以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.比較例
まず、本実施形態の比較例として、片側印加方式の超音波装置について説明する。図1に、比較例の超音波装置を示す。
図1に示す超音波装置は、超音波素子アレイ100を含む。超音波素子アレイ100は、位相走査を行うための位相が制御された駆動電圧が供給される駆動端子Ta1〜TaN(Nは2以上の自然数)と、駆動端子Ta1〜TaNに接続される駆動電極線SL1〜SLNと、薄膜ピエゾ素子P11〜PMN(Mは2以上の自然数)と、コモン電圧が供給されるコモン端子CTa1、CTa2と、コモン端子CTa1、CTa2に接続される共通コモン電極線AL1、AL2と、共通コモン電極線AL1、AL2に接続されるコモン電極線CL1〜CLMを含む。
なお、以下では説明を簡単にするため、薄膜ピエゾ素子P11〜PMNのうち第i列の薄膜ピエゾ素子P1i〜PMi(iはN以下の自然数)を例に説明する。
薄膜ピエゾ素子P1i〜PMiの一方の電極には、駆動電極線SLiが接続され、駆動端子Taiに供給された駆動電圧が印加される。駆動電圧は、出射超音波と同一周波数の交流電圧である。他方の電極には、それぞれコモン電極線CL1〜CLMが接続され、コモン端子CTa1、CTa2に供給されたコモン電圧が印加される。コモン電圧は所定の直流電圧である。
この比較例では、駆動端子Taiが接続された駆動電極線SLiの一端側のみから駆動電圧が供給される。このような片側印加方式の場合、端子Taiに近い薄膜ピエゾ素子P1iに印加される電圧振幅に対して、端子Taiから遠い薄膜ピエゾ素子ほど印加される電圧振幅が小さくなる(電圧降下する)。これは、薄膜ピエゾ素子の両面に駆動電極とコモン電極が設けられる構造であるため、薄膜ピエゾ素子の電極間に寄生容量が見えることが原因である。即ち、その寄生容量と配線抵抗によりRC分布定数線路が形成され、かつ駆動電極線SLiの他端側がフローティング状態であることが原因である。
図2に、片側印加方式において、薄膜ピエゾ素子の電極間に印加される電圧振幅の特性例を示す。図2には、薄膜ピエゾ素子の寄生容量と、駆動電極線及びコモン電極線の寄生抵抗をモデル化し、駆動電極線SLiの片側の電極Taiから駆動電圧を供給した場合のシミュレーション結果を示す。図2のA1〜A6には、薄膜ピエゾ素子P1i〜PMiの個数Mが、それぞれ7、9、10、15、20、25個である場合に、薄膜ピエゾ素子の電極間に印加される電圧振幅の特性例を示す。横軸の素子位置は、駆動端子Tai側から何個目の薄膜ピエゾ素子であるかを示す。
A1〜A6に示すように、駆動端子Taiから離れた薄膜ピエゾ素子ほど電極間に印加される駆動電圧振幅は小さくなることが分かる。また、薄膜ピエゾ素子の素子数が増えるほど、同じ素子位置での電圧振幅の降下は顕著となることが分かる。このように電極間に印加される電圧振幅が小さくなると、それに比例して薄膜ピエゾ素子の変位量が小さくなるため、その薄膜ピエゾ素子から放射される音圧が小さくなる。そのため、超音波の放射音圧が駆動端子Taiから離れるほど小さくなり、放射音圧分布が駆動端子Tai側に偏ってしまう。また、中心音圧(素子位置M/2における音圧)が低下してしまう。これらの偏りや音圧低下は、高周波であるほど顕著である。
図3(A)〜図5(B)に、片側印加方式において、駆動電圧の周波数が3.5MHzである場合の音圧分布特性のシミュレーション結果を示す。図3(A)〜図5(B)において、x軸は、素子列に沿った方向(図1のD1に平行な方向)の位置を表し、x=0に図1の超音波装置が設置されており、マイナス側が駆動端子Tai側である。図3(A)、図4(A)、図5(A)では、z軸は深度を表し、等音圧線により音圧分布を表している。深度とは、超音波の出射方向における位置、即ち、超音波素子アレイにおいて超音波を出射する面の法線に沿った方向における位置である。
図3(A)、図3(B)には、素子列の個数Mが10個である場合、図4(A)、図4(B)には、素子列の個数Mが15個である場合、図5(A)、図5(B)には、素子列の個数Mが20個である場合の音圧分布特性例を示す。
これらの音圧分布を見て分かるように、音圧が最も大きくなる超音波ビームのピークが駆動端子Tai側に偏っており、その偏りが素子数Mが増えるに従って大きくなる。例えば、図3(A)、図4(A)、図5(A)に示すように、超音波ビームの等音圧線は、x=0を中心として非対称であり、素子数Mが増えるほど非対称性が増す。また、深度30mmにおける音圧ピークは、図4(B)に示すようにM=15個ではx=−1.5mmに存在し、図5(B)に示すようにM=20個ではx=−2.5mmに存在する。深度10mmにおける音圧ピークは、素子数Mが増えるほどx=0に対して対称でなくなり、端子側の音圧の方が大きくなり、図5(B)に示すようにM=20個ではx=−1.5mmに存在する。
また、素子列の中心x=0における音圧は、音圧分布の偏りにともなって素子数Mが増えるほど小さくなる。図3(B)、図4(B)、図5(B)には、音圧分布のピーク音圧を数値で示す。このピーク電圧は、電圧振幅の降下がなければ素子数Mが増えるほど大きくなるのが通常である。しかしながら、RC分布定数回路により電圧が降下すると、素子数Mの増加が音圧にあまり寄与せず、素子数Mを増やしてもピーク音圧を大きくできない。
