以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
(1)第一の実施形態
図1乃至図4に、本発明のコンクリートの透気試験装置の第一の実施形態を示す。このコンクリートの透気試験装置は、吸着試験ユニット1と、吸着ユニット20と、吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とを連結すると共にこれら吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とを接近させたり離隔させたりする連結機構30と、吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とのそれぞれに設けられた移動機構10A,10Bとを備え、吸着試験ユニット1は、平面位置を同じくする開口面を有する平面視円形の中心チャンバー4A及び当該中心チャンバー4Aを環状に囲む第一の環状チャンバー4B及び当該第一の環状チャンバー4Bを環状に囲む第二の環状チャンバー4Cと、中心チャンバー4A内及び第一の環状チャンバー4B内及び第二の環状チャンバー4C内が減圧されたときに閉められてこれら中心チャンバー4Aと第一の環状チャンバー4Bと第二の環状チャンバー4Cとをそれぞれ密閉するためにこれら中心チャンバー4Aと第一の環状チャンバー4Bと第二の環状チャンバー4Cとのそれぞれに設けられたバルブ7A,7B,7Cと、中心チャンバー4Aと第一の環状チャンバー4Bと第二の環状チャンバー4Cとのそれぞれに備えられた気圧センサ6A,6B,6Cとを有するようにしている。
ここで、以下の説明においては、図3及び図4に示すように、吸着試験ユニット1と吸着ユニット20との配置方向及び連結機構30の配設方向(図中におけるX方向)を前後方向としてX(+)を前向きとすると共にX(-)を後ろ向きとし、また、吸着試験ユニット1と吸着ユニット20との配置平面において前後方向と直交する方向(図中におけるY方向)を左右方向とし、さらに、これら前後方向及び左右方向と直交する方向(図中におけるZ方向)を上下方向としてZ(+)を上向きとすると共にZ(-)を下向きとする。
本実施形態では、吸着試験ユニット1が後ろ側に配置され、吸着ユニット20が前側に配置される。
なお、図1乃至図4はあくまでも装置の概略構造を説明するための図であり、例えば各部の連結関係を説明するための図であり、細部の構造については図示を適宜省略している。また、図3及び図4においては、吸着試験ユニット1のバルブ7A,7B,7C及び吸着ユニット20のバルブ26、並びに、これらバルブ7A,7B,7C,26と真空源5,27との間のホースを図示していない。
(1−1)吸着試験ユニット
本実施形態の吸着試験ユニット1は、図1に示すように、平面位置を同じくする開口面を有する平面視円形の中心チャンバー4A及び当該中心チャンバー4Aを環状に囲む第一の環状チャンバーとしての中間チャンバー4B及び当該中間チャンバー4Bを環状に囲む第二の環状チャンバーとしての外周チャンバー4Cと、真空源5によって各チャンバー4A,4B,4C内が減圧されたときに閉められて各チャンバー4A,4B,4Cをそれぞれ密閉するために各チャンバー4A,4B,4Cのそれぞれに設けられたバルブ7A,7B,7Cと、各チャンバー4A,4B,4Cのそれぞれに備えられた気圧センサ6A,6B,6Cとを有し、真空源5によって減圧してからバルブ7A,7B,7Cを閉めて密閉した後の各チャンバー4A,4B,4C内のそれぞれの気圧変化を気圧センサ6A,6B,6Cによって検出するようにしている。
本実施形態の吸着試験ユニット1は、円筒状の周壁として形成されて同心円状に配置された径方向三層(言い換えると、三環状)の内隔壁2A,中間隔壁2B,外隔壁2Cとこれら隔壁2A,2B,2Cの上面を覆う天板3とを有し、内隔壁2Aの内側に中心チャンバー4Aが形成され、内隔壁2Aと中間隔壁2Bとの間に環状(ドーナツ状)の中間チャンバー4Bが形成され、中間隔壁2Bと外隔壁2Cとの間に環状(ドーナツ状)の外周チャンバー4Cが形成される。そして、これら中心,中間,外周チャンバー4A,4B,4Cは径方向三層(言い換えると、中心+二環状)をなすように構成される。
全ての隔壁2A,2B,2C及び天板3は、各チャンバー4A,4B,4Cの気密性を確保することができるように、透気性がない材質で形成される。また、隔壁2A,2B,2C及び天板3の材質は、軽量であることが好ましい。隔壁2A,2B,2C及び天板3の材質として、具体的には例えば合成樹脂が用いられ得る。
なお、各隔壁2A,2B,2Cの寸法は、特定の寸法に限定されるものではなく、試験の効率性や計測の精度や運搬・設置の容易性などを踏まえて適宜設定され得る。例えば、外隔壁2Cの外縁径を200〜300〔mm〕程度,高さを20〜40〔mm〕程度(天板を除く)にすることが考えられる。さらに、あくまで一例として挙げれば具体的には例えば、内隔壁2Aの外縁径を100〔mm〕,中間隔壁2Bの外縁径を150〔mm〕,外隔壁2Cの外縁径を210〔mm〕とすると共に各隔壁の高さを30〔mm〕とし、内隔壁2A及び中間隔壁2Bの厚さを10〔mm〕,外隔壁2Cの厚さを20〔mm〕とすることが考えられる。
ここで、各隔壁2A,2B,2Cによって形成される各チャンバー4A,4B,4C内の空間の開口面からの高さが大きく異なると、コンクリート9から各チャンバー4A,4B,4C内に空気が流れ込んだときの各チャンバー4A,4B,4C内の気圧の変化の幅が大きく異なることになる。例えば、他のチャンバーと比べて開口面からの高さが極端に高いチャンバでは、減圧して密閉した後の時間の経過に伴う気圧の変化が他のチャンバーと比べて小さく、したがってコンクリートから空気を吸い込む力の低減の程度が小さく、このためにコンクリート内の空気の流れを乱してしまうことにもなり、図8(A)に示すような本発明が想定している本発明のコンクリートの透気試験装置による計測時のコンクリート9内における空気の流れ(図中のコンクリート9内の矢印群)が乱され、結果として、同図(B)に示すような本発明が意図しているチャンバー毎のチャンバー内気圧値の変化についての計測結果が得られない虞もある(なお、図8はあくまでも説明のための概念図であり、実際の空気の流れや計測結果を厳密に表すことを意図したものではない)。このため、各チャンバー4A,4B,4Cそれぞれの内部空間の開口面からの高さは、大きく異ならないことが好ましく、同じ若しくは概ね同じであることがより一層好ましい。
なお、本発明が想定している吸着試験ユニット1による計測時のコンクリート9内における空気の流れは、具体的には、図8(A)中のコンクリート9内の矢印群のように、吸着試験ユニット1の外周チャンバー4C内に吸い込まれる空気が吸着試験ユニット1の周囲からコンクリート9の表層部分を外周チャンバー4C内に向かう流れを形成し(言い換えると、吸着試験ユニット1の周囲からも空気を取り込む流れを形成し)、中心チャンバー4A内に吸い込まれる空気が当該中心チャンバー4Aの開口面の範囲で(つまり、中心チャンバー4Aの周囲からの取り込みは少なく)前記外周チャンバー4C内に吸い込まれる空気よりもコンクリート9内の深部から真っ直ぐに若しくは概ね真っ直ぐに中心チャンバー4A内に向かう割合が高い流れを形成し、中間チャンバー4B内に吸い込まれる空気が外周チャンバー4C内に吸い込まれる空気の流れと中心チャンバー4A内に吸い込まれる空気の流れとの間の周囲からの取り込みを伴って当該中間チャンバー4B内に吸い込まれる流れを形成するというものである。
また、上記のコンクリート9内における空気の流れの想定に基づく本発明が意図しているチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧の計測結果は、具体的には、図8(B)のように、各チャンバー4A,4B,4C内の空間の開口面に対する高さが同じ若しくは概ね同じであれば、一般的には深部と比べて空隙が多いコンクリート9の表層を通過して吸着試験ユニット1の周囲から取り込まれる空気の割合が高い外周チャンバー4C内の気圧の変化が最も大きく、空隙が徐々に少なくなる深部から取り込まれる空気の割合が次第に高くなる中間チャンバー4B,中心チャンバー4Aの順にチャンバー内の気圧の変化が小さくなるというものである。
バルブ7A,7B,7Cは、チャンバー4A,4B,4C毎に設けられ、二つの開口のうち一方が天板3を貫通して各チャンバー4A,4B,4Cに連通すると共に他方は真空源5に接続される。これらバルブ7A,7B,7Cによって各チャンバー4A,4B,4Cの気密性の確保と開放とが制御され、そして本発明では、各バルブ7A,7B,7Cを開いた状態で真空源5によって各チャンバー4A,4B,4C内が減圧され、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cの開口端がコンクリート9の表面に押し当てられた上で各バルブ7A,7B,7Cが閉められることによって各チャンバー4A,4B,4Cがそれぞれ密閉される。
すなわち、本発明では、チャンバー4A,4B,4C毎に設けられたバルブ7A,7B,7Cが閉められることによってチャンバー4A,4B,4Cとして互いに独立した密閉空間が形成される。
各チャンバー4A,4B,4C内には気圧センサ6A,6B,6Cがそれぞれ備えられ、これら気圧センサ6A,6B,6Cによってチャンバー4A,4B,4C毎にチャンバー内の気圧が計測される。
また、各隔壁2A,2B,2Cの、天板3とは反対側(言い換えると、吸着試験ユニット1としての開口側)の縁部には、計測を行う際にコンクリート9の表面に押し当てられて各チャンバー4A,4B,4Cの気密性を確保するためのシール部材8が取り付けられる。シール部材8の材質や寸法(厚さ)などは特定のものには限定されない。具体的には例えばエチレンプロピレンゴム製のリングがシール部材8として各隔壁2A等の縁部全周に亘って取り付けられる。
