部品実装装置
図1は、部品実装装置の部分的構成を模式的に例示する平面図である。同図および以下に示す図では、基板搬送方向X、幅方向Yおよび鉛直方向ZからなるXYZ直交座標系を適宜示す。また、X軸の矢印側を一方側と称し、X軸の矢印の反対側を他方側と適宜称する。部品実装装置1は、搬送レーン2が搬入した基板に対して、部品供給部3が供給する部品をヘッドユニット4により移載する概略構成を具備する。より具体的には、基板搬送方向Xに並行して延設された2本の搬送レーン2と、これら搬送レーン2の幅方向Yの両側それぞれに2個ずつ設けられた部品供給部3と、4個のヘッドユニット4とを部品実装装置1は備える。
2本の搬送レーン2それぞれは共通の構成を具備しており、基板を基板搬送方向Xの上流側(図1において右側から左側へ基板を搬送する場合には一方側となる)から搬入して所定の停止位置20(図1の一点鎖線)で停止させる基板搬入動作と、停止位置20で部品実装を受けた基板を基板搬送方向Xの下流側へ搬出する基板搬出動作とを実行する。この際、各搬送レーン2は、例えば基板搬送方向Xにおいて異なる2つの停止位置20それぞれに基板を停止できる構成を具備する。2本の搬送レーン2のそれぞれは基板搬送方向Xに並行して延設された2本の搬送コンベア21で構成され、部品実装装置1では4本の搬送コンベア21が幅方向Yへ並ぶ。4本の搬送コンベア21のうち、外側の2本は幅方向Yに固定された固定コンベアであり、内側の2本は幅方向Yに移動自在な可動コンベアである。したがって、可動コンベア21の幅方向Yへ移動させることで、搬送レーン2の幅を基板の幅に応じて調整することができる。
ちなみに、2本の搬送レーン2における基板搬送の態様は、図1に例示したものに限られない。つまり、図1では、2本の搬送レーン2それぞれに2つずつ停止位置20を設定して、合計4つの停止位置20を設定しつつ基板搬送を行う場合が例示されているが、2本の搬送レーン2それぞれに、一方は右側、他方は左側に1つずつ停止位置20を設定して、合計2つの停止位置20を設定することもできる。また、基板の幅が広いために2本の搬送レーン2で同時に基板搬送を実行できないような場合には、2本の搬送レーンのうちの一方でのみ基板搬送を実行して、他方では基板搬送を実行しなくても構わない。
これら搬送レーン2の幅方向Yの両側それぞれでは、2個の部品供給部3が基板搬送方向Xに並んでおり、部品実装装置1では、合計4個の部品供給部3が設けられている。各部品供給部3は、複数のテープフィーダー31を基板搬送方向Xに配列した構成を具備する。各テープフィーダー31は、集積回路(IC)、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の電子部品を収納するテープをリールに巻き回した概略構成を具備し、リールから電子部品を間欠的に搬送レーン2側端部へ送り出すことで、電子部品を供給する。なお、部品供給部3を構成するフィーダーの種類としては、テープ型のフィーダーに限られず、トレイに載置された状態で電子部品を供給するトレイ型のフィーダーであっても良い。
4個のヘッドユニット4のそれぞれは、X方向に配列された3本の実装ヘッド5を有し、各実装ヘッド5の先端のノズルで各テープフィーダー31の搬送レーン2側端部から部品を吸着することで、部品供給部3が供給する部品を停止位置20に停止する基板へ移載する。また、部品実装装置1では、ヘッドユニット4を移動させるためのヘッド駆動機構6が設けられている。具体的には、4個のヘッド駆動機構6が上述した4個の部品供給部3に対応して設けられている。そして、4個のヘッド駆動機構6がそれぞれ1個のヘッドユニット4の駆動を担う。
各ヘッド駆動機構6は、X方向へ移動自在にヘッドユニット4を支持しつつX方向に延びるX軸ビーム61を、Y方向へ移動自在に支持した構成を具備する。X軸ビーム61には、ヘッドユニット4に取り付けられてX方向に延びるX軸ボールネジ62と、X軸ボールネジ62を回転駆動するX軸サーボモーター63とが取り付けられている。そして、X軸サーボモーター63がX軸ボールネジ62を回転駆動すると、X軸ボールネジ62に螺合する不図示のナットが固定されたヘッドユニット5がX軸ビーム61に沿ってX方向へ移動する。また、各ヘッド駆動機構6は、X軸ビーム61の一方の端部が取り付けられて搬送レーン2の上方をY方向に延びるY軸ボールネジ64と、Y軸ボールネジ64を回転駆動するY軸サーボモーター65とを有する。そして、Y軸サーボモーター63がY軸ボールネジ64を回転駆動すると、Y軸ボールネジ64に螺合する不図示のナットが固定されたX軸ビーム61がヘッドユニット5を伴ってY方向へ移動する。X軸ビーム61の他方の端部はそれぞれ2本の搬送レーン2のX方向中央部の上方をY方向に跨ぐ2本のレール66のずれかに摺動可能に支持されている。
このように構成された各ヘッド駆動機構6は、X軸サーボモーター63とY軸サーボモーター65とを適宜回転させることで、対応する部品供給部3上方と停止位置20の基板上方との間で、担当するヘッドユニット4を移動させることができる。これによって、ヘッドユニット4は、部品供給部3が供給する部品を実装ヘッド5で吸着して、停止位置20に停止する基板へ移載することができる。
また、4個の部品供給部3それぞれに対しては、カメラ68がY方向の内側(搬送レーン2側)から隣接して配置されている。こうして、カメラ68が、部品供給部3と搬送レーン2との間(換言すれば、ヘッドユニット4の移動経路)に設けられている。カメラ68は、鉛直方向Zに平行に上方を向いて配置されており、上側を通過するヘッドユニット4に保持された部品や、ヘッドユニット4に取り付けられた後述の位置認識用のマーク部材41(図3)を撮像する。
図2は、図1の部品実装装置が備えるヘッドユニットの一例を示す側面図である。図3は、図1の部品実装装置が備えるヘッドユニットの一例を示すX方向の部分断面図である。続いては、図2および図3を用いて各ヘッドユニット4の構成について詳述する。なお、4個のヘッドユニット4は互いに同一の構成を具備するため、ここでは1個のヘッドユニット4について説明を行う。
ヘッドユニット4は、X方向に所定の配列ピッチLhで直線状に並ぶ3本の実装ヘッド5を具備する。3本の実装ヘッド5それぞれは、Z方向に延びるノズルシャフト50の下端部にノズルNを装着した概略構成を具備する。詳しくは、実装ヘッド5は、Z方向に平行な中心軸C51を中心とする周方向に等しい配列ピッチで配置された8本のノズルシャフト50を有し、各ノズルシャフト50の下端部に設けられたノズル装着部51にノズルNを着脱自在に装着する。
