JP6183712B2 - 治療用光源装置 - Google Patents

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この発明は、光により人体の治療を行う治療用光源装置に関し、特に光源としてエキシマランプを具備した治療用光源装置に係わるものである。
乾癬、白斑などの皮膚病の治療を目的に、ナローバンドUVB(波長280nm〜320nm)の光を患部に照射して治療する治療用光源装置が知られている。UVBの光を放射する光源としては様々なものがあるが、その一つにエキシマランプがあり、このエキシマランプを用いた治療用光源装置に関する技術としては、例えば、特許第4670780号公報(特許文献1)等が知られている。
図8〜図10にこの従来技術に基づく治療用光源装置が示されている。
図8において、治療用光源装置80は、スタンド82のガイド溝82aに上下動自在に支持された光照射ユニット83を備えている。より詳細には、該光照射ユニット83は、前記スタンド82のガイド溝82aに上下動可能に支持された保持具89の先端に回動可能に支持されている。
これにより、光照射ユニット83は、上下動自在、かつ、回動自在に支持されていて、その窓部86を患部の場所に合わせて高さや向きを調整して、患部に対して適切な条件で紫外線を照射できるようになっている。
この光照射ユニット83の詳細は、図9(A)〜(C)に示されていて、筺体84と、その内部に略垂直状に支持されたエキシマランプ85とを有する。
筺体84の前面には、石英ガラス等からなる窓部86が設けられていて、前記エキシマランプ85はこの窓部86に対向するように配置されている。そして、筺体84内のエキシマランプ85の後方には凹面形状の反射鏡87が設けられている。
また、筺体84内は冷却ファン88、88によって冷却されている。
図10に示すように、この光照射ユニット83に用いられているエキシマランプ85の発光管851は、外側管852と内側管853とからなり、その両端部で封止されて放電空間Sが形成されている。そして、外側管852および内側管853の外部側にはそれぞれ外部電極854と外部電極855とが設けられている。これらのうち、特に外側管852に設けられた外部電極854は網状等の透光性電極であって、放電空間S内で生成された紫外光は該外部電極854を通して外部に出射される。
そして、この発光管851内には、放電ガスとして、例えば、キセノンと塩素が封入される。この場合、一対の外部電極854、855間に放電が生じると、放電ガスの発光により波長308nm付近にピークを有する紫外線が放射される。
ところで、疾患部位が比較的広範囲にわたる場合、前述したように、患部に最適な条件で光が照射されるように、治療用光源装置を操作する作業者は光照射ユニットの位置を調整しながら、光線を照射する必要がある。つまり、筐体の位置を変更しては光を照射するという操作を複数回繰り返さなければならない。このため、治療に時間がかかり、患者及び作業者の両者に大きな負担がかかる、という問題がある。
その問題を解決するためには、広範囲の疾患部位に対応して一度の光照射による治療範囲を広くすべく、エキシマランプの照射可能領域を大きくすることが求められる。この照射可能領域の拡大のためには、簡単にはランプの軸方向長さを長くするとともに、設置本数を増やして複数本のランプを並列配置して広い面状の光源装置とすればよい。
しかしながら、ランプ長を伸ばすと、ランプ1本に投入される電力は電極面積に略比例して増加するため、1本のランプを1台の点灯電源装置で点灯させることが困難になる。また、複数本の二重円筒状のエキシマランプを並列に配置することにより均一な照度を得ようとすると、複雑な形状の反射鏡をエキシマランプの周辺に用意しなければならない。
このような場合には、扁平型のエキシマランプを複数本並べることにより対応できる。二重円筒状のエキシマランプの外直径と同一の幅、長さの扁平型エキシマランプとを比較すると、扁平型エキシマランプのほうが、放電空間が小さく、ランプ長を伸ばしても、1台の点灯電源で点灯させることが容易になる。また、ランプ自体が扁平形状であり、二重円筒状のエキシマランプと比較して、より簡易な光学系で均一な照度を実現できる。
