JP6180164B2 - ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂の製造方法ならびにポリエステル樹脂を用いた成形品 - Google Patents
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Description
[1]芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分を、重縮合して得られるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂中に含まれる各金属の含有量が以下の(1)〜(5)を満たし、且つ色相L値が80以上、及び色相b値が1以下であるポリエステル樹脂。
(1)180ppm≦Sb≦290ppm
(2)1ppm≦Mg≦9.5ppm
(3)0.2≦Mg/P≦1.0
(4)0ppm≦Co<1ppm
(5)10≦P≦24ppm
(ただし、Sbはアンチモン原子の含有量、Mgはマグネシウム原子の含有量、Pはリン原子の含有量、Coはコバルト原子の含有量を示し、Mg/Pは重量比を示す。)
であり、好ましくは、
[3]色剤の含有量が2ppm以下であることを特徴とする前記のポリエステル樹脂。
[4]前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を90モル%以上含有し、前記ジオール成分がエチレングリコールを90モル%以上含有するものであることを特徴とする前記のポリエステル樹脂。
[5]ポリエステル樹脂を溶融成形して厚さ6mmの成形板としたときのヘイズが7.0%以下であり、厚さ3mmの成形板としたときのヘイズが2.0%以下であることを特徴とする前記のポリエステル樹脂。
[7]前記5価のリン化合物が、リン酸または酸性リン酸エステルであることを特徴とする前記のポリエステル樹脂の製造方法。
[8]前記のポリエステル樹脂から得られる成形品。
[9]アセトアルデヒド含有量が15〜30ppm、色相L値が65以上、成形前の色相b値に対する成形後の色相b値の変化量が3以下であることを特徴とする前記成形品。
〔ポリエステル樹脂〕
本発明に係るポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂中に含まれる各金属の含有量が(1)180ppm≦Sb≦290ppm、(2)1ppm≦Mg≦9.5ppm、(3)Mg/P≦1.0、(4)0ppm≦Co<1ppm、及び(5)10≦P≦24ppm(ただし、Sbはアンチモン原子の含有量、Mgはマグネシウム原子の含有量、Pはリン原子の含有量、Coはコバルト原子の含有量を示し、Mg/Pは重量比を示す。)を満たし、且つ色相L値が80以上、及び色相b値が1以下であることを特徴とし、具体的には後述の製造方法によって得ることができる。
本発明に係るポリエステル樹脂は、色相L値が80以上であり、好ましくは85以上であり、より好ましくは90以上である。
本発明に係るポリエステル樹脂は、固有粘度(IV)が0.50〜1.50dl/gであることが好ましく、0.55〜1.00dl/gであることがより好ましく、0.70〜0.90dl/gであることが特に好ましい。
本発明に係るポリエステル樹脂中の色剤の含有量は2ppm以下であることが好ましく、0.2〜1.0ppmであることがより好ましい。
(エステル化工程)
ポリエステル樹脂を製造するに際して、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化させる。
このようなスラリーにはジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して、通常1.005〜1.4モル、好ましくは1.01〜1.3モルの脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
このようなエステル化反応は、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジオール以外の添加物を添加せずに実施することも可能であり、また後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能である。
上記のようなエステル化工程で得られた低次縮合物は、次いで重縮合(液相重縮合)工程に供給される。
液相重縮合工程においては、上記したポリエステル製造用触媒の存在下に、エステル化工程で得られた低次縮合物を、減圧下で、かつポリエステルの融点以上の温度(通常250〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族ジオールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
例えば、重縮合反応が複数段階で行われる場合には、第1段目の重縮合反応は、反応温度が250〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が0.07〜0.003MPaG、好ましくは0.03〜0.004MPaGの条件下で行われ、最終段の重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜295℃、圧力が1〜0.01kPaG、好ましくは0.7〜0.07kPaGの条件下で行われる。
本発明に係るポリエステル樹脂を製造する際に用いられるジカルボン酸成分としては、具体的には、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸とともに、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などを原料として使用することができる。