2.本実施形態における超音波装置の構成例
図6に、上記のような音圧分布の偏りや音圧低下という課題を解決可能な本実施形態の超音波装置の構成例を示す。なお以下では超音波素子(狭義には超音波トランスデューサー素子)が薄膜ピエゾ素子(圧電素子)である場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されない。即ち、超音波素子は電気信号を超音波に変換する素子であればよく、超音波素子の電極間に寄生容量が存在していればよい。例えば、薄膜でないピエゾ素子等であってもよい。
図6に示す超音波装置は、超音波素子アレイ100を含む。超音波素子アレイ100は、駆動電極線SL1〜SLN(Nは2以上の自然数)と、駆動電極線SL1〜SLNの一端側に接続される駆動端子Ta1〜TaNと、駆動電極線SL1〜SLNの他端側に接続される駆動端子Tb1〜TbNと、超音波素子群を構成する複数の薄膜ピエゾ素子P11〜PMN(広義には複数の超音波素子)と、共通コモン電極線AL1、AL2と、共通コモン電極線AL1、AL2の一端側に接続されるコモン端子CTa1、CTa2と、共通コモン電極線AL1、AL2の他端側に接続されるコモン端子CTb1、CTb2と、共通コモン電極線AL1、AL2に接続されるコモン電極線CL1〜CLM(Mは2以上の自然数)を含む。
超音波素子アレイ100には、複数の薄膜ピエゾ素子P11〜PMNが2次元に配列される。即ち、超音波素子群の各列には、M個の薄膜ピエゾ素子が第1の方向D1に沿って配置され、超音波素子群の各行には、N個の薄膜ピエゾ素子が、第1の方向D1に直交する(広義には交差する)第2の方向D2に沿って配置される。薄膜ピエゾ素子は、例えばシリコン基板の上に駆動電極線、薄膜ピエゾ素子、コモン電極線の順に積層されることにより形成され、薄膜ピエゾ素子の一方の面に駆動電極が設けられ、他方の面にコモン電極が設けられた構造となっている。電極線は、例えば金属配線により形成される。
本実施形態は、素子列の両端から駆動電圧が供給される両側印加方式である。即ち、駆動端子Ta1〜TaN、Tb1〜TbNには、例えば図12で後述する駆動電圧出力回路からの駆動電圧(広義には駆動信号)が供給される。駆動電極線SLi(iはN以下の自然数)の両端の端子Tai、Tbiには同一振幅で同位相の交流電圧が駆動電圧として入力される。駆動端子Ta1〜TaN、Tb1〜TbNには、位相走査を行うために位相が制御された駆動電圧が供給される。即ち、第2の方向D2は位相走査におけるスキャン方向に対応し、第1の方向D1はスライス方向に対応する。なお、図12で後述するように、端子Tai、Tbiには異なる振幅の駆動電圧が供給されてもよい。
駆動電極線SL1〜SLNは、第1の方向D1に沿って配線され、対応する列の薄膜ピエゾ素子に接続される。具体的には、駆動電極線SL1〜SLNのうち第iの駆動電極線SLiは、第i列の薄膜ピエゾ素子P1i〜PMiの駆動電極に接続される。
コモン電極線CL1〜CLMは、第2の方向D2に沿って配線され、対応する行の薄膜ピエゾ素子に接続される。具体的には、コモン電極線CL1〜CLMのうち第jのコモン電極線CLj(jは3以上M以下の自然数)は、第j列の薄膜ピエゾ素子Pj1〜PjNのコモン電極に接続される。コモン電極線CL1〜CLMの一端は、共通コモン電極線AL1に接続され、他端は、共通コモン電極線AL2に接続される。コモン電極線CL1〜CLMには、コモン端子CTa1、CTa2、CTb1、CTb2を介してコモン電圧が供給される。コモン端子CTa1、CTa2、CTb1、CTb2には、同一電圧の直流電圧が、図示しないコモン電圧出力回路から供給される。
図6に示す超音波装置は、例えば1チップの集積回路装置として形成される。この場合、駆動端子やコモン端子はチップの端子に対応し、その端子に対してチップ外部から駆動電圧やコモン電圧が供給される。なお、本実施形態ではこれに限定されず、超音波装置は、図6の構成に加えて駆動電圧出力回路(例えば図12に示す駆動電圧出力回路)やコモン電圧出力回路を含んでもよい。この場合、駆動電圧出力回路やコモン電圧出力回路も集積回路装置に集積され、駆動端子やコモン端子は回路ブロック間の端子に対応する。
3.特性例
図7に、両側印加方式の本実施形態において、薄膜ピエゾ素子の電極間に印加される電圧振幅の特性例を示す。図7には、薄膜ピエゾ素子の寄生容量と、駆動電極線及びコモン電極線の寄生抵抗をモデル化し、駆動電極線SLiの両側の端子Tai、Tbiから駆動電圧を供給した場合のシミュレーション結果を示す。端子Tai、Tbiに供給する駆動電圧は比較例と同一であり、モデルの寄生容量や寄生抵抗も比較例と同一である。図7のB1〜B6には、薄膜ピエゾ素子P1i〜PMiの個数Mが、それぞれ7、9、10、15、20、25個である場合に、薄膜ピエゾ素子の電極間に印加される電圧振幅の特性例を示す。横軸の素子位置は、駆動端子Tai側から何個目の薄膜ピエゾ素子であるかを示す。