ノズル装着部51では、その下端部がシャフト50へ向けて屈曲する板バネ52がノズルシャフト50の下端部の外周に隙間を空けて対向している。そして、ノズルNの先端を下側に向けつつノズルNの上部をノズルシャフト50に外側から嵌めた状態でノズル装着部51に対してノズルNを上方へ押し込むと、ノズルNの外周に設けられた係合突起Neが板バネ52の下端部を外側に押し遣りながら、ノズルシャフト50と板バネ52のとの間の隙間に入り込む。その結果、ノズルNの外周突起Neが板バネ52の下端部に係合して、ノズルNはその先端を下側へ向けつつノズル装着部51に装着される。こうしてノズル装着部51に装着されたノズルNは、板バネ52の弾性力によってノズル装着部51に保持される。一方、ノズル装着部51に装着されたノズルNを板バネ51の弾性力に抗して下方に引っ張ることで、ノズル装着部51からノズルNを取り外すことができる。なお、ノズルNには、係合突起NeとノズルNの下端(先端)との間で側方に突出する鍔Nfが形成されている。この鍔Nfの機能については、ノズル着脱治具8の説明と併せて後述する。
各ノズルシャフト50の中心には、ノズル装着部51からZ方向に延びる通気路53が形成されている一方、ノズルNの中心には、Z方向に貫通するノズル孔Nvが形成されており、ノズル装着部51に装着されたノズルNのノズル孔Nvは通気路53に連通する。したがって、通気路53を介してノズル孔Nvの気圧を調整しつつ、実装ヘッド51に部品実装を実行させることができる。具体的には、部品供給部3が供給する部品を保持する際には、ノズルNの先端を部品に接触させつつノズル孔Nvに負圧を与えて、ノズルNの先端に部品を吸着することができる。また、基板に部品を載置する際には、ノズル孔Nvに正圧を与えて、ノズルNから基板へ部品を瞬時に移すことができる。なお、実装ヘッド51は、8本のノズルシャフト50を個別に昇降させることができる。したがって、部品供給部3からの部品の保持や、基板への部品の載置は、実行主体となるノズルNを装着したノズルシャフト50を選択的に昇降させて実行することができる。さらに、実装ヘッド51は、中心軸C51を中心として8本のノズルシャフト50を一体的に回転できるロータリー式の実装ヘッドである。したがって、8本のノズルシャフト50を適宜回転させて、ノズルNの位置を調整することができる。
このように構成された3本のヘッド5のX方向の両外側には、Z方向に延びる棒状の位置認識用のマーク部材41が配置されている。各マーク部材41はヘッドユニット3に固定されており、カメラ68により撮像されてヘッドユニット3の位置認識に用いられる。 さらに、ヘッドユニット3は、ノズルNに吸着された部品を側方から撮像するカメラ43と、カメラ43の視野を照らす照明45とを有する。カメラ43(の光学系431)は、実装ヘッド5に装着されたノズルNの先端に対してY方向から対向して、ノズルNに吸着された部品をY方向から撮像する。このように、カメラ43は実装ヘッド5のY方向側に配置されている。また、実装ヘッド5において円周状に配列された8個のノズルNの中央には、棒状の反射部材47が設けられている。この反射部材47によって照明45からの光が反射されて、カメラ43の視野をより明るく照らすことができる。
ノズル着脱治具の第1実施形態
続いては、実装ヘッド5のノズル装着部51に対してノズルNを着脱するノズル着脱治具7について説明する。図4は、第1実施形態にかかるノズル着脱治具の全体構成を例示する部分斜視図である。図5は、第1実施形態にかかるノズル着脱治具の全体構成を例示する部分断面図である。両図および以下の図面では、ノズル着脱治具7の軸方向に符号Daを、軸方向Daの回りに回転する回転方向に符号Drを、回転方向Drの一方向に符号Dr(o)を、回転方向Drの他方向に符号Dr(c)を適宜付することとする。なお、ここでは、ノズル着脱治具7の軸方向Daを鉛直方向Zに向けた状態を例示して、ノズル着脱治具7の説明を行う。
ノズル着脱治具7は、作業者が手に持って持ち運んだり操作したりすることができる可搬型のノズル着脱治具であり、実装ヘッド5のノズル装着部51に対してノズルNを着脱するために用いられる。ノズル着脱治具7は、ノズル保持ユニット70、シャッター73および取手75を備える。ちなみに、図4および図5では、ノズル保持ユニット70のノズル保持部71にノズルNを保持した状態のノズル着脱治具7が例示されている。
ノズル保持ユニット70は、軸方向Daに平行な中心線を具備する円筒形状を有しており、回転方向Drに沿って円周状に等ピッチで配列された8個のノズル保持部71を有する。8個のノズル保持部71の配列は、実装ヘッド5における8個のノズル装着部51の配列に対応しており、8個のノズル保持部71の円周配列のピッチは、8個のノズル装着部51の円周配列のピッチに等しい。したがって、実装ヘッド5の下方からノズル着脱治具7を対向させることで、8個のノズル保持部71のそれぞれを、対応するノズル装着部51に下方から対向させることができる。
各ノズル保持部71は軸方向Daに開口(上側へ開口)しており、その開口の縁にノズルNの鍔Nfを係合させた状態でノズルNを保持する。したがって、ノズル保持部71がノズルNを保持した状態では、ノズルNの鍔Nfより下側(先端側)がノズル保持部71に嵌入しつつ、ノズルNの鍔Nfから上側(後端側)がノズル保持部71から突出する。ノズル保持ユニット70には、通路701が各ノズル保持部71について設けられている。各通路701は、対応するノズル保持部71に連通しつつノズル保持ユニット70の外側へ向けて軸方向Daに開口(下側へ開口)しており、対応するノズル保持部71に保持されたノズルNのノズル孔Nvに連通する。こうして、ノズル保持ユニット70は、8個のノズル保持部71のそれぞれに個別に通路701を有する。なお、図4および図5に示す例では、ノズル保持部71から通路701までが軸方向Daにノズル保持ユニット70を貫通する円筒形状の孔として形成されている。
また、ノズル保持ユニット70の下端部には、8個のノズル保持部71それぞれに対して互いに異なる識別記号(図4における番号「10」「11」「12」…)が、付されている。これら識別記号は、異なるノズル保持部71を識別するために付されており、作業者は、識別記号を読み取ることで、ノズル保持部71とノズル装着部51との対応関係や、ノズル保持部71に保持されているノズルNの種類などを容易に把握することができる。さらに、ノズル保持ユニット70は軸方向Daに開口(上側に開口)する退避孔705を上端部に有する。この退避孔705は、軸方向Daに平行な中心線を具備する円筒形状を有しており、8個のノズル保持部71の円周配列の内側中央に位置する。
シャッター73は、軸方向Daに平行な中心線を具備する中空の円筒形状を有しており、軸方向Daの両側で開口する。このシャッター73は、ノズル保持ユニット70に外側から嵌合し、ノズル保持ユニット70に対して回転方向Drに回転可能である。なお、シャッター73の回転中心は、ノズル保持部71の円周配列の中心に合わせられている。シャッター73の軸方向Daの一端(上端)の周縁部には、8個の突起部731が回転方向Drに沿って円周状に等ピッチで配列されて、当該円周配列における径方向の内側へ向けて突出している。シャッター73の8個の突起部731は、ノズル保持ユニット70の8個のノズル保持部71に対応して設けられており、シャッター73に伴って一括して回転方向Drへ回転する。