本発明に係るポリエステル樹脂を製造する際に用いられるジオール成分としては、具体的には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。また、脂肪族ジオールとともに、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族ジオールなどを原料として使用することができる。
本発明に係るポリエステル樹脂を製造する際に用いられるアンチモン化合物としては、具体的には、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモンなどが挙げられる。
本発明に係るポリエステル樹脂を製造する際に用いられるマグネシウム化合物としては、元素の単体、水素化物、酸化物、硫化物、水酸化物、有機金属化合物、アルコキシド、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノ酸塩、硫酸塩、有機スルホン酸塩、リン酸塩、有機ホスホン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩などが挙げられ、特に酢酸マグネシウム、酸化マグネシウムが好ましい。
本発明に係るポリエステル樹脂を製造する際に用いられる5価のリン化合物としては、具体的には、リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチルホスホアセテートなどの酸性リン酸エステル類、およびリン酸、ポリリン酸などのリン化合物が挙げられ、この中ではリン酸または酸性リン酸エステル類が好ましく、リン酸が特に好ましい。リン酸またはリン酸エステル類は熱分解反応の抑制効果に優れ、得られるポリエステル樹脂の色相が良好で、成形品アセトアルデヒドが低減できる点で好ましい。
本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法において、触媒であるアンチモン化合物、マグネシウム化合物、5価のリン化合物ならびに上述の色剤などは重縮合反応時に存在していればよい。これらの添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程のいずれの工程で行ってもよい。
ポリエチレンテレフタレートに共重合したジエチレングリコール成分は0.8〜2.5wt%、好ましくは1.0〜2.0wt%であることが望ましい。
このようにして液相重縮合工程を経た粒状ポリエチレンテレフタレートには、固相重縮合工程が加えられる。
固相重縮合工程に供給される粒状ポリエチレンテレフタレートは、予め固相重縮合を行なう場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行なった後、固相重縮合工程に供給してもよい。
本発明に係るポリエステル樹脂を成形して得られる成形品は透明性に優れる。具体的には、例えば、本発明に係るポリエステル樹脂を、溶融成形して厚さ6mmの成形板としたときのヘイズが、好ましくは7.0%以下であり、より好ましくは6.5%以下であり、特に好ましくは6.0%以下である。同様に、厚さ3mmの成形板としたときのヘイズが、好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.5%以下であり、特に好ましくは1.0%以下である。
本発明に係るポリエステル樹脂から得られる成形品は、アセトアルデヒド含有量は15〜30ppmであることが好ましく、17〜28ppmであることがより好ましい。
本発明に係るポリエステル樹脂は、例えば、射出成形によってプリフォームに成形された後、延伸ブロー成形することによって、もしくは、押出成形によって成形されたパリソンをブロー成形することによって、ボトル等に成形することができる。または、押出成形によってシートに成形された後、熱成形することによってトレイや容器等に成形することができる。または、該シートを二軸延伸して延伸フィルム等に成形することができる。または、繊維状に成形されて各種繊維加工体を成形することができる。
本発明に係るポリエステル樹脂は、溶融成形してボトルなどの中空成形体、シート、フィルム、繊維等に使用されるが、ボトル、シートに使用することが好ましい。
[固有粘度(IV)]
試料をフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(50/50重量比)を用いて溶解した。0.5g/dlの試料溶液を調製し、25℃で測定した溶液粘度から固有粘度(IV)を算出した。
試料に硫酸を添加し、加熱しながら硝酸を滴下して有機物を分解した。分解液を純粋で定容した。島津製作所製ICP発光分析装置(ICPS−8100)を用いてSb、Mg、Pを定量した。
カラーL値およびb値は、日本電色工業(株)(SD6000)を用いて反射法で測定した。
試料2.0gを秤量し、フリーザーミルを用いて冷凍粉砕する。粉砕試料は窒素置換したバイアル瓶に投入、さらに内部標準物質(アセトン)と水を入れて密栓する。バイアル瓶は120±2℃の乾燥機で1時間加熱した後、上澄み液をガスクロマトグラフィーに注入し測定した。
高純度テレフタル酸 12740部、イソフタル酸260部、モノエチレングリコール 4930部、Solvent Blue104を0.00525部、Solvent Red52を0.0045部、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド20%水溶液 6.88部をオートクレーブに仕込み、圧力 0.17MPaG、温度100℃から260℃まで4時間かけて昇温し、更に1.5時間反応させた。この反応により生成した水は常時系外に留去した。次に重縮合触媒として、酢酸アンチモン6.33部、酢酸マグネシウム四水和物 0.68部、リン酸(85%水溶液) 1.49部を加えた。1時間かけて280℃まで昇温し、系内を0.27kPa absまで減圧し、更に目標のIV(0.58dl/g)に到達するまで、エチレングリコールを系外に留去しながら反応させた。反応終了後反応物をチップ状に裁断した。以上の液相重縮合によって得られたポリエチレンテレフタレートの固有粘度は0.58dl/gであった。