B1〜B6に示すように、薄膜ピエゾ素子の電極間に印加される電圧振幅は、素子列の両端で同一であり、図2の比較例のように端子Taiから離れるほど降下する特性ではない。また、素子列中央(素子位置M/2)に近いほど電圧振幅が降下するが、図2の比較例と比べて素子列中央における降下量が小さい(電圧振幅が大きい)。このように、素子列の両端から駆動電圧を印加することで、薄膜ピエゾ素子の電極間に印加される電圧振幅の特性が素子列中央に対して対称となり、また電圧振幅の降下が抑制される。そのため、超音波の放射音圧分布が素子列中央に対して対称となり、また同一素子数及び同一駆動電圧では比較例に比べて放射音圧が向上する。これにより、片側印加方式の比較例と比べて、少ない素子数、あるいは低い駆動電圧であっても、より高い放射音圧が得られることが期待できる。
図8(A)〜図10(B)に、両側印加方式の本実施形態において、駆動電圧の周波数が3.5MHzである場合の音圧分布特性のシミュレーション結果を示す。端子Tai、Tbiに供給する駆動電圧は比較例と同一である。図8(A)〜図10(B)において、x軸は、素子列に沿った方向(図6のD1に平行な方向)の位置を表し、x=0に図1の超音波装置が設置されており、マイナス側が駆動端子Tai側である。図8(A)、図9(A)、図10(A)では、z軸は深度を表し、等音圧線により音圧分布を表している。深度とは、図6の方向D1、D2に直交する超音波の出射方向における位置である。
図8(A)、図8(B)には、素子列の個数Mが10個である場合、図9(A)、図9(B)には、素子列の個数Mが15個である場合、図10(A)、図10(B)には、素子列の個数Mが20個である場合の音圧分布特性例を示す。
これらの音圧分布を見て分かるように、音圧が最も大きくなる超音波ビームのピークが駆動端子Tai、Tbiのいずれの側にも偏っていないことが分かる。例えば、図8(A)、図9(A)、図10(A)に示すように、超音波ビームの等音圧線は、x=0を中心として対称である。また、深度30mmにおける音圧ピークは、図8(B)に示すようにM=10個ではx=0に存在し、図9(B)に示すようにM=15個ではx=+1.5mm、x=−1.5mmに存在し、図10(B)に示すようにM=20個ではx=+2.5mm、x=−2.5mmに存在する。深度10mmにおける音圧ピークは、図8(B)、図9(B)に示すように、M=10、15個ではx=0に存在し、図10(B)に示すようにM=20個ではx=+0.5mm、x=−0.5mmに存在する。
また、図3(A)〜図5(B)の比較例と図8(A)〜図10(B)の本実施形態を比べると、いずれの素子数Mにおいても、音圧のピーク値と素子列中心x=0における音圧はともに本実施形態の方が大きい。このように両側印加方式にすることで、薄膜ピエゾ素子アレイのRC定数分布回路により生じる電圧降下が軽減され、片側印加方式よりも大きな音圧を得ることが可能になる。
次に、素子列中心x=0における音圧(中心音圧)について、より詳細に説明する。図11(A)、図11(B)に、素子列の個数Mを変化させた場合の、中心音圧の特性例を示す。シミュレーション条件は、図3(A)〜図5(B)の比較例や図8(A)〜図10(B)の本実施形態と同様である。
図11(A)には、駆動電圧の周波数が3.5MHzである場合の深度10mmにおけるシミュレーション結果を示す。D1、D2には、それぞれ片側印加方式、両側印加方式のシミュレーション結果を示す。D1、D2に示すように、個数Mに依らず両側印加方式の方が高い中心音圧を得られ、強い超音波ビームを出射できる。また、いずれの方式でも電圧降下により個数Mの増加に伴って中心音圧が低下するが、片側印加方式ではM=7個で中心音圧が最大となるのに比べて、両側印加方式では、それより多いM=9個で中心音圧が最大となる。これは、両側印加方式とすることで電圧降下が軽減されたことによるものであり、片側印加方式に比べて素子数Mを増やして、より強い中心音圧を実現できることを示している。
図11(B)には、駆動電圧の周波数が3.5MHzである場合の深度30mmにおけるシミュレーション結果を示す。D3、D4には、それぞれ片側印加方式、両側印加方式のシミュレーション結果を示す。D3、D4に示すように、片側印加方式ではM=9個で中心音圧が最大となり、両側印加方式ではM=10個で中心音圧が最大となる。図11(A)と同様に、片側印加方式に比べて素子数Mを増やして、より強い中心音圧を実現できることが分かる。
4.駆動電圧出力回路
図12に、上記の駆動電圧を出力する駆動電圧出力回路の詳細な構成例を示す。図12に示す駆動電圧出力回路50は、駆動信号制御回路20、駆動信号発生回路30、駆動アンプ回路DA1〜DANを含む。なお、駆動電圧出力回路は、超音波装置(図18の素子チップ200)に含まれてもよいし、処理装置(図18の処理装置330)に含まれてもよい。
駆動信号制御回路20は、CPU10(制御回路)からの制御指示に基づいて、駆動信号発生回路30の制御を行う。例えば、駆動信号制御回路20は、駆動信号S1〜SNの位相を制御することで位相走査の制御を行ったり、駆動信号S1〜SNの振幅を制御することで超音波の音圧を制御したりする。駆動信号発生回路30は、駆動信号制御回路20からの制御に基づいて、駆動アンプ回路DA1〜DANに対して駆動信号S1〜SNを出力する。
