JP6183879B2 - 新規ペプチドおよびその医薬用途 - Google Patents
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(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に最大で5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ミトコンドリアカルパインに対して阻害作用を有するペプチド、
(3)配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(4)配列番号5に記載のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に最大で5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ミトコンドリアカルパインに対して阻害作用を有するペプチド、
のいずれかのペプチドのN末端に、タンパク質伝達ドメインが付加されてなるペプチドを有効成分とする。
また、本発明の網膜視細胞変性症の予防及び/又は治療のための点眼剤は、請求項2記載の通り、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に最大で5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ミトコンドリアカルパインに対して阻害作用を有するペプチド、
(3)配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(4)配列番号5に記載のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に最大で5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ミトコンドリアカルパインに対して阻害作用を有するペプチド、
のいずれかのペプチドのN末端に、タンパク質伝達ドメインが付加されてなるペプチドを有効成分とする。
1−1:20アミノ酸残基ペプチドの化学合成
ラットのμ−カルパインの活性サブユニット(CAPN1、アクセッション番号:NP_062025.1)のドメインIII(C2Lドメイン)の領域のN末端側から20アミノ酸残基ずつのペプチドを化学合成した(使用したペプチド合成装置:島津製作所社のPSSM−8、C18カラムを用いた逆相HPLCにより精製)。隣接するペプチドとペプチドは先のペプチドのC末端側の3アミノ酸残基と後のペプチドのN末端側の3アミノ酸残基が重複するようにした。図1にラットのμ−カルパインの活性サブユニットのアミノ酸配列とC2Lドメインの位置、そして化学合成した14種類のペプチド(N1〜14)のそれぞれのアミノ酸配列を示す(N2ペプチドのアミノ酸配列が配列番号4に記載のアミノ酸配列に相当)。
(実験方法)
T.Ozaki et al.,J.Biochem.,142:365−376,2007およびT.Ozaki et al.,Biochem.Biophys.Acta.,1793:1848−1859,2009に記載の方法に従って評価した。ラット肝臓ミトコンドリア膜間スペース(25μg)に14種類のペプチド(N1〜14)のそれぞれを終濃度が50μMとなるように添加し、4℃で4時間反応させ、その後、カルパイン基質であるSuc−Leu−Tyr−AMC(BACHEM社)を用いてカルパイン活性測定を行い、それぞれのペプチドのミトコンドリアカルパイン阻害作用を評価した。
図2に示す(各群n=3、*P<0.05 and **P<0.01 vs vehicle(t−test))。図2から明らかなように、N2ペプチドとN9ペプチドに優れたミトコンドリアカルパイン阻害作用が認められた。
(実験方法)
T.Ozaki et al.,J.Biochem.,142:365−376,2007およびT.Ozaki et al.,Biochem.Biophys.Acta.,1793:1848−1859,2009に記載の方法に従って評価した。ラット肝臓細胞質画分から部分精製したμ−カルパインおよびm−カルパイン(各々25μg)、ラット肝臓ミトコンドリア膜間スペースから部分精製したμ−カルパインおよびm−カルパイン(各々25μg)、カテプシンL(大腸菌由来ヒト組換えタンパク質、BioVision社、終濃度50nM)、ヒト赤血球から精製した20Sプロテアソーム(Biomol社、終濃度1nM)、パパイヤから精製したパパイン(AppliChem社、終濃度50nM)の7種類のプロテアーゼのそれぞれに対し、N2ペプチドとN9ペプチドのそれぞれを終濃度が50μMとなるように添加し、4℃で4時間反応させ、その後、カルパイン基質であるSuc−Leu−Tyr−AMC(BACHEM社)を用いてカルパイン活性測定を行い、それぞれのペプチドのプロテアーゼ阻害作用の特異性を評価した。
図3にN2ペプチドの結果を、図4にN9ペプチドの結果をそれぞれ示す。図3と図4から明らかなように、N2ペプチドとN9ペプチドはいずれもミトコンドリアμ−カルパインを強力に阻害した。ミトコンドリアμ−カルパイン(25μg)に対するN2ペプチドとN9ペプチドのそれぞれの阻害曲線を作成してそれぞれのIC50値を算出したところ、N2ペプチドのIC50値は892nMでN9ペプチドのIC50値は498nMであった。
20アミノ酸残基ペプチドであるN2ペプチドとN9ペプチドのそれぞれのセグメント(10アミノ酸残基ペプチド)を化学合成した(使用したペプチド合成装置:島津製作所社のPSSM−8、C18カラムを用いた逆相HPLCにより精製)。表1にN2ペプチド(N2−20)と化学合成した3種類のN2ペプチドのセグメント(N2−10−1〜3)のそれぞれのアミノ酸配列およびN9ペプチド(N9−20)と化学合成した3種類のN9ペプチドのセグメント(N9−10−1〜3)のそれぞれのアミノ酸配列を示す(N2−10−2ペプチドのアミノ酸配列が配列番号1に記載のアミノ酸配列に相当)。