真空源5は、チャンバー内を減圧するためのものであり、したがって、チャンバー4A,4B,4Cを減圧(吸引,真空引き)し得るものであれば、特定のものに限定されるものではなく、具体的には例えば真空ポンプが用いられ得る。なお、図1(B)等では真空源5を一つ有するようにしているが、バルブ7A,7B,7C毎に真空源5を設けるようにしても良い。
(1−2)吸着試験ユニットの移動機構
吸着試験ユニット1には、図3及び図4に示すように、前後方向において吸着ユニット20が配置される側と対向する側(即ち、後ろ側)に、移動機構10Aが装着される。
移動機構10Aは、吸着試験ユニット1を移動状態にさせ得るものであれば、特定の仕組みに限定されるものではなく、種々のものが適宜選択され得る。本実施形態では具体的には、移動機構10Aは、台座部材11と離着機構12と走行手段13とを有するものとして構成される。
台座部材11は、側周壁と当該側周壁の上端側を全面に亙って覆う天板と前記側周壁の下端側を部分的に塞ぐ底板とを有する中空体として構成され、底板が吸着試験ユニット1の天板3の上面に固定されて吸着試験ユニット1に取り付けられる。そして、台座部材11に離着機構12が取り付けられる。なお、台座部材11の材質は、特定のものに限定されるものではないが、具体的には例えば合成樹脂が用いられ得る。
離着機構12は、走行手段13をコンクリート表面に接近・接触させたりコンクリート表面から離隔させたりするものであれば、特定の仕組みに限定されるものではなく、種々のものが適宜選択され得る。本実施形態では具体的には、離着機構12は、シリンダ本体12aとロッド12bとを有するシリンダ機構により構成され、シリンダ本体12aに対してロッド12bが突出・没入することによって伸縮駆動する。なお、離着機構12は、電気によって作動するものでも良いし、ガス等の流体の加圧・減圧によって作動するものでも良い。
離着機構12は、シリンダ本体12aが台座部材11の天板の上面に固定されて取り付けられ、ロッド12bが台座部材11の天板に設けられた開口を貫通して台座部材11の中空部内に下向きに突出するように設けられる。そして、離着機構12は、ロッド12bが上下方向に駆動し、上下方向に伸縮駆動することによって走行手段13をコンクリート表面に接近・接触させたりコンクリート表面から離隔させたりする。
離着機構12の、台座部材11の中空部内に突出しているロッド12bの先端部(即ち、下端部)に走行手段13が取り付けられる。
走行手段13は、ロッド12bの先端部に固定され取り付けられる車台フレーム13aと、当該車台フレーム13aに支持される左右方向の二本の車軸13b,13bと、これら車軸13b,13bを介して車台フレーム13aに回転自在に取り付けられる三つの車輪13c,13c,13cとを有する。なお、特に図示していないが、車軸13bのそれぞれには、適当な部材が取り付けられるなど抜け止めの仕組みが適宜設けられる。また、以降の説明において取り上げられる種々の軸も、各々の説明において指摘はしないが、必要に応じ、適当な部材が取り付けられるなど抜け止めの仕組みが適宜設けられる。
(1−3)吸着ユニット
吸着ユニット20は、図2に示すように、円筒状に形成された周壁21と当該周壁21の上面を覆う天板22とを有し、これら周壁21及び天板22に囲まれる内部空間23が形成される。
周壁21及び天板22は、内部空間23の気密性を確保することができるように、透気性がない材質で形成される。また、周壁21及び天板22の材質は、軽量であることが好ましい。周壁21及び天板22の材質として、具体的には例えば合成樹脂が用いられ得る。
なお、本実施形態では、周壁21の寸法は、吸着試験ユニット1の外隔壁2Cと同じに設定される。
バルブ26が内部空間23の流体流れの制御弁として設けられる。バルブ26の二つの開口のうち一方が天板22を貫通して内部空間23に連通すると共に他方は真空源27に接続される。当該バルブ26によって内部空間23の気密性の確保と開放とが制御され、そして、バルブ26を開いた状態で真空源27によって内部空間23内が減圧され、吸着ユニット20の周壁21の開口端がコンクリート9の表面に押し当てられた上でバルブ26が閉められることによって内部空間23が密閉される。
すなわち、内部空間23に設けられたバルブ26が閉められることによって内部空間23として独立した密閉空間が形成される。
また、周壁21の、天板22とは反対側(即ち、下側;言い換えると、吸着ユニット20としての開口側)の縁部には、コンクリート9の表面に押し当てられて内部空間23の気密性を確保するためのシール部材28が取り付けられる。シール部材28の材質や寸法(厚さ)などは特定のものには限定されない。具体的には例えばエチレンプロピレンゴム製のリングがシール部材28として周壁21の縁部全周に亘って取り付けられる。
真空源27は、内部空間23内を減圧するためのものであり、したがって、内部空間23を減圧(吸引,真空引き)し得るものであれば、特定のものに限定されるものではなく、具体的には例えば真空ポンプが用いられ得る。なお、吸着ユニット20用の真空源27と吸着試験ユニット1用の真空源5とを同一のものにしても良いし別々のものにしても良い。
なお、内部空間23内に気圧センサ29が備えられ、当該気圧センサ29によって内部空間23内の気圧が計測されるようにしても良い。
(1−4)吸着ユニットの移動機構
吸着ユニット20にも、図3及び図4に示すように、吸着試験ユニット1と同様に、移動機構10Bが装着される。吸着ユニット20に装着される移動機構10Bも、台座部材11と離着機構12と走行手段13とを有するものとして構成され、これらの構成は吸着試験ユニット1に装着される移動機構10Aとしての台座部材11,離着機構12,走行手段13のそれぞれの構成と同様である。ただし、吸着ユニット20の移動機構10Bを構成する各要素は、吸着試験ユニット1の移動機構10Aを構成する各要素との関係において平面視において180度回転させられて配置・配設される。
(1−5)連結機構
吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とは、図3及び図4に示すように、相互の前後方向間隔が変更可能であるように連結機構30によって連結される。
連結機構30は、吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とを接近させたり離隔させたりするものであれば、特定の仕組みに限定されるものではなく、種々のものが適宜選択され得る。本実施形態では具体的には、連結機構30は、シリンダ本体31とロッド32とを有するシリンダ機構により構成され、シリンダ本体31に対してロッド32が突出・没入することによって伸縮駆動する。なお、連結機構30は、電気によって作動するものでも良いし、ガス等の流体の加圧・減圧によって作動するものでも良い。
本実施形態の連結機構30は、シリンダ本体31が吸着試験ユニット1に連結されると共にロッド32が吸着ユニット20に連結されて設けられる。そして、連結機構30は、ロッド32が前後方向に駆動し、前後方向に伸縮駆動することによって吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とを接近させたり離隔させたりする。
シリンダ本体31との連結のため、吸着試験ユニット1の天板3の上面に、左右方向に対向する一対の取付部14,14、及び、これら取付部14,14に架け渡される取付軸15が左右方向に配設される。
また、連結機構30のシリンダ本体31は、取付軸15を摺動自在に貫通させる左右方向の貫通孔が形成された取付部31aを後端部分に有する。
そして、これら取付部14,14及び取付軸15並びに取付部31aにより、連結機構30のシリンダ本体31は吸着試験ユニット1に対してX−Z平面(即ち、垂直平面)において揺動可能に取り付けられる。
一方、ロッド32との連結のため、吸着ユニット20の天板22の上面に、左右方向に対向する一対の取付部24,24、及び、これら取付部24,24に架け渡される取付軸25が左右方向に配設される。
また、連結機構30のロッド32の先端部(即ち、前端部)に、取付軸25を摺動自在に貫通させる左右方向の貫通孔が形成された連結フレーム33が嵌め合わされて取り付けられる。
そして、これら取付部24,24及び取付軸25並びに連結フレーム33により、連結機構30のロッド32は吸着ユニット20に対してX−Z平面(即ち、垂直平面)において揺動可能に取り付けられる。
(1−6)装置動作の制御及び計測データの出力
コンクリートの透気試験装置は、実構造物のどのような箇所においてもコンクリートの性能を試験することができるようにするため、作業者が吸着試験ユニット1や吸着ユニット20や連結機構30に接触して直接操作することなく、遠隔操作が可能であるように構成される。
具体的には、吸着試験ユニット1のバルブ7A,7B,7Cと、吸着試験ユニット1の移動機構10Aの離着機構12と、吸着ユニット20のバルブ26と、吸着ユニット20の移動機構10Bの離着機構12と、連結機構30とは、作業者側のリモートコントロールボックスから出力される指令(制御信号)が有線若しくは無線によってコンクリートの透気試験装置に伝達されて遠隔で操作される。このため、コンクリートの透気試験装置は、制御信号の受信や当該制御信号に従って各部を動作させるため、必要に応じ、例えば信号受信部や中央演算処理装置などを備えて必要なプログラムが格納された制御盤(図示省略)などを備える。
また、吸着試験ユニット1の気圧センサ6A,6B,6C及び吸着ユニット20の気圧センサ29によって計測された気圧データは、有線若しくは無線を介して作業者側の記憶装置などに伝送される。
(1−7)コンクリートの透気試験装置の動作
