JP6179895B2 - リコピンのシス異性化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トランス体リコピンをシス体リコピンへ異性化する方法に関する。
リコピン(Lycopene)は、トマトに含まれている赤い色素であり、天然に存在するカロテノイド化合物の一種である。リコピンは、β−カロテン等の他のカロテノイド化合物と比較し、抗酸化作用が大きいことが報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、リコピンには11個の共役π結合があるため、様々なシス体が存在しており、シス体リコピンは、トランス体リコピンよりも腸管吸収性がよいことも知られている(例えば、非特許文献2参照。)。
β−カロテンやリコピン等のカロテノイド化合物の光異性化反応の平衡は、トランス体が多く生成する方向に傾いている。このため、通常、植物等から抽出・精製されたカロテノイド化合物含有組成物では、トランス体を多く含有する。そこで、カロテノイド化合物のシス体含有率(シス体比率)を高める方法が望まれている。例えば、特許文献1には、リコピンをはじめとするカロテノイド化合物に対して、熱処理、電磁波照射処理、又はラジカル反応を行うことにより、シス体比率を高められること、さらに、リコピンのシス体比率を、100℃の熱反応により約40%にまで、電子レンジによる電磁波照射処理により約65%にまで、ジクロロメタン溶液中でヨウ素を触媒として光異性化すること(ラジカル反応)により約77%にまで高められたことが記載されている。
その他、ヨウ素等の触媒を使用せずに光照射によってカロテノイド化合物を異性化する方法も知られている。例えば、非特許文献3には、リコピンをヘキサンに溶解させた溶液に、蛍光灯で2000〜3000lxの光を25℃、24時間照射する方法が、非特許文献4には、β−カロテンをベンゼン/アセトン(容量比が50:50)に溶解させた溶液に、400nm以上の波長の光を15分間照射する方法が、それぞれ開示されている。
特開2012−211169号公報
ブーム(Bohm)、他3名、Journal of Agricultural and Food Chemistry、2002年、第50巻、第221〜226ページ。 ファイラ(Failla)、他2名、Journal of Nutrition、2008年、第138巻、第482〜486ページ。 リー(Lee)、他1名、Food Chemistry、2002年、第78巻、第425〜432ページ。 ジェンセン(Jensen)、他2名、Journal of American Chemical Society、1982年、第104巻、第6117〜6119ページ。
特許文献1に記載の方法のうち、熱処理では、シス体比率はせいぜい40%程度に留まり、電磁波処理は、電磁波装置を必要とする。ラジカル反応では、食品加工には使用できないヨウ素を使用しているため、異性化後のリコピンの使用用途が限定されてしまうという問題がある。さらに、非特許文献3及び4に記載の方法では、電磁波装置を必要とせず、より簡易な装置で実施可能であるものの、オールトランスリコピン(トランス体リコピン)及びβ−カロテンに対するシス体比効率はせいぜい十数%でしかない。
本発明は、リコピンをヨウ素等の触媒を使用せずに、効率よくシス異性化する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、酢酸エチル、アセトン、又はヘキサンに溶解させた状態で、300〜500nmの範囲内の光を照射することにより、リコピンを効率よくシス異性化できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係るリコピンのシス異性化方法、飲食品の製造方法、及び化粧品の製造方法は、下記[1]〜[8]である。
[1] 酢酸エチル、アセトン、又はヘキサンからなる溶媒にリコピンを溶解させたリコピン溶液に、300〜500nmの範囲内の光を照射することを特徴とする、リコピンのシス異性化方法。
[2] 照射時間が10分間〜30時間である、前記[1]のリコピンのシス異性化方法。
[3] 光照射後のリコピンのシス異性化率が10%以上であり、かつリコピン残存率が5%以上となるように光を照射する、前記[1]又は[2]のリコピンのシス異性化方法。