ノズル保持ユニット70とシャッター73とは、ピン702および溝732によって互いに係合する。つまり、ノズル保持ユニット70の外壁には、外側へ向けて突出するピン702が固定されており、シャッター73には、軸方向Daに対して傾きつつ回転方向Drに延設された溝732が開いている。そして、ノズル保持ユニット70のピン702が、シャッター73の溝732に嵌合する。ちなみに、ここの例では、ノズル保持ユニット70にピン702が設けられ、シャッター73に溝732が設けられているが、これとは逆に、ノズル保持ユニット70に溝732が設けられ、シャッター73にピン702が設けられても構わない。
さらに、ノズル保持ユニット70の内周面とシャッター73の外周面の間には、軸方向Daへ弾性を有する圧縮バネ76(弾性部材)が設けられている。具体的には、ノズル保持ユニット70の外壁に形成された段差703と、シャッター73の内壁に形成された段差733とが軸方向Daに対向しており、段差703と段差733との間に圧縮バネ76が設けられている。ちなみに、図5の例では、段差703が下側に設けられ、段差733が上側に設けられているが、段差703および段差733の上下関係はこれと逆であっても構わない。
こうして段差703(被当接部)および段差733(被当接部)に両端で当接する圧縮バネ76の弾性力によって、ノズル保持ユニット70とシャッター73とは、互いに軸方向Daへ離れる方向へ付勢される。そのため、ノズル保持ユニット70のピン702は、シャッター73の溝732の下側の壁へ押圧されることとなり、シャッター73が回転方向Drへ回転する際には、ピン702は、溝732(の下側の壁)に沿って、回転方向Drへ移動することとなる。こうしてピン702と溝732の機能によって、ノズル保持ユニット70に対するシャッター73の回転が案内される。
また、ノズル保持ユニット70の下端には、軸方向Daにおいて下側に延びる取手75が取り付けられている。したがって、作業者は、一方の手で取手75を持ちつつ、他方の手でシャッター73を操作して、ノズル保持ユニット70に対してシャッター73を回転させることができる。
このように構成されたノズル着脱治具7では、ノズル保持ユニット70に対してシャッター73を適宜回転させることで、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを規制したり許可したりといった動作を切り換えて実行できる。続いては、この点について詳述する。
図6および図7は、第1実施形態にかかるノズル着脱治具においてノズル保持ユニットに対して規制部材を回転させた場合を例示した図であり、図6では、8個のノズル保持部71それぞれからノズルNを取り外した状態が示され、図7では、8個のノズル保持部71それぞれにノズルNを保持した状態が示されている。なお、両図においては、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを規制した状態が「OPEN」と表され、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを許可した状態が「CLOSE」と表されている。
上述した通り、ノズル保持ユニット70では、回転方向Drに沿って円周状に等ピッチで並ぶ8個のノズル保持部71が上方を向いて開口している。一方、シャッター73では、回転方向Drに沿って円周状に等ピッチで配列された8個の突起部731が、当該円周配列における径方向の内側へ向けて突出している。こうして、8個のノズル保持部71に対応して8個の突起部731が設けられている。そして、規制回転位置Pcと許可回転位置Poとの間でシャッター73を回転方向Drへ回転させることで、各突起部731を対応するノズル保持部71に対して回転方向Drに変位させて、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを規制あるいは許可することができる。ここで、規制回転位置Pcは、ピン702が溝732のオープン方向Dr(o)の端に位置するまでシャッター73をクローズ方向Dr(c)へ回転させた位置であり、許可回転位置Poは、ピン702が溝732のクローズ方向Dr(c)の端に位置するまでシャッター73をオープン方向Dr(o)へ回転させた位置である。
具体的に説明すると、図6の「CLOSE」に示すように、シャッター73が規制回転位置Pcに位置した状態においては、各突起部731は、それぞれの円周配列における径方向から対応するノズル保持部71に対向する。そのため、図7の「CLOSE」に示すように、各ノズル保持部71にノズルNが挿入された状態では、各突起部731がノズルNの鍔Nfに上方から対向して、対応するノズル保持部71からのノズルNの取り外しを妨げる。こうして、シャッター73を規制回転位置Pcに位置させることで、各ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを一括して規制する規制動作(第1動作)を実行することができる。
一方、図6の「OPEN」に示すように、シャッター73が許可回転位置Poに位置した状態においては、各突起部731は、対応するノズル保持部71から外れる(すなわち、対応するノズル保持部71に径方向から対向する位置から、オープン方向Dr(o)に外れる)。そのため、図7の「OPEN」に示すように、各ノズル保持部71にノズルNが挿入された状態では、各突起部731がノズルNの鍔Nfから外れて(すなわち、鍔Nfの上方から回転方向Drに外れて)、対応するノズル保持部71からのノズルNの取り外しを妨げない。こうして、シャッター73を許可回転位置Poに位置させることで、各ノズル保持部71からノズルNの取り外しを一括して許可する許可動作(第2動作)実行することができる。
ちなみに、図6および図7に示すように(図4にも示されているが)、シャッター73の側壁には、窓735が貫通形成されている。そして、シャッター73が許可回転位置Poに位置するときは、ノズル保持ユニット70の側壁に設けられた「OPEN」の文字が窓735から視認できる。これによって、作業者は、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しが許可されていることを把握できる。一方、シャッター73が規制回転位置Pcに位置するときは、「OPEN」の文字は、シャッター73に隠れて窓735から視認できない。これによって、作業者は、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しが規制されていることを把握できる。このように、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しが許可されているか規制されているかを示す表示部(窓735)が、ノズル着脱治具7に設けられている。