上述した第一の実施形態のコンクリートの透気試験装置の動作を以下に説明する。なお、以下では、吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とのそれぞれに装着されている移動機構10A,10Bの離着機構12によって走行手段13がコンクリート表面から離隔されていると共に連結機構30によって吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とが接近している状態(図3及び図4に示す状態;以下、動作開始状態という)から動作を開始する場合として説明する。
まず、動作開始状態であるコンクリートの透気試験装置の、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cの開口面と吸着ユニット20の開口面とが検査・評価対象のコンクリートの表面に押し当てられる。そして、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cに設けられたバルブ7A,7B,7Cが開けられると共に吸着ユニット20に設けられたバルブ26が開けられて真空源5,27によって吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4C内及び吸着ユニット20の内部空間23内が所定の気圧になるまで減圧(真空引き)される。
このとき、動作開始状態において、吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とのそれぞれに装着されている移動機構10A,10Bの離着機構12はどちらも収縮しており、走行手段13の車輪13cはコンクリートの表面から離れた位置にある。すなわち、走行手段13は、各チャンバー4A,4B,4C内及び内部空間23内の減圧の支障にはならない。而して、吸着試験ユニット1と吸着ユニット20とがコンクリートの表面に吸着し、コンクリート表面が垂直であったり天井等の下面であったりしても、コンクリートの透気試験装置が自立的に(言い換えると、外部からの補助なしに)コンクリートの表面に吸着した(言い換えると、はり付いた)状態が維持される。
そして、コンクリートの透気試験装置がコンクリートの表面にはり付いた状態で、後記(3)で説明するコンクリートの透気係数分布の推定方法のS1の処理が吸着試験ユニット1において実行される。
次に、吸着ユニット20を移動させる動作が行われる。このとき、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4C内の減圧が十分でないときは、再度、真空源5によって各チャンバー4A,4B,4C内が所定の気圧になるまで減圧(真空引き)される。
具体的には、まず、吸着ユニット20のバルブ26が開けられることによって内部空間23が開放され(即ち、真空源27による減圧は行われない)、内部空間23内が大気圧状態にされる。
続いて、吸着ユニット20の移動機構10Bの離着機構12が伸長させられる。これにより、走行手段13の車輪13cがコンクリートの表面に接触し、さらに、コンクリートの表面に押し当てられていたシール部材28がコンクリートの表面から離される。これにより、吸着ユニット20は、コンクリートの表面から引き離され、走行手段13の車輪13cの回転によって移動することができる可動状態になる。
なお、吸着ユニット20を可動状態にする際には、吸着ユニット20のシール部材28とコンクリートの表面との間隙はごく僅かであるように調整され、更に言えば、吸着ユニット20を移動させることができるのであればシール部材28がコンクリートの表面に接触していても(言い換えると、摺っていても)構わない。
このとき、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4C内の減圧状態は維持されており、したがって吸着試験ユニット1はコンクリートの表面に吸着して移動することができない固定状態である。
そして、吸着試験ユニット1が固定状態であると共に吸着ユニット20が可動状態である状態において連結機構30が伸長させられる。これにより、移動しない吸着試験ユニット1から離れる向きに吸着ユニット20が移動する。
なお、吸着ユニット20が移動する際には、必要に応じ、走行手段13の車輪13cがコンクリートの表面から離れないように、真空源27による内部空間23内の減圧(真空引き)が行われるようにしても良い。内部空間23内の減圧(真空引き)が継続して行われることにより、吸着ユニット20のシール部材28とコンクリートの表面との間隙がごく僅か若しくはシール部材28がコンクリートの表面に接触している状態が維持されるので、吸着ユニット20がコンクリートの表面から大きく離脱してしまうことが防止される。
あるいは、吸着ユニット20がコンクリートの表面から大きく離脱してしまうことを防止するため、吸着試験ユニット1の取付部14,14及び取付軸15並びに連結機構30のシリンダ本体31の取付部31aによって構成される揺動機構が、例えばカムの噛み合わせ(言い換えると、当接)によって揺動範囲が制限される仕組みを備えるようにしても良い。
連結機構30が最大まで若しくは所定量だけ伸長して吸着ユニット20が移動させられた後、吸着ユニット20の移動機構10Bの離着機構12が収縮させられる。なお、このときも、必要に応じ、内部空間23内の減圧(真空引き)が継続して行われる。
これにより、走行手段13の車輪13cがコンクリートの表面から離れる一方で、シール部材28がコンクリート表面に接触する。続いて、吸着ユニット20に設けられたバルブ26を介して真空源27によって内部空間23内が所定の気圧になるまで減圧(真空引き)される。これにより、吸着ユニット20はコンクリートの表面に吸着して移動することができない固定状態になる。
次に、吸着試験ユニット1を移動させる動作が行われる。
具体的には、まず、吸着試験ユニット1のバルブ7A,7B,7Cが開けられることによってチャンバー4A,4B,4Cが開放され(即ち、真空源5による減圧は行われない)、チャンバー4A,4B,4C内が大気圧状態にされる。
続いて、吸着試験ユニット1の移動機構10Aの離着機構12が伸長させられる。これにより、走行手段13の車輪13cがコンクリートの表面に接触し、さらに、コンクリートの表面に押し当てられていたシール部材8がコンクリートの表面から離される。これにより、吸着試験ユニット1は、コンクリートの表面から引き離され、走行手段13の車輪13cの回転によって移動することができる可動状態になる。
なお、吸着試験ユニット1を可動状態にする際には、吸着試験ユニット1のシール部材8とコンクリートの表面との間隙はごく僅かであるように調整され、更に言えば、吸着試験ユニット1を移動させることができるのであればシール部材8がコンクリートの表面に接触していても(言い換えると、摺っていても)構わない。
そして、吸着試験ユニット1が可動状態であると共に吸着ユニット20が固定状態である状態において連結機構30が収縮させられる。これにより、移動しない吸着ユニット20に近づく向きに吸着試験ユニット1が移動する。
なお、吸着試験ユニット1が移動する際には、必要に応じ、走行手段13の車輪13cがコンクリートの表面から離れないように、真空源5によるチャンバー4A,4B,4C内の減圧(真空引き)が行われるようにしても良い。チャンバー4A,4B,4C内の減圧(真空引き)が継続して行われることにより、吸着試験ユニット1のシール部材8とコンクリートの表面との間隙がごく僅か若しくはシール部材8がコンクリートの表面に接触している状態が維持されるので、吸着試験ユニット1がコンクリートの表面から大きく離脱してしまうことが防止される。
あるいは、吸着試験ユニット1がコンクリートの表面から大きく離脱してしまうことを防止するため、吸着ユニット20の取付部24,24及び取付軸25並びに連結機構30のロッド32に取り付けられる連結フレーム33によって構成される揺動機構が、例えばカムの噛み合わせ(言い換えると、当接)によって揺動範囲が制限される仕組みを備えるようにしても良い。
連結機構30が一杯まで若しくは所定量だけ収縮して吸着試験ユニット1が移動させられた後、吸着試験ユニット1の移動機構10Aの離着機構12が収縮させられる。なお、このときも、必要に応じ、チャンバー4A,4B,4C内の減圧(真空引き)が継続して行われる。
吸着試験ユニット1の移動機構10Aの離着機構12の収縮が終了すると、シール部材8がコンクリート表面に接触し、コンクリートの透気試験装置が動作開始状態になる。
続いて、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cに設けられたバルブ7A,7B,7Cを介して真空源5によって各チャンバー4A,4B,4C内が所定の気圧になるまで減圧(真空引き)される。これにより、吸着試験ユニット1はコンクリートの表面に吸着して移動することができない固定状態になる。
そして、吸着試験ユニット1が移動した位置におけるコンクリートの検査・評価が必要である場合には当該位置においてコンクリートの透気係数分布の推定方法のS1の処理が吸着試験ユニット1においてあらためて実行される。
一方、他の位置におけるコンクリートの検査・評価が必要である場合には当該他の位置に吸着試験ユニット1が移動するまで、吸着ユニット20を移動させる動作と吸着試験ユニット1を移動させる動作とが繰り返し行われる。そして、前記他の位置においてコンクリートの透気係数分布の推定方法のS1の処理が吸着試験ユニット1においてあらためて実行される。
(2)第二の実施形態