[4] 前記溶媒がアセトンである、前記[1]〜[3]のいずれかのリコピンのシス異性化方法。
[5] 前記リコピン溶液が、青果物から調製されたオレオレジンを前記溶媒に溶解させた溶液である、前記[1]〜[4]のいずれかのリコピンのシス異性化方法。
[6] 前記青果物がトマトを含む、前記[5]のリコピンのシス異性化方法。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかのリコピンのシス異性化方法によりシス異性化されたリコピンを原料とすることを特徴とする、飲食品の製造方法。
[8] 前記[1]〜[6]のいずれかのリコピンのシス異性化方法によりシス異性化されたリコピンを原料とすることを特徴とする、化粧品の製造方法。
本発明により、トランス体よりも、抗酸化能と生体吸収性のいずれもが良好なシス体の含有比率が高いリコピンを比較的容易に得ることができる。
参考例1において、リコピン溶液に500〜1000nmの光を照射した場合における、オールトランスリコピン、13−シスリコピン、9−シスリコピン、及び5−シスリコピンの含有率(%)の経時的変化を示した図である。図1(A)はヘキサンを溶媒とした溶液の結果を、図1(B)はベンゼンを溶媒とした溶液の結果を、図1(C)はアセトンを溶媒とした溶液の結果を、図1(D)は二硫化炭素を溶媒とした溶液の結果を、それぞれ示す。
本発明及び本願明細書において、シス異性化率とは、異性化処理(本発明においては、光照射処理)の前後における、シス体比率(全リコピンに占めるシス体リコピンの含有比率)の増加分を意味する。また、リコピン残存率とは、異性化処理前のリコピン量に対する異性化処理後のリコピン量の割合を意味する。さらに、シス異性化効率とは、異性化処理前のリコピン量に対する、異性化処理によって増加したシス体の割合を意味し、具体的には、下記式で算出される。
[シス異性化効率]=[シス異性化率]×[リコピン残存率]/100
なお、本発明及び本願明細書において、リコピンの含有量は、逆相カラムや順相カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により測定できる。定量は、クロマトグラム中における各リコピン異性体ピークのピーク面積に基づいて算出される。より詳細には、各リコピン異性体の含有率(各リコピン異性体のシス体比率)(%)及びリコピン残存率は、下記式により算出できる。
[各リコピン異性体の含有率(%)]=[各リコピン異性体のピーク面積]/[全リコピンのピークの合算値]×100
[リコピン残存率(%)]=[異性化処理後の全リコピンのピークの合算値]/[異性化処理前の全リコピンのピークの合算値]×100
本発明に係るリコピンのシス異性化方法(以下、「本発明に係るシス化方法」ということがある。)は、酢酸エチル、アセトン、又はヘキサンからなる溶媒にリコピンを溶解させたリコピン溶液に、300〜500nmの範囲内の光を照射することを特徴とする。本発明に係るシス化方法は、特定の溶媒中で、特定の波長範囲内の光を照射して光異性化反応を行うことにより、リコピンを効率よくシス異性化することができる。
本発明に係るシス化方法においては、酢酸エチル、アセトン、又はヘキサンを溶媒として用いる。中でも、アセトンを用いた場合には、シス異性化率が非常に高く、短時間の光照射でシス体を効率よく得ることができる。また、ヘキサンを用いた場合には、光照射によってリコピンが分解しにくく、リコピン残存率が高いため、充分な時間光照射することにより、シス体を効率よく得ることができる。
さらに、酢酸エチル、アセトン、及びヘキサンはいずれも可食性の有機溶剤であり、かつ本発明においては、ヨウ素等の非可食性の触媒等を必要としない。このため、本発明に係るシス化方法によってシス化されたリコピンは安全性が高く、飲食品、医薬品、化粧料等の原料として好適である。
本発明に係るシス化方法において供されるリコピンとしては、合成品であってもよいが、植物、動物、微生物等由来の天然物であることが好ましい。なかでも、リコピン含有量の多い青果物由来のものが好ましい。リコピン含有量の多い青果物としては、例えば、トマト、ナス、パプリカ、ピーマン、ニンジン、スイカ、メロン、グレープフルーツ、カキ、サクランボ、アンズ、プラム、パパイヤ、レッドグアバ等が挙げられ、特にトマトが好ましい。