上記方法により得られたポリエチレンテレフタレートを、除湿エア乾燥機を用いて170℃、4時間乾燥した。乾燥後の樹脂中の水分量は40ppm以下であった。乾燥したポリエチレンテレフタレートを、日精樹脂工業製射出成型機ES600を用いて、プリフォーム32gの金型を使用し、シリンダー設定温度300℃、成形サイクル45秒、金型温度15℃で成形して、成形品を得た。得られた成形品2.0gを秤量し、前記方法によりアセトアルデヒド(AA)量を測定した。結果を表1に示す。
また、前記方法で得たプリフォーム成形品の口部約30gを小片(短辺/長辺/高さ=1.9/3.7/3.5mm)に切削し、色相を測定した。結果を表1に示す。
上記方法により得られたポリエチレンテレフタレートを、真空乾燥機を用いて150℃、15時間乾燥した。乾燥後の樹脂中の水分量は40ppm以下であった。乾燥したポリエチレンテレフタレートを、スクリューフィーダを用い、5×10-3m3/時間に相当する回転数でフィードし(株)名機製作所射出成形機M70Bを用いて、75gの金型を使用し、シリンダー設定温度275℃、成形サイクル70秒、スクリュー回転数120rpm、計量18秒で成形して、段付角板状の成形品を得た。段付角板状成形体は、図1に示すような形状を有しており、A部の厚みは約6mm、B部の厚みは約4mm、C部の厚みは約2mm、D部の厚さは約7mm、E部の厚さは約5mm、F部の厚さは3mmである。
実施例1の方法にて、アンチモン濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2及び実施例3のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表1に示す。
実施例2の方法にて、マグネシウム及びリン濃度を変更した以外は、実施例2と同様にして実施例4及び実施例5のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表1に示す。
実施例1の方法にて、マグネシウムをコバルトへ変更し、色相調整剤を加えない以外は、実施例1と同様にして比較例1のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表1に示す。
実施例3の方法にて、マグネシウムをコバルトへ変更し色相調整剤を加えない以外は、実施例3と同様にして比較例1のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表1に示す。
実施例1の方法にて、アンチモン濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表1に示す。Sbを増量することで生産性は高まる(重合時間が短くなる)が、ヘイズが大幅に上昇した。
実施例2の方法にて、マグネシウム、コバルトを添加しないこと以外は実施例2と同様にして比較例5のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表1に示す。ヘイズが悪化した。
実施例2の方法にて、マグネシウム量を変更したこと以外は実施例2と同様にして比較例5のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表1に示す。ヘイズが悪化した。
実施例1の方法にて、リン化合物をリン酸に変えてリン酸トリメチルを使用し、アンチモン、マグネシウム、リン濃度をそれぞれ変更し、色相調整剤を加えない以外は実施例1と同様にして比較例6及び比較例7のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表2に示す。いずれもヘイズが悪化した。
実施例2の方法にて、リン化合物をリン酸に変えてリン酸トリメチルを使用した以外は実施例2と同様にして比較例8のポリエチレンテレフタレートを調製した。結果を表2に示す。
Claims (2)
- ポリエステル樹脂の製造方法であり、
前記ポリエステル樹脂が、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分を、重縮合して得られるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂中に含まれる各金属の含有量が以下の(1)〜(5)を満たし、且つ色相L値が80以上、及び色相b値が1以下であり、
芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分を、アンチモン化合物、マグネシウム化合物、及び5価のリン化合物の存在下、コバルト化合物の不存在下に重縮合させることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
(1)220ppm≦Sb≦290ppm
(2)1ppm≦Mg≦9.5ppm
(3)0.2≦Mg/P≦1.0
(4)0ppm≦Co<1ppm
(5)10≦P≦24ppm
(ただし、Sbはアンチモン原子の含有量、Mgはマグネシウム原子の含有量、Pはリン原子の含有量、Coはコバルト原子の含有量を示し、Mg/Pは重量比を示す。) - 5価のリン化合物が、リン酸または酸性リン酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
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