ところが、本発明者らが鋭意調査したところによると、扁平型のエキシマランプの軸方向長さを長くした場合、放電容器の長さ方向(軸方向)には放電が集中する場所と、そうでない場所が発生するあることが判明した。そして、放電が集中する場所は照度が高く、そうでない場所は照度が低い傾向にあることが分かった。
扁平型のエキシマランプにより広範囲の疾患部位に対応した大面積照射を可能とする治療用光源装置を実現しようとすれば、ランプ長を長くする必要があり、均一な照度を得るためには、放電を放電容器全体に行き渡らせる必要がある。
特許第4670780号公報
この発明の解決すべき課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、キセノンと塩素が封入されたエキシマランプと、このエキシマランプからの出射光を透過する窓部を備えた光照射ユニットを備えた治療用光源装置において、広域な患部であっても均一な紫外線照射が可能な治療用光源装置を提供することである。
上記課題を解決するために、この発明に係る治療用光源装置は、前記エキシマランプが、互いに平行に延びる一対の矩形状平面部及び該一対の矩形状平面部の長手方向の側縁部に沿って形成された一対の側面部を有するガラス製の放電容器と、該放電容器の前記一対の矩形状平面部の各々に設けられた外部電極を具備し、前記エキシマランプは、前記光照射ユニットの内部において、前記矩形状平面部の一方が前記窓部に対向して配置されると共に、当該エキシマランプの放電容器の長手方向の管軸が略垂直方向に支持されていることを特徴とする。
また、前記エキシマランプの放電容器における矩形状平面部の内面形状が、横断面における中央部において内部側に突出していて、内面離間距離が狭められていることを特徴とする。
この発明の治療用光源装置によれば、エキシマランプの放電容器が略矩形箱状であって、矩形状平面部に外部電極が形成されており、放電容器の管軸を垂直方向に立てて支持することで、放電柱が交流電力の切り替え毎に生起されるとき、放電容器の内部の垂直方向でガスの濃度や温度の勾配が生じ易くなる。
放電柱は放電容器全体の中で形成し易い部位に率先して形成されるので、前記したように放電容器を、内部のガスの温度変化が起こり易いように垂直方向に支持することで、放電柱が放電容器内において垂直方向に転々と移動し、紫外線が発生する部位を放電容器全体に行き渡らせることができる。
この結果、高周波の切り替えに伴う一瞬は、照度分布にムラが生じるが、治療に要する時間(例えば、30〜180秒間)の範囲における積算照度を一定にすることができ、患部に対する照度ムラを防ぐことができるようになる。
また、放電容器における矩形状平面部の内面形状が、横断面における中央部において内部側に突出していて、その内面離間距離が狭められていることにより、平面部内面間での放電柱が、当該狭められた部位に形成され易く、放電柱の位置が安定して形成され、前記した垂直方向への移動も安定的なものとなり、放電容器の垂直方向で照度の安定性がもたらされる。
本発明の治療用光源装置の斜視図 本発明の光照射ユニットの正面図(A)、側断面図(B)、上面図(C) 本発明におけるエキシマランプの正面図(A)、X−X断面図(B) 本発明の作用の説明図 本発明のランプ内のガス流の説明図(A)、X−X断面図(B) エキシマランプの他の実施例の断面図 本発明の効果を表すグラフ 従来の治療用光源装置の斜視図 その光照射ユニットの正面図(A)、B−B断面図(B)、C−C断面図(C) 従来例におけるエキシマランプの断面図(A)、X−X断面図(B)
図1は、本発明の治療用光源装置の構成を示す斜視図である。
スタンド2のスライドレール21に光照射ユニット3が上下動自在に指示されている。
この光照射ユニット3の詳細が図2に示されていて、筺体4内に複数本のエキシマランプ5が略垂直状に並列支持されている。
