JP6172652B2 - 磁性フォトニック結晶および磁気光学イメージング装置、光磁気記録媒体、演算素子 - Google Patents
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Description
シミュレーションは有限要素解析プログラム(COMSOL Ver.4.3)を用いて行った。被検体には純鉄を想定し、その透磁率を4000とした。また、被検体を磁化するために、同じ純鉄の磁化器を想定し、磁界を印加した。磁化器には132Tの磁束密度を想定し、空気中に発生する磁界が450Oeとなるように与えた。この値は実測によるMOイメージの取得に用いた磁化器に、最大である4Aの電流を流した場合に生じる磁界に相当する。欠陥は、開口幅が1μm の三角形状の亀裂を被検体中央に配置し、その深さを変数とした。対象物境界面より上部および欠陥内部は空気として透磁率1を与えた。シミュレーションに用いたモデルとして、深さが10μmおよび20μmの場合を図1に示す。
図2(a)に深さ10μmの欠陥から生じる漏洩磁界の垂直成分を、また図2(b)に深さ20μmの欠陥から生じる漏洩磁界の垂直成分を示す。ファラデー効果は光の進行方向に平行方向な磁界に比例して大きくなる。漏洩磁界の垂直成分を示したのは、漏洩磁界の垂直成分が磁気光学材料のファラデー回転に起因すると考えられるためである。
有限要素法を用いて欠陥周りの漏洩磁界分布を計算した結果、被検体表面から距離が離れると磁界分布が広がり、磁性膜の膜厚が薄い方が望ましいことが示された。また、前記漏洩磁界分布は、欠陥深さに応じて変化することから、漏洩磁界の空間的分布を複数取得することで欠陥深さが評価できると考えられる。そこで,数μm程度異なる高さの磁界をイメージングするため、MPCを応用し、高さ方向に数μmの周期で、光学膜厚の異なる磁性層を5層配置したMPCを設計する。以下、磁気光学層を複数有するMPCを、マルチキャビティMPCと記述する。
マトリックス・アプローチ法を用いて計算したマルチキャビティMPCの反射率およびファラデー回転角を図4に示す。図4は、横軸が波長、左縦軸は反射率、右縦軸はファラデー回転角である。同図より設計波長の1350nmから1550nm付近において、各Bi:YIG層の設計波長に対応したMPCの光局在ピークおよびファラデー回転角の増大が得られていることがわかる。これは、MPCに入射する光の波長をシフトするだけで数μmのオーダで、異なる高さの磁界分布のイメージが得られることを意味している。
ここでは、マルチキャビティMPCを用いた並列光演算への応用について説明する。しきい値処理などを行う事で、光でデジタル演算を行うことができる。
光コンピューティング用の空間光変調器として、光アドレス方式の多層化MPCが期待される。図6に多層化MPCの構造図を示す。欠陥層となる透明磁性材料に光を用いて、熱磁気書き込みを行い、ピクセルを2次元的に配列する。形成された磁気ピクセル群に光が入射すると、磁気光学効果によってピクセル駆動部のみ、偏光面回転が起こる。MPCを透過した光を偏光子を通して検出することで、2次元的な情報を取得できる。
・駆動が磁化反転のため非常に高速であること
・書き込みおよび信号検出を光を入射するだけでできること
・空間光変調器を複数配置しなくても良いため、光学系の縮小化および簡易化が可能となること
・機械構造を持たず、光検出時にノイズとなりうる回折光が生じないこと
等が挙げられる。
光磁気記録ディスクは、集光した光による熱磁気書き込みで高密度磁気記録を行う方法である。
光磁気記録材料は高密度に磁気記録ビットを形成するために,垂直磁化を有する磁性薄膜を用いている。最初に磁化の方位を一方方向に揃える(図7(a))。パルスレーザーを用いて磁性薄膜をキュリー温度まで加熱させ,磁化を局所的に消失させる(図7(b))。磁性膜の反転磁界および外部磁界印加により磁化反転させる(図7(c))。光照射が終わり温度が十分に低減し記録が終了する(図7(d))。実用化されている光磁気ディスクとしてはMD(Mini Disc)がある。
MPC構造中の磁性体を記録層として使用することで光磁気ディスクとして使用することができる。多層構造化することで記録再生信号の多値化や、波長選択性を利用した記録容量の増大を行うことができる。