本発明に係るシス化方法において供されるリコピンとしては、水や有機溶媒を含まないか、又はこれらの含有量が非常に少ないものが好ましい。リコピンと共に持ち込まれる溶媒が少ない方が、酢酸エチル等の特定の溶媒によるリコピンシス化効果が充分に発揮できる。例えば、青果物由来のリコピンをシス化する場合には、酢酸エチル等の溶媒に、青果物の搾汁液を充分に濃縮した濃縮物やオレオレジン(有機溶媒により抽出した後、有機溶媒を除去することにより得られる脂質画分)を混合してこれらに含まれているリコピンを溶解させることによってリコピン溶液を調製することができる。その他、本発明に係るシス化方法においては、青果物等から精製したリコピンを供してもよい。
なお、青果物の搾汁液は、原料となる青果物を常法により搾汁することによって調製することができる。搾汁器としては、パルパー、スクリュープレス、ギナー、デカンター、一軸又は二軸(同方向若しくは異方向回転型)エクストルーダー等の飲食品分野で搾汁、搾油に通常用いられるものを適宜組み合わせて用いることができる。搾汁は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。青果物は、搾汁前に、適当な大きさに細断又は破砕しておくことも好ましい。細断等には、ダイサー、カッター、スライサー、ハンマークラッシャー等の通常野菜や果物の細断や破砕に用いられるものを使用することができる。また、青果物又はその細断物等は、搾汁する前に、必要に応じて加熱処理を行ってもよい。搾汁液の濃縮処理は、減圧濃縮器、撹拌型薄膜式濃縮器、プレート式濃縮器等の通常用いられる濃縮器を用いて、常法により行うことができる。
青果物のオレオレジンは、常法により調製できる。例えば、青果物の搾汁液から不溶性画分を回収し、この不溶性画分を、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、低級脂肪族アルコール類等の有機溶剤と混合して脂質画分を抽出した後、当該有機溶剤を留去法等により除去することにより、オレオレジンが得られる。本発明においては、市販されているオレオレジンを用いてもよい。
酢酸エチル等の特定の溶媒にリコピンを溶解させ、得られたリコピン溶液に300〜500nmの範囲内の光を照射することにより、光異性化反応を行う。本発明に係るシス化方法においては、照射波長を300〜500nmという特定の範囲内に限定することにより、その他の波長域の光を照射する場合よりも、より短時間で効率よくリコピンをシス化することができる。
リコピン溶液中のリコピン濃度は、特に限定されるものではない。本発明においては、例えば、全リコピン濃度を1×10−6〜1×10−3mol/L(mol/dm)とすることが好ましく、1×10−5〜1×10−4mol/Lとすることがより好ましい。
リコピン溶液への光照射の際の光源としては、光源に、300nm未満や500nm超の波長を遮断するためのカットフィルター等を設ける。当該光源としては、300〜500nmの範囲内うち少なくとも一部の波長の光を放出するものであればよく、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、及び蛍光灯等が挙げられる。
本発明に係るシス化方法においては、シス化の効率とリコピンの分解抑制のバランスの点から、光照射後のリコピンのシス異性化率が10%以上であり、かつリコピン残存率が5%以上となるように、光の照度、照射時間、照射時のリコピン溶液の濃度等を調製して光を照射することが好ましく、光照射後のリコピンのシス異性化率が20%以上であり、かつリコピン残存率が10%以上となるように光を照射することがより好ましい。
照射時間は、特に限定されるものではなく、使用する溶媒の種類や光照射時の温度、目的のシス異性化効率等を考慮して適宜決定することができる。照射時間が長くなるほど、シス異性化反応とリコピンの分解反応が共により進行する傾向にある。本発明においては、照射時間が10分間〜30時間であることが好ましく、1〜10時間であることがより好ましい。照射時間が当該範囲内であることにより、リコピンが過剰に分解されることを抑制しつつ、充分なシス化を行うことができる。