ところで、上述した通り、溝732は軸方向Daに対して傾いている。そのため、許可回転位置Poと規制回転位置Pcとの間で移動するのに連動して、シャッター73は、ノズル保持ユニット70に対して、シャッター73の回転中心線Lcが延びる方向(すなわち、軸方向Da)へ変位する(図8)。ここで、図8は、第1実施形態にかかるノズル着脱治具におけるノズル保持ユニットに対する規制部材の変位の様子を模式的に例示する図である。同図に示すように、溝732は、オープン方向Dr(o)へ向かうに連れて軸方向Daの上側へ向かうように傾いている(換言すれば、クローズ方向Dr(c)へ向かうに連れて軸方向Daの下側へ向かうように傾いている)。したがって、かかる溝732(の下側)にピン702が上述したように案内されると、シャッター73は、回転方向Drに回転しつつ軸方向Daに変位する。
具体的には、シャッター73が許可回転位置Poに位置して、ピン702が溝732のクローズ方向Dr(c)の端にあるとき、シャッター73の上端とノズル保持ユニット70の上端との間には、比較的広い間隔Δoが空く。一方、シャッター73が規制回転位置Pcに位置して、ピン702が溝732のオープン方向Dr(o)の端にあるとき、シャッター73の上端とノズル保持ユニット70の上端との間には、比較的狭い間隔Δc(<Δo)が開く。したがって、シャッター73がオープン方向Dr(o)に回転するに連れて、シャッター73の上端に設けられた突起部731は、ノズル保持ユニット70の上端で開口するノズル保持部71から軸方向Daに離れる一方、シャッター73がクローズ方向Dr(c)に回転するに連れて、シャッター73の上端に設けられた突起部731は、ノズル保持ユニット70の上端で開口するノズル保持部71へ軸方向Daに近づく。
また、溝732の両端732a、732bは、いずれも軸方向Da(の下側)に窪んでいる。したがって、各端732a、732bに位置するピン702は、圧縮バネ76の付勢力によって各端732a、732bの窪みに係合する。その結果、シャッター73は、許可回転位置Poあるいは規制回転位置Pcに圧縮バネ76の付勢力によって保持されることとなる。
図9は、第1実施形態にかかるノズル着脱治具の使用方法の一例を示す図である。ノズル着脱治具7を用いて実装ヘッド5のノズル装着部51に装着されたノズルNを一括して取り外す場合には、例えばステップA、B、C、Dの手順で作業を行えば良い。ステップAでは、ノズル着脱治具7を実装ヘッド5に下方から対向させて、ノズル着脱治具7の8個のノズル保持部71を実装ヘッド5の8個のノズル装着部51に下方から対向させる。これによって、ノズル保持部71がノズル装着部51に装着されたノズルNに下方から対向する。ステップBでは、シャッター73を許可回転位置Poに位置させて、各ノズル保持部71へのノズルNの挿脱を可能とした状態で、ノズル着脱治具7を実装ヘッド5に近接させて、ノズル装着部51に装着されたノズルNをノズル保持部71に挿入する。この際、ノズル装着部51の反射部材47をノズル着脱治具7の退避孔705内に収めることで、反射部材47とノズル着脱治具7との干渉を防止することができる。ステップCでは、シャッター73を規制回転位置Pcに位置させて、各ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを規制する。続いて、ステップDでは、ノズル着脱治具7をノズル装着部51から離して、ノズル保持部71からの取り外しが規制されたノズルNをノズル装着部51から外す。こうして、ノズルNを一括して実装ヘッド5から取り外すことができる。
一方ノズル着脱治具7を用いて実装ヘッド5のノズル装着部51にノズルNを一括して取り付ける場合には、例えばステップD、C、B、Aの手順で作業を行えば良い。ステップDでは、ノズル着脱治具7を実装ヘッド5に下方から対向させて、ノズル着脱治具7の8個のノズル保持部71を実装ヘッド5の8個のノズル装着部51に下方から対向させる。これによって、ノズル保持部71に保持されたノズルNがノズル装着部51に下方から対向する。ステップCでは、ノズル着脱治具7を実装ヘッド5に近接させて、ノズル保持部71に保持されたノズルNをノズル装着部51に装着する。この際、ノズル装着部51の反射部材47をノズル着脱治具7の退避孔705内に収めることで、反射部材47とノズル着脱治具7との干渉を防止することができる。ステップBでは、シャッター73を許可回転位置Poに位置させて、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを可能にする。続いて、ステップAでは、ノズル保持部71からの取り外しが許可されたノズルNをノズル装着部51に残して、ノズル着脱治具7をノズル装着部51から離す。こうして、ノズルNを一括して実装ヘッド5へ取り付けることができる。
ところで、上述のようにして、ノズル着脱治具7を用いて実装ヘッド5から取り外したノズルNに対しては、超音波洗浄やエアブローといったメンテナンスを簡便に実行することができる。図10は、ノズル着脱治具を用いたノズルのメンテナンスの一例を模式的に示す図である。同図の左欄では、超音波洗浄を行う場合が示され、同図の右欄では、エアブローを行う場合が示される。
同図の左欄に示すように、ノズル保持部71にノズルNを保持したノズル着脱治具7を、洗浄機であるイソプロピルアルコール(IPA)に浸した状態で超音波洗浄機にセットして、超音波洗浄を実行する。この際、ノズル着脱治具7は、ノズルNのノズル孔Nvに連通する通路701が設けられている。そのため、図中矢印に示すように、通路701を介してIPAをノズルNのノズル孔Nvへ行き渡らせることが可能となっている。
また、同図の右欄に示すように、ノズル着脱治具7のノズル保持部71に保持されたノズルNのノズル孔Nvに対して空気を吹き込んで、風圧によってノズル孔Nv内のごみを吹き飛ばすことで、エアブローを実行する。この際、ノズル着脱治具7は、ノズルNのノズル孔Nvに連通する通路701が設けられている。そのため、エアブローによってノズルNのノズル孔Nvに吹き付けた空気を、図中矢印に示すように通路701から逃がしつつ、ノズルNのノズル孔Nvに空気を勢いよく送り込むことができる。
以上に説明したように、本実施形態のノズル着脱治具7によれば、ノズル保持部71にノズルを保持するための上記規制動作(第1動作)およびノズル保持部71からノズルNを取り外すための上記許可動作(第2動作)のいずれかを、複数のノズル保持部71について一括して実行できる。しかも、複数のノズル保持部71は円周状に並んでいる。したがって、複数のノズルNを円周状に並べた部品実装装置1に対して複数のノズルNを一括して着脱することが可能となる(第1の目的)。
この際、規制動作および許可動作を実行するシャッター73は、規制回転位置Pcおよび許可回転位置Poの間でノズル保持ユニット70に対して回転自在である。そして、シャッター73は、規制回転位置Pcに位置することで、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを8個のノズル保持部71に対して一括して規制するとともに、許可回転位置Poに位置することで、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを8個のノズル保持部71に対して一括して許可する。したがって、規制回転位置Pcと許可回転位置Poとの間でシャッター73を回転させることで、上記の規制動作および許可動作を簡便に実行することができる。