図1及び図2並びに図5及び図6に、本発明のコンクリートの透気試験装置の第二の実施形態を示す。このコンクリートの透気試験装置は、第一,第二,第三の吸着ユニット20A,20B,20Cと、吸着試験ユニット1と、一端に第一,第二,第三の吸着ユニット20A,20B,20Cのうちの一つが取り付けられると共に他端に脚回動軸41が貫通している第一,第二,第三の脚機構40A,40B,40Cと、一端に吸着試験ユニット1が取り付けられると共に他端に脚回動軸41が貫通している第四の脚機構40Dと、隣り合う第一の脚機構40Aと第四の脚機構40Dとの間に介在して設けられる第一の脚開閉機構50Aと、隣り合う第二の脚機構40Bと第三の脚機構40Cとの間に介在して設けられる第二の脚開閉機構50Bとを備え、第一乃至第四の脚機構40A,40B,40C,40Dは、それぞれ、第一,第二,第三の吸着ユニット20A,20B,20C或いは吸着試験ユニット1と脚回動軸41とを接近させたり離隔させたりする伸縮機構43A,43B,43C,43Dと、第一,第二,第三の吸着ユニット20A,20B,20C或いは吸着試験ユニット1をコンクリート表面から離着させる離着機構44A,44B,44C,44Dとを有し、吸着試験ユニット1は、平面位置を同じくする開口面を有する平面視円形の中心チャンバー4A及び当該中心チャンバー4Aを環状に囲む第一の環状チャンバー4B及び当該第一の環状チャンバー4Bを環状に囲む第二の環状チャンバー4Cと、中心チャンバー4A内及び第一の環状チャンバー4B内及び第二の環状チャンバー4C内が減圧されたときに閉められてこれら中心チャンバー4Aと第一の環状チャンバー4Bと第二の環状チャンバー4Cとをそれぞれ密閉するためにこれら中心チャンバー4Aと第一の環状チャンバー4Bと第二の環状チャンバー4Cとのそれぞれに設けられたバルブ7A,7B,7Cと、中心チャンバー4Aと第一の環状チャンバー4Bと第二の環状チャンバー4Cとのそれぞれに備えられた気圧センサ6A,6B,6Cとを有するようにしている。
ここで、以下の説明においては、図5及び図6に示す状態を動作開始状態とする。そして、動作開始状態にある第一吸着ユニット20Aと吸着試験ユニット1との配置方向及び第二吸着ユニット20Bと第三吸着ユニット20Cとの配置方向(図中におけるX方向)を前後方向としてX(+)を前向きとすると共にX(-)を後ろ向きとし、また、吸着試験ユニット1と第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cとの配置平面において前後方向と直交する方向(図中におけるY方向)を左右方向とし、さらに、これら前後方向及び左右方向と直交する方向(図中におけるZ方向)を上下方向としてZ(+)を上向きとすると共にZ(-)を下向きとする。
なお、図1及び図2並びに図5及び図6はあくまでも装置の概略構造を説明するための図であり、例えば各部の連結関係を説明するための図であり、細部の構造については図示を適宜省略している。また、図5及び図6においては、吸着試験ユニット1のバルブ7A,7B,7C及び第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cのバルブ26、並びに、これらバルブ7A,7B,7C,26と真空源5,27との間のホースを図示していない。
(2−1)吸着試験ユニット
本実施形態の吸着試験ユニット1の構成は、上述の第一の実施形態における吸着試験ユニット1と同様である(図1)。なお、本実施形態では、吸着試験ユニット1は移動機構10Aを備えない。
(2−2)吸着ユニット
本実施形態では、第一から第三までの三つの吸着ユニット20A,20B,20Cを有する。これら第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cのそれぞれの構成は、いずれも、上述の第一の実施形態における吸着ユニット20と同様である(図2)。なお、本実施形態では、第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cは移動機構10Bを備えない。
(2−3)脚機構
本実施形態のコンクリートの透気試験装置は、移動するための機構として、四つの脚機構(具体的には、第一脚機構40A,第二脚機構40B,第三脚機構40C,第四脚機構40D)、及び、二つの脚開閉機構(具体的には、第一の脚開閉機構50A,第二の脚開閉機構50B)を備える。
第一乃至第四脚機構40A,40B,40C,40Dは、それぞれ、回動ブラケット42A,42B,42C,42Dと、伸縮機構43A,43B,43C,43Dと、離着機構44A,44B,44C,44Dとを有する。
四つの回動ブラケット42A,42B,42C,42Dそれぞれの一端部は、上下方向に積み重ねられ、この積み重ねられた箇所に上下方向の脚回動軸41が貫通し、当該脚回動軸41を介して各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dが回動自在に連結される。
伸縮機構43A,43B,43C,43Dは、吸着試験ユニット1や第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cを脚回動軸41に対して接近させたり離隔させたりするように伸縮駆動するものであれば、特定の仕組みに限定されるものではなく、種々のものが適宜選択され得る。本実施形態では具体的には、伸縮機構43A,43B,43C,43Dは、それぞれ、シリンダ本体43aとロッド43bとを有するシリンダ機構により構成され、シリンダ本体43aに対してロッド43bが突出・没入することによって伸縮駆動する。なお、伸縮機構43A,43B,43C,43Dは、電気によって作動するものでも良いし、ガス等の流体の加圧・減圧によって作動するものでも良い。
伸縮機構43A,43B,43Cは、それぞれ、シリンダ本体43aが第一乃至第三脚機構40A,40B,40Cの回動ブラケット42A,42B,42Cの前記一端部寄りの位置(即ち、脚回動軸41寄りの位置)に連結されると共にロッド43bが第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cに連結されて設けられる。そして、各伸縮機構43A,43B,43Cは、ロッド43bが回動ブラケット42A,42B,42Cの軸方向に駆動し、回動ブラケット42A,42B,42Cの軸方向に伸縮駆動することによって第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cを脚回動軸41に対して接近させたり離隔させたりする。
また、伸縮機構43Dは、シリンダ本体43aが第四脚機構40Dの回動ブラケット42Dの前記一端部寄りの位置(即ち、脚回動軸41寄りの位置)に連結されると共にロッド43bが吸着試験ユニット1に連結されて設けられる。そして、伸縮機構43Dは、ロッド43bが回動ブラケット42Dの軸方向に駆動し、回動ブラケット42Dの軸方向に伸縮駆動することによって吸着試験ユニット1を脚回動軸41に対して接近させたり離隔させたりする。
シリンダ本体43aとの連結のため、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの下面の脚回動軸41寄りの位置に、各回動ブラケットの長手方向と直交する方向に対向する一対の取付部に架け渡される取付軸46が水平方向に配設される。
また、各伸縮機構43A,43B,43C,43Dのシリンダ本体43aの後端部(即ち、ロッド43bが突出する側の反対側の端部)から延出する取付部に、取付軸46を摺動自在に貫通させる、各伸縮機構の伸縮方向と直交する方向(また、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの長手方向と直交する方向でもある)の貫通孔が形成される。
そして、これら取付軸46とシリンダ本体43a後端部の貫通孔とにより、各伸縮機構43A,43B,43C,43Dのシリンダ本体43aは、回動ブラケット42A,42B,42C,42Dそれぞれに対し、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの長手方向に沿う垂直面(即ち、X−Y平面と直交する平面)において揺動可能に取り付けられる。
一方、ロッド43bとの連結のため、第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cそれぞれの天板22の上面の中央部及び吸着試験ユニット1の天板3の上面の中央部に、対向する一対の取付部に架け渡される取付軸47が水平方向に配設される。
また、各伸縮機構43A,43B,43C,43Dのロッド43bの先端部(即ち、シリンダ本体43a側の反対側の端部)に、取付軸47を摺動自在に貫通させる、各伸縮機構の伸縮方向と直交する方向(また、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの長手方向と直交する方向でもある)の貫通孔が形成される。
そして、これら取付軸47とロッド43b先端部の貫通孔とにより、各伸縮機構43A,43B,43C,43Dのロッド43bは、第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20C及び吸着試験ユニット1それぞれに対し、各伸縮機構43A,43B,43C,43Dの長手方向に沿う垂直面(即ち、X−Y平面と直交する平面)において揺動可能に取り付けられる。
また、離着機構44A,44B,44C,44Dは、吸着試験ユニット1や第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cをコンクリート表面に接近・接触させたりコンクリート表面から離隔させたりするものであれば、特定の仕組みに限定されるものではなく、種々のものが適宜選択され得る。本実施形態では具体的には、離着機構44A,44B,44C,44Dは、それぞれ、シリンダ本体44aとロッド44bとを有するシリンダ機構により構成され、シリンダ本体44aに対してロッド44bが突出・没入することによって伸縮駆動する。なお、離着機構44A,44B,44C,44Dとは、電気によって作動するものでも良いし、ガス等の流体の加圧・減圧によって作動するものでも良い。