リコピン溶液に光を照射する際の温度は、特に限定されるものではなく、使用する溶媒の種類や光照射時の温度、目的のシス異性化効率等を考慮して適宜決定することができる。本発明においては、光照射時のリコピン溶液の温度は、80℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、室温であることがさらに好ましい。
リコピンのシス体には、5−シス体、9−シス体、13−シス体等の様々な異性体があり、異性化方法により得られやすいシス体の種類が異なる。例えば、有機溶媒中でリコピンを加熱処理した場合には、主に13−シス体が合成される。これに対して、本発明に係るシス化方法では、特に5−シス体(5−シスリコピン)の含有率の高いリコピン組成物が得られる。5−シスリコピンは、活性化エネルギーがリコピンのモノシス体の中で最も高く、生成しにくいが、一度合成された5−シスリコピンは安定的に存在する。また、リコピンのモノシス体の中で、5−シス体が最も生体への吸収性及び抗酸化作用が高い。
本発明に係るシス化方法によってシス体比率が高められたリコピンは、異性化処理前のリコピンと同様に、様々な用途に用いることができる。特に、本発明に係るシス化方法によって、リコピン異性体のうち、腸での吸収性と抗酸化性がより優れた5−シスリコピン含有量が従来になく多いリコピン組成物が得られるため、本発明に係るリコピンのシス化方法によりシス異性化されたリコピンを原料として飲食品又は化粧品を製造することが好ましい。当該飲食品としては、特に限定されるものではないが、各種飲料、ジュレ、ゼリー、ジャム、シャーベット、サプリメント(栄養補助食品)等が好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、リコピンの各異性体を定量する際のHPLCは、下記の条件で行った。
<リコピンの逆相HPLC条件>
装置:日本分光 GLLIVERシステム(日本分光(株)社製)、
カラム:YMC Carotenoid C−30〔固定相:C30(トリアコンチル基)、内径:4.6mm×250mm、YMC(株)製〕、
カラム温度:25℃、
サンプル注入量:20μL、
移動相:メタノール:TBME:水=75:15:10(容量比)をA液、メタノール:TBME:水=7:90:3(容量比)をB液とし、B液比率を、0〜3分後までに27%、3〜15分後までに55%、15〜25分後までに65%、25〜35分後までに85%、35〜40分後までに95%、40〜48分後までに100%、48〜49分後までに0%となるようなリニアグラジエント、
移動相の流速:1.0mL/min、
検出器:フォトダイオードアレイ検出器、
検出波長:470nm。
[参考例1]
ヘキサン、ベンゼン、アセトン、二硫化炭素、又は酢酸エチルに溶解させたオールトランスリコピンに、500〜1000nmの光を照射して、得られた異性体組成物の組成を調べた。
まず、トマトペーストから抽出した純度98%以上のリコピン(オールトランスリコピン比率:99.9〜100%)を、ヘキサン、ベンゼン、アセトン、又は二硫化炭素に溶解させたリコピン溶液を調製した。各溶液のリコピン濃度は、ヘキサン溶液が2.09×10−5mol/L、ベンゼン溶液が2.44×10−5mol/L、アセトン溶液が2.05×10−5mol/L、二硫化炭素溶液が2.22×10−5mol/Lであった。
次いで、各リコピン溶液について、アルゴン置換した後、Y−50−フィルター(AGCテクノグラス社製)付キセノンランプを備えた光異性化装置に設置し、室温で500〜1000nmの光を照射した。Y−50−フィルターは、500nm以下の波長を遮断するフィルターである。光照射前(光照射時間が0時間の時点)と、光照射開始後から経時的にリコピン溶液の一部をサンプリングし、前記の方法で逆相HPLCを行い、クロマトグラフ中のピーク面積に基づいて、リコピンの各異性体の含有率を求めた。
各溶液における、オールトランスリコピン、13−シスリコピン、9−シスリコピン、及び5−シスリコピンの含有率(%)の算出結果を図1(A)〜(D)に示す。ヘキサンやベンゼンよりも、アセトン又は二硫化炭素を溶媒としたほうが、シス体比率が高くなる傾向が観察された。また、各溶液における各シス体の含有比率同士を比較すると、ヘキサン及びベンゼンでは13−シスリコピンが最も多く生成されていたが、アセトン及び二硫化炭素では5−シスリコピンが最も多く生成されていた。
[実施例1]