1−2の実験方法と同様にして調べた。結果を図5に示す。図5から明らかなように、N2ペプチドはセグメント化することでN2−10−2ペプチドがN2ペプチドよりも優れたミトコンドリアカルパイン阻害作用を発揮したが、N9ペプチドはセグメント化することでN9ペプチドのミトコンドリアカルパイン阻害作用が喪失した。
1−3の実験方法と同様にして調べた。結果を図6に示す。図6から明らかなように、N2−10−2ペプチドはミトコンドリアμ−カルパインを強力に阻害するとともにミトコンドリアm−カルパインを適度に阻害した。ミトコンドリアμ−カルパイン(25μg)に対するN2−10−2ペプチドの阻害曲線を作成してIC50値を算出したところ112nMであり、N2ペプチドとN9ペプチドのそれぞれのIC50値よりも低濃度であった。
N2−10−2ペプチドのN末端とC末端のそれぞれにタンパク質伝達ドメインとしてHIV−1 Tatの形質導入部位に含まれる13残基のアミノ酸配列を有するペプチドを付加したペプチドを化学合成した(使用したペプチド合成装置:島津製作所社のPSSM−8、C18カラムを用いた逆相HPLCにより精製)。表2にN末端にタンパク質伝達ドメインを付加したN2−10−2ペプチド(HIV−Nμペプチド)とC末端にタンパク質伝達ドメインを付加したN2−10−2ペプチド(HIV−Cμペプチド)のそれぞれのアミノ酸配列を示す(HIV−Nμペプチドのアミノ酸配列が配列番号7に記載のアミノ酸配列に相当)。
1−2の実験方法と同様にして調べた。結果を図7に示す。図7から明らかなように、HIV−Nμペプチドのミトコンドリアカルパイン阻害作用は、N2−10−2ペプチドのミトコンドリアカルパイン阻害作用よりも低下したが、N2ペプチドのミトコンドリアカルパイン阻害作用よりも優れていた(HIV−N)。一方、HIV−Cμペプチドのミトコンドリアカルパイン阻害作用は、N2−10−2ペプチドのミトコンドリアカルパイン阻害作用よりも大きく低下し、N2ペプチドのミトコンドリアカルパイン阻害作用よりも劣っていた(HIV−C)。
1−3の実験方法と同様にして調べた。結果を図8に示す。図8から明らかなように、HIV−Nμペプチドはミトコンドリアμ−カルパインを強力に阻害するとともにミトコンドリアm−カルパインを適度に阻害した。ミトコンドリアμ−カルパイン(25μg)に対するHIV−Nμペプチドの阻害曲線を図9に示す(HIV−N)。この阻害曲線から算出したHIV−NμペプチドのIC50値は285nMであり、N2−10−2ペプチドのIC50値よりも高濃度であったが、N2ペプチドとN9ペプチドのそれぞれのIC50値よりも低濃度であった。
(実験方法)
ラット肝臓から単離したミトコンドリアを緩衝液(20mM Tris−HCl,pH7.5,0.25M sucrose,5mM 2−mercaptoethanol)に懸濁した後、HIV−Nμペプチド(終濃度50μM)、Calpeptin(終濃度50μM)、PD150606(終濃度150μM)のそれぞれを添加し、4℃で4時間反応させた。その後、1mM CaCl2を添加して37℃で30分間反応させ、インヒビターカクテル(Roche Applied Science社)および1% Triton X−100の混合液を添加した。4℃で15,000xg、20分間遠心し、その上清に含まれるタンパク質(30μg/レーン)SDS−PAGEおよびウエスタンブロット解析を行い、それぞれのミトコンドリアカルパインによるAIF切断に対する阻害作用を評価した。
図10に示す。図10から明らかなように、カルパイン阻害剤として知られているCalpeptinやPD150606と同様にHIV−NμペプチドはミトコンドリアカルパインによるAIF切断を効果的に阻害した(AIF切断による57kDaのtAIFの生成抑制)。
(実験方法)
S.Mizukoshi et al.,Exp.Eye Res.,91:353−361,2010に記載の方法に従って評価した。生後25日目のRCSラットの硝子体内に30ゲージのハミルトンシリンジを用いて2μLの20mM HIV−Nμペプチドまたは4mM PD150606を投与した(いずれもPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に溶解)。3日後の生後28日目に各種の光刺激量による網膜電図測定を行った後、眼球を摘出し、網膜の凍結切片を作製してTUNEL染色を行い、視細胞層に含まれるTUNEL陽性細胞の定量分析に基づいてそれぞれの硝子体内注射によるRCSラットの視細胞死に対する抑制作用を評価した。
図11に視細胞層に含まれるTUNEL陽性細胞の定量分析の結果を示す(各群n=12眼球、***P<0.001 vs vehicle(ANOVA))。図11から明らかなように、PD150606はRCSラットに見られる視細胞死をコントロールに対して約60%抑制したが、HIV−Nμペプチドは約90%抑制した。また、図12に網膜電図測定の結果を示し、図13にa波とb波の電位変化を示す(各群n=12眼球、*P<0.05 and **P<0.01 vs vehicle(ANOVA))。図12と図13から明らかなように、HIV−Nμペプチドを硝子体内注射することでa波とb波の電位変化が増加したことから、HIV−Nμペプチドは視細胞やミューラー細胞の機能の低下による視機能の低下を抑制することがわかった。PD150606にも同様の作用があるがHIV−Nμペプチドの作用よりも劣るのは、PD150606はミトコンドリアカルパインのみならず細胞質カルパインも阻害するので、細胞質カルパインが阻害されることによる視細胞やミューラー細胞の機能への悪影響がその要因の一つに考えられた。