離着機構44A,44B,44C,44Dは、それぞれ、上下方向(大凡上下方向を含む)に配設され、シリンダ本体44aが回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの前記一端部の反対側の端(即ち、脚回動軸41側の反対側の端;以下、先端という)に連結されると共にロッド44bが伸縮機構43A,43B,43C,43Dのシリンダ本体43aに連結されて設けられる。そして、各離着機構44A,44B,44C,44Dは、ロッド44bが上下方向(大凡上下方向を含む)に駆動し、上下方向(大凡上下方向を含む)に伸縮駆動することによって吸着試験ユニット1や第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cをコンクリート表面に接近・接触させたりコンクリート表面から離隔させたりする。
シリンダ本体44aとの連結のため、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの前記一端部の反対側の端部(即ち、脚回動軸41側の反対側の端部)に、各回動ブラケットの長手方向と直交する方向に対向する一対の取付部に架け渡される取付軸48が水平方向に配設される。
また、各離着機構44A,44B,44C,44Dのシリンダ本体44aの側面から突出する取付部に、取付軸48を摺動自在に貫通させる、各離着機構の伸縮方向と直交する方向(また、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの長手方向と直交する方向でもある)の貫通孔が形成される。
そして、これら取付軸48とシリンダ本体44a側面取付部の貫通孔とにより、各離着機構44A,44B,44C,44Dのシリンダ本体44aは、回動ブラケット42A,42B,42C,42Dそれぞれに対し、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの長手方向に沿う垂直面(即ち、X−Y平面と直交する平面)において揺動可能に取り付けられる。
一方、ロッド44bとの連結のため、各伸縮機構43A,43B,43C,43Dのシリンダ本体43aの上側側面の先端寄り位置(即ち、ロッド43bが突出する側の端部分)に、各伸縮機構の伸縮方向と直交する方向(また、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの長手方向と直交する方向でもある)に対向する一対の取付部に架け渡される取付軸49が水平方向に配設される。
また、各離着機構44A,44B,44C,44Dのロッド44bの先端部(即ち、シリンダ本体44a側の反対側の端部)に、取付軸49を摺動自在に貫通させる、各離着機構の伸縮方向と直交する方向(また、各回動ブラケット42A,42B,42C,42Dの長手方向と直交する方向でもある)の貫通孔が形成される。
そして、これら取付軸49とロッド44b先端部の貫通孔とにより、各離着機構44A,44B,44C,44Dのロッド44bは、各伸縮機構43A,43B,43C,43Dのシリンダ本体43aに対し、各伸縮機構の伸縮方向に沿う垂直面(即ち、X−Y平面と直交する平面)において揺動可能に取り付けられる。
第一の脚開閉機構50A及び第二の脚開閉機構50Bは、隣り合う脚機構の開閉を制御するためのものである。本実施形態では、第一の脚開閉機構50Aは第一脚機構40Aと第四脚機構40Dとの開閉を制御し、第二の脚開閉機構50Bは第二脚機構40Bと第三脚機構40Cとの開閉を制御する。
第一の脚開閉機構50A及び第二の脚開閉機構50Bは、隣り合う脚機構を開いたり閉じたりするものであれば、特定の仕組みに限定されるものではなく、種々のものが適宜選択され得る。本実施形態では具体的には、第一の脚開閉機構50Aと第二の脚開閉機構50Bとは、それぞれ、シリンダ本体50aとロッド50bとを有するシリンダ機構により構成され、シリンダ本体50aに対してロッド50bが突出・没入することによって伸縮駆動する。なお、第一の脚開閉機構50Aと第二の脚開閉機構50Bとは、電気によって作動するものでも良いし、ガス等の流体の加圧・減圧によって作動するものでも良い。
第一の脚開閉機構50Aは、シリンダ本体50aが第四脚機構40Dの回動ブラケット42Dの先端寄りの位置に連結されると共にロッド50bが第一脚機構40Aの回動ブラケット42Aの先端寄りの位置に連結される。
第二の脚開閉機構50Bは、シリンダ本体50aが第三脚機構40Cの回動ブラケット42Cの先端寄りの位置に連結されると共にロッド50bが第二脚機構40Bの回動ブラケット42Bの先端寄りの位置に連結される。
シリンダ本体50aとの連結のため、第四脚機構40Dの回動ブラケット42D及び第三脚機構40Cの回動ブラケット42Cの上面の先端寄りの位置に設けられた取付台を貫通する取付軸51が上下方向に配設される。
また、第一及び第二の脚開閉機構50A,50Bのシリンダ本体50aは、取付軸51が摺動自在に嵌め込まれる凹部としての軸穴が形成された取付部を後端寄りの位置(即ち、ロッド50bが突出する側の反対側の端寄りの位置)に有する。
そして、これら取付軸51とシリンダ本体50a後端部の軸穴とにより、第一及び第二の脚開閉機構50A,50Bのシリンダ本体50aは、回動ブラケット42D,42Cそれぞれに対し、X−Y平面において揺動可能に取り付けられる。
一方、ロッド50bとの連結のため、第一脚機構40Aの回動ブラケット42A及び第二脚機構40Bの回動ブラケット42Bの上面の先端寄りの位置に設けられた取付台を貫通する取付軸52が上下方向に配設される。
また、第一及び第二の脚開閉機構50A,50Bのロッド50bの先端部(即ち、シリンダ本体50a側の反対側の端部)に、取付軸52を摺動自在に貫通させる上下方向の貫通孔が形成される。
そして、これら取付軸52とロッド50b先端部の貫通孔とにより、第一及び第二の脚開閉機構50A,50Bのロッド50bは、回動ブラケット42A,42Bそれぞれに対し、X−Y平面において揺動可能に取り付けられる。
(2−4)装置動作の制御及び計測データの出力
コンクリートの透気試験装置は、実構造物のどのような箇所においてもコンクリートの性能を試験することができるようにするため、作業者が吸着試験ユニット1や第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cや第一乃至第四脚機構40A,40B,40C,40Dに接触して直接操作することなく、遠隔操作が可能であるように構成される。
具体的には、吸着試験ユニット1のバルブ7A,7B,7Cと、吸着ユニット20のバルブ26と、第一乃至第四脚機構40A,40B,40C,40Dの伸縮機構43A,43B,43C,43D及び離着機構44A,44B,44C,4Dと、第一及び第二の脚開閉機構50A,50Bとは、作業者側のリモートコントロールボックスから出力される指令(制御信号)が有線若しくは無線によってコンクリートの透気試験装置に伝達されて遠隔で操作される。このため、コンクリートの透気試験装置は、制御信号の受信や当該制御信号に従って各部を動作させるため、必要に応じ、例えば信号受信部や中央演算処理装置などを備えて必要なプログラムが格納された制御盤(図示省略)などを備える。
また、吸着試験ユニット1の気圧センサ6A,6B,6C及び第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cの気圧センサ29によって計測された気圧データは、有線若しくは無線を介して作業者側の記憶装置などに伝送される。
(2−5)コンクリートの透気試験装置の動作
上述した第二の実施形態のコンクリートの透気試験装置の動作を以下に説明する。なお、以下では、伸縮機構43A,43B,43C,43Dによって吸着試験ユニット1及び第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cが脚回動軸41から離隔されており、且つ、第一の脚開閉機構50Aによって第一脚機構40Aと第四脚機構40Dとが開かれていると共に第二の脚開閉機構50Bによって第二脚機構40Bと第三脚機構40Cとが開かれている状態(図5及び図6に示す状態;即ち、動作開始状態)から動作を開始する場合として説明する。
まず、動作開始状態であるコンクリートの透気試験装置の、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cの開口面と第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cの開口面とが検査・評価対象のコンクリートの表面に押し当てられる。このとき、全ての開口面がコンクリートの表面に接触するように、吸着試験ユニット1及び第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cとコンクリートの表面との位置関係が離着機構44A,44B,44C,44Dによって調整される。
そして、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cに設けられたバルブ7A,7B,7Cが開けられると共に第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cに設けられたバルブ26が開けられて真空源5,27によって吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4C内及び第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cの内部空間23内が所定の気圧になるまで減圧(真空引き)される。
そして、コンクリートの透気試験装置がコンクリートの表面に吸着した(言い換えると、はり付いた)状態で、後記(3)で説明するコンクリートの透気係数分布の推定方法のS1の処理が吸着試験ユニット1において実行される。
次に、吸着試験ユニット1を移動させる動作が行われる。