また、シャッター73は、8個のノズル装着部51に対応して設けられて円周状に配列された8個の突起部731を有する。そして、シャッター73が規制回転位置Pcに位置すると、8個の突起部731のそれぞれは対応するノズル保持部71に対向して、対応するノズル保持部71からのノズルNの取り外しを規制する。一方、シャッター73が許可回転位置Poに位置すると、8個の突起部731のそれぞれが対応するノズル保持部71から外れて、対応するノズル保持部71からのノズルNの取り外しを許可する。このような構成では、シャッター73を回転させて、シャッター73に設けられた突起部731を移動させることで、上記の規制動作および許可動作を簡便に実行することができる。
ところで、ノズル保持部71に対して突起部731を対向させたり外したりする構成では、ノズル保持部71に保持されたノズルNがシャッター73の突起部731に引っ掛かることが考えられる。つまり、ノズル保持部71に対向していた突起部731をノズル保持部71から外そうとしてシャッター73の回転を開始した際に、突起部731がノズル保持部71のノズルNに引っ掛かって、シャッター73の回転がスムーズに行うことが難しくなることが考えられる。
これに対して、ピン702および溝732が協働して、規制回転位置Pcから許可回転位置Poへのシャッター73の回転に連動させて、軸方向Daにおいて8個の突起部731をノズル保持ユニット70から離す。かかる構成では、規制回転位置Pcから許可回転位置Poへのシャッター73の回転を開始するのに伴って、軸方向Daにおいて突起部731がノズル保持ユニット70から離れる。そのため、例えばノズル保持部71にノズルNが傾いて保持されている等の原因で、シャッター73の突起部731とノズル保持部71のノズルNとが引っ掛かっていた場合でも、この引っ掛かりを解消しつつシャッター73の回転を開始することができ、シャッター73の回転をスムーズに行うことができる。
あるいは、ノズル保持部71から外れていた突起部731をノズル保持部71に対向させようとシャッター73の回転を開始した際に、突起部731がノズル保持部71のノズルNに引っ掛かって、シャッター73の回転をスムーズに行うことが難しくなることも考えられる。
これに対して、ピン702および溝732が協働して、許可回転位置Poから規制回転位置Pcへのシャッター73の回転に連動させて、軸方向Daにおいて8個の突起部731をノズル保持ユニット70に近づける。かかる構成では、許可回転位置Poから規制回転位置Pcへのシャッター73への回転を開始する際には、軸方向Daにおいて突起部731がノズル保持ユニット70から比較的離れている。そのため、シャッター73の突起部731とノズル保持部71のノズルNとの引っ掛かりを抑制しつつシャッター73の回転を開始することができ、シャッター73の回転をスムーズに行うことができる。
また、シャッター73を規制回転位置Pcに保持する力を、圧縮バネ76がシャッター73に与える。したがって、シャッター73が規制回転位置Pcから外れて、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しの規制が不用意に解除されることを抑制できる。また、圧縮バネ76がシャッター73を規制回転位置Pcに保持する力より大きな力をシャッター73に与えれば、必要に応じてシャッター73を規制回転位置Pcから回転させることができる。こうして、シャッター73を適切に動作させることが容易となっている。
また、シャッター73を許可回転位置Poに保持する力を、圧縮バネ76がシャッター73に与える。したがって、シャッター73が許可回転位置Poから外れて、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しが不用意に規制されることを抑制できる。また、圧縮バネ76がシャッター73を許可回転位置Poに保持する力より大きな力をシャッター73に与えれば、必要に応じてシャッター73を許可回転位置Poから回転させることができる。こうして、シャッター73を適切に動作させることが容易となっている。
また、ノズル着脱治具7は、ノズル保持ユニット70に取り付けられた取手75を備える。したがって、作業者は、一方の手で取手75を持ちながら、他方の手でシャッター73を回転させることができ、シャッター73の操作を容易に行うことができる。
また、本実施形態のノズル着脱治具7では、ノズル保持部71に保持されたノズルNのノズル孔Nvに連通する通路701がノズル保持ユニット70に設けられている。したがって、例えばエアブローを行う際には、エアブローによってノズルNのノズル孔Nvに吹き付けた空気を通路701から逃がしつつ、ノズルNのノズル孔Nvに空気を勢いよく送り込むことができ、エアブローを効果的に行うことができる。あるいは、例えば超音波洗浄を行う際には、通路701を介して洗浄液をノズルNのノズル孔Nvへ行き渡らせることができ、超音波洗浄を効果的に行うことができる。その結果、ノズル着脱治具7に保持されたノズルNに対して効果的なメンテナンスを行うことが可能となる(第2の目的)。
また、ノズル着脱治具7は、ノズル保持ユニット70に取り付けられた取手75を備えている。このような構成では、作業者は取手75を持って、メンテナンスに応じた作業をノズル着脱治具7に行うことができる。その結果、作業者の作業性が向上し、ノズル着脱治具7に保持されたノズルNに対して効果的なメンテナンスを行うことが容易となる。
このように第1実施形態では、ノズル着脱治具7が本発明の「ノズル着脱治具」の一例に相当し、ノズル保持ユニット70が本発明の「ノズル保持ユニット」の一例に相当し、ノズル保持部71が本発明の「ノズル保持部」の一例に相当し、シャッター73が本発明の「動作手段」あるいは「規制部材」の一例に相当し、突起部731が本発明の「突起部」の一例に相当し、ピン702、溝732およびシャッター73が協働して本発明の「第1連動手段」あるいは「第2連動手段」の一例として機能し、圧縮バネ76が本発明の「第1保持手段」あるいは「第2保持手段」の一例に相当し、取手75が本発明の「取手」の一例に相当し、通路701が本発明の「通路」の一例に相当する。
ノズル着脱治具の第2実施形態
図11は、第2実施形態にかかるノズル着脱治具の一例を示す図であり、同図の上欄では平面図が示され、同図の下欄では側面図が示されている。図12は、第2実施形態にかかるノズル着脱治具の一例を示す部分断面図である。また、両図においては、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを規制した状態が「OPEN」と表され、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを許可した状態が「CLOSE」と表されている。