駆動アンプ回路DA1〜DANは、駆動信号S1〜SNを増幅し、増幅により得られた駆動電圧Va1〜VaN、Vb1〜VbNを駆動端子Ta1〜TaN、Tb1〜TbNに対して出力する。なお以下では駆動アンプ回路DA1を例に詳細な構成例について説明するが、駆動アンプ回路DA2〜DANについても同様である。
駆動アンプ回路DA1は、アンプ回路AM1、可変抵抗Ra1、Rb1を含む。アンプ回路AM1は、信号S1を増幅して電圧Q1(又は電流)を出力する。可変抵抗Ra1、Rb1は、CPU10からの制御に基づいて抵抗が可変に制御される。Ra1の抵抗値がRb1の抵抗値よりも小さい値に設定された場合には、端子Ta1の電圧振幅は端子Tb1の電圧振幅よりも大きくなる。一方、Ra1の抵抗値がRb1の抵抗値よりも大きい値に設定された場合には、端子Ta1の電圧振幅は端子Tb1の電圧振幅よりも小さくなる。Ra1の抵抗値とRb1の抵抗値が同一値に設定された場合には、端子Ta1の電圧振幅と端子Tb1の電圧振幅が同一になる。
図13(A)、図13(B)に、上記駆動電圧出力回路50を用いた場合の、素子列P11〜PM1における電圧振幅の特性例と、音圧分布の特性例を模式的に示す。
図13(A)に示すように、可変抵抗をRa1<Rb1に設定すると、電圧振幅はVa1>Vb1となり、端子Ta1側から端子Tb1側に向かって電圧振幅が低下していく。そのため、超音波の放射音圧分布は、素子列中央から端子Ta1側へシフトする。一方、図13(B)に示すように、可変抵抗をRa1>Rb1に設定すると、電圧振幅はVa1<Vb1となり、端子Tb1側から端子Ta1側に向かって電圧振幅が低下していく。そのため、超音波の放射音圧分布は、素子列中央から端子Tb1側へシフトする。このように、可変抵抗の抵抗値を調整することで、両側印加方式のメリットを得ながら音圧分布をスライス方向にシフトさせることができる。
また、可変抵抗Ra1、Rb1の抵抗値を大きくすれば、駆動電圧Va1、Vb1の電圧振幅は小さくなり、放射音圧のピーク値は小さくなる。可変抵抗Ra1、Rb1の抵抗値を小さくすれば、駆動電圧Va1、Vb1の電圧振幅は大きくなり、放射音圧のピーク値は大きくなる。このように、駆動信号S1〜SNの調整だけでなく、可変抵抗Ra1、Rb1の抵抗値を調整することでも放射音圧のピーク値を調整することが可能である。
以上の実施形態によれば、図6に示すように、超音波装置は、第1の方向D1に沿って複数の超音波素子P1i〜PMiが配置された超音波素子列が、第1の方向D1に交差する第2の方向D2に沿ってN列配置される超音波素子群P11〜PMNと、第1の方向D1に沿って配線される第1〜第Nの駆動電極線SL1〜SLN(Nは2以上の自然数)と、第1の端子Taiと、第2の端子Tbiと、を有する。N列のうち第i列の超音波素子列を構成する超音波素子P1i〜PMiには、第1〜第Nの駆動電極線SL1〜SLNのうちの第iの駆動電極線SLi(iはN以下の自然数)が接続される。第iの駆動電極線SLiの一端には、第1の端子Taiが接続され、第iの駆動電極線SLiの他端には、第2の端子Tbiが接続される。
なお、図6で説明したように、超音波素子は薄型ピエゾ素子に限定されず、電気信号(駆動電圧又は駆動電流)を超音波に変換する素子であればよい。また、端子Tai、Tbiに供給される駆動信号は駆動電圧Vai、Vbiに限定されず、駆動電流であってもよい。また、超音波素子群を構成する超音波素子列の列数は、上記N列(Nは2以上の自然数)に限定されず、1列であってもよい。
ここで、超音波素子列がN列配置された超音波素子群は、マトリックス状の配置に限定されず、複数の単位要素が2次元的に規則性を持って配置されたアレイ状の配置であればよい。例えば、超音波素子群は千鳥状の配置であってもよい。マトリックス状の配置とは、M行N列の格子状配置であり、格子が矩形状の場合だけでなく、格子が平行四辺形状に変形した場合を含む。千鳥状の配置とは、超音波素子M個の列と超音波素子M−1個の列が交互に並び、M個の列の超音波素子が、(2M−1)行の中の奇数行に配置され、M−1個の列の超音波素子が、(2M−1)行の中の偶数行に配置される配置である。
さて、図1〜図5(B)で説明したように、超音波素子の寄生容量と配線の寄生抵抗によりRC定数分布回路が形成されるため、駆動信号の入力端から遠い超音波素子ほど、その電極間に印加される駆動信号の振幅が低下する。そのため、片側印加方式では、超音波の放射音圧分布が非対称な特性になったり、音圧が低下するという課題がある。
この点、本実施形態によれば、超音波素子群P11〜PMNに駆動信号を供給するための端子Tai、Tbiが、駆動電極線SLiの両端に設けられる。これにより、図7等で説明したように、駆動電極線SLiに接続された超音波素子列に対して両端から駆動信号を印加できるため、駆動信号の振幅が素子列両端から中央に向かって低下する特性にでき、音圧分布を素子列中央に収束させることができる。また、駆動信号の振幅低下を抑制できるため、超音波素子数を増加させなくとも片側印加方式に比べて放射音圧を向上できる。また、同等の放射音圧を実現するために片側印加方式よりも少ない超音波素子数で良いため、超音波素子アレイ100を小型化することが可能になる。