PBSにHIV−NμペプチドとHIV−Nμスクランブルペプチド(GRKKRRQRRRPPQ−ASLRLDRPTKで示される23残基のアミノ酸配列を有するペプチド)のそれぞれをその濃度が40mMになるように溶解して点眼剤を調製した。それぞれの点眼剤をRCSラットに生後14日目から27日目まで1日2回投与し、28日目に眼球摘出を行い、1−11の実験方法と同様にしてTUNEL陽性細胞の定量分析に基づいてそれぞれの点眼によるRCSラットの視細胞死に対する抑制作用を評価した。結果を図14に示す(各群n=20眼球、**P<0.01 vs vehicle(ANOVA))。図14から明らかなように、HIV−NμスクランブルペプチドはRCSラットに見られる視細胞死をほとんど抑制しなかったが、HIV−Nμペプチドはコントロールに対して約50%抑制した。
(実験方法)
S.Mizukoshi et al.,Exp.Eye Res.,91:353−361,2010に記載の方法に従って評価した。生後15日目のロドプシン変異S334terラット(line 4)の硝子体内に30ゲージのハミルトンシリンジを用いて2μLの20mM HIV−Niペプチドまたは4mM PD150606を投与した(いずれもPBSに溶解)。3日後の生後18日目に眼球を摘出し、網膜の凍結切片を作製してTUNEL染色を行い、視細胞層に含まれるTUNEL陽性細胞の定量分析に基づいてそれぞれの硝子体内注射によるロドプシン変異S334terラットの視細胞死に対する抑制作用を評価した。
図15に示す(各群n=12眼球、***P<0.001 vs vehicle(ANOVA))。図15から明らかなように、PD150606はロドプシン変異S334terラットに見られる視細胞死をコントロールに対して約40%抑制したが、HIV−Nμペプチドは約55%抑制した。
(1)ラットのm−カルパインの活性サブユニット(CAPN2、アクセッション番号:NP_058812)のドメインIII(C2Lドメイン)の領域から実施例1の1−1〜1−5と同様にしてHYSRLEICNLで示される10残基のアミノ酸配列を有するN2−10−1ペプチドを化学合成した。N2−10−1ペプチドのプロテアーゼ阻害作用の特異性を実施例1の1−3の実験方法と同様にして調べた結果を図16に示す。図16から明らかなように、N2−10−1ペプチドはミトコンドリアm−カルパインとともにミトコンドリアμ−カルパインを強力に阻害した。
μ−カルパイン由来のN2−10−2ペプチドのN末端にタンパク質伝達ドメインを付加したHIV−Nμペプチドの硝子体内注射や点眼によるRCSラットやロドプシン変異S334terラットの視細胞死に対する抑制作用は、HIV−Nμペプチドに特異的な作用であることがわかった。カルパイン阻害剤として知られているCalpeptinやPD150606は、ミトコンドリアカルパインのみならず細胞質カルパインも阻害するため、網膜に存在する各種の細胞の機能に悪影響を及ぼす恐れがあるが、HIV−Nμペプチドはミトコンドリアカルパインを選択的に阻害するので、細胞質カルパインが阻害されることによる障害の発生が回避できる点で優れている。
自体公知の方法で配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するペプチドを生理食塩水に溶解した後、加熱滅菌して硝子体内注射剤として製剤化した。
自体公知の方法で配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するペプチドを精製水に溶解した後、無菌ろ過して点眼剤として製剤化した。
Claims (2)
- (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に最大で5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ミトコンドリアカルパインに対して阻害作用を有するペプチド、
(3)配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(4)配列番号5に記載のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に最大で5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ミトコンドリアカルパインに対して阻害作用を有するペプチド、
のいずれかのペプチドのN末端に、タンパク質伝達ドメインが付加されてなるペプチドを有効成分とする、網膜視細胞変性症の予防及び/又は治療のための硝子体内注射剤。 - (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に最大で5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ミトコンドリアカルパインに対して阻害作用を有するペプチド、
(3)配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
(4)配列番号5に記載のアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に最大で5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ミトコンドリアカルパインに対して阻害作用を有するペプチド、
のいずれかのペプチドのN末端に、タンパク質伝達ドメインが付加されてなるペプチドを有効成分とする、網膜視細胞変性症の予防及び/又は治療のための点眼剤。
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