具体的には、まず、吸着試験ユニット1のバルブ7A,7B,7Cが開けられることによってチャンバー4A,4B,4Cが開放され(即ち、真空源5による減圧は行われない)、チャンバー4A,4B,4C内が大気圧状態にされる。
続いて、第四脚機構40Dの伸縮機構43Dが収縮させられる。これにより、コンクリートの表面に押し当てられていた吸着試験ユニット1のシール部材8がコンクリートの表面から離される。これにより、吸着試験ユニット1は、コンクリートの表面から引き離され、可動状態になる。
このとき、第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cの内部空間23の減圧状態は維持されており、したがって第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cはコンクリートの表面に吸着して移動することができない固定状態である。
そして、吸着試験ユニット1が可動状態であると共に第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cが固定状態である状態において第一の脚開閉機構50Aが収縮させられる。これにより、第四脚機構40Dの回動ブラケット42D及び伸縮機構43Dが図5の視点において時計回りに回動し、移動しない第一吸着ユニット20Aに近づく向きに吸着試験ユニット1が移動する。
第一の脚開閉機構50Aが一杯まで若しくは所定量だけ収縮して吸着試験ユニット1が移動させられた後、第四脚機構40Dの離着機構44Dが伸長させられて吸着試験ユニット1のシール部材8がコンクリートの表面に押し当てられる。
続いて、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cに設けられたバルブ7A,7B,7Cを介して真空源5によって各チャンバー4A,4B,4C内が所定の気圧になるまで減圧(真空引き)される。これにより、吸着試験ユニット1はコンクリートの表面に吸着して移動することができない固定状態になる。
そして、吸着試験ユニット1が移動した位置におけるコンクリートの検査・評価が必要である場合には当該位置においてコンクリートの透気係数分布の推定方法のS1の処理が吸着試験ユニット1においてあらためて実行される。
一方、他の位置におけるコンクリートの検査・評価が必要である場合には当該他の位置に吸着試験ユニット1を移動させるため、コンクリートの透気試験装置を移動させる。
まず、第三吸着ユニット20Cを移動させる動作が行われる。
具体的には、まず、第三吸着ユニット20Cのバルブ26が開けられることによって内部空間23が開放され(即ち、真空源27による減圧は行われない)、内部空間23内が大気圧状態にされる。
続いて、第三脚機構40Cの伸縮機構43Cが収縮させられる。これにより、コンクリートの表面に押し当てられていた第三吸着ユニット20Cのシール部材28がコンクリートの表面から離される。これにより、第三吸着ユニット20Cは、コンクリートの表面から引き離され、可動状態になる。
このとき、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4C並びに第一及び第二吸着ユニット20A,20Bの内部空間23の減圧状態は維持されており、したがって吸着試験ユニット1並びに第一及び第二吸着ユニット20A,20Bはコンクリートの表面に吸着して移動することができない固定状態である。
そして、第三吸着ユニット20Cが可動状態であると共に吸着試験ユニット1並びに第一及び第二吸着ユニット20A,20Bが固定状態である状態において第二の脚開閉機構50Bが収縮させられる。これにより、第三脚機構40Cの回動ブラケット42C及び伸縮機構43Cが図5の視点において反時計回りに回動し、移動しない第二吸着ユニット20Bに近づく向きに第三吸着ユニット20Cが移動する。
第二の脚開閉機構50Bが一杯まで若しくは所定量だけ収縮して第三吸着ユニット20Cが移動させられた後、第三脚機構40Cの離着機構44Cが伸長させられて第三吸着ユニット20Cのシール部材28がコンクリートの表面に押し当てられる。
続いて、第三吸着ユニット20Cに設けられたバルブ26を介して真空源27によって内部空間23内が所定の気圧になるまで減圧(真空引き)される。これにより、第三吸着ユニット20Cはコンクリートの表面に吸着して移動することができない固定状態になる。
次に、脚回動軸41を移動させる動作が行われる。
具体的には、第一脚機構40Aの伸縮機構43A及び第二脚機構40Bの伸縮機構43Bが収縮させられると共に第三脚機構40Cの伸縮機構43C及び第四脚機構40Dの伸縮機構43Dが伸長させられる。
このとき、コンクリートの透気試験装置としての姿勢(具体的には、脚回動軸41が上下方向であること)が維持されるように第一及び第二脚機構40A,40Bの離着機構44A,44Bが伸長すると共に第三及び第四脚機構40C,40Dの離着機構44C,44Dが収縮する(或いは、伸縮が適宜調整される)。
これにより、脚回動軸41が、動作開始状態と比べて第一吸着ユニット20A及び第二吸着ユニット20Bに近づく向きに移動する。
次に、第一吸着ユニット20Aを移動させる動作が行われる。
具体的には、第一吸着ユニット20Aの内部空間23の開放→第一脚機構40Aの離着機構44Aの収縮→第一の脚開閉機構50Aの伸長(第一脚機構40Aの回動ブラケット42A及び伸縮機構43Aが図5の視点において時計回りに回動)→第一脚機構40Aの伸縮機構43Aの伸長→第一吸着ユニット20Aの内部空間23の減圧が行われる。
次に、第二吸着ユニット20Bを移動させる動作が行われる。
具体的には、第二吸着ユニット20Bを移動させるため、第二吸着ユニット20Bの内部空間23の開放→第二脚機構40Bの離着機構44Bの収縮→第二の脚開閉機構50Bの伸長(第二脚機構40Bの回動ブラケット42B及び伸縮機構43Bが図5の視点において反時計回りに回動)→第二脚機構40Bの伸縮機構43Bの伸長→第二吸着ユニット20Bの内部空間23の減圧が行われる。
以上により、コンクリートの透気試験装置の姿勢は動作開始状態に戻る。
そして、コンクリートの検査・評価が必要である位置に吸着試験ユニット1が移動するまで、第一の脚開閉機構50Aの収縮による第四脚機構40Dの回動(図5の視点における時計回り)による吸着試験ユニット1の移動→第二の脚開閉機構50Bの収縮による第三脚機構40Cの回動(図5の視点における反時計回り)による第三吸着ユニット20Cの移動→第一及び第二脚機構40A,40Bの伸縮機構43A,43Bの収縮並びに第三及び第四脚機構40C,40Dの伸縮機構43C,43Dの伸長による脚回動軸41の第一吸着ユニット20A及び第二吸着ユニット20Bへの向きの移動→第一の脚開閉機構50Aの伸長による第一脚機構40Aの回動(図5の視点における時計回り)による第一吸着ユニット20Aの移動→第二の脚開閉機構50Bの伸長による第二脚機構40Bの回動(図5の視点における反時計回り)による第二吸着ユニット20Bの移動が繰り返し行われる。そして、コンクリートの検査・評価が必要である位置においてコンクリートの透気係数分布の推定方法のS1の処理が吸着試験ユニット1においてあらためて実行される。
なお、上述の一連の動作が繰り返された場合には、コンクリートの透気試験装置は図5に示すX(+)の向きに移動する。
一方、動作開始状態の姿勢から図5に示すX(-)の向きに移動する際には、第一の脚開閉機構50Aの収縮による第一脚機構40Aの回動(図5の視点における反時計回り)による第一吸着ユニット20Aの移動→第二の脚開閉機構50Bの収縮による第二脚機構40Bの回動(図5の視点における時計回り)による第二吸着ユニット20Bの移動→第一及び第二脚機構40A,40Bの伸縮機構43A,43Bの伸長並びに第三及び第四脚機構40C,40Dの伸縮機構43C,43Dの収縮による脚回動軸41の第三吸着ユニット20C及び吸着試験ユニット1への向きの移動→第一の脚開閉機構50Aの伸長による第四脚機構40Dの回動(図5の視点における反時計回り)による吸着試験ユニット1の移動→第二の脚開閉機構50Bの伸長による第三脚機構40Cの回動(図5の視点における時計回り)による第三吸着ユニット20Cの移動が行われる。
また、コンクリートの透気試験装置が向きを変える際には、具体的には例えば図5に示すように動作開始状態のコンクリートの透気試験装置の第一吸着ユニット20A及び第二吸着ユニット20BがX(+)を向いている状態からY(+)を向いている状態に旋回する場合(即ち、図5の視点において時計回りに90度旋回する場合)には、いずれの伸縮機構43A,43B,43C,43Dも収縮させられることなく以下の動作が行われる。すなわち、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cの開放→第四脚機構40Dの離着機構44Dの収縮→第一の脚開閉機構50Aの収縮による第四脚機構40Dの回動(図5の視点における時計回りに45度の回動)による吸着試験ユニット1の移動→第二吸着ユニット20Bの内部空間23の開放→第二脚機構40Bの離着機構44Bの収縮→第二の脚開閉機構50Bの収縮による第二脚機構40Bの回動(図5の視点における時計回りに45度の回動)による第二吸着ユニット20Bの移動→第一吸着ユニット20Aの内部空間23の開放→第一脚機構40Aの離着機構44Aの収縮→第一の脚開閉機構50Aの伸長による第一脚機構40Aの回動(図5の視点における時計回りに45度の回動)による第一吸着ユニット20Aの移動→第三吸着ユニット20Cの内部空間23の開放→第三脚機構40Cの離着機構44Cの収縮→第二の脚開閉機構50Bの伸長による第三脚機構40Cの回動(図5の視点における時計回りに45度の回動)による第三吸着ユニット20Cの移動を行うことによって図5の視点において時計回りに45度旋回するので、ここまでの動作をもう一度繰り返し行うことによって図5の視点において時計回りに90度旋回する。
(3)コンクリートの透気係数分布の推定方法