また本実施形態では、前記超音波素子列に配置された前記複数の超音波素子P1i〜PMiの個数Mは、m以下(mは3以上の自然数)である。
図11(A)、図11(B)等で説明したように、所定深度における素子列中央の音圧は、個数Mを変化させた場合に最大値が存在し、個数Mを増やしたからといって素子列中央の音圧が上昇するわけではない。この点、本実施形態によれば、個数Mの上限を制限することで、大きな音圧を得ながら超音波素子アレイ100の面積を節約できる。具体的には、音圧最大となる個数Mが3以上m以下の範囲内に入るようにmを設定すればよい。例えば、ピーク音圧が、個数Mを変化させた場合の最大値の1/2となるときの個数Mを、mとして設定すればよい。
また本実施形態では、第1の端子Taiにのみ駆動信号が入力された場合に、超音波素子アレイ100が出力する超音波の第1の方向D1における音圧分布特性において、超音波素子列の中央における音圧がピークの半分となるときの第1の方向D1に配列される超音波素子の個数がa(aは3以上の自然数)である場合、個数Mはm=a以下に設定されてもよい。
ここで、超音波素子列の中央とは、超音波素子列を構成する超音波素子P1i〜PMiの個数を半分に分ける位置のことである。即ち、個数Mが偶数の2k個(kは自然数)である場合、超音波素子列の一端からk個目の超音波素子と、k+1個目の超音波素子との中間の位置が、超音波素子列の中央である。個数Mが奇数の2k+1個である場合、超音波素子列の一端からk+1個目の超音波素子の位置が、超音波素子列の中央である。
また、第1の端子Taiにのみ駆動信号が入力された場合における「音圧のピーク」とは、超音波ビームの音圧特性において、音圧が最大のピークのことである。例えば、図4(B)に示す深度10mmの音圧特性には、音圧6980Paのピーク以外にも複数の小さなピークが存在するが、最大音圧6980Paのピークを「音圧のピーク」と呼ぶ。なお、第1、第2の端子Tai、Tbiの両方に駆動信号が入力された場合における「音圧のピーク」は、(例えば図9(B)の8757Pa)と、x=0に対して最大音圧のピークと対称な位置のピーク(8352Pa)である。図8(B)に示すようにx=0に最大音圧のピーク(12277Pa)があるときは、そのピークが「音圧のピーク」である。
例えば本実施形態において深度30mmの音圧分布特性を例にとり、片側印加方式と両側印加方式を比較する。片側印加方式では、図3(B)に示すように、M=10個では素子列中央x=0にピーク7160Paがあり、図4(B)、図5(B)に示すように、M=15、20個では素子列中央x=0での音圧はピーク6980Pa、6875Paの半分より小さい。即ち、素子列中央x=0での音圧がピークの半分となる個数Mは10より大きく15より小さいことがわかる。この場合、両側印加方式では、図8(B)に示すように、M=10個では素子列中央x=0にピーク12277Paがあり、図9(B)、図10(B)に示すように、M=15、20個では素子列中央x=0がピークとならず超音波ビームが中央に収束しないことがわかる。
この点、本実施形態によれば、片側印加方式において超音波素子列の中央における音圧がピークの半分となるときの個数M=aである場合に、個数Mをa以下に設定できる。これにより、超音波ビームを中央(又は1つに)収束することが可能になる。例えば上記深度30mmの例では、片側印加方式においてaは10より大きく15より小さい個数であり、両側印加方式において個数Mをa以下とすることで、超音波ビームが収束しない個数M=15個、20個を排除できる。
また本実施形態では、第1の端子Taiと第2の端子Tbiに駆動信号を入力した場合に、超音波素子群P11〜PMNが出力する超音波の第1の方向D1における音圧分布特性が、第1の方向D1に配列される超音波素子の個数がb+1(bは3以上の自然数)のときにダブルピークを有し、第1の方向D1に配列される超音波素子の個数がbのときにシングルピークを有する場合、m=bに設定されてもよい。
ここで、シングルピークとは、所定深度の音圧分布特性においてピークが一つであることをいう。即ち、例えば図8(B)に示す深度30mmの音圧分布特性のように、対称軸(例えば素子列中央x=0)を中心に左右対称な特性であり、その対称軸上に音圧の最大値が存在する場合である。
また、ダブルピークとは、所定深度の音圧分布特性においてピークが二つであることをいう。即ち、例えば図9(B)に示す深度30mmの音圧分布特性のように、対称軸(例えば素子列中央x=0)を中心に左右対称な特性であり、その対称軸上が音圧の最大値ではなく、音圧が最大の第1ピーク8757Paと、第1ピークの音圧と同等(例えば第1ピーク音圧の90パーセント以上)の第2ピーク8352Paが、対称軸を中心に対称な位置x=±1.5mmに存在する場合である。