可食性である酢酸エチル、アセトン、及びヘキサンを用いて、照射光の波長が光異性化反応に与える影響を調べた。
具体的には、トマトペーストから抽出した純度98%以上のリコピン(オールトランスリコピン比率:99.9〜100%)を、酢酸エチル、アセトン、又はヘキサンに溶解させたリコピン溶液を調製し、参考例1で使用した光異性化装置のランプを所望の波長範囲の光を放射するランプとし、さらに適当なフィルターを設けたものを使用して、照射波長が300〜500nm、500〜600nm、又は600〜1000nmとなる条件で光照射した。各溶液におけるリコピン濃度を表1に示す。照射波長が300〜500nmとするためには、キセノンランプにV−40フィルター(AGCテクノグラス(株)社製)を設け、照射波長が500〜600nmとするためには、キセノンランプにGIFフィルター((株)ニコン社製)を設け、照射波長が600〜1000nmとするためには、キセノンランプにLV610フィルター(朝日分光(株)社製)を設けた。
Figure 0006179895
光照射前(光照射時間が0時間の時点)と、光照射開始後から経時的にリコピン溶液の一部をサンプリングし、前記の方法で逆相HPLCを行い、クロマトグラフ中のピーク面積に基づいて、リコピンの各異性体の含有率やリコピン残存率等を求めた。算出結果を表2に示す。表2中、「シス体比率」は、溶液中に存在する全リコピンに占めるシス体(オ―ルトランス体以外の異性体)の総量の割合を意味する。本実験においては、光照射前の溶液に含まれているリコピンはほぼ全てオールトランスリコピンであり、異性化処理前のシス体比率は微量で無視できるため、シス体比率はシス異性化率に等しい。また、表2中、「5−シス体の含有率」は、溶液中に存在する全リコピンに占める5−シス体(5−シスリコピン)の割合を意味し、「5−シス体の異性化効率」は、異性化処理前の全リコピン量に対する、異性化処理によって増加した5−シス体の割合を意味し、具体的には、下記式で算出される。
[5−シス体の異性化効率]=[シス異性化率]×[5−シス体の含有率]/100
Figure 0006179895
この結果、いずれの溶媒においても、照射波長が300〜500nmの場合が、最もシス体比率が高い傾向にあった。中でも、5−シス体の含有率及び5−シス体の異性化効率は、いずれも照射波長が300〜500nmの場合が、500nm以上の波長を照射した場合よりも明らかに高くなっていた。また、参考例1に示すように、ヘキサン溶媒中で500〜1000nmの光を照射した場合には、13−シス体が最も多く生成されていたことから、同じ溶媒であっても照射する光の波長により生成されやすい異性体が異なる場合があることが示された。

Claims (8)

  1. 酢酸エチル、アセトン、又はヘキサンからなる溶媒にリコピンを溶解させたリコピン溶液に、300〜500nmの範囲内の光を照射することを特徴とする、リコピンのシス異性化方法。
  2. 照射時間が10分間〜30時間である、請求項1に記載のリコピンのシス異性化方法。
  3. 光照射後のリコピンのシス異性化率が10%以上であり、かつリコピン残存率が5%以上となるように光を照射する、請求項1又は2に記載のリコピンのシス異性化方法。
  4. 前記溶媒がアセトンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリコピンのシス異性化方法。
  5. 前記リコピン溶液が、青果物から調製されたオレオレジンを前記溶媒に溶解させた溶液である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリコピンのシス異性化方法。
  6. 前記青果物がトマトを含む、請求項5に記載のリコピンのシス異性化方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリコピンのシス異性化方法によりシス異性化されたリコピンを原料とすることを特徴とする、飲食品の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリコピンのシス異性化方法によりシス異性化されたリコピンを原料とすることを特徴とする、化粧品の製造方法。
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