上述において第一の実施形態或いは第二の実施形態としてその実施形態の一例を説明した本発明のコンクリートの透気試験装置を用いた計測によって取得されたデータを用い、以下の手順によってコンクリートの透気係数のコンクリート表面からの深さ方向における分布(言い換えると、透気係数の変化)が推定される。
具体的には、図7に示すように、上述の吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cの開口面をコンクリート9の表面に押し当て、真空源5によって各チャンバー4A,4B,4C内を減圧してからバルブ7A,7B,7Cを閉めて各チャンバー4A,4B,4Cをそれぞれ密閉し、気圧センサ6A,6B,6Cによって各チャンバー4A,4B,4C内の気圧を計測してバルブ7A,7B,7Cを閉めてからの経過時間と各チャンバー4A,4B,4C内の気圧値との組み合わせデータを取得し(S1)、一方で、コンクリート9の表面からの深さ方向における透気係数分布を仮定した上で(S2−1)経過時間と各チャンバー4A,4B,4C内の気圧値との組み合わせデータを計算し(S2−2)、当該計算による組み合わせデータが計測による組み合わせデータに対して予め定められた一致条件を満たすまで(S2−3:Yes)透気係数分布の仮定を変化させながら組み合わせデータの計算を繰り返し行うことによって(S2−1〜S2−3)透気係数分布が推定される(S2−4)。
各手順について詳細に説明すると、コンクリートの透気係数分布の推定にあたっては、まず、上述のコンクリートの透気試験装置を用いてチャンバー内気圧の計測が行われる(S1)。
具体的には、吸着試験ユニット1の各チャンバー4A,4B,4Cの開口面が検査・評価対象のコンクリート9の表面に押し当てられ、各チャンバー4A,4B,4Cに設けられたバルブ7A,7B,7Cが開けられて真空源5によって各チャンバー4A,4B,4C内が所定の気圧になるまで減圧(真空引き)される。なお、真空引きによって達成する気圧、言い換えると減圧の程度は、特定の水準に限定されるものではなく、従来の透気性の試験方法において選択されてきた減圧の程度を参考にして適宜設定される。具体的には例えば1〜5〔kPa〕程度以下にすることが考えられる。
ここで、各チャンバー4A,4B,4Cの減圧の程度は、計測を開始する初期状態としては同一にしておく。すなわち、計測開始時における各チャンバー4A,4B,4C内の気圧は同じにしておく。本実施形態のように、チャンバー4A,4B,4Cのそれぞれのバルブ7A,7B,7Cを一元的に一つの真空源5で同時に真空引きすることによって各チャンバー4A,4B,4Cの減圧の程度が同じになる。
そして、各チャンバー4A,4B,4C内の気圧(減圧の程度)が所定の水準に達したらバルブ7A,7B,7Cを同時に若しくは概ね同時に全て閉めて各チャンバー4A,4B,4Cをそれぞれ密閉すると共に真空引きを停止する。
そして、バルブ7A,7B,7Cを全て閉めた時から各チャンバー4A,4B,4C内の気圧を各気圧センサ6A,6B,6Cによって計測する。この計測により、互いに独立した密閉空間であって所定の水準まで減圧された各チャンバー4A,4B,4Cにおける復圧の推移がチャンバー4A,4B,4C毎に計測される。なお、計測期間は、初期状態としての減圧の程度やコンクリートの特性などを踏まえて適宜設定される。具体的には例えば、中心チャンバー4Aの気圧が50〔kPa〕を超えるか(言い換えると、50〔kPa〕まで復圧するか)、或いは、バルブ7A,7B,7Cを全て閉めてから600〜800〔秒〕程度が経過するまでとすることなどが考えられる。
なお、各チャンバー4A,4B,4Cの気密性が確保された上でこれら各チャンバー4A,4B,4C内が減圧されることにより、各チャンバー4A,4B,4Cの負圧による吸引力によって吸着試験ユニット1はコンクリート9の表面に押し当てられた状態で固定される。
なお、計測当初において初期状態として各チャンバー4A,4B,4C内を減圧した後は、計測が終了するまでチャンバーの減圧(吸引,真空引き)は行わない。すなわち、Torrent法のように計測の間中常に各チャンバー内の気圧を等しく保つための計測中の減圧(吸引,真空引き)を行う必要が無い。
上述の計測により、各バルブ7A,7B,7Cを閉めてからの経過時間(以下、計測経過時間という)とチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧値との組み合わせデータが取得される。
次に、S1の処理によって計測され取得された計測経過時間とチャンバー毎のチャンバー内気圧値との組み合わせデータを用いてコンクリートの透気係数のコンクリート表面からの深さ方向における分布の推定が行われる(S2)。
まず、コンクリート表面からの深さ方向における透気係数分布が仮定される(S2−1)。
具体的には、目的変数としての透気係数値Kdと説明変数としてのコンクリート表面からの深さdとの間の関係を表す関数形が仮定される。透気係数値Kdと深さdとの間の関係を表す関数形は、特定のものに限定されるものではなく、例えば、既存若しくは新規の知見に基づいて設定されるようにしても良いし、過去の実績を踏まえて適当と考えられる関数形に設定されるようにしても良い。
具体的には例えば、透気係数の深さ方向における分布(言い換えると、深さ方向における変化)が、水分逸散が拡散側に従うものとして導いた累乗関数である数式1を用いて定義されることが考えられる。
(数1) Kd=adb
ここに、Kd:表面からの深さdにおけるコンクリートの透気係数〔10-16m2〕,
d:コンクリート表面からの深さ〔m〕,
a,b:係数 をそれぞれ表す。
そして、数式1の係数a,bが求められる(言い換えると、逆解析によって特定される)ことにより、コンクリートの透気係数の、コンクリート表面からの深さ方向における分布が推定される。
そこで(具体的には逆解析を行うための)、数式1の係数a,bの仮定の初期値が設定される。なお、係数a,bの仮定の初期値は、特定の値に限定されるものではなく、既存若しくは新規の知見に基づいて設定されるようにしても良いし、過去の実績を踏まえて適当と考えられる値に設定されるようにしても良い。
次に、S2−1の処理において仮定されたコンクリート表面からの深さ方向における透気係数分布を用いて、時間の経過に伴う各チャンバー4A,4B,4C内の気圧値の計算が行われる(S2−2)。
具体的には、検査・評価対象のコンクリート構造物等における透気係数分布の推定対象部分(範囲)を円筒座標系に変換して二次元化し(図9参照)、基礎式として質量保存式(数式2)及び気体透過式として一般化されたダルシー式(数式3)を用いて数値計算が行われ、時間tの経過に伴う各チャンバー4A,4B,4C内の気圧値の計算が行われる。なお、実構造物のコンクリートについての座標系の設定範囲は、吸着試験ユニット1の外隔壁2Cの外縁径及び当該外縁径の範囲を計測領域としたときの透気の影響範囲を踏まえて適宜設定される。
ここに、ρ
g_xy:座標(x,y)におけるガスの密度〔kg/m
3〕,
ψ
y:座標yにおけるコンクリートの空隙率,
v
g_xy:座標(x,y)におけるガスの体積〔m
3〕,
t:計測経過時間〔秒〕 をそれぞれ表す。
なお、数式2におけるガスは空気であり、コンクリート内の場所によって異なる気圧によって密度や体積が変化することを考慮するようにしている。
ここに、J
g_xy:座標(x,y)における透気フラックス〔m/秒〕,
K
y:座標yにおけるコンクリートの透気係数〔10
-16m
2〕,
μ
g:ガスの粘性係数〔Pa・秒〕,
P
xy:座標(x,y)における気圧〔N/m
2〕 をそれぞれ表す。
なお、数式2や数式3における円筒座標系におけるY座標は、数式1におけるコンクリート表面からの深さdに対応する。
また、コンクリートの透気係数Kと空隙率ψとの間の関係が仮定される。具体的には、目的変数としての透気係数Kと説明変数としての空隙率ψとの間の関係式が仮定される。透気係数Kと空隙率ψとの間の関係式は、特定のものに限定されるものではなく、例えば、既存若しくは新規の知見に基づいて設定されるようにしても良いし、過去の実績を踏まえて適当と考えられる関係式に設定されるようにしても良い。
具体的には例えば、既往の実験データ(河野俊一,氏家勲:乾燥によるコンクリートの透気係数の変化に関する研究,コンクリート工学年次論文報告集,Vol.21,No.2,pp.847−852,1999年)を参考に、数式4によってコンクリートの透気係数Kと空隙率ψとの間の関係式が定義されることが考えられる(式中のeは自然対数)。
(数4) K〔10-16m2〕=3.0×10-5×e1.1ψ
そして、S2−1の処理において設定された係数a,bの仮定値及び数式1〜4を用いて計測経過時間別に各チャンバー4A,4B,4C内の気圧値が計算される。すなわち上記で説明した計算であって概要としては、係数a,bが仮定された上で深さd(この深さdは座標yに対応する)が与えられると数式1によってコンクリートの透気係数Kyが算出され、当該透気係数Kyに対応するコンクリートの空隙率ψyが数式4によって算出され、これら透気係数Kyと空隙率ψyとを数式2及び数式3に代入した上で、各チャンバー4A,4B,4C内の気圧上昇が計算される。
次に、S1の処理において計測され取得された計測による組み合わせデータ(即ち、吸着試験ユニット1を用いての計測によって取得された計測経過時間とチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧値との組み合わせデータ)とS2−2の処理において計算された計算による組み合わせデータ(即ち、計測経過時間別の各チャンバー4A,4B,4C内の気圧値)との対比が行われる(S2−3)。
具体的には、S1の処理において計測され取得された計測による組み合わせデータとS2−2の処理において計算された計算による組み合わせデータとの二つの組み合わせデータを用い、計測経過時間毎にチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧値が対比される。