このようにすれば、個数Mを増やした場合にシングルピークを保てる最大の個数M=bを、個数Mの最大値mに設定できる。これにより、所定深度の音圧分布特性においてシングルピークを実現でき、超音波ビームを1つに収束させることが可能になる。
また本実施形態では、図12に示すように、超音波装置は、超音波素子群P11〜PMNを駆動する駆動信号(駆動電圧Vai、Vbi)を、第1の端子Taiと第2の端子Tbiに対して出力する駆動信号出力回路(駆動電圧出力回路50)を含む。
具体的には、駆動信号出力回路は、第1の端子Taiと第2の端子Tbiに対して、異なる振幅の駆動信号(駆動電圧Vai、Vbi)を出力する。
このようにすれば、図13(A)、図13(B)で説明したように、端子Tai、Tbiに出力する駆動信号の振幅を調整することで、スライス方向(図6のD1)において超音波ビームのピーク位置を調整できる。
また本実施形態では、図12に示すように、駆動信号出力回路は、出力アンプAMi(例えば駆動アンプ回路DA1ではi=1)と、出力アンプAMiと第1の端子Taiとの間に設けられ、第1の端子Taiに対する駆動信号の振幅を調節するための第1の可変抵抗Raiと、出力アンプAMiと第2の端子Tbiとの間に設けられ、第2の端子Tbiに対する駆動信号の振幅を調節するための第2の可変抵抗Rbiと、を有する。
このようにすれば、可変抵抗Rai、Rbiの抵抗値を調整することにより、端子Tai、Tbiに出力する駆動信号(駆動電圧Vai、Vbi)の振幅を調整することができる。
また本実施形態では、図6に示すように、超音波装置は、第2の方向D2に沿って配線される複数のコモン電極線CL1〜CLMを含む。
具体的には、第i列の超音波素子列を構成する第1〜第Mの超音波素子P1i〜PMiのうち第jの超音波素子Pjiには、複数のコモン電極線である第1〜第Mのコモン電極線CL1〜CLMのうち第jのコモン電極線CLjが接続される。
このようにすれば、1つながりのベタのコモン電極線でなく複数のコモン電極線CL1〜CLMを配線することで、超音波素子(薄膜ピエゾ素子)により駆動電極線とコモン電極線を絶縁できる。これにより、駆動電極線とコモン電極線を絶縁するための絶縁層を、超音波素子以外に設けなくてもよくできる。
また本実施形態では、図6に示すように、超音波装置は、複数のコモン電極線CL1〜CLMに共通接続され、第1の方向D1に沿って配線される共通コモン電極線AL1、AL2を、含む。
また本実施形態では、超音波装置は、共通コモン電極線AL1、AL2の両端に設けられ、超音波素子群P11〜PMNに対してコモン電圧を供給するための端子CTa1、CTb1、CTa2、CTb2を、含む。
このようにすれば、複数のコモン電極線CL1〜CLMを共通コモン電極線AL1、AL2にまとめることができる。また、複数のコモン電極線CL1〜CLMに対して、共通の端子CTa1、CTb1、CTa2、CTb2からコモン電圧を供給できる。
5.超音波素子
図14(A)、図14(B)に、超音波素子群P11〜PMNを構成する超音波素子の構成例を示す。なお以下では適宜、超音波素子を超音波トランスデューサー素子とも呼ぶ。
図14(A)、図14(B)に示す超音波トランスデューサー素子UEは、第1電極層EL1、圧電体層PE、第2電極層EL2、メンブレン(支持部材)MB、空洞領域(空洞部)CAVを含む。なお、本実施形態の超音波トランスデューサー素子UEは図14の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図14(A)は、基板(シリコン基板)SUBに形成された超音波トランスデューサー素子UEの、素子形成面側の基板に垂直な方向から見た平面図である。図14(B)は、図14(A)のA−A’に沿った断面を示す断面図である。
第1電極層EL1は、メンブレンMBの上層に例えば金属薄膜で形成される。この第1電極層(下部電極層)EL1は、図14(A)に示すように素子形成領域の外側へ延長され、隣接する超音波トランスデューサー素子UEに接続される配線であってもよい。
圧電体層PEは、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)薄膜により形成され、第1電極層EL1の少なくとも一部を覆うように設けられる。なお、圧電体層PEの材料は、PZTに限定されるものではなく、例えばチタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO3)などを用いてもよい。
第2電極層(上部電極層)EL2は、例えば金属薄膜で形成され、圧電体層PEの少なくとも一部を覆うように設けられる。この第2電極層EL2は、図14(A)に示すように素子形成領域の外側へ延長され、隣接する超音波トランスデューサー素子UEに接続される配線であってもよい。
メンブレンMBは、例えばSiO2薄膜とZrO2薄膜との2層構造により空洞領域CAVの上層に設けられる。このメンブレンMBは、圧電体層PE及び第1、第2電極層EL1、EL2を支持すると共に、圧電体層PEの伸縮に従って振動し、超音波を発生させることができる。
