の照射とDNP刺激の両方をしない場合(control)についても、IL4のmRNAの発現を確認した。
なお、紫外線の照射終了から好塩基球細胞を培養容器からかきとるまでの時間(以下、実験時間という)が、4、6、12時間となるように、IgEが除去された好塩基球細胞は一定時間放置した。
また、実験では、実施例1と同じ光源を使用し(図6参照)、実施例1と同様に、光源を好塩基球細胞から35mm離して設置して、紫外線を好塩基球細胞に照射した。
結果を図8(B)に示す。なお、図8(B)の結果は、各条件について4回実験を行った場合における平均値を示している。
図8(B)に示すように、315nmの波長の紫外線を照射した場合には、実験時間にかかわらず、IL4のmRNAの発現状況は紫外線を照射しないIgE+Agの場合と同等であり、紫外線を照射することによるIL4のmRNAの発現抑制効果が得られていないことが確認できる。
一方、310nmの波長の紫外線を照射した場合には、実験時間にかかわらず、IL4のmRNAの発現を有意に抑制できていることが確認できる。
以上の結果より、310nmの波長の紫外線では、IL4のmRNAの発現を抑制する機能を特異的に有しており、200mJ/cm/h程度の弱い強度であっても、総照射量が300mJ/cm程度となるように照射すれば、その機能を十分に発揮することが確認できた。
本発明の鼻炎の予防治療装置は、病院におけるアレルギー性鼻炎の治療や、家庭において日常的に鼻炎予防に使用する装置に適している。
1 鼻炎の予防治療装置
10 光供給手段
12 挿入部
13 光照射部
14 LED
20 制御手段

Claims (5)

  1. 光源から放射される紫外線を外部に照射する光照射部が設けられた挿入部を有する光供給手段を備えており、
    前記光照射部は、
    中心波長が310nm±2nmに調整された紫外線を外部に照射するものであり、
    前記挿入部は、
    その先端部に光検出器を備えており、
    前記光照射部は、
    鼻孔内に挿入されている状態よりも強い強度の光を前記光検出器が検出すると、外部への紫外線の照射を停止するように制御されている
    ことを特徴とする鼻炎の予防治療装置
  2. 光源から放射される紫外線を外部に照射する光照射部が設けられた挿入部を有する光供給手段を備えており、
    前記光照射部は、
    中心波長が310nm±2nmに調整された紫外線を外部に照射するものであり、
    前記光照射部は、
    光照射部から35mmの位置における紫外線の強度が、100〜300mJ/cm/hである紫外線を外部に照射するものであり、
    前記光照射部から鼻腔内の前側に位置する粘膜に照射される紫外線の一日の総照射量が、100mJ/cm より大きく800mJ/cm 以下となるように制御されている
    ことを特徴とする鼻炎の予防治療装置。
  3. 前記光照射部は、
    外部に照射する紫外線の照射角度が60度±5度となるように調整されている
    ことを特徴とする請求項1または2記載の鼻炎の予防治療装置。
  4. 前記挿入部は、
    該挿入部を鼻孔内に挿入する長さが10mm以下となるように規制する規制部を備えている
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載のいずれかに記載の鼻炎の予防治療装置。
  5. 前記光源が、LEDである
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の鼻炎の予防治療装置。
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