本実施形態のノズル着脱治具7も、作業者が手に持って持ち運んだり操作したりすることができる可搬型のノズル着脱治具であり、実装ヘッド5のノズル装着部51に対してノズルNを着脱するために用いられる。なお、ここでは、ノズル着脱治具7の長尺方向をX方向へ、ノズル着脱治具7の短尺方向をY方向へ、ノズル保持部81の開口を上方へそれぞれ向けた状態を例示して、ノズル着脱治具7の説明を行う。
本実施形態にかかるノズル着脱治具7は、複数(ここでは9個)のノズル装着部51がX方向に直線状に配列された部品実装装置1に対してノズルNの着脱を実行するためのものである。具体的には、ノズル着脱治具7では、X方向に直線状に等ピッチで配列された9個のノズル保持部71がノズル保持ユニット70に設けられている。9個のノズル保持部71の直線配列のピッチは、9個のノズル装着部51の直線配列のピッチに等しい。したがって、実装ヘッド5の下方からノズル着脱治具8を対向させることで、9個のノズル保持部71のそれぞれを、対応するノズル装着部51に下方から対向させることができる。
第1実施形態と同様に、ノズル保持ユニット70には、通路701が各ノズル保持部71について設けられている。各通路701は、対応するノズル保持部71に連通しつつノズル保持ユニット70の外側へ向けてZ方向に開口(下側へ開口)しており、対応するノズル保持部71に保持されたノズルNのノズル孔Nvに連通する。こうして、ノズル保持ユニット70は、9個のノズル保持部71のそれぞれに個別に通路701を有する。なお、図11および図12に示す例では、ノズル保持部71から通路701までがZ方向にノズル保持ユニット70を貫通する円筒形状の孔として形成されている。
シャッター73は、X方向に長尺な平板形状を有する。このシャッター73は、ノズル保持ユニット70のY方向の側面に取り付けられており、ノズル保持ユニット70に対してX方向に移動可能である。シャッター73の一端(上端)には、9個の突起部731がX方向に沿って直線状に等ピッチで配列されて、Y方向の内側へ向けて突出している。シャッター73の9個の突起部731は、ノズル保持ユニット70の9個のノズル保持部71に対応して設けられており、シャッター73に伴って一括してX方向へ回転する。
ノズル保持ユニット70とシャッター73とは、ピン702および溝732によって互いに係合する。つまり、ノズル保持ユニット70の外壁には、外側へ向けて突出するピン702が固定されており、シャッター73には、Z方向に対して傾きつつX方向に延設された溝732が開いている。そして、ノズル保持ユニット70のピン702が、シャッター73の溝732に嵌合する。ちなみに、ここの例では、ノズル保持ユニット70にピン702が設けられ、シャッター73に溝732が設けられているが、これとは逆に、ノズル保持ユニット70に溝732が設けられ、シャッター73にピン702が設けられても構わない。
このように構成されたノズル着脱治具7では、ノズル保持ユニット70に対してシャッター73を適宜移動させることで、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを規制したり許可したりといった動作を切り換えて実行できる。続いては、この点について詳述する。
上述した通り、ノズル着脱治具7では、8個のノズル保持部71に対応して8個の突起部731が設けられている。そして、規制位置Pcと許可位置Poとの間でシャッター73をX方向へ移動させることで、各突起部731を対応するノズル保持部71に対してX方向に変位させて、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを規制あるいは許可することができる。ここで、規制位置Pcは、ピン702が溝732のX方向の一方端(図11の右端)に位置するまでシャッター73をX方向へ移動させた位置であり、許可位置Poは、ピン702が溝732のX方向の他方端(図11の左端)に位置するまでシャッター73をX方向へ移動させた位置である。
具体的に説明すると、図11の「CLOSE」に示すように、シャッター73が規制位置Pcに位置した状態においては、各突起部731は、Y方向から対応するノズル保持部71に対向する。そのため、各ノズル保持部71にノズルNが挿入された状態では、各突起部731がノズルNの鍔Nfに上方から対向して、対応するノズル保持部71からのノズルNの取り外しを妨げる。こうして、シャッター73を規制位置Pcに位置させることで、各ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを一括して規制する規制動作(第1動作)を実行することができる。
一方、図11の「OPEN」に示すように、シャッター73が許可位置Poに位置した状態においては、各突起部731は、対応するノズル保持部71から外れる(すなわち、対応するノズル保持部71にY方向から対向する位置から、X方向に外れる)。そのため、各ノズル保持部71にノズルNが挿入された状態では、各突起部731がノズルNの鍔Nfから外れて(すなわち、鍔Nfの上方からX方向に外れて)、対応するノズル保持部71からのノズルNの取り外しを妨げない。こうして、シャッター73を許可位置Poに位置させることで、各ノズル保持部71からノズルNの取り外しを一括して許可する許可動作(第2動作)実行することができる。
ところで、上述した通り、溝732は軸方向Daに対して傾いている。そのため、図8を用いて上述したのと同様に、許可位置Poと規制位置Pcとの間で移動するのに連動して、シャッター73は、ノズル保持ユニット70に対してZ方向へ変位する。したがって、シャッター73が許可位置Poへ向けてX方向に移動するに連れて、シャッター73の上端に設けられた突起部731は、ノズル保持ユニット70の上端で開口するノズル保持部71からZ方向に離れる一方、シャッター73が規制位置Pcに移動するに連れて、シャッター73の上端に設けられた突起部731は、ノズル保持ユニット70の上端で開口するノズル保持部71へZ方向に近づく。
こうして、ピン702および溝732が協働して、規制回転位置Pcと許可回転位置Poとの間におけるシャッター73の回転に連動させて、9個の突起部731をノズル保持ユニット70に対してZ方向に変位させる。その結果、ノズル保持部71に保持されるノズルNと突起部731との引っ掛かりを抑制して、シャッター73の移動をスムーズに行うことが可能となっている。
以上に説明したように、本実施形態のノズル着脱治具7では、ノズル保持部71に保持されたノズルNのノズル孔Nvに連通する通路701がノズル保持ユニット70に設けられている。したがって、例えばエアブローを行う際には、エアブローによってノズルNのノズル孔Nvに吹き付けた空気を通路701から逃がしつつ、ノズルNのノズル孔Nvに空気を勢いよく送り込むことができ、エアブローを効果的に行うことができる。あるいは、例えば超音波洗浄を行う際には、通路701を介して洗浄液をノズルNのノズル孔Nvへ行き渡らせることができ、超音波洗浄を効果的に行うことができる。その結果、ノズル着脱治具7に保持されたノズルNに対して効果的なメンテナンスを行うことが可能となる(第2の目的)。