図8に多層構造MPCを用いた再生信号の多値化の概略図を示す。MPC中の各層ごとに熱磁気記録により信号を書き込む。再生は通常の磁気ディスクと同様に直線偏光を入射する。その際、フォトニックバンドギャップの波長外の光を用いる。磁気光学効果による偏光面回転は、磁化の方向によって決定される。ここで、左方向の磁化は−1、右方向の磁化は+1とすると、図8に示す3層構造では4諧調の回転角の再生が可能となる。
多層構造中の磁性体を、図9に示すようにそれぞれ別の光波長で局在するように設計する。MPC構造による磁気光学効果の増大は磁性体中で光が局在するためである。図9に示す構造では赤、緑、青の3波長に局在する構造とした。再生に使用する光を選択することで、特定の記録層に記録された情報のみおよび合成された情報が再生される。
Claims (9)
- 照射される光の光軸方向に、複数の誘電体層からなる該照射光の反射膜に挟まれて複数の磁性体層からなり、該磁性体層は設計波長に応じて求められる物理膜厚を有する複数の磁性体が積層され、設計波長に応じて所望のリフトオフ値を有する間隔で該磁性体層のそれぞれと交互に隣接する誘電体層によって保持されていることを特徴とするマルチキャビティ磁性フォトニック結晶。
- 前記磁性体層および前記誘電体層の膜厚は、マトリックス・アプローチ法により算出され、各磁性体層は、前記算出された膜厚により任意の異なる局在波長を有している請求項1に記載のマルチキャビティ磁性フォトニック結晶。
- 前記磁性体層は、多結晶磁性ガーネット薄膜である請求項1または2に記載のマルチキャビティ磁性フォトニック結晶。
- 前記誘電体層のうちの少なくとも最外層に積層されるものは、酸化シリコン膜および五酸化タンタル膜が各2層以上積層されてなる誘電体多層膜である請求項1ないし3のいずれかに記載のマルチキャビティ磁性フォトニック結晶。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載のマルチキャビティ磁性フォトニック結晶を使用する磁気光学イメージング装置であって、前記マルチキャビティ磁性フォトニック結晶と、該マルチキャビティ磁性フォトニック結晶の積層方向に平行な光軸を有する光を照射する光源と、該光源による光の光軸方向に垂直な磁界を検査対象物に与える励磁部と、マルチキャビティ磁性フォトニック結晶により変調された特定波長の光を検出する検出部とを備え、前記検出部により検出された特定波長の光によって前記マルチキャビティ磁性フォトニック結晶近傍の物理的事象による磁化方位の変化を三次元的に表示することを特徴とする磁気光学イメージング装置。
- 前記励磁部の印加によって前記物理的事象から生ずる漏洩磁界が有限要素法により予め算出され、該漏洩磁界に応じて前記マルチキャビティ磁性フォトニック結晶の複数の磁性体層の間隔が決定されている請求項5に記載の磁気光学イメージング装置。
- 請求項5または6に記載の磁気光学イメージング装置を使用する探傷装置であって、前記マルチキャビティ磁性フォトニック結晶は、検査対象物の表面に最外層の誘電体層を対向して配置され、前記光源は、積層検査対象物に対して光を照射されるものであり、前記物理的事象は、検査対象物に存在する欠陥であり、前記検出部により検出された特定波長の光によって検査対象物に存在する欠陥の形状および深さを三次元的に表示することを特徴とする探傷装置。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載のマルチキャビティ磁性フォトニック結晶を使用する光磁気記録媒体であって、前記複数の磁性体層を磁気的記録層として使用し、複数層に分かれて記録される磁化方向によって多階調に再生される変調光により多値化してなることを特徴とする光磁気記録媒体。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載のマルチキャビティ磁性フォトニック結晶を使用する演算素子であって、前記複数の磁性体層に二次元的に磁気ピクセルを配列し、各磁性体層の磁気ピクセルを透過する光によって多階調の演算を処理させることを特徴とする演算素子。
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