そして、筺体4の前面には石英ガラス等からなる窓部6が設けられている。
本発明の光照射ユニット3に用いられるエキシマランプ5の詳細が図3に示されている。
このエキシマランプ5は、扁平四角状のガラス製の放電容器50を有していて、互いに平行に延びる一対の矩形状平面部51、51及びその長手方向の側縁部に沿って形成された一対の側面部52、52とからなる。この放電容器50の前記一対の矩形状平面部51、51の各々には透光性の外部電極53、53が設けられている。
そして、この放電容器50内には、放電ガスとしてキセノン及び塩素が封入されていて、その発光により波長308nm付近にピークを有する紫外線が放射される。
このエキシマランプ5は、図2に示すように、筐体4内において、その放電容器50の長手方向の管軸が略垂直方向に支持されており、光出射面となる前記矩形状平面部51の一方が前記窓部6に対向するように配置されている。
なお、図2に示す実施例では、エキシマランプ5は12本並列配置された例が示されているが、光照射ユニット3の光出射面となる窓部6の大きさに対応する本数とすればよい。
また、必要に応じて、筺体4内のエキシマランプ5の背面側に反射鏡を設けることもできる。更には、図8以下に示した従来例と同様に、筺体4内に冷却風を流す構成としてもよい。
このような構成を有する光照射ユニット3におけるエキシマランプ5の点灯時の作用を図4に基づいて説明する。
図4(A)に示すように、エキシマランプ5の一対の外部電極53、53間に高周波電圧が印加されると、放電容器50の内部に細い針金状の放電プラズマ、即ち、放電柱X1が形成される。
放電柱X1の近傍周囲のガスは暖められて温度が上昇し、放電柱X1のない部分と比較してガスの密度が低くなる。つまり、放電容器50内には、放電柱X1の周囲の低密度部分Y1と、それ以外の高密度部分Y2とが形成される(B)(E)。
放電柱X1が消滅すると、前記低密度部分Y1には電子、イオン、励起した原子、分子が残存した状態で、高密度部分Y2により押し上げられて上方に移動する(C)(E)。
次いで、高周波電圧が反転すると、電子、イオン、励起した原子、分子が残存した低密度領域Y1で絶縁破壊しやすくなり、この領域で放電が起こる(D)。
つまり、電圧が反転する前に形成された放電柱X1の位置よりも上昇した位置において次の放電柱X2が形成される。
こうして放電が発生すると、その放電柱の近傍のガス温度が上昇し、上記の動作が繰り返される。
こうして、高周波電圧の切り替わり毎に放電柱Xの形成場所が上方に移動することによって、常に放電が移動している状態が維持されて、放電柱はあたかも上昇していくように形成され、放電が垂直方向の一箇所に集中して起こることが無くなる。
図5に示すように、放電柱Xの上昇に伴って低密度領域Y1のガスは上方へ移動し、上昇ガス流R1が形成される。
放電柱の上昇は、外部電極53に対応する範囲から外れるまで続き、外部電極53に対応する範囲から外れる領域では放電柱は発生しないが、低密度領域のガスは次々に下から移動してくる低密度領域のガスによって下から押し上げられる。
そして、補助電極50の上端部まで上昇したガスは、そこで反転して、放電容器50の外部電極53が配置されていない側面部52、52側の空間を流下する下降ガス流R2となる。
こうして、放電容器50内には、外部電極53が配置された領域で上昇ガス流R1が形成され、放電容器50の上端で反転して、放電容器50の外部電極が配置されていない側面部52側の空間で下降ガス流R2が形成されてガスは循環する。
こうして、放電が放電容器の長手方向の一箇所に集中して起こることが無くなり、放電を常に上昇移動させて放電容器の矩形状平面部全体に行き渡らせることができるので、エキシマランプから放射される紫外線の照度は、一定時間で積算した紫外線照度ではばらつきが無くなり、治療に要する時間における積算照度を一定にすることができ、患部に対する照度ムラを防ぐことができるようになる。
図6には、エキシマランプの他の実施例が示されており、この実施例では、放電容器50の内面構造が図3のものと相違する。