このように第2実施形態では、ノズル着脱治具7が本発明の「ノズル着脱治具」の一例に相当し、ノズル保持ユニット70が本発明の「ノズル保持ユニット」の一例に相当し、ノズル保持部71が本発明の「ノズル保持部」の一例に相当し、シャッター73が本発明の「動作手段」の一例に相当し、取手75が本発明の「取手」の一例に相当し、通路701が本発明の「通路」の一例に相当する。
ノズル着脱治具の第3実施形態
図13は、第3実施形態にかかるノズル着脱治具の一例を示す平面図である。図14は、第3実施形態にかかるノズル着脱治具の一例を示す側面図である。本実施形態のノズル着脱治具8も、作業者が手に持って持ち運んだり操作したりすることができる可搬型のノズル着脱治具であり、実装ヘッド5のノズル装着部51に対してノズルNを着脱するために用いられる。なお、ここでは、ノズル着脱治具8の長尺方向をX方向へ、ノズル着脱治具8の短尺方向をY方向へ、ノズル保持部81の開口を上方へそれぞれ向けた状態を例示して、ノズル着脱治具7の説明を行う。
ノズル着脱治具8は、X方向に延びる直方体状の治具本体80と、治具本体80の上面において上方を向いて開口するノズル保持部81とを有し、鉛直方向Zから挿脱自在にノズルNをノズル保持部81に保持する。具体的には、ノズルNの鍔Nfより下側(先端側)がノズル保持部81に嵌入しつつ、ノズルNの鍔Nfから上側がノズル保持部81から突出した状態で(図14)、ノズル保持部81はノズルNを保持する。図13に示すように、治具本体80の上面では、円周状に等ピッチで配列された8個のノズル保持部81から1個のノズル保持ユニット81Uが構成される。ノズル保持ユニット81Uにおけるノズル保持部81のかかる配列は、実装ヘッド5におけるノズル装着部51の配列に対応したものである。さらに3個のノズル保持ユニット81UがX方向に直線状に等ピッチで配列されている。かかるノズル保持ユニット81Uの配列は、実装ヘッド5の配列に対応したものである。
治具本体80の上面において、各ノズル保持ユニット81Uの周囲には略円板状に窪んだ軸受孔801が形成されており、8個のノズル保持部81は軸受孔801の底部で開口する。そして、軸受孔801の内径と略同じか若干小さい外径を有する円環状のシャッター82が、各軸受孔801に嵌入されて、各ノズル保持ユニット81Uに対して設けられている。各ノズル保持ユニット81においては、複数のノズル保持部81の円周配列の中心と、軸受孔801の円形状の中心と、シャッター82の円環形状の中心とは相互に一致しており、シャッター82は、軸受孔801の内壁との間で摺動しつつノズル保持ユニット81Uの周囲を回動自在となっている。なお、治具本体80の上面においては、軸受孔801の内側に突き出てシャッター82を上から位置決めする押えプレート803が各軸受孔801の周囲にねじ止めされており、シャッター82の軸受孔801からの脱落が防止されている。
このように、3個のノズル保持ユニット81Uそれぞれに対してシャッター82が設けられている。そして、各シャッター82は次のような構成を具備することで、対応するノズル保持ユニット81Uの8個のノズル保持部81に対するノズルNの挿脱を規制する。つまり、シャッター82は、円環状の周縁部821と、周縁部821から内側に突出する8個の突起部822とで構成される。周縁部821は、ノズル保持ユニット81Uを構成する8個のノズル保持部81に外接する外接円の径よりも大きい内径を有し、ノズル保持ユニット81Uを外側から囲む。8個の突出部822は、かかる周縁部821の内壁に沿って、円周状に等ピッチで配列されている。すなわち、ノズル保持ユニット81Uを構成する8個のノズル保持部81の周りには、これらと同数の突起部822が設けられており、8個のノズル保持部81と8個の突起部822とが対応付けられている。そして、シャッター82を回動させると、各突起部822は、対応するノズル保持部81に対するノズルNの挿脱経路に突出する挿脱規制位置Prと、当該挿脱経路から外れる挿脱許可位置Ppとの間で回動する(なお、図13では、各突起部822は挿脱規制位置Prに位置する)。各突起部822は、挿脱規制位置Prにおいて対応するノズル保持部81に対するノズルNの挿脱を規制する一方、挿脱許可位置Ppにおいて対応するノズル保持部81に対するノズルNの挿脱を許可する。
シャッター82が上記構成を具備するため、シャッター82を適宜回動させることで、当該シャッター82に対応する8個のノズル保持部81に対して一括して、ノズルNの挿脱を規制あるいは許可することができる。つまり、各突起部822が挿脱規制位置Prに位置する回転位置(規制回転位置Pc)にシャッター82が位置すると、このシャッター82に対応する8個のノズル保持部81に対しては、ノズルNの挿脱が一括して規制される。したがって、ノズル保持部81にノズルNが保持された状態においては、挿脱規制位置Prに位置する各突起部822は、ノズル保持部81に保持されるノズルNの鍔Nfの直上に位置して、ノズル保持部81からのノズルNの取り外しを規制する規制動作(第1動作)を実行する。一方、各突起部822が挿脱許可位置Ppに位置する回転位置(許可回転位置Po)にをシャッター82が位置すると、このシャッター82に対応する8個のノズル保持部81に対しては、ノズルNの挿脱が一括して許可される。したがって、ノズル保持部81にノズルNが保持された状態においては、挿脱規制位置Prに位置する各突起部822は、ノズル保持部81に保持されるノズルNの鍔Nfの直上から外れて、ノズル保持部81からのノズルNの取り外しを許可する許可動作(第2動作)を実行する。
このようなシャッター82の回転は、治具本体80の上面において各シャッター82に対して設けられたクランクプレート83を介して行われる。つまり、シャッター82は、周縁部821から上方へ突出するピン823を有する。これに対して、クランクプレート83は、シャッター82が嵌入された軸受孔801に隣接して設けられ、シャッター82のピン823に係合しつつ回転自在に構成されている。具体的には、クランクプレート83は、軸受孔801の内側に突出した係合部831を有し、係合部831をZ方向に貫通する長孔832によってピン823に係合する。したがって、クランクプレート83が回動すると、シャッター82がクランクプレート83に連動して回動する。なお、長孔832の長さは、ピン823の外径よりも長くなっている。
治具本体80のY方向の側面には、X方向の一方側(図13、図14の左側)から他方側(図13、図14の右側)に延びるガイド溝が形成されている。そして、X方向にガイド溝よりも長いスライダー84が、ガイド溝に嵌入されている。このスライダー84は、X方向の他方側(図13、図14の右側)においてガイド溝の端から部分的に突出しつつ、ガイド溝に沿ってX方向へ移動自在に設けられている。