空洞領域CAVは、シリコン基板SUBの裏面(素子が形成されない面)側から反応性イオンエッチング(RIE)等によりエッチングすることで形成される。この空洞領域CAVの開口部OPより超音波が放射される。
超音波トランスデューサー素子UEの第1の電極は、第1電極層EL1により形成され、第2の電極は、第2電極層EL2により形成される。具体的には、第1電極層EL1のうちの圧電体層PEに覆われた部分が第1の電極を形成し、第2電極層EL2のうちの圧電体層PEを覆う部分が第2の電極を形成する。即ち、圧電体層PEは、第1の電極と第2の電極に挟まれて設けられる。
圧電体層PEは、第1の電極と第2の電極との間、即ち第1電極層EL1と第2電極層EL2との間に電圧が印加されることで、面内方向に伸縮する。圧電体層PEの一方の面は第1電極層EL1を介してメンブレンMBに接合されているが、他方の面には第2電極層EL2が形成されるものの、第2電極層EL2上には他の層が形成されない。そのため圧電体層PEのメンブレンMB側が伸縮しにくく、第2電極層EL2側が伸縮し易くなる。従って、圧電体層PEに電圧を印加すると、空洞領域CAV側に凸となる撓みが生じ、メンブレンMBを撓ませる。圧電体層PEに交流電圧を印加することで、メンブレンMBが膜厚方向に対して振動し、このメンブレンMBの振動により超音波が開口部OPから放射される。圧電体層PEに印加される電圧は、例えば10〜30Vであり、周波数は例えば1〜10MHzである。
6.ヘッドユニット
図15に、図6の超音波装置が搭載されるヘッドユニット220の構成例を示す。図15に示すヘッドユニット220は、素子チップ200、接続部210、支持部材SUPを含む。なお、本実施形態のヘッドユニット220は図15の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
素子チップ200は、図6で説明した超音波装置に対応する。素子チップ200は、超音波素子アレイUAR、信号端子(広義には第1のチップ端子群)X1〜X12、信号端子(広義には第2のチップ端子群)X1’〜X12’及びコモン端子COM1、COM2、COM1’、COM2’を含む。信号端子X1〜X12は、図6の端子Ta1〜Ta12(例えばN=12)に対応し、信号端子X1’〜X12’は、図6のTb1〜Tb12に対応する。コモン端子COM1、COM2、COM1’、COM2’は、図6の端子CTa1、CTa2、CTb1、CTb2に対応する。素子チップ200は、接続部210を介してプローブ本体が有する処理装置(例えば図18の処理装置330)と電気的に接続される。
接続部210は、プローブ本体とヘッドユニット220とを電気的に接続するものであって、複数の接続端子を有するコネクターCNと、コネクターCNと素子チップ200とを接続する配線が形成されるフレキシブル基板FPとを有する。具体的には、接続部210は、コネクターとして第1のコネクターCN1及び第2のコネクターCN2を有し、フレキシブル基板として第1のフレキシブル基板FP1及び第2のフレキシブル基板FP2を有する。
第1のフレキシブル基板FP1には、素子チップ200の第1の辺側に設けられる第1のチップ端子群X1〜X12と第1のコネクターCN1とを接続する第1の配線群が形成される。また、第2のフレキシブル基板FP2には、素子チップ200の第1の辺に対向する第2の辺側に設けられる第2のチップ端子群X1’〜X12’と第2のコネクターCN2とを接続する第2の配線群が形成される。
コネクターCN1は、フレキシブル基板FP1に形成された第1の配線群を介して、第1のチップ端子群X1〜X12の信号が入力又は出力される複数の接続端子と、を有する。コネクターCN2は、フレキシブル基板FP2に形成された第2の配線群を介して、第2のチップ端子群X1’〜X12’の信号が入力又は出力される複数の接続端子を有する。
接続部210は、図15に示す構成に限定されるものではない。接続部210は、素子チップ200の第1の辺側に設けられる第1のチップ端子群の信号が入力又は出力される第1の接続端子群と、素子チップ200の第1の辺に対向する第2の辺側に設けられる第2のチップ端子群の信号が入力又は出力される第2の接続端子群とを有してもよい。
接続部210を設けることで、プローブ本体とヘッドユニット220とを電気的に接続することができ、さらにヘッドユニット220をプローブ本体に脱着可能にすることができる。
支持部材SUPは、素子チップ200を支持する部材であって、後述するように、支持部材SUPの第1の面側に複数の接続端子が設けられ、支持部材SUPの第1の面の裏面である第2の面側に素子チップ200が支持される。なお、素子チップ200、接続部210及び支持部材SUPの具体的な構造については後述する。
図16(A)〜図16(C)に、ヘッドユニット220の詳細な構成例を示す。図16(A)は支持部材SUPの第2の面SF2側を示し、図16(B)は支持部材SUPの第1の面SF1側を示し、図16(C)は支持部材SUPの側面側を示す。なお、本実施形態のヘッドユニット220は、図16(A)〜図16(C)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