つまり、矩形状平面部51の内面51aの形状が、横断面における中央部Aにおいて内部側に突出していて、厚肉部を形成し、両側縁側において、中央部よりも肉厚が薄くなる薄肉部を形成している。これにより、平面部51、51の中央部Aでの内面離間距離Lが他の部分より狭められている。
こうすることで、平面部51、51間に発生する放電は、内面離間距離Lが狭められた中央部Aにおいて最も発生し易くなり、かつ、その放電柱Yが当該部位に安定的に形成される。
このように、図6に示す放電容器50の横断面において、放電柱Yはみだりに移動することないので、前述した長手方向における放電柱Yの上方移動が円滑になされるものである。
図7に本発明の効果を示すグラフが示されている。いずれも、扁平四角状の放電容器を有するエキシマランプをそれぞれ、その長手方向管軸を水平状態に配置した場合と、垂直状態に配置した場合でのランプの長手方向での照度分布を比較したものである。図中、鎖線は水平点灯での照度分布、実線は垂直点灯での照度分布を示す。
例えば、−100mm付近において、水平点灯では0.1(任意単位)程度の照度ムラが現われているが、同じ位置の垂直点灯では、照度ムラはほとんど現われていない。
他の位置においても同様に、垂直点灯した場合に長手方向での照度分布の均一性が向上している。
以上説明したように、本発明においては、キセノンと塩素が封入されたエキシマランプを用いた治療用光源装置において、前記エキシマランプは、扁平四角状の放電容器を有し、その一対の矩形状平面部の各々に設けられた外部電極を具備し、光照射ユニットの内部において、前記矩形状平面部の一方が前記窓部に対向して配置されると共に、当該エキシマランプの放電容器の長手方向の管軸が略垂直方向に支持されていることにより、エキシマランプの光出射面である放電容器の矩形状平面部と、患部との離間距離が一定となり、また、放電容器内に形成される放電柱が垂直配置の放電容器内を上方に移動するので、垂直方向での照度のむらが発生することもないので、照射窓全面で照度むらが発生することなく、均一な面状照射が可能となる。それにより、照射ユニットを動かして患部を複数回に亘り照射する必要がなく、一度の照射で患部をむらなく照射できるという効果を奏する。
さらには、放電容器の矩形状平面部の内面形状を、横断面における中央部で内部側に突出していて、内面離間距離が狭められていることにより、放電柱を当該部位で発生させ易くするとともに、みだりに移動させることがないので、上述した放電容器の長手方向における放電柱の上方移動が円滑に行われるものである。
1 治療用光源装置
2 スタンド
21 スライドレール
3 光照射ユニット
4 筺体
5 エキシマランプ
50 放電容器
51 矩形状平面部
51a 内面
52 側面部
53 外部電極
6 窓部
X 放電柱
Y1 低密度部分
Y2 高密度部分
R1 ガス上昇流
R2 ガス下降流
L 平面部内面の離間距離


Claims (2)

  1. キセノンと塩素が封入されたエキシマランプと、このエキシマランプからの出射光を透過する窓部を備えた光照射ユニットを備えた治療用光源装置であって、
    前記エキシマランプは、互いに平行に延びる一対の矩形状平面部及び該一対の矩形状平面部の長手方向の側縁部に沿って形成された一対の側面部を有するガラス製の放電容器と、該放電容器の前記一対の矩形状平面部の各々に設けられた外部電極を具備し、
    前記エキシマランプは、前記光照射ユニットの内部において、前記矩形状平面部の一方が前記窓部に対向して配置されると共に、当該エキシマランプの放電容器の長手方向の管軸が略垂直方向に支持されている
    ことを特徴とする治療用光源装置。
  2. 前記エキシマランプの放電容器における矩形状平面部の内面形状が、横断面における中央部において内部側に突出していて、内面離間距離が狭められていることを特徴とする請求項1に記載の治療用光源装置。


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