さらに、スライダー84は、X方向に並ぶ3個のクランクプレート83それぞれの下方に配置された、上方へ突出するピン841を有する。こうしてX方向に並ぶ3本のピン841のそれぞれは、上方に位置するクランププレート83に形成された切欠部833に係合する。したがって、スライダー84をX方向に移動させると、3本のピン841を介してスライダー84に係合する3個のクランクプレート83が一括して回転し、3個のシャッター82も一括して回動する。こうしてスライダー84をX方向に移動させることで、スライダー84に連動する3個のシャッター82を一括して回転させて、規制回転位置Pcおよび許可回転位置Poのいずれかに3個のシャッター82の状態を一括して切り換えることができる。
以上に説明したように、本実施形態のノズル着脱治具8によれば、ノズル保持部81にノズルNを保持するための上記規制動作(第1動作)およびノズル保持部81からノズルNを取り外すための上記許可動作(第2動作)のいずれか、8個のノズル着脱治具8について一括して実行できる。しかも、8個のノズル保持部81は円周状に並んでいる。したがって、8個のノズルNを円周状に並べた部品実装装置1に対して複数のノズルNを一括して着脱することが可能となる(第1の目的)。
この際、規制動作および許可動作を実行するシャッター82は、規制回転位置Pcおよび許可回転位置Poの間でノズル保持ユニット81Uに対して回転自在である。そして、シャッター82は、規制回転位置Pcに位置することで、ノズル保持部81からのノズルNの取り外しを8個のノズル保持部81に対して一括して規制するとともに、許可回転位置Poに位置することで、ノズル保持部81からのノズルNの取り外しを8個のノズル保持部81に対して一括して許可する。したがって、規制回転位置Pcと許可回転位置Poとの間でシャッター82を回転させることで、上記の規制動作および許可動作を簡便に実行することができる。
また、シャッター82は、8個のノズル装着部51に対応して設けられて円周状に配列された8個の突起部822を有する。そして、シャッター82が規制回転位置Pcに位置すると、8個の突起部822のそれぞれは対応するノズル保持部81に対向して、対応するノズル保持部81からのノズルNの取り外しを規制する。一方、シャッター82が許可回転位置Poに位置すると、8個の突起部822のそれぞれが対応するノズル保持部81から外れて、対応するノズル保持部81からのノズルNの取り外しを許可する。このような構成では、シャッター82を回転させて、シャッター82に設けられた突起部822を移動させることで、上記の規制動作および許可動作を簡便に実行することができる。
また、本実施形態のノズル着脱治具7においても、ノズル保持部81に保持されたノズルNのノズル孔Nvに連通する通路をノズル保持ユニット81Uに設けても良い。かかる構成では、例えばエアブローを行う際には、エアブローによってノズルNのノズル孔Nvに吹き付けた空気を通路から逃がしつつ、ノズルNのノズル孔Nvに空気を勢いよく送り込むことができ、エアブローを効果的に行うことができる。あるいは、例えば超音波洗浄を行う際には、通路を介して洗浄液をノズルNのノズル孔Nvへ行き渡らせることができ、超音波洗浄を効果的に行うことができる。その結果、ノズル着脱治具8に保持されたノズルNに対して効果的なメンテナンスを行うことが可能となる(第2の目的)。
このように第3実施形態では、ノズル着脱治具8が本発明の「ノズル着脱治具」の一例に相当し、ノズル保持ユニット81Uが本発明の「ノズル保持ユニット」の一例に相当し、ノズル保持部81が本発明の「ノズル保持部」の一例に相当し、シャッター82が本発明の「動作手段」あるいは「規制部材」の一例に相当し、突起部822が本発明の「突起部」の一例に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。図15は、部品実装装置の変形例を模式的に示す図である。ここでは、上記の部品実装装置1との差異点を中心に説明することとし、上記の部品実装装置1との共通点については相当符号を付して説明を省略する。
図15の部品実装装置1は、ノズル着脱治具7を取り外し自在に装着できる治具着脱部9を備える。具体的には、各ヘッドユニット4では、3個の実装ヘッド5に対応して3個の治具着脱部9が設けられている。各治具着脱部9では、ノズル保持部71からのノズルNの取り外しを許可した状態(OPEN状態)のノズル着脱治具7が装着されており、部品実装装置1に内蔵された制御手段100は、治具着脱部9に装着されたノズル着脱治具7の装着位置にまで実装ヘッド5を移動させて、ノズル着脱治具7に保持されたノズルNを実装ヘッド5のノズル装着部51へ取り付けることができる。
このような部品実装装置1は、上記の第1目的あるいは第2目的に資するとともに、ノズル着脱治具7が取り外し可能に装着される治具着脱部9を備えているため、ノズル着脱治具7の紛失を抑制できるといった利点もある。
さらに、治具着脱部9に装着されたノズル着脱治具7の装着位置にまで実装ヘッド5を移動させて、ノズル着脱治具7に保持されたノズルNの実装ヘッド5への取り付けを実行する制御手段100(第1制御手段)を備える。かかる構成では、部品実装装置1の治具着脱部9にノズル着脱治具7を装着しておけば、制御手段100がノズル着脱治具7から実装ヘッド5へのノズルNの取り付けを行うため、ノズルNの取り付けのための作業者の手間を軽減できる。
ちなみに、図15の部品実装装置1において、治具着脱部9に装着されたノズル着脱治具7のシャッター73を操作できるように制御手段100を構成しても構わない。この際、制御手段100は、治具着脱部9に装着されたノズル着脱治具7の装着位置にまで実装ヘッド5を移動させて、実装ヘッド5に取り付けられたノズルNのノズル着脱治具7への取り外しを実行することができる。かかる構成では、部品実装装置1の治具着脱部9にノズル着脱治具7を装着しておけば、制御手段100(第2制御手段)が実装ヘッド5からノズル着脱治具7へのノズルNの取り外しを行うため、ノズルNの取り外しのための作業者の手間を軽減できる。
また、上記第1目的を達成するにあたっては、上述の通路701を設けることは必須ではなく、通路701を排しても構わない。
また、上記第2目的を達成するにあたっては、ノズル保持部71を円周状に配列することは必須ではなく、例えば上記第2実施形態のようにノズル保持部71を直線状に配列したり、千鳥状に配列したりしても構わない。
また、ノズル保持部71、81からのノズルNの取り出しを規制/許可するための具体的構成は上記実施形態に記載されたものに限られない。したがって、例えば特許文献1に記載された構成や、ノズルNに対して磁力を作用/解除するといった構成によって、ズル保持部71、81からのノズルNの取り出しを規制/許可しても良い。
また、ノズル着脱治具7、8の姿勢は、上述のようにノズル保持部71、81が鉛直方向Zの上方を向く姿勢に限られない。したがって、上述と異なる姿勢でノズル着脱治具7、8を使用しても構わない。