支持部材SUPの第1の面SF1側には、コネクターCN1、CN2(広義には複数の接続端子)が設けられる。コネクターCN1、CN2には、フレキシブル基板FP1、FP2の一端がそれぞれ接続される。フレキシブル基板FP1、FP2には、例えばプリアンプPA1、PA2などの回路を設けることができる。コネクターCN1、CN2は、プローブ本体側の対応するコネクターに脱着可能である。
支持部材SUPの第1の面SF1の裏面である第2の面SF2側には、素子チップ200が支持される。素子チップ200の端子にはフレキシブル基板FP1、FP2の他端が接続される。固定用部材HLは、支持部材SUPの各コーナー部に設けられ、ヘッドユニット220をプローブ筐体に固定するために用いられる。
ここで支持部材SUPの第1の面側とは、支持部材SUPの第1の面SF1の法線方向側であり、支持部材SUPの第2の面側とは、支持部材SUPの第1の面SF1の裏面である第2の面SF2の法線方向側である。
図16(C)に示すように、素子チップ200の裏面(図14(B)において開口部OPが設けられる面)には、素子チップ200を保護する保護部材(保護膜)PFが設けられる。
7.超音波プローブ
図17(A)、図17(B)に、上記のヘッドユニット220が適用される超音波プローブ300の構成例を示す。図17(A)はプローブヘッド310がプローブ本体320に装着された場合を示し、図17(B)はプローブヘッド310がプローブ本体320から分離された場合を示す。
プローブヘッド310は、ヘッドユニット220、被検体と接触する接触部材230及びヘッドユニット220を格納するプローブ筐体240を含む。素子チップ200は、接触部材230と支持部材SUPとの間に設けられる。
プローブ本体320は、処理装置330及びプローブ本体側コネクターCNbを含む。処理装置330は、送信部TX、アナログフロントエンド部AFE及び制御部CTLを含む。送信部TXは、制御部CTLの制御に基づいて、超音波トランスデューサー素子を駆動する駆動信号の送信処理を行い、アナログフロントエンド部AFEは、超音波トランスデューサー素子からの超音波エコー信号(受信信号)の受信処理を行う。
制御部CTLは、送信部TX及びアナログフロントエンド部AFEの制御を行う。プローブ本体側コネクターCNbは、ヘッドユニット(又はプローブヘッド)側コネクターCNaと接続される。プローブ本体320は、ケーブルCBにより電子機器(例えば超音波診断装置)本体に接続される。
ヘッドユニット220は、プローブ筐体240に格納されているが、ヘッドユニット220をプローブ筐体240から取り外すことができる。こうすることで、ヘッドユニット220だけを交換することができる。或いは、プローブ筐体240に格納された状態で、即ちプローブヘッド310として交換することもできる。
8.超音波診断装置
図18に、超音波診断装置の構成例を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ300、電子機器本体400を含む。超音波プローブ300は、超音波ヘッドユニット220、処理装置330を含む。電子機器本体400は、制御部410、処理部420、ユーザーインターフェース部430、表示部440を含む。
処理装置330は、選択部MUX、スイッチ部T/R_SW、送信部HV_P、送受信制御部CNTL、受信部AFE(アナログフロントエンド部)を含む。超音波ヘッドユニット220は、素子チップ200(超音波装置)と、素子チップ200を回路基板に接続する接続部210(コネクター部)を含む。回路基板には、MUX、HV_P、CNTL、T/R_SW、AFEが実装されている。
超音波を送信する場合には、CNTLがHV_Pに対して送信指示を行い、HV_Pがその送信指示を受けて駆動信号を高電圧に増幅して駆動電圧を出力し、MUXがその駆動信号を素子チップ200に対して出力する。このときT/R_SWはオフになっている。超音波の反射波を受信する場合には、T/R_SWはオンになっており、MUXは、素子チップ200により検出された反射波の信号をT/R_SWに対して出力し、T/R_SWは、その反射波の信号をAFEに対して出力する。このときMUXは、HV_Pからの駆動電圧を素子チップ200に対して送信しない状態となっている。AFEは、CNTLからの受信指示に基づいて、反射波の信号を処理(例えば増幅処理や、A/D変換処理等)し、処理後の信号を処理部420に送信する。処理部420は、その信号を映像化して表示部440に表示させる。
なお、本実施形態の超音波装置は、上記のような医療用の超音波診断装置に限らず、種々の電子機器に適用可能である。例えば、超音波装置が適用された電子機器として、建築物等の内部を非破壊検査する診断装置や、ユーザーの指の動きを超音波の反射により検出するユーザーインターフェース機器等が想定される。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また超音波装置、超音波プローブ、超音波診断装置、電子機器等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。