そして、二つの組み合わせデータにおけるチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧値の差違が予め定められた一致条件を満たしていない場合には(S2−3:No)、計算値が計測値と一致していないので、S2−1の処理に戻り、透気係数分布(具体的には、本実施形態では数式1の係数a,bの値)が変化させられて仮定し直され、S2−2及びS2−3の処理があらためて行われる。
上述の処理の流れは言い換えると、計測による組み合わせデータと計算による組み合わせデータとの差違を最小化するように数式1の係数a,bの値を逐次変化させながら繰り返し計算を行ってこれら係数a,bの値を最適化するという非線形最適化問題を解くということである。なお、非線形最適化問題の解法は、特定の方法に限定されるものではなく、既存若しくは新規の解法が用いられ、具体的には例えば勾配法のうちの最急降下法が用いられ得る。
なお、計測経過時間別のチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧の計測値と計算値とが一致しているか否かを判断するための一致条件は、特定のものに限定されるものではなく、コンクリート表面からの深さ方向における透気係数分布の推定結果の活用場面等を踏まえて要請として設定され得る推定精度などを考慮して適宜設定される。例えば、計測経過時間別のチャンバー毎のチャンバー内気圧の計測値と計算値との差の絶対値の合計の上限を定めておくようにしたり、前記差の絶対値の最大値の上限を定めておくようにしたりすることなどが考えられる。
一方、二つの組み合わせデータにおけるチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧値の差違が予め定められた一致条件を満たしている場合には(S2−3:Yes)、計算値が計測値と一致しているので、直前のS2−1の処理において仮定された透気係数分布が実際の透気係数分布であると特定される、すなわち、直前のS2−1の処理において仮定された透気係数分布が推定結果とされる(S2−4)。
以上により、コンクリート表面からの深さ別のコンクリートの透気係数の値が推定される(END)。
以上のように構成された本発明のコンクリートの透気試験装置によれば、コンクリートの検査・評価が必要である位置へと装置が自ら移動することができるためにコンクリートの検査・評価が必要である位置に作業者が装置を移動させる必要がなく、しかも、吸着ユニット1によって壁面に吸着しながら(言い換えると、はり付きながら)装置が自ら移動することができる。したがって、実構造物の例えば垂直面の高所箇所や天井面の箇所でも装置が移動してコンクリートの検査・評価を行うことができ、また、大断面のコンクリート壁の広範な領域に拡がる複数箇所へも装置が移動してコンクリートの検査・評価を行うことができ、したがって装置を移動させるための大がかりな機材などを準備する必要がないので、コンクリートの検査・評価の作業効率の向上を図ることが可能になる。
以上のように構成された本発明のコンクリートの透気試験装置によれば、また、各チャンバー4A,4B,4Cの開口面をコンクリート9の表面に押し当てた状態で各チャンバー4A,4B,4C内を減圧してバルブ7A,7B,7Cを閉めて密閉してから各チャンバー4A,4B,4C内の気圧計測を行うことにより、各バルブ7A,7B,7Cを閉めてからの経過時間と径方向三層状(言い換えると、中心+二環状)のチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧値との組み合わせデータを取得することができる。そして、この組み合わせデータから、実構造物のコンクリートを破壊することなく、コンクリート9の表面からの深さ方向における透気係数分布(言い換えると、透気係数の変化)を推定することができる。したがって、実構造物のコンクリートを破壊する必要の無い計測によってコンクリートの品質評価に有用な詳細な情報を提供することが可能になり、コンクリートの表層透気性の非破壊試験法としての有用性・汎用性の向上を図ることが可能になる。
また、以上のように構成された本発明のコンクリートの透気係数分布の推定方法によれば、各チャンバー4A,4B,4Cの開口面をコンクリート9の表面に押し当てた状態で各チャンバー4A,4B,4C内を減圧してバルブ7A,7B,7Cを閉めて密閉してから各チャンバー4A,4B,4C内の気圧計測を行うことによって取得された各バルブ7A,7B,7Cを閉めてからの経過時間と径方向三層状(言い換えると、中心+二環状)のチャンバー4A,4B,4C毎のチャンバー内気圧値との組み合わせデータを用いるようにしているので、実構造物のコンクリートを破壊することなく、コンクリート9の表面からの深さ方向における透気係数分布(言い換えると、透気係数の変化)を推定することができる。したがって、実構造物のコンクリートを破壊する必要の無い計測によってコンクリートの品質評価に有用な詳細な情報を提供することが可能になり、コンクリートの表層透気性の非破壊試験法としての有用性・汎用性の向上を図ることが可能になる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の態様が上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では吸着試験ユニット1を一つのみ備えるようにしているが、第一の実施形態における吸着ユニット20を吸着試験ユニットにするようにしても良いし、また、第二の実施形態における第一乃至第三吸着ユニット20A,20B,20Cの一部若しくは全てを吸着試験ユニットにするようにしても良い。
また、上述の実施形態では吸着試験ユニット1が径方向三層(言い換えると、三環状)の隔壁2A,2B,2Cを有するようにしてこれら隔壁によって形成される径方向三層(言い換えると、中心+二環状)のチャンバー4A,4B,4Cを有する構造としているが、本発明における吸着試験ユニット1の層構造を構成するチャンバーの数は三つに限られるものではなく、二つでも良いし、四つ以上でも良い。
そして、チャンバーの数が二つ(すなわち、平面視円形の中心チャンバーと当該中心チャンバーを環状に囲む環状チャンバーとの二層構造)であるコンクリートの透気試験装置を用いて同一コンクリート構造物の複数箇所で計測を行い、例えば図10に示すような計測結果(具体的には、バルブを閉めてからの経過時間と中心チャンバーと環状チャンバーとの各々のチャンバー内気圧値との組み合わせデータ)が得られた場合にはこれらの結果を用いてコンクリートの品質について定性的な評価を行うことができる。具体的には、同図(a)に示す結果と比べて同図(b)に示す結果の方が中心チャンバー内の気圧値の変化と環状チャンバー内の気圧値の変化との乖離が大きくなっていることから((a)における気圧値の乖離は符号D1,(b)における気圧値の乖離は符号D2で示され、D2>D1である)コンクリート表層における透気係数が極端に大きくなっていると考えられ、この点において、同図(a)に示す結果が得られた箇所に比べて同図(b)に示す結果が得られた箇所の方がコンクリートの品質が悪いと評価することができる。
また、チャンバーの数を四つ以上(すなわち、平面視円形の中心チャンバーと当該中心チャンバーを順に環状に囲む三つ以上の環状チャンバーとの四層以上の構造)にすると、上記のような定性的な評価に加え、上述の実施形態のようにコンクリート表面からの深さ方向における透気係数分布を解析的に推定することができる。さらに、チャンバーによって構成する層の数を多くすることにより、取得される計測経過時間とチャンバー毎のチャンバー内気圧値との組み合わせデータの情報量が増え、結果的に、コンクリート表面からの深さ方向における透気係数分布の推定精度を向上させることができる。
また、上述の実施形態ではコンクリート9の表面からの深さ方向における透気係数分布を仮定した上で計測経過時間とチャンバー内気圧との組み合わせデータを計算した後に当該計算による組み合わせデータが計測による組み合わせデータに対して一致条件を満たすまで透気係数分布の仮定を変化させながら組み合わせデータの計算を繰り返し行うようにしているが、これに限られず、複数の透気係数分布の仮定に基づく計測経過時間とチャンバー内気圧との組み合わせデータを予め計算しておき、計測によって得られた組み合わせデータに最も良く一致する計算による組み合わせデータを選択して当該計算による組み合わせデータが前提としている透気係数分布を推定結果として特定するようにすることも考えられる。
また、上述の実施形態では(3)で説明したコンクリートの透気係数分布の推定方法を用いるようにしているが、本発明のコンクリートの透気試験装置を用いてTorrent法によってコンクリート表層の透気係数を評価するようにしても良い。すなわち、上述の実施形態における吸着試験ユニット1を平面視円形の中心チャンバーと当該中心チャンバーを環状に囲む環状チャンバーとの二層構造(ダブルチャンバー構造とも呼ばれる)として構成し、中心チャンバー内と環状チャンバー内とを減圧した上で中心チャンバー内の気圧と環状チャンバー内の気圧とが等しくなるように制御してコンクリート表層において一次元の流れ場を形成することによってコンクリート表層の透気係数を評価するようにしても良い(Torrent法による透気係数の算定の詳細については、例えば、R.J.Torrent,“A two−chamber vacuum cell for measuring the coefficient of permeability to air of the concrete cover on site”,Materials and Structures,Vol.25,No.6,pp.358−365,1992年 を参照)。